説明

保護回路基板

【課題】 基板接続用タブを半田付けしている部分の半田飛びの発生がなく、電池接続用タブの抵抗溶接が万が一外れた場合でも電池接続用タブが保護回路基板から外れることのない保護回路基板を提供する。
【解決手段】 断面が凸形状の基板接続用タブ12は、保護回路基板11の穴開き部15を貫通するように嵌め込んで半田付けされ、電池接続用タブ13は、基板接続用タブ12と、保護回路基板11のパッド14の裏面との間に挿入され、基板接続用タブ12と溶接した後にカシメを行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電池接続用タブが接続される保護回路基板に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、小型の携帯用電気機器には電池パックが使用されている。殆どの電池パックには保護回路基板が搭載されており、保護回路基板と電池は、抵抗溶接等により電池接続用タブで接続されている。
【0003】
保護回路基板には基板接続用タブを接続する為、保護回路基板上にパッドがあり、パッドに半田付けすることにより基板接続用タブが実装されている。電池接続用タブは保護回路基板上に半田を介して接合された基板接続用タブ上に、抵抗溶接されることで接続されている。
【0004】
図3は、従来の保護回路基板上へのタブ接続構成を示す斜視図であり、図3(a)は基板接続用タブが保護回路基板からはみ出している状態を示す図、図3(b)は基板接続用タブが保護回路基板からはみ出していない状態を示す図、図3(c)は基板接続用タブを半田付けする部分に溝状の切欠き部がある図、図3(d)は基板接続用タブを半田付けする部分に四角い穴開き部がある図である。
【0005】
図3(a)において、基板接続用タブ32が、保護回路基板31上のパッド34に半田付けされる。この場合、基板接続用タブ32の長さがパッド34の長さより長く、基板接続用タブ32が保護回路基板31からはみ出すように半田付けしている為、半田付け後の基板接続用タブを含む長さは保護回路基板31の長さより長くなる。また、基板接続用タブ32を保護回路基板31のパッド34に半田付けする際、保護回路基板31に対しての位置決めが難しい。電池接続用タブ33は、基板接続用タブ32の保護回路基板31の端部からはみ出している部分に抵抗溶接により接続される。
【0006】
図3(b)において、基板接続用タブ32が、保護回路基板31上のパッド34に半田付けされる。基板接続用タブ32の長さは、パッド34の長さと同じ長さであり、保護回路基板31からはみ出すことなく半田付けされる。電池接続用タブ33は、基板接続用タブ32上に抵抗溶接により接続される。保護回路基板31上に半田付けされた基板接続用タブ32上へ電池接続用タブ33を抵抗溶接する際、抵抗溶接による熱が、基板接続用タブ32を通して保護回路基板31上に半田付けしているところに伝わり、半田を溶かすことによって半田の飛散が発生しやすくなる。これを防ぐ為、通常の基板接続用タブ32の厚さは0.10mm〜0.15mm程度であるが、この厚さを0.3mm〜0.5mm程度に設定する必要があり、基板接続用タブ32のコストが高くなる。
【0007】
図3(c)において、基板接続用タブ32が、保護回路基板31上のパッド34に半田付けされる。保護回路基板31上の基板接続用タブ32を半田付けする部分には溝状の切欠き部36があって、基板接続用タブ32は切欠き部36をまたぐようにしてパッド34上に半田付けされる。電池接続用タブ33は基板接続用タブ32上に抵抗溶接により接続される。
【0008】
図3(d)において、基板接続用タブ32が、保護回路基板31上のパッド34に半田付けされる。保護回路基板31上の基板接続用タブ32を半田付けする部分には四角い穴開き部35があって、基板接続用タブ32は穴開き部35をまたぐようにしてパッド34上に半田付けされる。電池接続用タブ33は基板接続用タブ32上に抵抗溶接により接続される。
【0009】
上記のような従来の方法による電池接続用タブの溶接としては、例えば特許文献1に記載されている。
【0010】
【特許文献1】特開2008−10501号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上記記載の従来例では、電池接続用タブを基板接続用タブに抵抗溶接する際に、基板接続用タブを半田付けしている半田飛びの影響を考慮する必要がある。
【0012】
また、電池接続用タブと基板接続用タブの抵抗溶接が万が一外れてしまった場合、電池接続用タブが保護回路基板から外れてしまうことも考慮する必要がある。
【0013】
抵抗溶接が外れた場合を考慮し、電池パックでは電池接続用タブを両面テープやテープで固定し、又はカバー等により電池接続用タブや保護回路基板を覆う構造にすることにより、電池接続用タブの溶接が外れても機能上問題ないよう考慮した設計がなされる必要がある。
【0014】
本発明では、電池接続用タブを基板接続用タブに抵抗溶接する際に、基板接続用タブを半田付けしている半田部分への熱の影響を小さくすることで半田飛びの発生をなくす必要がある。
【0015】
また、電池接続用タブと基板接続用タブの抵抗溶接が万が一外れた場合でも電池接続用タブが保護回路基板から外れることなく、より自由度のある保護回路基板の構成を可能とする必要がある。
【0016】
すなわち、本発明の技術的課題は、電池接続用タブを基板接続用タブに抵抗溶接する際に、基板接続用タブを半田付けしている半田部分への熱の影響を小さくすることで半田飛びの発生がなく、電池接続用タブの抵抗溶接が万が一外れた場合でも電池接続用タブが外れることのない保護回路基板を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明の保護回路基板は、両端に穴開き部を有する保護回路基板であって、前記穴開き部を貫通するように断面が凸形状の基板接続用タブが挿入され、前記保護回路基板の表面で半田付けされ、平板状の電池接続用タブが前記基板接続用タブと前記保護回路基板の裏面の間に挿入され、前記基板接続用タブと前記電池接続用タブが溶接されたことを特徴とする。
【0018】
本発明の保護回路基板は、前記基板接続用タブと前記電池接続用タブを溶接した後、前記基板接続用タブの断面凸形状部をカシメたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、電池接続用タブを基板接続用タブに抵抗溶接する際に、基板接続用タブを半田付けしている半田部分への熱の影響を小さくすることで半田飛びの発生がなく、電池接続用タブの抵抗溶接が万が一外れた場合でも電池接続用タブが外れることのない保護回路基板が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本発明の実施の形態を説明する。
【0021】
図1は、本発明の保護回路基板上へのタブ接続構成を示す斜視図であり、図1(a)は保護回路基板上へのタブ接続構成を示す上方斜視図、図1(b)は保護回路基板上に基板接続用タブを半田付けした上方斜視図、図1(c)はタブが保護回路基板に接続された状態を示す上方斜視図、図1(d)はタブが保護回路基板に接続された状態を示す下方斜視図である。
【0022】
図1(b)に示すように断面が凸形状の基板接続用タブ12が、保護回路基板11上の四角い穴開き部に嵌め込まれ、保護回路基板の表面の穴開き部の周囲にあるパッドに半田付けされる。また図1(d)に示すように電池接続用タブ13は、保護回路基板11の半田付けしているパッドの面の裏面にて、基板接続用タブ12と保護回路基板11の裏面の間を通すように挿入して配置し、基板接続用タブ12と抵抗溶接にて接続される。
【0023】
図2は本発明の保護回路基板上へのタブ接続構成を示す平面図であり、図2(a)は保護回路基板上にタブ接続された平面図、図2(b)は図2(a)のA−A断面図である。
【0024】
断面が凸形状の基板接続用タブ22は、保護回路基板21の四角い穴開き部25に嵌め込まれ、保護回路基板21の基板部品実装部26の反対面である表面のパッド24に半田付けされる。断面が凸形状の基板接続用タブ22は、パッド24が保護回路基板21の基板部品実装部26側に設けられている場合にはそちらに半田付けされてもよい。電池接続用タブ23は断面が凸形状の基板接続用タブ22と保護回路基板21の裏面の間に挿入し配置される。
【0025】
電池接続用タブ23と断面が凸形状の基板接続用タブ22を抵抗溶接した後、断面が凸形状の基板接続用タブ22を図2(b)の矢印方向に押し込むことで、電池接続用タブ23は、断面が凸形状の基板接続用タブ22と保護回路基板21の裏面の間でカシメが行われる。押し込む方向は、矢印方向と逆の方向であっても、両方の方向からであってもよい。
【0026】
なお、カシメを行わずに抵抗溶接で接続するだけであっても十分な接続強度が得られるが、抵抗溶接後にカシメを行うことにより、抵抗溶接だけで接続するよりもさらに大きな接続強度が得られる。
【0027】
断面が凸形状の基板接続用タブや電池接続用タブのカシメ部分の形状は、カシメを行える形状であればよい。例えば円形のように、抵抗溶接をした後に押し込みやすいような形状であることが、特性上好ましい。
【0028】
電池接続用タブと基板接続用タブの材質は、ニッケル又はニッケル化合物であるのが溶接上、導電上好ましい。
【0029】
電池接続用タブを基板接続用タブに抵抗溶接する際に、基板接続用タブを半田付けしている半田部分への熱の影響を小さくすることで半田飛びの発生をなくする為に、本発明では、基板上の四角い穴開き部の周囲にあるパッドに半田付けされる基板接続用タブの形状を、断面が凸形状となるようにし、基板上の四角い穴開き部に嵌め込むようにして半田付けする。
【0030】
すなわち、保護回路基板に半田付けされる基板接続用タブを、断面が凸形状とすることで、抵抗溶接する位置は、半田付け部分からの距離を従来よりも基板の厚さ以上長くすることができ、抵抗溶接時の半田付け部分への熱の影響を小さくすることができる。また電池接続用タブを基板接続用タブに溶接した後に、断面が凸形状の基板接続用タブを電池接続用タブに押し込むことで、確実にカシメを行うことが可能となる。
【0031】
基板接続用タブの形状は、必ずしも断面が凸形状である必要はなく、さまざまな形状であってよい。すなわち電池接続用タブを基板接続用タブに抵抗溶接する位置が、基板接続用タブを半田付けしている半田部分からできるだけ離れているのが熱の影響上好ましく、カシメを行うことが可能な形状であればよい。穴開き部は溝状や切欠状であってもよい。
【0032】
電池接続用タブと基板接続用タブのカシメを行って固定することにより、電池接続用タブと基板接続用タブの抵抗溶接が万が一外れた場合でも、電池接続用タブが保護回路基板から外れることがなく、電池接続用タブを固定する為の両面テープ等を使用した保護回路基板の場合には、これらの両面テープ等が不要となる。
【0033】
カシメを行うことのみにて電池接続用タブと基板接続用タブの接続が電気的、機械的にも十分保持可能な場合には、抵抗溶接をなくすることも可能となる。
【実施例】
【0034】
以下に、本発明の実施例を詳述する。
【0035】
(実施例1)
本発明の実施例として図2(b)を参照して説明する。図2(b)に示すように、保護回路基板の四角い穴開き部25に断面が凸形状の基板接続用タブ22を嵌め込み、保護回路基板上の表面の四角い穴開き部25の周囲にあるパッド24に半田付けした。次いで、電池接続用タブ23を、断面が凸形状の基板接続用タブ22と保護回路基板21の裏面の間に挿入し、抵抗溶接を行った。
【0036】
基板接続用タブ22から電池接続用タブ23の方向に押し込むことでカシメを行い、保護回路基板を製作した。
【0037】
L12は保護回路基板21の厚さであり、0.7mmであった。またL11は穴開き部25の幅で3.5mm、L21は断面が凸形状の基板接続用タブ22の幅で3.0mm、L22は基板接続用タブ22の高さで1.2mm、L23は基板接続用タブ22の厚さで0.1mmであった。L31は電池接続用タブ23の幅で2.5mm、L32は電池接続用タブ23の厚さで0.1mmであった。さらにL41は断面が凸形状の基板接続用タブ22と保護回路基板21の間の寸法で0.3mmであった。
【0038】
保護回路基板に半田付けされる基板接続用タブを、断面が凸形状とすることで、半田付け部分からの距離を従来よりも、基板の厚さである0.7mm以上長くとることができ、抵抗溶接時の半田付け部分への熱の影響を小さくすることができた。
【0039】
基板接続用タブと電池接続用タブを溶接した際に、本発明の保護回路基板100個のうち、基板接続用タブが半田付けされているパッド周辺に半田が飛散したものはなかった。
【0040】
本発明の保護回路基板は、電池接続用タブを基板接続用タブに抵抗溶接した後にカシメを行っており、カシメにより電池接続用タブは基板接続用タブと接続されたままであり、抵抗溶接が外れたものはなかった。
【0041】
(実施例2)
電池接続用タブを基板接続用タブに抵抗溶接しない以外は実施例1と同様に保護回路基板を作製した。
【0042】
基板接続用タブと電池接続用タブを溶接していない実施例2の保護回路基板100個のうち、半田が飛散したものはなかった。
【0043】
実施例2の保護回路基板で、電池接続用タブを基板接続用タブに抵抗溶接せずにカシメを行ったもの100個を作製したが、カシメにより電池接続用タブは基板接続用タブと接続されたままであった。
【0044】
(比較例)
基板接続用タブが板状である以外は実施例1と同様に保護回路基板を作製した。
【0045】
基板接続用タブと電池接続用タブを溶接した際に、比較例の保護回路基板100個のうち、基板接続用タブが半田付けされているパッド周辺に半田が飛散したものは6個あった。
【0046】
比較例の保護回路基板は、電池接続用タブを基板接続用タブに抵抗溶接した後にカシメを行っており、カシメにより電池接続用タブは基板接続用タブと接続されたままであり、抵抗溶接が外れたものはなかった。
【0047】
実施例1と比較例より、電池接続用タブを基板接続用タブに抵抗溶接する際に、基板接続用タブを半田付けしている半田部分への熱の影響を小さくすることで半田飛びの発生をなくすことができた。実施例1と実施例2より、電池接続用タブと基板接続用タブとの抵抗溶接の有無にかかわらず、カシメが外れたものはなかったので、抵抗溶接が万が一外れた場合でも電池接続用タブは基板接続用タブと接続されたままであることが確認できた。
【0048】
実施例の結果を総合して考慮すれば、電池接続用タブを基板接続用タブに抵抗溶接する際に、基板接続用タブを半田付けしている半田部分への熱の影響を小さくすることで半田飛びの発生をなくし、その抵抗溶接が万が一外れた場合でも電池接続用タブが保護回路基板から外れることのない保護回路基板が得られた。
【0049】
以上、実施例を用いて、この発明の実施の形態を説明したが、この発明は、これらの実施例に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更があっても本発明に含まれる。すなわち、当業者であれば、当然なしえるであろう各種変形、修正もまた本発明に含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明の保護回路基板上へのタブ接続構成を示す斜視図、図1(a)は保護回路基板上へのタブ接続構成を示す上方斜視図、図1(b)は保護回路基板上に基板接続用タブを半田付けした上方斜視図、図1(c)はタブが保護回路基板に接続された状態を示す上方斜視図、図1(d)はタブが保護回路基板に接続された状態を示す下方斜視図。
【図2】本発明の保護回路基板上へのタブ接続構成を示す平面図、図2(a)は保護回路基板上にタブ接続された平面図、図2(b)は図2(a)のA−A断面図。
【図3】従来の、保護回路基板上へのタブ接続構成を示す斜視図、図3(a)は基板接続用タブが保護回路基板からはみ出している状態を示す図、図3(b)は基板接続用タブが保護回路基板からはみ出していない状態を示す図、図3(c)は基板接続用タブを半田付けする部分に溝状の切欠き部がある図、図3(d)は基板接続用タブを半田付けする部分に四角い穴開き部がある図。
【符号の説明】
【0051】
11、21、31 保護回路基板
12、22、32 基板接続用タブ
13、23、33 電池接続用タブ
14、24、34 パッド
15、25、35 穴開き部
26 基板部品実装部
36 切欠き部
L11 穴開き部の幅
L12 保護回路基板の厚さ
L21 基板接続用タブの幅
L22 基板接続用タブの高さ
L23 基板接続用タブの厚さ
L31 電池接続用タブの幅
L32 電池接続用タブの厚さ
L41 基板接続用タブと保護回路基板の間の寸法

【特許請求の範囲】
【請求項1】
両端に穴開き部を有する保護回路基板であって、前記穴開き部を貫通するように断面が凸形状の基板接続用タブが挿入され、前記保護回路基板の表面で半田付けされ、平板状の電池接続用タブが前記基板接続用タブと前記保護回路基板の裏面の間に挿入され、前記基板接続用タブと前記電池接続用タブが溶接されたことを特徴とする保護回路基板。
【請求項2】
前記基板接続用タブと前記電池接続用タブを溶接した後、前記基板接続用タブの断面凸形状部をカシメたことを特徴とする請求項1に記載の保護回路基板。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−80463(P2010−80463A)
【公開日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−243488(P2008−243488)
【出願日】平成20年9月24日(2008.9.24)
【出願人】(000134257)NECトーキン株式会社 (1,832)
【Fターム(参考)】