説明

信号入力装置、信号出力装置、信号入出力装置及びこれを用いた車輪の状態監視装置

【課題】 各信号が論理信号として2つの状態を表す複数の信号を、各信号の何れの信号の状態にも依存されることなく重ね合わせ、少ない信号線で複数の信号が有する情報を復元可能な状態で伝達することのできる技術を提供する。
【解決手段】 信号入力装置は、各信号が論理信号として2つの状態を表すと共に互いに異なる振幅を有する矩形波状の複数の信号S1、S2を重畳し、複数の信号の総数をnとして、信号レベルによって2のn乗の状態を表す階段状の信号SSを生成する。信号出力装置は、複数の信号の総数をnとして、2のn乗から1を減じた種類のしきい値TH1、TH2、TH3により判定する比較部と、この比較部の判定結果に基づいて複数の信号S1、S2がそれぞれ表す2つの状態を再現するデコード部とを有する。上記信号出力装置と、信号入力装置とを備えて、信号入出力装置を構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各信号が2つの状態を表す複数の信号を、それぞれの信号が有する情報を失わずに重畳して出力する信号出力装置に関する。また、各信号が2つの状態を表す複数の信号が重畳された信号から、元の複数の信号が表していた状態を再現する信号入力装置に関する。また、このような信号出力装置と信号入力装置とを備えた信号入出力装置に関する。さらに、このような信号入出力装置を備えた車輪の状態監視装置に関する。
【背景技術】
【0002】
上記のような信号入力装置、信号出力装置、信号入出力装置として、下記に示す特許文献1には、車輪の回転検出装置やブレーキライニングの磨耗等を含めた車輪の状態監視装置に適用可能な技術が示されている。これは、各信号がそれぞれ有する情報を、これらの信号を重ね合わせることにより1つの信号上で表す情報の重ね合わせ方法に関するものである。この技術によれば、一方の信号は2つの所定レベル(ハイ(High)、ロー(Low))を有し、2つのレベルのアナログ的な周期変化によって情報を表す信号である(特許文献1ではアナログ信号と称する。)。他方の信号は、情報をデジタルデータワード(digital data word)の形で表すデジタル信号を含んだものである。そして、重ね合わせユニットにより、周期によって回転速度を表すアナログ信号のハイ状態の始めに、デジタルデータワードが存在するようにしている。つまり、2つの所定レベルを有するアナログ信号のデューティー比を1対1から、3対7や7対3などに変更し、割合の多い方(例えば7対3の7の方)のレベルの一部を使ってデジタルデータワードを表している。特許文献1によれば、最大回転速度周波数が3kHzの時、これから可能な30〜70%のデューティー比において、約100マイクロ秒の最大データワード長を取ることが可能である。
【0003】
また、下記に示す特許文献2には、回転速度(回転周波数)だけでなく、例えば回転方向や自己診断結果等の情報を付加した出力を出力可能な回転センサの検出信号出力方法やこの方法を用いた検出信号処理装置の技術が示されている。この技術では、回転方向等の回転速度とは異なる情報を、回転速度に応じたタイミングで出力する。つまり、パルス幅の異なる2つのパルスを用いて、これらのパルスをそれぞれ論理値の”1”及び”0”に対応させ、回転速度に応じたタイミングで出力する。出力タイミングにより回転速度を表し、パルス幅により例えば論理値”1”の場合に正回転、論理値”0”の場合に逆回転を表している。ここで、回転体が正方向又は逆方向への回転を始め、回転速度が所定の速度を超えた状態では、回転方向が急激に変化することはない。そこで、所定の速度を超えると、回転方向を示さなくとも同じ回転方向を維持しているとみなすことができるとしている。そして、正方向、逆方向の回転方向を示す波形のパルス幅を論理値の”1”、”0”のデータ符号に対応させて、回転速度に応じたタイミングで自己診断結果等のデジタル情報を出力するようにしている。
【0004】
【特許文献1】特開平10−70524号公報(第2〜16段落、第43〜50段落、第4図、第7図)
【特許文献2】特開2001−165951号公報(第8〜10段落、第7〜12図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1及び2に記載の技術は簡単な構成で、良好に2つ以上の情報を表す信号を1つの信号に重ね合わせることが可能なものである。しかし、特許文献1に記載の技術では、アナログ信号の周期が短くなった場合(例えば、回転体が高速回転した場合)、パルス間隔が狭くなり充分に他の情報(デジタルデータワード)を重ね合わせることができなくなることがある。また、特許文献1及び特許文献2の技術では、例えば回転体の回転速度を示す信号など、一方の信号のパルスに同期させて他の情報を重ね合わせている。従って、この一方の信号のパスルが出力されない状況においては、他の情報を重ね合わせることもできない。つまり、特許文献1及び特許文献2に記載の技術は、共に、他の情報の重ね合わせの可否が、一方の信号の状態に依存するという課題を有している。
【0006】
本願発明は、上記課題に鑑みてなされたもので、各信号が論理信号として2つの状態を表す複数の信号を、各信号の何れの信号の状態にも依存することなく重ね合わせ、少ない信号線で複数の信号が有する情報を復元可能な状態で伝達することのできる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この目的を達成するための本発明に係る信号出力装置の特徴構成は、各信号が論理信号として2つの状態を表すと共に互いに異なる振幅を有する矩形波状の複数の信号を重畳し、前記複数の信号の総数をnとして、前記重畳された信号の信号レベルによって2のn乗の状態を表す階段状の信号を生成する点にある。
【0008】
重畳前の各信号は、それぞれの信号レベルによって2つの状態を表す信号(論理信号)である。本特徴構成によれば、これら各信号の重畳後の信号は、信号の総数をnとして、2のn乗の信号レベルを有する階段状の信号となる。例えば、信号の総数が2であれば4つの信号レベルを有し、信号の総数が3であれば8つの信号レベルを有する信号となる。従って、元の各信号が有していた情報を損なうことなく、複数の信号を1つの信号に重ね合わせることができる。また、複数の信号のうち、何れかの信号にも同期させる必要はなく、各信号の独立性を保って1つの信号に重ね合わせることができる。その結果、少ない信号線によって複数の信号が有する情報を伝達することのできる信号出力装置を提供することができる。
【0009】
尚、各信号をそれぞれの振幅を加算することにより重畳する場合、各信号が電圧出力信号であると、トランジスタ等の能動素子や演算増幅器などを用いた加算回路が必要となる。しかし、各信号が電流出力信号であると、このような加算回路は必要ではない。つまり、各信号の信号線を1本の信号線に短絡することにより、キルヒホッフ(Kirchhoff)の法則に従って各信号の電流値が加算される。従って、重畳前の複数の信号が、電流出力信号であると、小さな回路規模によって、複数の信号を重ね合わせることが可能となる。
【0010】
また、前記複数の信号の総数が2であり、これら2つの信号のうち一方の信号の振幅が他方の信号の振幅の40%以上60%以下であると好適である。
【0011】
複数の信号の中の何れか1つの信号の振幅が、他の2つ以上の信号の振幅の和と一致、又は判別が困難な程度に極めて近い場合、重畳後の信号は、重畳前の信号の総数をnとして2のn乗の状態を明確に区別できるものとはならない。重畳前の複数の信号の中の任意の2つ以上の振幅の和と、他の2つ以上の信号の振幅の和との関係についても同様である。重畳後の信号において明確に区別できる状態が、2のn乗よりも少ない場合、元の信号が有していた情報が一部重複してしまうこととなる。つまり、結果として重畳後の信号において情報量が欠落することとなる。このように情報量が欠落すると、1つの信号に重ね合わせることはできても、この重ね合わせた信号を利用する価値が著しく低下する。従って、重畳前の複数の信号の中の任意の2つ以上の振幅の和が、他の2つ以上の信号の振幅の和、及び他の何れか1つの信号の振幅と異なる関係であるとよい。
【0012】
複数の信号の総和が2である場合、上記のように一方の信号の振幅が他方の振幅の40%以上60%以下、さらに好ましくは50%程度であれば、重畳後の信号が有する4つの状態(2の2乗=4)の区別が明確となる。例えば、一方の信号(M)の振幅が他方の信号(N)の振幅の50%である場合、重畳後の信号の有する4つの状態(信号レベル)は以下のようになる。最も低いレベルは両信号の振幅がローレベルの場合であり、次に低いレベルは信号(M)がハイレベルで信号(N)がローレベルの場合で信号(N)の振幅の50%である。次に低いレベルは信号(M)がローレベルで信号(N)がハイレベルの場合で信号2の振幅の100%である。最も高いレベルは両信号の振幅が共にハイレベルの場合で信号(N)の振幅の150%である。このように、重畳後の信号の有する各レベルは、信号(N)の振幅の50%を差分として均等となる。その結果、単数の信号によって複数の信号が有する情報を良好に伝達することのできる信号を得ることが可能となる。
【0013】
尚、前記複数の信号の総数が3以上の場合、前記複数の信号の中の2つの信号の一方の信号の振幅が他方の信号の振幅の40%以上60%以下であるという関係が、前記複数の信号の中で重複することなく、且つ全ての信号が何れかの信号に対して満足されるとよい。
さらには、前記複数の信号の中の2つの信号の一方の信号の振幅が他方の信号の振幅の50%に対し、+−(プラスマイナス)m以内であるという関係が、前記複数の信号の中で重複されることなく、且つ全ての信号が何れかの信号に対して満足されるとよい。尚、mの値は、前記複数の信号の中の最小振幅の1/3以下、さらには信号の総数nに対し、1/(2n−1)以下であることが望ましい。
【0014】
また、本発明に係る信号入力装置の特徴構成は、各信号が信号レベルによって2つの状態を表すと共に互いに異なる振幅を有する矩形波状の複数の信号を重畳した階段状の信号が表すそれぞれの信号レベルを、前記複数の信号の総数をnとして、2のn乗から1を減じた数のしきい値により判定する比較部と、この比較部の判定結果に基づいて前記複数の信号がそれぞれ表す2つの状態を再現するデコード部とを有する点にある。
【0015】
上述したように各信号が信号レベルによって2つの状態を表すと共に互いに異なる振幅を有する矩形波状の複数の信号を重畳した階段状の信号は、複数の信号の総数をnとして2のn乗の信号レベルを有する。従って、2のn乗種類のそれぞれの信号レベルに対して、2のn乗から1を減じた種類のしきい値を設定すれば、2のn乗種類の全ての信号レベルを特定することができる。この各信号レベルは、重畳前の複数の信号の各信号レベルの組合せの中で唯一のものを特定するものである。従って、信号レベルを特定できれば、重畳前の各信号の信号レベルを再現することができる。
【0016】
尚、前記複数の信号及び前記階段状の信号が電流出力信号である場合、電流出力信号が有する各信号レベルを判定するには、信号入力装置に電流検出回路を備える必要がある。この場合、信号入力装置に電流出力信号を電圧出力信号に変換する電流電圧変換部が備えられているとよい。電流出力信号を電圧出力信号に変換すると、比較部は、電圧値で設定された前記しきい値に基づいて判定することができる。つまり、汎用の比較器等を利用して簡単に比較部を構成することができる。また、A/Dコンバータ等を用いて重畳後の信号をデジタル変換し、マイクロコンピュータ等を用いて演算すことにより比較、判定することも可能となる。
【0017】
また、本発明に係る信号出力装置と信号入力装置とを有する信号入出力装置を備え、前記複数の信号に、車両の車輪の回転速度に応じた頻度で矩形波状の回転検出信号を出力する回転センサの出力信号と、前記車輪の空気圧の情報を表す矩形波状の信号とを含む車輪の状態監視装置を構成すると好適である。
【0018】
本発明に係る信号入出力装置は、複数の信号を良好に1つの信号に重畳する信号出力装置と、1つの信号に重畳された信号から元の複数の信号が有していた情報を再現する信号入力装置とを有して構成される。従って、上述したように信号出力装置と信号入力装置との間の配線を最小限に抑えて情報伝達が可能な信号入出力装置を構成することができる。また、上述したように、入出力装置間において情報量を損なわず、また何れか1つの信号の状態に依存されることもない。
【0019】
回転センサの回転検出信号は、回転体の回転に応じた頻度で出力される。従って、回転体が高速回転する場合には、回転検出信号の出力頻度が高くなる。従って、回転検出信号の出力頻度に同期して他の情報を有する信号を重ね合わせると、出力頻度が高い場合には他の信号を重ねる区間を確保できないことがある。一方、回転体が停止を含む低速回転する場合には、回転検出信号の出力頻度は低くなる。また、回転体が非常に低速な場合には、迅速に他の信号の情報を伝達できない。さらに、回転体が停止している場合には全く伝達することができない。
【0020】
車輪の空気圧は車輪が回転している状態では測定することができない。従って、回転体の回転検出信号に同期して、空気圧の測定情報を伝達する方法では、車輪の停止時に空気圧を測定し、車輪が回転を始めた後に測定した空気圧情報を重畳することになる。このため、迅速に空気圧の情報を伝達することができない。しかし、本発明の車輪の状態監視装置では、上述したように、回転検出信号の出力の有無には全く依存されずに、空気圧の測定情報を重ね合わせることができる。その結果、良好に情報伝達が可能な車輪の状態監視装置を構成することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。図1は、本発明の実施により、互いに振幅の異なる2つの矩形波状(パルス状)の信号を重畳する例を示す波形図である。図に示すように、第一パルス信号S1及び第二パルス信号S2は、各信号が論理信号として2つの状態を表すと共に互いに異なる振幅を有する矩形波状の信号である。重畳信号SS(SS2)は、第一パルス信号S1と第二パルス信号S2とを重畳して得られた信号である。
【0022】
第二パルス信号S2は、信号の1周期の区間Aや区間Bにおいて、ハイレベル(以下、Hレベル)H2と、ローレベル(以下、Lレベル)L2との2つの状態(信号レベル)を有している。区間Aのように前半がHレベル、後半がLレベルの場合にはデータ”0”を表し、区間Bのように前半がLレベル、後半がHレベルの場合にはデータ”1”を表すマンチェスターコードで、情報を表している。
【0023】
第一パルス信号S1は、区間Xにおいて、論理信号としてHレベルH1と、LレベルL1との2つの状態を有している。そして、このパルス状の信号の周期によって情報を表している。区間Yにおいては、パルス状の信号が存在しない場合を示している。例えば、区間Xは、ある事象を検出している区間であり、区間Yはある事象が発生しない区間であるということができる。
【0024】
重畳信号SSは、互いに異なる振幅である第一パルス信号S1と第二パルス信号S2とを重畳して得られた信号であり、4つの信号レベルHH、HL、LH、LLを有した階段状の信号である。この4つの信号レベルについて、図2を利用して詳述する。
【0025】
図2は、互いに振幅の異なる2つの矩形波状の信号を重畳する基本原理を説明する波形図である。図1と同様に、第一パルス信号S1は、HレベルH1とLレベルL1との2つの状態を有し、振幅P1の矩形波である。同様に第二パルス信号S2は、HレベルH2とLレベルL2とを有し、振幅P2の矩形波である。ここで、第一パルス信号と第二パルス信号との何れか一方の振幅は、何れか一方の振幅が、他方の振幅の40〜60%の間である関係を満足している。図2に示した原理図では、第二パルス信号S2の振幅が、第一パルス信号P1の振幅の50%である。
【0026】
第一パルス信号S1の振幅P1と第二パルス信号S2の振幅P2とが、上述したような関係であると、第一パルス信号S1と第二パルス信号P2とを重畳した重畳波形SS2(SS)は、図2に示すように4つの信号レベルを有する階段状の波形となる。4つの信号レベルは、第一レベルLL、第二レベルLH、第三レベルHL、第四レベルHHである。
第一レベルLLは、第一パルス信号S1のLレベルL1と第二パルス信号S2のLレベルL2との和である。第二レベルLHは、第一パルス信号S1のLレベルL1と第二パルス信号S2のHレベルH2との和である。第三レベルHLは、第一パルス信号S1のHレベルH1と第二パルス信号S2のLレベルL2との和である。第四レベルHHは、第一パルス信号S1のHレベルH1と第二パルス信号S2のHレベルH2との和である。
【0027】
上述したように、第二パルス信号S2の振幅P2は、第一パルス信号S1の振幅P1の50%である。第二レベルLHと、第三レベルHLとの差である重畳信号SS2の第二振幅SR2は、第二パルス信号S2の振幅P2とほぼ等しくなる。また、第三レベルHLと、第四レベルHHとの差である重畳信号SS2の第三振幅SR3も、第二パルス信号S2の振幅P2とほぼ等しくなる。第一レベルLLと、第二レベルLHとの差である重畳信号SS2の第一振幅SR1は、第二パルス信号S2の振幅P2そのものである。このように、重畳信号SS2の最大振幅PS2は、第二パルス信号S2の振幅P2でほぼ三等分される。重畳信号SS2の信号レベルが、第一レベルから第四レベルの何れであるかを判定するには、第一振幅SR1、第二振幅SR2、第三振幅SR3のそれぞれの範囲内において、それぞれしきい値を設定すればよい。つまり、図2に示すように、第一振幅SR1のほぼ中央値に第一しきい値TH1、第二振幅SR2のほぼ中央値に第二しきい値TH2、第三振幅SR3のほぼ中央値に第三しきい値TH3を設定すればよい。上述したように、第一から第三振幅SR1〜SR3の振幅は、均等であるから、良好にしきい値を設定することができる。このように、振幅の異なる2つの矩形波状の信号を重畳する場合、一方の振幅が他方の振幅の50%となるように(40%〜60%の範囲となるように)すれば、重畳信号の有する信号レベルを円滑に判定できる重畳信号を得ることができる。
【0028】
上述したように3つのしきい値TH1〜TH3により、重畳信号SS2の4つの信号レベルが以下のように判定される。
SS2の信号レベルがTH1未満の場合 :第一レベルLL
SS2の信号レベルがTH1以上TH2未満の場合:第二レベルLH
SS2の信号レベルがTH2以上TH3未満の場合:第三レベルHL
SS2の信号レベルがTH3以上の場合 :第四レベルHH
そして、第一パルス信号S1が有していた情報の論理値は、重畳信号SS2の信号レベルに対応して、以下のように判定される。
第一レベルLL、第二レベルLHの場合:0(L1)
第三レベルHL、第四レベルHHの場合:1(H1)
また、第二パルス信号S2が有していた情報の論理値は、以下となる。
第一レベルLL、第三レベルHLの場合:0(L2)
第二レベルLH、第四レベルHHの場合:1(H2)
このように、重畳信号SS2から、良好に元の矩形波状の信号が有した情報を取り出すことが可能である。
【0029】
出力信号のレベルが大きいときや、出力信号のレベルが小さくても信号解析を高精度に行い得る場合には、一方の信号の振幅が他方の信号の振幅の40〜60%の範囲内であるという関係に限られず、本発明を適用可能である。図3に示す波形の例では、一方の信号の振幅が他方の信号の振幅の75%である。この場合、図3に示すように、第一振幅SR10と、第三振幅SR30とは、大きな振幅となるが、第二振幅SR20は、第一振幅SR10や第三振幅SR30と比べて非常に小さい振幅となる。その結果、第一振幅SR10と第三振幅SR30とは、その範囲内にしきい値TH10としきい値TH30とを設定することが容易であるが、第二振幅SR20はしきい値TH20の設定が容易ではない。従って、図2に示した波形例と比較して、図3に示した波形例では、重畳信号SS20から、元の矩形波状の信号が有した情報を取り出すことが、一般的には容易ではない。しかし、この場合であっても出力信号のレベルが大きければ、相対的に第二振幅SR20の振幅が狭いものであっても、絶対値としての振幅は、しきい値TH20を充分に設定可能である場合がある。また、第二振幅SR20の絶対値が狭い場合であっても、信号解析を高精度に行い得る場合には、しきい値TH20を充分に設定可能である場合がある。
【0030】
以上、各信号が信号レベルによって2つの状態を表すと共に互いに異なる振幅を有する矩形波状の2つの信号を重畳し、信号レベルによって4つの状態を表す階段状の信号を生成する原理について説明した。これは、2つの信号を重畳する場合に留まらず、任意の複数の信号を重畳する場合にも適用可能である。つまり、各信号が信号レベルによって2つの状態を表すと共に互いに異なる振幅を有する矩形波状の複数の信号を重畳し、2のn乗の状態を表す階段状の信号を生成することができる。ここで、nは、互いに異なる振幅を有する複数の矩形波状の信号の総数である。また、複数の信号の中の何れか1つの信号の振幅は、他の2つ以上の信号の振幅の和と異なる関係であれば、好ましい重畳信号が得られる。この基本原理を、各信号が信号レベルによって2つの状態を表すと共に互いに異なる振幅を有する3つの矩形波状の信号を重畳する場合の例である図4に基づいて説明する。
【0031】
第一パルス信号S1と第二パルス信号S2については、図1及び図2と同様である。図4に示す基本原理では、これに第三パルス信号S3を加えて、3つの信号を重畳して重畳信号SS3を得る。第三パルス信号S3は、第一パルス信号S1の振幅P1の2倍の振幅P3を有する矩形波状の信号である。従って、第一パルス信号S1の振幅P1は、第三パルス信号S3の振幅P3の50%である。第二パルス信号S2の振幅P2は、第一パルス信号S1の振幅P1の50%であるから、3つの矩形波状の信号は、互いに異なる振幅を有している。また、3つの矩形波状の信号の任意の2つの信号の振幅の和は、他の1つの振幅と異なる。例えば、振幅P1と振幅P2との和と振幅P3とは等しくない。他の組合せについても同様に任意の2つの信号の振幅の和と他の1つの振幅とは異なっている。また、複数の信号の中の2つの信号の一方の信号の振幅が他方の信号の振幅の40%以上60%以下であるという関係が、複数の信号の中で重複することなく、且つ全ての信号が何れかの信号との間で満足されているともいえる。
【0032】
3つの信号が、このような関係であると、図3に示すように、2の3乗の信号レベルを有する階段状の重畳信号SS3が得られる。重畳信号SS3は、図3に示すように第二パルス信号S2の振幅P2の幅で重畳信号SS3の最大振幅PS3を7(=23−1)等分し、第一振幅SR1〜第七振幅SR7を有する。そして、それぞれ第一振幅SR1〜第七振幅SR7の範囲内に、第一しきい値TH1〜第七しきい値TH7を設定することにより、重畳される前の3つの信号が有する信号レベルを再現することが可能である。
【0033】
上述したように7つ(=23−1)のしきい値TH1〜TH7により、重畳信号SS3の8つの信号レベルが以下のように判定される。
SS3の信号レベルがTH1未満の場合 :第一レベルLLL
SS3の信号レベルがTH1以上TH2未満の場合:第二レベルLLH
SS3の信号レベルがTH2以上TH3未満の場合:第三レベルLHL
SS3の信号レベルがTH3以上TH4未満の場合:第四レベルLHH
SS3の信号レベルがTH4以上TH5未満の場合:第五レベルHLL
SS3の信号レベルがTH5以上TH6未満の場合:第六レベルHLH
SS3の信号レベルがTH6以上TH7未満の場合:第七レベルHHL
SS3の信号レベルがTH7以上の場合 :第八レベルHHH
そして、第一パルス信号S1が有していた情報の論理値は、重畳信号SS3の信号レベルに対応して以下のように判定される。
第一、第二、第五、第六レベルLLL、LLH、HLL、HLH:0(L1)
第三、第四、第七、第八レベルLHL、LHH、HHL、HHH:1(H1)
また、第二パルス信号S2が有していた情報の論理値は、以下となる。
第一、第三、第五、第七レベルLLL、LHL、HLL、HHL:0(L2)
第二、第四、第六、第八レベルLLH、LHH、HLH、HHH:1(H2)
また、第三パルス信号S3が有していた情報の論理値は、以下となる。
第一、第二、第三、第四レベルLLL、LLH、LHL、LHH:0(L3)
第二、第四、第六、第八レベルHLL、HLH、HHL、HHH:1(H3)
このように、重畳信号SS3から、良好に重畳される前の矩形波状の信号がそれぞれ有していた情報を取り出すことが可能である。
【0034】
〔信号出力装置〕
図5は、本発明に係る信号出力装置10の構成原理を示す概略ブロック図である。この原理図では、3つの信号を重畳する場合について示している。即ち、第一パルス信号S1と、第二パルス信号S2と、第三パルス信号S3とは、対等に信号重畳手段18において重畳される。そして、信号重畳手段18から、重畳信号SSとして出力される。これら複数のパルス信号が、電圧出力信号である場合には、信号重畳手段18を演算増幅器等を用いた加算回路により構成することで、複数の信号を互いに重畳することができる。
【0035】
複数の信号が電流出力信号である場合には、上記のような加算回路を用いずに互いの信号を重畳することができる。図6に示すように、各信号線を接続点Qで接続することにより、各信号が有する電流を加算することができる。キルヒホッフの法則によれば、一点(接続点Q)に流れ込む電流の総和と、一点(接続点Q)から流れ出す電流の総和とは、等しくなる。従って、第一、第二、第三パルス信号S1、S2、S3から接続点Qに流れ込む電流の総和は、接続点Qから重畳信号SSに流れ出す電流と等しくなる。その結果、それぞれが電流出力信号である複数の信号は、各信号を接続点Qで接続することにより、互いに重畳される。尚、電流出力信号は高インピーダンス出力であるので、外来ノイズの影響を受け易い。そこで、図7に示すように重畳信号SSを電流電圧変換部19で電圧変換した後に出力してもよい。電圧出力信号に変換された重畳信号SS_Vは、低インピーダンス出力となり、出力後に伝送線路上で受ける外来ノイズに対する耐性を強くすることができる。図7に示した電流電圧変換部19による電圧変換では、変換後の重畳信号SS_Vの電圧値は、重畳信号SSの電流値をIとして、Vref−R×Iとなる。また、図8に示すように、重畳信号SSを入力されて、元の矩形波上の信号が有していた情報を再現する信号入力装置20に電流電圧変換部29を備えてもよい。
【0036】
〔信号入力装置〕
以下、上記のようにして重畳された重畳信号SS(SS2、SS3、SS_V)から、元の矩形波状の信号が有していた情報を再現する方法について説明する。図9は、本発明の実施により、互いに振幅の異なる2つの矩形波状の信号が重畳された信号(図1参照)から元の矩形波状が有していた情報を再現する例を示す波形図である。また、図10及び11は、重畳信号SS2(SS、SS_V)から第一パルス信号S1及び第二パルス信号S2が有していた情報を再現する信号入力装置の構成例である。図10及び図11に示した構成例では、説明を容易にするために、重畳信号SSが、電流電圧変換部19あるいは29を経た電圧出力信号の場合を示している。重畳信号SSが電流出力信号である場合でも技術思想は同様である。
【0037】
図10及び図11に示す比較部21は、重畳信号SSの信号レベルを判定するために、しきい値TH1、TH2、TH3を基準電圧とする比較器21a、21b、21cを備えている。図9に示す例では、重畳信号SSは、2つの信号が重畳されているので、22種類(=4種類)の信号レベルLL、LH、HL、HHを有している。従って、22−1種類(=3種類)のしきい値TH1、TH2、TH3により、各信号レベルが判定される。図9〜11に示す判定出力c3は、比較器21cの出力であり、重畳信号SSの信号レベルが、第三しきい値TH3以上の時にHレベルを出力する。判定出力c2は、比較器21bの出力であり、重畳信号SSが、第二しきい値TH2以上の時にHレベルを出力する。判定出力c1は、比較器21aの出力であり、重畳信号SSが、第一しきい値TH1以上の時にHレベルを出力する。
【0038】
重畳される前の矩形波状の信号は、信号レベルによって2つの状態を表している。つまり、信号レベルがHレベルの時を”1”、Lレベルの時を”0”として論理値により情報を表している。図9から明らかなように、判定出力c2の示す論理値は、第一パルス信号S1と同一である。第一パルス信号S1と、判定出力c2とは、一方が電流出力で他方が電圧出力であったり、双方が電圧出力信号であってもその信号レベルが異なったりするなど、異なった信号となることが多い。しかし、第一パルス信号S1と判定出力c2とが表す情報、即ち両信号が表す論理値は、一致している。従って、判定出力c2は、第一パルス信号S1の表す情報を再現したデコード信号d1となる。
【0039】
一方、第二パルス信号S2の表す情報を再現するデコード信号d2の論理値は、デコード信号d1のように比較器21a〜21cの判定出力の何れか1つの論理値と、単純に一致するものではない。比較器21cの判定出力c3は、第一パルス信号S1がHレベルであって、第二パルス信号S2がHレベルである場合を示している。また、比較器21aの判定出力c1は、第一パルス信号S1がHレベルであるか、あるいは第一パルス信号S1の信号レベルに拘らず第二パルス信号S2がHレベルである場合を示している。第一パルス信号S1の信号レベルと第二パルス信号S2の信号レベルとは独立してその状態が変化する。従って、判定出力c3のみでは第二パルス信号S2がHレベルである状態を全て取り出せてはいない。また、判定出力c1には、第二パルス信号S2がHレベルであることと、第一パルス信号S1がHレベルであることとの2つの状態が混合されている。そこで、図10及び図11に示すデコード部22において、判定出力c1〜c3より、重畳される前に第二パルス信号S2が有していた信号レベルの状態を再現している。
【0040】
図10に示す信号入力装置20の構成例では、デコード部22にマルチプレクサ22aを備えている。そして、判定出力c2の論理値に応じて判定出力c3あるいは判定出力c1の何れかを選択し、デコード信号d2として出力している。つまり、判定出力c2がHレベルの場合には判定出力c3を、判定出力c2がLレベルの場合には判定出力c1をデコード信号d2とする。このようにすることで、重畳前の第二パルス信号S2が有していた信号レベルの状態だけを再現している。
【0041】
また、デコード部22のマルチプレクサ22aに替えて、図11に示すように論理回路を用いてもよい。図11に示す論理回路を用いると、判定出力c2とc1とによって、デコード信号d0が得られる。具体的には、判定出力c2の反転論理と、判定出力c1との論理積を取ることにより、第一パルス信号S1がLレベルであって、第二パルス信号S2がHレベルである場合を示すデコード信号d0が得られる。判定出力c3は、上述したように第一パルス信号S1がHレベルであって、第二パルス信号S2がHレベルである場合を示すものである。従って、デコード信号d0と判定出力c3との論理和を取ると(デコード信号d2)、第一パルス信号S1の信号レベルの影響を排除して、第二パルス信号S2が有する情報(論理値)を再現することができる。
【0042】
図9に示すように、第二パルス信号S2とデコード信号d2とは、電流出力と電圧出力との違いがあったり、双方が電圧出力信号であってもその信号レベルが異なったりする場合がある。しかし、第二パルス信号S2とデコード信号d2とが表す情報、即ち両信号が表す論理値は、良好に一致している。図9に示すように、両信号の波形が示す論理値は同一であり、この波形によってマンチェスターコード化されたデータの論理値も同一である。従って、デコード信号d2は、第二パルス信号S2の表す情報を良好に再現しているということができる。
【0043】
また、信号入力装置20を図12のように構成してもよい。図12は、電流電圧変換部19(29)を経た後の重畳信号SSを、マイクロコンピュータ等のプロセッサを用いて解析(判定及び情報の復元)する場合の例である。この構成例では、重畳信号SSは、A/Dコンバータ23にて、多ビットのデジタル値に変換される。重畳信号SSが有する各信号レベルを判定するためのしきい値は、レジスタ24にデジタル値として記憶されている。比較部21は、レジスタ24に記憶されたしきい値と、デジタル変換された重畳信号SSのデジタル値とを比較する。デコード部22は、比較部21の比較結果に基づいて、重畳前の信号が有していた情報を再現する。尚、図12に示した各部は、機能としての分割を示したものであり、物理的に各部が独立している必要はない。同一のハードウェア上において、それぞれの機能を有するソフトウェアによって実現されてもよい。また、比較部21とデコード部22とが、1つのマイクロコンピュータによって構成されてもよい。そして、この場合統合されたソフトウェアによって比較判定及び情報の復元を一括して実行してもよい。
【0044】
尚、上述した信号出力装置10と、信号入力装置20とを備えると、各信号が2つの状態を表す複数の信号を、各信号の何れの信号の状態にも依存されることなく重ね合わせ、少ない信号数で複数の信号が有する情報を復元可能な状態で伝達することのできる信号入出力装置を得ることができる。以下、このような信号入出力装置を回転体の回転を検出する回転検出装置や車輪の状態監視装置に適用する適用例について説明する。
【0045】
〔適用例〕
図13は、回転体40の回転を回転センサ50によって検出する例を示す概略ブロック図である。車輪40には、異極が隣合うように周回して磁性体が備えられている。回転センサ50は、ホールICなどの磁気センサ51が備えられており、車輪40に備えられた磁極を検出して検出信号を出力する。磁気センサ51は、一対のセンサ素子51aと51bとからなる。センサ素子51aと51bとは、互いに、車輪40に備えられた磁性体のピッチの整数倍の距離に1/2あるいは1/4の距離を加減算した距離をおいて配置される。これは後述するように、信号処理部52において回転方向を検出するためである。回転方向を検出しない用途では、単一のセンサ素子により、磁気センサ51を構成してもよい。回転センサ50の検出結果は、回転センサ50と共に、又は別途備えられた情報処理部(不図示)に入力され、回転速度や回転方向などが数値化される。そして、情報処理部や、他の制御装置(不図示)によって、種々の制御に用いられる。回転センサ50と情報処理部とによって、回転検出装置が構成される。
【0046】
図14には、回転体40の回転を回転センサ50にて検出した検出信号の波形の例を示している。信号MSAは、センサ素子51aによる回転検出結果である。矩形波状の信号の周期により、回転速度を表している。信号MSBは、センサ素子51bによる回転検出結果である。信号MSAと同様に、矩形波状の信号の周期により、回転速度を表している。上述したように、センサ素子51aと、51bとは、回転体40に備えられた磁性体の取り付けピッチの整数倍と少しずれたピッチで設置されている。そのため、信号MSAと信号MSBとの位相は、図14に示すようにずれを有している。このずれは、何れか一方の信号(MSA、MSB)を基準とした場合、回転体40の回転方向によって180度異なる方向に現れる。例えば、回転体40が前進方向に回転している場合、信号MSAを基準としてセンサ素子51bが信号MSB_Fを出力するとする。回転体40が後退方向に回転している場合には、信号MSAを基準としてセンサ素子51bは信号MSB_Bを出力する。信号MSB_Fと信号MSB_Bとは、このように180度位相の異なる信号となる。ここで、信号処理部52において、信号MSAと信号MSBとの論理積を採ると、回転体40が前進回転する場合には、回転方向信号Dが、信号D_Fとして出力される。回転体40が後退運転する場合には、回転方向信号Dが、信号D_Bとして出力される。
【0047】
ここで、信号MSA(又はMSB)を回転速度信号、信号Dを回転方向信号と称することとする。信号処理部52において、回転速度信号MSAと、回転方向信号Dとは互いの振幅を異ならせて、好適には一方の振幅が他方の振幅の50%となるように信号処理されて出力される。例えば、図14に示す波形例では、回転方向信号Dが、回転速度信号MSAの振幅の50%としている。そして、図16に示すように、回転速度信号MSAと、回転方向信号Dとを信号重畳手段18で重畳する。尚、信号重畳手段18を含む信号出力装置10を信号処理部50に備えていてもよい。また、重畳信号SSは、車体側に備えられた不図示のECU(Electronic Control Unit)に入力される。ECUは、本発明の信号入力装置20に相当する。つまり、図1〜図12を用いて説明したような本発明に係る信号入力装置10、信号出力装置20、信号入出力装置を備えて、回転検出装置を構成することができる。回転速度信号MSA及び回転方向信号Dは、図1〜図12を用いて説明した第一〜第三パルス信号S1〜S3に相当するものである。
【0048】
また、回転センサ50の検出結果と、回転センサ50とは異なるセンサの検出結果とを重畳してもよい。図5は、回転体40としての車輪40Aの断面図である。車輪40は、タイヤホイール42にタイヤ41を支持し、車軸43を回転中心として回転する。回転センサ50は、車輪40Aの回転(回転方向、回転速度)を検出する。尚、回転センサ50は、上述したように磁気センサを用いた方式のものでもよいし、オプティカルエンコーダを用いた光学式のものでもよい。空気圧センサ60は、タイヤ41に空気を注入するバルブ部に備えられており、タイヤ41の空気圧やタイヤ内の温度を測定する。測定された空気圧は、例えば無線送信により車体側の受信部(不図示)に伝達される。空気圧センサによる測定結果は、複数ビットのデジタル信号がマンチェスターコード等にコード化されて伝達される。そして、図17に示すように、回転速度信号MSAと、空気圧情報信号とを信号重畳手段18で重畳する。
【0049】
尚、回転センサ50の内部に、空気圧センサ60からの無線信号を受信し、ミキシングし、復調する受信部を備えていてもよい。そして、この場合は、さらに信号重畳手段18を含む信号入力装置10を信号処理部50に備えていてもよい。また、この場合、図18に示すように、回転速度信号MSAと、回転方向信号Dと、空気圧情報信号とを信号重畳手段18で重畳してもよい。さらにタイヤ温度情報信号を重畳してもよい。
【0050】
空気圧センサ60や、回転センサ50により取得された情報は、重畳信号SSによって、車体側に備えられた不図示のECUに入力される。ECUでは、重畳信号SSから重畳前の信号が有していた情報が復元される。そして、ECUやこのECUと接続される他の制御装置は、空気圧情報や回転速度、回転方向などの情報に基づいて、車両の種々の制御を実施する。空気圧センサ60と、回転センサ50と、ECUとは、本発明の車輪の状態監視装置を構成する。つまり、図1〜図12を用いて説明したような本発明に係る信号入力装置10、信号出力装置20、信号入出力装置を備えて、車輪の状態監視装置を構成することができる。回転速度信号MSA、回転方向信号D、空気圧情報信号及びタイヤ温度情報信号は、図1〜図12を用いて説明した第一〜第三パルス信号S1〜S3に相当するものである。
【0051】
以上説明したように、各信号が2つの状態を表す複数の信号を、各信号の何れの信号の状態にも依存されることなく重ね合わせ、少ない信号線で複数の信号が有する情報を復元可能な状態で伝達することのできる技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明の実施により、互いに振幅の異なる2つの矩形波状の信号を重畳する例を示す波形図
【図2】互いに振幅の異なる2つの矩形波状の信号を重畳する本発明の基本原理を説明する波形図
【図3】互いに振幅の異なる2つの矩形波状の信号を重畳する場合の一例を説明する波形図
【図4】互いに振幅の異なる3つの矩形波状の信号を重畳する本発明の基本原理を説明する波形図
【図5】本発明に係る信号出力装置の構成原理を示す概略ブロック図
【図6】本発明に係る信号出力装置の構成例を示す概略ブロック図
【図7】本発明に係る信号出力装置の他の構成例を示す概略ブロック図
【図8】本発明に係る信号入力装置の電流電圧変換部の一例を示す概略回路図
【図9】本発明の実施により、互いに振幅の異なる2つの矩形波状の信号が重畳された信号から元の矩形波状が有していた情報を再現する例を示す波形図
【図10】本発明に係る信号入力装置の構成例を示す概略ブロック図
【図11】図10のデコード部の他の構成例を示す概略ブロック図
【図12】本発明に係る信号入力装置の他の構成例を示す概略ブロック図
【図13】本発明に係る回転検出装置が備える回転センサの一例を示す概略ブロック図
【図14】図11に示す回転センサの出力信号の一例を示す波形図
【図15】図13に示す回転体の一例としての車輪の断面図
【図16】本発明に係る回転検出装置が備える信号出力部の構成例を示す概略ブロック図
【図17】本発明に係る車輪の状態監視装置が備える信号出力部の構成例を示す概略ブロック図
【図18】本発明に係る車輪の状態監視装置が備える信号出力部の他の構成例を示すブロック図
【符号の説明】
【0053】
10 信号出力装置
20 信号入力装置
21 比較部
22 デコード部
S1 第一パルス信号
S2 第二パルス信号
SS 重畳信号
TH1 第一しきい値
TH2 第二しきい値
TH3 第三しきい値

【特許請求の範囲】
【請求項1】
各信号が論理信号として2つの状態を表すと共に互いに異なる振幅を有する矩形波状の複数の信号を重畳し、前記複数の信号の総数をnとして、前記重畳された信号の信号レベルによって2のn乗の状態を表す階段状の信号を生成する信号出力装置。
【請求項2】
前記複数の信号の総数が2であり、これら2つの信号のうち一方の信号の振幅が他方の信号の振幅の40%以上60%以下である請求項1に記載の信号出力装置。
【請求項3】
各信号が信号レベルによって2つの状態を表すと共に互いに異なる振幅を有する矩形波状の複数の信号を重畳した階段状の信号が表すそれぞれの信号レベルを、前記複数の信号の総数をnとして、2のn乗から1を減じた数のしきい値により判定する比較部と、この比較部の判定結果に基づいて前記複数の信号がそれぞれ表す2つの状態を再現するデコード部とを有する信号入力装置。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の信号出力装置と、請求項3に記載の信号入力装置とを有する信号入出力装置を備え、前記複数の信号は、車両の車輪の回転速度に応じた頻度で矩形波状の回転検出信号を出力する回転センサの出力信号と、前記車輪の空気圧の情報を表す矩形波状の信号とを含む車輪の状態監視装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2007−13453(P2007−13453A)
【公開日】平成19年1月18日(2007.1.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−190308(P2005−190308)
【出願日】平成17年6月29日(2005.6.29)
【出願人】(000000011)アイシン精機株式会社 (5,421)
【Fターム(参考)】