説明

信号機情報表示システム及び車速制御システム

【課題】 車両がジレンマ領域に入るのを容易に回避することができ、車両の安全な走行を実現できる信号機情報表示システム、及び車速制御システムを提供する。
【解決手段】
本発明の信号機情報表示システムは、自動車の外部より前方の信号機の点灯情報を取得する受信部2と、自動車に対する信号機の位置情報を取得する位置情報取得部322と、自動車Aの車速を把握する車速入力部31と、自動車Aが車速入力部31により把握された車速で進んだ時に、前記信号機の点灯色が黄色及び赤色となる道路上の領域である黄色領域及び赤色領域の位置情報を算出するための演算部33と、を備えている。運転者は、黄色領域及び赤色領域の位置情報を、ヘッドアップディスプレイ5によって認識することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車等の車両を安全に走行させるための信号機情報を車両の運転者に提供する信号機情報表示システム、及び車両を安全にさせるための車速制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等の車両が信号機のある交差点に向かって走行している時、当該車両がいわゆる「ジレンマ領域」に入る可能性がある。このジレンマ領域とは、車両が交差点に進入する手前において、信号が青から黄に変わることによって、通常の減速度で安全に停止線で停止することができず、かつ、赤信号になる前に交差点に進入することもできなくなる時間的・空間的領域をいう。車両がこのようなジレンマ領域に入ると、運転者は停止するか、そのまま通過するか瞬時に判断しなければならず、誤った判断をする可能性が高くなる。このため、車両がジレンマ領域に入ることは、安全上好ましくない。
ここで、運転者が前方の信号機の点灯色が赤になるタイミングを把握していれば、それに応じて、交差点に進入する手前から余裕をもって車速を調整することができ、ジレンマ領域に入るのを事前に回避することができる。
そこで、複数個のランプが取り付けられ、これらランプの点灯状態で信号機の点灯時間(信号機の点灯色が切り替わるタイミング)を運転者に認識させる信号機が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開平11−353585号公報(図1、図2)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来例では、前方の信号機の点灯色が切り替わるタイミングに合わせて、ジレンマ領域に入らないように運転者が車速を調整する。しかし、運転者自らが車速を調整するので、運転操作に熟練していない運転者の場合、結局ジレンマ領域に入ってしまうことがあった。
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、運転者が容易にジレンマ領域を回避でき、安全な走行を実現できる信号機情報表示システム、及び車速制御システムの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、車両に搭載される信号機情報表示システムであって、前記車両の外部より前方の信号機の点灯情報を取得する点灯情報取得手段と、前記車両に対する前記信号機の位置情報を取得する位置情報取得手段と、前記車両の車速を把握する車速把握手段と、前記車両が前記車速把握手段により把握された車速で進んだ時に、前記信号機の点灯色が所定の色となる道路上の領域である所定色領域の位置情報を、少なくとも二種類の所定色について、前記点灯情報及び前記信号機位置情報に基づいて算出する算出手段と、前記所定色領域の位置情報を、運転者に認識させるための表示手段と、を備えたことを特徴としている。
【0006】
上記のように構成された信号機情報表示システムによれば、車両が前方の信号機に到達するまでの間、少なくとも二種類の点灯色について、道路上の所定色領域を運転者に認識させることができるので、運転者は、車両を信号機で停止させるか通過するかの判断を余裕をもって行うことができるとともに、信号機の手前から余裕をもって車両の速度を調整することができ、車両がジレンマ領域を回避することを容易にできる。
【0007】
また、前記位置情報取得手段は、車両の位置を検出する位置検出手段と、前記信号機の位置情報を含んだ地図情報を記憶した地図情報記憶手段と、を備えたものとすることが好ましく、この場合、前記車両と信号機との位置情報をより正確に得ることができる。
【0008】
また、前記表示手段は、フロントガラスを通して視認される道路形状を画像情報として取得し、この取得された道路形状の画像情報を運転者から視認される三次元的な道路形状の画像情報に補正する画像取得手段と、前記所定色領域の位置情報を、運転者から視認した場合の三次元的な位置情報に変換し、この変換された三次元的な位置情報と、前記画像取得手段によって取得された三次元的な道路形状の画像情報と、に基づいて、運転者からフロントガラスを通して視認される実際の道路形状に一致させて認識できるように前記フロントガラスに重畳表示する重畳表示手段と、を備えたものとすることができる。
【0009】
上記の場合、運転者は、前方から目線をはずすことなく、安全に、所定色領域を認識できるとともに、運転者から実際に視認される道路形状に一致させて所定色領域をフロントガラスに重畳表示するので、運転者にとって、所定色領域が認識し易く、ジレンマ領域の回避をより容易にすることができる。
【0010】
また、上記信号機情報表示システムにおいて、前記前方の信号機を第一の信号機とし、この第一の信号機のさらに前方に配置される信号機を第二の信号機としたとき、前記車両が第一の信号機を通過したかどうかを判断し、通過したと判断した場合には、前記表示手段によって運転者に認識させる所定色領域の位置情報を、前記第一の信号機の所定色領域の位置情報から、前記第二の信号機の所定色領域の位置情報に切り替えるとともに、前記第二の信号機の所定色領域の位置情報に切り替えたことを運転者に認識させる切換表示手段をさらに備えていてもよい。
この場合、第一の信号機の所定色領域の位置情報と、第二の信号機の所定色領域の位置情報とが交錯した場合にも、運転者には、直近の信号機である第一の信号機を通過するまでは、第一の信号機の情報が表示され、第二の信号機の情報が表示されない。さらに、第一の信号機を通過し第二の信号機の情報に切り替わった際に、表示情報が切り替わったことを運転者に認識させるので、運転者Uが、表示される信号機情報について混同するのを防止することができる。
【0011】
また、本発明は、車両に搭載され、その車速を制御する車速制御システムであって、車両の外部より前方の信号機の点灯情報を取得する点灯情報取得手段と、前記車両に対する前記信号機の位置情報を取得する位置情報取得手段と、前記車両の車速を把握する車速把握手段と、前記車両が前記車速把握手段により把握された車速で進んだ時に、前記信号機の点灯色が黄色、及び赤色となる道路上の領域である黄色領域、及び赤色領域の位置情報を、前記点灯情報及び前記位置情報に基づいて算出する算出手段と、前記信号機の位置が前記黄色領域内もしくは前記赤色領域内に位置しているかどうかを判断し、前記信号機の位置が前記黄色領域内もしくは前記赤色領域内にあると判断した場合、前記黄色領域と前記赤色領域との境界が、前記信号機の位置と一致するように車両を減速させる減速度を算出する減速度算出手段と、前記車両の車速を前記減速度に基づいて制御する車速制御手段と、を備えたことを特徴としている。
【0012】
上記のように構成された車速制御システムによれば、前記信号機の位置が前記黄色領域内もしくは前記赤色領域内にあると判断した場合、点灯色が青色の状態で車両が信号機を通過できないと判断する。そして、この場合、減速度決定手段、及び車速制御手段によって、点灯色が黄色から赤色に切り替わるタイミングで、車両が信号機の位置で停止できる減速度をもって車両を減速させることができる。従って、運転者の運転操作の熟練度に関わらず、車両がジレンマ領域に入るのを確実に回避できる。
【発明の効果】
【0013】
以上のように、本発明に係る信号機情報表示システム、及び車速制御システムによれば、車両がジレンマ領域に入るのを容易に回避することができるので、車両の安全な走行を実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
次に、本発明の好ましい実施形態について添付図面を参照しながら説明する。図1は本発明の第一の実施形態である信号機情報表示システムを車両としての自動車Aに搭載した時の構成を示した模式図である。この信号機情報表示システムは、前方に位置する信号機Kの点灯情報を取得する点灯情報取得手段としての受信部2が接続された信号機情報処理部3と、自動車AのフロントガラスGを通して見たときの前方の道路形状を画像情報として取得するカメラ4、及びヘッドアップディスプレイ5が接続された表示処理部6とを備えている。
【0015】
受信部2は、信号機Kに備えられた信号機情報発信装置7から電波として発信される、信号機Kの現在の点灯色や、何秒後に現在の点灯色が他の色に切り替わるか等の点灯情報を受信する。なお、信号機情報発信装置7は、自動車Aが所定の速度で走行し信号機Kに近づいてきた時、自動車Aが信号機Kの手前に位置する停止線で安全に停止が可能である距離の範囲で電波を発信する。すなわち、受信部2が点灯情報を受信可能となる初期段階においては、自動車Aは、信号機Kに対して、安全に停止することができる程度の距離が確保される。上記の信号機情報発信器装置7、及び受信部2には、例えば、DSRC(狭域無線通信)等を用いることができる。
ヘッドアップディスプレイ5は、自動車AのダッシュボードA1上に配置され、フロントガラスGの内側面に所定の情報を重畳表示するものである。信号機情報処理部3は、自動車Aに備えられた車速センサSと接続されている。また、表示処理部6は、信号機情報処理部3と接続され、信号機情報処理部3から出力される信号に基づいて表示処理を行う。
【0016】
図2は、信号機情報表示システムの構成を示すブロック図である。図中、信号機情報処理部3は、車速センサSに接続されて自動車Aの車速を把握するための車速把握手段としての車速入力部31と、自動車Aと前方に位置する信号機Kとの位置情報を取得するための位置情報取得手段としての位置情報取得部32と、を備えている。また、信号機情報処理部3は、自動車Aが車速入力部31により把握される現在の車速で進んだ時に、信号機Kの点灯色が黄色及び赤色となる道路上の領域の位置情報を算出するための算出手段としての演算部33を備えている。この演算部33には、受信部2、車速入力部31、及び位置情報取得部32が接続されており、これらは信号機Kの点灯色が黄色及び赤色となる道路上の領域である黄色領域、及び赤色領域の位置情報を算出するのに必要な、信号機Kの点灯情報、自動車Aの車速、及び自動車Aと信号機Kとの距離を演算部33に出力する。
【0017】
位置情報取得部32は、自動車の位置を検出するための位置検出手段としてのGPS(グローバルポジショニングシステム)321と、信号機K(信号機Kの停止線)の位置情報を含んだ地図情報を記憶した地図情報記憶手段としての地図情報記憶装置322と、を備えている。位置情報取得部32は、これらによって、自動車Aの位置と信号機K(信号機Kの停止線)との位置情報をより正確に得ることができる。
【0018】
ここで、上記の黄色領域及び赤色領域について説明する。図3は、道路D上の信号機Kと、自動車Aとの位置関係を示した模式図である。
図において、自動車Aが点Oを速度Vで信号機Kに向かって走行している状態を示している。信号機Kは、自動車Aが速度Vを維持したまま直進したとすると、自動車Aが点O1に達した時に黄色に切り替わり、点O2に達した時に赤色に切り替わり、点O3に達した時に再び青色に切り替わるような点灯色表示のタイミングであるとする。
このとき、点Oと点O1との間の領域が、信号機Kの点灯色が青色の状態で自動車Aが通過する青色領域R1である。また、同様に点O1と点O2との間の領域が、黄色の状態で自動車Aが通過する黄色領域R2、点O2と点O3との間の領域が、赤色の状態で自動赤色領域R3である。この場合、演算部3が算出する黄色領域R2、及び赤色領域R3の位置情報とは、上記各点O、点O1〜点O3のそれぞれの距離間隔である。
【0019】
図2に戻って、演算部33により算出された、黄色領域R2、及び赤色領域R3の位置情報は、表示処理部6に対して出力される。表示処理部6は、カメラ4が接続された画像補正部61と、演算部33が接続された表示制御部62と、を備えている。
カメラ4は、フロントガラスG(図1)を通して視認される三次元的な道路形状を画像情報として画像補正部61に出力する。画像補正部61は、カメラ4から出力される画像情報の道路形状を、運転者Uから視認される三次元的な道路形状の画像情報に補正変換し、表示制御部62に出力する。すなわち、カメラ4、及び画像補正部61は、運転者Uから視認される三次元的な道路形状の画像情報を取得する画像取得手段を構成している。
【0020】
表示制御部62は、上記で得られた各情報に基づいて、黄色領域R2及び赤色領域R3の位置情報を、表示制御部62に接続されたヘッドアップディスプレイ5によって、フロントガラスGの内側面に重畳表示する。
このとき表示制御部62は、黄色領域R2及び赤色領域R3の位置情報を、運転者Uが黄色領域R2及び赤色領域R3を視認した場合の三次元的な位置情報に変換する。さらに、表示制御部62は、この三次元的な位置情報と、上記の画像補正部61からの三次元的に示された道路形状の画像情報と、に基づいて、ヘッドアップディスプレイ5でフロントガラスGに表示された時に、黄色領域R2及び赤色領域R3を運転者Uから視認される実際の道路形状にほぼ一致させて示すことができるように、黄色領域R2及び赤色領域R3の位置情報をヘッドアップディスプレイ5に出力する。すなわち、表示制御部62、及びヘッドアップディスプレイ5は、黄色領域R2及び赤色領域R3の位置情報をフロントガラスGに重畳表示する重畳表示手段を構成している。
【0021】
図4は、図3における、自動車Aの運転者Uの前方視界を示した模式図である。図中クロスハッチングで示した領域は、ダッシュボードA1上のヘッドアップディスプレイ5(図1)によってフロントガラスGの内側面に重畳表示された黄色領域R2を示す投影像r2であり、斜線ハッチングで示した領域は、同じくフロントガラスGの内側面に重畳表示された赤色領域R3を示す投影像r3を示している。投影像r2は、フロントガラスGを通した視界が妨げられない程度に透過しつつ、クロスハッチングの部分を黄色に着色している。投影像r3も同じようにして、斜線ハッチングの部分を赤色に着色している。
ヘッドアップディスプレイ5は、投影像r2及びr3を、図のように、運転者Uから実際に視認される道路形状にほぼ一致させて、フロントガラスGの裏面に重畳表示する。すなわち、表示処理部6、カメラ4、及びヘッドアップディスプレイ5は、信号機情報処理部3によって算出された各領域R2、R3の位置情報を表示する表示手段を構成しており、各領域R2、R3の位置情報を、投影像r2及びr3として、運転者Uから視認される実際の道路形状に一致させてフロントガラスGに表示することで、各領域R2、R3を運転者Uに認識させる。
【0022】
次に、上記のような機能を有する信号機情報表示システムで行われる、黄色領域R2及び赤色領域R3の位置情報算出処理について説明する。図5は、信号機情報処理部3内で、繰り返し実行される各領域R2、R3の位置情報算出処理のフローチャートである。
まず、ステップS1において、信号機情報処理部3は、信号機Kからの点灯情報を受信したか否かの判断を行う。点灯情報を受信しない場合には、処理を終了して開始に戻り、フロントガラスGには何も表示されない。一方、受信した場合には、信号機の現在の点灯色と残りの点灯時間、及び各点灯色の点灯時間を取得する(ステップS2)。次に、車速入力部31より出力される自動車Aの現在の車速を把握する(ステップS3)。次に、信号機情報処理部3は、位置情報取得部32によって、自動車Aと信号機との現在の距離を取得する(ステップS4)。
【0023】
次に、信号機情報処理部3は、上記ステップS2〜S4にて取得した各情報から、黄色領域、及び赤色領域の位置情報を算出する(ステップS5)。次に、算出された各領域の位置情報を表示処理部6に出力し、開始に戻る(ステップS6)。表示処理部6に、ステップS6からの各領域の位置情報が入力されると、表示処理部6は、上記位置情報に基づいて投影像r2、r3をフロントガラスGに投影する。上記の処理を高速で繰り返し行うことで、各処理ごとにフロントガラスGに投影する投影像r2、r3は、随時更新される。
【0024】
図6は、投影像r2、r3がフロントガラスGに投影された時における、運転者Uの前方視界の他の例を示した模式図であり、図4における状態から、速度Vのまま、さらに自動車Aが前方の信号に近づいた時の状態を示している。図において、投影像r2、r3は、信号機Kの位置に合わせて、より自動車Aに近い範囲に投影されている。この場合、自動車Aは、黄色領域R2に進入する直前であり、信号機Kの点灯色が青色から黄色に切り替わる直前であることを、運転者Uに対して認識させることができる。
またさらに、運転者Uが自動車Aを加減速すれば、その加減速された速度に応じて、黄色領域R2及び赤色領域R3に位置情報が算出され、それに基づいた投影像r2、r3が投影される。
このように、信号機情報表示システムは、上記の構成によって、自動車Aと信号機Kとの位置関係、及びそのときの車速に応じた黄色領域R2及び赤色領域R3を随時更新しつつフロントガラスGに重畳表示する。これによって、運転者Uは、自動車Aの車速に応じた各領域R2、R3を認識することができる。
【0025】
上記のように構成された本実施形態の信号機情報表示システムによれば、自動車Aが前方の信号機Kに到達するまでの間、道路D上において、点灯色が黄色となる黄色領域R2と点灯色が赤色になる赤色領域R3を運転者に認識させることができるので、運転者は、自動車Aを信号機Kで停止させるか通過するかの判断を余裕をもって行うことができるとともに、信号機Kの手前から余裕をもって自動車Aの速度を調整することができる。従って、自動車Aがいわゆるジレンマ領域に入るのを容易に回避することができ、自動車Aの安全な走行を確保することができる。
【0026】
また、自動車Aの進行方向に、点灯色の切り替わりのタイミングがそれぞれ異なる複数の信号機が直列に配列されていると、複数の信号機の情報が交錯することが考えられる。この場合、直近の信号機の情報のみを表示させ、当該直近の信号機を通過した際に、次の信号機の情報の表示に切り替わるようにし、それを運転者Uに認識させるようにすればよい。
すなわち、直近の信号機を第一の信号機とし、この第一の信号機の前方に所定間隔をおいて配置されている信号機を第二の信号機とすると、自動車Aが第一の信号機を通過する直前までは、第一の信号機の情報を表示させる。つまり、第一の信号機の所定色領域の位置情報と、第二の信号機の所定色領域の位置情報とが交錯した場合にも、運転者Uには、直近の信号機である第一の信号機を通過するまでは、第二の信号機の情報が表示されない。
そして、自動車Aが第一の信号機を通過した際に、第二の信号機の情報の表示に切り替わるようにする。この際、第二の信号機の情報の表示に切り替えたことを運転者Uに認識させるための表示を、ヘッドアップディスプレイ5によってフロントガラスGに表示するようにする。
【0027】
上記のように、自動車Aが第一の信号機を通過したかどうかを判断し、通過したと判断した場合には、第二の信号機の情報の表示に切り替えるとともにそれを運転者Uに認識させるための表示を行う切替表示手段を備えることで、運転者Uが表示される信号機情報について混同しないようにすることができる。
なお、第一の信号機を通過したか否かは、上述した各位置情報により判断することができるし、受信部2(図1、図2)が受信する信号機からの点灯情報は、通常、自動車Aが通過すると受信できないようにされているので、第一の信号機を通過した直後にも信号機情報が受信される際には、この受信される信号機情報は、第一の信号機以外の信号機の情報であることが判断できる。また、信号機からの点灯情報が識別情報等を有している場合には、これを参照することによっても判断できる。
【0028】
また、上記の黄色領域R2及び赤色領域R3は、例えば、カーナビゲーションシステム等に用いられている小型の液晶表示装置等に表示することで、運転者Uに認識させることも可能であるが、この場合、運転者Uは、液晶表示装置に視線を移す必要があり、前方から視線を外さなければならない。一方、本実施形態のように、フロントガラスGに各領域R2、R3を示す投影像r2、r3を重畳表示すれば、運転者Uは、前方から視線を外すことなく、各領域R2、R3を認識することができるので、より安全性が高まる。さらに、各領域R2、R3が認識し易く、ジレンマ領域の回避をより容易にすることができる。
【0029】
また、本実施形態では、黄色領域R2及び赤色領域R3をフロントガラスGに表示するために、ヘッドアップディスプレイを用いたが、例えば、プロジェクタや投影機等をフロントガラスGの後方に配置することによってフロントガラスGに表示してもよく、フロントガラスGに重畳表示可能なものであれば、それらを用いることができる。
【0030】
図7は、本発明の第二の実施形態である車速制御システムのブロック図である。本実施形態と第一の実施形態との主な相違点は、信号機情報処理部3から得られる黄色領域R2及び赤色領域R3の位置情報に基づいて、自動車Aを停止させるかどうかの判断をし、必要な場合は、自動車Aを減速させるための減速度を算出する減速度算出部8、及び車両速度制御部9を備えている点である。その他の点については、第一の実施形態と同様なので説明を省略する。
【0031】
図中、減速度算出部8には、信号機情報処理部3と、自動車Aに備えられる車速センサSとが接続されており、それぞれ、信号機K、黄色領域R2及び赤色領域R3の位置情報、並びに自動車Aの車速を、減速度算出部8に出力する。減速度算出部8は、これらの情報に基づいて、自動車Aを前方の信号機Kの手前で停止させるための減速度を算出する。
車速制御手段としての車両速度制御部9には、減速度算出部8と、自動車Aに備えられる車速センサSとが接続されており、それぞれ、算出した減速度、及び自動車Aの車速を、車両速度制御部9に出力する。車両速度制御部9は、自動車Aのアクセル開度やブレーキを、運転者Aが操作することなく作動制御できるようにされており、自動車Aの速度を車速センサSから取得し、自動車Aを所定の減速度に制御することができるように構成されている。
【0032】
図8は、減速度算出部8内で、繰り返し実行される自動車Aの減速度を算出するための処理のフローチャートである。
まず、減速度算出部8は、ステップS21において、信号機情報処理部3(図7)から、黄色領域R2及び赤色領域R3の位置情報が出力されたかどうかを判断する。この位置情報が出力されないと判断する場合には、処理を終了して開始に戻り、自動車Aの速度は自動制御されない。一方、前記位置情報が出力されてきた場合には、減速度算出部8は、その出力されてきた、自動車A、信号機K(信号機Kの停止線T(図3))、黄色領域R2、及び赤色領域R3の位置情報を取得する(ステップS22)。次に、これら位置情報に基づいて、信号機Kの停止線Tの位置が、黄色領域R2内、もしくは赤色領域R3内に位置しているかどうかを判断する(ステップS23)。停止線Tの位置が、両領域R2、R3の領域外と判断する場合、現状の車速を維持して走行すれば、点灯色が青色の状態で信号機Kを通過できるので、減速度算出部8は、自動車Aの速度を自動制御することなく処理を終了し開始に戻る。一方、停止線Tの位置が、両領域R2、R3の領域内と判断される場合、現在の車速を維持して走行すると、自動車Aが停止線Tに到達する手前で、点灯色が青色から黄色に変わり、青色の状態で信号機Kを通過できないので、次のステップに進み、自動車Aを減速させる。
【0033】
ステップ24において、減速度算出部8は、自動車Aの現在の車速を、自動車Aに備えられた車速センサSより把握する。次に、黄色領域R2と赤色領域R3との境界が、停止線Tの位置と一致させることができる減速度を、上記現在の車速と上記位置情報とに基づいて算出する(ステップS25)。そして、算出された減速度を車両速度制御部9(図7)に出力し、処理を終了し、開始に戻る(ステップS26)。上記処理を繰り返し行うことで、減速度算出部8は、自動車Aを減速させる減速度を算出する減速度算出手段を構成している。
車両速度制御部9は、上記の処理によって算出された減速度で自動車Aを減速させる。すなわち、本実施形態の車速制御システムは、自動車Aを停止させると判断した場合に、黄色領域R2と赤色領域R3との境界と、停止線Tの位置とを一致させつつ自動車Aを減速させるので、自動車Aは、点灯色が黄色から赤色に切り替わるタイミングの時に、信号機Kの停止線Tの位置で停止させることができる。
【0034】
上記のように構成された本実施形態の車速制御システムによれば、信号機Kの位置が黄色領域R2内もしくは赤色領域R3内にあると判断した場合、点灯色が青色の状態で自動車Aが信号機K(信号機Kの停止線T)を通過できないと判断する。そして、この場合、上述したように、点灯色が黄色から赤色に切り替わるタイミングで、自動車Aが信号機K(信号機Kの停止線T)の位置で停止できる減速度をもって自動車Aを減速させることができる。従って、運転者Uの運転操作の熟練度に関わらず、自動車Aがジレンマ領域に入るのを確実に回避でき、自動車Aの安全走行が確保される。
【0035】
また、本実施形態では、信号機Kの停止線Tを基準として、自動車Aの減速度を求めたが、例えば停止線が無い場合や、受信部により取得される点灯情報や、位置情報取得部から取得される位置情報等から、信号機Kの情報停止線Tの位置が特定できない場合には、信号機Kの位置を基準として自動車Aの減速度を求めてもよい。
【0036】
なお、本発明の信号機情報表示システム、及び車速制御システムは上記各実施形態のみに限定されるものではない。例えば、上記各実施形態では、信号機情報発信器装置、及び受信部には、DSRCを用いた場合を例示したが、例えば、光ビーコンによって信号機情報の通信を行ってもよい。光ビーコンによる通信は、受信器が発信器の下を通過した瞬間にのみ情報の通信が行われる。このため、光ビーコンによって発信される情報の中に前方の信号機までの距離を盛り込めば、自動車と信号機との間の位置情報を取得することができ、位置情報取得手段を兼ねることができる。従って、光ビーコンによって信号機情報の通信を行う場合には、上記実施形態で示したGPSや地図情報記憶装置等からなる位置情報取得部を除いてシステムを構成することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の第一の実施形態である信号機情報表示システムを自動車に搭載したときの構成を示した模式図である。
【図2】信号機情報表示システムの構成を示すブロック図である。
【図3】道路上の信号機Kと、自動車との位置関係を示した模式図である。
【図4】図3における、自動車の運転者の前方視界を示した模式図である。
【図5】信号機情報処理部内で、繰り返し実行される各領域の位置情報算出処理のフローチャートである。
【図6】投影像がフロントガラスに投影された時における、運転者の前方視界の他の例を示した模式図である。
【図7】本発明の第二の実施形態である車速制御システムのブロック図である。
【図8】減速度算出部内で、繰り返し実行される自動車の減速度を算出するための処理のフローチャートである。
【符号の説明】
【0038】
2 受信部(点灯情報取得手段)
31 車速入力部(車速把握手段)
32 位置情報取得部(位置情報取得手段)
321 GPS(位置検出手段)
322 地図情報記憶装置(地図情報記憶手段)
33 演算部(算出手段)
4 カメラ(画像取得手段)
5 ヘッドアップディスプレイ(重畳表示手段)
61 画像補正部(画像取得手段)
62 表示制御部(重畳表示手段)
8 減速度算出部(減速度算出手段)
9 車両速度制御部(車速制御手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載される信号機情報表示システムであって、
前記車両の外部より前方の信号機の点灯情報を取得する点灯情報取得手段と、
前記車両に対する前記信号機の位置情報を取得する位置情報取得手段と、
前記車両の車速を把握する車速把握手段と、
前記車両が前記車速把握手段により把握された車速で進んだ時に、前記信号機の点灯色が所定の色となる道路上の領域である所定色領域の位置情報を、少なくとも二種類の所定色について、前記点灯情報及び前記信号機位置情報に基づいて算出する算出手段と、
前記所定色領域の位置情報を、運転者に認識させるための表示手段と、を備えたことを特徴とする信号機情報表示システム。
【請求項2】
前記位置情報取得手段は、
車両の位置を検出する位置検出手段と、
前記信号機の位置情報を含んだ地図情報を記憶した地図情報記憶手段と、を備えた請求項1記載の信号機情報表示システム。
【請求項3】
前記表示手段は、
フロントガラスを通して視認される道路形状を画像情報として取得し、この取得された道路形状の画像情報を運転者から視認される三次元的な道路形状の画像情報に補正する画像取得手段と、
前記所定色領域の位置情報を、運転者から視認した場合の三次元的な位置情報に変換し、この変換された三次元的な位置情報と、前記画像取得手段によって取得された三次元的な道路形状の画像情報と、に基づいて、運転者からフロントガラスを通して視認される実際の道路形状に一致させて認識できるように前記フロントガラスに重畳表示する重畳表示手段と、を備えた請求項1又は2に記載の信号機情報表示システム。
【請求項4】
前記前方の信号機を第一の信号機とし、この第一の信号機のさらに前方に配置される信号機を第二の信号機としたとき、
前記車両が第一の信号機を通過したかどうかを判断し、通過したと判断した場合には、前記表示手段によって運転者に認識させる所定色領域の位置情報を、前記第一の信号機の所定色領域の位置情報から、前記第二の信号機の所定色領域の位置情報に切り替えるとともに、前記第二の信号機の所定色領域の位置情報に切り替えたことを運転者に認識させる切換表示手段をさらに備えている請求項1〜3のいずれか1項に記載の信号機情報表示システム。
【請求項5】
車両に搭載され、その車速を制御する車速制御システムであって、
車両の外部より前方の信号機の点灯情報を取得する点灯情報取得手段と、
前記車両に対する前記信号機の位置情報を取得する位置情報取得手段と、
前記車両の車速を把握する車速把握手段と、
前記車両が前記車速把握手段により把握された車速で進んだ時に、前記信号機の点灯色が黄色、及び赤色となる道路上の領域である黄色領域、及び赤色領域の位置情報を、前記点灯情報及び前記位置情報に基づいて算出する算出手段と、
前記信号機の位置が前記黄色領域内もしくは前記赤色領域内に位置しているかどうかを判断し、前記信号機の位置が前記黄色領域内もしくは前記赤色領域内にあると判断した場合、前記黄色領域と前記赤色領域との境界が、前記信号機の位置と一致するように車両を減速させる減速度を算出する減速度算出手段と、
前記車両の車速を前記減速度に基づいて制御する車速制御手段と、を備えたことを特徴とする車速制御システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−72783(P2007−72783A)
【公開日】平成19年3月22日(2007.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−259351(P2005−259351)
【出願日】平成17年9月7日(2005.9.7)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】