信号生成装置、フィルタ装置、信号生成方法およびフィルタ方法
【課題】信号生成装置、フィルタ装置、信号生成方法およびフィルタ方法を提供すること。
【解決手段】信号レベルが第1のレベルと第2のレベルの間で遷移し、各々が同一の周波数および所定の位相の差分を有する複数の基礎信号であって、任意の基礎信号の信号レベルが第1のレベルである期間、および該任意の基礎信号に対して前記所定の位相遅れを有する次の基礎信号の信号レベルが第1のレベルである期間が重複する複数の基礎信号を生成する多相発振部と、前記各基礎信号の第1のレベルから第2のレベルへの遷移時点を、前記各基礎信号の前記次の基礎信号の第2のレベルから第1のレベルへの遷移時点以前に変化させてパルス信号を生成する遷移時点可変部300と、を備える信号生成装置。
【解決手段】信号レベルが第1のレベルと第2のレベルの間で遷移し、各々が同一の周波数および所定の位相の差分を有する複数の基礎信号であって、任意の基礎信号の信号レベルが第1のレベルである期間、および該任意の基礎信号に対して前記所定の位相遅れを有する次の基礎信号の信号レベルが第1のレベルである期間が重複する複数の基礎信号を生成する多相発振部と、前記各基礎信号の第1のレベルから第2のレベルへの遷移時点を、前記各基礎信号の前記次の基礎信号の第2のレベルから第1のレベルへの遷移時点以前に変化させてパルス信号を生成する遷移時点可変部300と、を備える信号生成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、信号生成装置、フィルタ装置、信号生成方法およびフィルタ方法に関する。
【背景技術】
【0002】
無線通信においては、動画データ、静止画データ、音楽データなどの各種データが送受信されている。近年、上記各種データは、精度の向上と共にデータ量も増加する傾向にあるため、無線通信には、より高速な通信速度(送受信性能)が要求されている。一般に、高速な通信速度を得るためには、広範にわたる周波数帯域が必要である。例えば。数百Mbps〜数Gbpsの通信速度を得るためには、無線通信装置は、数百MHz〜数GHzの周波数帯域を利用する必要がある。
【0003】
また、無線通信装置は、このように広範に渡る周波数帯域を有する広帯域信号に対し、増幅、周波数変換、周波数選択、および利得調整などの信号処理をCMOSプロセスを用いて適切に行う必要がある。一方、CMOSの微細化に伴い、素子間の特性のばらつき、電源電圧の低下などの設計上の制約が生じているため、広帯域信号を取り扱う高性能な回路を実現することが困難になりつつある。特に、周波数選択を行なうフィルタ回路においては、一般に高い素子精度が要求されるため、従来の連続時間アナログ回路に基づく設計法方法では、無線通信装置設計上のボトルネックになりかねない。
【0004】
かかる事情に鑑みて、フィルタ回路として、周波数特性がリコンフィギュアブルであるチャージドメインフィルタ回路が提案されている(非特許文献1参照。)。チャージドメインフィルタ回路は複数のキャパシタと、各キャパシタと入力端子を制御信号に基づいて導通させ、異なるキャパシタに順次入力信号をサンプリングさせる複数のスイッチを備える。
【0005】
したがって、各スイッチに供給される制御信号は、オン(信号レベルが第1のレベル)である期間が重複していない必要がある。このような制御信号は、例えば複数のシフトレジスタを駆動することにより生成することができる。
【0006】
また、非特許文献2には、各々が所定の位相差を有する多相のクロック信号を複数生成することが可能なリングオシレータが記載されている。
【0007】
【非特許文献1】2006 IEEE International Solid-State Circuits Conference 26.6 「An800MHz to 5GHz Software-Defined Radio Receiver in 90nm CMOS」
【非特許文献2】IEEE Journal of Solid-State Circuits,VOL.36,NO.6,JUNE 2001「A 1.25GHz0.35μm Monolithic CMOS PLL Based on a Multiphase Ring Oscillator」
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、上述したように、チャージドメインフィルタ回路に供給する制御信号を生成するために複数のシフトレジスタを駆動するとすれば、取り扱う周波数の向上に伴い、消費電力が増大してしまう。また、上記リングオシレータが生成する多相のクロック信号は、各々がオンである期間が重複するため、チャージドメインフィルタ回路に供給する制御信号として用いることはできなかった。
【0009】
そこで、本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的とするところは、消費電力を抑制しつつ、信号レベルが第1のレベルである期間が各々重複しない複数のパルス信号を生成することが可能な、新規かつ改良された信号生成装置、フィルタ装置、信号生成方法およびフィルタ方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明のある観点によれば、各々が同一の周波数を有し、且つ、所定の位相差を有する複数の基礎信号であって、(1)任意の基礎信号、および(2)該任意の基礎信号に対して前記所定の位相遅れを有する次の基礎信号が、共に第1のレベルに維持される期間が重複する複数の基礎信号を生成する多相発振部と、前記各基礎信号の第1のレベルから第2のレベルへの遷移時点を、前記各基礎信号の前記次の基礎信号の第2のレベルから第1のレベルへの遷移時点以前に変化させてパルス信号を生成する遷移時点可変部と、を備える信号生成装置が提供される。
【0011】
かかる構成においては、多相発振部が複数の基礎信号を生成し、遷移時点可変部が、各基礎信号の第1のレベルから第2のレベルへの遷移時点を、各基礎信号に対して上記所定の位相遅れを有する次の基礎信号の第2のレベルから第1のレベルへの遷移時点以前に変化させる。すなわち、遷移時点可変部は、多相発振部により生成された基礎信号に基づいて、信号レベルが第1のレベルに維持される期間が各々重複しない複数のパルス信号を生成することができる。
【0012】
前記遷移時点可変部は、前記多相信号生成部により生成された一の基礎信号と、前記一の基礎信号と前記所定の位相差を有する基礎信号の反転信号と、の論理積を演算して一のパルス信号を生成する論理演算部を備えてもよい。かかる構成においては、多数のシフトレジスタを動作させることなく信号レベルが第1のレベルである期間が各々重複しない複数のパルス信号を生成することができるため、消費電力を抑制することができる。
【0013】
前記遷移時点可変部は、前記多相信号生成部により生成された一の基礎信号の信号レベルが反転され、前記所定の位相差以下の位相が遅延された信号を生成する遅延部と、前記一の基礎信号と、前記遅延部により生成された信号との論理積を演算して一のパルス信号を生成する論理演算部と、を備えてもよい。かかる構成においては、論理演算部は、遅延部により遅延された位相に対応する期間長さだけ信号レベルが第1のレベルであるパルス信号を生成する。したがって、例えば遅延部が上記所定の位相差に満たない位相が遅延された信号を生成することにより、各々の信号レベルが第1のレベルである期間に間隔を設けることができる。
【0014】
前記多相発振部は、入力された信号の信号レベルが反転され、前記所定の位相だけ遅延された信号を出力する複数の遅延素子を含むリングオシレータであって、前記複数の基礎信号は、前記複数の遅延素子から出力される信号であってもよい。
【0015】
また、上記課題を解決するために、本発明の別の観点によれば、入力信号を順次異なる第1のキャパシタがサンプリングし、前記サンプリングにより複数の第1のキャパシタに蓄えられた電荷の少なくとも一部を出力するフィルタ装置であって、各々が同一の周波数を有し、且つ、所定の位相差を有する複数の基礎信号であって、(1)任意の基礎信号、および(2)該任意の基礎信号に対して前記所定の位相遅れを有する次の基礎信号が、共に第1のレベルに維持される期間が重複する複数の基礎信号を生成する多相発振部と、前記各基礎信号の第1のレベルから第2のレベルへの遷移時点を、前記各基礎信号の前記次の基礎信号の第2のレベルから第1のレベルへの遷移時点と同一、または遷移時点以前に変化させてパルス信号を生成する遷移時点可変部と、前記複数のパルス信号に基づいて、前記第1のキャパシタの各々に順次入力信号をサンプリングさせるスイッチング部と、備えるフィルタ装置が提供される。
【0016】
かかる構成においては、多相発振部が複数の基礎信号を生成し、遷移時点可変部が、各基礎信号の第1のレベルから第2のレベルへの遷移時点を、各基礎信号に対して上記所定の位相遅れを有する基礎信号の第2のレベルから第1のレベルへの遷移時点と同一、または該遷移時点以前に変化させる。すなわち、遷移時点可変部は、多相発振部により生成された基礎信号に基づいて、信号レベルが第1のレベルである期間が各々重複しない複数のパルス信号を生成することができる。また、スイッチング部は、遷移時点可変部により生成された複数のパルス信号に基づいて第1のキャパシタの各々に順次入力信号をサンプリングさせる。このように、当該フィルタ装置は、上記パルス信号を生成するために多数のシフトレジスタを動作させる必要がないため、消費電力を抑制することができる。
【0017】
前記遷移時点可変部は、前記多相信号生成部により生成された一の基礎信号と、前記一の基礎信号と前記所定の位相差を有する基礎信号の反転信号と、の論理積を演算して一のパルス信号を生成する論理演算部を備えてもよい。かかる構成においては、多数のシフトレジスタを動作させることなく信号レベルが第1のレベルである期間が各々重複しない複数のパルス信号を生成することができるため、消費電力を抑制することができる。
【0018】
前記遷移時点可変部は、前記多相信号生成部により生成された一の基礎信号の信号レベルが反転され、前記所定の位相差以下の位相が遅延された信号を生成する遅延部と、前記一の基礎信号と、前記遅延部により生成された信号との論理積を演算して一のパルス信号を生成する論理演算部と、を備えてもよい。かかる構成においては、論理演算部は、遅延部により遅延された位相に対応する期間長さだけ信号レベルが第1のレベルであるパルス信号を生成する。したがって、例えば遅延部が上記所定の位相差に満たない位相が遅延された信号を生成することにより、各々の信号レベルが第1のレベルである期間に間隔を設けることができる。
【0019】
前記第1のキャパシタは、前記第1のキャパシタの静電容量を減少させるパルス信号が入力される制御端子を備えてもよい。
【0020】
また、上記課題を解決するために、本発明の別の観点によれば、各々が同一の周波数を有し、且つ、所定の位相差を有する複数の基礎信号であって、(1)任意の基礎信号、および(2)該任意の基礎信号に対して前記所定の位相遅れを有する次の基礎信号が、共に第1のレベルに維持される期間が重複する複数の基礎信号を生成するステップと、前記各基礎信号の第1のレベルから第2のレベルへの遷移時点を、前記各基礎信号の前記次の基礎信号の第2のレベルから第1のレベルへの遷移時点以前に変化させてパルス信号を生成するステップと、を含む信号生成方法が提供される。
【0021】
また、上記課題を解決するために、本発明の別の観点によれば、入力信号を順次異なる第1のキャパシタがサンプリングし、前記サンプリングにより複数の第1のキャパシタに蓄えられた電荷の少なくとも一部を出力するフィルタ装置において実行されるフィルタ方法であって、各々が同一の周波数を有し、且つ、所定の位相差を有する複数の基礎信号であって、(1)任意の基礎信号、および(2)該任意の基礎信号に対して前記所定の位相遅れを有する次の基礎信号が、共に第1のレベルに維持される期間が重複する複数の基礎信号を生成するステップと、前記各基礎信号の第1のレベルから第2のレベルへの遷移時点を、前記各基礎信号の前記次の基礎信号の第2のレベルから第1のレベルへの遷移時点と同一、または遷移時点以前に変化させてパルス信号を生成するステップと、前記複数のパルス信号に基づいて、前記第1のキャパシタの各々に順次入力信号をサンプリングさせるステップと、含むフィルタ方法が提供される。
【発明の効果】
【0022】
以上説明したように本発明にかかる信号生成装置、フィルタ装置、信号生成方法およびフィルタ方法によれば、消費電力を抑制しつつ、信号レベルが第1のレベルである期間が各々重複しない複数のパルス信号を生成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0024】
また、以下に示す項目の順序にしたがって当該「発明を実施するための最良の形態」を説明する。
〔1〕本実施形態にかかるフィルタ装置の概要
〔2〕本実施形態に関連するクロックパルス生成回路の課題
〔3〕フィルタ装置を構成する制御信号生成部
〔3−1〕遷移時点可変部の第1の構成例
〔3−2〕遷移時点可変部の第2の構成例
〔3−3〕遷移時点可変部の第3の構成例
〔4〕フィルタ装置において実行されるフィルタ方法
〔5〕まとめ
【0025】
〔1〕本実施形態にかかるフィルタ装置の概要
まず、図1〜図4を参照しつつ、本実施形態にかかるフィルタ装置100の概要を説明する。
【0026】
図1は、本実施形態にかかるフィルタ装置100の構成を示した説明図である。図2は、フィルタ装置100の動作により得られる出力信号の周波数特性を示した説明図である。図3は、制御信号生成部108により生成される制御信号を示した説明図である。
【0027】
図1に示したように、フィルタ装置100は、周波数特性設定部104と、制御信号生成部108と、チャージドメインフィルタ回路110とを備える。周波数特性設定部104は、チャージドメインフィルタ回路110を介して得られる出力信号の周波数特性(図2参照。)を設定する。周波数特性設定部104は、ユーザが所望の周波数特性を得るために、ユーザにより操作されるユーザインターフェースを備えてもよい。
【0028】
制御信号生成部108は、周波数特性設定部104により設定されたチャージドメインフィルタ回路110の周波数特性を実現するような制御信号(パルス信号)を生成し、チャージドメインフィルタ回路110に出力する。同一の信号組(φ1r〜φ4、制御信号ψ1r〜制御信号ψ4)に含まれる制御信号は、例えば図3に示したように、互いに所定の位相差を有し、周波数が同一であり、信号レベルがHである期間が各々重複しない。また、当該制御信号は、チャージドメインフィルタ回路110の回路モード(回路構成)を切替えるためのモード切替信号としての機能を有する。
【0029】
チャージドメインフィルタ回路110は、制御信号生成部108が生成した図3に示す制御信号に基づいて動作し、入力信号をフィルタリングする。チャージドメインフィルタ回路110を構成する後述の第一のフィルタ回路段120介して出力される信号は、例えば図2に示したような周波数特性を有する。
【0030】
図2に示したように、後述の第一のフィルタ回路段120介して出力される信号の周波数特性は、制御信号生成部108が生成する制御信号の周期に応じて特定される周波数fsと、その整数倍の周波数とがゼロ点あるいはヌル点となるものである。かかる周波数特性はSINC関数と形状が類似するため、このような周波数特性を与えられる回路をSINCフィルタ回路と称することもできる。また、かかる周波数特性は、制御信号生成部108が生成する制御信号を可変とするのみで変更することができるため、異なる周波数特性を得るために複数のフィルタ回路を設ける必要が無い点で有利である。
【0031】
次に、チャージドメインフィルタ回路110の詳細な回路構成を図4を参照しつつ説明する。
【0032】
図4は、本実施形態にかかるチャージドメインフィルタ回路110の回路構成を示した説明図である。チャージドメインフィルタ回路110は、トランスコンダクタ(gm)114と、IIRキャパシタ118と、第一のフィルタ回路段120と、第二のフィルタ回路段160と、内部または外部に出力キャパシタ170とを備える。また、チャージドメインフィルタ回路110は、図3に示した制御信号が入力されるものとする。また、以下では、第二のフィルタ回路段160で第一のフィルタ回路段120の標本化速度を1/2に落とす(デシメーション)場合を例に説明する。
【0033】
トランスコンダクタ114は、入力された信号の電圧を、該電圧に比例する電流に変換して出力する信号電流出力部として機能する。IIRキャパシタ118は、トランスコンダクタ12と接続され、チャージドメインフィルタ回路110にIIR特性を付与するよう機能する。なお、チャージドメインフィルタ回路110にIIR特性を付与することは、本実施形態の本質でないため、チャージドメインフィルタ回路110に必ずしもIIRキャパシタ118を設けなくてもよい。
【0034】
第一のフィルタ回路段120は、キャパシタC1、C2、C3およびC4と、スイッチング部としてのスイッチS1、S2、S3、S5、S6、S7、S9、S10、S11、S13、S14およびS15と、を含む。
【0035】
キャパシタC1、C2、C3およびC4は、電荷を蓄積する機能を有する。また、本実施形態にかかるキャパシタC1、C2、C3およびC4は、容量が可変であるMOSを用いたバリキャップ(バラクタ)や、可変容量ダイオードなどであってもよい。上記MOSは、インバージョン・モードで動作するものであっても、アキュムレーション・モードで動作するものであってもよい。
【0036】
また、本実施形態において、キャパシタC1の脇に記載されたφ4は、チャージドメインフィルタ回路110に入力される制御信号φ4がHレベルである間に、キャパシタC1の容量値が減少されることを示している。キャパシタC2、3および4の脇に記載されたφ2またはφ4も同様である。すなわち、各キャパシタCは、容量値が減少される制御信号が入力される制御端子を備える。キャパシタCがMOSキャパシタである場合には、制御端子は、例えばソースおよびドレインに該当する。
【0037】
スイッチS1は、キャパシタC1とトランスコンダクタ114とを導通、または非導通させるためスイッチである。スイッチS1の脇に記載したφ1は、チャージドメインフィルタ回路110に入力される制御信号φ1がHレベルである間、スイッチS1が閉じ、キャパシタC1とトランスコンダクタ114とを導通させることを示している。すなわち、φ1は、チャージドメインフィルタ回路110の少なくとも一部の回路モードを切替えるモード切替信号として機能する。制御信号φ2〜φ4、制御信号φ1r〜φ4r、制御信号ψ1〜ψ4および制御信号ψ1r〜ψ4rも同様にモード切替信号として機能する。
【0038】
スイッチS2は、キャパシタC1と、キャパシタC2と、第二のフィルタ回路段160のキャパシタC5またはC7とを導通、または非導通させるためスイッチである。スイッチS2の脇に記載したφ4は、チャージドメインフィルタ回路110に入力される制御信号φ4がHレベルである間、スイッチS2が閉じ、キャパシタC1と、キャパシタC2と、第二のフィルタ回路段160のキャパシタC5またはC7とを導通させようとすることを示している。
【0039】
スイッチS3は、キャパシタC1をVcomと導通、または非導通させるためスイッチである。スイッチS3の脇に記載したφ1rは、チャージドメインフィルタ回路110に入力される制御信号φ1rがHレベルである間、スイッチS3が閉じ、キャパシタC1とVcomとを導通させることを示している。
【0040】
スイッチS1と同様に、スイッチS5は制御信号φ2に基づいてキャパシタC2とトランスコンダクタ114とを導通、または非導通させるためスイッチである。また、スイッチS9は制御信号φ3に基づいてキャパシタC3とトランスコンダクタ114とを導通、または非導通させるためスイッチである。また、スイッチS13は制御信号φ4に基づいてキャパシタC4とトランスコンダクタ114とを導通、または非導通させるためスイッチである。
【0041】
スイッチS2と同様に、スイッチS6は制御信号φ4に基づいてキャパシタC1と、キャパシタC2と、第二のフィルタ回路段160のキャパシタC5またはC7とを導通、または非導通させるためスイッチである。また、スイッチS10は制御信号φ2に基づいてキャパシタC3と、キャパシタC4と、第二のフィルタ回路段160のキャパシタC6またはC8とを導通、または非導通させるためスイッチである。また、スイッチS10は制御信号φ4に基づいてキャパシタC3と、キャパシタC4と、第二のフィルタ回路段160のキャパシタC6またはC8とを導通、または非導通させるためスイッチである。
【0042】
スイッチS3と同様に、スイッチS7は制御信号φ2rに基づいてキャパシタC2をVcomと導通、または非導通させるためスイッチである。また、スイッチS11は制御信号φ3rに基づいてキャパシタC3をVcomと導通、または非導通させるためスイッチである。また、スイッチS15は制御信号φ4rに基づいてキャパシタC4をVcomと導通、または非導通させるためスイッチである。
【0043】
第二のフィルタ回路段160は、キャパシタC5、C6、C7およびC8と、スイッチS17、S18、S19、S21、S22、S23、S25、S26、S27、S29、S30およびS31と、を含む。
【0044】
キャパシタC5、C6、C7およびC8は、電荷を蓄積する機能を有する。また、本実施形態にかかるキャパシタC5、C6、C7およびC8は、C1、C2、C3およびC4容量を可変とすることが可能な、MOSを用いたバリキャップ(バラクタ)や、可変容量ダイオードなどであってもよい。また、キャパシタC5およびC6は、チャージドメインフィルタ回路110に入力される制御信号ψ4がHレベルである期間に容量値が減少され、キャパシタC7およびC8は、チャージドメインフィルタ回路110に入力される制御信号ψ2がHレベルである期間に容量値が減少される。
【0045】
スイッチS17は、第一のフィルタ回路段120のキャパシタC1およびC2と、キャパシタC5とを導通、または非導通させるためのスイッチである。スイッチS17の脇に記載したψ1は、チャージドメインフィルタ回路110に入力される制御信号ψ1がHレベルである間、スイッチS17が閉じ、キャパシタC1およびC2と、キャパシタC5とを導通させようとすることを示している。
【0046】
スイッチS18は、キャパシタC5と、キャパシタC6および出力キャパシタ170とを導通、または非導通させるためのスイッチである。スイッチS18の脇に記載したψ4は、チャージドメインフィルタ回路110に入力される制御信号ψ4がHレベルである間、スイッチS18が閉じ、キャパシタC5およびC6と、出力キャパシタ170とを導通させようとすることを示している。
【0047】
スイッチS19は、キャパシタC5をVcomと導通、または非導通させるためスイッチである。スイッチS19の脇に記載したψ1rは、チャージドメインフィルタ回路110に入力される制御信号ψ1rがHレベルである間、スイッチS19が閉じ、キャパシタC5とVcomとを導通させることを示している。
【0048】
スイッチS17と同様に、スイッチS21は制御信号ψ2に基づいて第一のフィルタ回路段120のキャパシタC3およびC4と、キャパシタC6とを導通、または非導通させるためのスイッチである。また、スイッチS25は制御信号ψ3に基づいて第一のフィルタ回路段120のキャパシタC1およびC2と、キャパシタC7とを導通、または非導通させるためのスイッチである。また、スイッチS29は制御信号ψ4に基づいて第一のフィルタ回路段120のキャパシタC3およびC4と、キャパシタC8とを導通、または非導通させるためのスイッチである。
【0049】
スイッチS18と同様に、スイッチS22は制御信号ψ4に基づいてキャパシタC5と、キャパシタC6および出力キャパシタ170とを導通、または非導通させるためのスイッチである。また、スイッチS26は制御信号ψ2に基づいてキャパシタC7と、キャパシタC8および出力キャパシタ170とを導通、または非導通させるためのスイッチである。また、スイッチS30は制御信号ψ2に基づいてキャパシタC7と、キャパシタC8および出力キャパシタ170とを導通、または非導通させようとする。
【0050】
スイッチS19と同様に、スイッチS23は制御信号ψ2rに基づいてキャパシタC6をVcomと導通、または非導通させるためのスイッチである。また、スイッチS27は制御信号ψ3rに基づいてキャパシタC7をVcomと導通、または非導通させるためのスイッチである。また、スイッチS31は制御信号ψ4rに基づいてキャパシタC8をVcomと導通、または非導通させるためのスイッチである。
【0051】
出力キャパシタ170は、例えば、チャージドメインフィルタ回路110から出力を取り出すための容量を有する。また、出力キャパシタ170はA/D変換器であってもよい。なお、あるキャパシタCを第1のキャパシタと捉えた場合、該キャパシタCが含まれるフィルタ回路段の後段のフィルタ回路段に含まれるキャパシタCを第2のキャパシタと捉えることができる。
【0052】
〔2〕本実施形態に関連するクロックパルス生成回路の課題
以上、図1〜図4を参照して説明したように、チャージドメインフィルタ回路110を動作させるためには、図3に示したような制御信号を制御信号生成部108が生成し、チャージドメインフィルタ回路110に供給する必要がある。そこで、図3に示したような制御信号を生成可能な本実施形態に関連するクロックパルス生成回路の一例を説明する。
【0053】
図5は、本実施形態に関連するクロックパルス生成回路11の構成を示した説明図である。図5に示したように、クロックパルス生成回路11は、発振部21と、フリップフロップD1〜D8を備える巡回型のシフトレジスタである。発振部21は、図6の上段に示した基本クロックφckを生成し、各フリップフロップD1〜D8に供給する。
【0054】
ここで、各フリップフロップD1〜D8が保持しているデータは、基本クロックφckの立ち上がりのタイミングで次段のフリップフロップD1〜8に送られることとなる。したがって、かかるクロックパルス生成回路11において、一のフリップフロップDの信号レベルをHに設定し、且つ、他の全てのフリップフロップDの信号レベルをLに設定すると、当該一のフリップフロップDに設定されたHデータは、基本クロックφckに従い、順次、次段のフリップフロップDにシフトし、クロックパルス生成回路11内を巡回する。
【0055】
この際、各フリップフロップD1〜D8から出力される信号のタイミングチャートを図6に示す。なお、図6においては、図面の明瞭性の観点から、各フリップフロップD1〜D8から出力される信号のうち、フリップフロップD1から出力される出力信号φ1r、および、フリップフロップD2から出力される出力信号φ1のみを示し、フリップフロップD3〜D8から出力される出力信号に関しては例示していない。図6に示すように、各々隣接するフリップフロップD1〜D8から出力される出力信号は、各々、基本クロックφckのクロック周期(Δt)に応じた位相ズレを持って生成され、各々、制御信号φ1r、φ1、φ2r、φ2、φ3r、φ3、φ4r、φ4として出力されることとなる。この結果、巡回型のシフトレジスタを用いれば、容易に図3上段と同様の制御信号を生成することが可能となり、もって、チャージドメインフィルタ回路110を動作させるための制御信号を生成することが可能となる。
【0056】
ここで、チャージドメインフィルタ回路110においては、例えば制御信号φ1は入力信号をキャパシタCにサンプリングさせるために用いられ、φ1rはキャパシタCに蓄えられている電荷をリセットするために用いられる。
【0057】
したがって、制御信号φ1およびφ1rをはじめ、各制御信号がHに維持される期間は、回路特性の観点からオーバーラップしないようにしてもよい。この点に関し、クロックパルス生成回路11が生成する各制御信号は、HからLへの立下りが次の制御信号のLからHへの立ち上がりと重複する場合がある。そこで、各制御信号の立ち上がりおよび立下りのタイミングも重複しないクロックパルス生成回路12の回路構成を図7に示し、クロックパルス生成回路12により生成されるクロックパルスについて図8に示す。
【0058】
図7に示したように、クロックパルス生成回路12は、発振部22と、フリップフロップD11〜D26を備える巡回型のシフトレジスタである。発振部22は、図8の上段に示した基本クロックφckを生成し、各フリップフロップD11〜D26に供給する。
【0059】
また、上記クロックパルス生成回路11と同様に、クロックパルス生成回路12において、初期値として一のフリップフロップDの信号レベルをHに設定し、他のフリップフロップD全てにLを設定した場合を想定する。ここで、各フリップフロップD11〜D26が保持しているデータは、クロックパルス生成回路11と同様に、基本クロックφckの立ち上がりのタイミングで次段のフリップフロップD11〜26に送られる。したがって、上記のように初期値として一のフリップフロップDの信号レベルをHに設定すれば、Hデータがクロックパルス生成回路12を巡回する。
【0060】
このため、フリップフロップD11〜D26の出力を一つおきに抽出すれば、図8の中段および下段に示したような、各々がHである期間が全く重複しない制御信号φ1およびφ1rなどを得ることができる。なお、制御信号φ1は、制御信号φ1rに対して基本クロックφckの2周期(Δt)に対応する位相遅れを有する。また、各制御信号がHである時間は、基本クロックφckの1周期(Δw)に対応する時間である。
【0061】
ただし、クロックパルス生成回路12には、クロックパルス生成回路11と比較して倍の段数のフリップフロップDを設ける必要がある。また、発振部22は、発振部21の2倍の周波数の基本クロックを生成する必要がある。なお、クロックパルス生成回路11が生成した制御信号の位相調整を担う回路を設けることでも、各制御信号の信号レベルがHである期間の重複を回避しえる。
【0062】
ところで、チャージドメインフィルタ回路110は、図6または図8に示した各制御信号の時間間隔Δtに応じた周波数特性を有する。具体的には、チャージドメインフィルタ回路110は、図2に示した最初の減衰極(ノッチ)の周波数fsが各制御信号の時間間隔Δtの逆数である1/ΔtHzとなる。
【0063】
したがって、発振部21または発振部22が生成する基本クロックφckの周波数を高くする事で、チャージドメインフィルタ回路110における最初のノッチ周波数1/Δtを高くする事が可能となる。このように、チャージドメインフィルタ回路110の周波数特性は、クロックパルス生成回路11または12の基本クロックφckの周波数により調整可能である。
【0064】
また、より広帯域な信号に対応可能なチャージドメインフィルタ回路110を実現するためには、クロックパルス生成回路11または12がより高い周波数で動作する必要がある。例えば、GHzのオーダーの通過域を確保するために最初のノッチ周波数を4GHzに設定した場合、各制御信号の時間間隔Δtを250psとする必要がある。すなわち、図5に示したクロックパルス生成回路11においては発振部21が4GHzの基本クロックφckを生成し、図7に示したクロックパルス生成回路12においては発振部22が8GHzの基本クロックφckを生成する必要が生じる。
【0065】
さらに、図4に示した多段のフィルタ回路段を備えるチャージドメインフィルタ回路110において各段間でデシメーションを行なう場合、前段に与える制御信号を生成するクロックパルス生成回路11または12をより高い周波数で動作させる必要がある。
【0066】
例えば、フィルタ回路段が2段カスケード接続されたチャージドメインフィルタ回路110において、各段間で1/2のデシメーションをする場合を考える。また、チャージドメインフィルタ回路110全体の周波数特性として、最初のノッチ周波数を4GHzとする。この場合、チャージドメインフィルタ回路110の後段のフィルタ回路段には、4GHzで動作させたクロックパルス生成回路11が生成した制御信号、または8GHzで動作させたクロックパルス生成回路12が生成した制御信号を供給する必要がある。また、1段目と2段目のデシメーション比を1/2とした場合、チャージドメインフィルタ回路110の前段のフィルタ回路段には、8GHzまたは16GHzで動作させたクロックパルス生成回路11または12が生成した制御信号を供給する必要がある。
【0067】
このように、本実施形態に関連するクロックパルス生成回路11または12では、チャージドメインフィルタ回路110にGHzオーダーの信号を扱わせるために、極めて高速な周波数でシフトレジスタ(複数のフリップフロップ)を動作させる必要がある。また、このように高周波数の制御信号を発生させようとする場合、発振部21または22、および発振部21または22に付属する回路群において消費電力が増大してしまう。
【0068】
そこで、上記事情を一着眼点にして本実施形態にかかるフィルタ装置100を創作するに至った。本実施形態にかかるフィルタ装置100を構成する制御信号生成部108は、消費電力を抑制しつつ、チャージドメインフィルタ回路110を動作させるための制御信号を生成することができる。以下、図9〜図18を参照しつつ、当該フィルタ装置100を構成する制御信号生成部108および動作を詳細に説明する。
【0069】
〔3〕フィルタ装置を構成する制御信号生成部
図9は、制御信号生成部108の構成例を示した機能ブロック図である。図9に示したように、制御信号生成部108は、多相発振器200と、遷移時点可変部300と、を備え、信号生成装置として機能する。
【0070】
多相発振器200は、信号レベルがH(第1のレベル、または第2のレベル)とL(第2のレベル、または第1のレベル)の間で遷移し、各々が同一の周波数を有し、且つ、各々の信号間に所定の位相差を有する複数の基礎信号を生成する。また、多相発振器200は、任意の基礎信号の信号レベルがHである期間、および該任意の基礎信号に対して所定の位相遅れを有する次の基礎信号の信号レベルがHである期間が重複する複数の基礎信号を生成する。多相発振器200の一例を図10および図11を参照しつつ説明する。
【0071】
図10は、多相発振器200の構成例を示した説明図である。図11は、多相発振器200が生成する基礎信号を示した説明図である。図10に示したように、多相発振器200は、入力信号を遅延、および反転させる複数の遅延反転素子210〜280を備えるリングオシレータである。
【0072】
図10に示す例においては、各遅延反転素子210〜280は、複数の信号が入力され、複数の信号を出力する場合を示しているが、一の信号の入出力ごとに一の遅延反転素子を設けてもよい。また、各遅延反転素子210〜280はCMOSプロセスに基づいて構成されても、複数の入力された信号の差動に基づいて動作してもよい。
【0073】
このような多相発振器200からは、図11に示したように、各々が45度の位相差を有する8相の基礎信号が得られる。例えば、各基礎信号の周波数が500MHzである場合には、隣り合う2つの基礎信号の立ち上がりタイミングの差分は250psとなる。なお、各基礎信号の周波数は、例えば各遅延反転素子210〜280における遅延量を調整することにより変化させることができる。
【0074】
しかし、かかる基礎信号は、各々信号レベルがHである期間が重複するため、チャージドメインフィルタ回路110の各フィルタ回路段に供給する制御信号としては利用することが困難である。そこで、多相発振器200により生成された各基礎信号の立下りタイミングを調整し、制御信号を生成することが可能な遷移時点可変部300を提案する。以下、かかる遷移時点可変部300の具体的構成例を挙げる。
【0075】
〔3−1〕遷移時点可変部の第1の構成例
図12は、遷移時点可変部300の第1の構成例を示した説明図である。図12に示したように、遷移時点可変部300は、2の基礎信号の論理積を演算する複数の論理演算部310、320を備える。
【0076】
例えば、論理演算部310には、基礎信号A及び、該基礎信号Aに対して上記所定の位相差を有する基礎信号/Bの反転信号である基礎信号Bが入力され、基礎信号Aと基礎信号Bの論理積を演算する。
【0077】
また、論理演算部320には、基礎信号/B及び、該基礎信号/Bに対して上記所定の位相差を有する基礎信号Cの反転信号である基礎信号/Cが入力され、基礎信号/Bと基礎信号/Cの論理積を演算する。図12においては記載を省略しているが、遷移時点可変部300は、多相発振器200により生成された各基礎信号C、/D、/A、B、/C、Dを同様に論理演算する論理演算部を備える。
【0078】
図13は、図12に示した遷移時点可変部300により制御信号が生成される様子を示した説明図である。図13に示したように、図12に示した遷移時点可変部300は、多相発振器200により生成された基礎信号に基づいて、各々が所定の位相差を有し、信号レベルがHである期間が重複しない複数の制御信号を生成することができる。なお、図13に示したA・Bをφ1rに対応させ、/B・/Cをφ1に対応させ、C・Dをφ2rに対応させてもよい。
【0079】
なお、チャージドメインフィルタ回路110の周波数特性は、上述したように、各制御信号の時間間隔Δt(立ち上がりのタイミング間隔)に依存する部分が大きいため、各制御信号の時間間隔Δtには高い精度が要求される。一方、各制御信号のパルス幅Δwは、各フィルタ回路段間で信号を転送する窓区間に相当するパラメータである。したがって、スイッチが閉じ、該スイッチを介して電流が流れ、次段のキャパシタC間でチャージシェアが完了するという、一連の段間のチャージの伝達の過渡応答に要する時間さえ確保されていれば、必ずしも制度の高低が問われるものではない。
【0080】
〔3−2〕遷移時点可変部の第2の構成例
遷移時点可変部300の第1の構成例においては、ある制御信号と次の制御信号がHレベルに維持される期間は重複しないものの、ある制御信号の立下りと次の制御信号の立ち上がりの遷移時点が一致する。このように遷移時点が一致する制御信号がチャージドメインフィルタ回路110に供給されると、例えば、キャパシタCによるサンプリングの開始後、所定期間だけ同時にリセットが行なわれてしまうおそれがある。もちろん、回路設計によっては、かかる事態の発生を抑止できるが、各制御信号の立ち上がりおよび立下りのタイミングが一致しないようにすることも有効である。そこで、制御信号の立下りを、次の制御信号の立ち上がりの以前にすることができる点を特徴とする遷移時点可変部300の第2の構成例を以下に説明する。
【0081】
図14は、遷移時点可変部300の第2の構成例を示した説明図である。図14に示したように、遷移時点可変部300は、一の基礎信号の立ち上がりを検出する複数の微分器340、350を備える。
【0082】
図15は、微分器340の詳細な構成を示した説明図である。図16は、図14に示したように遷移時点可変部300により制御信号が生成される様子を示した説明図である。図15に示したように、微分器340は、遅延素子342と、インバータ344と、論理演算部346と、を備える。
【0083】
遅延素子342は、入力された基礎信号Aの位相を上記所定の位相差以下の位相だけ遅延させ、図16の2段目に示した基礎信号A’としてインバータ344に出力する。かかる遅延素子342は、例えば、偶数個のMOSインバータ列、容量および抵抗などであってもよい。
【0084】
インバータ344は、遅延素子342から出力された基礎信号A’を反転させ、図16の3段目に示した基礎信号/A’として論理演算部346に出力する。なお、遅延素子342とインバータ344の配置順番は、遅延素子342が先であっても、インバータ344が先であってもよい。また、必要な遅延量がインバータ344における位相の遅延量と大差ない場合、遅延素子342を設けなくてもよい。
【0085】
論理演算部346は、基礎信号Aと、インバータ344から出力された基礎信号/A’との論理積を演算し、図16の4段目に示したA・/A’を制御信号として出力する。かかる制御信号のパルス幅は、遅延素子342による位相の遅延量に対応する。
【0086】
図14においては記載を省略しているが、遷移時点可変部300は、基礎信号C、/D、/A、B、/C、Dに対して同様の処理をする複数の微分器を備える。その結果、当該遷移時点可変部300は、多相発振器200により生成された基礎信号に基づき、信号レベルがHである期間が重複せず、信号レベルの遷移のタイミングも一致しない複数の制御信号を生成することができる。また、各制御信号のパルス幅は、遅延素子342による位相の遅延量を調整することで容易に変更することが可能である。
【0087】
〔3−3〕遷移時点可変部の第3の構成例
図17は、遷移時点可変部300の第3の構成例を示した説明図である。第3の例にかかる遷移時点可変部300は、第3の例と同様に複数の微分器340、350を備えるが、各微分器340、350の構成が異なる。
【0088】
具体的には、第3の例にかかる遷移時点可変部300の微分器340は、遅延素子348と、論理演算部349と、を備える。遅延素子348には基礎信号Aが入力されると、基礎信号Aの位相を遅延させ、基礎信号A’として論理演算部349に出力する。
【0089】
論理演算部349は、基礎信号A’と、基礎信号Aと上記所定の位相差を有する基礎信号/Bの反転信号である基礎信号Bとの論理積を演算子、制御信号として出力する。当該第3の構成例にかかる遷移時点可変部300は、上記同様に、複数の基礎信号に基づいて制御信号を生成する微分器を複数備える。
【0090】
〔4〕フィルタ装置において実行されるフィルタ方法
以上、本実施形態にかかるフィルタ装置100の構成を説明した。続いて、当該フィルタ装置100において実行されるフィルタ方法について図18を参照しつつ説明する。
【0091】
図18は、本実施形態にかかるフィルタ装置100において実行されるフィルタ方法の流れを示したフローチャートである。図18に示したように、制御信号生成部108の多相発振器200が図11に示した多相信号を生成する(S410)。続いて、制御信号生成部108の遷移時点可変部300が、多相発振器200により生成された多相信号に基づいて、例えば図13に示した制御信号を生成する(S420)。かかる一の制御信号生成部108が生成した制御信号は、チャージドメインフィルタ回路110の一のフィルタ回路段に供給される。
【0092】
そして、チャージドメインフィルタ回路110のスイッチング部は、供給される制御信号に基づいて回路モードを切り替える。ここで、回路モードは、一のキャパシタCに関し、
該キャパシタCに入力信号をサンプリングさせるサンプリングモード、該キャパシタCにサンプリングにより蓄えられた電荷を出力させる出力モードなどを含む。例えば、S1、5、9、13は、各々に供給される制御信号φ1、φ2、φ3、φ4に基づき順次オンされ、キャパシタC1、キャパシタC2、キャパシタC3、キャパシタC4の順にサンプリングが行なわれる(S430)。
【0093】
〔5〕まとめ
以上説明したように、本実施形態にかかるフィルタ装置100においては、制御信号生成部108が、高速に動作するシフトレジスタを用いることなく、相互に信号レベルがHである期間が重複しない複数の制御信号を生成することができる。その結果、消費電力を抑制しつつ、チャージドメインフィルタ回路110を動作させることが可能となる。このようなフィルタ装置100は、CMOSプロセスを用いてチャージドメインフィルタ回路110を構成する場合に特に有効である。
【0094】
なお、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0095】
例えば、本明細書のフィルタ装置100の処理における各ステップは、必ずしもフローチャートとして記載された順序に沿って時系列に処理する必要はなく、並列的あるいは個別に実行される処理(例えば、並列処理あるいはオブジェクトによる処理)も含むとしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0096】
【図1】本実施形態にかかるフィルタ装置の構成を示した説明図である。
【図2】フィルタ装置の動作により得られる出力信号の周波数特性を示した説明図である。
【図3】制御信号生成部により生成される制御信号を示した説明図である。
【図4】チャージドメインフィルタ回路の回路構成を示した説明図である。
【図5】本実施形態に関連するクロックパルス生成回路の構成を示した説明図である。
【図6】クロックパルス生成回路により生成されるクロックパルスを示した説明図である。
【図7】本実施形態に関連する他のクロックパルス生成回路の構成を示した説明図である。
【図8】クロックパルス生成回路により生成されるクロックパルスを示した説明図である。
【図9】制御信号生成部の構成例を示した機能ブロック図である。
【図10】多相発振器の構成例を示した説明図である。
【図11】多相発振器が生成する基礎信号を示した説明図である。
【図12】遷移時点可変部の第1の構成例を示した説明図である。
【図13】図12に示した遷移時点可変部により制御信号が生成される様子を示した説明図である。
【図14】遷移時点可変部の第2の構成例を示した説明図である。
【図15】微分器の詳細な構成を示した説明図である。
【図16】図14に示したように遷移時点可変部により制御信号が生成される様子を示した説明図である。
【図17】遷移時点可変部の第3の構成例を示した説明図である。
【図18】本実施形態にかかるフィルタ装置において実行されるフィルタ方法の流れを示したフローチャートである。
【符号の説明】
【0097】
100 フィルタ装置
104 周波数特性設定部
108 制御信号生成部
110 チャージドメインフィルタ回路
200 多相発振器
300 遷移時点可変部
310、320、346、349 論理演算部
340、350 微分器
342、348 遅延素子
344 インバータ
【技術分野】
【0001】
本発明は、信号生成装置、フィルタ装置、信号生成方法およびフィルタ方法に関する。
【背景技術】
【0002】
無線通信においては、動画データ、静止画データ、音楽データなどの各種データが送受信されている。近年、上記各種データは、精度の向上と共にデータ量も増加する傾向にあるため、無線通信には、より高速な通信速度(送受信性能)が要求されている。一般に、高速な通信速度を得るためには、広範にわたる周波数帯域が必要である。例えば。数百Mbps〜数Gbpsの通信速度を得るためには、無線通信装置は、数百MHz〜数GHzの周波数帯域を利用する必要がある。
【0003】
また、無線通信装置は、このように広範に渡る周波数帯域を有する広帯域信号に対し、増幅、周波数変換、周波数選択、および利得調整などの信号処理をCMOSプロセスを用いて適切に行う必要がある。一方、CMOSの微細化に伴い、素子間の特性のばらつき、電源電圧の低下などの設計上の制約が生じているため、広帯域信号を取り扱う高性能な回路を実現することが困難になりつつある。特に、周波数選択を行なうフィルタ回路においては、一般に高い素子精度が要求されるため、従来の連続時間アナログ回路に基づく設計法方法では、無線通信装置設計上のボトルネックになりかねない。
【0004】
かかる事情に鑑みて、フィルタ回路として、周波数特性がリコンフィギュアブルであるチャージドメインフィルタ回路が提案されている(非特許文献1参照。)。チャージドメインフィルタ回路は複数のキャパシタと、各キャパシタと入力端子を制御信号に基づいて導通させ、異なるキャパシタに順次入力信号をサンプリングさせる複数のスイッチを備える。
【0005】
したがって、各スイッチに供給される制御信号は、オン(信号レベルが第1のレベル)である期間が重複していない必要がある。このような制御信号は、例えば複数のシフトレジスタを駆動することにより生成することができる。
【0006】
また、非特許文献2には、各々が所定の位相差を有する多相のクロック信号を複数生成することが可能なリングオシレータが記載されている。
【0007】
【非特許文献1】2006 IEEE International Solid-State Circuits Conference 26.6 「An800MHz to 5GHz Software-Defined Radio Receiver in 90nm CMOS」
【非特許文献2】IEEE Journal of Solid-State Circuits,VOL.36,NO.6,JUNE 2001「A 1.25GHz0.35μm Monolithic CMOS PLL Based on a Multiphase Ring Oscillator」
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、上述したように、チャージドメインフィルタ回路に供給する制御信号を生成するために複数のシフトレジスタを駆動するとすれば、取り扱う周波数の向上に伴い、消費電力が増大してしまう。また、上記リングオシレータが生成する多相のクロック信号は、各々がオンである期間が重複するため、チャージドメインフィルタ回路に供給する制御信号として用いることはできなかった。
【0009】
そこで、本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的とするところは、消費電力を抑制しつつ、信号レベルが第1のレベルである期間が各々重複しない複数のパルス信号を生成することが可能な、新規かつ改良された信号生成装置、フィルタ装置、信号生成方法およびフィルタ方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明のある観点によれば、各々が同一の周波数を有し、且つ、所定の位相差を有する複数の基礎信号であって、(1)任意の基礎信号、および(2)該任意の基礎信号に対して前記所定の位相遅れを有する次の基礎信号が、共に第1のレベルに維持される期間が重複する複数の基礎信号を生成する多相発振部と、前記各基礎信号の第1のレベルから第2のレベルへの遷移時点を、前記各基礎信号の前記次の基礎信号の第2のレベルから第1のレベルへの遷移時点以前に変化させてパルス信号を生成する遷移時点可変部と、を備える信号生成装置が提供される。
【0011】
かかる構成においては、多相発振部が複数の基礎信号を生成し、遷移時点可変部が、各基礎信号の第1のレベルから第2のレベルへの遷移時点を、各基礎信号に対して上記所定の位相遅れを有する次の基礎信号の第2のレベルから第1のレベルへの遷移時点以前に変化させる。すなわち、遷移時点可変部は、多相発振部により生成された基礎信号に基づいて、信号レベルが第1のレベルに維持される期間が各々重複しない複数のパルス信号を生成することができる。
【0012】
前記遷移時点可変部は、前記多相信号生成部により生成された一の基礎信号と、前記一の基礎信号と前記所定の位相差を有する基礎信号の反転信号と、の論理積を演算して一のパルス信号を生成する論理演算部を備えてもよい。かかる構成においては、多数のシフトレジスタを動作させることなく信号レベルが第1のレベルである期間が各々重複しない複数のパルス信号を生成することができるため、消費電力を抑制することができる。
【0013】
前記遷移時点可変部は、前記多相信号生成部により生成された一の基礎信号の信号レベルが反転され、前記所定の位相差以下の位相が遅延された信号を生成する遅延部と、前記一の基礎信号と、前記遅延部により生成された信号との論理積を演算して一のパルス信号を生成する論理演算部と、を備えてもよい。かかる構成においては、論理演算部は、遅延部により遅延された位相に対応する期間長さだけ信号レベルが第1のレベルであるパルス信号を生成する。したがって、例えば遅延部が上記所定の位相差に満たない位相が遅延された信号を生成することにより、各々の信号レベルが第1のレベルである期間に間隔を設けることができる。
【0014】
前記多相発振部は、入力された信号の信号レベルが反転され、前記所定の位相だけ遅延された信号を出力する複数の遅延素子を含むリングオシレータであって、前記複数の基礎信号は、前記複数の遅延素子から出力される信号であってもよい。
【0015】
また、上記課題を解決するために、本発明の別の観点によれば、入力信号を順次異なる第1のキャパシタがサンプリングし、前記サンプリングにより複数の第1のキャパシタに蓄えられた電荷の少なくとも一部を出力するフィルタ装置であって、各々が同一の周波数を有し、且つ、所定の位相差を有する複数の基礎信号であって、(1)任意の基礎信号、および(2)該任意の基礎信号に対して前記所定の位相遅れを有する次の基礎信号が、共に第1のレベルに維持される期間が重複する複数の基礎信号を生成する多相発振部と、前記各基礎信号の第1のレベルから第2のレベルへの遷移時点を、前記各基礎信号の前記次の基礎信号の第2のレベルから第1のレベルへの遷移時点と同一、または遷移時点以前に変化させてパルス信号を生成する遷移時点可変部と、前記複数のパルス信号に基づいて、前記第1のキャパシタの各々に順次入力信号をサンプリングさせるスイッチング部と、備えるフィルタ装置が提供される。
【0016】
かかる構成においては、多相発振部が複数の基礎信号を生成し、遷移時点可変部が、各基礎信号の第1のレベルから第2のレベルへの遷移時点を、各基礎信号に対して上記所定の位相遅れを有する基礎信号の第2のレベルから第1のレベルへの遷移時点と同一、または該遷移時点以前に変化させる。すなわち、遷移時点可変部は、多相発振部により生成された基礎信号に基づいて、信号レベルが第1のレベルである期間が各々重複しない複数のパルス信号を生成することができる。また、スイッチング部は、遷移時点可変部により生成された複数のパルス信号に基づいて第1のキャパシタの各々に順次入力信号をサンプリングさせる。このように、当該フィルタ装置は、上記パルス信号を生成するために多数のシフトレジスタを動作させる必要がないため、消費電力を抑制することができる。
【0017】
前記遷移時点可変部は、前記多相信号生成部により生成された一の基礎信号と、前記一の基礎信号と前記所定の位相差を有する基礎信号の反転信号と、の論理積を演算して一のパルス信号を生成する論理演算部を備えてもよい。かかる構成においては、多数のシフトレジスタを動作させることなく信号レベルが第1のレベルである期間が各々重複しない複数のパルス信号を生成することができるため、消費電力を抑制することができる。
【0018】
前記遷移時点可変部は、前記多相信号生成部により生成された一の基礎信号の信号レベルが反転され、前記所定の位相差以下の位相が遅延された信号を生成する遅延部と、前記一の基礎信号と、前記遅延部により生成された信号との論理積を演算して一のパルス信号を生成する論理演算部と、を備えてもよい。かかる構成においては、論理演算部は、遅延部により遅延された位相に対応する期間長さだけ信号レベルが第1のレベルであるパルス信号を生成する。したがって、例えば遅延部が上記所定の位相差に満たない位相が遅延された信号を生成することにより、各々の信号レベルが第1のレベルである期間に間隔を設けることができる。
【0019】
前記第1のキャパシタは、前記第1のキャパシタの静電容量を減少させるパルス信号が入力される制御端子を備えてもよい。
【0020】
また、上記課題を解決するために、本発明の別の観点によれば、各々が同一の周波数を有し、且つ、所定の位相差を有する複数の基礎信号であって、(1)任意の基礎信号、および(2)該任意の基礎信号に対して前記所定の位相遅れを有する次の基礎信号が、共に第1のレベルに維持される期間が重複する複数の基礎信号を生成するステップと、前記各基礎信号の第1のレベルから第2のレベルへの遷移時点を、前記各基礎信号の前記次の基礎信号の第2のレベルから第1のレベルへの遷移時点以前に変化させてパルス信号を生成するステップと、を含む信号生成方法が提供される。
【0021】
また、上記課題を解決するために、本発明の別の観点によれば、入力信号を順次異なる第1のキャパシタがサンプリングし、前記サンプリングにより複数の第1のキャパシタに蓄えられた電荷の少なくとも一部を出力するフィルタ装置において実行されるフィルタ方法であって、各々が同一の周波数を有し、且つ、所定の位相差を有する複数の基礎信号であって、(1)任意の基礎信号、および(2)該任意の基礎信号に対して前記所定の位相遅れを有する次の基礎信号が、共に第1のレベルに維持される期間が重複する複数の基礎信号を生成するステップと、前記各基礎信号の第1のレベルから第2のレベルへの遷移時点を、前記各基礎信号の前記次の基礎信号の第2のレベルから第1のレベルへの遷移時点と同一、または遷移時点以前に変化させてパルス信号を生成するステップと、前記複数のパルス信号に基づいて、前記第1のキャパシタの各々に順次入力信号をサンプリングさせるステップと、含むフィルタ方法が提供される。
【発明の効果】
【0022】
以上説明したように本発明にかかる信号生成装置、フィルタ装置、信号生成方法およびフィルタ方法によれば、消費電力を抑制しつつ、信号レベルが第1のレベルである期間が各々重複しない複数のパルス信号を生成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0024】
また、以下に示す項目の順序にしたがって当該「発明を実施するための最良の形態」を説明する。
〔1〕本実施形態にかかるフィルタ装置の概要
〔2〕本実施形態に関連するクロックパルス生成回路の課題
〔3〕フィルタ装置を構成する制御信号生成部
〔3−1〕遷移時点可変部の第1の構成例
〔3−2〕遷移時点可変部の第2の構成例
〔3−3〕遷移時点可変部の第3の構成例
〔4〕フィルタ装置において実行されるフィルタ方法
〔5〕まとめ
【0025】
〔1〕本実施形態にかかるフィルタ装置の概要
まず、図1〜図4を参照しつつ、本実施形態にかかるフィルタ装置100の概要を説明する。
【0026】
図1は、本実施形態にかかるフィルタ装置100の構成を示した説明図である。図2は、フィルタ装置100の動作により得られる出力信号の周波数特性を示した説明図である。図3は、制御信号生成部108により生成される制御信号を示した説明図である。
【0027】
図1に示したように、フィルタ装置100は、周波数特性設定部104と、制御信号生成部108と、チャージドメインフィルタ回路110とを備える。周波数特性設定部104は、チャージドメインフィルタ回路110を介して得られる出力信号の周波数特性(図2参照。)を設定する。周波数特性設定部104は、ユーザが所望の周波数特性を得るために、ユーザにより操作されるユーザインターフェースを備えてもよい。
【0028】
制御信号生成部108は、周波数特性設定部104により設定されたチャージドメインフィルタ回路110の周波数特性を実現するような制御信号(パルス信号)を生成し、チャージドメインフィルタ回路110に出力する。同一の信号組(φ1r〜φ4、制御信号ψ1r〜制御信号ψ4)に含まれる制御信号は、例えば図3に示したように、互いに所定の位相差を有し、周波数が同一であり、信号レベルがHである期間が各々重複しない。また、当該制御信号は、チャージドメインフィルタ回路110の回路モード(回路構成)を切替えるためのモード切替信号としての機能を有する。
【0029】
チャージドメインフィルタ回路110は、制御信号生成部108が生成した図3に示す制御信号に基づいて動作し、入力信号をフィルタリングする。チャージドメインフィルタ回路110を構成する後述の第一のフィルタ回路段120介して出力される信号は、例えば図2に示したような周波数特性を有する。
【0030】
図2に示したように、後述の第一のフィルタ回路段120介して出力される信号の周波数特性は、制御信号生成部108が生成する制御信号の周期に応じて特定される周波数fsと、その整数倍の周波数とがゼロ点あるいはヌル点となるものである。かかる周波数特性はSINC関数と形状が類似するため、このような周波数特性を与えられる回路をSINCフィルタ回路と称することもできる。また、かかる周波数特性は、制御信号生成部108が生成する制御信号を可変とするのみで変更することができるため、異なる周波数特性を得るために複数のフィルタ回路を設ける必要が無い点で有利である。
【0031】
次に、チャージドメインフィルタ回路110の詳細な回路構成を図4を参照しつつ説明する。
【0032】
図4は、本実施形態にかかるチャージドメインフィルタ回路110の回路構成を示した説明図である。チャージドメインフィルタ回路110は、トランスコンダクタ(gm)114と、IIRキャパシタ118と、第一のフィルタ回路段120と、第二のフィルタ回路段160と、内部または外部に出力キャパシタ170とを備える。また、チャージドメインフィルタ回路110は、図3に示した制御信号が入力されるものとする。また、以下では、第二のフィルタ回路段160で第一のフィルタ回路段120の標本化速度を1/2に落とす(デシメーション)場合を例に説明する。
【0033】
トランスコンダクタ114は、入力された信号の電圧を、該電圧に比例する電流に変換して出力する信号電流出力部として機能する。IIRキャパシタ118は、トランスコンダクタ12と接続され、チャージドメインフィルタ回路110にIIR特性を付与するよう機能する。なお、チャージドメインフィルタ回路110にIIR特性を付与することは、本実施形態の本質でないため、チャージドメインフィルタ回路110に必ずしもIIRキャパシタ118を設けなくてもよい。
【0034】
第一のフィルタ回路段120は、キャパシタC1、C2、C3およびC4と、スイッチング部としてのスイッチS1、S2、S3、S5、S6、S7、S9、S10、S11、S13、S14およびS15と、を含む。
【0035】
キャパシタC1、C2、C3およびC4は、電荷を蓄積する機能を有する。また、本実施形態にかかるキャパシタC1、C2、C3およびC4は、容量が可変であるMOSを用いたバリキャップ(バラクタ)や、可変容量ダイオードなどであってもよい。上記MOSは、インバージョン・モードで動作するものであっても、アキュムレーション・モードで動作するものであってもよい。
【0036】
また、本実施形態において、キャパシタC1の脇に記載されたφ4は、チャージドメインフィルタ回路110に入力される制御信号φ4がHレベルである間に、キャパシタC1の容量値が減少されることを示している。キャパシタC2、3および4の脇に記載されたφ2またはφ4も同様である。すなわち、各キャパシタCは、容量値が減少される制御信号が入力される制御端子を備える。キャパシタCがMOSキャパシタである場合には、制御端子は、例えばソースおよびドレインに該当する。
【0037】
スイッチS1は、キャパシタC1とトランスコンダクタ114とを導通、または非導通させるためスイッチである。スイッチS1の脇に記載したφ1は、チャージドメインフィルタ回路110に入力される制御信号φ1がHレベルである間、スイッチS1が閉じ、キャパシタC1とトランスコンダクタ114とを導通させることを示している。すなわち、φ1は、チャージドメインフィルタ回路110の少なくとも一部の回路モードを切替えるモード切替信号として機能する。制御信号φ2〜φ4、制御信号φ1r〜φ4r、制御信号ψ1〜ψ4および制御信号ψ1r〜ψ4rも同様にモード切替信号として機能する。
【0038】
スイッチS2は、キャパシタC1と、キャパシタC2と、第二のフィルタ回路段160のキャパシタC5またはC7とを導通、または非導通させるためスイッチである。スイッチS2の脇に記載したφ4は、チャージドメインフィルタ回路110に入力される制御信号φ4がHレベルである間、スイッチS2が閉じ、キャパシタC1と、キャパシタC2と、第二のフィルタ回路段160のキャパシタC5またはC7とを導通させようとすることを示している。
【0039】
スイッチS3は、キャパシタC1をVcomと導通、または非導通させるためスイッチである。スイッチS3の脇に記載したφ1rは、チャージドメインフィルタ回路110に入力される制御信号φ1rがHレベルである間、スイッチS3が閉じ、キャパシタC1とVcomとを導通させることを示している。
【0040】
スイッチS1と同様に、スイッチS5は制御信号φ2に基づいてキャパシタC2とトランスコンダクタ114とを導通、または非導通させるためスイッチである。また、スイッチS9は制御信号φ3に基づいてキャパシタC3とトランスコンダクタ114とを導通、または非導通させるためスイッチである。また、スイッチS13は制御信号φ4に基づいてキャパシタC4とトランスコンダクタ114とを導通、または非導通させるためスイッチである。
【0041】
スイッチS2と同様に、スイッチS6は制御信号φ4に基づいてキャパシタC1と、キャパシタC2と、第二のフィルタ回路段160のキャパシタC5またはC7とを導通、または非導通させるためスイッチである。また、スイッチS10は制御信号φ2に基づいてキャパシタC3と、キャパシタC4と、第二のフィルタ回路段160のキャパシタC6またはC8とを導通、または非導通させるためスイッチである。また、スイッチS10は制御信号φ4に基づいてキャパシタC3と、キャパシタC4と、第二のフィルタ回路段160のキャパシタC6またはC8とを導通、または非導通させるためスイッチである。
【0042】
スイッチS3と同様に、スイッチS7は制御信号φ2rに基づいてキャパシタC2をVcomと導通、または非導通させるためスイッチである。また、スイッチS11は制御信号φ3rに基づいてキャパシタC3をVcomと導通、または非導通させるためスイッチである。また、スイッチS15は制御信号φ4rに基づいてキャパシタC4をVcomと導通、または非導通させるためスイッチである。
【0043】
第二のフィルタ回路段160は、キャパシタC5、C6、C7およびC8と、スイッチS17、S18、S19、S21、S22、S23、S25、S26、S27、S29、S30およびS31と、を含む。
【0044】
キャパシタC5、C6、C7およびC8は、電荷を蓄積する機能を有する。また、本実施形態にかかるキャパシタC5、C6、C7およびC8は、C1、C2、C3およびC4容量を可変とすることが可能な、MOSを用いたバリキャップ(バラクタ)や、可変容量ダイオードなどであってもよい。また、キャパシタC5およびC6は、チャージドメインフィルタ回路110に入力される制御信号ψ4がHレベルである期間に容量値が減少され、キャパシタC7およびC8は、チャージドメインフィルタ回路110に入力される制御信号ψ2がHレベルである期間に容量値が減少される。
【0045】
スイッチS17は、第一のフィルタ回路段120のキャパシタC1およびC2と、キャパシタC5とを導通、または非導通させるためのスイッチである。スイッチS17の脇に記載したψ1は、チャージドメインフィルタ回路110に入力される制御信号ψ1がHレベルである間、スイッチS17が閉じ、キャパシタC1およびC2と、キャパシタC5とを導通させようとすることを示している。
【0046】
スイッチS18は、キャパシタC5と、キャパシタC6および出力キャパシタ170とを導通、または非導通させるためのスイッチである。スイッチS18の脇に記載したψ4は、チャージドメインフィルタ回路110に入力される制御信号ψ4がHレベルである間、スイッチS18が閉じ、キャパシタC5およびC6と、出力キャパシタ170とを導通させようとすることを示している。
【0047】
スイッチS19は、キャパシタC5をVcomと導通、または非導通させるためスイッチである。スイッチS19の脇に記載したψ1rは、チャージドメインフィルタ回路110に入力される制御信号ψ1rがHレベルである間、スイッチS19が閉じ、キャパシタC5とVcomとを導通させることを示している。
【0048】
スイッチS17と同様に、スイッチS21は制御信号ψ2に基づいて第一のフィルタ回路段120のキャパシタC3およびC4と、キャパシタC6とを導通、または非導通させるためのスイッチである。また、スイッチS25は制御信号ψ3に基づいて第一のフィルタ回路段120のキャパシタC1およびC2と、キャパシタC7とを導通、または非導通させるためのスイッチである。また、スイッチS29は制御信号ψ4に基づいて第一のフィルタ回路段120のキャパシタC3およびC4と、キャパシタC8とを導通、または非導通させるためのスイッチである。
【0049】
スイッチS18と同様に、スイッチS22は制御信号ψ4に基づいてキャパシタC5と、キャパシタC6および出力キャパシタ170とを導通、または非導通させるためのスイッチである。また、スイッチS26は制御信号ψ2に基づいてキャパシタC7と、キャパシタC8および出力キャパシタ170とを導通、または非導通させるためのスイッチである。また、スイッチS30は制御信号ψ2に基づいてキャパシタC7と、キャパシタC8および出力キャパシタ170とを導通、または非導通させようとする。
【0050】
スイッチS19と同様に、スイッチS23は制御信号ψ2rに基づいてキャパシタC6をVcomと導通、または非導通させるためのスイッチである。また、スイッチS27は制御信号ψ3rに基づいてキャパシタC7をVcomと導通、または非導通させるためのスイッチである。また、スイッチS31は制御信号ψ4rに基づいてキャパシタC8をVcomと導通、または非導通させるためのスイッチである。
【0051】
出力キャパシタ170は、例えば、チャージドメインフィルタ回路110から出力を取り出すための容量を有する。また、出力キャパシタ170はA/D変換器であってもよい。なお、あるキャパシタCを第1のキャパシタと捉えた場合、該キャパシタCが含まれるフィルタ回路段の後段のフィルタ回路段に含まれるキャパシタCを第2のキャパシタと捉えることができる。
【0052】
〔2〕本実施形態に関連するクロックパルス生成回路の課題
以上、図1〜図4を参照して説明したように、チャージドメインフィルタ回路110を動作させるためには、図3に示したような制御信号を制御信号生成部108が生成し、チャージドメインフィルタ回路110に供給する必要がある。そこで、図3に示したような制御信号を生成可能な本実施形態に関連するクロックパルス生成回路の一例を説明する。
【0053】
図5は、本実施形態に関連するクロックパルス生成回路11の構成を示した説明図である。図5に示したように、クロックパルス生成回路11は、発振部21と、フリップフロップD1〜D8を備える巡回型のシフトレジスタである。発振部21は、図6の上段に示した基本クロックφckを生成し、各フリップフロップD1〜D8に供給する。
【0054】
ここで、各フリップフロップD1〜D8が保持しているデータは、基本クロックφckの立ち上がりのタイミングで次段のフリップフロップD1〜8に送られることとなる。したがって、かかるクロックパルス生成回路11において、一のフリップフロップDの信号レベルをHに設定し、且つ、他の全てのフリップフロップDの信号レベルをLに設定すると、当該一のフリップフロップDに設定されたHデータは、基本クロックφckに従い、順次、次段のフリップフロップDにシフトし、クロックパルス生成回路11内を巡回する。
【0055】
この際、各フリップフロップD1〜D8から出力される信号のタイミングチャートを図6に示す。なお、図6においては、図面の明瞭性の観点から、各フリップフロップD1〜D8から出力される信号のうち、フリップフロップD1から出力される出力信号φ1r、および、フリップフロップD2から出力される出力信号φ1のみを示し、フリップフロップD3〜D8から出力される出力信号に関しては例示していない。図6に示すように、各々隣接するフリップフロップD1〜D8から出力される出力信号は、各々、基本クロックφckのクロック周期(Δt)に応じた位相ズレを持って生成され、各々、制御信号φ1r、φ1、φ2r、φ2、φ3r、φ3、φ4r、φ4として出力されることとなる。この結果、巡回型のシフトレジスタを用いれば、容易に図3上段と同様の制御信号を生成することが可能となり、もって、チャージドメインフィルタ回路110を動作させるための制御信号を生成することが可能となる。
【0056】
ここで、チャージドメインフィルタ回路110においては、例えば制御信号φ1は入力信号をキャパシタCにサンプリングさせるために用いられ、φ1rはキャパシタCに蓄えられている電荷をリセットするために用いられる。
【0057】
したがって、制御信号φ1およびφ1rをはじめ、各制御信号がHに維持される期間は、回路特性の観点からオーバーラップしないようにしてもよい。この点に関し、クロックパルス生成回路11が生成する各制御信号は、HからLへの立下りが次の制御信号のLからHへの立ち上がりと重複する場合がある。そこで、各制御信号の立ち上がりおよび立下りのタイミングも重複しないクロックパルス生成回路12の回路構成を図7に示し、クロックパルス生成回路12により生成されるクロックパルスについて図8に示す。
【0058】
図7に示したように、クロックパルス生成回路12は、発振部22と、フリップフロップD11〜D26を備える巡回型のシフトレジスタである。発振部22は、図8の上段に示した基本クロックφckを生成し、各フリップフロップD11〜D26に供給する。
【0059】
また、上記クロックパルス生成回路11と同様に、クロックパルス生成回路12において、初期値として一のフリップフロップDの信号レベルをHに設定し、他のフリップフロップD全てにLを設定した場合を想定する。ここで、各フリップフロップD11〜D26が保持しているデータは、クロックパルス生成回路11と同様に、基本クロックφckの立ち上がりのタイミングで次段のフリップフロップD11〜26に送られる。したがって、上記のように初期値として一のフリップフロップDの信号レベルをHに設定すれば、Hデータがクロックパルス生成回路12を巡回する。
【0060】
このため、フリップフロップD11〜D26の出力を一つおきに抽出すれば、図8の中段および下段に示したような、各々がHである期間が全く重複しない制御信号φ1およびφ1rなどを得ることができる。なお、制御信号φ1は、制御信号φ1rに対して基本クロックφckの2周期(Δt)に対応する位相遅れを有する。また、各制御信号がHである時間は、基本クロックφckの1周期(Δw)に対応する時間である。
【0061】
ただし、クロックパルス生成回路12には、クロックパルス生成回路11と比較して倍の段数のフリップフロップDを設ける必要がある。また、発振部22は、発振部21の2倍の周波数の基本クロックを生成する必要がある。なお、クロックパルス生成回路11が生成した制御信号の位相調整を担う回路を設けることでも、各制御信号の信号レベルがHである期間の重複を回避しえる。
【0062】
ところで、チャージドメインフィルタ回路110は、図6または図8に示した各制御信号の時間間隔Δtに応じた周波数特性を有する。具体的には、チャージドメインフィルタ回路110は、図2に示した最初の減衰極(ノッチ)の周波数fsが各制御信号の時間間隔Δtの逆数である1/ΔtHzとなる。
【0063】
したがって、発振部21または発振部22が生成する基本クロックφckの周波数を高くする事で、チャージドメインフィルタ回路110における最初のノッチ周波数1/Δtを高くする事が可能となる。このように、チャージドメインフィルタ回路110の周波数特性は、クロックパルス生成回路11または12の基本クロックφckの周波数により調整可能である。
【0064】
また、より広帯域な信号に対応可能なチャージドメインフィルタ回路110を実現するためには、クロックパルス生成回路11または12がより高い周波数で動作する必要がある。例えば、GHzのオーダーの通過域を確保するために最初のノッチ周波数を4GHzに設定した場合、各制御信号の時間間隔Δtを250psとする必要がある。すなわち、図5に示したクロックパルス生成回路11においては発振部21が4GHzの基本クロックφckを生成し、図7に示したクロックパルス生成回路12においては発振部22が8GHzの基本クロックφckを生成する必要が生じる。
【0065】
さらに、図4に示した多段のフィルタ回路段を備えるチャージドメインフィルタ回路110において各段間でデシメーションを行なう場合、前段に与える制御信号を生成するクロックパルス生成回路11または12をより高い周波数で動作させる必要がある。
【0066】
例えば、フィルタ回路段が2段カスケード接続されたチャージドメインフィルタ回路110において、各段間で1/2のデシメーションをする場合を考える。また、チャージドメインフィルタ回路110全体の周波数特性として、最初のノッチ周波数を4GHzとする。この場合、チャージドメインフィルタ回路110の後段のフィルタ回路段には、4GHzで動作させたクロックパルス生成回路11が生成した制御信号、または8GHzで動作させたクロックパルス生成回路12が生成した制御信号を供給する必要がある。また、1段目と2段目のデシメーション比を1/2とした場合、チャージドメインフィルタ回路110の前段のフィルタ回路段には、8GHzまたは16GHzで動作させたクロックパルス生成回路11または12が生成した制御信号を供給する必要がある。
【0067】
このように、本実施形態に関連するクロックパルス生成回路11または12では、チャージドメインフィルタ回路110にGHzオーダーの信号を扱わせるために、極めて高速な周波数でシフトレジスタ(複数のフリップフロップ)を動作させる必要がある。また、このように高周波数の制御信号を発生させようとする場合、発振部21または22、および発振部21または22に付属する回路群において消費電力が増大してしまう。
【0068】
そこで、上記事情を一着眼点にして本実施形態にかかるフィルタ装置100を創作するに至った。本実施形態にかかるフィルタ装置100を構成する制御信号生成部108は、消費電力を抑制しつつ、チャージドメインフィルタ回路110を動作させるための制御信号を生成することができる。以下、図9〜図18を参照しつつ、当該フィルタ装置100を構成する制御信号生成部108および動作を詳細に説明する。
【0069】
〔3〕フィルタ装置を構成する制御信号生成部
図9は、制御信号生成部108の構成例を示した機能ブロック図である。図9に示したように、制御信号生成部108は、多相発振器200と、遷移時点可変部300と、を備え、信号生成装置として機能する。
【0070】
多相発振器200は、信号レベルがH(第1のレベル、または第2のレベル)とL(第2のレベル、または第1のレベル)の間で遷移し、各々が同一の周波数を有し、且つ、各々の信号間に所定の位相差を有する複数の基礎信号を生成する。また、多相発振器200は、任意の基礎信号の信号レベルがHである期間、および該任意の基礎信号に対して所定の位相遅れを有する次の基礎信号の信号レベルがHである期間が重複する複数の基礎信号を生成する。多相発振器200の一例を図10および図11を参照しつつ説明する。
【0071】
図10は、多相発振器200の構成例を示した説明図である。図11は、多相発振器200が生成する基礎信号を示した説明図である。図10に示したように、多相発振器200は、入力信号を遅延、および反転させる複数の遅延反転素子210〜280を備えるリングオシレータである。
【0072】
図10に示す例においては、各遅延反転素子210〜280は、複数の信号が入力され、複数の信号を出力する場合を示しているが、一の信号の入出力ごとに一の遅延反転素子を設けてもよい。また、各遅延反転素子210〜280はCMOSプロセスに基づいて構成されても、複数の入力された信号の差動に基づいて動作してもよい。
【0073】
このような多相発振器200からは、図11に示したように、各々が45度の位相差を有する8相の基礎信号が得られる。例えば、各基礎信号の周波数が500MHzである場合には、隣り合う2つの基礎信号の立ち上がりタイミングの差分は250psとなる。なお、各基礎信号の周波数は、例えば各遅延反転素子210〜280における遅延量を調整することにより変化させることができる。
【0074】
しかし、かかる基礎信号は、各々信号レベルがHである期間が重複するため、チャージドメインフィルタ回路110の各フィルタ回路段に供給する制御信号としては利用することが困難である。そこで、多相発振器200により生成された各基礎信号の立下りタイミングを調整し、制御信号を生成することが可能な遷移時点可変部300を提案する。以下、かかる遷移時点可変部300の具体的構成例を挙げる。
【0075】
〔3−1〕遷移時点可変部の第1の構成例
図12は、遷移時点可変部300の第1の構成例を示した説明図である。図12に示したように、遷移時点可変部300は、2の基礎信号の論理積を演算する複数の論理演算部310、320を備える。
【0076】
例えば、論理演算部310には、基礎信号A及び、該基礎信号Aに対して上記所定の位相差を有する基礎信号/Bの反転信号である基礎信号Bが入力され、基礎信号Aと基礎信号Bの論理積を演算する。
【0077】
また、論理演算部320には、基礎信号/B及び、該基礎信号/Bに対して上記所定の位相差を有する基礎信号Cの反転信号である基礎信号/Cが入力され、基礎信号/Bと基礎信号/Cの論理積を演算する。図12においては記載を省略しているが、遷移時点可変部300は、多相発振器200により生成された各基礎信号C、/D、/A、B、/C、Dを同様に論理演算する論理演算部を備える。
【0078】
図13は、図12に示した遷移時点可変部300により制御信号が生成される様子を示した説明図である。図13に示したように、図12に示した遷移時点可変部300は、多相発振器200により生成された基礎信号に基づいて、各々が所定の位相差を有し、信号レベルがHである期間が重複しない複数の制御信号を生成することができる。なお、図13に示したA・Bをφ1rに対応させ、/B・/Cをφ1に対応させ、C・Dをφ2rに対応させてもよい。
【0079】
なお、チャージドメインフィルタ回路110の周波数特性は、上述したように、各制御信号の時間間隔Δt(立ち上がりのタイミング間隔)に依存する部分が大きいため、各制御信号の時間間隔Δtには高い精度が要求される。一方、各制御信号のパルス幅Δwは、各フィルタ回路段間で信号を転送する窓区間に相当するパラメータである。したがって、スイッチが閉じ、該スイッチを介して電流が流れ、次段のキャパシタC間でチャージシェアが完了するという、一連の段間のチャージの伝達の過渡応答に要する時間さえ確保されていれば、必ずしも制度の高低が問われるものではない。
【0080】
〔3−2〕遷移時点可変部の第2の構成例
遷移時点可変部300の第1の構成例においては、ある制御信号と次の制御信号がHレベルに維持される期間は重複しないものの、ある制御信号の立下りと次の制御信号の立ち上がりの遷移時点が一致する。このように遷移時点が一致する制御信号がチャージドメインフィルタ回路110に供給されると、例えば、キャパシタCによるサンプリングの開始後、所定期間だけ同時にリセットが行なわれてしまうおそれがある。もちろん、回路設計によっては、かかる事態の発生を抑止できるが、各制御信号の立ち上がりおよび立下りのタイミングが一致しないようにすることも有効である。そこで、制御信号の立下りを、次の制御信号の立ち上がりの以前にすることができる点を特徴とする遷移時点可変部300の第2の構成例を以下に説明する。
【0081】
図14は、遷移時点可変部300の第2の構成例を示した説明図である。図14に示したように、遷移時点可変部300は、一の基礎信号の立ち上がりを検出する複数の微分器340、350を備える。
【0082】
図15は、微分器340の詳細な構成を示した説明図である。図16は、図14に示したように遷移時点可変部300により制御信号が生成される様子を示した説明図である。図15に示したように、微分器340は、遅延素子342と、インバータ344と、論理演算部346と、を備える。
【0083】
遅延素子342は、入力された基礎信号Aの位相を上記所定の位相差以下の位相だけ遅延させ、図16の2段目に示した基礎信号A’としてインバータ344に出力する。かかる遅延素子342は、例えば、偶数個のMOSインバータ列、容量および抵抗などであってもよい。
【0084】
インバータ344は、遅延素子342から出力された基礎信号A’を反転させ、図16の3段目に示した基礎信号/A’として論理演算部346に出力する。なお、遅延素子342とインバータ344の配置順番は、遅延素子342が先であっても、インバータ344が先であってもよい。また、必要な遅延量がインバータ344における位相の遅延量と大差ない場合、遅延素子342を設けなくてもよい。
【0085】
論理演算部346は、基礎信号Aと、インバータ344から出力された基礎信号/A’との論理積を演算し、図16の4段目に示したA・/A’を制御信号として出力する。かかる制御信号のパルス幅は、遅延素子342による位相の遅延量に対応する。
【0086】
図14においては記載を省略しているが、遷移時点可変部300は、基礎信号C、/D、/A、B、/C、Dに対して同様の処理をする複数の微分器を備える。その結果、当該遷移時点可変部300は、多相発振器200により生成された基礎信号に基づき、信号レベルがHである期間が重複せず、信号レベルの遷移のタイミングも一致しない複数の制御信号を生成することができる。また、各制御信号のパルス幅は、遅延素子342による位相の遅延量を調整することで容易に変更することが可能である。
【0087】
〔3−3〕遷移時点可変部の第3の構成例
図17は、遷移時点可変部300の第3の構成例を示した説明図である。第3の例にかかる遷移時点可変部300は、第3の例と同様に複数の微分器340、350を備えるが、各微分器340、350の構成が異なる。
【0088】
具体的には、第3の例にかかる遷移時点可変部300の微分器340は、遅延素子348と、論理演算部349と、を備える。遅延素子348には基礎信号Aが入力されると、基礎信号Aの位相を遅延させ、基礎信号A’として論理演算部349に出力する。
【0089】
論理演算部349は、基礎信号A’と、基礎信号Aと上記所定の位相差を有する基礎信号/Bの反転信号である基礎信号Bとの論理積を演算子、制御信号として出力する。当該第3の構成例にかかる遷移時点可変部300は、上記同様に、複数の基礎信号に基づいて制御信号を生成する微分器を複数備える。
【0090】
〔4〕フィルタ装置において実行されるフィルタ方法
以上、本実施形態にかかるフィルタ装置100の構成を説明した。続いて、当該フィルタ装置100において実行されるフィルタ方法について図18を参照しつつ説明する。
【0091】
図18は、本実施形態にかかるフィルタ装置100において実行されるフィルタ方法の流れを示したフローチャートである。図18に示したように、制御信号生成部108の多相発振器200が図11に示した多相信号を生成する(S410)。続いて、制御信号生成部108の遷移時点可変部300が、多相発振器200により生成された多相信号に基づいて、例えば図13に示した制御信号を生成する(S420)。かかる一の制御信号生成部108が生成した制御信号は、チャージドメインフィルタ回路110の一のフィルタ回路段に供給される。
【0092】
そして、チャージドメインフィルタ回路110のスイッチング部は、供給される制御信号に基づいて回路モードを切り替える。ここで、回路モードは、一のキャパシタCに関し、
該キャパシタCに入力信号をサンプリングさせるサンプリングモード、該キャパシタCにサンプリングにより蓄えられた電荷を出力させる出力モードなどを含む。例えば、S1、5、9、13は、各々に供給される制御信号φ1、φ2、φ3、φ4に基づき順次オンされ、キャパシタC1、キャパシタC2、キャパシタC3、キャパシタC4の順にサンプリングが行なわれる(S430)。
【0093】
〔5〕まとめ
以上説明したように、本実施形態にかかるフィルタ装置100においては、制御信号生成部108が、高速に動作するシフトレジスタを用いることなく、相互に信号レベルがHである期間が重複しない複数の制御信号を生成することができる。その結果、消費電力を抑制しつつ、チャージドメインフィルタ回路110を動作させることが可能となる。このようなフィルタ装置100は、CMOSプロセスを用いてチャージドメインフィルタ回路110を構成する場合に特に有効である。
【0094】
なお、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0095】
例えば、本明細書のフィルタ装置100の処理における各ステップは、必ずしもフローチャートとして記載された順序に沿って時系列に処理する必要はなく、並列的あるいは個別に実行される処理(例えば、並列処理あるいはオブジェクトによる処理)も含むとしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0096】
【図1】本実施形態にかかるフィルタ装置の構成を示した説明図である。
【図2】フィルタ装置の動作により得られる出力信号の周波数特性を示した説明図である。
【図3】制御信号生成部により生成される制御信号を示した説明図である。
【図4】チャージドメインフィルタ回路の回路構成を示した説明図である。
【図5】本実施形態に関連するクロックパルス生成回路の構成を示した説明図である。
【図6】クロックパルス生成回路により生成されるクロックパルスを示した説明図である。
【図7】本実施形態に関連する他のクロックパルス生成回路の構成を示した説明図である。
【図8】クロックパルス生成回路により生成されるクロックパルスを示した説明図である。
【図9】制御信号生成部の構成例を示した機能ブロック図である。
【図10】多相発振器の構成例を示した説明図である。
【図11】多相発振器が生成する基礎信号を示した説明図である。
【図12】遷移時点可変部の第1の構成例を示した説明図である。
【図13】図12に示した遷移時点可変部により制御信号が生成される様子を示した説明図である。
【図14】遷移時点可変部の第2の構成例を示した説明図である。
【図15】微分器の詳細な構成を示した説明図である。
【図16】図14に示したように遷移時点可変部により制御信号が生成される様子を示した説明図である。
【図17】遷移時点可変部の第3の構成例を示した説明図である。
【図18】本実施形態にかかるフィルタ装置において実行されるフィルタ方法の流れを示したフローチャートである。
【符号の説明】
【0097】
100 フィルタ装置
104 周波数特性設定部
108 制御信号生成部
110 チャージドメインフィルタ回路
200 多相発振器
300 遷移時点可変部
310、320、346、349 論理演算部
340、350 微分器
342、348 遅延素子
344 インバータ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
各々が同一の周波数を有し、且つ、所定の位相差を有する複数の基礎信号であって、(1)任意の基礎信号、および(2)該任意の基礎信号に対して前記所定の位相遅れを有する次の基礎信号が、共に第1のレベルに維持される期間が重複する複数の基礎信号を生成する多相発振部と;
前記各基礎信号の第1のレベルから第2のレベルへの遷移時点を、前記各基礎信号の前記次の基礎信号の第2のレベルから第1のレベルへの遷移時点以前に変化させてパルス信号を生成する遷移時点可変部と;
を備えることを特徴とする信号生成装置。
【請求項2】
前記遷移時点可変部は、前記多相信号生成部により生成された一の基礎信号と、前記一の基礎信号と前記所定の位相差を有する基礎信号の反転信号と、の論理積を演算して一のパルス信号を生成する論理演算部を備えることを特徴とする、請求項1に記載の信号生成装置。
【請求項3】
前記遷移時点可変部は、
前記多相信号生成部により生成された一の基礎信号の信号レベルが反転され、前記所定の位相差以下の位相が遅延された信号を生成する遅延部と;
前記一の基礎信号と、前記遅延部により生成された信号との論理積を演算して一のパルス信号を生成する論理演算部と;
を備えることを特徴とする、請求項1に記載の信号生成装置。
【請求項4】
入力信号を順次異なる第1のキャパシタがサンプリングし、前記サンプリングにより複数の第1のキャパシタに蓄えられた電荷の少なくとも一部を出力するフィルタ装置であって:
各々が同一の周波数を有し、且つ、所定の位相差を有する複数の基礎信号であって、(1)任意の基礎信号、および(2)該任意の基礎信号に対して前記所定の位相遅れを有する次の基礎信号が、共に第1のレベルに維持される期間が重複する複数の基礎信号を生成する多相発振部と;
前記各基礎信号の第1のレベルから第2のレベルへの遷移時点を、前記各基礎信号の前記次の基礎信号の第2のレベルから第1のレベルへの遷移時点と同一、または遷移時点以前に変化させてパルス信号を生成する遷移時点可変部と;
前記複数のパルス信号に基づいて、前記第1のキャパシタの各々に順次入力信号をサンプリングさせるスイッチング部と;
備えることを特徴とする、フィルタ装置。
【請求項5】
前記遷移時点可変部は、前記多相信号生成部により生成された一の基礎信号と、前記一の基礎信号と前記所定の位相差を有する基礎信号の反転信号と、の論理積を演算して一のパルス信号を生成する論理演算部を備えることを特徴とする、請求項4に記載のフィルタ装置。
【請求項6】
前記遷移時点可変部は、
前記多相信号生成部により生成された一の基礎信号の信号レベルが反転され、前記所定の位相差以下の位相が遅延された信号を生成する遅延部と;
前記一の基礎信号と、前記遅延部により生成された信号との論理積を演算して一のパルス信号を生成する論理演算部と;
を備えることを特徴とする、請求項4に記載のフィルタ装置。
【請求項7】
前記第1のキャパシタは、前記第1のキャパシタの静電容量を減少させるパルス信号が入力される制御端子を備えることを特徴とする、請求項4に記載のフィルタ回路。
【請求項8】
各々が同一の周波数を有し、且つ、所定の位相差を有する複数の基礎信号であって、(1)任意の基礎信号、および(2)該任意の基礎信号に対して前記所定の位相遅れを有する次の基礎信号が、共に第1のレベルに維持される期間が重複する複数の基礎信号を生成するステップと;
前記各基礎信号の第1のレベルから第2のレベルへの遷移時点を、前記各基礎信号の前記次の基礎信号の第2のレベルから第1のレベルへの遷移時点以前に変化させてパルス信号を生成するステップと;
を含むことを特徴とする、信号生成方法。
【請求項9】
入力信号を順次異なる第1のキャパシタがサンプリングし、前記サンプリングにより複数の第1のキャパシタに蓄えられた電荷の少なくとも一部を出力するフィルタ装置において実行されるフィルタ方法であって:
各々が同一の周波数を有し、且つ、所定の位相差を有する複数の基礎信号であって、(1)任意の基礎信号、および(2)該任意の基礎信号に対して前記所定の位相遅れを有する次の基礎信号が、共に第1のレベルに維持される期間が重複する複数の基礎信号を生成するステップと;
前記各基礎信号の第1のレベルから第2のレベルへの遷移時点を、前記各基礎信号の前記次の基礎信号の第2のレベルから第1のレベルへの遷移時点と同一、または遷移時点以前に変化させてパルス信号を生成するステップと;
前記複数のパルス信号に基づいて、前記第1のキャパシタの各々に順次入力信号をサンプリングさせるステップと;
含むことを特徴とする、フィルタ方法。
【請求項1】
各々が同一の周波数を有し、且つ、所定の位相差を有する複数の基礎信号であって、(1)任意の基礎信号、および(2)該任意の基礎信号に対して前記所定の位相遅れを有する次の基礎信号が、共に第1のレベルに維持される期間が重複する複数の基礎信号を生成する多相発振部と;
前記各基礎信号の第1のレベルから第2のレベルへの遷移時点を、前記各基礎信号の前記次の基礎信号の第2のレベルから第1のレベルへの遷移時点以前に変化させてパルス信号を生成する遷移時点可変部と;
を備えることを特徴とする信号生成装置。
【請求項2】
前記遷移時点可変部は、前記多相信号生成部により生成された一の基礎信号と、前記一の基礎信号と前記所定の位相差を有する基礎信号の反転信号と、の論理積を演算して一のパルス信号を生成する論理演算部を備えることを特徴とする、請求項1に記載の信号生成装置。
【請求項3】
前記遷移時点可変部は、
前記多相信号生成部により生成された一の基礎信号の信号レベルが反転され、前記所定の位相差以下の位相が遅延された信号を生成する遅延部と;
前記一の基礎信号と、前記遅延部により生成された信号との論理積を演算して一のパルス信号を生成する論理演算部と;
を備えることを特徴とする、請求項1に記載の信号生成装置。
【請求項4】
入力信号を順次異なる第1のキャパシタがサンプリングし、前記サンプリングにより複数の第1のキャパシタに蓄えられた電荷の少なくとも一部を出力するフィルタ装置であって:
各々が同一の周波数を有し、且つ、所定の位相差を有する複数の基礎信号であって、(1)任意の基礎信号、および(2)該任意の基礎信号に対して前記所定の位相遅れを有する次の基礎信号が、共に第1のレベルに維持される期間が重複する複数の基礎信号を生成する多相発振部と;
前記各基礎信号の第1のレベルから第2のレベルへの遷移時点を、前記各基礎信号の前記次の基礎信号の第2のレベルから第1のレベルへの遷移時点と同一、または遷移時点以前に変化させてパルス信号を生成する遷移時点可変部と;
前記複数のパルス信号に基づいて、前記第1のキャパシタの各々に順次入力信号をサンプリングさせるスイッチング部と;
備えることを特徴とする、フィルタ装置。
【請求項5】
前記遷移時点可変部は、前記多相信号生成部により生成された一の基礎信号と、前記一の基礎信号と前記所定の位相差を有する基礎信号の反転信号と、の論理積を演算して一のパルス信号を生成する論理演算部を備えることを特徴とする、請求項4に記載のフィルタ装置。
【請求項6】
前記遷移時点可変部は、
前記多相信号生成部により生成された一の基礎信号の信号レベルが反転され、前記所定の位相差以下の位相が遅延された信号を生成する遅延部と;
前記一の基礎信号と、前記遅延部により生成された信号との論理積を演算して一のパルス信号を生成する論理演算部と;
を備えることを特徴とする、請求項4に記載のフィルタ装置。
【請求項7】
前記第1のキャパシタは、前記第1のキャパシタの静電容量を減少させるパルス信号が入力される制御端子を備えることを特徴とする、請求項4に記載のフィルタ回路。
【請求項8】
各々が同一の周波数を有し、且つ、所定の位相差を有する複数の基礎信号であって、(1)任意の基礎信号、および(2)該任意の基礎信号に対して前記所定の位相遅れを有する次の基礎信号が、共に第1のレベルに維持される期間が重複する複数の基礎信号を生成するステップと;
前記各基礎信号の第1のレベルから第2のレベルへの遷移時点を、前記各基礎信号の前記次の基礎信号の第2のレベルから第1のレベルへの遷移時点以前に変化させてパルス信号を生成するステップと;
を含むことを特徴とする、信号生成方法。
【請求項9】
入力信号を順次異なる第1のキャパシタがサンプリングし、前記サンプリングにより複数の第1のキャパシタに蓄えられた電荷の少なくとも一部を出力するフィルタ装置において実行されるフィルタ方法であって:
各々が同一の周波数を有し、且つ、所定の位相差を有する複数の基礎信号であって、(1)任意の基礎信号、および(2)該任意の基礎信号に対して前記所定の位相遅れを有する次の基礎信号が、共に第1のレベルに維持される期間が重複する複数の基礎信号を生成するステップと;
前記各基礎信号の第1のレベルから第2のレベルへの遷移時点を、前記各基礎信号の前記次の基礎信号の第2のレベルから第1のレベルへの遷移時点と同一、または遷移時点以前に変化させてパルス信号を生成するステップと;
前記複数のパルス信号に基づいて、前記第1のキャパシタの各々に順次入力信号をサンプリングさせるステップと;
含むことを特徴とする、フィルタ方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【公開番号】特開2009−21870(P2009−21870A)
【公開日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−183484(P2007−183484)
【出願日】平成19年7月12日(2007.7.12)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年7月12日(2007.7.12)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】
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