偏光変換素子および偏光変換装置
【課題】薄型で低コストの偏光変換素子、および、偏光変換を制御可能な偏光変換装置を提供する。
【解決手段】入射光を第一の偏光成分と第二の偏光成分とに分離する機能、および、偏光成分のうち少なくとも一つの偏光成分を集光する機能を備えたレンズアレイ層7と、偏光回転領域および偏光非回転領域を周期的に形成する偏光変換層6と、を有する偏光変換素子において、レンズアレイ層7は、一対の基板と、一対の基板のうち少なくとも一つの基板上に備えられ、一対の基板間に電界を印加可能な電極と、一対の基板間に備えられ、電極によって印加される電界によって屈折率分布の制御が可能な液晶8と、を有する。
【解決手段】入射光を第一の偏光成分と第二の偏光成分とに分離する機能、および、偏光成分のうち少なくとも一つの偏光成分を集光する機能を備えたレンズアレイ層7と、偏光回転領域および偏光非回転領域を周期的に形成する偏光変換層6と、を有する偏光変換素子において、レンズアレイ層7は、一対の基板と、一対の基板のうち少なくとも一つの基板上に備えられ、一対の基板間に電界を印加可能な電極と、一対の基板間に備えられ、電極によって印加される電界によって屈折率分布の制御が可能な液晶8と、を有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、偏光変換素子および偏光変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の偏光変換素子に関して説明する。
一般に、液晶パネルのように特定偏光の光変調により画像表示を行うライトバルブでは、特定偏光以外の照明光は入射側の偏光板で吸収されるため、照明光がランダム偏光の場合にはその約半分が光量損失となる。この問題を解決して光利用効率を向上させるために、偏光分離と偏光回転とにより偏光変換を行う照明光学系が各種提案されている。偏光分離に用いられる光学素子としてはPBS(Polarizing Beam Splitter)プリズム,PBSアレイ,マイクロプリズムアレイ,複屈折DOE(Diffractive Optical Element)等が挙げられ、偏光回転に用いられる光学素子としては1/2波長板,TN(Twisted Nematic)液晶等が挙げられる。
【0003】
ランダム偏光は偏光分離において偏波面(すなわち電気ベクトルの振動面)が互いに直交する2種類の直線偏光に分離され、一方の直線偏光は偏光回転によりその偏波面が回転して他方の直線偏光と同じ偏光状態となる。この偏光変換により、偏波面が揃った直線偏光のみを入射側偏光板に入射させることができる。したがって、入射側偏光板による光量損失はほとんどなくなり、ライトバルブに対して光利用効率の高い照明が達成可能となる。
【0004】
偏光変換素子に関しては、以下の従来技術例が知られている。
特許文献1には、「偏光変換素子及び該偏光変換素子を用いた表示装置」が開示されている。この発明は、特許文献1の図1に示されているように、入射光を収束させるマイクロレンズアレイと、配向液晶層からなる複屈折性を有する複屈折膜と、液晶層でストライプ状に波長板機能と波長板機能を持たない部位が交互に一定のピッチで配列している液晶波長板とを有することを特徴としている。
しかし、この特許文献1の偏光変換素子では、偏光分離部に複屈折層を用いているため、回折格子のような微細構造を形成する必要が無いが、微小構造化のためにコストが嵩む可能性がある。
【0005】
液晶レンズに関しては、以下の従来技術例が開示されている。
非特許文献1には、電極分割構造の液晶マイクロレンズを用いて、電界分布を非対称的にすることで、光軸方向以外に焦点を移動することができる「液晶マイクロレンズ」が開示されている。
【0006】
また、特許文献2には、ネマチック液晶中で光重合によるポリマーを形成する。メモリー性があり、レンズ特性が可変にできる「液晶マイクロレンズ」が開示されている。
【0007】
特許文献3、4には、円形状の穴抜きパターン電極をアレイ状に配置した液晶マイクロレンズを用いて、焦点距離が可変なレンズとし、光インターコネクション素子の光の結合効率を可変とし、分割電極により焦点位置の制御も可能である「光結合器」が開示されている。
【0008】
しかしながら、上述した液晶レンズに関する各従来技術例(非特許文献1、特許文献2〜4)において、偏光変換機能を付加するような構成はない。
【特許文献1】特開2000−171633号公報
【特許文献2】特許第3016744号公報
【特許文献3】特開平11−109303号公報
【特許文献4】特開平11−109304号公報
【非特許文献1】「O plus E、1998年 10月号、株式会社新技術コミュニケーションズ刊、佐藤 進著“液晶マイクロレンズ”」
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、薄型で低コストの偏光変換素子、および、偏光変換を制御可能な偏光変換装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
かかる目的を達成するために、請求項1記載の発明は、入射光を第一の偏光成分と第二の偏光成分とに分離する機能、および、偏光成分のうち少なくとも一つの偏光成分を集光する機能を備えたレンズアレイ層と、偏光回転領域および偏光非回転領域を周期的に形成する偏光変換層と、を有する偏光変換素子において、レンズアレイ層は、一対の基板と、一対の基板のうち少なくとも一つの基板上に備えられ、一対の基板間に電界を印加可能な電極と、一対の基板間に備えられ、電極によって印加される電界によって屈折率分布の制御が可能な液晶と、を有することを特徴とする。
【0011】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明二位おいて、偏光変換層は、少なくとも、一対の基板と、重合性液晶と、光重合開始剤とからなる液晶組成物と、一対の基板上にそれぞれ設けられ、液晶組成物を一対の基板間で配向させるための配向膜と、を有することを特徴とする。
【0012】
請求項3記載の発明は、請求項1記載の発明において、偏光変換層は、複屈折性を示す領域と、等方性を示す領域との周期構造からなることを特徴とする。
【0013】
請求項4記載の発明は、請求項1から3のいずれか1項に記載の発明において、レンズアレイ層の液晶は、少なくとも重合性液晶を含んだ液晶組成物であることを特徴とする。
【0014】
請求項5記載の発明は、請求項1から4のいずれか1項に記載の偏光変換素子と、偏光変換素子に備えられた電極の、電界印加の方向または電界印加のタイミングを切り替え可能な電界印加制御手段と、を有することを特徴とする。
【0015】
請求項6記載の発明は、請求項1から4のいずれか1項に記載の偏光変換素子と、偏光変換素子のレンズアレイ層と偏光変換層との間に設けられた偏光分離層と、を有し、偏光分離層は、一対の基板と、一対の基板間に電界を印加可能な電極と、電極の電界印加の方向または電界印加のタイミングを切り替え可能な電界印加制御手段と、を備えることを特徴とする。
【0016】
請求項7記載の発明は、請求項6記載の発明において、偏光分離層は、少なくとも、非重合性液晶と、重合性モノマーあるいはプレポリマーと、光重合開始剤とからなる組成物からなり、組成物を二光束干渉露光することにより、主にポリマーから成る層と、主に非重合性液晶から成る層との周期的な相分離構造を形成したホログラフィックポリマー分散液晶層であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、薄型で低コストの偏光変換素子、および、偏光変換を制御可能な偏光変換装置を提供することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明を実施するための最良の形態について添付図面を参照して詳細に説明する。
【0019】
〔第1の実施形態〕
まず、本発明の第1の実施形態について説明する。
第1の実施形態は、薄型で低コストの偏光変換素子を提供することを目的とする。この目的を達成するために、第1の実施形態の構成は、入射光を第一の偏光成分と第二の偏光成分とに分離する機能と、これら偏光成分のうち少なくとも一成分を集光する機能とを備えたレンズアレイ層と、偏光回転領域および偏光非回転領域を周期的に形成する偏光変換層と、を有する偏光変換素子において、レンズアレイ層は、一対の透明基板と、これら透明基板のうち少なくとも一方の基板上に備えられるストライプ状の電極アレイと、この電極アレイによって一対の透明基板間に印加される電界によって屈折率分布の制御が可能な液晶と、を有して構成されることを特徴とする。よって、従来の偏光変換素子では、集光部、偏光分離部、偏光変換部がそれぞれ必要であったが、第1の実施形態では、集光部及び偏光分離部の機能を兼ね備えたレンズアレイ層を液晶の屈折率分布を用いて実現しているので、従来よりも部品点数の少ない構成で偏光変換機能を実現できるため、薄型又は小型で低コストの偏光変換素子が実現できる。
【0020】
また、第1の実施形態は、耐環境性(熱安定)の高い偏光変換素子を提供することを目的とする。この目的を達成するために、第1の実施形態の構成は、上記偏光変換素子において、前記レンズアレイ層の屈折率分布が制御可能である液晶は、少なくとも重合性液晶を含んだ液晶組成物であることを特徴とする。よって、第1の実施形態は、上記偏光変換素子で用いる液晶が少なくとも重合性液晶を含んだ液晶組成物であるため、屈折率分布が制御可能である液晶を用いたレンズアレイ層は電界などの外場および膜厚により焦点位置を設定でき、所望の焦点位置にて液晶組成物を硬化することができる。このように硬化することで、焦点位置は熱などの影響を受けず、耐環境性の高い偏光変換素子が実現できる。
【0021】
第1の実施形態による偏光変換素子の概略断面を図1に示す。図1において、光が入射する側から、入射光を集光するためのレンズアレイ層7と、偏光変換層6を含む部分とが積層されている。レンズアレイ層7、偏光変換層6はそれぞれ透明基板1,2,3に挟まれている。あるいは、より薄型化するために、レンズアレイ層7と偏光変換層6の間の基板部分(透明基板2)を一枚の基板で共通化しても良い。
【0022】
ここで、レンズアレイ層7は二枚の透明基板2,3と、少なくとも一方の基板上(図1では透明基板2上)に形成したストライプ型透明電極アレイ5と、二枚の透明基板2,3間に電界印加によって屈折率分布の制御が可能な液晶8とを有する。図1では、レンズアレイ層7における液晶8の配向状態の一例を模式的に示している。このとき基板2,3間に電界を印加しない初期状態では、図2に示すように、液晶分子8が透明基板2,3に沿って平行になるようにホモジニアス配向処理されている。
【0023】
図2では、液晶分子8の長軸が紙面の左右方向になるような配向処理を想定している。上側の透明基板2には透明電極ラインがアレイ状に形成されており、この透明電極アレイ5のピッチは、図1に示すように偏光変換層6の偏光回転領域9と偏光非回転領域10のピッチに対応していることが好ましい。下側の透明電極4は全面に形成されているが、下側の透明電極4は上側の透明基板2と対称なアレイ電極でも良い。
【0024】
透明基板1,2,3の材質としては、ガラス、プラスチック等を使用でき、また、透明電極4,5の材質としては、ITO等が利用できる。なお、電極は透明でなくてもよく、Al、Cr等の導電性を示すものなら何でもよい。透明電極は液晶層側になるように設置する。使用する基板自身が導電性を有している場合は、基板を電極としても利用することができる。液晶8の材料としては、一般的なネマチック液晶(非重合性および重合性液晶)を用いることができ、複屈折Δnや誘電異方性Δεが大きい方が好ましい。特に、複屈折としては液晶材料の常光屈折率がガラス基板の屈折率に近い1.5〜1.6程度で、異常光屈折率が1.7〜1.8程度と大きいことが好ましい。
【0025】
図3を用いてレンズアレイ層7が焦点を結ぶ動作機能について説明する。図3は、透明電極アレイ5のうち所定の透明電極ライン(図中の透明電極アレイ5のうち、色付きで表示した部分)にのみ液晶配向変化の閾値以上の電圧を印加した場合を示す。電圧を印加した電極部では電界によって垂直に配向し、無印加の電極部では水平に配向したままになる。この液晶セル内部の不均一電界による配向方向の分布によって異常光に対する屈折率分布が生じる。紙面に平行な偏光面を持つ直線偏光を入射する場合、液晶分子長軸が基板に垂直に配向するにしたがって実効的な屈折率が小さくなり、図4の実線のような屈折率分布の影響を受ける。この屈折率分布は、図3の電極ピッチに対応した比較的大きな凸レンズ状になっており、この屈折率分布により光を絞る集光機能が発生する。
【0026】
ここで、液晶8の層の厚さは基板間のスペーサー部材(図示せず)の厚さよって適宜設定でき、印加する電界と、この厚さによって生成される屈折率分布とは、所望の焦点位置となるように最適化される。また、液晶8の材料として重合性液晶を用いた場合、前述したような所望の集光位置が得られる状態で重合(硬化)させることが必要である。重合することで熱的にも安定状態を維持することができる。
【0027】
以上説明したように、第1の実施形態によれば、液晶の屈折率分布を用いたレンズアレイ層は、集光機能と偏光分離機能を兼ね備えている。そのため、従来の偏光変換素子と比較して、部品点数が少なく、薄型の偏光変換素子が実現できる。
【0028】
〔第2の実施形態〕
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。
第2の実施形態は、低コストで薄型の偏光変換素子を提供することを目的とする。この目的を達成するために、第2の実施形態の構成は、上記第1の実施形態の偏光変換素子において、偏光変換層は、少なくとも、一対の基板と、重合性液晶と、光重合開始剤とからなる液晶組成物と、一対の基板上にそれぞれ設けられ、液晶組成物を一対の基板間で配向させるための配向膜と、を有することを特徴とする。よって、従来の偏光変換素子における偏光変換は偏光分離層(偏光ビームスプリッター)に1/2波長板を所定の位置に貼り付けることでその機能がなされているが、第2の実施形態の偏光変換は、偏光変換層のみの構成でなされるため、1/2波長板の貼り付け工程が不要となり、従来よりも容易に製造可能になる。この偏光分離層は、重合性液晶と光重合開始剤とからなる液晶組成物と、この液晶組成物を一対の基板間で配向させるための配向膜とからなり、パターン露光および電界などの外場を加えることで偏光回転領域および偏光非回転領域の周期構造が形成可能である。
【0029】
図5は、第2の実施形態の偏光変換層および透明基板も含む部分の一例を図示したものである。図5において、偏光変換層6は、重合性液晶と光重合開始剤からなる液晶組成物を透明基板1,2間に保持し、光照射により形成した偏光回転領域9および偏光非回転領域10が周期的に配列されている。図5では、後述するツイストネマチック配向を利用した例を示しているが、この配向状態に限らず水平配向による1/2波長板の配向状態でも良い。基板1,2としては光学的に等方的で透明ならば、ガラスやプラスチックあるいはフィルムなどを用いることができる。
【0030】
図5において、二枚の基板1,2の間にはスペーサー部材を配置しても良い。スペーサー部材としては、液晶表示装置に用いられるような球形スペーサー、ファイバースペーサー、フィルムなどを用いることができる。また、フォトリソグラフィーとエッチングあるいは成型技術などによって基板表面に突起形状を加工しても良い。スペーサー部材は偏光変換層6の有効領域外に形成することが好ましい。スペーサー部材の高さは数μmから数十μm範囲が好ましく、液晶層のリタデーションあるいは旋光性が所望の値を示すよう適宜設定される。
【0031】
重合性液晶としては、単官能の液晶アクリレートモノマー、液晶メタアクリレートモノマー、二官能の液晶ジアクリレートモノマー、液晶ジメタアクリレートモノマーなどが用いられる。これらの材料は、官能基であるアクリロイルオキシ基と液晶骨格の間にメチレン鎖を有していても良い。具体例としては、大日本インキ化学製の液晶アクリレートモノマーUCL001などを用いることができる。
【0032】
光重合開始剤としては、公知の材料を用いることができ、例えばビアセチル、アセトフェノン、ベンゾフェノン、ミヒラーケトン、ベンジル、ベンゾインアルキルエーテル、ベンジルジメチルケタール、1−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、2−クロロチオキサントン、メチルベンゾイルフォーメート、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、ジエトキシアセトフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、α-アミノアルキルフェノン、ビスアシルフォスフィンオキサイド、メタロセンなどを例示することができる。光重合開始剤の添加量は照射する光の波長に対する各材料の吸光度によっても異なるが、モノマーまたはプレポリマー全量に対して0.1重量%以上10重量%以下であることが好ましく、0.5重量%以上3重量%以下であることがより好ましい。具体例としては、青色光で露光する場合には、メタロセン系光重合開始剤(チバガイギー製イルガキュア784)を0.5重量部程度添加することができる。
【0033】
上記液晶組成物を二枚の透明基板1,2間で配向させるための配向膜11,12が透明基板1,2の面にそれぞれ用いられている。入射した偏光成分の偏光面が回転して出射する配向状態としては、水平配向した液晶の配向方向を偏光面に対して所望の角度傾けて設定し、液晶層のリタデーションを1/2波長に設定する場合と、ツイストネマチック配向の旋光性を利用する場合のいずれかを用いることが好ましい。
【0034】
リタデーションを1/2波長に設定した液晶位相差板の場合、液晶組成物を二枚の基板1,2間で平行配向させるための配向膜11,12が透明基板1,2の面に設けられている。配向膜11,12としてはポリイミドなどを用い、配向膜11,12の配向処理方法としてはラビング法や偏光紫外線照射などによる光配向法を用いることができる。上下の透明基板1,2の配向処理方向を平行にし、液晶の配向方向を偏光面に対して45度程度傾けて設定することで、出射光の偏光面を90度回転させることができる。この場合、使用する光の波長と液晶材料の複屈折に応じて、液晶層の厚みを設定するため、各波長に対して専用の液晶厚みを設定する必要がある。
【0035】
一方、ツイストネマチック配向の旋光性を利用する場合、液晶組成物を二枚の透明基板1,2間でツイストネマチック(TN)配向させるための配向膜11,12が透明基板1,2の面に設けられている。配向膜11,12としてはポリイミドなどを用い、配向膜11,12の配向処理方法としてはラビング法や偏光紫外線照射などによる光配向法を用いることができる。上下の透明基板1,2の配向処理方向を直交させることでTN配向の液晶層を形成することができる。このとき、TN配向を安定化させるために液晶組成物にカイラル剤を添加しても良い。また、配向膜11,12の配向処理方向は、前述の偏光分離層の回折格子のストライプ構造の方向に対して平行あるいは直交するように設定する、すなわち、偏光回転層に入射するP偏光成分あるいはS偏光成分と直交するように設定する。ツイストネマチック配向の場合、偏光回転作用が旋光性であり、比較的広い波長範囲で偏光面を回転させることができる。
【0036】
このようにして、図6に示すように、TN配向した液晶組成物(TN液晶層13)を形成する。次に、図7のように所望の領域を光照射してTN配向状態を重合固化させ、偏光回転領域9を形成する。このとき、レンズアレイのピッチに対応した開口マスクなどを用いて所望のピッチの領域のみを露光する。例えば、前述の光重合開始剤に感度がある青色光で露光する。その後、液晶組成物の未硬化部において、入射した偏光成分の偏光面が回転しない配向状態に転移させた状態で、全面的あるいは部分的な光照射により重合固化させて偏光非回転領域を形成する。入射した偏光成分の偏光面が回転しない配向状態に転移させた状態とは、例えば図5のような垂直配向状態、捻れがない水平配向状態、等方相の状態がある。これらの状態は電界や磁界など印加や加熱によって得ることができる。
【0037】
図5に示すような偏光変換層6では、偏光回転領域9にP偏光のみが入射した場合、TN配向で固定化された液晶ポリマー部の旋光性よってS偏光成分と同一偏光方向となって出射する。一方、偏光非回転領域10にS偏光のみが入射した場合、そのままS偏光が出射する。レンズアレイの各レンズの中心位置に対して偏光回転層の偏光回転領域9の位置が対応するようにレンズアレイ部と偏光分離層を含む部分と偏光回転層を含む部分を位置合わせして張り合わせる。
【0038】
なお、レンズアレイ層の集光位置や偏光変換層の特性の設定を変化させることで、自然光をP偏光成分が多くなるように偏光変換することも可能である。第2の実施形態では、レンズアレイと偏光回転層の位置合わせ工程が必要ではあるが、偏光回転領域と偏光非回転領域の周期構造を同一の材料を用いたマスク露光と配向変化処理後の全面露光のような比較的簡単な工程で作製することができる。
【0039】
具体例としては、基板:ソーダガラス(片面ARコート付)、外形30×40mm、厚さ1.1mmのものを2枚張り合わせて、基板間に6μmのスペーサーによりセルギャップを制御した。張り合わせ前には両基板にポリイミドの配向膜(AL3046:JSR製)を1000Å塗布し、ラビング処理をした。ラビング方向は張り合わせるときに垂直方向になるように設定した。また、液晶材料は母液晶(UVキュアラブル):UCL−001−K0(DIC製)と複液晶(Δε誘発):E7(母液晶に対して5wt%)(メルク製)とカイラル剤:S−811(TN90°に設定)と光重合開始剤:IRG819(母液晶+複液晶に対して1wt%)を混ぜた組成物を用いて、暗室内で毛細管現象によりセル内へ注入した。
【0040】
次に、UVスポット照射機(オーク製)にてマスクパターンを密着露光した。マスクパターンは(L/S:500/500 or 50/50[μm])であり、露光条件はUV照射(365nm):5mW/cm^2、照射時間:電界印加前2sec/電界印加後5sec、電界印加:35V/μm,100Hz、露光温度:RTとし、TN液晶領域による偏光回転領域と垂直配向領域による偏光非回転領域との周期構造を形成した。青色レーザー(He−Cd)と対物レンズ(×50)とアクロマートレンズを用いて偏光回転領域と偏光非回転領域のそれぞれに焦点位置を設定した。入射光の偏光面は周期構造の配列方向とした。偏光板を用いてセルを透過した偏光方向を確認したところ、偏光非回転領域へ入射したときは、偏光方向は入射時と同じであった。また、偏光回転領域へ入射した時は、偏光方向は入射偏光方向から90度回転した偏光方向であった。
【0041】
〔第3の実施形態〕
次に、本発明の第3の実施形態について説明する。
第3の実施形態は、低コストで薄型の偏光変換素子を提供することを目的とする。この目的を達成するために、第3の実施形態の構成は、上記第1の実施形態の偏光変換素子において、偏光変換層は、複屈折性を示す領域と、等方性を示す領域との周期構造からなることを特徴とする。よって、偏光変換層が、複屈折性を示す領域と、等方性を示す領域との周期構造からなり、例えば、ガラスなどの等方性媒質を凹凸形状にし、凹凸の溝部に液晶を配向させ、複屈折性を示す領域は液晶で形成され、液晶領域にて得られる複屈折とその膜厚(セルギャップ)を1/2波長条件に最適化することで偏光回転領域(液晶領域)および偏光非回転領域(等方性領域)の周期構造が形成可能である。これは前記したように1/2波長板を貼り付ける工程が不要であり、従来に比べて容易に製造可能になる。
【0042】
図8に第3の実施形態の一例である偏光変換層の断面の構成概略を示す。図8(a)は、複屈折性媒体に格子形状を形成し、格子溝を等方性媒体にて埋めた構成を示しており、これに対して、図8(b)は、等方性媒体に格子形状を形成し、格子溝を複屈折性媒体にて埋めた構成を示している。
【0043】
例えば、図8に示した偏光変換層の機能動作としては、図9に示すように、等方性領域に入射する偏光方向はそのままの偏光方向状態で透過し、複屈折領域に入射する偏光方向は偏光方向が90度回転した状態で透過する。ここで、複屈折領域のΔnと膜厚dとからなるリタデーションΔnd=λ/2条件を満たすように設定されている。このように偏光変換層が、複屈折性を示す領域と等方性を示す領域との周期構造からなることで、図1に示すようにレンズアレイ層の集光位置を偏光変換層の偏光回転領域あるいは偏光非回転領域に設定することで偏光変換機能が実現できる。
【0044】
ここで、格子形状の形成はフォトリソグラフィーとエッチングまたは切削加工や成形技術等により形成することができる。また、等方性媒体としては、フォトポリマー等の透明樹脂や石英、BK7等の光学硝材が使用できるが、複屈折性を有さなければこれに限定されるものではない。複屈折媒体としては、ニオブ酸リチウム結晶、ニオブ酸タンタル結晶、酸化チタン結晶、高分子複屈折膜(高分子フィルム)、液晶等が使用できる。特に高分子複屈折膜や液晶は生産性に優れている。
【0045】
高分子複屈折膜は、高分子フィルムを延伸して高分子鎖を配向させることによって複屈折性を有した高分子膜であり、簡単に大量生産することができ、低コストで偏光分離素子の作製ができるといった利点がある。延伸する高分子フィルムの高分子材料としては、例えば、ポリオレフィン系、ポリアクリルレート、ポリカーボネイト(PC)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、ポリスチレン等が使用できるが、これに限定されるものではない。液晶も表示装置などに汎用されているため製造面において低コストで量産性がよい。また、複屈折性(屈折率異方性)が大きいため、薄膜化にも向いているといった利点がある。液晶としては、非重合性液晶におけるネマチック、コレステリック、スメクチックなど一般的な液晶タイプを使用することができる。作製時には複屈折性を効率よく利用するために配向膜、ラビング、光配向等の配向処理をすることが好ましい。
【0046】
前述では格子形状を加工技術により形成しているが、後述(第5の実施形態参照)するような干渉露光により等方性領域と複屈折性領域を自己組織的に形成してもよい。素子のサイズにもよるが自己組織的な形成法は加工法に比べて製造にかかる時間等が短くできるため、生産性に優れている。また、素子構成において耐湿熱性、耐久性のためにオーバーコート層(図示せず)を設けることが好ましく、オーバーコート層を形成する材料としては、常光線方向屈折率と異常光線方向屈折率との何れか一方と同じ屈折率を持つ透明樹脂等を使用することが好ましい。
【0047】
具体例としては、厚み0.5ミリのBK7ガラス基板表面に約3μmのSiON膜を製膜し、電子ビーム描画によるレジストパターン形成とエッチング加工によって、SiON膜にピッチ100μm、凹部の幅約50μm、凸部の幅約50μm、凹部の深さ約1.5μmの形状を作製した。対向基板として厚み0.5ミリのBK7を用い、ポリイミド系の配向膜を800オングストロームの厚みで形成し、ラビング処理を行った。凹凸基板の溝の方向とラビング方向一致するように、空セルを作製し、真空注入法を用いて液晶材料(メルク社製ZLI2248)を注入した。青色レーザー(He−Cd)と対物レンズ(×50)とアクロマートレンズを用いて凹凸形状のそれぞれに焦点位置を設定した。入射光の偏光面はラビング方向と45度回転した方向とした。偏光板を用いてセルを透過した偏光方向を確認したところ、凸部へ入射したときは、偏光方向は入射時と同じであった。また、凹部へ入射した時は、偏光方向は入射偏光方向から90度回転した偏光方向であった。
【0048】
〔第4の実施形態〕
次に、本発明の第4の実施形態について説明する。
第4の実施形態は、電界により偏光変換が制御可能な偏光変換装置を提供することを目的とする。この目的を達成するために、第4の実施形態の構成は、上記第1〜3の実施形態の偏光変換素子と、この偏光変換素子のレンズアレイ層に設置された電極の、電界印加の方向または電界印加タイミングを切り替え可能な電界印加制御手段と、を設けたことを特徴とする。よって、レンズアレイ層に電界を印加する電界印加制御手段を設けているため、電界印加の切り替えに応じて焦点位置を変化することができる。この焦点位置が偏光回転領域と非偏光回転領域とを選ぶことで、偏光変換機能が電界により制御可能となる。
【0049】
第4の実施形態の特徴は、図10に示すように、レンズアレイ層7に電界印加制御手段20を設けており、この電界印加制御手段20により偏光変換がアクティブに制御できる。
【0050】
ここで、図11に、電界制御による偏光変換の動作を示す。第1の実施形態と同様に図11の上段(状態1)の図では、透明電極アレイ5のうち所定の透明電極ライン(図中の透明電極アレイ5のうち、色付きで表示した部分)にのみ閾値以上の電圧を印加した場合を示す。電圧を印加した電極部では電界によって垂直に配向し、無印加の電極部では水平に配向したままになる。この液晶セル内部の不均一電界による配向方向の分布によって異常光に対する屈折率分布が生じる。紙面の平行な偏光面を持つ直線偏光を入射する場合、液晶分子長軸が基板に垂直に配向するにしたがって実効的な屈折率が小さくなり、図12に示す実線(状態1)のような屈折率分布の影響を受ける。この屈折率分布は、図11の電極ピッチに対応した比較的大きな凸レンズ状になっており、一偏光成分に対して集光機能が発生する。
【0051】
次に、電界印加制御手段20により、図11の下段(状態2)の図に示すように、電界を印加する電極を切り換えると、液晶分子の配向状態も変化し、図12に示す破線(状態2)のような屈折率分布に変化する。
【0052】
このように、電界を電極アレイに印加することによって集光し、印加する電極の位置を切り換えることによって、その焦点位置をシフトすることができる。すなわち、焦点位置を偏光回転層の偏光回転領域と偏光非回転領域のどちらか一つの領域に設定することで、電界制御により出射する偏光面の方向を制御することが可能となる。
【0053】
前述したように、この焦点位置は液晶の配向に起因する屈折率分布によって変化する。液晶の配向は印加する電界強度によって変化するため、印加する電界強度を調節することができる電界印加制御手段20を有することにより、焦点位置は可変できる。つまり、焦点位置が何らかの原因で変化したときにも調整することができる。例えば、焦点位置が変化する一つの原因として温度の影響がある。これは液晶材料の特性には温度依存性があるためである。例えば液晶材料の弾性定数、誘電率の温度特性によって、温度が下がると閾値電圧は上昇する。すなわち、液晶層に印加される電界が一定の場合、温度が変化すると焦点位置も変化する。そこで、温度検知手段を有し、温度検知手段の検知温度に対応して電界印加制御手段により印加する電界を調節して、焦点位置を制御することが好ましい。
【0054】
具体例として、透明ガラス基板(3cm×4cm、厚さ1.1mm)を二枚用い、一方の基板上にはCrのライン電極を形成した。このライン電極は交互に同一電圧を印加できるように櫛形電極A、Bを設けた。もう一方の基板は基板の片側全面にITOを形成し、ベタ電極とした。ガラス基板のITO側にポリイミド系の配向材料(AL3046−R31、JSR社)をスピンコートし、約0.3μmの配向膜を形成した。ガラス基板のアニール処理後、Crラインに対して直角方向にラビング処理を行った。二枚のガラス基板の間に3μmのスペーサー(真絲球)を挟み、上下基板を張り合わせ(電極面は対向させる)加圧した後、UV硬化接着剤で封止をして空セルを作製した。空セルの中に、誘電率異方性が正のネマチック液晶(ZLI−2471、メルク社)を毛細管法で注入し、液晶セルを作製した。上下基板のラビング処理の方向は一致しているため、液晶分子は基板に対して平行で全て同じ向きに配向(ホモジニアス配向)した状態となる。
【0055】
ここで作製したセルに電圧を印加して動作させた。印加電圧は3台のファンクションジェネレーターを使い、1台はトリガーとして、櫛型電極A、Bへ交互に電圧を印加するために用いた。入力周波数は100Hz、電圧の入力波形は三角波とし電圧値はオシロスコープ、テスターで確認した。セルへの入射光は白色ランプにアパーチャー(1.5mm)を取りつけ、コリメートレンズにより平行光にし、偏光板を用いて櫛形電極のストライプ形状とは垂直になるように偏光方向を設定してセルの透過光を顕微鏡[対物レンズ(40×)+リレーレンズ+CCD(“1/3)]で観察した。顕微鏡位置は光軸に対して平行移動させて、一番集光している位置に固定し、16Vの印加電圧を櫛形電極A、Bと切り換えることで観察像位置がシフトした。
【0056】
〔第5の実施形態〕
次に、本発明の第5の実施形態について説明する。
第5の実施形態は、外場により偏光変換が制御可能な偏光変換装置を提供する。この目的を達成するために、上記第1〜3の実施形態の偏光変換素子を有し、この偏光変換素子のレンズアレイ層と偏光変換層との間に偏光分離層を設け、この偏光分離層は、一対の透明基板と、これら一対の透明基板間に電界を印加可能な電極と、この電極の電界印加の方向または電界印加のタイミングを切り替え可能な電界印加制御手段とを有することを特徴とする。よって、レンズアレイ層と偏光変換層の間に偏向分離層を設けて、偏光分離層の光の偏向方向が偏光回転領域と非偏光回転領域とを選択することで、上記第1の実施形態のようにレンズアレイ層の焦点位置が固定の場合においても、偏光変換が電界により制御可能となる。
【0057】
また、第5の実施形態は、外場により偏光変換が高速に制御可能な偏光変換装置を提供することを目的とする。この目的を達成するために、第5の実施形態の構成は、上記本実施形態の偏光変換装置において、偏光分離層が、少なくとも、非重合性液晶と、重合性モノマーあるいはプレポリマーと、光重合開始剤とからなる組成物からなり、この組成物を二光束干渉露光することにより、主にポリマーから成る層と、主に非重合性液晶から成る層との周期的な相分離構造を形成したホログラフィックポリマー分散液晶層であることを特徴とする。よって、偏光分離層がホログラフィックポリマー分散液晶層からなるため、電界制御により偏光変換の切り替え速度が数十μsecオーダーの高速切り替えが可能となる。
【0058】
第5の実施形態の特徴は、図13に示すように、レンズアレイ層7と偏光変換層6の間に電界印加制御手段20を備えた偏光分離層14を設けている。実際は偏光分離層14を挟んでいる透明基板2a,2bには電界を印加するための電極が設けられているが、図13では省略している。
【0059】
図13において、例えば、偏光分離層14は、少なくとも非重合性液晶と、重合性モノマーあるいはプレポリマーと、光重合開始剤とからなる組成物からなり、前記組成物を二光束干渉露光することにより、主にポリマーから成る層と主に非重合性液晶から成る層との周期的な相分離構造を形成したホログラフィックポリマー分散液晶層である。この場合、二光束の角度や波長を調整することで所望のピッチの体積ホログラムを作製することができる。また、干渉縞の方向と素子の配置角度を調整することで、素子内部で傾斜したホログラムの構造を自在に作製することができる。
【0060】
非重合性液晶としては、屈折率異方性を有する液晶ならば一般的なものを使用できる。液晶材料を選択する時は、あるオーダーパラメーターの配向状態において、重合性モノマーあるいはプレポリマーの硬化層の屈折率と等しい屈折率となる液晶材料を選択してもよく、また、液晶材料を選択してから、その液晶のあるオーダーパラメーターの配向状態での屈折率と同じ屈折率になるように重合性モノマーあるいはプレポリマーを選択してもよい。
【0061】
非重合性液晶としては、ネマチック、コレステリック、スメクチックのいずれのタイプでも良く、従来公知のビフェニル、ターフェニル、フェニルシクロヘキサン、ビフェニルシクロヘキサン、安息香酸フェニルエステル、シクロヘキサンカルボン酸フェニルエステル、フェニルピリミジン、フェニルジオキサン、トラン、1−フェニル−2−シクロヘキシルエタン、1−フェニル−2−ビフェニルエタン、1−シクロヘキシル−2−ビフェニルエタン、ビフェニルカルボン酸フェニルエステル、4−シクロヘキシル安息香酸フェニルエステルなどを骨格とし、アルキル基、アルコキシ基や誘電異方性を付与するための極性付与基としてのシアノ基、ハロゲン基などを置換基として有する液晶などを用いることができる。非重合性液晶材料は、重合性モノマーあるいはプレポリマーの合計量100重量部に対して20重量部〜500重量部の割合で使用されることが好ましい。
【0062】
重合性モノマーまたはそのプレポリマーとしては、重合による硬化収縮が大きいものを用いることが好ましい。このような重合性モノマーとしては、エチレン性不飽和結合を有する光重合可能な化合物であって、1分子中に少なくともエチレン性不飽和二重結合を1個有する光重合、光架橋可能なモノマー、オリゴマー、プレポリマー及びそれらの混合物であり、モノマー及びその共重合体の例としては、不飽和カルボン酸及びその塩、不飽和カルボン酸と脂肪族多価アルコール化合物とのエステル、不飽和カルボン酸と脂肪族多価アミン化合物とのアミド等が挙げられるが、特に2官能以上の多官能性モノマーは硬化収縮が大きく、好適に使用できる。不飽和カルボン酸のモノマーとしてはアクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、マレイン酸、及びそれらのハロゲン置換不飽和カルボン酸、例えば塩素化不飽和カルボン酸、臭素化不飽和カルボン酸、弗素化不飽和カルボン酸等が挙げられる。不飽和カルボン酸の塩としては前述の酸のナトリウム塩及びカリウム塩等がある。また、ウレタンアクリレート類、ポリエステルアクリレート類、エポキシ樹脂と(メタ)アクリル酸等の多官能性のアクリレートやメタクリレートを挙げることができる。また、上記の他に熱重合禁止剤、可塑剤等が添加されても良い。
【0063】
光重合開始剤としては、前述と同様に公知の材料を用いることができる。光重合開始剤の添加量は照射する光の波長に対する各材料の吸光度によっても異なるが、モノマーまたはプレポリマー全量に対して0.1重量%以上10重量%以下であることが好ましく、0.5重量%以上3重量%以下であることがより好ましい。光重合開始剤の添加量が少なすぎる場合にはポリマーと液晶の相分離が起こり難くなり、必要な露光時間が長くなってしまう。逆に、光重合開始剤が多すぎる場合にはポリマーと液晶の相分離が不十分な状態で硬化してしまうため、ポリマー中に多くの液晶分子が取り込まれ、偏光選択性が劣化するという問題がある。ここで、偏光選択性とは周期構造の配列方向に略平行な偏光方向における回折効率と前記した偏光方向に対して90度回転した偏光方向における回折効率の比であり、0に近づくほど、偏光選択性は良好であるとする。
【0064】
次に、相分離によるホログラム形成過程について図14を用いて説明する。図14において、図示しない所望の波長のレーザー光源による二光束干渉露光系を用いて、組成物中に露光を行うと、干渉縞の明部において重合性モノマーあるいはプレポリマーの光重合反応が始まる。この時、硬化収縮が起こって密度差が生じ、隣接する重合性モノマーあるいはプレポリマーが明部に移動し更に重合が進行する。それと同時に明部に存在していた非重合性液晶が暗部に向かって追い出されることで相分離が起こる。この時、液晶分子が移動して行く際にモノマーやポリマー鎖との相互作用で液晶分子長軸を移動方向に配向させようとする力が働くと考えられる。すなわち、相分離過程において干渉縞の間隔方向に液晶分子を配向させようとする力が働くと考えられる。最終的には、図15に示すように、干渉縞の明暗のピッチに対応してポリマー層と非重合性液晶層の周期構造が形成され、液晶層部の配向ベクトルが干渉縞の間隔方向を向いた状態が得られると考えられる。この干渉露光および相分離過程において、試料を適当な温度に加熱保持しておくことが好ましい。温度によって相分離の速度が変化し、液晶分子の配向性に影響を及ぼすと考えられる。最適な加熱温度は使用する材料によって異なるが40℃から100℃程度が好ましい。
【0065】
相分離によるポリマー層と非重合性液晶層の周期構造では、厳密にはポリマーと非重合性液晶が周期的に完全に分離することは困難であり、ここで言うポリマー層とはポリマー成分が多い領域であり液晶分子を含んでいても良い。また、非重合性液晶層とは非重合性液晶成分が多い領域でありポリマー成分を含んでいても良い。実際にはポリマー層と液晶層の界面は理想的な平面では無く凹凸状であると推測されるため、界面での液晶分子長軸方向のバラツキは大きく、液晶層のオーダーパラメーターは比較的小さい状態となる。したがって、液晶層部の複屈折は比較的小さくなる。
【0066】
作製する周期構造のピッチは所望の回折角や波長によって異なるが、概ね0.2μmから1000μmの範囲である。例えば、405nmの入射光に対して20°の回折角を得るためには、1.1μm程度のピッチ、650nmの入射光に対して2.3μm程度のピッチが必要となる。ポリマー層と液晶層界面の傾斜角としては0°から20°程度が好ましい。露光量としては光重合開始剤の添加濃度や露光時の温度によっても異なるが、0.5J/cm2から30J/cm2が好ましく、1J/cm2から15J/cm2がより好ましい。
【0067】
第5の実施形態では、液晶部全体の常光屈折率noとポリマー部の屈折率npがほぼ一致するように液晶の種類とポリマーの種類の組合せを適宜設定することで、図15のようなS偏光の入射光に対しては液晶部全体の常光屈折率noとポリマー部の屈折率npの差を感じないため回折せず、P偏光の入射光に対しては液晶部全体の異常光屈折率neとポリマー部の屈折差を感じて回折するようなホログラフィックポリマー分散液晶層からなる偏光選択性ホログラムが比較的低コストで作製することができる。
【0068】
このようなホログラフィックポリマー分散液晶層は非重合性の液晶領域とポリマー領域との周期構造からなるため、層内に電界を印加することで液晶領域の液晶の配向は電界により制御できる。ここで電界制御による動作機能を図16に示す。図16(a)のように、電界を印加しない場合は、液晶の配向は周期構造の配列方向に向いており、P偏光に対して光は回折する。ここで、図16(b)のように電界を印加する場合は、液晶の配向は電界方向(基板面垂直方向)を向いており、P偏光に対して光は透過する。(S偏光はどちらの場合においても透過する)すなわちホログラフィックポリマー分散液晶層にて決定する回折角を偏光変換層の偏光回転領域と偏光非回転領域に対応するように設定することで、図13のようにレンズアレイ層を透過した光(P偏光)の焦点位置を可変することができる。
【0069】
一般的にポリマー分散液晶はポリマー界面の規制を強く受けるため、液晶の配向規制力が大きい。そのため液晶の応答速度は規制力により増倍され、数十μ秒の高速応答が得られる。
【0070】
具体例としては、厚み0.15mmのガラス基板の片面に青色光に対する反射防止膜を形成後、反対の面にITOを1500Åの厚さに蒸着した。粒径4μmのスペーサー粒子を接着剤中に分散させ有効領域外に塗布してガラス基板を貼り合わせ。有効領域の幅は10mm角程度とした。次に以下の5種類の材料の混合物からなる組成物を約60℃に加熱しながら毛管法によりセル中に注入し、厚み約4μmの組成物層を形成した。なお、この組成物は緑色より短波長の光に反応性を示すため赤色光を用いた暗室下で取り扱った。
〈1〉ネマチック液晶(メルク製ZLI−4850、Δε<0) 30重量部
〈2〉フェニルグリシジルエーテルアクリレートヘキサメチレンジイソシアネートウレタンプレポリマー(共栄社化学製AH600) 75重量部
〈3〉ジメチロールトリシクロデカンジアクリレート(共栄社化学製DCP−A) 10重量部
〈4〉2−ヒドロキシエチルメタクリレート(共栄社化学製HO) 5重量部
〈5〉メタロセン系光重合開始剤(チバガイギー製イルガキュア784) 0.5重量部
セル中に注入後、この組成物は室温下において等方性を示した。
【0071】
次に、波長442nm、出力80mWのHe−Cdレーザーによる二光束干渉露光系を作成した。レーザー光を分割、拡大して、1つの光束が約11mW/cm2程度の平行光として、2光束の交差角度を26度に設定した。この波長と交差角度では二光束の交差領域に約1μm周期の干渉縞が生成される。
【0072】
セル基板を加熱装置に取り付け、約60℃に加熱した状態で、約5分間の2光束干渉露光を行い、ホログラム素子を作製した。この時、基板面の垂直方向に対して+13度と−13度の方向から2光束が入射するように設定した。
【0073】
作製したホログラム素子の基板面に対して角度が13度の方向から波長442nmの直線偏光のレーザー光を照射して、入射光強度に対する+1次回折光強度を測定した。入射光強度は5mW程度になるようにNDフィルターを用いて調整した。入射光路中に直線偏光板と半波長板を配置し、半波長板の光軸を45度回転させることで、ホログラム素子に入射する偏光方向(P偏光、S偏光)を切り換え可能に構成し、入射光の偏光をP偏光に設定した。素子を透過する光はほぼ回折し+1次回折効率は80%であった。
【0074】
ホログラム素子にファンクションジェネレーターとアンプを用いて1kHz、±20V/μmの矩形波を基板間に印加し、同様にして素子の光学特性を測定したところ、0次光の透過質が95%となった。高速度カメラにより素子を透過した光を受光し、応答速度を測定したところ100μsecの高速応答性が得られた。入射光に対する+1次回折光の出射角度は26度であり、偏光変換層の偏光回転領域あるいは偏光非回転領域に対応させることで、電界制御により偏光変換が可能となる。
【0075】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態の記載に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の変形が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0076】
本発明は、液晶ディスプレイ、液晶プロジェクタなどの照明光学系に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る偏光変換素子の構成を模式的に示す断面図である。
【図2】本発明の第1の実施形態に係る偏光変換素子における液晶の状態の一例を模式的に示す断面図である。
【図3】本発明の第1の実施形態に係る偏光変換素子における液晶の状態の一例を模式的に示す断面図である。
【図4】本発明の第1の実施形態に係る偏光変換素子における屈折率分布の影響を示すグラフである。
【図5】本発明の第2の実施形態に係る偏光変換素子の構成を模式的に示す断面図である。
【図6】本発明の第2の実施形態に係る偏光変換素子における液晶の状態の一例を模式的に示す断面図である。
【図7】本発明の第2の実施形態に係る偏光変換素子における液晶の状態の一例を模式的に示す断面図である。
【図8】本発明の第3の実施形態に係る偏光変換層の構成を模式的に示す断面図である。
【図9】本発明の第3の実施形態に係る偏光変換層の機能動作を説明するための断面図である。
【図10】本発明の第4の実施形態に係る偏光変換装置の構成を模式的に示す断面図である。
【図11】本発明の第4の実施形態に係る偏光変換装置の電界制御による偏光変換の動作を説明するための断面図である。
【図12】本発明の第4の実施形態に係る偏光変換素子における屈折率分布の影響を示すグラフである。
【図13】本発明の第5の実施形態に係る偏光変換装置の構成を模式的に示す断面図である。
【図14】相分離によるホログラム形成過程について説明するための図である。
【図15】相分離によるホログラム形成過程における液晶の配向状態を示す断面図である。
【図16】本発明の第5の実施形態に係る偏光変換装置の電界制御による動作機能を説明するための断面図である。
【符号の説明】
【0078】
1、2、2a、2b、3 透明基板
4 透明電極
5 透明電極アレイ
6 偏光変換層
7 レンズアレイ層
8 液晶(液晶成分)
9 偏光回転領域
10 偏光非回転領域
11、12 配向膜
13 TN液晶層
14 偏光分離層
20 電界印加制御手段
【技術分野】
【0001】
本発明は、偏光変換素子および偏光変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の偏光変換素子に関して説明する。
一般に、液晶パネルのように特定偏光の光変調により画像表示を行うライトバルブでは、特定偏光以外の照明光は入射側の偏光板で吸収されるため、照明光がランダム偏光の場合にはその約半分が光量損失となる。この問題を解決して光利用効率を向上させるために、偏光分離と偏光回転とにより偏光変換を行う照明光学系が各種提案されている。偏光分離に用いられる光学素子としてはPBS(Polarizing Beam Splitter)プリズム,PBSアレイ,マイクロプリズムアレイ,複屈折DOE(Diffractive Optical Element)等が挙げられ、偏光回転に用いられる光学素子としては1/2波長板,TN(Twisted Nematic)液晶等が挙げられる。
【0003】
ランダム偏光は偏光分離において偏波面(すなわち電気ベクトルの振動面)が互いに直交する2種類の直線偏光に分離され、一方の直線偏光は偏光回転によりその偏波面が回転して他方の直線偏光と同じ偏光状態となる。この偏光変換により、偏波面が揃った直線偏光のみを入射側偏光板に入射させることができる。したがって、入射側偏光板による光量損失はほとんどなくなり、ライトバルブに対して光利用効率の高い照明が達成可能となる。
【0004】
偏光変換素子に関しては、以下の従来技術例が知られている。
特許文献1には、「偏光変換素子及び該偏光変換素子を用いた表示装置」が開示されている。この発明は、特許文献1の図1に示されているように、入射光を収束させるマイクロレンズアレイと、配向液晶層からなる複屈折性を有する複屈折膜と、液晶層でストライプ状に波長板機能と波長板機能を持たない部位が交互に一定のピッチで配列している液晶波長板とを有することを特徴としている。
しかし、この特許文献1の偏光変換素子では、偏光分離部に複屈折層を用いているため、回折格子のような微細構造を形成する必要が無いが、微小構造化のためにコストが嵩む可能性がある。
【0005】
液晶レンズに関しては、以下の従来技術例が開示されている。
非特許文献1には、電極分割構造の液晶マイクロレンズを用いて、電界分布を非対称的にすることで、光軸方向以外に焦点を移動することができる「液晶マイクロレンズ」が開示されている。
【0006】
また、特許文献2には、ネマチック液晶中で光重合によるポリマーを形成する。メモリー性があり、レンズ特性が可変にできる「液晶マイクロレンズ」が開示されている。
【0007】
特許文献3、4には、円形状の穴抜きパターン電極をアレイ状に配置した液晶マイクロレンズを用いて、焦点距離が可変なレンズとし、光インターコネクション素子の光の結合効率を可変とし、分割電極により焦点位置の制御も可能である「光結合器」が開示されている。
【0008】
しかしながら、上述した液晶レンズに関する各従来技術例(非特許文献1、特許文献2〜4)において、偏光変換機能を付加するような構成はない。
【特許文献1】特開2000−171633号公報
【特許文献2】特許第3016744号公報
【特許文献3】特開平11−109303号公報
【特許文献4】特開平11−109304号公報
【非特許文献1】「O plus E、1998年 10月号、株式会社新技術コミュニケーションズ刊、佐藤 進著“液晶マイクロレンズ”」
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、薄型で低コストの偏光変換素子、および、偏光変換を制御可能な偏光変換装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
かかる目的を達成するために、請求項1記載の発明は、入射光を第一の偏光成分と第二の偏光成分とに分離する機能、および、偏光成分のうち少なくとも一つの偏光成分を集光する機能を備えたレンズアレイ層と、偏光回転領域および偏光非回転領域を周期的に形成する偏光変換層と、を有する偏光変換素子において、レンズアレイ層は、一対の基板と、一対の基板のうち少なくとも一つの基板上に備えられ、一対の基板間に電界を印加可能な電極と、一対の基板間に備えられ、電極によって印加される電界によって屈折率分布の制御が可能な液晶と、を有することを特徴とする。
【0011】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明二位おいて、偏光変換層は、少なくとも、一対の基板と、重合性液晶と、光重合開始剤とからなる液晶組成物と、一対の基板上にそれぞれ設けられ、液晶組成物を一対の基板間で配向させるための配向膜と、を有することを特徴とする。
【0012】
請求項3記載の発明は、請求項1記載の発明において、偏光変換層は、複屈折性を示す領域と、等方性を示す領域との周期構造からなることを特徴とする。
【0013】
請求項4記載の発明は、請求項1から3のいずれか1項に記載の発明において、レンズアレイ層の液晶は、少なくとも重合性液晶を含んだ液晶組成物であることを特徴とする。
【0014】
請求項5記載の発明は、請求項1から4のいずれか1項に記載の偏光変換素子と、偏光変換素子に備えられた電極の、電界印加の方向または電界印加のタイミングを切り替え可能な電界印加制御手段と、を有することを特徴とする。
【0015】
請求項6記載の発明は、請求項1から4のいずれか1項に記載の偏光変換素子と、偏光変換素子のレンズアレイ層と偏光変換層との間に設けられた偏光分離層と、を有し、偏光分離層は、一対の基板と、一対の基板間に電界を印加可能な電極と、電極の電界印加の方向または電界印加のタイミングを切り替え可能な電界印加制御手段と、を備えることを特徴とする。
【0016】
請求項7記載の発明は、請求項6記載の発明において、偏光分離層は、少なくとも、非重合性液晶と、重合性モノマーあるいはプレポリマーと、光重合開始剤とからなる組成物からなり、組成物を二光束干渉露光することにより、主にポリマーから成る層と、主に非重合性液晶から成る層との周期的な相分離構造を形成したホログラフィックポリマー分散液晶層であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、薄型で低コストの偏光変換素子、および、偏光変換を制御可能な偏光変換装置を提供することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明を実施するための最良の形態について添付図面を参照して詳細に説明する。
【0019】
〔第1の実施形態〕
まず、本発明の第1の実施形態について説明する。
第1の実施形態は、薄型で低コストの偏光変換素子を提供することを目的とする。この目的を達成するために、第1の実施形態の構成は、入射光を第一の偏光成分と第二の偏光成分とに分離する機能と、これら偏光成分のうち少なくとも一成分を集光する機能とを備えたレンズアレイ層と、偏光回転領域および偏光非回転領域を周期的に形成する偏光変換層と、を有する偏光変換素子において、レンズアレイ層は、一対の透明基板と、これら透明基板のうち少なくとも一方の基板上に備えられるストライプ状の電極アレイと、この電極アレイによって一対の透明基板間に印加される電界によって屈折率分布の制御が可能な液晶と、を有して構成されることを特徴とする。よって、従来の偏光変換素子では、集光部、偏光分離部、偏光変換部がそれぞれ必要であったが、第1の実施形態では、集光部及び偏光分離部の機能を兼ね備えたレンズアレイ層を液晶の屈折率分布を用いて実現しているので、従来よりも部品点数の少ない構成で偏光変換機能を実現できるため、薄型又は小型で低コストの偏光変換素子が実現できる。
【0020】
また、第1の実施形態は、耐環境性(熱安定)の高い偏光変換素子を提供することを目的とする。この目的を達成するために、第1の実施形態の構成は、上記偏光変換素子において、前記レンズアレイ層の屈折率分布が制御可能である液晶は、少なくとも重合性液晶を含んだ液晶組成物であることを特徴とする。よって、第1の実施形態は、上記偏光変換素子で用いる液晶が少なくとも重合性液晶を含んだ液晶組成物であるため、屈折率分布が制御可能である液晶を用いたレンズアレイ層は電界などの外場および膜厚により焦点位置を設定でき、所望の焦点位置にて液晶組成物を硬化することができる。このように硬化することで、焦点位置は熱などの影響を受けず、耐環境性の高い偏光変換素子が実現できる。
【0021】
第1の実施形態による偏光変換素子の概略断面を図1に示す。図1において、光が入射する側から、入射光を集光するためのレンズアレイ層7と、偏光変換層6を含む部分とが積層されている。レンズアレイ層7、偏光変換層6はそれぞれ透明基板1,2,3に挟まれている。あるいは、より薄型化するために、レンズアレイ層7と偏光変換層6の間の基板部分(透明基板2)を一枚の基板で共通化しても良い。
【0022】
ここで、レンズアレイ層7は二枚の透明基板2,3と、少なくとも一方の基板上(図1では透明基板2上)に形成したストライプ型透明電極アレイ5と、二枚の透明基板2,3間に電界印加によって屈折率分布の制御が可能な液晶8とを有する。図1では、レンズアレイ層7における液晶8の配向状態の一例を模式的に示している。このとき基板2,3間に電界を印加しない初期状態では、図2に示すように、液晶分子8が透明基板2,3に沿って平行になるようにホモジニアス配向処理されている。
【0023】
図2では、液晶分子8の長軸が紙面の左右方向になるような配向処理を想定している。上側の透明基板2には透明電極ラインがアレイ状に形成されており、この透明電極アレイ5のピッチは、図1に示すように偏光変換層6の偏光回転領域9と偏光非回転領域10のピッチに対応していることが好ましい。下側の透明電極4は全面に形成されているが、下側の透明電極4は上側の透明基板2と対称なアレイ電極でも良い。
【0024】
透明基板1,2,3の材質としては、ガラス、プラスチック等を使用でき、また、透明電極4,5の材質としては、ITO等が利用できる。なお、電極は透明でなくてもよく、Al、Cr等の導電性を示すものなら何でもよい。透明電極は液晶層側になるように設置する。使用する基板自身が導電性を有している場合は、基板を電極としても利用することができる。液晶8の材料としては、一般的なネマチック液晶(非重合性および重合性液晶)を用いることができ、複屈折Δnや誘電異方性Δεが大きい方が好ましい。特に、複屈折としては液晶材料の常光屈折率がガラス基板の屈折率に近い1.5〜1.6程度で、異常光屈折率が1.7〜1.8程度と大きいことが好ましい。
【0025】
図3を用いてレンズアレイ層7が焦点を結ぶ動作機能について説明する。図3は、透明電極アレイ5のうち所定の透明電極ライン(図中の透明電極アレイ5のうち、色付きで表示した部分)にのみ液晶配向変化の閾値以上の電圧を印加した場合を示す。電圧を印加した電極部では電界によって垂直に配向し、無印加の電極部では水平に配向したままになる。この液晶セル内部の不均一電界による配向方向の分布によって異常光に対する屈折率分布が生じる。紙面に平行な偏光面を持つ直線偏光を入射する場合、液晶分子長軸が基板に垂直に配向するにしたがって実効的な屈折率が小さくなり、図4の実線のような屈折率分布の影響を受ける。この屈折率分布は、図3の電極ピッチに対応した比較的大きな凸レンズ状になっており、この屈折率分布により光を絞る集光機能が発生する。
【0026】
ここで、液晶8の層の厚さは基板間のスペーサー部材(図示せず)の厚さよって適宜設定でき、印加する電界と、この厚さによって生成される屈折率分布とは、所望の焦点位置となるように最適化される。また、液晶8の材料として重合性液晶を用いた場合、前述したような所望の集光位置が得られる状態で重合(硬化)させることが必要である。重合することで熱的にも安定状態を維持することができる。
【0027】
以上説明したように、第1の実施形態によれば、液晶の屈折率分布を用いたレンズアレイ層は、集光機能と偏光分離機能を兼ね備えている。そのため、従来の偏光変換素子と比較して、部品点数が少なく、薄型の偏光変換素子が実現できる。
【0028】
〔第2の実施形態〕
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。
第2の実施形態は、低コストで薄型の偏光変換素子を提供することを目的とする。この目的を達成するために、第2の実施形態の構成は、上記第1の実施形態の偏光変換素子において、偏光変換層は、少なくとも、一対の基板と、重合性液晶と、光重合開始剤とからなる液晶組成物と、一対の基板上にそれぞれ設けられ、液晶組成物を一対の基板間で配向させるための配向膜と、を有することを特徴とする。よって、従来の偏光変換素子における偏光変換は偏光分離層(偏光ビームスプリッター)に1/2波長板を所定の位置に貼り付けることでその機能がなされているが、第2の実施形態の偏光変換は、偏光変換層のみの構成でなされるため、1/2波長板の貼り付け工程が不要となり、従来よりも容易に製造可能になる。この偏光分離層は、重合性液晶と光重合開始剤とからなる液晶組成物と、この液晶組成物を一対の基板間で配向させるための配向膜とからなり、パターン露光および電界などの外場を加えることで偏光回転領域および偏光非回転領域の周期構造が形成可能である。
【0029】
図5は、第2の実施形態の偏光変換層および透明基板も含む部分の一例を図示したものである。図5において、偏光変換層6は、重合性液晶と光重合開始剤からなる液晶組成物を透明基板1,2間に保持し、光照射により形成した偏光回転領域9および偏光非回転領域10が周期的に配列されている。図5では、後述するツイストネマチック配向を利用した例を示しているが、この配向状態に限らず水平配向による1/2波長板の配向状態でも良い。基板1,2としては光学的に等方的で透明ならば、ガラスやプラスチックあるいはフィルムなどを用いることができる。
【0030】
図5において、二枚の基板1,2の間にはスペーサー部材を配置しても良い。スペーサー部材としては、液晶表示装置に用いられるような球形スペーサー、ファイバースペーサー、フィルムなどを用いることができる。また、フォトリソグラフィーとエッチングあるいは成型技術などによって基板表面に突起形状を加工しても良い。スペーサー部材は偏光変換層6の有効領域外に形成することが好ましい。スペーサー部材の高さは数μmから数十μm範囲が好ましく、液晶層のリタデーションあるいは旋光性が所望の値を示すよう適宜設定される。
【0031】
重合性液晶としては、単官能の液晶アクリレートモノマー、液晶メタアクリレートモノマー、二官能の液晶ジアクリレートモノマー、液晶ジメタアクリレートモノマーなどが用いられる。これらの材料は、官能基であるアクリロイルオキシ基と液晶骨格の間にメチレン鎖を有していても良い。具体例としては、大日本インキ化学製の液晶アクリレートモノマーUCL001などを用いることができる。
【0032】
光重合開始剤としては、公知の材料を用いることができ、例えばビアセチル、アセトフェノン、ベンゾフェノン、ミヒラーケトン、ベンジル、ベンゾインアルキルエーテル、ベンジルジメチルケタール、1−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、2−クロロチオキサントン、メチルベンゾイルフォーメート、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、ジエトキシアセトフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、α-アミノアルキルフェノン、ビスアシルフォスフィンオキサイド、メタロセンなどを例示することができる。光重合開始剤の添加量は照射する光の波長に対する各材料の吸光度によっても異なるが、モノマーまたはプレポリマー全量に対して0.1重量%以上10重量%以下であることが好ましく、0.5重量%以上3重量%以下であることがより好ましい。具体例としては、青色光で露光する場合には、メタロセン系光重合開始剤(チバガイギー製イルガキュア784)を0.5重量部程度添加することができる。
【0033】
上記液晶組成物を二枚の透明基板1,2間で配向させるための配向膜11,12が透明基板1,2の面にそれぞれ用いられている。入射した偏光成分の偏光面が回転して出射する配向状態としては、水平配向した液晶の配向方向を偏光面に対して所望の角度傾けて設定し、液晶層のリタデーションを1/2波長に設定する場合と、ツイストネマチック配向の旋光性を利用する場合のいずれかを用いることが好ましい。
【0034】
リタデーションを1/2波長に設定した液晶位相差板の場合、液晶組成物を二枚の基板1,2間で平行配向させるための配向膜11,12が透明基板1,2の面に設けられている。配向膜11,12としてはポリイミドなどを用い、配向膜11,12の配向処理方法としてはラビング法や偏光紫外線照射などによる光配向法を用いることができる。上下の透明基板1,2の配向処理方向を平行にし、液晶の配向方向を偏光面に対して45度程度傾けて設定することで、出射光の偏光面を90度回転させることができる。この場合、使用する光の波長と液晶材料の複屈折に応じて、液晶層の厚みを設定するため、各波長に対して専用の液晶厚みを設定する必要がある。
【0035】
一方、ツイストネマチック配向の旋光性を利用する場合、液晶組成物を二枚の透明基板1,2間でツイストネマチック(TN)配向させるための配向膜11,12が透明基板1,2の面に設けられている。配向膜11,12としてはポリイミドなどを用い、配向膜11,12の配向処理方法としてはラビング法や偏光紫外線照射などによる光配向法を用いることができる。上下の透明基板1,2の配向処理方向を直交させることでTN配向の液晶層を形成することができる。このとき、TN配向を安定化させるために液晶組成物にカイラル剤を添加しても良い。また、配向膜11,12の配向処理方向は、前述の偏光分離層の回折格子のストライプ構造の方向に対して平行あるいは直交するように設定する、すなわち、偏光回転層に入射するP偏光成分あるいはS偏光成分と直交するように設定する。ツイストネマチック配向の場合、偏光回転作用が旋光性であり、比較的広い波長範囲で偏光面を回転させることができる。
【0036】
このようにして、図6に示すように、TN配向した液晶組成物(TN液晶層13)を形成する。次に、図7のように所望の領域を光照射してTN配向状態を重合固化させ、偏光回転領域9を形成する。このとき、レンズアレイのピッチに対応した開口マスクなどを用いて所望のピッチの領域のみを露光する。例えば、前述の光重合開始剤に感度がある青色光で露光する。その後、液晶組成物の未硬化部において、入射した偏光成分の偏光面が回転しない配向状態に転移させた状態で、全面的あるいは部分的な光照射により重合固化させて偏光非回転領域を形成する。入射した偏光成分の偏光面が回転しない配向状態に転移させた状態とは、例えば図5のような垂直配向状態、捻れがない水平配向状態、等方相の状態がある。これらの状態は電界や磁界など印加や加熱によって得ることができる。
【0037】
図5に示すような偏光変換層6では、偏光回転領域9にP偏光のみが入射した場合、TN配向で固定化された液晶ポリマー部の旋光性よってS偏光成分と同一偏光方向となって出射する。一方、偏光非回転領域10にS偏光のみが入射した場合、そのままS偏光が出射する。レンズアレイの各レンズの中心位置に対して偏光回転層の偏光回転領域9の位置が対応するようにレンズアレイ部と偏光分離層を含む部分と偏光回転層を含む部分を位置合わせして張り合わせる。
【0038】
なお、レンズアレイ層の集光位置や偏光変換層の特性の設定を変化させることで、自然光をP偏光成分が多くなるように偏光変換することも可能である。第2の実施形態では、レンズアレイと偏光回転層の位置合わせ工程が必要ではあるが、偏光回転領域と偏光非回転領域の周期構造を同一の材料を用いたマスク露光と配向変化処理後の全面露光のような比較的簡単な工程で作製することができる。
【0039】
具体例としては、基板:ソーダガラス(片面ARコート付)、外形30×40mm、厚さ1.1mmのものを2枚張り合わせて、基板間に6μmのスペーサーによりセルギャップを制御した。張り合わせ前には両基板にポリイミドの配向膜(AL3046:JSR製)を1000Å塗布し、ラビング処理をした。ラビング方向は張り合わせるときに垂直方向になるように設定した。また、液晶材料は母液晶(UVキュアラブル):UCL−001−K0(DIC製)と複液晶(Δε誘発):E7(母液晶に対して5wt%)(メルク製)とカイラル剤:S−811(TN90°に設定)と光重合開始剤:IRG819(母液晶+複液晶に対して1wt%)を混ぜた組成物を用いて、暗室内で毛細管現象によりセル内へ注入した。
【0040】
次に、UVスポット照射機(オーク製)にてマスクパターンを密着露光した。マスクパターンは(L/S:500/500 or 50/50[μm])であり、露光条件はUV照射(365nm):5mW/cm^2、照射時間:電界印加前2sec/電界印加後5sec、電界印加:35V/μm,100Hz、露光温度:RTとし、TN液晶領域による偏光回転領域と垂直配向領域による偏光非回転領域との周期構造を形成した。青色レーザー(He−Cd)と対物レンズ(×50)とアクロマートレンズを用いて偏光回転領域と偏光非回転領域のそれぞれに焦点位置を設定した。入射光の偏光面は周期構造の配列方向とした。偏光板を用いてセルを透過した偏光方向を確認したところ、偏光非回転領域へ入射したときは、偏光方向は入射時と同じであった。また、偏光回転領域へ入射した時は、偏光方向は入射偏光方向から90度回転した偏光方向であった。
【0041】
〔第3の実施形態〕
次に、本発明の第3の実施形態について説明する。
第3の実施形態は、低コストで薄型の偏光変換素子を提供することを目的とする。この目的を達成するために、第3の実施形態の構成は、上記第1の実施形態の偏光変換素子において、偏光変換層は、複屈折性を示す領域と、等方性を示す領域との周期構造からなることを特徴とする。よって、偏光変換層が、複屈折性を示す領域と、等方性を示す領域との周期構造からなり、例えば、ガラスなどの等方性媒質を凹凸形状にし、凹凸の溝部に液晶を配向させ、複屈折性を示す領域は液晶で形成され、液晶領域にて得られる複屈折とその膜厚(セルギャップ)を1/2波長条件に最適化することで偏光回転領域(液晶領域)および偏光非回転領域(等方性領域)の周期構造が形成可能である。これは前記したように1/2波長板を貼り付ける工程が不要であり、従来に比べて容易に製造可能になる。
【0042】
図8に第3の実施形態の一例である偏光変換層の断面の構成概略を示す。図8(a)は、複屈折性媒体に格子形状を形成し、格子溝を等方性媒体にて埋めた構成を示しており、これに対して、図8(b)は、等方性媒体に格子形状を形成し、格子溝を複屈折性媒体にて埋めた構成を示している。
【0043】
例えば、図8に示した偏光変換層の機能動作としては、図9に示すように、等方性領域に入射する偏光方向はそのままの偏光方向状態で透過し、複屈折領域に入射する偏光方向は偏光方向が90度回転した状態で透過する。ここで、複屈折領域のΔnと膜厚dとからなるリタデーションΔnd=λ/2条件を満たすように設定されている。このように偏光変換層が、複屈折性を示す領域と等方性を示す領域との周期構造からなることで、図1に示すようにレンズアレイ層の集光位置を偏光変換層の偏光回転領域あるいは偏光非回転領域に設定することで偏光変換機能が実現できる。
【0044】
ここで、格子形状の形成はフォトリソグラフィーとエッチングまたは切削加工や成形技術等により形成することができる。また、等方性媒体としては、フォトポリマー等の透明樹脂や石英、BK7等の光学硝材が使用できるが、複屈折性を有さなければこれに限定されるものではない。複屈折媒体としては、ニオブ酸リチウム結晶、ニオブ酸タンタル結晶、酸化チタン結晶、高分子複屈折膜(高分子フィルム)、液晶等が使用できる。特に高分子複屈折膜や液晶は生産性に優れている。
【0045】
高分子複屈折膜は、高分子フィルムを延伸して高分子鎖を配向させることによって複屈折性を有した高分子膜であり、簡単に大量生産することができ、低コストで偏光分離素子の作製ができるといった利点がある。延伸する高分子フィルムの高分子材料としては、例えば、ポリオレフィン系、ポリアクリルレート、ポリカーボネイト(PC)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、ポリスチレン等が使用できるが、これに限定されるものではない。液晶も表示装置などに汎用されているため製造面において低コストで量産性がよい。また、複屈折性(屈折率異方性)が大きいため、薄膜化にも向いているといった利点がある。液晶としては、非重合性液晶におけるネマチック、コレステリック、スメクチックなど一般的な液晶タイプを使用することができる。作製時には複屈折性を効率よく利用するために配向膜、ラビング、光配向等の配向処理をすることが好ましい。
【0046】
前述では格子形状を加工技術により形成しているが、後述(第5の実施形態参照)するような干渉露光により等方性領域と複屈折性領域を自己組織的に形成してもよい。素子のサイズにもよるが自己組織的な形成法は加工法に比べて製造にかかる時間等が短くできるため、生産性に優れている。また、素子構成において耐湿熱性、耐久性のためにオーバーコート層(図示せず)を設けることが好ましく、オーバーコート層を形成する材料としては、常光線方向屈折率と異常光線方向屈折率との何れか一方と同じ屈折率を持つ透明樹脂等を使用することが好ましい。
【0047】
具体例としては、厚み0.5ミリのBK7ガラス基板表面に約3μmのSiON膜を製膜し、電子ビーム描画によるレジストパターン形成とエッチング加工によって、SiON膜にピッチ100μm、凹部の幅約50μm、凸部の幅約50μm、凹部の深さ約1.5μmの形状を作製した。対向基板として厚み0.5ミリのBK7を用い、ポリイミド系の配向膜を800オングストロームの厚みで形成し、ラビング処理を行った。凹凸基板の溝の方向とラビング方向一致するように、空セルを作製し、真空注入法を用いて液晶材料(メルク社製ZLI2248)を注入した。青色レーザー(He−Cd)と対物レンズ(×50)とアクロマートレンズを用いて凹凸形状のそれぞれに焦点位置を設定した。入射光の偏光面はラビング方向と45度回転した方向とした。偏光板を用いてセルを透過した偏光方向を確認したところ、凸部へ入射したときは、偏光方向は入射時と同じであった。また、凹部へ入射した時は、偏光方向は入射偏光方向から90度回転した偏光方向であった。
【0048】
〔第4の実施形態〕
次に、本発明の第4の実施形態について説明する。
第4の実施形態は、電界により偏光変換が制御可能な偏光変換装置を提供することを目的とする。この目的を達成するために、第4の実施形態の構成は、上記第1〜3の実施形態の偏光変換素子と、この偏光変換素子のレンズアレイ層に設置された電極の、電界印加の方向または電界印加タイミングを切り替え可能な電界印加制御手段と、を設けたことを特徴とする。よって、レンズアレイ層に電界を印加する電界印加制御手段を設けているため、電界印加の切り替えに応じて焦点位置を変化することができる。この焦点位置が偏光回転領域と非偏光回転領域とを選ぶことで、偏光変換機能が電界により制御可能となる。
【0049】
第4の実施形態の特徴は、図10に示すように、レンズアレイ層7に電界印加制御手段20を設けており、この電界印加制御手段20により偏光変換がアクティブに制御できる。
【0050】
ここで、図11に、電界制御による偏光変換の動作を示す。第1の実施形態と同様に図11の上段(状態1)の図では、透明電極アレイ5のうち所定の透明電極ライン(図中の透明電極アレイ5のうち、色付きで表示した部分)にのみ閾値以上の電圧を印加した場合を示す。電圧を印加した電極部では電界によって垂直に配向し、無印加の電極部では水平に配向したままになる。この液晶セル内部の不均一電界による配向方向の分布によって異常光に対する屈折率分布が生じる。紙面の平行な偏光面を持つ直線偏光を入射する場合、液晶分子長軸が基板に垂直に配向するにしたがって実効的な屈折率が小さくなり、図12に示す実線(状態1)のような屈折率分布の影響を受ける。この屈折率分布は、図11の電極ピッチに対応した比較的大きな凸レンズ状になっており、一偏光成分に対して集光機能が発生する。
【0051】
次に、電界印加制御手段20により、図11の下段(状態2)の図に示すように、電界を印加する電極を切り換えると、液晶分子の配向状態も変化し、図12に示す破線(状態2)のような屈折率分布に変化する。
【0052】
このように、電界を電極アレイに印加することによって集光し、印加する電極の位置を切り換えることによって、その焦点位置をシフトすることができる。すなわち、焦点位置を偏光回転層の偏光回転領域と偏光非回転領域のどちらか一つの領域に設定することで、電界制御により出射する偏光面の方向を制御することが可能となる。
【0053】
前述したように、この焦点位置は液晶の配向に起因する屈折率分布によって変化する。液晶の配向は印加する電界強度によって変化するため、印加する電界強度を調節することができる電界印加制御手段20を有することにより、焦点位置は可変できる。つまり、焦点位置が何らかの原因で変化したときにも調整することができる。例えば、焦点位置が変化する一つの原因として温度の影響がある。これは液晶材料の特性には温度依存性があるためである。例えば液晶材料の弾性定数、誘電率の温度特性によって、温度が下がると閾値電圧は上昇する。すなわち、液晶層に印加される電界が一定の場合、温度が変化すると焦点位置も変化する。そこで、温度検知手段を有し、温度検知手段の検知温度に対応して電界印加制御手段により印加する電界を調節して、焦点位置を制御することが好ましい。
【0054】
具体例として、透明ガラス基板(3cm×4cm、厚さ1.1mm)を二枚用い、一方の基板上にはCrのライン電極を形成した。このライン電極は交互に同一電圧を印加できるように櫛形電極A、Bを設けた。もう一方の基板は基板の片側全面にITOを形成し、ベタ電極とした。ガラス基板のITO側にポリイミド系の配向材料(AL3046−R31、JSR社)をスピンコートし、約0.3μmの配向膜を形成した。ガラス基板のアニール処理後、Crラインに対して直角方向にラビング処理を行った。二枚のガラス基板の間に3μmのスペーサー(真絲球)を挟み、上下基板を張り合わせ(電極面は対向させる)加圧した後、UV硬化接着剤で封止をして空セルを作製した。空セルの中に、誘電率異方性が正のネマチック液晶(ZLI−2471、メルク社)を毛細管法で注入し、液晶セルを作製した。上下基板のラビング処理の方向は一致しているため、液晶分子は基板に対して平行で全て同じ向きに配向(ホモジニアス配向)した状態となる。
【0055】
ここで作製したセルに電圧を印加して動作させた。印加電圧は3台のファンクションジェネレーターを使い、1台はトリガーとして、櫛型電極A、Bへ交互に電圧を印加するために用いた。入力周波数は100Hz、電圧の入力波形は三角波とし電圧値はオシロスコープ、テスターで確認した。セルへの入射光は白色ランプにアパーチャー(1.5mm)を取りつけ、コリメートレンズにより平行光にし、偏光板を用いて櫛形電極のストライプ形状とは垂直になるように偏光方向を設定してセルの透過光を顕微鏡[対物レンズ(40×)+リレーレンズ+CCD(“1/3)]で観察した。顕微鏡位置は光軸に対して平行移動させて、一番集光している位置に固定し、16Vの印加電圧を櫛形電極A、Bと切り換えることで観察像位置がシフトした。
【0056】
〔第5の実施形態〕
次に、本発明の第5の実施形態について説明する。
第5の実施形態は、外場により偏光変換が制御可能な偏光変換装置を提供する。この目的を達成するために、上記第1〜3の実施形態の偏光変換素子を有し、この偏光変換素子のレンズアレイ層と偏光変換層との間に偏光分離層を設け、この偏光分離層は、一対の透明基板と、これら一対の透明基板間に電界を印加可能な電極と、この電極の電界印加の方向または電界印加のタイミングを切り替え可能な電界印加制御手段とを有することを特徴とする。よって、レンズアレイ層と偏光変換層の間に偏向分離層を設けて、偏光分離層の光の偏向方向が偏光回転領域と非偏光回転領域とを選択することで、上記第1の実施形態のようにレンズアレイ層の焦点位置が固定の場合においても、偏光変換が電界により制御可能となる。
【0057】
また、第5の実施形態は、外場により偏光変換が高速に制御可能な偏光変換装置を提供することを目的とする。この目的を達成するために、第5の実施形態の構成は、上記本実施形態の偏光変換装置において、偏光分離層が、少なくとも、非重合性液晶と、重合性モノマーあるいはプレポリマーと、光重合開始剤とからなる組成物からなり、この組成物を二光束干渉露光することにより、主にポリマーから成る層と、主に非重合性液晶から成る層との周期的な相分離構造を形成したホログラフィックポリマー分散液晶層であることを特徴とする。よって、偏光分離層がホログラフィックポリマー分散液晶層からなるため、電界制御により偏光変換の切り替え速度が数十μsecオーダーの高速切り替えが可能となる。
【0058】
第5の実施形態の特徴は、図13に示すように、レンズアレイ層7と偏光変換層6の間に電界印加制御手段20を備えた偏光分離層14を設けている。実際は偏光分離層14を挟んでいる透明基板2a,2bには電界を印加するための電極が設けられているが、図13では省略している。
【0059】
図13において、例えば、偏光分離層14は、少なくとも非重合性液晶と、重合性モノマーあるいはプレポリマーと、光重合開始剤とからなる組成物からなり、前記組成物を二光束干渉露光することにより、主にポリマーから成る層と主に非重合性液晶から成る層との周期的な相分離構造を形成したホログラフィックポリマー分散液晶層である。この場合、二光束の角度や波長を調整することで所望のピッチの体積ホログラムを作製することができる。また、干渉縞の方向と素子の配置角度を調整することで、素子内部で傾斜したホログラムの構造を自在に作製することができる。
【0060】
非重合性液晶としては、屈折率異方性を有する液晶ならば一般的なものを使用できる。液晶材料を選択する時は、あるオーダーパラメーターの配向状態において、重合性モノマーあるいはプレポリマーの硬化層の屈折率と等しい屈折率となる液晶材料を選択してもよく、また、液晶材料を選択してから、その液晶のあるオーダーパラメーターの配向状態での屈折率と同じ屈折率になるように重合性モノマーあるいはプレポリマーを選択してもよい。
【0061】
非重合性液晶としては、ネマチック、コレステリック、スメクチックのいずれのタイプでも良く、従来公知のビフェニル、ターフェニル、フェニルシクロヘキサン、ビフェニルシクロヘキサン、安息香酸フェニルエステル、シクロヘキサンカルボン酸フェニルエステル、フェニルピリミジン、フェニルジオキサン、トラン、1−フェニル−2−シクロヘキシルエタン、1−フェニル−2−ビフェニルエタン、1−シクロヘキシル−2−ビフェニルエタン、ビフェニルカルボン酸フェニルエステル、4−シクロヘキシル安息香酸フェニルエステルなどを骨格とし、アルキル基、アルコキシ基や誘電異方性を付与するための極性付与基としてのシアノ基、ハロゲン基などを置換基として有する液晶などを用いることができる。非重合性液晶材料は、重合性モノマーあるいはプレポリマーの合計量100重量部に対して20重量部〜500重量部の割合で使用されることが好ましい。
【0062】
重合性モノマーまたはそのプレポリマーとしては、重合による硬化収縮が大きいものを用いることが好ましい。このような重合性モノマーとしては、エチレン性不飽和結合を有する光重合可能な化合物であって、1分子中に少なくともエチレン性不飽和二重結合を1個有する光重合、光架橋可能なモノマー、オリゴマー、プレポリマー及びそれらの混合物であり、モノマー及びその共重合体の例としては、不飽和カルボン酸及びその塩、不飽和カルボン酸と脂肪族多価アルコール化合物とのエステル、不飽和カルボン酸と脂肪族多価アミン化合物とのアミド等が挙げられるが、特に2官能以上の多官能性モノマーは硬化収縮が大きく、好適に使用できる。不飽和カルボン酸のモノマーとしてはアクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、マレイン酸、及びそれらのハロゲン置換不飽和カルボン酸、例えば塩素化不飽和カルボン酸、臭素化不飽和カルボン酸、弗素化不飽和カルボン酸等が挙げられる。不飽和カルボン酸の塩としては前述の酸のナトリウム塩及びカリウム塩等がある。また、ウレタンアクリレート類、ポリエステルアクリレート類、エポキシ樹脂と(メタ)アクリル酸等の多官能性のアクリレートやメタクリレートを挙げることができる。また、上記の他に熱重合禁止剤、可塑剤等が添加されても良い。
【0063】
光重合開始剤としては、前述と同様に公知の材料を用いることができる。光重合開始剤の添加量は照射する光の波長に対する各材料の吸光度によっても異なるが、モノマーまたはプレポリマー全量に対して0.1重量%以上10重量%以下であることが好ましく、0.5重量%以上3重量%以下であることがより好ましい。光重合開始剤の添加量が少なすぎる場合にはポリマーと液晶の相分離が起こり難くなり、必要な露光時間が長くなってしまう。逆に、光重合開始剤が多すぎる場合にはポリマーと液晶の相分離が不十分な状態で硬化してしまうため、ポリマー中に多くの液晶分子が取り込まれ、偏光選択性が劣化するという問題がある。ここで、偏光選択性とは周期構造の配列方向に略平行な偏光方向における回折効率と前記した偏光方向に対して90度回転した偏光方向における回折効率の比であり、0に近づくほど、偏光選択性は良好であるとする。
【0064】
次に、相分離によるホログラム形成過程について図14を用いて説明する。図14において、図示しない所望の波長のレーザー光源による二光束干渉露光系を用いて、組成物中に露光を行うと、干渉縞の明部において重合性モノマーあるいはプレポリマーの光重合反応が始まる。この時、硬化収縮が起こって密度差が生じ、隣接する重合性モノマーあるいはプレポリマーが明部に移動し更に重合が進行する。それと同時に明部に存在していた非重合性液晶が暗部に向かって追い出されることで相分離が起こる。この時、液晶分子が移動して行く際にモノマーやポリマー鎖との相互作用で液晶分子長軸を移動方向に配向させようとする力が働くと考えられる。すなわち、相分離過程において干渉縞の間隔方向に液晶分子を配向させようとする力が働くと考えられる。最終的には、図15に示すように、干渉縞の明暗のピッチに対応してポリマー層と非重合性液晶層の周期構造が形成され、液晶層部の配向ベクトルが干渉縞の間隔方向を向いた状態が得られると考えられる。この干渉露光および相分離過程において、試料を適当な温度に加熱保持しておくことが好ましい。温度によって相分離の速度が変化し、液晶分子の配向性に影響を及ぼすと考えられる。最適な加熱温度は使用する材料によって異なるが40℃から100℃程度が好ましい。
【0065】
相分離によるポリマー層と非重合性液晶層の周期構造では、厳密にはポリマーと非重合性液晶が周期的に完全に分離することは困難であり、ここで言うポリマー層とはポリマー成分が多い領域であり液晶分子を含んでいても良い。また、非重合性液晶層とは非重合性液晶成分が多い領域でありポリマー成分を含んでいても良い。実際にはポリマー層と液晶層の界面は理想的な平面では無く凹凸状であると推測されるため、界面での液晶分子長軸方向のバラツキは大きく、液晶層のオーダーパラメーターは比較的小さい状態となる。したがって、液晶層部の複屈折は比較的小さくなる。
【0066】
作製する周期構造のピッチは所望の回折角や波長によって異なるが、概ね0.2μmから1000μmの範囲である。例えば、405nmの入射光に対して20°の回折角を得るためには、1.1μm程度のピッチ、650nmの入射光に対して2.3μm程度のピッチが必要となる。ポリマー層と液晶層界面の傾斜角としては0°から20°程度が好ましい。露光量としては光重合開始剤の添加濃度や露光時の温度によっても異なるが、0.5J/cm2から30J/cm2が好ましく、1J/cm2から15J/cm2がより好ましい。
【0067】
第5の実施形態では、液晶部全体の常光屈折率noとポリマー部の屈折率npがほぼ一致するように液晶の種類とポリマーの種類の組合せを適宜設定することで、図15のようなS偏光の入射光に対しては液晶部全体の常光屈折率noとポリマー部の屈折率npの差を感じないため回折せず、P偏光の入射光に対しては液晶部全体の異常光屈折率neとポリマー部の屈折差を感じて回折するようなホログラフィックポリマー分散液晶層からなる偏光選択性ホログラムが比較的低コストで作製することができる。
【0068】
このようなホログラフィックポリマー分散液晶層は非重合性の液晶領域とポリマー領域との周期構造からなるため、層内に電界を印加することで液晶領域の液晶の配向は電界により制御できる。ここで電界制御による動作機能を図16に示す。図16(a)のように、電界を印加しない場合は、液晶の配向は周期構造の配列方向に向いており、P偏光に対して光は回折する。ここで、図16(b)のように電界を印加する場合は、液晶の配向は電界方向(基板面垂直方向)を向いており、P偏光に対して光は透過する。(S偏光はどちらの場合においても透過する)すなわちホログラフィックポリマー分散液晶層にて決定する回折角を偏光変換層の偏光回転領域と偏光非回転領域に対応するように設定することで、図13のようにレンズアレイ層を透過した光(P偏光)の焦点位置を可変することができる。
【0069】
一般的にポリマー分散液晶はポリマー界面の規制を強く受けるため、液晶の配向規制力が大きい。そのため液晶の応答速度は規制力により増倍され、数十μ秒の高速応答が得られる。
【0070】
具体例としては、厚み0.15mmのガラス基板の片面に青色光に対する反射防止膜を形成後、反対の面にITOを1500Åの厚さに蒸着した。粒径4μmのスペーサー粒子を接着剤中に分散させ有効領域外に塗布してガラス基板を貼り合わせ。有効領域の幅は10mm角程度とした。次に以下の5種類の材料の混合物からなる組成物を約60℃に加熱しながら毛管法によりセル中に注入し、厚み約4μmの組成物層を形成した。なお、この組成物は緑色より短波長の光に反応性を示すため赤色光を用いた暗室下で取り扱った。
〈1〉ネマチック液晶(メルク製ZLI−4850、Δε<0) 30重量部
〈2〉フェニルグリシジルエーテルアクリレートヘキサメチレンジイソシアネートウレタンプレポリマー(共栄社化学製AH600) 75重量部
〈3〉ジメチロールトリシクロデカンジアクリレート(共栄社化学製DCP−A) 10重量部
〈4〉2−ヒドロキシエチルメタクリレート(共栄社化学製HO) 5重量部
〈5〉メタロセン系光重合開始剤(チバガイギー製イルガキュア784) 0.5重量部
セル中に注入後、この組成物は室温下において等方性を示した。
【0071】
次に、波長442nm、出力80mWのHe−Cdレーザーによる二光束干渉露光系を作成した。レーザー光を分割、拡大して、1つの光束が約11mW/cm2程度の平行光として、2光束の交差角度を26度に設定した。この波長と交差角度では二光束の交差領域に約1μm周期の干渉縞が生成される。
【0072】
セル基板を加熱装置に取り付け、約60℃に加熱した状態で、約5分間の2光束干渉露光を行い、ホログラム素子を作製した。この時、基板面の垂直方向に対して+13度と−13度の方向から2光束が入射するように設定した。
【0073】
作製したホログラム素子の基板面に対して角度が13度の方向から波長442nmの直線偏光のレーザー光を照射して、入射光強度に対する+1次回折光強度を測定した。入射光強度は5mW程度になるようにNDフィルターを用いて調整した。入射光路中に直線偏光板と半波長板を配置し、半波長板の光軸を45度回転させることで、ホログラム素子に入射する偏光方向(P偏光、S偏光)を切り換え可能に構成し、入射光の偏光をP偏光に設定した。素子を透過する光はほぼ回折し+1次回折効率は80%であった。
【0074】
ホログラム素子にファンクションジェネレーターとアンプを用いて1kHz、±20V/μmの矩形波を基板間に印加し、同様にして素子の光学特性を測定したところ、0次光の透過質が95%となった。高速度カメラにより素子を透過した光を受光し、応答速度を測定したところ100μsecの高速応答性が得られた。入射光に対する+1次回折光の出射角度は26度であり、偏光変換層の偏光回転領域あるいは偏光非回転領域に対応させることで、電界制御により偏光変換が可能となる。
【0075】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態の記載に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の変形が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0076】
本発明は、液晶ディスプレイ、液晶プロジェクタなどの照明光学系に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る偏光変換素子の構成を模式的に示す断面図である。
【図2】本発明の第1の実施形態に係る偏光変換素子における液晶の状態の一例を模式的に示す断面図である。
【図3】本発明の第1の実施形態に係る偏光変換素子における液晶の状態の一例を模式的に示す断面図である。
【図4】本発明の第1の実施形態に係る偏光変換素子における屈折率分布の影響を示すグラフである。
【図5】本発明の第2の実施形態に係る偏光変換素子の構成を模式的に示す断面図である。
【図6】本発明の第2の実施形態に係る偏光変換素子における液晶の状態の一例を模式的に示す断面図である。
【図7】本発明の第2の実施形態に係る偏光変換素子における液晶の状態の一例を模式的に示す断面図である。
【図8】本発明の第3の実施形態に係る偏光変換層の構成を模式的に示す断面図である。
【図9】本発明の第3の実施形態に係る偏光変換層の機能動作を説明するための断面図である。
【図10】本発明の第4の実施形態に係る偏光変換装置の構成を模式的に示す断面図である。
【図11】本発明の第4の実施形態に係る偏光変換装置の電界制御による偏光変換の動作を説明するための断面図である。
【図12】本発明の第4の実施形態に係る偏光変換素子における屈折率分布の影響を示すグラフである。
【図13】本発明の第5の実施形態に係る偏光変換装置の構成を模式的に示す断面図である。
【図14】相分離によるホログラム形成過程について説明するための図である。
【図15】相分離によるホログラム形成過程における液晶の配向状態を示す断面図である。
【図16】本発明の第5の実施形態に係る偏光変換装置の電界制御による動作機能を説明するための断面図である。
【符号の説明】
【0078】
1、2、2a、2b、3 透明基板
4 透明電極
5 透明電極アレイ
6 偏光変換層
7 レンズアレイ層
8 液晶(液晶成分)
9 偏光回転領域
10 偏光非回転領域
11、12 配向膜
13 TN液晶層
14 偏光分離層
20 電界印加制御手段
【特許請求の範囲】
【請求項1】
入射光を第一の偏光成分と第二の偏光成分とに分離する機能、および、前記偏光成分のうち少なくとも一つの偏光成分を集光する機能を備えたレンズアレイ層と、偏光回転領域および偏光非回転領域を周期的に形成する偏光変換層と、を有する偏光変換素子において、
前記レンズアレイ層は、
一対の基板と、
前記一対の基板のうち少なくとも一つの基板上に備えられ、前記一対の基板間に電界を印加可能な電極と、
前記一対の基板間に備えられ、前記電極によって印加される電界によって屈折率分布の制御が可能な液晶と、
を有することを特徴とする偏光変換素子。
【請求項2】
前記偏光変換層は、少なくとも、
一対の基板と、
重合性液晶と、光重合開始剤とからなる液晶組成物と、
前記一対の基板上にそれぞれ設けられ、前記液晶組成物を前記一対の基板間で配向させるための配向膜と、
を有することを特徴とする請求項1記載の偏光変換素子。
【請求項3】
前記偏光変換層は、複屈折性を示す領域と、等方性を示す領域との周期構造からなることを特徴とする請求項1記載の偏光変換素子。
【請求項4】
前記レンズアレイ層の液晶は、少なくとも重合性液晶を含んだ液晶組成物であることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の偏光変換素子。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載の偏光変換素子と、
前記偏光変換素子に備えられた電極の、電界印加の方向または電界印加のタイミングを切り替え可能な電界印加制御手段と、
を有することを特徴とする偏光変換装置。
【請求項6】
請求項1から4のいずれか1項に記載の偏光変換素子と、
前記偏光変換素子のレンズアレイ層と偏光変換層との間に設けられた偏光分離層と、を有し、
前記偏光分離層は、
一対の基板と、
前記一対の基板間に電界を印加可能な電極と、
前記電極の電界印加の方向または電界印加のタイミングを切り替え可能な電界印加制御手段と、
を備えることを特徴とする偏光変換装置。
【請求項7】
前記偏光分離層は、少なくとも、
非重合性液晶と、重合性モノマーあるいはプレポリマーと、光重合開始剤とからなる組成物からなり、
前記組成物を二光束干渉露光することにより、主にポリマーから成る層と、主に非重合性液晶から成る層との周期的な相分離構造を形成したホログラフィックポリマー分散液晶層であることを特徴とする請求項6記載の偏光変換装置。
【請求項1】
入射光を第一の偏光成分と第二の偏光成分とに分離する機能、および、前記偏光成分のうち少なくとも一つの偏光成分を集光する機能を備えたレンズアレイ層と、偏光回転領域および偏光非回転領域を周期的に形成する偏光変換層と、を有する偏光変換素子において、
前記レンズアレイ層は、
一対の基板と、
前記一対の基板のうち少なくとも一つの基板上に備えられ、前記一対の基板間に電界を印加可能な電極と、
前記一対の基板間に備えられ、前記電極によって印加される電界によって屈折率分布の制御が可能な液晶と、
を有することを特徴とする偏光変換素子。
【請求項2】
前記偏光変換層は、少なくとも、
一対の基板と、
重合性液晶と、光重合開始剤とからなる液晶組成物と、
前記一対の基板上にそれぞれ設けられ、前記液晶組成物を前記一対の基板間で配向させるための配向膜と、
を有することを特徴とする請求項1記載の偏光変換素子。
【請求項3】
前記偏光変換層は、複屈折性を示す領域と、等方性を示す領域との周期構造からなることを特徴とする請求項1記載の偏光変換素子。
【請求項4】
前記レンズアレイ層の液晶は、少なくとも重合性液晶を含んだ液晶組成物であることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の偏光変換素子。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載の偏光変換素子と、
前記偏光変換素子に備えられた電極の、電界印加の方向または電界印加のタイミングを切り替え可能な電界印加制御手段と、
を有することを特徴とする偏光変換装置。
【請求項6】
請求項1から4のいずれか1項に記載の偏光変換素子と、
前記偏光変換素子のレンズアレイ層と偏光変換層との間に設けられた偏光分離層と、を有し、
前記偏光分離層は、
一対の基板と、
前記一対の基板間に電界を印加可能な電極と、
前記電極の電界印加の方向または電界印加のタイミングを切り替え可能な電界印加制御手段と、
を備えることを特徴とする偏光変換装置。
【請求項7】
前記偏光分離層は、少なくとも、
非重合性液晶と、重合性モノマーあるいはプレポリマーと、光重合開始剤とからなる組成物からなり、
前記組成物を二光束干渉露光することにより、主にポリマーから成る層と、主に非重合性液晶から成る層との周期的な相分離構造を形成したホログラフィックポリマー分散液晶層であることを特徴とする請求項6記載の偏光変換装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2008−139684(P2008−139684A)
【公開日】平成20年6月19日(2008.6.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−327173(P2006−327173)
【出願日】平成18年12月4日(2006.12.4)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年6月19日(2008.6.19)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年12月4日(2006.12.4)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】
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