説明

像保持体及び画像形成装置

【課題】感光層の一部に流れる電流を検出可能にする。
【解決手段】導体84は、像保持体22と帯電部材24との接触幅よりも断面が小さくされ、円柱状のアルミニウムを略直角に曲げることにより構成され、端部などを除く部分の外面が絶縁層114により絶縁被覆されている。像保持体22は、導体84の一端が絶縁層114を介し導電性支持体80に内側から埋め込まれて感光層82に接触している。また、導体84は、感光層82の画像形成領域外に接触するように、導電性支持体80の端部に埋め込まれている。導体84の一端の表面は、導電性支持体80の表面に位置が揃えられ、一つの面を構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、像保持体及び画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、帯電部材と被帯電体との間に流れる総交流電流量を、帯電ニップ部を流れる交流電流量と微小空隙を流れる交流放電電流量とに分けて該交流放電電流量を検知し、該交流放電電流量が予め定められた設定範囲内に収まるように、帯電部材に印加する交流電圧又は交流電流量を制御する画像形成装置を開示する。また、特許文献2は、帯電部材が被帯電体の非画像形成領域に対応している時に、該帯電部材に予め定められた交流電圧と直流電圧からなる検知用の電圧を印加し、この時流れる直流電流成分量を検知し、該帯電部材が被帯電体の画像形成領域に対応している時は検知した直流電流成分量に応じて交流電圧及び直流電圧を制御した電圧を帯電部材に印加する画像形成装置の制御方法を開示する。
【0003】
【特許文献1】特許第3576738号
【特許文献2】特許第3279152号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、感光層の一部に流れる電流を検出可能にすることができる像保持体及び画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するため、請求項1に係る本発明は、回転軸を中心とする断面円形の外面を有する導電性支持体と、この導電性支持体の外面を覆う感光層と、この感光層の一部に流れる電流を導く導体と、を有する像保持体である。
【0006】
請求項2に係る本発明は、前記導体が、一端が絶縁層を介し前記導電性支持体に埋め込まれて前記感光層に接触し、前記導電性支持体と同電位にされている請求項1記載の像保持体である。
【0007】
請求項3に係る本発明は、前記導体が、前記感光層の画像形成領域外に接触するように、前記導電性支持体の端部に埋め込まれている請求項2記載の像保持体である。
【0008】
請求項4に係る本発明は、回転軸を中心とする断面円形の外面を有する導電性支持体と、この導電性支持体の外面を覆う感光層と、この感光層の一部に流れる電流を導く導体と、を具備して周方向に回転する像保持体と、この像保持体に接触して該像保持体を帯電させる弾性を備えた帯電部材と、を有する像保持体ユニットである。
【0009】
請求項5に係る本発明は、前記導体が、絶縁層を介し前記導電性支持体に埋め込まれて、その一端が前記感光層に接触し、前記導電性支持体と同電位にされている請求項4記載の像保持体ユニットである。
【0010】
請求項6に係る本発明は、前記導体が、前記感光層の画像形成領域外に接触するように、前記導電性支持体の端部に埋め込まれている請求項4又は5記載の像保持体ユニットである。
【0011】
請求項7に係る本発明は、前記導体が、前記像保持体の画像形成領域外の前記感光層を介して前記帯電部材に接触可能にされている請求項4乃至6いずれか記載の像保持体ユニットである。
【0012】
請求項8に係る本発明は、回転軸を中心とする断面円形の外面を有する導電性支持体と、この導電性支持体の外面を覆う感光層と、この感光層の一部に流れる電流を導く導体と、を具備して周方向に回転する像保持体と、前記導体が導く電流を検出する電流検出手段と、を有する画像形成装置である。
【0013】
請求項9に係る本発明は、前記導体が、絶縁層を介し前記導電性支持体に埋め込まれて、その一端が前記感光層に接触し、前記導電性支持体と同電位にされている請求項8記載の画像形成装置である。
【0014】
請求項10に係る本発明は、前記導体が、前記感光層の画像形成領域外に接触するように、前記導電性支持体の端部に埋め込まれている請求項9記載の画像形成装置である。
【0015】
請求項11に係る本発明は、前記像保持体に接触して該像保持体を帯電させる弾性を備えた帯電部材をさらに有し、前記導体が、前記像保持体の画像形成領域外の前記感光層を介して前記帯電部材に接触可能にされている請求項9又は10いずれか記載の画像形成装置である。
【0016】
請求項12に係る本発明は、前記電流検出手段の検出結果に基づいて、前記像保持体と前記帯電部材との接触幅を算出する接触幅算出手段をさらに有する請求項11記載の画像形成装置である。
【0017】
請求項13に係る本発明は、前記電流検出手段の検出結果に基づいて、前記帯電部材の形状を算出する形状算出手段をさらに有する請求項11又は12記載の画像形成装置である。
【0018】
請求項14に係る本発明は、前記帯電部材に電圧を印加する電源部と、前記電流検出手段の検出結果に基づいて、前記電源部を制御する電源制御手段と、をさらに有する請求項11乃至13いずれか記載の画像形成装置である。
【0019】
請求項15に係る本発明は、前記電流検出手段の検出結果に基づいて、前記感光層の層厚を算出する層厚算出手段をさらに有する請求項8乃至14いずれか記載の画像形成装置である。
【0020】
請求項16に係る本発明は、前記導体が導く電流が流れる前記感光層の一部の位置を検出する位置検出手段と、この位置検出手段の検出結果に基づいて、前記電流検出手段が電流を検出するタイミングを制御するタイミング制御手段と、をさらに有する請求項8乃至15いずれか記載の画像形成装置である。
【発明の効果】
【0021】
請求項1に係る本発明によれば、感光層の一部に流れる電流を検出可能にすることができる。
【0022】
請求項2に係る本発明によれば、請求項1に係る本発明の効果に加えて、本構成を有していない場合に比較して、簡易な構成で感光層の一部に流れる電流を検出可能にすることができる。
【0023】
請求項3に係る本発明によれば、請求項2に係る本発明の効果に加えて、絶縁層が感光層の画像形成領域に形成される画像を劣化させることを防止することができる。
【0024】
請求項4に係る本発明によれば、感光層の一部に流れる電流を検出可能にすることができる。
【0025】
請求項5に係る本発明によれば、請求項4に係る本発明の効果に加えて、本構成を有していない場合に比較して、簡易な構成で感光層の一部に流れる電流を検出可能にすることができる。
【0026】
請求項6に係る本発明によれば、請求項4又は5に係る本発明の効果に加えて、絶縁層が感光層の画像形成領域に形成される画像を劣化させることを防止することができる。
【0027】
請求項7に係る本発明によれば、請求項4乃至6いずれかに係る本発明の効果に加えて、帯電部材と感光層とが接触する部分の一部に流れる電流を正確に検出することができる。
【0028】
請求項8に係る本発明によれば、感光層の一部に流れる電流を検出することができる。
【0029】
請求項9に係る本発明によれば、請求項8に係る本発明の効果に加えて、本構成を有していない場合に比較して、簡易な構成で感光層の一部に流れる電流を検出することができる。
【0030】
請求項10に係る本発明によれば、請求項9に係る本発明の効果に加えて、絶縁層が感光層の画像形成領域に形成される画像を劣化させることを防止することができる。
【0031】
請求項11に係る本発明によれば、請求項9又は10に係る本発明の効果に加えて、帯電部材と感光層とが接触する部分の一部に流れる電流を正確に検出することができる。
【0032】
請求項12に係る本発明によれば、請求項11に係る本発明の効果に加えて、像保持体と帯電部材との接触幅を算出することができる。
【0033】
請求項13に係る本発明によれば、請求項11又は12に係る本発明の効果に加えて、帯電部材の形状を算出することができる。
【0034】
請求項14に係る本発明によれば、請求項11乃至13いずれかに係る本発明の効果に加えて、帯電部材に印加する電圧を最適化することができる。
【0035】
請求項15に係る本発明によれば、請求項8乃至14いずれかに係る本発明の効果に加えて、感光層の層厚を算出することができる。
【0036】
請求項16に係る本発明によれば、請求項8乃至15いずれかに係る本発明の効果に加えて、本構成を有していない場合に比較して、感光層の一部に流れる電流を効率的に検出することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0037】
次に本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1及び図2において、本発明の実施形態に係る画像形成装置10の概要が示されている。画像形成装置10は、画像形成部12と、原稿読取装置14とを有する。画像形成部12は、例えばゼログラフィ(電子写真)方式のもので、用紙などの記録媒体が積載された例えば4段の給紙トレイ16a,16b,16c,16d及び手差しトレイ18とを有し、これらトレイ16a〜16d、18から記録媒体搬送路20に供給された記録媒体に画像を形成するようになっている。
【0038】
即ち、画像形成部12は、例えば円筒状の感光体からなり周方向に予め定められた速度で回転する像保持体22と、この像保持体22を一様に接触帯電する例えば帯電ロールからなる帯電部材24と、この帯電部材24により一様に帯電された像保持体22に静電潜像を形成する露光装置(光書込み装置)26と、この露光装置26により形成された像保持体22上の潜像を現像剤で可視化する現像装置28と、この現像装置28により形成された現像剤像を記録媒体に転写する転写装置30と、像保持体22に残った現像剤をクリーニングするクリーナ32とを有する。また、例えば露光装置26と現像装置28との間には、フォトインタラプタ33が配置されている。フォトインタラプタ33は、像保持体22に向けて光を照射し、像保持体22に設けられた後述する反射部材86が反射した光を受け入れて、後述する制御ユニット62に対して受光タイミングを出力するフォトセンサである。
【0039】
帯電部材24は、例えばゴムなどの弾性を有する部材を表面側に有し、像保持体22とともに回転する。露光装置26は、レーザ走査方式のもので、例えば原稿読取装置14で読み取った原稿の画像をレーザのオンオフ信号に変えて出力する。転写装置30は例えば転写ロールから構成され、この転写装置30により現像剤像が転写された記録媒体が定着装置34に送られ、この定着装置34により現像剤像が記録媒体に定着される。現像剤像が定着された記録媒体は、排出トレイ36に排出される。
【0040】
記録媒体搬送路20には、複数の記録媒体搬送ロール38が設けられている。この記録媒体搬送ロール38の一つとして、転写装置30上流側近傍には、レジストロール40が配置されている。このレジストロール40は、供給された記録媒体を一時停止させ、像保持体22に静電潜像が形成されるタイミングと同期して記録媒体を転写装置30に供給するように制御される。
【0041】
原稿読取装置14は、原稿を光学的に読み取る光学系42と、自動原稿送り装置44とを有する。
光学系42は、自動原稿送り装置44により送られた原稿を流し読みする機能と、反射ミラー等を走査して原稿台ガラス54上に置かれた原稿を読み取る機能とを備えている。
【0042】
自動原稿送り装置44は、多数の原稿が積載される原稿積載台56と、原稿を搬送する原稿搬送路58と、画像を読み取った後の原稿が排出される排出台60とを有する。
【0043】
また、画像形成装置10は、制御ユニット62、表示装置及びキーボードなどを含むユーザインタフェース装置(UI装置)64、HDD・CD装置などの記憶装置66及び通信装置68などを有する。制御ユニット62は、CPU70及びメモリ72などを含み、画像形成装置10を構成する各部を制御するようにされている。
このように、画像形成装置10は、コンピュータとしての機能を含み、記憶媒体74又は通信装置68を介して受け入れたプログラムを実行することにより、印刷などの処理を行う。
【0044】
次に、像保持体22、帯電部材24及びその周辺の構成について詳述する。
図3は、像保持体22、帯電部材24及びその周辺の構成の詳細を示す模式図である。像保持体22は、例えば接地されたアルミニウムなどからなり、回転軸を中心とする断面円形の外面を有する例えば円筒状の導電性支持体80と、この導電性支持体80の外面を覆う感光層82と、この感光層82に一端が接触するように導電性支持体80に内側から埋め込まれた例えばアルミニウムなどからなる導体84と、上述したフォトインタラプタ33が照射する光を反射させる反射部材(パターン)86とを有するロール状の感光体であり、周方向に回転する。
【0045】
帯電部材24は、図9を用いて後述するシャフト118、下地120及び表層122を有し、電源部88が接続されている。電源部88は、交流電源90及び直流電源92を有し、制御ユニット62の制御に応じて、予め定められた直流電圧Vdcに交流電圧Vacを重畳した電圧を帯電部材24に印加する。例えば、電源部88は、交流電源90が1000Hzの周波数でピーク間電圧Vppが800〜2500V程度の交流電圧を帯電部材24に対して印加し、直流電源92が−300〜−700V程度の直流電圧Vdcを帯電部材24に対して印加して、予め定められた電流を帯電部材24に供給するようにされている。電流検出部94は、制御ユニット62の制御に応じて、導体84が導く電流を検出し、制御ユニット62に対して出力する。
【0046】
制御ユニット62は、位置検出部96、タイミング制御部98、層厚算出部100、接触幅算出部102、形状算出部104及び電源制御部106を有する。位置検出部96は、フォトインタラプタ33が出力する受光タイミングを受け入れ、導体84の位置(回転中の位置)を検出する。タイミング制御部98は、位置検出部96の検出結果に応じて、電流検出部94が電流を検出するタイミングを制御する。層厚算出部100は、電流検出部94が検出した電流に基づいて、感光層82の層厚を算出する。接触幅算出部102は、電流検出部94が検出した電流に基づいて、像保持体22と帯電部材24との接触幅を算出する。形状算出部104は、電流検出部94が検出した電流に基づいて、帯電部材24の形状を算出する。電源制御部106は、電流検出部94が検出した電流に基づいて、電源部88の出力電圧、出力電流及びオン・オフを制御する。
【0047】
次に、像保持体22の構成について詳述する。
図4は、像保持体22をフォトインタラプタ33側から見た斜視図である。
図5は、像保持体22の構成を示す図であって、(A)は像保持体22を反フォトインタラプタ33側から見た斜視図であり、(B)は導体84が感光層82と接触する部分を示す拡大断面図である。
図6は、導体84が埋め込まれた状態の導電性支持体80を示す図であって、(A)は導体84が埋め込まれた状態の導電性支持体80を示す斜視図であり、(B)は導体84が埋め込まれた状態の導電性支持体80を示す上方から見た拡大図である。
【0048】
像保持体22は、導体84が感光層82に接触している部分(電極となる部分)よりも早いタイミングでフォトインタラプタ33に対向する位置に移動するように反射部材86が配置されており、反射部材86によってフォトインタラプタ33が照射する光を反射するようにされている。
感光層82は、例えば図5(B)に示すように、電荷発生層(CGL)110及び電荷輸送層(CT層)112から構成される。導体84は、例えば像保持体22と帯電部材24との接触幅よりも断面が小さくされ、例えば直径が約1mmの円柱状のアルミニウムを略直角に曲げることにより構成され、端部などを除く部分の外面が絶縁層114により絶縁被覆されている。
【0049】
像保持体22は、図6(B)にも示すように、導体84の一端が絶縁層114を介し導電性支持体80に内側から埋め込まれて感光層82に接触している。また、導体84は、感光層82の画像形成領域外に接触するように、導電性支持体80の端部に埋め込まれている。導体84の一端の表面は、図6(A)にも示すように、導電性支持体80の表面に位置が揃えられ、一つの面を構成する。なお、感光層82の画像形成領域とは、露光装置26が像保持体22に静電潜像を書き込む領域である。
【0050】
また、導体84及び導電性支持体80は、図7に示すように、絶縁層114により互いに絶縁されていても、イマジナリショートを構成するオペアンプ116にそれぞれ接続されることにより、同電位(それぞれ接地)になるようにされている。導体84の他端は、例えば導電性のベアリングなどを介して電流検出部94に接続されている。
【0051】
次に、制御ユニット62が電流検出部94を介して導体84に流れる電流を検出する動作例について説明する。
図8は、制御ユニット62が電流検出部94を介して導体84に流れる電流を検出する動作例を示すタイミングチャートである。
制御ユニット62は、反射部材86による反射光をフォトインタラプタ33が受光したことを示す信号をフォトインタラプタ33から受け入れると、像保持体22の回転速度に応じて予め定められた時間の経過後に、電流の検出の開始を示す信号(検出開始信号)を電流検出部94に対して出力する。また、制御ユニット62は、像保持体22の回転速度に応じて予め定められた電流検出時間の経過後に、電流の検出の終了を示す信号(検出終了信号)を電流検出部94に対して出力する。このように、電流検出部94は、制御ユニット62が出力する検出開始信号を受け入れた時から検出終了信号を受け入れるまでの間(検出期間)に、導体84に流れる電流を検出し、検出した電流(検出信号)を制御ユニット62に対して出力するようにされている。例えば、制御ユニット62は、電流検出部94による電流の検出期間の略中間に、像保持体22と帯電部材24とが接触する接触位置の直下を導体84が回転方向上流側から回転方向下流側へ通過するように、電流検出部94による電流の検出タイミングを制御する。
【0052】
図9は、像保持体22と帯電部材24とが接触する接触部周辺と、導体84周辺の等価回路とを示す模式図である。
帯電部材24は、シャフト118、下地120及び表層122から構成され、例えばロール径が12mmにされている。シャフト118は、電源部88が接続されており、電源部88により予め定められた直流電圧Vdcに交流電圧Vacを重畳した電圧が印加される。下地120は、例えばゴムなどの弾性を有する部材であり、例えば厚みが3mmにされている。表層122は、例えば下地120とは体積抵抗が異なるゴムなどの弾性を有する部材であり、例えば厚みが0.006mmにされている。
【0053】
像保持体22が回転することにより、像保持体22と帯電部材24との接触部に導体84が回転方向上流側から近づくと、図9に示すように、導体84とシャフト118とは、下地抵抗124、表層抵抗126、第1の容量128及び第2の容量130が直列に接続された回路を介して接続されるとみなされる。
【0054】
例えば、導体84は、感光層82に接触する端部が略円形にされている(図6等参照)。よって、第2の容量130は、面積が導体84の端部と略同じであり、誘電率が感光層82と同じであるコンデンサとみなされる。同様に、第1の容量128は、面積が導体84の端部と略同じであり、誘電率が大気と同じであるコンデンサとみなされる。
【0055】
図10は、図8に示した検出期間において、像保持体22の回転に応じて電流検出部94が検出する電流を示した模式図である。
上述したように、電流検出部94による電流の検出期間において、像保持体22と帯電部材24とが接触する接触位置の直下を導体84が回転方向上流側から回転方向下流側へ通過する。電流検出部94が検出する検出電流は、像保持体22と帯電部材24とが接触する接触位置の直下を導体84が通過する場合にピーク値となる。そこで、層厚算出部100(図3)は、電流検出部94が検出する電流のピーク値に応じて感光層82の層厚を算出するようにされている。例えば、図11に示したグラフにおいて、包絡線がピーク値を示している状態では、像保持体22と帯電部材24とが接触しているために、像保持体22と帯電部材24との間に空気層(の容量)が存在しない。したがって、電流検出部94が検出する電流値を用いて、層厚算出部100は、感光層82の層厚を算出することができる。なお、感光層82は層厚が薄くなると容量が大きくなるので、感光層82の層厚が薄くなると電流検出部94が検出する電流のピーク値も大きくなる。
【0056】
また、像保持体22と帯電部材24とが接触する接触位置(接触範囲)の直下を導体84が通過する間、電流検出部94が検出する電流は、ピーク値が継続する。そこで、接触幅算出部102は、電流検出部94が検出する電流のピーク値が継続する時間に応じて像保持体22と帯電部材24とが接触する接触範囲(接触幅)を算出するようにされている。
【0057】
また、形状算出部104は、電流検出部94が検出する電流の例えば図12(A)に示した包絡線に応じて帯電部材24の形状を算出するようにされている。例えば、図12(A)に示すように、硬度が互いに異なる帯電部材Aと帯電部材Bとでは、包絡線のピーク値が異なる。帯電部材は、硬度が異なると、像保持体22に押し当てられた場合の変形量(つぶれ具合)が異なるためである。したがって、電流検出部94が検出する電流値を用いて、形状算出部104は、図12(B)に示すように帯電部材24の形状(つぶれ具合)を算出することができる。
【0058】
また、制御ユニット62は、電流検出部94が検出する電流の振幅が予め定められた値以上となっている時間に応じて、像保持体22と帯電部材24との間で放電が発生し得る範囲(接触位置の上流側と下流側で囲まれる放電が発生し得る範囲)も算出するようにされている。
【0059】
次に、電流検出部94が検出する電流に応じて電源制御部106が電源部88を制御する処理について説明する。
図13は、電源部88が帯電部材24に供給する交流(AC)電流の大きさと、画像形成装置10が形成する画像の欠陥(白点)の発生との一般的関係を示すグラフである。
図13に示すように、電源部88が帯電部材24に供給するAC電流が大きくなるにつれて、帯電部材24に流れる直流(DC)電流が大きくなる状態(領域A)では、帯電部材24は像保持体22を十分に帯電させていない。
【0060】
電源部88が帯電部材24に供給するAC電流が大きくなっても、帯電部材24に流れるDC電流が変化しなくなる図13上の点を変曲点(領域B)とすると、画像形成装置10が形成する画像に白点が発生するAC電流の大きさは、変曲点におけるAC電流の大きさよりも少し大きい値のAC電流値までの範囲(領域C)である。
【0061】
制御ユニット62は、変曲点におけるAC電流値よりも大きく、画像から白点が消失する範囲のAC電流値(領域D)において、より小さな値のAC電流を電源部88が帯電部材24に供給するように制御することにより、像保持体22の摩耗を低減させるようにされている。
【0062】
図14は、図13に示した領域A〜Dにおける電流検出部94の検出電流を示すグラフであり、(A)は領域Aにおける検出電流を示し、(B)は領域Bにおける検出電流を示し、(C)は領域Cにおける検出電流を示し、(D)は領域Dにおける検出電流を示すグラフである。
図14(A)に示すように、領域Aにおいては、像保持体22と帯電部材24との接触位置の上流側では像保持体22を帯電させる放電が生じ、接触位置の下流側には異常放電が生じていない。ただし、領域AにおけるAC電流の大きさは、上述したように像保持体22を十分に帯電させていない。
【0063】
図14(B)に示すように、領域Bにおいては、像保持体22と帯電部材24との接触位置の上流側では像保持体22を帯電させる放電が生じ、接触位置の下流側には異常放電が生じている。像保持体22と帯電部材24との接触位置の下流側で生じる異常放電は、接触位置の下流側においても像保持体22が十分に帯電していないことを示す。
【0064】
図14(C)に示すように、領域Cにおいても、像保持体22と帯電部材24との接触位置の上流側では像保持体22を帯電させる放電が生じ、接触位置の下流側には異常放電が生じている。
【0065】
図14(D)に示すように、領域Dにおいては、像保持体22と帯電部材24との接触位置の上流側では像保持体22を帯電させる放電が生じ、接触位置の下流側には異常放電が生じていない。像保持体22と帯電部材24との接触位置の下流側で異常放電が生じていないことは、接触位置の下流側において像保持体22が十分に帯電していることを示す。
【0066】
よって、制御ユニット62は、変曲点におけるAC電流値よりも大きく、図14(D)に示したように、像保持体22と帯電部材24との接触位置の下流側で異常放電が生じない範囲でより小さな値のAC電流を電源部88が帯電部材24に供給するように制御することにより、像保持体22の摩耗を低減させるようにされている。
また、制御ユニット62は、電流検出部94が常に電流を検出し、像保持体22と帯電部材24との接触位置の下流側で異常放電が生じた場合に、電源部88が帯電部材24に供給するAC電流を新たに設定するようにされてもよい。
【0067】
次に、像保持体22の変形例について説明する。
図15は、像保持体22の変形例を示す斜視図である。なお、像保持体22の変形例において、図4に示した像保持体22を構成する部分と実質的に同一のものには、同一の符号が付してある。
図15に示すように、像保持体22の変形例は、例えば2つの導体84が画像形成領域外である端部にそれぞれ独立に設けられている。また、2つの導体84は、例えば像保持体22の周方向にずらされて配置されてもよい。それぞれの導体84が導く電流は、電流検出部94(図3)がそれぞれ独立して検出するようにされている。例えば、2つの導体84がそれぞれ導く電流を個別に電流検出部94が検出し、それぞれの検出結果を制御ユニット62が比較することにより、感光層82の偏摩耗状態を測定することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】本発明の実施形態に係る画像形成装置の概要を示す側面図である。
【図2】本発明の実施形態に係る画像形成装置の概要を示す構成図である。
【図3】像保持体、帯電部材及びその周辺の構成の詳細を示す模式図である。
【図4】像保持体をフォトインタラプタ側から見た斜視図である。
【図5】像保持体の構成を示す図であって、(A)は像保持体をフォトインタラプタの反対側から見た斜視図であり、(B)は導体が感光層と接触する部分を示す拡大断面図である。
【図6】導体が埋め込まれた状態の導電性支持体を示す図であって、(A)は導体が埋め込まれた状態の導電性支持体を示す斜視図であり、(B)は導体が埋め込まれた状態の導電性支持体を示す上方から見た拡大図である。
【図7】導体及び導電性支持体の電位を示す模式図である。
【図8】制御ユニットが電流検出部を介して導体に流れる電流を検出する動作例を示すタイミングチャートである。
【図9】像保持体と帯電部材とが接触する接触部周辺と、導体周辺の等価回路とを示す模式図である。
【図10】図8に示した検出期間において、像保持体の回転に応じて電流検出部が検出する電流を示した模式図である。
【図11】電流検出部が検出する電流と感光層の層厚との関係を示すグラフである。
【図12】(A)は異なる種類の帯電部材を感光層に押し当てた場合に電流検出部が検出する電流をそれぞれ示すグラフであり、(B)は(A)に示した電流を用いて形状算出部が算出する帯電部材の形状の一部を示すグラフである。
【図13】電源部が帯電部材に供給する交流電流の大きさと、画像形成装置が形成する画像の欠陥の発生との一般的関係を示すグラフである。
【図14】図13に示した領域A〜Dにおける電流検出部の検出電流を示すグラフであり、(A)は領域Aにおける検出電流を示し、(B)は領域Bにおける検出電流を示し、(C)は領域Cにおける検出電流を示し、(D)は領域Dにおける検出電流を示すグラフである。
【図15】像保持体の変形例を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0069】
10 画像形成装置
22 像保持体
24 帯電部材
33 フォトインタラプタ
62 制御ユニット
70 CPU
72 メモリ
80 導電性支持体
82 感光層
84 導体
86 反射部材
88 電源部
90 交流電源
92 直流電源
94 電流検出部
96 位置検出部
98 タイミング制御部
100 層厚算出部
102 接触幅算出部
104 形状算出部
106 電源制御部
114 絶縁層
116 オペアンプ
118 シャフト
120 下地
122 表層
124 下地抵抗
126 表層抵抗
128 第1の容量
130 第2の容量

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸を中心とする断面円形の外面を有する導電性支持体と、
この導電性支持体の外面を覆う感光層と、
この感光層の一部に流れる電流を導く導体と、
を有する像保持体。
【請求項2】
前記導体は、
絶縁層を介し前記導電性支持体に埋め込まれて、その一端が前記感光層に接触し、前記導電性支持体と同電位にされている
請求項1記載の像保持体。
【請求項3】
前記導体は、
前記感光層の画像形成領域外に接触するように、前記導電性支持体の端部に埋め込まれている
請求項2記載の像保持体。
【請求項4】
回転軸を中心とする断面円形の外面を有する導電性支持体と、
この導電性支持体の外面を覆う感光層と、
この感光層の一部に流れる電流を導く導体と、
を具備して周方向に回転する像保持体と、
この像保持体に接触して該像保持体を帯電させる弾性を備えた帯電部材と、
を有する像保持体ユニット。
【請求項5】
前記導体は、
絶縁層を介し前記導電性支持体に埋め込まれて、その一端が前記感光層に接触し、前記導電性支持体と同電位にされている
請求項4記載の像保持体ユニット。
【請求項6】
前記導体は、
前記感光層の画像形成領域外に接触するように、前記導電性支持体の端部に埋め込まれている
請求項4又は5記載の像保持体ユニット。
【請求項7】
前記導体は、
前記像保持体の画像形成領域外の前記感光層を介して前記帯電部材に接触可能にされている
請求項4乃至6いずれか記載の像保持体ユニット。
【請求項8】
回転軸を中心とする断面円形の外面を有する導電性支持体と、
この導電性支持体の外面を覆う感光層と、
この感光層の一部に流れる電流を導く導体と、
を具備して周方向に回転する像保持体と、
前記導体が導く電流を検出する電流検出手段と、
を有する画像形成装置。
【請求項9】
前記導体は、
絶縁層を介し前記導電性支持体に埋め込まれて、その一端が前記感光層に接触し、前記導電性支持体と同電位にされている
請求項8記載の画像形成装置。
【請求項10】
前記導体は、
前記感光層の画像形成領域外に接触するように、前記導電性支持体の端部に埋め込まれている
請求項9記載の画像形成装置。
【請求項11】
前記像保持体に接触して該像保持体を帯電させる弾性を備えた帯電部材をさらに有し、
前記導体は、
前記像保持体の画像形成領域外の前記感光層を介して前記帯電部材に接触可能にされている
請求項9又は10いずれか記載の画像形成装置。
【請求項12】
前記電流検出手段の検出結果に基づいて、前記像保持体と前記帯電部材との接触幅を算出する接触幅算出手段をさらに有する
請求項11記載の画像形成装置。
【請求項13】
前記電流検出手段の検出結果に基づいて、前記帯電部材の形状を算出する形状算出手段をさらに有する
請求項11又は12記載の画像形成装置。
【請求項14】
前記帯電部材に電圧を印加する電源部と、
前記電流検出手段の検出結果に基づいて、前記電源部を制御する電源制御手段と、
をさらに有する
請求項11乃至13いずれか記載の画像形成装置。
【請求項15】
前記電流検出手段の検出結果に基づいて、前記感光層の層厚を算出する層厚算出手段をさらに有する
請求項8乃至14いずれか記載の画像形成装置。
【請求項16】
前記導体が導く電流が流れる前記感光層の一部の位置を検出する位置検出手段と、
この位置検出手段の検出結果に基づいて、前記電流検出手段が電流を検出するタイミングを制御するタイミング制御手段と、
をさらに有する
請求項8乃至15いずれか記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2010−107559(P2010−107559A)
【公開日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−276674(P2008−276674)
【出願日】平成20年10月28日(2008.10.28)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】