説明

光ケーブル

【課題】耐久性能を向上させるための構造を備えた光ケーブルを提供する。
【解決手段】光ケーブル10は、基本構造として、光ファイバ心線11と、光ファイバ心線の外周を覆うケーブル外被16を備える。光ファイバ心線11は、ガラスファイバ12と、紫外線硬化樹脂の被覆層13から構成されている。また、耐久性能として優れた耐衝撃性を実現するため、光ファイバ心線の被覆層13は、ヤング率200Mpa以上の第1被覆13bを含む。一方、ケーブル外被16は、ハロゲンを含まない熱可塑性樹脂からなる。ケーブル外被16は、0.7mm以上の厚みを有するとともに、UL規格でV2以上の難燃性と、第1被覆13bと同じかそれ以上のヤング率とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報機器間を接続するための光LAN配線等に適用可能な光ケーブルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年の光通信技術の進歩により、光通信用のLAN(Local Area Network)配線や機器間配線などが採用されるようになってきた。屋内や車両内の光LAN配線、機器間光配線などで使用される光ケーブルには、込み入った部分や凹凸のあるような特殊環境での使用も考慮して、可撓性がよく、細径であることが望まれる。
【0003】
上述のような特殊環境で使用される光ケーブルは、通常の光ケーブル(長距離通信用の光ケーブル)と比較して、比較的短尺(1m〜20m)である。したがって、このような短尺の光ケーブルには、通常の光ケーブルほどの低い伝送損失は要求されない。逆に、特殊環境で使用される光ケーブルの場合、ケーブル外被には重量%比で3割以上の難燃剤を入れる場合が多い。これは、光ケーブルの外形寸法が小さいと、単位体積当たりの表面積が大きくなり空気に触れやすく、また、環境上の問題から難燃性の低いハロゲンフリーの難燃剤を使用する必要があるためである。
【0004】
また、光LAN配線や機器間配線などは、長距離光通信と異なり、例えば屋内、車両などの特殊環境内に設置された機器間の短距離での光通信に使用される。そのため、特殊環境での使用を前提とした光ケーブルには、シングルモード光ファイバと比べて光接続性が優位なコア径の大きいマルチモード光ファイバが適用されることが多い。しかしながら、マルチモード光ファイバは、汎用的なシングルモード光ファイバと比べると温度伸縮などの外乱要因を受け伝送損失が増加しやすい。そのため、光ファイバ心線の被覆層には、外乱要因を緩和できるようにヤング率が1MPa程度の軟質な紫外線硬化型アクリレート樹脂(ソフト層)が使用されている。
【0005】
なお、光ファイバ心線の本数が比較的少なくケーブル外形寸法が小さい光ケーブルとして、ドロップケーブルやインドアケーブルとして知られる形状の光ケーブルがある(例えば、特許文献1参照)。この種の光ケーブルでは、通常、1〜数本の光ファイバ心線の両側にテンションメンバが配置され、これら光ファイバ心線及びテンションメンバが一体的に熱可塑性樹脂からなるケーブル外被で覆われている。また、上述の特許文献1では、光ファイバ心線の周囲に繊維状の介在体を配置することにより、光ケーブルに、耐衝撃特性や耐側圧特性を持たせるようにもしている。
【0006】
さらに、屋内、車両などの特殊環境で使用される光ケーブルには、込み入った場所での配線や、ドアーの開閉部分での配線として、高い屈曲性能が求められる。また、機器への接続は、一般的に光コネクタを用いて行われるが、光コネクタは現場で取付けられることがあることや、予め製造メーカーが光コネクタを光ケーブルに取り付ける場合であっても製造コストを低減するため、光コネクタの取付性に優れた光ケーブルが求められている。
【0007】
従来、ドロップ光ケーブルやインドア光ケーブルとして、例えば、図14(a)に示されたように、光ファイバ心線2の両側に直径0.4mm程度の鋼線からなるテンションメンバ3を配置し、これら光ファイバ心線2及びテンションメンバ3をケーブル外径が2〜4mm程度になるようにケーブル外被4で一体化的に覆ったケーブル構造が知られている(例えば、特許文献2参照)。また、図14(b)に示されたように、テンションメンバ3として、複数本の細い鋼線を撚った撚鋼線が知られている。さらに、テンションメンバ3の構造として、鋼線に代えてガラス繊維やアラミド繊維等を樹脂で固めることで一体化された構造も知られている。
【特許文献1】特開2004-144821号公報
【特許文献2】特開2004-198588号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
発明者らは、従来の光ケーブルについて検討した結果、以下のような課題を発見した。すなわち、LANや機器間配線などに適用される光ケーブルには、当該光ケーブルの下に凸部が位置する場所で、例えば、ニッパーなどの小型の作業工具が落とされるなどの事態も想定される。そのため、特殊環境での使用が想定される光ケーブルには、このような衝撃に耐える耐久性能が要求される。しかしながら、光ケーブルの外形寸法が小さいと、当該光ケーブルを保護するケーブル外被の厚さも薄くなるため、耐衝撃性が低下する。また、難燃性を高めるためにケーブル外被に添加されるノンハロゲン系の難燃剤は、添加量が増えるほどにケーブル外被は塑性変形し易くなる。この場合、衝撃が加わわるとケーブル外被には粘土のように潰れ痕が残り、該ケーブル外被で覆われた光ファイバ心線にも損傷を生じやすい。なお、この明細書において、「光ファイバ心線の損傷」は、ガラス部分と樹脂被覆との界面の剥離、該樹脂被覆の割れ等を意味する。
【0009】
また、光ファイバ心線の被覆層として、低ヤング率の樹脂(ヤング率の低いアクリレート樹脂層など)が適用された場合、光ファイバの伝送特性は良好になる反面、外部から衝撃を受けると被覆層自体が潰れてしまう。これに伴って、光ファイバ心線の被覆層表面に位置する着色層にも大きな歪が生じる。着色層は、着色剤の添加によって紫外線を透過しにくいため、硬化促進用に破断伸びの低い架橋成分が多く添加される。その結果、破断伸びは2%程度と非常に低くなることから破断伸びの限界を超えて着色層自体に損傷が生じる。
【0010】
さらに、上述のような光ファイバ心線の本数が少なく外形寸法の小さな光ケーブルでは、衝撃が加えられるとケーブル外被に潰れが生じやすく、光ファイバ心線の被覆層にも損傷を生じやすい。ケーブル外被に潰れが生じると、その個所が曲げの起点となりやすく、許容曲げ径以下で光ケーブル自体が曲げられる恐れがある。また、光ファイバ心線の損傷に関しては、温度変化や振動などが長期間加わる環境下で、ファイバガラスに破断が生じる恐れがあり、長期信頼性の観点での不安がある。
【0011】
ここで、特許文献1に開示されたたように、光ファイバの周囲を繊維状の介在体で覆うことにより耐衝撃性を向上させることは可能である。しかしながら、LANや機器間配線などに適用される光ケーブルは、通常、光コネクタを取付けて使用されることが多く、繊維状の介在体が存在すると、コネクタ取付の作業性を低下させる等の課題がある。また、ケーブル外被の厚みを増加させることによっても、光ケーブルの耐衝撃性を改善することも可能である。ところがこの場合、光ケーブルの外形寸法を大きくすることになる。したがって、配線スペースが増加するとともにケーブル曲げ剛性が大きくなり、光ケーブル自体の取扱い性が悪くなるという課題がある。
【0012】
加えて、光ケーブルがドアーのような開閉部分で使用される場合、光ケーブルに高い屈曲性能が要求される。例えば、曲げ半径R9mmで左右90°の条件で10万回以上曲げられても光ケーブルが損傷しない耐久性能が求められている。したがって、図14(a)に示されたように、テンションメンバとして単心の鋼線が適用された場合、曲げ半径R9mmで左右90°の条件で屈曲すると2000回程度で金属疲労を起こしてしまう(テンションメンバの断線)。また、図14(b)に示されたように、テンションメンバとして撚鋼線が適用された場合でも、1万回程度で該テンションメンバは断線してしまう。すなわち、光ケーブル内に金属線材が含まれていると、上述の屈曲性能を確保することは困難である。
【0013】
また、光ケーブルのテンションメンバとして、高強度のガラス繊維材やアラミド繊維材を一体的に樹脂で固めた非金属材を使用することも知られている。しかしながら、このような非金属材のテンションメンバは曲げ半径R9mm程度で屈曲すると破断する恐れがあり、金属線材のように完全な断線に至らないまでも、抗張力が低下する。なお、テンションメンバとして高強度の繊維材を樹脂で固めずに使用すると、光ケーブル端への光コネクタを取付ける際に繊維材の処理に時間がかかり、作業性が低下するという課題がある。
【0014】
この発明は上述のような課題を解決するためになされたものであり、従来の光ケーブルと比較して、耐久性を向上させるための構造を備えた光ケーブルを提供することを目的としている。なお、この明細書において、光ケーブルの耐久性能とは、熱、振動、衝撃などの環境変化や、形状変化(曲げ、伸縮等)に対する耐性(品質維持性能)を意味し、例えば耐衝撃性や屈曲性能などで表される。
【課題を解決するための手段】
【0015】
この発明に係る光ケーブルは、基本構造として、光ファイバ心線(coated optical fiber)と、この光ファイバ心線の外周を覆うケーブル外被を備える。光ファイバ心線は、石英ガラスを主成分とした裸ガラスファイバ(bared glass fiber)と、裸ファイバの外周に設けられるとともに紫外線硬化樹脂からなる被覆層を有する。
【0016】
この発明に係る光ケーブルにおいて、耐久性能として優れた耐衝撃性を実現するため、光ファイバ心線の被覆層は、ヤング率200MPa以上の第1被覆(ハード層)を含む。一方、ケーブル外被は、ハロゲンを含まない熱可塑性樹脂からなる。また、ケーブル外被は、0.7mm以上の厚みを有するとともに、UL規格でV2以上の難燃性と、第1被覆と同じかそれ以上のヤング率とを有する。なお、ケーブル外被は、当該光ケーブルの断面形状が矩形や楕円の他、円形になるように光ファイバ心線を覆う。
【0017】
上述のような構造を備えた、この発明に係る光ケーブルにおいて、被覆層は種々の構造を備えてもよい。例えば、そのヤング率が700MPa以上の被覆層は、第1被覆が裸ファイバの表面に直接接触した単層構造であってもよい。また、被覆層は、第1被覆の他、裸ファイバと第1被覆との間に設けられた第2被覆(ソフト層)を含む、多層構造であってもよい。なお、このような多層構造の場合、第2被覆は、0.5〜2MPaのヤング率を有するのが好ましい。
【0018】
この発明に係る光ケーブルは、光ファイバ心線の外周に設けられた着色層をさらに備えてもよい。ケーブル外被は、この着色層とともに光ファイバ心線を一体的に覆っている。この場合、着色層は、10%以上の破断伸びを有するのが好ましい。なお、着色層が設けられていない構造では、ケーブル外被は光ファイバ心線に直接接触した状態で、該光ファイバ心線を覆う。
【0019】
さらに、この発明に係る光ケーブルは、着色層の外周に設けられた保護層を備えてもよい。この場合、保護層は、ヤング率50〜300MPaの紫外線硬化樹脂からなるのが好ましい。
【0020】
一方、この発明に係る光ケーブルにおいて、耐久性能として優れた屈曲性能を実現するため、ケーブル外被は、内部に金属線材を含まないのが好ましい。また、ケーブル外被は、当該光ケーブルの長手方向に沿って1%伸ばした時に50N以上の引張張力を有するのが好ましい。また、この発明に係る光ケーブルは、光コネクタとして、当該光ケーブル端部に位置するようケーブル外被に取り付けられた連結部品をさらに備えてもよい。この場合、ケーブル外被は、当該光ケーブルをその長手方向に沿って1%伸ばした時の当該光ケーブルの総合的な引っ張り張力が50N以上になるよう、光ファイバ心線と一体化されているのが好ましい。ここで、「光ケーブルの総合的な引張張力」は、ケーブル外被を把持した状態で当該光ケーブルをその長手方向に沿って1%伸ばした時の引張張力を意味し、ケーブル外被と一体化している光ファイバ心線などの部材の引張張力も加味される。なお、ケーブル外被は、当該光ケーブルの断面形状が矩形や楕円の他、円形になるように光ファイバ心線を覆う。また、ケーブル外被の最大外径は4mm以下であるのが好ましい。
【0021】
優れた屈曲性能を実現するため、この発明に係る光ケーブルは、種々の変形が可能である。例えば、当該光ケーブルは抗収縮部材を含まなくてもよい。この場合、光ファイバ心線の裸ファイバの表面上にヤング率0.1MPa〜10MPaの樹脂が被覆されるのが好ましい。
【0022】
また、当該光ケーブルはテンションメンバを含まなくてもよい。この場合、ケーブル外被はヤング率200〜1500MPaの熱可塑性樹脂からなるのが好ましい。
【0023】
さらに、この発明に係る光ケーブルでは、高強度繊維束が光ファイバ心線に沿って該光ファイバ心線の両側に配置された状態で、該光ファイバ心線と一体的にケーブル外被に覆われてもよい。この場合、ケーブル外被に覆われる高強度繊維束は、ケーブル外被から当該高強度繊維束を引き抜く力が50N/cm〜900N/cmとなる密度でケーブル外被に覆われるのが好ましい。
【0024】
光ファイバ心線の両側には、高強度繊維束をマトリックス樹脂で固めたロッド状線材が配置されてもよい。これら光ファイバ心線及びロッド状線材はケーブル外被により一体的に覆われる。また、ロッド状線材は、光ファイバ心線との配列方向と直交する方向の厚さが所定の屈曲試験に耐える厚さであるのが好ましい。
【0025】
なお、屈曲試験は、曲率半径9mmで左右90°の条件で10万回屈曲した後に、ケーブル外被の総合的な引張張力を測定することにより行われる。良好な屈曲性能として要求される引張張力は、ケーブル外被をその長手方向に沿って1%伸ばした時に50N以上である。
【0026】
さらに、テンションメンバとしてケーブル外被内に配置される高強度繊維束は、導電性を有してもよい。
【0027】
なお、この発明に係る各実施形態は、以下の詳細な説明及び添付図面によりさらに十分に理解可能となる。これら実施形態は単に例示のために示されるものであって、この発明を限定するものと考えるべきではない。
【0028】
また、この発明のさらなる応用範囲は、以下の詳細な説明から明らかになる。しかしながら、詳細な説明及び特定の事例はこの発明の好適な実施形態を示すものではあるが、例示のためにのみ示されているものであって、この発明の範囲における様々な変形および改良はこの詳細な説明から当業者には自明であることは明らかである。
【発明の効果】
【0029】
この発明によれば、ケーブル外被の弾性を確保することにより、耐久性能として優れた衝撃特性が得られる。すなわち、ケーブル外被の潰れを所定値以下に押えることができ、衝撃を受けた部分が曲げやすくなるのを軽減することができる。また、光ファイバ心線の被覆層を上述のような特性を有する樹脂材料で構成することにより、破断伸びの小さい着色層の損傷を軽減し、光ファイバ心線に含まれる裸ファイバ(ガラスファイバ)が破断に至るのを抑制し、長期信頼性を高めることができる。
【0030】
また、この発明によれば、光ケーブルの敷設時に一時的に加わる張力に十分耐える引張り張力を有し、しかも、曲率半径R9mmで左右90°の条件で10万回屈曲試験で破断を起さず、さらに、光コネクタの取付けに際して優れた作業性を有する、LAN配線に適した光ケーブルが得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
以下、この発明に係る光ケーブルの各実施形態を、図1〜図14を参照しながら詳細に説明する。なお、図面の説明において、同一部位、同一要素には同一符号を付して重複する説明を省略する。
【0032】
(第1実施形態)
まず、この発明に係る光ケーブルの第1実施形態を、図1〜図7を参照しながら詳細に説明する。図1はこの発明に係る光ケーブルの第1実施形態を説明するための図であり、特に、図1(a)は当該光ケーブルの基本構造(断面構造)を示し、図1(b)は当該光ケーブルの耐衝撃性の試験方法を説明するための図を示す。図1(a)において、光ケーブル10は、光ファイバ心線11と、光ファイバ心線11に沿って該光ファイバ心線11の両側に配置されたテンションメンバ17と、光ファイバ心線11とテンションメンバ17を一体的に覆うケーブル外被16を備える。光ファイバ心線11は、裸ファイバ(ガラスファイバ)12と、ガラスファイバ12の外周に設けられた被覆層13と、被覆層13の表面に設けられた着色層14を備える。ガラスファイバ12は、表面に所定軸に沿って伸びた、所定屈折率を有するコアと、コアの外周に設けられた該コアよりも低い屈折率を有するクラッドを備える。被覆層13は、一次被覆13a(ソフト層・・・第2被覆に相当)と、二次被覆13b(ハード層・・・第1被覆に相当)から構成された多層構造であってもよく、単層構造であってもよい。なお、図1(b)に示されたように、当該光ケーブル10の衝撃試験は、金属片18上に置かれた光ケーブル10の一部に錘19を落下させることにより行われる。
【0033】
第1実施形態に係る光ケーブル10は、屋内や車両内に設置された複数の情報機器間を光学的に接続するための光ケーブルであって、比較的に短尺(例えば、1m〜20m程度)である。具体的に当該光ケーブル10は、例えば光通信を利用したLAN構築等に適用している(LAN用光ケーブル)。この種の光ケーブル10は、例えば、図1(a)に示されたように、二心以上の光ファイバ心線11を列状に並べ、さらにその両側にテンションメンバ17を配置し(テンションメンバ17は配置されなくてもよい)、これら光ファイバ心線11及びテンションメンバ17をケーブル外被16で一体化的に覆うことにより得られる。
【0034】
光ファイバ心線11のガラスファイバ12には、石英ガラスからなり、コア径が50μmでクラッド径が125μmのマルチモードのガラスファイバ12が適用可能である。なお、石英ガラスを主材とした光ファイバは、コアとクラッドの両方が石英ガラスを主材としたものであってもよいし、コアのみ石英ガラスを主材としクラッドは硬質プラスチックからなるものであってもよい。
【0035】
光ファイバ心線11は、ガラスファイバ12と、ガラスファイバ12の表面に被覆された被覆層13a、13b(紫外線硬化型アクリレート樹脂からなる245μm程度の外径を有すると、被覆層13b表面に設けられた着色層14を備える。なお、被覆層は、一次被覆13a(ソフト層)と二次被覆13b(ハード層)の二層構造が好ましい。この場合、内側の一次被覆13aのヤング率を外側の二次被覆13bのヤング率より小さくすることで、光ファイバ心線11に側圧に対する緩衝機能を与えることができる。したがって、このような多層構造の被覆層13を有する光ファイバ心線11は、マイクロベンドの発生を効果的に抑制し良好な光伝送特性を保つことができる。
【0036】
第1実施形態に係る光ケーブル10では、2本以上の光ファイバ心線11が横並びに配置され、その両端側にテンションメンバ17が配置されており、さらに、これら光ファイバ心線11及びテンションメンバ17が一体的にケーブル外被16により覆われることで光ファイバ心線10が得られる。なお、テンションメンバ17は配置されなくともよい。すなわち、テンションメンバ17は、光ケーブル全体としての引張り張力が所定値以上に確保できていれば、LAN配線のように常時大きな張力がかからない使用形態では、特に必要としない場合もある。ただし、テンションメンバ17がケーブル外被16内に配置されることにより、敷設作業等において光ファイバ心線11に加わる張力が効果的に軽減され得る。ここで、テンションメンバ17には、金属線材又はアラミド繊維等の高強度ポリマー繊維束が適用可能である。さらに、高強度ポリマー繊維束は、マトリックス樹脂で固めたロッド状線材の形態で利用されてもよい。
【0037】
ケーブル外被16は、ナイロン樹脂、ポリエチレン等の熱可塑性樹脂からなり、図1(a)に示されたように、当該光ケーブル10の断面において、光ファイバ心線11の配列方向を長寸側とした矩形又は楕円形の形状になるように、該光ファイバ心線11を覆っている。このケーブル外被16の短寸側(光ファイバ心線11の配列に直交する方向)の被覆厚さ(ケーブル外被16の最小厚み)は、0.7mm以上である。なお、ケーブル外被16の断面で長寸側の外径(ケーブル外被16の最大外径)は、4mm以下であるのが好ましい。また、ケーブル外被16の熱可塑性樹脂としては、UL規格でV2の難燃性を有するハロゲンを含まない樹脂が採用される。この他、ケーブル外被16には、スチレン系、オレフィン系、ポリエステル系、ウレタン系などの種々の樹脂が採用可能である。このケーブル外被16は、充実押出しによって形成される。
【0038】
充実押出しとは、樹脂押出し機のダイス内側で押出し樹脂を圧縮するように、光ファイバ心線11等に対して加圧しつつ押出しを行う方法である。押出し樹脂は、ダイス内では圧縮された状態にあり、光ファイバ心線11の外周に押出された熱可塑性樹脂はケーブル外被16として光ファイバ心線11に対して高い密着性を持たせることができる。ケーブル外被16が光ファイバ心線11に対して密着していることで、ケーブル外被16が収縮を起こしたときに光ファイバ心線11がケーブル内で蛇行するのを防止することができる。
【0039】
この発明に係る光ケーブルでは、耐久性能として耐衝撃性を持たせるため、ケーブル外被16がヤング率200MPa以上で弾性を有する熱可塑性樹脂で構成されている。さらに、このケーブル外被16は、所定の試験方法による潰れ率が25%以下となるような樹脂材料からなるのが好ましい。
【0040】
図1(b)は、光ケーブル10の耐衝撃性の試験方法を説明するための図であり、図1(a)に示された、この試験は、光ケーブル10に対して行われた。光ケーブル10は、光ファイバ心線11と、テンションメンバ17、及びこれらを覆うケーブル外被16を備える。光ファイバ心線11は、コア及びクラッドで構成されたマルチモードのガラスファイバ12と、ガラスファイバ12の外周に設けられた被覆層13と、被覆層13の表面に設けられた着色層14から構成されている。さらに、被覆層13は、ガラスファイバ12に密着した一次被覆13a(ソフト層)と、一次被覆13aの外周に設けられた二次被覆13b(ハード層)から構成された二層構造を有する。ケーブル外被16は、光ファイバ心線11及びテンションメンバ17を覆っており、該光ファイバ心線11の長手方向に沿って2mm×3mmの矩形状断面で熱可塑性樹脂からなる。この光ケーブル10がその長寸側(幅3mmの面)を水平に置かれ、光ケーブル10の下面に2mm角の金属棒20が置かれる。この状態で、光ケーブル10の上方50mmの高さ位置から、直径30mmで質量1kgの錘19を該光ケーブル10に落下させる。この錘19の落下によって生じるケーブル外被16の潰れ率が25%以下となるような熱可塑性樹脂で、第1実施形態に係る光ケーブル10のケーブル外被16が形成されている。
【0041】
以上のような構造を備えた光ケーブルによれば、敷設された光ケーブルに、外力による衝撃が加えられたような場合であっても、ケーブル外被の潰れによる変形が最小限に抑えられ、衝撃を受けた部分が曲がり易くなるのを軽減することができる。また、光ファイバ心線における被覆層や着色層の損傷、例えばガラスファイバ12と被覆層13との界面の剥離、被覆層13や着色層14の割れ等も軽減することができる。
【0042】
(実施例1−1)
図2は、第1実施形態に係る光ケーブル10の第1実施例(実施例1−1)に適用される光ファイバ心線11aの断面構造を示す図である。この図2に示された断面は、図1(a)に示された光ケーブル10に適用される光ファイバ心線11の断面に相当する。
【0043】
この実施例1−1の光ケーブルは、2本の光ファイバ心線11a(図2)を、図1(a)に示されたように列状に並べ、これら光ファイバ心線11aの両側にテンションメンバ17を配置し、そして、光ファイバ心線11a及びテンションメンバ17を2mm×3mmの断面矩形状のケーブル外被16で一体的に覆うことにより得られる。ケーブル外被16は光ファイバ心線11aの配列と直交する方向の被覆厚さが0.9mmである。また、ケーブル外被16は、ヤング率が1200MPa、破断伸び100%のUL規格でV2の難燃性を有するハロゲンを含まないポリアミド系のナイロン樹脂からなる。テンションメンバ17には、高強度ポリマー繊維をポリエステル樹脂で一体化させた繊維材が適用されている。
【0044】
光ファイバ心線11aのガラスファイバ12には、コア径50μmでクラッド径が125μmのマルチモードファイバが適用されている。この実施例1−1の光ケーブルにおいて、被覆層13のヤング率を適正化するという観点から、ガラスファイバ12の外周には、外径170μmまで被覆層13が形成される。なお、この被覆層13は、ハード層のみの単層構造を有し、具体的にはヤング率800MPaで破断伸び56%の紫外線硬化型のアクリレート樹脂からなる。さらに、被覆層13の表面には、外径180μmまで着色層14が形成される。着色層14は、ヤング率1200MPaで破断伸び2%の紫外線硬化型のアクリレート樹脂からなる。
【0045】
上述のように構成された実施例1−1の光ケーブルについて、図1(b)に示された方法で耐衝撃性試験が行われた結果、実施例1−1におけるケーブル外被16の潰れ率は15%であった。また、光ファイバ心線11aの被覆層13及び着色層14に損傷はなく、(-40℃〜125℃)×3サイクルの温度試験の結果、実施例1−1の伝送損失の増加量Δαは、0.30dB/20mであった。
【0046】
なお、この実施例1−1の光ケーブルでは、ケーブル外被16にヤング率1200MPaの熱可塑性樹脂が適用されたが、ヤング率200MPa以上の樹脂が適用されることにより、図1(b)で示された試験方法でケーブル外被の潰れ率を25%以下に抑えることができた。また、光ケーブルの難燃試験(ISO6722の45°傾斜試験)において、70秒以下で消火することという規格に対し、当該実施例1−1の光ケーブルは30秒で消火された。
【0047】
光ファイバ心線11aの被覆損傷に関しては、ガラスファイバ12上の紫外線硬化樹脂の被覆層13のヤング率が、200MPa以上であれば、有意な損傷を防ぐことができる。しかしながら、ケーブル外被のヤング率が高すぎると曲げ剛性が大きくなり、ケーブルの可撓性が悪くなる。また、ヤング率が高くなると破断伸びが低くなり割れやすくなるのを防ぐ観点からもヤング率は1500MPa以下であるのが好ましい。さらに、ケーブル外被16のヤング率が高いと破断伸びも低くなるため、長期信頼性の観点から、ヤング率は1200MPa以下が好ましい。
【0048】
(実施例1−2)
図3は、第1実施形態に係る光ケーブル10の第2実施例(実施例1−2)に適用される光ファイバ心線11bの断面構造を示す図である。この図3に示された断面は、図1(a)に示された光ケーブル10に用いる光ファイバ心線11の断面に相当する。
【0049】
この実施例1−2の光ケーブルは、2本の光ファイバ心線11b(図3)を、実施例1−1と同様に、図1(a)に示されたように列状に並べ、これら光ファイバ心線11bの両側にテンションメンバ17を配置し、そして、光ファイバ心線11b及びテンションメンバ17を2mm×3mmの断面矩形状のケーブル外被16で一体的に覆うことにより得られる。ケーブル外被16は、光ファイバ心線11bの配列と直交する方向の厚さが0.8mmである。また、ケーブル外被16は、ヤング率が1200MPa、破断伸び100%のUL規格でV2の難燃性を有するハロゲンを含まないポリアミド系のナイロン樹脂からなる。テンションメンバ17には、高強度ポリマー繊維をポリエステル樹脂で一体化させた繊維材が適用されている。
【0050】
光ファイバ心線11bのガラスファイバ12には、コア径50μmでクラッド径が125μmのマルチモードファイバが適用されている。実施例1−2の光ケーブルにおいて、ガラスファイバ12の外周には、外径200μmまで被覆層13が形成されている。なお、この被覆層13は単層構造を有し、ヤング率1MPaで破断伸び100%の紫外線硬化型のアクリレート樹脂からなる。
【0051】
実施例1−2の光ケーブルでも、被覆層13の表面に着色層14が形成されている。なお、着色層14の破断伸びを大きくするという観点から、この着色層14は、ヤング率1200MPaで破断伸び10%以上となるように着色剤を添加した紫外線硬化型のアクリレート樹脂からなる。また、着色層14の外径は255μmである。また、実施例1−2の光ケーブルでは、破断伸びを上げるため着色剤の密度を低減しているが、着色層の厚さを27.5μmと実施例1−1の光ケーブルより厚くすることにより着色の薄さを補っている。
【0052】
上述のように構成された実施例1−2の光ケーブルについて、図1(b)に示された方法で耐衝撃性試験が行われた結果、実施例1−2におけるケーブル外被16の潰れ率は16%であった。また、光ファイバ心線11bの被覆層13及び着色層14に損傷はなく、(-40℃〜125℃)×3サイクルの温度試験の結果、実施例1−2の伝送損失の増加量Δαは、0.02dB/20m未満であった。光ケーブルとしての難燃試験(ISO6722の45°傾斜試験)において、70秒以下で消火することという規格に対し、当該実施例1−2の光ケーブルは28秒で消火された。
【0053】
なお、この実施例1−2の光ケーブルでは、ケーブル外被16にヤング率1200MPaの熱可塑性樹脂が適用されたが、実施例1−1と同様に、ヤング率200MPa以上の樹脂が適用されることにより、図1(b)に示された試験方法で潰れ率を25%以下に抑えることができた。また、光ファイバ心線11bの被覆損傷に関しては、ガラスファイバ12の外周に設けられた紫外線硬化樹脂の被覆層13のヤング率が0.5MPa〜2MPa、被覆層13の表面に設けられた着色層14のヤング率が500MPa〜1500MPaの範囲であれば、有意な損傷を防ぐことができる。
【0054】
(実施例1−3)
図4は、第1実施形態に係る光ケーブル10の第3実施例(実施例1−3)に適用される光ファイバ心線11cの断面構造を示す図である。この図4に示された断面は、図1(a)に示された光ケーブル10に適用される光ファイバ心線11の断面に相当する。
【0055】
この実施例1−3の光ケーブルは、2本の光ファイバ心線11c(図4)を、実施例1−1と同様に、図1(a)に示されたように列状に並べ、これら光ファイバ心線11cの両側にテンションメンバ17を配置し、そして、光ファイバ心線11c及びテンションメンバ17を2mm×3mmの断面矩形状のケーブル外被16で一体的に覆うことにより得られる。ケーブル外被16は、光ファイバ心線11cの配列と直交する方向の厚さが0.7mmである。また、ケーブル外被16は、ヤング率が1200MPa、破断伸び100%のUL規格でV2の難燃性を有するハロゲンを含まないポリアミド系のナイロン樹脂からなる。テンションメンバ17には、高強度ポリマー繊維をポリエステル樹脂で一体化させた繊維材が適用されている。
【0056】
光ファイバ心線11cのガラスファイバ12には、コア径50μmでクラッド径が125μmのマルチモードファイバが適用されている。この実施例1−3の光ケーブルにおいて、ガラスファイバ12の外周には被覆層13が形成される。被覆層13は、一次被覆13a(ソフト層)と二次被覆13b(ハード層)から構成された二層構造を有する。一次被覆13aは、ガラスファイバ12の表面から外径200μmまで形成され、ヤング率1MPaで破断伸び100%の紫外線硬化型のアクリレート樹脂からなる。二次被覆13bは、一次被覆13aの表面に外径245μmまで形成され、ヤング率800MPaで破断伸び56%の紫外線硬化型のアクリレート樹脂からなる。さらに、二次被覆13bの表面には外径255μmまで着色層14が形成されおり、この着色層14は、ヤング率1200MPaで破断伸び2%の紫外線硬化型アクリレート樹脂からなる。
【0057】
実施例1−3の光ケーブルでは、光ファイバ心線11cの周囲を低ヤング率の樹脂で保護するという観点から、着色層14の表面に厚さ125μmの保護層15が形成されている。保護層15は、ヤング率50MPaで破断伸び80%の紫外線硬化型のアクリレート樹脂からなる。なお、実施例1−3の光ケーブルでは、光ファイバ心線11cの1本ずつに保護層15が設けられているが、それぞれが着色層14まで被覆された複数本の光ファイバ心線が保護層15により一体的に被覆されてもよい。この場合、保護層15は、複数本の光ファイバ心線が列状に並べられたテープ形状となる。
【0058】
上述のように構成された実施例1−3の光ケーブルについて、図1(b)に示された方法で耐衝撃性試験が行われた結果、実施例1−3におけるケーブル外被16の潰れ率は17%であった。また、光ファイバ心線11cの被覆層13(一次被覆13a及び二次被覆13b)及び着色層14に損傷はなく、(-40℃〜125℃)×3サイクルの温度試験の結果、実施例1−3の伝送損失の増加量Δαは、0.02dB/20m未満であった。また、ケーブルとしての難燃試験(ISO6722の45°傾斜試験)において、70秒以下で消火することという規格に対し、実施例1−3の光ケーブルは29秒で消火された。
【0059】
なお、実施例1−3の光ケーブルでは、ケーブル外被16にヤング率1200MPaの熱可塑性樹脂が適用されたが、実施例1−1と同様に、ヤング率200MPa以上の樹脂が適用されることにより、図1(b)で示された試験方法で潰れ率を25%以下に抑えることができた。
【0060】
光ファイバ心線11cの被覆損傷に関しては、保護層15の紫外線硬化樹脂のヤング率が50MPa未満だとケーブル化前の光ファイバ心線のボビン巻き状態で保護層がぼろぼろと剥がれやすくなる。一方、ヤング率が300MPa以上だと錘の落下に対する衝撃吸収効果が低下する。なお、ガラスファイバ12の表面に設けられた紫外線硬化樹脂の一次被覆13aは、0.5MPa〜2MPaのヤング率を有するのが好ましく、着色層14は、側圧などによる有意な損傷を防ぐ観点から200MPa以上のヤング率を有するのが好ましい。ただし、ヤング率が高くなると破断伸びが低くなり割れやすくなるのを防ぐ観点から着色層14のヤング率が1500MPa以下であれば、有意な損傷を防ぐことができる。
【0061】
(実施例1−4)
図5は、第1実施形態に係る光ケーブル10の第4実施例(実施例1−4)に適用される光ファイバ心線11dの断面構造を示す図である。この図5に示された断面は、図1(a)に示された光ケーブル10に適用される光ファイバ心線11の断面に相当する。なお、実施例1−4の光ケーブルにおける光ファイバ心線11dの構造は、着色層14を除いて実施例1−1と同様である。
【0062】
この実施例1−4の光ケーブルは、2本の光ファイバ心線11d(図5)を、図1(a)に示されたように列状に並べ、これら光ファイバ心線11dの両側にテンションメンバ17を配置し、そして、光ファイバ心線11d及びテンションメンバ17を2mm×3mmの断面矩形状のケーブル外被16で一体的に覆うことにより得られる。ケーブル外被16は光ファイバ心線11dの配列と直交する方向の被覆厚さが0.9mmである。また、ケーブル外被16は、ヤング率が1200MPa、破断伸び100%のUL規格でV2の難燃性を有するハロゲンを含まないポリアミド系のナイロン樹脂からなる。テンションメンバ17には、高強度ポリマー繊維をポリエステル樹脂で一体化させた繊維材が適用されている。
【0063】
光ファイバ心線11dのガラスファイバ12には、コア径50μmでクラッド径が125μmのマルチモードファイバが適用されている。この実施例1−4の光ケーブルにおいて、被覆層13のヤング率を適正化するという観点から、ガラスファイバ12の外周には、外径170μmまで被覆層13が形成される。なお、この被覆層13は、ハード層のみの単層構造を有し、具体的にはヤング率800MPaで破断伸び56%の紫外線硬化型のアクリレート樹脂からなる。
【0064】
上述のように構成された実施例1−4の光ケーブルについて、図1(b)に示された方法で耐衝撃性試験が行われた結果、実施例1−4におけるケーブル外被16の潰れ率は16%であった。また、光ファイバ心線11dの被覆層13に損傷はなく、(-40℃〜125℃)×3サイクルの温度試験の結果、実施例1−1の伝送損失の増加量Δαは、0.28dB/20mであった。
【0065】
なお、この実施例1−4の光ケーブルでは、ケーブル外被16にヤング率1200MPaの熱可塑性樹脂が適用されたが、ヤング率200MPa以上の樹脂が適用されることにより、図1(b)で示された試験方法でケーブル外被の潰れ率を25%以下に抑えることができた。また、光ケーブルの難燃試験(ISO6722の45°傾斜試験)において、70秒以下で消火することという規格に対し、当該実施例1−4の光ケーブルは30秒で消火された。
【0066】
光ファイバ心線11dの被覆損傷に関しては、ガラスファイバ12上の紫外線硬化樹脂の被覆層13のヤング率が、200MPa以上であれば、有意な損傷を防ぐことができる。しかしながら、ケーブル外被のヤング率が高すぎると曲げ剛性が大きくなり、ケーブルの可撓性が悪くなる。また、ヤング率が高くなると破断伸びが低くなり割れやすくなるのを防ぐ観点からもヤング率は1500MPa以下であるのが好ましい。さらに、ケーブル外被16のヤング率が高いと破断伸びも低くなるため、長期信頼性の観点から、ヤング率は1200MPa以下であるのが好ましい。
【0067】
(実施例1−5)
図6は、第1実施形態に係る光ケーブル10の第5実施例(実施例1−5)に適用される光ファイバ心線11eの断面構造を示す図である。この図6に示された断面は、図1(a)に示された光ケーブル10に適用される光ファイバ心線11の断面に相当する。なお、実施例1−5の光ケーブルにおける光ファイバ心線11eは、着色層14及び保護層15を除いて実施例1−3と実質的に同じである。
【0068】
この実施例1−5の光ケーブルは、2本の光ファイバ心線11e(図6)を、実施例1−1と同様に、図1(a)に示されたように列状に並べ、これら光ファイバ心線11eの両側にテンションメンバ17を配置し、そして、光ファイバ心線11e及びテンションメンバ17を2mm×3mmの断面矩形状のケーブル外被16で一体的に覆うことにより得られる。ケーブル外被16は、光ファイバ心線11eの配列と直交する方向の厚さが0.7mmである。また、ケーブル外被16は、ヤング率が1200MPa、破断伸び100%のUL規格でV2の難燃性を有するハロゲンを含まないポリアミド系のナイロン樹脂からなる。テンションメンバ17には、高強度ポリマー繊維をポリエステル樹脂で一体化させた繊維材が適用されている。
【0069】
光ファイバ心線11eのガラスファイバ12には、コア径50μmでクラッド径が125μmのマルチモードファイバが適用されている。この実施例1−5の光ケーブルにおいて、ガラスファイバ12の外周には被覆層13が形成される。被覆層13は、一次被覆13a(ソフト層)と二次被覆13b(ハード層)から構成された二層構造を有する。一次被覆13aは、ガラスファイバ12の表面から外径200μmまで形成され、ヤング率1MPaで破断伸び100%の紫外線硬化型のアクリレート樹脂からなる。二次被覆13bは、一次被覆13aの表面に外径245μmまで形成され、ヤング率800MPaで破断伸び56%の紫外線硬化型のアクリレート樹脂からなる。なお、この実施例1−5の光ケーブルにおける光ファイバ心線11eには、実施例1−3のような着色層14及び保護層15がない。
【0070】
上述のように構成された実施例1−5の光ケーブルについて、図1(b)に示された方法で耐衝撃性試験が行われた結果、実施例1−5におけるケーブル外被16の潰れ率は18%であった。また、光ファイバ心線11eの被覆層13(一次被覆13a及び二次被覆13b)に損傷はなく、(-40℃〜125℃)×3サイクルの温度試験の結果、実施例1−5の伝送損失の増加量Δαは、0.02dB/20m未満であった。また、ケーブルとしての難燃試験(ISO6722の45°傾斜試験)において、70秒以下で消火することという規格に対し、実施例1−5の光ケーブルは29秒で消火された。
【0071】
なお、実施例1−5の光ケーブルでは、ケーブル外被16にヤング率1200MPaの熱可塑性樹脂が適用されたが、実施例1−1と同様に、ヤング率200MPa以上の樹脂が適用されることにより、図1(b)で示されたした試験方法で潰れ率を25%以下に抑えることができた。
【0072】
(比較例1−1)
以下、第1実施形態に係る光ケーブル10の第1比較例(比較例1−1)について説明する。この比較例1−1の光ケーブルの構造は、図1(a)に示されたケーブル構造と同様である(実施例1−1〜1−5と同じケーブル構造)。ただし、比較例1−1の光ケーブルは、ケーブル外被16の熱可塑性樹脂に、ヤング率100MPaで破断伸び200%のUL規格でV2よりも難燃性の高いV0の難燃性を有するハロゲンを含まないポリオレフィン樹脂が適用されている。また、光ファイバ心線は、図4の光ファイバ心線(実施例1−3の光ケーブルに適用された光ファイバ心線11c)と同様に、二層構造の被覆層を有する。この被覆層は、ガラスファイバの表面に外径200μmまで一次被覆(ソフト層)が形成され、この一次被覆は、ヤング率1MPaで破断伸び100%の紫外線硬化型のアクリレート樹脂からなる。一次被覆の表面には外径245μmまで二次被覆(ハード層)が形成され、この二次被覆は、ヤング率800MPaで破断伸び56%の紫外線硬化型のアクリレート樹脂まらなる。さらに、二次被覆の表面には外径255μmまで着色層が形成され、この着色層は、ヤング率1200MPaで破断伸び2%の紫外線硬化型アクリレート樹脂からなる。この比較例1−1の光ケーブルにおける光ファイバ心線は、実施例1−3とは異なり保護層がない。
【0073】
上述のように構成された比較例1−1の光ケーブルについて、図1(b)に示された方法で耐衝撃性試験が行われた結果、ケーブル外被の潰れ率は50%であった。また、光ファイバ心線のガラスとの界面に紫外線硬化樹脂被覆の剥離がみられ、着色層にも損傷が見られた。なお、(-40℃〜125℃)×3サイクルの温度試験を行った結果、比較例1−1の伝送損失の増加量Δαは、0.02dB/20mであった。また、ケーブルとしての難燃試験(ISO6722の45°傾斜試験)において、70秒以下で消火することという規格に対し、比較例1−1の光ケーブルは25秒で消火された。
【0074】
(比較例1−2)
一方、第1実施形態に係る光ケーブル10の第2比較例(比較例1−2)光ケーブルも、図1(a)に示されたケーブル構造を有する。ただし、ケーブル外被16の熱可塑性樹脂は、比較例1−1とは異なり、ヤング率1200MPaで破断伸び100%のUL規格でV2の難燃性を有するハロゲンを含まないポリアミド系のナイロン樹脂が適用されている。光ファイバ心線の被覆層は、図4に示された実施例1−3と同様に、一次被覆及び二次被覆から構成された二重構造を有する。すなわち、ガラスファイバの表面には外径200μmまで一次被覆が形成され、この一次被覆は、ヤング率1MPaで破断伸び100%の紫外線硬化型のアクリレート樹脂からなる。一次被覆の表面には外径245μmまで二次被覆が形成され、この二次被覆は、ヤング率800MPaで破断伸び56%の紫外線硬化型のアクリレート樹脂からなる。さらに、二次被覆の表面には外径255μmまで着色層が形成され、この着色層は、ヤング率1200MPaで破断伸び2%の紫外線硬化型アクリレート樹脂からなる。この比較例1−2においても光ファイバ心線には保護層がない(比較例1−1と同じ)。
【0075】
上述のように構成された比較例1−2の光ケーブルについて、図1(b)に示された方法で耐衝撃性試験が行われた結果、ケーブル外被の潰れ率は15%であった。しかしながら、光ファイバ心線のガラスとの界面に紫外線硬化樹脂被覆の剥離がみられ、着色層にも損傷が見られた。なお、(-40℃〜125℃)×3サイクルの温度試験の結果、比較例1−2の伝送損失の増加量Δαは、0.02dB/20mであった。また、ケーブルとしての難燃試験(ISO6722の45°傾斜試験)において、70秒以下で消火することという規格に対し、比較例1−2の光ケーブルは35秒で消火された。
【0076】
次に、図7は、第1実施形態に係る光ケーブル10の実施例1−1〜実施例1−5、比較例1−1、及び比較例1−2それぞれの耐久性能として、衝撃特性及び温度特性の判定結果を示す表である。この図7には、ケーブル外被の潰れ率、光ファイアバ心線の損傷の有無(触手又は目視で確認)、熱サイクル試験による伝送損失の増加量について、総合的に良否を判断した結果が示されている。また、光ケーブルの構造は、全ての実施例で同じとし、実施例1−1〜1−5には、ケーブル外被にヤング率1200MPaで破断伸び100%のナイロン樹脂が適用され、光ファイバ心線の被覆層の構造及び材質が互いに異なっている。一方、比較例1−1及び1−2では、光ファイバ心線の構造は互いに同じであるが(実施例1−3と同様に二重構造の被覆層を有する)、ケーブル外被の材質が互いに異なっている。
【0077】
なお、ケーブル外被の潰れ率は、図1(b)に示されたように、直径30mm、質量1kgの錘を被測定対象である光ケーブル上50mmから該光ケーブルに落下させた結果により判定される。また、この判定基準は、潰れ率25%いかが「良」、潰れ率25%以上が「不良」とした。光ファイバ心線の損傷有無の判定は、触手、目視により被覆の剥離、潰れ等を確認することにより行われた。さらに、伝送損失の増加量測定は、(-40℃〜125℃)×3サイクルの温度試験を行い、0.5dB/20m以下を「良」と判定した。
【0078】
図7に示された判定結果から分かるように、何れの実施例も、(-40℃〜125℃)×3サイクルの温度試験は、実用上問題ない結果が得られた。なお、実施例1−1の光ケーブルでは、他の実施例と比べて伝送損失が0.3dB/20mと増大しているが、20m程度の範囲内で使用される光LAN通信や機器間配線などにおいては許容できる範囲である。衝撃試験については、実施例1−1〜1−5及び比較例1−2が、外被の潰れ率25%以下をクリアしている。実施例1−1〜1−5は、光ファイバ心線の被覆層及び着色層の何れにも心損傷が見られず、温度特性と合わせても総合判定としては「良」であった。比較例1−1及び比較例1−2は、光ファイバ心線の着色層に損傷が見られ、総合判定としては「不良」であった。
【0079】
(第2実施形態)
次に、この発明に係る光ケーブルの第2実施形態を、図8〜13を参照しながら詳細に説明する。図8は、この発明に係る光ケーブルの第2実施形態の基本構造(断面構造)及び外観を示す図である。特に、図8(a)は、第2実施形態に係る光ケーブル20の第1断面構造(矩形形状)を示し、図8(b)は、第2実施形態に係る光ケーブル20の第2断面構造(楕円形状)を示し、図8(c)は、当該光ケーブル20が適用されたLAN用光ケーブル(光コネクタが取付けられた状態)の一例を示す。この第2実施形態に係る光ケーブル20も、第1実施形態と同様に、光ファイバ心線11と、光ファイバ心線11に沿って該光ファイバ心線11の両側に配置されたテンションメンバ17と、光ファイバ心線11とテンションメンバ17を一体的に覆うケーブル外被16を備える。光ファイバ心線11は、裸ファイバ(ガラスファイバ)12と、ガラスファイバ12の外周に設けられた被覆層13と、被覆層13の表面に設けられた着色層14を備える。ガラスファイバ12は、表面に所定軸に沿って伸びた、所定屈折率を有するコアと、コアの外周に設けられた該コアよりも低い屈折率を有するクラッドを備える。被覆層13は、一次被覆(ソフト層)13aと、二次被覆(ハード層)13bから構成された多層構造であってもよく、単層構造であってもよい。
【0080】
第2実施形態に係る光ケーブル20は、屋内や車両内に設置された複数の情報機器間を光学的に接続するための光ケーブルであって、比較的に短距離(例えば、1m〜20m程度)の光配線でLANや機器間配線等に用いるのに適した光ケーブル(LAN用光ケーブル)である。この種の光ケーブルは、例えば、図8(a)に示されたように、光ファイバ心線11を列状に並べ、これら光ファイバ心線11の両側にテンションメンバ17を配置し、光ファイバ心線11及びテンションメンバ17をケーブル外被16で一体的に覆うことにより得られる。なお、この第2実施形態において、ケーブル外被16内に位置するテンションメンバ17は排除されてもよい。
【0081】
光ファイバ心線11のガラスファイバ12には、石英ガラスからなり、コア径が50μmでクラッド径が125μmのマルチモードのガラスファイバ12が適用可能である。なお、石英ガラスを主材とした光ファイバは、コアとクラッドの両方が石英ガラスを主材としたものであってもよいし、コアのみ石英ガラスを主材としクラッドは硬質プラスチックからなるものであってもよい。
【0082】
光ファイバ心線11は、ガラスファイバ12と、ガラスファイバ12表面に被覆された被覆層13a、13b(紫外線硬化型アクリレート樹脂からなる245μm程度の外径を有すると、被覆層13b表面に設けられた着色層14を備える。なお、被覆層は、一次被覆13a(ソフト層)と二次被覆13b(ハード層)の二層構造が好ましい。この場合、内側の一次被覆13aのヤング率を外側の二次被覆13bのヤング率より小さくすることで、光ファイバ心線11に側圧に対する緩衝機能を与えることができる。したがって、このような多層構造の被覆層13を有する光ファイバ心線11は、マイクロベンドの発生を効果的に抑制し良好な光伝送特性を保つことができる。
【0083】
第2実施形態に係る光ケーブル20では、2本以上の光ファイバ心線11が横並びに配置され、その両端側にテンションメンバ17が配置されており、さらに、これら光ファイバ心線11及びテンションメンバ17が一体的にケーブル外被16により覆われることで(光ファイバ心線とケーブル外被の一体化)光ファイバ心線10が得られる。なお、この第2実施形態では、テンションメンバ17は配されなくとてもよい。ここで、「光ファイバ心線とケーブル外被の一体化」とは、ケーブル外被16中に埋設される光ファイバ心線11が、ケーブル外被16に直接接触し、共同して引張り応力に対応できる状態を意味する。なお、テンションメンバ17は、後述のように、光ケーブル全体としての引張張力が所定値以上に確保できていれば、LAN配線のように常時大きな張力がかからない使用形態において特に必要とされない場合もある。
【0084】
ケーブル外被16は、ナイロン樹脂、ポリエチレン(PE)、ポリ塩化ビニル(PVC)等の熱可塑性樹脂からなり、例えば、図8(a)及び図8(b)に示されたように、矩形形状又は楕円形状の断面を有する。このケーブル外被16は、充実押出しによって形成される。充実押出しとは、樹脂押出し機のダイス内側で押出し樹脂を圧縮するように、光ファイバ心線11等に対して加圧しつつ押出しを行う方法である。押出し樹脂は、ダイス内では圧縮された状態にあり、光ファイバ心線11の外周に押出された熱可塑性樹脂はケーブル外被16として光ファイバ心線11に対して高い密着性を持たせることができる。ケーブル外被16が光ファイバ心線11に対して密着していることで、ケーブル外被16が収縮を起こしたときに光ファイバ心線11がケーブル内で蛇行してロスが増加するのを防止することができる。
【0085】
また、光ファイバ心線11の破断伸びは、一般に5%以上あるが、破断伸び以下でも伸びた状態が続くとガラスに存在するクラックの成長による静疲労が生じ、時間が経過するとある確率で断線する。ファイバガラス部の破断寿命を考慮すると、光ファイバ心線の線引き時のスクリーニングレベルを適正化することも重要となる。このスクリーニングレベルが1.5%のとき、光ケーブルの配線時に光ファイバ心線にスクリーニングレベルの2/3に相当する1%の伸びが加わっても、10年後のガラス破断確率を百万分の1以下と、非常に低い値に抑えることができる。
【0086】
この発明に係る光ケーブルでは、光ファイバ心線とケーブル外被が一体化されているため、光ファイバ伸びとケーブル伸びはほぼ等しい。このため、ケーブル外被伸びを1%以下に抑えることで、光ファイバ伸びもほぼ1%以下に抑えることが可能となり、ガラスの破断確率を非常に小さく抑えることができる。したがって、光ケーブルをその長手方向に沿って1%伸び時の該光ファイバケーブルの総合的な引張張力は、ケーブル外被を把持して光ケーブルを1%伸ばした時の引張張力を意味し、ケーブル外被と一体化している光ファイバ心線などの部材の引張張力も加味される。
【0087】
光ケーブル20は、屋内等のLAN配線や機器間配線に適用される場合、50N程度の引張り張力が加わると仮定すれば十分である。したがって、実用的な光ケーブルとしては、当該ケーブル20を構成している光ファイバ心線11、テンションメンバ17、ケーブル外被16を含む全体で50N(好ましくは、一般的な許容張力とされている70N)の張力に耐える抗張力を備えていればよい。また、LAN配線や機器間配線として、配線スペースの低減や取扱い性の向上とともに、細形の光ケーブルが要望されていることから、この第2実施形態では、ケーブル外被16の外形寸法は4mm以下の断面矩形状もしくは楕円状(好ましくは、2mm×3mmの矩形断面)で曲げ方向に指向性を持たせ、抗張力体として金属疲労を起こしやすい金属線材を含まない構成とする。
【0088】
また、図8(c)に示されたように、この第2実施形態に係る光ケーブル20の端部には、光コネクタ9や光源モジュール、受光モジュールなどの光部品の連結部を取付けて使用されることが多く、光部品の取付け性が良いことが必要である。例えば、光コネクタ9の取付け性に関しては、光ファイバ心線11とケーブル外被16とが一体化されているので、ケーブル外被16を把持するだけで光コネクタ9を固定することができ、取り付けの作業性は簡易で良好である。なお、光コネクタ9でケーブル外被16を把持固定しても、ケーブル外被16のヤング率が低いと光コネクタ9を引張ったときにケーブル外被だけが伸びる恐れがある。このため、ケーブル外被16のヤング率が200MPa以上、好ましくは300MPa以上とし、光ファイバ心線11とケーブル外被16を含む光ケーブルをその長手方向に1%伸ばした時の該光ケーブル20の総合的な引張張力は、一般的な光コネクタの引張り規定の50N以上であることが好ましい。
【0089】
また、第2実施形態に係る光ケーブル20は、ケーブル外被16と光ファイバ心線11とが一体化されていることから、低温では光ファイバ心線11がマイクロベンドを起こし伝送損失が増大しやすい。これに対しては、通常、ケーブル外被の収縮に反発する高強度繊維を樹脂で固めたロッド状線材(FRPロッド)が、テンションメンバ(抗張力部材)としてだけでなく抗収縮部材としても用いられる。なお、ケーブルの屈曲性を優先して使用しない形態としてもよい。
【0090】
抗収縮部材を使用しない場合、当該光ケーブル20における光ファイバ心線11の被覆層として、マイクロベンドの影響を受けにくいように、光ファイバ心線11のガラスファイバ12表面にヤング率の低いソフト層(一次被覆13a)が設けられるのが好ましい。具体的には、耐外傷性の観点から光ファイバ心線11の最外層(二次被覆あるいは着色層14)に用いられるヤング率800MPa〜1200MPaより2桁程度低い10MPa以下の被覆を、ガラスファイバ12の表面と最外層との間に設けることでマイクロベンドの微小な曲げ径を大きくすることができる。この場合、低温下においても伝送損失を良好に保つことができる。なお、一次被覆13aがあまり柔らかすぎると石英ガラスの位置が安定せず偏心率が悪化するため、該一次被覆13aのヤング率は0.1MPa以上であるのが好ましい。
【0091】
上述のような構造を備えた光ケーブルによれば、敷設時に一時的に加わる張力に十分耐えることができ、しかも、このような光ケーブルは、曲率半径R9mmで左右90°で10万回屈曲試験で破断を起こさない高屈曲性能を有し、また、光コネクタの取付け作業性にも優れている。
【0092】
(実施例2−1)
図9は、第2実施形態に係る光ケーブル20の第1実施例(実施例2−1)の断面構造を示す図である。
【0093】
この実施例2−1の光ケーブル20aは、ケーブル外被16内にテンションメンバが存在しない。この実施例2−1の光ケーブル20aは、2本の光ファイバ心線11を列状に並べ、これら光ファイバ心線11を2mm×3mmのケーブル外被16で一体的に覆うことにより得られる。光ファイバ心線11のガラスファイバ12には、コア径50μmでクラッド径が125μmのマルチモードガラスファイバが適用されている。ガラスファイバ12の表面から外径250μmまで被覆層13が形成される。被覆層13は紫外線硬化型のアクリレート樹脂からなり、一次被覆13aと二次被覆13bにより構成される。一次被覆13aは、ガラスファイバ12の表面から外径200μmまで形成され、そのヤング率は1MPaと低い。また、一次被覆13aの表面から250μmまで形成される二次被覆13bのヤング率は、800MPaである。ケーブル外被16は、ヤング率が1200MPaのナイロン樹脂を充実押出し成形で形成されている。
【0094】
上述のような構造を有する実施例2−1の光ケーブル20aの伸び剛性について説明する。伸び剛性は、ヤング率Eと断面積Sの積ES(単位:N)で表される値である。実施例2−1の光ケーブル20aの場合、23℃の環境下において、ガラスファイバ12の直径は125μm、ヤング率は68.6GPaであるので、2本のガラスファイバ部分の伸び剛性は1.7kNである。ケーブル外被16の外形は2mm×3mm、ヤング率は1200MPaであるので、ケーブル外被16の伸び剛性は7.2kNである。光ファイバ心線11のスクリーニングレベルを1.5%とすると、該光ファイバ心線11は1%までその長手方向に沿って伸ばすことができる。したがって、当該光ケーブル20aをその長手方向に沿って1%伸ばした時の当該光ケーブル20aの総合的な引張張力は89Nとなり、通常考えられる屋内の作業での一般的な許容張力50Nを上回ることができる。この場合、ケーブル外被16は、500MPa以上のヤング率を有すれば通常考えられる屋内の作業での一般的な許容張力50Nを上回ることができる。
【0095】
ただし、ケーブル外被16のヤング率が高くなると、ケーブル曲げ剛性も高くなり、曲げにくくケーブル取扱い性も悪くなる。このため、ケーブル外被16のヤング率は1500MPa程度に抑えておくのが好ましい。また、ケーブル外被16の抗張力性を高めるには、ケーブル外被16の断面積を大きくすることも考えられる。しかしながら、光ケーブルの配線スペースなどを考慮すると、光ケーブルの外形寸法(最大外径)は4mm以下であるのが好ましい。また、この点を考慮し、光ケーブル20aの総合的な引張張力(長手方向に沿って当該光ケーブル20aを1%の伸ばしたとき)を70N以上とするには、ケーブル外被16のヤング率は200MPa以上である必要がある。
【0096】
光ケーブルの屈曲性能については、ケーブル断面(2mm×3mm)の短寸側(2mm幅)の5倍弱の曲げ半径R9mmで屈曲した場合、光ファイバ心線11のガラスファイバ部に加わる曲げ歪は最大でも0.7%と1%以下におさまる。ガラスの寿命は、歪の積算時間により主に決まることから、屈曲回数の影響は小さく、金属疲労を起こす鋼線と異なり、ガラスは動疲労を受けにくい材料である。そのため、曲げ半径R9mmで往復10万回程度加えても(図5の曲げ試験例参照)、ガラスの破断確率は百万分の1以下と低く実用上での断線を生じない。
【0097】
また、ケーブル外被16に使用されたナイロン樹脂の破断伸びは100%であり、屈曲時にケーブル外被16に加わる曲げ歪より一桁異なる。そのため、ケーブル外被16に亀裂等の損傷が発生することはなかった。さらに、ケーブル断面の短寸側の5倍弱の曲げ半径R9mmで、往復10万回屈曲させてもケーブル外被16に亀裂を生じないようにするには、該ケーブル外被16の破断伸びを少なくともケーブル外被16に加わる最大歪10%の10倍、すなわち100%以上とすればよいことも判明した。
【0098】
なお、この実施例2−1の光ケーブル20aでは、ケーブル外被16にナイロン樹脂が利用されたが、ポリウレタン樹脂やポリエチレン樹脂などもナイロン樹脂と同様にヤング率が高く、幅広い種類の樹脂も選択可能である。また、融点が150℃程度の樹脂を選択することにより、例えば、自動車のエンジンまわりなどの125℃程度の高温環境下での配線も可能になる。
【0099】
(-40℃〜125℃)×3サイクルの温度試験の結果、実施例2−1の伝送損失の増加量Δαは、0.02dB/20mと良好であった。なお、ガラスファイバ12の表面から外径150μm以上まで形成される一次被覆13a(ソフト層)として、ヤング率10MPa以下の軟質の被覆樹脂がガラスファイバ12の表面に施されれば、実施例2−1の伝送損失の増加量Δαは0.1dB/km以下に抑えられる。ただし、一次被覆13aのヤング率が低すぎるとガラスファイバ12をしっかりと固定できず偏心率が高くなるため、一次被覆13aのヤング率は0.1MPa以上あるのが好ましい。光コネクタの取付け性については、実施例2−1の光ケーブル20aの場合、光ファイバ心線11とケーブル外被16の熱可塑性樹脂とが密着した状態で一体化されているため、ケーブル外被16を光コネクタの把持部で把持するだけで固定することができ、容易に取付けができる。
【0100】
(実施例2−2)
図10は、第2実施形態に係る光ケーブル20の第2実施例(実施例2−2)の断面構造を示す図である。
【0101】
この実施例2−2の光ケーブル20bでは、ケーブル外被16内に高強度繊維からなるテンションメンバ17aが埋め込まれている。実施例2−2の光ケーブル20bは、図9の実施例2−1と同様に、2本の光ファイバ心線11を列状に並べ、これら光ファイバ心線11の両側にテンションメンバ17aとして高強度繊維束を配置し、そして、これら光ファイバ心線11及びテンションメンバ17aを2mm×3mmのケーブル外被16で一体化的に覆うことで得られる。光ファイバ心線11のガラスファイバ12には、コア径50μmでクラッド径が125μmのマルチモードガラスファイバが適用されている。ガラスファイバ12の外周にはガラスファイバ12の表面から外径250μmまで紫外線硬化型のアクリレート樹脂からなる被覆層13が形成される。ケーブル外被16は、軟質(ヤング率100MPa)のポリオレフィン樹脂を充実押出し成形することで形成されている。
【0102】
高強度繊維束には、ヤング率が180GPaのPBO(ポリ-p-フェニレンベンゾビスオキサゾール)ポリマー繊維(束ねたときの直径は、0.4mm程度)が適用されている。充実押出すると押出機のダイス、ポイント部において、樹脂圧を500MPaと高く設定できるため、高強度繊維を外被の樹脂で強く締め付けることができる。これにより、当該光ケーブル20bを、その端末部においてケーブル外被だけを把持した状態で引張っても、加えられた張力は確実に高強度繊維束に伝わる。また、ミクロンオーダーの極細の高強度繊維がケーブル外被16で締め付けられているため、ニッパなどの汎用工具で切断するとき高強度繊維がバラけずに簡単に切断することができる。高強度繊維の密度は、具体的には15,000dtex/mm2(13,500デニール/mm2)程度である。
【0103】
この密度は、「高強度繊維束をケーブル外被から引き抜くときの力(引抜力)が、50N/cm以上となる密度」と言い換えることができる。光コネクタが外被を把持する長さ約1cmでケーブル外被16を50Nの張力で引っ張っても高強度繊維が抜けないため、加えられる張力は確実に高強度繊維束に伝わる。なお、製造時の高強度繊維のバックテンションは2N程度と低い値で製造できる。
【0104】
このような実施例2−2の光ケーブル20bの伸び剛性については、例えば、高強度ポリマー繊維束の伸び剛性(ES積)は45kN、ファイバガラス部分の伸び剛性は1.7kN、ケーブル外被16の伸び剛性が0.6kNとなる。このため、例えば、スクリーニングレベルが0.3%と低く、0.2%までしか伸ばすことができない強度の低い光ファイバ心線であっても、当該光ケーブル20bの許容張力は94Nとなり、通常考えられる屋内の作業での引張張力50Nあるいは一般的な許容張力70Nを上回ることができる。
【0105】
また、当該光ケーブル20bの屈曲性能については、例えば、図9の実施例2−1と同様に、当該光ケーブル20bが短寸側に曲げ半径R9mmで曲げられた場合、0.4mm径の高強度ポリマー繊維束がケーブル外被16で完全に固定されているときに最大2%の歪が加わる計算となる。しかしながら、実際には高強度繊維束の周囲がケーブル外被16の軟質の熱可塑性樹脂で抑えられているだけなので、当該光ケーブル20bの屈曲時に、高強度繊維は繊維の摩擦はあるが長手方向に若干移動することができる。このため、当該光ケーブル20bが屈曲しても、高強度繊維に生じる最大歪は、2%よりは確実に緩和され破断しにくくなる。なお、当該光ケーブル20bを曲げたときに高強度繊維同士がずれるためには、高強度繊維束の引抜力は最大歪2%時の張力に相当する900N/cm以下であるのが好ましい。ここでは、高強度繊維束としての引抜力を記載したが、高強度繊維1本1本もしくは高強度繊維の一部を引き抜くときの力は、高強度繊維束に対する断面積比を掛けた値以下となる。
【0106】
実施例2−2の光ケーブル20bにおけるテンションメンバ17aは、ミクロン単位の極細繊維の束であり繊維同士が独立している。そのため、仮に最大歪が生じる箇所の繊維が切れたとしても、他の繊維が切れた繊維の影響を大きく受けることはない。また、この実施例2−2では,適用されるテンションメンバ17aとしてPBO繊維の例が示されたが、アラミド繊維などの高強度ポリマー繊維や無機繊維の炭素繊維などが適用されてもよい。なお、炭素繊維は導電性を有しているため、発光素子や受光素子の給電用として機能させることができる。そのため、炭素繊維は疲労破断する金属線では不可能であった屈曲特性と導電性の両立させることが可能になる。光コネクタ9の取付け性については、当該光ケーブル20bを構成する光ファイバ心線11及び高強度繊維(テンションメンバ17a)とケーブル外被16の熱可塑性樹脂とが密着した状態で一体化しているため、ケーブル外被16を光コネクタ9の把持部で把持するだけで固定することができ、容易に取付ができる。
【0107】
(実施例2−3)
図11は、第2実施形態に係る光ケーブル20cの第3実施例(実施例2−3)の断面構造を示す図である。
【0108】
この実施例2−3の光ケーブル20cでは、ケーブル外被16内にテンションメンバ17bとして、高強度FRP(Fiber Reinforced Plastics;繊維強化プラスチック)が埋め込まれている。実施例2−3の光ケーブル20cは、図9の実施例2−1と同様に、2本の光ファイバ心線11を列状に並べ、これら光ファイバ心線11の両側にテンションメンバ17bとして高強度FRPのロッド状部材を配置し、そして、光ファイバ心線11及びテンションメンバ17bを2mm×3mmのケーブル外被16で一体的に覆うことにより得られる。光ファイバ心線11のガラスファイバ12には、コア径50μmでクラッド径が125μmのマルチモードガラスファイバが適用されている。ガラスファイバ12の外周には、該ガラスファイバ12の表面から外径250μmまで、紫外線硬化型のアクリレート樹脂からなる被覆層13が形成される。ケーブル外被16は、軟質(ヤング率100MPa)のポリオレフィン樹脂を充実押出し成形することで形成されている。
【0109】
高強度FRPには、ヤング率が180GPaのPBO(ポリ-p-フェニレンベンゾビスオキサゾール)ポリマー繊維をポリエステル系の樹脂で含浸することで得られる、外径0.4mm程度のロッド状線材が適用される。なお、高強度FRPとしては、無機繊維のガラス繊維や炭素繊維などを用いることもできる。この実施例2−3の光ケーブル20cの伸び剛性については、図10の実施例2−2と同様の材質、寸法とも同じ高強度繊維が具備されている。そのため、スクリーニングレベルが0.3%と低く、0.2%しか伸ばすことのできない低強度の光ファイバ心線11であっても当該光ケーブル20cの許容張力は94Nとなり、通常考えられる屋内の作業での引張張力50Nあるいは一般的な許容張力70Nを上回ることができる。
【0110】
また、当該ケーブル20cの屈曲性能については、高強度繊維がポリエステル系のマトリックス樹脂で含浸されている。そのため、高強度繊維束の周囲を軟質の熱可塑性樹脂で抑えられている図10の実施例2−2とは異なり、屈曲性能については、当該ケーブル20cを屈曲させたとき高強度繊維は長手方向に移動し歪を緩和することはできない。したがって、高強度FRPのロッド状部材は、光ファイバ心線11の配列方向と直交する方向(すなわち、短寸側の曲げ方向)の厚さが、所定の屈曲試験に耐える厚さで形成されているのが好ましい。
【0111】
ここで、「所定の屈曲試験に耐える」とは、図12に示されたように、曲率半径9mmで左右90°の条件で10万回屈曲した後に、光ケーブルの破断強度が50N以上であることを意味する。また、「所定の屈曲試験に耐える厚さ」とは、FRPロッド状線材の曲げ方向の厚さを2tとし、曲げ半径Rとするとき、FRPロッド状線材の最外(最内)側は、t/(R+t)の歪が発生するが、この歪に耐え必要最小限の強度を有する厚さを意味する。なお、例えば、ロッド状部材を、曲げ方向の厚さを小さくした扁平形状とすることにより、所定の引張張力を確保して歪を軽減することができる。また、図12は、光ケーブルの耐久性能として屈曲性能の試験方法を説明するための図である。
【0112】
基本的には、破断伸び2%以上の高強度繊維をテンションメンバ17bに適用すれば、当該光ケーブル20cを曲げると高張力繊維全体が偏平することも手伝って、屈曲による破断は防げる。仮に、高強度FRPのロッド状部材の歪の大きな箇所が一部分破断したとして、高強度繊維が全て破断することはない。マトリックス樹脂を介して高強度繊維同士は一体化しているものの、マトリックス樹脂は高強度繊維に比べ弾性率が2桁も低く壊れやすい。そのため、一部の高強度繊維が破断すると破断した高強度繊維周囲のマトリックス樹脂も破壊され、破断していない高強度繊維が同時に破断することはない。
【0113】
当該光ケーブル20cの屈曲性能については、図10の実施例2−2よりも高強度繊維が破断しやすくなるが、ヤング率の高い高強度繊維同士がマトリックス樹脂で一体化されているため抗収縮体としての機能も果たす。したがって、当該光ケーブル20cが低温下で使用される場合、線膨張係数の大きな熱可塑性樹脂の低温収縮に抗し、ケーブル外被16内での光ファイバ心線11のマイクロベンドによる損失増を低減することができる。
【0114】
なお、高強度繊維に含浸するポリエステル樹脂は熱硬化性樹脂は、繊維の間に浸透する樹脂であれば、紫外線硬化性のアクリル樹脂や粘性の低い熱可塑性樹脂でも構わない。光コネクタ9の取付け性については、当該光ケーブル20cを構成する光ファイバ心線11及び高強度繊維(テンションメンバ17b)とケーブル外被16の熱可塑性樹脂とが密着した状態で一体化されているため、ケーブル外被16を光コネクタ9の把持部で把持するだけで固定することができ、容易に取付ができる。
【0115】
(比較例2−1)
次に、第2実施形態に係る光ケーブル20の第1比較例(比較例2−1)の構造について説明する。この比較例2−1の光ケーブルは、図14(a)に示され断面構造を有する。
【0116】
比較例2−1の光ケーブルは、図9の実施例2−1と同様に、2本の光ファイバ心線2を列状に並べ、これら光ファイバ心線2の両側にテンションメンバ3として外径0.4mmの鋼線を配置し、そして、光ファイバ心線2及びテンションメンバ3を2mm×3mmのケーブル外被4で一体的に覆うことにより得られる。光ファイバ心線2のガラスファイバには、実施例2−1〜2−3と同様のコア径50μmでクラッド径が125μmのマルチモードガラスファイバが適用されている。このガラスファイバの外周には、該ガラスファイバの表面から外径250μmかで、紫外線硬化型のアクリレート樹脂からなる被覆層が形成される。ケーブル外被4は、軟質の100MPaのポリオレフィン樹脂を充実押出し成形することで形成されている。
【0117】
テンションメンバ3の鋼線のヤング率は、PBO繊維のものよりも大きく、鋼線の伸び剛性(ES積)は53kN、ファイバガラス部分の伸び剛性は1.7kNより一桁以上も大きい。鋼線の場合、鋼線自体の許容伸びが律則となり光ケーブルの許容伸びは0.3%にとどまる。許容伸び0.3%で計算すると光ケーブルの許容張力は約160Nとなり、やはり屋内などで使用される光ケーブルの一般的な許容張力70Nを上回ることができる。なお、鋼線の場合は、鋼線自体の許容伸びが0.3%にとどまるため、例えばスクリーニングが1.5%あるような高強度の光ファイバ心線を適用しても意味がない。光ケーブルの屈曲性については、課題の欄に記載したように、鋼線は金属疲労を起こしてしまうため屈曲性能は低く、曲げ半径R9mmでケーブルを屈曲すると、鋼線部分が金属疲労を起こし2000回程度で断線した。
【0118】
(比較例2−2)
この第2実施形態に係る光ケーブル20の第2比較例(比較例2−2)は、図14(b)に示された断面構造を有する。
【0119】
この比較例2−2の光ケーブルは、図9の実施例2−1と同様に、2本の光ファイバ心線2を列状に並べ、これら光ファイバ心線2の両側にテンションメンバ3として外径0.17mmの鋼線を9本撚りした撚り鋼線を配置し、そして、光ファイバ心線2及びテンションメンバ3を2mm×3mmのケーブル外被4で一体的に覆うことで得られる。光ファイバ心線2のガラスファイバには、実施例2−1〜2−3と同様に、コア径50μmでクラッド径が125μmのマルチモードガラスファイバが適用されている。ガラスファイバの外周には、該ガラスファイバの表面から外径250μmまで、紫外線硬化型のアクリレート樹脂からなる被覆層が形成される。ケーブル外被16は、軟質(ヤング率100MPa)のポリオレフィン樹脂を充実押出し成形することで形成されている。
【0120】
テンションメンバ3の撚り鋼線の伸び剛性(ES積)は86kNで、撚り鋼線の場合も、撚り鋼線自体の許容伸びが律則となり光ケーブルの許容伸びは0.3%にとどまる。許容伸び0.3%で計算すると光ケーブルの許容張力は約260Nとなり、やはり屋内などで使用される光ケーブルの一般的な許容張力70Nを上回ることができる。光ケーブルの屈曲性についても、比較例2−1と同様に、それぞれが0.17mmと細い鋼線が使用されても金属疲労は避けられない。そのため、曲げ半径R9mmの場合、比較例2−1よりは断線までの回数は増えたが、それでも1万回程度の屈曲で断線した。
【0121】
次に、図13は、第2実施形態に係る光ケーブル20の実施例2−1〜実施例2−3、比較例2−1、及び比較例2−2それぞれの耐久性能として、屈曲性能の判定結果を示す表である。
【0122】
この図13には、上述のような構造を有する実施例2−1〜2−3、比較例2−1、及び比較例2−2の各光ケーブルを、曲げ半径R9mmで左右90°の曲げ試験(図12参照)で、10万回屈曲させたときのケーブル張力が示されている。なお、実施例2−1〜2−3については、光ファイバ寿命の観点からファイバの許容伸びが律側となり、10%伸び時のケーブル張力で示されている。比較例2−1と比較例2−2については、鋼線の許容伸びが律則となるので0.3%伸び時のケーブル張力で示されている。
【0123】
図13に示された結果から分かるように、第2実施形態の実施例2−1〜2−3では、屈曲試験後のケーブル張力が、屈曲試験前と比べて若干低下するものの、いずれも、通常考えられる屋内の作業での引張張力50Nあるいは一般的な許容張力70Nを上回っている。これに対し、比較例2−1及び比較例2−2の光ケーブルは、屈曲試験中にいずれも断線してしまった。
【0124】
以上の本発明の説明から、本発明を様々に変形しうることは明らかである。そのような変形は、本発明の思想および範囲から逸脱するものとは認めることはできず、すべての当業者にとって自明である改良は、以下の請求の範囲に含まれるものである。
【産業上の利用可能性】
【0125】
この発明に係る光ケーブルは、屋内や車両内に設置された複数の情報機器間を光学的に接続する光配線に適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0126】
【図1】この発明に係る光ケーブルの第1実施形態の基本構造(断面構造)及び耐衝撃性の試験方法を説明するための図である。
【図2】第1実施形態に係る光ケーブルの第1実施例(実施例1−1)に適用される光ファイバ心線の断面構造を説明するための図である。
【図3】第1実施形態に係る光ケーブルの第2実施例(実施例1−2)に適用される光ファイバ心線の断面構造を説明するための図である。
【図4】第1実施形態に係る光ケーブルの第3実施例(実施例1−3)に適用される光ファイバ心線の断面構造を説明するための図である。
【図5】第1実施形態に係る光ケーブルの第4実施例(実施例1−4)に適用される光ファイバ心線の断面構造を説明するための図である。
【図6】第1実施形態に係る光ケーブルの第5実施例(実施例1−5)に適用される光ファイバ心線の断面構造を説明するための図である。
【図7】第1実施形態に係る光ケーブルの第1〜第5実施例(実施例1−1〜実施例1−5)、第1比較例(比較例1−1)、及び第2比較例(比較例1−2)それぞれの耐久性能として、衝撃特性及び温度特性の判定結果を示す表である。
【図8】この発明に係る光ケーブルの第2実施形態の基本構造(断面構造)及び外観を示す図である。
【図9】第2実施形態に係る光ケーブルの第1実施例(実施例2−1)の断面構造を説明するための図である。
【図10】第2実施形態に係る光ケーブルの第2実施例(実施例2−2)の断面構造を説明するための図である。
【図11】第2実施形態に係る光ケーブルの第3実施例(実施例2−3)の断面構造を説明するための図である。
【図12】光ケーブルの耐久性能として屈曲性能の試験方法を説明するための図である。
【図13】第2実施形態に係る光ケーブルの第1〜第3実施例(実施例2−1〜実施例2−3)、第1比較例(比較例2−1)、及び第2比較例(比較例2−2)それぞれの耐久性能として、屈曲性能の判定結果を示す表である。
【図14】従来の光ケーブルの断面構造を示す図である。
【符号の説明】
【0127】
10、20、20a、20b、20c…光ケーブル、11、11a、11b、11c、11d、11e…光ファイバ心線、12…ガラスファイバ(裸ファイバ)、13…被覆層、13a…一次被覆(ソフト層)、13b…二次被覆(ハード層)、14…着色層、15…保護層、16…ケーブル外被、17、17a、17b、17c…テンションメンバ、18…金属棒、19…錘。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
石英ガラスを主成分とした裸ファイバと、前記裸ファイバの外周に設けられるとともに紫外線硬化樹脂からなる被覆層を有する光ファイバ心線であって、前記被覆層がヤング率200MPa以上の第1被覆を含む光ファイバ心線と、そして、
前記光ファイバ心線の外周に設けられた、0.7mm以上の最小厚みを有するケーブル外被であって、UL規格でV2以上の難燃性と、前記第1被覆と同じかそれ以上のヤング率とを有する、ハロゲンを含まない熱可塑性樹脂からなるケーブル外被とを備えた光ケーブル。
【請求項2】
前記第1被覆は、裸ファイバの表面に直接接触していることを特徴とする請求項1記載の光ケーブル。
【請求項3】
前記光ファイバ心線の被覆層は、前記裸ファイバと前記第1被覆との間に設けられた第2被覆を含み、前記第2被覆は、0.5〜2MPaのヤング率を有することを特徴とする請求項1記載の光ケーブル。
【請求項4】
前記光ファイバ心線の外周に設けられた着色層を備え、前記着色層は、10%以上の破断伸びを有することを特徴とする請求項3記載の光ケーブル。
【請求項5】
前記着色層の外周に設けられた保護層を備え、前記保護層は、ヤング率50〜300MPaの紫外線硬化樹脂からなることを特徴とする請求項4記載の光ケーブル。
【請求項6】
当該光ケーブルはテンションメンバを含まず、そして、
前記ケーブル外被は、500MPa以上かつ1500MPa以下のヤング率を有することを特徴とする請求項1記載の光ケーブル。
【請求項7】
当該光ケーブル端部に位置するよう前記ケーブル外被に取り付けられた連結部品を備え、そして、
前記ケーブル外被は、当該光ケーブルをその長手方向に沿って1%伸ばした時の当該光ケーブルの総合的な引っ張り張力が50N以上になるよう、光ファイバ心線と一体化されていることを特徴とする請求項1記載の光ケーブル。
【請求項8】
石英ガラスを主成分とした裸ファイバと、前記裸ファイバの外周に設けられるとともに紫外線硬化樹脂からなる被覆層を有する光ファイバ心線と、そして、
前記光ファイバ心線の外周に設けられた、最小外径が4mm以下の内部に金属線材を含まないケーブル外被であって、当該光ケーブルをその長手方向に沿って1%伸ばした時の当該光ケーブルの総合的な引っ張り張力が50N以上になるよう、光ファイバ心線と一体化されているケーブル外被とを備えた光ケーブル。
【請求項9】
前記光ファイバ心線と一体的にケーブル外被に覆われた高強度繊維束であって、ケーブル外被から当該高強度繊維束を引き抜く力が50N/cm〜900N/cmとなる密度でケーブル外被に覆われている高強度繊維束を備えることを特徴とする請求項1記載の光ケーブル。
【請求項10】
前記ケーブル外被は、当該光ケーブルを曲率半径9mmで左右90°の条件で10万回屈曲した後、当該光ケーブルをその長手方向に沿って1%伸ばした時の当該光ケーブルの総合的な引っ張り張力が50N以上になるよう、光ファイバ心線と一体化されていることを特徴とする請求項1記載の光ケーブル。
【請求項11】
前記光ファイバ心線と一体的にケーブル外被に覆われた高強度繊維束であって、導電性を有する高強度繊維束を備えたことを特徴とする請求項1記載の光ケーブル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2009−181119(P2009−181119A)
【公開日】平成21年8月13日(2009.8.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−202800(P2008−202800)
【出願日】平成20年8月6日(2008.8.6)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】