光ディスク装置及び光ディスク再生方法
【課題】記録型多層光ディスクに対する再生光耐力の確保と、再生専用光ディスクに対する戻り光ノイズの抑制を両立すること。
【解決手段】レーザ光源1に駆動電流を供給するレーザドライバ13は、再生発光電流を供給する再生発光電流供給部14と、再生発光電流に高周波電流を重畳する高周波重畳部15と、レーザ光源に供給する駆動電流の最大値を制限する電流クリップ部18を有する。光ディスク30が記録可能なディスクの場合、電流クリップ部18に対し、駆動電流を制限するために第1のクリップレベルを設定し、光ディスクが再生専用のディスクの場合、電流クリップ部18に対し、第1のクリップレベルよりも大きい第2のクリップレベルを設定する。
【解決手段】レーザ光源1に駆動電流を供給するレーザドライバ13は、再生発光電流を供給する再生発光電流供給部14と、再生発光電流に高周波電流を重畳する高周波重畳部15と、レーザ光源に供給する駆動電流の最大値を制限する電流クリップ部18を有する。光ディスク30が記録可能なディスクの場合、電流クリップ部18に対し、駆動電流を制限するために第1のクリップレベルを設定し、光ディスクが再生専用のディスクの場合、電流クリップ部18に対し、第1のクリップレベルよりも大きい第2のクリップレベルを設定する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ディスク装置及び光ディスク再生方法に係り、特にレーザ光源の駆動電流に高周波電流を重畳して発光させて複数の情報記録層を具備する光ディスクを再生する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
光ディスク装置は、レーザ光を光ディスクに照射し、反射した光の強度を検出することで光ディスク上に記録されたデータの再生を行う。そのとき、光ディスクから反射した光の一部が光源であるレーザダイオードに入射すると、発光強度が変動して戻り光ノイズとなり、再生エラー率を悪化させる要因となっている。
【0003】
戻り光ノイズを抑制するために、偏光ビームスプリッタと1/4波長板を組合せたアイソレータを光路中に構成し、光ディスクからの反射光がレーザダイオードに戻らないようにする技術がある。また、レーザダイオードの駆動電流に高周波を重畳してマルチモード発光させることで、戻り光ノイズを低減する技術がある。
【0004】
ところが、高周波を重畳してレーザダイオードを発光させる場合、再生パワーの平均値に対してピークパワーが大きい発光波形となるため、パルス状ながら大きなパワーのレーザ光が光ディスクに照射される。そのため、書換型や追記型の光ディスクを再生する時には、記録されているデータが劣化し再生可能な回数が減少する、所謂、再生光耐力が低下する問題がある。
【0005】
高周波重畳に伴う再生光耐力の低下の対策としては、次のような提案がなされている。例えば特許文献1には、光ディスクの種類(DVD−ROM、DVD±R、DVD±RW)を判別し、その種類に応じて重畳する高周波信号の振幅を切り換えることが記載されている。また特許文献2には、レーザダイオードの駆動時に重畳する高周波電流のピーク電流をクリップすることにより、レーザダイオードの発光パワーの変化に対するピークパワーの倍率を抑え、リード時の記録信号の耐久性を確保することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−355723号公報
【特許文献2】特開2006−303135号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
近年、光ディスクの更なる大容量化のために、1枚の光ディスクに複数の情報記録層を積層する検討がなされている。例えば、3層以上の記録型ディスク(以下、簡単のため多層ディスクと略称する)では、特に再生光耐力の低下が課題となる。以下、その理由を説明する。
【0008】
多層ディスクにおいて最奥層の記録再生を実現する為には、それより手前の各層の反射率を積層数に応じて低く設定し、透過率を高く設定する必要がある。一例として、従来のBlu−ray Disc(以下、BDと略称する)では未記録状態での反射率が追記型単層ディスクでは18%前後であり追記型2層ディスクでは6%前後であるが、これらに対応して3層ないし4層ディスクを実現するためには各層の反射率を3%前後とする必要がある。
【0009】
反射率の低下は再生信号のSNR(信号対ノイズ比)の低下を伴うので、ノイズレベルが同等であれば、SNRの確保のために反射率の低下に合わせて再生パワーを増加する必要がある。上記BDの例では、再生パワーが単層ディスクでは0.3mW程度、2層ディスクでは0.7mW程度であるのに対し、多層ディスクでは1.2mW程度に増加する必要がある。なお、所定以下のノイズレベルを確保するためには、従来通り戻り光ノイズの抑制が必要である。
【0010】
また、透過率が高い情報記録層に対して限られたレーザパワーで記録を行うためには、各情報記録層の記録感度を高める必要がある。その結果として、多層ディスクにおいては相対的に記録感度の高い情報記録層を大きい再生パワーで再生する必要があり、前述の再生光耐力の問題はより深刻になる。
【0011】
このような記録型多層光ディスクの再生において、戻り光ノイズを抑制しつつ再生光耐力を確保するためには、前述の従来技術、即ち、光路中にアイソレータを構成し、ピーク電流をクリップした高周波重畳電流でレーザダイオード発光させることが有効である。
【0012】
一方、再生専用光ディスクの場合、ピットとピット外とで反射光の位相がずれることがあり、位相のずれ量に応じてアイソレータを通過してレーザダイオードに戻る光量が増加する。所定以上の戻り光量がある場合には、上記記録型ディスクと同様にピーク電流をクリップした高周波重畳電流でレーザダイオードを発光させることでは、戻り光ノイズを十分に抑制することが困難となる。すなわち、特許文献2に記載の技術では、再生専用光ディスクに対しては戻り光ノイズを十分に抑制することが困難な場合があった。
【0013】
一方、特許文献1に記載の技術では、前述の多層ディスクに対しては高周波信号の振幅が小さく、レーザダイオードに流れる電流変化が相対的に緩やかとなって、戻り光ノイズを十分に抑制することが困難な場合があった。また、特許文献1と特許文献2に記載の技術を組み合わせたとしても、クリップレベルで高周波信号の振幅が制限されるので、前述のとおり、再生専用光ディスクに対しては戻り光ノイズを十分に抑制することが困難な場合があった。
【0014】
以上を鑑みて、本願発明の目的は、記録型多層光ディスクに対する再生光耐力の確保と、再生専用光ディスクに対する戻り光ノイズの抑制を両立する光ディスク装置及び光ディスク再生方法を実現することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記の課題を解決するため、本発明の光ディスク装置は、レーザ光源と該レーザ光源に駆動電流を供給するレーザドライバとを有する光ピックアップと、該光ピックアップを制御する制御部とを備え、前記レーザドライバは、再生発光電流を供給する再生発光電流供給部と、該再生発光電流に高周波電流を重畳する高周波重畳部と、前記レーザ光源に供給する駆動電流の最大値を制限する電流クリップ部を有し、前記制御部は、前記光ディスクの種類を判別するディスク判別部と、前記レーザドライバに対して駆動電流の設定を行うレーザドライバ設定部を有する。前記光ディスクが記録可能なディスクの場合、前記レーザドライバ設定部は前記電流クリップ部に対し、駆動電流を制限するために第1のクリップレベルを設定し、前記光ディスクが再生専用のディスクの場合、前記レーザドライバ設定部は前記電流クリップ部に対し、駆動電流を制限するために前記第1のクリップレベルよりも大きい第2のクリップレベルを設定する。
【0016】
また本発明の光ディスク再生方法は、光ディスクの種類を判別するステップと、光ピックアップのレーザ光源に供給する駆動電流として再生発光電流とこれに重畳する高周波電流を設定するステップと、該駆動電流の最大値を制限するクリップレベルを設定するステップを備え、前記光ディスクが記録可能なディスクの場合、駆動電流を制限するために第1のクリップレベルを設定し、前記光ディスクが再生専用のディスクの場合、前記第1のクリップレベルよりも大きい第2のクリップレベルを設定する。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、記録型多層光ディスクに対する再生光耐力の確保と、再生専用光ディスクに対する戻り光ノイズの抑制を両立する光ディスク装置及び光ディスク再生方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】第1実施例の光ディスク装置に含まれる光ピックアップの構成図。
【図2】電流クリップ部18とクリップレベル変更部19の構成回路の一例を示す図。
【図3】第1実施例における光ディスク装置のブロック図。
【図4】メモリ44に記憶されている駆動電流の設定データの一例を示す図。
【図5】第1実施例におけるレーザ光源の駆動電流と発光波形の関係を示す図。
【図6】光ディスクの種類に応じてレーザ光源の駆動電流を設定するフローチャート。
【図7】第2実施例におけるレーザ光源の駆動電流と発光波形の関係を示す図(閾値電流が変化する場合)。
【図8】第2実施例におけるレーザ光源の駆動電流と発光波形の関係を示す図(微分効率が変化する場合)
【図9】レーザ光源のI−L特性が変化した場合の駆動電流を補正するフローチャート。
【図10】第3実施例において周囲温度に応じてレーザ光源の駆動電流を補正するフローチャート。
【図11】第4実施例における光ピックアップの構成図。
【図12】第5実施例における光ピックアップの構成図。
【図13】第5実施例におけるレーザ光源の駆動電流と発光波形の関係を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明に係る光ディスク装置及び光ディスク再生方法の実施例を、図面を用いて詳細に説明する。以下の実施例では、光ディスクの一例として、単層ないし2層の情報記録層を備えた従来方式のBDと、3層または4層の情報記録層を備えた次世代方式のBDを想定する。記録型光ディスクにはBD−RE、BD−R、次世代BD−RE、次世代BD−Rを想定し、再生専用光ディスクにはBD−ROM、次世代BD−ROMを想定する。なお、本発明はこれらのディスクに限定されるものではなく、記録型光ディスクと再生専用光ディスクを同一の装置で再生する光ディスク一般に適用可能である。
【実施例1】
【0020】
本発明の第1の実施例としての光ディスク装置の構成ならびに動作を、図1〜図6を参照しながら説明する。
図1は、本実施例の光ディスク装置に含まれる光ピックアップの構成図である。光ピックアップ31の光学系は、BDの対応波長である405nm帯のレーザ光源(レーザダイオード)1と、このレーザ光源1から放射された光束を平行光束に変換するコリメートレンズ2と、所定の直線偏光を略100%透過し、この直線偏光と直交する直線偏光を略100%反射する偏光ビームスプリッタ3と、直線偏光を円偏光に変換し、また、円偏光を直線偏光に変換する1/4波長板4と、平行光束を反射して対物レンズに導く全反射ミラー5と、レンズ間距離が可変な2枚組合せレンズで構成されて、装着された光ディスク30のディスク表面から所定の情報記録層までの厚さに応じて平行光束の球面収差を調整する球面収差補正部6と、平行光束を光ディスク30の所定の情報記録層に所定のNA且つ所定の収差量以下で光スポットを形成する対物レンズ7と、この対物レンズ7をフォーカシング方向及びトラッキング方向に変位させるための対物レンズアクチュエータ8とを備える。
【0021】
また、ディスク30からの反射光束を所定の収束光束に変換する検出レンズ9と、この収束光束を受光して電気信号に変換する光検出器10と、レーザ光源1から放射された光束の一部を受光して電気信号に変換するフロントモニタ11と、レーザ光源1の近傍の温度を検出する温度検出部12と、レーザ光源1に所定の電流を供給して駆動するレーザドライバ13とを備える。
【0022】
レーザドライバ13は、再生時にレーザ光源1に所定の再生発光電流を供給する再生発光電流供給部14と、この再生発光電流を所定の周波数と振幅とで変調させるために高周波電流を供給する高周波重畳部15と、レーザ光源1の出射パワーを安定させる自動パワー制御(以下、APC:Automatic Power Control)のために前述のフロントモニタ11の出力に応じたバイアス電流を供給するバイアス電流供給部16と、記録時にレーザ光源1に所定の電流を供給する記録発光電流供給部17と、これらの電流を加算する加算器20と、レーザ光源1に供給される電流を所定のクリップレベルで制限する電流クリップ部18と、このクリップレベルを所定の設定値に変更するためのクリップレベル変更部19とを備える。
【0023】
図2は、電流クリップ部18とクリップレベル変更部19の構成回路の一例を示す図である。なお、レーザドライバ13内の各設定値は、レーザドライバ設定部41を介して所定の値に設定される。
【0024】
次に、光ピックアップ31の動作を説明する。
光ディスク30の再生時には、高周波重畳部15が出力する高周波電流を再生発光電流供給部14が出力する再生発光電流に重畳し、バイアス電流供給部16が出力するバイアス電流を加算器20にて加算し、加算したレーザ駆動電流を電流クリップ部18を通して制限した後、レーザ光源1に供給して発光させる。また、光ディスク30の記録時には、記録発光電流供給部17が出力する記録発光電流を前記バイアス電流と加算し、加算したレーザ駆動電流を同じく電流クリップ部18を通してレーザ光源1に供給して発光させる。なお、記録時には電流クリップ部18の電流制限動作を非動作状態に切り換える。
【0025】
レーザ光源1から放射された直線偏光の光束は、コリメートレンズ2で平行光束に変換され、この直線偏光を略100%透過する方向に配置された偏光ビームスプリッタ3を透過し、1/4波長板4で円偏光に変換され、球面収差補正部6で所定の球面収差が付与された後、対物レンズ7により光ディスク30の情報記録層に集光して光スポットを形成する。なお、図1では全反射ミラー5を1/4波長板4と球面収差補正部6との間に備える構成を示しているが、これに限るものではなく、球面収差補正部6と対物レンズ7との間に備えれば光ピックアップ31の薄型化に有利である。
【0026】
光ディスク30からの反射光束は、対物レンズ7により平行光束に変換され、球面収差補正部6を透過し、1/4波長板で円偏光から直線偏光に変換される。この直線偏光はレーザ光源1から放射された直線偏光とは直行する方向であり、偏光ビームスプリッタ3で略100%反射し、検出レンズ9で所定の収束光束に変換され光検出器10の受光領域に集光される。即ち、偏光ビームスプリッタ3と1/4波長板4とを組合せ、光ディスク30からの反射光束がレーザ光源1に戻らないようにアイソレータを構成している。
【0027】
また、レーザ光源1からの放射光束の一部をフロントモニタ11で受光し、光量に応じた電気信号に変換してレーザドライバ13に供給する。前述したとおり、この信号に基づいてバイアス電流量を調整してAPCを行う。
【0028】
図3は、本実施例における光ディスク装置のブロック図である。本実施例の光ディスク装置は、前述の光ピックアップ31と、スピンドルモータ32と、スライダ機構33と、システム制御部40と、メモリ44と、サーボ制御部45と、サーボ信号生成部46と、再生信号生成部47と、再生信号2値化部48と、エンコード部49と、デコード部50と、上位装置との通信を行うためのインタフェース部51とを備える。また、システム制御部40は、レーザドライバ設定部41と、ディスク判別部42と、I−L特性測定部43とを備えている。
【0029】
システム制御部40は、光ディスク装置全体の動作を制御する。即ち、サーボ制御部45を介して、スピンドルモータ32に装着された光ディスク30の回転制御を行い、スライダ機構33を駆動して光ピックアップ31を光ディスク30の半径方向に変位させるシーク制御及び送り制御を行い、光ピックアップ31に搭載されている対物レンズアクチュエータ8を駆動して対物レンズ7のフォーカス制御およびトラッキング制御を行い、同じく光ピックアップ31に搭載されている球面収差補正部6を駆動して球面収差を補正する。
また、システム制御部40は、レーザドライバ設定部41を介してレーザドライバ13を制御し、光ディスク30へのデータの記録と再生を行う。
【0030】
記録時には、インタフェース部51を介して上位装置から送られてきた記録データ信号を、エンコード部49で所定の変調規則によるNRZI信号に変換してシステム制御部40に供給し、システム制御部40はこのNRZI信号に対応した記録ストラテジ(発光パルス列)に変換し、レーザドライバ13の記録発光電流供給部17から出力される記録電流を制御する。記録時には電流クリップ部18を非動作状態とし、所定の光強度およびパルス列でレーザ光源1を発光させる。
【0031】
再生時には、高周波重畳部15から出力する高周波電流の周波数と振幅を設定し、再生発光電流供給部14から出力する再生電流量を設定し、また、バイアス電流供給部16から出力するバイアス電流を制御して、前述したAPCの目標光量となるようにレーザ光源1を発光させる。なお、電流クリップ部18によるレーザ駆動電流の制限動作については後述する。
【0032】
メモリ44には、光ピックアップ31のレーザドライバ13に対する駆動電流の設定データが記憶されている。
図4は、メモリ44に記憶されている駆動電流の設定データの一例を示す図である。設定データの項目は、目標パワーAPC、再生発光電流、高周波重畳電流、クリップレベルなどを、光ディスクの種類に応じて記述されている。第1条件は記録可能型ディスクに、第2条件は再生専用型ディスクに対応する。設定データは物理量ではなく、レーザドライバ13に対する16進数の指示値である。
【0033】
ディスク判別部42は再生する光ディスクの種類を判別する。具体的には、レーザ光源1を発光させ対物レンズ7をフォーカシング方向にスイープして、検出されるフォーカス誤差信号の形状やゼロクロスの数に基づいてディスクの情報記録層の数を判定し、また、光ディスク30の内周部に設けられたBCA(バーストカッティングエリア)を再生して、取得した光ディスク30の基本情報に基づいてディスクの種類を判別する。
【0034】
I−L特性測定部43はレーザ光源1の発光特性(I−L特性)を測定する。具体的には、レーザドライバ設定部41を介してレーザ光源1に供給する駆動電流を変化させ、駆動電流に対応したフロントモニタ11の出力を計測することにより測定する。このとき、ディスク30の情報記録面を保護するため、対物レンズをディスクから最も遠ざかるように退避し、また光ピックアップ31をディスクのデータ領域外に、少なくともデータが記録されていない領域に、退避させる。
【0035】
光ディスク30からの反射光量は光検出器10で受光されて電気信号に変換され、サーボ信号生成部46と再生信号生成部47に送られる。サーボ信号生成部46は、装着された光ディスク30に好適な検出方法で各種のサーボ信号を選択して生成し、システム制御部40に供給する。サーボ信号には少なくともフォーカス誤差信号とトラッキング誤差信号とが含まれる。システム制御部40は、これらサーボ信号に基づき、前述したようにサーボ制御部45を介して対物レンズレンズアクチュエータ8を駆動し、フォーカスサーボおよびトラッキングサーボを動作させる。また、サーボ信号生成部46で生成されたプッシュプル信号の振幅や再生信号生成部47を介して供給された再生信号の振幅に基づいて、サーボ制御部45を介して球面収差補正部6を駆動し、光ディスク30のディスク表面から所定の情報記録層までの距離に対応して球面収差を補正する。
【0036】
再生信号生成部47は、波形等化回路とA/Dコンバータとを備えており、光ピックアップ31供給されたアナログの再生信号に対して、所定の波形等化の後、標本化および量子化を行ってデジタル信号に変換し、再生信号2値化部48に供給する。
【0037】
再生信号2値化部48は、トランスバーサルフィルタと、ビタビ復号回路と、PRML再生系パラメータ設定回路とを備える。再生信号生成部47から供給されたデジタル信号はトランスバーサルフィルタで所定のPRクラスに等化される。ビタビ復号回路は最尤復号を行って、この等化波形を所定の変調規則に基づくNRZI信号に変換する。PRML再生系パラメータ設定回路は、ビタビ復号回路により生成されたNRZI信号のエラーを評価する機能を備えている。また、PRクラスおよび再生波形生成部47から供給された信号レベルに対応したトランスバーサルフィルタによるPR等化後の目標波形を決定し、この目標波形および前述のエラー評価結果に基づいて、トランスバーサルフィルタのタップ係数とビタビ復号回路における識別点レベルとを設定する機能を備えている。再生信号2値化部48で生成されたNRZI信号は、デコード部50によって再生データ信号に変換され、インタフェース部51を介して上位装置に送られる。
【0038】
図5は、本実施例におけるレーザ光源の駆動電流と発光波形の関係を示す図である。レーザ駆動電流は再生する光ディスクの種類に応じて切り換えるようにしており、第1駆動電流(第1発光波形)は記録可能型ディスクに、第2駆動電流(第2発光波形)は再生専用型ディスクに対応している。
【0039】
レーザ光源1のレーザ駆動電流とレーザ発光パワーとの関係を一般にI−L特性と呼ぶが、レーザ光源1においては印加される駆動電流Iopが閾値電流Ith以下ではほとんど発光せず、Ithを超えるとIopとIthの差に比例した光量(この傾きを微分効率と呼ぶ)で発光する特性を示す。本実施例では、第1駆動電流、第2駆動電流ともに高周波電流の最大値と最小値がIthを跨ぐようにレーザ光源を駆動することで、マルチモードで発光させ、モード間で発生するレーザノイズを抑制させるようにしている。
【0040】
記録可能型ディスク対応の第1駆動電流は、第1高周波重畳電流と、第1再生発光電流と、バイアス電流とが加算された電流に対し、第1クリップレベルで最大電流を制限したものとする。その結果、レーザ光源1は、第1ピークパワーで発光パワーの最大値が制限された第1発光波形で発光する。またバイアス電流は、第1発光波形の平均パワーが第1APC目標に対応するように与える。第1発光波形においては、ピークパワーと平均パワーの比(以下、レーザ変調度と呼ぶ)はピークパワーを制限することで所定の値に抑制することが可能であり、本実施例では2程度とする。ピークパワーを抑制することで、記録可能型ディスクに記録されているデータに与えるダメージを低減し、再生光耐力を確保することができる。
【0041】
一方、再生専用型ディスク対応の第2駆動電流は、第2高周波重畳電流と、第2再生発光電流と、バイアス電流とが加算された電流に対し、第2クリップレベルで最大電流を制限したものとする。その結果レーザ光源1は、第2発光波形で発光する。またバイアス電流は、第2発光波形の平均パワーが第2APC目標に対応するように与える。ここでは、第2クリップレベルはレーザ光源1を駆動する電流の最大値より高く設定しており、実際には電流はクリップされない。従って、第2発光波形は一般的な高周波重畳による発光波形であり、レーザ変調度は4程度である。レーザノイズは、発光パワーやレーザ変調度に依存して変化することが知られており、レーザ変調度については、ある範囲内ではレーザ変調度が高いほどレーザノイズの抑制効果が高い。レーザ変調度を十分に高くすることで、ピット形状に起因してレーザへの戻り光量が大きくなる再生専用型ディスクに対してSNRを確保することができる。
なお、図5においては第1発光波形と第2発光波形の平均パワーは同じ、即ち第1APC目標と第2APC目標が同じで、バイアス電流も同程度である場合を示している。
【0042】
図6は、光ディスクの種類に応じてレーザ光源の駆動電流を設定するフローチャートである。この処理は、ディスクローディング時の初期化処理の一部として実行する。光ディスクは多層BDの場合を例とする。
【0043】
まず、S101においてシステム制御部40に備えたディスク判別部42により光ディスク30から判別のための情報(種類、層数)を取得する。S102において、光ディスク30が3層または4層の情報記録層を備えた次世代BD(多層BD)か否かを判定する。多層BDでない場合には(S102でNo)、S115で多層BD以外のディスクに対する処理に移行するが、ここでは説明を省略する。多層BDの場合には(S102でYes)、更にS103において光ディスク30が記録可能型ディスク(BD−RまたはBD−RE)か再生専用型ディスク(BD−ROM)かを判定する。
【0044】
記録可能型ディスクの場合には、S104においてメモリ44に予め記憶されている第1設定値(図4の第1条件の値)を読み出す。ここで第1設定値は、記録可能型の多層BDの再生発光に対応したレーザドライバ13の各設定値である。各設定値はレーザドライバ設定部41を介してレーザドライバ13に送られる。
【0045】
S105において、クリップレベル変更部19を介して電流クリップ部18のクリップレベルを第1クリップレベルに設定し、S106において高周波重畳部15の出力電流の周波数および振幅を第1高周波重畳電流に設定し、S107において再生発光電流供給部14の出力電流を第1再生発光電流に設定する。また、S108においてAPCの目標値を第1APC目標に設定する。即ち、フロントモニタ11の出力が一定となるようにバイアス電流を制御するフィードバックを構成するが、その目標となるフロントモニタ11の出力値を設定する。
【0046】
一方、S103の判定において再生専用型ディスクの場合には、S109においてメモリ44に予め記憶されている第2設定値を読み出す。ここで第2設定値は、再生専用型の多層BDの再生発光に対応したレーザドライバ13の各設定値である。
【0047】
S110において、クリップレベル変更部19を介して電流クリップ部18のクリップレベルを第2クリップレベルに設定し、S111において高周波重畳部15の出力電流の周波数および振幅を第2高周波重畳電流に設定し、S112において再生発光電流供給部14の出力電流を第2再生発光電流に設定する。また、S113においてAPCの目標値を第2APC目標に設定する。
【0048】
いずれの場合も、レーザドライバ13の設定値を各々設定した後に、S114においてレーザドライバ13から駆動電流を出力してレーザ光源1を発光させる。なお、第1設定値を設定する各ステップS105〜S108と、第2設定値を設定する各ステップS110〜S113は、その順序はを入れ替えても良い。
【0049】
このようにして、装着された光ディスクが記録可能型ディスクか、再生専用型ディスクかを判別し、その種類に応じて図5に示すような第1駆動電流または第2駆動電流にてレーザ光源1を駆動し、第1、第2の発光波形にて発光させることができる。その結果、記録可能型ディスクでは再生光耐力を確保するとともに、再生専用型ディスクでは戻り光ノイズを抑制することができる。
【実施例2】
【0050】
本発明の第2実施例を、図7〜図9を参照しながら説明する。本実施例は、レーザ光源1のI−L特性が経時変化した場合に駆動電流を補正するものである。
本実施例における光ピックアップと光ディスク装置の構成は第1実施例と同様であり、また各構成要素の動作についても概ね第1実施例に準じるので詳細な説明は省略する。また、説明を簡便にするため、光ディスク30は記録可能型の多層BDであることが判っているものとする。
【0051】
図7は、本実施例におけるレーザ光源の駆動電流と発光波形の関係を示す図であり、ここでは経時変化で閾値電流Ithが大きくなる場合を示している。
第1の状態のI−L特性は、レーザダイオード13の基準特性を示している。基準特性に対する各設定値は、バイアス電流、第1再生発光電流、高周波重畳電流、第1クリップレベルであり、これらの設定値が予めメモリ44に記憶されている。第1の状態では、これら各設定値に基づいてレーザ光源1を図中の発光波形で発光させる。第2の状態のI−L特性は、経時変化によって閾値電流がIthからIth’に大きくなった場合を示している。なお、微分効率には変化がないものとする。
【0052】
I−L特性が第1の状態から第2の状態に変化した場合には、第1の状態の設定値を基に第2の状態の設定値を演算で求めて補正する。ここではIthが変化しているので、その変化量に応じて同一の発光波形を得るために再生発光電流とクリップレベルの値について変更すれば良く、これらを第2再生発光電流と第2クリップレベルとする。この補正により、第2の状態のI−L特性においても、第1の状態のI−L特性の場合と同様な発光波形でレーザ光源1を発光させることができる。
【0053】
図8は、本実施例におけるレーザ光源の駆動電流と発光波形の関係を示す図であり、ここでは経時変化で微分効率Kが小さくなる場合を示している。
図7と同様に、第1の状態のI−L特性はレーザダイオード13の基準特性を示している。基準特性に対する各設定値は、バイアス電流、再生発光電流、第1高周波重畳電流、第1クリップレベルであり、これらの設定値が予めメモリ44に記憶されている。第1の状態では、これら各設定値に基づいてレーザ光源1を図中の発光波形で発光させる。第2の状態のI−L特性は、経時変化によって微分効率がKからK’に低下した場合を示している。なお、Ithには変化がないものとする。
【0054】
I−L特性が第1の状態から第2の状態に変化した場合には、第1の状態の設定値を基に第2の状態の設定値を演算で求めて補正する。ここでは微分効率Kが変化しているので、その変化量に応じて同一の発光波形を得るために高周波重畳電流とクリップレベルの値を変更すれば良く、これらを第2再生発光電流と第2クリップレベルとする。この補正により、第2の状態のI−L特性においても、第1の状態のI−L特性の場合と同様な発光波形でレーザ光源1を発光させることができる。なお、APC目標が同じであっても、微分効率Kの変化に応じて、バイアス電流を変化する必要がある。
【0055】
以上、I−L特性についてIthが変化する場合と微分効率が変化する場合とに分けて説明したが、これらが同時に起こる場合には組み合わせて各設定値を補正すればよい。また、光ディスク30が再生専用型のBDである場合にも同様に演算により設定値を補正すれば良い。
【0056】
図9は、レーザ光源のI−L特性が変化した場合の駆動電流を補正するフローチャートである。この処理は、ディスクローディング時の初期化処理の一部として実行する。
まず、S201においてシステム制御部40のI−L特性測定部43によりレーザ光源1のI−L特性を測定する。S202において、今回測定したI−L特性の結果を、レーザダイオード13の各設定値の基準となっている基準I−L特性と比較し、変化の有無を判定する。具体的な比較項目は閾値電流Ithと微分効率Kである。なお、I−L特性は温度によっても変化するので、レーザ光源1の経時変化を判定するには、I−L特性を比較する際の温度条件を揃えることが望ましい(この温度を標準温度とする)。温度条件が異なるときは、予め評価しておいたI−L特性の温度変化を勘案して比較する。
【0057】
判定の結果、両者のI−L特性の変化がない(所定の範囲内)場合には(S202でNo)、S205においてメモリ44に予め記録されている基準の設定値を読み出す。判定の結果、I−L特性の変化がある(所定の範囲を超える)場合には(S202でYes)、S203において、今回測定したI−L特性に適合するようにレーザダイオードの各設定値を補正する。
【0058】
S204においてメモリ44に記憶されている設定値を補正値で更新する。I−L特性測定時の温度情報もメモリ44に記憶しておく。あるいは、測定時に標準温度だった場合のみ設定値を更新するか、標準温度でのI−L特性における設定値に換算して更新する。なお、I−L特性の変化が温度変化のみに起因している場合はこの処理はスキップする。
【0059】
S206以降は第1の実施例(図6)と同様である。すなわち、S206においてクリップレベルを設定し、S207において高周波重畳電流を設定し、S208において再生発光電流を設定し、S209においてAPCの目標値を設定し、S210においてレーザ光源1を発光させる。
【0060】
なお、S201からS204までの一連の処理は、ディスクローディング毎には行わず、光ディスク装置の電源投入時に1回だけ行うように構成してもよい。ディスクローディング時のセットアップ時間を短縮することができ、情報記録面の保護にも有効である。
【実施例3】
【0061】
本発明の第3実施例を、図10を参照しながら説明する。本実施例は、光ディスク装置が動作中にレーザ光源1の周囲温度が上昇し、I−L特性が変化した場合に駆動電流を補正するものである。
本実施例における光ピックアップと光ディスク装置の構成は第1実施例と同様であり、また各構成要素の動作についても概ね第1実施例に準じるので詳細な説明は省略する。また、説明を簡便にするため、光ディスク30は記録可能型の多層BDであることが判っているものとする。
【0062】
図10は、本実施例において周囲温度に応じてレーザ光源の駆動電流を補正するフローチャートである。この処理は、光ディスク装置の動作中に一定期間毎に(あるいは随時)実行する。
【0063】
S301において、光ピックアップ31の温度検出部12によりレーザ周囲の現在温度を測定する。S302において、測定した現在温度が規定範囲内かどうかを判定する。即ち、基準のI−L特性を定めたときの標準温度と比較して、それらの温度差が所定値以下かどうかを判定する。現在温度が規定範囲内の場合には(S302でYes)変更処理を終了する。規定範囲を超える場合には(S302でNo)S303に進む。
S303において、メモリ44に予め記録されている基準設定値を読み出す。ここで読み出す設定値は標準温度(例えば25度)における設定値である。
【0064】
S304において、現在温度に適合するようにレーザダイオードの各設定値を演算する。この演算のために、予めI−L特性の温度変化、即ち、Ith及び微分効率変化の温度依存係数を評価してメモリ44に格納しておく。これらの温度依存係数を用いて、現在温度におけるI−L特性を演算し、得られたI−L特性に適合するようにレーザダイオードの各設定値を演算して補正する。なお、I−L特性の変化については、図7に示したように閾値電流Ithが変化する場合と、図8に示したように微分効率Kが変化する場合と、さらには両者とも変化する場合がある。第2実施例と同様に、Ithの変化に対しては再生発光電流とクリップレベルを変更し、微分効率Kの変化に対しては高周波重畳電流の振幅とクリップレベルを変更する。
【0065】
その後は第1実施例と同様に、S305においてクリップレベルを設定し、S306において高周波重畳電流を設定し、S307において再生発光電流を設定する。また、S308において設定を有効にしてレーザ発光条件を変更する。
【実施例4】
【0066】
本発明の第4実施例を、図11を参照しながら説明する。本実施例は、光ピックアップ内の電流クリップ部の配置を変更したものである。
図11は、本実施例における光ピックアップの構成図である。図1に示した第1実施例における光ピックアップとの違いは、電流クリップ部18を高周波重畳部15の直後に備えたことである。各構成要素の動作は概ね第1実施例に準じるので詳細な説明は省略する。
【0067】
光ディスク30の再生時には、高周波重畳部15が出力する高周波電流を電流クリップ部18を通して制限した後、再生発光電流供給部14が出力する再生発光電流に重畳し、バイアス電流供給部16が出力するバイアス電流と加算器20にて加算し、加算したレーザ駆動電流をレーザ光源1に供給して発光させる。
【0068】
一方、光ディスク30の記録時には、記録発光電流供給部17が出力する記録発光電流と前記バイアス電流とを加算し、加算したレーザ駆動電流をレーザ光源1に供給して発光させる。即ち、第1実施例のように電流クリップ部18を記録時に非動作にする必要がない。
本実施例の構成において、装着されたディスクの種類に対応する動作は第1実施例に準じ、I−L特性の変化に対応する動作は第2実施例に準じ、温度変化に対応する動作は第3実施例に準じる。
【0069】
なお、電流クリップ部18の配置については、更に他の構成も可能である。例えば、バイアス電流と再生発光電流と高周波重畳電流を加算する加算器の後段に電流クリップ部を備え、更にその後段に記録発光電流を加算する加算器を備える構成としても良い。その場合には、本実施例と同様に記録時に電流クリップ部18を非動作に変更する必要がなく、一方で、APC動作によってバイアス電流が大きく変化する場合においてもレーザ駆動電流を所定の値に確実に制限することが可能である。
【実施例5】
【0070】
本発明の第5実施例を、図12と図13を参照しながら説明する。本実施例は、高周波電流として方形波を使用する場合である。
図12は、本実施例における光ピックアップの構成図である。図1に示した第1実施例における光ピックアップとの違いは、高周波重畳部15ではなく特に方形波状の高周波電流を出力する方形高周波重畳部21と、方形高周波電流のトップレベルを制御するトップレベル変更部22を備えたことである。一方で、電流クリップ部18とクリップレベル変更部19を削除しているので、構成を簡略化することができる。他の構成要素の動作は概ね第1実施例に準じるので詳細な説明は省略する。
【0071】
方形高周波重畳部21とトップレベル変更部22は、周波数とデューティと出力電流のトップレベルを所定の値に設定した方形高周波電流を生成する。光ディスク30の再生時には、方形高周波重畳部21が出力する方形高周波電流を再生発光電流供給部14が出力する再生発光電流に重畳し、バイアス電流供給部16が出力するバイアス電流を加算器20にて加算し、加算したレーザ駆動電流をレーザ光源1に供給して発光させる。また、光ディスク30の記録時には、記録発光電流供給部17が出力する記録発光電流と前記バイアス電流とを加算し、加算したレーザ駆動電流をレーザ光源1に供給して発光させる。
【0072】
図13は、本実施例におけるレーザ光源の駆動電流と発光波形の関係を示す図であり、高周波電流として方形波を用いた場合を示している。第1発光波形は、前述の記録可能型ディスクに対応しており、第2発光波形は再生専用型ディスクに対応している。なお、レーザ光源1の駆動電流変化に対する発光パワー変化(スルーレート特性)を考慮して、第1発光波形および第2発光波形は方形の駆動電流に対して傾きのある波形として図示している。
【0073】
記録可能型ディスク、再生可能型ディスクともに方形高周波電流が閾値電流Ithを跨ぐように構成する。記録可能型ディスクに対しては、第1方形高周波電流と、再生発光電流と、バイアス電流とが加算された電流がレーザ光源1を駆動し、発光パワーの最大値が第1ピークパワーで制限された第1発光波形でレーザ発光する。またAPC目標に対応した平均パワーで発光するようにバイアス電流を与える。第1発光波形においては、第1方形高周波電流の第1トップレベルを所定の値に設定することでレーザ変調度を抑制可能であり、本実施例では2程度の値としている。発光波形のピークパワーを第1ピークパワーに抑制することで、記録可能型ディスクに記録されているデータに与えるダメージを低減し、再生光耐力を確保することができる。
【0074】
一方、再生専用型ディスクに対しては、第2方形高周波電流と、再生発光電流と、バイアス電流とが加算された電流がレーザ光源1を駆動し、発光パワーの最大値が第2ピークパワーとなる第2発光波形でレーザ発光する。またAPC目標に対応した平均パワーで発光するようにバイアス電流を与える。第2方形高周波電流は第1方形高周波電流と比較して、トップレベルが高く、デューティが小さく、周波数は同一である。第2発光波形においては、レーザ変調度は4程度である。前述したように、ある範囲内ではレーザ変調度が高いほどレーザノイズの抑制効果が高い。レーザ変調度を十分に高くすることで、ピット形状に起因してレーザへの戻り光量が大きくなる再生専用型ディスクに対してSNRを確保することができる。
【0075】
以上、本発明の各実施例を説明したが、特に複数の情報記録層を具備した光ディスクに対し、記録型光ディスクについては再生光耐力を確保すると共に、再生専用光ディスクについては戻り光ノイズを抑制することができる。また、経時変化や環境温度でレーザ光源のI−L特性が変化した場合においても、駆動電流を補正することで適切な発光波形で再生を行うことができる。
【0076】
本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。上記した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであって、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【0077】
また、上記の各構成は、それらの一部又は全部が、ハードウェアで構成されても、プロセッサでプログラムが実行されることにより実現されるように構成されてもよい。また、制御線や情報線は説明上必要と考えられるものを示しており、製品上必ずしも全ての制御線や情報線を示しているとは限らない。実際には殆ど全ての構成が相互に接続されていると考えてもよい。
【符号の説明】
【0078】
1・・・レーザ光源、7・・・対物レンズ、8・・・対物レンズアクチュエータ、9・・・検出レンズ、10・・・光検出器、11・・・フロントモニタ、12・・・温度検出部、13・・・レーザドライバ、14・・・再生発光電流供給部、15・・・高周波重畳部、16・・・バイアス電流供給部、17・・・記録発光電流供給部、18・・・電流クリップ部、19・・・クリップレベル変更部、21・・・方形高周波重畳部、22・・・トップレベル変更部、30・・・光ディスク、31・・・光ピックアップ、32・・・スピンドルモータ、33・・・スライダ機構、40・・・システム制御部、41・・・レーザドライバ設定部、42・・・ディスク判別部、43・・・I−L特性測定部、44・・・メモリ。
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ディスク装置及び光ディスク再生方法に係り、特にレーザ光源の駆動電流に高周波電流を重畳して発光させて複数の情報記録層を具備する光ディスクを再生する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
光ディスク装置は、レーザ光を光ディスクに照射し、反射した光の強度を検出することで光ディスク上に記録されたデータの再生を行う。そのとき、光ディスクから反射した光の一部が光源であるレーザダイオードに入射すると、発光強度が変動して戻り光ノイズとなり、再生エラー率を悪化させる要因となっている。
【0003】
戻り光ノイズを抑制するために、偏光ビームスプリッタと1/4波長板を組合せたアイソレータを光路中に構成し、光ディスクからの反射光がレーザダイオードに戻らないようにする技術がある。また、レーザダイオードの駆動電流に高周波を重畳してマルチモード発光させることで、戻り光ノイズを低減する技術がある。
【0004】
ところが、高周波を重畳してレーザダイオードを発光させる場合、再生パワーの平均値に対してピークパワーが大きい発光波形となるため、パルス状ながら大きなパワーのレーザ光が光ディスクに照射される。そのため、書換型や追記型の光ディスクを再生する時には、記録されているデータが劣化し再生可能な回数が減少する、所謂、再生光耐力が低下する問題がある。
【0005】
高周波重畳に伴う再生光耐力の低下の対策としては、次のような提案がなされている。例えば特許文献1には、光ディスクの種類(DVD−ROM、DVD±R、DVD±RW)を判別し、その種類に応じて重畳する高周波信号の振幅を切り換えることが記載されている。また特許文献2には、レーザダイオードの駆動時に重畳する高周波電流のピーク電流をクリップすることにより、レーザダイオードの発光パワーの変化に対するピークパワーの倍率を抑え、リード時の記録信号の耐久性を確保することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−355723号公報
【特許文献2】特開2006−303135号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
近年、光ディスクの更なる大容量化のために、1枚の光ディスクに複数の情報記録層を積層する検討がなされている。例えば、3層以上の記録型ディスク(以下、簡単のため多層ディスクと略称する)では、特に再生光耐力の低下が課題となる。以下、その理由を説明する。
【0008】
多層ディスクにおいて最奥層の記録再生を実現する為には、それより手前の各層の反射率を積層数に応じて低く設定し、透過率を高く設定する必要がある。一例として、従来のBlu−ray Disc(以下、BDと略称する)では未記録状態での反射率が追記型単層ディスクでは18%前後であり追記型2層ディスクでは6%前後であるが、これらに対応して3層ないし4層ディスクを実現するためには各層の反射率を3%前後とする必要がある。
【0009】
反射率の低下は再生信号のSNR(信号対ノイズ比)の低下を伴うので、ノイズレベルが同等であれば、SNRの確保のために反射率の低下に合わせて再生パワーを増加する必要がある。上記BDの例では、再生パワーが単層ディスクでは0.3mW程度、2層ディスクでは0.7mW程度であるのに対し、多層ディスクでは1.2mW程度に増加する必要がある。なお、所定以下のノイズレベルを確保するためには、従来通り戻り光ノイズの抑制が必要である。
【0010】
また、透過率が高い情報記録層に対して限られたレーザパワーで記録を行うためには、各情報記録層の記録感度を高める必要がある。その結果として、多層ディスクにおいては相対的に記録感度の高い情報記録層を大きい再生パワーで再生する必要があり、前述の再生光耐力の問題はより深刻になる。
【0011】
このような記録型多層光ディスクの再生において、戻り光ノイズを抑制しつつ再生光耐力を確保するためには、前述の従来技術、即ち、光路中にアイソレータを構成し、ピーク電流をクリップした高周波重畳電流でレーザダイオード発光させることが有効である。
【0012】
一方、再生専用光ディスクの場合、ピットとピット外とで反射光の位相がずれることがあり、位相のずれ量に応じてアイソレータを通過してレーザダイオードに戻る光量が増加する。所定以上の戻り光量がある場合には、上記記録型ディスクと同様にピーク電流をクリップした高周波重畳電流でレーザダイオードを発光させることでは、戻り光ノイズを十分に抑制することが困難となる。すなわち、特許文献2に記載の技術では、再生専用光ディスクに対しては戻り光ノイズを十分に抑制することが困難な場合があった。
【0013】
一方、特許文献1に記載の技術では、前述の多層ディスクに対しては高周波信号の振幅が小さく、レーザダイオードに流れる電流変化が相対的に緩やかとなって、戻り光ノイズを十分に抑制することが困難な場合があった。また、特許文献1と特許文献2に記載の技術を組み合わせたとしても、クリップレベルで高周波信号の振幅が制限されるので、前述のとおり、再生専用光ディスクに対しては戻り光ノイズを十分に抑制することが困難な場合があった。
【0014】
以上を鑑みて、本願発明の目的は、記録型多層光ディスクに対する再生光耐力の確保と、再生専用光ディスクに対する戻り光ノイズの抑制を両立する光ディスク装置及び光ディスク再生方法を実現することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記の課題を解決するため、本発明の光ディスク装置は、レーザ光源と該レーザ光源に駆動電流を供給するレーザドライバとを有する光ピックアップと、該光ピックアップを制御する制御部とを備え、前記レーザドライバは、再生発光電流を供給する再生発光電流供給部と、該再生発光電流に高周波電流を重畳する高周波重畳部と、前記レーザ光源に供給する駆動電流の最大値を制限する電流クリップ部を有し、前記制御部は、前記光ディスクの種類を判別するディスク判別部と、前記レーザドライバに対して駆動電流の設定を行うレーザドライバ設定部を有する。前記光ディスクが記録可能なディスクの場合、前記レーザドライバ設定部は前記電流クリップ部に対し、駆動電流を制限するために第1のクリップレベルを設定し、前記光ディスクが再生専用のディスクの場合、前記レーザドライバ設定部は前記電流クリップ部に対し、駆動電流を制限するために前記第1のクリップレベルよりも大きい第2のクリップレベルを設定する。
【0016】
また本発明の光ディスク再生方法は、光ディスクの種類を判別するステップと、光ピックアップのレーザ光源に供給する駆動電流として再生発光電流とこれに重畳する高周波電流を設定するステップと、該駆動電流の最大値を制限するクリップレベルを設定するステップを備え、前記光ディスクが記録可能なディスクの場合、駆動電流を制限するために第1のクリップレベルを設定し、前記光ディスクが再生専用のディスクの場合、前記第1のクリップレベルよりも大きい第2のクリップレベルを設定する。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、記録型多層光ディスクに対する再生光耐力の確保と、再生専用光ディスクに対する戻り光ノイズの抑制を両立する光ディスク装置及び光ディスク再生方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】第1実施例の光ディスク装置に含まれる光ピックアップの構成図。
【図2】電流クリップ部18とクリップレベル変更部19の構成回路の一例を示す図。
【図3】第1実施例における光ディスク装置のブロック図。
【図4】メモリ44に記憶されている駆動電流の設定データの一例を示す図。
【図5】第1実施例におけるレーザ光源の駆動電流と発光波形の関係を示す図。
【図6】光ディスクの種類に応じてレーザ光源の駆動電流を設定するフローチャート。
【図7】第2実施例におけるレーザ光源の駆動電流と発光波形の関係を示す図(閾値電流が変化する場合)。
【図8】第2実施例におけるレーザ光源の駆動電流と発光波形の関係を示す図(微分効率が変化する場合)
【図9】レーザ光源のI−L特性が変化した場合の駆動電流を補正するフローチャート。
【図10】第3実施例において周囲温度に応じてレーザ光源の駆動電流を補正するフローチャート。
【図11】第4実施例における光ピックアップの構成図。
【図12】第5実施例における光ピックアップの構成図。
【図13】第5実施例におけるレーザ光源の駆動電流と発光波形の関係を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明に係る光ディスク装置及び光ディスク再生方法の実施例を、図面を用いて詳細に説明する。以下の実施例では、光ディスクの一例として、単層ないし2層の情報記録層を備えた従来方式のBDと、3層または4層の情報記録層を備えた次世代方式のBDを想定する。記録型光ディスクにはBD−RE、BD−R、次世代BD−RE、次世代BD−Rを想定し、再生専用光ディスクにはBD−ROM、次世代BD−ROMを想定する。なお、本発明はこれらのディスクに限定されるものではなく、記録型光ディスクと再生専用光ディスクを同一の装置で再生する光ディスク一般に適用可能である。
【実施例1】
【0020】
本発明の第1の実施例としての光ディスク装置の構成ならびに動作を、図1〜図6を参照しながら説明する。
図1は、本実施例の光ディスク装置に含まれる光ピックアップの構成図である。光ピックアップ31の光学系は、BDの対応波長である405nm帯のレーザ光源(レーザダイオード)1と、このレーザ光源1から放射された光束を平行光束に変換するコリメートレンズ2と、所定の直線偏光を略100%透過し、この直線偏光と直交する直線偏光を略100%反射する偏光ビームスプリッタ3と、直線偏光を円偏光に変換し、また、円偏光を直線偏光に変換する1/4波長板4と、平行光束を反射して対物レンズに導く全反射ミラー5と、レンズ間距離が可変な2枚組合せレンズで構成されて、装着された光ディスク30のディスク表面から所定の情報記録層までの厚さに応じて平行光束の球面収差を調整する球面収差補正部6と、平行光束を光ディスク30の所定の情報記録層に所定のNA且つ所定の収差量以下で光スポットを形成する対物レンズ7と、この対物レンズ7をフォーカシング方向及びトラッキング方向に変位させるための対物レンズアクチュエータ8とを備える。
【0021】
また、ディスク30からの反射光束を所定の収束光束に変換する検出レンズ9と、この収束光束を受光して電気信号に変換する光検出器10と、レーザ光源1から放射された光束の一部を受光して電気信号に変換するフロントモニタ11と、レーザ光源1の近傍の温度を検出する温度検出部12と、レーザ光源1に所定の電流を供給して駆動するレーザドライバ13とを備える。
【0022】
レーザドライバ13は、再生時にレーザ光源1に所定の再生発光電流を供給する再生発光電流供給部14と、この再生発光電流を所定の周波数と振幅とで変調させるために高周波電流を供給する高周波重畳部15と、レーザ光源1の出射パワーを安定させる自動パワー制御(以下、APC:Automatic Power Control)のために前述のフロントモニタ11の出力に応じたバイアス電流を供給するバイアス電流供給部16と、記録時にレーザ光源1に所定の電流を供給する記録発光電流供給部17と、これらの電流を加算する加算器20と、レーザ光源1に供給される電流を所定のクリップレベルで制限する電流クリップ部18と、このクリップレベルを所定の設定値に変更するためのクリップレベル変更部19とを備える。
【0023】
図2は、電流クリップ部18とクリップレベル変更部19の構成回路の一例を示す図である。なお、レーザドライバ13内の各設定値は、レーザドライバ設定部41を介して所定の値に設定される。
【0024】
次に、光ピックアップ31の動作を説明する。
光ディスク30の再生時には、高周波重畳部15が出力する高周波電流を再生発光電流供給部14が出力する再生発光電流に重畳し、バイアス電流供給部16が出力するバイアス電流を加算器20にて加算し、加算したレーザ駆動電流を電流クリップ部18を通して制限した後、レーザ光源1に供給して発光させる。また、光ディスク30の記録時には、記録発光電流供給部17が出力する記録発光電流を前記バイアス電流と加算し、加算したレーザ駆動電流を同じく電流クリップ部18を通してレーザ光源1に供給して発光させる。なお、記録時には電流クリップ部18の電流制限動作を非動作状態に切り換える。
【0025】
レーザ光源1から放射された直線偏光の光束は、コリメートレンズ2で平行光束に変換され、この直線偏光を略100%透過する方向に配置された偏光ビームスプリッタ3を透過し、1/4波長板4で円偏光に変換され、球面収差補正部6で所定の球面収差が付与された後、対物レンズ7により光ディスク30の情報記録層に集光して光スポットを形成する。なお、図1では全反射ミラー5を1/4波長板4と球面収差補正部6との間に備える構成を示しているが、これに限るものではなく、球面収差補正部6と対物レンズ7との間に備えれば光ピックアップ31の薄型化に有利である。
【0026】
光ディスク30からの反射光束は、対物レンズ7により平行光束に変換され、球面収差補正部6を透過し、1/4波長板で円偏光から直線偏光に変換される。この直線偏光はレーザ光源1から放射された直線偏光とは直行する方向であり、偏光ビームスプリッタ3で略100%反射し、検出レンズ9で所定の収束光束に変換され光検出器10の受光領域に集光される。即ち、偏光ビームスプリッタ3と1/4波長板4とを組合せ、光ディスク30からの反射光束がレーザ光源1に戻らないようにアイソレータを構成している。
【0027】
また、レーザ光源1からの放射光束の一部をフロントモニタ11で受光し、光量に応じた電気信号に変換してレーザドライバ13に供給する。前述したとおり、この信号に基づいてバイアス電流量を調整してAPCを行う。
【0028】
図3は、本実施例における光ディスク装置のブロック図である。本実施例の光ディスク装置は、前述の光ピックアップ31と、スピンドルモータ32と、スライダ機構33と、システム制御部40と、メモリ44と、サーボ制御部45と、サーボ信号生成部46と、再生信号生成部47と、再生信号2値化部48と、エンコード部49と、デコード部50と、上位装置との通信を行うためのインタフェース部51とを備える。また、システム制御部40は、レーザドライバ設定部41と、ディスク判別部42と、I−L特性測定部43とを備えている。
【0029】
システム制御部40は、光ディスク装置全体の動作を制御する。即ち、サーボ制御部45を介して、スピンドルモータ32に装着された光ディスク30の回転制御を行い、スライダ機構33を駆動して光ピックアップ31を光ディスク30の半径方向に変位させるシーク制御及び送り制御を行い、光ピックアップ31に搭載されている対物レンズアクチュエータ8を駆動して対物レンズ7のフォーカス制御およびトラッキング制御を行い、同じく光ピックアップ31に搭載されている球面収差補正部6を駆動して球面収差を補正する。
また、システム制御部40は、レーザドライバ設定部41を介してレーザドライバ13を制御し、光ディスク30へのデータの記録と再生を行う。
【0030】
記録時には、インタフェース部51を介して上位装置から送られてきた記録データ信号を、エンコード部49で所定の変調規則によるNRZI信号に変換してシステム制御部40に供給し、システム制御部40はこのNRZI信号に対応した記録ストラテジ(発光パルス列)に変換し、レーザドライバ13の記録発光電流供給部17から出力される記録電流を制御する。記録時には電流クリップ部18を非動作状態とし、所定の光強度およびパルス列でレーザ光源1を発光させる。
【0031】
再生時には、高周波重畳部15から出力する高周波電流の周波数と振幅を設定し、再生発光電流供給部14から出力する再生電流量を設定し、また、バイアス電流供給部16から出力するバイアス電流を制御して、前述したAPCの目標光量となるようにレーザ光源1を発光させる。なお、電流クリップ部18によるレーザ駆動電流の制限動作については後述する。
【0032】
メモリ44には、光ピックアップ31のレーザドライバ13に対する駆動電流の設定データが記憶されている。
図4は、メモリ44に記憶されている駆動電流の設定データの一例を示す図である。設定データの項目は、目標パワーAPC、再生発光電流、高周波重畳電流、クリップレベルなどを、光ディスクの種類に応じて記述されている。第1条件は記録可能型ディスクに、第2条件は再生専用型ディスクに対応する。設定データは物理量ではなく、レーザドライバ13に対する16進数の指示値である。
【0033】
ディスク判別部42は再生する光ディスクの種類を判別する。具体的には、レーザ光源1を発光させ対物レンズ7をフォーカシング方向にスイープして、検出されるフォーカス誤差信号の形状やゼロクロスの数に基づいてディスクの情報記録層の数を判定し、また、光ディスク30の内周部に設けられたBCA(バーストカッティングエリア)を再生して、取得した光ディスク30の基本情報に基づいてディスクの種類を判別する。
【0034】
I−L特性測定部43はレーザ光源1の発光特性(I−L特性)を測定する。具体的には、レーザドライバ設定部41を介してレーザ光源1に供給する駆動電流を変化させ、駆動電流に対応したフロントモニタ11の出力を計測することにより測定する。このとき、ディスク30の情報記録面を保護するため、対物レンズをディスクから最も遠ざかるように退避し、また光ピックアップ31をディスクのデータ領域外に、少なくともデータが記録されていない領域に、退避させる。
【0035】
光ディスク30からの反射光量は光検出器10で受光されて電気信号に変換され、サーボ信号生成部46と再生信号生成部47に送られる。サーボ信号生成部46は、装着された光ディスク30に好適な検出方法で各種のサーボ信号を選択して生成し、システム制御部40に供給する。サーボ信号には少なくともフォーカス誤差信号とトラッキング誤差信号とが含まれる。システム制御部40は、これらサーボ信号に基づき、前述したようにサーボ制御部45を介して対物レンズレンズアクチュエータ8を駆動し、フォーカスサーボおよびトラッキングサーボを動作させる。また、サーボ信号生成部46で生成されたプッシュプル信号の振幅や再生信号生成部47を介して供給された再生信号の振幅に基づいて、サーボ制御部45を介して球面収差補正部6を駆動し、光ディスク30のディスク表面から所定の情報記録層までの距離に対応して球面収差を補正する。
【0036】
再生信号生成部47は、波形等化回路とA/Dコンバータとを備えており、光ピックアップ31供給されたアナログの再生信号に対して、所定の波形等化の後、標本化および量子化を行ってデジタル信号に変換し、再生信号2値化部48に供給する。
【0037】
再生信号2値化部48は、トランスバーサルフィルタと、ビタビ復号回路と、PRML再生系パラメータ設定回路とを備える。再生信号生成部47から供給されたデジタル信号はトランスバーサルフィルタで所定のPRクラスに等化される。ビタビ復号回路は最尤復号を行って、この等化波形を所定の変調規則に基づくNRZI信号に変換する。PRML再生系パラメータ設定回路は、ビタビ復号回路により生成されたNRZI信号のエラーを評価する機能を備えている。また、PRクラスおよび再生波形生成部47から供給された信号レベルに対応したトランスバーサルフィルタによるPR等化後の目標波形を決定し、この目標波形および前述のエラー評価結果に基づいて、トランスバーサルフィルタのタップ係数とビタビ復号回路における識別点レベルとを設定する機能を備えている。再生信号2値化部48で生成されたNRZI信号は、デコード部50によって再生データ信号に変換され、インタフェース部51を介して上位装置に送られる。
【0038】
図5は、本実施例におけるレーザ光源の駆動電流と発光波形の関係を示す図である。レーザ駆動電流は再生する光ディスクの種類に応じて切り換えるようにしており、第1駆動電流(第1発光波形)は記録可能型ディスクに、第2駆動電流(第2発光波形)は再生専用型ディスクに対応している。
【0039】
レーザ光源1のレーザ駆動電流とレーザ発光パワーとの関係を一般にI−L特性と呼ぶが、レーザ光源1においては印加される駆動電流Iopが閾値電流Ith以下ではほとんど発光せず、Ithを超えるとIopとIthの差に比例した光量(この傾きを微分効率と呼ぶ)で発光する特性を示す。本実施例では、第1駆動電流、第2駆動電流ともに高周波電流の最大値と最小値がIthを跨ぐようにレーザ光源を駆動することで、マルチモードで発光させ、モード間で発生するレーザノイズを抑制させるようにしている。
【0040】
記録可能型ディスク対応の第1駆動電流は、第1高周波重畳電流と、第1再生発光電流と、バイアス電流とが加算された電流に対し、第1クリップレベルで最大電流を制限したものとする。その結果、レーザ光源1は、第1ピークパワーで発光パワーの最大値が制限された第1発光波形で発光する。またバイアス電流は、第1発光波形の平均パワーが第1APC目標に対応するように与える。第1発光波形においては、ピークパワーと平均パワーの比(以下、レーザ変調度と呼ぶ)はピークパワーを制限することで所定の値に抑制することが可能であり、本実施例では2程度とする。ピークパワーを抑制することで、記録可能型ディスクに記録されているデータに与えるダメージを低減し、再生光耐力を確保することができる。
【0041】
一方、再生専用型ディスク対応の第2駆動電流は、第2高周波重畳電流と、第2再生発光電流と、バイアス電流とが加算された電流に対し、第2クリップレベルで最大電流を制限したものとする。その結果レーザ光源1は、第2発光波形で発光する。またバイアス電流は、第2発光波形の平均パワーが第2APC目標に対応するように与える。ここでは、第2クリップレベルはレーザ光源1を駆動する電流の最大値より高く設定しており、実際には電流はクリップされない。従って、第2発光波形は一般的な高周波重畳による発光波形であり、レーザ変調度は4程度である。レーザノイズは、発光パワーやレーザ変調度に依存して変化することが知られており、レーザ変調度については、ある範囲内ではレーザ変調度が高いほどレーザノイズの抑制効果が高い。レーザ変調度を十分に高くすることで、ピット形状に起因してレーザへの戻り光量が大きくなる再生専用型ディスクに対してSNRを確保することができる。
なお、図5においては第1発光波形と第2発光波形の平均パワーは同じ、即ち第1APC目標と第2APC目標が同じで、バイアス電流も同程度である場合を示している。
【0042】
図6は、光ディスクの種類に応じてレーザ光源の駆動電流を設定するフローチャートである。この処理は、ディスクローディング時の初期化処理の一部として実行する。光ディスクは多層BDの場合を例とする。
【0043】
まず、S101においてシステム制御部40に備えたディスク判別部42により光ディスク30から判別のための情報(種類、層数)を取得する。S102において、光ディスク30が3層または4層の情報記録層を備えた次世代BD(多層BD)か否かを判定する。多層BDでない場合には(S102でNo)、S115で多層BD以外のディスクに対する処理に移行するが、ここでは説明を省略する。多層BDの場合には(S102でYes)、更にS103において光ディスク30が記録可能型ディスク(BD−RまたはBD−RE)か再生専用型ディスク(BD−ROM)かを判定する。
【0044】
記録可能型ディスクの場合には、S104においてメモリ44に予め記憶されている第1設定値(図4の第1条件の値)を読み出す。ここで第1設定値は、記録可能型の多層BDの再生発光に対応したレーザドライバ13の各設定値である。各設定値はレーザドライバ設定部41を介してレーザドライバ13に送られる。
【0045】
S105において、クリップレベル変更部19を介して電流クリップ部18のクリップレベルを第1クリップレベルに設定し、S106において高周波重畳部15の出力電流の周波数および振幅を第1高周波重畳電流に設定し、S107において再生発光電流供給部14の出力電流を第1再生発光電流に設定する。また、S108においてAPCの目標値を第1APC目標に設定する。即ち、フロントモニタ11の出力が一定となるようにバイアス電流を制御するフィードバックを構成するが、その目標となるフロントモニタ11の出力値を設定する。
【0046】
一方、S103の判定において再生専用型ディスクの場合には、S109においてメモリ44に予め記憶されている第2設定値を読み出す。ここで第2設定値は、再生専用型の多層BDの再生発光に対応したレーザドライバ13の各設定値である。
【0047】
S110において、クリップレベル変更部19を介して電流クリップ部18のクリップレベルを第2クリップレベルに設定し、S111において高周波重畳部15の出力電流の周波数および振幅を第2高周波重畳電流に設定し、S112において再生発光電流供給部14の出力電流を第2再生発光電流に設定する。また、S113においてAPCの目標値を第2APC目標に設定する。
【0048】
いずれの場合も、レーザドライバ13の設定値を各々設定した後に、S114においてレーザドライバ13から駆動電流を出力してレーザ光源1を発光させる。なお、第1設定値を設定する各ステップS105〜S108と、第2設定値を設定する各ステップS110〜S113は、その順序はを入れ替えても良い。
【0049】
このようにして、装着された光ディスクが記録可能型ディスクか、再生専用型ディスクかを判別し、その種類に応じて図5に示すような第1駆動電流または第2駆動電流にてレーザ光源1を駆動し、第1、第2の発光波形にて発光させることができる。その結果、記録可能型ディスクでは再生光耐力を確保するとともに、再生専用型ディスクでは戻り光ノイズを抑制することができる。
【実施例2】
【0050】
本発明の第2実施例を、図7〜図9を参照しながら説明する。本実施例は、レーザ光源1のI−L特性が経時変化した場合に駆動電流を補正するものである。
本実施例における光ピックアップと光ディスク装置の構成は第1実施例と同様であり、また各構成要素の動作についても概ね第1実施例に準じるので詳細な説明は省略する。また、説明を簡便にするため、光ディスク30は記録可能型の多層BDであることが判っているものとする。
【0051】
図7は、本実施例におけるレーザ光源の駆動電流と発光波形の関係を示す図であり、ここでは経時変化で閾値電流Ithが大きくなる場合を示している。
第1の状態のI−L特性は、レーザダイオード13の基準特性を示している。基準特性に対する各設定値は、バイアス電流、第1再生発光電流、高周波重畳電流、第1クリップレベルであり、これらの設定値が予めメモリ44に記憶されている。第1の状態では、これら各設定値に基づいてレーザ光源1を図中の発光波形で発光させる。第2の状態のI−L特性は、経時変化によって閾値電流がIthからIth’に大きくなった場合を示している。なお、微分効率には変化がないものとする。
【0052】
I−L特性が第1の状態から第2の状態に変化した場合には、第1の状態の設定値を基に第2の状態の設定値を演算で求めて補正する。ここではIthが変化しているので、その変化量に応じて同一の発光波形を得るために再生発光電流とクリップレベルの値について変更すれば良く、これらを第2再生発光電流と第2クリップレベルとする。この補正により、第2の状態のI−L特性においても、第1の状態のI−L特性の場合と同様な発光波形でレーザ光源1を発光させることができる。
【0053】
図8は、本実施例におけるレーザ光源の駆動電流と発光波形の関係を示す図であり、ここでは経時変化で微分効率Kが小さくなる場合を示している。
図7と同様に、第1の状態のI−L特性はレーザダイオード13の基準特性を示している。基準特性に対する各設定値は、バイアス電流、再生発光電流、第1高周波重畳電流、第1クリップレベルであり、これらの設定値が予めメモリ44に記憶されている。第1の状態では、これら各設定値に基づいてレーザ光源1を図中の発光波形で発光させる。第2の状態のI−L特性は、経時変化によって微分効率がKからK’に低下した場合を示している。なお、Ithには変化がないものとする。
【0054】
I−L特性が第1の状態から第2の状態に変化した場合には、第1の状態の設定値を基に第2の状態の設定値を演算で求めて補正する。ここでは微分効率Kが変化しているので、その変化量に応じて同一の発光波形を得るために高周波重畳電流とクリップレベルの値を変更すれば良く、これらを第2再生発光電流と第2クリップレベルとする。この補正により、第2の状態のI−L特性においても、第1の状態のI−L特性の場合と同様な発光波形でレーザ光源1を発光させることができる。なお、APC目標が同じであっても、微分効率Kの変化に応じて、バイアス電流を変化する必要がある。
【0055】
以上、I−L特性についてIthが変化する場合と微分効率が変化する場合とに分けて説明したが、これらが同時に起こる場合には組み合わせて各設定値を補正すればよい。また、光ディスク30が再生専用型のBDである場合にも同様に演算により設定値を補正すれば良い。
【0056】
図9は、レーザ光源のI−L特性が変化した場合の駆動電流を補正するフローチャートである。この処理は、ディスクローディング時の初期化処理の一部として実行する。
まず、S201においてシステム制御部40のI−L特性測定部43によりレーザ光源1のI−L特性を測定する。S202において、今回測定したI−L特性の結果を、レーザダイオード13の各設定値の基準となっている基準I−L特性と比較し、変化の有無を判定する。具体的な比較項目は閾値電流Ithと微分効率Kである。なお、I−L特性は温度によっても変化するので、レーザ光源1の経時変化を判定するには、I−L特性を比較する際の温度条件を揃えることが望ましい(この温度を標準温度とする)。温度条件が異なるときは、予め評価しておいたI−L特性の温度変化を勘案して比較する。
【0057】
判定の結果、両者のI−L特性の変化がない(所定の範囲内)場合には(S202でNo)、S205においてメモリ44に予め記録されている基準の設定値を読み出す。判定の結果、I−L特性の変化がある(所定の範囲を超える)場合には(S202でYes)、S203において、今回測定したI−L特性に適合するようにレーザダイオードの各設定値を補正する。
【0058】
S204においてメモリ44に記憶されている設定値を補正値で更新する。I−L特性測定時の温度情報もメモリ44に記憶しておく。あるいは、測定時に標準温度だった場合のみ設定値を更新するか、標準温度でのI−L特性における設定値に換算して更新する。なお、I−L特性の変化が温度変化のみに起因している場合はこの処理はスキップする。
【0059】
S206以降は第1の実施例(図6)と同様である。すなわち、S206においてクリップレベルを設定し、S207において高周波重畳電流を設定し、S208において再生発光電流を設定し、S209においてAPCの目標値を設定し、S210においてレーザ光源1を発光させる。
【0060】
なお、S201からS204までの一連の処理は、ディスクローディング毎には行わず、光ディスク装置の電源投入時に1回だけ行うように構成してもよい。ディスクローディング時のセットアップ時間を短縮することができ、情報記録面の保護にも有効である。
【実施例3】
【0061】
本発明の第3実施例を、図10を参照しながら説明する。本実施例は、光ディスク装置が動作中にレーザ光源1の周囲温度が上昇し、I−L特性が変化した場合に駆動電流を補正するものである。
本実施例における光ピックアップと光ディスク装置の構成は第1実施例と同様であり、また各構成要素の動作についても概ね第1実施例に準じるので詳細な説明は省略する。また、説明を簡便にするため、光ディスク30は記録可能型の多層BDであることが判っているものとする。
【0062】
図10は、本実施例において周囲温度に応じてレーザ光源の駆動電流を補正するフローチャートである。この処理は、光ディスク装置の動作中に一定期間毎に(あるいは随時)実行する。
【0063】
S301において、光ピックアップ31の温度検出部12によりレーザ周囲の現在温度を測定する。S302において、測定した現在温度が規定範囲内かどうかを判定する。即ち、基準のI−L特性を定めたときの標準温度と比較して、それらの温度差が所定値以下かどうかを判定する。現在温度が規定範囲内の場合には(S302でYes)変更処理を終了する。規定範囲を超える場合には(S302でNo)S303に進む。
S303において、メモリ44に予め記録されている基準設定値を読み出す。ここで読み出す設定値は標準温度(例えば25度)における設定値である。
【0064】
S304において、現在温度に適合するようにレーザダイオードの各設定値を演算する。この演算のために、予めI−L特性の温度変化、即ち、Ith及び微分効率変化の温度依存係数を評価してメモリ44に格納しておく。これらの温度依存係数を用いて、現在温度におけるI−L特性を演算し、得られたI−L特性に適合するようにレーザダイオードの各設定値を演算して補正する。なお、I−L特性の変化については、図7に示したように閾値電流Ithが変化する場合と、図8に示したように微分効率Kが変化する場合と、さらには両者とも変化する場合がある。第2実施例と同様に、Ithの変化に対しては再生発光電流とクリップレベルを変更し、微分効率Kの変化に対しては高周波重畳電流の振幅とクリップレベルを変更する。
【0065】
その後は第1実施例と同様に、S305においてクリップレベルを設定し、S306において高周波重畳電流を設定し、S307において再生発光電流を設定する。また、S308において設定を有効にしてレーザ発光条件を変更する。
【実施例4】
【0066】
本発明の第4実施例を、図11を参照しながら説明する。本実施例は、光ピックアップ内の電流クリップ部の配置を変更したものである。
図11は、本実施例における光ピックアップの構成図である。図1に示した第1実施例における光ピックアップとの違いは、電流クリップ部18を高周波重畳部15の直後に備えたことである。各構成要素の動作は概ね第1実施例に準じるので詳細な説明は省略する。
【0067】
光ディスク30の再生時には、高周波重畳部15が出力する高周波電流を電流クリップ部18を通して制限した後、再生発光電流供給部14が出力する再生発光電流に重畳し、バイアス電流供給部16が出力するバイアス電流と加算器20にて加算し、加算したレーザ駆動電流をレーザ光源1に供給して発光させる。
【0068】
一方、光ディスク30の記録時には、記録発光電流供給部17が出力する記録発光電流と前記バイアス電流とを加算し、加算したレーザ駆動電流をレーザ光源1に供給して発光させる。即ち、第1実施例のように電流クリップ部18を記録時に非動作にする必要がない。
本実施例の構成において、装着されたディスクの種類に対応する動作は第1実施例に準じ、I−L特性の変化に対応する動作は第2実施例に準じ、温度変化に対応する動作は第3実施例に準じる。
【0069】
なお、電流クリップ部18の配置については、更に他の構成も可能である。例えば、バイアス電流と再生発光電流と高周波重畳電流を加算する加算器の後段に電流クリップ部を備え、更にその後段に記録発光電流を加算する加算器を備える構成としても良い。その場合には、本実施例と同様に記録時に電流クリップ部18を非動作に変更する必要がなく、一方で、APC動作によってバイアス電流が大きく変化する場合においてもレーザ駆動電流を所定の値に確実に制限することが可能である。
【実施例5】
【0070】
本発明の第5実施例を、図12と図13を参照しながら説明する。本実施例は、高周波電流として方形波を使用する場合である。
図12は、本実施例における光ピックアップの構成図である。図1に示した第1実施例における光ピックアップとの違いは、高周波重畳部15ではなく特に方形波状の高周波電流を出力する方形高周波重畳部21と、方形高周波電流のトップレベルを制御するトップレベル変更部22を備えたことである。一方で、電流クリップ部18とクリップレベル変更部19を削除しているので、構成を簡略化することができる。他の構成要素の動作は概ね第1実施例に準じるので詳細な説明は省略する。
【0071】
方形高周波重畳部21とトップレベル変更部22は、周波数とデューティと出力電流のトップレベルを所定の値に設定した方形高周波電流を生成する。光ディスク30の再生時には、方形高周波重畳部21が出力する方形高周波電流を再生発光電流供給部14が出力する再生発光電流に重畳し、バイアス電流供給部16が出力するバイアス電流を加算器20にて加算し、加算したレーザ駆動電流をレーザ光源1に供給して発光させる。また、光ディスク30の記録時には、記録発光電流供給部17が出力する記録発光電流と前記バイアス電流とを加算し、加算したレーザ駆動電流をレーザ光源1に供給して発光させる。
【0072】
図13は、本実施例におけるレーザ光源の駆動電流と発光波形の関係を示す図であり、高周波電流として方形波を用いた場合を示している。第1発光波形は、前述の記録可能型ディスクに対応しており、第2発光波形は再生専用型ディスクに対応している。なお、レーザ光源1の駆動電流変化に対する発光パワー変化(スルーレート特性)を考慮して、第1発光波形および第2発光波形は方形の駆動電流に対して傾きのある波形として図示している。
【0073】
記録可能型ディスク、再生可能型ディスクともに方形高周波電流が閾値電流Ithを跨ぐように構成する。記録可能型ディスクに対しては、第1方形高周波電流と、再生発光電流と、バイアス電流とが加算された電流がレーザ光源1を駆動し、発光パワーの最大値が第1ピークパワーで制限された第1発光波形でレーザ発光する。またAPC目標に対応した平均パワーで発光するようにバイアス電流を与える。第1発光波形においては、第1方形高周波電流の第1トップレベルを所定の値に設定することでレーザ変調度を抑制可能であり、本実施例では2程度の値としている。発光波形のピークパワーを第1ピークパワーに抑制することで、記録可能型ディスクに記録されているデータに与えるダメージを低減し、再生光耐力を確保することができる。
【0074】
一方、再生専用型ディスクに対しては、第2方形高周波電流と、再生発光電流と、バイアス電流とが加算された電流がレーザ光源1を駆動し、発光パワーの最大値が第2ピークパワーとなる第2発光波形でレーザ発光する。またAPC目標に対応した平均パワーで発光するようにバイアス電流を与える。第2方形高周波電流は第1方形高周波電流と比較して、トップレベルが高く、デューティが小さく、周波数は同一である。第2発光波形においては、レーザ変調度は4程度である。前述したように、ある範囲内ではレーザ変調度が高いほどレーザノイズの抑制効果が高い。レーザ変調度を十分に高くすることで、ピット形状に起因してレーザへの戻り光量が大きくなる再生専用型ディスクに対してSNRを確保することができる。
【0075】
以上、本発明の各実施例を説明したが、特に複数の情報記録層を具備した光ディスクに対し、記録型光ディスクについては再生光耐力を確保すると共に、再生専用光ディスクについては戻り光ノイズを抑制することができる。また、経時変化や環境温度でレーザ光源のI−L特性が変化した場合においても、駆動電流を補正することで適切な発光波形で再生を行うことができる。
【0076】
本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。上記した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであって、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【0077】
また、上記の各構成は、それらの一部又は全部が、ハードウェアで構成されても、プロセッサでプログラムが実行されることにより実現されるように構成されてもよい。また、制御線や情報線は説明上必要と考えられるものを示しており、製品上必ずしも全ての制御線や情報線を示しているとは限らない。実際には殆ど全ての構成が相互に接続されていると考えてもよい。
【符号の説明】
【0078】
1・・・レーザ光源、7・・・対物レンズ、8・・・対物レンズアクチュエータ、9・・・検出レンズ、10・・・光検出器、11・・・フロントモニタ、12・・・温度検出部、13・・・レーザドライバ、14・・・再生発光電流供給部、15・・・高周波重畳部、16・・・バイアス電流供給部、17・・・記録発光電流供給部、18・・・電流クリップ部、19・・・クリップレベル変更部、21・・・方形高周波重畳部、22・・・トップレベル変更部、30・・・光ディスク、31・・・光ピックアップ、32・・・スピンドルモータ、33・・・スライダ機構、40・・・システム制御部、41・・・レーザドライバ設定部、42・・・ディスク判別部、43・・・I−L特性測定部、44・・・メモリ。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光ディスクにレーザ光を照射してデータを再生する光ディスク装置において、
レーザ光源と、該レーザ光源に駆動電流を供給するレーザドライバとを有する光ピックアップと、該光ピックアップを制御する制御部とを備え、
前記レーザドライバは、再生発光電流を供給する再生発光電流供給部と、該再生発光電流に高周波電流を重畳する高周波重畳部と、前記レーザ光源に供給する駆動電流の最大値を制限する電流クリップ部を有し、
前記制御部は、前記光ディスクの種類を判別するディスク判別部と、前記レーザドライバに対して駆動電流の設定を行うレーザドライバ設定部を有し、
前記光ディスクが記録可能なディスクの場合、前記レーザドライバ設定部は前記電流クリップ部に対し、駆動電流を制限するために第1のクリップレベルを設定し、
前記光ディスクが再生専用のディスクの場合、前記レーザドライバ設定部は前記電流クリップ部に対し、駆動電流を制限するために前記第1のクリップレベルよりも大きい第2のクリップレベルを設定することを特徴とする光ディスク装置。
【請求項2】
請求項1に記載の光ディスク装置において、
前記光ピックアップは、前記レーザ光源の出射パワーを検出するフロントモニタを備えるとともに、
前記レーザドライバは、前記駆動電流に加算するバイアス電流を供給するバイアス電流供給部を備え、
前記レーザドライバは前記フロントモニタの出力に応じて、前記レーザ光源の出射パワーが目標パワーになるよう前記バイアス電流を調整することを特徴とする光ディスク装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の光ディスク装置において、
前記レーザドライバに対して設定する駆動電流の値を記憶するメモリを備え、
前記レーザドライバ設定部は前記メモリを参照して、前記レーザドライバに対し、前記光ディスクの種類に応じて、前記クリップレベルと、前記再生発光電流と、前記高周波電流と、前記目標パワーを設定することを特徴とする光ディスク装置。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか1項に記載の光ディスク装置において、
前記制御部は、前記レーザ光源の駆動電流と発光量の関係を測定するI−L特性測定部を備え、
該I−L特性測定部による測定の結果、該レーザ光源の閾値電流または微分効率が基準の特性と異なる場合、前記レーザドライバ設定部は前記レーザドライバに対して、前記クリップレベルと、前記再生発光電流と、前記高周波電流と、前記目標パワーのうち少なくとも1つを補正して設定することを特徴とする光ディスク装置。
【請求項5】
請求項1ないし3のいずれか1項に記載の光ディスク装置において、
前記光ピックアップは、前記レーザ光源の周辺温度を測定する温度検出部を備え、
該温度検出部による測定の結果、周囲温度が規定温度の範囲を越えた場合、前記レーザドライバ設定部は前記レーザドライバに対して、前記クリップレベルと、前記再生発光電流と、前記高周波電流と、前記目標パワーのうち少なくとも1つを補正して設定することを特徴とする光ディスク装置。
【請求項6】
光ディスクにレーザ光を照射する光ピックアップにおいて、
レーザ光を発光するレーザ光源と、
該レーザ光源に駆動電流を供給するレーザドライバとを備え、
該レーザドライバは、再生発光電流を供給する再生発光電流供給部と、該再生発光電流に高周波電流を重畳する高周波重畳部と、前記レーザ光源に供給する駆動電流の最大値を所定のクリップレベルで制限する電流クリップ部と、該電流クリップ部におけるクリップレベルを所定の設定値に変更するクリップレベル変更部を有することを特徴とする光ピックアップ。
【請求項7】
請求項6に記載の光ピックアップにおいて、
前記電流クリップ部は、前記高周波重畳部にて重畳する前記高周波電流の最大値を所定のクリップレベルで制限することを特徴とする光ピックアップ。
【請求項8】
光ディスクにレーザ光を照射する光ピックアップにおいて、
レーザ光を発光するレーザ光源と、
該レーザ光源に駆動電流を供給するレーザドライバとを備え、
該レーザドライバは、再生発光電流を供給する再生発光電流供給部と、該再生発光電流に方形波状の高周波電流を重畳する方形高周波重畳部と、該高周波電流のトップレベルを制御するトップレベル変更部を有することを特徴とする光ピックアップ。
【請求項9】
光ピックアップにより光ディスクにレーザ光を照射してデータを再生する光ディスク再生方法において、
前記光ディスクの種類を判別するステップと、
前記光ピックアップのレーザ光源に供給する駆動電流として再生発光電流とこれに重畳する高周波電流を設定するステップと、
該駆動電流の最大値を制限するクリップレベルを設定するステップを備え、
前記光ディスクが記録可能なディスクの場合、駆動電流を制限するために第1のクリップレベルを設定し、
前記光ディスクが再生専用のディスクの場合、前記第1のクリップレベルよりも大きい第2のクリップレベルを設定することを特徴とする光ディスク再生方法。
【請求項10】
光ピックアップにより光ディスクにレーザ光を照射してデータを再生する光ディスク再生方法において、
前記光ディスクの種類を判別するステップと、
前記光ピックアップのレーザ光源に供給する駆動電流として再生発光電流とこれに重畳する方形波状の高周波電流を設定するステップと、
該高周波電流のトップレベルを制御するステップを備え、
前記光ディスクが記録可能なディスクの場合、第1のトップレベルを設定し、
前記光ディスクが再生専用のディスクの場合、前記第1のトップレベルよりも大きい第2のトップレベルを設定することを特徴とする光ディスク再生方法。
【請求項1】
光ディスクにレーザ光を照射してデータを再生する光ディスク装置において、
レーザ光源と、該レーザ光源に駆動電流を供給するレーザドライバとを有する光ピックアップと、該光ピックアップを制御する制御部とを備え、
前記レーザドライバは、再生発光電流を供給する再生発光電流供給部と、該再生発光電流に高周波電流を重畳する高周波重畳部と、前記レーザ光源に供給する駆動電流の最大値を制限する電流クリップ部を有し、
前記制御部は、前記光ディスクの種類を判別するディスク判別部と、前記レーザドライバに対して駆動電流の設定を行うレーザドライバ設定部を有し、
前記光ディスクが記録可能なディスクの場合、前記レーザドライバ設定部は前記電流クリップ部に対し、駆動電流を制限するために第1のクリップレベルを設定し、
前記光ディスクが再生専用のディスクの場合、前記レーザドライバ設定部は前記電流クリップ部に対し、駆動電流を制限するために前記第1のクリップレベルよりも大きい第2のクリップレベルを設定することを特徴とする光ディスク装置。
【請求項2】
請求項1に記載の光ディスク装置において、
前記光ピックアップは、前記レーザ光源の出射パワーを検出するフロントモニタを備えるとともに、
前記レーザドライバは、前記駆動電流に加算するバイアス電流を供給するバイアス電流供給部を備え、
前記レーザドライバは前記フロントモニタの出力に応じて、前記レーザ光源の出射パワーが目標パワーになるよう前記バイアス電流を調整することを特徴とする光ディスク装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の光ディスク装置において、
前記レーザドライバに対して設定する駆動電流の値を記憶するメモリを備え、
前記レーザドライバ設定部は前記メモリを参照して、前記レーザドライバに対し、前記光ディスクの種類に応じて、前記クリップレベルと、前記再生発光電流と、前記高周波電流と、前記目標パワーを設定することを特徴とする光ディスク装置。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか1項に記載の光ディスク装置において、
前記制御部は、前記レーザ光源の駆動電流と発光量の関係を測定するI−L特性測定部を備え、
該I−L特性測定部による測定の結果、該レーザ光源の閾値電流または微分効率が基準の特性と異なる場合、前記レーザドライバ設定部は前記レーザドライバに対して、前記クリップレベルと、前記再生発光電流と、前記高周波電流と、前記目標パワーのうち少なくとも1つを補正して設定することを特徴とする光ディスク装置。
【請求項5】
請求項1ないし3のいずれか1項に記載の光ディスク装置において、
前記光ピックアップは、前記レーザ光源の周辺温度を測定する温度検出部を備え、
該温度検出部による測定の結果、周囲温度が規定温度の範囲を越えた場合、前記レーザドライバ設定部は前記レーザドライバに対して、前記クリップレベルと、前記再生発光電流と、前記高周波電流と、前記目標パワーのうち少なくとも1つを補正して設定することを特徴とする光ディスク装置。
【請求項6】
光ディスクにレーザ光を照射する光ピックアップにおいて、
レーザ光を発光するレーザ光源と、
該レーザ光源に駆動電流を供給するレーザドライバとを備え、
該レーザドライバは、再生発光電流を供給する再生発光電流供給部と、該再生発光電流に高周波電流を重畳する高周波重畳部と、前記レーザ光源に供給する駆動電流の最大値を所定のクリップレベルで制限する電流クリップ部と、該電流クリップ部におけるクリップレベルを所定の設定値に変更するクリップレベル変更部を有することを特徴とする光ピックアップ。
【請求項7】
請求項6に記載の光ピックアップにおいて、
前記電流クリップ部は、前記高周波重畳部にて重畳する前記高周波電流の最大値を所定のクリップレベルで制限することを特徴とする光ピックアップ。
【請求項8】
光ディスクにレーザ光を照射する光ピックアップにおいて、
レーザ光を発光するレーザ光源と、
該レーザ光源に駆動電流を供給するレーザドライバとを備え、
該レーザドライバは、再生発光電流を供給する再生発光電流供給部と、該再生発光電流に方形波状の高周波電流を重畳する方形高周波重畳部と、該高周波電流のトップレベルを制御するトップレベル変更部を有することを特徴とする光ピックアップ。
【請求項9】
光ピックアップにより光ディスクにレーザ光を照射してデータを再生する光ディスク再生方法において、
前記光ディスクの種類を判別するステップと、
前記光ピックアップのレーザ光源に供給する駆動電流として再生発光電流とこれに重畳する高周波電流を設定するステップと、
該駆動電流の最大値を制限するクリップレベルを設定するステップを備え、
前記光ディスクが記録可能なディスクの場合、駆動電流を制限するために第1のクリップレベルを設定し、
前記光ディスクが再生専用のディスクの場合、前記第1のクリップレベルよりも大きい第2のクリップレベルを設定することを特徴とする光ディスク再生方法。
【請求項10】
光ピックアップにより光ディスクにレーザ光を照射してデータを再生する光ディスク再生方法において、
前記光ディスクの種類を判別するステップと、
前記光ピックアップのレーザ光源に供給する駆動電流として再生発光電流とこれに重畳する方形波状の高周波電流を設定するステップと、
該高周波電流のトップレベルを制御するステップを備え、
前記光ディスクが記録可能なディスクの場合、第1のトップレベルを設定し、
前記光ディスクが再生専用のディスクの場合、前記第1のトップレベルよりも大きい第2のトップレベルを設定することを特徴とする光ディスク再生方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2012−14818(P2012−14818A)
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−152955(P2010−152955)
【出願日】平成22年7月5日(2010.7.5)
【出願人】(501009849)株式会社日立エルジーデータストレージ (646)
【出願人】(509189444)日立コンシューマエレクトロニクス株式会社 (998)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年7月5日(2010.7.5)
【出願人】(501009849)株式会社日立エルジーデータストレージ (646)
【出願人】(509189444)日立コンシューマエレクトロニクス株式会社 (998)
【Fターム(参考)】
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