説明

光ディスク装置

【課題】 複数の信号記録層が設けられている光ディスクに記録されている信号の読み出し動作を行うことが出来る光ディスク装置を提供する。
【解決手段】 複数の信号記録層が設けられている光ディスクに記録されている信号の読み出し動作を行う光ピックアップ装置のフォーカス制御動作をメインビームが照射されるとともに4分割センサーにて構成されたメインビーム用受光部から得られるメインフォーカスエラー信号及びサブビームが照射されるとともに4分割センサーにて構成されたサブビーム用受光部から得られるサブフォーカスエラー信号とを利用して行い、フォーカス制御動作開始時サブフォーカスエラー信号の利得を低下させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ピックアップ装置から照射されるレーザー光によって光ディスクに記録されている信号の読み出し動作を行うように構成された光ディスク装置に関する。
【背景技術】
【0002】
光ピックアップ装置から照射されるレーザー光を光ディスクに設けられている信号記録層に照射することによって信号の読み出し動作を行うことが出来る光ディスク装置が普及している。
【0003】
信号記録層に記録されている信号の光ピックアップ装置による読み出し動作は、レーザーダイオードから放射されるレーザー光を信号記録層に照射させ、該信号記録層から反射されるレーザー光の変化を光検出器によって検出することによって行われている。
【0004】
レーザー光によって信号記録層に記録されている信号を読み出すためには、レーザー光を信号記録層に集光させるフォーカス制御動作を正確に行う必要がある。
【0005】
斯かるフォーカス制御動作を行う方法としては、種々あるが非点収差の発生を利用した非点収差法が一般的に行われている。しかしながらDVD規格の光ディスクのようにグルーブと呼ばれる溝が設けられている光ディスクに対して非点収差法によるフォーカス制御動作をしようすると、グルーブからの信号成分がフォーカスエラー信号に漏れこむことに起因してフォーカスエラー信号のゼロクロス位置とオンフォーカスの位置の間にずれが生じるという問題がある。
【0006】
斯かる問題を解決することが出来るフォーカス制御方法としてメインビームだけでなくサブビームも使用する差動非点収差法が採用されている。斯かるフォーカス制御動作に利用される差動非点収差法は、2つのサブビームが各々照射される2つのサブビーム用受光部とメインビームが照射されるメインビーム用受光部が組み込まれている光検出器を設け、この光検出器から得られる信号によりフォーカスエラー信号を生成させることによってフォーカス制御動作を行うように構成されているが、斯かる技術は、特許文献1に記載されている。
【0007】
また、最近では、信号記録層が1層ではなく2層設けられている光ディスクが製品化されており、斯かる光ディスクに設けられている信号記録層に記録されている信号の読み出し動作を行うことが出来る光ピックアップ装置も製品化されている。
【0008】
2層式の光ディスクに記録されている信号の読み出し動作を行う場合、読み出し動作が行われている方の信号記録層へのフォーカス制御動作が行われるが、読み出し動作が行われていない方の信号記録層からもレーザー光が反射されることになる。読み出し動作が行われていない方の信号記録層から反射されるレーザー光は、一般に迷光と呼ばれており、斯かる迷光が差動非点収差法によるフォーカス制御動作に使用されるフォーカスエラー信号を生成する光検出器に照射され、この迷光によってフォーカス制御動作を正確に行うことが出来ないという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2006−309858号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
図2は一般的な光ピックアップ装置の構成を示す要部の斜視図であり、同図を参照にして説明する。
【0011】
まず、光ピックアップ装置の構成について図1を参照して説明する。図2において、1はレーザー駆動回路から供給される駆動信号に対応した出力のレーザー光L1を放射するレーザーダイオードであり、レーザー光L1は断面が楕円状のレーザー光である。
【0012】
2は前記レーザーダイオード1から放射されるレーザー光L1が入射される回折格子であり、メインビームである0次光とサブビームである+1次光及び−1次光より成るレーザー光L2を生成出射する作用を成すものである。
【0013】
3は前記回折格子2から出射されるレーザー光L2が入射される偏光ビームスプリッタであり、光ディスクDに照射されるレーザー光L3を透過させるとともにレーザー光の出力を制御するべく設けられているフロントモニター用ダイオード4へ照射されるモニター用レーザー光L4を反射させる反射膜3aが設けられている。また、前記反射膜3aは後述するように光ディスクDから反射される戻り光を制御用レーザー光として反射させる作用も成すように構成されている。
【0014】
5は前記偏光ビームスプリッタ3の反射膜3aを透過したレーザー光L3が入射されるコリメートレンズであり、入射されるレーザー光L3を平行光であるレーザー光L5に変更する作用を成すものである。6は前記レーザー光L5が入射される反射ミラーであり、前記レーザー光L5の全てをレーザー光L6として光ディスクD方向へ反射させる作用を成すものである。斯かる反射ミラー6は、一般的には立ち上げミラーと呼ばれている。
【0015】
7は前記反射ミラー6から反射されたレーザー光L6が入射される1/4波長板であり、レーザー光L6の位相を1/4波長ずらせる作用を成すものである。8は前記1/4波長板7を透過したレーザー光L7が入射される対物レンズであり、光ディスクDに設けられている信号記録層に絞ったレーザー光L8として集光させる作用を成すものである。また、前記対物レンズ8は、光ディスクDの信号面に対して垂直方向への変位動作によってフォーカス制御動作を行うとともに光ディスクDの径方向への変位動作によってトラッキング制御動作を行うように構成されている。斯かる動作を行う対物レンズは、例えば4本の支持ワイヤーにてフォーカス制御方向及びトラッキング制御方向へ変位可能に設けられているが、斯かる構成は周知であるので、その説明は省略する。
【0016】
前記対物レンズ8によって光ディスクDの信号記録層に照射されたレーザー光L8は前記信号記録層から反射された戻り光として前記対物レンズ8に入射される。前記対物レンズ8に入射される戻り光は、前記1/4波長板7、反射ミラー6及びコリメートレンズ5を通して前記偏光ビームスプリッタ3に入射される。
【0017】
このようにして、前記偏光ビームスプリッタ3に入射される戻り光の位相は前記1/4波長板7を往復透過するため、即ち2回透過するため、周知のように1/2波長だけずれることになる。このようにして位相がずれた戻り光が前記偏光ビームスプリッタ3に入射されると、該偏光ビームスプリッタ3に形成されている反射膜3aによって制御用レーザー光L9として反射される。
【0018】
9は前記偏光ビームスプリッタ3の反射膜3aにて反射された制御用レーザー光L9が入射されるセンサーレンズであり、該制御用レーザー光L9をPDICと呼ばれる光検出器10に設けられている受光部に集光レーザー光L10として照射させる作用を有してい
る。また、前記センサーレンズ9にはシリンドリカルレンズ等が組み込まれており、非点収差法によるフォーカス制御動作を行うために非点収差を発生させるように構成されているが、斯かる点は周知であるので、その説明は省略する。
【0019】
図2に示した光ピックアップ装置において、レーザーダイオード1から放射されるレーザー光L1は、回折格子2、偏光ビームスプリッタ3、コリメートレンズ5、反射ミラー6及び1/4波長板7を通して対物レンズ8に入射され、該対物レンズ8の集光動作によって光ディスクDの信号記録層に照射されることになる。
【0020】
前記信号記録層に照射されたレーザー光L8は該信号記録層から反射されて戻り光として対物レンズ8に入射される。前記対物レンズ8に入射された戻り光は、1/4波長板7、反射ミラー6及びコリメートレンズ5を介して偏光ビームスプリッタ3に入射される。
【0021】
前記偏光ビームスプリッタ3に入射された戻り光は、該偏光ビームスプリッタ3に設けられている反射膜3aによって制御用レーザー光L9として反射される。このようにして得られる制御用レーザー光L9はセンサーレンズ9に入射されるとともに集光レーザー光L10として光検出器10に設けられている受光部に照射される。
【0022】
前記光検出器10に設けられている受光部としては、図3に示すように0次光であるメインビームMが照射されるとともに信号再生動作やフォーカス制御動作に使用されるメインビーム用受光部MD、+1次光である先行サブビームS1が照射されるとともにトラッキング制御動作に使用される先行サブビーム用受光部SD1及び−1次光である後行サブビームS2が照射されるとともにトラッキング制御動作に使用される後行サブビーム用受光部SD2にて構成されている。
【0023】
前記光検出器10には、前述したようにメインビーム用受光部MD、先行サブビーム用受光部SD1及び後行サブビーム用受光部SD2が設けられているが、その配列方向はトラッキング制御方向、即ち対物レンズ8にて集光されるスポットが光ディスクDの径方向に変位するとメインビーム用受光部MD、先行サブビーム用受光部SD1及び後行サブビーム用受光部SD2に照射されるメインビームM、先行サブビームS1及び後行サブビームS2が変位する方向と一致するように構成されている。
【0024】
また、前記メインビーム用受光部MD、先行サブビーム用受光部SD1及び後行サブビーム用受光部SD2は、図示したように各々4分割されたセンサーにて構成されている。そして、前記メインビーム用受光部MDを構成する全センサーA、B、C、Dに照射されるメインビームの光量に応じた信号を加算することによって光ディスクDに記録されている信号を再生信号として読み出すように構成されているが、斯かる動作は周知であり、その説明は省略する。
【0025】
そして、前記メインビーム用受光部MDを構成する4分割センサーの中の対角関係にあるセンサーから得られる信号を加算するとともにこの加算信号から他方の対角関係にあるセンサーから得られる信号を加算信号した信号を減算することによってフォーカスエラー信号を生成させ、このフォーカスエラー信号を利用してフォーカス制御動作を行うように構成されているが、斯かるフォーカス制御動作は非点収差法と呼ばれるフォーカス制御方法であり、その説明は省略する。
【0026】
斯かる非点収差法に対して、先行サブビーム用受光部SD1及び後行サブビーム用受光部SD2を各々構成する4分割センサーの中の対角関係にあるセンサーを加算するとともにこの加算信号から他方の対角関係にあるセンサーから得られる信号を加算した信号を減算することによってサブフォーカスエラー信号を生成し、これらのサブフォーカスエラー
信号と前記メインビーム用受光部MDを構成する4分割センサーから得られるメインフォーカスエラー信号とからフォーカスエラー信号を演算生成してフォーカス制御動作を行うように構成されている。斯かるフォーカス制御動作は差動非点収差法と呼ばれる制御方法である。
【0027】
次に前述した差動非点収差法によるフォーカス制御動作について説明する。斯かるフォーカス制御動作は、前述したようにメインビーム用受光部MD、先行サブビーム用受光部SD1及び後行サブビーム用受光部SD2から生成されるメインフォーカスエラー信号及びサブフォーカスエラー信号を使用して行われる。
【0028】
前記メインビーム用受光部MDを構成する4分割センサーの中の2つのセンサーA、Cから得られる信号を加算するとともにこの加算信号から2つのセンサーB、Dから得られる信号を加算した信号を減算させてメインのフォーカスエラー信号を得る。
【0029】
そして、先行サブビーム用受光部SD1を構成する4分割センサーの中の2つのセンサーI、Kから得られる信号を加算するとともにこの加算信号から2つのセンサーJ、Lから得られる信号を加算した信号を減算させて第1制御信号を得、また、後行サブビーム用受光部SD2を構成する4分割センサーの中の2つのセンサーE、Gから得られる信号を加算するとともにこの加算信号から2つのセンサーF、Hから得られる信号を加算した信号を減算させて第2制御信号を得、このようにして得られた第1制御信号と第2制御信号とを演算処理することによってサブのフォーカスエラー信号を得る。
【0030】
差動非点収差法におけるフォーカスエラー信号は、メインビーム用受光部MDから得られるメインフォーカスエラー信号から先行サブビーム用受光部SD1及び後行サブビーム用受光部SD2から得られるサブフォーカスエラー信号を減算することによって得るように構成されている。
【0031】
次に、斯かるフォーカスエラー信号の生成動作について図3に示した各センサー部の符号を参照にして説明する。メインのフォーカスエラー信号をMFEとすると、MFE=(A+C)−(B+D)となり、サブのフォーカスエラー信号をSFEとすると、SFE={(E+G)−(F+H)}+{(I+K)−(J+L)}と表される。
【0032】
そして、斯かる差動非点収差法におけるフォーカス制御動作は、差動プッシュプル信号DPPに基づいて行われるが、このDPP信号は、DPP=MFE−k×SFEとして得られる。ここで、kはメインビームの光強度とサブビームの光強度に基づいて決定される定数である。
【0033】
このようにサブビームとメインビームとを組み合わせたフォーカス制御動作を行う光ピックアップ装置が開発されている。
【0034】
また、前記レーザーダイオード1から放射されたレーザー光L1は、回折格子2によって回折されたレーザー光L2として偏光ビームスプリッタ3に入射されるが、その一部は反射膜3aによって反射されてモニター用レーザー光L4としてフロントモニター用ダイオード4へ照射される。
【0035】
前記フロントモニター用ダイオード4に照射されるモニター用レーザー光L4は、前記レーザーダイオード1から放射されるレーザー光L1の出力レベルに応じて変化することになる。従って、前記フロントモニター用ダイオード4によって生成されるモニター信号をレーザーダイオード1に駆動信号を供給するべく設けられている駆動回路に帰還させることによってレーザーダイオード1から放射されるレーザー光L1の出力を所定値になる
ように制御するレーザーサーボ動作を行うことが出来る。斯かるレーザーサーボ動作は、周知であり、その説明は省略する。
【0036】
前述したようにメインビーム用受光部MD、先行サブビーム用受光部SD1及び後行サブビーム用受光部SD2から得られる信号からフォーカスエラー信号を生成させ、このフォーカスエラー信号に基づいてフォーカス制御動作は行われるが、斯かるフォーカス制御動作は対物レンズ8を光ディスクDの信号面に対して垂直方向に変位させることによって行われる。
【0037】
図4は光ディスクDに設けられている第1信号記録層L0と第2信号記録層L1と対物レンズ8との関係を示すものであり、図示した状態は第1信号記録層L0にレーザー光L8をフォーカス制御動作によって集光させた状態を示すものである。即ち、斯かる状態では、第1信号記録層L0にレーザー光L8が集光されており、該第1信号記録層L0に設けられている信号トラックに対するトラッキング制御動作が行われて該第1信号記録層L0に記録されている信号の再生動作が行われることになる。
【0038】
第2信号記録層L1に記録されている信号の再生動作を行う場合には、対物レンズ8を図4に示した位置より下方へ変位させることによってレーザー光L8を該第2信号記録層L1に集光させることによって行われるが、斯かる各信号記録層に対するフォーカス制御動作は周知であるので、その説明は省略する。
【0039】
以上に説明したように光ピックアップ装置は構成されているが、次にフォーカス制御動作に対する迷光対策について説明する。
【0040】
従来の光ピックアップ装置における迷光による悪影響動作について説明する。図4に示すように第1信号記録層L0に記録されている信号の再生動作を行っているとき、該第1信号記録層L0には、回折格子2にて生成されたメインビームM、先行サブビームS1及び後行サブビームS2より成るレーザー光L8が照射された状態にある。
【0041】
そして、斯かるメインビームM、先行サブビームS1及び後行サブビームS2は、各々前記第1信号記録層L0から反射された後、対物レンズ8、1/4波長板7、反射ミラー6及びコリメートレンズ5を通して偏光ビームスプリッタ3の反射膜3aに入射される。このようにして入射されたレーザー光は、前述したように前記偏光ビームスプリッタ3の反射膜3aにて反射され、制御用レーザー光L9としてセンサーレンズ9に入射される。
【0042】
前記センサーレンズ9に入射された制御用レーザー光L9は、該センサーレンズ9の集光作用によって集光レーザー光L10として光検出器10に設けられている受光部に照射される。図3は、このようにして照射される集光レーザー光L10と受光部との関係を示すものであり、同図より明らかなようにメインビームM、先行サブビームS1及び後行サブビームS2が各々メインビーム用受光部MD、先行サブビーム用受光部SD1及び後行サブビーム用受光部SD2上に照射されることになる。
【0043】
このようにメインビームM、先行サブビームS1及び後行サブビームS2が各々メインビーム用受光部MD、先行サブビーム用受光部SD1及び後行サブビーム用受光部SD2上に照射される結果、第1信号記録層L0へのフォーカス制御動作及び該第1信号記録層L0に設けられている信号トラックに対するトラッキング制御動作が行われる。従って、前記第1信号記録層L0に記録されている信号の再生動作を行うことが出来る。
【0044】
前述したように対物レンズ8の集光動作によって光ディスクDの第1信号記録層L0にレーザー光L8が照射されるが、このレーザー光L8の中のメインビームMは、第2信号
記録層L1から迷光として、図4の破線で示すように反射される。このようにして、第2信号記録層L1から反射される迷光は、第1信号記録層L0から反射されるレーザー光と同様に対物レンズ8、1/4波長板7、反射ミラー6、コリメートレンズ5を通して偏光ビームスプリッタ3の反射膜3aに入射される。
【0045】
このようにして偏光ビームスプリッタ3の反射膜3aに入射された迷光は、該反射膜3aにて反射された後、センサーレンズ9を通して光検出器10に設けられている受光部に照射される。斯かる迷光は、第1信号記録層L0からの反射光のように集光されたレーザー光ではないので、該センサーレンズ9によって受光部に集光されることはない。
【0046】
図3は、前述したメインビーム用受光部MD、先行サブビーム用受光部SD1及び後行サブビーム用受光部SD2と迷光との関係を示すものであり、破線で示す輪Pの内側の部分が迷光ビームの照射部分である。
【0047】
この図より明らかなように迷光ビームが光検出器10に設けられているメインビーム用受光部MD、先行サブビーム用受光部SD1及び後行サブビーム用受光部SD2上に照射されることになる。
【0048】
メインビームである0次光とサブビームである+1次光及び−1次光は、回折格子2によって生成されるが、その光量比、即ち1つのサブビームとメインビームの光量比は、一般に1対15程度に設定されている。従って、第2信号記録層L1から迷光として反射されるサブビームの光量は、迷光として反射されるメインビームの光量と比較して十分に小さいので、フォーカス制御動作等に与える影響は無視することが出来る。
【0049】
また、メインビーム用受光部MDに照射されるメインビームMの光量は、迷光ビームの光量よりも十分大きいので、メインビーム用受光部MDによる信号生成動作、即ち第1信号記録層L0に記録されている信号の再生動作及びフォーカスエラー信号の生成動作等に悪影響を与えることはない。
【0050】
一方、前述したように先行サブビーム用受光部SD1及び後行サブビーム用受光部SD2にフォーカスエラー信号を生成するために照射される先行サブビームS1及び後行サブビームS2の光量は、メインビームMの光量より小さくなるように設定されている。そのため先行サブビーム用受光部SD1及び後行サブビーム用受光部SD2から得られる信号を増幅するべく設けられている増幅器の利得は、メインビーム用受光部MDから得られる信号を増幅するべく設けられている増幅器の利得より一般的には高くなるように設定されている。
【0051】
その結果、第2信号記録層L1から反射されるメインビームMから生成される迷光が先行サブビーム用受光部SD1及び後行サブビーム用受光部SD2上に照射されることによって受ける影響が大きくなる。即ち、先行サブビーム用受光部SD1及び後行サブビーム用受光部SD2から得られるフォーカスエラー信号に迷光の光強度に応じた信号が作用するので、正確なフォーカスエラー信号を得ることが出来ず、その結果フォーカス制御動作が不安定になるという問題がある。
【0052】
斯かる問題を解決する技術として特開平2007−42236号に記載されているように光検出器の形状等を変更して対応する方法が採用されている。
【0053】
次に差動非点収差法にてフォーカス制御動作を行うように構成された光ピックアップ装置におけるフォーカス制御開始動作について説明する。
【0054】
フォーカス制御動作は、対物レンズ8を例えば光ディスクDの表面から離れた位置から近づけながら行われるが、斯かるフォーカス開始のための制御動作はフォーカスエラー信号として検出されるS字カーブを利用して行われる。
【0055】
図5はフォーカス制御動作を行うために対物レンズ8を光ディスクDの信号面に対して垂直方向に変位させた場合に得られるフォーカスエラー信号を示す特性図である。図5において、(B)はメインビームMが照射されるメインビーム用受光部MDから得られるメインフォーカスエラー信号MFEを示す特性図である。また、(C)は先行サブビームS1及び後行サブビームS2が照射される先行サブビーム用受光部SD1及び後行サブビーム用受光部SD2から得られるサブフォーカスエラー信号SFEを示す特性図である。そして、(A)は前記メインフォーカスエラー信号MFEとサブフォーカスエラー信号SFEとから演算して得られる差動プッシュプル信号DPPを示す特性図である。
【0056】
図5に示す特性図は、2層式の光ディスクを使用した場合に得られる差動プッシュプル信号DPP、メインビーム用受光部MDから得られるメインフォーカスエラー信号MFE及び先行サブビーム用受光部SD1及び後行サブビーム用受光部SD2から得られるサブフォーカスエラー信号SFEを示すものである。
【0057】
これらの特性図より明らかなようにメインビーム用受光部MDから得られるメインフォーカスエラー信号MFEに現れるS字カーブは、MS1及びMS2の2つであるのに対し、先行サブビーム用受光部SD1及び後行サブビーム用受光部SD2から得られるサブフォーカスエラー信号SFEに現れるS字カーブは、SS1及びSS2に加えてSS3の3つになる。
【0058】
斯かるS字カーブSS3は、前述した迷光によって発生するものであり、斯かるサブフォーカスエラー信号SFEに現れるS字カーブSS3に起因して差動プッシュプル信号DPPに現れるS字カーブは、DS1、DS2及びDS3の3つになる。
【0059】
多層の光ディスクに設けられている各信号記録層に記録されている信号の読み出し動作を行うことが出来るように構成された光ピックアップ装置では、信号の読み出し動作を行う信号記録層をフォーカス制御動作開始時に得られるS字カーブの数を数えることによって行うように構成されている。
【0060】
そして、差動非点収差法によるフォーカス制御動作を行うように構成された光ピックアップ装置では、図5の(A)に示す差動プッシュプル信号DPPから得られるS字カーブの数を利用してフォーカス制御動作を開始させるようにされているが、前述したように迷光に起因するS字カーブが生成されるのでフォーカス制御動作を正常に開始させることが出来ないという問題が発生している。
【0061】
斯かる問題を解決する方法として特許文献1に記載されているようにフォーカス制御動作の開始時は非点収差法を用いて所望の信号記録層を検出し、信号記録層が検出されると差動非点収差法によるフォーカス制御動作を開始させる技術が開発されている。しかしながら、斯かる技術はフォーカス制御方法を切り換える必要があるので、フォーカス制御システムが複雑になるという問題がある。
【0062】
本発明は、斯かる問題を解決することが出来る光ディスク装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0063】
本発明は、複数の信号記録層が設けられている光ディスクに記録されている信号の読み
出し動作を行う光ピックアップ装置のフォーカス制御動作をメインビームが照射されるとともに4分割センサーにて構成されたメインビーム用受光部から得られるメインフォーカスエラー信号及びサブビームが照射されるとともに4分割センサーにて構成されたサブビーム用受光部から得られるサブフォーカスエラー信号とを利用して行うように構成し、フォーカス制御動作開始時サブフォーカスエラー信号の利得を低下させるようにしたことを特徴とするものである。
【0064】
また、本発明は、光ディスクの信号記録層に対応して検出されるメインフォーカスエラー信号に含まれるS字信号の数とサブフォーカスエラー信号に含まれるS字信号の数とが一致するまでサブフォーカスエラー信号の利得を低下させるようにしたことを特徴とするものである。
【0065】
そして、本発明は、所望の信号記録層に対するフォーカス制御動作を行う状態になったとき、サブフォーカスエラー信号の利得を定常値に変更するようにしたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0066】
本発明の光ディスク装置は、光ピックアップ装置のフォーカス制御動作をメインビームが照射されるとともに4分割センサーにて構成されたメインビーム用受光部から得られるメインフォーカスエラー信号及びサブビームが照射されるとともに4分割センサーにて構成されたサブビーム用受光部から得られるサブフォーカスエラー信号とを利用して行うように構成された差動非点収差法によるフォーカス制御動作開始時サブフォーカスエラー信号の利得を低下させるようにしたので、迷光による影響を受けることなく所望の信号記録層に対するフォーカス制御動作を正確に開始させることが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】本発明に係る光ディスク装置に組み込まれるフォーカスエラー信号の生成回路の一実施例を示す説明図である。
【図2】本発明に係る光ピックアップ装置の構成を示す要部の斜視図である。
【図3】光ピックアップ装置に組み込まれる光検出器とレーザー光との関係を説明するための図である。
【図4】光ディスクとレーザー光との関係を示す図である。
【図5】フォーカスエラー信号を説明するための特性図である。
【発明を実施するための形態】
【0068】
レーザーダイオードから放射されるレーザー光を光ディスクに設けられている複数の信号記録層に集光させるフォーカス制御動作を正確に開始させることが出来る装置を提供するものである。
【実施例1】
【0069】
図1は本発明の光ピックアップ装置を構成する光検出器10に組み込まれているメインビーム用受光部MD、先行サブビーム用受光部SD1及び後行サブビーム用受光部SD2から得られる信号に基づいてフォーカス制御動作を行うためのフォーカスエラー信号を生成するフォーカスエラー信号生成回路の一実施例である。
【0070】
図1において、11は4分割センサーにて構成されたメインビーム用受光部MDを構成するセンサーA及びCから得られる信号を加算するメインビーム用第1加算回路、12は前記メインビーム用受光部MDを構成するセンサーB及びDから得られる信号を加算するメインビーム用第2加算回路、13は前記第1加算回路11の出力信号から第2加算回路12の出力信号を減算するメインビーム用減算回路であり、メインフォーカスエラー信号
MFEを出力するように構成されている。
【0071】
14は4分割センサーにて構成された先行サブビーム用受光部SD1を構成するセンサーI及びKから得られる信号を加算する先行サブビーム用第1加算回路、15は前記先行サブビーム用受光部SD1を構成するセンサーJ及びLから得られる信号を加算する先行サブビーム用第2加算回路、16は前記先行サブビーム用第1加算回路14の出力信号から先行サブビーム用第2加算回路15の出力信号を減算する先行サブビーム用減算回路である。
【0072】
17は4分割センサーにて構成された後行サブビーム用受光部SD2を構成するセンサーE及びGから得られる信号を加算する後行サブビーム用第1加算回路、18は前記後行サブビーム用受光部SD2を構成するセンサーF及びHから得られる信号を加算する後行サブビーム用第2加算回路、19は前記後行サブビーム用第1加算回路17の出力信号から後行サブビーム用第2加算回路18の出力信号を減算する後行サブビーム用減算回路である。
【0073】
20は前記先行サブビーム用減算回路16の出力信号と後行サブビーム用減算回路19の出力信号とを加算するサブビーム用加算回路であり、サブフォーカスエラー信号SFEを出力するように構成されている。21は前記サブビーム用加算回路20の出力信号であるサブフォーカスエラー信号SFEが入力される利得制御回路であり、該サブフォーカスエラー信号SFEのレベルを制御するべく利得が可変設定されるように構成されている。
【0074】
22は前記メインビーム用減算回路13の出力信号であるメインフォーカスエラー信号MFEから前記利得制御回路21を介して得られるサブフォーカスエラー信号SFEを減算するとともにその信号レベル差に応じたフォーカスエラー信号を差動プッシュプル信号DPPとして出力するフォーカスエラー信号生成用減算回路である。
【0075】
斯かる回路構成によれば、メインフォーカスエラー信号MFEは、MFE=(A+C)−(B+D)として前記メインビーム用減算回路13から生成されるとともにフォーカスエラー信号生成用減算回路22の+側入力端子に入力される。また、サブフォーカスエラー信号SFEは、SFE={(E+G)−(F+H)}+{(I+K)−(J+L)}として前記サブビーム用加算回路20から生成されるとともに利得制御回路21によって増幅された後にフォーカスエラー信号生成用減算回路22の−側入力端子に入力される。
【0076】
前記利得制御回路21の利得をkとすると、前記フォーカスエラー信号生成用減算回路22からフォーカスエラー信号として出力される差動プッシュプル信号DPPは、DPP=MFE−k×SFEの演算処理に基づいて出力されることになる。
【0077】
23は光ピックアップ装置に組み込まれている対物レンズ8をフォーカス方向へ変位させるフォーカシングコイル、24は前記フォーカシングコイル23に対して駆動信号を供給するフォーカシングコイル駆動回路である。25は前記フォーカスエラー信号生成用減算回路22からフォーカスエラー信号として出力される差動プッシュプル信号DPPが入力されるピックアップ制御回路であり、前記フォーカシングコイル駆動回路24に制御信号を供給するように構成されている。
【0078】
斯かる構成によれば、光検出器10に組み込まれているとともに4分割センサーにて構成されたメインビーム用受光部MDから得られる信号に基づいてメインフォーカスエラー信号MFEが生成され、4分割センサーにて構成された先行サブビーム用受光部SD1及び後行サブビーム用受光部SD2から得られる信号に基づいてサブフォーカスエラー信号SFEが生成される。
【0079】
そして、前記メインフォーカスエラー信号MFEからサブフォーカスエラー信号SFEをk倍した信号を減算処理することによってフォーカスエラー信号である差動プッシュプル信号DPPがピックアップ制御回路25に入力され、その入力される信号に基づいて生成されるフォーカス制御信号がフォーカシングコイル駆動回路24に供給される。
【0080】
その結果、前記フォーカシングコイル駆動回路24から供給される駆動信号に基づいてフォーカシングコイル23による対物レンズ8の駆動制御動作が行われるので、差動非点収差法によるフォーカス制御動作を行うことが出来る。
【0081】
前述したように差動非点収差法によるフォーカス制御動作を行うことが出来るが、次に本発明の要旨について説明する。
【0082】
差動非点収差法によるフォーカス制御動作を行うように構成された光ピックアップ装置において、所望の信号記録層に対するフォーカス制御動作を行う場合、例えば2層目の信号記録層にレーザー光を集光させる場合に対物レンズ8を変位させると、図5の(B)に示すメインビームMにて生成されるメインフォーカスエラー信号MFEが得られるとともに図5の(C)に示すサブビームS1及びS2にて生成されるサブフォーカスエラー信号SFEが得られる。
【0083】
図5の(B)に示すメインフォーカスエラー信号MFEから図5の(C)に示すサブフォーカスエラー信号SFEを減算処理すると図5の(A)に示すフォーカスエラー信号である差動プッシュプル信号DPPが得られる。
【0084】
このように図5の(A)に示すフォーカスエラー信号である差動プッシュプル信号DPP信号には、DS1、DS2及びDS3の3つのS字カーブが現れる。この中のDS3で示されるS字カーブは、前述したように他の信号記録層から反射されるメインビームである迷光と呼ばれるレーザー光によって生成されるものであり、フォーカス制御動作を行うことが出来ないという問題が発生することになる。
【0085】
サブフォーカスエラー信号SFEは図5の(C)に示すような波形の信号として得られるが、迷光によって生成されるS字カーブSS3のレベルは、サブビームによって生成されるS字カーブSS1及びSS2のレベルより小さくなるという特性がある。
【0086】
本発明は、斯かる特性を利用して前述した問題を解決するものであり、フォーカス制御動作を開始させるときに利得制御回路21の利得を制御することが出来るようにしたことを特徴とするものである。
【0087】
即ち、ピックアップ制御回路25にメインビーム用減算回路13の出力信号であるメインフォーカスエラー信号MFE及び利得制御回路21の出力信号であるサブフォーカスエラー信号SFEをk倍した信号を入力させ、両信号から得られるS字カーブの数が一致するように利得制御回路21の利得を低下させるように構成されている。
【0088】
サブフォーカスエラー信号SFEをk倍するべく設けられている利得制御回路21の利得を低下させると該利得制御回路21の出力信号のレベルが低下することになる。その結果、ピックアップ制御回路25に入力されるサブフォーカスエラー信号SFEをk倍した信号のレベルが低下することになる。
【0089】
このようにして信号レベルが低下されたサブフォーカスエラー信号SFEが入力されるピックアップ制御回路25は、迷光によって生成されるS字カーブSS3のレベルが検出
されないレベルまで低下するように利得制御回路21の利得を低下させる制御動作を行うように構成されている。
【0090】
斯かるピックアップ制御回路25による利得制御回路21に対する利得制御動作を行うと、利得制御回路21から出力されるサブフォーカスエラー信号SFEからは、2つのS字カーブ、即ちSS1及びSS2のみが検出されることになる。斯かる動作が行われる結果、フォーカスエラー信号生成用減算回路22の出力信号である差動プッシュプル信号DPPの特性を示す図5の(A)に示すS字カーブDS3のレベルが低下せしめられる。
【0091】
前記S字カーブDS3は、前述したように迷光に起因して生成されるものであり、利得制御回路21に対する利得制御動作を行うことによってS字カーブDS3を削除することが出来る。
【0092】
差動非点収差法によるフォーカス制御動作を開始させる場合に前述した利得制御回路21に対する利得制御動作を行うとフォーカスエラー信号である差動プッシュプル信号DPPに迷光に起因するS字カーブが生成されないので、信号記録層の数に合致した数のS字カーブを得ることが出来る。従って、フォーカス制御動作の開始時に所望の信号記録層を検出することが出来るのでフォーカス制御動作を開始させることが出来る。
【0093】
前述した制御動作によって所望の信号記録層へのフォーカス制御動作を開始させることが出来るが、斯かる状態になったときピックアップ制御回路25によって利得制御回路21に対する利得復帰制御動作が行われる。即ち、利得制御回路21の利得を差動非点収差法によるフォーカス制御動作を行うために適した値に復帰させるための制御動作が行われる。
【0094】
このようにフォーカス制御動作開始に伴う所望の信号記録層に対するフォーカス制御動作開始時に低下されていた利得制御回路21の利得を復帰させるようにしたので、差動非点収差法によるフォーカス制御動作を支障なく行うことが出来る。
【0095】
尚、本実施例では、利得制御回路21の出力信号であるサブフォーカスエラー信号SFEに含まれる迷光に起因して生成されるS字カーブが検出されないレベルになるように前記利得制御回路21の利得を制御するようにしたが、フォーカスエラー信号生成用減算回路22の出力信号である差動プッシュプル信号DPPに現れる迷光に起因して生成されるS字カーブDS3が検出されないレベルになるように前記利得制御回路21の利得を制御するように構成することも出来る。
【産業上の利用可能性】
【0096】
本発明の実施例では、2つの信号記録層が設けられている光ディスクについて説明したが、更に多くの信号記録層が設けられている光ディスクを使用する光ディスク装置に実施することも出来る。
【符号の説明】
【0097】
1 レーザーダイオード
2 回折格子
8 対物レンズ
10 光検出器
21 利得制御回路
23 フォーカシングコイル
24 フォーカシングコイル駆動回路
25 ピックアップ制御回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の信号記録層が設けられている光ディスクに記録されている信号の読み出し動作を行う光ピックアップ装置のフォーカス制御動作をメインビームが照射されるとともに4分割センサーにて構成されたメインビーム用受光部から得られるメインフォーカスエラー信号及びサブビームが照射されるとともに4分割センサーにて構成されたサブビーム用受光部から得られるサブフォーカスエラー信号とを利用して行うように構成された光ディスク装置において、フォーカス制御動作開始時サブフォーカスエラー信号の利得を低下させるようにしたことを特徴とする光ディスク装置。
【請求項2】
光ディスクの信号記録層に対応して検出されるメインフォーカスエラー信号に含まれるS字信号の数とサブフォーカスエラー信号に含まれるS字信号の数とが一致するまでサブフォーカスエラー信号の利得を低下させるようにしたことを特徴とする請求項1に記載の光ディスク装置。
【請求項3】
所望の信号記録層に対するフォーカス制御動作を行う状態になったとき、サブフォーカスエラー信号の利得を定常値に変更するようにしたことを特徴とする請求項1に記載の光ディスク装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−227946(P2011−227946A)
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−94189(P2010−94189)
【出願日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【出願人】(504464070)三洋オプテックデザイン株式会社 (315)
【Fターム(参考)】