説明

光ディスク装置

【課題】光ディスクの記録層数の判別を誤ることを防止することができる光ディスク装置を提供する。
【解決手段】光ディスク装置は、球面収差補正用可動レンズを、「光ビームが入射する側から最も遠い記録層で球面収差が略最良になる位置から、前記光ビームが入射する側から最も遠い記録層以外の或る記録層で球面収差が略最良になる位置に近づくようにずらした位置」(例えば、光ビームが入射する側から2番目に遠い記録層で球面収差が略最良になる位置)に固定し、フォーカスエラー信号のS字数を検出する(ステップS10及びステップS30参照)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ディスク装置に関し、特に片面に三つ以上の記録層を有する光ディスクに対応可能な光ディスク装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、CD(Compact Disc)、DVD(Digital Versatile Disc)、BD(Blu-ray Disc:登録商標)等の各種光ディスクが普及している。
【0003】
そして、片面に三つ以上の記録層を有する光ディスクとしては、現在、2010年6月に策定されたBDXL規格に準拠したBDが存在している。
【0004】
片面に複数の記録層を有する片面多層光ディスクに対応可能な光ディスク装置では、光ディスクの再生や記録の前に、光ディスクの記録層数を判別し、記録層毎に各種調整を実施する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2007/114030号
【特許文献2】特開2008−130176号公報
【特許文献3】特開2007−317254号公報
【特許文献4】特許第4224506号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の一般的な光ディスク装置では、光ディスクの記録層数を判別する際に、光ピックアップの光学系中に配置される球面収差補正用可動レンズを、光ビームが入射する側から最も遠い記録層L0で球面収差が略最良になる位置にして、光ピックアップの光学系中に配置される対物レンズを光ディスクに徐々に近づけてフォーカスエラー信号のS字数を検出していた。ここで、従来の一般的な光ディスク装置がBDXL規格に準拠したBD−R_TL(3層追記型BD)の記録層数を判別する際のフォーカスエラー信号のタイムチャートを図6に示す。
【0007】
図6に示すフォーカスエラー信号は、球面収差補正用可動レンズを記録層L0で球面収差が略最良になる位置に移動させているときに得られる信号である。このため、光ピックアップから出射された光ビームの焦点位置が記録層を通過する際に得られるS字は検出し易いが、光ビームが入射する側に最も近い記録層L2を通過する際に得られるS字は検出し難くなっている。したがって、光ディスクの記録層数の判別を誤るおそれがあった。
【0008】
尚、特許文献2では、光ディスクの記録層数を判別する際に、光ピックアップから出射された光ビームの焦点位置が一つの記録層を通過する度に、球面収差補正用可動レンズの位置を変更することによって、S字数検出の精度を向上させているが、制御が非常に複雑になるという問題を有している。
【0009】
本発明は、上記の状況に鑑み、光ディスクの記録層数の判別を誤ることを防止することができる光ディスク装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために本発明に係る光ディスク装置は、光ディスクに光を照射すると共に、前記光ディスクからの戻り光を光検出器で検出する光ピックアップと、前記光検出器から出力される電気信号を処理してフォーカスエラー信号を生成するフォーカスエラー信号生成手段と、前記光ピックアップの光学系中に配置される球面収差補正用可動レンズの位置を調整制御する可動レンズ位置調整手段と、前記フォーカスエラー信号のS字数に基づいて前記光ディスクの記録層数を判別する判別手段とを備え、片面に三つ以上の記録層を有する光ディスクに対応可能な光ディスク装置であって、前記判別手段が、所定の種類の光ディスクの記録層数を判別するために前記フォーカスエラー信号のS字数を検出している期間中、前記可動レンズ位置調整手段は、前記球面収差補正用可動レンズを、光ビームが入射する側から最も遠い記録層で球面収差が略最良になる位置から、前記光ビームが入射する側から最も遠い記録層以外の或る記録層で球面収差が略最良になる位置に近づくようにずらした位置に固定する構成(第1の構成)とする。
【0011】
このような構成によると、三つ以上の記録層を有する光ディスクの記録層数を判別するときに、光ビームが入射する側に近い記録層のS字を従来よりも検出し易くなるため、光ディスクの記録層数の判別を誤ることを防止することができる。また、フォーカスエラー信号のS字数の検出時に、球面収差補正用可動レンズの位置が固定されているので、制御が複雑にならない。
【0012】
また、上記第1の構成の光ディスク装置において、前記判別手段が、所定の種類の光ディスクの記録層数を判別するために前記フォーカスエラー信号のS字数を検出している期間中、前記可動レンズ位置調整手段は、前記球面収差補正用可動レンズを、光ビームが入射する側から2番目に遠い記録層で球面収差が略最良になる位置に固定する構成(第2の構成)とすることが望ましい。
【0013】
また、上記第1または上記第2の構成の光ディスク装置において、前記所定の種類の光ディスクがBDである構成(第3の構成)としてもよい。
【0014】
また、上記第1〜3のいずれかの構成の光ディスク装置において、前記判別手段が前記フォーカスエラー信号のS字数を検出するときに、前記光ピックアップの光学系中に配置される対物レンズが前記光ディスクに近づく方向に移動する光ディスク装置であって、前記判別手段は、最初に検出した前記フォーカスエラー信号のS字と2番目に検出した前記フォーカスエラー信号のS字との間隔が閾値以上であれば、検出した前記フォーカスエラー信号のS字数から1を引いた値を前記光ディスクの記録層数とし、最初に検出した前記フォーカスエラー信号のS字と2番目に検出した前記フォーカスエラー信号のS字との間隔が閾値未満であれば、検出した前記フォーカスエラー信号のS字数を前記光ディスクの記録層数とするようにしてもよい。
【0015】
また、上記第1〜3のいずれかの構成の光ディスク装置において、前記判別手段が前記フォーカスエラー信号のS字数を検出するときに、前記光ピックアップの光学系中に配置される対物レンズが前記光ディスクから遠ざかる方向に移動する光ディスク装置であって、前記判別手段は、最後に検出した前記フォーカスエラー信号のS字と最後から2番目に検出した前記フォーカスエラー信号のS字との間隔が閾値以上であれば、検出した前記フォーカスエラー信号のS字数から1を引いた値を前記光ディスクの記録層数とし、最後に検出した前記フォーカスエラー信号のS字と最後から2番目に検出した前記フォーカスエラー信号のS字との間隔が閾値未満であれば、検出した前記フォーカスエラー信号のS字数を前記光ディスクの記録層数とするようにしてもよい。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る光ディスク装置によると、光ディスクの記録層数の判別を誤ることを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の一実施形態に係る光ディスク装置の概略構成を示す図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る光ディスク装置が備える光ピックアップの概略構成を示す図である。
【図3】光検出器の受光領域の例を示す図である。
【図4】本発明の一実施形態に係る光ディスク装置において起動時に実行されるBDの記録層数判別処理のフローチャートである。
【図5】本発明の一実施形態に係る光ディスク装置がBD−R_TLの記録層数を判別する際のフォーカスエラー信号のタイムチャートである。
【図6】従来の一般的な光ディスク装置がBD−R_TLの記録層数を判別する際のフォーカスエラー信号のタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の実施形態について図面を参照して以下に説明する。本発明の一実施形態に係る光ディスク装置の概略構成を図1に示す。
【0019】
本発明の一実施形態に係る光ディスク装置は、CD、DVD、及びBD(BDXL規格に準拠したBDを含む)に対応可能な光ディスク装置であって、光ピックアップ1と、RFアンプ31と、DSP(Digital Signal Processor)32と、再生処理回路33と、出力回路34と、CPU(Central Processing Unit)41と、ドライバ42と、表示部43と、操作部44と、送りモータ51と、スピンドルモータ52とを備えている。
【0020】
光ピックアップ1は、光ディスク2に光ビームを照射して、光ディスク2に記録された音声情報、映像情報等の各種情報の読み取りを行う。この光ピックアップ1は、波長780nm帯の赤外レーザビーム(CD用レーザビーム)、波長650nm帯の赤色レーザビーム(DVD用レーザビーム)、及び波長405nm帯の青色レーザビーム(BD用レーザビーム)を光ディスク2に照射することができる。なお、光ピックアップ1内部の詳細については後述する。
【0021】
光ピックアップ1により得られた音声情報、及び映像情報は、RFアンプ31、DSP32、再生処理回路33、及び出力回路34により音声及び映像に変換され、それぞれ不図示のスピーカ及びモニタから出力される。RFアンプ31は、光ピックアップ1からの音声信号や映像信号等を増幅する。DSP32及び再生処理回路33は、RFアンプ31からの信号に対して、再生のための各種情報処理(例えば映像処理等)を施す。出力回路34は、再生処理回路33からの信号を、不図示のスピーカ及びモニタに出力するためにD/A変換処理等を行う。
【0022】
また、DSP32は、光検出器20(図2参照)から出力される信号をもとに演算処理を行い、フォーカスエラー信号、フォーカスサーボ信号、トラッキングエラー信号等を生成する。
【0023】
CPU41は、操作部44からの情報を受け付けてDSP32に伝送すると共に、DSP32からの情報を表示部43に伝送する。
【0024】
ドライバ42は、DSP32からの指示に基づいて、送りモータ51及びスピンドルモータ52の動作を制御する。送りモータ51は、光ピックアップ1を光ディスク2の径方向に移動させる。スピンドルモータ52は、光ディスク2を回転方向に駆動する。
【0025】
また、ドライバ42は、DSP32からの指示に基づいて、ピックアップ装置1内のアクチュエータ21及びBEX(Beam Expander)モータ22(図2参照)の動作も制御する。
【0026】
次に、本発明の一実施形態に係る光ディスク装置が備える光ピックアップ1の概略構成を図2に示す。
【0027】
光ピックアップ1は、第一光源11aと、第二光源11bと、ダイクロプリズム12と、コリメートレンズ13と、ビームスプリッタ14と、立ち上げミラー15と、1/4波長板16と、コリメートレンズ17と、対物レンズ18と、検出レンズ19と、光検出器20と、アクチュエータ21と、BEXモータ22とを備えている。
【0028】
第一光源11aは、波長780nm帯の赤外レーザビーム(CD用レーザビーム)と、波長650nm帯の赤色レーザビーム(DVD用レーザビーム)とを出射できる2波長一体型LDである。第二光源11bは、405nm帯の青色レーザビーム(BD用レーザビーム)を出射できるLDである。
【0029】
ダイクロプリズム12は、第一光源11aから出射されるレーザビームを透過し、第二光源11bから出射されるレーザビームを反射する。そして、第一光源11a及び第二光源11bから出射される光ビームの光軸を一致させる。ダイクロプリズム12において透過又は反射されたレーザビームは、コリメートレンズ13に送られる。
【0030】
コレメータレンズ13は、ダイクロプリズム12から送られてくるレーザビームを平行光に変換する。コリメートレンズ13で平行光とされたレーザビームは、ビームスプリッタ14に送られる。
【0031】
ビームスプリッタ14は、入射するレーザビームを分離する光分離素子として機能し、コリメートレンズ13から送られてきた光ビームを透過して、光ディスク2側へと導くとともに、光ディスク2で反射された反射光を反射して光検出器20側へと導く。ビームスプリッタ14を透過したレーザビームは、立ち上げミラー15に送られる。
【0032】
立ち上げミラー15は、ビームスプリッタ14を透過してきた光ビームを反射して光ディスク2へと導く。立ち上げミラー15は、ビームスプリッタ14から送られてくるレーザビームの光軸に対して45°傾いた状態となっており、立ち上げミラー15で反射されたレーザビームの光軸は、光ディスク2の記録面と略直交する。
【0033】
1/4波長板16は、直線偏光を円偏光に変換し、円偏光を直線偏光に変換する機能を有し、立ち上げミラー15が反射した直線偏光のレーザビームを円偏光に変換してコリメートレンズ17に送り、光ディスク2から反射される円偏光のレーザビームを直線偏光に変換して、立ち上げミラー15に送る。
【0034】
コリメートレンズ17は、BEXモータ22によって光軸方向(図2の上下方向)に移動可能となっている。コリメートレンズ17の移動に応じて、コリメートレンズ17から出射されるレーザビームの状態を発散光としたり、収束光としたりすることができる。そして、このようにコリメートレンズ17から出射されるレーザビームの状態を変更することで、球面収差の補正を行うことができる。コリメートレンズ17から出射されるレーザビームは、対物レンズ18に送られる。
【0035】
対物レンズ18は、コリメートレンズ17から送られてくるレーザビームを光ディスク2の記録面上に集光させる。また、対物レンズ18は後述するアクチュエータ21によって、例えば、図2の上下方向及び左右方向に移動可能とされており、フォーカスサーボ信号及びトラッキングサーボ信号に基づいてその位置が制御される。
【0036】
光ディスク2で反射された反射光は、対物レンズ18、コリメートレンズ17、1/4波長板16の順に通過し、立ち上げミラー15で反射された後、更にビームスプリッタ14で反射されて、検出レンズ19によって光検出器20上に設けられる受光素子へと集光される。
【0037】
光検出器20は、フォトダイオード等の受光素子を用いて受光した光情報を電気信号に変換して、DSP32(図1参照)に出力する。光検出器20は例えば図3に示すように四分割された受光領域A〜Dを備えており、領域毎に個別に光電変換を行って電気信号を出力することが可能である。この場合、DSP32は、領域Aの電気信号と領域Cの電気信号と加算したものから領域Bの電気信号と領域Dの電気信号と加算したものを引くことでフォーカスエラー信号を生成することができ、領域A〜Dの電気信号を加算することでフォーカスサム信号を生成することができる。
【0038】
アクチュエータ21は、ドライバ42(図1参照)で生成され出力された対物レンズ駆動信号に従って、対物レンズ18を光ディスク2の径方向に移動させる。
【0039】
アクチュエータ21は、対物レンズ18を光ディスク2の記録面に沿う方向に移動させるトラッキング動作の他に、対物レンズ18から出射されるレーザビームの光軸が揺動するように対物レンズ18を傾動させるチルト動作や、対物レンズ18を光ディスク2に対して接近離反するように移動させるフォーカス動作も行うことができる。
【0040】
以上のように構成された本発明の一実施形態に係る光ディスク装置において起動時に実行されるBDの記録層数判別処理について図4を用いて説明する。
【0041】
本発明の一実施形態に係る光ディスク装置は、光ディスク2が装置内に挿入された場合に、光ディスク2の種類を判別し、その判別結果がBDである場合に、図4に示すフロー動作を開始する。
【0042】
図4に示すフロー動作が開始されると、BEXモータ22は、DSP32からの指示に基づくドライバ42の制御に従って、コリメートレンズ17をレーザ光が入射する側から最も遠い記録層L0の次にレーザ光が入射する側から遠い記録層L1で球面収差が略最良になる位置に移動させる(ステップS10)。なお、記録層L1で球面収差が略最良になる位置は、装置の製造工程等で予め計測し、例えば、DSP32が内蔵している不揮発性メモリに予め記憶しておくとよい。
【0043】
ステップS10に続くステップS20において、アクチュエータ21は、DSP32からの指示に基づくドライバ42の制御に従って、対物レンズ18が光ディスク2に近づく方向への対物レンズ18の移動を開始する。
【0044】
ステップS20に続くステップS30において、DSP32は、フォーカスエラー信号のS字数を検出する。フォーカスエラー信号のS字数を検出方法としては、例えば、DSP32は、フォーカスエラー信号がS字検出用第1閾値を上回り、その後S字検出用第2閾値(<S字検出用第1閾値)を下回った場合に、S字が一つ存在することを認識して、フォーカスエラー信号のS字数を検出する方法が挙げられる。
【0045】
ステップS30に続くステップS40において、DSP32は、対物レンズ18のステップS20での移動開始位置からの移動量が所定量に達したか否かを判定する。
【0046】
対物レンズ18のステップS20での移動開始位置からの移動量が所定量に達していなければ(ステップS40のNO)、ステップS30に戻る。これにより、対物レンズ18の移動及びフォーカスエラー信号のS字数の検出が継続される。
【0047】
一方、対物レンズ18のステップS20での移動開始位置からの移動量が所定量に達すれば(ステップS40のYES)、DSP32は、フォーカスエラー信号のS字数の検出を終了し、アクチュエータ21は、DSP32からの指示に基づくドライバ42の制御に従って、対物レンズ18をステップS20での移動開始位置に復帰させる(ステップS50)。
【0048】
ステップS50に続くステップS60において、DSP32は、最初に検出したS字と2番目に検出したS字との間隔(時間間隔)が閾値以上であるか否かを判定する。なお、当該閾値は、各種BDの隣接する記録層間の距離に対応する間隔(時間間隔)の最大値よりも大きく、各種BDのレーザ光が入射する側ディスク表面とレーザ光が入射する側に最も近い記録層との距離に対応する間隔(時間間隔)の最小値よりも小さくなるように設定するとよい。また、当該閾値は、例えば、DSP32が内蔵している不揮発性メモリに予め記憶しておくとよい。
【0049】
最初に検出したS字と2番目に検出したS字との間隔(時間間隔)が閾値以上であれば(ステップS60のYES)、レーザ光が入射する側ディスク表面の反射に対応するS字が検出されているので、DSP32は、検出したS字数から1を引いた値を記録層数とし、その記録層数を例えばDSP32が内蔵しているメモリに記憶させ(ステップS70)、フロー動作を終了する。
【0050】
一方、最初に検出したS字と2番目に検出したS字との間隔(時間間隔)が閾値未満であれば(ステップS60のNO)、レーザ光が入射する側ディスク表面の反射に対応するS字が検出されていないので、DSP32は、検出したS字数を記録層数とし、その記録層数を例えばDSP32が内蔵しているメモリに記憶させ(ステップS80)、フロー動作を終了する。
【0051】
以上のような動作により、三つ以上の記録層を有する光ディスクの記録層数を判別するときに、光ビームが入射する側に近い記録層のS字を従来よりも検出し易くなるため、光ディスクの記録層数の判別を誤ることを防止することができる。また、フォーカスエラー信号のS字数の検出時に、コリメートレンズ17の位置が固定されているので、制御が複雑にならない。
【0052】
ここで、本発明の一実施形態に係る光ディスク装置がBD−R_TLの記録層数を判別する際のフォーカスエラー信号のタイムチャートを図5に示す。
【0053】
図5に示すフォーカスエラー信号は、球面収差補正用可動レンズを記録層L1で球面収差が略最良になる位置に移動させているときに得られる信号である。このため、光ピックアップから出射された光ビームの焦点位置が記録層L0を通過する際に得られるS字は従来(図6参照)よりも若干検出し難くなるが、光ビームが入射する側に最も近い記録層L2を通過する際に得られるS字は従来(図6参照)よりも格段に検出し易くなっている。したがって、光ディスクの記録層数の判別を誤ることを防止することができる。また、本発明の一実施形態に係る光ディスク装置によって、4層BDについても記録層数を正しく判別できることを確認している。また、原理的には、5層以上の光ディスクについても、本発明を適用することで、光ディスクの記録層数の判別を誤ることを防止することができる。
【0054】
なお、本実施形態では、対物レンズ18が光ディスク2に近づく方向に対物レンズ18を移動させながら、フォーカスエラー信号のS字数を検出したが、これとは逆に、対物レンズ18が光ディスク2から遠ざかる方向に対物レンズ18を移動させながら、フォーカスエラー信号のS字数を検出するようにしてもよい。対物レンズ18が光ディスク2から遠ざかる方向に対物レンズ18を移動させながら、フォーカスエラー信号のS字数を検出する場合には、ステップS60を、最後に検出したS字と最後から2番目に検出したS字との間隔(時間間隔)が閾値以上であるか否かを判定するステップに変更すればよい。
【0055】
また、本実施形態では、コリメートレンズ17を記録層L1で球面収差が略最良になる位置に移動させたが、本発明はこれに限定されることはなく、コリメートレンズ17を、記録層L0で球面収差が略最良になる位置から、L0以外の或る記録層で球面収差が略最良になる位置に近づくようにずらした位置に移動されるようにしてもよい。但し、記録層L0で球面収差が略最良になる位置からのずれ量が大きいと、記録層L0を通過するときのフォーカスエラー信号のS字が検出し難くなることに留意して、ずれ量を決定する必要がある。
【0056】
また、本実施形態では、光ピックアップ1の光学系中に配置される球面収差補正用可動レンズとしてコリメートレンズ17を用いたが、本発明はこれに限定されることはなく、例えば、球面収差補正用可動レンズがビームエキスパンダを構成する複数のレンズの一部であるような光ディスク装置等にも本発明を適用することができる。
【符号の説明】
【0057】
1 光ピックアップ
2 光ディスク
11a 第一光源
11b 第二光源
12 ダイクロプリズム
13 コリメートレンズ
14 ビームスプリッタ
15 立ち上げミラー
16 1/4波長板
17 コリメートレンズ
18 対物レンズ
19 検出レンズ
20 光検出器
21 アクチュエータ
22 BEXモータ
31 RFアンプ
32 DSP
33 再生処理回路
34 出力回路
41 CPU
42 ドライバ
43 表示部
44 操作部
51 送りモータ
52 スピンドルモータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光ディスクに光を照射すると共に、前記光ディスクからの戻り光を光検出器で検出する光ピックアップと、
前記光検出器から出力される電気信号を処理してフォーカスエラー信号を生成するフォーカスエラー信号生成手段と、
前記光ピックアップの光学系中に配置される球面収差補正用可動レンズの位置を調整制御する可動レンズ位置調整手段と、
前記フォーカスエラー信号のS字数に基づいて前記光ディスクの記録層数を判別する判別手段とを備え、片面に三つ以上の記録層を有する光ディスクに対応可能な光ディスク装置であって、
前記判別手段が、所定の種類の光ディスクの記録層数を判別するために前記フォーカスエラー信号のS字数を検出している期間中、
前記可動レンズ位置調整手段は、前記球面収差補正用可動レンズを、光ビームが入射する側から最も遠い記録層で球面収差が略最良になる位置から、前記光ビームが入射する側から最も遠い記録層以外の或る記録層で球面収差が略最良になる位置に近づくようにずらした位置に固定することを特徴とする光ディスク装置。
【請求項2】
前記判別手段が、所定の種類の光ディスクの記録層数を判別するために前記フォーカスエラー信号のS字数を検出している期間中、
前記可動レンズ位置調整手段は、前記球面収差補正用可動レンズを、光ビームが入射する側から2番目に遠い記録層で球面収差が略最良になる位置に固定する請求項1に記載の光ディスク装置。
【請求項3】
前記所定の種類の光ディスクがBDである請求項1または請求項2に記載の光ディスク装置。
【請求項4】
前記判別手段が前記フォーカスエラー信号のS字数を検出するときに、前記光ピックアップの光学系中に配置される対物レンズが前記光ディスクに近づく方向に移動する光ディスク装置であって、
前記判別手段は、
最初に検出した前記フォーカスエラー信号のS字と2番目に検出した前記フォーカスエラー信号のS字との間隔が閾値以上であれば、検出した前記フォーカスエラー信号のS字数から1を引いた値を前記光ディスクの記録層数とし、
最初に検出した前記フォーカスエラー信号のS字と2番目に検出した前記フォーカスエラー信号のS字との間隔が閾値未満であれば、検出した前記フォーカスエラー信号のS字数を前記光ディスクの記録層数とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の光ディスク装置。
【請求項5】
前記判別手段が前記フォーカスエラー信号のS字数を検出するときに、前記光ピックアップの光学系中に配置される対物レンズが前記光ディスクから遠ざかる方向に移動する光ディスク装置であって、
前記判別手段は、
最後に検出した前記フォーカスエラー信号のS字と最後から2番目に検出した前記フォーカスエラー信号のS字との間隔が閾値以上であれば、検出した前記フォーカスエラー信号のS字数から1を引いた値を前記光ディスクの記録層数とし、
最後に検出した前記フォーカスエラー信号のS字と最後から2番目に検出した前記フォーカスエラー信号のS字との間隔が閾値未満であれば、検出した前記フォーカスエラー信号のS字数を前記光ディスクの記録層数とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の光ディスク装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−256382(P2012−256382A)
【公開日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−127479(P2011−127479)
【出願日】平成23年6月7日(2011.6.7)
【出願人】(000201113)船井電機株式会社 (7,855)
【Fターム(参考)】