説明

光データリンク及び光出力制御方法

【課題】過渡チャープと誘導ブリルアン散乱とを抑制可能な光データリンク及び光出力制御方法を提供すること。
【解決手段】ホスト装置との間で電気信号を送受する光データリンク1であって、バイアス電流の供給をバイアス回路20から受けて光信号を出力するLD2と、LD2に高周波変調電流を供給するLDドライバ24と、LD2に低周波電流を供給可能な低周波信号回路28と、LDドライバ24と低周波信号回路28とを制御する第1制御回路26と、を備え、第1制御回路26は、高周波変調電流の供給停止を指示する信号を受けると、高周波変調電流の供給停止を指示する第1の指示信号と低周波電流の供給を指示する第2の指示信号とを、LDドライバ24と低周波信号回路28とにそれぞれ出力する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光データリンクと光出力制御方法とに関する。
【背景技術】
【0002】
非特許文献1及び非特許文献2には、過渡チャープを抑制することによって比較的長い伝送距離を実現するCML(Chirp managed directly modulated laser diode)と称する技術が開示されている。CML技術においては、比較的高いバイアス電流と比較的小さな変調電流とを用いてLDを駆動することにより過渡チャープを抑制する。そして、CML技術においては、狭帯域光フィルタを用いて光信号のゼロ成分をカットすることにより必要な消光比を確保する。
【非特許文献1】Y. Matsui, et al.,“Chirp-Managed Directly Modulated Laser (CML)”, IEEE PHOTONICS TECHNOLOGYLETTERS, p.385, Vol.18, No.2, January 15, 2006
【非特許文献2】D. Mahgerefteh, etal., “Error-free 250 km transmission in standard fibre using compact 10 Gbit/schirp-managed directly modulated lasers (CML) at 1550 nm”, ELECTRONICS LETTERS,28th April 2005, Vol.41, No.9
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、CML技術を用いた場合、データ(変調)がOFFになると、スペクトル幅の減少したピークパワーの強い光信号が狭帯域光フィルタを通過して光ファイバに入射する。このため、光ファイバ内において誘導ブリルアン散乱の発生が懸念される。そこで本発明の目的は、過渡チャープと誘導ブリルアン散乱とを抑制可能な光データリンク及び光出力制御方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、光信号を出力するレーザダイオードと、前記レーザダイオードにバイアス電流を供給するバイアス回路と、前記レーザダイオードに高周波変調電流を供給するレーザダイオードドライバと、前記バイアス回路に低周波信号を出力可能な低周波信号回路と、前記レーザダイオードドライバと前記低周波信号回路とを制御する制御回路と、を備え、前記バイアス回路は、前記低周波信号回路からの前記低周波信号を前記バイアス電流に重畳し、この重畳後のバイアス電流を前記レーザダイオードに供給し、前記制御回路は、前記高周波変調電流の供給停止を指示する信号を受けると、該高周波変調電流の供給停止を指示する第1の指示信号と前記低周波信号の出力を指示する第2の指示信号とを、前記レーザダイオードドライバと前記低周波信号回路とにそれぞれ出力する、ことを特徴とする。
【0005】
更に、本発明では、前記光信号をモニタするためのフォトダイオードと、前記フォトダイオードによりモニタされる前記光信号の最大値と最小値の差の時間変化率が、前記レーザダイオードに前記高周波変調電流が入力されていないことを示す範囲内にあるか否かを検知する検知回路とを更に備え、前記検知回路は、前記レーザダイオードに前記高周波変調電流が入力されていないことを示す範囲内に前記時間変化率があることを検知した時に、前記供給を停止する信号を前記制御回路に出力するのが好ましい。
【0006】
或いは、本発明では、前記レーザダイオードからの光信号を、該光信号の所定成分を低減して光ファイバに導入する光フィルタと、前記光フィルタからの戻り光をモニタするためのフォトダイオードと、前記フォトダイオードによりモニタされる前記戻り光の時間変化率が、前記レーザダイオードに前記高周波変調電流が入力されていないことを示す範囲内にあるか否かを検知する検知回路とを更に備え、前記検知回路は、前記レーザダイオードに前記高周波変調電流が入力されていないことを示す範囲内に前記時間変化率があることを検知した時に、前記供給を停止する信号を前記制御回路に出力するのが好ましい。
【0007】
また、本発明は、高周波変調電流の供給に応じて光信号を出力するレーザダイオードの光出力制御方法であって、前記レーザダイオードへの前記高周波変調電流の供給を停止する旨の指示をホスト装置から受ける第1ステップと、前記第1ステップの後、前記高周波変調電流の前記レーザダイオードへの供給の停止と、前記レーザダイオードを変調する振幅を有する低周波信号を、バイアス電流に重畳して前記レーザダイオードへ供給すること、を行う第2ステップとを有することを特徴とする。
【0008】
また、本発明は、高周波変調電流の供給に応じて光信号を出力するレーザダイオードの光出力制御方法であって、前記光信号の最大値と最小値の差の時間変化率を算出する第1ステップと、前記時間変化率が、前記レーザダイオードに高周波変調電流が入力されていないことを示す範囲内にあるか否かを検知する第2ステップと、前記時間変化率が前記範囲内にあると検知された場合、前記レーザダイオードを変調する振幅を有する低周波信号を、バイアス電流に重畳して前記レーザダイオードへ供給する第3ステップとを含む、ことを特徴とする。
【0009】
また、本発明は、光フィルタを介して光ファイバ内に導入する光信号を、高周波変調電流の供給に応じて出力するレーザダイオードの光出力制御方法であって、前記光フィルタからの戻り光の時間変化率を算出する第1ステップと、前記時間変化率が、前記レーザダイオードに高周波変調電流が入力されていないことを示す範囲内にあるか否かを検知する第2ステップと、前記時間変化率が前記範囲内にあると検知された場合、前記レーザダイオードを変調する振幅を有する低周波信号を、バイアス電流に重畳して前記レーザダイオードへ供給する第3ステップとを含む、ことを特徴とする。
【0010】
従って、本発明によれば、バイアス回路からレーザダイオードにバイアス電流が供給されている状態においてレーザダイオードドライバからレーザダイオードに高周波変調電流が入力されない場合、低周波電流がレーザダイオードに供給される。このため、レーザダイオードに高周波変調電流が入力されない場合でも光ファイバ内における誘導ブリルアン散乱の発生が回避可能となる。よって、過渡チャープと誘導ブリルアン散乱とが抑制可能となる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、過渡チャープと誘導ブリルアン散乱とを抑制可能な光データリンク及び光出力制御方法が提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、図面を参照して、本発明に係る好適な実施形態(第1〜第3の実施形態)について詳細に説明する。なお、図面の説明において、可能な場合には、同一要素には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0013】
(第1の実施形態)
まず、第1の実施形態に係る光データリンク1について説明する。図1は、光データリンク1の構成を示す図である。光データリンク1は、LD2(LD:Laser Diode)、スプリッタ4、第1PD6、光フィルタ8、第2PD10(PD:Photo Diode)、第1TEC12(TEC:Thermoelectoric Cooler)、第1サーミスタ14、第2TEC16及び第2サーミスタ18を備えるCMLである。
【0014】
光データリンク1は、ホスト装置との間で電気信号を送受する。光データリンク1は、光ファイバFに光信号を送信する送信部と、光ファイバFからの光信号を受信する受信部とを備える。なお、以下においては、光データリンク1の送信部を説明する。
【0015】
LD2は、例えばDFB(Distributed Feedback)レーザであり、バイアス回路20によって供給されるバイアス電流によって光信号を出力する。LD2から出力される光信号は、スプリッタ4及び光フィルタ8を介して光ファイバFに導入される。スプリッタ4は、LD2と光ファイバFとの間の光路上に配置されている。この光路上には、スプリッタ4及び光フィルタ8が配置されており、LD2に近い側にスプリッタ4が配置され、光ファイバFに近い側に光フィルタ8が配置されている。スプリッタ4は、LD2からの光信号を分岐して光フィルタ8と第1PD6とに導く。スプリッタ4は、光フィルタ8の入射部8aからの戻り光を第2PD10に導く。
【0016】
第1PD6は、LD2から出力されスプリッタ4により分岐される光信号をモニタする。第1PD6は、モニタ結果を示す電流信号を第1I−V回路22に出力する。光フィルタ8は、LD2と光ファイバFとの間の光路上に配置されており、LD2からの光信号を、所定成分だけ低減して光ファイバFに導入する。光フィルタ8は、LD2からの光信号のうち「0」成分のみを低減する狭帯域光フィルタである。なお、LD2からの光信号には「0」成分と「1」成分とが含まれている。第2PD10は、光フィルタ8からの戻り光をモニタする。第2PD10は、モニタ結果を示す電流信号を第2I−V回路34に出力する。
【0017】
第1TEC12及び第2TEC16は、LD2及び光フィルタ8のそれぞれの温度を調整するための熱電変換素子である。第1TEC12及び第2TEC16は、TECドライバ30により制御される。
【0018】
第1サーミスタ14及び第2サーミスタ18は、LD2及び光フィルタ8のそれぞれの温度をモニタするための素子である。第1サーミスタ14は、LD2の近傍に配置されており、第2サーミスタ18は、光フィルタ8の近傍に配置されている。
【0019】
光データリンク1は、バイアス回路20、第1I−V回路22、LDドライバ24、第1制御回路26、低周波信号回路28、TECドライバ30、第2制御回路32及び第2I−V回路34を更に備える。バイアス回路20は、過渡チャープを抑制するため比較的大きなバイアス電流をLD2に供給する。第1I−V回路22は、第1PD6からの電流信号(第1PD6による光信号のモニタ結果を示す信号)を電圧信号に変換してバイアス回路20に出力する。バイアス回路20は、第1I−V回路22からの電圧信号に基づいて、LD2からの光出力が一定となるようにLD2にバイアス電流を供給する。
【0020】
LDドライバ24は、第1制御回路26の制御に応じて(又は第1制御回路26を介さずホスト装置から直接受ける指示に応じて)LD2に高周波変調電流を供給する。この高周波変調電流は、LD2の出力する光信号にデータ(「0」成分と「1」成分とにより構成されるデジタルデータ)を重畳するためのものである。
【0021】
第1制御回路26は、LDドライバ24を制御する。第1制御回路26は、高周波変調電流の出力停止(変調OFF)を指示する信号をホスト装置から受けると、この変調OFFを指示するための指示信号をLDドライバ24に出力する。LDドライバ24は、変調OFFの指示信号を第1制御回路26から受けると、LD2への高周波変調電流の供給を停止する。
【0022】
第1制御回路26は、低周波信号回路28を制御する。第1制御回路26は、変調OFFを指示する信号をホスト装置から受けると、例えば周波数が数kHz乃至数十MHzでデューティ比が50%程度で、レーザダイオードを十分にON/OFFできる程度の振幅(レーザダイオードを変調する振幅)を有する低周波信号をバイアス回路20に出力するよう指示するための指示信号を、低周波信号回路28に出力する。低周波信号回路28は、第1制御回路26の制御に応じて、低周波信号をバイアス回路20に出力する。バイアス回路20は、低周波信号回路28から低周波信号を受けると、この低周波信号をバイアス電流に重畳し、この重畳後のバイアス電流(低周波電流という)をLD2に供給する。
【0023】
このように、光データリンク1の第1制御回路26は、LD2に高周波変調電流が入力されていない場合にのみ低周波信号を供給するよう低周波信号回路28を制御する。従って、高周波変調電流がバイアス電流に重畳されている場合、低周波電流はバイアス電流に重畳されない。高周波変調電流と低周波電流とがバイアス電流に同時に重畳されると、この低周波電流に起因して光信号の各信号成分(「0」及び「1」の各成分)のピーク周波数に揺らぎが生じ、この周波数の揺らぎに伴って消光比に揺らぎが生じるが、光データリンク1によれば、このような光信号の各信号成分のピーク周波数の揺らぎが回避可能となる。
【0024】
第1制御回路26は、TECドライバ30を制御する。第1制御回路26は、変調OFFの指示信号をホスト装置から受けると、LD温度(LD2の温度)の制御方法の切り替えをTECドライバ30に指示するための指示信号をTECドライバ30に出力する。
【0025】
TECドライバ30は、第2サーミスタ18のモニタ結果を用いて第2TEC16を駆動することによって、光フィルタ8の温度を所定の温度に維持する。そして、TECドライバ30は、二種類の制御方法(第1及び第2の制御方法)に基づいて第1TEC12を駆動することによりLD温度を制御する。
【0026】
TECドライバ30は、LDドライバ24からLD2に高周波変調電流が入力されている場合には、第2制御回路32の制御に応じてLD温度を制御し(第1の制御方法)、LDドライバ24からLD2に高周波変調電流が入力されていない場合には、第1サーミスタ14のモニタ結果を用いてLD温度を制御する(第2の制御方法)。また、TECドライバ30は、第1制御回路26の制御に応じてLD温度の制御方法を、第1の制御方法と第2の制御方法との間で切り替える。
【0027】
TECドライバ30は、第2の制御方法を用いてLD温度を制御する場合、LD温度を一定に維持するよう第1TEC12を制御するための制御信号を第1サーミスタ14のモニタ結果を用いて作成する。具体的には、TECドライバ30は、LD温度の制御方法が第1の制御方法から第2の制御方法に切り替えられた場合に、LD温度をこの切り替え時のLD温度に維持するよう第1TEC12を制御するための制御信号を作成する。そして、TECドライバ30は、この制御信号を第1TEC12に出力する。
【0028】
第2制御回路32は、TECドライバ30が第1の制御方法を用いてLD温度を制御する場合、光フィルタ8からの戻り光の光量が一定となるようにTECドライバ30を制御するための制御信号を、第2I−V回路34を介して入力される第2PD10のモニタ結果を用いて作成する。そして、第2制御回路32は、この制御信号をTECドライバ30に出力する。第2I−V回路34は、第2PD10からの電流信号(光フィルタ8からの戻り光のモニタ結果を示す信号)を電圧信号に変換して第2制御回路32に出力する。
【0029】
次に、図2を参照して、光データリンク1の動作を説明する。図2は、光データリンク1の動作を説明するためのフローチャートである。まず、LD2にはLDドライバ24から高周波変調電流が供給されており、LDドライバ24は、第1の制御方法を用いてLD温度を制御しているとする。
【0030】
そして、第1制御回路26は、高周波変調電流のLD2への供給を停止する旨の指示(変調OFFの指示)をホスト装置から受けると(ステップS1)、変調OFFを指示する指示信号と、LD温度の制御方法を第1の制御方法から第2の制御方法に切り替えるよう指示する指示信号と、低周波信号の供給を指示する指示信号とを、LDドライバ24と、TECドライバ30と、低周波信号回路28とにそれぞれ出力する(ステップS2)。ステップS2の後、LDドライバ24は変調OFFし、TECドライバ30はLD温度制御方法を第1の制御方法から第2の制御方法に切り替える。そして、低周波信号回路28はバイアス回路20に低周波信号を出力し、バイアス回路20は、低周波信号回路28からの低周波信号をバイアス信号に重畳し、この重畳後のバイアス信号(低周波電流)をLD2に供給する。
【0031】
以上説明したように、光データリンク1によれば、過渡チャープを抑制するためバイアス回路20からLD2に比較的大きなバイアス電流が供給されている状態において、TECドライバ30が高周波変調電流の供給停止の指示を第1制御回路26から受けると、高周波変調電流のLD2への供給が停止され、低周波電流がバイアス回路20からLD2に供給される。このため、高周波変調電流のLD2への供給が停止されても光ファイバF内における誘導ブリルアン散乱の発生が回避できる。よって、過渡チャープと誘導ブリルアン散乱とが抑制可能となる。
【0032】
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態に係る光データリンク1aについて説明する。図3は、光データリンク1aの構成を示す図である。光データリンク1aには、光データリンク1の構成に第1検知回路36が更に設けられている。第1検知回路36は、ピーク/ボトムホールド回路36aと第1比較回路36bとを有する。第1I−V回路22は、第1PD6からの電流信号(第1PD6のモニタ結果を示す信号)を電圧信号に変換してバイアス回路20とピーク/ボトムホールド回路36aとに出力する。
【0033】
ピーク/ボトムホールド回路36aは、第1I−V回路22からの電圧信号の最大値と最小値を、例えば所定の時間間隔毎に測定し、これらの最大値と最小値の差分の時間変化率(単位時間当たりの差分の変化値であり、以下、第1の時間変化率という)を算出する。この第1の時間変化率は、第1PD6によりモニタされるLD2からの光信号の光量の最大値と最小値の差分の時間変化率に対応している。ピーク/ボトムホールド回路36aは、上記の算出結果を第1比較回路36bに出力する。
【0034】
第1比較回路36bは、ピーク/ボトムホールド回路36aからの算出結果に基づいて、第1の時間変化率が、LD2に高周波変調電流が入力されていないことを示す範囲内にあるか否かを検知する。なお、LD2に高周波変調電流が入力されていない場合、第1の時間変化率は略ゼロとなる。第1比較回路36bは、第1の時間変化率が、LD2に高周波変調電流が入力されていないことを示す範囲内にあると検知した場合、すなわち、LD2に高周波変調電流が入力されていないと検知した場合、この検知結果を示す検知信号を第1制御回路26に出力する。
【0035】
第1制御回路26は、第1比較回路36bから上記の検知信号を受けると、LD温度の制御方法の切り替え(第1の制御方法から第2の制御方法への切り替え)を指示する指示信号と、低周波信号の出力を指示する指示信号とを、TECドライバ30と、低周波信号回路28とにそれぞれ出力する。
【0036】
このように、光データリンク1aの第1制御回路26は、LD2に高周波変調電流が入力されていない場合にのみ低周波信号を供給するよう低周波信号回路28を制御する。従って、高周波変調電流がバイアス電流に重畳されている場合には、低周波電流はバイアス電流に重畳されない。高周波変調電流と低周波電流とがバイアス電流に同時に重畳されると、この低周波電流に起因して光信号の各信号成分(「0」及び「1」の各成分)のピーク周波数に揺らぎが生じ、これに伴って消光比に揺らぎが生じるが、光データリンク1aによれば、このような光信号の各信号成分のピーク周波数の揺らぎが回避可能となる。
【0037】
次に、図4を参照して、光データリンク1aの動作を説明する。図4は、光データリンク1aの動作を説明するためのフローチャートである。まず、LD2にはLDドライバ24から高周波変調電流が供給されており、LDドライバ24は、第1の制御方法を用いてLD温度を制御しているとする。
【0038】
この状態において、ピーク/ボトムホールド回路36aは、第1I−V回路22からの電圧信号を用いて第1の時間変化率(第1PD6によりモニタされた光信号の光量の最大値と最小値の差分の時間変化率に対応)を算出する(ステップS3)。次に、第1比較回路36bは、ステップS3において算出された時間変化率に基づいてLD2に高周波変調電流が入力されているか否かを検知する(ステップS4)。すなわち、第1比較回路36bは、ステップS3において算出された第1の時間変化率が、LD2に高周波変調電流が入力されていないことを示す範囲内にあるか否かを検知する。そして、第1比較回路36bは、第1の時間変化率がこの範囲内にあると検知した場合にこの検知結果を示す検知信号を第1制御回路26に出力する。この時、第1比較回路36bは、高周波変調電流の供給を停止する信号を第1制御回路26に出力する。なお、第1の時間変化率がこの範囲内にない場合、すなわち、高周波変調電流がLD2に入力されている場合、光データリンク1aは、ステップS3に戻って処理する。
【0039】
ステップS4の後、光データリンク1aの第1制御回路26は、ステップS4において出力された検知信号を第1比較回路36bから受けると、LD温度の制御方法を第1の制御方法から第2の制御方法に切り替えるよう指示する指示信号と、低周波信号の出力を指示する指示信号とを、TECドライバ30と、低周波信号回路28とにそれぞれ出力する(ステップS5)。ステップS5の後、TECドライバ30はLD温度制御方法を第1の制御方法から第2の制御方法に切り替える。そして、低周波信号回路28は低周波信号をバイアス回路20に出力し、バイアス回路20は、低周波信号回路28からの低周波信号をバイアス信号に重畳し、この重畳後のバイアス信号(低周波電流)をLD2に供給する。
【0040】
以上説明したように、光データリンク1aによれば、過渡チャープを抑制するためバイアス回路20からLD2に比較的大きなバイアス電流が供給されている状態においてLDドライバ24からLD2に高周波変調電流が入力されない場合でも、低周波電流がバイアス回路20からLD2に供給される。このため、LD2に高周波変調電流が入力されなくなっても光ファイバF内における誘導ブリルアン散乱の発生が回避できる。よって、過渡チャープと誘導ブリルアン散乱とが抑制可能となる。
【0041】
(第3の実施形態)
次に、第3の実施形態に係る光データリンク1bについて説明する。図5は、光データリンク1bの構成を示す図である。光データリンク1bには、光データリンク1の構成に第2検知回路38が更に設けられている。第2検知回路38は、変化量算出回路38aと第2比較回路38bとを有する。第2I−V回路34は、第2PD10からの電流信号(第2PD10のモニタ結果を示す信号)を電圧信号に変換して第2制御回路32と変化量算出回路38aとに出力する。
【0042】
変化量算出回路38aは、第2I−V回路34からの電圧信号の時間変化率(単位時間当たりの光量の変化した値であり、以下、第2の時間変化率という)を算出する。この第2の時間変化率は、第2PD10によりモニタされる光フィルタ8からの戻り光の光量の時間変化率に対応している。変化量算出回路38aは、上記の算出結果を第2比較回路38bに出力する。
【0043】
第2比較回路38bは、変化量算出回路38aからの算出結果に基づいて、第2の時間変化率が、LD2に高周波変調電流が入力されていないことを示す範囲内にあるか否かを検知する。なお、LD2に高周波変調電流が入力されていない場合、第2の時間変化率は略ゼロとなる。第2比較回路38bは、第2の時間変化率が、LD2に高周波変調電流が入力されていないことを示す範囲内にあると検知した場合、すなわち、LD2に高周波変調電流が入力されていないと検知した場合、この検知結果を示す検知信号を第1制御回路26に出力する。
【0044】
第1制御回路26は、第2比較回路38bから上記の検知信号を受けると、LD温度の制御方法の切り替え(第1の制御方法から第2の制御方法への切り替え)を指示する指示信号と、低周波信号の出力を指示する指示信号とを、TECドライバ30と、低周波信号回路28とにそれぞれ出力する。
【0045】
このように、光データリンク1bの第1制御回路26は、LD2に高周波変調電流が入力されていない場合にのみ低周波信号を供給するよう低周波信号回路28を制御する。従って、高周波変調電流がバイアス電流に重畳されている場合には、低周波電流はバイアス電流に重畳されない。高周波変調電流と低周波電流とがバイアス電流に同時に重畳されると、この低周波電流に起因して光信号の各信号成分(「0」及び「1」の各成分)のピーク周波数に揺らぎが生じ、これに伴って消光比に揺らぎが生じるが、光データリンク1bによれば、このような光信号の各信号成分のピーク周波数の揺らぎが回避可能となる。
【0046】
次に、図6を参照して、光データリンク1bの動作を説明する。図6は、光データリンク1bの動作を説明するためのフローチャートである。まず、LD2にはLDドライバ24から高周波変調電流が供給されており、LDドライバ24は、第1の制御方法を用いてLD温度を制御しているとする。
【0047】
この状態において、変化量算出回路38aは、第2I−V回路34からの電圧信号を用いて第2の時間変化率(第2PD10によりモニタされた光フィルタ8からの戻り光の光量の時間変化率に対応)を算出する(ステップS6)。次に、第2比較回路38bは、ステップS6において算出された第2の時間変化率に基づいてLD2に高周波変調電流が入力されているか否かを検知する(ステップS7)。すなわち、第2比較回路38bは、ステップS6において算出された第2の時間変化率が、LD2に高周波変調電流が入力されていないことを示す範囲内にあるかを検知する。そして、第2比較回路38bは、第2の時間変化率がこの範囲内にあると検知した場合にこの検知結果を示す検知信号を第1制御回路26に出力する。この時、第2比較回路38bは、高周波変調電流の供給を停止する信号を第1制御回路26に出力する。なお、第2の時間変化率がこの範囲内にない場合、すなわち、高周波変調電流がLD2に入力されている場合、光データリンク1bは、ステップS6に戻って動作する。
【0048】
ステップS7の後、光データリンク1bの第1制御回路26は、ステップS7において出力された検知信号を第2比較回路38bから受けると、LD温度の制御方法を第1の制御方法から第2の制御方法に切り替えるよう指示する指示信号と、低周波信号の出力を指示する指示信号とを、TECドライバ30と、低周波信号回路28とにそれぞれ出力する(ステップS8)。ステップS8の後、TECドライバ30はLD温度制御方法を第1の制御方法から第2の制御方法に切り替える。そして、低周波信号回路28は低周波信号をバイアス回路20に出力し、バイアス回路20は、低周波信号回路28からの低周波信号をバイアス信号に重畳し、この重畳後のバイアス信号(低周波電流)をLD2に供給する。
【0049】
以上説明したように、光データリンク1bによれば、過渡チャープを抑制するためバイアス回路20から比較的大きなバイアス電流の供給を受けている状態においてLDドライバ24からLD2に高周波変調電流が入力されなくなると、低周波電流がLD2に供給される。このため、LD2に高周波変調電流が入力されない場合でも光ファイバF内における誘導ブリルアン散乱の発生が回避できる。よって、過渡チャープと誘導ブリルアン散乱とが抑制可能となる。
【0050】
以上、好適な実施の形態において本発明の原理を図示し説明してきたが、本発明は、そのような原理から逸脱することなく配置および詳細において変更され得ることは、当業者によって認識される。本発明は、本実施の形態に開示された特定の構成に限定されるものではない。したがって、特許請求の範囲およびその精神の範囲から来る全ての修正および変更に権利を請求する。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】実施形態に係る光データリンクの構成を示す図である。
【図2】実施形態に係る光データリンクの動作を説明するためのフローチャートである。
【図3】実施形態に係る光データリンクの他の構成を示す図である。
【図4】実施形態に係る光データリンクの他の動作を説明するためのフローチャートである。
【図5】実施形態に係る光データリンクの他の構成を示す図である。
【図6】実施形態に係る光データリンクの他の動作を説明するためのフローチャートである。
【符号の説明】
【0052】
F…光ファイバ、1,1a,1b…光データリンク、10…第2PD、12…第1TEC、14…第1サーミスタ、16…第2TEC、18…第2サーミスタ、2…LD、20…バイアス回路、22…第1I−V回路、24…LDドライバ、26…第1制御回路、28…低周波信号回路、30…TECドライバ、32…第2制御回路、34…第2I−V回路、36…第1検知回路、36a…ピーク/ボトムホールド回路、36b…第1比較回路、38…第2検知回路、38a…変化量算出回路、38b…第2比較回路、4…スプリッタ、6…第1PD、8…光フィルタ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光信号を出力するレーザダイオードと、
前記レーザダイオードにバイアス電流を供給するバイアス回路と、
前記レーザダイオードに高周波変調電流を供給するレーザダイオードドライバと、
前記バイアス回路に低周波信号を出力可能な低周波信号回路と、
前記レーザダイオードドライバと前記低周波信号回路とを制御する制御回路と、
を備え、
前記バイアス回路は、前記低周波信号回路からの前記低周波信号を前記バイアス電流に重畳し、この重畳後のバイアス電流を前記レーザダイオードに供給し、
前記制御回路は、前記高周波変調電流の供給停止を指示する信号を受けると、該高周波変調電流の供給停止を指示する第1の指示信号と前記低周波信号の出力を指示する第2の指示信号とを、前記レーザダイオードドライバと前記低周波信号回路とにそれぞれ出力する、ことを特徴とする光データリンク。
【請求項2】
前記光信号をモニタするためのフォトダイオードと、
前記フォトダイオードによりモニタされる前記光信号の最大値と最小値の差の時間変化率が、前記レーザダイオードに前記高周波変調電流が入力されていないことを示す範囲内にあるか否かを検知する検知回路と
を更に備え、
前記検知回路は、前記レーザダイオードに前記高周波変調電流が入力されていないことを示す範囲内に前記時間変化率があることを検知した時に、前記供給を停止する信号を前記制御回路に出力する、ことを特徴とする請求項1に記載の光データリンク。
【請求項3】
前記レーザダイオードからの光信号を、該光信号の所定成分を低減して光ファイバに導入する光フィルタと、
前記光フィルタからの戻り光をモニタするためのフォトダイオードと、
前記フォトダイオードによりモニタされる前記戻り光の時間変化率が、前記レーザダイオードに前記高周波変調電流が入力されていないことを示す範囲内にあるか否かを検知する検知回路と
を更に備え、
前記検知回路は、前記レーザダイオードに前記高周波変調電流が入力されていないことを示す範囲内に前記時間変化率があることを検知した時に、前記供給を停止する信号を前記制御回路に出力する、ことを特徴とする請求項1に記載の光データリンク。
【請求項4】
高周波変調電流の供給に応じて光信号を出力するレーザダイオードの光出力制御方法であって、
前記レーザダイオードへの前記高周波変調電流の供給を停止する旨の指示をホスト装置から受ける第1ステップと、
前記第1ステップの後、前記高周波変調電流の前記レーザダイオードへの供給の停止と、前記レーザダイオードを変調する振幅を有する低周波信号を、バイアス電流に重畳して前記レーザダイオードへ供給すること、を行う第2ステップと
を有することを特徴とする光出力制御方法。
【請求項5】
高周波変調電流の供給に応じて光信号を出力するレーザダイオードの光出力制御方法であって、
前記光信号の最大値と最小値の差の時間変化率を算出する第1ステップと、
前記時間変化率が、前記レーザダイオードに高周波変調電流が入力されていないことを示す範囲内にあるか否かを検知する第2ステップと、
前記時間変化率が前記範囲内にあると検知された場合、前記レーザダイオードを変調する振幅を有する低周波信号を、バイアス電流に重畳して前記レーザダイオードへ供給する第3ステップと
を含む、ことを特徴とする光出力制御方法。
【請求項6】
光フィルタを介して光ファイバ内に導入する光信号を、高周波変調電流の供給に応じて出力するレーザダイオードの光出力制御方法であって、
前記光フィルタからの戻り光の時間変化率を算出する第1ステップと、
前記時間変化率が、前記レーザダイオードに高周波変調電流が入力されていないことを示す範囲内にあるか否かを検知する第2ステップと、
前記時間変化率が前記範囲内にあると検知された場合、前記レーザダイオードを変調する振幅を有する低周波信号を、バイアス電流に重畳して前記レーザダイオードへ供給する第3ステップと
を含む、ことを特徴とする光出力制御方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−4903(P2009−4903A)
【公開日】平成21年1月8日(2009.1.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−161698(P2007−161698)
【出願日】平成19年6月19日(2007.6.19)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】