説明

光ピックアップレンズ

【課題】NAが0.84以上において良好なスポット径を得ることができる光ピックアップレンズを提供する。
【解決手段】 開口数NAが0.84以上、接線角度がBrewster角以上の光ピックアップレンズ1に、395nm以上412nm以下の範囲内の波長のレーザ光を、平行光となるように、且つリムインテンシティが80%以上となるように、入射させた場合の透過率が(2)式を満たすように反射防止膜13、14を成膜した。
88.5≦((R1×Q1−R2×Q2)/(Q1−Q2))/R1×100≦105 ・・・・・・(2)
R1:有効径の100%の位置における透過率(%)
R2:有効径の90%の位置における透過率(%)
R3:有効径の80%の位置における透過率(%)
Q1:有効径の100%の範囲の開口面積(mm
Q2:有効径の90%の範囲の開口面積(mm
Q3:有効径の80%の範囲の開口面積(mm

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ディスクに対する記録または再生を行う光学系において用いられる光ピックアップレンズに関する。
【背景技術】
【0002】
光ピックアップレンズの性能を発揮させるためには、光ピックアップレンズの透過率を調整することが必要である。レンズの面形状は曲面であるため、入射面内の何れの部分に入射光が入射するかによって、入射光の透過率が変わってしまう。例えば、平行光のレーザ光に対して光ピックアップレンズの光軸が平行である場合、光ピックアップレンズの中心部分では平行光のレーザ光が垂直に入射する。しかし、光ピックアップレンズの外周に向かうにつれて、レーザ光は斜入射することとなる。これにより、光ピックアップレンズの入射面の透過率は、光ピックアップレンズの中心部分と、光ピックアップレンズの外周部分とで、異なってきてしまう。
一般に、光ピックアップレンズは、光ピックアップレンズの中心部分と、光ピックアップレンズの外周部分とで、同じ光量のレーザ光が入射し、光ピックアップレンズの入射面での反射はないものとして設計される。そのため、光ピックアップレンズの入射面内における入射光の透過率を等しくすることが、設計性能を最大限に発揮するための要因の一つとなる。
【0003】
光ピックアップレンズとして、DVD/CD互換レンズが知られている。一般に、DVD/CD互換レンズでは、レンズの中心から所定の径までの範囲がDVD/CD互換レンズとして設計されており、当該所定の径より外側の範囲はDVD専用レンズとして設計されている。CD(Compact Disc)のNA(開口数)は0.5程度であり、DVD(Digital Versatile Disc)のNAは0.6である。従って、DVDのNAはCDより大きい。一般的に、NAが大きくなる程、入射面の接線角も大きくなる。例外的に、局所的に入射面形状の凹凸を逆転させたレンズもある。しかし、入射面にそのような工夫を施さない場合、NAが大きいDVDのほうがCDよりも、有効径の最外径における接線角が大きくなってしまう。一般的に、接線角が大きい場合、接線角が小さい場合と比べて透過率が低下してしまう。したがって、接線角を調整することも、設計性能を最大限に発揮するための要因の一つとなる。
【0004】
光ピックアップレンズの硝材の屈折率が、当該光ピックアップレンズの使用環境である空気よりも大きいため、光ピックアップレンズの透過率は、100%になる可能性は非常に低い。そのため、一般的に、光ピックアップレンズのレーザ光源側の面、光ディスク側の面の両面に反射防止膜が施されている。これにより、光ピックアップレンズの有効径内の全面に入射する光の透過率を95%以上、又は、97%以上となるようにしている。
【0005】
反射防止膜を設計する上で、二つの問題点が挙げられる。
第1の問題点は、光ピックアップレンズの外周部分にレーザ光が斜入射してしまうことである。光ピックアップレンズのレーザ光源側の面、光ディスク側の面に反射防止膜を成膜しても、光ピックアップレンズの中央部分に入射するレーザ光の透過率と、光ピックアップレンズの外周部分に入射するレーザ光の透過率は異なってしまう。
第2の問題点は、反射防止膜を成膜する方法に起因する。一般的に、反射防止膜は、蒸着装置、スパッタ装置を用いて成膜されることが多い。また、光ピックアップレンズの光軸に対して蒸着源がほぼ垂直となるように設置される。そのため、光ピックアップレンズの光軸方向の膜厚が、光ピックアップレンズの中心から外周までの範囲において、ほぼ同じとなるように、反射防止膜が光ピックアップレンズに成膜されることとなる。つまり、レンズ中心に成膜される反射防止膜の膜厚をdとし、レンズ中心から、半径方向に所定距離分離れた位置に成膜される反射防止膜の膜厚をd'とし、当該位置における接線角度をθAとした場合、d'=dcosθAとなってしまう。即ち、レンズの外周部分におけるレンズ面の法線方向の膜厚d'と、レンズの中心部分の法線方向の膜厚dとでは、異なってしまう。換言すれば、レンズの入射面において、レンズ面の法線方向の反射防止膜の膜厚は、一定とならない。
これら、第1の問題点、第2の問題点を考慮して反射防止膜を設計する必要がある。
【0006】
第1の問題点について、従来の光ピックアップレンズを例に挙げて詳説する。従来の光ピックアップレンズにおいて最も大きいNAは0.65程度である。NAが0.65の光ピックアップレンズを、正弦条件を守るように設計した場合のレンズデータを図35に示す。この場合、光ピックアップレンズのレーザ光源側の面の接線角度は44°程度となる。
【0007】
屈折率の異なる材質の界面に所定の入射角で光が入射する場合、入射面に平行な偏光成分であるP波と、入射面に垂直な偏光成分であるS波とでは、反射率が異なる。例えば、空気中において、屈折率n2の平板に光を所定の入射角で入射させた場合、その光の反射率Raは、S波の反射率Rsと、P波の反射率Rpとの平均となる。また、当該平板に光を垂直に入射させた場合(即ち、入射角度が0の場合)、Ra=Rs=Rpとなる。また、当該平板に光を入射させる角度を垂直から傾けるにつれて(即ち、入射角度を大きくするにつれて)、S波の反射率Rsは単調に増加し、入射角度が90°のとき、S波の反射率Rsは100%となる。一方、入射角度を大きくするにつれて、P波の反射率Rpは、だんだんと減少し、入射角度がある角度となったときP波の反射率Rpは0となる。入射角の当該角度をBrewster角という。そして、入射角度がBrewster角度より大きくなるにつれて、P波の反射率Rpはだんだんと増加し、入射角度が90°のとき、P波の反射率Rpは100%となる。
【0008】
ここで、Brewster角をθBとし、空気の屈折率をn1とした場合、Brewster角θBは、θB=tan−1(n2/n1)から求めることができる。n2=1.515とすると、θB=56.57°となる。入射角がθBのとき、P波の反射率Rpは0であるため、S波の反射率Rsがある程度値を持っていたとしても、入射光の反射率Raは平均で10%程度となる。
したがって、接線角度がBrewster角θBより小さいレンズでは、平板で透過率が100%となるように設計された反射防止膜を当該レンズに成膜した場合でも、十分実用的な透過率を得ることができる。
【0009】
実際、上述のNAが0.65、レーザ光源側の面の接線角度が44°のレンズに、平板で透過率が100%となるように設計された反射防止膜を成膜した場合、レンズの外周部分における反射率は5%程度となり、レンズの中心部分の反射率も5%程度となる。従って、十分に100%近い透過率を有するレンズを作製することができる。
また、最近の薄型の光ディスクドライブ用に設計された中心厚が薄いDVD/CD互換用光ピックアップレンズにおいても、レーザ光源側の面のDVDの有効径の最外径における接線角度は55°程度である。すなわち、当該接線角度もBrewster角よりも小さくなっている。
【0010】
次に、第2の問題点について、詳説する。一般に、光の波長をλ、蒸着材料の屈折率をN、当該蒸着材料の膜厚Dとした場合に、N×D=λ/4を満たすように、反射防止膜を設計すれば、当該反射防止膜に垂直に入射する光の反射率を極小とすることが可能である。一方、このように設計した反射防止膜に光が入射角度θCで斜入射する場合、光学膜厚は、NDcosθCとなる。そのため、当該反射防止膜に光が斜入射すると、透過率が最も高くなる波長が、設計波長よりも短波長側にシフトしてしまう。
【0011】
上述の通り、蒸着装置などの成膜装置の都合で、光ピックアップレンズのレンズ面の法線方向の反射防止膜の膜厚は一定とはならない。具体的には、レンズ中心から、半径方向に所定距離分離れた位置に成膜される反射防止膜の膜厚をd'は、d'=dcosθAとなってしまう。
ここで、上述のNAが0.65、レーザ光源側の面の接線角度が44°のレンズに成膜される反射防止膜の法線方向の膜厚について説明する。cos44°は0.72であり、NAが0.65の場合、レーザ光源側の面において、レンズ中心から、半径方向に所定距離分離れた位置に成膜される反射防止膜の膜厚をd'と、レンズ中心における反射防止膜の膜厚dとの差はそれほど大きくない。すなわち、NAが0.65程度であれば、第2の問題点については、考慮する必要がない。
【0012】
また、cosθCも0.72程度となる。そのため、反射防止膜の設計波長を所望の波長よりも若干長波長とすればよい。これにより、光が反射防止膜に斜入射した場合に、透過率が最も高くなる波長が、設計波長よりも短波長側にシフトしてしまうという問題についても解決できる。換言すれば、反射防止膜の設計波長を所望の波長よりも若干長波長とすれば、レンズ中心における透過率は若干低下してしまうが、外周部分における透過率は斜入射による透過率の低下を防ぐことができる。
【0013】
一方、図35に示す、NA0.65のレンズの光ディスク側の面のBrewster角θBは、n2=1.515とした場合、33.42°となる。また、図35に示すレンズの光ディスク面への出射角度が34.06°である。したがって、レンズ中心から有効径までの全範囲において、出射角(屈折角)はほぼ同じであることが分かる。
【0014】
また、図35に示す、NA0.65のレンズの光ディスク側の面の接線角度は、17°程度であり、cos17°は0.96である。したがって、NAが0.65の場合、光ディスク側の面において、レンズ中心から、半径方向に所定距離分離れた位置に成膜される反射防止膜の膜厚をd'と、レンズ中心における反射防止膜の膜厚dとの差はそれほど大きくない。すなわち、NAが0.65程度であれば、第2の問題点については、考慮する必要がない。
【0015】
図35に示す、NA0.65のレンズの光ディスク側の面において、cosθCも0.95程度となる。そこで、反射防止膜の設計波長を所望の波長よりもわずかに長波長とする。これにより、光が反射防止膜に斜入射した場合に、透過率が最も高くなる波長が、設計波長よりも短波長側にシフトしてしまうという問題についても解決できる。換言すれば、反射防止膜の設計波長を所望の波長よりもわずかに長波長とすれば、レンズ中心における透過率は若干低下してしまうが、外周部分における透過率は斜入射による透過率の低下を防ぐことができる。
【0016】
特許文献1には、使用波長をλ、レーザ光源側の面の光軸に平行にレーザ光が入射した場合の反射防止膜の反射率が最も低くなる波長をλ、光ディスク側の面の光軸に平行にレーザ光が入射した場合の反射防止膜の反射率が最も低くなる波長をλとした場合に、λ<λ<λが成り立つように反射防止膜を設計することにより、透過率が良好な反射防止膜をレンズに成膜できることが記載されている。特許文献2にも、同様の技術が記載されている。
【0017】
また、光ディスク側の面には、一般に、鏡面が設けられている。当該鏡面にレンズチルト調整用のオートコリメータから平行光を照射し、戻り光を観測する。これにより、光ピックアップレンズのレンズチルトを調整し、光ピックアップレンズを光ピックアップに取り付ける。このレンズチルト調整用のオートコリメータには、波長630nm〜670nmの光が利用されることが多い。しかし、DVDの使用波長は660nmであるため、当該DVD/CD互換レンズには、波長660nm程度の光を良好に透過する反射防止膜が成膜されることとなる。そこで、特許文献3には、鏡面に反射防止膜を全く成膜しない方法や、一部のみに反射防止膜を成膜する方法などが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0018】
【特許文献1】特開2001−052366号公報
【特許文献2】特許第4172180号公報
【特許文献3】特開2003−121604号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
しかしながら、BD(Blu−ray Disc)のNAは0.85程度であり、DVDやCDのNAに比べて大きい。そのため、BDの接線角は、DVDに比べて大きくなる。NAが0.85の光ピックアップレンズを、正弦条件を守るように設計した場合のレンズデータを図2に示す。この場合、光ピックアップレンズのレーザ光源側の面の接線角度は72°程度となる。各種性能のトレードオフを図りながら設計しても、当該接線角度を低減するには限界がある。例えば、屈折率の低いプラスティック性の光ピックアップレンズを、レーザ光源から当該光ピックアップレンズに平行光、弱発散光、弱有限光が入射するように設計しても、接線角度は65°程度とするのが限界である。
【0020】
図2に示す、NAが0.85の光ピックアップレンズのレーザ光源側の面のBrewster角θBは、n2=1.515とした場合、56.57°となる。したがって、図2に示す光ピックアップレンズのレーザ光源側の面の接線角度はBrewster角θBよりもはるかに大きい。すなわち、光ピックアップレンズのレーザ光源側の面に反射防止膜を全く成膜しない場合、当該光ピックアップレンズに光軸方向から平行光が入射した場合、レンズ中心部の反射率は5%程度であるが、外周部分の反射率は15%程度となってしまう。
【0021】
さらに、図2に示す、NAが0.85の光ピックアップレンズのレーザ光源側の面では、θA=72°となるため、cosθA=0.309となる。したがって、当該光ピックアップレンズの外周部分におけるレンズ面の法線方向の反射防止膜の膜厚は、レンズ中心部におけるレンズ面の法線方向の反射防止膜の膜厚の0.309倍となってしまう。即ち、光ピックアップレンズの外周部分におけるレンズ面の法線方向の反射防止膜の膜厚は、光ピックアップレンズの中心部分に比べて、かなり薄くなる。
【0022】
また、図2に示す、NAが0.85のレンズのレーザ光源側の面において、cosθCも0.309程度となる。したがって、当該反射防止膜に光が斜入射すると、透過率が最も高くなる波長が、設計波長よりもかなり短波長側にシフトしてしまう。
【0023】
したがって、図2に示す、NAが0.85であるレンズのレーザ光源側の面形状は、接線角度がBrewster角よりもはるかに大きい形状となっている。そのため、当該レンズ面形状を無視して設計することができない。具体的には、レンズの外周部分における反射防止膜の法線方向における膜厚が、レンズの中心部における反射防止膜の法線方向の膜厚と違いすぎている。そのため、当該反射防止膜に光が斜入射した場合に、透過率が最も高くなる波長が設計波長よりもかなり短波長側にシフトしてしまうことのみを考慮して、当該反射防止膜を設計しても、レンズのレーザ光源側の面全面において、入射光の透過率を高く且つ均一にすることは難しい。
【0024】
一方、図2に示す、NAが0.85の光ピックアップレンズの光ディスク側の面のBrewster角θBは、n2=1.515とした場合、33.42°となる。また、図2に示すレンズの光ディスク面への出射角度が34.18°である。したがって、レンズ中心から有効径までの全範囲において、出射角(屈折角)はほぼ同じであることが分かる。
【0025】
また、図2に示す、NA0.85のレンズの光ディスク側の面の接線角度は、17°程度であり、cos17°は0.96である。したがって、NAが0.85の場合、光ディスク側の面において、レンズ中心から、半径方向に所定距離分離れた位置に成膜される反射防止膜の膜厚をd'と、レンズ中心における反射防止膜の膜厚dとの差はそれほど大きくない。すなわち、NAが0.85程度であれば、第2の問題点については、考慮する必要がない。
【0026】
図2に示す、NA0.85のレンズの光ディスク側の面において、cosθCも0.999程度となる。そこで、反射防止膜の設計波長を所望の波長よりもわずかに長波長とする。これにより、光が反射防止膜に斜入射した場合に、透過率が最も高くなる波長が、設計波長よりも短波長側にシフトしてしまうという問題についても解決できる。換言すれば、反射防止膜の設計波長を所望の波長よりもわずかに長波長とすれば、レンズ中心における透過率は若干低下してしまうが、外周部分における透過率は斜入射による透過率の低下を防ぐことができる。
【0027】
特許文献1及び2では、反射防止膜に垂直にレーザ光が入射した場合に、反射率が最も低くなる波長が、レーザ光の波長よりも若干長波長側となるように、反射防止膜を設計する。これにより、レンズ中央部における透過率は若干低下させてしまうものの、レンズ外周部分における透過率の低下を低減させることを図っている。換言すれば、特許文献1及び2には、レンズの面全体のレーザ光の透過率が若干低下させつつ、レンズの面全体においてレーザ光の透過率をほぼ均一にする技術が記載されている。
しかし、上述の通り、NAが0.65程度では、特許文献1及び2に記載の技術によって上記第1の問題点及び第2の問題点を解決することができるが、NAが0.85程度の場合、特許文献1及び2に記載の技術によって上記第1の問題点及び第2の問題点を解決することはできない。そのため、良好なスポット径を得ることができない。
【0028】
また、上述の通り、一般に、光ディスク側の面には、レンズチルト調整用の鏡面が設けられている。また、レンズチルト調整用のオートコリメータには、波長630nm〜670nmの光が利用されることが多い。さらに、DVD/CD互換レンズには、DVDの使用波長660nm程度の光を良好に透過する反射防止膜が成膜されている。そのため、特許文献3には、鏡面に反射防止膜を全く成膜しない方法や、一部のみに反射防止膜を成膜する方法などが記載されている。
【0029】
多くの会社が、レンズチルト調整用のオートコリメータとして、630nm〜670nmの光を利用するレンズチルト調整用のオートコリメータを導入している。そのため、BDで用いられる光ピックアップレンズのレンズチルト調整用のオートコリメータにおいても、波長630nm〜670nmの光が利用されることが予想される。そのため、BDに用いられる光ピックアップレンズの光ディスク側の面に成膜する反射防止膜においても、波長630nm〜670nmの反射率について考慮する必要がある。
【0030】
本発明は、このような問題点を解決するためになされたものであり、NAが0.84以上において良好なスポット径を得ることができる光ピックアップレンズを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0031】
本発明の第1の態様にかかる光ピックアップレンズは、レーザ光を光ディスクに集光する開口数NAが0.84以上の光ピックアップレンズである。また、Brewster角が(1)式で表される場合に、前記光ピックアップレンズの有効径の位置における接線角度が前記Brewster角以上である。さらに、少なくとも395nm以上412nm以下の範囲内の波長のレーザ光を、平行光となるように、且つリムインテンシティが80%以上となるように、入射させた場合の透過率が(2)式を満たすように前記光ピックアップレンズに反射防止膜が成膜されているものである。
θB=tan−1(n2/n1) ・・・・・・(1)
θB:Brewster角(°)
n1:空気の屈折率
n2:前記光ピックアップレンズの材質の波長404.7nmのときの屈折率
88.5≦((R1×Q1−R2×Q2)/(Q1−Q2))/R1×100≦105 ・・・・・・(2)
R1:有効径の100%の位置における透過率(%)
R2:有効径の90%の位置における透過率(%)
R3:有効径の80%の位置における透過率(%)
Q1:有効径の100%の範囲の開口面積(mm
Q2:有効径の90%の範囲の開口面積(mm
Q3:有効径の80%の範囲の開口面積(mm
【0032】
本発明の第1の態様においては、(2)式を満たすように、光ピックアップレンズに反射防止膜が成膜されている。(2)式において、(R1×Q1−R2×Q2)/(Q1−Q2)は、有効径90%の位置から有効径100%の位置までの環状領域の透過率(%)を表している。そして、(2)式において、((R1×Q1−R2×Q2)/(Q1−Q2))/R1×100は、有効径90%の位置から有効径100%の位置までの環状領域の透過率を、有効径100%の位置における透過率によって規格化したものを表す。したがって、(2)式を満たすということは、有効径100%の位置における透過率で規格化した、有効径90%の位置から有効径100%の位置までの環状領域の透過率が88.5以上、105以下であればよいということを表している。換言すれば、本発明の第1の態様においては、有効径90%の位置から有効径100%の位置までの環状領域の透過率が、有効径の位置における透過率の88.5%以上、105%以下となるように、光ピックアップレンズに反射防止膜が成膜されている。
【0033】
通常、開口数NAが0.84以上において、光ピックアップレンズの有効径の位置における接線角度が前記Brewster角以上となると、光ピックアップレンズの中央部分に入射するレーザ光の透過率と、光ピックアップレンズの外周部分に入射するレーザ光の透過率とが大きく異なってしまう。光ピックアップレンズの中心部分に入射するレーザ光の透過率に比べて、光ピックアップレンズの外周部分に入射するレーザ光の透過率が低いと、光ディスク上に形成される光スポットの径が大きくなってしまう。一方、光ピックアップレンズの中心部分に入射するレーザ光の透過率が、光ピックアップレンズの外周部分に入射するレーザ光の透過率に比べて低いと、光ディスク上に形成される光スポットの径は小さくなる。しかし、光ピックアップレンズの中心部分に入射するレーザ光の透過率が、光ピックアップレンズの外周部分に入射するレーザ光の透過率に比べて、極端に低いと、1次光の光量が多くなりすぎてしまう。換言すれば、((1次光ピーク強度)/(0次光ピーク強度))の値が悪化してしまう。
【0034】
本発明の第1の態様においては、(2)式を満たすように、光ピックアップレンズに反射防止膜が成膜される。そのため、有効径90%の位置から有効径100%の位置までの環状領域の透過率を、有効径の位置における透過率の88.5%以上、105%以下とすることができる。換言すれば、光ピックアップレンズの有効径の最外周に入射するレーザ光の透過率を、有効径90%の位置から有効径100%の位置までの環状領域に入射するレーザ光の透過率と略同等とすることができる。したがって、NAが0.84以上の光ピックアップレンズにおいて良好なスポット径を得ることができる。
【0035】
また、有効径90%の位置から有効径100%の位置までの環状領域の透過率が、有効径の位置における透過率の105%以下となっている。そのため、光ピックアップレンズの中心部分に入射するレーザ光の透過率が、光ピックアップレンズの外周部分に入射するレーザ光の透過率に比べて、極端に低くなりすぎることを防ぐことができる。これにより、((1次光ピーク強度)/(0次光ピーク強度))の値の悪化を防ぐことができる。
【0036】
また、正弦条件を守らずに光ピックアップレンズを設計した場合、当該光ピックアップレンズの接線角度は小さくなる。そのため、NAが0.84以上の光ピックレンズでは、正弦条件を守らない場合、接線角度がBrewster角に近づく。そのため、さらに、より良好なスポット径を得やすくなる。したがって、(2)式を満たすように、光ピックアップレンズに反射防止膜を成膜することにより、正弦条件を守らない場合でも、良好なスポット径を得ることができる。
【0037】
また、正弦条件を守りつつ、且つ光ピックアップレンズの材料として屈折率の高い硝材を用いて、光ピックアップレンズを設計した場合、当該光ピックアップレンズの接線角度は小さくなる。具体的には、光ピックアップレンズの有効径の100%、90%、80%の位置の接線角度はBrewster角に近づく。すなわち、正弦条件を守らない場合と同様に、より良好なスポット径を得やすくなる。したがって、(2)式を満たすように、光ピックアップレンズに反射防止膜を成膜することにより、正弦条件を守っている場合でも、光ピックアップレンズの材料として屈折率の高い硝材を用いると、良好なスポット径を得ることができる。
【0038】
さらに、正弦条件を守らずに、且つ光ピックアップレンズの材料として屈折率の高い硝材を用いた場合には、さらに、良好なスポット径を得やすくなる。そのため、(2)式を満たすとともに、光ピックアップレンズの材料として屈折率の高い硝材を用いると、良好なスポット径をさらに容易に得ることができる。
【0039】
また、少なくとも395nm以上412nm以下の範囲内の波長のレーザ光を、平行光となるように、且つリムインテンシティが80%以上となるように、入射させた場合の透過率が(3)式を満たすように光ピックアップレンズに反射防止膜が成膜されていることが好ましい。
92.7≦((R2×Q2−R3×Q3)/(Q2−Q3))/R1×100≦105 ・・・・・・(3)
【0040】
(3)式において、(R2×Q2−R3×Q3)/(Q2−Q3)は、有効径80%の位置から有効径90%の位置までの環状領域の透過率(%)を表している。そして、(3)式において、((R2×Q2−R3×Q3)/(Q2−Q3))/R1×100は、有効径80%の位置から有効径90%の位置までの環状領域の透過率を、有効径100%の位置における透過率によって規格化したものを表す。したがって、(3)式を満たすということは、有効径100%の位置における透過率で規格化した、有効径80%の位置から有効径90%の位置までの環状領域の透過率が92.7以上、105以下であればよいということを表している。換言すれば、有効径80%の位置から有効径90%の位置までの環状領域の透過率が、有効径の位置における透過率の92.7%以上、105%以下となるように、光ピックアップレンズに反射防止膜が成膜されていることが好ましい。
【0041】
これにより、有効径80%の位置から有効径90%の位置までの環状領域の透過率を、有効径の位置における透過率の92.7%以上、105%以下とすることができる。換言すれば、光ピックアップレンズの有効径の最外周に入射するレーザ光の透過率を、有効径80%の位置から有効径90%の位置までの環状領域に入射するレーザ光の透過率と略同等とすることができる。したがって、NAが0.84以上の光ピックアップレンズにおいて良好なスポット径を得ることができる。
【0042】
また、有効径80%の位置から有効径90%の位置までの環状領域の透過率が、有効径の位置における透過率の105%以下となっている。そのため、光ピックアップレンズの中心部分に入射するレーザ光の透過率が、光ピックアップレンズの外周部分に入射するレーザ光の透過率に比べて、極端に低くなりすぎることを防ぐことができる。これにより、((1次光ピーク強度)/(0次光ピーク強度))の値の悪化を防ぐことができる。
【0043】
また、正弦条件を守らずに光ピックアップレンズを設計した場合、正弦条件を守りつつ、且つ光ピックアップレンズの材料として屈折率の高い硝材を用いて、光ピックアップレンズを設計した場合、正弦条件を守らずに、且つ光ピックアップレンズの材料として屈折率の高い硝材を用いた場合、のいずれの場合においても、(3)式を満たすように、光ピックアップレンズに反射防止膜を成膜することにより、良好なスポット径を得ることができる。
【0044】
また、一般に、光ピックアップ装置で使用されるレーザ光の強度分布は、ガウシアンカーブとなっている。そのため、光ピックアップレンズの外周側に近くなる程、レーザ光の強度が弱くなる。したがって、光ピックアップレンズは、当該光ピックアップレンズに入射するレーザ光の強度が強い範囲で性能を十分に発揮する必要がある。そのため、光ピックアップレンズに入射するレーザ光の強度が強い範囲、即ち、有効径よりも若干内側の透過率である、有効径80%の位置から有効径90%の位置までの環状領域の透過率について、(3)式を規定した。これにより、上記効果をより確実に奏することができる。
【0045】
さらに、少なくとも395nm以上412nm以下の範囲内の波長のレーザ光を、平行光となるように、且つリムインテンシティが80%以上となるように、入射させた場合の透過率が(4)式を満たすように光ピックアップレンズに反射防止膜が成膜されていることが好ましい。
0.249≦α≦0.300 ・・・・・・(4)
α=((R1×Q1−R2×Q2)/R1)×((R2×Q2−R3×Q3)/R1)×((Q2−Q3)/(Q1−Q2))
【0046】
(4)式において、((R1×Q1−R2×Q2)/R1)は、有効径90%の位置から有効径100%の位置までの環状領域の透過光量の有効径100%の位置における透過光量に対する開口光線占有率を表している。また、(4)式において、((R2×Q2−R3×Q3)/R1)は、有効径80%の位置から有効径90%の位置までの環状領域の透過光量の有効径100%の位置における透過光量に対する開口光線占有率を表している。また、(4)式において、((Q2−Q3)/(Q1−Q2))は、有効径90%の位置から有効径100%の位置までの環状領域の開口面積に対する、有効径80%の位置から有効径90%の位置までの環状領域の開口面積の比率を表している。すなわち、(4)式において、αは、有効径90%の位置から有効径100%の位置までの環状領域の透過光量の有効径100%の位置における透過光量に対する開口光線占有率と、有効径80%の位置から有効径90%の位置までの環状領域の透過光量の有効径100%の位置における透過光量に対する開口光線占有率と、有効径90%の位置から有効径100%の位置までの環状領域の開口面積に対する、有効径80%の位置から有効径90%の位置までの環状領域の開口面積の比率とを掛け合わせたものを表す。
【0047】
これにより、αの値を指標とすることにより、有効径90%の位置から有効径100%の位置までの環状領域の透過光量と、有効径80%の位置から有効径90%の位置までの環状領域の透過光量とを同時に調整することができる。しかし、最外周部分にあたる有効径90%の位置から有効径100%の位置までの環状領域の透過光量の方が、最外周部分より内側の有効径80%の位置から有効径90%の位置までの環状領域の透過光量よりも、光スポットの形成性能において重要である。そのため、(4)式では、それぞれの環状領域の開口面積を用いて重み付けを行った。
そして、(4)式を満たすように、光ピックアップレンズに反射防止膜を成膜することにより、(2)式及び(3)式を満たす光ピックアップレンズを容易に製造することができる。これにより、NAが0.84以上の光ピックアップレンズにおいて、良好なスポット径が得られるとともに、((1次光ピーク強度)/(0次光ピーク強度))の値の悪化を防ぐことができる。
【0048】
また、さらに、前記光ピックアップレンズの前記光ディスク側の面に、前記反射防止膜が成膜されている場合に、前記光ピックアップレンズの前記光ディスク側の面に630nm以上670nm以下の範囲内の波長のレーザ光が平行光で入射した場合の反射率が、前記反射防止膜が前記光ピックアップレンズの前記光ディスク側の面に成膜されていない場合に、前記光ピックアップレンズの前記光ディスク側の面に630nm以上670nm以下の範囲内の波長のレーザ光が平行光で入射した場合の反射率とほぼ同等であることが好ましい。
【0049】
現在最も使用されているレンズチルト用のオートコリメータには、630nm以上670nm以下の光が利用される。そして、630nm以上670nm以下のレーザ光が光ピックアップレンズの光ディスク側の面に成膜された反射防止膜を透過する場合、当該レーザ光は、光ピックアップレンズのレーザ光源側の面に到達する。このとき、光ピックアップレンズの光ディスク側の面に入射する平行光は、光ピックアップレンズの光ディスク側の面の有効径の外側であって、光ピックアップレンズの光軸に略垂直な面にも入射する場合がある。光ピックアップレンズの光ディスク側の面に入射し、レーザ光源側の面に到達するレーザ光のレーザ光源側の面への入射角をθ、光ピックアップレンズの屈折率をnとすると、入射角θがsin−1(1/n)よりも大きくなると、全反射する。例えば、n=1.515とした場合、θ=41.14°となる。図2に示すNA=0.85の光ピックアップレンズを例に挙げると、光ピックアップレンズの光軸から直径φ=1.34mmより外側の光ディスク面に入射したレーザ光は、レーザ光源側の面において全反射されることになる。そして、図35に示す光ピックアップレンズのレーザ光源側の有効径φは2.40mmであるので、面積比で換算すると、1−1.34/2.40=0.69となる。したがって、最大で69%のレーザ光が全反射され、光ディスク側の面に戻ることになる。ここで、光ディスク側の面において、光軸から直径φ=2.41mm〜直径φ=2.66mmまでに、同心円状の鏡面が形成されていたとする。そして、当該鏡面で反射される光量を、直径φ=2.40mmを基準にして表すと、(2.66−2.41)/2.40=0.22となる。すなわち、当該鏡面で反射されるレーザ光は22%である。したがって、鏡面で反射される光量より、レーザ光源側の面で反射される光量の方が圧倒的に多いことが分かる。実際には、レーザ光源側の面で反射されたレーザ光の全てがレンズチルト用のオートコリメータに戻るわけではない。
【0050】
そのため、レンズチルト用のオートコリメータには、鏡面以外で反射されたレーザ光以外のレーザ光が集光されてしまう。なお、DVDに用いられるNAが0.65の光ピックアップレンズでは、レーザ光源側の面の形状が、NAが0.85の光ピックアップレンズよりも接線角度が緩い角度となる形状となっている。そのため、DVDに用いられる光ピックアップレンズでは、このような全反射による影響は小さい。
例えば、図2に示すNAが0.85のBD用の光ピックアップレンズのレーザ光源側の面に平行光又は弱有限光のレーザ光が入射した場合の光線図を図36に示す。また、図35に示すNA=0.65のDVD用の光ピックアップレンズのレーザ光源側の面に平行光又は弱有限光のレーザ光が入射した場合の光線図を図37に示す。図36、図37に示す光ピックアップレンズは、レーザ光源側の面に、平行光又は弱有限光のレーザ光が入射することを想定して設計されている。そのため、図36、図37に示す光ピックアップレンズは、レーザ光源側の面に平行光又は弱有限光のレーザ光が入射した場合に、当該レーザ光を光ディスク内の光透過層に集光する。図36、図37に示す光ピックアップレンズに対して、レンズチルト調整用のレーザ光が平行光で光ディスク側の面に入射した光線図を、それぞれ、図38、図39に示す。図39に示すように、DVD用の光ピックアップレンズの光ディスク側の面に、レンズチルト調整用のレーザ光が平行光で入射すると、当該レーザ光はレーザ光源側の面から出射する。しかし、図38に示すように、BD用の光ピックアップレンズの光ディスク側の面に、レンズチルト調整用のレーザ光が平行光で入射すると、光ピックアップレンズの中心部分を透過するレーザ光はレーザ光源側の面から出射するが、光ピックアップレンズの外周部分を透過するレーザ光はレーザ光源側の面において全反射してしまう。
【0051】
ここで、本発明にかかる光ピックアップレンズの光ディスク側の面には、反射防止膜が成膜されていないときと同程度の反射率で、630nm以上670nm以下の範囲内の波長のレーザ光が平行光で入射した場合に、当該レーザ光を反射する反射防止膜が成膜される。そのため、630nm以上670nm以下のレーザ光がレーザ光源側の面に到達することを防止することができる。そのため、レーザ光源側の面における全反射の影響を低減することができる。したがって、より適切にレンズチルト調整を行うことができる。また、従来から用いられているレンズチルト用のオートコリメータを用いて、NAが0.84以上の光ピックアップレンズのレンズチルト調整を行うことができる。
【0052】
さらに、前記光ピックアップレンズの前記光ディスク側の面であって、前記光ピックアップレンズの有効径の位置よりも外周側に、前記光ピックアップレンズの光軸に垂直な平面を備えることが好ましい。また、前記光ピックアップレンズの前記光ディスク側の面であって、前記光ピックアップレンズの光軸から前記垂直な平面を含む範囲に、前記反射防止膜が成膜されていることが好ましい。
当該略垂直な面に反射防止膜が形成されない場合、当該略垂直な面よりもレーザ光源側の面(コバ面)で、レーザ光が反射される可能性がある。この場合、レンズチルト調整用のオートコリメータで検出される集光光の明瞭性が低下してしまう。そのため、当該略垂直な面に反射防止膜が成膜されていると、当該弊害を防止することができ、さらに好ましい。
【0053】
特に、前記反射防止膜が成膜された前記略垂直な平面における630nm以上670nm以下の範囲内の波長のレーザ光の反射率は、前記反射防止膜が成膜されていない前記略垂直な平面における630nm以上670nm以下の範囲内の波長のレーザ光の反射率から1.4%減算して得られる値以上であることが好ましい。
現行のDVD/CD互換レンズでは、当該略垂直な平面に反射防止膜を成膜していないものや、当該略垂直な平面に部分的にのみ反射防止膜を成膜しているものが多い。このことから、当該略垂直な面に反射防止膜を成膜しなくてもレンズチルト調整用のオートコリメータは、戻り光を検出できていると考えられる。そこで、当該略垂直な平面に反射防止膜を成膜した場合の反射率を、反射防止膜を成膜していない場合の反射率よりも1.4%低減することを下限目標とすれば十分である。
【0054】
また、さらに、前記垂直な平面は、平行光が入射した場合に、当該平行光が反射するような面精度で加工された鏡面であることが好ましい。
【発明の効果】
【0055】
本発明により、NAが0.84以上において良好なスポット径を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明の実施の形態にかかる光ピックアップレンズのレンズチルト調整を説明する図である。
【図2】本発明の実施の形態にかかる光ピックアップレンズのレンズデータを示す表である。
【図3】実施例及び比較例における半所防止膜の構造を示す表である。
【図4】実施例及び比較例における光ピックアップレンズのレンズ材質、光ディスクの透明基板、反射防止膜の各波長における屈折率を示す表である。
【図5】実施例1にかかるレーザ面の反射率と波長との関係を表すグラフ(図5(a))、実施例1にかかるディスク面の反射率と波長との関係を表すグラフ(図5(b))である。
【図6】実施例2にかかるレーザ面の反射率と波長との関係を表すグラフ(図6(a))、実施例2にかかるディスク面の反射率と波長との関係を表すグラフ(図6(b))である。
【図7】実施例3にかかるレーザ面の反射率と波長との関係を表すグラフ(図7(a))、実施例3にかかるディスク面の反射率と波長との関係を表すグラフ(図7(b))である。
【図8】実施例4にかかるレーザ面の反射率と波長との関係を表すグラフ(図8(a))、実施例4にかかるディスク面の反射率と波長との関係を表すグラフ(図8(b))である。
【図9】実施例5にかかるレーザ面の反射率と波長との関係を表すグラフ(図9(a))、実施例5にかかるディスク面の反射率と波長との関係を表すグラフ(図9(b))である。
【図10】実施例6にかかるレーザ面の反射率と波長との関係を表すグラフ(図10(a))、実施例6にかかるディスク面の反射率と波長との関係を表すグラフ(図10(b))である。
【図11】実施例7にかかるレーザ面の反射率と波長との関係を表すグラフ(図11(a))、実施例7にかかるディスク面の反射率と波長との関係を表すグラフ(図11(b))である。
【図12】実施例8及び実施例13にかかるレーザ面の反射率と波長との関係を表すグラフ(図12(a))、実施例8及び実施例13にかかるディスク面の反射率と波長との関係を表すグラフ(図12(b))である。
【図13】実施例9にかかるレーザ面の反射率と波長との関係を表すグラフ(図13(a))、実施例9にかかるディスク面の反射率と波長との関係を表すグラフ(図13(b))である。
【図14】実施例10にかかるレーザ面の反射率と波長との関係を表すグラフ(図14(a))、実施例10にかかるディスク面の反射率と波長との関係を表すグラフ(図14(b))である。
【図15】実施例11にかかるレーザ面の反射率と波長との関係を表すグラフ(図15(a))、実施例11にかかるディスク面の反射率と波長との関係を表すグラフ(図15(b))である。
【図16】実施例12にかかるレーザ面の反射率と波長との関係を表すグラフ(図16(a))、実施例12にかかるディスク面の反射率と波長との関係を表すグラフ(図16(b))である。
【図17】比較例1にかかるレーザ面の反射率と波長との関係を表すグラフ(図17(a))、比較例1にかかるディスク面の反射率と波長との関係を表すグラフ(図17(b))である。
【図18】比較例2にかかるレーザ面の反射率と波長との関係を表すグラフ(図18(a))、比較例2にかかるディスク面の反射率と波長との関係を表すグラフ(図18(b))である。
【図19】比較例3にかかるレーザ面の反射率と波長との関係を表すグラフ(図19(a))、比較例3にかかるディスク面の反射率と波長との関係を表すグラフ(図19(b))である。
【図20】比較例4にかかるレーザ面の反射率と波長との関係を表すグラフ(図20(a))、比較例4にかかるディスク面の反射率と波長との関係を表すグラフ(図20(b))である。
【図21】比較例5にかかるレーザ面の反射率と波長との関係を表すグラフ(図21(a))、比較例5にかかるディスク面の反射率と波長との関係を表すグラフ(図21(b))である。
【図22】比較例6にかかるレーザ面の反射率と波長との関係を表すグラフ(図22(a))、比較例6にかかるディスク面の反射率と波長との関係を表すグラフ(図22(b))である。
【図23】比較例7にかかるレーザ面の反射率と波長との関係を表すグラフ(図23(a))、比較例7にかかるディスク面の反射率と波長との関係を表すグラフ(図23(b))である。
【図24】比較例8にかかるレーザ面の反射率と波長との関係を表すグラフ(図24(a))、比較例8にかかるディスク面の反射率と波長との関係を表すグラフ(図24(b))である。
【図25】比較例9にかかるレーザ面の反射率と波長との関係を表すグラフ(図25(a))、比較例9にかかるディスク面の反射率と波長との関係を表すグラフ(図25(b))である。
【図26】比較例10にかかるレーザ面の反射率と波長との関係を表すグラフ(図26(a))、比較例10にかかるディスク面の反射率と波長との関係を表すグラフ(図26(b))である。
【図27】比較例11にかかるレーザ面の反射率と波長との関係を表すグラフ(図27(a))、比較例11にかかるディスク面の反射率と波長との関係を表すグラフ(図27(b))である。
【図28】比較例12にかかるレーザ面の反射率と波長との関係を表すグラフ(図28(a))、比較例12にかかるディスク面の反射率と波長との関係を表すグラフ(図28(b))である。
【図29】比較例13にかかるレーザ面の反射率と波長との関係を表すグラフ(図29(a))、比較例13にかかるディスク面の反射率と波長との関係を表すグラフ(図29(b))である。
【図30】実施例及び比較例にかかるレーザ面の各位置における透過率を示す表である。
【図31】実施例及び比較例にかかるレーザ面の各位置における透過率を有効径の100%の位置の透過率で規格化したものを示す表である。
【図32】実施例及び比較例にかかる各環状領域の開口光線占有率と、外周部光線占有係数を示す表である。
【図33】実施例及び比較例にかかる光ピックアップレンズによって得られる光スポットのスポット径及び((1次光ピーク強度)/(2次光ピーク強度))の値を示す表である。
【図34】実施例及び比較例にかかる光ピックアップレンズのディスク面の反射状況及び反射率を示す表である。
【図35】開口数NAが0.65の光ピックアップレンズを正弦条件を守って設計した場合の当該光ピックアップレンズのレンズデータを示す表である。
【図36】図2に示すNAが0.85のBD用の光ピックアップレンズのレーザ光源側の面に平行光又は弱有限光のレーザ光が入射した場合の光線図である。
【図37】図35に示すNA=0.65のDVD用の光ピックアップレンズのレーザ光源側の面に平行光又は弱有限光のレーザ光が入射した場合の光線図である。
【図38】図36に示す光ピックアップレンズに対して、レンズチルト調整用のレーザ光が平行光で光ディスク側の面に入射した光線図である。
【図39】図37に示す光ピックアップレンズに対して、レンズチルト調整用のレーザ光が平行光で光ディスク側の面に入射した光線図である。
【発明を実施するための形態】
【0057】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。
本発明の実施の形態にかかる光ピックアップレンズについて、図1に示す説明図を用いて説明する。本例にかかる光ピックアップレンズ1は、BD(Blu−ray Disc)の情報記録面に対して、波長395nm〜412nmの範囲内の波長のレーザ光を集光させる光学素子である。
【0058】
光ピックアップレンズ1において、記録または再生用のレーザ光が入射される入射面をレーザ面1A(レーザ光源側の面)とし、当該レーザ光が出射する出射面をディスク面1B(光ディスク側の面)とする。光ピックアップレンズ1の集光や発散に寄与する面より外側から外周にかけて円環状の構造体をコバといい、一般的にこの部分でレンズのホルダ等への取り付けが行われる。図1において、当該レーザ面1Aにおける、レンズ有効径の外側からレンズ外径までの形状11のうち、レンズの光軸と略垂直な平面をレーザ側コバ面11Aとする。同様に、当該ディスク面1Bにおける、レンズ有効径の外側からレンズ外径までの形状12のうち、レンズの光軸と略垂直な平面をディスク側コバ面12Aとする。
また、図1に示すように、オートコリメータ15から光ピックアップレンズ1のディスク面1Bの全面に平行光が照射され、レンズチルト調整が行われる。
【0059】
光ピックアップレンズ1の金型を切削又は研削により作製した。また、まず、光ピックアップレンズ1の形状に近い形状に金型を作製し、次いで、ニッケルメッキ等を施した後、切削又は研削により金型を完成させてもよい。さらに、耐性向上のため、金型に表面加工を施してもよい。
【0060】
光ピックアップレンズ1の硝材としては、ポリオレフィン樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ABS樹脂に代表される透明樹脂材料やガラス等を用いることができる。ただし、BDの記録再生には、通常、波長405nmのレーザ光を用いるため、波長395nmから415nmの範囲の波長のレーザ光の透過率が高い透明樹脂材料を用いることが好ましい。このような透明樹脂材料としては、シクロオレフィンポリマーや、環状オレフィンポリマーなどがある。また、これらの透明樹脂材料に、耐光性を向上させる添加剤を加えてもよい。光ピックアップレンズ1は、これら透明樹脂材料を射出成形して製造することができる。また、光ピックアップレンズ1は、2P(Photo−Polymer)法により成形されてもよい。また、光ピックアップレンズ1は、ある特定の波長で硬化する樹脂、例えば、紫外線硬化樹脂を金型に流しこんだ後に紫外線を照射して硬化させてもよい。また、エポキシなどの樹脂材料を金型に流しみ混合させて硬化させ、光ピックアップレンズ1を成形してもよい。また、特定の温度で硬化する樹脂を金型に流しみ混合させて硬化させ、光ピックアップレンズ1を成形してもよい。光ピックアップレンズ1の材料として、光学ガラスを用いてもよく研磨、または成形などを用いてもよい。
【0061】
光ピックアップレンズ1のレーザ面1Aは、(5)式によって表される単一非球面形状となっている。


(5)式において、Z(h)は、光軸からhの高さにおける光ピックアップレンズ1のレーザ面1Aのサグ量、hは、光軸からの高さ(光線高さ)、kは、光ピックアップレンズ1のレーザ面1Aの円錐係数、A4、A6、A8、A10、A12、A14、A16、・・・は、光ピックアップレンズ1のレーザ面1の非球面係数、Rは、曲率半径である。
また、光ピックアップレンズ1のディスク面1Bは、(6)式によって表される単一非球面形状となっている。


(6)式において、Z(h)は、光軸からhの高さにおける光ピックアップレンズ1のディスク面1Bのサグ量、hは、光軸からの高さ(光線高さ)、kは、光ピックアップレンズ1のディスク面1Bの円錐係数、A4、A6、A8、A10、A12、A14、A16、・・・は、光ピックアップレンズ1のディスク面1Aの非球面係数、Rは、曲率半径である。
【0062】
なお、光ピックアップレンズ1のレーザ面1A又はディスク面1Bは単一非球面形状に限られるものではない。例えば、光ピックアップレンズ1のレーザ面1A又はディスク面1Bに構造体が形成されていてもよい。例えば、レーザ面1A又はディスク面1Bに、ある一定の幅と深さをもった輪帯が同心円状にまたはスパイラル状に形成されていてもよい。また、当該輪帯間に形成される段差は、光ピックアップレンズ1の光軸から外周側に向かうにつれて、サグ量が増加するように形成されていてもよいし、光ピックアップレンズ1の光軸から外周側に向かうにつれて、サグ量が低減するように形成されていてもよい。
【0063】
また、当該輪帯間に形成される段差は、光ピックアップレンズ1の光軸から外周側に向かうにつれて、サグ量がいったん増加した後低減するように形成されていてもよい。また、当該輪帯間に形成される段差は、光ピックアップレンズ1の光軸から外周側に向かうにつれて、サグ量がいったん低減した後増加するように形成されていてもよい。
また、光ピックアップレンズ1に複数の当該輪帯が形成される場合には、光ピックアップレンズ1は、各輪帯での光の屈折を利用して集光するタイプ、隣り合う輪帯間で生じる光の干渉効果を利用して増幅された光を集光するタイプ、これら2つのタイプを包括するようなタイプのどのタイプであってもよい。そして、光ピックアップレンズ1のレーザ面1A又はディスク面1Bに複数の輪帯を形成する場合、各輪帯の面形状は同一の非球面形状であってもよいが、各輪帯の面形状はそれぞれ異なる非球面形状であってもよい。
【0064】
また、光ピックアップレンズ1のレーザ面1Aには、反射防止膜13が成膜されている。また、光ピックアップレンズ1のディスク面1Bには、反射防止膜14が成膜されている。また、光ピックアップレンズ1のレーザ面1A又はディスク面1Bに反射膜が成膜されていてもよい。反射防止膜13、14及び反射膜は、入射光の透過率を制御する膜である。これらの反射防止膜13、14及び反射膜の膜厚や材料は、所望する光ピックアップレンズ1の透過率性能を達成できるように選定される。また、反射防止膜13、14及び反射膜は、1層の薄膜からなる単層の構成でもよいし、複数の薄膜が積層された複数層の構成であってもよい。複数層の反射防止膜13、14及び反射膜は、異なる材料の薄膜を交互に積層させたものであってもよい。
また、各薄膜の層の光軸方向の膜厚は、光ピックアップレンズ1の中心から外周までの範囲において、ほぼ同じとなるように、反射防止膜13、14が光ピックアップレンズ1に成膜されてもよい。また、各薄膜の層の光軸方向の膜厚は、光ピックアップレンズ1の中心から外周までの範囲において、異なるように、反射防止膜13、14が光ピックアップレンズ1に成膜されてもよい。例えば、各薄膜の層の光軸方向の膜厚が、光ピックアップレンズ1の中心から外周に向かうにつれて厚くなるように、反射防止膜13、14が光ピックアップレンズ1に成膜された場合、より簡単に光ピックアップレンズ1の外周側の透過率を向上することができ、良好なスポット径を得やすくなるので、好ましい。
【0065】
薄膜の材料としては、AlF、AlN、Al、BaF、BeO、Bi、BiF、CaF、CdSe、CdS、CdTe、CeF、CeO、CsI、Cr、DyF、Fe、GaAs、GdF、Gd、Ge、HfO、HoF、In、ITO、LaF、La、LiF、MgF、MgO、NaF、NaAlF、Na、Al14、Nb、NdF、Nd、PbCl、PbF、PbTe、PbO、PbS、Pr11、Sb、Sb、ScSi、Si、SiO、Si、SiO、SnO、SrO、SrF、Ta、Te、Ti、TiN、TiNxWv、TiO、TlCl、ThF、ThO、V、WO、YF、Y、YbF、Yb、ZnO、ZnS、ZnSe、ZrO等が挙げられる。
【0066】
また、光ピックアップレンズ1の開口数NAは、0.84以上である。また、Brewster角が(1)式で表される場合に、光ピックアップレンズ1のレーザ面1Aの有効径の位置における接線角度は、Brewster角以上となっている。
θB=tan−1(n2/n1) ・・・・・・(1)
θB:Brewster角(°)
n1:空気の屈折率
n2:前記光ピックアップレンズの材質の波長404.7nmのときの屈折率
【0067】
また、少なくとも395nm以上412nm以下の範囲内の波長のレーザ光を、平行光となるように、且つリムインテンシティが80%以上となるように、光ピックアップレンズ1のレーザ面1Aに入射させた場合の透過率が(2)式を満たすように、光ピックアップレンズ1に反射防止膜13、14が成膜されている。
88.5≦((R1×Q1−R2×Q2)/(Q1−Q2))/R1×100≦105 ・・・・・・(2)
R1:有効径の100%の位置における透過率(%)
R2:有効径の90%の位置における透過率(%)
R3:有効径の80%の位置における透過率(%)
Q1:有効径の100%の範囲の開口面積(mm
Q2:有効径の90%の範囲の開口面積(mm
Q3:有効径の80%の範囲の開口面積(mm
【0068】
また、少なくとも395nm以上412nm以下の範囲内の波長のレーザ光を、平行光となるように、且つリムインテンシティが80%以上となるように、光ピックアップレンズ1のレーザ面1Aに入射させた場合の透過率が(3)式を満たすように、光ピックアップレンズ1に反射防止膜13、14が成膜されている。
92.7≦((R2×Q2−R3×Q3)/(Q2−Q3))/R1×100≦105 ・・・・・・(3)
R1:有効径の100%の位置における透過率(%)
R2:有効径の90%の位置における透過率(%)
R3:有効径の80%の位置における透過率(%)
Q1:有効径の100%の範囲の開口面積(mm
Q2:有効径の90%の範囲の開口面積(mm
Q3:有効径の80%の範囲の開口面積(mm
【0069】
また、少なくとも395nm以上412nm以下の範囲内の波長のレーザ光を、平行光となるように、且つリムインテンシティが80%以上となるように、光ピックアップレンズ1のレーザ面1Aに入射させた場合の透過率が(4)式を満たすように、光ピックアップレンズ1に反射防止膜13、14が成膜されている。
0.249≦α≦0.300 ・・・・・・(4)
α=((R1×Q1−R2×Q2)/R1)×((R2×Q2−R3×Q3)/R1)×((Q2−Q3)/(Q1−Q2))
R1:有効径の100%の位置における透過率(%)
R2:有効径の90%の位置における透過率(%)
R3:有効径の80%の位置における透過率(%)
Q1:有効径の100%の範囲の開口面積(mm
Q2:有効径の90%の範囲の開口面積(mm
Q3:有効径の80%の範囲の開口面積(mm
【0070】
また、光ピックアップレンズ1のディスク面1Bに630nm以上670nm以下の範囲内の波長のレーザ光が平行光で入射した場合の反射率が、反射防止膜が光ピックアップレンズ1のディスク面1Bに成膜されていない場合に、光ピックアップレンズ1のディスク面1Aに630nm以上670nm以下の範囲内の波長のレーザ光が平行光で入射した場合の反射率とほぼ同等となるように、ディスク面1Bに反射防止膜14が成膜されている。
【0071】
また、光ピックアップレンズ1は、ディスク面1Bであって、光ピックアップレンズ1の有効径の位置よりも外周側に、光ピックアップレンズの光軸に略垂直な平面であるコバ面12Aを備えている。そして、反射防止膜14は、ディスク面1Bの中心から当該コバ面12Aを含む範囲に、成膜されている。
【0072】
また、反射防止膜14が成膜されたコバ面12Aにおける630nm以上670nm以下の範囲内の波長のレーザ光の反射率は、反射防止膜14が成膜されていないコバ面12Aにおける630nm以上670nm以下の範囲内の波長のレーザ光の反射率から1.4%減算して得られる値以上となっている。
【0073】
また、コバ面12Aは、平行光が入射した場合に、当該平行光が反射するような面精度で加工された鏡面となっている。
【0074】
以上に説明した本実施形態にかかる光ピックアップレンズ1によれば、(2)式を満たすように、光ピックアップレンズ1に反射防止膜13、14が成膜されている。(2)式において、(R1×Q1−R2×Q2)/(Q1−Q2)は、有効径90%の位置から有効径100%の位置までの環状領域の透過率(%)を表している。そして、(2)式において、((R1×Q1−R2×Q2)/(Q1−Q2))/R1×100は、有効径90%の位置から有効径100%の位置までの環状領域の透過率を、有効径100%の位置における透過率によって規格化したものを表す。したがって、(2)式を満たすということは、有効径100%の位置における透過率で規格化した、有効径90%の位置から有効径100%の位置までの環状領域の透過率が88.5以上、105以下であればよいということを表している。換言すれば、有効径90%の位置から有効径100%の位置までの環状領域の透過率が、有効径の位置における透過率の88.5%以上、105%以下となるように、光ピックアップレンズ1に反射防止膜13、14が成膜されている。
【0075】
通常、開口数NAが0.84以上において、光ピックアップレンズ1の有効径の位置における接線角度が前記Brewster角以上となると、光ピックアップレンズ1の中央部分に入射するレーザ光の透過率と、光ピックアップレンズ1の外周部分に入射するレーザ光の透過率とが大きく異なってしまう。光ピックアップレンズ1の中心部分に入射するレーザ光の透過率に比べて、光ピックアップレンズ1の外周部分に入射するレーザ光の透過率が低いと、光ディスク上に形成される光スポットの径が大きくなってしまう。一方、光ピックアップレンズ1の中心部分に入射するレーザ光の透過率が、光ピックアップレンズ1の外周部分に入射するレーザ光の透過率に比べて低いと、光ディスク上に形成される光スポットの径は小さくなる。しかし、光ピックアップレンズ1の中心部分に入射するレーザ光の透過率が、光ピックアップレンズ1の外周部分に入射するレーザ光の透過率に比べて、極端に低いと、1次光の光量が多くなりすぎてしまう。換言すれば、((1次光ピーク強度)/(0次光ピーク強度))の値が悪化してしまう。
【0076】
本発明の実施の形態にかかる光ピックアップレンズ1においては、(2)式を満たすように、光ピックアップレンズ1に反射防止膜13、14が成膜される。そのため、有効径90%の位置から有効径100%の位置までの環状領域の透過率を、有効径の位置における透過率の88.5%以上、105%以下とすることができる。換言すれば、光ピックアップレンズ1の有効径の最外周に入射するレーザ光の透過率を、有効径90%の位置から有効径100%の位置までの環状領域に入射するレーザ光の透過率と略同等とすることができる。したがって、NAが0.84以上の光ピックアップレンズ1において良好なスポット径を得ることができる。
【0077】
また、有効径90%の位置から有効径100%の位置までの環状領域の透過率が、有効径の位置における透過率の105%以下となっている。そのため、光ピックアップレンズ1の中心部分に入射するレーザ光の透過率が、光ピックアップレンズ1の外周部分に入射するレーザ光の透過率に比べて、極端に低くなりすぎることを防ぐことができる。これにより、((1次光ピーク強度)/(0次光ピーク強度))の値の悪化を防ぐことができる。
【0078】
また、正弦条件を守らずに光ピックアップレンズ1を設計した場合、当該光ピックアップレンズ1の接線角度は小さくなる。そのため、NAが0.84以上の光ピックレンズ1では、正弦条件を守らない場合、接線角度がBrewster角に近づく。そのため、さらに、より良好なスポット径を得やすくなる。したがって、(2)式を満たすように、光ピックアップレンズ1に反射防止膜13、14を成膜することにより、正弦条件を守らない場合でも、良好なスポット径を得ることができる。
【0079】
また、正弦条件を守りつつ、且つ光ピックアップレンズ1の材料として屈折率の高い硝材を用いて、光ピックアップレンズ1を設計した場合、当該光ピックアップレンズ1の接線角度は小さくなる。具体的には、光ピックアップレンズ1の有効径の100%、90%、80%の位置の接線角度はBrewster角に近づく。すなわち、正弦条件を守らない場合と同様に、より良好なスポット径を得やすくなる。したがって、(2)式を満たすように、光ピックアップレンズ1に反射防止膜13、14を成膜することにより、正弦条件を守っている場合でも、光ピックアップレンズ1の材料として屈折率の高い硝材を用いると、良好なスポット径を得ることができる。
【0080】
さらに、正弦条件を守らずに、且つ光ピックアップレンズ1の材料として屈折率の高い硝材を用いた場合には、さらに、良好なスポット径を得やすくなる。そのため、(2)式を満たすとともに、光ピックアップレンズ1の材料として屈折率の高い硝材を用いると、良好なスポット径をさらに容易に得ることができる。
【0081】
また、(3)式を満たすように、光ピックアップレンズ1に反射防止膜13、14が成膜される。(3)式において、(R2×Q2−R3×Q3)/(Q2−Q3)は、有効径80%の位置から有効径90%の位置までの環状領域の透過率(%)を表している。そして、(3)式において、((R2×Q2−R3×Q3)/(Q2−Q3))/R1×100は、有効径80%の位置から有効径90%の位置までの環状領域の透過率を、有効径100%の位置における透過率によって規格化したものを表す。したがって、(3)式を満たすということは、有効径100%の位置における透過率で規格化した、有効径80%の位置から有効径90%の位置までの環状領域の透過率が92.7以上、105以下であればよいということを表している。換言すれば、有効径80%の位置から有効径90%の位置までの環状領域の透過率が、有効径の位置における透過率の92.7%以上、105%以下となるように、光ピックアップレンズ1に反射防止膜13,14が成膜されている。
【0082】
これにより、有効径80%の位置から有効径90%の位置までの環状領域の透過率を、有効径の位置における透過率の92.7%以上、105%以下とすることができる。換言すれば、光ピックアップレンズ1の有効径の最外周に入射するレーザ光の透過率を、有効径80%の位置から有効径90%の位置までの環状領域に入射するレーザ光の透過率と略同等とすることができる。したがって、NAが0.84以上の光ピックアップレンズ1において良好なスポット径を得ることができる。
【0083】
また、有効径80%の位置から有効径90%の位置までの環状領域の透過率が、有効径の位置における透過率の105%以下となっている。そのため、光ピックアップレンズ1の中心部分に入射するレーザ光の透過率が、光ピックアップレンズ1の外周部分に入射するレーザ光の透過率に比べて、極端に低くなりすぎることを防ぐことができる。これにより、((1次光ピーク強度)/(0次光ピーク強度))の値の悪化を防ぐことができる。
【0084】
また、正弦条件を守らずに光ピックアップレンズ1を設計した場合、正弦条件を守りつつ、且つ光ピックアップレンズ1の材料として屈折率の高い硝材を用いて、光ピックアップレンズ1を設計した場合、正弦条件を守らずに、且つ光ピックアップレンズ1の材料として屈折率の高い硝材を用いた場合、のいずれの場合においても、(3)式を満たすように、光ピックアップレンズ1に反射防止膜13,14を成膜することにより、良好なスポット径を得ることができる。
【0085】
また、一般に、光ピックアップ装置で使用されるレーザ光の強度分布は、ガウシアンカーブとなっている。そのため、光ピックアップレンズ1の外周側に近くなる程、レーザ光の強度が弱くなる。したがって、光ピックアップレンズ1は、当該光ピックアップレンズ1に入射するレーザ光の強度が強い範囲で性能を十分に発揮する必要がある。そのため、光ピックアップレンズ1に入射するレーザ光の強度が強い範囲、即ち、有効径よりも若干内側の透過率である、有効径80%の位置から有効径90%の位置までの環状領域の透過率について、(3)式を規定した。これにより、上記効果をより確実に奏することができる。
【0086】
さらに、(4)式を満たすように光ピックアップレンズ1に反射防止膜が成膜されている。(4)式において、((R1×Q1−R2×Q2)/R1)は、有効径90%の位置から有効径100%の位置までの環状領域の透過光量の有効径100%の位置における透過光量に対する開口光線占有率を表している。また、(4)式において、((R2×Q2−R3×Q3)/R1)は、有効径80%の位置から有効径90%の位置までの環状領域の透過光量の有効径100%の位置における透過光量に対する開口光線占有率を表している。また、(4)式において、((Q2−Q3)/(Q1−Q2))は、有効径90%の位置から有効径100%の位置までの環状領域の開口面積に対する、有効径80%の位置から有効径90%の位置までの環状領域の開口面積の比率を表している。すなわち、(4)式において、αは、有効径90%の位置から有効径100%の位置までの環状領域の透過光量の有効径100%の位置における透過光量に対する開口光線占有率と、有効径80%の位置から有効径90%の位置までの環状領域の透過光量の有効径100%の位置における透過光量に対する開口光線占有率と、有効径90%の位置から有効径100%の位置までの環状領域の開口面積に対する、有効径80%の位置から有効径90%の位置までの環状領域の開口面積の比率とを掛け合わせたものを表す。
【0087】
これにより、αの値を指標とすることにより、有効径90%の位置から有効径100%の位置までの環状領域の透過光量と、有効径80%の位置から有効径90%の位置までの環状領域の透過光量とを同時に調整することができる。しかし、最外周部分にあたる有効径90%の位置から有効径100%の位置までの環状領域の透過光量の方が、最外周部分より内側の有効径80%の位置から有効径90%の位置までの環状領域の透過光量よりも、光スポットの形成性能において重要である。そのため、(4)式では、それぞれの環状領域の開口面積を用いて重み付けを行った。
そして、(4)式を満たすように、光ピックアップレンズ1に反射防止膜13,14を成膜することにより、(2)式及び(3)式を満たす光ピックアップレンズ1を容易に製造することができる。これにより、NAが0.84以上の光ピックアップレンズ1において、良好なスポット径が得られるとともに、((1次光ピーク強度)/(0次光ピーク強度))の値の悪化を防ぐことができる。
【0088】
また、現在最も使用されているレンズチルト用のオートコリメータには、630nm以上670nm以下の光が利用される。そして、630nm以上670nm以下のレーザ光が光ピックアップレンズの光ディスク側の面に成膜された反射防止膜を透過する場合、当該レーザ光は、光ピックアップレンズのレーザ光源側の面に到達する。このとき、光ピックアップレンズの光ディスク側の面に入射する平行光は、光ピックアップレンズの光ディスク側の面の有効径の外側であって、光ピックアップレンズの光軸に略垂直な面にも入射する場合がある。光ピックアップレンズの光ディスク側の面に入射し、レーザ光源側の面に到達するレーザ光のレーザ光源側の面への入射角をθ、光ピックアップレンズの屈折率をnとすると、入射角θがsin−1(1/n)よりも大きくなると、全反射する。例えば、n=1.515とした場合、θ=41.14°となる。図2に示すNA=0.85の光ピックアップレンズを例に挙げると、光ピックアップレンズの光軸から直径φ=1.34mmより外側の光ディスク面に入射したレーザ光は、レーザ光源側の面において全反射されることになる。そして、図35に示す光ピックアップレンズの光ディスク側の有効径φは2.40mmであるので、面積比で換算すると、1−1.34/2.40=0.69となる。したがって、最大で69%のレーザ光が全反射され、光ディスク側の面に戻ることになる。ここで、光ディスク側の面において、光軸から直径φ=2.41mm〜直径φ=2.66mmまでに、同心円状の鏡面が形成されていたとする。そして、当該鏡面で反射される光量を、直径φ=2.40mmを基準にして表すと、(2.66−2.41)/2.40=0.22となる。すなわち、当該鏡面で反射されるレーザ光は22%である。したがって、鏡面で反射される光量より、レーザ光源側の面で反射される光量の方が圧倒的に多いことが分かる。実際には、レーザ光源側の面で反射されたレーザ光の全てがレンズチルト用のオートコリメータに戻るわけではない。
【0089】
そのため、レンズチルト用のオートコリメータには、鏡面以外で反射されたレーザ光以外のレーザ光が集光されてしまう。なお、DVDに用いられるNAが0.65の光ピックアップレンズでは、レーザ光源側の面の形状が、NAが0.85の光ピックアップレンズよりも接線角度が緩い角度となる形状となっている。そのため、DVDに用いられる光ピックアップレンズでは、このような全反射による影響は小さい。
【0090】
ここで、本発明の実施の形態にかかる光ピックアップレンズ1のディスク面1Bには、反射防止膜14が成膜されていないときと同程度の反射率で、630nm以上670nm以下の範囲内の波長のレーザ光が平行光で入射した場合に、当該レーザ光を反射する反射防止膜14が成膜される。そのため、630nm以上670nm以下のレーザ光がレーザ面1Aに到達することを防止することができる。そのため、レーザ面1Aにおける全反射の影響を低減することができる。したがって、より適切にレンズチルト調整を行うことができる。また、従来から用いられているレンズチルト用のオートコリメータを用いて、NAが0.84以上の光ピックアップレンズ1のレンズチルト調整を行うことができる。
【0091】
さらに、光ピックアップレンズ1のディスク面1Bの中心からコバ面12Aを含む範囲に、反射防止膜14が成膜されている。
当該コバ面12Aに反射防止膜14が形成されない場合、コバ面11Aで、レーザ光が反射される可能性がある。この場合、レンズチルト調整用のオートコリメータで検出される集光光の明瞭性が低下してしまう。そのため、コバ面12Aに反射防止膜14が成膜されていると、当該弊害を防止することができ、さらに好ましい。
【0092】
特に、反射防止膜14が成膜されたコバ面12Aにおける630nm以上670nm以下の範囲内の波長のレーザ光の反射率は、反射防止膜14が成膜されていないコバ面12Aにおける630nm以上670nm以下の範囲内の波長のレーザ光の反射率から1.4%減算して得られる値以上となっている。
現行のDVD/CD互換レンズでは、当該コバ面に反射防止膜を成膜していないものや、当該コバ面に部分的にのみ反射防止膜を成膜しているものが多い。このことから、当該コバ面に反射防止膜を成膜しなくてもレンズチルト調整用のオートコリメータは、戻り光を検出できていると考えられる。そこで、当該コバ面12Aに反射防止膜14を成膜した場合の反射率を、反射防止膜14を成膜していない場合の反射率よりも1.4%低減することを下限目標とすれば十分である。
【0093】
以下に、本発明にかかる実施例を比較例とともに説明する。なお、実施例及び比較例ではスポット測定器を利用して本発明の優位性を示している。しかし、実際に、光ピックアップレンズ1を光学ドライブなどの光学機器に搭載した場合でも、実施例の場合と同様に、良好なスポット径を得ることができる。また、実際の光ピックアップレンズは、想定される使用環境において、波面収差が50mλrms以下となるように設計される。ここで使用環境とは、レーザ光の波長、温度の他、光ピックアップレンズが単レンズであるか、位相板や回折板などが光ピックアップレンズの前後に挿入されているかなどの条件を意味する。また、光ピックアップレンズの前後に位相板や回折板を挿入する場合、当該位相板や回折板は、光ピックアップレンズよりも弱いパワーを有していてもよい。フィゾー法の波面収差測定を行う干渉計を用いて波面収差を測定する場合、光ピックアップレンズのレーザ光源側の面に平行光を入射し、光ピックアップレンズの光ディスク側の面と干渉計の参照球面との間に、光ディスクの透明層に相当する平板を光軸に垂直になるように挿入する。そして、当該平板の厚さを変更することにより、レーザ光の波長、温度、光ディスクの透明層の厚さなどの負荷を吸収した波面収差を測定することができる。換言すれば、波面収差が50mλrms以下となるような厚さの平板を挿入することは、波面収差が50mλrms以下となる使用環境を見つけたことと同じとなる。そして、波面収差が50mλrms以下となるような厚さの平板を挿入した状態で、スポット径を計測することにより、実際の使用環境におけるスポット径を計測することができる。なお、本発明の範囲は、実施例により限定されるものではない。また、波面収差の測定はフィゾー法、マッハチェンダー法、シャック-ハルトマン方式など、どの方式を用いてもよい。
【0094】
実施例1乃至実施例13にかかる光ピックアップレンズ1のレーザ面1Aの非球面係数を図2(a)に示す。また、比較例1乃至比較例13にかかる光ピックアップレンズのレーザ面の非球面係数は、実施例1乃至実施例13にかかる光ピックアップレンズ1のレーザ面1Aの非球面係数と同じである。また、実施例1乃至実施例13にかかる光ピックアップレンズ1のディスク面1Bの非球面係数を図2(b)に示す。また、比較例1乃至比較例13にかかる光ピックアップレンズのディスク面の非球面係数は、実施例1乃至実施例13にかかる光ピックアップレンズ1のディスク面1Bの非球面係数と同じである。また、実施例1乃至実施例13にかかる光ピックアップレンズ1のレンズデータを図2(c)に示す。また、比較例1乃至比較例13にかかる光ピックアップレンズのレンズデータは、実施例1乃至実施例13にかかる光ピックアップレンズ1のレンズデータと同じである。また、実施例1乃至実施例13、及び比較例1乃至比較例13の光学系の光学データを図2(d)に示す。
【0095】
また、図3に示す表に、実施例1乃至実施例13、及び比較例1乃至比較例13で用いた反射防止膜の組成を示す。図3において、一層目が光ピックアップレンズ1と接触する薄膜であり、一層目の上に、二層目、三層目、四層目の順で、各薄膜が積層されている。また、図3の表において、「−」は、当該薄膜が積層されないことを表す。例えば、実施例1にかかる光ピックアップレンズ1のレーザ面1Aでは、二層目及び三層目が「−」となっている。これは、当該レーザ面1Aには、一層目のSiOの次に、四層目のSiOが積層されることを表す。すなわち、実施例1にかかる光ピックアップレンズ1のレーザ面1Aには、二層構造の反射防止膜13が成膜されていることを表している。
また、レーザ面1A及びディスク面1Bの何れにおいても、一層目はSiOであり、四層目はSiOである。つまり、光ピックアップレンズ1に接触する薄膜はSiOであり、空気と接触する薄膜はSiOである。
また、図3に示すように、比較例13にかかる光ピックアップレンズには反射防止膜を全く成膜していない。
【0096】
また、実施例1乃至実施例12では、光ピックアップレンズ1のディスク面1Bの中心からコバ面12Aを含む範囲に反射防止膜14を成膜した。同様に、比較例1乃至比較例12では、光ピックアップレンズのディスク面の中心からコバ面を含む範囲に反射防止膜を成膜した。一方、実施例13では、光ピックアップレンズ1のディスク面1Bの中心から有効径の範囲に反射防止膜14を成膜した。すなわち、実施例13では、光ピックアップレンズ1のディスク面1Bのコバ面12Aには、反射防止膜14を成膜していない。
また、実施例1乃至13では、各薄膜の層の光軸方向の膜厚が、光ピックアップレンズ1の中心から外周までの範囲及びコバ面11A、12Aにおいて、ほぼ同じとなるように、反射防止膜13、14を光ピックアップレンズ1に成膜した。同様に、比較例1乃至比較例12では、各薄膜の層の光軸方向の膜厚が、光ピックアップレンズの中心から外周までの範囲及びコバ面において、ほぼ同じとなるように、反射防止膜を光ピックアップレンズに成膜した。
なお、各薄膜の層の光軸方向の膜厚が、光ピックアップレンズ1の中心から外周に向かうにつれて厚くなるように、反射防止膜13、14が光ピックアップレンズ1に成膜された場合、より簡単に光ピックアップレンズ1の外周側の透過率を向上することができ、良好なスポット径を得やすくなるので、好ましい。
【0097】
また、実施例1乃至実施例13にかかる光ピックアップレンズ1、反射防止膜13、14、光ディスクの透明基板(光ディスク内光透過層)の各波長における屈折率の値を図4に示す。また、図4に、比較例1乃至比較例13にかかる光ピックアップレンズ、反射防止膜、光ディスクの透明基板(光ディスク内光透過層)の各波長における屈折率の値を示す。
また、実施例1乃至実施例7にかかる光ピックアップレンズ1の反射率を図5乃至図11に、実施例8及び実施例13にかかる光ピックアップレンズ1の反射率を図12に、実施例9乃至実施例12光ピックアップレンズ1の反射率を図13乃至図16に示す。また、比較例1乃至比較例13にかかる光ピックアップレンズの反射率を図17乃至図29に示す。また、図5乃至図16において、レーザ面11Aの反射率を図5(a)乃至図16(a)に、ディスク面12Aの反射率を図5(b)乃至図16(b)に示す。また、図17乃至図29において、レーザ面の反射率を図17(a)乃至図29(a)に、ディスク面の反射率を図17(b)乃至図29(b)に示す。
【0098】
また、図30乃至図32に、実施例1乃至実施例12の光ピックアップレンズ1、及び比較例1乃至比較例13の光ピックアップレンズの透過率の計算結果を示す。図30乃至図32では、実施例1乃至実施例12の光ピックアップレンズ1、及び比較例1乃至比較例13の光ピックアップレンズに、波長405nmのレーザ光を、平行光となるように、且つリムインテンシティが100%となるように入射させた場合の透過率を示す。なお、図30乃至図32に示す透過率を計算する場合に想定した光学系には、図2(d)に示す光ディスク(面番号3及び面番号4)は入っていない。
また、図30乃至図32に示す実施例において、開口径φ2.4mm、開口径φ2.16mm、開口径φ1.92mmは、それぞれ、光ピックアップレンズ1の光軸から有効径の100%の位置、有効径90%の位置、有効径80%の位置を示す。図30乃至図32の比較例においても同様である。
【0099】
また、図30乃至図32において、環状開口径φ2.4〜2.16とは、有効径90%の位置から有効径100%の位置までの環状領域を表す。また、環状開口径φ2.16〜1.92とは、有効径80%の位置から有効径90%の位置までの環状領域を表す。
また、図30では、光学系にレンズがない場合の透過率を100%とした場合の各位置での透過率を示す。
また、図31では、有効径100%(開口径φ2.4mm)の位置の透過率を100%として規格化した場合の、有効径90%の位置から有効径100%の位置までの環状領域(環状開口径φ2.4〜2.16)の透過率、有効径80%の位置から有効径90%の位置までの環状領域(環状開口径φ2.16〜1.92)の透過率を示す。
また、図32には、有効径90%の位置から有効径100%の位置までの環状領域(環状開口径φ2.4〜2.16)の透過光量の有効径100%の位置における透過光量に対する開口光線占有率、有効径80%の位置から有効径90%の位置までの環状領域(環状開口径φ2.16〜1.92)の透過光量の有効径100%の位置における透過光量に対する開口光線占有率、及び(4)式のα(外周部光線占有係数)を示す。
【0100】
また、図33に、実施例1乃至実施例12の光ピックアップレンズ1、及び比較例1乃至比較例13の光ピックアップレンズによって得られる光スポットの径と、((1次光ピーク強度)/(0次光ピーク強度))の値を示す。なお、図33では、実施例1乃至実施例12の光ピックアップレンズ1、及び比較例1乃至比較例13の光ピックアップレンズに、波長405nmのレーザ光を、平行光となるように、且つリムインテンシティが100%となるように入射させた場合の値を示す。
【0101】
図3に示すように、比較例13にかかる光ピックアップレンズには反射防止膜が形成されていない。そこで、比較例13にかかる光ピックアップレンズよりもスポット径が小さくなるように光ピックアップレンズ1の反射防止膜13、14を成膜することを目標とした。
【0102】
図31に示すように、実施例1乃至実施例6及び実施例8乃至実施例12において、(2)式を満たすように、光ピックアップレンズ1に反射防止膜13、14が成膜されている。また、実施例1乃至実施例12において、(3)式を満たすように、光ピックアップレンズ1に反射防止膜13、14が成膜されている。
さらに、図32に示すように、実施例1乃至実施例12において、(4)式を満たすように、光ピックアップレンズ1に反射防止膜13、14が成膜されている。
そして、図33に示すように、実施例1乃至実施例12にかかる光ピックアップレンズ1によって得られる光スポットのスポット径は、比較例13にかかる光ピックアップレンズによって得られる光スポットのスポット径よりも小さくなった。
また、図33に示すように、実施例1乃至実施例12にかかる光ピックアップレンズ1の((1次光ピーク強度)/(0次光ピーク強度))の値も、比較例13の((1次光ピーク強度)/(0次光ピーク強度))の値よりも最大で、1割程度しか悪化していない。
したがって、実施例1乃至12にかかる光ピックアップレンズ1において、良好なスポット径が得られるとともに、((1次光ピーク強度)/(0次光ピーク強度))の値の悪化を防ぐことができた。
【0103】
また、図34に、実施例1乃至実施例13にかかる光ピックアップレンズ1のディスク面12Aの全面、比較例1乃至比較例13にかかる光ピックアップレンズのディスク面の全面に、オードコリメータからレーザ光を照射した場合の反射状況を示す。
また、図34では、実施例1乃至実施例13の光ピックアップレンズ1、比較例1乃至比較例13の光ピックアップレンズと同じ材質の平板に、実施例1乃至実施例13にかかる反射防止膜14、比較例1乃至比較例13にかかる反射防止膜を成膜したものにオートコリメータから平行光を当該平板に略垂直に入射させた場合の反射率を示す。
また、波長630nm〜670nmのレーザ光がオートコリメータに使用されることが多いため、図34では、波長630nm、650nm、670nmのレーザ光の反射状況及び反射率について示した。
【0104】
図34において、「×」は、オートコリメータにおいて検出された光スポットの明瞭さが悪いことを表す。また、図34において、「○」は、オートコリメータにおいて検出された光スポットが明るすぎず暗すぎず、良好であることを表す。また、図34において、「◎」は、オートコリメータにおいて検出された光スポットが明るく、場合によっては、オートコリメータのスリット幅や光量出力を実用範囲内で調整する必要があることを表す。
【0105】
比較例13の光ピックアップレンズのディスク面には反射防止膜が成膜されていない。そこで、比較例13の光ピックアップレンズの反射率を基準とすると、図34に示すように、比較例13の光ピックアップレンズの反射率は、630nm、650nm、670nmにおいて、4.1%程度である。そして、当該反射率4.1%から1.4%を差し引くと2.7%となる。したがって、反射率が2.7%より下回ると、オートコリメータにおいて検出される光スポットの明瞭さが悪くなる。
実施例1乃至13にかかる光ピックアップレンズ1の反射率は、図34に示すように、630nm、650nm、670nmにおいて、全て、2.7%より大きい。したがって、実施例1乃至13にかかる光ピックアップレンズ1では、オートコリメータにおいて検出される光スポットが良好となっている。
一方、比較例9乃至比較例13にかかる光ピックアップレンズの反射率は、630nm、650nm、670nmにおいて、2.7%より小さい。特に、比較例9及び比較例10では、光ピックアップレンズのレーザ面で反射が起こっているため、オートコリメータにおいて、不明瞭な光スポットが2個検出されてしまった。
【0106】
また、実施例13では、コバ面に反射防止膜が成膜されていない。また、実施例13にかかる反射防止膜は、実施例8にかかる反射防止膜と同一のものである。そして、実施例8と実施例13とを比較すると、実施例13にかかる光ピックアップレンズ1の方が、オートコリメータにおいて検出される光スポットの光量が暗い。これは、実施例13にかかる光ピックアップレンズ1では、ディスク面のコバ面に反射防止膜が成膜されていないため、ディスク面のコバ面をレーザ光が透過してしまい、レーザ面のコバ面において反射されているためと考えられる。したがって、オートコリメータにおいて検出される光スポットの光量をより良好にしたい場合には、コバ面にまで反射防止膜を成膜したほうがよい。
【符号の説明】
【0107】
1 光ピックアップレンズ
1A レーザ面(レーザ光源側の面)
1B ディスク面(光ディスク側の面)
11A コバ面(光ピックアップレンズの光軸に略垂直な面)
12A コバ面(光ピックアップレンズの光軸に略垂直な面)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザ光を光ディスクに集光する開口数NAが0.84以上の光ピックアップレンズであって、
Brewster角が(1)式で表される場合に、前記光ピックアップレンズの有効径の位置における接線角度が前記Brewster角以上であり、
少なくとも395nm以上412nm以下の範囲内の波長のレーザ光を、平行光となるように、且つリムインテンシティが80%以上となるように、入射させた場合の透過率が(2)式を満たすように前記光ピックアップレンズに反射防止膜が成膜されている光ピックアップレンズ。
θB=tan−1(n2/n1) ・・・・・・(1)
θB:Brewster角(°)
n1:空気の屈折率
n2:前記光ピックアップレンズの材質の波長404.7nmのときの屈折率
88.5≦((R1×Q1−R2×Q2)/(Q1−Q2))/R1×100≦105 ・・・・・・(2)
R1:有効径の100%の位置における透過率(%)
R2:有効径の90%の位置における透過率(%)
R3:有効径の80%の位置における透過率(%)
Q1:有効径の100%の範囲の開口面積(mm
Q2:有効径の90%の範囲の開口面積(mm
Q3:有効径の80%の範囲の開口面積(mm
【請求項2】
レーザ光を光ディスクに集光する開口数NAが0.84以上の光ピックアップレンズであって、
Brewster角が(1)式で表される場合に、前記光ピックアップレンズの有効径の位置における接線角度が前記Brewster角以上であり、
少なくとも395nm以上412nm以下の範囲内の波長のレーザ光を、平行光となるように、且つリムインテンシティが80%以上となるように、入射させた場合の透過率が(3)式を満たすように前記光ピックアップレンズに反射防止膜が成膜されている光ピックアップレンズ。
θB=tan−1(n2/n1) ・・・・・・(1)
θB:Brewster角(°)
n1:空気の屈折率
n2:前記光ピックアップレンズの材質の波長404.7nmのときの屈折率
92.7≦((R2×Q2−R3×Q3)/(Q2−Q3))/R1×100≦105 ・・・・・・(3)
R1:有効径の100%の位置における透過率(%)
R2:有効径の90%の位置における透過率(%)
R3:有効径の80%の位置における透過率(%)
Q1:有効径の100%の範囲の開口面積(mm
Q2:有効径の90%の範囲の開口面積(mm
Q3:有効径の80%の範囲の開口面積(mm
【請求項3】
(3)式を満たす請求項1に記載の光ピックアップレンズ。
92.7≦((R2×Q2−R3×Q3)/(Q2−Q3))/R1×100≦105 ・・・・・・(3)
【請求項4】
レーザ光を光ディスクに集光する開口数NAが0.84以上の光ピックアップレンズであって、
Brewster角が(1)式で表される場合に、前記光ピックアップレンズの有効径の位置における接線角度が前記Brewster角以上であり、
少なくとも395nm以上412nm以下の範囲内の波長のレーザ光を、平行光となるように、且つリムインテンシティが80%以上となるように、入射させた場合の透過率が(4)式を満たすように前記光ピックアップレンズに反射防止膜が成膜されている光ピックアップレンズ。
θB=tan−1(n2/n1) ・・・・・・(1)
θB:Brewster角(°)
n1:空気の屈折率
n2:前記光ピックアップレンズの材質の波長404.7nmのときの屈折率
0.249≦α≦0.300 ・・・・・・(4)
α=((R1×Q1−R2×Q2)/R1)×((R2×Q2−R3×Q3)/R1)×((Q2−Q3)/(Q1−Q2))
R1:有効径の100%の位置における透過率(%)
R2:有効径の90%の位置における透過率(%)
R3:有効径の80%の位置における透過率(%)
Q1:有効径の100%の範囲の開口面積(mm
Q2:有効径の90%の範囲の開口面積(mm
Q3:有効径の80%の範囲の開口面積(mm
【請求項5】
前記光ピックアップレンズの前記光ディスク側の面に、前記反射防止膜が成膜されている場合に、前記光ピックアップレンズの前記光ディスク側の面に630nm以上670nm以下の範囲内の波長のレーザ光が平行光で入射した場合の反射率が、前記反射防止膜が前記光ピックアップレンズの前記光ディスク側の面に成膜されていない場合に、前記光ピックアップレンズの前記光ディスク側の面に630nm以上670nm以下の範囲内の波長のレーザ光が平行光で入射した場合の反射率とほぼ同等である請求項1乃至4の何れか一項に記載の光ピックアップレンズ。
【請求項6】
前記光ピックアップレンズの前記光ディスク側の面であって、前記光ピックアップレンズの有効径の位置よりも外周側に、前記光ピックアップレンズの光軸に略垂直な平面を備え、
前記光ピックアップレンズの前記光ディスク側の面であって、前記光ピックアップレンズの光軸から前記略垂直な平面を含む範囲に、前記反射防止膜が成膜されている請求項5に記載の光ピックアップレンズ。
【請求項7】
前記反射防止膜が成膜された前記略垂直な平面における630nm以上670nm以下の範囲内の波長のレーザ光の反射率は、前記反射防止膜が成膜されていない前記略垂直な平面における630nm以上670nm以下の範囲内の波長のレーザ光の反射率から1.4%減算して得られる値以上である請求項6に記載の光ピックアップレンズ。
【請求項8】
前記略垂直な平面は、平行光が入射した場合に、当該平行光が反射するような面精度で加工された鏡面である請求項5乃至8の何れか一項に記載の光ピックアップレンズ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【図37】
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【図38】
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【図39】
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【公開番号】特開2010−205322(P2010−205322A)
【公開日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−47952(P2009−47952)
【出願日】平成21年3月2日(2009.3.2)
【出願人】(000005810)日立マクセル株式会社 (2,366)
【Fターム(参考)】