光ピックアップ装置
【課題】迷光による影響を円滑に抑制すると共に、小型化が可能な光ピックアップ装置を提供する。
【解決手段】光ピックアップ装置は、半導体レーザ101と、2波長レーザ102と、4つの傾斜面が形成されたプリズムからなる分光素子111と、アナモレンズ112と、光検出器113を備えている。半導体レーザ101から出射されるBD光と、2波長レーザ102から出射されるDVD光は、ダイクロイックミラー103によって光軸が整合されている。BD光とDVD光の反射光は、分光素子111とアナモレンズ112によって離散される。離散されたBD光の4つの光束と、離散されたDVD光の4つの光束は、光検出器113上に配された共通のセンサ部にて受光される。これにより、BD光とDVD光にそれぞれ対応するセンサ部を別々に設置する必要がないため、光ピックアップ装置を小型化することが可能となる。
【解決手段】光ピックアップ装置は、半導体レーザ101と、2波長レーザ102と、4つの傾斜面が形成されたプリズムからなる分光素子111と、アナモレンズ112と、光検出器113を備えている。半導体レーザ101から出射されるBD光と、2波長レーザ102から出射されるDVD光は、ダイクロイックミラー103によって光軸が整合されている。BD光とDVD光の反射光は、分光素子111とアナモレンズ112によって離散される。離散されたBD光の4つの光束と、離散されたDVD光の4つの光束は、光検出器113上に配された共通のセンサ部にて受光される。これにより、BD光とDVD光にそれぞれ対応するセンサ部を別々に設置する必要がないため、光ピックアップ装置を小型化することが可能となる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ピックアップ装置に関するものであり、特に、複数の記録層が積層された記録媒体に対してレーザ光を照射する際に用いて好適なものである。
【背景技術】
【0002】
近年、光ディスクの大容量化に伴い、記録層の多層化が進んでいる。一枚のディスク内に複数の記録層を含めることにより、ディスクのデータ容量を顕著に高めることができる。記録層を積層する場合、これまでは片面2層が一般的であったが、最近では、さらに大容量化を進めるために、片面に3層以上の記録層が配されたディスクも実用化されている。ここで、記録層の積層数を増加させると、ディスクの大容量化を促進できる。しかし、その一方で、記録層間の間隔が狭くなり、層間クロストークによる信号劣化が増大する。
【0003】
記録層を多層化すると、記録/再生対象とされる記録層(ターゲット記録層)からの反射光が微弱となる。このため、ターゲット記録層の上下にある記録層から、不要な反射光(迷光)が光検出器に入射すると、検出信号が劣化し、フォーカスサーボおよびトラッキングサーボに悪影響を及ぼす惧れがある。したがって、このように記録層が多数配されている場合には、適正に迷光を除去して、光検出器からの信号を安定化させる必要がある。
【0004】
以下の特許文献1には、記録層が多数配されている場合に、適正に迷光を除去し得る光ピックアップ装置の新たな構成が示されている。この構成によれば、光検出器の受光面上に、信号光のみが存在する領域を作ることができる。この領域に、光検出器のセンサを配置することで、検出信号に対する迷光による影響を抑制することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−211770号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記光ピックアップ装置では、異なる種類の記録媒体に対して読み取りまたは書き込みが行われる場合、たとえば、各記録媒体に対応した複数のレーザ光が装置内に配される。これら複数のレーザ光は、それぞれ、対応する記録媒体に照射され、記録媒体によって反射された反射光は、共通の光学系により光検出器上に導かれる。この場合、光検出器上に、各記録媒体に対応したレーザ光を受光するためのセンサ部を設ける必要があるため、光検出器が大きくなる。これにより、光ピックアップ装置を小型化し難くなるとの問題が生じる。
【0007】
本発明は、このような点に鑑みてなされたものであり、迷光による影響を円滑に抑制すると共に、小型化が可能な光ピックアップ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の主たる態様に係る光ピックアップ装置は、所定波長の第1のレーザ光を出射する第1のレーザ光源と、前記波長とは異なる波長の第2のレーザ光を出射する第2のレーザ光源と、前記第1および第2のレーザ光の光軸を整合させる光学素子と、前記第1および第2のレーザ光を記録媒体上に収束させる対物レンズ部と、前記記録媒体によって反射された前記第1および第2のレーザ光の反射光が入射するとともに、第1の方向に前記反射光を収束させて第1の焦線を生成し、且つ、前記第1の方向に垂直な第2の方向に前記
反射光を収束させて第2の焦線を生成する非点収差部と、前記第1および第2の方向にそれぞれ平行な2つの直線で、前記第1および第2のレーザ光の反射光を4つの光束に分割したときの各光束を互いに離散させる分光部と、離散された前記第1および第2のレーザ光の反射光の各光束を受光して検出信号を出力する光検出器と、を備える。ここで、前記分光部は、複数の傾斜面を備える少なくとも一つのプリズムからなり、前記光検出器には、前記第1のレーザ光の反射光の各光束と、前記第2のレーザ光の反射光の各光束とを受光する共通のセンサ部が配されている。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、迷光による影響を円滑に抑制すると共に、小型化が可能な光ピックアップ装置を提供することができる。
【0010】
本発明の効果ないし意義は、以下に示す実施の形態の説明により更に明らかとなろう。ただし、以下の実施の形態は、あくまでも、本発明を実施する際の一つの例示であって、本発明は、以下の実施の形態によって何ら制限されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】実施の形態に係る技術原理(光線の収束状態)を説明する図である。
【図2】実施の形態に係る技術原理(光束の分布状態)を説明する図である。
【図3】実施の形態に係る技術原理(信号光と迷光の分布状態)を説明する図である。
【図4】実施の形態に係る技術原理(光束の分離方法)を説明する図である。
【図5】実施の形態に係るセンサ部の配置方法を示す図である。
【図6】実施の形態に係る技術原理の好ましい適用範囲を示す図である。
【図7】実施例に係る光ピックアップ装置の光学系を示す図およびアナモレンズに入射する光束が受ける収束作用を示す図である。
【図8】実施例に係る分光素子の構成を示す斜視図および分光素子によりレーザ光の進行方向が変化させられることを模式的に示す図である。
【図9】実施例に係る光検出器のセンサレイアウトを示す図である。
【図10】変更例1に係る光ピックアップ装置の光学系を示す図およびレーザ光の回折効率を示す図である。
【図11】変更例2に係る光ピックアップ装置の光学系を示す図および複合レンズの構成を示す斜視図である。
【図12】変更例3に係る光ピックアップ装置の光学系を示す図である。
【図13】変更例4に係る光ピックアップ装置の光学系を示す図である。
【図14】変更例4に係るハーフミラーと非点収差板の構成を示す斜視図およびハーフミラーと非点収差板によりレーザ光の進行方向が変化させられることを模式的に示す図である。
【図15】変更例4に係るハーフミラーと非点収差板の構成を示す斜視図およびハーフミラーと非点収差板によりレーザ光の進行方向が変化させられることを模式的に示す図である。
【図16】他の変更例に係る光ピックアップ装置の光学系を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態につき図面を参照して説明する。
【0013】
<技術的原理>
まず、図1ないし図6を参照して、本実施の形態に適用される技術的原理について説明する。
【0014】
図1は、光線の収束状態を示す図である。同図(a)は、ターゲット記録層によって反
射されたレーザ光(信号光)、ターゲット記録層よりも深い層によって反射されたレーザ光(迷光1)、ターゲット記録層よりも浅い層によって反射されたレーザ光(迷光2)の収束状態を示す図である。同図(b)は、本原理に用いるアナモレンズの構成を示す図である。
【0015】
同図(b)を参照して、アナモレンズは、レンズ光軸に平行に入射するレーザ光に対し、曲面方向と平面方向に収束作用を付与する。ここで、曲面方向と平面方向は、互いに直交している。また、曲面方向は、平面方向に比べ曲率半径が小さく、アナモレンズに入射するレーザ光を収束させる効果が大きい。
【0016】
なお、ここでは、アナモレンズにおける非点収差作用を簡単に説明するために、便宜上、“曲面方向”と“平面方向”と表現しているが、実際には、互いに異なる位置に焦線を結ぶ作用がアナモレンズによって生じれば良く、図1(b)中の“平面方向”におけるアナモレンズの形状を平面に限定するものではない。なお、アナモレンズに収束状態でレーザ光が入射する場合は、“平面方向”におけるアナモレンズの形状は直線状(曲率半径=∞)となり得る。
【0017】
同図(a)を参照して、アナモレンズによって収束させられた信号光は、曲面方向および平面方向の収束により、それぞれ異なる位置で焦線を結ぶ。曲面方向の収束による焦線位置(S1)は、平面方向の収束による焦線位置(S2)よりも、アナモレンズに近い位置となり、信号光の収束位置(S0)は、曲面方向および平面方向による焦線位置(S1)、(S2)の中間位置となる。
【0018】
アナモレンズによって収束させられた迷光1についても同様に、曲面方向の収束による焦線位置(M11)は、平面方向の収束による焦線位置(M12)よりも、アナモレンズに近い位置となる。アナモレンズは、迷光1の平面方向の収束による焦線位置(M12)が、信号光の曲面方向の収束による焦線位置(S1)よりも、アナモレンズに近い位置となるよう、設計されている。
【0019】
アナモレンズによって収束させられた迷光2についても同様に、曲面方向の収束による焦線位置(M21)は、平面方向の収束による焦線位置(M22)よりも、アナモレンズに近い位置となる。アナモレンズは、迷光2の曲面方向の収束による焦線位置(M21)は、信号光の平面方向の収束による焦線位置(S2)よりも、アナモレンズから遠い位置となるよう、設計されている。
【0020】
また、焦線位置(S1)と焦線位置(S2)の間の収束位置(S0)において、信号光のビームが最小錯乱円となる。
【0021】
以上を考慮して、面S0上における信号光および迷光1、2の照射領域の関係について検討する。
【0022】
ここでは、図2(a)に示すように、アナモレンズが、4つの領域A〜Dに区分される。この場合、領域A〜Dに入射した信号光は、面S0上において、図2(b)のように分布する。また、領域A〜Dに入射した迷光1は、面S0上において、図2(c)のように分布する。領域A〜Dに入射した迷光2は、面S0上において、図2(d)のように分布する。
【0023】
ここで、面S0上における信号光と迷光1、2を光束領域毎に取り出すと、各光の分布は、図3(a)ないし(d)のようになる。この場合、各光束領域の信号光には、同じ光束領域の迷光1および迷光2の何れも重ならない。このため、各光束領域内の光束(信号
光、迷光1、2)を異なる方向に離散させた後に、信号光のみをセンサ部にて受光するように構成すると、対応するセンサ部には信号光のみが入射し、迷光の入射を抑止することができる。これにより、迷光による検出信号の劣化を回避することができる。
【0024】
このように、領域A〜Dを通る光を分散させて面S0上において離間させることにより、信号光のみを取り出すことができる。本実施の形態は、この原理を基盤とするものである。
【0025】
図4は、図2(a)に示す4つの領域A〜Dを通る光束(信号光、迷光1、2)の進行方向を、それぞれ、異なる方向に、同じ角度だけ変化させたときの、面S0上における信号光と迷光1、2の分布状態を示す図である。図4(a)は、アナモレンズの光軸方向(アナモレンズ入射時のレーザ光の進行方向)からアナモレンズを見た図、同図(b)は、面S0における信号光、迷光1、2の分布状態を示す図である。
【0026】
同図(a)では、領域A〜Dを通った光束(信号光、迷光1、2)の進行方向が、入射前の各光束の進行方向に対して、それぞれ、方向Da、Db、Dc、Ddに、同じ角度量α(図示せず)だけ変化する。なお、方向Da、Db、Dc、Ddは、平面方向と曲面方向に対して、それぞれ、45度の傾きを持っている。
【0027】
この場合、方向Da、Db、Dc、Ddにおける角度量αを調節することにより、面S0上において、同図(b)に示すように各光束領域の信号光と迷光1、2を分布させることができる。その結果、図示の如く、信号光のみが存在する信号光領域を面S0上に設定することができる。この信号光領域に光検出器の複数のセンサ部を配置することにより、各領域の信号光のみを、対応するセンサ部にて受光することができる。
【0028】
図5は、センサ部の配置方法を説明する図である。同図(a)は、ディスクからの反射光(信号光)の光束領域を示す図であり、同図(b)は、図1(a)の構成において、アナモレンズの配置位置と面S0に、それぞれ、アナモレンズと、従来の非点収差法に基づく光検出器(4分割センサ)を配置したときの、光検出器上における信号光の分布状態を示す図である。図5(c)および(d)は、面S0上における、上述の原理に基づく信号光の分布状態とセンサレイアウトを示す図である。
【0029】
トラック溝による信号光の回折の像(トラック像)の方向は、平面方向および曲面方向に対して45度の傾きを持っている。同図(a)において、トラック像の方向が左右方向であるとすると、同図(b)ないし(d)では、信号光におけるトラック像の方向は、上下方向となる。なお、同図(a)、(b)および(d)には、説明の便宜上、光束が8つの光束領域a〜hに区分されている。また、トラック像が実線で示され、オフフォーカス時のビーム形状が点線によって示されている。
【0030】
なお、トラック溝による信号光の0次回折像と一次回折像の重なり状態は、波長/(トラックピッチ×対物レンズNA)で求められることが知られており、同図(a)、(b)、(d)のように、4つの光束領域a、d、e、hに一次回折像が収まる条件は、波長/(トラックピッチ×対物レンズNA)>√2となる。
【0031】
従来の非点収差法では、光検出器のセンサ部P1〜P4(4分割センサ)が同図(b)のように設定される。この場合、光束領域a〜hの光強度に基づく検出信号成分をA〜Hで表すと、フォーカスエラー信号FEとプッシュプル信号PPは、
FE=(A+B+E+F)−(C+D+G+H) …(1)
PP=(A+B+G+H)−(C+D+E+F) …(2)
の演算により求まる。
【0032】
これに対し、上記図4(b)の分布状態では、上述の如く、信号光領域内に、図5(c)の状態で信号光が分布している。この場合、同図(a)に示す光束領域a〜hを通る信号光は、同図(d)のようになる。すなわち、同図(a)の光束領域a〜hを通る信号光は、光検出器のセンサ部が置かれる面S0上では、同図(d)に示す光束領域a〜hへと導かれる。
【0033】
したがって、同図(d)に示す光束領域a〜hの位置に、同図(d)に重ねて示す如くセンサ部P11〜P18を配置すれば、同図(b)の場合と同様の演算処理によって、フォーカスエラー信号とプッシュプル信号を生成することができる。すなわち、この場合も、光束領域a〜hの光束を受光するセンサ部からの検出信号をA〜Hで表すと、同図(b)の場合と同様、フォーカスエラー信号FEとプッシュプル信号PPは、上記式(1)、(2)の演算により取得することができる。
【0034】
以上のように、本原理によれば、従来の非点収差法に基づく場合と同様の演算処理にて、迷光の影響が抑制されたフォーカスエラー信号とプッシュプル信号(トラッキングエラー信号)を生成することができる。
【0035】
なお、上記原理による効果は、図6に示すように、迷光1の平面方向の焦線位置が面S0(信号光のスポットが最小錯乱円となる面)よりも非点収差素子に接近した位置にあり、且つ、迷光2の曲面方向の焦線位置が面S0よりも非点収差素子から離れた位置にあるときに奏され得るものである。すなわち、この関係が満たされていれば、信号光と迷光1、2の分布は上記図4(b)に示す状態となり、面S0において、信号光と迷光1、2が重なり合わないようすることができる。換言すれば、この関係が満たされる限り、たとえ、信号光の曲面方向の焦線位置よりも迷光1の平面方向の焦線位置が面S0に接近し、あるいは、信号光の平面方向の焦線位置よりも迷光2の曲面方向の焦線位置が面S0に接近したとしても、上記原理に基づく効果は奏され得る。
【0036】
<実施例>
本実施例は、BD、DVDおよびCDに対応可能な互換型の光ピックアップ装置に本発明を適用したものである。
【0037】
図7(a)、(b)は、本実施例に係る光ピックアップ装置の光学系を示す図である。図7(a)は、立ち上げミラー107、108よりもディスク側の構成を省略した光学系の平面図、図7(b)は、立ち上げミラー107、108からディスク側の光学系を側面から透視した図である。
【0038】
図示の如く、光ピックアップ装置は、半導体レーザ101と、2波長レーザ102と、ダイクロイックミラー103と、PBS(Polarizing Beam Splitter)104と、コリメートレンズ105と、レンズアクチュエータ106と、立ち上げミラー107、108と、2波長対物レンズ109と、BD対物レンズ110と、分光素子111と、アナモレンズ112と、光検出器113を備えている。
【0039】
半導体レーザ101は、波長405nm程度のBD用レーザ光(以下、「BD光」という)を出射する。2波長レーザ102は、波長660nm程度のDVD用レーザ光(以下、「DVD光」という)と、波長785nm程度のCD用レーザ光(以下、「CD光」という)をそれぞれ出射する2つのレーザ素子を同一CAN内に収容している。DVD光とCD光の発光点はY軸方向に並んでおり、これら発光点間のギャップはGである。
【0040】
なお、CD光の発光点とDVD光の発光点との間のギャップGは、後述の如く、CD光
が、CD光用のセンサ部に適正に照射されるように設定される。このように、2つの光源を同一CAN内に収容することで、複数CANの構成に比べて光学系を簡素化することができる。
【0041】
ダイクロイックミラー103は、BD光を透過し、CD光とDVD光を反射する。半導体レーザ101と2波長レーザ102は、ダイクロイックミラー103を透過したBD光の光軸と、ダイクロイックミラー103により反射されたDVD光の光軸が、互いに整合するように配置される。ダイクロイックミラー103により反射されたCD光の光軸は、BD光とDVD光の光軸から、ギャップGだけずれる。
【0042】
PBS104は、ダイクロイックミラー103側から入射するBD光、DVD光、CD光を反射して、コリメートレンズ105に入射させる。このようにBD光、DVD光、CD光がPBS104によって反射されるよう、半導体レーザ101と2波長レーザ102から出射されるレーザ光の偏光方向が設定されている。
【0043】
コリメートレンズ105は、PBS104側から入射するBD光、DVD光、CD光を平行光に変換する。レンズアクチュエータ106は、収差補正の際に、制御信号に応じてコリメートレンズ105を光軸方向に移動させる。
【0044】
立ち上げミラー107は、ダイクロイックミラーであり、BD光を透過するとともに、DVD光とCD光を2波長対物レンズ109に向かう方向に反射する。立ち上げミラー108は、BD光をBD対物レンズ110に向かう方向に反射する。
【0045】
2波長対物レンズ109は、DVD光とCD光を、それぞれ、DVDとCDに対して適正に収束させるよう構成されている。また、BD対物レンズ110は、BD光をBDに適正に収束させるよう構成されている。2波長対物レンズ109とBD対物レンズ110は、ホルダ121に保持された状態で、対物レンズアクチュエータ122により、フォーカス方向およびトラッキング方向に駆動される。なお、ディスクのトラック接線方向は、Y軸方向となっている。
【0046】
BDによって反射されたBD光は、再びBD対物レンズ110と立ち上げミラー108、107を通り、コリメートレンズ105に入射する。DVDとCDによって反射されたDVD光とCD光も、再び2波長対物レンズ109と立ち上げミラー107を通り、コリメートレンズ105に入射する。コリメートレンズ105は、立ち上げミラー107側からコリメートレンズ105に入射するBD光、DVD光、CD光を収束光に変換する。コリメートレンズ105により収束光に変換されたBD光、DVD光、CD光は、PBS104を略全透過して、分光素子111に入射する。
【0047】
分光素子111は、多面プリズムによって形成されている。分光素子111に入射したBD光、DVD光、CD光は、4個の光束に区分され、分光素子111による屈折作用によって、各光束の進行方向が変えられる。
【0048】
図8(a)は、分光素子111の構成を示す斜視図であり、図8(b)は、分光素子111により、BD光、DVD光、CD光の進行方向が変化させられることを模式的に示す図である。なお、同図(b)は、分光素子111をPBS104側から見たときの平面図である。また、同図(b)には、アナモレンズ112の平面方向、曲面方向が併せて示されている。
【0049】
同図(a)に示す如く、分光素子111には、出射面側に4つの傾斜面111a〜111dが形成されている。これら4つの傾斜面111a〜111dは、各傾斜面に入射する
光束の進行方向が、それぞれ同図(b)の矢印Da〜Ddの方向に進むように調整されている。同図(b)の矢印Da〜Ddは、図4(a)の矢印Da〜Ddに相当する。
【0050】
分光素子111は、PBS104側から入射するBD光とDVD光の光軸が、出射面において傾斜面111a〜111dの交わる点(中心点O)を通るように配置されている。このとき、図7(a)に示したように、CD光の光軸と、BD光とDVD光の光軸とは、ずれているため、PBS104側から入射するCD光の光軸は、分光素子111の出射面において中心点Oからずれている。なお、分光素子111は多面プリズムによって形成されているため、分光素子111によるBD光、DVD光、CD光の屈折角度は、略同じとなる。
【0051】
図7(a)に戻り、アナモレンズ112は、分光素子111側から入射したBD光、DVD光、CD光に非点収差を導入する。アナモレンズ112は、図1(a)、(b)のアナモレンズに相当する。
【0052】
図7(c)は、分光素子111が無い場合に、アナモレンズ112に入射する光束を、光束の進行方向(X軸正方向)に見たときの図である。アナモレンズに入射する光束のトラック像の方向は、図示の如く、Y軸方向となっている。
【0053】
アナモレンズ112に入射する光束は、図示の如く、平面方向と曲面方向に収束作用を受ける。従って、このように設定されたアナモレンズ112の前段に、図8(a)、(b)に示した分光素子111が配されると、分光素子111とアナモレンズ112の作用により、ディスクによって反射されたレーザ光は、光検出器113の受光面上に、図4(b)のように照射される。
【0054】
図7(a)に戻り、アナモレンズ112を透過したBD光、DVD光、CD光は、光検出器113に入射する。光検出器113は、BD光、DVD光、CD光を受光するためのセンサレイアウトを有している。
【0055】
図9は、光検出器113のセンサレイアウトを示す図である。
【0056】
光検出器113は、BD光とDVD光を受光するセンサ部B1〜B8と、CD光を受光するセンサ部C1〜C8とを有する。センサ部B1〜B8からなるセンサレイアウトと、センサ部C1〜C8からなるセンサレイアウトは、略同じレイアウトに構成されており、トラック像の方向に間隔Wだけずれて配置されている。
【0057】
BD光の信号光とDVD光の信号光を、それぞれ、図5(a)に示すように光束領域a〜hに便宜的に分割すると、BD光の信号光の光束領域a〜hと、DVD光の信号光の光束領域a〜hは、上記原理と同様に分離され、光検出器113上において、図9の照射領域a1〜h1に照射される。このとき、BD光とDVD光の照射領域a1〜h1は、信号光領域1内の4つの頂角付近に位置付けられる。センサ部B1〜B8は、信号光領域1の4つの頂角付近に配置されており、それぞれ、照射領域a1、h1、f1、c1、g1、b1、d1、e1に照射されるBD光とDVD光の信号光を検出する。
【0058】
同様に、CD光の信号光を、図5(a)に示すように光束領域a〜hに便宜的に分割すると、CD光の信号光の光束領域a〜hは、上記原理と同様に分離され、光検出器113上において、図9の照射領域a2〜h2に照射される。このとき、CD光の照射領域a2〜h2は、信号光領域2内の4つの頂角付近に位置付けられる。センサ部C1〜C8は、信号光領域2の4つの頂角付近に配置されており、それぞれ、照射領域a2、h2、f2、c2、g2、b2、d2、e2に照射されるCD光の信号光を検出する。
【0059】
なお、センサ部B1〜B8からなるセンサレイアウトと、センサ部C1〜C8からなるセンサレイアウトとの間隔Wは、2波長レーザ102におけるDVD光とCD光の発光点間のギャップGと、アナモレンズ112の曲率に応じて設定される。
【0060】
以上、本実施例によれば、BD光とDVD光の信号光は、共通のセンサ部B1〜B8によって受光される。これにより、光検出器113の受光面上に、BD光とDVD光にそれぞれ対応するセンサ部を別々に設置する必要がないため、光検出器113の受光面の面積を小さくすることができる。よって、光ピックアップ装置を小型化することが可能となる。
【0061】
また、本実施例によれば、分光素子111は多面プリズムにより形成されているため、分光素子111を、プラスチックにより形成することが可能となる。従って、分光素子111は、より安価に形成され得るため、光ピックアップ装置にかかるコストを低減することが可能となる。
【0062】
なお、上記実施例に示すように、2波長レーザ102から出射されるDVD光とCD光のうち、CD光の光軸がBD光の光軸に合わせられるのではなく、DVD光の光軸がBD光の光軸に合わせられるのが望ましい。これは、以下に示すような理由による。
【0063】
DVD光がDVD−RAMに対して照射される場合、DVD光がDVD−RAM以外のDVDに対して照射される場合に比べて、トラック幅は大きく、且つ、トラック溝によるボールパターンは大きい。このため、DVD光の光軸がBD光の光軸に合わせられるのではなく、CD光の光軸がBD光の光軸に合わせられると、DVD光の光軸が分光素子111とアナモレンズ112の中心からずれることになり、DVD−RAMが用いられた場合に適正な検出信号が得られにくくなる。このため、上記実施例では、DVD光の光軸が、BD光の光軸に合わせられている。
【0064】
<変更例1>
図10(a)は、本変更例に係る光ピックアップ装置の光学系の一部を示す図である。本変更例に係る光ピックアップ装置の光学系は、図7(a)、(b)に示した光ピックアップ装置の光学系に、2波長レーザ102とダイクロイックミラー103の間に回折素子131が追加された構成となっている。なお、本変更例の光ピックアップ装置の光学系のうち、立ち上げミラー107、108よりもディスク側の構成については、便宜上、図示が省略されている。
【0065】
図10(a)に示す如く、本変更例では、回折素子131によって、DVD光の光軸がCD光の光軸に整合される。回折素子131は、ダイクロイックミラー103側の面に回折パターンを有している。この回折パターンは、DVD光のみを所定の角度だけ回折させる。これにより、回折素子131の出射面において、DVD光とCD光の光軸が一致させられる。このように光軸が一致させられたDVD光とCD光は、ダイクロイックミラー103によって、さらにBD光の光軸と一致させられる。こうして、ダイクロイックミラー103からPBS104に向かうBD光、DVD光、CD光の光軸が一致させられる。
【0066】
ここで、回折素子131の回折パターンは、たとえば、5ステップ構造で、且つ、1ステップの段差が1.46nmに設定される。こうすると、図10(b)に示す如く、CD光は略100%回折素子131を透過し、DVD光の1次回折光の回折効率は約86%となる。これにより、DVD光のパワー損失が抑制される。
【0067】
このように光ピックアップ装置の光学系が設定されると、上記実施例と同様の効果が奏
される。また、本変更例では、BD光、DVD光、CD光の光軸が一致させられるため、光検出器113上のセンサレイアウトを1つにすることができる。すなわち、図9のセンサ部B1〜B8によって、BD光、DVD光、CD光の全ての信号光を受光することができる。図10(c)は、本変更例のセンサレイアウトを示す図である。これにより、上記実施例に比べて、光検出器113の面積を小さくすることができ、光ピックアップ装置を小型化することが可能となる。
【0068】
<変更例2>
図11(a)は、本変更例に係る光ピックアップ装置の光学系の一部を示す図である。本変更例に係る光ピックアップ装置の光学系は、図7(a)、(b)に示した光ピックアップ装置の光学系から、分光素子111とアナモレンズ112が除かれ、PBS104と光検出器113との間に、複合レンズ141が設置された構成となっている。なお、本変更例の光ピックアップ装置の光学系のうち、立ち上げミラー107、108よりもディスク側の構成については、便宜上、図示が省略されている。
【0069】
図11(b)、(c)は、複合レンズ141の構成を示す斜視図である。同図(a)は、複合レンズ141をPBS104側から見た斜視図であり、同図(b)は、複合レンズ141を光検出器113側から見た斜視図である。
【0070】
同図(b)に示す如く、複合レンズ141のPBS104側の面には、上記実施例の分光素子111の傾斜面111a〜111dと同様の、傾斜面141a〜141dが形成されている。また上記実施例と同様、ディスクによって反射されたBD光とDVD光の光軸は、傾斜面141a〜141dの交わる点(中心点O)を通るように、複合レンズ141が配置されている。
【0071】
同図(c)に示す如く、複合レンズ141の光検出器113側の面には、上記実施例のアナモレンズ112と同様の非点収差作用をBD光、DVD光およびCD光に与えるためのトーリック面141eが形成されている。
【0072】
このように光ピックアップ装置の光学系が設定されると、上記実施例と同様の効果が奏される。また、本変更例では、分光素子111とアナモレンズ112の替わりに、複合レンズ141が用いられているため、上記実施例に比べて光ピックアップ装置の部品点数が減少する。これにより、上記実施例に比べて、光ピックアップ装置を小型化することが可能となる。
【0073】
<変更例3>
図12(a)は、本変更例に係る光ピックアップ装置の光学系の一部を示す図である。本変更例に係る光ピックアップ装置の光学系は、図7(a)、(b)に示した光ピックアップ装置の光学系から、PBS104とアナモレンズ112の替わりに、ハーフミラー151と、非点収差板152、153が設置されている。なお、本変更例の光ピックアップ装置の光学系のうち、立ち上げミラー107、108よりもディスク側の構成については、便宜上、図示が省略されている。
【0074】
ハーフミラー151は、入射面において、入射するレーザ光を50%の比率で反射および透過する。これにより、ハーフミラー151は、ダイクロイックミラー103側から入射されるレーザ光を、コリメートレンズ105側に反射し、コリメートレンズ105側から入射されるレーザ光をX軸正方向に透過する。ハーフミラー151は、平行平板である。ハーフミラー151の入射面は、Y−Z平面に平行な状態から、Z軸を中心として45度だけ傾けられている。また、コリメートレンズ105側からハーフミラー151に入射するレーザ光は収束光である。このため、ハーフミラー151に入射するレーザ光は、ハ
ーフミラー151を透過することにより、Y軸方向にさらに収束される。
【0075】
非点収差板152は、透明な平行平板である。非点収差板152の入射面はY−Z平面に平行な状態から、Y軸を中心として45度だけ傾けられている。また、ハーフミラー151側から非点収差板152に入射するレーザ光は収束光である。このため、非点収差板152に入射するレーザ光は、非点収差板152を透過することにより、Z軸方向にさらに収束される。
【0076】
非点収差板152の厚みおよび屈折率と傾き角は、ハーフミラー151による非点収差作用と、非点収差板152による非点収差作用が、互いにほぼ打ち消し合うよう調整されている。このため、実質的に非点収差板153の非点収差の効果のみ残ることとなる。
【0077】
非点収差板153は、透明な平行平板である。非点収差板153の入射面は、反射光のトラック像の方向に対して45度の角をなすように傾けて配置されている。すなわち、非点収差板153の入射面は、Y−Z平面に平行な状態から、Y軸を中心として傾けられ、さらにBD光とDVD光の光軸を中心として45度だけ傾けられている。このため、非点収差板153に入射するレーザ光は、非点収差板153を透過することにより、X軸方向から見て、トラック像の方向に対して45度の角をなす方向に収束される。これにより、レーザ光に非点収差が導入される。
【0078】
なお、非点収差板153の傾き方向は、ハーフミラー151と非点収差板152により生じるコマ収差を、非点収差板153により生じるコマ収差によって同時に抑制できる方向となっている。非点収差板153の厚みおよび屈折率と傾き角は、ハーフミラー151と非点収差板152により生じるコマ収差を抑制でき、且つ、所望の非点収差作用を実現できるよう調整されている。
【0079】
このように、ハーフミラー151と、非点収差板152、153により、それぞれレーザ光が収束させられると、上記実施例と同様、コリメートレンズ105からX軸正方向に向かうレーザ光は、平面方向と曲面方向に収束させられることになる。これにより、上記実施例と同様の非点収差が導入されることになり、上記実施例と同様の効果が奏される。この場合、上記実施例のPBS104とアナモレンズ112の替わりに、安価なハーフミラー151と、非点収差板152、153が用いられるため、光ピックアップ装置にかかるコストを抑制することができる。
【0080】
なお、図12(b)に示すように、ディスク上のトラックの接線方向がX軸方向に対して45度傾くように、光ピックアップ装置の光学系が設定されても良い。この場合、ハーフミラー151によって導入される非点収差の方向(平面方向、曲面方向)は、トラック像に対して45度傾く。このため、光ピックアップ装置の光学系は、図12(b)に示す如く、図12(a)の光学系から、非点収差板152、153が省略可能である。また、分光素子111と光検出器113は、図12(a)の状態からX軸の周りに45度回転される。このように分光素子111と光検出器113の配置が調整されることにより、上記実施例と同様の効果が奏される。この構成によれば、図12(a)の構成から、さらに部品点数を低減させることができる。
【0081】
<変更例4>
図13(a)は、本変更例に係る光ピックアップ装置の光学系の一部を示す図である。本変更例に係る光ピックアップ装置の光学系は、図7(a)、(b)に示した光ピックアップ装置の光学系から、PBS104と、分光素子111と、アナモレンズ112の替わりに、ハーフミラー161と、非点収差板162、163が設置されている。なお、本変更例の光ピックアップ装置の光学系のうち、立ち上げミラー107、108よりもディス
ク側の構成については、便宜上、図示が省略されている。
【0082】
ハーフミラー161と、非点収差板162、163は、上記変更例3で示したハーフミラー151と、非点収差板152、153と同様に、コリメートレンズ105からX軸正方向に向かうレーザ光に対して、非点収差を導入する。ハーフミラー161と非点収差板162による非点収差作用は、互いにほぼ打ち消し合うよう調整されている。このため、実質的に非点収差板163の非点収差の効果のみ残ることとなる。非点収差板163は、上記変更例3の非点収差板153と同様の構成である。非点収差板163により、上記変更例3の非点収差板153と同様、ハーフミラー161と非点収差板162により生じるコマ収差を抑制することができる。
【0083】
図14(a)、(b)は、それぞれ、ハーフミラー161と非点収差板162の構成を示す斜視図であり、同図(c)および(d)は、それぞれ、ハーフミラー161と非点収差板162により、レーザ光の進行方向が変化させられることを模式的に示す図である。なお、同図(c)、(d)は、図13(a)のように配置されたハーフミラー161と非点収差板162をX軸正方向に見た模式図である。
【0084】
同図(a)に示す如く、ハーフミラー161の出射面側には、谷形状となるよう2つの異なる傾斜面161a、161bが形成されている。また、同図(b)に示す如く、非点収差板162の出射面側には、山形状となるよう2つの異なる傾斜面162a、162bが形成されている。ハーフミラー161の傾斜面の交線161kは、図7(b)に示す平面方向に合わせられる。また、非点収差板162の傾斜面の交線162kは、図7(b)に示す曲面方向に合わせられる。
【0085】
同図(c)、(d)に示す如く、ハーフミラー161に入射する反射光を平面方向と曲面方向に平行な2つの直線で4分割した光束領域A〜Dの光束は、ハーフミラー161の傾斜面161a、161bと、非点収差板162の傾斜面162a、162bに入射する。これにより、光束領域A〜Dの光束は、傾斜面161a、161bと傾斜面162a、162bによって矢印方向に進行方向が変えられる。したがって、光束領域A〜Dの光束は、ハーフミラー161と非点収差板162を通ることにより、それぞれ、同図(e)の方向Da〜Ddに進行方向が変えられる。ここで、方向Da〜Ddは、図4(a)の方向Da〜Ddに相当する。
【0086】
こうして、光束領域A〜Dを通る反射光の光束の進行方向は、ハーフミラー161と非点収差板162により変化される。また、反射光の光束は、ハーフミラー161と、非点収差板162、163により上記変更例3と同様に非点収差が導入される。これにより、上記実施例と同様の効果が奏される。
【0087】
また、本変更例では、上記変更例3に比べて、分光素子111が用いられないため、光ピックアップ装置にかかるコストをさらに抑制することが可能となる。また、本変更例では、上記変更例3に比べて、光ピックアップ装置の部品点数が減少するため、さらに光ピックアップ装置の小型化が可能となる。
【0088】
なお、、図13(b)に示すように、ディスク上のトラックの接線方向がX軸方向に対して45度傾くように、光ピックアップ装置の光学系が設定されても良い。この場合の光ピックアップ装置の光学系は、図13(b)に示す如く、図13(a)の光学系から、非点収差板163が省略される。また、光検出器113は、図13(a)の状態からX軸の周りに45度回転される。
【0089】
図13(b)の構成では、ハーフミラー161と非点収差板162によって、それぞれ
、レーザ光に非点収差が導入される。すなわち、レーザ光は、ハーフミラー161によってY軸方向に収束され、非点収差が導入される。また、レーザ光は、非点収差板162によってZ軸方向に収束され、非点収差が導入される。ハーフミラー161による収束作用と非点収差板162による収束作用が等しいと、非点収差が生じない。よって、この構成では、ハーフミラー161による収束作用と非点収差板162による収束作用が相違するように、ハーフミラー161と非点収差板162が構成される。
【0090】
図13(b)の構成例では、ハーフミラー161と非点収差板162は、図15(a)、(b)に示す如く、それぞれ、2つの傾斜面を有している。また、この場合のハーフミラー161と非点収差板162は、図15(c)、(d)に示す如く、ハーフミラー161の交線161kがZ軸方向に平行となり、非点収差板162の交線162kがY軸方向に平行となるように配置される。これにより、図15(e)に示す如く、反射光の各光束領域は、平面方向と曲面方向に対して45度の角をなす方向に分離される。よって、上記実施例と同様の効果が奏される。
【0091】
以上、本発明の実施例について説明したが、本発明は、上記実施例に何ら制限されるものではなく、また、本発明の実施例も上記以外に種々の変更が可能である。
【0092】
たとえば、上記実施例と変更例1では、分光素子111がアナモレンズ112の前段に配置されたが、分光素子111をアナモレンズ112の後段に配置しても良い。また、上記変更例3では、図12(a)に示すように、反射光の進行方向に沿って、非点収差板152、153と、分光素子111が設置されたが、これらの配置順序は任意に変更しても良い。また、上記変更例4では、図13(a)に示すように、反射光の進行方向に沿って、非点収差板162、163が設置されたが、これらの配置順序は任意に変更しても良い。
【0093】
また、上記変更例4では、図13(a)に示すように、ハーフミラー161と非点収差板162に分光作用を持たせたが、ハーフミラー161と、非点収差板162、163のうち、何れに分光作用を持たせても良い。たとえば、ハーフミラー161と非点収差板163に分光作用を持たせても良いし、非点収差板162、163に分光作用を持たせても良いし、何れか1つに分光作用を持たせても良い。たとえば、図16(a)に示すように、非点収差板162にのみ分光作用を持たせてもよい。この場合、非点収差板162は、出射面に、図8(a)の傾斜面111a〜111dに対応する傾斜面162a〜162dが形成される。
【0094】
なお、この場合、非点収差板162の出射面に形成された4つの傾斜面162a〜162dの傾き角は、図8(a)の場合と異なっている。すなわち、図7(a)に示す上記実施例の構成では、分光素子111がレーザ光の光軸に垂直となるように配置されているが、図16(a)の構成では、非点収差板162がレーザ光の光軸に対して傾いて配置されている。よって、かかる非点収差板162の傾きを加味して、非点収差板162の出射面の4つの傾斜面162a〜162dの傾き角が設定される。この点において、非点収差板162の出射面に形成された4つの傾斜面162a〜162dの傾き角は、図8(a)の場合と異なっている。
【0095】
また、図13(b)に示す場合にも、ハーフミラー161と非点収差板162のうち、何れか1つに分光作用を持たせても良い。ハーフミラー161のみに分光作用を持たせる場合には、非点収差板162を省略することもできる。すなわち、図13(b)の構成例では、分光作用をハーフミラー161と非点収差板162に分担させるようにしたため、非点収差板162が配置された。しかしながら、ハーフミラー161のみに分光作用を持たせる場合には、非点収差板162は非点収差の調整のみに寄与することとなる。よって
、非点収差板162による非点収差の調整が不要な場合、すなわち、ハーフミラー161による非点収差作用のみを用いてレーザ光に非点収差を導入する場合には、非点収差板162が省略される。
【0096】
図16(b)は、図13(b)に示す光学系から、ハーフミラー161のみに分光作用を持たせた場合の光学系を示す図である。この場合のハーフミラー161の出射面には、図8(a)で示したような4つの異なる傾斜面が形成されており、これら傾斜面の境界はY軸方向またはZ軸方向となっている。これにより、図13(b)と同様の分光作用が実現される。また、この場合、コリメートレンズ105からX軸方向に向かう反射光は収束光であり、トラック接線方向は、X軸に対して45度傾いているため、ハーフミラー161のみによって、図13(b)と同様の非点収差作用が実現される。
【0097】
なお、この場合も、図16(a)の非点収差板162の場合と同様、ハーフミラー161の出射面に形成された4つの異なる傾斜面の傾き角は、図8(a)の場合と異なっている。すなわち、図7(a)に示す上記実施例の構成では、分光素子111がレーザ光の光軸に垂直となるように配置されているが、図16(b)の構成では、ハーフミラー161がレーザ光の光軸に対して傾いている。よって、かかるハーフミラー161の傾きを加味して、ハーフミラー161の出射面の4つの異なる傾斜面の傾き角が設定される。
【0098】
また、上記変更例において、図12(b)、図13(b)、図16に示したように、トラックの接線方向がX軸に対して45度傾けられる場合、2波長対物レンズ109とBD対物レンズ110の替わりに、BD光、DVD光、CD光に対応した1つの対物レンズが用いられるようにしても良い。こうすると、BD光、DVD光、CD光のいずれのレーザ光が用いられる場合でも、対物レンズをディスクの径方向に移動させることが可能となる。
【0099】
この他、本発明の実施の形態は、特許請求の範囲に示された技術的思想の範囲内において、適宜、種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0100】
101 … 半導体レーザ(第1のレーザ光源)
102 … 2波長レーザ(第2のレーザ光源)
103 … ダイクロイックミラー(光学素子)
109 … 2波長対物レンズ(対物レンズ部)
110 … BD対物レンズ(対物レンズ部)
111 … 分光素子(分光部)
111a〜111d … 傾斜面
112 … アナモレンズ(非点収差部)
113 … 光検出器
141 … 複合レンズ(非点収差部、分光部)
141a〜141d … 傾斜面
151 … ハーフミラー(非点収差部、平行平板)
152 … 非点収差板(非点収差部、平行平板)
153 … 非点収差板(非点収差部、平行平板)
161 … ハーフミラー(非点収差部、分光部、第1または第2の板状部材)
162 … 非点収差板(非点収差部、分光部、第1または第2の板状部材)
163 … 非点収差板(非点収差部、平行平板)
161a、161b、162a〜162d … 傾斜面
B1〜B8 … センサ部
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ピックアップ装置に関するものであり、特に、複数の記録層が積層された記録媒体に対してレーザ光を照射する際に用いて好適なものである。
【背景技術】
【0002】
近年、光ディスクの大容量化に伴い、記録層の多層化が進んでいる。一枚のディスク内に複数の記録層を含めることにより、ディスクのデータ容量を顕著に高めることができる。記録層を積層する場合、これまでは片面2層が一般的であったが、最近では、さらに大容量化を進めるために、片面に3層以上の記録層が配されたディスクも実用化されている。ここで、記録層の積層数を増加させると、ディスクの大容量化を促進できる。しかし、その一方で、記録層間の間隔が狭くなり、層間クロストークによる信号劣化が増大する。
【0003】
記録層を多層化すると、記録/再生対象とされる記録層(ターゲット記録層)からの反射光が微弱となる。このため、ターゲット記録層の上下にある記録層から、不要な反射光(迷光)が光検出器に入射すると、検出信号が劣化し、フォーカスサーボおよびトラッキングサーボに悪影響を及ぼす惧れがある。したがって、このように記録層が多数配されている場合には、適正に迷光を除去して、光検出器からの信号を安定化させる必要がある。
【0004】
以下の特許文献1には、記録層が多数配されている場合に、適正に迷光を除去し得る光ピックアップ装置の新たな構成が示されている。この構成によれば、光検出器の受光面上に、信号光のみが存在する領域を作ることができる。この領域に、光検出器のセンサを配置することで、検出信号に対する迷光による影響を抑制することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−211770号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記光ピックアップ装置では、異なる種類の記録媒体に対して読み取りまたは書き込みが行われる場合、たとえば、各記録媒体に対応した複数のレーザ光が装置内に配される。これら複数のレーザ光は、それぞれ、対応する記録媒体に照射され、記録媒体によって反射された反射光は、共通の光学系により光検出器上に導かれる。この場合、光検出器上に、各記録媒体に対応したレーザ光を受光するためのセンサ部を設ける必要があるため、光検出器が大きくなる。これにより、光ピックアップ装置を小型化し難くなるとの問題が生じる。
【0007】
本発明は、このような点に鑑みてなされたものであり、迷光による影響を円滑に抑制すると共に、小型化が可能な光ピックアップ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の主たる態様に係る光ピックアップ装置は、所定波長の第1のレーザ光を出射する第1のレーザ光源と、前記波長とは異なる波長の第2のレーザ光を出射する第2のレーザ光源と、前記第1および第2のレーザ光の光軸を整合させる光学素子と、前記第1および第2のレーザ光を記録媒体上に収束させる対物レンズ部と、前記記録媒体によって反射された前記第1および第2のレーザ光の反射光が入射するとともに、第1の方向に前記反射光を収束させて第1の焦線を生成し、且つ、前記第1の方向に垂直な第2の方向に前記
反射光を収束させて第2の焦線を生成する非点収差部と、前記第1および第2の方向にそれぞれ平行な2つの直線で、前記第1および第2のレーザ光の反射光を4つの光束に分割したときの各光束を互いに離散させる分光部と、離散された前記第1および第2のレーザ光の反射光の各光束を受光して検出信号を出力する光検出器と、を備える。ここで、前記分光部は、複数の傾斜面を備える少なくとも一つのプリズムからなり、前記光検出器には、前記第1のレーザ光の反射光の各光束と、前記第2のレーザ光の反射光の各光束とを受光する共通のセンサ部が配されている。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、迷光による影響を円滑に抑制すると共に、小型化が可能な光ピックアップ装置を提供することができる。
【0010】
本発明の効果ないし意義は、以下に示す実施の形態の説明により更に明らかとなろう。ただし、以下の実施の形態は、あくまでも、本発明を実施する際の一つの例示であって、本発明は、以下の実施の形態によって何ら制限されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】実施の形態に係る技術原理(光線の収束状態)を説明する図である。
【図2】実施の形態に係る技術原理(光束の分布状態)を説明する図である。
【図3】実施の形態に係る技術原理(信号光と迷光の分布状態)を説明する図である。
【図4】実施の形態に係る技術原理(光束の分離方法)を説明する図である。
【図5】実施の形態に係るセンサ部の配置方法を示す図である。
【図6】実施の形態に係る技術原理の好ましい適用範囲を示す図である。
【図7】実施例に係る光ピックアップ装置の光学系を示す図およびアナモレンズに入射する光束が受ける収束作用を示す図である。
【図8】実施例に係る分光素子の構成を示す斜視図および分光素子によりレーザ光の進行方向が変化させられることを模式的に示す図である。
【図9】実施例に係る光検出器のセンサレイアウトを示す図である。
【図10】変更例1に係る光ピックアップ装置の光学系を示す図およびレーザ光の回折効率を示す図である。
【図11】変更例2に係る光ピックアップ装置の光学系を示す図および複合レンズの構成を示す斜視図である。
【図12】変更例3に係る光ピックアップ装置の光学系を示す図である。
【図13】変更例4に係る光ピックアップ装置の光学系を示す図である。
【図14】変更例4に係るハーフミラーと非点収差板の構成を示す斜視図およびハーフミラーと非点収差板によりレーザ光の進行方向が変化させられることを模式的に示す図である。
【図15】変更例4に係るハーフミラーと非点収差板の構成を示す斜視図およびハーフミラーと非点収差板によりレーザ光の進行方向が変化させられることを模式的に示す図である。
【図16】他の変更例に係る光ピックアップ装置の光学系を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態につき図面を参照して説明する。
【0013】
<技術的原理>
まず、図1ないし図6を参照して、本実施の形態に適用される技術的原理について説明する。
【0014】
図1は、光線の収束状態を示す図である。同図(a)は、ターゲット記録層によって反
射されたレーザ光(信号光)、ターゲット記録層よりも深い層によって反射されたレーザ光(迷光1)、ターゲット記録層よりも浅い層によって反射されたレーザ光(迷光2)の収束状態を示す図である。同図(b)は、本原理に用いるアナモレンズの構成を示す図である。
【0015】
同図(b)を参照して、アナモレンズは、レンズ光軸に平行に入射するレーザ光に対し、曲面方向と平面方向に収束作用を付与する。ここで、曲面方向と平面方向は、互いに直交している。また、曲面方向は、平面方向に比べ曲率半径が小さく、アナモレンズに入射するレーザ光を収束させる効果が大きい。
【0016】
なお、ここでは、アナモレンズにおける非点収差作用を簡単に説明するために、便宜上、“曲面方向”と“平面方向”と表現しているが、実際には、互いに異なる位置に焦線を結ぶ作用がアナモレンズによって生じれば良く、図1(b)中の“平面方向”におけるアナモレンズの形状を平面に限定するものではない。なお、アナモレンズに収束状態でレーザ光が入射する場合は、“平面方向”におけるアナモレンズの形状は直線状(曲率半径=∞)となり得る。
【0017】
同図(a)を参照して、アナモレンズによって収束させられた信号光は、曲面方向および平面方向の収束により、それぞれ異なる位置で焦線を結ぶ。曲面方向の収束による焦線位置(S1)は、平面方向の収束による焦線位置(S2)よりも、アナモレンズに近い位置となり、信号光の収束位置(S0)は、曲面方向および平面方向による焦線位置(S1)、(S2)の中間位置となる。
【0018】
アナモレンズによって収束させられた迷光1についても同様に、曲面方向の収束による焦線位置(M11)は、平面方向の収束による焦線位置(M12)よりも、アナモレンズに近い位置となる。アナモレンズは、迷光1の平面方向の収束による焦線位置(M12)が、信号光の曲面方向の収束による焦線位置(S1)よりも、アナモレンズに近い位置となるよう、設計されている。
【0019】
アナモレンズによって収束させられた迷光2についても同様に、曲面方向の収束による焦線位置(M21)は、平面方向の収束による焦線位置(M22)よりも、アナモレンズに近い位置となる。アナモレンズは、迷光2の曲面方向の収束による焦線位置(M21)は、信号光の平面方向の収束による焦線位置(S2)よりも、アナモレンズから遠い位置となるよう、設計されている。
【0020】
また、焦線位置(S1)と焦線位置(S2)の間の収束位置(S0)において、信号光のビームが最小錯乱円となる。
【0021】
以上を考慮して、面S0上における信号光および迷光1、2の照射領域の関係について検討する。
【0022】
ここでは、図2(a)に示すように、アナモレンズが、4つの領域A〜Dに区分される。この場合、領域A〜Dに入射した信号光は、面S0上において、図2(b)のように分布する。また、領域A〜Dに入射した迷光1は、面S0上において、図2(c)のように分布する。領域A〜Dに入射した迷光2は、面S0上において、図2(d)のように分布する。
【0023】
ここで、面S0上における信号光と迷光1、2を光束領域毎に取り出すと、各光の分布は、図3(a)ないし(d)のようになる。この場合、各光束領域の信号光には、同じ光束領域の迷光1および迷光2の何れも重ならない。このため、各光束領域内の光束(信号
光、迷光1、2)を異なる方向に離散させた後に、信号光のみをセンサ部にて受光するように構成すると、対応するセンサ部には信号光のみが入射し、迷光の入射を抑止することができる。これにより、迷光による検出信号の劣化を回避することができる。
【0024】
このように、領域A〜Dを通る光を分散させて面S0上において離間させることにより、信号光のみを取り出すことができる。本実施の形態は、この原理を基盤とするものである。
【0025】
図4は、図2(a)に示す4つの領域A〜Dを通る光束(信号光、迷光1、2)の進行方向を、それぞれ、異なる方向に、同じ角度だけ変化させたときの、面S0上における信号光と迷光1、2の分布状態を示す図である。図4(a)は、アナモレンズの光軸方向(アナモレンズ入射時のレーザ光の進行方向)からアナモレンズを見た図、同図(b)は、面S0における信号光、迷光1、2の分布状態を示す図である。
【0026】
同図(a)では、領域A〜Dを通った光束(信号光、迷光1、2)の進行方向が、入射前の各光束の進行方向に対して、それぞれ、方向Da、Db、Dc、Ddに、同じ角度量α(図示せず)だけ変化する。なお、方向Da、Db、Dc、Ddは、平面方向と曲面方向に対して、それぞれ、45度の傾きを持っている。
【0027】
この場合、方向Da、Db、Dc、Ddにおける角度量αを調節することにより、面S0上において、同図(b)に示すように各光束領域の信号光と迷光1、2を分布させることができる。その結果、図示の如く、信号光のみが存在する信号光領域を面S0上に設定することができる。この信号光領域に光検出器の複数のセンサ部を配置することにより、各領域の信号光のみを、対応するセンサ部にて受光することができる。
【0028】
図5は、センサ部の配置方法を説明する図である。同図(a)は、ディスクからの反射光(信号光)の光束領域を示す図であり、同図(b)は、図1(a)の構成において、アナモレンズの配置位置と面S0に、それぞれ、アナモレンズと、従来の非点収差法に基づく光検出器(4分割センサ)を配置したときの、光検出器上における信号光の分布状態を示す図である。図5(c)および(d)は、面S0上における、上述の原理に基づく信号光の分布状態とセンサレイアウトを示す図である。
【0029】
トラック溝による信号光の回折の像(トラック像)の方向は、平面方向および曲面方向に対して45度の傾きを持っている。同図(a)において、トラック像の方向が左右方向であるとすると、同図(b)ないし(d)では、信号光におけるトラック像の方向は、上下方向となる。なお、同図(a)、(b)および(d)には、説明の便宜上、光束が8つの光束領域a〜hに区分されている。また、トラック像が実線で示され、オフフォーカス時のビーム形状が点線によって示されている。
【0030】
なお、トラック溝による信号光の0次回折像と一次回折像の重なり状態は、波長/(トラックピッチ×対物レンズNA)で求められることが知られており、同図(a)、(b)、(d)のように、4つの光束領域a、d、e、hに一次回折像が収まる条件は、波長/(トラックピッチ×対物レンズNA)>√2となる。
【0031】
従来の非点収差法では、光検出器のセンサ部P1〜P4(4分割センサ)が同図(b)のように設定される。この場合、光束領域a〜hの光強度に基づく検出信号成分をA〜Hで表すと、フォーカスエラー信号FEとプッシュプル信号PPは、
FE=(A+B+E+F)−(C+D+G+H) …(1)
PP=(A+B+G+H)−(C+D+E+F) …(2)
の演算により求まる。
【0032】
これに対し、上記図4(b)の分布状態では、上述の如く、信号光領域内に、図5(c)の状態で信号光が分布している。この場合、同図(a)に示す光束領域a〜hを通る信号光は、同図(d)のようになる。すなわち、同図(a)の光束領域a〜hを通る信号光は、光検出器のセンサ部が置かれる面S0上では、同図(d)に示す光束領域a〜hへと導かれる。
【0033】
したがって、同図(d)に示す光束領域a〜hの位置に、同図(d)に重ねて示す如くセンサ部P11〜P18を配置すれば、同図(b)の場合と同様の演算処理によって、フォーカスエラー信号とプッシュプル信号を生成することができる。すなわち、この場合も、光束領域a〜hの光束を受光するセンサ部からの検出信号をA〜Hで表すと、同図(b)の場合と同様、フォーカスエラー信号FEとプッシュプル信号PPは、上記式(1)、(2)の演算により取得することができる。
【0034】
以上のように、本原理によれば、従来の非点収差法に基づく場合と同様の演算処理にて、迷光の影響が抑制されたフォーカスエラー信号とプッシュプル信号(トラッキングエラー信号)を生成することができる。
【0035】
なお、上記原理による効果は、図6に示すように、迷光1の平面方向の焦線位置が面S0(信号光のスポットが最小錯乱円となる面)よりも非点収差素子に接近した位置にあり、且つ、迷光2の曲面方向の焦線位置が面S0よりも非点収差素子から離れた位置にあるときに奏され得るものである。すなわち、この関係が満たされていれば、信号光と迷光1、2の分布は上記図4(b)に示す状態となり、面S0において、信号光と迷光1、2が重なり合わないようすることができる。換言すれば、この関係が満たされる限り、たとえ、信号光の曲面方向の焦線位置よりも迷光1の平面方向の焦線位置が面S0に接近し、あるいは、信号光の平面方向の焦線位置よりも迷光2の曲面方向の焦線位置が面S0に接近したとしても、上記原理に基づく効果は奏され得る。
【0036】
<実施例>
本実施例は、BD、DVDおよびCDに対応可能な互換型の光ピックアップ装置に本発明を適用したものである。
【0037】
図7(a)、(b)は、本実施例に係る光ピックアップ装置の光学系を示す図である。図7(a)は、立ち上げミラー107、108よりもディスク側の構成を省略した光学系の平面図、図7(b)は、立ち上げミラー107、108からディスク側の光学系を側面から透視した図である。
【0038】
図示の如く、光ピックアップ装置は、半導体レーザ101と、2波長レーザ102と、ダイクロイックミラー103と、PBS(Polarizing Beam Splitter)104と、コリメートレンズ105と、レンズアクチュエータ106と、立ち上げミラー107、108と、2波長対物レンズ109と、BD対物レンズ110と、分光素子111と、アナモレンズ112と、光検出器113を備えている。
【0039】
半導体レーザ101は、波長405nm程度のBD用レーザ光(以下、「BD光」という)を出射する。2波長レーザ102は、波長660nm程度のDVD用レーザ光(以下、「DVD光」という)と、波長785nm程度のCD用レーザ光(以下、「CD光」という)をそれぞれ出射する2つのレーザ素子を同一CAN内に収容している。DVD光とCD光の発光点はY軸方向に並んでおり、これら発光点間のギャップはGである。
【0040】
なお、CD光の発光点とDVD光の発光点との間のギャップGは、後述の如く、CD光
が、CD光用のセンサ部に適正に照射されるように設定される。このように、2つの光源を同一CAN内に収容することで、複数CANの構成に比べて光学系を簡素化することができる。
【0041】
ダイクロイックミラー103は、BD光を透過し、CD光とDVD光を反射する。半導体レーザ101と2波長レーザ102は、ダイクロイックミラー103を透過したBD光の光軸と、ダイクロイックミラー103により反射されたDVD光の光軸が、互いに整合するように配置される。ダイクロイックミラー103により反射されたCD光の光軸は、BD光とDVD光の光軸から、ギャップGだけずれる。
【0042】
PBS104は、ダイクロイックミラー103側から入射するBD光、DVD光、CD光を反射して、コリメートレンズ105に入射させる。このようにBD光、DVD光、CD光がPBS104によって反射されるよう、半導体レーザ101と2波長レーザ102から出射されるレーザ光の偏光方向が設定されている。
【0043】
コリメートレンズ105は、PBS104側から入射するBD光、DVD光、CD光を平行光に変換する。レンズアクチュエータ106は、収差補正の際に、制御信号に応じてコリメートレンズ105を光軸方向に移動させる。
【0044】
立ち上げミラー107は、ダイクロイックミラーであり、BD光を透過するとともに、DVD光とCD光を2波長対物レンズ109に向かう方向に反射する。立ち上げミラー108は、BD光をBD対物レンズ110に向かう方向に反射する。
【0045】
2波長対物レンズ109は、DVD光とCD光を、それぞれ、DVDとCDに対して適正に収束させるよう構成されている。また、BD対物レンズ110は、BD光をBDに適正に収束させるよう構成されている。2波長対物レンズ109とBD対物レンズ110は、ホルダ121に保持された状態で、対物レンズアクチュエータ122により、フォーカス方向およびトラッキング方向に駆動される。なお、ディスクのトラック接線方向は、Y軸方向となっている。
【0046】
BDによって反射されたBD光は、再びBD対物レンズ110と立ち上げミラー108、107を通り、コリメートレンズ105に入射する。DVDとCDによって反射されたDVD光とCD光も、再び2波長対物レンズ109と立ち上げミラー107を通り、コリメートレンズ105に入射する。コリメートレンズ105は、立ち上げミラー107側からコリメートレンズ105に入射するBD光、DVD光、CD光を収束光に変換する。コリメートレンズ105により収束光に変換されたBD光、DVD光、CD光は、PBS104を略全透過して、分光素子111に入射する。
【0047】
分光素子111は、多面プリズムによって形成されている。分光素子111に入射したBD光、DVD光、CD光は、4個の光束に区分され、分光素子111による屈折作用によって、各光束の進行方向が変えられる。
【0048】
図8(a)は、分光素子111の構成を示す斜視図であり、図8(b)は、分光素子111により、BD光、DVD光、CD光の進行方向が変化させられることを模式的に示す図である。なお、同図(b)は、分光素子111をPBS104側から見たときの平面図である。また、同図(b)には、アナモレンズ112の平面方向、曲面方向が併せて示されている。
【0049】
同図(a)に示す如く、分光素子111には、出射面側に4つの傾斜面111a〜111dが形成されている。これら4つの傾斜面111a〜111dは、各傾斜面に入射する
光束の進行方向が、それぞれ同図(b)の矢印Da〜Ddの方向に進むように調整されている。同図(b)の矢印Da〜Ddは、図4(a)の矢印Da〜Ddに相当する。
【0050】
分光素子111は、PBS104側から入射するBD光とDVD光の光軸が、出射面において傾斜面111a〜111dの交わる点(中心点O)を通るように配置されている。このとき、図7(a)に示したように、CD光の光軸と、BD光とDVD光の光軸とは、ずれているため、PBS104側から入射するCD光の光軸は、分光素子111の出射面において中心点Oからずれている。なお、分光素子111は多面プリズムによって形成されているため、分光素子111によるBD光、DVD光、CD光の屈折角度は、略同じとなる。
【0051】
図7(a)に戻り、アナモレンズ112は、分光素子111側から入射したBD光、DVD光、CD光に非点収差を導入する。アナモレンズ112は、図1(a)、(b)のアナモレンズに相当する。
【0052】
図7(c)は、分光素子111が無い場合に、アナモレンズ112に入射する光束を、光束の進行方向(X軸正方向)に見たときの図である。アナモレンズに入射する光束のトラック像の方向は、図示の如く、Y軸方向となっている。
【0053】
アナモレンズ112に入射する光束は、図示の如く、平面方向と曲面方向に収束作用を受ける。従って、このように設定されたアナモレンズ112の前段に、図8(a)、(b)に示した分光素子111が配されると、分光素子111とアナモレンズ112の作用により、ディスクによって反射されたレーザ光は、光検出器113の受光面上に、図4(b)のように照射される。
【0054】
図7(a)に戻り、アナモレンズ112を透過したBD光、DVD光、CD光は、光検出器113に入射する。光検出器113は、BD光、DVD光、CD光を受光するためのセンサレイアウトを有している。
【0055】
図9は、光検出器113のセンサレイアウトを示す図である。
【0056】
光検出器113は、BD光とDVD光を受光するセンサ部B1〜B8と、CD光を受光するセンサ部C1〜C8とを有する。センサ部B1〜B8からなるセンサレイアウトと、センサ部C1〜C8からなるセンサレイアウトは、略同じレイアウトに構成されており、トラック像の方向に間隔Wだけずれて配置されている。
【0057】
BD光の信号光とDVD光の信号光を、それぞれ、図5(a)に示すように光束領域a〜hに便宜的に分割すると、BD光の信号光の光束領域a〜hと、DVD光の信号光の光束領域a〜hは、上記原理と同様に分離され、光検出器113上において、図9の照射領域a1〜h1に照射される。このとき、BD光とDVD光の照射領域a1〜h1は、信号光領域1内の4つの頂角付近に位置付けられる。センサ部B1〜B8は、信号光領域1の4つの頂角付近に配置されており、それぞれ、照射領域a1、h1、f1、c1、g1、b1、d1、e1に照射されるBD光とDVD光の信号光を検出する。
【0058】
同様に、CD光の信号光を、図5(a)に示すように光束領域a〜hに便宜的に分割すると、CD光の信号光の光束領域a〜hは、上記原理と同様に分離され、光検出器113上において、図9の照射領域a2〜h2に照射される。このとき、CD光の照射領域a2〜h2は、信号光領域2内の4つの頂角付近に位置付けられる。センサ部C1〜C8は、信号光領域2の4つの頂角付近に配置されており、それぞれ、照射領域a2、h2、f2、c2、g2、b2、d2、e2に照射されるCD光の信号光を検出する。
【0059】
なお、センサ部B1〜B8からなるセンサレイアウトと、センサ部C1〜C8からなるセンサレイアウトとの間隔Wは、2波長レーザ102におけるDVD光とCD光の発光点間のギャップGと、アナモレンズ112の曲率に応じて設定される。
【0060】
以上、本実施例によれば、BD光とDVD光の信号光は、共通のセンサ部B1〜B8によって受光される。これにより、光検出器113の受光面上に、BD光とDVD光にそれぞれ対応するセンサ部を別々に設置する必要がないため、光検出器113の受光面の面積を小さくすることができる。よって、光ピックアップ装置を小型化することが可能となる。
【0061】
また、本実施例によれば、分光素子111は多面プリズムにより形成されているため、分光素子111を、プラスチックにより形成することが可能となる。従って、分光素子111は、より安価に形成され得るため、光ピックアップ装置にかかるコストを低減することが可能となる。
【0062】
なお、上記実施例に示すように、2波長レーザ102から出射されるDVD光とCD光のうち、CD光の光軸がBD光の光軸に合わせられるのではなく、DVD光の光軸がBD光の光軸に合わせられるのが望ましい。これは、以下に示すような理由による。
【0063】
DVD光がDVD−RAMに対して照射される場合、DVD光がDVD−RAM以外のDVDに対して照射される場合に比べて、トラック幅は大きく、且つ、トラック溝によるボールパターンは大きい。このため、DVD光の光軸がBD光の光軸に合わせられるのではなく、CD光の光軸がBD光の光軸に合わせられると、DVD光の光軸が分光素子111とアナモレンズ112の中心からずれることになり、DVD−RAMが用いられた場合に適正な検出信号が得られにくくなる。このため、上記実施例では、DVD光の光軸が、BD光の光軸に合わせられている。
【0064】
<変更例1>
図10(a)は、本変更例に係る光ピックアップ装置の光学系の一部を示す図である。本変更例に係る光ピックアップ装置の光学系は、図7(a)、(b)に示した光ピックアップ装置の光学系に、2波長レーザ102とダイクロイックミラー103の間に回折素子131が追加された構成となっている。なお、本変更例の光ピックアップ装置の光学系のうち、立ち上げミラー107、108よりもディスク側の構成については、便宜上、図示が省略されている。
【0065】
図10(a)に示す如く、本変更例では、回折素子131によって、DVD光の光軸がCD光の光軸に整合される。回折素子131は、ダイクロイックミラー103側の面に回折パターンを有している。この回折パターンは、DVD光のみを所定の角度だけ回折させる。これにより、回折素子131の出射面において、DVD光とCD光の光軸が一致させられる。このように光軸が一致させられたDVD光とCD光は、ダイクロイックミラー103によって、さらにBD光の光軸と一致させられる。こうして、ダイクロイックミラー103からPBS104に向かうBD光、DVD光、CD光の光軸が一致させられる。
【0066】
ここで、回折素子131の回折パターンは、たとえば、5ステップ構造で、且つ、1ステップの段差が1.46nmに設定される。こうすると、図10(b)に示す如く、CD光は略100%回折素子131を透過し、DVD光の1次回折光の回折効率は約86%となる。これにより、DVD光のパワー損失が抑制される。
【0067】
このように光ピックアップ装置の光学系が設定されると、上記実施例と同様の効果が奏
される。また、本変更例では、BD光、DVD光、CD光の光軸が一致させられるため、光検出器113上のセンサレイアウトを1つにすることができる。すなわち、図9のセンサ部B1〜B8によって、BD光、DVD光、CD光の全ての信号光を受光することができる。図10(c)は、本変更例のセンサレイアウトを示す図である。これにより、上記実施例に比べて、光検出器113の面積を小さくすることができ、光ピックアップ装置を小型化することが可能となる。
【0068】
<変更例2>
図11(a)は、本変更例に係る光ピックアップ装置の光学系の一部を示す図である。本変更例に係る光ピックアップ装置の光学系は、図7(a)、(b)に示した光ピックアップ装置の光学系から、分光素子111とアナモレンズ112が除かれ、PBS104と光検出器113との間に、複合レンズ141が設置された構成となっている。なお、本変更例の光ピックアップ装置の光学系のうち、立ち上げミラー107、108よりもディスク側の構成については、便宜上、図示が省略されている。
【0069】
図11(b)、(c)は、複合レンズ141の構成を示す斜視図である。同図(a)は、複合レンズ141をPBS104側から見た斜視図であり、同図(b)は、複合レンズ141を光検出器113側から見た斜視図である。
【0070】
同図(b)に示す如く、複合レンズ141のPBS104側の面には、上記実施例の分光素子111の傾斜面111a〜111dと同様の、傾斜面141a〜141dが形成されている。また上記実施例と同様、ディスクによって反射されたBD光とDVD光の光軸は、傾斜面141a〜141dの交わる点(中心点O)を通るように、複合レンズ141が配置されている。
【0071】
同図(c)に示す如く、複合レンズ141の光検出器113側の面には、上記実施例のアナモレンズ112と同様の非点収差作用をBD光、DVD光およびCD光に与えるためのトーリック面141eが形成されている。
【0072】
このように光ピックアップ装置の光学系が設定されると、上記実施例と同様の効果が奏される。また、本変更例では、分光素子111とアナモレンズ112の替わりに、複合レンズ141が用いられているため、上記実施例に比べて光ピックアップ装置の部品点数が減少する。これにより、上記実施例に比べて、光ピックアップ装置を小型化することが可能となる。
【0073】
<変更例3>
図12(a)は、本変更例に係る光ピックアップ装置の光学系の一部を示す図である。本変更例に係る光ピックアップ装置の光学系は、図7(a)、(b)に示した光ピックアップ装置の光学系から、PBS104とアナモレンズ112の替わりに、ハーフミラー151と、非点収差板152、153が設置されている。なお、本変更例の光ピックアップ装置の光学系のうち、立ち上げミラー107、108よりもディスク側の構成については、便宜上、図示が省略されている。
【0074】
ハーフミラー151は、入射面において、入射するレーザ光を50%の比率で反射および透過する。これにより、ハーフミラー151は、ダイクロイックミラー103側から入射されるレーザ光を、コリメートレンズ105側に反射し、コリメートレンズ105側から入射されるレーザ光をX軸正方向に透過する。ハーフミラー151は、平行平板である。ハーフミラー151の入射面は、Y−Z平面に平行な状態から、Z軸を中心として45度だけ傾けられている。また、コリメートレンズ105側からハーフミラー151に入射するレーザ光は収束光である。このため、ハーフミラー151に入射するレーザ光は、ハ
ーフミラー151を透過することにより、Y軸方向にさらに収束される。
【0075】
非点収差板152は、透明な平行平板である。非点収差板152の入射面はY−Z平面に平行な状態から、Y軸を中心として45度だけ傾けられている。また、ハーフミラー151側から非点収差板152に入射するレーザ光は収束光である。このため、非点収差板152に入射するレーザ光は、非点収差板152を透過することにより、Z軸方向にさらに収束される。
【0076】
非点収差板152の厚みおよび屈折率と傾き角は、ハーフミラー151による非点収差作用と、非点収差板152による非点収差作用が、互いにほぼ打ち消し合うよう調整されている。このため、実質的に非点収差板153の非点収差の効果のみ残ることとなる。
【0077】
非点収差板153は、透明な平行平板である。非点収差板153の入射面は、反射光のトラック像の方向に対して45度の角をなすように傾けて配置されている。すなわち、非点収差板153の入射面は、Y−Z平面に平行な状態から、Y軸を中心として傾けられ、さらにBD光とDVD光の光軸を中心として45度だけ傾けられている。このため、非点収差板153に入射するレーザ光は、非点収差板153を透過することにより、X軸方向から見て、トラック像の方向に対して45度の角をなす方向に収束される。これにより、レーザ光に非点収差が導入される。
【0078】
なお、非点収差板153の傾き方向は、ハーフミラー151と非点収差板152により生じるコマ収差を、非点収差板153により生じるコマ収差によって同時に抑制できる方向となっている。非点収差板153の厚みおよび屈折率と傾き角は、ハーフミラー151と非点収差板152により生じるコマ収差を抑制でき、且つ、所望の非点収差作用を実現できるよう調整されている。
【0079】
このように、ハーフミラー151と、非点収差板152、153により、それぞれレーザ光が収束させられると、上記実施例と同様、コリメートレンズ105からX軸正方向に向かうレーザ光は、平面方向と曲面方向に収束させられることになる。これにより、上記実施例と同様の非点収差が導入されることになり、上記実施例と同様の効果が奏される。この場合、上記実施例のPBS104とアナモレンズ112の替わりに、安価なハーフミラー151と、非点収差板152、153が用いられるため、光ピックアップ装置にかかるコストを抑制することができる。
【0080】
なお、図12(b)に示すように、ディスク上のトラックの接線方向がX軸方向に対して45度傾くように、光ピックアップ装置の光学系が設定されても良い。この場合、ハーフミラー151によって導入される非点収差の方向(平面方向、曲面方向)は、トラック像に対して45度傾く。このため、光ピックアップ装置の光学系は、図12(b)に示す如く、図12(a)の光学系から、非点収差板152、153が省略可能である。また、分光素子111と光検出器113は、図12(a)の状態からX軸の周りに45度回転される。このように分光素子111と光検出器113の配置が調整されることにより、上記実施例と同様の効果が奏される。この構成によれば、図12(a)の構成から、さらに部品点数を低減させることができる。
【0081】
<変更例4>
図13(a)は、本変更例に係る光ピックアップ装置の光学系の一部を示す図である。本変更例に係る光ピックアップ装置の光学系は、図7(a)、(b)に示した光ピックアップ装置の光学系から、PBS104と、分光素子111と、アナモレンズ112の替わりに、ハーフミラー161と、非点収差板162、163が設置されている。なお、本変更例の光ピックアップ装置の光学系のうち、立ち上げミラー107、108よりもディス
ク側の構成については、便宜上、図示が省略されている。
【0082】
ハーフミラー161と、非点収差板162、163は、上記変更例3で示したハーフミラー151と、非点収差板152、153と同様に、コリメートレンズ105からX軸正方向に向かうレーザ光に対して、非点収差を導入する。ハーフミラー161と非点収差板162による非点収差作用は、互いにほぼ打ち消し合うよう調整されている。このため、実質的に非点収差板163の非点収差の効果のみ残ることとなる。非点収差板163は、上記変更例3の非点収差板153と同様の構成である。非点収差板163により、上記変更例3の非点収差板153と同様、ハーフミラー161と非点収差板162により生じるコマ収差を抑制することができる。
【0083】
図14(a)、(b)は、それぞれ、ハーフミラー161と非点収差板162の構成を示す斜視図であり、同図(c)および(d)は、それぞれ、ハーフミラー161と非点収差板162により、レーザ光の進行方向が変化させられることを模式的に示す図である。なお、同図(c)、(d)は、図13(a)のように配置されたハーフミラー161と非点収差板162をX軸正方向に見た模式図である。
【0084】
同図(a)に示す如く、ハーフミラー161の出射面側には、谷形状となるよう2つの異なる傾斜面161a、161bが形成されている。また、同図(b)に示す如く、非点収差板162の出射面側には、山形状となるよう2つの異なる傾斜面162a、162bが形成されている。ハーフミラー161の傾斜面の交線161kは、図7(b)に示す平面方向に合わせられる。また、非点収差板162の傾斜面の交線162kは、図7(b)に示す曲面方向に合わせられる。
【0085】
同図(c)、(d)に示す如く、ハーフミラー161に入射する反射光を平面方向と曲面方向に平行な2つの直線で4分割した光束領域A〜Dの光束は、ハーフミラー161の傾斜面161a、161bと、非点収差板162の傾斜面162a、162bに入射する。これにより、光束領域A〜Dの光束は、傾斜面161a、161bと傾斜面162a、162bによって矢印方向に進行方向が変えられる。したがって、光束領域A〜Dの光束は、ハーフミラー161と非点収差板162を通ることにより、それぞれ、同図(e)の方向Da〜Ddに進行方向が変えられる。ここで、方向Da〜Ddは、図4(a)の方向Da〜Ddに相当する。
【0086】
こうして、光束領域A〜Dを通る反射光の光束の進行方向は、ハーフミラー161と非点収差板162により変化される。また、反射光の光束は、ハーフミラー161と、非点収差板162、163により上記変更例3と同様に非点収差が導入される。これにより、上記実施例と同様の効果が奏される。
【0087】
また、本変更例では、上記変更例3に比べて、分光素子111が用いられないため、光ピックアップ装置にかかるコストをさらに抑制することが可能となる。また、本変更例では、上記変更例3に比べて、光ピックアップ装置の部品点数が減少するため、さらに光ピックアップ装置の小型化が可能となる。
【0088】
なお、、図13(b)に示すように、ディスク上のトラックの接線方向がX軸方向に対して45度傾くように、光ピックアップ装置の光学系が設定されても良い。この場合の光ピックアップ装置の光学系は、図13(b)に示す如く、図13(a)の光学系から、非点収差板163が省略される。また、光検出器113は、図13(a)の状態からX軸の周りに45度回転される。
【0089】
図13(b)の構成では、ハーフミラー161と非点収差板162によって、それぞれ
、レーザ光に非点収差が導入される。すなわち、レーザ光は、ハーフミラー161によってY軸方向に収束され、非点収差が導入される。また、レーザ光は、非点収差板162によってZ軸方向に収束され、非点収差が導入される。ハーフミラー161による収束作用と非点収差板162による収束作用が等しいと、非点収差が生じない。よって、この構成では、ハーフミラー161による収束作用と非点収差板162による収束作用が相違するように、ハーフミラー161と非点収差板162が構成される。
【0090】
図13(b)の構成例では、ハーフミラー161と非点収差板162は、図15(a)、(b)に示す如く、それぞれ、2つの傾斜面を有している。また、この場合のハーフミラー161と非点収差板162は、図15(c)、(d)に示す如く、ハーフミラー161の交線161kがZ軸方向に平行となり、非点収差板162の交線162kがY軸方向に平行となるように配置される。これにより、図15(e)に示す如く、反射光の各光束領域は、平面方向と曲面方向に対して45度の角をなす方向に分離される。よって、上記実施例と同様の効果が奏される。
【0091】
以上、本発明の実施例について説明したが、本発明は、上記実施例に何ら制限されるものではなく、また、本発明の実施例も上記以外に種々の変更が可能である。
【0092】
たとえば、上記実施例と変更例1では、分光素子111がアナモレンズ112の前段に配置されたが、分光素子111をアナモレンズ112の後段に配置しても良い。また、上記変更例3では、図12(a)に示すように、反射光の進行方向に沿って、非点収差板152、153と、分光素子111が設置されたが、これらの配置順序は任意に変更しても良い。また、上記変更例4では、図13(a)に示すように、反射光の進行方向に沿って、非点収差板162、163が設置されたが、これらの配置順序は任意に変更しても良い。
【0093】
また、上記変更例4では、図13(a)に示すように、ハーフミラー161と非点収差板162に分光作用を持たせたが、ハーフミラー161と、非点収差板162、163のうち、何れに分光作用を持たせても良い。たとえば、ハーフミラー161と非点収差板163に分光作用を持たせても良いし、非点収差板162、163に分光作用を持たせても良いし、何れか1つに分光作用を持たせても良い。たとえば、図16(a)に示すように、非点収差板162にのみ分光作用を持たせてもよい。この場合、非点収差板162は、出射面に、図8(a)の傾斜面111a〜111dに対応する傾斜面162a〜162dが形成される。
【0094】
なお、この場合、非点収差板162の出射面に形成された4つの傾斜面162a〜162dの傾き角は、図8(a)の場合と異なっている。すなわち、図7(a)に示す上記実施例の構成では、分光素子111がレーザ光の光軸に垂直となるように配置されているが、図16(a)の構成では、非点収差板162がレーザ光の光軸に対して傾いて配置されている。よって、かかる非点収差板162の傾きを加味して、非点収差板162の出射面の4つの傾斜面162a〜162dの傾き角が設定される。この点において、非点収差板162の出射面に形成された4つの傾斜面162a〜162dの傾き角は、図8(a)の場合と異なっている。
【0095】
また、図13(b)に示す場合にも、ハーフミラー161と非点収差板162のうち、何れか1つに分光作用を持たせても良い。ハーフミラー161のみに分光作用を持たせる場合には、非点収差板162を省略することもできる。すなわち、図13(b)の構成例では、分光作用をハーフミラー161と非点収差板162に分担させるようにしたため、非点収差板162が配置された。しかしながら、ハーフミラー161のみに分光作用を持たせる場合には、非点収差板162は非点収差の調整のみに寄与することとなる。よって
、非点収差板162による非点収差の調整が不要な場合、すなわち、ハーフミラー161による非点収差作用のみを用いてレーザ光に非点収差を導入する場合には、非点収差板162が省略される。
【0096】
図16(b)は、図13(b)に示す光学系から、ハーフミラー161のみに分光作用を持たせた場合の光学系を示す図である。この場合のハーフミラー161の出射面には、図8(a)で示したような4つの異なる傾斜面が形成されており、これら傾斜面の境界はY軸方向またはZ軸方向となっている。これにより、図13(b)と同様の分光作用が実現される。また、この場合、コリメートレンズ105からX軸方向に向かう反射光は収束光であり、トラック接線方向は、X軸に対して45度傾いているため、ハーフミラー161のみによって、図13(b)と同様の非点収差作用が実現される。
【0097】
なお、この場合も、図16(a)の非点収差板162の場合と同様、ハーフミラー161の出射面に形成された4つの異なる傾斜面の傾き角は、図8(a)の場合と異なっている。すなわち、図7(a)に示す上記実施例の構成では、分光素子111がレーザ光の光軸に垂直となるように配置されているが、図16(b)の構成では、ハーフミラー161がレーザ光の光軸に対して傾いている。よって、かかるハーフミラー161の傾きを加味して、ハーフミラー161の出射面の4つの異なる傾斜面の傾き角が設定される。
【0098】
また、上記変更例において、図12(b)、図13(b)、図16に示したように、トラックの接線方向がX軸に対して45度傾けられる場合、2波長対物レンズ109とBD対物レンズ110の替わりに、BD光、DVD光、CD光に対応した1つの対物レンズが用いられるようにしても良い。こうすると、BD光、DVD光、CD光のいずれのレーザ光が用いられる場合でも、対物レンズをディスクの径方向に移動させることが可能となる。
【0099】
この他、本発明の実施の形態は、特許請求の範囲に示された技術的思想の範囲内において、適宜、種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0100】
101 … 半導体レーザ(第1のレーザ光源)
102 … 2波長レーザ(第2のレーザ光源)
103 … ダイクロイックミラー(光学素子)
109 … 2波長対物レンズ(対物レンズ部)
110 … BD対物レンズ(対物レンズ部)
111 … 分光素子(分光部)
111a〜111d … 傾斜面
112 … アナモレンズ(非点収差部)
113 … 光検出器
141 … 複合レンズ(非点収差部、分光部)
141a〜141d … 傾斜面
151 … ハーフミラー(非点収差部、平行平板)
152 … 非点収差板(非点収差部、平行平板)
153 … 非点収差板(非点収差部、平行平板)
161 … ハーフミラー(非点収差部、分光部、第1または第2の板状部材)
162 … 非点収差板(非点収差部、分光部、第1または第2の板状部材)
163 … 非点収差板(非点収差部、平行平板)
161a、161b、162a〜162d … 傾斜面
B1〜B8 … センサ部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定波長の第1のレーザ光を出射する第1のレーザ光源と、
前記波長とは異なる波長の第2のレーザ光を出射する第2のレーザ光源と、
前記第1および第2のレーザ光の光軸を整合させる光学素子と、
前記第1および第2のレーザ光を記録媒体上に収束させる対物レンズ部と、
前記記録媒体によって反射された前記第1および第2のレーザ光の反射光が入射するとともに、第1の方向に前記反射光を収束させて第1の焦線を生成し、且つ、前記第1の方向に垂直な第2の方向に前記反射光を収束させて第2の焦線を生成する非点収差部と、
前記第1および第2の方向にそれぞれ平行な2つの直線で、前記第1および第2のレーザ光の反射光を4つの光束に分割したときの各光束を互いに離散させる分光部と、
離散された前記第1および第2のレーザ光の反射光の各光束を受光して検出信号を出力する光検出器と、を備え、
前記分光部は、複数の傾斜面を備える少なくとも一つのプリズムからなり、
前記光検出器には、前記第1のレーザ光の反射光の各光束と、前記第2のレーザ光の反射光の各光束とを受光する共通のセンサ部が配されている、
ことを特徴とする光ピックアップ装置。
【請求項2】
請求項1に記載の光ピックアップ装置において、
前記光学素子は、前記第1のレーザ光源から出射された前記第1のレーザ光を透過するとともに前記第2のレーザ光源から出射された前記第2のレーザ光を反射するダイクロイックミラーからなっている、
ことを特徴とする光ピックアップ装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の光ピックアップ装置において、
前記分光部は、離散された前記4つの光束が前記光検出器の受光面上において直方形の異なる4つの頂角の位置にそれぞれ導かれるよう、前記4つの光束の進行方向を変化させる、
ことを特徴とする光ピックアップ装置。
【請求項4】
請求項1ないし3の何れか一項に記載の光ピックアップ装置において、
前記非点収差部と前記分光部とが一体化されている、
ことを特徴とする光ピックアップ装置。
【請求項5】
請求項1ないし4の何れか一項に記載の光ピックアップ装置において、
前記非点収差部は、前記第1および第2のレーザ光の反射光の光軸に対して斜めに配置された光透過性の平行平板を含む、
ことを特徴とする光ピックアップ装置。
【請求項6】
請求項1ないし5の何れか一項に記載の光ピックアップ装置において、
前記非点収差部は、前記第1および第2のレーザ光の反射光の光軸に対して斜めに配置された光透過性の第1および第2の板状部材を含み、
前記第1および第2の板状部材の何れか1つ、または、両方には、前記分光部として作用する傾斜面が形成されている、
ことを特徴とする光ピックアップ装置。
【請求項1】
所定波長の第1のレーザ光を出射する第1のレーザ光源と、
前記波長とは異なる波長の第2のレーザ光を出射する第2のレーザ光源と、
前記第1および第2のレーザ光の光軸を整合させる光学素子と、
前記第1および第2のレーザ光を記録媒体上に収束させる対物レンズ部と、
前記記録媒体によって反射された前記第1および第2のレーザ光の反射光が入射するとともに、第1の方向に前記反射光を収束させて第1の焦線を生成し、且つ、前記第1の方向に垂直な第2の方向に前記反射光を収束させて第2の焦線を生成する非点収差部と、
前記第1および第2の方向にそれぞれ平行な2つの直線で、前記第1および第2のレーザ光の反射光を4つの光束に分割したときの各光束を互いに離散させる分光部と、
離散された前記第1および第2のレーザ光の反射光の各光束を受光して検出信号を出力する光検出器と、を備え、
前記分光部は、複数の傾斜面を備える少なくとも一つのプリズムからなり、
前記光検出器には、前記第1のレーザ光の反射光の各光束と、前記第2のレーザ光の反射光の各光束とを受光する共通のセンサ部が配されている、
ことを特徴とする光ピックアップ装置。
【請求項2】
請求項1に記載の光ピックアップ装置において、
前記光学素子は、前記第1のレーザ光源から出射された前記第1のレーザ光を透過するとともに前記第2のレーザ光源から出射された前記第2のレーザ光を反射するダイクロイックミラーからなっている、
ことを特徴とする光ピックアップ装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の光ピックアップ装置において、
前記分光部は、離散された前記4つの光束が前記光検出器の受光面上において直方形の異なる4つの頂角の位置にそれぞれ導かれるよう、前記4つの光束の進行方向を変化させる、
ことを特徴とする光ピックアップ装置。
【請求項4】
請求項1ないし3の何れか一項に記載の光ピックアップ装置において、
前記非点収差部と前記分光部とが一体化されている、
ことを特徴とする光ピックアップ装置。
【請求項5】
請求項1ないし4の何れか一項に記載の光ピックアップ装置において、
前記非点収差部は、前記第1および第2のレーザ光の反射光の光軸に対して斜めに配置された光透過性の平行平板を含む、
ことを特徴とする光ピックアップ装置。
【請求項6】
請求項1ないし5の何れか一項に記載の光ピックアップ装置において、
前記非点収差部は、前記第1および第2のレーザ光の反射光の光軸に対して斜めに配置された光透過性の第1および第2の板状部材を含み、
前記第1および第2の板状部材の何れか1つ、または、両方には、前記分光部として作用する傾斜面が形成されている、
ことを特徴とする光ピックアップ装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2012−94223(P2012−94223A)
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−242790(P2010−242790)
【出願日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【Fターム(参考)】
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