説明

光ファイバによる2点間変位計及び光ファイバによる2点間変位遠隔監視方法

【課題】
常時又は地震時等の災害時に於ける構造物、特に、2点間の変位量を所定の遠隔地に於いても迅速かつ適正に検出できる技術を提供する。
【解決手段】
構造物としての一方の桁35、構造物としての他方の桁36に於いて、該一方の桁35と他方の桁36の相互間の下方位置には橋台又は橋脚37が配置してある。該橋脚37は躯体で構成してもよい。上記橋脚37は、上面に2点間変位計38を配置し、上記2点間変位計38は、上記光ファイバ固定治具及び複数列で構成された複数個又は多数固のプーリーでなる回転可能な光ファイバ巻回部材及びコイルバネ等でなる変位・荷重変換部材を搭載する。この2点間変位計38から歪みセンサ機能を有する一方側及び他方側の光ファイバ39、40を引出すと共に該一方側の光ファイバ39をBOTDR計測器46に接続する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、常時又は地震時等の災害時に於ける2点間の変位を検出すべくした光ファイバによる2点間変位計及び光ファイバによる2点間変位遠隔監視方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の第1の例としては図12に示す特開2002−90233に開示されたものがある。これについて説明すれば、川1上に橋梁2が立設されている。そして、川1上に支柱3、4が適宜な間隔で立設されており、この支柱3と、支柱4との間における上部には桁5a、5b、5cが繋ぎ合わせて設けられている。この桁5aにおける手前側の下フランジ5dの上面から桁5b、5cの下フランジ5e、5fの上面までに光ファイバ6の一端が敷設されると共に光ファイバ6の他端は歪・損失統合型光パルス試験器7に接続されている。この歪・損失統合型光パルス試験器7にはコード8の一端が接続されていると共にコード8の他端はプラグ9に接続されている。このプラグ9にはコード14の一端が接続されていると共にコード14の他端は電源10に接続されている。この電源10の一例として、光ファイバ6が電磁誘導やノイズに影響されないことから簡易型発電機を使用することもある。また、前記歪・損失統合型光パルス試験器7にはコード11の一端が接続されていると共にコード11の他端は出力手段としてのモニタ12に接続されている。さらに、モニタ12にはコード13の一端が接続されていると共にコード13の他端は前記プラグ9に接続されている。このプラグ9には前記コード14を介して前記電源10に接続されている。
【0003】
前記桁5cと桁5bとの繋ぎ部15A、桁5bと桁5aの繋ぎ部15Bにおける光ファイバ6は、数ループのごとく無張力の状態にたるませておくようにする。しかも、光ファイバ6を桁5c、5b、5aにおける下フランジ5f、5e、5dの上面に敷設する場合は、前記繋ぎ部15A、繋ぎ部15Bのスプライスプレート部上には光ファイバ6を敷設せずに無張力の状態にたるませておくようにし、そして、桁5bにおける下フランジ5eの上面すなわち、図8において左右端上には両面テープを張り付け、この両面テープ上に光ファイバ6を一定の張力を与えながら仮止めすべく張り付ける。そして、この仮止めされた光ファイバ6を接着剤によって全面接着せしめ、次いで、粘着テープを光ファイバ6上に貼ることで、光ファイバ6が下フランジ5eの上面に敷設される。
【0004】
また、この種の第2の例としては図13(a)(b)に示す特開2000−292216に開示されたものがある。この光ファイバセンサ15は、斜面16に露出した監視対象物17に余長を確保して取り付けた光ファイバ18に、地滑り等の可能性の少ない監視基準側である安定地盤19側の光ファイバ20を光コネクタ21を介して着脱可能に接続することで、安定地盤19側の光ファイバ20を介して監視対象物17側の光ファイバ18と光パルス試験器22とを接続して構成されている。監視対象物17側の光ファイバ18は、斜面16に露出する監視対象物17である岩石に取り付けたセンサユニット23に余長を湾曲収納し、このセンサユニット23から引き出された光コネクタ21を、安定地盤19側の光ファイバ20に着脱可能に接続する。センサユニット23は、監視対象物17である岩石に取り付けたリール23aに光ファイバ18の余長を巻付け吸収する。安定地盤19側の光ファイバ20は、監視対象物17側の光ファイバ18に光コネクタ21を介して接続され、アンカーボルト24によって、監視対象物17の近傍の前記安定地盤19側に固定されている。監視対象物17側の光ファイバ18は、センサユニット23から引出不可能に引き留めておき、このセンサユニット23とアンカーボルト24との間では、光コネクタ21によって接続され直線状に緊張する。
【0005】
また、この種の第3の例としては図14(a)(b)に示す特開2000−258135に開示されたものがある。これについて説明すれば、25は河川堤防、26は河川、27は光ファイバセンサである。光ファイバセンサ27は、河川堤防26の長手方向に沿って延在配置された長尺の光ファイバである光ケーブル27aと、この光ケーブル27aの長手方向に連続的に設けられた複数のセンシング部27bとを備えて構成されている。センシング部27bは、光ケーブル27aの長手方向に沿って互いに当接させて隙間無く連続的に配設されているが、必要箇所にのみ配設することも可能である。前記光ケーブル27aに収納されている光ファイバには、光パルス試験器28が接続され、この光パルス試験器28から試験光を入射可能になっている。図10(b)に示すように、光ケーブル27aは、PVC(ポリ塩化ビニル)等の樹脂製の外被27c内に単心の光ファイバ心線27dを収納し、さらに、外被27cと光ファイバ心線27dとの間に抗張力体27eを収納した構造になっている。ここで、光ケーブル27aは、通常の屋外布設用の光ケーブルにて一般的であるテンションメンバを有するものでは無く、繊維状の抗張力体27eのみに張力負担を頼るものであり、一般的屋外布設用の光ケーブルに比べて伸び歪みが印加されやすくなっている。外被27cとしては優れた防水性並びに耐久性を有するものを適用する。
【0006】
また、この種の第4の例としては図15に示すものがある。これについて説明すれば、29は面状光ファイバセンサとしての面状センサである。該面状センサ29は、コンクリート構造物の表面に接着剤で一体的に貼り付け固定される。そして該面状センサ29からの信号をコネクタ収納box30を介して、光ファイバ通信網31に接続され、この光ファイバ通信網31を現場Aに一定間隔、例えば年数回毎に搬入して設置したBOTDR(Brillouin Optical Time Domain Reflectometer)計測器32に接続している。現場Aでは、発電器33及びパソコン(PC)34を備え、当該構成要素を上記BOTDR計測器32に接続している。そして、上記コンクリート構造物の歪み分布を計測し、BOTDR計測器32等により得られたデータは時系列のデータとして観測し、該データの変化から該コンクリート構造物の損傷進行状況を予測する。本システム構成はオフラインシステムとして機能し、面状センサ29のコンクリート構造物への設置後は電源等の設備も必要なく、メンテナンスフリーとなる特徴がある。
尚、オンラインシステムとして機能させる構成とすることもできるが、その場合現地AにBOTDR計測器32等を収納するBOXや設備が必要となる。
また、他の従来の技術としては電線等を使用して、構造物の変位による移動による該材料の通電と切断の状態によるON、OFF機能をもたせた装置や方法であった。
【特許文献1】特開2002−90233公開特許公報
【特許文献2】特開2000−292216公開特許公報
【特許文献3】特開2000−258135公開特許公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来の技術は、叙上の構成であるので次の課題が存在した。
すなわち、従来の技術に於ける上記第1の例によれば、一端から他端までの全長の桁5a、5b、5cの間に適宜な間隔で複数の繋ぎ部15B、15Aを有した橋梁2の歪み分布を計測する際、各繋ぎ部15B、15Aに光ファイバ6を敷設しないで無張力の状態にたるませる工法や上記各繋ぎ部15B、15A以外の一端から他端までの全長の桁5a、5b、5cに一定の張力を与えつつ光ファイバ6を敷設する工法とする必要があり、桁変位監視に伴う工法が複雑であるばかりか現場での諸設備取付け工数が大幅に増大するという問題点があった。
【0008】
また、従来の技術に於ける上記第2の例によれば、土砂や岩盤の監視対象物17の変位や歪みを計測し、岩盤崩落や斜面崩壊等の危険部位を常時監視し災害の予兆現象を迅速に把握でき防災に役立つものの、施設工数や関連部材が大幅に増大するうえに当該技術をそのまま桁変位監視装置やシステムに適用することは困難であるという問題点があった。
【0009】
また、従来の技術に於ける上記第3の例によれば、上記河川堤防25に別途移動部や該河川堤防25の変位量増幅部を設ける必要があり、また、光ケーブル27aが外被27cや心線部27dに複雑な構造を有すると共に一般用屋外布設分の光ケーブルとは異質な防水性や耐久性の高いものを使用しなければ実施できない隘路があり、当該技術をそのまま桁変位監視装置に適用することができないという問題点があった。
【0010】
また、従来の技術に於ける上記第4の例によれば、コンクリート構造物、特に、桁について、常時又は地震等の災害時や緊急点検時に現地へのアクセスやデータ解析に時間が掛り当該桁の移動量を正確かつ迅速に把握することができず加えて、桁変位監視装置システムの施工が高価となり、実施上多くの問題点が残存した。
また、桁変位の精度を向上させるためには変位センサ部とデータ測定装置を近接する必要があり、さらに現地Aでの桁変位に係る測定機器等を収納する設備が必要となり、保守費用や施工費用が増大するという問題点があった。
また、地震時等に於いて例えば約30(km)範囲にある構造物の桁変位を把握するためには、当該構造物の管理担当者が直接現場に行き、桁の変位を調べる必要があり、地震時等に於いては人的問題や対象構造物までの交通手段の問題など、タイムリーに例えば構造物の2部材間の2点間の変位を知ることは不可能に近いという問題点があった。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は特異な構造で構成されかつ一方点又は他方点等に設置された2点間変位計と、該2点間変位計に接続されるBOTDR計測器を使用して常時又は地震時等の災害時に於けるコンクリート構造物、例えば、桁の変位量を所定の遠隔地に於いても迅速かつ適正に検出できる光ファイバによる2点間変位計及び光ファイバによる2点間変位遠隔監視方法を提供することを目的としたものであって、次の構成、手段から成立する。
【0012】
すなわち、請求項1記載の発明によれば、一方、他方の2点間の変位を測定するものであって、複数列で構成された複数個又は多数個のプーリーでなる回転可能な光ファイバ巻回部材と、該光ファイバ巻回部材に巻装された該光ファイバの一方側を接続した光ファイバ固定治具と、該光ファイバの他方側を接続した変位・荷重変換部材とを内部に収容してなり、上記光ファイバの一方側をBOTDR計測器に接続したことを特徴とする。
【0013】
請求項2記載の発明によれば、請求項1記載の発明に於いて、前記2点間変位計は箱状ケースに構成され、その内底面部に上記光ファイバ固定治具と、上記複数列で構成された複数個又は多数個のプーリーでなる回転可能な光ファイバ巻回部材と、上記変位・荷重変換部材とを固定したことを特徴とする。
【0014】
請求項3記載の発明によれば、請求項1又は2記載の発明に於いて、前記変位・荷重変換部材は、コイルバネで構成されたことを特徴とする。
【0015】
請求項4記載の発明によれば、一方、他方の2点間の変位を測定するもので一方点に設置してあって、複数列で構成された複数個又は多数個のプーリーでなる回転可能な光ファイバ巻回部材と、該光ファイバ巻回部材に巻装された該光ファイバの一方側を接続した光ファイバ固定治具と、該光ファイバの他方側を接続した変位・荷重変換部材とを内部に収容してなり、上記光ファイバの一方側をBOTDR計測器に接続し、上記変位・荷重変換部材に接続されたリードワイヤを他方点に配置したアングルに固定したことを特徴とする。
【0016】
請求項5記載の発明によれば、請求項1、2、3又は4記載の発明に於いて、前記光ファイバの設置時に予め張力を与えることを特徴とする。
【0017】
請求項6記載の発明によれば、一方、他方の桁相互間の下方に配置される橋脚の上面に設置されてあって、複数列で構成された複数個又は多数個のプーリーでなる回転可能な光ファイバ巻回部材と、該光ファイバ巻回部材に巻装された該光ファイバの一方側を接続した光ファイバ固定治具と、該光ファイバの他方側を接続した変位・荷重変換部材とを内部に収容してなり、上記光ファイバの一方側をBOTDR計測器に接続し、上記変位・荷重変換部材に接続されたリードワイヤを上記桁の下面に固定したアングルに固定したことを特徴とする。
【0018】
請求項7記載の発明によれば、一方、他方の2点間の桁変位を測定するものであって、該桁変位を伝達するリードワイヤを巻装した定荷重バネ部材と、該定荷重バネ部材からのリードワイヤを接続しかつ桁変位を荷重に変換する変位・荷重変換部材と、該変位・荷重変換部材に発生した荷重に基づき一端及び他端の光ファイバを張設・巻取しかつ該一端及び他端の光ファイバをネットワーク通信網に接続した張力発生部材と、前記光ファイバを巻装するものであって複数列で構成された複数個又は多数個のプーリーでなる回転可能な光ファイバ巻回部材とを具備したことを特徴とする。
【0019】
請求項8記載の発明によれば、一方、他方の2点間の桁変位を測定するものであって、該桁変位を伝達するリードワイヤを巻装した定荷重バネ部材と、該定荷重バネ部材からのリードワイヤを接続しかつ桁変位を荷重に変換する変位・荷重変換部材と、該変位・荷重変換部材に発生した荷重に基づき一端及び他端の光ファイバを張設・巻取しかつ該一端及び他端の光ファイバをネットワーク通信網に接続した張力発生部材と、前記光ファイバを巻装するものであって複数列で構成された複数個又は多数個のプーリーでなる回転可能な光ファイバ巻回部材と、前記定荷重バネ部材、変位・荷重変換部材、張力発生部材及び光ファイバ巻回部材を内装した箱状ケースと、該箱状ケースの壁部位に装着されてあって、前記定荷重バネ部材の前後に配置され、リードワイヤを巻装する前記リードワイヤ引出部材とを具備したことを特徴とする。
【0020】
請求項9記載の発明によれば、請求項8記載の発明に於いて、前記リードワイヤ引出部材は、前記箱状ケースの壁部を貫通した回転軸の両端に連結されると共に前記リードワイヤを張設・巻取りする箱状ケース内外に配置されたプーリーと、該回転軸に囲僥されたオイルシール部材を有したことを特徴とする。
【0021】
請求項10記載の発明によれば、一方、他方の2点間の変位を測定するものであって、複数列で構成された複数個又は多数個のプーリーでなる回転可能な光ファイバ巻回部材と、該光ファイバ巻回部材に巻装された該光ファイバの一方側を接続した光ファイバ固定治具と、該光ファイバの他方側を接続した変位・荷重変換部材とを内部に収容してなり、上記光ファイバの一方側をBOTDR計測器に接続してなる2点間変位計を各構造物に設置されている既存の光ファイバネットワーク通信網に接続した光ファイバによる2点間変位遠隔監視方法を特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
本発明に係る光ファイバによる2点間変位計及び光ファイバによる2点間変位遠隔監視方法は、叙上の構成を有するので次の効果がある。
【0023】
すなわち、請求項1記載の発明によれば、一方、他方の2点間の変位を測定するものであって、複数列で構成された複数個又は多数個のプーリーでなる回転可能な光ファイバ巻回部材と、該光ファイバ巻回部材に巻装された該光ファイバの一方側を接続した光ファイバ固定治具と、該光ファイバの他方側を接続した変位・荷重変換部材とを内部に収容してなり、上記光ファイバの一方側をBOTDR計測器に接続したことを特徴とする光ファイバによる2点間変位計を提供する。
このような構成としたので、光ファイバに複数列で構成された複数個又は多数個のプーリーでなる光ファイバ巻回部材を内部に備え、この光ファイバ巻回部材により光ファイバの長さを必要長まで小空間を構成した2点間変位計の内部に集約させて施工工数を大幅に削減すると共に各構造物の上面等に容易に設置することができ、また常時又は地震時等の災害時に拘らず正確かつ迅速に2点間の変位量を検出することができる効果がある。
【0024】
請求項2記載の発明によれば、前記2点間変位計は箱状ケースに構成され、その内底面部に上記光ファイバ固定治具と、上記複数列で構成された複数個又は多数個のプーリーでなる回転可能な光ファイバ巻回部材と、上記変位・荷重変換部材とを固定したことを特徴とする請求項1記載の光ファイバによる2点間変位計を提供する。
このような構成としたので、上記請求項1記載の発明の効果に加えて、2点間変位計がコンパクトな箱状ケースに構成され、その内部に光ファイバ固定治具、光ファイバ巻回部材やコイルバネ等の変位・荷重変換部材の各構成要素を収容したので各構成要素をコンパクトに組付けられると共に構成部品又は部材の取り替えを容易にし、設置工数を大幅に低減する効果がある。
【0025】
請求項3記載の発明によれば、前記変位・荷重変換部材は、コイルバネで構成されたことを特徴とする請求項1又は2記載の光ファイバによる2点間変位計を提供する。
このような構成としたので、光ファイバの他方側に接続される変位・荷重変換部材を汎用の所定のバネ定数を有するコイルバネを採用したので、2点間変位計の実施化が極めて容易になるという効果がある。
【0026】
請求項4記載の発明によれば、一方、他方の2点間の変位を測定するもので一方点に設置してあって、複数列で構成された複数個又は多数個のプーリーでなる回転可能な光ファイバ巻回部材と、該光ファイバ巻回部材に巻装された該光ファイバの一方側を接続した光ファイバ固定治具と、該光ファイバの他方側を接続した変位・荷重変換部材とを内部に収容してなり、上記光ファイバの一方側をBOTDR計測器に接続し、上記変位・荷重変換部材に接続されたリードワイヤを他方点に配置したアングルに固定したことを特徴とする光ファイバによる2点間変位計を提供する。
このような構成としたので、上記光ファイバの他方側を構造物の下面に変位・荷重変換部材を介してアングルに固定されるリードワイヤに接続したので、該光ファイバが外部からの衝撃等から保護され損傷する惧れがなく設置から長年月を経た状態でも光ファイバの歪みや桁の変位を正確に判定かつ検出し、耐久性の高い2点間変位計を提供できる効果がある。
【0027】
請求項5記載の発明によれば、前記光ファイバの設置時に予め張力を与えることを特徴とする請求項1、2、3又は4記載の光ファイバによる2点間変位計を提供する。
このような構成としたので、複数個又は多数個のプーリーと、変位・荷重変換部材としてのコイルバネを介し、この部材間に予め張力を掛けて変位に対して引張方向と圧縮方向に対応可能な2点間の変位を有効利用する効果がある。
【0028】
請求項6記載の発明によれば、一方、他方の桁相互間の下方に配置される橋脚の上面に設置されてあって、複数列で構成された複数個又は多数個のプーリーでなる回転可能な光ファイバ巻回部材と、該光ファイバ巻回部材に巻装された該光ファイバの一方側を接続した光ファイバ固定治具と、該光ファイバの他方側を接続した変位・荷重変換部材とを内部に収容してなり、上記光ファイバの一方側をBOTDR計測器に接続し、上記変位・荷重変換部材に接続されたリードワイヤを上記桁の下面に固定したアングルに固定したことを特徴とする光ファイバによる桁変位計を提供する。
このような構成としたので、コンパクトに設計された2点間変位計を桁変位計として使用すると共に常時又は地震時等の災害時のいずれに際しても一方又は他方の桁変位や橋脚変位を現場から所定の遠隔地に設置した光ファイバに発生した歪みを測定するBOTDR計測器やその他関連製品によりリアルタイムに監視でき、正確かつ迅速に桁の移動量を把握することができる光ファイバによる桁変位計を提供する効果がある。
【0029】
請求項7記載の発明によれば、一方、他方の2点間の桁変位を測定するものであって、該桁変位を伝達するリードワイヤを巻装した定荷重バネ部材と、該定荷重バネ部材からのリードワイヤを接続しかつ桁変位を荷重に変換する変位・荷重変換部材と、該変位・荷重変換部材に発生した荷重に基づき一端及び他端の光ファイバを張設・巻取しかつ該一端及び他端の光ファイバをネットワーク通信網に接続した張力発生部材と、前記光ファイバを巻装するものであって複数列で構成された複数個又は多数個のプーリーでなる回転可能な光ファイバ巻回部材とを具備したことを特徴とする光ファイバによる2点間変位計を提供する。
このような構成としたので、定荷重バネ部材や張力発生部材を設けたのでノイズに基づく桁変位を阻止し伝達することなくリードワイヤの張力を一定荷重に保持し桁変位を正確に伝達すると共に光ファイバを光ファイバ巻回部材により均一に張設し得るので高品質の2点間変位計を提供できる効果がある。
【0030】
請求項8記載の発明によれば、一方、他方の2点間の桁変位を測定するものであって、該桁変位を伝達するリードワイヤを巻装した定荷重バネ部材と、該定荷重バネ部材からのリードワイヤを接続しかつ桁変位を荷重に変換する変位・荷重変換部材と、該変位・荷重変換部材に発生した荷重に基づき一端及び他端の光ファイバを張設・巻取しかつ該一端及び他端の光ファイバをネットワーク通信網に接続した張力発生部材と、前記光ファイバを巻装するものであって複数列で構成された複数個又は多数個のプーリーでなる回転可能な光ファイバ巻回部材と、前記定荷重バネ部材、変位・荷重変換部材、張力発生部材及び光ファイバ巻回部材を内装した箱状ケースと、該箱状ケースの壁部位に装着されてあって、前記定荷重バネ部材の前後に配置され、リードワイヤを巻装する前記リードワイヤ引出部材とを具備したことを特徴とする光ファイバによる2点間変位計を提供する。
このような構成としたので、請求項7記載の発明の効果に加えて、リードワイヤの引出しを容易にするうえに2点間変位計がコンパクトな箱状ケースに構成され、その内部に定荷重バネ部材、光ファイバ巻回部材やコイルバネ等の変位・荷重変換部材、張力発生部材の各構成要素を収容したので各構成要素をコンパクトに組付けられると共に構成部品又は部材の取り替えを容易にし、設置工数を大幅に低減する効果がある。
【0031】
請求項9記載の発明によれば、前記リードワイヤ引出部材は、前記箱状ケースの壁部を貫通した回転軸の両端に連結されると共に前記リードワイヤを張設・巻取りする箱状ケース内外に配置されたプーリーと、該回転軸に囲僥されたオイルシール部材を有したことを特徴とする請求項8記載の光ファイバによる2点間変位計を提供する。
このような構成としたので、請求項8記載の発明の効果に加えて、当該2点間変位計は風雨や震動等の外部の悪環境において、その機密性や耐久性を向上させ、長寿命の計測器として信頼性を高める効果がある。
【0032】
請求項10記載の発明によれば、一方、他方の2点間の変位を測定するものであって、複数列で構成された複数個又は多数個のプーリーでなる回転可能な光ファイバ巻回部材と、該光ファイバ巻回部材に巻装された該光ファイバの一方側を接続した光ファイバ固定治具と、該光ファイバの他方側を接続した変位・荷重変換部材とを内部に収容してなり、上記光ファイバの一方側をBOTDR計測器に接続してなる2点間変位計を各構造物に設置されている既存の光ファイバネットワーク通信網に接続したことを特徴とする光ファイバによる2点間変位遠隔監視方法を提供する。
このような構成としたので、特に、地震時等の災害時に於いて、例えば、国道沿いに敷設された光ファイバネットワーク通信網の例えば情報BOXを使用して約20(km)ないし30(km)程度離れた遠隔地の道路事務所内に設置した光スイッチを経由して複数の橋梁とBOTDR計測器を接続して光ファイバによる2点間変位や歪み測定用の光ファイバを該変位計に直列に結線し、構造物の歪みを遠隔監視する方法を構成でき、電源設備を必要とすることなく1本の光ファイバで自動的に2点間又は複数若しくは多数間の構造物の変位を監視できる効果がある。また、地震等の災害時、担当職員が遠距離にある構造物へ直接行くことなく、そして集中的に構造物の2点間の変位を把握可能な監視システムを提供する効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
以下、本発明に係る光ファイバによる2点間変位計及び光ファイバによる2点間変位遠隔監視方法の実施の形態について添付図面に基づき詳細に説明する。
【0034】
図1ないし図6は、本発明に係る光ファイバによる2点間変位計及び光ファイバによる2点間変位遠隔監視方法の実施の形態を示す一例であって、図1は、土木・建築構造物として2点間の変位を検出する光ファイバによる2点間変位計の配置状態を示す概要図、図2は、上記2点間変位計の内部に収容される各構成部材を示す構成図、図3は、本発明に係る光ファイバの歪み(μ)に対する荷重(gf)の関係特性図、図4は、本発明に係る光ファイバの歪み(μ)に対する荷重(gf)の光ファイバ素線特性図、図5は、各構造物に設置した本発明に係る光ファイバによる2点間変位計でネットワーク通信網を介してBOTDR計測器で構造物の変位を検出する方法を示すシステム概要図、図6は、図5に示す2点間変位監視システムに於ける2点間変位計の内部構成を示す構成概要図である。
【0035】
図1は、本発明に係る光ファイバによる2点間変位計の設置状態を示す一例であって、構造物、例えば桁や橋脚の変位を検出する例を示した。35は土木・建築構造物例えば、コンクリート構造物の一方の桁である。36は土木・建築構造物例えば、コンクリート構造物の他方の桁である。該一方の桁35と他方の桁36の相互間の下方位置には橋台又は橋脚37が配置してある。該橋脚37は躯体で構成してもよい。上記橋脚37は、上面に2点間変位計38を配置し、図2に示すようにこの2点間変位計38から歪みセンサ機能を有する一方側及び他方側の光ファイバ39、40を引出す。尚、本実施の形態に於ける2点間変位計38は桁変位計としての機能を有している。
【0036】
また、上記2点間変位計38は内部に収容してあって、例えば橋脚37の上面37aに設置され、上記他方側の光ファイバ40に接続した図2に示す弾性部材の性質を有する変位・荷重変換部材41としての例えば、バネ、好ましくはコイルバネ(以下単に「バネ」という)を有し、この変位・荷重変換部材41に連結する鋼線等でなるリードワイヤ42は、上記2点間変位計38から引廻され他方の桁36の下面36aに固定されたアングル44に固定されている。尚、35aは一方の桁35の下面である。
【0037】
ここに於いて、上記2点間変位計38は図2に示すように、2列又は3列の複数列すなわち、本実施の形態では、各列が円盤状に形成された6個の一方及び他方のプーリー45a、45a…及び45b、45b…を組合せて、2列で構成された光ファイバ巻回部材45と、上記一方側の光ファイバ39及び上記他方側の光ファイバ40と一体した同一光ファイバで構成されかつ両プーリー45a、45b間に巻装された光ファイバ45cと、一端側を上記一方側の光ファイバ39及び他端を上記光ファイバ45cに接続した光ファイバ固定治具45dと、上記光ファイバ45cと他方側の光ファイバ40の接続点に接続されたコイルバネ等でなる変位・荷重変換部材41とで構成される。
尚、上記一方及び他方のプーリー45a、45bは単一列、3列又は4列等であってもよく、さらに前端及び後端間に6個以外の多数固を配置してもよい。
【0038】
上記一方のプーリー45a、45a…及び上記他方のプーリー45b、45b…はその軸心が一方、他方の軸棒45e、45fを貫通させかつ相互間幅を有して回転可能に軸着している。上記一方の軸棒45eの前端45e1及び後端45e2並びに上記他方の軸棒45fの前端45f1及び後端45f2はそれぞれ2つの脚部45g1、45g2及び45h1、45h2を備え、上記一方及び他方のプーリー45a…、45b…を回転自在に支承している。また、該一方及び他方のプーリー45a、45a…、45b、45b…は、外周部に例えば、略V字状又は凹陥状の溝を周設形成し、この溝内に上記光ファイバ45cをそれぞれ交互につまり一方のプーリー45aから他方のプーリー45bに往復させて懸架する。
【0039】
このように構成したので、上記光ファイバ45cは一方のプーリー45aと他方のプーリー45bとの間隔長のほかにかつ一方のプーリー45a…、他方のプーリー45b…の6個分の距離を稼ぐことができ、上記2点間変位計38が小型の箱状ケースで構成した場合にも、比較的長大な光ファイバ45cを収容することができ、一方、他方の桁長の長いものにも適用させることができる。そして、上記2点間変位計38は、内部の底面部等に例えば基盤(図示せず)を設置し、この基盤上面に上記光ファイバ固定治具45d及び複数列で構成された複数個又は多数固のプーリー45a、45bでなる回転可能な光ファイバ巻回部材45及びバネ、特に、コイルバネ等でなる変位・荷重変換部材41を搭載する。
【0040】
上記2点間変位計38に収容しているバネ等の変位・荷重変換部材41から引出されたリードワイヤ42はその他端がアングル44の垂下固定部43の緊締貫通孔43aに係止固定している。上記変位・荷重変換部材41によりリードワイヤ42は適宜の張力を確保して張設すると共に上記2点間変位計38の変位・荷重変換部材41を適宜に伸張させ、また、上記光ファイバ45cを光ファイバ巻回部材45に設置する際予め張力を与えており、上記一方側及び他方側の光ファイバ39、40の歪みを適正に検出させ、上記構造物の2点間すなわち土木・建築構造物、例えばコンクリート構造物の変位量若しくは移動量を測定かつ検出する。
【0041】
また、上記他方側の光ファイバ40は、上記2点間変位計38から引出され、図1に示すように上記他方側の桁36の下面36aに固定したアングル44に接続する。そして、該一方側の光ファイバ39はいわゆるBORTD計測器46を接続する。そして、BOTDR(Brillouin Optical Time Domain Reflectometer)計測器46は、上記光ファイバ39及び40間に加えられた歪み分布を光ファイバ39及び40の一端から光パルスを入射させ、後方散乱光の一つであるブリルアン散乱光の周波数シフトから歪みの大きさを該光パルスの光速と受信時間から距離を求め、桁や橋脚の変位を検出する。
【0042】
尚、上記2点間変位計38は桁や橋脚等の2点間の変位を測定するために所定値以上の長さを有する光ファイバ45cが必要となる。つまり、該光ファイバ45cの許容伸び率を1.2(%)とすれば、12(cm)の変位を測定するためには所定値より10(m)の延長が必要であり、一定以上の任意の変位量を測定するために光ファイバの許容伸び量を補填する手段が必要となる。この補填する手段が前述したコイルバネ等でなる変位・荷重変換部材41であって、上記光ファイバ45cに直列に接続されている。従って、上記2点間変位計38の構成は上述の一方、他方のプーリー45a…及び45b、45b…や上述の光ファイバ巻回部材45等を備えない構成としてもよい。
【0043】
上述した本発明に係る光ファイバによる2点間変位計の実施の形態に基づく動作等について説明する。
【0044】
本発明に係る光ファイバによる2点間変位計は一方側又は他方側のセンサとしての光ファイバ39、40間の歪み分布を測定するBOTDR計測器46を備え、2点間の構造物の変位を変位・荷重変換部材41(バネ)により力に変換し、直接に当該光ファイバ39、40間に加え、該一方側又は他方側光ファイバ39、40間に発生した歪みを測定し、一方、他方の構造物の2点間変位を検出する技術である。
そして、図2に示すように上記2点間変位計38内に設置された光ファイバ巻回部材45に巻装された1本の長大な光ファイバ45cに桁歪み測定用としての一方側又は他方側の光ファイバ39、40を直列に接続し、一方点、他方点例えば桁35、36や橋脚37に於ける構造物の複数箇所の変位や歪みを同時に測定できることを特徴とする。
【0045】
次に、上記一方側又は他方側の光ファイバ39、40間に掛る荷重(gf)と歪み(μ)の関係について説明すれば、図3は、素線の径が0.25(mm)、UV被覆線に於ける一方側又は他方側の光ファイバ39、40間に掛る荷重Y(gf)と歪みX(μ)の関係を示す特性図である。この特性図は、−20(℃)ないし60(℃)の範囲に於いて、測定した結果を示しており、式(1)が成立する。
すなわち、Y=0.106X (1)
式(1)で一方、他方の桁35、36の変位を掛る荷重Y(gf)に変換して、当該一方側又は他方側の光ファイバ39、40間に加えれば、上記BOTDR計測器46により、一方又は他方の桁45、46や橋脚37の変位を測定できる。
【0046】
また、一方側又は他方側の光ファイバ39、40間に掛る荷重(gf)と桁変位の関係について説明すれば、一般に、光ファイバ39、40間は20000(μ)〜30000(μ)で破断するといわれている。最悪の場合を考慮して、2点間変位計38つまり桁変位計の最大許容歪みを10000(μ)とすると、BOTDR計測器46の機能よりパルス幅100(ns)での測定精度は30(μ)であるから10000/30=333となり、1(mm)の精度で約300(mm)すなわち、1(cm)の精度で約3(m)の変位を測定できる。
【0047】
地震時の構造物すなわち桁の変位を考慮すると30(cm)の変位が必要であり、光ファイバ39、40間をセンサとしたとき、許容歪みを10000(μ)とすると、30(cm)の変位を得るためには光ファイバ39、40間は、約30(m)の長さの光ファイバを用いる必要がある。そして、光ファイバ39、40に変位・荷重変換部材41としてのバネを介在させる方法がある。例えば、図4に示すように、桁変位30(cm)の変位を測定するために必要なバネの伸びは次の計算により、10(m)×10000(μ)=0.10(m)となる。0.10(m)の伸びを得るには上記式(1)から光ファイバ39、40に掛る荷重Y=0.106×1000=1060(gf)となる。すなわち、1060(g)で0.10(m)を引張すれば光ファイバ39、40は10000(μ)発生することが判明した。
【0048】
ここで上記2点間変位計38に変位・荷重変換部材41としてのバネを介在させる理由は、光ファイバ39、40間の歪み(μ)は光ファイバの長さL(m)、光ファイバの伸び△L(m)とすれば、μ=△L(m)/L(m)で表される。リードワイヤ42の伸びを無視すると、桁35、36の変位と光ファイバ39、40間の伸び△L(m)が同じとなり、大きな変位に対応するためには、光ファイバの長さLを長くする必要がある。桁35、36の移動量は、光ファイバ39、40間の伸び△L(m)にバネの伸びを加えた値となっている。バネ定数を変化させることで、光ファイバ39、40間の歪み(μ)を一定にして任意の変位に対応できることになる。また、光ファイバ39、40間の縮む方向の変位は予め張力を加えた位置を0点とすることで対応できる。
【0049】
桁35、36の変位を光ファイバ39、40で直接受ける場合と、バネを介在する場合について説明すれば、
(1)変位を直接に受ける場合は、光ファイバ39、40の延長を1(m)とすると光ファイバの伸びは前記式より、±5(mm)の変位に対応できることになる。要求される桁35、36の移動量を±150(mm)と仮定すると光ファイバ39、40の伸びは△L=300(mm)となり、光ファイバ39、40の延長は30(m)必要となる。
(2)桁35、36と光ファイバ39、40の間にバネを介在させた場合、光ファイバ39、40の延長に関係なく、光ファイバ39、40に10000(μ)以上の歪みが発生しないようなバネ定数を選ぶことによって任意の変位に対応できる。
【実施例1】
【0050】
次に、上述した本発明に係る具体的な実施例1としての図5に示す既存の光ファイバネットワーク通信網を利用した光ファイバによる2点間変位遠隔監視方法について説明する。
ここで、図5はいわゆる遠距離監視システムの概要を示すものであって、各構造物設置点、すなわち本実施例ではB、C、Dの3個所の構造物に設置した本発明装置としての2点間変位計38から引出された光ファイバ39と40を直列に既存の光ファイバネットワーク通信網51に接続すると共に遠隔地に設置したBOTDR計測器46で、上記各構造物B、C及びDの変位を一斉に検出する。また、当該実施例は一方側又は他方側の光ファイバ39、40を各桁35、36に設置した後は、設置現場BないしEに於いて電源設備は不要となり、メンテナンスフリー状態となる。
尚、図5に於いて37は橋脚である。
【0051】
次に、図5の実施例1に基づき図6に示す2点間変位計38の内部の構成及び動作を説明する。
上記2点間変位計38は図6に示すように、2列又は3列の複数列すなわち、本実施の形態では、各列が円盤状に形成された6個の一方及び他方のプーリー45a、45a…及び45b、45b…を組合せて、2列で構成された光ファイバ巻回部材45と、上記一方側の光ファイバ39及び上記他方側の光ファイバ40と一体した同一光ファイバで構成されかつ両プーリー45a、45b間に巻装された光ファイバ45cと、一端側を上記一方側の光ファイバ39及び他端を上記光ファイバ45cに接続した光ファイバ固定治具45dと、上記光ファイバ45cと他方側の光ファイバ40の接続点に接続されたコイルバネ等でなる変位・荷重変換部材41とで構成される。
また、前述した一方側の光ファイバ39、他方側の光ファイバ40及び光ファイバ45cは連続した一つのものであって、単一の光ファイバで構成されている。
尚、上記一方及び他方のプーリー45a、45bは単一列、3列又は4列等であってもよく、さらに前端及び後端間に6個以外の多数固を配置してもよい。
【0052】
上記一方のプーリー45a、45a…及び上記他方のプーリー45b、45b…はその軸心が一方、他方の軸棒45e、45fを貫通させかつ相互間幅を有して回転可能に軸着している。上記一方の軸棒45eの前端45e1及び後端45e2並びに上記他方の軸棒45fの前端45f1及び後端45f2はそれぞれ2つの脚部45g1、45g2及び45h1、45h2を備え、上記一方及び他方のプーリー45a…、45b…を回転自在に支承している。また、該一方及び他方のプーリー45a、45a…、45b、45b…は、外周部に例えば、略V字状又は凹陥状の溝を周設形成し、この溝内に上記光ファイバ45cをそれぞれ交互につまり一方のプーリー45aから他方のプーリー45bに往復させて懸架する。
【0053】
このように構成したので、上記光ファイバ45cは一方のプーリー45aと他方のプーリー45bとの間隔長のほかにかつ一方のプーリー45a…、他方のプーリー45b…の6個分の距離を稼ぐことができ、上記2点間変位計38が小型の箱状ケースで構成した場合にも、比較的長大な光ファイバ45cを収容することができ、一方、他方の桁長の長いものにも適用させることができる。そして、上記2点間変位計38は、内部の底面部等に例えば基盤を設置し、この基盤上面に上記光ファイバ固定治具45d及び複数列で構成された複数個又は多数固のプーリー45a、45bでなる回転可能な光ファイバ巻回部材45及びバネ、特に、コイルバネ等でなる変位・荷重変換部材41を搭載する。
【0054】
上記2点間変位計38に収容しているバネ等の変位・荷重変換部材41から引出されたリードワイヤ42はその他端がアングル44の垂下固定部43の緊締貫通孔43aに係止固定している。
上記変位・荷重変換部材性部材41によりリードワイヤ42は適宜の張力を確保して張設すると共に上記2点間変位計38の変位・荷重変換部材41を適宜に伸張させ、また、上記光ファイバ45cを光ファイバ巻回部材45に設置する際予め張力を与えており、上記一方側及び他方側の光ファイバ39、40の歪みを適正に検出させ、上記構造物の2点間すなわち土木・建築構造物、例えばコンクリート構造物の変位量若しくは移動量を測定かつ検出する。そして、上記他方側の光ファイバ40は前記光ファイバ巻回部材45に巻装された光ファイバ45cの他方端と変位・荷重変換部材41との接続点Pに接続されると共に既存の光ファイバネットワーク通信網51に接続する。
【0055】
また、図5に示すように、各構造物設置点B、C、Dに設置された当該各2点間変位計38に於ける他方側の光ファイバ40は上記光ファイバネットワーク通信網51を介して順次次段の一方側の光ファイバ39に直列接続構成されている。そして、最終段の2点間変位計38の一方側の光ファイバ39は光ファイバネットワーク通信網51を介していわゆるBOTDR計測器46に接続する。
尚、他の構成部材等は図2に示すものと略同一であり説明を省略する。
【実施例2】
【0056】
次に、図6に示す本発明に係る2点間変位遠隔監視システムに於ける2点間変位計の応用例である実施例2について説明する。
この実施例2に係る2点間変位計38Aの特徴点は図7に示す構成概要図から明らかなように一方、他方の2点間の桁変位を測定するものであって、該桁変位を伝達するリードワイヤ42を巻装した定荷重バネ部材53と、該定荷重バネ部材53からのリードワイヤ42を接続しかつ桁変位を荷重に変換する変位・荷重変換部材41と、該変位・荷重変換部材41に発生した荷重に基づき一端及び他端の光ファイバ45cを張設・巻取しかつ該一方側及び他方側の光ファイバ39、40をネットワーク通信網51、51に接続した張力発生部材52と、該一方側及び他方側の光ファイバ39、40に連続してなる前記光ファイバ45cを巻装するものであって複数列で構成された複数個又は多数個のプーリーでなる回転可能な光ファイバ巻回部材45とを備えたことにある。
【0057】
図7に基づきこの本発明に係る2点間変位遠隔監視システムに於ける2点間変位計の実施例2を説明すれば、2列又は3列の複数列すなわち、実施例2では、各列が円盤状に形成された9個の一方及び他方のプーリー45a、45a…及び45b、45b…を組合せて、2列で構成された光ファイバ巻回部材45と、上記一方側の光ファイバ39及び上記他方側の光ファイバ40と一体した同一光ファイバで構成されかつ両プーリー45a、45b間に巻装された光ファイバ45cと、上記光ファイバ39と上記光ファイバ40は上記光ファイバ巻回部材45から導出された後に張力発生部材52により固定され、それぞれ外部のネットワーク通信網51、51に接続される。一方、2点間の土木・建築構造物、例えば、一方、他方の桁変位を伝達するリードワイヤ42を定荷重バネ部材53に巻装し、さらに、該リードワイヤ42は、その桁変位を荷重に変換する変位・荷重変換部材41の他端に接続する。また、該変位・荷重変換部材41の一端は、前記リードワイヤ42と同種又は別異のリードワイヤ42aを上記張力発生部材52に接続する。そして、該張力発生部材52を回転駆動することにより上記光ファイバ45cに張力を付与し、この2点間の構造物の変位信号すなわち桁変位信号をネットワーク通信網51、51を介して伝送し、上記BOTDR計測器46により計測する。
【0058】
尚、図7に於いては、2点間変位計38Aの実施例2の構成に備えられる後述するダミー用プーリーやオイルシール部材等は省略した。
また、上記一方及び他方のプーリー45a、45bは単一列、3列又は4列等であってもよく、さらに前端及び後端間に9個以外の多数固を配置してもよい。
【0059】
上記一方のプーリー45a、45a…及び上記他方のプーリー45b、45b…はその軸心が軸棒45e、45fを貫通させかつ相互間幅を有して回転可能に軸着している。上記軸棒45eの前端45e1及び後端45e2並びに上記軸棒45fの前端45f1及び後端45f2はそれぞれ2つの脚部又は軸受部材45g1、45g2及び45h1、45h2を備え、上記一方及び他方のプーリー45a…、45b…を回転自在に支承している。また、該一方及び他方のプーリー45a、45a…、45b、45b…は、外周部に例えば、略V字状又は凹陥状の溝を周設形成し、この溝内に上記光ファイバ45cをそれぞれ交互につまり一方のプーリー45aから他方のプーリー45bに往復させて懸架する。
【0060】
このように構成したので、上記光ファイバ45cは一方のプーリー45aと他方のプーリー45bとの間隔長のほかにかつ一方のプーリー45a…、他方のプーリー45b…の9個分の距離を稼ぐことができ、上記2点間変位計38Aが小型の箱状ケースで構成した場合にも、比較的長大な光ファイバ45cを収容することができ、一方、他方の桁長の長いものにも適用させることができる。
【0061】
次に、図7に示す本発明に係る2点間変位遠隔監視システムに於ける2点間変位計38Aの実施例2に示す構成について具体的な構造例を図8に示し、これを説明する。
図8は、当該実施例2に於ける2点間変位計38Aの構造例であって、その全体を水平方向に断面した平面図である。
【0062】
54は、例えば略矩形状の箱状ケースであり2点間変位計38Aの各構成部材を収納している。この箱状ケース54は、例えばステンレス鋼(SUS304)の材料で成形され、その壁部54aの所定部位に貫通した単一又は複数の配管54bを経由して、その内部に収容した構成部材や内部壁面等の結露を防止すべく結露防止ガスとしての窒素ガスを封入する。そして、該配管54bには制御切替弁又はコック54cを設け、窒素ガスを設計仕様に応じて封入量を制御する。
【0063】
また、前記箱状ケース54の壁部54aの所定部位には、リードワイヤ引出部材55を装着している。該リードワイヤ引出部材55は、前記箱状ケース54の壁部54aを貫通した回転軸55aを備え、この回転軸55aの両端、つまり、該箱状ケース54の内側方向端55a1と外側方向端55a2が、それぞれリードワイヤ42の巻取機構としての一方、他方のプーリー55b、55bに連結されている。そして、該リードワイヤ引出部材55はオイルシール部材55cを備え、該回転軸55aにベアリングを介装して囲僥すると共にシール機能を有するOリング55dを介して前記壁部54aに圧接・固定している。また、該オイルシール部材55cは前記箱状ケース54の内側壁部及び外側壁部に前記回転軸55aを嵌入する窪み又は凹陥55e及び55fを形成し、この窪み又は凹陥55e及び55fにオイルシール剤55g、55gを塗布又は注入して構成される。このように構成したので前記箱状ケース54の内外の機密性を完全に確保すると共に箱状ケース54内の結露防止の実行を挙げて他の構成部材の長寿命化を促進し、高品質の2点間変位計38Aを提供できる。
【0064】
前記定荷重バネ部材53は、例えば桁変位を伝達するリードワイヤ42の張力を一定荷重以上に保持すると同時に桁移動以外の変位に対してこれを阻止し、かつ遮断するためのフィルターとしての機能を有する構成部品であって前述したリードワイヤ引出部材55から導入されたリードワイヤ42を方向転換プーリー56を介して巻装すると共に後段の変位・荷重変換部材41の他端に直結する。該定荷重バネ部材53は、図9に示すように例えば、上段、下段の複数段でなる全体が概ね円筒体又は円柱体で構成されたリードワイヤ巻取部53Aと、巻取部復帰機構53Bとで構成される。
【0065】
該リードワイヤ巻取部53Aは例えば図示するようにリードワイヤ引出部材55及び方向転換プーリー56から導入されたリードワイヤ42を巻装するための上段巻取部53A1と、該上段巻取部53A1の垂直方向に一体に成形された下段回転復帰部材固定部53A2とを備え、この下段回転復帰部材固定部53A2に回転復帰機能を有する例えば金属板バネ53C1の一端部をビス等で固定している。また、該リードワイヤ巻取部53Aの上端及び中間位置すなわち上段巻取部53A1と下段回転復帰部材固定部53A2の連結部分には鍔53A3、53A4を固定配備し、巻装したリードワイヤ42の離脱防止を図っている。そして、前記巻取部復帰機構53Bは前記リードワイヤ巻取部53Aに隣接して配置し、例えば図示するようにボビン状の巻装体で構成され、回転復帰部品としての金属板バネ53Cの他端部を巻装・固定した筒体形状又は円柱形状の板バネ巻装部53B1と、該板バネ巻装部53B1の上、下端に形成した鍔53B2、53B3とを有している。
【0066】
また、前記リードワイヤ巻取部53A及び前記巻取復帰機構53Bは箱状ケース54の底面54dに敷設した基盤54e上に立設・固定した垂直軸53A5及び53B4に回転自在に枢着している。
而して、前記リードワイヤ巻取部53Aがリードワイヤ42を巻取りかつ引張り作用をするに応じて前記巻取部復帰機構53Bの板バネ巻装部53B1を回転させつつ金属板バネ53Cが伸張又は圧縮され該リードワイヤ巻取部53Aを左又は右方向に回転する。そして、常に該金属板バネ53Cが引張力を該リードワイヤ巻取部53Aに付与するので、リードワイヤ巻取部53Aに巻装したリードワイヤ42の張力を一定荷重に保持できる。
尚、上記金属板バネ53Cは他の部品例えば非金属材料やカム又は小型モータ等で構成してもよい。
【0067】
前記変位・荷重変換部材41は、例えば図示するように略円筒体形状の容器41aと、該容器41aの一端及び他端に固定した容器キャップ41dと、該容器41a内に挿置した弾性部材としての性質を有する例えばコイルバネ等のバネ41bと、該容器41aの一方側及び他方側を前記基盤54e上に固定するためのブラケット又は脚部、軸受部材41c、41cとを備えている。そして、バネ41bの一端及び他端は、前記定荷重バネ部材53からのリードワイヤ42及び張力発生部材52に接続したリードワイヤ42aをそれぞれ接続構成している。
【0068】
前記変位・荷重変換部材41は2点間変位つまり、桁変位を容器41aのバネ41bにより荷重に変換する装置であって、例えば、試算又は実験に基づくと前記バネ41bの設計仕様はリードワイヤ42に係る張力を9.7(N)である場合、該バネ41bに接続する動滑車(図示せず)を配備し、線径を1.0(mm)、材質をSUS304WPB、長さを57.2(mm)、容器長を158.2(mm)に設定すると変換効率よく桁変位を荷重に変換できることが判明した。
ここで、動滑車を容器41a内に配備すればバネ41bの伸びを短くでき、当変位・荷重変換部材41の小型化が図れる。
【0069】
前記張力発生部材52は、図10に示すように、例えば、アイドラーであって、上段、中段及び下段に各上段、中段及び下段プーリー52a、52b及び52cを重設して構成する。また、張力発生部材52は該上段、中段プーリー52a、52b及び下段プーリー52cの略中心部であって、基盤54e上に垂直方向に立設した垂直軸52dを備えており、該上段プーリー52a、中段プーリー52b及び下段プーリー52cは垂直軸52dに回転自在に枢着している。
【0070】
前記張力発生部材52は前記変位・荷重変換部材41に発生した荷重でリードワイヤ42aを介して下段プーリー52cを回転させ、これに連動する。該上段プーリー及び該中段プーリー52bにそれぞれ固定した光ファイバ45cとしての一方側光ファイバ45c1及び他方側光ファイバ45c2を例えばプーリーで構成した方向転換部材52Aを経由して巻取り、前述した光ファイバ巻回部材45の一方のプーリー45a…及び他方のプーリー45b…に懸架された光ファイバ45cに張力を発生させる装置である。ここで前記一方側及び他方側光ファイバ45c1及び45c2は上段及び中段プーリー52a及び52bの略V字状又は凹陥状の溝52a1及び52b1にエポキシ樹脂等でなる接着剤52e、52eで固定する。
【0071】
尚、図8に於いて光ファイバ45は2列又は3列の複数列すなわち、本実施例2では、各列が円盤状に形成された9個の一方及び他方のプーリー45a、45a…及び45b、45b…を組合せて、2列で構成された光ファイバ巻回部材45と、上記一方側光ファイバ45c1及び上記他方側光ファイバ45c2と一体した同一光ファイバで構成されかつ両プーリー45a、45b間に巻装された光ファイバ45cと、上記光ファイバ45c1と上記光ファイバ45c2は上記光ファイバ巻回部材45から導出された後に張力発生部材52により固定され、それぞれ外部のネットワーク通信網51、51に接続される。
【0072】
そして、前記一方側光ファイバ45c1及び他方側光ファイバ45c2は図10に示すように接着剤52e、52eを介して一体となる一方側の光ファイバ39及び他方側の光ファイバ40により前記箱状ケース54から外部に導出され、それぞれネットワーク通信網51、51に接続される。ここで、前記張力発生部材52に接続された一方側の光ファイバ39は、光ファイバ巻回部材45の一方及び他方の軸棒45e及び45fに固定されたプーリー45j及び45kと、この両プーリー45j及び45kを連結する連結バー45mとで構成されたダミー用光ファイバ変位検出部材45Aの該プーリー45j及び45kに懸架しかつ経由して前記箱状ケース54の壁部54aに嵌着したパッキン部材47a内を挿通してネットワーク通信網51に接続する。
また、前記張力発生部材52に接続された他方側の光ファイバ40は、前記箱状ケース54の壁部54aに嵌着したパッキン部材47b内を挿通してネットワーク通信網51に接続する。
【0073】
尚、桁変位の歪み信号が桁の変位による張力以外の光ファイバ45cそれ自体や光ファイバ巻回部材45等の温度変化に伴う光ファイバ45cの伸縮作用によって発生するので、このため適正な桁変位信号を伝送すべく前記ダミー用光ファイバ変位検出部材45Aはかかる桁変位以外の歪み要因に基づく桁変位信号を阻止し又はキャンセルする機能を有する。
上述した一方側の光ファイバ39、他方側の光ファイバ40、一方側光ファイバ45c1、他方側光ファイバ45c2及び光ファイバ45cは連続した一つのものであって、単一の光ファイバで構成されている。
【0074】
上述した本発明に係る2点間変位遠隔監視システムに於ける実施例2に係る2点間変位計38Aのその他の構成及び動作等は上述した実施例1と略同一であり、その説明を省略する。
【実施例3】
【0075】
次に、本発明に係る2点間変位を遠隔監視するシステムの応用例である実施例3について説明する。
図11は、上記図5の構造物設置点BないしDに加えて更に構造物設置点Eを追加したときの遠隔監視システムの具体的構成図である。これについて説明し、本発明の実施例3を明らかにする。
図11に示すように、2点間変位監視計の設置点つまり構造物の設置点BないしEから例えば、30(km)の位置の光ファイバネットワーク通信網51で構築した所定遠隔地に有する道路事務所48等に備えたBOTDR計測器46及びそれに関連する設備品により2点間の変位を検出するシステムを示すものである。
【0076】
道路事務所48は例えば、上記BOTDR計測器46と、一方側及び他方側の光ファイバ39、40間に2点間変位計38、38Aを設置した複数又は多数の橋梁や各桁等構造物を切換え監視するために該BOTDR計測器46に接続した光スイッチ49と、AC電源に接続されかつ上記BOTDR計測器46へ接続する制御パソコン50とを設置している。
【0077】
そして、これは特に、地震時等の災害時に於ける2点間変位遠隔監視方法を示すシステムであり、例えば、道路沿いに敷設された光ファイバネットワーク通信網51から道路事務所48に設置した光スイッチ49を経由して複数又は多数の橋梁や各桁等の構造物の2点間の変位を切換え監視する。また、当該実施例は一方側又は他方側の光ファイバ39、40を各桁35、36に設置した後は、設置現場BないしEに於いて電源設備は不要となり、メンテナンスフリー状態となる。また、光スイッチ49により複数又は多数の橋梁や桁35、36等構造物の2点間変位を自動的に切換え監視できる。
【0078】
次に、上述した図5及び図11に示す本発明に係る光ファイバによる2点間変位計を使用した2点間変位を遠隔監視する方法の実施例3の動作等について説明する。
【0079】
当該2点間変位遠隔監視システムは測定原理上、2点間変位計38、38AとBOTDR計測器46間を繋ぐ光ファイバ39、40や光ファイバネットワーク通信網51等での光の損失が一定レベル以下の必要がある。光ファイバ39、40や光ファイバネットワーク通信網51等の伝送損失は、その延長融着箇所やコネクタ接続箇所等によって決定する。また、伝送損失の許容レベルはBOTDR計測器46から送られる距離分解能としてのパルス幅によって決定する。また、距離分解能11(m)、22(m)で通信回線延長20(km)〜30(km)圏内の構造物は、1台のBOTDR計測器46で測定可能となることが判明した。BOTDR計測器46の測定時間は、測定条件の設定方法で異なる。測定時間に関係する設定条件としては、加算回数、周波数掃引数等が大きな要因となり通常の桁変位を監視する場合においては、例えば、加算回数214、周波数掃引回数約40回で設定して約6分で測定しているが、これらの設定を調整することで地震時等の災害時に於ける2点間変位の監視については、2分以内での測定は可能である。
【0080】
本発明に係る光ファイバによる2点間変位遠隔監視方法に於けるシステムとしては、さらに次の実施例が考えられる。すなわち、先づ、桁変位測定システムである。これはいわゆるオフラインシステムであって、複数の桁に2点間変位計としての桁変位監視センサを設置し、それらを直列に光ファイバで接続して端部にコネクタを取り付け、現場に設置したコネクタ収納BOXに収納しておき、必要なときに現場に測定装置を搬入してコネクタを接続して測定するシステムである。
次に、斜面崩落監視システムである。これは、崩落、落石等の可能性のある箇所に2点間変位計としての桁変位監視センサを設置し、その間にワイヤを張り巡らしワイヤの移動量を監視することで、崩落、落石等を予測するシステムであって、該桁変位監視センサを既設の光ファイバ通信網と接続することで遠隔監視が可能である特徴を有する。
【図面の簡単な説明】
【0081】
【図1】本発明に係る光ファイバによる2点間変位計及び光ファイバによる2点間変位遠隔監視方法の実施の形態を示す一例であって、コンクリート構造物として2点間の変位を検出する光ファイバによる2点間変位計の配置状態を示す概要図である。
【図2】本発明に係る光ファイバによる2点間変位計及び光ファイバによる2点間変位遠隔監視方法の実施の形態を示す一例であって、上記2点間変位計の内部に収容される各構成部材を示す構成図である。
【図3】本発明に係る光ファイバの歪み(μ)に対する荷重(gf)の関係特性図である。
【図4】本発明に係る光ファイバの歪み(μ)に対する荷重(gf)の光ファイバ素線特性図である。
【図5】本発明に係る光ファイバによる2点間変位計及び光ファイバによる2点間変位遠隔監視方法の実施の形態を示す一例であって、各構造物に設置した本発明に係る光ファイバによる2点間変位計でネットワーク通信網を介してBOTDR計測器で構造物の変位を検出する方法を示すシステム概要図である。
【図6】図5に示す2点間変位遠隔監視システムに於ける2点間変位計の実施例1の構成概要図である。
【図7】本発明に係る2点間変位遠隔監視システムに於ける2点間変位計の実施例2の構成概要図である。
【図8】図7に示す本発明に係る2点間変位遠隔監視システムに於ける2点間変位計の実施例2の具体的な構造例を示す水平断面図である。
【図9】図8に示す本発明に係る2点間変位遠隔監視システムに於ける2点間変位計の実施例2の具体的な構造例に備えた定荷重バネ部材の一例を示す側面図である。
【図10】図8に示す本発明に係る2点間変位遠隔監視システムに於ける2点間変位計の実施例2の具体的な構造例に備えた張力発生部材の一例を示す側面図である。
【図11】本発明に係る光ファイバによる2点間変位計を使用した光ファイバによる2点間変位遠隔監視方法の実施例3を示す一例であって、各構造物に設置した光ファイバによる2点間変位計から遠隔地例えば30(km)程度に離れた位置に於ける各構造物の変位の監視を行なう方法を示すシステムの一例を示す構成図である。
【図12】従来の技術に於ける第1の例を示す桁変位監視システムの構成図である。
【図13】従来の技術に於ける第2の例を示す光ファイバセンサを使用した監視対象物変位検出システムであって、(a)は全体構成図、(b)は監視対象物を拡大した側面図である。
【図14】従来の技術に於ける第3の例を示す光ファイバセンサを使用した河川堤防変位検出システムであって、(a)は全体構成図、(b)は光ケーブルの断面図である。
【図15】従来の技術に於ける第4の例を示す面状センサを使用したコンクリート構造物変位検出システムの全体構成図である。
【符号の説明】
【0082】
35 一方の桁
35a 一方の桁の下面
36 他方の桁
36a 他方の桁の下面
37 橋脚(橋台)
37a 橋脚(橋台)の上面
38 2点間変位計
38A 2点間変位計
39 一方側の光ファイバ
40 他方側の光ファイバ
41 変位・荷重変換部材
41a 変位・荷重変換部材の容器
41b 変位・荷重変換部材のバネ
41c 変位・荷重変換部材のブラケット(脚部、軸受部材)
42 リードワイヤ
42a リードワイヤ
43 アングルの垂下固定部
43a アングルの垂下固定部の緊締貫通孔
44 アングル
45 光ファイバ巻回部材
45a 光ファイバ巻回部材の一方のプーリー
45b 光ファイバ巻回部材の他方のプーリー
45c 光ファイバ巻回部材の光ファイバ
45c1 光ファイバ巻回部材の光ファイバの一方側光ファイバ
45c2 光ファイバ巻回部材の光ファイバの他方側光ファイバ
45d 光ファイバ巻回部材の光ファイバ固定治具
45e 光ファイバ巻回部材の一方の軸棒
45e1 光ファイバ巻回部材の一方の軸棒の前端
45e2 光ファイバ巻回部材の一方の軸棒の後端
45f 光ファイバ巻回部材の他方の軸棒
45f1 光ファイバ巻回部材の他方の軸棒の前端
45f2 光ファイバ巻回部材の他方の軸棒の後端
45g1 光ファイバ巻回部材の脚部
45g2 光ファイバ巻回部材の脚部
45h1 光ファイバ巻回部材の脚部
45h2 光ファイバ巻回部材の脚部
45A ダミー用光ファイバ変位検出部材
45j ダミー用光ファイバ変位検出部材の一方のプーリー
45k ダミー用光ファイバ変位検出部材の他方のプーリー
45m ダミー用光ファイバ変位検出部材の連結バー
46 BOTDR計測器
47a パッキン部材
47b パッキン部材
48 道路事務所
49 光スイッチ
50 制御パソコン
51 光ファイバネットワーク通信網
52 張力発生部材
52A 方向転換部材
52a 張力発生部材の上段プーリー
52b 張力発生部材の中段プーリー
52c 張力発生部材の下段プーリー
52d 張力発生部材の垂直軸
52e 張力発生部材の接着剤
53 定荷重バネ部材
53A 定荷重バネ部材のリードワイヤ巻取部
53A1 定荷重バネ部材のリードワイヤ巻取部の上段巻取部
53A2 定荷重バネ部材のリードワイヤ巻取部の下段回転復帰部材固定部
53A3 定荷重バネ部材のリードワイヤ巻取部の下段回転復帰部材固定部の鍔
53A4 定荷重バネ部材のリードワイヤ巻取部の下段回転復帰部材固定部の鍔
53B 定荷重バネ部材の巻取部復帰機構
53B1 定荷重バネ部材の巻取部復帰機構の板バネ巻装部
53B2 定荷重バネ部材の巻取部復帰機構の板バネ巻装部の鍔
53B3 定荷重バネ部材の巻取部復帰機構の板バネ巻装部の鍔
53C 定荷重バネ部材の金属板バネ
54 箱状ケース
54a 箱状ケースの壁部
54b 箱状ケースの配管
54c 箱状ケースの制御切替弁(コック)
55 リードワイヤ引出部材
55a リードワイヤ引出部材の回転軸
55b、55b リードワイヤ引出部材の一方、他方のプーリー
55c リードワイヤ引出部材のオイルシール部材
55d リードワイヤ引出部材のOリング
55e リードワイヤ引出部材の窪み(凹陥)
55f リードワイヤ引出部材の窪み(凹陥)
55g リードワイヤ引出部材のオイルシール剤
56 方向転換プーリー
B〜E 構造物の設置点

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方、他方の2点間の変位を測定するものであって、複数列で構成された複数個又は多数個のプーリーでなる回転可能な光ファイバ巻回部材と、該光ファイバ巻回部材に巻装された該光ファイバの一方側を接続した光ファイバ固定治具と、該光ファイバの他方側を接続した変位・荷重変換部材とを内部に収容してなり、上記光ファイバの一方側をBOTDR計測器に接続したことを特徴とする光ファイバによる2点間変位計。
【請求項2】
前記2点間変位計は箱状ケースに構成され、その内底面部に上記光ファイバ固定治具と、上記複数列で構成された複数個又は多数個のプーリーでなる回転可能な光ファイバ巻回部材と、上記変位・荷重変換部材とを固定したことを特徴とする請求項1記載の光ファイバによる2点間変位計。
【請求項3】
前記変位・荷重変換部材は、コイルバネで構成されたことを特徴とする請求項1又は2記載の光ファイバによる2点間変位計。
【請求項4】
一方、他方の2点間の変位を測定するもので一方点に設置してあって、複数列で構成された複数個又は多数個のプーリーでなる回転可能な光ファイバ巻回部材と、該光ファイバ巻回部材に巻装された該光ファイバの一方側を接続した光ファイバ固定治具と、該光ファイバの他方側を接続した変位・荷重変換部材とを内部に収容してなり、上記光ファイバの一方側をBOTDR計測器に接続し、上記変位・荷重変換部材に接続されたリードワイヤを他方点に配置したアングルに固定したことを特徴とする光ファイバによる2点間変位計。
【請求項5】
前記光ファイバの設置時に予め張力を与えることを特徴とする請求項1、2、3又は4記載の光ファイバによる2点間変位計。
【請求項6】
一方、他方の桁相互間の下方に配置される橋脚の上面に設置されてあって、複数列で構成された複数個又は多数個のプーリーでなる回転可能な光ファイバ巻回部材と、該光ファイバ巻回部材に巻装された該光ファイバの一方側を接続した光ファイバ固定治具と、該光ファイバの他方側を接続した変位・荷重変換部材とを内部に収容してなり、上記光ファイバの一方側をBOTDR計測器に接続し、上記変位・荷重変換部材に接続されたリードワイヤを上記桁の下面に固定したアングルに固定したことを特徴とする光ファイバによる桁変位計。
【請求項7】
一方、他方の2点間の桁変位を測定するものであって、該桁変位を伝達するリードワイヤを巻装した定荷重バネ部材と、該定荷重バネ部材からのリードワイヤを接続しかつ桁変位を荷重に変換する変位・荷重変換部材と、該変位・荷重変換部材に発生した荷重に基づき一端及び他端の光ファイバを張設・巻取しかつ該一端及び他端の光ファイバをネットワーク通信網に接続した張力発生部材と、前記光ファイバを巻装するものであって複数列で構成された複数個又は多数個のプーリーでなる回転可能な光ファイバ巻回部材とを具備したことを特徴とする光ファイバによる2点間変位計。
【請求項8】
一方、他方の2点間の桁変位を測定するものであって、該桁変位を伝達するリードワイヤを巻装した定荷重バネ部材と、該定荷重バネ部材からのリードワイヤを接続しかつ桁変位を荷重に変換する変位・荷重変換部材と、該変位・荷重変換部材に発生した荷重に基づき一端及び他端の光ファイバを張設・巻取しかつ該一端及び他端の光ファイバをネットワーク通信網に接続した張力発生部材と、前記光ファイバを巻装するものであって複数列で構成された複数個又は多数個のプーリーでなる回転可能な光ファイバ巻回部材と、前記定荷重バネ部材、変位・荷重変換部材、張力発生部材及び光ファイバ巻回部材を内装した箱状ケースと、該箱状ケースの壁部位に装着されてあって、前記定荷重バネ部材の前後に配置され、リードワイヤを巻装する前記リードワイヤ引出部材とを具備したことを特徴とする光ファイバによる2点間変位計。
【請求項9】
前記リードワイヤ引出部材は、前記箱状ケースの壁部を貫通した回転軸の両端に連結されると共に前記リードワイヤを張設・巻取りする箱状ケース内外に配置されたプーリーと、該回転軸に囲僥されたオイルシール部材を有したことを特徴とする請求項8記載の光ファイバによる2点間変位計。
【請求項10】
一方、他方の2点間の変位を測定するものであって、複数列で構成された複数個又は多数個のプーリーでなる回転可能な光ファイバ巻回部材と、該光ファイバ巻回部材に巻装された該光ファイバの一方側を接続した光ファイバ固定治具と、該光ファイバの他方側を接続した変位・荷重変換部材とを内部に収容してなり、上記光ファイバの一方側をBOTDR計測器に接続してなる2点間変位計を各構造物に設置されている既存の光ファイバネットワーク通信網に接続したことを特徴とする光ファイバによる2点間変位遠隔監視方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2006−3350(P2006−3350A)
【公開日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−147507(P2005−147507)
【出願日】平成17年5月20日(2005.5.20)
【出願人】(599094196)財団法人道路保全技術センター (6)
【出願人】(000107044)ショーボンド建設株式会社 (71)
【Fターム(参考)】