説明

光ファイバセンサ、及びこれを用いた微小変位計測装置、生体情報計測装置

【課題】小型化が可能であり、耐久性に優れ、微小変位を高精度に計測することが可能な光ファイバセンサ、これを用いた微小変位装置、及び生体情報計測装置を提供する。
【解決手段】へテロコア部をセンサ部SPに有する光ファイバ3と、開口部Sが形成され、開口部Sの領域内にセンサ部SPが位置するように光ファイバ3を支持する支持部材11と、開口部S側と反対側にてセンサ部SPと当接する当接部材12とを備え、当接部材12が変位したときに、光ファイバ3のセンサ部SPの近傍部分において開口部S側に凸となる曲げが生じ、光ファイバ3を伝送する光に対して当接部材12の変位に応じた損失を発生させるように構成されている脈圧計測センサ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微小変位が計測可能な光ファイバセンサ、及びこれを用いた微小変位計測装置、並びに、脈圧、脈拍数、呼吸数などの生体情報を計測する生体情報計測装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、高齢化が進み、家庭内で起こる不慮の事故が増えている。それに伴い、脈圧、脈拍数、心拍数、体温などの生体情報を自宅で計測して健康管理を行いたいという需要が増加している。また、健常者がジョギングやウォーキング中に倒れるケースもある。このような生活の質向上、高齢者の健康管理やスポーツ時の安全確保のため、特に、脈圧、脈拍数、心拍数を身体や健康のバロメータとして手軽に利用できるよう簡便な生体情報計測装置が望まれている。
【0003】
従来の脈拍計は、光電脈波式センサを備えている。光電脈波式センサは、発光ダイオード等の発光素子から光を照射し、血管内部で吸収散乱した光をフォトトランジスタ等の受光素子で受光して、脈動に伴う血液の濃度の変化を検知することによって、脈波を計測している。このような脈拍計として、例えば、特許文献1には、センサ部を指先に装着し、本体部をリストバンド式に手首に装着する装着型脈拍計が記載されている。また、特許文献2には、プールサイド等に設置される環境設置型の脈拍計が記載されている。
【0004】
しかしながら、光電式脈波センサは、指先等の計測部位に汚れ、水分、マニキュア等が付着していると、これらが受光素子の受光面に付着し、正確な計測が困難になる。そのため、脈拍計測時に、指先等をきれいにする必要がある。また、特許文献1に記載の装着型脈拍計は、指先に装着されるセンサ部と手首に装着されるセンサ本体とがケーブルにより連結されているので、手の自由な動きが妨げられる。
【0005】
なお、特許文献3には、光ファイバセンサを脈波センサとして用いて脈の伝達時間を計測する装置が記載されている。この脈波センサは、センサ部に二円錐溶着テーパー付き光ファイバカップラを有しており、カップラ領域を180度曲げた状態で支持している。そして、脈拍に連動した皮膚の微小変位を、センサ部の曲げ変化に変換させて、曲げ変化に応じた脈波信号を発生させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−142162号公報
【特許文献2】特開2001−299709号公報
【特許文献3】特表2002−523122号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記特許文献3に記載の脈波センサによれば、センサ部に二円錐溶着テーパー付き光ファイバカップラを有しているので、出光用と受光用の光ファイバが2本ずつ必要となる。そのため、出光部、受光部にそれぞれ2つの接続箇所を必要とし、解析も容易ではなく、光ファイバの配線も困難になるので、装置が大型化し、システムの手首装着が困難になる。また、カップラ領域を180度と急激に曲げているので、衝撃等に弱く強度的に劣り、耐久性に乏しいという問題もある。
【0008】
本発明は、以上の点に鑑み、小型化が可能であり、耐久性に優れ、微小変位を高精度に計測することが可能な光ファイバセンサ、及びこれを用いた微小変位計測装置、生体情報計測装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
かかる目的を達成するために、本発明の光ファイバセンサは、異なる径のコア及び該コアの外周に設けられたクラッドを備え、伝送する光の一部を漏洩する光透過部材を有し、入射端に光が入射されて出射端から前記光透過部材を通過した光を出射する光ファイバと、開口部が形成され、該開口部の領域内に前記光透過部材が位置するように前記光ファイバを支持する支持部材と、前記開口部側と反対側にて前記光透過部材と当接する当接部材とを備え、前記当接部材が変位したときに、前記光ファイバの前記光透過部材の近傍部分において前記開口部側に凸となる曲げが生じ、前記光ファイバを伝送する光に対して前記当接部材の変位に応じた損失を発生させるように構成されていることを特徴とする。
【0010】
本発明の光ファイバセンサによれば、異なる径のコア及び該コアの外周に設けられたクラッドを備え、伝送する光の一部を漏洩する光透過部材を有し、入射端に光が入射されて出射端から光透過部材を通過した光を出射する光ファイバを有している。そして、開口部の領域内に光透過部材が位置するように支持部材によって光ファイバが支持され、開口部側と反対側にて光透過部材と当接する当接部材が変位したときに、光ファイバの光透過部材の近傍部分において開口部側に凸となる曲げが生じ、光ファイバを伝送する光に対して当接部材の変位に応じた損失を発生させるように構成されている。
【0011】
そのため、光ファイバの透過光強度の変化から当接部材の微小変位を高精度に計測することができる。また、光ファイバに加わる外乱の影響を受けずに計測できるので、過酷な環境下においても、安定した計測が可能となる。また、光ファイバは1本のみであり、上記特許文献3に記載の脈波センサにように2本の光ファイバを必要としないため、光ファイバの配線が容易となる。また、光ファイバの光透過部材の近傍部分における曲げが大きくなくとも、微小変位の高精度な計測が可能となるので、上記特許文献3に記載の脈波センサと比較して、衝撃等に強く、強度的に優れ、耐久性に富む。
【0012】
また、本発明の光ファイバセンサにおいて、前記支持部材が柔軟素材からなることが好ましい。この場合、支持部材の角部で光ファイバが急激に曲がることが防止できるので、衝撃等に強く、強度的に優れ、耐久性に富む光ファイバセンサを得ることができる。
【0013】
また、本発明の光ファイバセンサにおいて、前記支持部材及び前記当接部材の前記光ファイバ側の反対側の面にそれぞれ板状部材が接合され、前記支持部材及び前記当接部材の外方における前記板状部材間が柔軟素材からなる接着部材にて充填されていることが好ましい。この場合、光ファイバセンサが柔軟なものとなり、内部の光ファイバの光透過部材を良好に保護することができる。
【0014】
また、本発明の光ファイバセンサにおいて、前記光ファイバの前記光透過部材の近傍部分において前記開口部側に凸となる曲げが生じたとき、前記光ファイバに接触して、当該光ファイバの曲率を大きくする接触部材を備えることが好ましい。この場合、光ファイバの曲率が大きくなり、微小変位のさらに高精度な計測が可能となる。
【0015】
本発明の微小変位計測装置によれば、上記各発明の光ファイバセンサと、前記光ファイバの入射端に設けられた光源と、前記光ファイバの出射端に設けられた受光部とを備え、前記光源から前記入射端から入射された光が前記光ファイバを伝送して前記受光部にて受光されるまでの損失に応じて前記当接部材の変位を計測することを特徴とする。
【0016】
そのため、前記各発明の光ファイバセンサが備える効果を有する微小変位計測装置を得ることができる。
【0017】
本発明の生体情報計測装置によれば、上記各発明の光ファイバセンサと、前記光ファイバの入射端に設けられた光源と、前記光ファイバの出射端に設けられた受光部とを備え、生体の脈拍による皮膚の変位に応じて前記当接部材が変位し、該変位による、前記光源から前記入射端から入射された光が前記光ファイバを伝送して前記受光部にて受光されるまでの損失から脈圧を計測することを特徴とする。
【0018】
そのため、前記各発明の光ファイバセンサが備える効果を有し、脈圧を高精度で計測することが可能な生体情報計測装置を得ることができる。
【0019】
本発明の生体情報計測装置によれば、上記各発明の光ファイバセンサと、前記光ファイバの入射端に設けられた光源と、前記光ファイバの出射端に設けられた受光部とを備え、生体の脈拍又は呼吸による皮膚の変位に応じて前記当接部材が変位し、該変位による、前記光源から前記入射端から入射された光が前記光ファイバを伝送して前記受光部にて受光されるまでの損失から、前記変位の単位時間当たりの振動数に応じた脈拍数又は呼吸数を計測することを特徴とする。
【0020】
そのため、前記各発明の光ファイバセンサが備える効果を有し、脈拍数又は呼吸数を高精度で計測することが可能な生体情報計測装置を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の実施形態に係る脈圧計測システムを示す説明図。
【図2】センサ本体部を示し、(a)は側面図、(b)は上方の柔軟シートを取り除いた上面図。
【図3】光ファイバを示し、(a)は説明図、(b)は断面図。
【図4】時間の経過に対して光の損失が変化する状態を示すグラフ。
【図5】センサ本体部の変形例を示し、上方の柔軟シートを取り除いた上面図。
【図6】時間の経過に対して光の損失が変化する状態を示すグラフであり、(a)は角度θが90度、(b)は角度θが60度、(c)は角度θが45度である。
【図7】角度θと感度との関係を示すグラフ。
【図8】センサ本体部のさらなる変形例を示す側面図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の実施形態に係る生体情報計測装置である脈圧計測システムを図面を参照して説明する。この脈圧計測システムは、本発明の実施形態に係る光ファイバセンサである脈圧計測センサ2を備えている。
【0023】
脈圧計測システムは、図1を参照して、センサ本体部1を内面に接合したリストバンド式の脈圧計測センサ2を備えており、脈圧計測センサ2を被計測者の手首に装着して、脈圧を計測するものである。脈圧計測センサ2がリストバンド式であるので、被計測者は自然に装着することができると共に、運動や生活中においても邪魔にならない。なお、脈圧計測センサ2をバンド式等の他の装着形式としてもよい。
【0024】
脈圧計測センサ2は、光ファイバ3を有している。光ファイバ3は、入射端側の光ファイバ3aと、出射端側の光ファイバ3bと、光ファイバ3a,3b間に挿入されたセンサ部SPとか構成されている。
【0025】
光ファイバ3aの入射端には、半導体発光ダイオード(LED)や半導体レーザなどの発光素子を有する光源4が接続されている。光ファイバ3bの出射端には、フォトダイドード(PD)や電荷結合素子(CCD)などの受光素子を有する光パワーメータなどの受光部5が接続されている。さらに、受光部5には、計測部である例えばパーソナルコンピュータ(PC)6が接続されている。なお、脈圧計測システムを全て人体に装着可能とするものであってもよい。また、受光部5からPC6に無線で受光信号を送信してもよい。
【0026】
センサ本体部1は、図2(a)及び図2(b)を参照して、光ファイバ3を支持する支持部材を備えている。支持部材は、ヘテロコア部からなるセンサ部SPが開口部Sの中心近傍に配置するように、光ファイバ3を支持している。開口部Sは、センサ部SPを中心に数mm乃至数十mmの範囲に亘っている。センサ本体部1は、さらに、開口部Sと反対側にてセンサ部SPと当接する当接部材を備えている。当接部材は幅数mmに亘ってセンサ部SPと直接的又は間接的に当接している。支持部材及び当接部材は、当接する光ファイバ3の変形にある程度追従する柔軟素材から形成されている。
【0027】
ここでは、ヘテロコア部の周囲に3つの小片11,11,12を支持部材及び当接部材として配置している。小片11,11はシリコンゴム等の柔軟素材からなり、縦20mm、幅2.0mm、高さ0.5mmの直方体状のものである。小片12はシリコンゴム等の柔軟素材からなり、縦20mm、幅1.0mm、高さ0.5mmの直方体状のものである。なお、小片11、12のサイズは限定されない。例えば、小片11の高さは、後述する光ファイバ3の落ち込み量に依存し、0.1mm乃至1.0mm程度であってもよい。また、小片12の幅は、センサ部SPの幅(挿入長)に対して、長い、短い、同等の何れであってもよい。
【0028】
また、小片11,12の形状も限定されない。例えば、小片11の内方上部の角部に丸みを帯びさせてもよい。また、小片12のセンサ部SPと当接する下面の形状は、平らであっても、丸みを帯びて下側に突出する等であってもよい。
【0029】
2つの小片11,11は、幅方向に10mmの間隔を隔てて配置され、光ファイバ3a,3bを縦方向の中央部の上面上に載置して、センサ部SPが2つの小片11,11の間に形成された長方形状の開口部(空洞)Sの中央に位置するように光ファイバ3を水平に両持ち支持している。小片12は、縦方向中央部の下面がセンサ部SPの上面に当接するように配置されている。
【0030】
なお、支持部材及び当接部材は小片11,12から構成されるものに限定されない。例えば、支持部材を円形状や多角形状等任意の形状からなる開口を有する単一又は3以上の複数の部材で構成してもよい。また、支持部材によって当接部材を片持ち又は両持ち支持させて、支持部材と当接部材とを一体化してもよい。
【0031】
2つの小片11,11の下面には、薄板状の柔軟シート13が接合(接着)されると共に、小片12の上面は、薄板状の柔軟シート14に接合(接着)されている。柔軟シート13,14は共に、一辺2cm乃至5cmの正方形状で厚さ0.5mmのシリコン等の柔軟な素材からなるものである。このように、光ファイバ3及び小片11,11,12が柔軟シート13,14によって上下方向を挟まれている。そして、小片11,11,12の外方における2枚の柔軟シート13,14の間は、シリコン系等の柔軟素材からなる接着部材によって充填されている。
【0032】
センサ部SPは、図3(a)及び図3(b)を参照して、光ファイバ3aと光ファイバ3bとの間に設けられ、伝送する光の一部を漏洩する光透過部材であるヘテロコア部からなっている。
【0033】
ここでは、センサ部SPは、コア31と、その外周部に設けられたクラッド32とを有する短いシングルモード光ファイバである。例えば、コア31の径は5μmであり、クラッド32の径は125μmであり、長さは2.0mmである。一方、光ファイバ3a,3bは共に、コア33と、その外周部に設けられたクラッド34とを有する長いシングルモード光ファイバである。例えば、コア33の径は9μmであり、クラッド34の径は125μmである。このように、センサ部SPのコア径は、光ファイバ3a,3bのコア径よりも小さくなるように構成されている。また、光ファイバ3の外表面には、図示しないが、樹脂などからなる被覆材によって被覆されている。
【0034】
なお、センサ部SP、光ファイバ3a,3bの双方、あるいは一方が、マルチモード光ファイバであってもよい。ただし、センサ部SP及び光ファイバ3a,3bがシングルモード光ファイバであれば、外部からの影響がより受け難いので好ましい。また、センサ部SPのコア径が、光ファイバ3a,3bのコア径よりも大きくなるように構成されていてもよい。また、センサ部SPが、光ファイバ3a,3bのコア33の屈折率あるいはクラッド34の屈折率と同等の屈折率を有する素材からなり、ヘテロコア部ではない光透過部材から構成されるものであってもよい。
【0035】
センサ部SPであるヘテロコア部と光ファイバ3a,3bは、例えば、長手方向に直交する界面35でコア31,33が接合するように、略同軸に、放電による融着などによって接合されている。なお、コア33に予めスリットを形成しておき、溶融延伸することによって、ヘテロコア部を形成してもよい。また、コア31,33の径が漸次変化するものであってもよい。
【0036】
このように、光ファイバ3a,3bの中途部に、ヘテロコア部からなるセンサ部SPが存在しているので、界面35におけるコア径の相違によって、光の一部がセンサ部SPのクラッド32に漏洩(リーク)し、伝送される光が損失される。ヘテロコア部からなるセンサ部SPにおいては、センサ部SP近傍の光ファイバ3の屈曲率が大きいほど、光の損失量(リーク量)が大きくなる。
【0037】
次に、脈圧計測システムの動作について説明する。センサ本体部1の柔軟シート13が手首内側に密着するように、脈圧計測センサ2を被計測者の手首に装着する。なお、センサ本体部1の柔軟シート14が手首内側に密着するように装着してもよいが、感度が劣る。これは、小片12の下にセンサ部SPが位置しており、その下に開口部(空洞)Sがあるため、柔軟シート14より柔軟シート13の方が動き易いためであると考えられる。
【0038】
被計測者の微弱な脈圧変化による皮膚表面の微弱な変位変化に応じて、センサ部SP近傍の光ファイバ3に曲げが付与され曲率が変化する。そして、この曲率変化によって光ファイバ3内を伝送された光の一部がセンサ部SPで漏洩する漏洩量が変化する。受光部5で受光した光の量からPC6で漏洩量(損失量)を算出することにより脈圧を計測することができる。また、PC6で、必要に応じて、脈圧を記録、出力する。
【0039】
図4に実測例を示すように、時間の経過に対して、脈拍の動きに伴い、光ファイバ3内を伝送される光の損失が変化しているのが確認できている。PC6によって、この波形の高低差から脈圧を求めることができる。また、図中の点線円内のピーク位置、基本周波数を離散フーリエ変換(FFT)により算出し、脈拍数を求めることもできる。
【0040】
以上の説明では、センサ部SP近傍の光ファイバ3を、水平面内において曲げを付与せず一直線となるように支持部材(小片11,11)によって支持していた。しかし、センサ部SP近傍の光ファイバ3に予め水平面内において曲げを付与して支持することにより、感度を向上させることができる。
【0041】
例えば、図5を参照して、小片11,11間のなす角度がθとなるように、小片11,11を小片12と接触させて三角形状に配置する。角度θが90度、60度、45度としたとき、それぞれ、図6(a)、図6(b)、図6(c)に示すような信号特性を得ることができた。よって、図7に示すように、角度θが小さいほど、すなわち、センサ部SP近傍の光ファイバ3に付与する曲率が大きいほど、感度が向上することが確認できた。角度θが45度の場合、角度θが60度、90度の場合に比べて、2倍以上の高感度となっている。
【0042】
ただし、センサ部SP近傍の光ファイバ3の曲率が大きくなると、破損が生じ易くなる。よって、用途に応じて曲率を選択することが好ましい。例えば、医療現場などの被計測者が安静な状態で脈圧の弱い人に対しては曲率の大きく高感度のセンサ部SPを使用し、運動中や生活中など動作を伴う被計測者に対しては、曲率の小さな低感度のセンサ部SPを使用することができる。
【0043】
また、開口部Sに、曲げられることで開口部S内に落ち込むように変形したセンサ部SP近傍の光ファイバ3と接触して、その光ファイバ3の曲率を更に大きくするようにガイドする接触部材を備えるものであってもよい。
【0044】
ここでは、2つの小片11,11Aの内方側に一体的に段部として設けた幅2.0mm、高さ0.5mmの突出部11aを接触部材としている。なお、小片11Aの高さは1.0mmとしている。突出部11aの角部と接触することによって、センサ部SP近傍の光ファイバ3の曲率がさらに大きくなるので、感度がさらに向上する。なお、突出部11aのサイズは限定されない。例えば、突出部11aの高さは、小片11Aの高さや光ファイバ3の落ち込み量に依存し、0.1mm乃至1.0mm程度であってもよい。また、接触部材は、支持部材である小片11Aに一体的に段差として形成した突出部11aに限定されない。例えば、接触部材の形状は任意のもであってもよく、支持部材と別個に設けてもよい。
【0045】
以上のように、光ファイバ3の透過光強度の変化から手首の皮膚表面の変位を計測するによって脈圧の微弱な動きを捉えることができるので、受光量が十分に大きく、平均化などの必要がないため、リアルタイム計測を容易に実現することができる。また、上記従来の血流による反射光の変化を計測する光電式脈波センサと異なり、汚れや水分がある状況下でも脈圧計測が可能となる。
【0046】
また、センサ本体部1の構成部材を全て柔軟素材からなるものとしたので、センサ本体部1が柔軟となり、手首に脈圧計測センサ2を装着した被計測者の違和感を緩和することができると共に、手首へ密着性が向上し、個体差に関らない汎用的なものとすることができる。
【0047】
また、LEDなどの発光素子とPD、CCDなどの受光素子とからなる簡便な構成で入出力装置を構築できるため、安価なシステムを実現することができる。また、伝送路である光ファイバ3に加わる外乱の影響を受けないため、過酷な環境下に設置したとしても、安定した計測が可能となる。
【0048】
また、光ファイバ3は1本のみであるので、上記特許文献3に記載の脈波センサにように2本の光ファイバを必要としないため、光源4や受光部5には各1つの接続箇所しか必要とせず、光ファイバ3の配線も容易となり、脈圧計測システムの小型化が容易になる。
【0049】
また、センサ部SP近傍の光ファイバ3の曲率が大きくなくとも、微小変位の計測が高精度で可能であるので、上記特許文献3に記載の脈波センサと比較して、衝撃等に強く強度的に優れ、耐久性に富む。
【0050】
なお、脈圧計測システムにおいて、脈圧計測センサ2は手首に装着されるものに限定されない。例えば、首部に巻き付けるものであってもよい。また、脈圧計測センサ2は、装着型に限定されず、浴槽や椅子の手摺などに設置され、自然な状態で脈圧情報等を集録できる環境設置型であってもよい。
【0051】
また、光ファイバ3aの中途部に光カプラを設け、光カプラで別の光ファイバを分岐させると共に、光ファイバ3bの端部に銀蒸着などによって鏡を形成した反射部を設けてもよい。この場合、前記分岐された光ファイバの端部が出射端となり、この出射端に光計測器5を接続してもよい。
【0052】
また、光ファイバ3aの端部にOTDR(Optical time-domain reflectometer)装置を接続して、OTDR装置から入射されたセンサ光の後方へのレイリー散乱光をOTDR装置自身が計測するものであってもよい。この場合、1本の光ファイバセンサに複数のセンサ部SPを設けて、各センサ部SPにおける脈圧を計測することも可能となる。ただし、OTDR装置はリアルタイム計測することができないので、脈拍信号の速さに追いつかないおそれがある。
【0053】
さらに、本発明に係る生体情報計測装置は、上記脈圧計測システムに限定されない。例えば、呼吸による皮膚表面の微小変位を計測することによって、呼吸数を計測するものであっても、就寝中の呼吸の有無を計測して無呼吸状態を計測するものなどであってもよい。さらに、本発明に係る光ファイバセンサは、生体情報計測装置に用いられるものに限定されず、構造物などの微小な変位やその時間変化である振動等を計測する微小変位計測装置に用いるものであってもよい。
【符号の説明】
【0054】
1,1A,1B…センサ本体部、 2…脈圧計測センサ(光ファイバセンサ)、 3,3a,3b…光ファイバ、 4…光源、 5…受光部、 6…PC(計測部)、 11,11A,11B…小片(支持部材)、 11a…突出部(接触部材)、 12…小片(当接部材)、 13,14…柔軟シート(板状部材)、 15…接着部材、31,33…コア、 32,33…クラッド、 35…界面、 S…開口部、 SP…センサ部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
異なる径のコア及び該コアの外周に設けられたクラッドを備え、伝送する光の一部を漏洩する光透過部材を有し、入射端に光が入射されて出射端から前記光透過部材を通過した光を出射する光ファイバと、
開口部が形成され、該開口部の領域内に前記光透過部材が位置するように前記光ファイバを支持する支持部材と、
前記開口部側と反対側にて前記光透過部材と当接する当接部材とを備え、
前記当接部材が変位したときに、前記光ファイバの前記光透過部材の近傍部分において前記開口部側に凸となる曲げが生じ、前記光ファイバを伝送する光に対して前記当接部材の変位に応じた損失を発生させるように構成されていることを特徴する光ファイバセンサ。
【請求項2】
前記支持部材が柔軟素材からなることを特徴とする請求項1記載の光ファイバセンサ。
【請求項3】
前記支持部材及び前記当接部材の前記光ファイバ側の反対側の面にそれぞれ板状部材が接合され、前記支持部材及び前記当接部材の外方における前記板状部材間が柔軟素材からなる接着部材にて充填されていることを特徴する請求項1又は2記載の光ファイバセンサ。
【請求項4】
前記光ファイバの前記光透過部材の近傍部分において前記開口部側に凸となる曲げが生じたとき、前記光ファイバに接触して、当該光ファイバの曲率を大きくする接触部材を備えることを特徴する請求項1から3の何れか1項記載の光ファイバセンサ。
【請求項5】
請求項1から4の何れか1項記載の光ファイバセンサと、
前記光ファイバの入射端に設けられた光源と、
前記光ファイバの出射端に設けられた受光部とを備え、
前記光源から前記入射端から入射された光が前記光ファイバを伝送して前記受光部にて受光されるまでの損失に応じて前記当接部材の変位を計測することを特徴とする微小変位計測装置。
【請求項6】
請求項1から4の何れか1項記載の光ファイバセンサと、
前記光ファイバの入射端に設けられた光源と、
前記光ファイバの出射端に設けられた受光部とを備え、
生体の脈拍による皮膚の変位に応じて前記当接部材が変位し、該変位による、前記光源から前記入射端から入射された光が前記光ファイバを伝送して前記受光部にて受光されるまでの損失から脈圧を計測することを特徴とする生体情報計測装置。
【請求項7】
請求項1から4の何れか1項記載の光ファイバセンサと、
前記光ファイバの入射端に設けられた光源と、
前記光ファイバの出射端に設けられた受光部とを備え、
生体の脈拍又は呼吸による皮膚の変位に応じて前記当接部材が変位し、該変位による、前記光源から前記入射端から入射された光が前記光ファイバを伝送して前記受光部にて受光されるまでの損失から、前記変位の単位時間当たりの振動数に応じた脈拍数又は呼吸数を計測することを特徴とする生体情報計測装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−181204(P2010−181204A)
【公開日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−23052(P2009−23052)
【出願日】平成21年2月3日(2009.2.3)
【出願人】(598123138)学校法人 創価大学 (49)
【Fターム(参考)】