説明

光ファイバ保持部材

【課題】1つの部品からなり、容易に樹脂成形することが可能であり、光ファイバを所定の位置まで容易に挿入することができ、製造コストを抑えることができる光ファイバ保持部材を提供すること。
【解決手段】切り欠き部12の底面12aには、V溝13a、13bが所定のピッチで並行に設けられる。凹み部14の底面14aには、V溝16a、16bが、V溝13a、13bと逆向きに、V溝13a、13bと同一のピッチで並行に設けられる。切り欠き部12と凹み部14とは、V溝13a、13bおよびV溝16a、16bによって連通する。V溝16a、16bは、V溝13a、13bに載置した光ファイバ30の軸心と、V溝16a、16bに接触した光ファイバ30の軸心が同一軸上になるように形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の光ファイバを所定の間隔で整列保持するための光ファイバ保持部材に関する。
【背景技術】
【0002】
光通信などに使われる光ファイバを、光導波路、レーザダイオード(LD)、フォトダイオード(PD)などに接続したり、複数本の光ファイバ同士を光学的に接続したりするために、光ファイバコネクタを使用することがある。光ファイバコネクタは、光ファイバと光ファイバ保持部材とから構成される。
【0003】
従来の光ファイバ保持部材は、複数本の光ファイバを、V溝が所定のピッチで設けられた下部プレートと、上部プレートとの間に挟んで保持する構造を有する(特許文献1参照)。
【0004】
具体的には、従来の光ファイバ保持部材は、被覆された光ファイバの被覆を除去して露出させた裸ファイバを下部プレートのV溝に配列させ、上から上部プレートによって押さえ、この状態で、下部プレートと上部プレートとの間の隙間に接着剤などを充填する。これにより、光ファイバ、下部プレートおよび上部プレートが互いに固定され、光ファイバコネクタが完成する。
【0005】
また、他の従来技術として、光ファイバを挿入するための穴を有する光ファイバ保持部材を樹脂成形により生成する技術が知られている(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平10−213721号公報
【特許文献2】米国特許公報第6604866号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載の従来技術は、光ファイバ保持部材が下部プレートと上部プレートの2つの部品からなり、部品点数が多いという課題を有する。
【0008】
また、特許文献2に記載の従来技術は、光ファイバを挿入する穴の先端部分に樹脂が付着し、光ファイバを穴の先端まで挿入できない場合が生じるという課題や、光ファイバを挿入する穴を形成するためのファイバピン(φ0.125mm)が樹脂成形の段階で折れやすく製造コストがかかるという課題がある。
【0009】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、1つの部品からなり、容易に樹脂成形することが可能であり、光ファイバを所定の位置まで容易に挿入することができ、製造コストを抑えることができる光ファイバ保持部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の光ファイバ保持部材は、上面から一側面にかけて形成された切り欠き部と、前記切り欠き部の底面に形成された複数の第1のV溝からなる第1のV溝群と、底面に形成された凹み部と前記凹み部の底面に形成され、前記第1のV溝と逆向きの複数の第2のV溝からなる第2のV溝群と、を有し、前記切り欠き部と前記凹み部は、前記第1のV溝群と前記第2のV溝群とにより連通する、構成を採る。
【0011】
本発明の光ファイバコネクタは、上記光ファイバ保持部材の前記第1のV溝群および前記第2のV溝群に光ファイバを整列させ、接着剤により前記光ファイバ保持部材に前記光ファイバを固定した構成を採る。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、1つの部品からなり、容易に樹脂成形することが可能であり、光ファイバを所定の位置まで容易に挿入することができ、製造コストを抑えることができる光ファイバ保持部材を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の一実施の形態に係る光ファイバ保持部材の平面図、(a)上面図、(b)左側面図、(c)正面断面図、(d)右側面図、(e)底面図
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0015】
〔光ファイバ保持部材の構成〕
図1は、本発明の一実施の形態に係る光ファイバ保持部材の平面図である。図1(a)、(b)、(c)、(d)、(e)は、それぞれ、光ファイバ保持部材の上面図、左側面図、正面断面図、右側面図、底面図である。なお、図1(c)において、光ファイバ保持部材に挿入される光ファイバを仮想線で示す。
【0016】
図1に示すように、光ファイバ保持部材は、ほぼその外形がほぼ直方体であり、例えば、PEI(ポリエーテルイミド)、PMMA(ポリメタクリル酸メチル),PC(ポリカーボネート),EP(エポキシ樹脂)等の光透過性を有する樹脂材料により形成される。
【0017】
光ファイバ保持部材の外周面11aから外周面11bにかけて切り欠き部12が形成される。切り欠き部12の底面12aは外周面11a、11cと平行であり、側面12bは外周面11b、11dと平行であり、側面12c、12dは外周面11e、11fと平行である。なお、側面12b、12c、12dは、それぞれ抜きテーパ相当の角度(例えば、1°〜2°)を有していても良い。
【0018】
切り欠き部12の底面12aには、光ファイバ30を載置するためのV溝13a、13bが所定のピッチで平行に設けられる。
【0019】
また、光ファイバ保持部材の外周面11cには、凹み部14が形成される。凹み部14の底面14aは外周面11a、11cと平行であり、側面14b、14cは外周面11b、11dと平行であり、側面14d、14eは外周面11e、11fと平行である。凹み部14の底面14aは、切り欠き部12の底面12aとほぼ同一平面上に形成される。凹み部14の側面14c、14d、14eは、それぞれ、切り欠き部12の側面12b、12c、12dとほぼ同一平面上に形成される。なお、側面14b、14c、14d、14eは、それぞれ抜きテーパ相当の角度(例えば、1°〜2°)を有していても良い。
【0020】
凹み部14の底面14aの外周面11dに近い側には、逃げ溝15が形成される。逃げ溝15は、光ファイバ保持部材に光ファイバ30を固定する際に使用される接着剤のたまり場として用いられる。
【0021】
凹み部14の底面14aには、光ファイバ30を押さえるためのV溝16a、16bが、V溝13a、13bと逆向きに、V溝13a、13bと同一のピッチで平行に設けられる。切り欠き部12と凹み部14とは、V溝13a、13bおよびV溝16a、16bによって連通する。V溝16a、16bは、V溝13a、13bに載置した光ファイバ30の軸心と、V溝16a、16bに接触した光ファイバ30の軸心が同一軸上になるように形成される。これにより、光ファイバ30をV溝13a、13bに載置し、さらに、V溝13a、13bから凹み部14内部へ光ファイバ30を挿入する際、光ファイバ30が撓んで不必要な応力が発生することがない。
【0022】
また、光ファイバ保持部材の外周面11cには、レンズ17a、17b(凸レンズ)が形成される。レンズ17a、17bのピッチは、V溝13a、13bあるいはV溝16a、16bのピッチと同一である。また、レンズ17a、17bの中心(焦点)は、光ファイバ保持部材に固定された光ファイバ30の軸心上になる。
【0023】
〔光ファイバコネクタの組み付け工程〕
次に、光ファイバコネクタの組み付け工程について説明する。
【0024】
まず、被覆を除去して露出させた光ファイバ30を、V溝13a、13bのそれぞれに載置する。
【0025】
次に、光ファイバ30を、V溝16a、16bに沿って凹み部14内の所定の位置まで挿入する。
【0026】
次に、接着剤により、光ファイバ保持部材に光ファイバ30を固定する。これにより、光ファイバコネクタが完成する。
【0027】
〔本実施の形態の効果〕
以上のように、本実施の形態によれば、1つの部品からなり、容易に樹脂成形することが可能であり、光ファイバを所定の位置まで容易に挿入することができ、製造コストを抑えることができる光ファイバ保持部材を提供することができる。
【0028】
また、本発明の光ファイバ保持部材は、特許文献2の、光ファイバを挿入する穴の先端部分に樹脂が付着し、光ファイバを穴の先端まで挿入できないという課題や、光ファイバを挿入する穴を形成するためのファイバーピンが樹脂成形の段階で折れてしまうという課題を解決することができる。
【0029】
なお、本実施の形態では、光ファイバ保持部材に固定される光ファイバ30が2本の場合について説明したが、本発明はこれに限られず、光ファイバ保持部材に固定される光ファイバ30の本数に制限はない。
【産業上の利用可能性】
【0030】
本発明に係る光ファイバ保持部材は、マルチチャンネルの光通信に使用することができる。
【符号の説明】
【0031】
1 光ファイバ保持部材
11a、11b、11c、11d、11e、11f 外周面
12 切り欠き部
12a 底面
13a、13b V溝
14 凹み部
14a 底面
15 逃げ溝
16a、16b V溝
17a、17b レンズ
30 光ファイバ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面から一側面にかけて形成された切り欠き部と、
前記切り欠き部の底面に形成された、複数の第1のV溝からなる第1のV溝群と、
底面に形成された凹み部と
前記凹み部の底面に形成され、前記第1のV溝と逆向きの複数の第2のV溝からなる第2のV溝群と、を有し、
前記切り欠き部と前記凹み部は、前記第1のV溝群と前記第2のV溝群とにより連通する、
ことを特徴とする光ファイバ保持部材。
【請求項2】
請求項1記載の光ファイバ保持部材の前記第1のV溝群および前記第2のV溝群に光ファイバを整列させ、接着剤により前記光ファイバ保持部材に前記光ファイバを固定したことを特徴とする光ファイバコネクタ。


【図1】
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【公開番号】特開2012−47943(P2012−47943A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−189442(P2010−189442)
【出願日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【出願人】(000208765)株式会社エンプラス (403)
【Fターム(参考)】