光ファイバ用ソケット
【課題】光ファイバ用ソケットにおいて、ソケット自体によって複数連結して一体的に取り扱うことができ、実装することができるようにする。
【解決手段】ソケット1は、回路ブロック2とスリーブブロック3とを含み、回路ブロック2は、実装用電極20と、回路基板2aを含む成形部材21と、回路基板2aに実装された光電変換素子22とを備える。スリーブブロック3は、フェルール8aを嵌挿するための嵌挿口31aを有するスリーブ31と、スリーブ31を回路ブロック2に接続するスリーブ基部32とを備える。スリーブ基部32は、互いに隣接するソケット1を連結させるため、2つのソケット1間で互いにスライド噛み合わせ可能な凹構造3aと凸構造3bを有する。ソケット1は、凹凸構造3a,3bによって一体化され、そのスライド方向SLがフェルール8aを嵌挿する方向とは異なるのでソケット1の連結状態はフェルール着脱時においても安定である。
【解決手段】ソケット1は、回路ブロック2とスリーブブロック3とを含み、回路ブロック2は、実装用電極20と、回路基板2aを含む成形部材21と、回路基板2aに実装された光電変換素子22とを備える。スリーブブロック3は、フェルール8aを嵌挿するための嵌挿口31aを有するスリーブ31と、スリーブ31を回路ブロック2に接続するスリーブ基部32とを備える。スリーブ基部32は、互いに隣接するソケット1を連結させるため、2つのソケット1間で互いにスライド噛み合わせ可能な凹構造3aと凸構造3bを有する。ソケット1は、凹凸構造3a,3bによって一体化され、そのスライド方向SLがフェルール8aを嵌挿する方向とは異なるのでソケット1の連結状態はフェルール着脱時においても安定である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ファイバの先端部に嵌装されたフェルールが嵌挿され、互いに連結して用いられる光ファイバ用ソケットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、光電変換素子が実装された基板と、その基板に嵌合されて位置決めされたスリーブとを備え、使用時にはスリーブにフェルールが嵌挿されて光ファイバと光電変換素子とが光結合される光ファイバ用ソケットが知られている(例えば、特許文献1参照)。このソケットは、基板に2つの嵌合穴が穿設され、基板と対向するスリーブの面に2本の嵌合軸が設けられ、2本の嵌合軸をそれぞれ2つの嵌合穴に嵌め込むことにより、基板とスリーブの嵌合位置決めが行われている。このようなソケットは、例えば、図12に示すように、円柱形のスリーブ91を四角形の基板ブロック92に結合したソケット9の形状を有する。スリーブ91の開口9aには、光ファイバ8の先端部に嵌装されたフェルール8aが嵌挿される。基板ブロック92の内部には、光ファイバ8との間で光の授受を行う光電変換素子が実装されている。また、電極90が、基板ブロック92から導出されており、電極90は、外部の実装基板にソケット9を実装するために用いられると共に、光電変換素子と実装基板上の回路との間の電気接続に用いられる。
【0003】
上述のソケット9は、光電変換を多チャンネル化するために、例えば、図13に示すように、連結用ケース93とプラグケース94とを備えている。この例では、2つのソケット9が連結用ケース93に固定され、2つのフェルール8aが、ソケット9の配列ピッチに合わせて、プラグケース94に固定されている。連結用ケース93とプラグケース94とを用いて、2つのフェルール8aが2つのソケット9に対して同時に着脱される。また、ソケットを組み合わせて用いる他の例として、ソケットの外壁に凹部と凸部とを備え、その凹部と凸部とを用いて複数のソケットを互いに位置決めするようにした光ファイバ用ソケットが知られている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8−5872号公報
【特許文献2】特開2007−279561号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した図13に示されるような光ファイバ用ソケットにおいては、連結用ケース93が必要とされ、連結用ケース93の製造コストやその取り扱いと部品管理の手間などがコスト上の負担や作業上の負担となる。また、上述した特許文献2に示されるような光ファイバ用ソケットにおいては、単にソケット間の位置決めがなされるだけであって、複数のソケットを一体的に取り扱うことができない。
【0006】
本発明は、上記の問題を解決するものであって、ソケット自体によって複数連結して一体的に取り扱うことができ、実装することができる光ファイバ用ソケットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を達成するために、本発明の光ファイバ用ソケットは、光ファイバに嵌装されたフェルールが嵌挿される光ファイバ用ソケットにおいて、回路基板をインサートして一体成形された成形部材および回路基板に実装された光電変換素子を有する回路ブロックと、フェルールが嵌挿される嵌挿口を有するスリーブブロックとを備え、回路ブロックとスリーブブロックは、光電変換素子の光軸と嵌挿口の軸とが一致するように位置決めされて互いに一体化され、回路ブロックまたはスリーブブロックは、複数の光ファイバ用ソケットを互いに隣接して連結させるための、互いにスライド噛み合わせ可能な凹構造と凸構造とを有し、その凹凸構造のスライド方向とフェルールを嵌挿する方向とが互いに異なることを特徴とする。
【0008】
この光ファイバ用ソケットにおいて、回路ブロックまたはスリーブブロックは、凹凸構造のスライド噛み合わせの際のスライド方向の位置決めを行うストッパ部を備えていることが好ましい。
【0009】
この光ファイバ用ソケットにおいて、凹構造と凸構造とはスリーブブロックに設けられ、そのスリーブブロックが光電変換素子の光軸回りに90°単位で回転された状態で回路ブロックに対して位置決めされて回路ブロックに取り付けられることにより、互いに勝手違いの複数種類の光ファイバ用ソケットを形成し得るようにしてもよい。
【発明の効果】
【0010】
本発明の光ファイバ用ソケットによれば、複数ソケットが凹凸構造を互いに噛み合わされることによって連結されるので、複数の光ファイバ用ソケットを、ソケット自体によって連結して一体的に取り扱うことができ、一体的に実装基板に実装することができる。また、凹凸構造のスライド方向がフェルールの嵌挿方向と異なり、フェルール着脱時にフェルール嵌挿方向の力がソケットに作用しても、その力がそのまま凹凸構造の噛み合わせをずらす力とはならないので、ソケットの連結状態を安定して維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】(a)は本発明の第1の実施形態に係る光ファイバ用ソケットの2連結状態の斜視図、(b)は同ソケットの側面図。
【図2】同ソケットの断面図。
【図3】第2の実施形態に係る光ファイバ用ソケットの2連結状態の斜視図。
【図4】(a)は同ソケットの2連結状態への移行過程における正面図、(b)はソケットを2連結して実装した状態の正面図。
【図5】第3の実施形態に係る光ファイバ用ソケットの分解斜視図。
【図6】(a)は同ソケットの斜視図、(b)は同ソケットの断面図。
【図7】(a)は同ソケットの勝手違い状態の分解斜視図、(b)は(a)のソケットの組み立て斜視図。
【図8】(a)は同ソケットの他の勝手違い状態の分解斜視図、(b)は(a)のソケットの組み立て斜視図。
【図9】(a)は図7(b)、図8(b)のソケットの2連結状態の斜視図、(b)は(a)のソケットの実装状態の側面図。
【図10】図9のソケットの変形例の斜視図。
【図11】(a)は本発明の光ファイバ用ソケットの他の変形例の2連結状態の斜視図、(b)はさらに他の変形例の2連結状態の斜視図、(c)はさらに他の変形例の4連結状態の斜視図。
【図12】従来の光ファイバ用ソケットの斜視図。
【図13】従来の光ファイバ用ソケットの2連結状態の斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(第1の実施形態)
以下、本発明の実施形態に係る光ファイバ用ソケットについて、図面を参照して説明する。図1、図2は本発明の第1の実施形態に係る光ファイバ用ソケット(以下、単にソケットともいう)を示す。ソケット1は、回路ブロック2とスリーブブロック3とを組み合わせて成り、複数のソケットを互いに連結することができるソケットである。回路ブロック2は、実装用電極20と、回路基板2aを含む成形部材21と、回路基板2aに実装された光電変換素子22と、を備えている。スリーブブロック3は、光ファイバ8の先端部に嵌装されたフェルール8aを嵌挿するための円形の嵌挿口31aを有するスリーブ31と、スリーブ31を回路ブロック2に接続するスリーブ基部32と、を備えている。スリーブ基部32は、互いに隣接するソケット1を連結させるため、2つのソケット1間で互いにスライド噛み合わせ可能な凹構造3aと凸構造3b(併せて、凹凸構造3a,3bと称する)を有している。以下、各部を詳細説明する。なお、図中にxyz直交座標軸を示し、z方向を上下方向として参照するが、ソケット1は、任意の姿勢で使用することができる。
【0013】
光電変換素子22は、発光素子または受光素子のいずれであってもよい。回路基板2aは、配線パターンを備えた基板であり、その配線パターンは、光電変換素子22への信号送信または光電変換素子22からの信号受信のための信号ラインやグランドラインを含む。成形部材21は、スリーブブロック3を受ける受け部材であり、回路基板2aをインサートした状態で樹脂成形されている。成形部材21用の樹脂として、熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂を用いることができ、これらの樹脂にガラス繊維を含めてもよい。成形部材21は、外形が四角形であり、その上面に円形凹部21aを有し、円形凹部21aの底面に2つの貫通した円形の嵌合穴21bが、円形凹部21aの中心軸に対して対称に樹脂成形によって設けられている。なお、嵌合穴21bは、貫通していても、貫通していなくてもよく、その形状も円形に限られるものではない。
【0014】
回路基板2aは、円形凹部21aの底面に回路基板2aの表面を一部露出させた状態で、成形部材21にインサートされている。成形部材21の側面からは、回路基板2aに電気接続された実装用電極20が導出されている。円形凹部21aの底面と回路基板2aの露出部とは同一平面を構成する。円形凹部21a内の回路基板2aの露出部には、光電変換素子22が実装されている。光電変換素子22の実装位置は、円形凹部21aの中心位置であり、より正確には、2つの円形嵌合穴21bの円の中心を結ぶ線分の中点位置に、光電変換素子22の光軸位置を配置させる実装位置である。ここで、光電変換素子22の光軸位置とは、光電変換素子22が発光素子の場合の発光中心位置、例えば、発光強度最大位置であり、受光素子の場合は受光中心位置、例えば、受光感度最大位置である。
【0015】
スリーブブロック3は、円筒形のスリーブ31とスリーブ基部32とを樹脂成形により一体成形したものである。スリーブ基部32は、上部の四角形部材と下部の円形凸部32aとを有する。スリーブ基部32は、その内側に、嵌挿口31aの軸Lに同軸の光透過部33と、その下部の凹部空間とを備え、円形凸部32aの底部に、2本の嵌合突起34を備えている。凹部空間は、光電変換素子22を収納するための空間である。各嵌合突起34は、各嵌合穴21bに嵌合する突起であり、スリーブ31の軸Lに対して互いに対称に設けられている。光透過部33は、レンズ形状とする他、平行平板形状とすることもでき、少なくとも、光電変換素子22の特性に応じた特定波長、例えば850nm、の光を透過させる光学材料からなる。光透過部33は、スリーブ31およびスリーブ基部32と共に一体成形され、スリーブブロック3の全体が光透過性を有する。なお、光透過部33を、例えばガラスによって別途形成し、これをインサートするインサート成形により、スリーブブロック3を形成してもよい。この場合、光透過部33以外のスリーブブロック3は、安価で寸法精度に優れる光非透過性樹脂によって成形することができる。光透過部33をインサート用部品として別途作成することにより、ソケット1用の材料の選択自由度が広がるので、光透過部33を含む各部材を高耐熱性の材料によって形成して、寸法精度に優れ、はんだリフロー実装に耐えるソケット1を安価に実現できる。
【0016】
凹構造3aは、スリーブ基部32の上部四角形部材の互いに対向する端面の一方に形成され、凸構造3bは、他方の端面に形成されている。凹構造3aと凸構造3bは、例えば、それぞれ互いに対応する、ありみぞ(蟻溝)構造と、ありほぞ(蟻柄、鳩尾形に先の広がった柄)構造である。その溝の方向と柄の方向とは互いに平行であり、フェルール8aが挿脱される方向(軸Lの方向)に直交する平面内にある。より一般的に言えば、凹凸構造3a,3bのスライド噛み合わせのためのスライド方向SLとフェルール8aを嵌挿する方向とは互いに異なる方向とされている。凹構造3aと凸構造3bの間隔は、互いに隣接するソケット1を連結できるように(連結時に回路ブロック2が互いに干渉しないように)、回路ブロック2の四角形の成形部材21の幅よりも広い間隔とされている。なお、凹凸構造3a,3bは、スリーブブロック3に備えるのではなく、回路ブロック2に備えるようにしてもよい。
【0017】
ソケット1の組み立て工程を説明する。回路基板2aと一体成形した成形部材21が形成された後、回路基板2aへの光電変換素子22の実装が行われる。光電変換素子22の実装に際し、2つの嵌合穴21bの各中心位置が、例えばチップマウンタの撮像装置と画像処理装置を用いて取得される。円(嵌合穴21b)とその中心位置を画像処理装置によって検出する方法として、例えば、ハフ(Hough)変換を用いることができる。ここで、各部の寸法を例示する。光電変換素子22は、例えば、ベアチップであって、2つの嵌合穴21bの間隔は4mm程度である。従って、処理負荷の増大を招くことなく、2つの嵌合穴21bを含む小領域を高倍率で撮像して円の形状と中心位置の測定精度を高くすることができる。例えば、10μm程度の精度まで測定精度と位置決め精度を上げることができる。2つの嵌合穴21bの各中心位置を基準として、それらの中間点位置に光電変換素子22の位置決め、すなわち光電変換素子22の光軸位置の位置決めがなされる。これにより、光電変換素子22が回路基板2aに実装されて、回路ブロック2が完成する。スリーブブロック3は、光透過部33を含む樹脂成形によって、または、別途形成した光透過部33をインサートするインサート成形によって完成する。
【0018】
ソケット1は、回路ブロック2に対しスリーブブロック3を嵌合させて完成する。嵌合は、嵌合突起34を嵌合穴21bに嵌合させ、円形凹部21aにスリーブ基部32の円形凸部32aを挿入し、円形凹部21aの底面と円形凸部32aの底面とを接触させて完了する。これにより、光電変換素子22の光軸Lとスリーブ31の軸Lとが一致した状態となり、光電変換素子22がスリーブブロック3によって中空封止された状態となる。中空封止によって、光電変換素子22に外部応力がかかりにくくなり、また外部のガスなどによってチップが劣化しにくくなり、信頼性が向上する。必要に応じて、嵌合部や挿入部の隙間に封止用または接着固定用の樹脂10を充填してもよく、充填しなくてもよい。
【0019】
ソケット1の各部品の寸法精度は、組み立てられたソケット1が、嵌合による位置決め精度だけによって所定の組立て精度を確保できる精度とされている。つまり、各嵌合穴21bおよび各嵌合突起34は、嵌合時に、光電変換素子22に対する中空封止と光軸調整が達成できる寸法精度で形成されている。また、スリーブ31の嵌挿口31aの寸法精度と、その軸Lの位置精度は、光電変換素子22の光軸位置に対して所要の組立て精度とされている。従って、スリーブ31にフェルール8aを嵌挿するだけで、光ファイバ8と光電変換素子22との光軸合わせと光学的結合が、いわゆるパッシブアライメントで実行でき、光信号のレベルを測定装置でモニタしながら行うアクティブアラインメントが不要となる。
【0020】
ソケット1の各寸法精度は、樹脂成形による嵌合部材の各寸法精度と、画像処理による光電変換素子22の実装位置精度とに基づく。成形部材21の嵌合穴21bは、成形部材21の成形時に形成でき、成形技術で実現可能な最高成形精度が1μm以下の精度であることから、このような精度で嵌合穴21bの寸法精度と位置精度を達成できる。スリーブブロック3におけるスリーブ31とその嵌挿口31a、および嵌合突起34の樹脂成形寸法精度についても、上記と同様である。
【0021】
本実施形態のソケット1によれば、複数のソケット1が凹凸構造3a,3bを互いに噛み合わせることにより連結されるので、一体化用の別途の部品を用いることなく、ソケット自体によって複数を連結して一体的に取り扱うことができる。従って、複数のソケット1を一体的に実装することができ、容易に多チャネル化することができる。また、一体化用の別途の部品を用いないので、一体化されたソケット1間のピッチ精度が、一体化用の別途の部品を用いる場合よりも向上する。さらにまた、凹凸構造3a,3bのスライド方向SLがフェルール8aを嵌挿する方向とは異なるので、フェルール着脱時にソケット1に作用する力に対して、ソケット1の連結状態を安定に保つことができる。
【0022】
(第2の実施形態)
図3、図4は第2の実施形態に係るソケット1を示す。このソケット1は、図3に示すように、上述の第1の実施形態における凹凸構造3a,3bの端部に、凹凸構造3a,3bのスライド噛み合わせの際のスライド方向SLの位置決めを行うストッパ部4a,4bを備えたものである。ストッパ部4aは、凹構造3aのスライド方向SLにおける一端部から僅かに戻った位置において、凹構造3aの溝部の底面の法線方向外向きに形成された突起を備えてなる。この突起が形成されることにより、凹構造3aの溝部の一端側は行き止まりとなり、溝部の他端側(開放端側)からのみ凸構造3bの突出部を挿入することができる。ストッパ部4bは、凸構造3bのスライド方向SLにおける一端部に形成された、凸構造3bの突出部の根元からその突出部の突出方向とは逆方向に退行した部位と、その退行した部位におけるスライド方向SLの一端部側に形成された突起とを備えてなる。このストッパ部4bの突起は、凸構造3bの突出部の突出方向に突出しているが、その突起の頭は凸構造3bの突出部の根元よりも突出していない。従って、凸構造3bの突出部は、スライド方向SLにおける両端のいずれ側からであっても、凹構造3aの溝部に挿入可能である。ストッパ部4a,4bの各突起は、スライド方向SLにおける位置が互いにずれており、2つのソケット1が連結された状態において、ストッパ部4aの突起がストッパ部4bの退行した部位に収まる。この収まりにより、スライド方向SLの位置決めがなされる。
【0023】
2つのソケット1の連結に際して、図4(a)に示すように、一方のソケット1(右側ソケット)の凹構造3aの溝部の他端側(開放端側)に、他方のソケット1(左側ソケット)の凸構造3bの突出部の一端側が挿入される。そして、凹凸構造3a,3bが互いに噛み合わせ状態とされ、スライド移動される。ストッパ部4a,4bの両突起は、2つのソケット1がスライド方向SLに沿って相対移動される最終段階において、互いに接触して変形し、ストッパ部4aの突起がストッパ部4bの突起を乗り越えることにより、互いに逆行非容易に噛み合った状態となる。ストッパ部4a,4bは、互いに乗り越え容易とするための斜面が形成されており、互いの接触時に斜面で接触し、斜面を乗り越えた段階で噛み合った状態となる。2つのソケット1は、ストッパ部4a,4bを互いに変形させて、連結時とは逆方向に乗り越えさせることにより、連結が解除される。
【0024】
ストッパ部4a,4bは、両凹凸構造3a,3bにおけるいずれの端部に設けてもよく、また、凹凸構造3a,3bの構造上の端部に設ける必要もなく、スライド噛み合わせ移動の最終位置において互いに逆行非容易に噛み合うように設けてあればよい。従って、ストッパ部4a,4bは、スリーブブロック3における、凹凸構造3a,3bが設けられた部位から離れた、他の位置や、回路ブロック2におけるいずれかの位置に設けてもよい。連結されたソケット1は、図4(b)に示すように、互いに一体化された連結状態で、実装用電極20を用いて実装基板5に実装される。フェルールの嵌挿方向は、実装基板5の表面に平行な方向となる。ソケット1の実装は、ソケット1の材料を耐熱性材料とすることにより、他の電気部品と同様に、例えば、半田リフローによって行うことができる。また、実装用電極20は、ピン電極に代えて表面実装用の電極とすることにより、表面実装技術(SMT)によって実装することができる。本実施形態のソケット1によれば、連結状態のソケットのスライド方向SLの位置決めを確実に行うことができ、複数のソケットを一体化した状態を安定に維持することができる。
【0025】
(第3の実施形態)
図5乃至図9は第3の実施形態に係るソケット1を示す。このソケット1は、図5、図6(a)(b)に示すように、スリーブブロック3が光電変換素子22の光軸L回りに90°単位で回転した状態で回路ブロック2に対して位置決めされて互いに一体化されているものである。従って、互いに勝手違いのソケット1が4種類形成され得る。また、ソケット1は、表面実装用に成形された実装用電極20を有している。スリーブブロック3は、スリーブ基部32における円形凸部32aの底部に、2本の嵌合突起34を備えている。回路ブロック2の成形部材21は、円形凹部21aの底面に4つの嵌合穴21bが、円形凹部21aの中心軸に対して互いに対称に樹脂成形によって設けられている。このソケット1は、4つの嵌合穴21bのうちの2つに、2本の嵌合突起34を嵌合させることにより、スリーブブロック3と回路ブロック2との位置決めが行われ、完成される。スリーブ基部32の縦横の幅X,Yは、2つのソケット1を連結する際に互いの回路ブロック2が干渉しない幅に設定されている。他の構成は、第1の実施形態におけるソケット1と同様である。
【0026】
図6(a)(b)に示すソケット1は、スライド方向SLが、実装用電極20の導出方向と同じx方向とされており、上述した図1(a)(b)と同様に、同一種類のソケット1を、互いに並列して連結される。なお、スリーブブロック3が180°回転されることにより、このソケット1とはスライド方向SLが同じで凸構造3bと凹構造3aの位置が逆になった、異種のソケット1も形成することができる。このような互いに異種のソケットは、互いに千鳥配置にして、すなわち、実装用電極20の導出方向を互いに逆にして、並列連結することができる(不図示)。
【0027】
図7(a)(b)、図8(a)(b)に示す2種類のソケット1は、図6(a)(b)に示したソケット1のスリーブブロック3を、それぞれ光電変換素子22の光軸L回りに+90°、および−90°回転して形成したソケットである。これらの互いに勝手違いの2種類のソケット1は、スライド方向SLが、実装用電極20の導出方向に直交するy方向とされており、図9(a)に示すように、実装用電極20の導出位置とは反対側における凹凸構造3a,3bによって互いに連結される。また、これらの2種類のソケット1は、図9(b)に示すように、表面実装され、フェルールの嵌挿方向が実装基板5に対して垂直方向となる。
【0028】
(他の変形例)
図10、図11にソケット1の他の変形例を示す。図10に示すソケット1は、連結用に凹構造3aを1つだけ回路ブロック2に備えたソケット1と、凸構造3bを1つだけ回路ブロック2に備えたソケット1の2種類のソケット1を互いに連結するものである。図11(a)に示すソケット1は、回路ブロック2の底面(背面、xy面)に凹構造3aを1つだけ備えたソケット1と、同じく回路ブロック2の底面に凸構造3bを1つだけ備えたソケット1の2種類のソケット1を、互いに背中合わせに連結するものである。図11(b)に示すソケット1は、回路ブロック2の底面に凹構造3aと凸構造3bとを並列に1つずつ備えた同一種類の2つのソケット1を、互いに背中合わせに連結するものである。図11(c)に示すソケット1は、回路ブロック2の左右の側面(y方向両端の側面)に、スライド方向SLがx方向の凹凸構造3a,3bを備え、回路ブロック2の底面に1つの凹構造3a、または、1つの凸構造3bを備えた2種類のソケットである。この2種類のソケットは、側面の凹凸構造3a,3bによって互いに並列連結でき、さらに、背面の凹凸構造3a,3bによって互いに背中合わせに連結するものである。これらのソケット1は、いずれも、その凹凸構造3a,3bのスライド方向SLとフェルール8aを嵌挿する方向(軸L方向、z方向)とが互いに異なり、互いに直交する平面内にある。従って、フェルール着脱時にフェルール嵌挿方向の力がソケット1に作用しても、その力がそのまま凹凸構造の噛み合わせをずらす力とはならないので、ソケット1の連結状態はフェルール着脱時にも安定して維持することができる。
【0029】
なお、本発明は、上記構成に限られることなく種々の変形が可能である。例えば、上述した各実施形態の構成を互いに組み合わせた構成とすることができる。また、凹凸構造3a,3bの個数や配置位置、嵌合突起34の形状や個数、これに対応する嵌合穴21bの形状や個数、さらに実装用電極20の形状や本数や配置位置などを、適宜設定することができる。ストッパ部4a,4bは、図3、図4に示したソケット1以外のソケット1についても同様に備えることができる。
【符号の説明】
【0030】
1 光ファイバ用ソケット
2 回路ブロック
2a 回路基板
20 実装用電極
21 成形部材
21a 円形凹部
21b 嵌合穴
22 光電変換素子
3 スリーブブロック
3a 凹構造
3b 凸構造
31 スリーブ
32 スリーブ基部
32a 円形凸部
33 光透過部
34 嵌合突起
4a,4b ストッパ部
8 光ファイバ
8a フェルール
L 軸、光軸
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ファイバの先端部に嵌装されたフェルールが嵌挿され、互いに連結して用いられる光ファイバ用ソケットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、光電変換素子が実装された基板と、その基板に嵌合されて位置決めされたスリーブとを備え、使用時にはスリーブにフェルールが嵌挿されて光ファイバと光電変換素子とが光結合される光ファイバ用ソケットが知られている(例えば、特許文献1参照)。このソケットは、基板に2つの嵌合穴が穿設され、基板と対向するスリーブの面に2本の嵌合軸が設けられ、2本の嵌合軸をそれぞれ2つの嵌合穴に嵌め込むことにより、基板とスリーブの嵌合位置決めが行われている。このようなソケットは、例えば、図12に示すように、円柱形のスリーブ91を四角形の基板ブロック92に結合したソケット9の形状を有する。スリーブ91の開口9aには、光ファイバ8の先端部に嵌装されたフェルール8aが嵌挿される。基板ブロック92の内部には、光ファイバ8との間で光の授受を行う光電変換素子が実装されている。また、電極90が、基板ブロック92から導出されており、電極90は、外部の実装基板にソケット9を実装するために用いられると共に、光電変換素子と実装基板上の回路との間の電気接続に用いられる。
【0003】
上述のソケット9は、光電変換を多チャンネル化するために、例えば、図13に示すように、連結用ケース93とプラグケース94とを備えている。この例では、2つのソケット9が連結用ケース93に固定され、2つのフェルール8aが、ソケット9の配列ピッチに合わせて、プラグケース94に固定されている。連結用ケース93とプラグケース94とを用いて、2つのフェルール8aが2つのソケット9に対して同時に着脱される。また、ソケットを組み合わせて用いる他の例として、ソケットの外壁に凹部と凸部とを備え、その凹部と凸部とを用いて複数のソケットを互いに位置決めするようにした光ファイバ用ソケットが知られている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8−5872号公報
【特許文献2】特開2007−279561号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した図13に示されるような光ファイバ用ソケットにおいては、連結用ケース93が必要とされ、連結用ケース93の製造コストやその取り扱いと部品管理の手間などがコスト上の負担や作業上の負担となる。また、上述した特許文献2に示されるような光ファイバ用ソケットにおいては、単にソケット間の位置決めがなされるだけであって、複数のソケットを一体的に取り扱うことができない。
【0006】
本発明は、上記の問題を解決するものであって、ソケット自体によって複数連結して一体的に取り扱うことができ、実装することができる光ファイバ用ソケットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を達成するために、本発明の光ファイバ用ソケットは、光ファイバに嵌装されたフェルールが嵌挿される光ファイバ用ソケットにおいて、回路基板をインサートして一体成形された成形部材および回路基板に実装された光電変換素子を有する回路ブロックと、フェルールが嵌挿される嵌挿口を有するスリーブブロックとを備え、回路ブロックとスリーブブロックは、光電変換素子の光軸と嵌挿口の軸とが一致するように位置決めされて互いに一体化され、回路ブロックまたはスリーブブロックは、複数の光ファイバ用ソケットを互いに隣接して連結させるための、互いにスライド噛み合わせ可能な凹構造と凸構造とを有し、その凹凸構造のスライド方向とフェルールを嵌挿する方向とが互いに異なることを特徴とする。
【0008】
この光ファイバ用ソケットにおいて、回路ブロックまたはスリーブブロックは、凹凸構造のスライド噛み合わせの際のスライド方向の位置決めを行うストッパ部を備えていることが好ましい。
【0009】
この光ファイバ用ソケットにおいて、凹構造と凸構造とはスリーブブロックに設けられ、そのスリーブブロックが光電変換素子の光軸回りに90°単位で回転された状態で回路ブロックに対して位置決めされて回路ブロックに取り付けられることにより、互いに勝手違いの複数種類の光ファイバ用ソケットを形成し得るようにしてもよい。
【発明の効果】
【0010】
本発明の光ファイバ用ソケットによれば、複数ソケットが凹凸構造を互いに噛み合わされることによって連結されるので、複数の光ファイバ用ソケットを、ソケット自体によって連結して一体的に取り扱うことができ、一体的に実装基板に実装することができる。また、凹凸構造のスライド方向がフェルールの嵌挿方向と異なり、フェルール着脱時にフェルール嵌挿方向の力がソケットに作用しても、その力がそのまま凹凸構造の噛み合わせをずらす力とはならないので、ソケットの連結状態を安定して維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】(a)は本発明の第1の実施形態に係る光ファイバ用ソケットの2連結状態の斜視図、(b)は同ソケットの側面図。
【図2】同ソケットの断面図。
【図3】第2の実施形態に係る光ファイバ用ソケットの2連結状態の斜視図。
【図4】(a)は同ソケットの2連結状態への移行過程における正面図、(b)はソケットを2連結して実装した状態の正面図。
【図5】第3の実施形態に係る光ファイバ用ソケットの分解斜視図。
【図6】(a)は同ソケットの斜視図、(b)は同ソケットの断面図。
【図7】(a)は同ソケットの勝手違い状態の分解斜視図、(b)は(a)のソケットの組み立て斜視図。
【図8】(a)は同ソケットの他の勝手違い状態の分解斜視図、(b)は(a)のソケットの組み立て斜視図。
【図9】(a)は図7(b)、図8(b)のソケットの2連結状態の斜視図、(b)は(a)のソケットの実装状態の側面図。
【図10】図9のソケットの変形例の斜視図。
【図11】(a)は本発明の光ファイバ用ソケットの他の変形例の2連結状態の斜視図、(b)はさらに他の変形例の2連結状態の斜視図、(c)はさらに他の変形例の4連結状態の斜視図。
【図12】従来の光ファイバ用ソケットの斜視図。
【図13】従来の光ファイバ用ソケットの2連結状態の斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(第1の実施形態)
以下、本発明の実施形態に係る光ファイバ用ソケットについて、図面を参照して説明する。図1、図2は本発明の第1の実施形態に係る光ファイバ用ソケット(以下、単にソケットともいう)を示す。ソケット1は、回路ブロック2とスリーブブロック3とを組み合わせて成り、複数のソケットを互いに連結することができるソケットである。回路ブロック2は、実装用電極20と、回路基板2aを含む成形部材21と、回路基板2aに実装された光電変換素子22と、を備えている。スリーブブロック3は、光ファイバ8の先端部に嵌装されたフェルール8aを嵌挿するための円形の嵌挿口31aを有するスリーブ31と、スリーブ31を回路ブロック2に接続するスリーブ基部32と、を備えている。スリーブ基部32は、互いに隣接するソケット1を連結させるため、2つのソケット1間で互いにスライド噛み合わせ可能な凹構造3aと凸構造3b(併せて、凹凸構造3a,3bと称する)を有している。以下、各部を詳細説明する。なお、図中にxyz直交座標軸を示し、z方向を上下方向として参照するが、ソケット1は、任意の姿勢で使用することができる。
【0013】
光電変換素子22は、発光素子または受光素子のいずれであってもよい。回路基板2aは、配線パターンを備えた基板であり、その配線パターンは、光電変換素子22への信号送信または光電変換素子22からの信号受信のための信号ラインやグランドラインを含む。成形部材21は、スリーブブロック3を受ける受け部材であり、回路基板2aをインサートした状態で樹脂成形されている。成形部材21用の樹脂として、熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂を用いることができ、これらの樹脂にガラス繊維を含めてもよい。成形部材21は、外形が四角形であり、その上面に円形凹部21aを有し、円形凹部21aの底面に2つの貫通した円形の嵌合穴21bが、円形凹部21aの中心軸に対して対称に樹脂成形によって設けられている。なお、嵌合穴21bは、貫通していても、貫通していなくてもよく、その形状も円形に限られるものではない。
【0014】
回路基板2aは、円形凹部21aの底面に回路基板2aの表面を一部露出させた状態で、成形部材21にインサートされている。成形部材21の側面からは、回路基板2aに電気接続された実装用電極20が導出されている。円形凹部21aの底面と回路基板2aの露出部とは同一平面を構成する。円形凹部21a内の回路基板2aの露出部には、光電変換素子22が実装されている。光電変換素子22の実装位置は、円形凹部21aの中心位置であり、より正確には、2つの円形嵌合穴21bの円の中心を結ぶ線分の中点位置に、光電変換素子22の光軸位置を配置させる実装位置である。ここで、光電変換素子22の光軸位置とは、光電変換素子22が発光素子の場合の発光中心位置、例えば、発光強度最大位置であり、受光素子の場合は受光中心位置、例えば、受光感度最大位置である。
【0015】
スリーブブロック3は、円筒形のスリーブ31とスリーブ基部32とを樹脂成形により一体成形したものである。スリーブ基部32は、上部の四角形部材と下部の円形凸部32aとを有する。スリーブ基部32は、その内側に、嵌挿口31aの軸Lに同軸の光透過部33と、その下部の凹部空間とを備え、円形凸部32aの底部に、2本の嵌合突起34を備えている。凹部空間は、光電変換素子22を収納するための空間である。各嵌合突起34は、各嵌合穴21bに嵌合する突起であり、スリーブ31の軸Lに対して互いに対称に設けられている。光透過部33は、レンズ形状とする他、平行平板形状とすることもでき、少なくとも、光電変換素子22の特性に応じた特定波長、例えば850nm、の光を透過させる光学材料からなる。光透過部33は、スリーブ31およびスリーブ基部32と共に一体成形され、スリーブブロック3の全体が光透過性を有する。なお、光透過部33を、例えばガラスによって別途形成し、これをインサートするインサート成形により、スリーブブロック3を形成してもよい。この場合、光透過部33以外のスリーブブロック3は、安価で寸法精度に優れる光非透過性樹脂によって成形することができる。光透過部33をインサート用部品として別途作成することにより、ソケット1用の材料の選択自由度が広がるので、光透過部33を含む各部材を高耐熱性の材料によって形成して、寸法精度に優れ、はんだリフロー実装に耐えるソケット1を安価に実現できる。
【0016】
凹構造3aは、スリーブ基部32の上部四角形部材の互いに対向する端面の一方に形成され、凸構造3bは、他方の端面に形成されている。凹構造3aと凸構造3bは、例えば、それぞれ互いに対応する、ありみぞ(蟻溝)構造と、ありほぞ(蟻柄、鳩尾形に先の広がった柄)構造である。その溝の方向と柄の方向とは互いに平行であり、フェルール8aが挿脱される方向(軸Lの方向)に直交する平面内にある。より一般的に言えば、凹凸構造3a,3bのスライド噛み合わせのためのスライド方向SLとフェルール8aを嵌挿する方向とは互いに異なる方向とされている。凹構造3aと凸構造3bの間隔は、互いに隣接するソケット1を連結できるように(連結時に回路ブロック2が互いに干渉しないように)、回路ブロック2の四角形の成形部材21の幅よりも広い間隔とされている。なお、凹凸構造3a,3bは、スリーブブロック3に備えるのではなく、回路ブロック2に備えるようにしてもよい。
【0017】
ソケット1の組み立て工程を説明する。回路基板2aと一体成形した成形部材21が形成された後、回路基板2aへの光電変換素子22の実装が行われる。光電変換素子22の実装に際し、2つの嵌合穴21bの各中心位置が、例えばチップマウンタの撮像装置と画像処理装置を用いて取得される。円(嵌合穴21b)とその中心位置を画像処理装置によって検出する方法として、例えば、ハフ(Hough)変換を用いることができる。ここで、各部の寸法を例示する。光電変換素子22は、例えば、ベアチップであって、2つの嵌合穴21bの間隔は4mm程度である。従って、処理負荷の増大を招くことなく、2つの嵌合穴21bを含む小領域を高倍率で撮像して円の形状と中心位置の測定精度を高くすることができる。例えば、10μm程度の精度まで測定精度と位置決め精度を上げることができる。2つの嵌合穴21bの各中心位置を基準として、それらの中間点位置に光電変換素子22の位置決め、すなわち光電変換素子22の光軸位置の位置決めがなされる。これにより、光電変換素子22が回路基板2aに実装されて、回路ブロック2が完成する。スリーブブロック3は、光透過部33を含む樹脂成形によって、または、別途形成した光透過部33をインサートするインサート成形によって完成する。
【0018】
ソケット1は、回路ブロック2に対しスリーブブロック3を嵌合させて完成する。嵌合は、嵌合突起34を嵌合穴21bに嵌合させ、円形凹部21aにスリーブ基部32の円形凸部32aを挿入し、円形凹部21aの底面と円形凸部32aの底面とを接触させて完了する。これにより、光電変換素子22の光軸Lとスリーブ31の軸Lとが一致した状態となり、光電変換素子22がスリーブブロック3によって中空封止された状態となる。中空封止によって、光電変換素子22に外部応力がかかりにくくなり、また外部のガスなどによってチップが劣化しにくくなり、信頼性が向上する。必要に応じて、嵌合部や挿入部の隙間に封止用または接着固定用の樹脂10を充填してもよく、充填しなくてもよい。
【0019】
ソケット1の各部品の寸法精度は、組み立てられたソケット1が、嵌合による位置決め精度だけによって所定の組立て精度を確保できる精度とされている。つまり、各嵌合穴21bおよび各嵌合突起34は、嵌合時に、光電変換素子22に対する中空封止と光軸調整が達成できる寸法精度で形成されている。また、スリーブ31の嵌挿口31aの寸法精度と、その軸Lの位置精度は、光電変換素子22の光軸位置に対して所要の組立て精度とされている。従って、スリーブ31にフェルール8aを嵌挿するだけで、光ファイバ8と光電変換素子22との光軸合わせと光学的結合が、いわゆるパッシブアライメントで実行でき、光信号のレベルを測定装置でモニタしながら行うアクティブアラインメントが不要となる。
【0020】
ソケット1の各寸法精度は、樹脂成形による嵌合部材の各寸法精度と、画像処理による光電変換素子22の実装位置精度とに基づく。成形部材21の嵌合穴21bは、成形部材21の成形時に形成でき、成形技術で実現可能な最高成形精度が1μm以下の精度であることから、このような精度で嵌合穴21bの寸法精度と位置精度を達成できる。スリーブブロック3におけるスリーブ31とその嵌挿口31a、および嵌合突起34の樹脂成形寸法精度についても、上記と同様である。
【0021】
本実施形態のソケット1によれば、複数のソケット1が凹凸構造3a,3bを互いに噛み合わせることにより連結されるので、一体化用の別途の部品を用いることなく、ソケット自体によって複数を連結して一体的に取り扱うことができる。従って、複数のソケット1を一体的に実装することができ、容易に多チャネル化することができる。また、一体化用の別途の部品を用いないので、一体化されたソケット1間のピッチ精度が、一体化用の別途の部品を用いる場合よりも向上する。さらにまた、凹凸構造3a,3bのスライド方向SLがフェルール8aを嵌挿する方向とは異なるので、フェルール着脱時にソケット1に作用する力に対して、ソケット1の連結状態を安定に保つことができる。
【0022】
(第2の実施形態)
図3、図4は第2の実施形態に係るソケット1を示す。このソケット1は、図3に示すように、上述の第1の実施形態における凹凸構造3a,3bの端部に、凹凸構造3a,3bのスライド噛み合わせの際のスライド方向SLの位置決めを行うストッパ部4a,4bを備えたものである。ストッパ部4aは、凹構造3aのスライド方向SLにおける一端部から僅かに戻った位置において、凹構造3aの溝部の底面の法線方向外向きに形成された突起を備えてなる。この突起が形成されることにより、凹構造3aの溝部の一端側は行き止まりとなり、溝部の他端側(開放端側)からのみ凸構造3bの突出部を挿入することができる。ストッパ部4bは、凸構造3bのスライド方向SLにおける一端部に形成された、凸構造3bの突出部の根元からその突出部の突出方向とは逆方向に退行した部位と、その退行した部位におけるスライド方向SLの一端部側に形成された突起とを備えてなる。このストッパ部4bの突起は、凸構造3bの突出部の突出方向に突出しているが、その突起の頭は凸構造3bの突出部の根元よりも突出していない。従って、凸構造3bの突出部は、スライド方向SLにおける両端のいずれ側からであっても、凹構造3aの溝部に挿入可能である。ストッパ部4a,4bの各突起は、スライド方向SLにおける位置が互いにずれており、2つのソケット1が連結された状態において、ストッパ部4aの突起がストッパ部4bの退行した部位に収まる。この収まりにより、スライド方向SLの位置決めがなされる。
【0023】
2つのソケット1の連結に際して、図4(a)に示すように、一方のソケット1(右側ソケット)の凹構造3aの溝部の他端側(開放端側)に、他方のソケット1(左側ソケット)の凸構造3bの突出部の一端側が挿入される。そして、凹凸構造3a,3bが互いに噛み合わせ状態とされ、スライド移動される。ストッパ部4a,4bの両突起は、2つのソケット1がスライド方向SLに沿って相対移動される最終段階において、互いに接触して変形し、ストッパ部4aの突起がストッパ部4bの突起を乗り越えることにより、互いに逆行非容易に噛み合った状態となる。ストッパ部4a,4bは、互いに乗り越え容易とするための斜面が形成されており、互いの接触時に斜面で接触し、斜面を乗り越えた段階で噛み合った状態となる。2つのソケット1は、ストッパ部4a,4bを互いに変形させて、連結時とは逆方向に乗り越えさせることにより、連結が解除される。
【0024】
ストッパ部4a,4bは、両凹凸構造3a,3bにおけるいずれの端部に設けてもよく、また、凹凸構造3a,3bの構造上の端部に設ける必要もなく、スライド噛み合わせ移動の最終位置において互いに逆行非容易に噛み合うように設けてあればよい。従って、ストッパ部4a,4bは、スリーブブロック3における、凹凸構造3a,3bが設けられた部位から離れた、他の位置や、回路ブロック2におけるいずれかの位置に設けてもよい。連結されたソケット1は、図4(b)に示すように、互いに一体化された連結状態で、実装用電極20を用いて実装基板5に実装される。フェルールの嵌挿方向は、実装基板5の表面に平行な方向となる。ソケット1の実装は、ソケット1の材料を耐熱性材料とすることにより、他の電気部品と同様に、例えば、半田リフローによって行うことができる。また、実装用電極20は、ピン電極に代えて表面実装用の電極とすることにより、表面実装技術(SMT)によって実装することができる。本実施形態のソケット1によれば、連結状態のソケットのスライド方向SLの位置決めを確実に行うことができ、複数のソケットを一体化した状態を安定に維持することができる。
【0025】
(第3の実施形態)
図5乃至図9は第3の実施形態に係るソケット1を示す。このソケット1は、図5、図6(a)(b)に示すように、スリーブブロック3が光電変換素子22の光軸L回りに90°単位で回転した状態で回路ブロック2に対して位置決めされて互いに一体化されているものである。従って、互いに勝手違いのソケット1が4種類形成され得る。また、ソケット1は、表面実装用に成形された実装用電極20を有している。スリーブブロック3は、スリーブ基部32における円形凸部32aの底部に、2本の嵌合突起34を備えている。回路ブロック2の成形部材21は、円形凹部21aの底面に4つの嵌合穴21bが、円形凹部21aの中心軸に対して互いに対称に樹脂成形によって設けられている。このソケット1は、4つの嵌合穴21bのうちの2つに、2本の嵌合突起34を嵌合させることにより、スリーブブロック3と回路ブロック2との位置決めが行われ、完成される。スリーブ基部32の縦横の幅X,Yは、2つのソケット1を連結する際に互いの回路ブロック2が干渉しない幅に設定されている。他の構成は、第1の実施形態におけるソケット1と同様である。
【0026】
図6(a)(b)に示すソケット1は、スライド方向SLが、実装用電極20の導出方向と同じx方向とされており、上述した図1(a)(b)と同様に、同一種類のソケット1を、互いに並列して連結される。なお、スリーブブロック3が180°回転されることにより、このソケット1とはスライド方向SLが同じで凸構造3bと凹構造3aの位置が逆になった、異種のソケット1も形成することができる。このような互いに異種のソケットは、互いに千鳥配置にして、すなわち、実装用電極20の導出方向を互いに逆にして、並列連結することができる(不図示)。
【0027】
図7(a)(b)、図8(a)(b)に示す2種類のソケット1は、図6(a)(b)に示したソケット1のスリーブブロック3を、それぞれ光電変換素子22の光軸L回りに+90°、および−90°回転して形成したソケットである。これらの互いに勝手違いの2種類のソケット1は、スライド方向SLが、実装用電極20の導出方向に直交するy方向とされており、図9(a)に示すように、実装用電極20の導出位置とは反対側における凹凸構造3a,3bによって互いに連結される。また、これらの2種類のソケット1は、図9(b)に示すように、表面実装され、フェルールの嵌挿方向が実装基板5に対して垂直方向となる。
【0028】
(他の変形例)
図10、図11にソケット1の他の変形例を示す。図10に示すソケット1は、連結用に凹構造3aを1つだけ回路ブロック2に備えたソケット1と、凸構造3bを1つだけ回路ブロック2に備えたソケット1の2種類のソケット1を互いに連結するものである。図11(a)に示すソケット1は、回路ブロック2の底面(背面、xy面)に凹構造3aを1つだけ備えたソケット1と、同じく回路ブロック2の底面に凸構造3bを1つだけ備えたソケット1の2種類のソケット1を、互いに背中合わせに連結するものである。図11(b)に示すソケット1は、回路ブロック2の底面に凹構造3aと凸構造3bとを並列に1つずつ備えた同一種類の2つのソケット1を、互いに背中合わせに連結するものである。図11(c)に示すソケット1は、回路ブロック2の左右の側面(y方向両端の側面)に、スライド方向SLがx方向の凹凸構造3a,3bを備え、回路ブロック2の底面に1つの凹構造3a、または、1つの凸構造3bを備えた2種類のソケットである。この2種類のソケットは、側面の凹凸構造3a,3bによって互いに並列連結でき、さらに、背面の凹凸構造3a,3bによって互いに背中合わせに連結するものである。これらのソケット1は、いずれも、その凹凸構造3a,3bのスライド方向SLとフェルール8aを嵌挿する方向(軸L方向、z方向)とが互いに異なり、互いに直交する平面内にある。従って、フェルール着脱時にフェルール嵌挿方向の力がソケット1に作用しても、その力がそのまま凹凸構造の噛み合わせをずらす力とはならないので、ソケット1の連結状態はフェルール着脱時にも安定して維持することができる。
【0029】
なお、本発明は、上記構成に限られることなく種々の変形が可能である。例えば、上述した各実施形態の構成を互いに組み合わせた構成とすることができる。また、凹凸構造3a,3bの個数や配置位置、嵌合突起34の形状や個数、これに対応する嵌合穴21bの形状や個数、さらに実装用電極20の形状や本数や配置位置などを、適宜設定することができる。ストッパ部4a,4bは、図3、図4に示したソケット1以外のソケット1についても同様に備えることができる。
【符号の説明】
【0030】
1 光ファイバ用ソケット
2 回路ブロック
2a 回路基板
20 実装用電極
21 成形部材
21a 円形凹部
21b 嵌合穴
22 光電変換素子
3 スリーブブロック
3a 凹構造
3b 凸構造
31 スリーブ
32 スリーブ基部
32a 円形凸部
33 光透過部
34 嵌合突起
4a,4b ストッパ部
8 光ファイバ
8a フェルール
L 軸、光軸
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光ファイバに嵌装されたフェルールが嵌挿される光ファイバ用ソケットにおいて、
回路基板をインサートして一体成形された成形部材および前記回路基板に実装された光電変換素子を有する回路ブロックと、
前記フェルールが嵌挿される嵌挿口を有するスリーブブロックと、を備え、
前記回路ブロックと前記スリーブブロックは、前記光電変換素子の光軸と前記嵌挿口の軸とが一致するように位置決めされて互いに一体化され、
前記回路ブロックまたはスリーブブロックは、複数の光ファイバ用ソケットを互いに隣接して連結させるための、互いにスライド噛み合わせ可能な凹構造と凸構造とを有し、その凹凸構造のスライド方向と前記フェルールを嵌挿する方向とが互いに異なることを特徴とする光ファイバ用ソケット。
【請求項2】
前記回路ブロックまたは前記スリーブブロックは、前記凹凸構造のスライド噛み合わせの際のスライド方向の位置決めを行うストッパ部を備えていることを特徴とする請求項1に記載の光ファイバ用ソケット。
【請求項3】
前記凹構造と凸構造とは前記スリーブブロックに設けられ、そのスリーブブロックが前記光電変換素子の光軸回りに90°単位で回転された状態で前記回路ブロックに対して位置決めされて該回路ブロックに取付けられることにより、互いに勝手違いの複数種類の光ファイバ用ソケットを形成し得るようにしたことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の光ファイバ用ソケット。
【請求項1】
光ファイバに嵌装されたフェルールが嵌挿される光ファイバ用ソケットにおいて、
回路基板をインサートして一体成形された成形部材および前記回路基板に実装された光電変換素子を有する回路ブロックと、
前記フェルールが嵌挿される嵌挿口を有するスリーブブロックと、を備え、
前記回路ブロックと前記スリーブブロックは、前記光電変換素子の光軸と前記嵌挿口の軸とが一致するように位置決めされて互いに一体化され、
前記回路ブロックまたはスリーブブロックは、複数の光ファイバ用ソケットを互いに隣接して連結させるための、互いにスライド噛み合わせ可能な凹構造と凸構造とを有し、その凹凸構造のスライド方向と前記フェルールを嵌挿する方向とが互いに異なることを特徴とする光ファイバ用ソケット。
【請求項2】
前記回路ブロックまたは前記スリーブブロックは、前記凹凸構造のスライド噛み合わせの際のスライド方向の位置決めを行うストッパ部を備えていることを特徴とする請求項1に記載の光ファイバ用ソケット。
【請求項3】
前記凹構造と凸構造とは前記スリーブブロックに設けられ、そのスリーブブロックが前記光電変換素子の光軸回りに90°単位で回転された状態で前記回路ブロックに対して位置決めされて該回路ブロックに取付けられることにより、互いに勝手違いの複数種類の光ファイバ用ソケットを形成し得るようにしたことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の光ファイバ用ソケット。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2012−242660(P2012−242660A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−113636(P2011−113636)
【出願日】平成23年5月20日(2011.5.20)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年5月20日(2011.5.20)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】
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