光ヘッドおよび光ディスク装置
【課題】干渉型の光ヘッドおよび光ディスク装置において、光情報記録媒体からの反射光である信号光と、信号光と干渉させる参照光の光軸を正確に一致させて合波し、かつ高い精度で干渉光を生成することが難しい。
【解決手段】光情報記録媒体からの信号光と干渉させる参照光をコーナーキューブプリズムなどで位置ずれを伴った状態で高精度に反射させ、信号光と参照光を位置ずれを伴った状態で高精度に平行な状態とする。また、これらの信号光と参照光を偏光分離手段を用いて二分岐し、干渉光を生成させる。これにより、再生信号が安定化し、従来よりも高品質な干渉型の光ヘッド及び光ディスク装置を提供することができる。
【解決手段】光情報記録媒体からの信号光と干渉させる参照光をコーナーキューブプリズムなどで位置ずれを伴った状態で高精度に反射させ、信号光と参照光を位置ずれを伴った状態で高精度に平行な状態とする。また、これらの信号光と参照光を偏光分離手段を用いて二分岐し、干渉光を生成させる。これにより、再生信号が安定化し、従来よりも高品質な干渉型の光ヘッド及び光ディスク装置を提供することができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ディスク装置の再生信号の高S/N化に関する。
【背景技術】
【0002】
光ディスクは、青色半導体レーザと、高NA対物レンズを用いるブルーレイディスクの製品化に至って、光学系の分解能としてはほぼ限界に達し、さらなる大容量化に向けては、今後、記録層の多層化が有力となると考えられる。このような多層光ディスクにおいては各記録層からの検出光量がほぼ同等となる必要性から、特定の記録層からの反射率は小さくせざるを得ない。ところが光ディスクは大容量化とともにビデオなどのダビング速度の高速化の必要性から、データ転送速度の高速化も続いており、そのままでは再生信号のS/N比が十分確保できなくなりつつある。したがって今後の記録層の多層化と高速化を同時に進めていくためには、検出信号の高S/N化が必須となる。
【0003】
光ディスクの再生信号の高S/N化に関する技術は、たとえば特許文献1、特許文献2及び特許文献3などに述べられている。特許文献1、特許文献2は光磁気ディスクの再生信号の高S/N化に関して、半導体レーザからの光を光ディスクに照射する前に分岐して、光ディスクに照射しない光を、光ディスクからの反射光と合波して干渉させることにより、微弱な信号の振幅を、光ディスクに照射しない光の光量を大きくすることによって増幅することを狙ったものである。光磁気ディスクの信号検出で従来用いられている偏光ビームスプリッタの透過光と反射光の差動検出では、本質的にはもとの入射偏光成分と光磁気ディスクによる偏光回転によって生じる入射偏光方向と直交する偏光成分を干渉させて、入射偏光で直交偏光成分を増幅して検出を行なうことになっている。したがって、もとの入射偏光成分を増大させれば信号を増大させることができるが、光ディスクに入射させる光強度は、データを消去したり上書きしたりしないようにするために、ある程度以下に抑える必要がある。これに対して上記従来の技術では、予め信号光と干渉させる光を分離しておいて、これをディスクに集光せずに信号光と干渉させ、信号増幅のため干渉させる光の強度を、ディスク表面の光強度と関係なく強くできるようにしているのである。これにより原理的には光強度の許す範囲で、強度を強くすればするほど、光検出器からの光電流を電圧変換するアンプのノイズに比べたS/N比を高めることができる。特許文献3ではフォトクロミック媒体を用いた光ディスクの再生信号の高S/N化に関し、参考文献1、参考文献2と同様に、光ディスクに照射しない光を、光ディスクからの反射光と干渉させることによって信号増幅を狙っている。フォトクロミック媒体を用いた光ディスクについても、信号再生のため入射光強度が高い程媒体の劣化を早めるため、上記光磁気ディスクと同様に記録媒体に照射する光の強度に制限を伴う。
【0004】
特許文献1では、2つの光を干渉させて干渉光強度を検出している。この際、干渉させるディスク反射光の光路長を可変とし、干渉信号振幅の確保を狙っている。特許文献2,特許文献3,特許文献4では干渉光強度検出に加えて、差動検出も行っている。これにより信号に寄与しない各光の強度成分をキャンセルし、信号振幅を2倍にすることで高S/N化を図っている。
【0005】
一般に、2つの光の干渉により得られる干渉信号の振幅は、干渉させる二つの光の間の位相差(光路長差)に依存するため、上記光路長差が用いる光源の波長程度のオーダで変動すると、振幅が変動し不安定になる。これに対し、特許文献4、特許文献5、特許文献6、特許文献7では互いに干渉状態の異なる複数の干渉信号を生成し、それらの演算により信号を生成することで、干渉位相に依存しない増幅信号を出力することを図っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平5−342678号公報
【特許文献2】特開平6−223433号公報
【特許文献3】特開平6−068470号公報
【特許文献4】特開2008−65961号公報
【特許文献5】特開2008―243273号公報
【特許文献6】特開2008―310942号公報
【特許文献7】特開2008―269680号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記のような光の干渉を用いた信号の検出方法において正しく増幅された信号を得るためには、干渉させる2光束の位置や光軸方向を正確に一致させる必要がある。特に光軸方向の精度0.001度オーダと非常に高い精度が要求される。たとえば特許文献4において、光ディスクからの反射光(信号光)と干渉させる光束(参照光)はミラーで反射される構成となっているが、ミラーのわずかな傾きにより光軸ずれが発生し、信号光と参照光との間の光軸ずれが発生する。これに対し特許文献5では、参照光をレンズで集光した後にミラーで反射することで光軸方向の精度を高く保つことができる構成となっている。これは、レンズで集光された光束を反射するミラーに傾きが発生しても、反射光が再びレンズを通過して平行光とされたときに光軸の傾きが発生しないことによる。信号光も同様に対物レンズにより光ディスクに集光されて反射するため、光ディスクの傾きにより光軸の傾きが発生しない。同様に特許文献6では参照光をコーナーキューブプリズムの中心に入射して反射させることで、反射光の光軸方向の精度を高めた構成となっている。すなわち信号光と参照光の光軸方向が高い精度で確定しているため、合波時の光軸方向ずれが発生せず、出力信号を安定に保つことができる。また、特許文献7ではビームディスプレイサ、コーナーキューブプリズム等を用いて参照光を正確に反平行(すなわち光軸方向が180度異なる)に出射させることで参照光の光軸方向の精度を高め、信号光と参照光の間の光軸方向誤差を抑える構造となっている。
【0008】
しかし、上記の特許文献5、6、7は、信号光と参照光が、互いに直交する偏光状態で合波された後に、互いに異なる位相関係である複数の合波光束を生成するため、無偏光ビームスプリッタあるいは無偏光回折格子が用いられている。このような素子は2つの異なる偏光状態(水平偏光、垂直偏光)で異なる位相差を生じ、一般のこの位相差の値を所望の値に制御するのは容易ではない。この性質のため、生成される干渉光における信号光と参照光の位相差に誤差が生じ、その結果として再生信号が不安定になるという課題がある。また、無偏光ビームスプリッタの分岐比(透過光と反射光の強度比)を正確に制御することは一般に難しい。上記従来技術においては偏光状態によらずに分岐比が1:1である必要があるが、実際は誤差が発生し、この点においても再生信号が不安定化するという課題がある。
【0009】
本発明の第1の目的は、2つの光の光軸調整が容易で、信号増幅効果が高く、出力が安定した、干渉型の光ヘッドを提供することにある。
【0010】
本発明の第1の目的は、2つの光の光軸調整が容易で、信号増幅効果が高く、出力が安定した、干渉型の光ディスク装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の第1の目的を達成するために以下の手段を用いた。
【0012】
(1)半導体レーザのなどの光源と、光源から出射した光束を信号光束と参照光束とに分離する偏光ビームスプリッタなどの偏光分離手段と、前記信号光束を光情報記録媒体に集光して照射する対物レンズなどの集光手段と、前記参照光を、前光情報記録媒体から反射して逆方向の軌跡をたどる信号光に対して、位置ずれを伴って平行に出射するコーナーキューブプリズムなどからなる平行光出射手段と、前記信号光と前記参照光の偏光を分離するビームディスプレイサなどの第二の偏光分離手段と、前記偏光分離手段により生成された信号光と参照光のそれぞれを合波し、合波光束を発生するビームディスプレイサなどの合波手段と、前記合波光束より信号光と参照光の干渉光を発生させるウォラストンプリズムなどの干渉光生成手段と、前記干渉光生成手段により生成された干渉光のそれぞれを検出する検出器と、からなることとした。
【0013】
これにより、信号光と参照光の光軸方向を高い精度で確定した状態でこれらの光束をすることが可能となり、安定して増幅信号を得ることが可能となる。
【0014】
(2)(1)において前記平行光出射手段が、前記偏光分離手段から生成された参照光を、位置ずれを伴って平行に出射するコーナーキューブプリズムなどの平行反射手段と、前記偏光分離手段とからなり、前記偏光分離手段は、前記平行反射手段から出射された参照光を反射することとした。
【0015】
これにより、前記偏光分離手段から生成される信号光と参照光が異なる方向に出射される場合でも、容易に分離された状態で信号光と参照光を平行とすることができ、調整点数を減らすことによる光ヘッドの低コスト化に寄与する。
【0016】
(3)(2)において前記平行光反射手段がコーナーキューブプリズムであることとした。
【0017】
これにより、位置ずれを伴って平行に反射される光束を容易に生成することができ、光ヘッドの組立調整が容易になる。
【0018】
(4)(2)において前記平行光反射手段が、前記参照光が中心軸と異なる場所に、中心軸と平行に入射される集光手段と、前記集光手段の焦点位置に配置されたミラーであることとした。
【0019】
これにより、安価な光学部品のみで位置ずれを伴って平行に反射される光束を生成することができ、光ヘッドの低コスト化が可能となる。
【0020】
(5)(1)において前記平行光出射手段が、前記偏光分離手段から生成された参照光を、位置ずれを伴わずに正反対の方向に出射する反射手段と、前記光情報記録媒体から反射された信号光と、前記反射手段から反射された参照光とを合波し合波光束を発生させる前記偏光分離手段と、前記合波光束の信号光と参照光を平行に分離するビームディスプレイサなどの平行光分離手段とからなることとした。
【0021】
これにより、集光レンズなどの光学部品を信号光と参照光が一度合波された合波光束に適用することができ、部品点数と調整点数の削減が可能となって光ディスクの低コスト化に寄与する。
【0022】
(6)(5)において前記平行光分離手段はビームディスプレイサであることとした。
【0023】
これにより、分離後の信号光と参照光を高い精度で平行にすることができ、出力信号の安定化に寄与する。
【0024】
(7)(1)において、前記第二の偏光分離手段と、前記合波手段のそれぞれがビームディスプレイサであることとした。
【0025】
これにより、簡素に高精度な合波を行うことが可能となり、出力信号の安定化に寄与する。
【0026】
(8)(1)において、前記第二の偏光分離手段と、前記合波手段が単一の偏光ビームスプリッタであることとした。
【0027】
これにより、部品点数と調整点数の削減が可能となり、光ヘッドの低コスト化に寄与する。
【0028】
(9)半導体レーザなどの光源と、光源から出射した光束を信号光束と参照光束とに分離する偏光ビームスプリッタなどの偏光分離手段と、前記信号光束を光情報記録媒体に集光して照射する対物レンズなどの集光手段と、前記参照光を、位置ずれを伴って平行に反射するコーナーキューブプリズムなどの平行光反射手段と、前記光情報記録媒体から出射した信号光を、前記平行光反射手段により反射した参照光を合波し、合波光束を生成する偏光ビームスプリッタなどの偏光合波手段と、前記合波光束より信号光と参照光の干渉光を発生させる干渉光生成手段と、前記干渉光生成手段により生成された干渉光のそれぞれを検出する検出器と、からなる構成とした。
【0029】
これにより、(1)と同様に高い精度で信号光と参照光の光軸方向を確定して合波し、干渉光を生成できるため、再生信号の安定化に寄与する。
【0030】
本発明の第2の目的を達成するために以下の手段を用いた。
【0031】
(10)−(18)光ヘッドと、制御部と、信号処理部とを有し、前記光ヘッドは、(1)−(9)に示すものであり、前記制御部は、前記光ヘッド及び前記対物レンズの位置と、前記半導体レーザの発光状態を制御し、前記信号処理部は、前記複数の検出器の出力の一部または全部を入力とする演算を行い、前記演算の出力を再生信号として取得することとした。
【0032】
これにより、(1)−(9)と同様の効果を、光ディスク装置において得ることができる。
【発明の効果】
【0033】
従来の光ディスクよりも安定して高い信号増幅効果が得られる光ヘッドまたは光ディスク装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の光ヘッドの基本的な実施形態の構成図である。
【図2】サーボ信号取得用の検出器の詳細を表す図である。
【図3】コーナーキューブプリズムの概略図である。
【図4】ビームディスプレイサの概略図である。
【図5】レンズで集光してミラーで反射する構成の説明図である。
【図6】偏光ビームスプリッタの傾きによらずに信号光と参照光が平行となることを説明する図である。
【図7】コーナーキューブプリズム以外の、位置ずれを伴って平行に光束を反射する手段の構成図である。
【図8】本発明において位置ずれを伴って平行な状態である信号光と参照光とから干渉光を生成する別の手段を表す構成図である。
【図9】ビームディスプレイサ、ウォラストンプリズムの回転に波長板を省略した場合の構成図と、光束と偏光状態の軌跡を表す図である。
【図10】信号光と参照光を一度合波して再び分離する別の実施形態の構成図である。
【図11】参照光を正確に反対方向に反射する別の手段を表す図である。
【図12】信号光と参照光の偏光分離と合波を同時に行う別の実施形態を表す図である。
【図13】偏光ビームスプリッタにより信号光、参照光の偏光分離と合波が同時に行われることを説明する図である。
【図14】通常の偏光ビームスプリッタへの光束の入射方向、出射方向を表す図である。
【図15】信号光と参照光とを平行にせずに高い精度で合波し、干渉させる別の実施形態の構成図である。
【図16】本発明の光ディスク装置の構成図である。
【図17】本発明の光ディスク装置のうち、信号処理回路の詳細を表すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0035】
以下、図1を用いて本発明の実施形態を説明する。
【0036】
図1は本発明の光ヘッドの基本的な実施形態である。半導体レーザ101からの光をコリメートレンズ102によって平行光として、λ/2板103を透過させて偏光ビームスプリッタ104に入射させる。偏光ビームスプリッタ104は分離面に入射するp偏光(以後、水平偏光と呼ぶ)をほぼ100%透過し、s偏光(以後、垂直偏光と呼ぶ)をほぼ100%反射させる機能を有している。このときλ/2板の光軸のまわりの回転角度の調整することにより、透過光と反射光の強度比を調整することができる。反射する光(以後、信号光と呼ぶ)はまず特殊偏光ビームスプリッタ105に入射する。特殊偏光ビームスプリッタ105は垂直偏光を100%透過し、水平偏光の一部を反射、一部を透過するという性質を持っている。このため入射した光は100%透過し、λ/4板106を透過して円偏光に変換され、球面収差を補正するビームエキスパンダ107を通過し、2次元アクチュエータ108に搭載された対物レンズ109により、光ディスク110上の記録層に集光される。光ディスクからの反射光は同じ光路を戻り、対物レンズ109によって平行光とされ、λ/4板106により最初に入射したときとは90°偏光方向が回転した直線偏光となる。次に特殊偏光ビームスプリッタ105に入射し、上記の性質により一部が透過、一部が反射する。反射光はシリンドリカルレンズ111によって検出器200に入射する。ここで検出器200は図2のように検出器201,202,203,204の4つに分割されており、図2のようにそれぞれの出力信号をA,B,C,Dとおくと、演算A−B−C+Dが焦点ずれ信号(FES)として、演算A−B+C−Dがトラックずれ信号(TES)として、それぞれ2次元アクチュエータ108のボイスコイルモータに電流としてフィードバックされる。一方、特殊偏光ビームスプリッタ105を透過した光は偏光ビームスプリッタ104に入射する。すると偏光が90度回転して水平偏光となっているため、透過する。一方、半導体レーザ101から出射し、偏光ビームスプリッタ104を反射した光(以後、参照光と呼ぶ)はコーナーキューブプリズム112に入射する。コーナーキューブプリズムは図3に示すようなプリズムの一種であり、入射光がプリズム内部で3回反射し、反射光として出射される光束は入射光に対して正反対の向きに進むという性質がある。(但し位置ずれを伴う。)従って反射光は、入射光に対して横方向(光軸と垂直な方向)に変位した状態で入射光と逆方向に進み、偏光ビームスプリッタ104に入射する。ここでコーナーキューブプリズム112内部の反射は全反射条件を満たすため、反射光は入射光と異なる偏光状態で出射してくる。このため往復の光路に挿入されたλ/2板113、λ/4板114によってコーナーキューブプリズム内部の偏光変化を補正し、かつ往路の光に対して復路の光の偏光が90度回転するようにしている。光の波長が405nm、コーナーキューブプリズムの媒質がBK7である場合はλ/2板113の光軸方向を水平偏光に対して58.6度、λ/4板114の光軸方向を水平偏光に対して-17.7度に設定すればよい(最初に入射する光から見て、反時計回りを正とする)。そのためコーナーキューブプリズム112からの反射光は偏光ビームスプリッタ104を反射する。この時点で信号光と参照光は、コーナーキューブプリズム112での反射による光軸位置シフトにより光軸位置が異なるが、後に詳しく説明するように、高い精度で平行となっている。これらの信号光、参照光は、次にλ/2板(光軸方向:水平偏光に対して22.5度)115を通過し、それぞれ+45度直線偏光と−45度直線偏光となって水平偏光成分と垂直偏光成分を等しく有する状態になる。その後これらの光束はビームディスプレイサ116に入射し、水平偏光と垂直偏光が分離され、分離された光束はそれぞれ平行に出射される。ビームディスプレイサは図4に示すような1軸性結晶のブロックであり、光学軸方向と垂直な偏光状態(図4では垂直偏光)はそのまま透過し、左記偏光状態と直交する偏光状態(図4では水平偏光)は、プリズム内で変位を生じ、そのまま透過する光に対して位置ずれを伴って平行に出射されるという性質を持つ。このため信号光、参照光の光束は等しい大きさを持つ水平偏光成分と垂直偏光成分とに分離される。これらの光束のうち、信号光の水平偏光成分と参照光の垂直偏光成分のみλ/2板(軸方向:水平偏光に対して45度)117,118によりそれぞれ垂直偏光状態、水平偏光状態に変換される。ここで上記4つの光束はビームディスプレイサ116と同一であるビームディスプレイサ119に入射する。すると、信号光と参照光が互いに直交した偏光状態で合波された光束が2つ生成される。これらの光束はそれぞれ集光レンズ120,121を通過し、それぞれλ/2板122(軸方向:水平偏光に対して22.5度)、λ/4板(軸方向:水平偏光に対して45度)123を通過し、両光束ともにウォラストンプリズム124により水平偏光成分と垂直偏光成分に分離され(これらの分離された光束が信号光と参照光の干渉によって生じた干渉光である)、それぞれ検出器125の別々の受光部によって検出され、電気信号に変換される。これら電気信号のうち、同一の合波光束から生成された2つの干渉光に対する出力は、図示しない差分回路によって、2つの干渉光の差に対応する電気信号が出力される。したがって、互いに異なる位相関係で合波された2つの合波光束のそれぞれに対応した電気信号の出力が得られる。これらの電気信号(以下、それぞれRF1,RF2と呼ぶ)は、演算回路に入力され、RF1,RF2それぞれの自乗演算値を加算し、平方根演算を行った値が最終的な再生信号として出力される。(但し、上記のような差分回路や演算回路は必ずしも光ヘッドに搭載されている必要はなく、搭載されない場合は同一の機能を光ヘッドを制御する光ディスク装置において実現すればよい。)
【0037】
次に、光の干渉によって増幅信号を得る過程を詳細に説明する。レンズ120,121に入射する合波光束は、いずれも水平偏光成分が参照光、垂直偏光成分が信号光となっており、偏光状態をジョーンズベクトルで表すと、
【数1】
となる。ここでEsは信号光の電場、Erは参照光の電場である。また、このベクトルの第一成分は水平偏光成分を、第二成分は垂直偏光成分を表す。係数の1/√2はビームスプリッタによって2分岐されたことによる。この合波光束のうち一方がλ/2板122を通過したときのジョーンズベクトルは、
【数2】
となる。この光束は水平偏光成分と垂直偏光成分を分離するウォラストンプリズムを通過するため、分離された後の光束の電場はそれぞれ、
【数3】
【数4】
となる。もう一方の合波光束がλ/4板123を通過したときのジョーンズベクトルは、
【数5】
となる。この光束は水平偏光成分と垂直偏光成分を分離するウォラストンプリズムを通過するため、分離された後の光束の電場はそれぞれ
【数6】
【数7】
となる。従って検出器125により得られる4つの電気信号は、
【数8】
【数9】
【数10】
【数11】
となる。ηは検出器の変換効率である。Cosの内部は各干渉光における信号光と参照光の位相差である。これらをそれぞれA1,A2,A3,A4とおくと、差動信号D1,D2はそれぞれ
【数12】
【数13】
と表される。このとき、演算回路では以下の式のように、D1,D2の二乗和(2次式のひとつ)の演算を行うときに干渉位相に依存しない出力が得られる。
【数14】
【0038】
この出力は、信号光の電場が参照光の電場によって増幅された形をしている。したがって光ディスクの反射率が低い等の理由によってEsが小さく、直接信号光を検出しても正しく信号が再生できない場合であっても、信号を増幅して正しく再生することが可能になる。なお、本出力の平方根を再生信号として扱っても良い。これにより信号の線型性が良くなるためにデータの復調が簡潔になる。
【0039】
ここで、本実施例において信号光と参照光の光軸方向を高い精度で一致させることが可能であることを説明する。まず信号光の光軸に着目する。信号光は対物レンズ109で光ディスク110に集光されて反射し、まったく同じ光路を逆に辿る構成となっている。基本的に光束の光軸方向のずれは反射の際の反射物の傾きにより発生するが、上記構成においては光ディスク110の傾きは図5に示すように、光軸方向の変化は原理的に生じない。(図5(a)は傾きがない場合、図5(b)は傾きが発生した場合である)代わりにビームの微小な変位が発生するが、干渉の品質は位置ずれに対しては余裕があり、問題とならない。従って、信号光の光軸方向は極めて高い精度で確定した状態となっている。一方、参照光は、コーナーキューブプリズム112において反射し、偏光ビームスプリッタ104で反射した時点で信号光と平行になる。ここで、コーナーキューブプリズムの入射光と反射光は、入射方向によらずに平行であるという性質がある。従って入射光と反射光は、高い精度で一致している。さらに信号光と参照光はいずれも偏光ビームスプリッタ104で1回反射している構成となっているため、仮に偏光ビームスプリッタ104がわずかに傾いた場合も、図6に示すように信号光と参照光が同じ方向に傾くため、平行の関係が保たれる(図6(a)は傾きがない場合、図6(b)は傾きが発生した場合である)。すなわち、信号光と参照光ともに、偏光ビームスプリッタ104を通過した時点で、高い精度で信号光と参照光の光軸方向が一致している。そして、これら信号光と参照光はビームディスプレイサ116,119により分岐、合波されるが、上に述べたビームディスプレイサの性質により、変位を伴う場合も伴わない場合も光軸方向は変化しない。従ってビームディスプレイサ119において信号光と参照光が合波される時点においても、信号光と参照光の光軸方向は高い精度で一致しており、十分な品質の干渉信号を安定的に生成することができ、再生信号が安定化する。
【0040】
また、本方式において、信号光と参照光とを異なる位相関係で合波するための信号光、参照光の分岐は、ビームディスプレイサ116によってなされている。ここでの分岐比はλ/2板115の設定角により容易に調整ができるため、高精度に1:1の分岐比を実現できる。また、ビームディスプレイサ116は水平偏光と垂直偏光を分離するため、無偏光ビームスプリッタで発生するような、分岐光束内の水平偏光と垂直偏光の位相差が原理的に発生しない。従って2種類の合波を行う際に、それぞれの合波における信号光と参照光の間の位相差の誤差が発生しない。これにより再生信号を容易に安定化することができる。このように偏光分離手段を用いて信号光と参照光とを異なる位相関係で合波するための信号光、参照光の分岐が可能であるのは、信号光が参照光が合波されない状態となっていることによる。すなわち、信号光と参照光とが偏光ビームスプリッタ104を通過後に、分離されない状態で平行となっていることが重要な点である。
【0041】
なお、本実施例ではコーナーキューブプリズムにより参照光を反射することで光軸方向を高い精度で確定させたが、別の手段によっても実現可能である。たとえば図7(a)のごとく、直角プリズムを用いてもよい。直角プリズムは2つの反射面が直交関係にあるプリズムであり、コーナーキューブプリズムと同様に入射光に対して位置ずれを伴い、正反対の方向に反射光を出射するため、コーナーキューブプリズムと同様の効果が得られる。また、図7(b)のように、参照光をレンズ702で集光し、ミラー703によって反射する構成としてもよい。この場合、参照光はレンズの中心軸から外れた位置に入射するため、反射光は位置ずれを伴って出射される。ここでも信号光の場合と同様に、ミラー702の傾きに対して反射光束の光軸方向が変化しないため、高精度に光軸方向を確定することができる。
【0042】
また、偏光ビームスプリッタ104を通過した信号光、参照光に対し、異なる位相関係で合波するための分岐と干渉光を発生させる方法は、本実施例の形態によらない。例えば図8のような形態が考えられる。この場合、信号光と参照光はそれぞれλ/2板(軸方向:水平偏光に対して22.5度)801,λ/4板(軸方向:水平偏光方向に対して45度)802を通過し、それぞれ+45度直線偏光、右円偏光となる。これらは偏光ビームスプリッタ803で分岐され、水平偏光である透過光は無偏光ビームスプリッタ806で合波され、干渉光が生成される。また、垂直偏光である反射光に対しては信号光、参照光はいずれもλ/2板(軸方向:水平偏光方向に対して45度)を通過し、水平偏光とされた後に無偏光ビームスプリッタ806により合波され、干渉光が生成される。このように生成された干渉光はレンズ807により集光され、それぞれ検出器125の別々の受光部で検出され、別々の電気信号として出力される。この形態においては、無偏光ビームスプリッタが干渉光の生成に用いられているが、入力される偏光状態はつねに水平偏光状態であるため、分岐比の設計は、従来技術で用いられていた、水平偏光、垂直偏光ともに分岐が1:1であることを要求されるものとは異なり、垂直偏光の入力を考慮しなくて良いため、設計が容易である。また、水平偏光と垂直偏光とで異なる位相差が発生しても、本構成では水平偏光しか入力されないため、干渉光の出力に影響を及ぼさない。
【0043】
また、本実施例ではビームディスプレイサ116やウォラストンプリズム124の直前に波長板が配置されているが、これらは必ずしも必要ではなく、これらの波長板による偏光回転を、偏光分離素子の回転に置き換えることも可能である。具体的には図9のような構成が可能である。この構成におけるビーム位置と偏光状態の軌跡を図9の右側に示す。まず水平偏光状態の信号光と垂直偏光状態の参照光はビームディスプレイサ116に入射する。ここでビームディスプレイサは軸方向が水平偏光に対して45度の方向を向いており、+45度偏光と−45度偏光とを分離し、変位を伴って分離される方向は+45度の方向である。次にこれらの分離された光束のうち、信号光の+45度偏光成分(変位を伴って分離された成分)と参照光の−45度偏光成分(変位を伴わずに分離された成分)それぞれλ/2板(軸方向:水平偏光方向に対して22.5度)901,902を通過し、それぞれ垂直偏光、水平偏光となる。また信号光の−45度偏光成分(変位を伴わずに分離された成分)と参照光の+45度偏光成分(変位を伴って分離された成分)はλ/2板(軸方向:水平偏光方向に対して67.5度)903を通過し、それぞれ水平偏光、垂直偏光とされる。これらの光束はビームディスプレイサ119(軸方向:水平偏光方向)を通過し、信号光と参照光が合波される。これらの合波光束のうち一方はλ/4板(軸方向:水平偏光方向)によって信号光と参照光の間に90°の位相差が付与され、2つの合波光束がウォラストンプリズム124で分離される。ここでウォラストンプリズムは+45度直線偏光と−45度直線偏光を分離するように配置されており、分離方向も±45度の方向となる。こうして合波光束はそれぞれ分離され、干渉光束が生成されて検出器125によって検出される。
【実施例2】
【0044】
本実施例は、信号光と参照光を合波した後に再び分離する別の実施形態である。本実施例の構成図を図10に示す。この場合、信号光は実施例1と同様に光ディスク110で反射して逆の光路を辿って偏光ビームスプリッタ104を透過する。一方参照光は、λ/4板(軸方向:水平偏光方向に対して45度)を通過し、レンズ1002によってミラー1003上に集光され、反射されて正反対の光路を辿り、λ/4板1001を往復で通過することにより偏光が90度回転し、偏光ビームスプリッタ104を反射し、この時点で信号光と偏光が直交した状態で合波される。この合波光束はレンズ1004により集光状態とされた後、ビームディスプレイサ1005により平行に分離される。ここで信号光は水平偏光、参照光は垂直偏光のため、合波された信号光と参照光とが平行に分離される形となり、実施例1において偏光ビームスプリッタ104を通過後の信号光、参照光と同一の状態になる。その後信号光、参照光は実施例1と同じ過程をたどり、検出器125で検出される。
【0045】
本実施例では、信号光、参照光が一旦合波されたために、生成される4つの干渉光に対して、集光するためのレンズとして合波光束に1つ用いるのみで集光が可能である。集光するためのレンズは取付時に位置調整が必要なため、本構成により部品点数と調整点数を減らすことが可能である。また、参照光がミラー1003により正反対の光路を辿る構成のため、光学系を小型に構成することが可能である。
【0046】
本実施例では参照光がレンズ1002で集光されてミラー1003で反射するため、信号光と同様の原理により反射された参照光の光軸方向が高い精度で確定する。従ってビームディスプレイサ1005を通過後の信号光と参照光とは、高い精度で平行であり、実施例1と同様の状態となっている。なお、参照光を高い精度で正反対の方向に反射させる手段は本実施例によらず、例えば図11のごとく、コーナーキューブプリズムで変位を伴って反射した光をビームディスプレイサで入射時の光束と同軸にする構成としてもよい。
【実施例3】
【0047】
本実施例は、信号光と参照光のそれぞれを、互いに異なる位相で干渉させるために分岐する過程と、分岐された信号光と参照光を号はする過程を同時に行う別の実施形態である。本実施例の構成図を図12に示す。本実施例は、信号光と参照光がλ/2板(軸方向:水平偏光方向に対して22.5度)115を通過するまでは実施例1と同一である。これらの信号光と参照光は、偏光ビームスプリッタ1201によって合波され、2つの合波光束が出射される。このときの信号光、参照光の偏光状態は図13に示すとおりである、信号光の水平偏光成分は偏光ビームスプリッタ1201を透過するとともに、参照光の垂直偏光成分と合波される。同様に信号光の垂直偏光成分は偏光ビームスプリッタ1201を透過するとともに、参照光の水平偏光成分と合波される。このように、信号光と参照光とが互いに偏光が直交した状態で合波された光束が2つ出射され、実施例1においてビームディスプレイサ119の直後と同一の状況が実現されている。これらの合波光束は実施例1と同様にして検出される。なお、偏光ビームスプリッタ1201は、図13に示すように、入射される信号光1301,参照光1302の光軸方向と、分離面1303とが平行になるように配置されている。このような配置のため、出射光1304、1305は入射される信号光1301,参照光1302と平行となっており、出射光の部品を共用化すること(本実施例ではウォラストンプリズム、検出器)が容易な構成となっている(通常は図14に示すように、入射光が入射面1401に垂直に入射され、透過光、反射光が別々の方向を向いている構成が一般的である)。
【0048】
本実施例では、単一の偏光ビームスプリッタ1201を用いて信号光、参照光を合波することにより、実施例1におけるビームディスプレイサ116,119,λ/2板117,118を用いた場合と同様の作用を得ている。従って部品点数が削減され、簡略化された光学系構成が実現されている。
【実施例4】
【0049】
本実施例は、信号光と参照光を平行にすることなく、信号光と参照光の光軸方向精度を高く維持して合波する別の実施形態である。図15に本実施例の構成図を示す。信号光は実施例1と同様に偏光ビームスプリッタ104を通過したのち、λ/2板(軸方向:水平偏光方向に対して22.5度)115を通過し、+45度直線偏光状態となる。一方、参照光は実施例1と同様にコーナーキューブプリズム112によって変位を伴って平行に反射され、λ/2板113,λ/4板114により偏光が90度回転した後、λ/2板(軸方向:水平偏光方向に対して22.5度)1500を通過し、−45度直線偏光状態となる。これらの信号光、参照光は偏光ビームスプリッタ1501で合波され、2つの合波光束が生成される。この偏光ビームスプリッタ1501による合波の過程は実施例3における偏光ビームスプリッタ1201による合波と全く同じ過程であり、図13のように信号光と参照光とが互いに直交する偏光状態である合波光束が2つ生成される(但し本実施例では入射光束、合波光束は互いに平行ではない)。合波光束のうち一方はレンズ120,λ/2板(軸方向:水平偏光方向に対して22.5度)122、ウォラストンプリズム1502を通過して2つの干渉光束が生成され、検出器1503でそれぞれの干渉光束が検出される。もう一方の光束も同様に、レンズ123,λ/4板(軸方向:水平偏光方向に対して45度)、ウォラストンプリズム124を通過して2つの干渉光束が生成され、検出器125でそれぞれの干渉光束が検出される。
【0050】
本実施例は上記実施例と異なり、合波される以前に信号光と参照光が平行な状態となっていない。しかし、信号光と参照光は偏光ビームスプリッタ1501に入射する時点において光軸方向が高い精度で確定しており、偏光ビームスプリッタ1501を高い精度で配置することにより高い精度で信号光と参照光の光束を合波時に一致させることができる。より具体的には、偏光ビームスプリッタ104の分離面と偏光ビームスプリッタ1501の分離面を高精度で平行にすればよいが、これはこれらの偏光ビームスプリッタを同一の基板上に実装するなどの手段により、容易に実現可能である。
【実施例5】
【0051】
図16は、本発明の光ディスク装置の一実施例のブロック図を示したものである。光ヘッド1601は実施例1と同じものであり、同一の合波光束から生成される2つの干渉光の検出信号の差分が差動回路1602,1603により出力信号RF1,RF2として出力されている。信号処理回路25の回路ブロックの構成の具体例を図17に示す。光ヘッドからの出力信号RF1,RF2はそれぞれAD変換回路1701,1702によってデジタル化され、それぞれ自乗演算回路1703,1704によってそれぞれの自乗の値が出力されたあと、加算回路1705によって加算される。この加算信号は、平方根演算回路1706によって平方根の値が出力され、これがデジタル再生信号Sとなる。また、AD変換回路1701,1702のサンプリングのタイミングは、加算信号と電圧制御可変周波数発信器(VCO)1707の出力を位相比較器1708によって位相比較し、位相比較器の出力をローパスフィルタ(LPF)1709によって平均化して、VCOの制御入力へとフィードバックすることによって生成している。すなわち、位相比較器1708、VCO1707、LPF1709によって構成されたPLL(Phase-locked loop)回路によって位相制御されたクロック出力(CK)を得て、AD変換のタイミングを制御している。
【0052】
デジタル再生信号Sは、適当なデジタル等化処理の後、復調回路24やアドレス検出回路23に入力され、復号回路26によって、ユーザデータとして、メモリ29やマイクロプロセッサ27に送られる。マイクロプロセッサは、上位装置99からの指示によって、サーボ回路79や自動位置制御手段76を制御し、任意のアドレスに光スポット37を位置づける。マイクロプロセッサ27は上位装置からの指示が再生か記録かによって、レーザドライバ28を制御し、レーザ101を適当なパワー/波形で発光させる。また、ビームエキスパンダ107を光軸方向に動かし、信号品質が最も良くなる位置に固定する。サーボ回路79は、検出器200により得られる焦点ずれ信号、トラックずれ信号に基づき2次元アクチュエータ108を制御し、光ディスク110の記録面に集光され、記録トラックを追従するようにする。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明により、大容量多層高速光ディスクの再生信号が安定に、高品質で検出することが可能となり、大容量ビデオレコーダや、ハードディスクデータバックアップ装置、保存情報アーカイブ装置など、幅広い産業応用が期待できる。
【符号の説明】
【0054】
2 再生信号処理ブロック、23 アドレス検出回路、24 復調回路、25 信号処理回路、26 復号回路、27 マイクロプロセッサ、28 レーザドライバ、29 メモリ、79 サーボ回路、76 自動位置制御手段、77 モータ、37 光スポット、99 上位装置、101 半導体レーザ、102 コリメートレンズ、103 λ/2板、104 偏光ビームスプリッタ、105 特殊偏光ビームスプリッタ、106 λ/4板、107 ビームエキスパンダ、108 2次元アクチュエータ、109 対物レンズ、110 光ディスク、111 シリンドリカルレンズ、200 検出器、112 コーナーキューブプリズム、113 λ/2板、114 λ/4板、115 λ/2板、116,119 ビームディスプレイサ、117,118 λ/2板、120,121 集光レンズ、122 λ/2板、123 λ/4板、124 ウォラストンプリズム、125 検出器、201,202,203,204 受光部、205 入射ビーム、701 直角プリズム、702 レンズ、703 ミラー、801 λ/2板、802 λ/4板、803 偏光ビームスプリッタ、804 λ/2板、805,806 無偏光ビームスプリッタ、807 レンズ、901,902,903 λ/2板、904 λ/4板、1001 λ/4板、1002 レンズ、1003 ミラー、1004 レンズ、1005 ビームディスプレイサ、1101 ビームディスプレイサ、1201 偏光ビームスプリッタ、1301 信号光、1302 参照光、1303 分離面、1304,1305 合波光束、1401 入射面、1501 偏光ビームスプリッタ、1502 ウォラストンプリズム、1503 検出器、1601 光ヘッド、1602,1603 差動回路、1701,1702 AD変換回路、1703,1704 自乗演算回路、1705 加算回路、1706 平方根演算回路、1707 電圧制御発振器、1708 位相比較器、1709 ローパスフィルタ。
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ディスク装置の再生信号の高S/N化に関する。
【背景技術】
【0002】
光ディスクは、青色半導体レーザと、高NA対物レンズを用いるブルーレイディスクの製品化に至って、光学系の分解能としてはほぼ限界に達し、さらなる大容量化に向けては、今後、記録層の多層化が有力となると考えられる。このような多層光ディスクにおいては各記録層からの検出光量がほぼ同等となる必要性から、特定の記録層からの反射率は小さくせざるを得ない。ところが光ディスクは大容量化とともにビデオなどのダビング速度の高速化の必要性から、データ転送速度の高速化も続いており、そのままでは再生信号のS/N比が十分確保できなくなりつつある。したがって今後の記録層の多層化と高速化を同時に進めていくためには、検出信号の高S/N化が必須となる。
【0003】
光ディスクの再生信号の高S/N化に関する技術は、たとえば特許文献1、特許文献2及び特許文献3などに述べられている。特許文献1、特許文献2は光磁気ディスクの再生信号の高S/N化に関して、半導体レーザからの光を光ディスクに照射する前に分岐して、光ディスクに照射しない光を、光ディスクからの反射光と合波して干渉させることにより、微弱な信号の振幅を、光ディスクに照射しない光の光量を大きくすることによって増幅することを狙ったものである。光磁気ディスクの信号検出で従来用いられている偏光ビームスプリッタの透過光と反射光の差動検出では、本質的にはもとの入射偏光成分と光磁気ディスクによる偏光回転によって生じる入射偏光方向と直交する偏光成分を干渉させて、入射偏光で直交偏光成分を増幅して検出を行なうことになっている。したがって、もとの入射偏光成分を増大させれば信号を増大させることができるが、光ディスクに入射させる光強度は、データを消去したり上書きしたりしないようにするために、ある程度以下に抑える必要がある。これに対して上記従来の技術では、予め信号光と干渉させる光を分離しておいて、これをディスクに集光せずに信号光と干渉させ、信号増幅のため干渉させる光の強度を、ディスク表面の光強度と関係なく強くできるようにしているのである。これにより原理的には光強度の許す範囲で、強度を強くすればするほど、光検出器からの光電流を電圧変換するアンプのノイズに比べたS/N比を高めることができる。特許文献3ではフォトクロミック媒体を用いた光ディスクの再生信号の高S/N化に関し、参考文献1、参考文献2と同様に、光ディスクに照射しない光を、光ディスクからの反射光と干渉させることによって信号増幅を狙っている。フォトクロミック媒体を用いた光ディスクについても、信号再生のため入射光強度が高い程媒体の劣化を早めるため、上記光磁気ディスクと同様に記録媒体に照射する光の強度に制限を伴う。
【0004】
特許文献1では、2つの光を干渉させて干渉光強度を検出している。この際、干渉させるディスク反射光の光路長を可変とし、干渉信号振幅の確保を狙っている。特許文献2,特許文献3,特許文献4では干渉光強度検出に加えて、差動検出も行っている。これにより信号に寄与しない各光の強度成分をキャンセルし、信号振幅を2倍にすることで高S/N化を図っている。
【0005】
一般に、2つの光の干渉により得られる干渉信号の振幅は、干渉させる二つの光の間の位相差(光路長差)に依存するため、上記光路長差が用いる光源の波長程度のオーダで変動すると、振幅が変動し不安定になる。これに対し、特許文献4、特許文献5、特許文献6、特許文献7では互いに干渉状態の異なる複数の干渉信号を生成し、それらの演算により信号を生成することで、干渉位相に依存しない増幅信号を出力することを図っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平5−342678号公報
【特許文献2】特開平6−223433号公報
【特許文献3】特開平6−068470号公報
【特許文献4】特開2008−65961号公報
【特許文献5】特開2008―243273号公報
【特許文献6】特開2008―310942号公報
【特許文献7】特開2008―269680号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記のような光の干渉を用いた信号の検出方法において正しく増幅された信号を得るためには、干渉させる2光束の位置や光軸方向を正確に一致させる必要がある。特に光軸方向の精度0.001度オーダと非常に高い精度が要求される。たとえば特許文献4において、光ディスクからの反射光(信号光)と干渉させる光束(参照光)はミラーで反射される構成となっているが、ミラーのわずかな傾きにより光軸ずれが発生し、信号光と参照光との間の光軸ずれが発生する。これに対し特許文献5では、参照光をレンズで集光した後にミラーで反射することで光軸方向の精度を高く保つことができる構成となっている。これは、レンズで集光された光束を反射するミラーに傾きが発生しても、反射光が再びレンズを通過して平行光とされたときに光軸の傾きが発生しないことによる。信号光も同様に対物レンズにより光ディスクに集光されて反射するため、光ディスクの傾きにより光軸の傾きが発生しない。同様に特許文献6では参照光をコーナーキューブプリズムの中心に入射して反射させることで、反射光の光軸方向の精度を高めた構成となっている。すなわち信号光と参照光の光軸方向が高い精度で確定しているため、合波時の光軸方向ずれが発生せず、出力信号を安定に保つことができる。また、特許文献7ではビームディスプレイサ、コーナーキューブプリズム等を用いて参照光を正確に反平行(すなわち光軸方向が180度異なる)に出射させることで参照光の光軸方向の精度を高め、信号光と参照光の間の光軸方向誤差を抑える構造となっている。
【0008】
しかし、上記の特許文献5、6、7は、信号光と参照光が、互いに直交する偏光状態で合波された後に、互いに異なる位相関係である複数の合波光束を生成するため、無偏光ビームスプリッタあるいは無偏光回折格子が用いられている。このような素子は2つの異なる偏光状態(水平偏光、垂直偏光)で異なる位相差を生じ、一般のこの位相差の値を所望の値に制御するのは容易ではない。この性質のため、生成される干渉光における信号光と参照光の位相差に誤差が生じ、その結果として再生信号が不安定になるという課題がある。また、無偏光ビームスプリッタの分岐比(透過光と反射光の強度比)を正確に制御することは一般に難しい。上記従来技術においては偏光状態によらずに分岐比が1:1である必要があるが、実際は誤差が発生し、この点においても再生信号が不安定化するという課題がある。
【0009】
本発明の第1の目的は、2つの光の光軸調整が容易で、信号増幅効果が高く、出力が安定した、干渉型の光ヘッドを提供することにある。
【0010】
本発明の第1の目的は、2つの光の光軸調整が容易で、信号増幅効果が高く、出力が安定した、干渉型の光ディスク装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の第1の目的を達成するために以下の手段を用いた。
【0012】
(1)半導体レーザのなどの光源と、光源から出射した光束を信号光束と参照光束とに分離する偏光ビームスプリッタなどの偏光分離手段と、前記信号光束を光情報記録媒体に集光して照射する対物レンズなどの集光手段と、前記参照光を、前光情報記録媒体から反射して逆方向の軌跡をたどる信号光に対して、位置ずれを伴って平行に出射するコーナーキューブプリズムなどからなる平行光出射手段と、前記信号光と前記参照光の偏光を分離するビームディスプレイサなどの第二の偏光分離手段と、前記偏光分離手段により生成された信号光と参照光のそれぞれを合波し、合波光束を発生するビームディスプレイサなどの合波手段と、前記合波光束より信号光と参照光の干渉光を発生させるウォラストンプリズムなどの干渉光生成手段と、前記干渉光生成手段により生成された干渉光のそれぞれを検出する検出器と、からなることとした。
【0013】
これにより、信号光と参照光の光軸方向を高い精度で確定した状態でこれらの光束をすることが可能となり、安定して増幅信号を得ることが可能となる。
【0014】
(2)(1)において前記平行光出射手段が、前記偏光分離手段から生成された参照光を、位置ずれを伴って平行に出射するコーナーキューブプリズムなどの平行反射手段と、前記偏光分離手段とからなり、前記偏光分離手段は、前記平行反射手段から出射された参照光を反射することとした。
【0015】
これにより、前記偏光分離手段から生成される信号光と参照光が異なる方向に出射される場合でも、容易に分離された状態で信号光と参照光を平行とすることができ、調整点数を減らすことによる光ヘッドの低コスト化に寄与する。
【0016】
(3)(2)において前記平行光反射手段がコーナーキューブプリズムであることとした。
【0017】
これにより、位置ずれを伴って平行に反射される光束を容易に生成することができ、光ヘッドの組立調整が容易になる。
【0018】
(4)(2)において前記平行光反射手段が、前記参照光が中心軸と異なる場所に、中心軸と平行に入射される集光手段と、前記集光手段の焦点位置に配置されたミラーであることとした。
【0019】
これにより、安価な光学部品のみで位置ずれを伴って平行に反射される光束を生成することができ、光ヘッドの低コスト化が可能となる。
【0020】
(5)(1)において前記平行光出射手段が、前記偏光分離手段から生成された参照光を、位置ずれを伴わずに正反対の方向に出射する反射手段と、前記光情報記録媒体から反射された信号光と、前記反射手段から反射された参照光とを合波し合波光束を発生させる前記偏光分離手段と、前記合波光束の信号光と参照光を平行に分離するビームディスプレイサなどの平行光分離手段とからなることとした。
【0021】
これにより、集光レンズなどの光学部品を信号光と参照光が一度合波された合波光束に適用することができ、部品点数と調整点数の削減が可能となって光ディスクの低コスト化に寄与する。
【0022】
(6)(5)において前記平行光分離手段はビームディスプレイサであることとした。
【0023】
これにより、分離後の信号光と参照光を高い精度で平行にすることができ、出力信号の安定化に寄与する。
【0024】
(7)(1)において、前記第二の偏光分離手段と、前記合波手段のそれぞれがビームディスプレイサであることとした。
【0025】
これにより、簡素に高精度な合波を行うことが可能となり、出力信号の安定化に寄与する。
【0026】
(8)(1)において、前記第二の偏光分離手段と、前記合波手段が単一の偏光ビームスプリッタであることとした。
【0027】
これにより、部品点数と調整点数の削減が可能となり、光ヘッドの低コスト化に寄与する。
【0028】
(9)半導体レーザなどの光源と、光源から出射した光束を信号光束と参照光束とに分離する偏光ビームスプリッタなどの偏光分離手段と、前記信号光束を光情報記録媒体に集光して照射する対物レンズなどの集光手段と、前記参照光を、位置ずれを伴って平行に反射するコーナーキューブプリズムなどの平行光反射手段と、前記光情報記録媒体から出射した信号光を、前記平行光反射手段により反射した参照光を合波し、合波光束を生成する偏光ビームスプリッタなどの偏光合波手段と、前記合波光束より信号光と参照光の干渉光を発生させる干渉光生成手段と、前記干渉光生成手段により生成された干渉光のそれぞれを検出する検出器と、からなる構成とした。
【0029】
これにより、(1)と同様に高い精度で信号光と参照光の光軸方向を確定して合波し、干渉光を生成できるため、再生信号の安定化に寄与する。
【0030】
本発明の第2の目的を達成するために以下の手段を用いた。
【0031】
(10)−(18)光ヘッドと、制御部と、信号処理部とを有し、前記光ヘッドは、(1)−(9)に示すものであり、前記制御部は、前記光ヘッド及び前記対物レンズの位置と、前記半導体レーザの発光状態を制御し、前記信号処理部は、前記複数の検出器の出力の一部または全部を入力とする演算を行い、前記演算の出力を再生信号として取得することとした。
【0032】
これにより、(1)−(9)と同様の効果を、光ディスク装置において得ることができる。
【発明の効果】
【0033】
従来の光ディスクよりも安定して高い信号増幅効果が得られる光ヘッドまたは光ディスク装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の光ヘッドの基本的な実施形態の構成図である。
【図2】サーボ信号取得用の検出器の詳細を表す図である。
【図3】コーナーキューブプリズムの概略図である。
【図4】ビームディスプレイサの概略図である。
【図5】レンズで集光してミラーで反射する構成の説明図である。
【図6】偏光ビームスプリッタの傾きによらずに信号光と参照光が平行となることを説明する図である。
【図7】コーナーキューブプリズム以外の、位置ずれを伴って平行に光束を反射する手段の構成図である。
【図8】本発明において位置ずれを伴って平行な状態である信号光と参照光とから干渉光を生成する別の手段を表す構成図である。
【図9】ビームディスプレイサ、ウォラストンプリズムの回転に波長板を省略した場合の構成図と、光束と偏光状態の軌跡を表す図である。
【図10】信号光と参照光を一度合波して再び分離する別の実施形態の構成図である。
【図11】参照光を正確に反対方向に反射する別の手段を表す図である。
【図12】信号光と参照光の偏光分離と合波を同時に行う別の実施形態を表す図である。
【図13】偏光ビームスプリッタにより信号光、参照光の偏光分離と合波が同時に行われることを説明する図である。
【図14】通常の偏光ビームスプリッタへの光束の入射方向、出射方向を表す図である。
【図15】信号光と参照光とを平行にせずに高い精度で合波し、干渉させる別の実施形態の構成図である。
【図16】本発明の光ディスク装置の構成図である。
【図17】本発明の光ディスク装置のうち、信号処理回路の詳細を表すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0035】
以下、図1を用いて本発明の実施形態を説明する。
【0036】
図1は本発明の光ヘッドの基本的な実施形態である。半導体レーザ101からの光をコリメートレンズ102によって平行光として、λ/2板103を透過させて偏光ビームスプリッタ104に入射させる。偏光ビームスプリッタ104は分離面に入射するp偏光(以後、水平偏光と呼ぶ)をほぼ100%透過し、s偏光(以後、垂直偏光と呼ぶ)をほぼ100%反射させる機能を有している。このときλ/2板の光軸のまわりの回転角度の調整することにより、透過光と反射光の強度比を調整することができる。反射する光(以後、信号光と呼ぶ)はまず特殊偏光ビームスプリッタ105に入射する。特殊偏光ビームスプリッタ105は垂直偏光を100%透過し、水平偏光の一部を反射、一部を透過するという性質を持っている。このため入射した光は100%透過し、λ/4板106を透過して円偏光に変換され、球面収差を補正するビームエキスパンダ107を通過し、2次元アクチュエータ108に搭載された対物レンズ109により、光ディスク110上の記録層に集光される。光ディスクからの反射光は同じ光路を戻り、対物レンズ109によって平行光とされ、λ/4板106により最初に入射したときとは90°偏光方向が回転した直線偏光となる。次に特殊偏光ビームスプリッタ105に入射し、上記の性質により一部が透過、一部が反射する。反射光はシリンドリカルレンズ111によって検出器200に入射する。ここで検出器200は図2のように検出器201,202,203,204の4つに分割されており、図2のようにそれぞれの出力信号をA,B,C,Dとおくと、演算A−B−C+Dが焦点ずれ信号(FES)として、演算A−B+C−Dがトラックずれ信号(TES)として、それぞれ2次元アクチュエータ108のボイスコイルモータに電流としてフィードバックされる。一方、特殊偏光ビームスプリッタ105を透過した光は偏光ビームスプリッタ104に入射する。すると偏光が90度回転して水平偏光となっているため、透過する。一方、半導体レーザ101から出射し、偏光ビームスプリッタ104を反射した光(以後、参照光と呼ぶ)はコーナーキューブプリズム112に入射する。コーナーキューブプリズムは図3に示すようなプリズムの一種であり、入射光がプリズム内部で3回反射し、反射光として出射される光束は入射光に対して正反対の向きに進むという性質がある。(但し位置ずれを伴う。)従って反射光は、入射光に対して横方向(光軸と垂直な方向)に変位した状態で入射光と逆方向に進み、偏光ビームスプリッタ104に入射する。ここでコーナーキューブプリズム112内部の反射は全反射条件を満たすため、反射光は入射光と異なる偏光状態で出射してくる。このため往復の光路に挿入されたλ/2板113、λ/4板114によってコーナーキューブプリズム内部の偏光変化を補正し、かつ往路の光に対して復路の光の偏光が90度回転するようにしている。光の波長が405nm、コーナーキューブプリズムの媒質がBK7である場合はλ/2板113の光軸方向を水平偏光に対して58.6度、λ/4板114の光軸方向を水平偏光に対して-17.7度に設定すればよい(最初に入射する光から見て、反時計回りを正とする)。そのためコーナーキューブプリズム112からの反射光は偏光ビームスプリッタ104を反射する。この時点で信号光と参照光は、コーナーキューブプリズム112での反射による光軸位置シフトにより光軸位置が異なるが、後に詳しく説明するように、高い精度で平行となっている。これらの信号光、参照光は、次にλ/2板(光軸方向:水平偏光に対して22.5度)115を通過し、それぞれ+45度直線偏光と−45度直線偏光となって水平偏光成分と垂直偏光成分を等しく有する状態になる。その後これらの光束はビームディスプレイサ116に入射し、水平偏光と垂直偏光が分離され、分離された光束はそれぞれ平行に出射される。ビームディスプレイサは図4に示すような1軸性結晶のブロックであり、光学軸方向と垂直な偏光状態(図4では垂直偏光)はそのまま透過し、左記偏光状態と直交する偏光状態(図4では水平偏光)は、プリズム内で変位を生じ、そのまま透過する光に対して位置ずれを伴って平行に出射されるという性質を持つ。このため信号光、参照光の光束は等しい大きさを持つ水平偏光成分と垂直偏光成分とに分離される。これらの光束のうち、信号光の水平偏光成分と参照光の垂直偏光成分のみλ/2板(軸方向:水平偏光に対して45度)117,118によりそれぞれ垂直偏光状態、水平偏光状態に変換される。ここで上記4つの光束はビームディスプレイサ116と同一であるビームディスプレイサ119に入射する。すると、信号光と参照光が互いに直交した偏光状態で合波された光束が2つ生成される。これらの光束はそれぞれ集光レンズ120,121を通過し、それぞれλ/2板122(軸方向:水平偏光に対して22.5度)、λ/4板(軸方向:水平偏光に対して45度)123を通過し、両光束ともにウォラストンプリズム124により水平偏光成分と垂直偏光成分に分離され(これらの分離された光束が信号光と参照光の干渉によって生じた干渉光である)、それぞれ検出器125の別々の受光部によって検出され、電気信号に変換される。これら電気信号のうち、同一の合波光束から生成された2つの干渉光に対する出力は、図示しない差分回路によって、2つの干渉光の差に対応する電気信号が出力される。したがって、互いに異なる位相関係で合波された2つの合波光束のそれぞれに対応した電気信号の出力が得られる。これらの電気信号(以下、それぞれRF1,RF2と呼ぶ)は、演算回路に入力され、RF1,RF2それぞれの自乗演算値を加算し、平方根演算を行った値が最終的な再生信号として出力される。(但し、上記のような差分回路や演算回路は必ずしも光ヘッドに搭載されている必要はなく、搭載されない場合は同一の機能を光ヘッドを制御する光ディスク装置において実現すればよい。)
【0037】
次に、光の干渉によって増幅信号を得る過程を詳細に説明する。レンズ120,121に入射する合波光束は、いずれも水平偏光成分が参照光、垂直偏光成分が信号光となっており、偏光状態をジョーンズベクトルで表すと、
【数1】
となる。ここでEsは信号光の電場、Erは参照光の電場である。また、このベクトルの第一成分は水平偏光成分を、第二成分は垂直偏光成分を表す。係数の1/√2はビームスプリッタによって2分岐されたことによる。この合波光束のうち一方がλ/2板122を通過したときのジョーンズベクトルは、
【数2】
となる。この光束は水平偏光成分と垂直偏光成分を分離するウォラストンプリズムを通過するため、分離された後の光束の電場はそれぞれ、
【数3】
【数4】
となる。もう一方の合波光束がλ/4板123を通過したときのジョーンズベクトルは、
【数5】
となる。この光束は水平偏光成分と垂直偏光成分を分離するウォラストンプリズムを通過するため、分離された後の光束の電場はそれぞれ
【数6】
【数7】
となる。従って検出器125により得られる4つの電気信号は、
【数8】
【数9】
【数10】
【数11】
となる。ηは検出器の変換効率である。Cosの内部は各干渉光における信号光と参照光の位相差である。これらをそれぞれA1,A2,A3,A4とおくと、差動信号D1,D2はそれぞれ
【数12】
【数13】
と表される。このとき、演算回路では以下の式のように、D1,D2の二乗和(2次式のひとつ)の演算を行うときに干渉位相に依存しない出力が得られる。
【数14】
【0038】
この出力は、信号光の電場が参照光の電場によって増幅された形をしている。したがって光ディスクの反射率が低い等の理由によってEsが小さく、直接信号光を検出しても正しく信号が再生できない場合であっても、信号を増幅して正しく再生することが可能になる。なお、本出力の平方根を再生信号として扱っても良い。これにより信号の線型性が良くなるためにデータの復調が簡潔になる。
【0039】
ここで、本実施例において信号光と参照光の光軸方向を高い精度で一致させることが可能であることを説明する。まず信号光の光軸に着目する。信号光は対物レンズ109で光ディスク110に集光されて反射し、まったく同じ光路を逆に辿る構成となっている。基本的に光束の光軸方向のずれは反射の際の反射物の傾きにより発生するが、上記構成においては光ディスク110の傾きは図5に示すように、光軸方向の変化は原理的に生じない。(図5(a)は傾きがない場合、図5(b)は傾きが発生した場合である)代わりにビームの微小な変位が発生するが、干渉の品質は位置ずれに対しては余裕があり、問題とならない。従って、信号光の光軸方向は極めて高い精度で確定した状態となっている。一方、参照光は、コーナーキューブプリズム112において反射し、偏光ビームスプリッタ104で反射した時点で信号光と平行になる。ここで、コーナーキューブプリズムの入射光と反射光は、入射方向によらずに平行であるという性質がある。従って入射光と反射光は、高い精度で一致している。さらに信号光と参照光はいずれも偏光ビームスプリッタ104で1回反射している構成となっているため、仮に偏光ビームスプリッタ104がわずかに傾いた場合も、図6に示すように信号光と参照光が同じ方向に傾くため、平行の関係が保たれる(図6(a)は傾きがない場合、図6(b)は傾きが発生した場合である)。すなわち、信号光と参照光ともに、偏光ビームスプリッタ104を通過した時点で、高い精度で信号光と参照光の光軸方向が一致している。そして、これら信号光と参照光はビームディスプレイサ116,119により分岐、合波されるが、上に述べたビームディスプレイサの性質により、変位を伴う場合も伴わない場合も光軸方向は変化しない。従ってビームディスプレイサ119において信号光と参照光が合波される時点においても、信号光と参照光の光軸方向は高い精度で一致しており、十分な品質の干渉信号を安定的に生成することができ、再生信号が安定化する。
【0040】
また、本方式において、信号光と参照光とを異なる位相関係で合波するための信号光、参照光の分岐は、ビームディスプレイサ116によってなされている。ここでの分岐比はλ/2板115の設定角により容易に調整ができるため、高精度に1:1の分岐比を実現できる。また、ビームディスプレイサ116は水平偏光と垂直偏光を分離するため、無偏光ビームスプリッタで発生するような、分岐光束内の水平偏光と垂直偏光の位相差が原理的に発生しない。従って2種類の合波を行う際に、それぞれの合波における信号光と参照光の間の位相差の誤差が発生しない。これにより再生信号を容易に安定化することができる。このように偏光分離手段を用いて信号光と参照光とを異なる位相関係で合波するための信号光、参照光の分岐が可能であるのは、信号光が参照光が合波されない状態となっていることによる。すなわち、信号光と参照光とが偏光ビームスプリッタ104を通過後に、分離されない状態で平行となっていることが重要な点である。
【0041】
なお、本実施例ではコーナーキューブプリズムにより参照光を反射することで光軸方向を高い精度で確定させたが、別の手段によっても実現可能である。たとえば図7(a)のごとく、直角プリズムを用いてもよい。直角プリズムは2つの反射面が直交関係にあるプリズムであり、コーナーキューブプリズムと同様に入射光に対して位置ずれを伴い、正反対の方向に反射光を出射するため、コーナーキューブプリズムと同様の効果が得られる。また、図7(b)のように、参照光をレンズ702で集光し、ミラー703によって反射する構成としてもよい。この場合、参照光はレンズの中心軸から外れた位置に入射するため、反射光は位置ずれを伴って出射される。ここでも信号光の場合と同様に、ミラー702の傾きに対して反射光束の光軸方向が変化しないため、高精度に光軸方向を確定することができる。
【0042】
また、偏光ビームスプリッタ104を通過した信号光、参照光に対し、異なる位相関係で合波するための分岐と干渉光を発生させる方法は、本実施例の形態によらない。例えば図8のような形態が考えられる。この場合、信号光と参照光はそれぞれλ/2板(軸方向:水平偏光に対して22.5度)801,λ/4板(軸方向:水平偏光方向に対して45度)802を通過し、それぞれ+45度直線偏光、右円偏光となる。これらは偏光ビームスプリッタ803で分岐され、水平偏光である透過光は無偏光ビームスプリッタ806で合波され、干渉光が生成される。また、垂直偏光である反射光に対しては信号光、参照光はいずれもλ/2板(軸方向:水平偏光方向に対して45度)を通過し、水平偏光とされた後に無偏光ビームスプリッタ806により合波され、干渉光が生成される。このように生成された干渉光はレンズ807により集光され、それぞれ検出器125の別々の受光部で検出され、別々の電気信号として出力される。この形態においては、無偏光ビームスプリッタが干渉光の生成に用いられているが、入力される偏光状態はつねに水平偏光状態であるため、分岐比の設計は、従来技術で用いられていた、水平偏光、垂直偏光ともに分岐が1:1であることを要求されるものとは異なり、垂直偏光の入力を考慮しなくて良いため、設計が容易である。また、水平偏光と垂直偏光とで異なる位相差が発生しても、本構成では水平偏光しか入力されないため、干渉光の出力に影響を及ぼさない。
【0043】
また、本実施例ではビームディスプレイサ116やウォラストンプリズム124の直前に波長板が配置されているが、これらは必ずしも必要ではなく、これらの波長板による偏光回転を、偏光分離素子の回転に置き換えることも可能である。具体的には図9のような構成が可能である。この構成におけるビーム位置と偏光状態の軌跡を図9の右側に示す。まず水平偏光状態の信号光と垂直偏光状態の参照光はビームディスプレイサ116に入射する。ここでビームディスプレイサは軸方向が水平偏光に対して45度の方向を向いており、+45度偏光と−45度偏光とを分離し、変位を伴って分離される方向は+45度の方向である。次にこれらの分離された光束のうち、信号光の+45度偏光成分(変位を伴って分離された成分)と参照光の−45度偏光成分(変位を伴わずに分離された成分)それぞれλ/2板(軸方向:水平偏光方向に対して22.5度)901,902を通過し、それぞれ垂直偏光、水平偏光となる。また信号光の−45度偏光成分(変位を伴わずに分離された成分)と参照光の+45度偏光成分(変位を伴って分離された成分)はλ/2板(軸方向:水平偏光方向に対して67.5度)903を通過し、それぞれ水平偏光、垂直偏光とされる。これらの光束はビームディスプレイサ119(軸方向:水平偏光方向)を通過し、信号光と参照光が合波される。これらの合波光束のうち一方はλ/4板(軸方向:水平偏光方向)によって信号光と参照光の間に90°の位相差が付与され、2つの合波光束がウォラストンプリズム124で分離される。ここでウォラストンプリズムは+45度直線偏光と−45度直線偏光を分離するように配置されており、分離方向も±45度の方向となる。こうして合波光束はそれぞれ分離され、干渉光束が生成されて検出器125によって検出される。
【実施例2】
【0044】
本実施例は、信号光と参照光を合波した後に再び分離する別の実施形態である。本実施例の構成図を図10に示す。この場合、信号光は実施例1と同様に光ディスク110で反射して逆の光路を辿って偏光ビームスプリッタ104を透過する。一方参照光は、λ/4板(軸方向:水平偏光方向に対して45度)を通過し、レンズ1002によってミラー1003上に集光され、反射されて正反対の光路を辿り、λ/4板1001を往復で通過することにより偏光が90度回転し、偏光ビームスプリッタ104を反射し、この時点で信号光と偏光が直交した状態で合波される。この合波光束はレンズ1004により集光状態とされた後、ビームディスプレイサ1005により平行に分離される。ここで信号光は水平偏光、参照光は垂直偏光のため、合波された信号光と参照光とが平行に分離される形となり、実施例1において偏光ビームスプリッタ104を通過後の信号光、参照光と同一の状態になる。その後信号光、参照光は実施例1と同じ過程をたどり、検出器125で検出される。
【0045】
本実施例では、信号光、参照光が一旦合波されたために、生成される4つの干渉光に対して、集光するためのレンズとして合波光束に1つ用いるのみで集光が可能である。集光するためのレンズは取付時に位置調整が必要なため、本構成により部品点数と調整点数を減らすことが可能である。また、参照光がミラー1003により正反対の光路を辿る構成のため、光学系を小型に構成することが可能である。
【0046】
本実施例では参照光がレンズ1002で集光されてミラー1003で反射するため、信号光と同様の原理により反射された参照光の光軸方向が高い精度で確定する。従ってビームディスプレイサ1005を通過後の信号光と参照光とは、高い精度で平行であり、実施例1と同様の状態となっている。なお、参照光を高い精度で正反対の方向に反射させる手段は本実施例によらず、例えば図11のごとく、コーナーキューブプリズムで変位を伴って反射した光をビームディスプレイサで入射時の光束と同軸にする構成としてもよい。
【実施例3】
【0047】
本実施例は、信号光と参照光のそれぞれを、互いに異なる位相で干渉させるために分岐する過程と、分岐された信号光と参照光を号はする過程を同時に行う別の実施形態である。本実施例の構成図を図12に示す。本実施例は、信号光と参照光がλ/2板(軸方向:水平偏光方向に対して22.5度)115を通過するまでは実施例1と同一である。これらの信号光と参照光は、偏光ビームスプリッタ1201によって合波され、2つの合波光束が出射される。このときの信号光、参照光の偏光状態は図13に示すとおりである、信号光の水平偏光成分は偏光ビームスプリッタ1201を透過するとともに、参照光の垂直偏光成分と合波される。同様に信号光の垂直偏光成分は偏光ビームスプリッタ1201を透過するとともに、参照光の水平偏光成分と合波される。このように、信号光と参照光とが互いに偏光が直交した状態で合波された光束が2つ出射され、実施例1においてビームディスプレイサ119の直後と同一の状況が実現されている。これらの合波光束は実施例1と同様にして検出される。なお、偏光ビームスプリッタ1201は、図13に示すように、入射される信号光1301,参照光1302の光軸方向と、分離面1303とが平行になるように配置されている。このような配置のため、出射光1304、1305は入射される信号光1301,参照光1302と平行となっており、出射光の部品を共用化すること(本実施例ではウォラストンプリズム、検出器)が容易な構成となっている(通常は図14に示すように、入射光が入射面1401に垂直に入射され、透過光、反射光が別々の方向を向いている構成が一般的である)。
【0048】
本実施例では、単一の偏光ビームスプリッタ1201を用いて信号光、参照光を合波することにより、実施例1におけるビームディスプレイサ116,119,λ/2板117,118を用いた場合と同様の作用を得ている。従って部品点数が削減され、簡略化された光学系構成が実現されている。
【実施例4】
【0049】
本実施例は、信号光と参照光を平行にすることなく、信号光と参照光の光軸方向精度を高く維持して合波する別の実施形態である。図15に本実施例の構成図を示す。信号光は実施例1と同様に偏光ビームスプリッタ104を通過したのち、λ/2板(軸方向:水平偏光方向に対して22.5度)115を通過し、+45度直線偏光状態となる。一方、参照光は実施例1と同様にコーナーキューブプリズム112によって変位を伴って平行に反射され、λ/2板113,λ/4板114により偏光が90度回転した後、λ/2板(軸方向:水平偏光方向に対して22.5度)1500を通過し、−45度直線偏光状態となる。これらの信号光、参照光は偏光ビームスプリッタ1501で合波され、2つの合波光束が生成される。この偏光ビームスプリッタ1501による合波の過程は実施例3における偏光ビームスプリッタ1201による合波と全く同じ過程であり、図13のように信号光と参照光とが互いに直交する偏光状態である合波光束が2つ生成される(但し本実施例では入射光束、合波光束は互いに平行ではない)。合波光束のうち一方はレンズ120,λ/2板(軸方向:水平偏光方向に対して22.5度)122、ウォラストンプリズム1502を通過して2つの干渉光束が生成され、検出器1503でそれぞれの干渉光束が検出される。もう一方の光束も同様に、レンズ123,λ/4板(軸方向:水平偏光方向に対して45度)、ウォラストンプリズム124を通過して2つの干渉光束が生成され、検出器125でそれぞれの干渉光束が検出される。
【0050】
本実施例は上記実施例と異なり、合波される以前に信号光と参照光が平行な状態となっていない。しかし、信号光と参照光は偏光ビームスプリッタ1501に入射する時点において光軸方向が高い精度で確定しており、偏光ビームスプリッタ1501を高い精度で配置することにより高い精度で信号光と参照光の光束を合波時に一致させることができる。より具体的には、偏光ビームスプリッタ104の分離面と偏光ビームスプリッタ1501の分離面を高精度で平行にすればよいが、これはこれらの偏光ビームスプリッタを同一の基板上に実装するなどの手段により、容易に実現可能である。
【実施例5】
【0051】
図16は、本発明の光ディスク装置の一実施例のブロック図を示したものである。光ヘッド1601は実施例1と同じものであり、同一の合波光束から生成される2つの干渉光の検出信号の差分が差動回路1602,1603により出力信号RF1,RF2として出力されている。信号処理回路25の回路ブロックの構成の具体例を図17に示す。光ヘッドからの出力信号RF1,RF2はそれぞれAD変換回路1701,1702によってデジタル化され、それぞれ自乗演算回路1703,1704によってそれぞれの自乗の値が出力されたあと、加算回路1705によって加算される。この加算信号は、平方根演算回路1706によって平方根の値が出力され、これがデジタル再生信号Sとなる。また、AD変換回路1701,1702のサンプリングのタイミングは、加算信号と電圧制御可変周波数発信器(VCO)1707の出力を位相比較器1708によって位相比較し、位相比較器の出力をローパスフィルタ(LPF)1709によって平均化して、VCOの制御入力へとフィードバックすることによって生成している。すなわち、位相比較器1708、VCO1707、LPF1709によって構成されたPLL(Phase-locked loop)回路によって位相制御されたクロック出力(CK)を得て、AD変換のタイミングを制御している。
【0052】
デジタル再生信号Sは、適当なデジタル等化処理の後、復調回路24やアドレス検出回路23に入力され、復号回路26によって、ユーザデータとして、メモリ29やマイクロプロセッサ27に送られる。マイクロプロセッサは、上位装置99からの指示によって、サーボ回路79や自動位置制御手段76を制御し、任意のアドレスに光スポット37を位置づける。マイクロプロセッサ27は上位装置からの指示が再生か記録かによって、レーザドライバ28を制御し、レーザ101を適当なパワー/波形で発光させる。また、ビームエキスパンダ107を光軸方向に動かし、信号品質が最も良くなる位置に固定する。サーボ回路79は、検出器200により得られる焦点ずれ信号、トラックずれ信号に基づき2次元アクチュエータ108を制御し、光ディスク110の記録面に集光され、記録トラックを追従するようにする。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明により、大容量多層高速光ディスクの再生信号が安定に、高品質で検出することが可能となり、大容量ビデオレコーダや、ハードディスクデータバックアップ装置、保存情報アーカイブ装置など、幅広い産業応用が期待できる。
【符号の説明】
【0054】
2 再生信号処理ブロック、23 アドレス検出回路、24 復調回路、25 信号処理回路、26 復号回路、27 マイクロプロセッサ、28 レーザドライバ、29 メモリ、79 サーボ回路、76 自動位置制御手段、77 モータ、37 光スポット、99 上位装置、101 半導体レーザ、102 コリメートレンズ、103 λ/2板、104 偏光ビームスプリッタ、105 特殊偏光ビームスプリッタ、106 λ/4板、107 ビームエキスパンダ、108 2次元アクチュエータ、109 対物レンズ、110 光ディスク、111 シリンドリカルレンズ、200 検出器、112 コーナーキューブプリズム、113 λ/2板、114 λ/4板、115 λ/2板、116,119 ビームディスプレイサ、117,118 λ/2板、120,121 集光レンズ、122 λ/2板、123 λ/4板、124 ウォラストンプリズム、125 検出器、201,202,203,204 受光部、205 入射ビーム、701 直角プリズム、702 レンズ、703 ミラー、801 λ/2板、802 λ/4板、803 偏光ビームスプリッタ、804 λ/2板、805,806 無偏光ビームスプリッタ、807 レンズ、901,902,903 λ/2板、904 λ/4板、1001 λ/4板、1002 レンズ、1003 ミラー、1004 レンズ、1005 ビームディスプレイサ、1101 ビームディスプレイサ、1201 偏光ビームスプリッタ、1301 信号光、1302 参照光、1303 分離面、1304,1305 合波光束、1401 入射面、1501 偏光ビームスプリッタ、1502 ウォラストンプリズム、1503 検出器、1601 光ヘッド、1602,1603 差動回路、1701,1702 AD変換回路、1703,1704 自乗演算回路、1705 加算回路、1706 平方根演算回路、1707 電圧制御発振器、1708 位相比較器、1709 ローパスフィルタ。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源と、
光源から出射した光束を信号光束と参照光束とに分離する偏光分離手段と、
前記信号光束を光情報記録媒体に集光して照射する集光手段と、
前記参照光を、前光情報記録媒体から反射して逆方向の軌跡をたどる信号光に対して、位置ずれを伴って平行に出射する平行光出射手段と、
前記信号光と前記参照光の偏光を分離する第二の偏光分離手段と、
前記偏光分離手段により生成された信号光と参照光のそれぞれを合波し、合波光束を発生する合波手段と、
前記合波光束より信号光と参照光の干渉光を発生させる干渉光生成手段と、
前記干渉光生成手段により生成された干渉光のそれぞれを検出する検出器と、
からなることを特徴とする光ヘッド。
【請求項2】
前記平行光出射手段が、前記偏光分離手段から生成された参照光を、位置ずれを伴って平行に出射する平行光反射手段と、前記偏光分離手段とからなり、前記偏光分離手段は、前記平行反射手段から出射された参照光を反射することを特徴とする請求項1に記載の光ヘッド。
【請求項3】
前記平行光反射手段がコーナーキューブプリズムであることを特徴とする請求項2に記載の光ヘッド。
【請求項4】
前記平行光反射手段が、前記参照光が中心軸と異なる場所に、中心軸と平行に入射される集光手段と、前記集光手段の焦点位置に配置されたミラーであることを特徴とする請求項2に記載の光ヘッド。
【請求項5】
前記平行光出射手段が、前記偏光分離手段から生成された参照光を、位置ずれを伴わずに正反対の方向に出射する反射手段と、
前記光情報記録媒体から反射された信号光と、前記反射手段から反射された参照光とを合波し合波光束を発生させる前記偏光分離手段と、
前記合波光束の信号光と参照光を平行に分離する平行光分離手段とからなることを特徴とする請求項1に記載の光ヘッド。
【請求項6】
前記平行光分離手段はビームディスプレイサであることを特徴とする請求項5に記載の光ヘッド。
【請求項7】
前記第二の偏光分離手段と、前記合波手段のそれぞれがビームディスプレイサであることを特徴とする、請求項1に記載の光ヘッド。
【請求項8】
前記第二の偏光分離手段と、前記合波手段が単一の偏光ビームスプリッタであること特徴とする、請求項1に記載の光ヘッド。
【請求項9】
光源と、
光源から出射した光束を信号光束と参照光束とに分離する偏光分離手段と、
前記信号光束を光情報記録媒体に集光して照射する集光手段と、
前記参照光を、位置ずれを伴って平行に反射する平行光反射手段と、
前記光情報記録媒体から出射した信号光を、前記平行光反射手段により反射した参照光を合波し、合波光束を生成する偏光合波手段と、
前記合波光束より信号光と参照光の干渉光を発生させる干渉光生成手段と、
前記干渉光生成手段により生成された干渉光のそれぞれを検出する検出器と、
からなることを特徴とする光ヘッド。
【請求項10】
光ヘッドと、制御部と、信号処理部とを有し、
前記光ヘッドは、光源と、
光源から出射した光束を信号光束と参照光束とに分離する偏光分離手段と、
前記信号光束を光情報記録媒体に集光して照射する集光手段と、
前記参照光を、前光情報記録媒体から反射して逆方向の軌跡をたどる信号光に対して、位置ずれを伴って平行に出射する平行光出射手段と、
前記信号光と前記参照光の偏光を分離する第二の偏光分離手段と、
前記偏光分離手段により生成された信号光と参照光のそれぞれを合波し、合波光束を発生する合波手段と、
前記合波光束より信号光と参照光の干渉光を発生させる干渉光生成手段と、
前記干渉光生成手段により生成された干渉光のそれぞれを検出する検出器と、
からなり、
前記制御部は、前記光ヘッド及び前記集光手段の位置と、前記光源の発光状態を制御し、
前記信号処理部は、前記検出器の出力を入力とする演算を行い、前記演算の出力を再生信号として取得することを特徴とする光ディスク装置。
【請求項11】
前記平行光出射手段が、前記変更分離手段から生成された参照光を、位置ずれを伴って平行に出射する平行光反射手段と、前記偏光分離手段とからなり、前記偏光分離手段は、前記平行光反射手段から出射された参照光を反射することを特徴とする請求項10に記載の光ディスク装置。
【請求項12】
前記平行光反射手段がコーナーキューブプリズムであることを特徴とする請求項11に記載の光ディスク装置。
【請求項13】
前記平行光反射手段が、前記参照光が中心軸と異なる場所に、中心軸と平行に入射される集光手段と、前記集光手段の焦点位置に配置されたミラーであることを特徴とする請求項11に記載の光ディスク装置。
【請求項14】
前記平行光出射手段が、前記偏光分離手段から生成された参照光を、位置ずれを伴わずに正反対の方向に出射する反射手段と、
前記光情報記録媒体から反射された信号光と、前記反射手段から反射された参照光とを合波し合波光束を発生させる前記偏光分離手段と、
前記合波光束の信号光と参照光を平行に分離する平行光分離手段とからなることを特徴とする請求項10に記載の光ディスク装置。
【請求項15】
前記平行光分離手段はビームディスプレイサであることを特徴とする請求項14に記載の光ディスク装置。
【請求項16】
前記第二の偏光分離手段と、前記合波手段のそれぞれがビームディスプレイサであることを特徴とする、請求項10に記載の光ディスク装置。
【請求項17】
前記第二の偏光分離手段と、前記合波手段が単一の偏光ビームスプリッタであること特徴とする、請求項10に記載の光ディスク装置。
【請求項18】
光ヘッドと、制御部と、信号処理部とを有し、
前記光ヘッドは、光源と、
光源から出射した光束を信号光束と参照光束とに分離する偏光分離手段と、
前記信号光束を光情報記録媒体に集光して照射する集光手段と、
前記参照光を、位置ずれを伴って平行に反射する平行光反射手段と、
前記光情報記録媒体から出射した信号光を、前記平行光反射手段により反射した参照光を合波し、合波光束を生成する偏光合波手段と、
前記合波光束より信号光と参照光の干渉光を発生させる干渉光生成手段と、
前記干渉光生成手段により生成された干渉光のそれぞれを検出する検出器と、からなり、
前記制御部は、前記光ヘッド及び前記集光手段の位置と、前記光源の発光状態を制御し、
前記信号処理部は、前記検出器の出力を入力とする演算を行い、前記演算の出力を再生信号として取得することを特徴とする光ディスク装置。
【請求項1】
光源と、
光源から出射した光束を信号光束と参照光束とに分離する偏光分離手段と、
前記信号光束を光情報記録媒体に集光して照射する集光手段と、
前記参照光を、前光情報記録媒体から反射して逆方向の軌跡をたどる信号光に対して、位置ずれを伴って平行に出射する平行光出射手段と、
前記信号光と前記参照光の偏光を分離する第二の偏光分離手段と、
前記偏光分離手段により生成された信号光と参照光のそれぞれを合波し、合波光束を発生する合波手段と、
前記合波光束より信号光と参照光の干渉光を発生させる干渉光生成手段と、
前記干渉光生成手段により生成された干渉光のそれぞれを検出する検出器と、
からなることを特徴とする光ヘッド。
【請求項2】
前記平行光出射手段が、前記偏光分離手段から生成された参照光を、位置ずれを伴って平行に出射する平行光反射手段と、前記偏光分離手段とからなり、前記偏光分離手段は、前記平行反射手段から出射された参照光を反射することを特徴とする請求項1に記載の光ヘッド。
【請求項3】
前記平行光反射手段がコーナーキューブプリズムであることを特徴とする請求項2に記載の光ヘッド。
【請求項4】
前記平行光反射手段が、前記参照光が中心軸と異なる場所に、中心軸と平行に入射される集光手段と、前記集光手段の焦点位置に配置されたミラーであることを特徴とする請求項2に記載の光ヘッド。
【請求項5】
前記平行光出射手段が、前記偏光分離手段から生成された参照光を、位置ずれを伴わずに正反対の方向に出射する反射手段と、
前記光情報記録媒体から反射された信号光と、前記反射手段から反射された参照光とを合波し合波光束を発生させる前記偏光分離手段と、
前記合波光束の信号光と参照光を平行に分離する平行光分離手段とからなることを特徴とする請求項1に記載の光ヘッド。
【請求項6】
前記平行光分離手段はビームディスプレイサであることを特徴とする請求項5に記載の光ヘッド。
【請求項7】
前記第二の偏光分離手段と、前記合波手段のそれぞれがビームディスプレイサであることを特徴とする、請求項1に記載の光ヘッド。
【請求項8】
前記第二の偏光分離手段と、前記合波手段が単一の偏光ビームスプリッタであること特徴とする、請求項1に記載の光ヘッド。
【請求項9】
光源と、
光源から出射した光束を信号光束と参照光束とに分離する偏光分離手段と、
前記信号光束を光情報記録媒体に集光して照射する集光手段と、
前記参照光を、位置ずれを伴って平行に反射する平行光反射手段と、
前記光情報記録媒体から出射した信号光を、前記平行光反射手段により反射した参照光を合波し、合波光束を生成する偏光合波手段と、
前記合波光束より信号光と参照光の干渉光を発生させる干渉光生成手段と、
前記干渉光生成手段により生成された干渉光のそれぞれを検出する検出器と、
からなることを特徴とする光ヘッド。
【請求項10】
光ヘッドと、制御部と、信号処理部とを有し、
前記光ヘッドは、光源と、
光源から出射した光束を信号光束と参照光束とに分離する偏光分離手段と、
前記信号光束を光情報記録媒体に集光して照射する集光手段と、
前記参照光を、前光情報記録媒体から反射して逆方向の軌跡をたどる信号光に対して、位置ずれを伴って平行に出射する平行光出射手段と、
前記信号光と前記参照光の偏光を分離する第二の偏光分離手段と、
前記偏光分離手段により生成された信号光と参照光のそれぞれを合波し、合波光束を発生する合波手段と、
前記合波光束より信号光と参照光の干渉光を発生させる干渉光生成手段と、
前記干渉光生成手段により生成された干渉光のそれぞれを検出する検出器と、
からなり、
前記制御部は、前記光ヘッド及び前記集光手段の位置と、前記光源の発光状態を制御し、
前記信号処理部は、前記検出器の出力を入力とする演算を行い、前記演算の出力を再生信号として取得することを特徴とする光ディスク装置。
【請求項11】
前記平行光出射手段が、前記変更分離手段から生成された参照光を、位置ずれを伴って平行に出射する平行光反射手段と、前記偏光分離手段とからなり、前記偏光分離手段は、前記平行光反射手段から出射された参照光を反射することを特徴とする請求項10に記載の光ディスク装置。
【請求項12】
前記平行光反射手段がコーナーキューブプリズムであることを特徴とする請求項11に記載の光ディスク装置。
【請求項13】
前記平行光反射手段が、前記参照光が中心軸と異なる場所に、中心軸と平行に入射される集光手段と、前記集光手段の焦点位置に配置されたミラーであることを特徴とする請求項11に記載の光ディスク装置。
【請求項14】
前記平行光出射手段が、前記偏光分離手段から生成された参照光を、位置ずれを伴わずに正反対の方向に出射する反射手段と、
前記光情報記録媒体から反射された信号光と、前記反射手段から反射された参照光とを合波し合波光束を発生させる前記偏光分離手段と、
前記合波光束の信号光と参照光を平行に分離する平行光分離手段とからなることを特徴とする請求項10に記載の光ディスク装置。
【請求項15】
前記平行光分離手段はビームディスプレイサであることを特徴とする請求項14に記載の光ディスク装置。
【請求項16】
前記第二の偏光分離手段と、前記合波手段のそれぞれがビームディスプレイサであることを特徴とする、請求項10に記載の光ディスク装置。
【請求項17】
前記第二の偏光分離手段と、前記合波手段が単一の偏光ビームスプリッタであること特徴とする、請求項10に記載の光ディスク装置。
【請求項18】
光ヘッドと、制御部と、信号処理部とを有し、
前記光ヘッドは、光源と、
光源から出射した光束を信号光束と参照光束とに分離する偏光分離手段と、
前記信号光束を光情報記録媒体に集光して照射する集光手段と、
前記参照光を、位置ずれを伴って平行に反射する平行光反射手段と、
前記光情報記録媒体から出射した信号光を、前記平行光反射手段により反射した参照光を合波し、合波光束を生成する偏光合波手段と、
前記合波光束より信号光と参照光の干渉光を発生させる干渉光生成手段と、
前記干渉光生成手段により生成された干渉光のそれぞれを検出する検出器と、からなり、
前記制御部は、前記光ヘッド及び前記集光手段の位置と、前記光源の発光状態を制御し、
前記信号処理部は、前記検出器の出力を入力とする演算を行い、前記演算の出力を再生信号として取得することを特徴とする光ディスク装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2012−18709(P2012−18709A)
【公開日】平成24年1月26日(2012.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−154138(P2010−154138)
【出願日】平成22年7月6日(2010.7.6)
【出願人】(509189444)日立コンシューマエレクトロニクス株式会社 (998)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年1月26日(2012.1.26)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年7月6日(2010.7.6)
【出願人】(509189444)日立コンシューマエレクトロニクス株式会社 (998)
【Fターム(参考)】
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