説明

光メディア用スパッタリングターゲット、その製造方法、ならびに、光メディア、およびその製造方法

【課題】Agを主成分とし、表面平滑性に優れ、ノイズやジッターを十分に抑制できる光メディアを実現可能な光メディア用スパッタリングターゲット、その製造方法、及び、光メディアとその製造方法を提供する。
【解決手段】Ta及びNbからなる群より選択される1又は2種の元素を0.1〜2at%、及び、Alを0.1〜1at%含み、残部がAg及び不可避的不純物である光メディア用スパッタリングターゲット、及び、基板上に上述の組成の反射膜を備える光メディアである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ディスク等の光メディア用スパッタリングターゲット、その製造方法、及び、光メディアとその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
スパッタリングターゲットを用いたスパッタリングにより反射層を基板上に形成し、この反射層上に光記録層や、読取や書込み時に光が透過する透明カバー層等をさらに形成することにより製造される光ディスク(例えば、BD(ブルーレイ・ディスク)−R、BD−RE、BD−ROM等)、光カード等の光メディアが知られている。このような光メディアでは、反射層のスパッタ成膜終了面側の表面平滑性が高くないと、レーザビームが照射されたとき良好な反射が得られず、反射膜上に形成される光記録層や透明カバー層等の構造に悪影響を及ぼし、例えば、ジッター特性等の特性が低下する。
【0003】
そして、光メディア用の反射層を製造できるスパッタリングターゲットとして、特許文献1〜2には、Agを主成分とする合金が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−015464号公報
【特許文献2】特表2002−518596号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献2に記載の、Agを主成分とし、貴金属を副成分とする合金で作製されたスパッタリングターゲットを用いて成膜された反射膜は、反射層の成膜終了面側の表面平滑性が十分でなく、したがって、光メディアのジッターの抑制が十分でない。また、特許文献1に記載の、Agを主成分とし、希土類金属を加えた合金を用いて、成膜面の表面平滑性の良好な膜が得られるスパッタリングターゲットを作製するには、構成する希土類金属粒子表面を酸化させないために特殊な製法を採用する必要があり、加えて希土類金属を添加するのでターゲットコストを抑えることが難しい。
【0006】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、表面平滑性に優れジッターを十分に抑制できる光メディアを実現可能な、安価な光メディア用スパッタリングターゲット、その製造方法、及び、光メディアとその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者等が鋭意検討したところ、Ta及びNbからなる群より選択される1又は2種の元素を0.1〜2at%、及び、Alを0.1〜1at%含み、残部がAg及び不可避的不純物であるスパッタリングターゲットを用いて形成した反射層は表面平滑性に優れ、光メディアのジッターを十分に抑制できることを見出した。また、希土類金属を必要としないのでスパッタリングターゲットの製造も低コストに容易に行うことができる。
【0008】
本発明に係る、光メディア用スパッタリングターゲットは、Ta及びNbからなる群より選択される1又は2種の元素を0.1〜2at%、及び、Alを0.1〜1at%含み、残部がAg及び不可避的不純物である組成を有する。
【0009】
また、本発明に係る光メディアは、基板と、Ta及びNbからなる群より選択される1又は2種の元素を0.1〜2at%、及び、Alを0.1〜1at%含み、残部がAg及び不可避的不純物である組成を有し上記基板上に設けられた反射層と、を備える。
【0010】
また、本発明にかかる光メディアの製造方法は、Ta及びNbからなる群より選択される1又は2種の元素を0.1〜2at%、及び、Alを0.1〜1at%含み、残部がAg及び不可避的不純物であるメディア用スパッタリングターゲットを用いて、反射層を成膜する工程を備える。
【0011】
さらに、本発明にかかる光メディア用スパッタリングターゲットの製造方法は、Agを主成分とし、Ta及びNbからなる群より選択される1又は2種の元素を0.1〜2at%、及び、Alを0.1〜1at%含み、残部がAg及び不可避的不純物である組成を有する原料粉体を焼成する工程を備える。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、Agを主成分とし、表面平滑性に優れ、ジッターを十分に抑制できる安価な光メディア等が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1は、実施形態に係る光ディスク200の断面図である。
【図2】図2は、実施形態に係る光ディスク100の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、図面の説明において、同一または相当要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0015】
(光メディア用スパッタリングターゲット)
本実施形態に係る光メディア用スパッタリングターゲットは、Ta及びNbからなる群より選択される1又は2種の元素を0.1〜2at%、及び、Alを0.1〜1at%含み、残部がAg及び不可避的不純物である組成を有する。
【0016】
特に、反射膜の膜厚の最適化(生産性、信頼性等)の観点から、Ta及びNbからなる群より選択される1又は2種の元素を0.1〜1at%含むことが好ましく、0.2〜0.7at%含むことがより好ましく、0.2〜0.5at%含むことがさらに好ましい。
【0017】
また、反射膜表面の平滑性の観点から、Alを0.2〜0.7at%含むことが好ましく、0.3〜0.5at%含むことがより好ましい。
【0018】
このターゲットは、Ta、Nb、Al、及び、Ag以外に、不可避的不純物を含む。不可避的不純物としては、例えば、Si、Fe、Cu、O(酸素)等が挙げられ、それぞれ、100atppm程度まで許容することができる。
【0019】
Nbを含まずにTaを含む場合、Taを含まずにNbを含む場合、及び、Nb及びTaを両方含む場合のいずれの場合であっても、反射層の平滑性に特に大きな違いは出難いが、TaよりもNbが安価であることから、Taに比べてNbを多く含むことが好ましく、Taを含まずにNbを含むことがより好ましい。また熱伝導率の制御が必要な場合、NbよりもTaの方が熱伝導率は高いことから、NbとTaの配合比で調整することができる。
【0020】
ターゲットの形状や大きさ等は特に限定されず、例えば、直径127〜300mm程度の円板とすることができる。
【0021】
ターゲット中における金属組織の形態は特に限定されないが、ターゲットを構成する結晶粒子等の平均粒径は、100μm以下であることが好ましい。
【0022】
(光メディア用スパッタリングターゲットの製造方法について)
続いて、上述の光メディア用スパッタリングターゲットの製造方法の一例について説明する。
【0023】
上述の元素組成を満たす原料粉体を用意する。例えば、Ag粉、Al粉、Ta粉、Nb粉、TaNb粉等を上述の組成を満たすように混合した異種の金属粉の混合物を原料粉体として用いることができる。製造工程を簡素化する意味では、それぞれ構成金属単独の原料粉体を用いることが好ましい。また、上述の元素組成となるように混合した金属粉の混合物を一度溶融して合金とした後、アトマイズ法により粉体にした、例えば、AgNbAlアトマイズ合金粉のような合金粉を単独で原料粉体としてもよい。
【0024】
原料粉体の粒度は特に限定されないが、各原料粉体共に、320メッシュ(45μm)以下であることが好ましく、純度も99.9wt%以上であることが好ましい。
Ag粉としては、電界銀粉等を利用できる。
Al粉、Ta粉、Nb粉、AgNbAl粉等としては、不活性雰囲気でアトマイズされた溶融アトマイズ粉等を利用できる。
【0025】
原料粉体の混合は、乾式混合を用いることが好ましい。
【0026】
続いて、真空中または不活性ガス雰囲気中で高温高圧をかけて原料粉体を焼結する。焼結条件としては、例えば、圧力は、100〜500kgf/cm、温度は、400〜800℃である。なお、合金粉を単独で焼結すると、異種の金属粉の混合物を焼結する場合に比べて生産性が安定する。なお、熱間静水圧プレス(HIP)による焼結をすることも可能である。
【0027】
続いて、得られた焼結体を所定の大きさに切断等の機械加工をして、スパッタリングターゲットが完成する。
【0028】
なお、本発明のスパッタリングターゲットは、焼結法を用いなくても製造することは可能である。例えば、上述の原料粉体を、真空中又は不活性ガス雰囲気中で溶融し、冷却し、その後必要に応じて鍛造や圧延をして製造してもよい。ただ、この場合ターゲットを構成する結晶粒子等の平均粒径が1000μm以上となることが多く、スパッタリングレートの低下やスパッタリング時のパーティクルが発生する場合がある。
【0029】
また、本発明のスパッタリングターゲットは、必要に応じて、機械加工後に表面のウェットエッチング等を行なってもよく、これにより、プリスパッタ時間を短縮できる。なお、本発明のスパッタリングターゲットは、熱間静水圧プレス(HIP)や、機械加工後のウェットエッチングをしなくても、実施可能である。
【0030】
(光ディスク200)
続いて、光メディア用スパッタリングターゲットを用いて製造される光メディアの一例として光ディスク200の製造方法について説明する。
【0031】
図1に示す光ディスク200は、いわゆる、BD−RやBD−REといわれる書き込みが可能な光ディスクであり、例えば、外径が約120mm、厚みが約1.2mmである円盤状をなし、支持基板(基板)10と、第一反射層20Aと、保護層22と、記録層24と、保護層22と、中間層30と、第二反射層20Bと、保護層22と、記録層24と、保護層22と、透明カバー層40と、トップコート層50と、をこの順に備えて構成されているものである。
【0032】
本実施態様にかかる光ディスク200は、波長λが380nm〜450nm、好ましくは約405nmであるレーザビームLBを支持基板10とは反対側のトップコート層50側から入射することによってデータの再生や、記録を行うことが可能な光ディスクである。
【0033】
具体的には、記録時には、レーザビームLBの焦点を記録層24にフォーカスすることにより、熱により、記録層24に対してアブレーション、相変化、分解等を発生させ、これにより記録マークが形成できる。そして、記録層において記録マーク部分とそれ以外の部分(ブランク領域)とではレーザビームLBに対する反射率が大きく異なるため、これを利用してデータの読取を行うことができる。
【0034】
支持基板10は、光ディスク200に求められる厚み(約1.2mm)を確保するために用いられる円盤状の基板であり、その一方の面には、その中心部近傍から外縁部に向けて、レーザビームLBをガイドしたり記録用の凹凸の下地となるためのグルーブG及びランドLが螺旋状に形成されている。支持基板10の材料としては種々の材料を用いることが可能である。例えば、ガラス、セラミックス、あるいは樹脂を用いることができる。これらのうち、成形の容易性の観点から樹脂が好ましい。このような樹脂としてはポリカーボネート樹脂、オレフィン樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、シリコーン樹脂、フッ素系樹脂、ABS樹脂、ウレタン樹脂等が挙げられる。中でも、加工性などの点からポリカーボネート樹脂やオレフィン樹脂が特に好ましい。
【0035】
第一反射層20Aは、トップコート層50の表面である光入射面SSから入射されるレーザビームLBを反射し、再びトップコート層50の表面である光入射面SSから出射させる役割を果たすとともに、レーザビームLBによる熱を速やかに放熱する役割を果たす。これにより、レーザビームLBに対する光反射率が高められるため再生特性を向上させることができる。反射層20Aの組成は、上述のスパッタリングターゲットに対応する組成である。
【0036】
反射層20Aの厚さとしては、5〜300nmに設定することが好ましく、20〜200nmに設定することが特に好ましい。これは、反射層20Aの厚さが5nm未満であると成膜終了面Sの表面平滑性を十分に得ることが困難となる場合がある一方、反射層20Aの厚さが300nm超であると、成膜終了面Sの表面平滑性が低くなるばかりでなく、成膜時間が長くなり生産性が低下してしまうからであり、反射層20Aの厚さを5〜300nm、特に20〜200nmに設定すれば、表面平滑性を十分に得ることができるとともに、生産性の低下を防止することが可能となる。
【0037】
保護層22は、これらの間に設けられる記録層24を物理的及び/又は化学的に保護する役割を果たし、記録層24はこれら保護層22間に挟持されることによって、光記録後、長期間にわたって記録情報の劣化が効果的に防止される。保護層22の構成材料としては、例えば、透明な誘電体を用いることができる。また、保護層22は、記録の前後における光学特性の差を拡大する役割をも果たし、これを容易に達成するためには、使用されるレーザビームLBの波長領域、すなわち、380nm〜450nm、特に約405nmの波長領域において高い屈折率(n)を有する材料を選択することが好ましい。さらに、レーザビームLBを照射した場合に、保護層22に吸収されるエネルギーが大きいと記録感度が低下することから、これを防止するためには、380nm〜450nm、特に約405nmの波長領域において低い消衰係数(k)を有する材料を選択することが好ましい。なお、記録層24の両側に保護層22がそれぞれ配置されているが、記録層24のいずれか一方側のみに配置されていてもよく、記録層24のいずれの面にも保護層が配置されていなくても実施は可能である。
【0038】
例えば、保護層22の材料として、例えば、酸化物、窒化物、硫化物、炭化物、フッ化物又はこれらの混合物を用いることができる。
【0039】
例えば、酸化物としては、タンタル(Ta),アルミニウム(Al),シリコン(Si),チタン(Ti),ゲルマニウム(Ge),ニオブ(Nb),錫(Sn),セリウム(Ce),イットリウム(Y)又はランタン(La)の酸化物、すなわち、Ta,Al,SiO,TiO,GeO,Nb,SnO,CeO,Y又はLaが挙げられ、窒化物としてはアルミニウム(Al),シリコン(Si)又はゲルマニウム(Ge)の窒化物、すなわち、AlN,Si又はGeNが挙げられ、硫化物としては亜鉛(Zn)の硫化物、すなわちZnSが挙げられ、炭化物としてはシリコン(Si)の炭化物、すなわちSiCが挙げられ、フッ化物としてはマグネシウム(Mg)のフッ化物、すなわちMgFが挙げられる。また、これらの混合物としては、SiAlON(SiO,Al,Si及びAlNの混合物)、LaSiON(La,SiO及びSiの混合物)等が挙げられる。
【0040】
尚、記録層24を挟む一対の保護層22、22は、互いに同じ材料で構成されてもよいが、異なる材料で構成されてもよい。また、一対の保護層22、22の少なくとも一方が、複数の誘電体層からなる多層構造であっても構わない。
【0041】
また、保護層22の層厚は特に限定されないが、使用されるレーザビームLBの波長が380nm〜450nmの青色波長領域であることを考慮すれば、3〜200nmであることが好ましい。
【0042】
記録層24は記録マークが形成されうる層であり、無機系、有機系等種々のものが採用できる。例えば、無機系では、各種金属、半金属又は合金層の単層膜、複数の金属、半金属又は合金層を積層した積層膜(例えば、Si層と、銅合金層との積層構造)が挙げられ、有機系では、アゾ色素等の有機色素層等が挙げられる。
【0043】
記録層24の層厚は、特に限定されないが、例えば、2〜40nmに設定することが好ましく、2〜20nmであることがより好ましく、2〜15nmであることがさらに好ましい。
【0044】
中間層30は、レーザビームLBに対して透明な層である。中間層の材料も特に限定されないが、例えば、樹脂材料が挙げられ、特に、UV硬化樹脂が挙げられる。中間層30の厚みは、平均20〜30μm程度であることが好ましい。中間層30の表面にも、支持基板10と同様に、グルーブGとランドLとが形成されている。
【0045】
反射層20Bの組成も、反射層20Aと同様に上述のスパッタリングターゲットに対応する組成である。反射層20Bは、レーザビームLBの一部を透過させる必要があるので、反射層20Aよりも薄いことが好ましい。
【0046】
反射層20Bと透明カバー層40との間に設けられる、保護層22、記録層24、及び、保護層22は前述と同様である。
【0047】
透明カバー層40は、レーザビームLBに対して透明な層である。透明カバー層40の材料としては、例えば、紫外線硬化型アクリル樹脂等の樹脂材料が挙げられる。厚みは、例えば、50〜100μm程度である。
【0048】
トップコート層50は、光ディスク200の表面の保護を行うものである。トップコート層50の材料としては、例えば、紫外線硬化型アクリル樹脂等を利用できる。
【0049】
本実施態様にかかる光ディスク200は、光入射面SSとは反対側から順次成膜が行われる次世代型の光ディスクであるため、CDやDVDのように光入射面側から順次成膜が行われるタイプの光ディスクに比べ、各反射層20A、20Bの光入射面SS側における表面20AS,20BSが粗くなりやすい傾向にある。これは、CDやDVDのように光入射面側から順次成膜が行われるタイプの光ディスクでは、各反射層の表面のうち成膜開始面が光入射面側に位置するため、その表面性は下地の表面性とほぼ一致するが、本実施態様にかかる光ディスク200のように、光入射面SSとは反対側から順次成膜が行われる次世代型の光ディスクでは、反射層20A,20Bの表面のうち成膜終了面となる表面20AS,20BSが光入射面SS側に位置するため、成膜過程における結晶成長等により表面性が低下するからである。したがって、反射層20A,20Bの材料としては、成膜終了面Sにおける表面平滑性に優れ、ジッターを十分に抑制できる材料を選択する必要がある。上述の組成のスパッタリングターゲットを用いてスパッタリング法により形成される反射層20A,20Bは、これらの要件を満たすものである。また、この反射層20A,20Bは、波長λが380nm〜450nmのレーザビームに対して十分に高い反射率を有しているとともに、適切な熱伝導率を有していることから、レーザビームLBに対する光反射率も十分であるとともに、レーザビームLBによる熱を速やかに放熱することも可能である。
【0050】
(光ディスク100)
続いて、光ディスク100について説明する。図2に示す光ディスク100は、いわゆる、BD−ROMと言われる、書込みができない読み取り専用の光ディスクである。ここでは、光ディスク200と異なる点のみ説明する。
この第2の光ディスク100は、反射層20Aと中間層30との間に、保護層22、記録層24、保護層22を有しておらず、また、反射層20Bと透明カバー層40との間にも、保護層22、記録層24、保護層22が有していない。このような光ディスク100でも上述と同様の効果を奏する。
【0051】
なお、上記の光ディスク100、200は、反射層20A,20Bを2つ有する、いわゆる2層記録型のものであるが、反射層を1つのみ有する1層記録型のものや、反射層を3つ以上有する多層記録型のものでも構わない。
【0052】
これらの光ディスクは、上述のスパッタリングターゲットを用いて反射層20A,20Bを形成する以外は、公知の方法により製造方法できる。また、スパッタリング方法も特に限定されない。好適なスパッタリング条件は、DCスパッタリング法である。
【0053】
本発明は上記実施形態に限られずさまざまな変形態様が可能である。例えば、上記実施形態では光メディアとしてBDを例示しているが、BD以外の光ディスクでもよい。また、上記実施形態では光メディアとして円板形状の光ディスクを例示しているが、光メディアの平面形状は特に限定されず、例えば、矩形形状をした光カードでもよい。
【実施例】
【0054】
(実施例1〜6、比較例1〜7)
320メッシュ(粒径45μm)以下であり、かつ、純度99.9質量%の、Al粉、Ag粉、Ta粉、Nb粉、及び、Cr粉、さらに、平均粒径500μmであり純度99.9質量%のNd粉を用い、各粉を表1に示す原子組成となるように秤量し、乾式で混合し、各実施例及び比較例について混合粉体をそれぞれ得た。そして、各混合粉体を、真空中で焼結した。焼結条件は、圧力200kgf/cm、温度プロファイルを、720℃まで30分で急速加熱し、720℃に30分維持し、その後、660℃に下げて、660℃に30分維持し、その後、室温まで徐冷することとした。
【0055】
そして、得られた焼結体を、旋盤により200mmφ、厚さ8mmに成形してそれぞれスパッタリング用ターゲットを得た。
【0056】
このスパッタリングターゲットを用いて、厚さ1.1mm、直径120mmのランド及びグルーブが形成されたポリカーボネート製支持基板上に、DCマグネトロンスパッタにより、80nmの厚さで反射層20Aを形成し、その後、一層目の(支持基板10側の)保護層22としてRFマグネトロンスパッタにより、CeO−Al(80:20mol%)を6nm、およびZnS−SiO(50:50mol%)を8nm積層し、続いて記録層24としてDCマグネトロンスパッタによりSbTeGe(75:19:6at%)を12nm、更に二層目の(中間層30側の)保護層22としてRFマグネトロンスパッタにZnS−SiO(50:50mol%)を20nm、およびDCマグネトロン反応性スパッタによりAlNを30nm成膜し、アクリル系紫外線硬化性樹脂により透明カバー層を形成して、1層型のBD−REディスクを得た。
【0057】
各実施例及び比較例について以下の評価を行なった。
【0058】
(面粗さ)
保護層22、記録層24形成前のディスク鏡面部分の反射膜20Aについて、AFMにて2μmの領域について表面粗さRaを測定した。Ra<0.5nmを○、0.5≦Ra≦0.8nmを△、Ra>0.8nmを×とした。
【0059】
(ジッター)
光ディスク評価装置(商品名:DDU1000、パルステック工業社製:対物レンズ開口数=0.85、レーザ波長=405nm)を用い、9.84m/sec(2x相当)の線速度でBD−REディスクを回転させながら、記録パワー=6.2mW、消去パワー=3.7mWでマルチパルス発光パターンをディスクに照射して信号を記録し、その記録信号について、Time Interval Analyzer(商品名:TA−520、横河電機社製)を用いてジッターを測定した。ジッター6.8%未満を○、6.8%以上7.0%未満を△、7.0%以上を×とした。
【0060】
(保存試験)
80℃、80%RHの環境に1000時間保存した後、再びジッターを測定し、その変化量(増加分)が0.5%未満を○、0.5%以上1.0%未満を △、1.0%以上を ×とした。
【0061】
結果を表1に示す。
【0062】
【表1】

【0063】
本発明のターゲットによる反射層は、表面平滑性が十分であり、ジッターの抑制が十分であることが確認された。
【符号の説明】
【0064】
10…支持基板(基板)、20A,20B…反射層、100、200…光ディスク。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
Ta及びNbからなる群より選択される1又は2種の元素を0.1〜2at%、及び、Alを0.1〜1at%含み、残部がAg及び不可避的不純物である光メディア用スパッタリングターゲット。
【請求項2】
基板と、
Ta及びNbからなる群より選択される1又は2種の元素を0.1〜2at%、及び、Alを0.1〜1at%含み、残部がAg及び不可避的不純物である組成を有し前記基板上に設けられた反射層と、
を備える光メディア。
【請求項3】
前記反射層の成膜終了面側から読取用又は書込用のレーザビームが照射される請求項2に記載の光メディア。
【請求項4】
Ta及びNbからなる群より選択される1又は2種の元素を0.1〜2at%、及び、Alを0.1〜1at%含み、残部がAg及び不可避的不純物であるメディア用スパッタリングターゲットを用いて、反射層を成膜する工程を備える光メディアの製造方法。
【請求項5】
Ta及びNbからなる群より選択される1又は2種の元素を0.1〜2at%、及び、Alを0.1〜1at%含み、残部がAg及び不可避的不純物である組成を有する原料粉体を焼結する工程を備える光メディア用スパッタリングターゲットの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−244600(P2010−244600A)
【公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−90163(P2009−90163)
【出願日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【出願人】(000003067)TDK株式会社 (7,238)
【Fターム(参考)】