説明

光モジュール、光送受信器及び光送受信器製造方法

【課題】放熱経路の熱抵抗を小さくすることで良好な放熱特性を有する光モジュール等を提供する。
【解決手段】TO−CAN型パッケージ30は、光軸をレセプタクル60の中心軸に合わせた状態でレセプタクル60に結合され、レセプタクル60は筐体20に固定されている。第1金属ブロック36は、中央の穴にTO−CAN型パッケージ30のステムを嵌め込む。コの字形の第2金属ブロック37の互いに平行な面の間に第1金属ブロック36を嵌め込み、第1金属ブロック36と第2金属ブロック37とを接触させた状態で、第2金属ブロック37を筐体20に近接させる。第2金属ブロック37と筐体20は、接着剤38で固定する。この構成により、TO−CAN型パッケージ30のステムから、第1金属ブロック36、第2金属ブロック37、接着剤38を経由して筐体20に繋がる放熱経路が確保されることとなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光モジュール、光送受信器及び光送受信器製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の半導体光素子を搭載した光モジュールには、小型化、低コスト化を実現するためにTO−CAN(Transistor Outline Can)型パッケージを採用することがある。
【0003】
光モジュールに搭載した半導体光素子を駆動するために電流を印加するが、この電流印加により発熱し光モジュールが高温化する。高温環境下において、半導体光素子周辺回路の動作が異常化することもあるため、光モジュールから放熱する必要がある。
【0004】
TO−CAN型パッケージにおける放熱経路としては、TO−CAN型パッケージの基台であるステムの側面から光モジュールを格納する筐体などに放熱する経路が一般的である(特許文献1、2参照)。このときステム側面と筐体との間には放熱シートや熱伝導性グリスを挟むことによって、光モジュールから筐体への放熱経路を確保していた。
【0005】
特許文献1には、ステムの一部を平坦にし、ステムと放熱シートや熱伝導性グリスとの接触面積を大きくすることによって、放熱性能を向上させる方法が記載されている。
【0006】
また、特許文献2には、ステムの側面に伝熱部材を取り付け、その伝熱部材を筐体へ接触させることによって放熱させる構造が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2011−100785号公報
【特許文献2】特開2007−273497号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
TO−CAN型パッケージ内から出力する光を、伝送用光ファイバに入力させるため、又は、伝送用光ファイバを伝送してきた光を、TO−CAN型パッケージ内に入力させるために、TO−CAN型パッケージを用いた光モジュールの光入出力部として、レセプタクルを用いる場合がある。レセプタクルには通常固定用のつばが設けられているため、TO−CAN型パッケージとレセプタクルから構成される光モジュールを筐体に対して固定する際には、レセプタクル部分を筐体に固定することが多い。
【0009】
ここで、TO−CAN型パッケージに入出力する光の光軸、及び、レセプタクル内のフェルールの中心軸は、部品寸法精度や半導体光素子の実装位置等によって異なる。このため、TO−CAN型パッケージとレセプタクルとの結合時には、実際に光を入出力して、光軸調整を行い、最適となる箇所で互いを固定する。このようにして固定されたレセプタクルに対するTO−CAN型パッケージの位置は、モジュールによってばらつきがあるため、レセプタクルを光送受信器等の筐体に固定したとき、TO−CAN型パッケージと筐体との距離にもばらつきが生じる。
【0010】
このような光モジュールに特許文献1又は2に記載のTO−CAN型パッケージを使用した場合、TO−CAN型パッケージのステムや伝熱部材から筐体までの距離にもばらつきが生じる。ステムや伝熱部材から筐体までの距離が長い場合には、その距離を放熱シートや熱伝導性グリスで埋めることになるが、放熱シートや熱伝導性グリスは、ステムを構成する金属等と比較して熱伝導率が低いため、ステムや伝熱部材から筐体までの距離が長くなると熱抵抗が高くなってしまい、十分な放熱ができなくなってしまう。
【0011】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、放熱経路の熱抵抗を小さくすることで良好な放熱特性を有する光モジュール等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するため、本発明の光モジュールは、
光素子を実装し、前記光素子から出力される光、又は、前記光素子に入力される光の光軸に対して略垂直の放熱板を備える光素子パッケージと、
前記放熱板の外周と同形状の穴を有し、前記光素子パッケージの前記放熱板を前記穴に挿入することにより、前記光素子パッケージに接触する第1の放熱ブロックと、
前記第1の放熱ブロックを含む放熱体を、前記光素子パッケージが固定されている筐体に近接させる放熱体近接手段と、
を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、放熱経路の熱抵抗を小さくすることで良好な放熱特性を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】実施の形態1に係る光送受信器を示す図である。
【図2】(a)TO−CAN型パッケージのパッケージキャップを外した状態を示す図である。(b)TO−CAN型パッケージのパッケージキャップを被せた状態を示す図である。
【図3】光モジュールの送受信光の光軸を説明するための図である。
【図4】(a)実施の形態1に係る光モジュールを側面から見た図である。(b)実施の形態1に係る光モジュールを底面から見た図である。
【図5】(a)実施の形態2に係る光モジュールを側面から見た図である。(b)実施の形態2に係る光モジュールを底面から見た図である。
【図6】(a)実施の形態3に係る光モジュールを側面から見た図である。(b)実施の形態3に係る光モジュールを底面から見た図である。
【図7】実施の形態4に係る光モジュールを側面から見た図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
実施の形態1.
本発明の実施の形態1について図面を参照して詳細に説明する。
【0016】
本実施の形態に係る光送受信器1は、図1に示すように、光モジュール10と、光モジュール10及び制御回路等を格納する筐体20を備える。光モジュール10は、TO−CAN(Transistor Outline Can)型パッケージ30と、第1金属ブロック36、第2金属ブロック37と、モジュールボディ40と、パッケージホルダ50と、レセプタクル60と、を有する。
【0017】
TO−CAN型パッケージ30は、図2に示すように、TO−CAN型パッケージ30の基台であるステム31と、パッケージキャップ32と、レンズホルダ33と、リード端子34と、を備える光素子パッケージである。TO−CAN型パッケージ30は任意の光素子を実装可能であるが、本実施の形態においては、図2(a)に示すように発光素子35を実装した場合について説明する。発光素子35を実装したTO−CAN型パッケージ30からなる光モジュール10は光送信モジュールとして機能する。
【0018】
TO−CAN型パッケージ30のパッケージキャップ32は、発光素子35等の光学部品を保護するために、ステム31の上方を覆う保護キャップである。パッケージキャップ32の上部に中央に設けられたレンズホルダ33には、光学レンズ331が備え付けられており、その光学レンズ331により、発光素子35から出力される光が集光される。図2(a)に、発光素子35から出力される光が光学レンズ331で集光される様子を破線で例示している。リード端子34は、発光素子35に電流を流すためのリード端子を含む入出力端子や、GND端子である。リード端子34は光モジュール10を制御する制御回路等に接続される。
【0019】
モジュールボディ40は、光モジュール10の中央部に位置し、光モジュール10の構造上の強度を保つための部品であり、TO−CAN型パッケージ30から出力される光を通過させるために、内部は空洞である。
【0020】
パッケージホルダ50は、TO−CANパッケージ30のパッケージキャップ32を保持して、TO−CANパッケージ30をモジュールボディ40に対して固定するための円筒形の部品である。パッケージホルダ50も、モジュールボディ40と同様に、TO−CAN型パッケージ30から出力される光を通過させるために、内部は空洞である。
【0021】
パッケージホルダ50は、TO−CAN型パッケージ30から出力される光の光軸に対して略垂直な面内において、モジュールボディ40に対する位置調整が可能である。TO−CAN型パッケージ30から出力される光が、レセプタクル60内のフェルール61を伝送するようにモジュールボディ40に対して最適な位置に調整され固定される。
【0022】
レセプタクル60は、図3に示すように、短尺の光ファイバを中心に保持したフェルール61を内蔵しており、発光素子35から出力され光学レンズ331により集光された光が、フェルール61内の光ファイバに入射される。
【0023】
レセプタクル60のTO−CAN型パッケージ30側と逆側の開口部601には、伝送用の光ファイバケーブルの端部に設けられた光コネクタのフェルールを挿入することができる。光コネクタのフェルールがレセプタクル60内のフェルール61と接合することにより、フェルール61内の光を、光コネクタのフェルールに入射させ、光ファイバケーブル内を伝送させることができる。
【0024】
レセプタクル60の外周部には、つば62があり、このつばを、筐体20側に設けた出っ張り63で挟み込むことにより、レセプタクル60を筐体20に対して固定している。
【0025】
第1金属ブロック36、第2金属ブロック37は、TO−CAN型パッケージで発生した熱を筐体に放熱させるための放熱ブロックである。
【0026】
第1金属ブロック36は、TO−CAN型パッケージ30のステム31の外周と略同形状の穴を有する板状の金属ブロックである。第1金属ブロック36は、図2(b)に示すように、その穴にステム31を嵌め込むことにより、第1金属ブロック36とステム31を接触させる。また、第1金属ブロック36の表面361の外周は、矩形状であり、第1金属ブロック36の厚さは、ステム31の厚さと略同一である。
【0027】
第2金属ブロック37は、図4に示すように、第1金属ブロック36の3面に対向する面371、372、373を有するコの字形の金属ブロックである。図4(a)は、TO−CAN型パッケージ30、第1金属ブロック36、第2金属ブロック37を、TO−CAN型パッケージ30のリード端子34側から見た図であり、図4(b)は、TO−CAN型パッケージ30、第1金属ブロック36、第2金属ブロック37を、筐体20の下面22側から見た図である。
【0028】
第1金属ブロック36は、第2金属ブロック37のコの字の互いに平行な面371、373に沿ってスライドするため、第1金属ブロックと第2金属ブロックは、十分な接触面を有していると言える。また、第2金属ブロック37の第1金属ブロック36に対向する3面のうちの1面である面372の裏面374と、筐体20の上面21は、接着剤38で固定されている。ここで接着剤38は熱伝導性を有するものが望ましい。この構成により、TO−CAN型パッケージ30のステム31から、第1金属ブロック36、第2金属ブロック37、接着剤38を経由して筐体20に繋がる放熱経路が確保されることとなる。
【0029】
次に、本実施の形態に係る光送受信器1の製造方法について説明する。
【0030】
まず、TO−CAN型パッケージ30内に、発光素子35等の光学部品を実装し、配線も行った後に、光学レンズ331を搭載したパッケージキャップ32を被せ、封止する。
【0031】
一方、モジュールボディ40にレセプタクル60を固定したものを用意する。TO−CAN型パッケージ30のパッケージキャップ32にパッケージホルダ50を嵌め込み、モジュールボディ40に対してパッケージホルダ50を固定する。TO−CAN型パッケージ30から出力させる光の光軸と、レセプタクル60内のフェルール61の中心軸を合わせた状態で固定する必要がある。具体的には、レセプタクル60に光ファイバ付きの光コネクタのフェルールを挿入し、TO−CAN型パッケージ30内の発光素子35に電流を流して発光させ、その光がレセプタクル60内のフェルール61、光コネクタ内のフェルール、光ファイバを通過して出力された光をパワーモニタで監視し、光強度が最大になるところで、パッケージホルダ50をモジュールボディ40に対して固定する。
【0032】
次に、TO−CAN型パッケージ30のステム31を第1金属ブロック36に嵌め込む。この時ステム31と第1金属ブロック36との間に熱伝導グリス等を挟んでも良い。その後、第1金属ブロック36を第2金属ブロック37に嵌め込む。
【0033】
レセプタクル60のつば62を筐体20の出っ張り63で挟み込む。これにより、モジュールボディ40、レセプタクル60、TO−CAN型パッケージ30は筐体20に対して固定される。
【0034】
次に、第2金属ブロック37を第1金属ブロック36に沿って上昇させ、第2金属ブロック37を筐体20に近づけ、第2金属ブロック37と筐体20との間の距離ができるだけ短くなる位置で、接着剤38を用いて、第2金属ブロック37を筐体20に対して固定する。
【0035】
このようにして製造された光送受信器1は、TO−CAN型パッケージ30のステム31から、第1金属ブロック36、第2金属ブロック37、接着剤38を経由して、筐体20へ熱を伝導する放熱経路が確保できる。この放熱経路について考察する。
【0036】
第1金属ブロック36、第2金属ブロック37として鉄を用いた場合を考える。鉄の熱伝導率は80[W/mK]程度であり、放熱シートや熱伝導性グリスや熱伝導性接着剤の熱伝導率は、1〜6[W/mK]程度である。熱抵抗値は、放熱経路の距離に比例し、熱伝導率に反比例するため、例えば、光送受信器の筐体20とステム21との距離の約70%を鉄による熱伝導が行われた場合の放熱経路の熱抵抗を、この距離の全てを放熱シート、熱伝導性グリス、熱伝導性接着剤等による熱伝導が行われた場合の熱抵抗と比較すると、前者の熱抵抗は後者の熱抵抗の約1/3となり、前者の方が放熱特性が優れていると言える。
【0037】
以上説明したように、本実施の形態によれば、ステム31を第1金属ブロック36に嵌め込み、第2金属ブロック37を第1金属ブロック36に接触した状態でスライド可能な構成としたため、第2金属ブロック37から筐体20までの距離が短くなり、放熱経路の大部分を熱伝導率の高い金属等で構成することができ、良好な放熱特性が得られる。特に、TO−CAN型パッケージ30の光軸と、レセプタクルの中心軸との相対位置にばらつきがある場合であっても、金属ブロックのスライドによる調整が可能であり、放熱シートや熱伝導性グリス等の厚みを変えて調整する場合よりも、放熱性の観点から有利となる。
【0038】
実施の形態2.
本発明の実施の形態2における光送受信器1、光モジュール10の構成は、第1金属ブロック76、第2金属ブロック77を含む放熱経路の構成を除いて実施形態1と同じである。本実施の形態の放熱経路について、図5を用いて説明する。
【0039】
図5(a)は、TO−CAN型パッケージ30、第1金属ブロック76、第2金属ブロック77を、TO−CAN型パッケージ30のリード端子34側から見た図であり、図5(b)は、TO−CAN型パッケージ30、第1金属ブロック76、第2金属ブロック77を、筐体20の下面22側から見た図である。
【0040】
第2金属ブロック77には、図5(b)に示すように、第1の金属ブロック76の厚みと略同じ幅の溝771が形成されている。第1金属ブロック76が第2金属ブロック77の溝771に嵌め込まれた状態で、第2金属ブロック77は第1金属ブロック76に沿ってスライドすることになる。
【0041】
本実施の形態に係る光送受信器1の製造方法について、実施の形態1と異なる点を中心に説明する。
【0042】
まず、光学部品等を実装し封止したTO−CAN型パッケージ30のパッケージキャップ32の部分をパッケージホルダ50に嵌め込む。
【0043】
モジュールボディ40に対してパッケージホルダ50を固定する際、TO−CAN型パッケージ30から出力させる光の光軸を、レセプタクル60内のフェルール61の中心軸に合わせた状態となるように位置調整して固定する。
【0044】
次に、TO−CAN型パッケージ30のステム31を第1金属ブロック76に嵌め込み、第1金属ブロック76を第2金属ブロック77の溝771に嵌め込む。第1金属ブロック76を第2金属ブロック77の溝771に嵌め込んだ状態で、第2金属ブロック77を第1金属ブロック76に沿って上昇させ、第2金属ブロック77を筐体20に近づけ、第2金属ブロック77と筐体20との間の距離ができるだけ短くなる位置で、接着剤38を用いて第2金属ブロック77を筐体20に対して固定する。
【0045】
このようにして製造された光送受信器1は、TO−CAN型パッケージ30のステム31から、第1金属ブロック76、第2金属ブロック77、接着剤38を経由して、筐体20へ熱を伝導する放熱経路が確保できる。
【0046】
以上説明したように、本実施の形態によれば、ステム31を第1金属ブロックに嵌め込み、第1金属ブロック76が第2金属ブロック77の溝771に嵌め込まれた状態で、第2金属ブロック77を第1金属ブロック76に沿ってスライド可能な構成としたため、良好な放熱特性を得られると共に、製造時の作業性が向上する。
【0047】
実施の形態3.
本発明の実施の形態3における光送受信器1、光モジュール10の構成は、第1金属ブロック86、第2金属ブロック87を含む放熱経路の構成を除いて実施形態1と同じである。本実施の形態の放熱経路について、図6を用いて説明する。
【0048】
図6(a)は、TO−CAN型パッケージ30、第1金属ブロック86、第2金属ブロック87を、TO−CAN型パッケージ30のリード端子34側から見た図であり、図6(b)は、TO−CAN型パッケージ30、第1金属ブロック86、第2金属ブロック87を、筐体20の下面22側から見た図である。
【0049】
第1金属ブロック86には、図6(a)に示すように、第2金属ブロック87のコの字形の2つの端部に対向する位置にフランジ861が2つ形成されている。各フランジ861にはねじ穴863が形成されている。ねじ穴863に第2金属ブロック87と反対側からねじ862を通し、ねじ862の先端を第2金属ブロック87に突き当てる。このねじを深く通していくと第2金属ブロックは筐体20の上面21に向かってスライドしていくため、ねじを締めることによって第2金属ブロック87と筐体20との距離が短くなるように調整できる。
【0050】
第2金属ブロック87の上下方向の位置は、ねじと筐体20とで挟まれて固定されているため、実施の形態1のように接着剤38は必要ない。筐体20と第2金属ブロック87のわずかな隙間はより熱伝導率の高い放熱シートや熱伝導性グリス等の熱伝導材39を挟んでも良い。
【0051】
本実施の形態に係る光送受信器1の製造方法について、実施の形態1と異なる点を中心に説明する。
【0052】
まず、光学部品等を実装し封止したTO−CAN型パッケージ30のパッケージキャップ32の部分をパッケージホルダ50に嵌め込む。
【0053】
モジュールボディ40に対してパッケージホルダ50を固定する際、TO−CAN型パッケージ30から出力させる光の光軸を、レセプタクル60内のフェルール61の中心軸に合わせた状態となるように位置調整して固定する。
【0054】
次に、TO−CAN型パッケージ30のステム31を第1金属ブロック86に嵌め込み、第1金属ブロック86を第2金属ブロック87に嵌め込む。第1金属ブロック86の2箇所のフランジ861のねじ穴863にそれぞれねじ862を挿入し、第2金属ブロック87の端部に当たるまでねじ862を締める。更にねじ862を締めていくことで、第2金属ブロック87を第1金属ブロック86に沿って上昇させる。第2金属ブロック87は、筐体20に当たったところで、ねじ862と筐体20とに挟まれて固定される。このとき、第2金属ブロック87と筐体20との間のわずかな隙間には、放熱シートや熱伝導性グリス等の熱伝導材39を挟んでも良い。
【0055】
このようにして製造された光送受信器1は、TO−CAN型パッケージ30のステム31から、第1金属ブロック86、第2金属ブロック87、熱伝導材39を経由して、筐体20へ熱を伝導する放熱経路が確保できる。
【0056】
以上説明したように、本実施の形態によれば、第1金属ブロック86のフランジ86に設けたねじ穴863に挿入したねじ862の先端で、第2金属ブロック87を押すことにより、第2金属ブロック87をスライドさせる構成としたため、第2金属ブロック87を筐体20に接近させる作業が容易になる。また第2金属ブロック87は、筐体20とねじ862により固定されるため、第2金属ブロック87と筐体20の間に固定用の接着剤が必要なく、第2金属ブロック87と筐体20をより接近させることができる。これにより、さらに良好な放熱特性を得られると共に、製造時の作業性が向上する。
【0057】
実施の形態4.
本発明の実施の形態4における光送受信器1、光モジュール10の構成は、第1金属ブロック96を含む放熱経路の構成を除いて実施の形態1と同じである。本実施の形態の放熱経路について、図7を用いて説明する。
【0058】
図7は、TO−CAN型パッケージ30、第1金属ブロック96を、TO−CAN型パッケージ30のリード端子34側から見た図である。
【0059】
第1金属ブロック96は、図7に示すように、TO−CAN型パッケージ30のステム31の外周と略同形状の穴が開けてあり、その穴にステム31を嵌め込むことで、ステム31と第1金属ブロック96が接触する。また、その穴の外周面と第1金属ブロック96の外周面から構成される壁の厚さ(以下、壁厚と呼ぶ)が4方向で全て異なっている(図7においてa〜d)。例えば、各壁厚は、a>b>c>dの関係にある。
【0060】
ステム31と筐体20との距離に応じて、どの壁厚を選択するかを決定し、選択した壁厚の部分が筐体20の上面21側を向かせた状態で、第1金属ブロック96をステム31に固定する。ここで、第1金属ブロック96の位置、向きは固定されているため、実施の形態1のように接着剤38は必要ない。筐体20と第1金属ブロック96の隙間はより熱伝導率の高い放熱シートや熱伝導性グリス等の熱伝導材39を挟む。
【0061】
本実施の形態に係る光送受信器1の製造方法について、実施の形態1と異なる点を中心に説明する。
【0062】
まず、光学部品等を実装したTO−CAN型パッケージ30のパッケージキャップ32の部分をパッケージホルダ50に嵌め込む。
【0063】
モジュールボディ40に対してパッケージホルダ50を固定する際、TO−CAN型パッケージから出力させる光の光軸を、レセプタクル60内のフェルール61の中心軸に合わせた状態となるように位置調整して固定する。
【0064】
次に、TO−CAN型パッケージ30のステム31を第1金属ブロック96に嵌め込む。ステム31と筐体20との距離に応じて、どの壁厚を選択するかを決定して、第1金属ブロック96の向きを固定する。具体的には、ステム31と筐体20との距離が長い場合、壁厚aの最も厚い辺を筐体20の上面21側にした状態で、第1金属ブロック96をステム21に対して固定する。逆にステム31と筐体20との距離が短い場合、壁厚dの最も薄い辺を筐体20の上面21側にした状態で、第1金属ブロック96をステム21に対して固定する。この際、第1金属ブロック96と筐体20との間の間には放熱シートや熱伝導性グリス等の熱伝導材39を挟んでもよい。
【0065】
このようにして製造された光送受信器1は、TO−CAN型パッケージ30のステム31から、第1金属ブロック96、熱伝導材39を経由して、筐体20へ熱を伝導する放熱経路が確保できる。
【0066】
以上説明したように、本実施の形態によれば、ステム31を嵌め込む穴から外周までの厚さがそれぞれ異なる第1金属ブロック96の穴に、ステム31を嵌め込んだ状態で、ステム31から筐体21までの距離に応じて、第1金属ブロック96の向きを決定するようにしたため、1つの第1金属ブロック96により金属ブロックの厚みを変更し、放熱経路の大部分を金属になるようにすることができる。また、厚さの異なる複数の金属ブロックを用意する必要がなくなるので、良好な放熱特性を得られると共に、コスト及び部材管理の点で有利となる。
【0067】
このように本発明は、光素子を実装した光素子パッケージの放熱板の外周面と同形状の穴を有する第1の放熱ブロックを備え、その穴に光素子パッケージの放熱板を挿入した状態で保持し、第1の放熱ブロックを含む放熱体を筐体に近接させる構成とした。これにより、放熱経路の大部分を熱伝導率の高い材料で構成するため、放熱経路の熱抵抗を小さくすることができ良好な放熱特性を得ることができる。
【0068】
なお、本発明は、上記実施の形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲での種々の変更は勿論可能である。
【0069】
例えば、上記実施の形態においては、TO−CAN型パッケージ30に発光素子35を実装した場合について説明したが、受光素子を実装して、光モジュール10を光受信モジュールとして機能させてもよい。この場合、レセプタクル60側から入力された光がレンズホルダ33に備えられた光学レンズ331で集光され、受光素子に入力される。また、パッケージホルダ50をモジュールボディ40に対して固定する際の位置調整では、受光素子で受光する光を光電変換して得られた電流が最も大きい箇所で、パッケージホルダ50をモジュールボディ40に対して固定する。
【0070】
また、モジュールボディ40やパッケージホルダ50の内部は空洞であり、TO−CAN型パッケージ30から出力された、光学レンズ331で集光された光が直接レセプタクル60のフェルール61に入射するとしたが、モジュールボディ40やパッケージホルダ50の内部にレンズ、フィルタ等の光学部品を備えても良い。TO−CAN型パッケージ30から出力された光をより効率の良い状態で伝送用光ファイバに結合させるように光路を最適化することができる。
【0071】
また、ステム31、及び、ステム31と筐体20間の放熱ブロックとして、鉄などの金属ブロックを使用する構成について説明したが、他の熱伝導率の高い材料を使うことも可能である。形状加工が容易な材料を使うことにより製造を簡易化することができる。また、金属の中でも鉄よりも熱伝導率の高い銅などを用いることでさらに熱抵抗を小さくすることができる。
【0072】
また、実施の形態3において、ねじが第2金属ブロック87を押す力により、第2金属ブロック87が第1金属ブロック86に沿ってスライドするとしたが、第2金属ブロック87に実施の形態2と同様の溝を設け、第1金属ブロック86がその溝に嵌め込まれた状態で第2金属ブロック87が、スライドするようにしてもよい。これにより、製造時の作業性をより向上させることができる。
【符号の説明】
【0073】
1 光送受信器
10 光モジュール
20 筐体
21 筐体の上面
22 筐体の下面
30 TO−CAN型パッケージ
31 ステム
32 パッケージキャップ
33 レンズホルダ
331 光学レンズ
34 リード端子
35 発光素子
36、76、86、96 第1金属ブロック
361 第1金属ブロックの表面
37、77、87 第2金属ブロック
371、372、373 第2金属ブロックの対向面
38 接着剤
39 熱伝導材
40 モジュールボディ
50 パッケージホルダ
60 レセプタクル
601 レセプタクルの開口部
61 フェルール
62 レセプタクルのつば
63 筐体の出っ張り
771 溝部
861 フランジ
862 ねじ
863 ねじ穴

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光素子を実装し、前記光素子から出力される光、又は、前記光素子に入力される光の光軸に対して略垂直の放熱板を備える光素子パッケージと、
前記放熱板の外周と同形状の穴を有し、前記光素子パッケージの前記放熱板を前記穴に挿入することにより、前記光素子パッケージに接触する第1の放熱ブロックと、
前記第1の放熱ブロックを含む放熱体を、前記光素子パッケージが固定される筐体に近接させる放熱体近接手段と、
を備えることを特徴とする光モジュール。
【請求項2】
前記第1の放熱ブロックの前記光軸に略垂直な面の外周は、略矩形状であり、
前記放熱体は、前記第1の放熱ブロックの前記外周の各辺を含む外周面のうち3面に対向する3つの対向面を有するコの字型の第2の放熱ブロックを含み、
前記放熱体近接手段は、前記3つの対向面のうち互いに平行な2面に前記第1の放熱ブロックが接触した状態で、前記第2の放熱ブロックをスライドさせて前記筐体に近接させる、
ことを特徴とする請求項1に記載の光モジュール。
【請求項3】
前記第1の放熱ブロックの前記光軸に略垂直な面の外周は、略矩形状であり、
前記放熱体は、前記第1の放熱ブロックの前記外周の各辺を含む外周面のうち3面に対向する3つの対向面を有するコの字型の第2の放熱ブロックを含み、
前記放熱体近接手段は、前記3つの対向面のうち互いに平行な2面に、前記第1の放熱ブロックの側部が勘合する溝が形成されており、前記第1の放熱ブロックが、前記溝に嵌め込まれた状態で、前記第2の放熱ブロックをスライドさせて前記筐体に近接させる、
ことを特徴とする請求項1に記載の光モジュール。
【請求項4】
前記第1の放熱ブロックは、ねじ穴が設けられたフランジを備え、
前記フランジのねじ穴に通したねじの先端を、前記第2の放熱ブロックのコの字の端部に押し当てた状態で、ねじを回転させることにより、前記第2の放熱ブロックをスライドさせて前記筐体に近接させる、
ことを特徴とする請求項2又は3に記載の光モジュール。
【請求項5】
前記第1の放熱ブロックの前記光軸に略垂直な面の外周は、略矩形状であり、
前記第1の放熱ブロックの前記外周の各辺を含む4つの外周面と、前記穴の外周面から構成される壁の厚さが互いに異なり、
前記放熱体近接手段は、前記放熱板と前記筐体の最寄り面との距離に応じて、前記第1の放熱ブロックの前記4つの外周面のうちから選択した面を、前記筐体の最寄り面に対向させることにより、前記放熱体を前記筐体に近接させる、
ことを特徴とする請求項1に記載の光モジュール。
【請求項6】
前記第2の放熱ブロックと前記筐体とを熱伝導性の接着剤で固定する、
ことを特徴とする請求項2又は3に記載の光モジュール。
【請求項7】
前記第2の放熱ブロックと前記筐体との間に放熱シート又は熱伝導グリスを挟む、
ことを特徴とする請求項4に記載の光モジュール。
【請求項8】
前記第1の放熱ブロックと前記筐体との間に放熱シート又は熱伝導グリスを挟む、
ことを特徴とする請求項5に記載の光モジュール。
【請求項9】
前記光素子パッケージは、TO−CAN型パッケージであり、前記放熱板は、前記TO−CAN型パッケージのステムである、
ことを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1項に記載の光モジュール。
【請求項10】
前記放熱板と前記放熱体の、全部又は一部が金属で構成されている、
ことを特徴とする請求項1乃至9のいずれか1項に記載の光モジュール。
【請求項11】
請求項1乃至10のいずれか1項に記載の光モジュールを備える光送受信器。
【請求項12】
光素子が実装され、前記光素子から出力される光、又は、前記光素子に入力される光の光軸に対して略垂直の放熱板を備える前記光素子パッケージを、筐体に固定させる工程と、
前記放熱板の外周と同形状の穴を有した第1の放熱ブロックの前記穴に、前記光素子パッケージの前記放熱板を嵌め込む工程と、
前記第1の放熱ブロックを含む放熱体を、前記筐体に近接させる工程と、
前記放熱体を前記筐体に固定させる工程と、
を有することを特徴とする光送受信器製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−115363(P2013−115363A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−262558(P2011−262558)
【出願日】平成23年11月30日(2011.11.30)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】