説明

光分波器

【課題】n波長多重光をn個の異なる波長の光に分波するために必要なフィルタ数を削減した光分波器を得る。(nは4以上の整数。)
【解決手段】各波長の中央値より短波長側のi個の波長と長波長側のi個の波長を透過帯域に含むm段のバンドパスフィルタにより、n波長多重光を(n/2)個の2波長多重光に分波し、その後、各波長の中央値より短波長側又は長波長側の波長を透過帯域に含むエッジパスフィルタにより、2波長多重光を各波長の光に分波する。(iは1以上m以下の整数、mは((n/2)−1)でnが奇数の場合は小数点以下切り上げ。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、複数の異なる波長の光が多重化された光信号を伝送する波長分割多重(WDM:Wavelength Division Multiplexing)光通信システムなどにおいて、波長多重された光信号から各波長の光を分離する光分波器に関する。
【背景技術】
【0002】
光ファイバを用いた通信システムにおける通信容量拡張手段の一つとして、複数の異なる波長の光を波長多重し、一本の光ファイバで同時に伝送する波長分割多重(WDM)方式がある。波長分割多重方式を用いた光通信の受信器側においては、複数の波長の光信号を含む波長多重信号光から所望の波長の光信号を取り出す光分波器が用いられる。
【0003】
例えば、特許文献1に記載されている光分波器は、バンドパスフィルタを用いた反射光学系により構成され、n波長の光信号が多重化された波長多重信号光をn−1個のバンドパスフィルタと対応するミラーにより分波する。
【0004】
この従来の光分波器では、まず、入力用光ファイバの端面から出射される波長λ1〜λ4の4波長多重信号光が、レンズL0によりコリメートされた後、バンドパスフィルタF1に入射する。バンドパスフィルタF1は波長λ1の光を透過し、他の波長λ2〜λ4の光を反射する。バンドパスフィルタF1を透過した光はレンズL1で集光され、出力用光ファイバの端面に入射する。反射された光はミラーM1で折り返され、波長λ2の光を透過するバンドパスフィルタF2に入射する。以下同様に透過と反射を繰り返すことにより、波長λ1〜λ4の光信号が順次分波される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−149490号公報(第5〜7頁、図4)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の光分波器では、n個の波長の光が多重化された波長多重信号光から1波長ずつ順次光を取り出すため、各波長の光に分波するためには(n−1)個のフィルタを用いなければならないという問題があった。
【0007】
この発明は、上記のような問題を解決するためになされたもので、フィルタの数を削減することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明の光分波器は、n個の波長の光が多重化されたn波長多重信号光を各波長の光信号に分波する光分波器において、各波長の中央値λ_medより長波長側で中央値λ_medに近いi個の波長と中央値λ_medより短波長側で中央値λ_medに近いi個の波長とを含むm段のバンドパスフィルタを用いてn波長多重信号光を(n/2)個の2波長多重光に分波し、中央値λ_medにカットオフ波長があるエッジパスフィルタを用いて、2波長多重信号光を各波長の光信号に分波するものである。(nは4以上の整数、iは1以上m以下の整数、mは((n/2)−1)でnが奇数の場合は小数点以下切り上げ。)
【発明の効果】
【0009】
この発明は、n個の波長の光が多重化された波長多重信号光を、(n/2)個のフィルタにより各波長の光に分波する。つまり、従来の1波長ずつ順次取り出す分波器では(n−1)個必要だったフィルタの数を(n/2)個に削減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】この発明の実施の形態1による光分波器の構成図である。
【図2】誘電体多層膜フィルタの波長透過特性を示すスペクトル図である。
【図3】この発明の実施の形態1による光分波器の別の構成を示す構成図である。
【図4】この発明の実施の形態2による光分波器の構成図である。
【図5】この発明の実施の形態3による光分波器の構成図である。
【図6】誘電体多層膜フィルタの波長透過特性を示すスペクトル図である。
【図7】この発明の実施の形態4による光分波器の構成図である。
【図8】この発明の実施の形態5による光分波器の構成図である。
【図9】この発明の実施の形態6による光分波器の構成図である。
【図10】フィルタユニットにおける信号光の光路を説明するための説明図である。
【図11】フィルタユニットにおけるフィルタと反射ミラーの平行からのずれとレンズにおける焦点位置の関係を示すグラフである。
【図12】フィルタユニットの設置角度がずれたときの信号光の光路を説明するための説明図である。
【図13】フィルタユニットの設置角度のずれと反射光と透過光とのビーム間隔の関係を示すグラフである。
【図14】この発明の実施の形態7で用いられるバンドパスフィルタユニットの製造方法を示す模式図である。
【図15】この発明の実施の形態7で用いられるエッジパスフィルタユニットの製造方法を示す模式図である。
【図16】実施の形態7で示す方法で製造したバンドパスフィルタを複数個用いる場合の光分波器の構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
実施の形態1.
以下、この発明の実施の形態1の構成を図1と図2に従って説明する。
図1は、この発明を実施するための実施の形態1における光分波器の構成を示す図である。図1に示す光分波器は、光ファイバ1、レンズ2、バンドパスフィルタ3、第1の反射ミラー4、エッジパスフィルタ5を有し、光ファイバ1より出射される4波長多重光(異なる4個の波長λ1、λ2、λ3、λ4の光を多重化した光)を、波長λ1、λ2、λ3、λ4の光に分波して出射するものである。
図2は、実施の形態1における光分波器のバンドパスフィルタ3とエッジパスフィルタ5に用いられる誘電体多層膜の透過特性を示すスペクトル図である。横軸は波長であり、4個の波長λ1、λ2、λ3、λ4とこれらの中央値λ_med8が示されている。縦軸は誘電体多層膜の透過率を示す。太い実践で示す第1の透過特性6がバンドパスフィルタ3の特性、太い破線で示す第2の透過特性7がエッジパスフィルタ5の特性を示している。
【0012】
図1を参照して、4波長多重光を分波する光分波器の構成について説明する。
光ファイバ1は、波長λ1〜λ4の光が多重化された4波長多重光を端面より出射する。光ファイバ1の端面の前方には、レンズ2が配置されており、レンズ2は、光ファイバ1より出射された光をコリメート(平行化)する。レンズ2によりコリメートされた光はバンドパスフィルタ3へ入射する。
【0013】
バンドパスフィルタ3は、図2に示す第1の透過特性6の誘電体多層膜3bをガラス基板3a上に成膜することにより、1段分形成される。第1の透過特性6の誘電体多層膜3bは、4個の異なる波長λ1、λ2、λ3、λ4の中央値λ_med8より短波長側の1個の波長λ2と長波長側の1個の波長λ3を含む透過波長帯域を有している。そのため、バンドパスフィルタ3は、入射した4波長多重光のうち、透過波長帯域に含まれる波長λ2とλ3の光を透過し、透過波長帯域に含まれない波長λ1とλ4の光、つまり、入射した4波長多重光からバンドパスフィルタ3を透過した光を除いた残りの光を反射する。
バンドパスフィルタ3を透過した光は、エッジパスフィルタ5に入射する。また、バンドパスフィルタ3により反射された光は、第1の反射ミラー4に入射する。
なお、多重化される波長の数がn個の場合、短波長側から数えて(n/2)番目の波長と、長波長側から数えて(n/2)番目の波長との間の波長を中央値λ_med8とする。nが奇数の場合には、短波長側、または長波長側のいずれか一方の(n/2)の演算結果を切り上げて整数化し、他方を切り捨てて整数化する。(nは4以上の整数。以下同様。)
【0014】
第1の反射ミラー4は、光反射膜4bをガラス基板4a上に成膜して形成される。そして、第1の反射ミラー4は、バンドパスフィルタ3により反射された光を、バンドパスフィルタ3を透過した光と略平行になるように折り返す。第1の反射ミラー4により折り返された光は、エッジパスフィルタ5に入射する。
第1の反射ミラー4は、図示していない固定部に予め固定されている。
【0015】
エッジパスフィルタ5は、図2に示す第2の透過特性7の誘電体多層膜5bをガラス基板5a上に成膜して形成される。第2の透過特性7の誘電体多層膜は、中央値λ_med8より短波長側の波長λ1とλ2を含む透過波長帯域を有している。そのため、エッジパスフィルタ5は、入射した光のうち中央値λ_med8より短波長側の波長λ1とλ2の光を透過し、長波長側の波長λ3とλ4の光を反射する。
【0016】
バンドパスフィルタ3とエッジパスフィルタ5は、光の方向を確認しながら、固定されている第1の反射ミラー4に対する位置、および角度を調節するアクティブ調芯を行った後、図示していない光透過部材に固定される。
位置、および角度の調整は、具体的には、例えば、バンドパスフィルタ3により反射された光が、第1の反射ミラー4に入射するよう、バンドパスフィルタ3の位置や角度を調整する。また、バンドパスフィルタ3を透過した光と、バンドパスフィルタ3により反射された後に第1の反射ミラー4で折り返された光とが、エッジパスフィルタ5に入力するよう、バンドパスフィルタ3とエッジパスフィルタ5の位置や角度を調整する。
【0017】
図1は、アクティブ調芯後の各フィルタの状態の一例を表しており、バンドパスフィルタ3とエッジパスフィルタ5と第1の反射ミラー4が全て互いに平行に配置されている。しかし、各フィルラやミラーを製造する際のガラス基板の切り出し角度の精度や、誘電体多層膜の成膜状態により、バンドパスフィルタ3とエッジパスフィルタ5と第1の反射ミラー4が、互いに平行でない場合もある。
【0018】
次に、光分波器の動作について説明する。
光ファイバ1の端面から出射された波長λ1〜λ4の4波長多重光は、レンズ2によりコリメートされ、バンドパスフィルタ3に入射する。
【0019】
バンドパスフィルタ3に入射した波長λ1〜λ4の4波長多重光のうち、波長λ2とλ3の光からなる2波長多重光は、バンドパスフィルタ3を透過してエッジパスフィルタ5に入射し、残りの波長λ1とλ4の光は、バンドパスフィルタ3により反射される。
【0020】
バンドパスフィルタ3により反射された波長λ1とλ4の光は、バンドパスフィルタ3を透過した2波長多重光と略平行になるよう第1の反射ミラー4により折り返された後、エッジパスフィルタ5に入射する。
【0021】
バンドパスフィルタ3を透過してエッジパスフィルタ5に入射した波長λ2とλ3の光からなる2波長多重光のうち、波長λ2の光はエッジパスフィルタ5を透過し、波長λ3の光はエッジパスフィルタ5により反射される。
また、第1の反射ミラー4により折り返されてエッジパスフィルタ5に入射した波長λ1とλ4の光からなる2波長多重光のうち、波長λ1の光はエッジパスフィルタ5を透過し、波長λ4の光はエッジパスフィルタ5により反射される。
その結果、エッジパスフィルタ5から異なる4つの波長λ1〜λ4の光が分波して出射される。
【0022】
エッジパスフィルタ5より出射される各波長の光は、図示していないレンズにより、出力用の光ファイバの端面や受光素子の受光部に集光される。
【0023】
なお、図1に示した光分波器は、バンドパスフィルタ3により反射された2波長多重光を第1の反射ミラー4により折り返す構成とした。しかし、図3を参照して、バンドパスフィルタ3を透過した2波長多重光を、バンドパスフィルタ3で反射された2波長多重光と略平行になるよう第1の反射ミラー104により折り返し、バンドパスフィルタ3で反射された2波長多重光と共にエッジパスフィルタ105に入射させる構成としてもよい。ここで用いられるエッジパスフィルタ105は、エッジパスフィルタ5と同様に、図2に示す第2の透過特性7の誘電体多層膜105bをガラス基板105a上に成膜して形成される。
【0024】
また、図1および図3に示すエッジパスフィルタ5、105は、図2に示す第2の透過特性7の誘電体多層膜により形成されるとした。しかし、エッジパスフィルタに入射する多重光を中央値λ_med8より短波長側の波長の光と長波長側の波長の光に分波することが可能であればよいので、例えば、図2に太い一点鎖線により示す第3の透過特性9のように、中央値λ_med8より長波長側の波長λ3とλ4を含む透過波長帯域を有する誘電体多層膜を用いて形成してもよい。
【0025】
なお、第1の反射ミラーの配置位置やエッジパスフィルタの特性は、分波後の各波長λ1〜λ4の光を出射させたい方向に応じて適宜選択すればよい。
【0026】
以上のように構成された光分波器においては、まず、4個の異なる波長λ1〜λ4が多重化された4波長多重光を、バンドパスフィルタ3により、各波長の中央値より長波長側の波長と短波長側の波長の光からなる2個の2波長多重光に分波する。その後、2波長多重光を、エッジパスフィルタ5により、各波長の光に分波する。つまり、従来の光分波器では4波長多重光の分波に3個必要だったフィルタを2個に削減することができる。
その結果、光の出射方向を確認しながら、固定された反射ミラーに対する位置や角度をフィルタ毎に調整するアクティブ調芯の回数を3回から2回に削減することが可能になる。
【0027】
実施の形態2.
この発明の実施の形態2の構成を図4に従って説明する。
図4は、この発明を実施するための実施の形態2における分波器の構成を示す図である。図4に示す光分波器は、エッジパスフィルタ5により反射された光が入射する位置に第2の反射ミラー209を設けた点が図1に示す実施の形態1の光分波器と異なる。
【0028】
第2の反射ミラー209は、光反射膜209bをガラス基板209a上に成膜して形成される。そして、第2の反射ミラー209は、エッジパスフィルタ5により反射された光が入射する位置に設けられ、エッジパスフィルタ5により反射された光を、エッジパスフィルタ5を透過した光と略平行になるように折り返す。第2の反射ミラー209により折り返された光と、エッジパスフィルタ5を透過した光は、図示していないレンズにより、出力用の光ファイバの端面や受光素子の受光部に集光される。
また、第2の反射ミラー209は、図示していない固定部に予め固定されている。
【0029】
なお、第2の反射ミラー209は第1の反射ミラー4と同様、光反射膜209bをガラス基板209a上に成膜して形成される。第1の反射ミラー4と第2の反射ミラー209は別のもとして構成されているがこれらは一体化されていてもよい。
【0030】
このように構成される光分波器においては、分波後の各波長の光を同一方向に出射することができる。そのため、分波後の各波長の光を集光するレンズや、出射する出力用ファイバまたは受光素子をまとめて配置できるため、各光学部品の配置が容易になる。
【0031】
実施の形態3.
この発明の実施の形態3の構成を図5と図6に従って説明する。
この発明の実施の形態1、2では、4波長多重光を分波する光分波器の構成について説明したが、4波長以上の多重光であれば同様の効果を得ることができる。そこで、実施の形態3では、異なる6個の波長λ1〜λ6の光を多重化した6波長多重光を各波長に分波する光分波器の構成について説明した後、n波長多重光を各波長に分波する光分波器の構成について説明する。
【0032】
図5は、この発明の実施の形態3における分波器の構成を示す図である。図5に示す光分波器は、光ファイバ1、レンズ2、透過波長帯が異なる第1段、第2段の2つのバンドパスフィルタ303、313、第1の反射ミラー304、エッジパスフィルタ305を有し、光ファイバ1より出射される6波長多重光を、波長λ1〜λ6の光に分波して出力するものである。
図6は、この発明の実施の形態3における光分波器のバンドパスフィルタ303、313とエッジパスフィルタ305に用いられる誘電体多層膜の透過特性を示すスペクトル図である。横軸は波長であり、6個の波長λ1〜λ6とこれらの中央値λ_med308が示されている。縦軸は誘電体多層膜の透過率を示す。
【0033】
図5を参照して、6波長多重光を分波する光分波器の構成について説明する。
光ファイバ1は、波長λ1〜λ6の光が多重化された6波長多重光を端面より出射する。光ファイバ1の端面の前方に配置されたレンズ2によりコリメートされた光は第1のバンドパスフィルタ303へ入射する。
【0034】
第1段のバンドパスフィルタ303は、図6に細い実線により示す第1の透過特性306の誘電体多層膜303bをガラス基板303a上に成膜して形成される。第1の透過特性306の誘電体多層膜303bは、6個の異なる波長λ1〜λ6の中央値λ_med308より短波長側の1個の波長λ3と長波長側の1個の波長λ4を含む透過波長帯域を有している。
第1段のバンドパスフィルタ303を透過した2波長多重光はエッジパスフィルタ305に入射する。第1のバンドパスフィルタ303により反射された光は第1の反射ミラー304により折り返されて第2段のバンドパスフィルタ313に入射する。
【0035】
第2段のバンドパスフィルタ313は、図6に太い実線により示す第2の透過特性316の誘電体多層膜313bをガラス基板313a上に成膜して形成される。第2の透過特性316の誘電体多層膜313bは、6個の異なる波長λ1〜λ6の中央値λ_med308より短波長側の2個の波長λ2、λ3と長波長側の2個の波長λ4、λ5を含む透過波長帯域を有している。
第2段のバンドパスフィルタ313を透過した2波長多重光はエッジパスフィルタ305に入射し、第2段のバンドパスフィルタ313により反射された光は、第1の反射ミラー304により折り返されてエッジパスフィルタ305に入射する。
【0036】
第1段の反射ミラー304は、光反射膜304bをガラス基板304a上に成膜して形成され、第1段のバンドパスフィルタ303により反射された光を、第1段のバンドパスフィルタ303を透過した2波長多重光と略平行になるように折り返す。同様に、第2段のバンドパスフィルタ313により反射された光を、第2段のバンドパスフィルタ313を透過した2波長多重光と略平行になるように折り返す。
第1の反射ミラー304は、図示していない固定部に予め固定されている。
【0037】
エッジパスフィルタ305は、図6に破線により示す第3の透過特性307の誘電体多層膜305bをガラス基板305a上に成膜して形成される。第3の透過特性307の誘電体多層膜305bは、中央値λ_med308より短波長側の波長λ1〜λ3を含む透過波長帯域を有している。
【0038】
第1段、第2段のバンドパスフィルタ303、313とエッジパスフィルタ305は、光の方向を確認しながら、固定されている第1の反射ミラー304に対するそれぞれの位置、および角度を調節するアクティブ調芯を行った後、図示していない光透過部材に固定される。
位置、および角度の調整は、具体的には、例えば、第1段、第2段のバンドパスフィルタ303、313により反射された光が第1の反射ミラー304に入射するよう、第1段、第2段のバンドパスフィルタ303、313の位置や角度を調整する。また、第1段、第2段のバンドパスフィルタ303、313を透過した光と、第2段のバンドパスフィルタ313により反射された後に第1の反射ミラー304で折り返された光とが、エッジパスフィルタ305に入力するよう、第1段、第2段のバンドパスフィルタ303、313とエッジパスフィルタ305の位置や角度を調整する。
【0039】
図5は、アクティブ調芯後の各フィルタの状態の一例を表しており、第1段、第2段のバンドパスフィルタ303、313とエッジパスフィルタ305と第1の反射ミラー304とが、全て互いに平行に配置されている。しかし、各フィルラやミラーを製造する際のガラス基板の切り出し角度の精度や、誘電体多層膜の成膜状態により、第1段、第2段のバンドパスフィルタ303、313とエッジパスフィルタ305と第1の反射ミラー304とが、互いに平行でない場合もある。
また、図5では、第1段、第2段のバンドパスフィルタ303、313が、同一直線上に配置されている。しかし、第1段、第2段のバンドパスフィルタ303、313により反射された光が第1の反射ミラー304に入射し、第1段、第2段のバンドパスフィルタ303、313を透過した光と、第2段のバンドパスフィルタ313により反射された後に第1の反射ミラー304で折り返された光とが、エッジパスフィルタ305に入力するならば、必ずしも第1段、第2段のバンドパスフィルタ303、313を同一直線上に配置する必要はない。
【0040】
なお、図5では、第1段のバンドパスフィルタ303により反射された光と第2段のバンドパスフィルタ313により反射された光が、第1の反射ミラー304により折り返される構成を示した。しかし、第1の反射ミラー304を2つに分割し、第1段、第2段のバンドパスフィルタ303、313により反射された光が、異なる反射ミラーにより折り返される構成としてもよい。
【0041】
次に、光分波器の動作について説明する。
光ファイバ1の端面から出射された波長λ1〜λ6の6波長多重光は、レンズ2によりコリメートされ、第1段のバンドパスフィルタ303へ入射する。
【0042】
第1段のバンドパスフィルタ303に入射した波長λ1〜λ6の6波長多重光のうち、波長λ3とλ4の光からなる第1の2波長多重光は、第1段のバンドパスフィルタ303を透過してエッジパスフィルタ305へ入射し、残りの波長λ1、λ2、λ5、λ6の光は、第1段のバンドパスフィルタ303により反射される。
【0043】
第1段のバンドパスフィルタ303により反射された波長λ1、λ2、λ5、λ6の光は、第1段のバンドパスフィルタ303を透過した第1の2波長多重光と略平行になるよう第1の反射ミラー304により折り返された後、第2段のバンドパスフィルタ313へ入射する。
【0044】
第2段のバンドパスフィルタ313に入射した波長λ1、λ2、λ5、λ6の光のうち、波長λ2とλ5の光からなる第2の2波長多重光は、第2段のバンドパスフィルタ313を透過してエッジパスフィルタ305へ入射し、残りの波長λ1、λ6の光は、第2段のバンドパスフィルタ313により反射される。
【0045】
第2段のバンドパスフィルタ313により反射された波長λ1、λ6の光からなる第3の2波長多重光は、第2段のバンドパスフィルタ313を透過した第2の2波長多重光と略平行になるよう第1の反射ミラー304により折り返された後、エッジパスフィルタ305へ入射する。
【0046】
第1段のバンドパスフィルタ303を透過してエッジパスフィルタ305に入射した波長λ3とλ4の光からなる第1の2波長多重光のうち、波長λ3の光はエッジパスフィルタ305を透過し、波長λ4の光はエッジパスフィルタ305により反射される。
また、第2段のバンドパスフィルタ313を透過してエッジパスフィルタ305に入射した波長λ2とλ5の光からなる第2の2波長多重光のうち、波長λ2の光はエッジパスフィルタ305を透過し、波長λ5の光はエッジパスフィルタ305により反射される。
更に、第1の反射ミラー304により最後に折り返されてエッジパスフィルタ305に入射した波長λ1とλ6の光からなる第3の2波長多重光のうち、波長λ1の光はエッジパスフィルタ305を透過し、波長λ6の光はエッジパスフィルタ305により反射される。
その結果、エッジパスフィルタ305から異なる6つの波長λ1〜λ6の光が分波して出射される。
【0047】
エッジパスフィルタ305より出射される各波長の光は、図示していないレンズにより、出力用の光ファイバの端面や受光素子の受光部に集光される。
【0048】
なお、図5に示すエッジパスフィルタ305は、図6に示す第3の透過特性307の誘電体多層膜により形成されるとした。しかし、エッジパスフィルタに入射する多重光を中央値λ_med308より短波長側の波長の光と長波長側の波長の光に分波することが可能であればよいので、例えば、図6に太い一点鎖線により示す第4の透過特性309のように、中央値λ_med308より長波長側の波長λ4〜λ6を含む透過波長帯域を有する誘電体多層膜を用いて形成してもよい。
【0049】
以上のように構成された光分波器は、まず、6個の異なる波長λ1〜λ6が多重化された6波長多重光を、2個のバンドパスフィルタ303、313により、第1〜第3の2波長多重光に分波する。その後、各2波長多重光を、同一のエッジパスフィルタ305により、各波長の光に分波する。つまり、従来の光分波器では6波長多重光の分波に5個必要だったフィルタを3個に削減することができる。
その結果、実施の形態1、2と同様に、光の出射方向を確認しながら位置を調整するアクティブ調芯の回数を5回から3回に削減することが可能になる。
【0050】
また、多重化された波長の数が奇数の場合でも、同様の効果が得られる。例えば、図5に示す構成の光分波器において、光ファイバ1から5波長多重光を出射する。すると、まず、5波長多重光は、2個のバンドパスフィルタ303、313により、2個の2波長多重光と残りの1波長の光に分派される。その後、2個の2波長多重光は、エッジパスフィルタ305により、各波長の光に分派される。つまり、従来の光分波器では5波長多重光の分波に4個必要だったフィルタを3個に削減することができる。
【0051】
なお、n個の異なる波長が多重化されたn波長多重光を分波するために、この発明の光分波器に設けられたバンドパスフィルタの数をm個とすると、これまでに、(n=4、m=1)、(n=5、m=2)、(n=6、m=2)の場合の各実施の形態を説明した。これらの実施の形態からnとmの関係を一般化すると、数1のようになる。(ただしnが奇数の場合、mは小数点以下切り上げとする。)
【0052】
【数1】

【0053】
光分波器に備えられたm段のバンドパスフィルタは、段毎に異なる透過波長帯域を有し、i段目のバンドパスフィルタは、多重化された2個の波長の中央値より長波長側のi個の波長と短波長側のi個の波長を含む透過波長帯域を有するものとする。つまり、1段毎に、透過波長帯域に含まれる波長の数が2個ずつ増加する。(iは1以上m以下の整数。)
【0054】
そして、1段目のバンドパスフィルタにはn波長多重光が入射し、2段目以降のバンドパスフィルタには前段のバンドパスフィルタにより反射された光が順次入射されるように配置されている。
【0055】
光分波器をこのように構成することにより、n波長多重光は、m段のバンドパスフィルタを透過したm個の2波長多重光と、最終段のバンドパスフィルタにより反射された残りの光に分波される。
【0056】
更に、m個の2波長多重光と最終段のバンドパスフィルタにより反射された残りの光は、1個のエッジパスフィルタにより1波長の光に分波される。
【0057】
以上のことから、n波長多重光を分波するために必要なフィルタは、バンドパスフィルタm個とエッジパスフィルタ1個、つまりm+1=(n/2)個となる。
【0058】
よって、この発明の各実施の形態の構成によると、n波長多重光を分波するために必要なフィルタ数を、従来の1波長ずつ分波する場合の(n−1)個から(n/2)個に削減することが可能である。
【0059】
実施の形態4.
【0060】
この発明の実施の形態4の構成を図6と図7に従って説明する。
実施の形態3では、2段のバンドパスフィルタを備えた光分波器において、透過波長帯域の狭いバンドパスフィルタから順に、レンズ2によりコリメートされた光が入射する構成について説明した。しかし、バンドパスフィルタの配置はこれに限らない。実施の形態4では、レンズ2によりコリメートされた光が、透過波長帯域の広いバンドパスフィルタから順に入射するよう構成された光分波器について説明する。
【0061】
図7は、この発明の実施の形態4における分波器の構成を示す図である。図7に示す光分波器は、光ファイバ1、レンズ2、透過波長帯が異なる2つのバンドパスフィルタ403、413、第1の反射ミラー404、エッジパスフィルタ405を有し、光ファイバ1より出射される6波長多重光を、波長λ1〜λ6の光に分波して出力するものである。
【0062】
図7を参照して、6波長多重光を分波する光分波器の構成について説明する。
光ファイバ1は、波長λ1〜λ6の光が多重化された6波長多重光を端面より出射する。光ファイバ1の端面の前方に配置されたレンズ2によりコリメートされた光は第1段のバンドパスフィルタ403へ入射する。
【0063】
第1段のバンドパスフィルタ403は、図6に示す第2の透過特性316の誘電体多層膜403bをガラス基板403a上に成膜して形成される。第1の透過特性316の誘電体多層膜403bは、6個の異なる波長λ1〜λ6の中央値λ_med308より短波長側の2個の波長λ2、λ3と長波長側の2個の波長λ4、λ5を含む透過波長帯域を有している。
第1段のバンドパスフィルタ403により反射された光は、エッジパスフィルタ405に入射する。また、第1段のバンドパスフィルタ403を透過した光は、第1の反射ミラー404により折り返されて第2段のバンドパスフィルタ413に入射する。
【0064】
第2段のバンドパスフィルタ413は、図6に示す第1の透過特性306の誘電体多層膜413bをガラス基板413a上に成膜して形成される。第1の透過特性306の誘電体多層膜413bは、6個の異なる波長λ1〜λ6の中央値λ_med308より短波長側の1個の波長λ3と長波長側の1個の波長λ4を含む透過波長帯域を有している。
第2段のバンドパスフィルタ413を透過した光は、エッジパスフィルタ405に入射する。また、第2段のバンドパスフィルタ313により反射された光は、第1の反射ミラー404により折り返されてエッジパスフィルタ405入射する。
【0065】
第1の反射ミラー404は、光反射膜404bをガラス基板404a上に成膜して形成され、第1段のバンドパスフィルタ403を透過した光を、第1段のバンドパスフィルタ403により反射された光と略平行になるように折り返す。同様に、第2段のバンドパスフィルタ413により反射された光を、第2段のバンドパスフィルタ413を透過した光と略平行になるように折り返す。
また、第1の反射ミラー404は、図示していない固定部に予め固定されている。
【0066】
エッジパスフィルタ405は、図6に示す第3の透過特性307の誘電体多層膜405bをガラス基板405a上に成膜して形成される。第3の透過特性307の誘電体多層膜は、中央値λ_med308より短波長側の波長λ1〜λ3を含む透過波長帯域を有している。
【0067】
第1段、第2段のバンドパスフィルタ403、413とエッジパスフィルタ405は、光の方向を確認しながら、固定されている第1の反射ミラー404に対するそれぞれの位置、および角度を調節するアクティブ調芯を行った後、図示していない光透過部材に固定される。
位置、および角度の調整は、具体的には、例えば、第1段のバンドパスフィルタ403を透過した光と、第2段のバンドパスフィルタ413により反射された光とが、第1の反射ミラー304に入射するよう、第1段、第2段のバンドパスフィルタ403、413の位置や角度を調整する。また、第1段のバンドパスフィルタ403により反射された光と、第2段のバンドパスフィルタ413を透過した光と、第2段のバンドパスフィルタ413により反射された後に第1の反射ミラー404で折り返された光とが、エッジパスフィルタ405に入力するよう、第1段、第2段のバンドパスフィルタ403、413とエッジパスフィルタ405の位置や角度を調整する。
【0068】
図7は、アクティブ調芯後の各フィルタの状態の一例を表しており、第1段、第2段のバンドパスフィルタ403、413とエッジパスフィルタ405と第1の反射ミラー404とが、全て互いに平行に配置されている。しかし、各フィルラやミラーを製造する際のガラス基板の切り出し角度の精度や、誘電体多層膜の成膜状態により、第1段、第2段のバンドパスフィルタ403、413とエッジパスフィルタ405と第1の反射ミラー404とが、互いに平行でない場合もある。
また、図7では、第1段、第2段のバンドパスフィルタ403、413が、同一直線上に配置されている。しかし、第1段のバンドパスフィルタ403を透過した光と、第2段のバンドパスフィルタ413により反射された光が第1の反射ミラー404に入射し、第1段のバンドパスフィルタ403により反射された光と第2段のバンドパスフィルタ413を透過した光と第2段のバンドパスフィルタ413により反射された後に第1の反射ミラー404で折り返された光とがエッジパスフィルタ405に入力するならば、必ずしも第1段、第2段のバンドパスフィルタ403、413を同一直線上に配置する必要はない。
【0069】
次に、光分波器の動作について説明する。
光ファイバ1の端面から出射された波長λ1〜λ6の6波長多重光は、レンズ2によりコリメートされ、第1段のバンドパスフィルタ403へ入射する。
【0070】
第1段のバンドパスフィルタ403に入射した波長λ1〜λ6の6波長多重光のうち、波長λ1とλ6の光からなる第1の2波長多重光は、第1段のバンドパスフィルタ403により反射されてエッジパスフィルタ405へ入射し、残りの波長λ2〜λ5の光は、第1段のバンドパスフィルタ403を透過する。
【0071】
第1段のバンドパスフィルタ403を透過した波長λ2〜λ5の光は、第1段のバンドパスフィルタ403により反射された第1の2波長多重光と略平行になるよう第1の反射ミラー404により折り返された後、第2段のバンドパスフィルタ413へ入射する。
【0072】
第2段のバンドパスフィルタ413に入射した波長λ2〜λ5光のうち、波長λ3とλ4の光からなる第2の2波長多重光は、第2段のバンドパスフィルタ413を透過してエッジパスフィルタ305へ入射し、残りの波長λ2、λ5の光は、第2段のバンドパスフィルタ413により反射される。
【0073】
第2段のバンドパスフィルタ413により反射された波長λ2、λ5の光からなる第3の2波長多重光は、第2段のバンドパスフィルタ413を透過した第2の2波長多重光と略平行になるよう第1の反射ミラー404により折り返された後、エッジパスフィルタ405へ入射する。
【0074】
第1段のバンドパスフィルタ403により反射されてエッジパスフィルタ405に入射した波長λ1とλ6の光からなる第1の2波長多重光のうち、波長λ1の光はエッジパスフィルタ405を透過し、波長λ6の光はエッジパスフィルタ405により反射される。
また、第2段のバンドパスフィルタ413を透過してエッジパスフィルタ405に入射した波長λ3とλ4の光からなる第2の2波長多重光のうち、波長λ3の光はエッジパスフィルタ405を透過し、波長λ4の光はエッジパスフィルタ405により反射される。
更に、第1の反射ミラー404により最後に折り返されてエッジパスフィルタ405に入射した波長λ2とλ5の光からなる第3の2波長多重光のうち、波長λ2の光はエッジパスフィルタ405を透過し、波長λ5の光はエッジパスフィルタ405により反射される。
その結果、エッジパスフィルタ405から異なる6つの波長λ1〜λ6の光が分波して出射される。
【0075】
エッジパスフィルタ405より出射される各波長の光は、図示していないレンズにより、出力用の光ファイバの端面や受光素子の受光部に集光される。
【0076】
なお、図7に示すエッジパスフィルタ405は、図6に示す第3の透過特性307の誘電体多層膜により形成されるとした。しかし、エッジパスフィルタに入射する多重光を中央値λ_med308より短波長側の波長の光と長波長側の波長の光に分波することが可能であればよいので、例えば、図6に太い一点鎖線により示す第4の透過特性309のように、中央値λ_med308より長波長側の波長λ4〜λ6を含む透過波長帯域を有する誘電体多層膜を用いて形成してもよい。
【0077】
以上のように、この発明の実施の形態4における光分波器は、複数の透過波長帯域が異なるバンドパスフィルタが透過波長帯域の広い順に配置される構成となっている。このような構成においても、従来6波長多重光を分波するために5個必要だったフィルタの枚数を3個に削減することができるという実施の形態3と同様の効果が得られる。
【0078】
また、この発明の光分波器は、まず、光分波器にm段備えられているバンドパスフィルタにより、n波長多重光を各波長の中央値より長波長側の1個の波長の光と短波長側の1個の波長の光からなるm個の2波長多重光と残りの光に分波し、その後、各波長の中央値にカットオフ波長を有するエッジパスフィルタにより、m個の2波長多重光と残りの光を各波長の光に分波することを特徴とする。
そのため、バンドパスフィルタに入射した光から、各波長の中央値より長波長側の1個の波長の光と短波長側の1個の波長の光からなる2波長多重光を、反射、または透過により分波することが可能ならば、バンドパスフィルタの配置順はこの限りではない。
よって、例えば、8波長以上の多重光を分波する場合には、透過波長帯域の広いバンドパスフィルタと狭いバンドパスフィルタを交互に配置する構成としても、実施の形態3と同様の効果が得られる。
【0079】
実施の形態5.
この発明の実施の形態5の構成を図6と図8に従って説明する。
この発明の実施の形態1〜4では、バンドパスフィルタにおいて反射または透過された光を、第1の反射ミラーにより折り返し、次段のバンドパスフィルタに入力させる構成の光分波器について説明したが、第1の反射ミラーは必ずしも必要ではない。そこで、実施の形態5では、第1の反射ミラーを備えていない光分波器の構成について説明する。
【0080】
図8は、この発明を実施するための実施の形態5における分波器の構成を示す図である。図8に示す光分波器は、光ファイバ1、レンズ2、透過波長帯が異なる2つのバンドパスフィルタ503、513、2つのエッジパスフィルタ505、515を有し、光ファイバ1より出射される6波長多重光を、波長λ1〜λ6の光に分波して出力するものである。
【0081】
図8を参照して、第1の反射ミラーを用いない光分波器の構成について説明する。
光ファイバ1は、波長λ1〜λ6の光が多重化された6波長多重光を端面より出射する。光ファイバ1の端面の前方に配置されたレンズ2によりコリメートされた光は第1段のバンドパスフィルタ503へ入射する。
【0082】
第1段のバンドパスフィルタ503は、図6に太い実線で示す第2の透過特性316の誘電体多層膜503bをガラス基板503a上に成膜して形成される。
第1段のバンドパスフィルタ503を透過した光は、第2段のバンドパスフィルタ513に入射する。また、第1段のバンドパスフィルタ503により反射された光は、第1段のエッジパスフィルタ505に入射する。
【0083】
第2段のバンドパスフィルタ513は、図6に細い実線で示す第1の透過特性306の誘電体多層膜513bをガラス基板513a上に成膜して形成される。
第2段のバンドパスフィルタ513を透過した光は、第2のエッジパスフィルタ515に入射する。また、第1段のバンドパスフィルタ503により反射された光は、第1のエッジパスフィルタ505に入射する。
【0084】
第1、第2のエッジパスフィルタ505、515は、図6に示す第3の透過特性307の誘電体多層膜505b、515bをガラス基板505a、505a上に成膜して形成される。
【0085】
第1段、第2段のバンドパスフィルタ503、513と第1、第2のエッジパスフィルタ505、515は、光が所望の位置を通過しているか確認しながら、それぞれの位置、および角度を調節するアクティブ調芯を行った後、図示していない光透過部材に固定される。そのため、アクティブ調芯後には、第1段、第2段のバンドパスフィルタ503、513と第1、第2のエッジパスフィルタ505、515が、図8に示すように互いに平行な状態でなくなる場合もある。
【0086】
次に、光分波器の動作について説明する。
光ファイバ1の端面から出射された波長λ1〜λ6の6波長多重光は、レンズ2によりコリメートされ、第1のバンドパスフィルタ503へ入射する。
【0087】
第1段のバンドパスフィルタ503に入射した波長λ1〜λ6の6波長多重光のうち、波長λ1とλ6の光からなる第1の2波長多重光は、第1段のバンドパスフィルタ503により反射されて第1のエッジパスフィルタ505へ入射し、残りの波長λ2〜λ5の光は、第1段のバンドパスフィルタ503を透過して第2段のバンドパスフィルタ513へ入射する。
【0088】
第2段のバンドパスフィルタ513に入射した波長λ2〜λ5の4波長多重光のうち、波長λ2、λ5の光からなる第2の2波長多重光は、第2段のバンドパスフィルタ513により反射されて第1のエッジパスフィルタ505へ入射し、残りの波長λ3、λ4の光からなる第3の2波長多重光は、第2段のバンドパスフィルタ513を透過して第2のエッジパスフィルタ515へ入射する。
【0089】
第1段のバンドパスフィルタ503により反射されて第1のエッジパスフィルタ505に入射した波長λ1とλ6の光からなる第1の2波長多重光のうち、波長λ1の光は第1のエッジパスフィルタ505を透過し、波長λ6の光は第1のエッジパスフィルタ505により反射される。
また、第2段のバンドパスフィルタ513により反射されて第1のエッジパスフィルタ505に入射した波長λ2とλ5の光からなる第2の2波長多重光のうち、波長λ2の光は第2のエッジパスフィルタ515を透過し、波長λ5の光は第2のエッジパスフィルタ515により反射される。
更に、第2のバンドパスフィルタ513を透過して第2のエッジパスフィルタ515に入射した波長λ3とλ4の光からなる第3の2波長多重光のうち、波長λ3の光は第2のエッジパスフィルタ515を透過し、波長λ4の光は第2のエッジパスフィルタ515により反射される。
その結果、第1、第2のエッジパスフィルタ505、515から異なる6つの波長λ1〜λ6の光が分波して出射される。
【0090】
なお、図8に示す第1、第2のエッジパスフィルタ505、515は、図6に示す第3の透過特性307の誘電体多層膜により形成されるとした。しかし、エッジパスフィルタに入射する多重光を中央値λ_med308より短波長側の波長の光と長波長側の波長の光に分波することが可能であればよいので、例えば、図6に太い一点鎖線により示す第4の透過特性309のように、中央値λ_med308より長波長側の波長λ4〜λ6を含む透過波長帯域を有する誘電体多層膜を用いて形成してもよい。
【0091】
以上のように、この発明の実施の形態5における光分波器は、第1の反射ミラーを削除し、第2のエッジパスフィルタ515を新たに設けた構成となっている。このような構成においても、従来6波長多重光を分波するために5個必要だったフィルタの枚数を4個に削減することができるという効果が得られる。
【0092】
なお、この発明の実施の形態5では、6波長多重光を分波する光分波器の構成について説明したが、これに限定されるものではなく、6波長以上の多重光であれば同様の効果を得ることができる。
【0093】
実施の形態6.
この発明の実施の形態6の構成を図9と図2に従って説明する。
この発明の実施の形態1〜5では、光路を確認しながらフィルタの位置や角度を調整し、図示していない光透過部材にフィルタを固定する構成の光分波器について説明した。
しかし、この発明の実施の形態6では、反射ミラーとフィルタが略平行になるように予め固定されているフィルタユニットを複数組み合わせた構成の光分波器について説明する。
【0094】
図9は、この発明の実施の形態6における分波器の構成を示す図である。図9に示す光分波器は、光ファイバ601、レンズ602、第1段のバンドパスフィルタ611と第1の反射ミラー612が設けられたバンドパスフィルタユニット610、エッジパスフィルタ621、622と第2の反射ミラー623、624が設けられたエッジパスフィルタユニット620を有し、光ファイバ601より出射される4波長多重光を、波長λ1〜λ4の光に分波して出力するものである。
【0095】
図9を参照して、4波長多重光を分波する光分波器の構成について説明する。
光ファイバ601は、波長λ1〜λ4の光が多重化された4波長多重光を端面より出射する。光ファイバ601の端面の前方に配置されたレンズ602によりコリメートされた光はバンドパスフィルタユニット610へ入射する。
【0096】
バンドパスフィルタユニット610は、第1の主面610aと、第1の主面に対する裏側である第2の主面610bと、第1の主面610aと第2の主面610bを繋ぐ側面からなる多面体形状であり、ガラス基板などの光透過部材により形成される。
バンドパスフィルタユニット610は、レンズ602によりコリメートされた光が所定の角度で入射するよう、レンズ602によりコリメートされた光の光路上に設けられる。
バンドパスフィルタユニット610に入射した光は、バンドパスフィルタユニット610の第1の主面610aに設けられた第1段のバンドパスフィルタ611に入射する。
【0097】
第1段のバンドパスフィルタ611は、図2に太い実線により示す第1の透過特性6の誘電体多層膜をガラス基板上に成膜して形成され、バンドパスフィルタユニット610に入射した光が、第1段のバンドパスフィルタユニット610の第1の主面610aと交差する位置に固定されている。
【0098】
第1段のバンドパスフィルタ611を透過した光は、エッジパスフィルタユニット620に入射する。また、第1段のバンドパスフィルタ611により反射された光は、第1の反射ミラー612により折り返された後、エッジパスフィルタユニット620に入射する。
【0099】
第1の反射ミラー612は光反射膜をガラス基板上に成膜して形成され、第1段のバンドパスフィルタ611により反射された光がバンドパスフィルタユニット610の第2の主面610bと交差する位置に設けられる。また、第1の反射ミラー612は、第1段のバンドパスフィルタ611と平行に固定されている。
【0100】
エッジパスフィルタユニット620は、第1の主面620aと、第1の主面620aに対する裏側である第2の主面620bと、第1の主面620aと第2の主面620bを繋ぐ側面からなる多面体形状であり、ガラス基板などの光透過部材により形成される。
エッジパスフィルタユニット620は、第1段のバンドパスフィルタ611を透過した光と、第1の反射ミラー612により折り返された光が入射するよう、これらの光の光路上に設けられる。
第1段のバンドパスフィルタ611を透過してエッジパスフィルタユニット620に入射した光は、エッジパスフィルタユニット620の第1の主面620aに設けられた一方のエッジパスフィルタ621に入射する。また、第1の反射ミラー612により折り返されてエッジパスフィルタユニット620に入射した光は、エッジパスフィルタユニット620の第1の主面620aに設けられた他方のエッジパスフィルタ622に入射する。
【0101】
エッジパスフィルタ621、622は図2に破線により示す第2の透過特性7の誘電体多層膜をガラス基板上に成膜して形成され、エッジパスフィルタユニット620に入射した光が、エッジパスフィルタユニット620の第1の主面620aと交差する位置に固定されている。
【0102】
エッジパスフィルタ621、622を透過した光は、それぞれレンズ640a、640cに入射する。また、エッジパスフィルタ621、622において反射された光は、第2の反射ミラー623、624により折り返された後、それぞれレンズ640b、640dに入射する。
【0103】
第2の反射ミラー623、624は光反射膜をガラス基板上に成膜して形成され、エッジパスフィルタ621、622により反射された光がエッジパスフィルタユニット620の第2の主面620bと交差する位置にそれぞれ設けられる。また、第2の反射ミラー623、624は、エッジパスフィルタ621、622と平行に固定されている。
【0104】
レンズ640a〜640dを並べたレンズアレイ640は入射した光を各レンズの焦点位置650a〜650dに集光する。各レンズの焦点位置650a〜650dには図示していない受光素子の受光部、または出力用の光ファイバの端面などが設けられ、各波長に分波された光は受光素子または光ファイバなどに出力される。
【0105】
なお、エッジパスフィルタユニット620とレンズアレイ640の間に、屈折による光の曲がりを補正するプリズム630を設けてもよい。
【0106】
次に、光分波器の動作について説明する。
光ファイバ601の端面から出射された波長λ1〜λ4の4波長多重光は、レンズ602によりコリメートされ、バンドパスフィルタユニット610に設けられた第1段のバンドパスフィルタ611へ入射する。
【0107】
第1段のバンドパスフィルタ611に入射した波長λ1〜λ4の4波長多重光のうち、波長λ2とλ3の光からなる第1の2波長多重光は第1段のバンドパスフィルタ611を透過し、残りの波長λ1とλ4の光は第1段のバンドパスフィルタ611により反射される。
第1段のバンドパスフィルタ611を透過した波長λ2とλ3の光からなる第1の2波長多重光は、エッジパスフィルタユニット620に設けられたエッジパスフィルタ621に入射する。
一方、第1段のバンドパスフィルタ611により反射された残りの波長λ1とλ4の光からなる第2の2波長多重光は、第1の反射ミラー612により、第1段のバンドパスフィルタ611を透過した光と平行に折り返された後、エッジパスフィルタユニット620に設けられたエッジパスフィルタ622に入射する。
このとき、第1段のバンドパスフィルタ611と第1の反射ミラー612が互いに平行になるよう予め固定されているため、バンドパスフィルタユニット610に入射して第1段のバンドパスフィルタ611を透過した第1の2波長多重光と、第1段のバンドパスフィルタ611により反射された後に第1の反射ミラーにより折り返された第2の2波長多重光は、互いに平行になる。
【0108】
エッジパスフィルタ621に入射した波長λ2とλ3の光からなる2波長多重光のうち、波長λ2の光はエッジパスフィルタ621を透過し、波長λ3の光は反射される。
エッジパスフィルタ621を透過した波長λ2の光は、プリズム630に入射する。そして、エッジパスフィルタ621により反射された波長λ3の光は、第2の反射ミラー623により折り返された後、プリズム630に入射する。
このとき、エッジパスフィルタ621と第2の反射ミラー623が互いに平行になるよう予め固定されているため、エッジパスフィルタユニット620に入射してエッジパスフィルタ621を透過した光と、バンドパスフィルタ621により反射されて第2の反射ミラーにより折り返された光とは、互いに平行になる。
【0109】
同様に、他方のエッジパスフィルタ622に入射した波長λ1とλ4の光からなる第2の2波長多重光は、互いに平行な波長λ1の光と波長λ4の光に分波され、波長λ1とλ4の光はプリズム630に入射する。
【0110】
4個の異なる波長λ1〜λ4の光は、プリズム630により屈折による曲がりが補正され、それぞれレンズ640a〜640dに入射する。レンズ640a〜640dに入射した光は、焦点位置650a〜650dに集光される。
【0111】
なお、図9に示すエッジパスフィルタ621、622は、図2に示す第2の透過特性7の誘電体多層膜により形成されるとした。しかし、エッジパスフィルタに入射する多重光を中央値λ_med8より短波長側の波長の光と長波長側の波長の光に分波することが可能であればよいので、例えば、図2に一点鎖線により示す第3の透過特性9のように、中央値λ_med8より長波長側の波長λ3、λ4を含む透過波長帯域を有する誘電体多層膜を用いて形成してもよい。
【0112】
次に、この発明の実施の形態6の光分波器における、光路の調整方法について説明する。
この発明の実施の形態6で用いられるバンドパスフィルタユニットとエッジパスフィルタユニットは、第1の主面と第2の主面に設けられたフィルタと反射ミラーが互いに平行になるよう、予め調整されている。そのため、各フィルタユニットに入射する光と出射する光は、常に平行になる。
また、レンズ640a〜640dは、レンズの光軸と平行な光がレンズの開口内に入射した場合には、入射した光を焦点位置650a〜650dに集光させる。そのため、レンズに入射した光が集光する位置は、レンズの中心に対する光の入射位置と、レンズの光軸に対する光の入射角により決まる。
【0113】
よって、図9に示す構成の光分波器において、予め決められている焦点位置650a〜650dに各波長の光が集光するよう調整するには、エッジパスフィルタユニット620から出射される互いに平行な4個の異なる波長λ1〜λ4の光が、レンズ640a〜640dの開口内に、レンズアレイ640の光軸に対して所定の入射角以内で入射するよう調整すればよい。つまり、この発明の実施の形態6の光分波器は、1度の調芯により、4個の光路を調整することができる。1度の調芯で光路を調整する方法の詳細については後述する。
【0114】
なお、この発明の実施の形態6では、エッジパスフィルタ621、622と第2の反射ミラー623、624をそれぞれ2個備えた構成の光分波器について説明した。
しかし、光の入射方向におけるエッジパスフィルタユニット620の厚さT2を、バンドパスフィルタユニット610の厚さT1より厚くすることにより、第1の反射ミラー612により折り返される光が、エッジパスフィルタ621に入射する光と第2の反射ミラー623により折り返される光の間を通過するようになる。そのため、エッジパスフィルタ621、622、および第2の反射ミラー623、624をそれぞれ一体化した構成とすることが可能になり、光学部品数を削減することができる。
【0115】
ここで、図10〜13を用いて、レンズ640a〜640dに入射し、焦点位置650a〜650dに集光される4個の異なる波長λ1〜λ4の光の光路とレンズ640a〜640dや焦点位置650a〜650dの公差について考察する。
上述したように、図9に示すレンズ640a〜640dに入射した光の焦点位置を変化させる要因は、レンズ640a〜640dの光軸641a〜641dに対する入射角のずれと、レンズ640a〜640dの中心に対する入射位置のずれである。
【0116】
まず、レンズの光軸に対する光の入射角のずれについて説明する。
以下では、図9に示すエッジパスフィルタ621と第2の反射ミラー623により分派された波長λ3、λ2の光の光路を用いて説明する。バンドパスフィルタ611やエッジパスフィルタ622により分派される光についても同様のことが成り立つが、ここでは説明を省略する。
図10は、この発明の実施の形態6の光分波器のエッジパスフィルタユニット620に入射してエッジパスフィルタ621を透過する透過光803と、エッジパスフィルタ621により反射された後、第2の反射ミラー623に入射する入射光805と、第2の反射ミラー623により折り返される反射光804の光路を示す図である。
【0117】
エッジパスフィルタユニット620に入射する光の光路に対し、エッジパスフィルタ621をθ1、第2の反射ミラー623をθ2、それぞれ傾斜させて設置する。
このとき、図10を参照して、透過光803に対する反射光804の平行からのずれθ3は、第2の反射ミラー623による反射光804の反射角θ4と第2の反射ミラー623の設置角度θ2の差により求められる。第2の反射ミラー623による反射光804の反射角θ4は、第2の反射ミラー623への入射光805の入射角θ5と等しい。また、入射角θ5は、エッジパスフィルタ621と平行になるように第2の反射ミラー623を設置したとき(θ2=θ1としたとき)に、第2の反射ミラー623への入射光805と反射光806が成す角θ6から第2の反射ミラー623の設置角度θ2を差し引いた角度に等しい。更に、第2の反射ミラー623への入射光805と反射光806が成す角θ6は、エッジパスフィルタ621により反射される光の入射角と反射角の和である(2×θ1)に等しい。
よって、透過光803に対する反射光804の平行からのずれθ3は、数2により表される。このときΔθはエッジパスフィルタ621と第2の反射ミラー623の傾斜角度の差、つまりエッジパスフィルタ621と第2の反射ミラー623の相対的な傾斜角度を表す。
【0118】
【数2】

【0119】
この発明の実施の形態6の光分波器においては、エッジパスフィルタ621と第2の反射ミラー623が予めエッジパスフィルタユニット620に固定されているため、エッジパスフィルタ621と第2の反射ミラー623の傾斜角度の差Δθは、常に一定である。そのため、透過光803に対する反射光804の平行からのずれθ3は、エッジパスフィルタユニット620の設置角度に依らず、常に一定である。透過光803に対する反射光804の平行からのずれθ3は、透過光803がレンズの光軸と平行にレンズに入射したときの、レンズの光軸に対する反射光804の入射角のずれに相当する。従って、レンズ640a、640bの光軸に対する入射角のずれは、エッジパスフィルタ621と第2の反射ミラー623の傾斜角度の差Δθのみにより決まる。
【0120】
次に、エッジパスフィルタ621と第2の反射ミラー623の傾斜角度の差Δθとレンズ640a、640bの焦点位置の移動量の関係について説明する。レンズの焦点距離がfの場合、レンズの焦点位置の移動量dは数3により求まる。
【0121】
【数3】

【0122】
図11は、エッジパスフィルタ621と第2の反射ミラー623の傾斜角度の差Δθとレンズ640bの焦点位置の移動量dの関係を示すグラフである。このときレンズ640a、640bの焦点距離fは1mmで、エッジパスフィルタ621の透過光803の入射角はレンズ640aの光軸に一致しているものとする。グラフの横軸はΔθ、縦軸は焦点位置の移動量dで、例えば、Δθが1分以下の場合、焦点位置の移動量は1μm以下となる。一方、図9に示した構成の光分波器では、バンドパスフィルタ611とエッジパスフィルタ621、622を用いて入射光を2回分波する。そのため、焦点位置の移動量は最大で2倍の2μm弱となる。この移動量は、光を集光する受光素子の受光部の大きさに対して十分小さい。よって、図9に示した構成の光分波器において、バンドパスフィルタ611と第1の反射ミラー612や、エッジパスフィルタ621、622と第2の反射ミラー623、624の傾斜角度に1分程度の差が生じたとしても、受光素子の受光部への光の結合は可能と言える。
【0123】
次に、レンズの中心に対する光の入射位置のずれについて説明する。
以下においても、図9に示すエッジパスフィルタ621と第2の反射ミラー623により分派された波長λ3、λ2の光の光路を用いて説明する。
図12は、この発明の実施の形態6の光分波器のエッジパスフィルタユニット620の設置角度がずれ、エッジパスフィルタ621への光の入射角度がθin変化した場合の光路を図10に書き加えた図である。エッジパスフィルタ621への光の入射角度がθin変化したとき、エッジパスフィルタ621を透過する透過光813と、エッジパスフィルタ621により反射された後、第2の反射ミラー623に入射する入射光815と、第2の反射ミラー623により折り返される反射光814は、何れも図12中に一点差線で示されている。
【0124】
エッジパスフィルタ621と第2の反射ミラー623は、エッジパスフィルタユニット620に予め固定されているため、エッジパスフィルタ621と第2の反射ミラー623の傾斜角度の差Δθは、エッジパスフィルタユニット620の設置角度に依らず一定で変化しない。そのため、エッジパスフィルタ621への光の入射角度がθin変化しても、エッジパスフィルタ621の透過光813に対する反射光814の射出角度の平行からのずれθ3は変化しない。しかし、エッジパスフィルタ621への光の入射角度がθin変化することにより、エッジパスフィルタ621において反射された光が第2の反射ミラー623に入射する角度もθin変化する。そのため、第2の反射ミラー623への入射光815の入射角θ5´、第2の反射ミラー623による反射光814の反射角θ4´、第2の反射ミラー623による反射光814がバンドパスフィルタユニット620から出射する角度θ3´も、数4のように、それぞれθin変化する。
【0125】
【数4】

【0126】
その結果、エッジパスフィルタユニット620から射出される透過光803と反射光804の間隔も変化する。
【0127】
図12を参照して、L1とL2はエッジパスフィルタユニット620から一定距離離れた位置における透過光803と反射光804の間隔を示している。L1はエッジパスフィルタ621への光の入射角が変化する前の透過光803と反射光804の間隔、L2はエッジパスフィルタ621への光の入射角がθin変化したときの透過光813と反射光814の間隔をそれぞれ示している。このように、エッジパスフィルタユニット620の設置角度により、透過光813と反射光814の光路の間隔が変化し、その結果、レンズ640a、640bの中心に対する光の入射位置がずれる。
【0128】
図13は、エッジパスフィルタ621への光の入射角度のずれθinと、レンズアレイ640の配置位置における透過光813と反射光814のビーム間隔の変化量との関係を、エッジパスフィルタ621と第2の反射ミラー623の傾斜角度の差Δθを−1分から1分まで変化させた場合について示した図である。このときのエッジパスフィルタユニット620の厚さ、つまり、図12を参照して、エッジパスフィルタ621を設けた面と第2の反射ミラー623を設けた面との間の距離t1を8mm、エッジパスフィルタユニット620からレンズ640bまでの距離t2を9mmとした。
【0129】
図13のグラフの縦軸に示すビーム間隔の変化量は、エッジパスフィルタ621の透過光813がレンズ640aの中心に入射するように調整した光分波器において、第2の反射ミラー623により折り返される反射光814がレンズ640bに入射したときに、その入射位置がレンズ640bの中心からずれる量に相当する。図13は、例えば、エッジパスフィルタ621と第2の反射ミラー623の傾斜角度の差Δθ=0と仮定すると、エッジパスフィルタ621へ入射する入射光813の入射角度が5〜6分ずれたとき、エッジパスフィルタ621の反射光814がレンズ640bに入射する位置は、レンズ640bの中心から20〜30μm程度ずれることを表している。直径が数百μmのレンズ開口に対し、光の入射位置の許容誤差(トレランス)が10%(数十μm)程度であると想定すると、エッジパスフィルタ621への光の入射角度のずれθin、つまりエッジパスフィルタユニット620の設置角度のずれは、5〜6分程度まで許容できると言える。
【0130】
図9に示した構成の光分波器では、バンドパフィルタ611とエッジパスフィルタ621、622を用いて入射光を2回分波する。そして、バンドパフィルタユニット610とエッジパスフィルタユニット620をそれぞれ2〜3分の角度精度で切り出し、各フィルタユニット610、620にフィルタ611、621、622と反射ミラー612、623、624とが互いに略平行になるように固定されている。また、4個のレンズ640a〜640dを並べたレンズアレイ640と、4個の受光素子650a〜650dを並べた受光素子アレイ650が組み合されている。
このような構成の光分波器においてアクティブ調芯を行うには、4個の異なる波長の光のうちいずれか1個の波長の光が受光素子の受光部に集光されるように、レンズ、受光素子の位置を調整すると同時に、4個の異なる波長の光の中心を結ぶ軸660と、4個のレンズ640a〜640dの中心を結ぶ軸670と、4個の受光素子の中心を結ぶ軸680とが平行になるよう調整する。つまり、1回のアクティブ調芯のみで4個の波長の光をそれぞれ受光素子へ結合させることができる。
【0131】
実施の形態7.
この発明の実施の形態7の構成を図14と図15に従って説明する。
この発明の実施の形態6では、フィルタユニット610、620の第1の主面610a、620aと第2の主面610b、620bに、フィルタ611、621、622と反射ミラー612、623、624が、互いに略平行になるように予め固定されていた。しかし、実施の形態7では、フィルタユニットの第1および第2の主面に、直接、フィルタや反射ミラーを形成する誘電体多層膜や光反射膜を成膜することにより、互いに平行なフィルタと反射ミラーを形成する点が実施の形態6と異なる。
【0132】
図14は、この発明の実施の形態7の光分波器を構成するバンドパスフィルタユニットの製造方法を説明する図である。図15は、この発明の実施の形態7の光分波器を構成するエッジパスフィルタユニットの製造工程を説明する図である。
【0133】
まず、図14を参照して、バンドパスフィルタユニットの構成と製法の一例について説明する。
初めに、第1の主面911と第2の主面912の平行からのずれが1分以下で、所望の厚みT1を有するガラス基板910の第1の主面911に図2に太い実線により示す第1の透過特性6の誘電体多層膜920が、第2の主面912に光反射膜930がそれぞれ成膜される(図14(a))。
次に、所望の光入射位置の膜を残すように、誘電体多層膜920と光反射膜930の一部がエッチングにより除去される(図14(b))。
最後に、ガラス基板910は、図14中にA−A、B−B、C−Cで示した面で切断され、切断面が研磨される(図14(c))。
以上の工程により、バンドパスフィルタユニット913が形成される(図14(d))。
第1の主面911に残された誘電体多層膜921はバンドパスフィルタとして、第2の主面912に残された光反射膜931は第1の反射ミラーとしてそれぞれ機能する。
【0134】
次に、図15を参照して、エッジパスフィルタユニットの構成と製法の一例について説明する。
初めに、第1の主面941と第2の主面942の平行からのずれが1分以下で、所望の厚みT2を有するガラス基板940の第1の主面941に、図2に破線により示す第2の透過特性7の誘電体多層膜950が、第2の主面942には光反射膜960がそれぞれ成膜される(図15(a))。
次に、所望の光入射位置の膜を残すように、誘電体多層膜950と光反射膜960の一部がエッチングにより除去される(図15(b))。
最後に、ガラス基板940は、図15中にD−D、E−Eで示した面で切断され、切断面が研磨される(図15(c))。
以上の工程により、エッジパスフィルタユニット943が形成される(図15(d))。
第1の主面941に残された誘電体多層膜951、952はバンドパスフィルタとして、第2の主面942に残された光反射膜961、962は第2の反射ミラーとしてそれぞれ機能する。
【0135】
以上のような構成のフィルタユニットを備えた光分波器においては、各フィルタユニットとして用いられるガラス基板910、940は、第1の主面と第2の主面との平行からのずれが1分以下であることが予め保証されている。そのため、ガラス基板910、940の第1の主面と第2の主面に、高精度な平面を有するフィルタやミラーを形成することが容易で、フィルタと反射ミラーとを数十秒の精度で平行化することが可能と考えられる。
よって、ガラス基板910、940の切断面914、944における角度の公差が2〜3分程度となることを考慮すると、以上のような構成の2個のフィルタユニットを用いた光分波器は、切断面914、944を基準面に突き当てる突き当て調芯により、4〜6分程度の精度で組み立てることが可能である。
【0136】
また、ガラス基板910、940上に成膜する誘電体多層膜920、950は、ガラス基板910、940が厚いほど、ガラスと誘電体多層膜の熱膨張率の差による熱応力の影響を受けにくくなり、撓みが生じにくくなる。そのため、図14、15に示すように、厚みのあるガラス基板910、940上に直接成膜した状態の誘電体多層膜920、950をフィルタとして用いることにより、フィルタの撓みを小さくすることができる。具体的には、ガラスの厚みと誘電体多層膜の撓みは二乗の関数で表され、ガラスの厚みが2倍になると、誘電体多層膜の撓みが1/4に軽減される。
【0137】
なお、透過波長帯域が異なるバンドパスフィルタを複数段用いる光分波器においては、ガラス基板の同一面に異なる特性の誘電体多層膜を形成することが困難なため、1段分のバンドパスフィルタと第1の反射ミラーを備えたバンドパスフィルタユニットを複数個組み合わせる構成とすればよい。
図16は、バンドパスフィルタユニットを複数個組み合わせた光分波器の構成の一例を示す図である。図16に示す光分波器は、光ファイバ701、レンズ702、第1のバンドパスフィルタユニット710、第2のバンドパスフィルタユニット720、エッジパスフィルタユニット730を有し、光ファイバ701より出射される6波長多重光を、波長λ1〜λ6の光に分波して出力するものである
【0138】
第1のバンドパスフィルタユニット710の第1の主面710aには、図6に細い実線で示す第1の透過特性306の誘電体多層膜711が、第2の主面710bには、光反射膜712がそれぞれ成膜される。第2のバンドパスフィルタユニット720の第1の主面720aには、図6に太い実線により示す第2の透過特性316の誘電体多層膜721が、第2の主面720bには、光反射膜722がそれぞれ成膜される。誘電体多層膜711、721はバンドパスフィルタとして、光反射膜712、722は第1の反射ミラーとしてそれぞれ機能する。
【0139】
第1のバンドパスフィルタユニット710は、光ファイバ701の端面の前方に配置されたレンズ702によりコリメートされた光が所定の角度で入射するよう、レンズ702によりコリメートされた光の光路状に設けられる。
第1のバンドパスフィルタユニット710に入射した光は、第1のバンドパスフィルタユニット710の第1の主面710aに設けられた誘電体多層膜711に入射する。
誘電体多層膜711を透過した光は、エッジパスフィルタユニット730に入射する。また、誘電体多層膜711により反射された光は、第1のバンドパスフィルタユニット710の第2の主面710bに設けられた光反射膜712により折り返された後、第2のバンドパスフィルタユニット720に入射する。
【0140】
第2のバンドパスフィルタユニット720に入射した光は、第2のバンドパスフィルタユニット720の第1の主面720aに設けられた誘電体多層膜721に入射する。
誘電体多層膜721を透過した光は、エッジパスフィルタユニット730に入射する。また、誘電体多層膜721により反射された光は、第2のバンドパスフィルタユニット720の第2の主面720bに設けられた光反射膜722により折り返された後、エッジパスフィルタユニット730に入射する。
【0141】
エッジパスフィルタユニット730の第1の主面730aには、図6に破線で示す第3の透過特性307の誘電体多層膜731、732、733が、第2の主面730bには、光反射膜734、745、746がそれぞれ成膜されている。誘電体多層膜731、732、733はエッジパスフィルタとして、光反射膜734、745、746は第2の反射ミラーとしてそれぞれ機能する。
【0142】
エッジパスフィルタユニット730は、第1のバンドパスフィルタユニット710の第1の主面710aに設けられた誘電体多層膜711を透過した光と、第2のバンドパスフィルタユニット720の第1の主面720aに設けられた誘電体多層膜721を透過した光と、第2のバンドパスフィルタユニット720の第2の主面720bに設けられた光反射膜722により折り返された光が入射するよう、これらの光の光路上に設けられる。
エッジパスフィルタユニット730に入射した光は、エッジパスフィルタユニット730の第1の主面730aに設けられた誘電体多層膜731、732、733に入射する。
【0143】
エッジパスフィルタユニット730の第1の主面730aに設けられた誘電体多層膜711を透過した光は、それぞれレンズ750a、750c、750eに入射する。また、エッジパスフィルタユニット730の第2の主面730bに設けられた誘電体多層膜731、732、733により反射された光は、エッジパスフィルタユニット730の第2の主面730bに設けられた光反射膜734、735、736により折り返された後、それぞれレンズ750b、750d、750fに入射する。
【0144】
以上のような構成とすることにより、バンドパスフィルタユニット710、720やエッジパスフィルタユニット730の第1、第2の主面に、直接、誘電体多層膜や光反射膜を成膜してバンドパスフィルタやエッジパスフィルタやミラーを形成する場合であっても、透過波長帯域が異なるバンドパスフィルタを複数段用いた光分波器を実現することができる。
【符号の説明】
【0145】
1 光ファイバ、2 レンズ、3 バンドパスフィルタ、3a ガラス基板、3b 誘電体多層膜、4 第1の反射ミラー、4a ガラス基板、4b 光反射膜、5 エッジパスフィルタ、5a ガラス基板、5b 誘電体多層膜、8 中央値。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
n個の異なる波長の光を含むn波長多重光を各波長の光に分波して出力する分波器であって、
入力された光のうち前記n個の異なる波長の略中央値より短波長側のi個の波長と長波長側のi個の波長とを含む透過波長帯域を有し、前記透過波長帯域に含まれる波長の光を透過し、その他の波長の光を反射する特性を有するバンドパスフィルタをm段備え、
前記n波長多重光が前記1段目のバンドパスフィルタに入力され、
前記1段目からm段目のバンドパスフィルタにおいて透過された光または反射された光の何れか一方の光が、前記中央値より短波長側の1個の波長の光と長波長側の1個の波長の光からなる2波長多重光であり、他方の光が、前記入力された光から前記2波長多重光を除いた残りの光で、かつ次段のバンドパスフィルタに入力され、
前記中央値より短波長側の波長または長波長側の波長の何れか一方の波長の光を透過し、他方の波長の光を反射する特性を有し、前記1段目からm段目のバンドパスフィルタにおける前記一方の光と前記m段目のバンドパスフィルタにおける前記他方の光が入力され、これらの光を各波長の光に分波するエッジパスフィルタを備えた光分波器。
(ただし、nは4以上の整数、iは1以上m以下の整数、mは((n/2)−1)でnが奇数の場合は小数点以下切り上げ。)
【請求項2】
各バンドパスフィルタにおいて透過または反射された光を折り返して互いに平行にする第1の反射ミラーを有することを特徴とする請求項1に記載の光分波器。
【請求項3】
各バンドパスフィルタにおいて透過または反射された光を折り返して互いに平行にする第1の反射ミラーと、
エッジパスフィルタにおいて透過または反射された光を折り返して互いに平行にする第2の反射ミラーを有することを特徴とする請求項1に記載の光分波器。
【請求項4】
第1の主面と前記第1の主面に対する裏面である第2の主面、および前記第1の主面と第2の主面とを繋ぐ側面からなるm個のバンドパスフィルタユニットと、
第1の主面と前記第1の主面に対する裏面である第2の主面、および前記第1の主面と第2の主面とを繋ぐ側面からなるエッジパスフィルタユニットとを有し、
前記m個のバンドパスフィルタユニットの第1の主面にバンドパスフィルタがそれぞれ設けられ、前記バンドパスフィルタにおいて反射された光が前記バンドパスフィルタユニットの第2の主面と交差する位置には前記バンドパスフィルタと平行に第1の反射ミラーが設けられ、
前記エッジパスフィルタユニットの第1の主面にエッジパスフィルタが設けられ、前記エッジパスフィルタにおいて反射された光が前記エッジパスフィルタユニットの第2の主面と交差する位置には前記エッジパスフィルタと平行に第2の反射ミラーが設けられ、
前記m個のバンドパスフィルタが同一平面内に配置され、前記m個のバンドパスフィルタと前記エッジパスフィルタが互いに平行に配置されることを特徴とする請求項3に記載の光分波器。
【請求項5】
バンドパスフィルタユニットとエッジパスフィルタユニットは、第1の主面と第2の主面が平行で所望の厚さを有する光透過部材からなり、
前記バンドパスフィルタユニットの第1の主面に設けられたバンドパスフィルタは誘電体多層膜により形成され、前記バンドパスフィルタユニットの第2の主面に設けられた第1の反射ミラーは高反射膜により形成され、
前記エッジパスフィルタユニットの第1の主面に設けられたエッジパスフィルタは誘電体多層膜により形成され、前記エッジパスフィルタユニットの第2の主面に設けられた第2の反射ミラーは高反射膜により形成されることを特徴とする請求項4に記載の光分波器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2012−118113(P2012−118113A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−265242(P2010−265242)
【出願日】平成22年11月29日(2010.11.29)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】