説明

光半導体素子封止用熱硬化性樹脂組成物およびその硬化体、ならびにそれを用いて得られる光半導体装置

【課題】光半導体装置製造時における樹脂クラックの発生が抑制され、低応力性および耐光性に優れた光半導体素子封止用熱硬化性樹脂組成物を提供する。
【解決手段】下記の(A)〜(D)成分を含有する光半導体素子封止用熱硬化性樹脂組成物からなる。(A)シロキサン構造と2つのイソシアヌル酸基とを持つ特定のテトラエポキシ化合物。(B)酸無水物系硬化剤。(C)加熱縮合型オルガノシロキサン。(D)硬化促進剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発光素子や受光センサー等の光半導体素子の樹脂封止に用いられる光半導体素子封止用熱硬化性樹脂組成物およびその硬化体、ならびにそれを用いて得られる光半導体装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、発光素子や受光センサー等の光半導体素子を樹脂封止する際に用いられる光半導体素子封止用樹脂組成物としては、樹脂封止部分となる硬化体に対して透明性が要求されることから、ビスフェノールA型エポキシ樹脂等のエポキシ樹脂と酸無水物等の硬化剤とを用いて得られるエポキシ樹脂組成物が汎用されている。
【0003】
しかしながら、近年、発光素子に関しては高輝度化が進む一方、受光センサーに関しては車載用途やブルーレイ(登録商標)ディスク対応機器のピックアップとしての普及が広まりつつあることから、従来よりも高い耐熱変色性あるいは耐光性を有する封止用の熱硬化性樹脂材料が求められている。
【0004】
上記光半導体装置用エポキシ樹脂組成物における、耐熱性あるいは耐光性を向上させる手法として、多官能のエポキシ樹脂を用いて得られる硬化体のガラス転移温度(以下「Tg」ともいう)を高くする手法や、脂環式エポキシ樹脂を用いて光の吸収による光劣化を抑制する手法が従来から採用されている(例えば特許文献1,2参照)。
【0005】
一方、エポキシ樹脂よりもさらに高い耐光性を得ることを目的に、近年、エポキシ変性シリコーン樹脂を用いた光半導体用熱硬化性樹脂組成物や、エポキシ樹脂組成物とシリコーン樹脂を混合した複合封止材料が、高耐光性封止樹脂として脚光を浴びている(例えば特許文献3,4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−226551号公報
【特許文献2】特開2003−277473号公報
【特許文献3】特開2002−324920号公報
【特許文献4】特開2006−213762号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、一般に、上記のように、耐熱性および耐光性の向上を図るために、多官能エポキシ樹脂や脂環式エポキシ樹脂とシリコーン樹脂との混合物を用い熱硬化性樹脂組成物として用いた場合、樹脂成形物(硬化体)の強度低下を引き起こすことから、例えば、樹脂封止して得られる光半導体装置のハンダリフローや温度サイクルといった試験においては熱収縮により封止樹脂(硬化体)にクラックが発生するという問題が生じる恐れがあった。
【0008】
本発明は、このような事情に鑑みなされたもので、光半導体装置製造時における樹脂クラックの発生が抑制された、低応力性および耐光性に優れた光半導体素子封止用熱硬化性樹脂組成物およびその硬化体、ならびにそれを用いて得られる光半導体装置の提供をその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するために、本発明は、下記の(A)〜(D)成分を含有する光半導体素子封止用熱硬化性樹脂組成物を第1の要旨とする。
(A)下記の一般式(1)で表されるエポキシ基含有シロキサン化合物。
【化1】

(B)酸無水物系硬化剤。
(C)加熱縮合型オルガノシロキサン。
(D)硬化促進剤。
【0010】
また、本発明は、上記光半導体素子封止用熱硬化性樹脂組成物を加熱硬化してなる光半導体素子封止用熱硬化性樹脂組成物硬化体を第2の要旨とする。
【0011】
そして、本発明は、上記光半導体素子封止用熱硬化性樹脂組成物を用いて、光半導体素子を樹脂封止してなる光半導体装置を第3の要旨とする。
【0012】
すなわち、本発明者らは、多官能エポキシ樹脂や脂環式エポキシ樹脂を用いた封止材料によって樹脂封止した際に生じるクラックの発生が効果的に抑制され、低応力性および耐光性に優れた光半導体素子封止用としての熱硬化性樹脂組成物を得るべく鋭意検討を重ねた。その結果、上記一般式(1)で表されるエポキシ基含有シロキサン化合物〔(A)成分〕および加熱縮合型オルガノシロキサン〔(C)成分〕を併用すると、上記エポキシ基含有シロキサン化合物の有する可撓性に加えて、上記オルガノシロキサンの有する優れた耐光性および耐熱性が付与され、両者の併用による相乗効果によって低応力性の向上効果による優れた耐リフロークラック性および耐光性が付与されることとなり、所期の目的が達成されることを見出し本発明に到達した。
【発明の効果】
【0013】
このように、本発明は、上記特定のエポキシ基含有シロキサン化合物〔(A)成分〕と、酸無水物系硬化剤〔(B)成分〕と、加熱縮合型オルガノシロキサン〔(C)成分〕と、硬化促進剤〔(D)成分〕を含有する光半導体素子封止用熱硬化性樹脂組成物である。このため、高いガラス転移温度(Tg)を維持し、かつ優れた強度および撓み性を備えた透明な硬化体を形成することが可能となり、さらに優れた耐熱変色性および耐光性を備えたものが得られる。したがって、この熱硬化性樹脂組成物を用いて光半導体素子を樹脂封止することにより、耐リフロークラック性および耐光性を併せ持つ、高い信頼性を備えた光半導体装置が得られる。
【0014】
さらに、上記各成分に加えて、1分子中に2個以上のエポキシ基を有する、上記(A)成分以外のエポキシ樹脂〔(E)成分〕を用いると、硬化剤との反応性を容易に制御でき、得られる硬化物のガラス転移温度(Tg)や弾性率の制御を容易に行なうことができる。
【0015】
そして、上記酸無水物系硬化剤〔(B)成分〕の含有割合が、熱硬化性樹脂組成物全体中のエポキシ基1当量に対して上記酸無水物系硬化剤〔(B)成分〕中の酸無水基を特定範囲に設定すると、熱硬化性樹脂組成物の硬化速度が適正なものに設定可能になるとともに、硬化体のガラス転移温度(Tg)の低下や、耐湿性の低下を抑制することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の光半導体素子封止用熱硬化性樹脂組成物(以下「熱硬化性樹脂組成物」ともいう)は、特定のエポキシ基含有シロキサン化合物(A成分)と、酸無水物系硬化剤(B成分)と、加熱縮合型オルガノシロキサン(C成分)と、硬化促進剤(D成分)とを用いて得られるものであり、通常、液状、あるいは粉末状、もしくはその粉末を打錠したタブレット状にして封止材料に供される。
【0017】
上記特定のエポキシ基含有シロキサン化合物(A成分)は、下記の一般式(1)で表されるものである。
【0018】
【化2】

【0019】
上記式(1)中、R1は炭素数1〜10の1価の炭化水素基であるが、このような炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、ヘキシル基、オクチル基、イソオクチル基、デシル基等の直鎖状炭化水素基、シクロヘキシル基等の脂肪族炭化水素基、フェニル基等の芳香族炭化水素基等があげられ、これらは互いに同じであっても異なっていてもよい。
【0020】
上記式(1)中、R2は炭素数1〜20の2価の炭化水素基であり、内部にエーテル性またはエステル性酸素原子を含有していてもよい。そして、このような炭化水素基としては、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ヘキシレン基、オクチレン基、デシレン基等があげられ、これらは互いに同じであっても異なっていてもよい。
【0021】
さらに、上記式(1)中、繰り返し数nは0〜20の整数であるが、好ましくはnは1〜10の整数、特に好ましくは4〜8の整数である。
【0022】
上記エポキシ基含有シロキサン化合物(A成分)は、エポキシ当量としては150〜1000g/eqであることが好ましい。エポキシ当量が小さすぎると、直鎖シロキサン結合が短すぎるため、得られる硬化物の低応力化が不充分になる恐れがある。また、エポキシ当量が大きすぎると、直鎖シロキサン結合が長くなりすぎるため、反応性や他の成分との相溶性が損なわれる恐れがあるからである。
【0023】
そして、上記エポキシ基含有シロキサン化合物(A成分)としては、例えば、25℃において液状を示すものであってもよいし、固体を示すものであってもよい。固体を示すものである場合、他の配合成分との溶融混合という観点から、軟化点が150℃以下であることが好ましく、特に好ましくは120℃以下である。
【0024】
上記一般式(1)で表されるエポキシ基含有シロキサン化合物(A成分)は、例えば、下記の一般式(2)で表されるシロキサン化合物と、1分子中に二重結合を1つ有するN′,N″−ジグリシジルイソシアヌレート化合物との反応により得ることができる。
【0025】
【化3】

【0026】
上記1分子中に二重結合を1つ有するN′,N″−ジグリシジルイソシアヌレート化合物としては、N−アリル−N′,N″−ジグリシジルイソシアヌレートが、耐熱性の向上という観点から、より一層好適に用いられる。なお、上記式(2)中の、R1およびnは前述の式(1)に相当する。
【0027】
上記A成分とともに用いられる酸無水物系硬化剤(B成分)としては、例えば、無水フタル酸、無水マレイン酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、無水メチルナジック酸、無水ナジック酸、無水グルタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸等があげられる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いることができる。これら酸無水物系硬化剤の中でも、無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸を単独でもしくは2種以上併せて用いることが好ましい。さらに、酸無水物系硬化剤(B成分)としては、その分子量が、140〜200程度のものが好ましく、また、無色ないし淡黄色の酸無水物系硬化剤が好ましい。
【0028】
上記エポキシ基含有シロキサン化合物(A成分)と酸無水物系硬化剤(B成分)との配合割合は、エポキシ基含有シロキサン化合物(A成分)を含む熱硬化性樹脂組成物中のエポキシ基1当量に対して、酸無水物系硬化剤(B成分)中におけるエポキシ基と反応可能な活性基(酸無水基または水酸基)が0.5〜1.5当量となるよう設定することが好ましく、より好ましくは0.7〜1.2当量である。すなわち、活性基が少なすぎると、熱硬化性樹脂組成物の硬化速度が遅くなるとともに、その硬化体のガラス転移温度(Tg)が低くなる傾向がみられ、活性基が多すぎると耐湿性が低下する傾向がみられるからである。
【0029】
また、上記酸無水物系硬化剤(B成分)としては、その目的および用途に応じて、上記酸無水物系硬化剤以外の他のエポキシ樹脂系の硬化剤、例えば、フェノール系硬化剤、アミン系硬化剤、上記酸無水物系硬化剤をアルコールで部分エステル化したもの、または、ヘキサヒドロフタル酸、テトラヒドロフタル酸、メチルヘキサヒドロフタル酸等のカルボン酸類の硬化剤を、単独で、もしくは上記酸無水物系硬化剤およびフェノール系硬化剤と併せて用いてもよい。例えば、カルボン酸類の硬化剤を併用した場合には、硬化速度を速めることができ、生産性を向上させることができる。なお、これら硬化剤を用いる場合においても、その配合割合は、上記酸無水物系硬化剤を用いた場合の配合割合(当量比)に準じればよい。
【0030】
上記A成分およびB成分とともに用いられる加熱縮合型オルガノシロキサン(C成分)は、樹脂成分と溶融混合可能なものであればよく、各種ポリオルガノシロキサン、すなわち、無溶剤で固形、または常温(25℃近傍)で液状のポリオルガノシロキサンを用いることができる。このようなオルガノシロキサンは、熱硬化性樹脂組成物硬化体中に、ナノ単位で均一に分散可能なものであればよい。
【0031】
上記加熱縮合型オルガノシロキサン(C成分)としては、例えば、その構成成分となるシロキサン単位が、下記の一般式(3)で表されるものがあげられる。
【0032】
m(OR1nSiO(4-m-n)/2 ・・・(3)
〔式(3)中、Rは炭素数1〜18の置換または未置換の飽和一価炭化水素基であり、同じであっても異なっていてもよい。また、R1は水素原子または炭素数1〜6のアルキル基であり、同じであっても異なっていてもよい。さらに、m,nは各々0〜3の整数である。〕
【0033】
そして、一分子中に少なくとも一個のケイ素原子に結合した水酸基またはアルコキシ基を有し、ケイ素原子に結合した一価の炭化水素基(R)中、10モル%以上が置換または未置換の芳香族炭化水素基であるものがあげられる。
【0034】
上記式(3)において、炭素数1〜18の置換または未置換の飽和一価炭化水素基であるRのうち、未置換の飽和一価炭化水素基としては、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ヘキシル基、イソヘキシル基、ヘプチル基、イソヘプチル基、オクチル基、イソオクチル基、ノニル基、デシル基等の直鎖状または分岐状のアルキル基や、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロオクチル基、ジシクロペンチル基、デカヒドロナフチル基等のシクロアルキル基、さらに芳香族基として、フェニル基、ナフチル基、テトラヒドロナフチル基、トリル基、エチルフェニル基等のアリール基、ベンジル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基、メチルベンジル基等のアラルキル基等があげられる。
【0035】
一方、上記式(3)のRにおいて、置換された飽和一価炭化水素基としては、具体的には、炭化水素基中の水素原子の一部または全部がハロゲン原子、シアノ基、アミノ基、エポキシ基等によって置換されたものがあげられ、具体的には、クロロメチル基、2−ブロモエチル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基、3−クロロプロピル基、クロロフェニル基、ジブロモフェニル基、ジフルオロフェニル基、β−シアノエチル基、γ−シアノプロピル基、β−シアノプロピル基等の置換炭化水素基等があげられる。
【0036】
そして、上記オルガノシロキサン(C成分)として、先のエポキシ基含有シロキサン化合物(A成分)との親和性および得られる熱硬化性樹脂組成物の特性の点から、上記式(3)中のRとして好ましいものは、アルキル基またはアリール基であり、上記アルキル基の場合、より好ましくは炭素数1〜3のアルキル基として先に例示したものであり、特に好ましいのはメチル基である。また、アリール基として特に好ましいのはフェニル基である。上記式(3)中のRとして選択されるこれら基は、同一のシロキサン単位の中で、またはシロキサン単位の間で同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0037】
上記オルガノシロキサン(C成分)では、例えば、上記式(3)で表されるその構造において、ケイ素原子に結合した一価の炭化水素基(R)は、その10モル%以上が芳香族炭化水素基から選択されることが好ましい。すなわち、芳香族炭化水素基が少なすぎると、エポキシ基含有シロキサン化合物との親和性が不充分であるためにオルガノシロキサンをエポキシ基含有シロキサン化合物中に溶解,分散させた場合に不透明となり、得られる熱硬化性樹脂組成物の硬化物においても耐光劣化性および物理的な特性において充分な効果が得られないという傾向がみられるからである。このような芳香族炭化水素基の含有量は、より好ましくは30モル%以上であり、特に好ましくは40モル%以上である。なお、上記芳香族炭化水素基の含有量の上限は、100モル%である。
【0038】
また、上記式(3)の(OR1)は、水酸基またはアルコキシ基であって、(OR1)がアルコキシ基である場合のR1としては、具体的には、前述のRについて例示したアルキル基において炭素数1〜6のものである。より具体的には、R1としては、メチル基、エチル基、イソプロピル基があげられる。これらの基は、同一のシロキサン単位の中で、またはシロキサン単位の間で同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0039】
さらに、上記オルガノシロキサン(C成分)は、その1分子中に少なくとも1個のケイ素原子に結合した水酸基またはアルコキシ基、すなわち、オルガノシロキサンを構成するシロキサン単位の少なくとも一個に式(3)の(OR1)基を有することが好ましい。すなわち、上記水酸基またはアルコキシ基を有しない場合には、エポキシ樹脂との親和性が不充分となり、またその機構は定かではないもののこれら水酸基またはアルコキシ基がエポキシ樹脂の硬化反応のなかで何らかの形で作用するためと考えられるが、得られる熱硬化性樹脂組成物により形成される硬化物の物理的特性も充分なものが得られ難い。そして、上記オルガノシロキサン(C成分)において、ケイ素原子に結合した水酸基またはアルコキシ基の量は、好ましくは、OH基に換算して0.1〜15重量%の範囲に設定され、より好ましくは1〜10重量%である。すなわち、水酸基またはアルコキシ基の量が上記範囲を外れると、エポキシ基含有シロキサン化合物(A成分)との親和性に乏しくなり、特に多すぎると(例えば、15重量%を超える)、自己脱水反応や脱アルコール反応を生じる可能性があるからである。
【0040】
上記式(3)において、繰り返し数mおよびnは、それぞれ0〜3の整数である。そして、上記繰り返し数mおよびnがとりうる数は、シロキサン単位毎に異なるものであり、上記ポリオルガノシロキサンを構成するシロキサン単位を、より詳細に説明すると、下記の一般式(4)〜(7)で表されるA1〜A4単位があげられる。
【0041】
A1単位:(R)3SiO1/2 ・・・(4)
A2単位:(R)2(OR1nSiO(2-n)/2 ・・・(5)
〔式(5)において、nは0または1である。〕
A3単位:(R)(OR1nSiO(3-n)/2 ・・・(6)
〔式(6)において、nは0,1または2である。〕
A4単位:(OR1nSiO(4-n)/2 ・・・(7)
〔式(7)において、nは0〜3の整数である。〕
〔上記式(4)〜(7)において、Rは炭素数1〜18の置換または未置換の飽和一価炭化水素基であり、同じであっても異なっていてもよい。また、R1は水素原子または炭素数1〜6のアルキル基であり、同じであっても異なっていてもよい。〕
【0042】
すなわち、前記式(3)のmにおいて、m=3の場合が上記式(4)で表されるA1単位に、m=2の場合が上記式(5)で表されるA2単位に、m=1の場合が上記式(6)で表されるA3単位に、m=0の場合が上記式(7)で表されるA4単位にそれぞれ相当する。このなかで、上記式(4)で表されるA1単位は1個のシロキサン結合のみであって末端基を構成する構造単位であり、上記式(5)で表されるA2単位は、nが0の場合には2個のシロキサン結合を有し線状のシロキサン結合を構成する構造単位であり、上記式(6)で表されるA3単位においてnが0の場合、および上記式(7)で表されるA4単位においてnが0または1の場合には、3個または4個のシロキサン結合を有することができ、分岐構造または架橋構造に寄与する構造単位である。
【0043】
さらに、上記オルガノシロキサン(C成分)において、上記式(4)〜(7)で表される各A1〜A4単位の構成割合が、下記の(a)〜(d)の割合に設定されていることが好ましい。
(a)A1単位が0〜30モル%。
(b)A2単位が0〜80モル%。
(c)A3単位が20〜100モル%。
(d)A4単位が0〜30モル%。
【0044】
より好ましくはA1単位およびA4単位が0モル%、A2単位が5〜70モル%、A3単位が30〜100モル%である。すなわち、各A1〜A4単位の構成割合を上記範囲に設定することにより、硬化体に適度な硬度や弾性率を付与(維持)することができるという効果が得られるようになり一層好ましい。
【0045】
上記オルガノシロキサン(C成分)は、上記各構成単位が相互にまたは連なって結合しているものであって、そのシロキサン単位の重合度は、6〜10,000の範囲であることが好ましい。そして、上記オルガノシロキサン(C成分)の性状は、重合度および架橋度によって異なり、液状または固体状のいずれであってもよい。
【0046】
このような式(3)で表されるシロキサン単位を有するオルガノシロキサンは、つぎのようにして製造することができる。例えば、オルガノシラン類およびオルガノシロキサン類の少なくとも一方を、トルエン等の溶媒存在下で加水分解する等の反応によって得られる。特に、オルガノクロロシラン類またはオルガノアルコキシシランを加水分解縮合する方法が一般的に用いられる。ここで、オルガノ基は、アルキル基やアリール基等の前記式(3)中のRに相当する基である。前記式(4)〜(7)で表されるA1〜A4単位は、それぞれ原料として用いるシラン類の構造と相関関係にあり、例えば、クロロシランの場合は、トリオルガノクロロシランを用いると前記式(4)で表されるA1単位が、ジオルガノジクロロシランを用いると前記式(5)で表されるA2単位が、オルガノクロロシランを用いると前記式(6)で表されるA3単位が、テトラクロロシランを用いると前記式(7)で表されるA4単位がそれぞれ得られる。また、上記式(3),(5)〜(7)において、(OR1)として示されるケイ素原子の置換基は、縮合されなかった加水分解の残基である。
【0047】
また、上記オルガノシロキサン(C成分)が、常温で固形を示す場合は、軟化点(流動点)は熱硬化性樹脂組成物との溶融混合の観点から、150℃以下であることが好ましく、特に好ましくは120℃以下である。
【0048】
上記オルガノシロキサン(C成分)の含有量は、熱硬化性樹脂組成物全体の5〜60重量%の範囲に設定することが好ましい。特に好ましくは、その線膨張係数が大きくなることを考慮して、10〜40重量%の範囲である。すなわち、C成分の含有量が少なすぎると、耐熱性および耐光劣化性が低下する傾向がみられ、C成分の含有量が多すぎると、得られる熱硬化性樹脂組成物硬化体自身の脆さが顕著となる傾向がみられるからである。
【0049】
上記A〜C成分とともに用いられる硬化促進剤(D成分)としては、例えば、1,8−ジアザ−ビシクロ〔5.4.0〕ウンデセン−7、トリエチレンジアミン、トリ−2,4,6−ジメチルアミノメチルフェノール、N,N−ジメチルベンジルアミン等の3級アミン類、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−メチルイミダゾール等のイミダゾール類、トリフェニルホスフィン、テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート、テトラ−n−ブチルホスホニウム−o,o−ジエチルホスホロンジチオエート等のリン化合物、4級アンモニウム塩、有機金属塩類、およびこれらの誘導体等があげられる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いられる。これら硬化促進剤の中では、N,N−ジメチルベンジルアミン、トリ−2,4,6−ジメチルアミノメチルフェノール等の3級アミン類のオクチル酸塩、あるいはスルホニウム塩等が好適に用いられる。
【0050】
上記硬化促進剤(D成分)の含有量は、上記エポキシ基含有シロキサン化合物(A成分)を含むエポキシ基含有成分100重量部に対して0.01〜8.0重量部に設定することが好ましく、より好ましくは0.1〜3.0重量部である。すなわち、硬化促進剤の含有量が少なすぎると、充分な硬化促進効果を得られない場合があり、また硬化促進剤の含有量が多すぎると、得られる硬化体に変色がみられる傾向があるからである。
【0051】
そして、本発明の熱硬化性樹脂組成物には、上記A〜D成分に加えて、1分子中に2個以上のエポキシ基を有する、上記(A)成分以外のエポキシ樹脂(E成分)を用いることができる。このようにエポキシ樹脂(E成分)を併用することにより、硬化剤との反応性を容易に制御でき、得られる硬化物のガラス転移温度(Tg)や弾性率の制御を容易に行なうことが可能となる。
【0052】
上記エポキシ樹脂(E成分)としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂やクレゾールノボラック型エポキシ樹脂等のノボラック型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、トリグリシジルイソシアヌレート、ヒダントインエポキシ樹脂等の含窒素環エポキシ樹脂、水添加ビスフェノールA型エポキシ樹脂、脂肪族系エポキシ樹脂、グリシジルエーテル型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、低吸水率硬化タイプの主流であるビフェニル型エポキシ樹脂、ジシクロ環型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂等があげられる。これらは単独でもしくは2種以上併せて使用される。これらエポキシ樹脂の中でも、硬化体の透明性および耐変色性、および前述のエポキシ基含有シロキサン化合物(A成分)との溶融混合性に優れるという点から、脂環式エポキシ樹脂(例えば、ダイセル化学社製:セロキサイド2021P,セロキサイド2081)、トリグリシジルイソシアヌレートを単独でもしくは併せて用いることが好ましい。
【0053】
上記エポキシ樹脂(E成分)としては、常温で固形であっても液状であってもよいが、一般に、使用するエポキシ樹脂の平均エポキシ当量が90〜1000のものが好ましく、また、固形の場合には、軟化点が160℃以下のものが好ましい。すなわち、エポキシ当量が小さすぎると、熱硬化性樹脂組成物硬化体が脆くなる場合がある。また、エポキシ当量が大きすぎると、熱硬化性樹脂組成物硬化体のガラス転移温度(Tg)が低くなる傾向がみられるからである。
【0054】
上記エポキシ樹脂(E成分)の配合割合は、前述のエポキシ基含有シロキサン化合物(A成分)と酸無水物系硬化剤(B成分)との配合割合に準じ設定され、前記エポキシ基含有シロキサン化合物(A成分)に加え上記エポキシ樹脂(E成分)を含む熱硬化性樹脂組成物中のエポキシ基1当量に対して、酸無水物系硬化剤(B成分)中におけるエポキシ基と反応可能な活性基(酸無水基または水酸基)が0.5〜1.5当量となるよう設定することが好ましく、より好ましくは0.7〜1.2当量である。
【0055】
また、上記エポキシ樹脂(E成分)と前記エポキシ基含有シロキサン化合物(A成分)との合計量のうち、エポキシ樹脂(E成分)の割合は75重量%以下に設定することが好ましく、特に好ましくは50重量%以下である。すなわち、エポキシ樹脂(E成分)の割合が多すぎると、耐リフロークラック性に劣る傾向がみられるからである。
【0056】
本発明の熱硬化性樹脂組成物には、上記A〜E成分以外に、必要に応じて、劣化防止剤、変性剤、脱泡剤、レベリング剤、離型剤、染料等の各種添加剤を適宜配合することができる。
【0057】
上記劣化防止剤としては、例えば、フェノール系化合物、アミン系化合物、有機硫黄系化合物、ホスフィン系化合物等の劣化防止剤があげられる。上記変性剤としては、例えば、エチレングリコール等のグリコール類、シリコーン類、アルコール類等の各種変性剤があげられる。また、上記脱泡剤としては、例えば、シリコーン系等の各種脱泡剤があげられる。
【0058】
さらに、本発明の熱硬化性樹脂組成物には、さらに必要に応じて、シリカ粉末、ガラスフリット、酸化チタン、顔料等の各種無機質充填剤を適宜配合することができる。
【0059】
また、本発明における光半導体装置が、紫外から青色の波長を発光する発光装置である場合は、波長変換体としての蛍光体を熱硬化性樹脂組成物中に分散させるか、発光素子近傍に配置することにより白色を発光する装置とすることが可能となる。
【0060】
本発明の熱硬化性樹脂組成物は、例えば、つぎのようにして製造することにより、液状、粉末状、もしくはその粉末を打錠したタブレット状として得ることができる。すなわち、液状の熱硬化性樹脂組成物を得るには、例えば、上記A〜D成分、さらにはE成分、そして必要に応じて各種添加剤を適宜配合することにより得られる。また、粉末状、もしくはその粉末を打錠したタブレット状として得るには、例えば、上記各配合成分を適宜配合し予備混合した後、混練機を用いて混練して溶融混合する。ついで、これを室温まで冷却した後、熟成工程を経由して粉砕することにより粉末状の熱硬化性樹脂組成物を製造することができる。さらに、必要に応じて、上記粉末状の熱硬化性樹脂組成物を打錠しタブレット状にすることも可能である。
【0061】
このようにして得られる本発明の熱硬化性樹脂組成物は、発光ダイオード(LED)、各種センサー、電荷結合素子(CCD)等の光半導体素子の封止材料や、白色リフレクター等の反射板形成材料等、光半導体装置の形成部材として用いられる。すなわち、本発明の熱硬化性樹脂組成物を用いて、光半導体素子を封止するには、例えば、トランスファー成形や射出成形、ポッティング、コーティング、キャスティング等の光半導体素子封止方法に従って行なうことができる。なお、本発明の熱硬化性樹脂組成物が液状である場合には、少なくともエポキシ樹脂と硬化促進剤とを各々個別に分けて保管し、使用直前に混合する、いわゆる2液タイプとして用いればよい。また、本発明の熱硬化性樹脂組成物が所定の熟成工程を経て、粉末状、タブレット状である場合には、上記各成分を溶融混合する際に、Bステージ状(半硬化状)とし、使用時にはこれを加熱溶融して用いればよい。
【0062】
本発明の熱硬化性樹脂組成物を用いてなる光半導体装置は、上述のようにして光半導体素子を樹脂封止することにより製造することができる。なお、上記成形条件(熱硬化性樹脂組成物の硬化条件)としては、例えば、130〜180℃×2〜8分の加熱硬化後、130〜180℃×1〜5時間の後硬化からなる条件等があげられる。
【実施例】
【0063】
つぎに、実施例について比較例と併せて説明する。ただし、本発明は、これら実施例に限定されるものではない。
【0064】
まず、熱硬化性樹脂組成物の作製に先立って下記に示す各成分を準備、作製した。
【0065】
〔エポキシ樹脂a〕
1,3,5−トリスグリシジルイソシアヌル酸(エポキシ当量:100g/eq、融点:100℃)
【0066】
〔エポキシ樹脂b〕
2,2−ビス(ヒドロキシメチル)−1−ブタノールの1,2−エポキシ−4(2−オキシラニル)シクロセキサン付加物(エポキシ当量:185g/eq、軟化点:85℃)
【0067】
〔酸無水物〕
メチルヘキサヒドロ無水フタル酸(酸当量:168g/eq)
【0068】
〔硬化促進剤〕
N,N−ジメチルベンジルアミン
【0069】
〔ポリオルガノシロキサン〕
フェニルトリメトキシシラン206g(50mol%)およびジメチルジメトキシシラン126g(50mol%)をフラスコ内に投入し、これに1.2gの20%のHCl水溶液と40gの水との混合物を滴下した。滴下終了後、1時間還流を続けた。ついで、室温(25℃)まで冷却した後、炭酸水素ナトリウムで溶液を中和した。得られたオルガノシロキサン溶液を濾過して不純物を除去した後、ロータリーエバポレータを用いて低沸物を減圧留去することによって、液状のポリオルガノシロキサンを得た。得られたポリオルガノシロキサンの軟化点は59℃、水酸基濃度は5.1mol%であった。さらに、得られたポリオルガノシロキサンは、前記A2単位が50モル%、A3単位が50モル%からなり、フェニル基が33%、メチル基が67%、OH基およびアルコキシ基をOH基換算して9重量%含有するものであった。
【0070】
〔エポキシ基含有シロキサン化合物:EDMS−1〕
一般式(2)において、nの平均値が8、R1がメチル基である末端Si−H基を有するポリシロキサン(Si−H当量:363g/eq)を184重量部、ジオキサン250重量部、カーボン粉末に担持された白金触媒(白金濃度5%)0.27重量部を温度計、冷却管、窒素導入管、撹拌羽のついた1リットルの4つ口セパラブルフラスコに投入した。そして、内温を90℃まで昇温させた後、N−アリル−N′,N″−ジグリシジルイソシアヌレート150重量部を3時間かけて投入した。投入終了後、内温を110℃まで昇温させ、ジオキサンを還流させながら反応を行なった。これに、0.1Nの水酸化カリウム/メタノール溶液に反応液を滴下し、水素ガスが発生しなくなったことを確認して、セライトを用いて残存する白金触媒を濾過した。つぎに、エバポレータを用いて、濾過した溶液の溶媒を除去することによりエポキシ基含有シロキサン化合物(EDMS−1)320重量部を得た。このエポキシ基含有シロキサン化合物は、一般式(1)において、R1がメチル基、R2がプロピレン基、nの平均値が8となるエポキシ基含有シロキサン化合物であり、エポキシ当量は317g/eq、25℃の粘度は4.5Pa・sであった。
【0071】
〔エポキシ基含有シロキサン化合物:EDMS−2〕
一般式(2)において、nの平均値が4、R1がメチル基である末端Si−H基を有するポリシロキサン(Si−H当量:363g/eq)を38重量部、ジオキサン38重量部、カーボン粉末に担持された白金触媒(白金濃度5%)0.09重量部、N−アリル−N′,N″−ジグリシジルイソシアヌレート50重量部を用いた。それ以外は上記EDMS−1と同様の操作を行ない、エポキシ基含有シロキサン化合物(EDMS−2)81重量部を得た。このエポキシ基含有シロキサン化合物は、一般式(1)において、R1がメチル基、R2がプロピレン基、nの平均値が4となるエポキシ基含有シロキサン化合物であり、エポキシ当量は237g/eq、融点が約55℃、75℃の粘度は0.34Pa・sであった。
【0072】
〔添加剤〕
エチレングリコール
【0073】
〔実施例1〜11、比較例1〜4〕
後記の表1〜表3に示す各成分を同表に示す割合で配合し、ビーカー内で溶融混合を行ない、熟成した後、室温にて冷却し固化して粉砕することにより目的とする粉末状の熱硬化性樹脂組成物を作製した。
【0074】
このようにして得られた実施例および比較例の各熱硬化性樹脂組成物を用い、下記の方法に従って各種特性評価を行なった。その結果を後記の表1〜表3に併せて示す。
【0075】
〔光透過率の測定〕
上記各熱硬化性樹脂組成物を用い、厚み1mmの試験片を所定の硬化条件(条件:150℃×3時間)にて作製し、この試験片(硬化体)を用いて、流動パラフィン浸漬中にて測定した。測定装置には、島津製作所社製の分光光度計UV3101を使用して、波長400nmでの光透過率を室温(25℃)にて測定した。
【0076】
〔ガラス転移温度(Tg)の測定〕
上記各熱硬化性樹脂組成物を用い、所定の硬化条件(条件:150℃3時間)にて試験片(硬化体)を作製した。そして、この硬化体10〜20mgを用いて、示差走査熱量計(パーキンエルマー社製、PYRIS1)にて、昇温速度10℃/分にて測定を行ない、ガラス転移温度(Tg)を測定した。
【0077】
〔曲げ強度および曲げ弾性率・撓み量の測定〕
上記各熱硬化性樹脂組成物を用い、幅10mm×長さ100mm×厚み4mmの試験片を所定の硬化条件(条件:150℃×3時間)にて作製した。そして、この試験片(硬化体)を用い、JIS K6911に準じて、室温(25℃)にて、オートグラフ(島津製作所社製、AG500C)により、ヘッドスピード5mm/分、支点間距離64mmにて曲げ強度および曲げ弾性率、さらに撓み量を測定した。
【0078】
〔熱膨張係数の測定〕
上記各熱硬化性樹脂組成物を用い、長さ15mm×5mm角の柱状試験片を所定の硬化条件(条件:150℃×3時間)にて作製した。そして、この試験片(硬化体)を用い、熱分析装置(TMA:島津製作所社製、TMA−50)により、毎分2℃の昇温速度で熱膨張量を測定し、40〜70℃での膨張率を熱膨張係数とした。
【0079】
〔耐光性寿命の測定〕
上記各熱硬化性樹脂組成物を用い、厚み1mmの試験片を所定の硬化条件(条件:150℃×3時間)にて作製した。そして、この試験片(硬化体)に波長405nmの短波長レーザー(日亜化学社製、NDHV310APC)を25mWで20μm(80W/mm2)にて照射し、硬化体を透過して得られる光の強度をパワーメーター(コヒレント社製、OP−2VIS)にて受光し測定した。その結果、受光強度が初期の50%に達するまでに要した時間(分)を測定し、この測定結果を耐光性寿命として評価した。
【0080】
〔耐リフロークラック性〕
プリント基板〔材質:FR−4(銅貼り積層ガラスエポキシ基板)、サイズ:82mm×82mm、厚み0.8mm〕と、シリコンチップ(サイズ:3mm×3mm、厚み0.37mm)を準備し、ダイボンド剤(日立化成工業社製、EN−4000)を用いて、プリント基板の4×4の格子状(計16個のエリア)の各エリアにシリコンチップを計16個配置した。
【0081】
その後、150℃で3時間加熱することによりダイボンド剤を熱硬化させ、ついで上記各熱硬化性樹脂組成物を金型成形機により150℃×3分間射出成形することにより樹脂封止(封止樹脂部分:30mm×30mm、厚み1.0mm)を行なった。その後、150℃で3時間ポストキュアを行なった後、ダイサーを用いて20mm×20mmの大きさの四角形の個片パッケージに切断した。得られた個片パッケージを30℃/70%相対湿度の加熱加湿炉に96時間放置した後、260℃のJEDECリフローコンディションにて耐リフロークラック性を評価した。評価は、目視にて、16個全てにクラックが確認されなかったものを○、16個中1個でもクラックが確認されたものを×として表示した。
【0082】
【表1】

【0083】
【表2】

【0084】
【表3】

【0085】
上記結果から、全ての実施例は、光透過率が高く透明性に優れており、また曲げ弾性率および曲げ強度が高く撓み量も大きいものであり強度に優れ、かつ耐光性寿命も長く耐光性においても優れたものであることがわかる。さらに、耐リフロークラック性に関してもクラックが発生せず優れた結果が得られた。
【0086】
これに対して、エポキシ基含有シロキサン化合物を用い、ポリオルガノシロキサンを用いなかった比較例1〜3は、撓み量が多く、また耐光性寿命が短く耐光性に劣るものであった。そして、比較例4は、ポリオルガノシロキサンを用いているがエポキシ基含有シロキサン化合物を用いなかったため、耐光性に関しては良好な結果が得られたが、耐リフロークラック性評価においてクラックが発生してしまった。
【産業上の利用可能性】
【0087】
本発明の熱硬化性樹脂組成物は、発光ダイオード(LED)、各種センサー、電荷結合素子(CCD)等の光半導体素子の封止材料として有用であり、さらに上記LEDのリフレクター等のような反射板形成材料として用いることも可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の(A)〜(D)成分を含有することを特徴とする光半導体素子封止用熱硬化性樹脂組成物。
(A)下記の一般式(1)で表されるエポキシ基含有シロキサン化合物。
【化1】

(B)酸無水物系硬化剤。
(C)加熱縮合型オルガノシロキサン。
(D)硬化促進剤。
【請求項2】
上記(A)〜(D)成分に加えて、下記の(E)成分を含有する請求項1記載の光半導体素子封止用熱硬化性樹脂組成物。
(E)1分子中に2個以上のエポキシ基を有する、上記(A)成分以外のエポキシ樹脂。
【請求項3】
上記(B)成分の含有割合が、熱硬化性樹脂組成物全体中のエポキシ基1当量に対して(B)成分の酸無水物系硬化剤中の酸無水基が0.5〜1.5当量の範囲に設定されている請求項1または2記載の光半導体素子封止用熱硬化性樹脂組成物。
【請求項4】
上記加熱縮合型オルガノシロキサン〔(C)成分〕が、下記の一般式(3)で表されるポリオルガノシロキサンである請求項1〜3のいずれか一項に記載の光半導体素子封止用熱硬化性樹脂組成物。
m(OR1nSiO(4-m-n)/2 ・・・(3)
〔式(3)中、Rは炭素数1〜18の置換または未置換の飽和一価炭化水素基であり、同じであっても異なっていてもよい。また、R1は水素原子または炭素数1〜6のアルキル基であり、同じであっても異なっていてもよい。さらに、m,nは各々0〜3の整数である。〕
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の光半導体素子封止用熱硬化性樹脂組成物を加熱硬化してなることを特徴とする光半導体素子封止用熱硬化性樹脂組成物硬化体。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項に記載の光半導体素子封止用熱硬化性樹脂組成物を用いて、光半導体素子を樹脂封止してなる光半導体装置。

【公開番号】特開2011−168701(P2011−168701A)
【公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−34131(P2010−34131)
【出願日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】