説明

光半導体装置用ダイボンド材及びそれを用いた光半導体装置

【課題】放熱性を高くすることができる光半導体装置用ダイボンド材を提供する。
【解決手段】本発明に係る光半導体装置用ダイボンド材は、珪素原子に結合した水素原子を有する第1のシリコーン樹脂と、珪素原子に結合した水素原子を有さずかつアルケニル基を有する第2のシリコーン樹脂と、ヒドロシリル化反応用触媒と、熱伝導率が10W/m・K以上であり、かつ平均粒子径が0.01μm以上、10μm以下であるフィラーと、熱伝導率が10W/m・K以上であり、平均粒子径が0.01μm以上、10μm以下であり、かつ融点が80℃以上、220℃以下である金属物質とを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光ダイオード(LED)素子などの光半導体素子をダイボンディングするために用いられる光半導体装置用ダイボンド材、並びに該光半導体装置用ダイボンド材を用いた光半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
発光ダイオード(LED)素子などの光半導体素子が、表示装置の光源等に広く用いられている。光半導体素子を用いた光半導体装置の消費電力は低く、かつ寿命は長い。また、光半導体装置は、過酷な環境下でも使用され得る。従って、光半導体装置は、携帯電話用バックライト、液晶テレビ用バックライト、自動車用ランプ、照明器具及び看板などの幅広い用途で使用されている。
【0003】
光半導体装置では、一般にLED素子が基板の上面に、ダイボンド材を用いて接合されている。
【0004】
下記の特許文献1には、上記ダイボンド材として用いることが可能な接着剤組成物が開示されている。具体的には、特許文献1には、2個以上のケイ素原子に結合したアルケニル基を有するシリコーン樹脂と、3個以上のSiH基を有するシリコーン樹脂と、白金系触媒と、接着性付与剤と、酸化チタンとを含む接着剤組成物が開示されている。
【0005】
また、下記の特許文献2には、ケイ素原子に結合したアルケニル基を2個以上有するシリコーン樹脂と、環状シロキサンオリゴマーと、熱伝導性充填剤と、白金系触媒と、脂肪族不飽和基を有する揮発性反応調整剤と、珪素原子に結合した水素原子を有するシリコーン樹脂とを含む熱伝導性組成物が開示されている。上記熱伝導性充填剤としては、酸化アルミニウム粉末、酸化ケイ素粉末、窒化ケイ素粉末、窒化ホウ素粉末及び窒化アルミニウム粉末等が挙げられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−120844号公報
【特許文献2】特開2008−280395号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
近年、光半導体装置では、高輝度化が進行しており、発生する熱量が大きくなってきている。このため、該光半導体装置に用いられるダイボンド材では、高い放熱性が求められている。
【0008】
特許文献1,2に記載のような従来のダイボンド材では、熱伝導率が比較的高いフィラーを用いているため、ダイボンド材の硬化物の放熱性は比較的高い。
【0009】
しかしながら、光半導体装置におけるLED素子から発生する熱をより一層効果的に放散させることが求められている。ダイボンド材の硬化物の放熱性が高いほど、光半導体装置の耐熱信頼性が高くなる。
【0010】
一方で、ダイボンド材には、良好な接着力も求められている。しかしながら、一般に、ダイボンド材の放熱性を高めるために、熱伝導性が高いフィラーの配合量を多くすると、ダイボンド材の接着力が低くなる傾向がある。ダイボンド材の接着力を良好にするために、熱伝導性が高いフィラーの配合量を少なくすると、放熱性が低くなる。
【0011】
本発明の目的は、放熱性がかなり高い光半導体装置用ダイボンド材、並びに該光半導体装置用ダイボンド材を用いた光半導体装置を提供することである。
【0012】
本発明の限定的な目的は、放熱性をかなり高くすることができるだけでなく、接着力の低下を抑制することができる光半導体装置用ダイボンド材、並びに該光半導体装置用ダイボンド材を用いた光半導体装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の広い局面によれば、珪素原子に結合した水素原子を有する第1のシリコーン樹脂と、珪素原子に結合した水素原子を有さず、かつアルケニル基を有する第2のシリコーン樹脂と、ヒドロシリル化反応用触媒と、熱伝導率が10W/m・K以上であり、かつ平均粒子径が0.01μm以上、10μm以下であるフィラーと、熱伝導率が10W/m・K以上であり、平均粒子径が0.01μm以上、10μm以下であり、かつ融点が80℃以上、220℃以下である金属物質とを含む、光半導体装置用ダイボンド材が提供される。
【0014】
上記フィラーは、白色のフィラーであることが好ましい。
【0015】
本発明に係る光半導体装置用ダイボンド材のある特定の局面では、上記フィラーは、熱伝導率が10W/m・K以上であり、かつ平均粒子径が0.01μm以上、10μm以下であり、かつCV値が10%以下である球状のフィラーを含む。
【0016】
本発明に係る光半導体装置は、本発明に従って構成された光半導体装置用ダイボンド材と、接続対象部材と、上記光半導体装置用ダイボンド材を用いて上記接続対象部材に接続された光半導体素子とを備える。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係る光半導体装置用ダイボンド材は、珪素原子に結合した水素原子を有する第1のシリコーン樹脂と、珪素原子に結合した水素原子を有さずかつアルケニル基を有する第2のシリコーン樹脂と、ヒドロシリル化反応用触媒と、熱伝導率が10W/m・K以上であり、かつ平均粒子径が0.01μm以上、10μm以下であるフィラーと、熱伝導率が10W/m・K以上であり、平均粒子径が0.01μm以上、10μm以下であり、かつ融点が80℃以上、220℃以下である金属物質とを含むので、放熱性をかなり高くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】図1は、本発明の一実施形態に係る光半導体装置を示す正面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の詳細を説明する。
【0020】
本発明に係る光半導体装置用ダイボンド材は、珪素原子に結合した水素原子を有する第1のシリコーン樹脂(A)と、珪素原子に結合した水素原子を有さず、かつアルケニル基を有する第2のシリコーン樹脂(B)と、ヒドロシリル化反応用触媒(C)と、熱伝導率が10W/m・K以上であり、かつ平均粒子径が0.01μm以上、10μm以下であるフィラー(D)と、熱伝導率が10W/m・K以上であり、平均粒子径が0.01μm以上、10μm以下であり、かつ融点が80℃以上、220℃以下である金属物質(E)とを含む。
【0021】
上記(A)〜(E)成分を含む組成の採用により、特に、特定の上記フィラー(D)と特定の上記金属物質(E)との併用によって、ダイボンド材の放熱性をかなり高くすることができる。このため、光半導体装置の熱劣化を抑制できる。ダイボンド材を加熱により硬化させる際に、金属物質(E)が溶融し、固化することによって、光半導体素子、基板又は半導体チップ等の被接合部材とダイボンド材の硬化物との間で、金属接合が形成される。また、金属物質(E)が、溶融し、固化することによって、ダイボンド材中のフィラー(D)が橋掛け又は効率的に近接された構造となりやすい。これによって、ダイボンド材の放熱性がかなり高くなる。さらに、ダイボンド材の放熱性が高いことにより、光半導体装置において発生した熱量が、ダイボンド材を介して効果的に放散される。
【0022】
さらに、上記金属物質(E)の使用によって、高い放熱性を維持したままで、上記フィラー(D)の配合量を少なくすることも可能である。上記フィラー(D)の配合量を少なくすることで、ダイボンド材の接着力の低下を抑制できる。本発明に係る光半導体装置用ダイボンド材では、該ダイボンド材100重量%中の上記フィラー(D)の含有量が85重量%以下であっても、放熱性を充分に高くすることができ、良好な放熱性と良好な接着力とを高いレベルで両立できる。
【0023】
本発明に係る光半導体装置用ダイボンド材では、上記フィラー(D)は、熱伝導率が10W/m・K以上であり、かつ平均粒子径が0.01μm以上、10μm以下であり、かつCV値が10%以下である球状のフィラーを含むことが好ましい。この球状のフィラーはスペーサとしての役割を果たす。このため、ダイボンド材により接合された半導体チップなどの被接合部材の傾きを抑制することができる。
【0024】
(第1のシリコーン樹脂(A))
本発明に係る光半導体装置用ダイボンド材に含まれている第1のシリコーン樹脂は、珪素原子に結合した水素原子を有する。該水素原子は、珪素原子に直接結合している。ダイボンド材のガスバリア性をより一層高める観点からは、第1のシリコーン樹脂は、珪素原子に結合した水素原子と、アリール基とを有することが好ましい。該アリール基としては、無置換のフェニル基及び置換フェニル基が挙げられる。
【0025】
ガスバリア性により一層優れたダイボンド材を得る観点からは、上記第1のシリコーン樹脂は、珪素原子に結合した水素原子と、アルケニル基とを有することが好ましい。
【0026】
ガスバリア性により一層優れたダイボンド材を得る観点からは、上記第1のシリコーン樹脂は、下記式(1)で表される第1のシリコーン樹脂であることが好ましい。ただし、第1のシリコーン樹脂として、下記式(1)で表される第1のシリコーン樹脂以外の第1のシリコーン樹脂を用いてもよい。上記第1のシリコーン樹脂は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0027】
【化1】

【0028】
上記式(1)中、a、b及びcは、a/(a+b+c)=0.05〜0.50、b/(a+b+c)=0〜0.40及びc/(a+b+c)=0.30〜0.80を満たし、R1〜R6は、少なくとも1個が水素原子を表し、水素原子以外のR1〜R6は、炭素数1〜8の炭化水素基を表す。なお、上記式(1)中、(R4R5SiO2/2)で表される構造単位及び(R6SiO3/2)で表される構造単位はそれぞれ、アルコキシ基を有していてもよく、ヒドロキシ基を有していてもよい。
【0029】
ガスバリア性にさらに一層優れたダイボンド材を得る観点からは、上記式(1)中、R1〜R6は、少なくとも1個がアリール基を表し、少なくとも1個が水素原子を表し、アリール基及び水素原子以外のR1〜R6は、炭素数1〜8の炭化水素基を表すことが好ましい。
【0030】
ガスバリア性にさらに一層優れたダイボンド材を得る観点からは、上記式(1)中、R1〜R6は、少なくとも1個が水素原子を表し、少なくとも1個がアルケニル基を表し、水素原子及びアルケニル基以外のR1〜R6は、炭素数1〜8の炭化水素基を表すことが好ましい。
【0031】
ガスバリア性にさらに一層優れたダイボンド材を得る観点からは、上記式(1)中、R1〜R6は、少なくとも1個がアリール基を表し、少なくとも1個が水素原子を表し、少なくとも1個がアルケニル基を表し、アリール基、水素原子及びアルケニル基以外のR1〜R6は、炭素数1〜8の炭化水素基を表すことが好ましい。
【0032】
上記式(1)は平均組成式を示す。上記式(1)における炭化水素基は、直鎖状であってもよく、分岐状であってもよい。上記式(1)中のR1〜R6は同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0033】
上記式(1)中、(R4R5SiO2/2)で表される構造単位における酸素原子部分、及び(R6SiO3/2)で表される構造単位における酸素原子部分はそれぞれ、シロキサン結合を形成している酸素原子部分、アルコキシ基の酸素原子部分、又はヒドロキシ基の酸素原子部分を示す。
【0034】
なお、一般に、上記式(1)の各構造単位において、アルコキシ基の含有量は少なく、更にヒドロキシ基の含有量も少ない。これは、一般に、第1のシリコーン樹脂を得るために、アルコキシシラン化合物などの有機珪素化合物を加水分解し、重縮合させると、アルコキシ基及びヒドロキシ基の多くは、シロキサン結合の部分骨格に変換されるためである。すなわち、アルコキシ基の酸素原子及びヒドロキシ基の酸素原子の多くは、シロキサン結合を形成している酸素原子に変換される。上記式(1)の各構造単位がアルコキシ基又はヒドロキシ基を有する場合には、シロキサン結合の部分骨格に変換されなかった未反応のアルコキシ基又はヒドロキシ基がわずかに残存していることを示す。後述の式(51)の各構造単位がアルコキシ基又はヒドロキシ基を有する場合に関しても、同様のことがいえる。
【0035】
上記式(1)における炭素数1〜8の炭化水素基としては特に限定されず、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、イソプロピル基、イソブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、t−ペンチル基、イソへキシル基、シクロヘキシル基、ビニル基、アリル基及びフェニル基等が挙げられる。
【0036】
上記式(1)中、アルケニル基としては、ビニル基、アリル基、ブテニル基、ペンテニル基及びヘキセニル基等が挙げられる。ガスバリア性をより一層高める観点からは、第1のシリコーン樹脂におけるアルケニル基及び上記式(1)中のアルケニル基は、ビニル基又はアリル基であることが好ましく、ビニル基であることがより好ましい。
【0037】
上記第1のシリコーン樹脂における下記式(X1)より求められるアリール基の含有比率は10モル%以上、50モル%以下であることが好ましい。このアリール基の含有比率が10モル%以上であると、ガスバリア性がより一層高くなる。アリール基の含有比率が50モル%以下であると、ダイボンド材の剥離が生じ難くなる。ガスバリア性を更に一層高める観点からは、アリール基の含有比率は20モル%以上であることがより好ましい。ダイボンド材の剥離をより一層生じ難くする観点からは、アリール基の含有比率は、40モル%以下であることがより好ましい。
【0038】
アリール基の含有比率(モル%)=(上記第1のシリコーン樹脂の1分子あたりに含まれるアリール基の平均個数×アリール基の分子量/上記第1のシリコーン樹脂の数平均分子量)×100 ・・・式(X1)
【0039】
上記第1のシリコーン樹脂として、上記式(1)で表される第1のシリコーン樹脂を用いる場合には、上記式(X1)中、「第1のシリコーン樹脂」は、「平均組成式が上記式(1)で表される第1のシリコーン樹脂」を示す。
【0040】
上記第1のシリコーン樹脂におけるアリール基がフェニル基である場合には、上記式(X1)におけるアリール基はフェニル基を示し、アリール基の含有比率はフェニル基の含有比率を示す。
【0041】
上記式(1)で表される第1のシリコーン樹脂において、(R4R5SiO2/2)で表される構造単位(以下、二官能構造単位ともいう)は、下記式(1−2)で表される構造、すなわち、二官能構造単位中の珪素原子に結合した酸素原子の1つがヒドロキシ基又はアルコキシ基を構成する構造を含んでいてもよい。
【0042】
(R4R5SiXO1/2) ・・・式(1−2)
【0043】
(R4R5SiO2/2)で表される構造単位は、下記式(1−b)で表される構造単位の破線で囲まれた部分を含み、更に下記式(1−2−b)で表される構造単位の破線で囲まれた部分を含んでいてもよい。すなわち、R4及びR5で表される基を有し、かつアルコキシ基又はヒドロキシ基が末端に残存している構造単位も、(R4R5SiO2/2)で表される構造単位に含まれる。具体的には、アルコキシ基がシロキサン結合の部分骨格に変換された場合には、(R4R5SiO2/2)で表される構造単位は、下記式(1−b)で表される構造単位の破線で囲まれた部分を示す。未反応のアルコキシ基が残存している場合、又はアルコキシ基がヒドロキシ基に変換された場合には、残存アルコキシ基又はヒドロキシ基を有する(R4R5SiO2/2)で表される構造単位は、下記式(1−2−b)で表される構造単位の破線で囲まれた部分を示す。また、下記式(1−b)で表される構造単位において、Si−O−Si結合中の酸素原子は、隣接する珪素原子とシロキサン結合を形成しており、隣接する構造単位と酸素原子を共有している。従って、Si−O−Si結合中の1つの酸素原子を「O1/2」とする。
【0044】
【化2】

【0045】
上記式(1−2)及び(1−2−b)中、Xは、OH又はORを表し、ORは、直鎖状又は分岐状の炭素数1〜4のアルコキシ基を表す。上記式(1−b)、(1−2)及び(1−2−b)中のR4及びR5は、上記式(1)中のR4及びR5と同様の基である。
【0046】
上記式(1)で表される第1のシリコーン樹脂において、(R6SiO3/2)で表される構造単位(以下、三官能構造単位ともいう)は、下記式(1−3)又は(1−4)で表される構造、すなわち、三官能構造単位中の珪素原子に結合した酸素原子の2つがそれぞれヒドロキシ基若しくはアルコキシ基を構成する構造、又は、三官能構造単位中の珪素原子に結合した酸素原子の1つがヒドロキシ基若しくはアルコキシ基を構成する構造を含んでいてもよい。
【0047】
(R6SiX1/2) ・・・式(1−3)
(R6SiXO2/2) ・・・式(1−4)
【0048】
(R6SiO3/2)で表される構造単位は、下記式(1−c)で表される構造単位の破線で囲まれた部分を含み、更に下記式(1−3−c)又は(1−4−c)で表される構造単位の破線で囲まれた部分を含んでいてもよい。すなわち、R6で表される基を有し、かつアルコキシ基又はヒドロキシ基が末端に残存している構造単位も、(R6SiO3/2)で表される構造単位に含まれる。
【0049】
【化3】

【0050】
上記式(1−3)、(1−3−c)、(1−4)及び(1−4−c)中、Xは、OH又はORを表し、ORは、直鎖状又は分岐状の炭素数1〜4のアルコキシ基を表す。上記式(1−c)、(1−3)、(1−3−c)、(1−4)及び(1−4−c)中のR6は、上記式(1)中のR6と同様の基である。
【0051】
上記式(1−b)及び(1−c)、式(1−2)〜(1−4)、並びに式(1−2−b)、(1−3−c)及び(1−4−c)において、直鎖状又は分岐状の炭素数1〜4のアルコキシ基としては特に限定されず、例えば、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、n−ブトキシ基、イソプロポキシ基、イソブトキシ基、sec−ブトキシ基及びt−ブトキシ基が挙げられる。
【0052】
上記式(1)中、a/(a+b+c)の下限は0.05、上限は0.50である。a/(a+b+c)が上記下限以上及び上限以下であると、ダイボンド材の耐熱性をより一層高めることができ、かつダイボンド材の剥離をより一層抑制できる。上記式(1)中、a/(a+b+c)の好ましい下限は0.10、より好ましい下限は0.15であり、好ましい上限は0.45、より好ましい上限は0.40である。
【0053】
上記式(1)中、b/(a+b+c)の下限は0、上限は0.40である。b/(a+b+c)が上記上限を満たすと、ダイボンド材の高温での貯蔵弾性率を高くすることができる。なお、bが0であり、b/(a+b+c)が0である場合、上記式(1)中、(R4R5SiO2/2)の構造単位は存在しない。
【0054】
上記式(1)中、c/(a+b+c)の下限は0.30、上限は0.80である。c/(a+b+c)が上記下限を満たすと、ダイボンド材の高温での貯蔵弾性率を高くすることができる。c/(a+b+c)が上記上限を満たすと、ダイボンド材の耐熱性が高くなり、かつ高温環境下でダイボンド材の硬化物の厚みが減少し難くなる。上記式(1)中、c/(a+b+c)の好ましい下限は0.35、より好ましい下限は0.40、好ましい上限は0.75である。
【0055】
上記第1のシリコーン樹脂について、テトラメチルシラン(以下、TMS)を基準に29Si−核磁気共鳴分析(以下、NMR)を行うと、置換基の種類によって若干の変動は見られるものの、上記式(1)中の(R1R2R3SiO1/2)で表される構造単位に相当するピークは+10〜−5ppm付近に現れ、上記式(1)中の(R4R5SiO2/2)及び(1−2)の二官能構造単位に相当する各ピークは−10〜−50ppm付近に現れ、上記式(1)中の(R6SiO3/2)、並びに(1−3)及び(1−4)の三官能構造単位に相当する各ピークは−50〜−80ppm付近に現れる。
【0056】
従って、29Si−NMRを測定し、それぞれのシグナルのピーク面積を比較することによって上記式(1)中の各構造単位の比率を測定できる。
【0057】
但し、上記TMSを基準にした29Si−NMRの測定で上記式(1)中の構造単位の見分けがつかない場合は、29Si−NMRの測定結果だけではなく、H−NMRの測定結果を必要に応じて用いることにより、上記式(1)中の各構造単位の比率を見分けることができる。
【0058】
(第2のシリコーン樹脂(B))
本発明に係る光半導体装置用ダイボンド材に含まれている第2のシリコーン樹脂は、アルケニル基を有する。該アルケニル基は、珪素原子に直接結合している。上記アルケニル基の炭素−炭素二重結合における炭素原子が、珪素原子に結合していてもよく、上記アルケニル基の炭素−炭素二重結合における炭素原子とは異なる炭素原子が、珪素原子に結合していてもよい。
【0059】
ダイボンド材のガスバリア性をより一層高める観点からは、第2のシリコーン樹脂は、アルケニル基と、アリール基とを有することが好ましい。該アリール基としては、無置換のフェニル基及び置換フェニル基が挙げられる。
【0060】
ガスバリア性により一層優れたダイボンド材を得る観点からは、上記第2のシリコーン樹脂は、下記式(51)で表される第2のシリコーン樹脂であることが好ましい。ただし、第2のシリコーン樹脂として、下記式(51)で表される第2のシリコーン樹脂以外の第2のシリコーン樹脂を用いてもよい。上記第2のシリコーン樹脂は1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0061】
【化4】

【0062】
上記式(51)中、p、q及びrは、p/(p+q+r)=0.05〜0.50、q/(p+q+r)=0〜0.40及びr/(p+q+r)=0.30〜0.80を満たし、R51〜R56は、少なくとも1個がアルケニル基を表し、アルケニル基以外のR51〜R56は、炭素数1〜8の炭化水素基を表す。なお、上記式(51)中、(R54R55SiO2/2)で表される構造単位及び(R56SiO3/2)で表される構造単位はそれぞれ、アルコキシ基を有していてもよく、ヒドロキシ基を有していてもよい。
【0063】
上記式(51)は平均組成式を示す。上記式(51)における炭化水素基は、直鎖状であってもよく、分岐状であってもよい。上記式(51)中のR51〜R56は同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0064】
上記式(51)中、アルケニル基としては、ビニル基、アリル基、ブテニル基、ペンテニル基及びヘキセニル基等が挙げられる。ガスバリア性をより一層高める観点からは、第2のシリコーン樹脂におけるアルケニル基及び上記式(51)中のアルケニル基は、ビニル基又はアリル基であることが好ましく、ビニル基であることがより好ましい。
【0065】
上記式(51)における炭素数1〜8の炭化水素基としては特に限定されず、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、イソプロピル基、イソブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、t−ペンチル基、イソへキシル基、シクロヘキシル基、ビニル基、アリル基及びフェニル基が挙げられる。
【0066】
ダイボンド材のガスバリア性をより一層高め、かつ剥離をより一層生じ難くする観点からは、上記第2のシリコーン樹脂が、上記式(51)で表され、かつ珪素原子に結合した水素原子を有さず、かつアルケニル基及びアリール基を有する第2のシリコーン樹脂であることが好ましい。
【0067】
ガスバリア性により一層優れたダイボンド材を得る観点からは、上記式(51)中、R51〜R56は、少なくとも1個がアリール基を表し、少なくとも1個がアルケニル基を表し、アリール基及びアルケニル基以外のR51〜R56は、炭素数1〜8の炭化水素基を表すことが好ましい。
【0068】
上記第2のシリコーン樹脂における下記式(X51)より求められるアリール基の含有比率は10モル%以上、50モル%以下であることが好ましい。このアリール基の含有比率が10モル%以上であると、ガスバリア性がより一層高くなる。アリール基の含有比率が50モル%以下であると、ダイボンド材の剥離が生じ難くなる。ガスバリア性を更に一層高める観点からは、アリール基の含有比率は20モル%以上であることがより好ましい。剥離をより一層生じ難くする観点からは、アリール基の含有比率は、40モル%以下であることがより好ましい。
【0069】
アリール基の含有比率(モル%)=(第2のシリコーン樹脂の1分子あたりに含まれるアリール基の平均個数×アリール基の分子量/第2のシリコーン樹脂の数平均分子量)×100 ・・・式(X51)
【0070】
上記第2のシリコーン樹脂として、上記式(51)で表される第2のシリコーン樹脂を用いる場合には、上記式(X51)中、「第2のシリコーン樹脂」は、「平均組成式が上記式(51)で表される第2のシリコーン樹脂」を示す。
【0071】
上記第2のシリコーン樹脂におけるアリール基がフェニル基である場合には、上記式(X51)におけるアリール基はフェニル基を示し、アリール基の含有比率はフェニル基の含有比率を示す。
【0072】
上記式(51)で表される第2のシリコーン樹脂において、(R54R55SiO2/2)で表される構造単位(以下、二官能構造単位ともいう)は、下記式(51−2)で表される構造、すなわち、二官能構造単位中の珪素原子に結合した酸素原子の1つがヒドロキシ基又はアルコキシ基を構成する構造を含んでいてもよい。
【0073】
(R54R55SiXO1/2) ・・・式(51−2)
【0074】
(R54R55SiO2/2)で表される構造単位は、下記式(51−b)で表される構造単位の破線で囲まれた部分を含み、更に下記式(51−2−b)で表される構造単位の破線で囲まれた部分を含んでいてもよい。すなわち、R54及びR55で表される基を有し、かつアルコキシ基又はヒドロキシ基が末端に残存している構造単位も、(R54R55SiO2/2)で表される構造単位に含まれる。
【0075】
【化5】

【0076】
上記式(51−2)及び(51−2−b)中、Xは、OH又はORを表し、ORは、直鎖状又は分岐状の炭素数1〜4のアルコキシ基を表す。上記式(51−b)、(51−2)及び(51−2−b)中のR54及びR55は、上記式(51)中のR54及びR55と同様の基である。
【0077】
上記式(51)で表される第2のシリコーン樹脂において、(R56SiO3/2)で表される構造単位(以下、三官能構造単位ともいう)は、下記式(51−3)又は(51−4)で表される構造、すなわち、三官能構造単位中の珪素原子に結合した酸素原子の2つがそれぞれヒドロキシ基若しくはアルコキシ基を構成する構造、又は、三官能構造単位中の珪素原子に結合した酸素原子の1つがヒドロキシ基若しくはアルコキシ基を構成する構造を含んでいてもよい。
【0078】
(R56SiX1/2) ・・・式(51−3)
(R56SiXO2/2) ・・・式(51−4)
【0079】
(R56SiO3/2)で表される構造単位は、下記式(51−c)で表される構造単位の破線で囲まれた部分を含み、更に下記式(51−3−c)又は(51−4−c)で表される構造単位の破線で囲まれた部分を含んでいてもよい。すなわち、R56で表される基を有し、かつアルコキシ基又はヒドロキシ基が末端に残存している構造単位も、(R56SiO3/2)で表される構造単位に含まれる。
【0080】
【化6】

【0081】
上記式(51−3)、(51−3−c)、(51−4)及び(51−4−c)中、Xは、OH又はORを表し、ORは、直鎖状又は分岐状の炭素数1〜4のアルコキシ基を表す。上記式(51−c)、(51−3)、(51−3−c)、(51−4)及び(51−4−c)中のR56は、上記式(51)中のR56と同様の基である。
【0082】
上記式(51−b)〜(51−c)、式(51−2)〜(51−4)、並びに式(51−2−b)、(51−3−c)及び(51−4−c)において、直鎖状又は分岐状の炭素数1〜4のアルコキシ基としては特に限定されず、例えば、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、n−ブトキシ基、イソプロポキシ基、イソブトキシ基、sec−ブトキシ基及びt−ブトキシ基が挙げられる。
【0083】
上記式(51)中、p/(p+q+r)の下限は0.05、上限は0.50である。p/(p+q+r)が上記下限及び上限を満たすと、ダイボンド材の耐熱性をより一層高めることができ、かつダイボンド材の剥離をより一層抑制できる。上記式(51)中、中、p/(p+q+r)の好ましい下限は0.10、より好ましい下限は0.15であり、好ましい上限は0.45、より好ましい上限は0.40である。
【0084】
上記式(51)中、q/(p+q+r)の下限は0、上限は0.40である。q/(p+q+r)上記上限を満たすと、ダイボンド材の高温での貯蔵弾性率を高くすることができる。上記式(51)中、q/(p+q+r)の好ましい上限は0.35、より好ましい上限は0.30である。なお、qが0であり、q/(p+q+r)が0である場合、上記式(51)中、(R54R55SiO2/2)の構造単位は存在しない。
【0085】
上記式(51)中、r/(p+q+r)の下限は0.30、上限は0.80である。r/(p+q+r)が上記下限を満たすと、ダイボンド材の高温での貯蔵弾性率を高くすることができる。r/(p+q+r)が上記上限を満たすと、ダイボンド材の耐熱性が高くなり、かつ高温環境下でダイボンド材の硬化物の厚みが減少し難くなる。
【0086】
上記第2のシリコーン樹脂について、テトラメチルシラン(以下、TMS)を基準に29Si−核磁気共鳴分析(以下、NMR)を行うと、置換基の種類によって若干の変動は見られるものの、上記式(51)中の(R51R52R53SiO1/2)で表される構造単位に相当するピークは+10〜−5ppm付近に現れ、上記式(51)中の(R54R55SiO2/2)及び(51−2)の二官能構造単位に相当する各ピークは−10〜−50ppm付近に現れ、上記式(51)中の(R56SiO3/2)、並びに(51−3)及び(51−4)の三官能構造単位に相当する各ピークは−50〜−80ppm付近に現れる。
【0087】
従って、29Si−NMRを測定し、それぞれのシグナルのピーク面積を比較することによって上記式(51)中の各構造単位の比率を測定できる。
【0088】
但し、上記TMSを基準にした29Si−NMRの測定で上記式(51)中の構造単位の見分けがつかない場合は、29Si−NMRの測定結果だけではなく、H−NMRの測定結果を必要に応じて用いることにより、上記式(51)中の各構造単位の比率を見分けることができる。
【0089】
上記第1のシリコーン樹脂100重量部に対して、上記第2のシリコーン樹脂の含有量は10重量部以上、400重量部以下であることが好ましい。第1,第2のシリコーン樹脂の含有量がこの範囲内であると、高温での貯蔵弾性率がより一層高く、かつガスバリア性により一層優れたダイボンド材を得ることができる。高温での貯蔵弾性率がさらに一層高く、かつガスバリア性にさらに一層優れたダイボンド材を得る観点からは、上記第1のシリコーン樹脂100重量部に対して、上記第2のシリコーン樹脂の含有量のより好ましい下限は30重量部、更に好ましい下限は50重量部、より好ましい上限は300重量部、更に好ましい上限は200重量部である。
【0090】
上記光半導体装置用ダイボンド材100重量%中、第1,第2のシリコーン樹脂の合計の含有量は、好ましくは20重量%以上、より好ましくは25重量%以上、更に好ましくは重量30%以上、特に好ましくは40重量%以上、好ましく80重量%以下、より好ましくは70重量%以下である。第1,第2のシリコーン樹脂の含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、ダイボンド材の粘度を適度な範囲に容易に調整でき、かつダイボンド材の硬化性を高めることができる。
【0091】
(第1,第2のシリコーン樹脂(A),(B)の他の性質及びその合成方法)
上記第1,第2のシリコーン樹脂のアルコキシ基の含有量の好ましい下限は0.5モル%、より好ましい下限は1モル%、好ましい上限は10モル%、より好ましい上限は5モル%である。アルコキシ基の含有量が上記好ましい範囲内であると、ダイボンド材の密着性を高めることができる。
【0092】
アルコキシ基の含有量が上記好ましい下限を満たすと、ダイボンド材の密着性を高めることができる。アルコキシ基の含有量が上記好ましい上限を満たすと、第1,第2のシリコーン樹脂及びダイボンド材の貯蔵安定性が高くなり、ダイボンド材の耐熱性がより一層高くなる。
【0093】
上記アルコキシ基の含有量は、第1,第2のシリコーン樹脂の平均組成式中に含まれる上記アルコキシ基の量を意味する。
【0094】
上記第1,第2のシリコーン樹脂はシラノール基を含有しないほうが好ましい。第1,第2のシリコーン樹脂がシラノール基を含有しないと、第1,第2のシリコーン樹脂及びダイボンド材の貯蔵安定性が高くなる。上記シラノール基は、真空下での加熱により減少させることができる。シラノール基の含有量は、赤外分光法を用いて測定できる。
【0095】
上記第1,第2のシリコーン樹脂の数平均分子量(Mn)の好ましい下限は500、より好ましい下限は800、更に好ましい下限は1000、好ましい上限は50000、より好ましい上限は15000である。数平均分子量が上記好ましい下限を満たすと、熱硬化時に揮発成分が少なくなり、高温環境下でダイボンド材の硬化物の厚みが減少しにくくなる。数平均分子量が上記好ましい上限を満たすと、粘度調節が容易である。
【0096】
上記数平均分子量(Mn)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて、ポリスチレンを標準物質して求めた値である。上記数平均分子量(Mn)は、Waters社製の測定装置(カラム:昭和電工社製 Shodex GPC LF−804(長さ300mm)を2本、測定温度:40℃、流速:1mL/分、溶媒:テトラヒドロフラン、標準物質:ポリスチレン)を用いて測定された値を意味する。
【0097】
上記第1,第2のシリコーン樹脂を合成する方法としては特に限定されず、アルコキシシラン化合物を加水分解し縮合反応させる方法、クロロシラン化合物を加水分解し縮合させる方法が挙げられる。なかでも、反応の制御の観点からアルコキシシラン化合物を加水分解する方法が好ましい。
【0098】
アルコキシシラン化合物を加水分解し縮合反応させる方法としては、例えば、アルコキシシラン化合物、水と酸性触媒又は塩基性触媒との存在下で反応させる方法が挙げられる。また、ジシロキサン化合物を加水分解して用いてもよい。
【0099】
上記第1,第2のシリコーン樹脂にフェニル基を導入するための有機珪素化合物としては、トリフェニルメトキシシラン、トリフェニルエトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、メチル(フェニル)ジメトキシシラン、及びフェニルトリメトキシシラン等が挙げられる。
【0100】
上記第1,第2のシリコーン樹脂に(R57R58R59R60SiR61O2/2)、(R7R8R9R10SiR11O2/2)を導入するための有機珪素化合物としては、例えば、1,4−ビス(ジメチルメトキシシリル)ベンゼン、1,4−ビス(ジエチルメトキシシリル)ベンゼン、1,4ービス(エトキシエチルメチルシリル)ベンゼン、1,6−ビス(ジメチルメトキシシリル)ヘキサン、1,6−ビス(ジエチルメトキシシリル)ヘキサン及び1,6−ビス(エトキシエチルメチルシリル)ヘキサン等が挙げられる。
【0101】
上記第1,第2のシリコーン樹脂にアルケニル基を導入するための有機珪素化合物としては、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシラン、メトキシジメチルビニルシラン、ビニルジメチルエトキシシラン及び1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン等が挙げられる。
【0102】
上記第1のシリコーン樹脂に珪素原子に結合した水素原子を導入するための有機珪素化合物としては、トリメトキシシラン、トリエトキシシラン、メチルジメトキシシラン、メチルジエトキシシラン、及び1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン等が挙げられる。
【0103】
上記第1,第2のシリコーン樹脂を得るために用いることができる他の有機珪素化合物としては、例えば、トリメチルメトキシシラン、トリメチルエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、イソプロピル(メチル)ジメトキシシラン、シクロヘキシル(メチル)ジメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン及びオクチルトリメトキシシラン等が挙げられる。
【0104】
上記酸性触媒としては、例えば、無機酸、有機酸、無機酸の酸無水物及びその誘導体、並びに有機酸の酸無水物及びその誘導体が挙げられる。
【0105】
上記無機酸としては、例えば、塩酸、リン酸、ホウ酸及び炭酸が挙げられる。上記有機酸としては、例えば、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、フマル酸、マレイン酸及びオレイン酸が挙げられる。
【0106】
上記塩基性触媒としては、例えば、アルカリ金属の水酸化物、アルカリ金属のアルコキシド及びアルカリ金属のシラノール化合物が挙げられる。
【0107】
上記アルカリ金属の水酸化物としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム及び水酸化セシウムが挙げられる。上記アルカリ金属のアルコキシドとしては、例えば、ナトリウム−t−ブトキシド、カリウム−t−ブトキシド及びセシウム−t−ブトキシドが挙げられる。
【0108】
上記アルカリ金属のシラノール化合物としては、例えば、ナトリウムシラノレート化合物、カリウムシラノレート化合物及びセシウムシラノレート化合物が挙げられる。なかでも、カリウム系触媒又はセシウム系触媒が好適である。
【0109】
(ヒドロシリル化反応用触媒(C))
本発明に係る光半導体装置用ダイボンド材に含まれているヒドロシリル化反応用触媒は、上記第1のシリコーン樹脂中の珪素原子に結合した水素原子と、上記第2のシリコーン樹脂中のアルケニル基とをヒドロシリル化反応させる触媒である。
【0110】
上記ヒドロシリル化反応用触媒として、ヒドロシリル化反応を進行させる各種の触媒を用いることができる。上記ヒドロシリル化反応用触媒は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0111】
上記ヒドロシリル化反応用触媒としては、例えば、白金系触媒、ロジウム系触媒及びパラジウム系触媒等が挙げられる。ダイボンド材の透明性を高くすることができるため、白金系触媒が好ましい。
【0112】
上記白金系触媒としては、白金粉末、塩化白金酸、白金−アルケニルシロキサン錯体、白金−オレフィン錯体及び白金−カルボニル錯体が挙げられる。特に、白金−アルケニルシロキサン錯体又は白金−オレフィン錯体が好ましい。
【0113】
上記白金−アルケニルシロキサン錯体におけるアルケニルシロキサンとしては、例えば、1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、及び1,3,5,7−テトラメチル−1,3,5,7−テトラビニルシクロテトラシロキサン等が挙げられる。上記白金−オレフィン錯体におけるオレフィンとしては、例えば、アリルエーテル及び1,6−ヘプタジエン等が挙げられる。
【0114】
上記白金−アルケニルシロキサン錯体及び白金−オレフィン錯体の安定性を向上させることができるため、上記白金−アルケニルシロキサン錯体又は白金−オレフィン錯体に、アルケニルシロキサン、オルガノシロキサンオリゴマー、アリルエーテル又はオレフィンを添加することが好ましい。上記アルケニルシロキサンは、好ましくは1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサンである。上記オルガノシロキサンオリゴマーは、好ましくはジメチルシロキサンオリゴマーである。上記オレフィンは、好ましくは1,6−ヘプタジエンである。
【0115】
ダイボンド材100重量%中、上記ヒドロシリル化反応用触媒の含有量は、0.01〜0.5重量%の範囲内であることが好ましい。上記ヒドロシリル化反応用触媒の含有量が上記下限以上であると、ダイボンド材を十分に硬化させることが容易であり、ダイボンド材のガスバリア性をより一層高めることができる。上記ヒドロシリル化反応用触媒の含有量が上記上限以下であると、ダイボンド材がより一層変色し難くなる。上記ヒドロシリル化反応用触媒の含有量は、より好ましくは0.02重量%以上、より好ましくは0.3重量%以下である。
【0116】
(フィラー(D))
本発明に係る光半導体装置用ダイボンド材は、熱伝導率が10W/m・K以上であり、かつ平均粒子径が0.01μm以上、10μm以下であるフィラーを含む。
【0117】
上記フィラーの熱伝導率は10W/m・K以上である。このフィラーの使用により、ダイボンド材の硬化物の熱伝導性を高めることができる。この結果、ダイボンド材の硬化物の放熱性が高くなる。上記フィラーの熱伝導率が10W/m・Kよりも小さいと、ダイボンド材の放熱性を充分に高めることが困難になる。フィラーの熱伝導率は、好ましくは15W/m・K以上、より好ましくは20W/m・K以上である。フィラーの熱伝導率の上限は特に限定されない。熱伝導率300W/m・K程度の無機フィラーは広く知られており、また熱伝導率200W/m・K程度の無機フィラーは容易に入手できる。
【0118】
上記フィラーは、銀、酸化チタン、アルミナ、合成マグネサイト、結晶性シリカ、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、窒化ケイ素、炭化ケイ素、酸化亜鉛及び酸化マグネシウムからなる群から選択された少なくとも1種であることがより好ましい。これらの好ましいフィラーの使用により、ダイボンド材の放熱性をより一層高めることができる。
【0119】
上記フィラーは、白色のフィラーであることが好ましい。白色のフィラーの使用により、ダイボンド材における光の反射率を高くすることもできる。このため、光半導体装置において、光半導体素子から光が発せられたときに、光がダイボンド材により効果的に反射される。この結果、光半導体装置から取り出される光が明るくなる。
【0120】
ダイボンド材中での分散性を高めて、均一な光の反射率を得る観点からは、上記フィラーの平均粒子径は、0.01μm以上、好ましくは0.1μm以上、10μm以下、より好ましくは5μm以下である。
【0121】
上記「平均粒子径」とは、レーザー回折式粒度分布測定装置により測定した体積平均での粒度分布測定結果から求められる平均粒子径である。
【0122】
光半導体装置用型ダイボンド材100重量%中の上記フィラーの含有量は、好ましくは3重量%以上、より好ましくは10重量%以上、好ましくは85重量%以下、より好ましくは80重量%以下、より一層好ましくは70重量%以下、更に好ましくは60重量%以下、特に好ましくは50重量%以下である。上記フィラーの含有量が上記下限以上であると、ダイボンド材の放熱性及び光の反射率がより一層高くなる。上記フィラーの含有量が上記上限以下であると、フィラーの分散性が高くなり、更にダイボンディングが容易になる。
【0123】
上記フィラーは、熱伝導率が10W/m・K以上であり、かつ平均粒子径が0.01μm以上、10μm以下であり、かつCV値が10%以下である球状のフィラーを含むことが好ましい。この球状のフィラーは、スペーサとしての役割も果たし、ダイボンド材により接合された半導体チップなどの被接合部材の傾きを抑制することができる。
【0124】
スペーサとしての役割を十分に果たすために、上記球状フィラーの平均粒子径は、より好ましくは0.5μm以上、より好ましくは1μm以上である。上記球状フィラーの熱伝導率は、好ましくは15W/m・K以上、より好ましくは20W/m・K以上である。上記球状フィラーの上記CV値(粒度分布の変動係数)は、より好ましくは5%以下、更に好ましくは3%以下である。
【0125】
上記CV値は下記式で表される。
【0126】
CV値(%)=(ρ/Dn)×100
ρ:球状のフィラーの直径の標準偏差
Dn:平均粒子径
【0127】
また、本発明に係る光半導体装置用ダイボンド材では、上記金属物質の使用により、ダイボンド材の放熱性が効果的に高められるので、ダイボンド材の高い放熱性を維持したままで、フィラーの配合量を少なくすることができる。フィラーの配合量を少なくすることで、ダイボンド材の接着力の低下を抑制できる。例えば、本発明に係る光半導体装置用ダイボンド材では、該ダイボンド材100重量%中のフィラーの含有量を85重量%以下とすることで、良好な熱伝導性と良好な接着力とを高いレベルで両立できる。
【0128】
上記フィラーの全量100重量%中、上記球状のフィラーの含有量は、好ましくは5重量%以上、より好ましくは10重量%以上、100重量%以下、好ましくは80重量%以下、より好ましくは70重量%以下である。上記フィラーの全量が上記球状のフィラーであってもよい。上記球状のフィラーの含有量が上記下限以上であると、被接合部材の傾きを効果的に抑制できる。
【0129】
(金属物質(E))
本発明に係る光半導体装置用ダイボンド材は、熱伝導率が10W/m・K以上であり、平均粒子径が0.01μm以上、10μm以下であり、かつ融点が80℃以上、220℃以下である金属物質を含む。該金属物質は、金属粉末であることが好ましい。
【0130】
上記フィラーだけでなく上記金属物質も用いることによって、ダイボンド材の硬化物の放熱性をかなり高くすることができる。上記金属物質は、ダイボンド材の硬化時などの加熱の際に、溶融する。上記金属物質が溶融した後に固化することにより、光半導体素子、基板又は半導体チップ等の被接合部材とダイボンド材の硬化物との間で、金属接合が形成される。また、ダイボンド材中の上記フィラーが、溶融した後固化した上記金属物質を介して、橋掛け又は効率的に近接された構造となりやすい。このことによっても、ダイボンド材の熱伝導性を効果的に高めることができ、かなり高い放熱性を達成できる。
【0131】
上記金属物質を構成する金属としては、錫、金、銀、銅、白金、パラジウム、亜鉛、鉛、アルミニウム、コバルト、インジウム、ニッケル、クロム、チタン、アンチモン、ビスマス、ゲルマニウム及びカドミウム等が挙げられる。これら以外の金属を用いてもよい。但し、これらの金属が単独で融点が220℃を超える場合には、融点が220℃以下となるように他の金属と併用される。
【0132】
融点を80℃以上、220℃以下にすることが容易であり、またダイボンド材の放熱性をより一層良好にする観点からは、上記金属物質を構成する金属として、ビスマス、インジウム、錫、亜鉛及びニッケルの内の1種又は2種以上が好適に用いられる。
【0133】
ダイボンド材の放熱性をより一層良好にする観点からは、上記金属物質は、ビスマス−錫、ビスマス−インジウム、インジウム−亜鉛及びインジウム−錫からなる群から選択された少なくとも1種を含むことがより好ましい。
【0134】
上記金属物質の平均粒子径は、好ましくは0.1μm以上、より好ましくは1μm以上、好ましくは8μm以下、より好ましくは6μm以下である。上記金属物質の平均粒子径が上記下限以上及び上記上限以下であると、ダイボンド材の放熱性をより一層良好にすることができる。
【0135】
上記「平均粒子径」とは、レーザー回折式粒度分布測定装置により測定した体積平均での粒度分布測定結果から求められる平均粒子径である。
【0136】
光半導体装置用型ダイボンド材100重量%中の上記金属物質の含有量は、好ましくは5重量%以上、より好ましくは10重量%以上、好ましくは80重量%以下、より好ましくは70重量%以下である。上記金属物質の含有量が上記下限以上であると、ダイボンド材の放熱性がより一層高くなる。上記金属物質の含有量が上記上限以下であると、金属物質の分散性が高くなり、更にダイボンディングが容易になる。
【0137】
(カップリング剤)
本発明に係る光半導体装置用ダイボンド材は、接着性を付与するために、カップリング剤をさらに含んでいてもよい。
【0138】
上記カップリング剤としては特に限定されず、例えば、シランカップリング剤等が挙げられる。該シランカップリング剤としては、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、及びN−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。カップリング剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0139】
(他の成分)
本発明に係る光半導体装置用ダイボンド材は、必要に応じて、紫外線吸収剤、酸化防止剤、溶剤、着色剤、充填剤、消泡剤、表面処理剤、難燃剤、粘度調節剤、分散剤、分散助剤、表面改質剤、可塑剤、防黴剤、レベリング剤、安定剤、カップリング剤、タレ防止剤又は蛍光体等を含有してもよい。
【0140】
(光半導体装置用ダイボンド材の詳細及び用途)
本発明に係る光半導体装置用ダイボンド材は、ペースト状であってもよく、フィルム状であってもよい。本発明に係る光半導体装置用ダイボンド材は、ペースト状であることが好ましい。
【0141】
上記第1のシリコーン樹脂と、上記第2のシリコーン樹脂と、上記ヒドロシリル化反応用触媒とは、これらを1種又は2種以上含む液を別々に調製しておき、使用直前に複数の液を混合して、本発明に係る光半導体装置用ダイボンド材を調製してもよい。例えば、上記第2のシリコーン樹脂及び上記ヒドロシリル化反応用触媒を含むA液と、第1のシリコーン樹脂を含むB液とを別々に調製しておき、使用直前にA液とB液とを混合して、ダイボンド材を調製してもよい。この場合に、上記フィラー及び上記金属物質は、A液に含まれていてもよく、B液に含まれていてもよい。このように上記第2のシリコーン樹脂及び上記ヒドロシリル化反応用触媒と上記第1のシリコーン樹脂とを別々に、第1の液と第2の液との2液にすることによって保存安定性を向上させることができる。
【0142】
本発明に係る光半導体装置用ダイボンド材の製造方法としては特に限定されず、例えば、ホモディスパー、ホモミキサー、万能ミキサー、プラネタリウムミキサー、ニーダー、三本ロール又はビーズミル等の混合機を用いて、常温又は加温下で、上記第1のシリコーン樹脂、上記第2のシリコーン樹脂、上記ヒドロシリル化反応用触媒、上記フィラー、上記金属物質及び必要に応じて配合される他の成分を混合する方法等が挙げられる。
【0143】
本発明に係る光半導体装置用ダイボンド材を、基板等の接続対象部材上に配置し、又は光半導体素子の下面に配置し、ダイボンド材を介して接続対象部材と光半導体素子とを接続することにより、光半導体装置を得ることができる。
【0144】
本発明に係る光半導体装置用ダイボンド材の硬化温度は特に限定されない。光半導体装置用ダイボンド材の硬化温度は、好ましくは80℃以上、より好ましくは100℃以上、好ましくは220℃以下、より好ましくは180℃以下、更に好ましくは150℃以下である。硬化温度が上記好ましい下限以上であると、ダイボンド材の硬化が充分に進行する。硬化温度が上記好ましい上限以下であると、ダイボンド材及びダイボンド材により接合される部材の熱劣化が起こり難い。
【0145】
硬化方式は特に限定されないが、ステップキュア方式を用いることが好ましい。ステップキュア方式は、一旦低温で仮硬化させておき、その後に高温で硬化させる方法である。ステップキュア方式の使用により、ダイボンド材の硬化収縮を抑えることができる。
【0146】
(光半導体装置)
本発明に係る光半導体装置は、光半導体装置用ダイボンド材と、接続対象部材と、上記光半導体装置用ダイボンド材を用いて上記接続対象部材に接続された光半導体素子とを備える。
【0147】
本発明に係る光半導体装置としては、具体的には、例えば、発光ダイオード装置、半導体レーザー装置及びフォトカプラ等が挙げられる。このような光半導体装置は、例えば、液晶ディスプレイ等のバックライト、照明、各種センサー、プリンター及びコピー機等の光源、車両用計測器光源、信号灯、表示灯、表示装置、面状発光体の光源、ディスプレイ、装飾、各種ライト並びにスイッチング素子等に好適に用いることができる。
【0148】
上記光半導体素子である発光素子としては、半導体を用いた発光素子であれば特に限定されず、例えば、上記発光素子が発光ダイオードである場合、例えば、基板上にLED形式用半導体材料を積層した構造が挙げられる。この場合、半導体材料としては、例えば、GaAs、GaP、GaAlAs、GaAsP、AlGaInP、GaN、InN、AlN、InGaAlN、及びSiC等が挙げられる。
【0149】
上記基板の材料としては、例えば、サファイア、スピネル、SiC、Si、ZnO、及びGaN単結晶等が挙げられる。また、必要に応じ基板と半導体材料との間にバッファー層が形成されていてもよい。上記バッファー層の材料としては、例えば、GaN及びAlN等が挙げられる。
【0150】
図1は、本発明の一実施形態に係る光半導体装置を示す正面断面図である。
【0151】
本実施形態の光半導体装置1は、接続対象部材であるハウジング2と、光半導体素子3とを有する。ハウジング2内にLED素子である光半導体素子3が実装されている。この光半導体素子3の周囲を、ハウジング2の光反射性を有する内面2aが取り囲んでいる。本実施形態では、光半導体により形成された発光素子として、光半導体素子3が用いられている。
【0152】
ハウジング2の内面2aは、内面2aの径が開口端に向かうにつれて大きくなるように形成されている。従って、光半導体素子3から発せられた光のうち、内面2aに到達した光B1が内面2aにより反射され、光半導体素子3の前方側に進行する。
【0153】
光半導体素子3は、ハウジング2に設けられたリード電極4に、ダイボンド材5を用いて接続されている。ダイボンド材5は、光半導体装置用ダイボンド材である。光半導体素子3に設けられたボンディングパッド(図示せず)とリード電極4とが、ボンディングワイヤー6により電気的に接続されている。光半導体素子3及びボンディングワイヤー6を封止するように、内面2aで囲まれた領域内には、封止剤7が充填されている。
【0154】
ダイボンド材5は、光半導体素子3の底部からはみ出してその周囲を囲むように配置されてもよく、光半導体素子3の底部からはみ出さないように配置されてもよい。ダイボンド材5の厚みは、2〜50μmの範囲内であることが好ましい。
【0155】
光半導体装置1では、光半導体素子3を駆動すると、破線Aで示すように光が発せられる。この場合、光半導体素子3からリード電極4の上面とは反対側すなわち上方に照射される光だけでなく、ダイボンド材5に到達した光が矢印B2で示すように反射される光もある。
【0156】
なお、図1に示す構造は、本発明に係る光半導体装置の一例にすぎず、光半導体素子3の実装構造等には適宜変形され得る。
【0157】
以下に、実施例を挙げて本発明をより詳細に説明する。本発明は、以下の実施例に限定されない。
【0158】
(第1,第2のシリコーン樹脂)
第1,第2のシリコーン樹脂を以下のようにして合成した。
【0159】
(合成例1)第1のシリコーン樹脂の合成
温度計、滴下装置及び攪拌機を備えた1000mLのセパラブルフラスコに、ジメチルメトキシシラン120g、メチルトリメトキシシラン54g、及び1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン40gを入れ、50℃で攪拌した。その中に、塩酸1.2gと水83gとの溶液をゆっくりと滴下し、滴下後に50℃で6時間攪拌し、反応させて、反応液を得た。次に、減圧して揮発成分を除去してポリマーを得た。得られたポリマーにヘキサン150gと酢酸エチル150gとを添加し、イオン交換水300gで10回洗浄を行い、減圧して揮発成分を除去してポリマー(A)を得た。
【0160】
得られたポリマー(A)の数平均分子量(Mn)は1500であった。29Si−NMRより化学構造を同定した結果、ポリマー(A)は、下記の平均組成式(A1)を有していた。
【0161】
(HMeSiO1/20.20(MeSiO2/20.50(MeSiO3/20.30 …式(A1)
上記式(A1)中、Meはメチル基を示す。
【0162】
なお、合成例1及び合成例2〜3で得られた各ポリマーの分子量は、10mgにテトラヒドロフラン1mLを加え、溶解するまで攪拌し、GPC測定により測定した。GPC測定では、Waters社製の測定装置(カラム:昭和電工社製 Shodex GPC
LF−804(長さ300mm)×2本、測定温度:40℃、流速:1mL/min、溶媒:テトラヒドロフラン、標準物質:ポリスチレン)を用いた。
【0163】
(合成例2)第1のシリコーン樹脂の合成
温度計、滴下装置及び攪拌機を備えた1000mLのセパラブルフラスコに、メチルトリメトキシシラン204g、ビニルメチルジメトキシシラン40g、及び1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン80gを入れ、50℃で攪拌した。その中に、塩酸1.2gと水102gとの溶液をゆっくりと滴下し、滴下後に50℃で6時間攪拌し、反応させて、反応液を得た。次に、減圧して揮発成分を除去してポリマーを得た。得られたポリマーにヘキサン150gと酢酸エチル150gとを添加し、イオン交換水300gで10回洗浄を行い、減圧して揮発成分を除去してポリマー(B)を得た。
【0164】
得られたポリマー(B)の数平均分子量(Mn)は1500であった。29Si−NMRより化学構造を同定した結果、ポリマー(B)は、下記の平均組成式(B1)を有していた。
【0165】
(HMeSiO1/20.40(ViMeSiO2/20.10(MeSiO3/20.50 …式(B1)
上記式(B1)中、Meはメチル基、Viはビニル基を示す。
【0166】
(合成例3)第2のシリコーン樹脂の合成
温度計、滴下装置及び攪拌機を備えた1000mLのセパラブルフラスコに、トリメチルメトキシシラン41g、ジメチルジメトキシシラン72g、メチルトリメトキシシラン81g、及びビニルメチルジメトキシシラン52gを入れ、50℃で攪拌した。その中に、水酸化カリウム0.8gを水114gに溶かした溶液をゆっくりと滴下し、滴下後に50℃で6時間攪拌し、反応させて、反応液を得た。次に、反応液に酢酸0.9gを加え、減圧して揮発成分を除去し、酢酸カリウムをろ過により除去して、ポリマー(C)を得た。
【0167】
得られたポリマー(C)の数平均分子量(Mn)は2000であった。29Si−NMRより化学構造を同定した結果、ポリマー(C)は、下記の平均組成式(C1)を有していた。
【0168】
(MeSiO1/20.20(ViMeSiO2/20.20(MeSiO2/20.30(MeSiO3/20.30 …式(C1)
上記式(C1)中、Meはメチル基、Viはビニル基を示す。
【0169】
(フィラー)
実施例及び比較例では、下記のフィラーを用いた。
(1)銀(三井金属社製、熱伝導率400W/m・K、平均粒子径1μm、CV値7%)
(2)アルミナ(住友化学社製、熱伝導率20W/m・K、平均粒子径0.3μm、CV値5%)
(3)酸化亜鉛(ハクスイテック社製、熱伝導率25W/m・K、平均粒子径0.2μm、CV値8%)
(4)合成マグネサイト(神島化学社製、熱伝導率15W/m・K、平均粒子径2μm、CV値9%)
(5)シリカ(トクヤマ社製、熱伝導率2W/m・K、平均粒子径1μm、CV値3%)
【0170】
(金属物質)
また、実施例及び比較例では、下記の金属物質を用いた。
(1)Sn−Bi(粉末状、三井金属社製、熱伝導率30W/m・K、平均粒子径3μm、融点143℃)
(2)Sn−Zn(粉末状、三井金属社製、熱伝導率25W/m・K、平均粒子径4μm、融点195℃)
【0171】
(実施例1)
ポリマーA5重量部、ポリマーC5重量部、白金の1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン錯体(白金触媒)0.02重量部、銀(三井金属社製、熱伝導率400W/m・K、平均粒子径1μm、CV値7%)60重量部、及びSn−Bi(粉末状、三井金属社製、熱伝導率30W/m・K、平均粒子径3μm)20重量部を混合し、脱泡を行い、光半導体装置用ダイボンド材を得た。
【0172】
(実施例2〜6及び比較例1〜2)
使用した材料の種類及び配合量を、下記の表1に示すように変更したこと以外は実施例1と同様にして、光半導体装置用ダイボンド材を得た。
【0173】
(評価)
(1)熱伝導率
実施例及び比較例で得られた各光半導体装置用ダイボンド材を150℃で3時間加熱し、硬化させ、100mm×100mm×厚さ50μmの硬化物を得た。この硬化物を評価サンプルとした。
【0174】
得られた評価サンプルの熱伝導率を、京都電子工業社製熱伝導率計「迅速熱伝導率計QTM−500」を用いて測定した。
【0175】
(2)反射率
色彩色差計(コニカミノルタ社製、商品名「CR−400」を用いて、上記(1)熱伝導率の評価で得られた評価サンプルの光の反射率Y値(%)を測定した。
【0176】
(3)接着性(ダイシェア強度)
AgメッキしたCu基板上に、接着面積が3mm×3mmになるように光半導体装置用ダイボンド材を塗布し、3mm角のSiチップを載せて、テストサンプルを得た。
【0177】
得られたテストサンプルを150℃で3時間加熱し、ダイボンド材を硬化させた。次に、ダイシェアテスター(アークテック社製、型番:DAGE 4000)を用いて、300μ/秒の速度で、185℃でのダイシェア強度を評価した。
【0178】
(4)塗布されたダイボンド材の厚みの均一性
ダイボンダー(キャノンマシナリー社製「BESTEM−D01R」)を用いて、銀メッキされた銅基板上に得られた光半導体装置用ダイボンド材を、厚みが5μmでダイボンド材上に積層される光半導体素子(縦200μm×横400μm)の大きさとなるように塗布し、基板上にダイボンド材が塗布された塗布物を得た。
【0179】
得られた塗布物を観察し、塗布されたダイボンド材の厚みの均一性を下記の判定基準で判定した。
【0180】
[ダイボンド材の厚み均一性の判定基準]
○○:厚みの最大値と最小値の差が0.1μm以下
○:厚みの最大値と最小値の差が0.1μmを超え、1μm以下
△:厚みの最大値と最小値の差が1μmを超え、2μm以下
×:厚みの最大値と最小値の差が2μmを超える
【0181】
結果を下記の表1に示す。
【0182】
【表1】

【符号の説明】
【0183】
1…光半導体装置
2…ハウジング
2a…内面
3…光半導体素子
4…リード電極
5…ダイボンド材
6…ボンディングワイヤー
7…封止剤

【特許請求の範囲】
【請求項1】
珪素原子に結合した水素原子を有する第1のシリコーン樹脂と、
珪素原子に結合した水素原子を有さず、かつアルケニル基を有する第2のシリコーン樹脂と、
ヒドロシリル化反応用触媒と、
熱伝導率が10W/m・K以上であり、かつ平均粒子径が0.01μm以上、10μm以下であるフィラーと、
熱伝導率が10W/m・K以上であり、平均粒子径が0.01μm以上、10μm以下であり、かつ融点が80℃以上、220℃以下である金属物質とを含む、光半導体装置用ダイボンド材。
【請求項2】
前記フィラーは、白色のフィラーである、請求項1に記載の光半導体装置用ダイボンド材。
【請求項3】
前記フィラーが、前記熱伝導率が10W/m・K以上であり、かつ平均粒子径が0.01μm以上、10μm以下であり、かつCV値が10%以下である球状のフィラーを含む、請求項1又は2に記載の光半導体装置用ダイボンド材。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の光半導体装置用ダイボンド材と、
接続対象部材と、
前記光半導体装置用ダイボンド材を用いて前記接続対象部材に接続された光半導体素子とを備える、光半導体装置。

【図1】
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【公開番号】特開2012−222309(P2012−222309A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−89770(P2011−89770)
【出願日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】