説明

光学パッケージの迅速な位置合わせ方法

第1の波長を有する出力ビームを放射する半導体レーザー、出力ビームを第2の波長に変換する波長変換素子、及び波長変換素子の入射面の導波路部分に出力ビームを光学的に接続する適応光学系を有する光学パッケージの位置合わせ方法であって、波長変換素子の入射面上を第1の走査軸に沿って半導体レーザーの出力ビームを走査したとき、波長変換素子のバルク結晶部分から放射又は散乱された第1の波長を有する光のパワーが測定される。次に、入射面上を第2の走査軸に沿って出力ビームを走査したとき、波長変換素子から放射された光のパワーが測定される。波長変換素子の端部に相対する第2の走査軸は、第1の波長を有する光の測定パワーに基づいている。次に、第2の波長を有する光の測定パワーに基づいて、出力ビームが入射面の導波路部分に位置合わせされる。

【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
本願は、米国特許出願第12/427,945号(出願日:2009年4月22日)の優先権を主張するものである。
【技術分野】
【0002】
本発明は半導体レーザー、レーザー制御装置、光学パッケージ、及び半導体レーザーを組み込んだその他の光学システムに関し、より詳細には、特に適応光学系を備え、第二高調波発生(SHG)結晶又は別の種類の波長変換素子に光学的に接続された半導体レーザーを収容した光学パッケージの位置合わせ方法に関するものである。
【背景技術】
【0003】
赤外又は近赤外分布帰還(DFB)型レーザー、分布ブラッグ反射(DBR)レーザー、又はファブリ・ペロー・レーザーのような単波長半導体レーザーと第二高調波又は高調波発生用結晶のような波長変換素子とを組み合わせることによって、短波長光源を構成することができる。一般に、波長変換素子を用いて基本レーザー信号の高調波を発生させることにより、近赤外光がスペクトルの可視又は紫外域へ変換される。そのためには、半導体レーザーのレーザー発振波長が波長変換素子のスペクトルの中央に同調していることが好ましく、またレーザーの出力ビームが波長変換素子の入射面の導波路部分に位置合わせされていることが好ましい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
MgOをドープした周期分極反転ニオブ酸リチウム(PPLN)第二高調波発生結晶のような一般的な波長変換素子の導波光モード・フィールド径は数マイクロメートルであり、波長変換素子と組み合わせて使用される半導体レーザーは略同じ径を有する単一モード波長から成っている。そのため、半導体レーザーの出力ビームをSHG結晶の導波路に適切に位置合わせして、SHG結晶の出力を最適化することは困難な課題である。即ち、半導体レーザーの出力ビーム及びSHG結晶の両方の寸法を勘案したとき、出力ビームが波長変換素子の導波路部分に入射するよう半導体レーザーを位置決めすることは困難である。
従って、第二高調波発生(SHG)結晶のような波長変換素子に光学的に接続された半導体の位置合わせ方法が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
例えば、赤外波長のような第1の波長を有する出力ビームを放射する半導体レーザー、出力ビームを、例えば、可視波長のような第2の波長に変換する波長変換素子、及び適応光学系の少なくとも1つの調整可能な光学部品を操作するようプログラムされたパッケージ・コントローラを有する光学パッケージの位置合わせ方法が開示される。本位置合わせ方法において、波長変換素子の入射面上を第1の走査軸に沿って半導体レーザーの出力ビームを走査したとき、波長変換素子のバルク結晶部分から放射又は散乱された第1の波長を有する光のパワーを測定することにより、波長変換素子の端部が特定される。次に、波長変換素子の端部に相対する第2の走査軸上に位置するよう半導体レーザーの出力ビームが波長変換素子の入射面に位置決めされる。第2の走査軸は波長変換素子の導波路部分の少なくとも一部を横断している。波長変換素子の入射面上を第2の走査軸に沿って半導体レーザーの出力ビームを走査したとき、波長変換素子から放射された光のパワーを測定することにより、第2の走査軸に沿って導波路部分の位置が特定される。次に、第2の走査軸に沿って赤外半導体レーザーの出力ビームを走査したとき測定した光のパワーに基づいて、半導体レーザーの出力ビームが波長変換素子の導波路部分に位置合わせされる。
【0006】
別の実施の形態において、光学パッケージが第1の波長を有する出力ビームを放射する半導体レーザー、出力ビームを第2の波長に変換する波長変換素子、出力ビームを波長変換素子の入射面の導波路部分に光学的に接続する適応光学系、波長変換素子から放射又は散乱された光のパワーを測定する少なくとも1つの光検出器、及びパッケージ・コントローラを含んでいる。パッケージ・コントローラは、波長変換素子の入射面上を第1の走査軸に沿って半導体レーザーの出力ビームを走査すると共に、波長変換素子の入射面上を第1の走査軸に沿って半導体レーザーの出力ビームを走査したとき、波長変換素子のバルク結晶部分から放射又は散乱された第1の波長を有する光のパワーを測定することにより、波長変換素子の端部を特定するようプログラムすることができる。次に、パッケージ・コントローラは、波長変換素子の端部に相対する第2の走査軸上に位置するよう半導体レーザーの出力ビームを波長変換素子の入射面に位置決めすることができる。第2の走査軸は波長変換素子の導波路部分の少なくとも一部を横断している。次に、波長変換素子の入射面上を第2の走査軸に沿って半導体レーザーの出力ビームを走査し、そのとき波長変換素子から放射された光のパワーを測定することにより、第2の走査軸に沿って導波路部分の位置を特定するようパッケージ・コントローラをプログラムすることができる。ここで、波長変換素子の入射面上を第2の走査軸に沿って半導体レーザーの出力ビームを走査したとき、波長変換素子から放射された光は第1の波長、第2の波長、又はその両方を含んでいる。最後に、波長変換素子の入射面上を第2の走査軸に沿って半導体レーザーの出力ビームを走査したとき測定した光のパワーに基づいて、半導体レーザーの出力ビームを波長変換素子の導波路部分に位置合わせするようパッケージ・コントローラをプログラムすることができる。
【0007】
本発明の更なる特徴及び効果は以下の詳細な説明に述べてあり、当業者にとって以下の説明によりある程度明白になり、また詳細な説明、クレーム、及び添付図面を含む本明細書に記載の本発明を実施することにより認識することができる。
前記概要説明及び本発明の実施の形態を示す以下の詳細な説明は、特許請求した本発明の本質及び特徴を理解するための要旨及び構成の提供を意図したものである。添付図面は本発明の理解を深めるためのものであり、本明細書に組み込まれその一部を構成するものである。図面は本発明の各種実施の形態を示すものであり、本明細書の記述と合わせて本発明の原理及び作用の説明に役立つものである。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本明細書において図示及び説明する1つの実施の形態による、略直線構造を有する光学パッケージの概略図。
【図2】本明細書において図示及び説明する1つの実施の形態による、折り畳み構造を有する光学パッケージの概略図。
【図3A】本明細書において図示及び説明する実施の形態による、波長変換素子の1つの断面図。
【図3B】本明細書において図示及び説明する実施の形態による、図3Aに示す波長変換素子の1つの断面図。
【図4A】本明細書において図示及び説明する実施の形態による、波長変換素子の1つの断面図。
【図4B】図4Aに示す波長変換素子の1つの断面図。
【図5A】本明細書において図示及び説明する1つの実施の形態において、波長変換素子の入射面上を走査する半導体レーザーの出力ビームを示す図。
【図5B】波長変換素子の入射面上を図5AのY方向に半導体レーザーの出力ビームを走査したときの波長変換素子における可視光及び赤外光の測定出力強度変化を示す図。
【図5C】波長変換素子の入射面上を図5AのX方向に半導体レーザーの出力ビームを走査したときの波長変換素子における可視光及び赤外光の測定出力強度変化を示す図。
【図6】波長変換素子の入射面上を図5AのY方向に半導体レーザーの出力ビームを走査したときの散乱赤外光の強度変化を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
添付図面に例を示す、本発明の実施の形態について詳細に説明する。図面全体を通し、可能な限り同一又は同様の部品には同一の参照番号が付してある。本明細書において説明する制御方法に関連して使用される光学パッケージの1つの実施の形態を図1に示す。概して言えば、この光学パッケージは半導体レーザー、適応光学系、波長変換素子、及びパッケージ・コントローラを含んでいる。適応光学系により半導体レーザーの出力を波長変換素子の入射面に光学的に接続することができる。適応光学系にパッケージ・コントローラを電気的に接続することにより、波長変換素子に対する半導体レーザーの位置合わせ制御を行うことができる。以下、光学パッケージの様々な部品及び構成、並びに波長変換素子に対する半導体レーザーの位置合わせ方法について更に説明する。
【0010】
図1及び2は光学パッケージの2つの実施の形態100、200をそれぞれ示す概略図である。図において、実線と矢印は光学パッケージにおける様々な部品間の電気的相互接続を示すものである。またこれ等の実線と矢印は、様々な部品間を伝搬する電子的制御信号、データ信号等を含みこれに限定されない電気信号を示すものでもある。また、破線と矢印は半導体レーザー及び/又は波長変換素子から放射された光又は光ビームを示すものであり、ダッシュ記号の長さは1つ以上の異なる波長成分を有する光又は光ビームを示している。本明細書において「光」及び「光ビーム」とは、半導体レーザー及び/又は波長変換素子から放射された電磁放射の様々な波長を意味し、かかる光又は光ビームは電磁スペクトルの紫外、可視、又は赤外域に対応する波長を有している。
【0011】
本発明の特定の実施の形態の概念を組み込むことができる各種光学パッケージの一般的な構造は、容易に入手できる周波数又は波長変換型半導体レーザー源の設計・製造に関する技術文献に記載されているが、図1及び2において、例えば、波長変換素子120(図1及び2において“ν”)に光学的に接続された半導体レーザー110(図1及び2において“λ”)を含む、参照番号100、200で示す光学パッケージによって、本発明の特定の実施の形態の概念を便宜的に示す。半導体レーザー110は第1の波長λ1を有する出力ビーム119、即ち、基本ビームを放射することができる。半導体レーザー110の出力ビーム119は、波長変換素子120の導波路部分(図示せず)に直接接続することも、図1、2に示すように、適応光学系140を用いて接続することもできる。波長変換素子120は半導体レーザー110の出力ビーム119を高調波に変換し、第1の波長λの光及び第2の波長λの光を含む出力ビーム128を放射する。この種の光学パッケージは、長波長半導体レーザー(例えば、赤外スペクトルの波長を有する出力ビームを放射するレーザー)から短波長レーザー・ビーム(例えば、可視スペクトルの波長を有するレーザー・ビーム)を生成する際に特に有益である。例えば、このような装置はレーザー投影システムの可視レーザー源として使用することができる。
【0012】
本明細書の実施の形態において、半導体レーザー110は赤外出力ビームを放射するレーザー・ダイオードであり、波長変換素子120はその出力ビームを可視スペクトルの波長を有する光に変換できるものである。しかし、本明細書において説明する光学パッケージ及び光学パッケージの位置合わせ方法は、別の出力波長を有するレーザー素子及びレーザーの出力ビームを別の可視及び紫外波長に変換する波長変換素子を組み込んだ別の光学パッケージにも適用できるものである。
【0013】
更に、図1及び2において、波長変換素子120は、一般に、第二高調波発生(SHG)結晶のような、非線形光学バルク結晶材料122を有している。例えば、1つの実施の形態において、波長変換素子120はMgOをドープした周期分極反転ニオブ酸リチウム(PPLN)結晶を有している。しかし、別の同様の非線形光学結晶も使用することができる。更に、波長変換素子は、第二高調波発生(SHG)結晶又は光を高次(例えば、三次、四次等)高調波に変換することができる非線形光学結晶であってよい。
【0014】
次に、波長変換素子の2つの実施の形態120、121を図3A〜4Bに示す。波長変換素子120、121はいずれもニオブ酸リチウムのようなバルク結晶材料122及びMgOをドープしたニオブ酸リチウム等から成り、入射面132から出射面133に延びる埋め込み導波路部分126を有している。波長変換素子120がPPLN結晶である場合、PPLN結晶の導波路部分126の寸法(例えば、高さ及び幅)は約5マイクロメートルである。
【0015】
図3A、3Bに示す実施の形態において、波長変換素子120の断面は略矩形又は正方形を成している。図3Aに示すように、入射面132は上端部124A、側端部124B及び124C、下端部124Dによって規定される。導波路部分126はバルク結晶材料122の下端部124Dの近傍に位置し、低屈折率層130に埋め込まれている。バルク結晶122の一般的な寸法は約500〜1500マイクロメートルであり、低屈折率層130の一般的な厚さは数マイクロメートルから数十マイクロメートルである。
【0016】
図4A、4Bに示す波長変換素子121の実施の形態において、波長変換素子121はバルク結晶材料の2つの厚板122A、122Bに挟まれた低屈折率層130に埋め込まれた導波路部分126を有している。導波路部分126は波長変換素子121の入射面132と出射面133と間に延びている。図4Aにおいて、バルク結晶材料の各々の厚板122A、122Bは断面が略矩形又は正方形を成し、上端部124A、側端部124B及び124C、下端部124Dを有している。
【0017】
図3B、4Bにおいて、半導体レーザー110の出力ビーム119のような第1の波長λを有する光ビームが波長変換素子120の導波路部分126に照射されると、その光ビームは波長変換素子120の導波路部分126に沿って伝搬し、光ビームの少なくとも一部が第2の波長λに変換される。波長変換素子120は出射面133から光ビーム128を放射する。光ビーム128は無変換光(例えば、第1の波長λを有する光)の他に、変換された波長の光(例えば、第2の波長λを有する光)も含んでいる。例えば、1つの実施の形態において、半導体レーザー110によって生成され、波長変換素子120の導波路部分に照射される出力ビーム119(例えば、赤外光ビーム)の波長は約1060nmである。この実施の形態において、波長変換素子120は、導波路部分126が約1060nmの波長を有する光の他に、約530nm波長の光(例えば、可視緑光)を含む光ビーム128を放射するよう赤外光ビームの少なくとも一部を可視光に変換する。
【0018】
別の実施の形態において、半導体レーザー110の出力ビーム119のような、波長λを有する光ビームが波長変換素子120の入射面132に照射されたが、導波路部分126に照射されなかったとき(例えば、光ビームが波長変換素子120のバルク結晶材料122に入射したとき)、全内部反射現象により光ビームが波長変換素子120のバルク結晶材料122の内部を導波され第2の波長λに変換されずに出射面133から放射される。例えば、波長変換素子120の非導波路部分又はバルク結晶材料122に入射した出力ビーム119が1060nmの第1の波長λを有している場合(例えば、出力ビーム119が赤外光ビームである場合)、波長変換素子120の出射面133から放射される光ビーム219も1060nmの波長を有し、バルク結晶材料122においては波長変換がほとんど又は全く生じない。
【0019】
再度図1及び2において、波長変換素子及び半導体レーザーを用いた光学パッケージの2つの実施の形態100、200が示されている。図1に示すように、1つの実施の形態において、半導体レーザー110及び波長変換素子120が略直線構造を成しているように光学パッケージ100が描かれている。具体的には、半導体レーザー110の出力と波長変換素子120の入力とが1つの光軸に沿って略整列している。図1に示すように、半導体レーザー110から放射された出力ビーム119は、適応光学系140によって波長変換素子120の導波路部分に接続されている。
【0020】
図1の実施の形態において、適応光学系140は調整可能な光学部品、具体的にはレンズ142を有している。レンズ142は半導体レーザー110から放射された出力ビーム119を平行化すると共に波長変換素子120の導波路部分に収束させるものである。しかし、別の種類のレンズ、多数のレンズ、あるいはその他の光学素子を用いることもできる。調整可能な光学部品として機能するよう、X及びY方向の位置を調整するアクチュエータ(図示せず)にレンズ142を接続することができる。X及びY方向のレンズの位置を調整することにより、波長変換素子120の入射面に沿った出力ビーム119の位置決めが容易になり、導波路部分に対し出力ビーム119が位置合わせされ波長変換素子120の出力が最適化される。本明細書の実施の形態において、アクチュエータはMEMS素子、圧電素子、ボイスコイル、又はレンズに対しX及びY方向に並進運動を与える同様の機械又は電子機械アクチュエータであってよい。
【0021】
光学パッケージの別の実施の形態200を示す図2において、半導体レーザー110、波長変換素子120、及び適応光学系140が折り畳み構造を成している。具体的には、半導体レーザー110の出力ビーム119と波長変換素子120の入射面とが略平行な光軸上に位置している。図1の実施の形態と同様に、半導体レーザー110から放射された出力ビーム119が適応光学系140によって波長変換素子120の導波路部分に接続される。しかし、この実施の形態においては、出力ビーム119を波長変換素子120の導波路部分に接続させるためには出力ビーム119の初期経路の方向を変える必要がある。従って、この実施の形態においては、適応光学系140が調整可能な光学部品、具体的には調整可能ミラー144及びレンズ142を有している。
【0022】
前記のように、適応光学系140のレンズ142は半導体レーザー110から放射された出力ビーム119を平行化し波長変換素子120の導波路部分に収束させるものであり、調整可能ミラー144は出力ビーム119の方向を第1の経路から第2の経路に変えるものである。具体的には、図2のX及びY軸に対し略平行な回転軸を中心に調整可能ミラー144を回転させて出力ビーム119に角度偏移を与えることができる。調整可能ミラー144はミラー部分とアクチュエータ部分とから成っている。アクチュエータ部分を調整することにより、調整可能ミラー144をいずれかの回転軸を中心に回転させることができる。本明細書の実施の形態において、前記調整可能光学部品のアクチュエータ部分はMEMS素子、圧電素子、ボイスコイル、又はレンズ部に回転運動を与えることができる同様のアクチュエータから成ることができる。
【0023】
例えば、1つの実施の形態において、調整可能ミラー144は,ミラーに動作可能に接続された1つ以上の可動微小光電気機械システム(MOEMS)又は微小電気機械システム(MEMS)から成っている。波長変換素子120の入射面における出力ビーム119の位置を変えることができるようMEMS又はMOEMS素子を構成し調整することができる。MEMS又はMOEMS素子を使用することにより、広範囲にわたり出力ビーム119を迅速に調整することができる。例えば、機械偏角+/−1度のMEMSミラーを焦点距離3mmのレンズと組み合わせて使用することにより、波長変換素子120の入射面132において、出力ビーム119のビーム・スポットを+/−100μm角度的に変位させることができる。MEMS又はMOEMS素子の応答速度が速いため、約100Hz〜10kHzの周波数でビーム・スポットの調整を行うことができる。
【0024】
前記に代えて又は加えて、調整可能な光学部品は、ビーム操作及び/又はビーム集束をするよう構成された1つ以上の液体レンズ部品から成ることができる。また、調整可能な光学部品は、マイクロ・アクチュエータに取り付けられた1つ以上のミラー及び/又はレンズから成ることも考えられる。考えられる1つの実施の形態において、図1に関連して説明した可動又は調整可能レンズと固定ミラーとを組み合わせて調整可能な光学部品とすることにより、半導体レーザー110と波長変換素子120との間に折り返し光路を形成することができる。
【0025】
図2の光学パッケージ200において、調整可能ミラー144は、比較的小型の折り返し経路光システムに組み込まれた微小光電気機械ミラーである。図示の構成において、光路を折り返し、まずレンズ142を通過し平行ビーム又は略平行ビームとして調整可能ミラー144に到達し、次に同じレンズ142を介して戻り、波長変換素子120に収束されるよう調整可能ミラー144が構成されている。このような光学構成は、半導体レーザー110によって生成された出力ビームの断面寸法が波長変換素子120の入射面の導波路の寸法に近く、ビーム・スポットを波長変換素子120の入射面に収束する際、1に近い倍率により最適接続が得られる波長変換レーザー源に特に適している。本光学パッケージ200の実施の形態を規定及び説明する上において、「平行又は略平行」ビームは、発散度又は収斂度が低下してより平行化状態に近づいている任意のビーム構成を含むものである。
【0026】
図1及び2に示す光学パッケージ100、200の実施の形態においては、半導体レーザー110の出力ビーム119が適応光学系140によって波長変換素子120に接続されたが、別の構成を成す光学パッケージも可能である。例えば、別の実施の形態(図示せず)において、半導体レーザー110の出力ビーム119に対し波長変換素子120を相対的に移動する、MEMS素子又は圧電素子等から成るアクチュエータに波長変換素子120を機械的に接続することができる。このようなアクチュエータを用い、以下に説明する技術によって、波長変換素子の導波路部分が出力ビーム119に一致するよう波長変換素子を位置決めすることができる。
【0027】
図1及び2において、光学パッケージ100、200は、フォトダイオードのような光検出器170、平行化レンズ190、及びビーム・スプリッター180を更に有している。ビーム・スプリッター180及び平行化レンズ190は波長変換素子120の出射面133近傍に位置している。平行化レンズ190は出射面133から放射された光をビーム・スプリッター180に収束するものであり、ビーム・スプリッター180は波長変換素子120の出射面133から放射された光ビーム128の一部を光検出器170に向けるものである。光検出器170は波長変換素子120の出射面133から放射された光のパワーを測定することができる。例えば、1つの実施の形態において、半導体レーザーの出力ビーム119が赤外光である場合、光検出器170は出射面133から放射された赤外光の強度又はパワーを測定することができる。
【0028】
引き続き図1及び2に関連して、1つの実施の形態において、光学パッケージ100、200が第2の光検出器171を更に有することができる。第2の光検出器171は波長変換素子120の側面近傍に位置し、波長変換素子120の光軸(例えば、出射面と入射面との間に延びる軸)に対し略平行な方向に向いている。1つの実施の形態(図示せず)において、波長変換素子の近傍、あるいは波長変換素子の表面又は側面に第2の光検出器171が取り付けられている。第2の光検出器171は、波長変換素子120(例えば、バルク結晶材料122及び/又は低屈折率層130)又は光学パッケージ100、200の別の部品から散乱された出力ビーム119を測定することができる。例えば、1つの実施の形態において、半導体レーザーの出力ビーム119が赤外光である場合、第2の光検出器171は波長変換素子120によって散乱された赤外光の強度又はパワーを測定することができる。
【0029】
更に別の実施の形態(図示せず)において、図1及び2に示すビーム・スプリッター180がダイクロイック・ビーム・スプリッターであり、波長変換素子から放射された第1の波長λを有する光が光検出器170に向けられる一方、波長変換素子から放射された第2の波長λを有する光が第2の光検出器171に向けられるよう、ビーム・スプリッターに相対して第2の光検出器が配置されている。この実施の形態において、光検出器170、171は第1の波長λを有する光及び第2の波長λを有する光をそれぞれ測定することができる。例えば、出力ビーム119が赤外光ビームであり、波長変換素子が赤外光ビームを可視光に変換するものである場合、出射面133から放射された赤外光のパワーが光検出器170によって測定される一方、出射面133から放射された可視光のパワーが第2の光検出器171によって測定される。
【0030】
光学パッケージ100、200はパッケージ・コントローラ150も有している(図1及び2において“MC”)。パッケージ・コントローラ150は、光学パッケージ100、200を動作させるためのプログラム命令セットを記憶し、実行するための1つ以上のマイクロ・コントローラ又はプログラマブル・ロジック・コントローラを有している。別の方法として、マイクロ・コントローラ又はプログラマブル・ロジック・コントローラは命令セットを直接実行することができる。半導体レーザー110、適応光学系140、及び光検出器170、171にパッケージ・コントローラ150を電気的に接続し、適応光学系140を動作させると共に光検出器170、171から信号を受信するようプログラムすることができる。
【0031】
図1及び2において、パッケージ・コントローラ150をリード線156、158によって適応光学系140に接続し、X及びY位置制御信号を、それぞれリード線156、158を介して供給することができる。X及びY位置制御信号により適応光学系の調整可能な光学部品のX及びY方向の位置決めが容易になるため、波長変換素子120の入射面における半導体レーザー110の出力ビーム119のX及びY方向の位置決めが容易になる。例えば、適応光学系140の調整可能な光学部品が、図1の調整可能レンズ142である場合、X及びY位置制御信号によりレンズ142のX及びY方向の位置を決めることができる。また、適応光学系140の調整可能な光学部品が図2の調整可能ミラー144である場合、X位置制御信号により、Y軸に平行な回転軸を中心に調整可能ミラー144を回転させることにより、ミラーから反射された光ビームをX方向に走査することができる。同様に、Y位置制御信号により、X軸に平行な回転軸を中心に調整可能ミラー144を回転させることにより、ミラーから反射された光ビームをY方向に走査することができる。
また、光検出器170、171の出力をそれぞれリード線172、173によってパッケージ・コントローラ150に電気的に接続することにより、光検出器170、171によって測定された光パワーを示す出力信号がパッケージ・コントローラ150に伝達され、適応光学系の制御に用いられるようにすることができる。
【0032】
図1及び2の光学パッケージ100、200、並びに図3の波長変換素子120を参照しながら、半導体レーザーを光学パッケージ100、200の波長変換素子の導波路部分に位置合わせする方法について説明する。しかし、以下に説明する方法は図4の波長変換素子にも適用可能なものである。
【0033】
図1、2、5A、5B、及び6において、半導体レーザーの出力ビームを波長変換素子120の導波路部分126に位置合わせする方法の1つの実施の形態を概略示す。この方法において、半導体レーザー110の出力ビーム119が波長変換素子120の入射面132に照射される。まず、本明細書においてビーム・スポット104とも呼ぶ出力ビーム119、例えば、図5Aのビーム・スポット104が、波長変換素子120のバルク結晶材料122に入射するよう入射面132に照射される。1つの実施の形態において、パッケージ・コントローラ150をプログラムすることにより、出力ビーム119が波長変換素子120のバルク結晶材料122に位置するよう適応光学系140を調整することができる。
【0034】
1つの実施の形態において、図2に示すように光学パッケージが折り畳み構造を成している場合、波長変換素子120の入射面132が半導体レーザー110の出力導波路112と同一平面又は、一般に波長変換素子120導波路部分126の真下に位置する出力導波路112と平行な平面に位置することができる。このような構造を有する光学パッケージにおいては、出力ビーム119を不用意に半導体レーザー110の出力導波路112に反射させ、半導体レーザー110を損傷する可能性がある。この実施の形態において、半導体レーザー110の損傷を防止するため、出力ビーム119の初期位置が波長変換素子の入射面132となるよう、具体的には、ビーム・スポット104が入射面132の端部(例えば、端部124B又は124C)近傍に位置するようパッケージ・コントローラ150をプログラムすることができる。例えば、1つの実施の形態において、調整可能ミラー144がMEMS駆動ミラーである場合、パッケージ・コントローラ150をプログラムすることにより、図5Aに示すように、ビーム・スポット104が波長変換素子120の入射面132の端部124C近傍に位置するようMEMS駆動ミラーのY軸の位置を調整することができる。ビーム・スポット104の初期位置がこの位置である場合、出力ビーム119をY方向に走査する間、半導体レーザー110の出力ビーム119が半導体レーザー110の出力導波路112に反射されることはない。
【0035】
波長変換素子120の入射面132に位置決めされた後、出力ビーム119は第1の走査軸160に沿って走査される。図示の実施の形態において、第1の走査軸160はY軸に平行である。調整可能な光学部品に送られる位置制御信号を調整し、それによって調整可能な光学部品の位置を調整することにより、入射面132上のビーム・スポット104の位置を調整して入射面132上を出力ビーム119が走査されるようパッケージ・コントローラ150をプログラムすることができる。例えば、調整可能な光学部品にY位置制御信号を送り、それによって、出力ビーム119、即ち、ビーム・スポット104がY方向に走査されるよう調整可能な光学部品を位置決めし、入射面132上をビーム・スポット104が第1の走査軸に沿って走査されるようパッケージ・コントローラ150をプログラムすることができる。
【0036】
1つの実施の形態において、出力ビーム119が第1の走査軸160に沿って走査されるとき、波長変換素子120のバルク結晶材料122から放射された光のパワーが光検出器170によってモニターされる。例えば、半導体レーザー110の出力ビーム119が赤外域の波長λを有している場合、波長変換素子120のバルク結晶材料122から放射された赤外光のパワーが光検出器170によって測定され、パッケージ・コントローラ150に送られる。走査中に調整可能な光学部品に供給されたY位置制御信号を関数として、バルク結晶材料から放射された赤外光の測定パワーをプロットしたものを図5Bに示す。
【0037】
図5A及び5Bにおいて、第1の走査軸160に沿って出力ビーム119を走査すると、出力ビームはバルク結晶材料122から低屈折率層130に移行し、次いで完全に波長変換素子130の外部に移行する。バルク結晶材料122からの移行により、その分だけ波長変換素子120からの光のパワーが低下する。例えば、図5Bの縦線300が示すように、1つの実施の形態において、バルク結晶材料122から低屈折率層130への出力ビーム119の移行は、調整可能な光学部品に対するY位置制御信号の値が約4.4ボルトのときに生じる。第1の走査軸に沿って走査を継続すると、波長変換素子120の出力パワーは、出力ビーム119がバルク結晶材料122の外部に完全に移行して出力パワーが更に低下する点まで連続的に低下する。図5Bの例において、Y位置制御信号が約5.2ボルトに対応する縦線302がこの点を示している。図5Bに示す大きな検出光量から小さな検出光量への移行は、ビームが波長変換素子の下端部を横切ったこと、即ち、波長変換素子の端部を示している。検出器が受信するパワーは、光がバルク結晶材料を全内部反射により導波されたときの方がバルク結晶材料の外部に位置し検出器に導波されないときより大きい。この移行が生じたとき、調整可能な光学部品に印加されたY位置制御信号を特定し、第2の走査軸の特定及びビーム・スポット104の第2の走査軸上における位置決めを行うために、その値を記憶するようパッケージ・コントローラ150をプログラムすることができる。
【0038】
図5A及び5Bは、バルク結晶の外縁(例えば、下端部124D)の位置を特定するために、図3A及び3Bと同等の構造を有する波長変換素子120の入射面上を走査した半導体レーザーの出力ビームを示している。しかし、波長変換素子は図4A及び4Bに示す波長変換素子121と同等の構造を有していてもよい。図4A及び4Bの構造を有する波長変換素子の場合、波長変換素子の入射面上を半導体レーザーの出力ビームを走査することにより、内縁、即ち、バルク結晶材料の2つの厚板122Aと122Bとの界面の位置が特定される。例えば、ビーム走査によりバルク結晶材料122Aの下端部124Dからバルク結晶材料122Bの上端部124Aへ移行する位置が特定される。
別の実施の形態において、第1の走査軸に沿って出力ビーム119が走査されたとき、波長変換素子120のバルク結晶材料122及び低屈折率層130から散乱された光のパワーが第2の光検出器により測定される。この実施の形態において、図1及び2に示すように、第2の光検出器171は波長変換素子の光軸(例えば、入射面132と出射面133との間に延びる軸)に対し略平行に位置している。この検出器はバルク結晶材料122及び/又は低屈折率層130から散乱された光のパワーを測定することができる。調整可能な光学部品に印加されたY位置制御信号を関数として、波長変換素子120から散乱された赤外光をプロットしたものを図6に示す。
【0039】
図5A及び6において、出力ビーム119及びビーム・スポット104がパッケージ・コントローラ150により入射面132上を走査されると、ビーム・スポット104はまずバルク結晶材料122に入射し、出力ビーム119はバルク結晶材料を透過する。従って、ビーム・スポット104がバルク結晶材料122に入射し導波されているときは、図6に示すように、検出器171には光はほとんど散乱されない。しかし、ビーム・スポット104がバルク結晶材料122の外部に移行すると、出力ビーム119の赤外光が光学パッケージの構成要素から散乱される。図6に示すように、この散乱光が第2の光検出器171によって検出され、この散乱光パワーの増加とそのとき調整可能な光学部品に印加された特定の制御信号の値とがパッケージ・コントローラ150によって関連付けられる。図6の例において、バルク結晶材料122からその外部への移行が線400で示され、その線がバルク結晶の下端部124Dを表わしている。線400に対応するY位置制御信号の値(図示の例において約4.9ボルト)が、出力ビームが結晶の端部124Dの下方に位置したときの調整可能な光学部品の位置に対応している。このY位置制御信号の値を記憶し、第2の走査軸の特定及びビーム・スポットの第2の走査軸上における位置決めに使用することができる。従って、検出される赤外光から見れば、側面に取り付けられた検出器171は出力側に取り付けられた検出器170に対し略反対の信号を観測することになる。
【0040】
波長変換素子の下端部124Dに対応するY位置制御信号が検出された後、波長変換素子の導波路部分126を横断して延びる第2の走査軸162がパッケージ・コントローラ150によって特定される。第2の走査軸の位置は、導波路部分126と波長変換素子120の下端部124Dとの間の既知の間隔に基づいて特定される。既知の間隔及び下端部124Dに対応するY位置制御信号を用いて、ビームをX方向(例えば、第2の走査軸162)に走査したとき、導波路部分126を横断するよう出力ビーム119を入射面132に配置するためのY位置制御信号の値がパッケージ・コントローラによって特定される。従って、特定されたY位置制御信号の値が第2の走査軸162に対応している。図5Aの例において、第2の走査軸162はX軸に対し略平行である。
【0041】
第2の走査軸162の位置が特定された後、パッケージ・コントローラ150により、調整可能な光学部品にY位置制御信号が印加され、出力ビーム119のビーム・スポット104が第2の走査軸162上に位置するよう調整可能な光学部品の位置が特定される。次に、パッケージ・コントローラ150により、出力ビーム119を第2の走査軸に沿って走査するために調整可能な光学部品に印加されるX位置制御信号が調整される。1つの実施の形態において、第2の走査軸162上を出力ビームが走査されるとき、パッケージ・コントローラ150により、ビーム・スポット104がY方向にディザされ、第2の走査軸に沿った走査の有効面積が増大するよう調整可能な光学部品に印加されるY位置制御信号が変調される。
【0042】
第2の走査軸162に沿って出力ビーム119が走査されたとき、波長変換素子120の出射面133から放射された、基本ビームと同じ波長(例えば、λ)の光のパワーが光検出器170によってモニターされる。例えば、前記のように、半導体レーザー110の出力ビーム119が赤外域の第1の波長λを有する場合、バルク結晶材料122から放射された赤外光のパワーが光検出器170によって測定され、そのパワーを表わす電気信号が光検出器170からパッケージ・コントローラ150に送られる。
【0043】
調整可能な光学部品に印加された電圧を関数として、出射面133から放射された赤外光のパワーをプロットした図5Cにおいて、波長変換素子120から放射された光パワーの変化に基づいて、波長変換素子の導波路部分の位置、より具体的には、ビーム・スポット104が導波路部分126に位置合わせされたときの調整可能な光学部品の位置を特定することができる。例えば、図5A及び5Cにおいて、低屈折率層130に沿った第2の走査軸に沿ってビーム・スポットが走査されたとき、半導体レーザーの光パワーの大半が検出器170に有効に導波されないため、波長変換素子の測定出力は低い。しかし、ビームが導波路部分126に移行すると、出力ビーム119が導波路部分126内を有効かつ効率的に導波され波長変換素子120の出射面から放射されるため、出力パワーが急上昇する。従って、図5Cにおいて線304及び306で示すこの光パワー出力の上昇が、出力ビーム119が導波路部分126に位置合わせされたときの調整可能な光学部品の位置に略対応する。パッケージ・コントローラ150をプログラムすることにより、このパワー上昇を特定すると共に、パワー上昇と波長変換素子の導波路部分に位置合わせされる位置に調整可能な光学部品を駆動するために印加される対応X位置制御信号とを関連付けることができる。図5Cの例において、位置合わせされるX位置制御信号の値は約4.8ボルトである。次に、特定されたX位置制御信号の値がパッケージ・コントローラ150のメモリに記憶され、半導体レーザー波長変換素子に位置合わせするために既に特定されているY位置制御信号と組み合わせて使用される。
【0044】
出力ビームが第2の走査軸162に沿って走査されるとき、調整可能な光学部品の位置及び波長変換素子の出力パワーをモニターすることにより、出力ビーム119が波長変換素子120の導波路部分126に位置合わせされるよう調整可能な光学部品の位置を特定することができる。次に、第1の走査軸及び第2の走査軸に沿った波長変換素子120の測定出力パワーに基づいて、パッケージ・コントローラ150により、半導体レーザー110の出力ビーム119が導波路部分126に位置合わせされる位置に調整可能な光学部品を位置決めすることができる。
これまでの実施の形態は、適応光学系を用いて半導体レーザーの出力ビームを波長変換素子に位置合わせるものであったが、別の方法も可能である。1つの実施の形態において、本明細書の方法を用いて、組立中の光学パッケージの位置合わせが行われる。例えば、光学パッケージの組立中において、部品をX及びY方向に位置決めすることができるX−Yステージ又は同様のアクチュエータに半導体レーザー及び/又は適応光学系(例えば、レンズ又はレンズとMEMSとから成るミラー・ユニット)を接続することにより、半導体レーザー、適応光学系、及び波長変換素子の相対位置を調整することができる。この実施の形態において、第1の走査軸及び第2の走査軸に沿った出力ビームの走査を支援するアクチュエータを用い、本明細書の方法に基づいて部品の位置合わせを行うことができる。位置合わせが達成された後、所定の場所に部品が固定されアクチュエータが取り外される。
【0045】
本明細書に示し説明した実施の形態は、波長変換素子から放射された非変換光に基づいて、半導体レーザーを波長変換素子に位置合わせする方法に関するものである。例えば、半導体レーザーが第1の波長を有する出力ビームを放射するものである場合、同じ波長において、波長変換素子の出力パワーが測定される。しかし、別の実施の形態において、位置合わせを行うために、波長変換素子から発せられる第2の波長の光が使用される。例えば、前記のように、波長変換素子がPPLN結晶であり、半導体レーザーにより波長変換素子の導波路部分に向けて波長λの出力ビームが放射される場合、第2の波長λを有する第2高調波ビームが波長変換素子120の出射面から放射される。第2の走査軸162に沿って波長変換素子の出力ビームが走査されるとき、第2の波長の光のパワーを測定することができ、前記のように、第2の波長の光のパワー変化を利用して、コントローラによって出力ビームを波長変換素子の導波路部分に位置合わせすることができる。
【0046】
従って、本明細書の位置合わせ方法を用いることにより、半導体レーザーの出力ビームを波長変換素子の導波路部分に迅速に位置合わせできることが分かる。本明細書の位置合わせ方法は、バルク結晶の導光特性を利用して、光ビームの結晶端部への衝突時を特定するものである。この端部検出と結晶端部からの導波路の相対位置情報とにより、二次元の探索空間における波長変換素子の導波路部分の位置を迅速に特定することができる。例えば、本明細書の方法を用い、波長変換素子の入射面を横断して2回出力ビームを線形走査することにより位置合わせが達成される。また、入射面に沿ってNの離散位置のサンプリング数を必要とするラスター走査と比較して、本明細書の方法に必要な離散位置のサンプリング数は最大でも2Nである。更に、結晶の端部及び導波路の位置が特定されると第1の走査軸及び第2の走査軸に沿った走査が停止される場合、サンプリングされる離散位置の数を2Nより少なくすることができる。従って、本明細書の方法により、精度及び正確性を犠牲にすることなく、位置合わせ処理を向上させることができる。
【0047】
本明細書において説明した例は、赤外域の基本ビーム及び可視又は緑色の第二高調波ビームを用いたものであったが、本発明の方法は異なる波長を有する基本ビームと第二高調波ビームとを含む別の光系と組み合わせて使用することができる。
【0048】
前記本発明の詳細な説明は特許請求した本発明の本質及び特徴を理解するための要旨及び構成の提供を意図したものである。本発明の精神及び範囲を逸脱せずに、本発明に対し各種改良及び変形が可能であることは当業者にとって明白である。従って、添付クレーム及びその均等物の範囲に属する限り、本発明はそのような改良及び変形も含むものである。
【0049】
本発明を規定及び説明する上において、「約」が付された特定の大きさの値は、その特定の値から1桁以上離れていないすべての値を含むものである。以下の1つ以上のクレームにおいて、1つ以上の列挙された行為を実行するよう「プログラムされた」コントローラという表現がある。本発明を規定する上において、この表現は開放型の移行句としてクレームに用いられているものであり、より一般的な開放型プリアンブル用語である“comprising”と同様に解釈されるべきものである。また、コントローラのような本発明の構成要素が、特定の特性を体現するため、あるいは特定の方法で機能するよう「プログラムされている」という表現は用途表現ではなく構造表現である。具体的には、本明細書において、構成要素が「プログラムされている」という表現は、当該構成要素の現存している物理的状態を示すものであり、従って当該構成要素の構造的特性を示す明確な表現である。
【0050】
本明細書において「preferably」、「commonly」、及び「typically」という用語は特許請求した発明の範囲を限定するものではなく、また特許請求した発明の構造又は機能にとって、特定の機能が非常に重要、必須、あるいは重要であることを意味するものではない。寧ろ、これ等の用語は、本発明の特定の実施の形態において使用される又は使用されない代替機能又は追加機能を単に強調することを意図したものである。また、別の数値、パラメータ、あるいは変数を「関数とした」数値、パラメータ、あるいは変数という表現は、当該数値、パラメータ、あるいは変数が当該唯一の数値、パラメータ、あるいは変数の関数であると解釈されるものではない。
【0051】
本発明を説明及び規定する上において、「substantially」という用語は、定量比較、数値、測定、あるいはその他の表現に内在する不確実度を表わすものである。また、本明細書において「substantially」という用語は、例えば「substantially above zero(略ゼロより大きい)」のような定量表現が、記述されている基準、例えば、「ゼロ」から変化する程度を表わすものであり、当該定量表現が記述されている基準から容易に認識できる量で変化すると解釈されるべきものである。
【符号の説明】
【0052】
100、200 光学パッケージ
104 ビーム・スポット
110 半導体レーザー
119 出力ビーム
120 波長変換素子
126 導波路部分
130 低屈折率層
140 適応光学系
142 レンズ
144 調整可能ミラー
150 パッケージ・コントローラ
170、171 光検出器
180 ビーム・スプリッター
190 平行化レンズ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の波長を有する出力ビームを放射する半導体レーザー、前記出力ビームを第2の波長に変換する波長変換素子、該波長変換素子の入射面の導波路部分に前記出力ビームを光学的に接続する適応光学系、及び該適応光学系の少なくとも1つの調整可能な光学部品を操作するようプログラムされたパッケージ・コントローラを有する光学パッケージの位置合わせ方法であって、
前記波長変換素子の前記入射面上を第1の走査軸に沿って前記半導体レーザーの前記出力ビームを走査したとき、前記波長変換素子のバルク結晶部分から放射又は散乱された前記第1の波長を有する光のパワーを測定することにより、前記波長変換素子の端部を特定するステップと、
前記波長変換素子の前記端部に相対し、前記波長変換素子の前記導波路部分の少なくとも一部を横断する第2の走査軸上に位置するよう前記半導体レーザーの前記出力ビームを前記波長変換素子の前記入射面に位置決めするステップと、
前記波長変換素子の前記入射面上を前記第2の走査軸に沿って前記半導体レーザーの前記出力ビームを走査したとき、前記波長変換素子から放射された光のパワーを測定することにより、前記第2の走査軸に沿って前記導波路部分の位置を特定するステップと、
前記第2の走査軸に沿って前記半導体レーザーの前記出力ビームを走査したとき測定した光のパワーに基づいて、前記半導体レーザーの前記出力ビームを前記波長変換素子の前記導波路部分に位置合わせするステップと、
を有して成ることを特徴とする方法。
【請求項2】
前記第1の走査軸に沿って測定した前記第1の波長を有する光が散乱光であり、前記第1の波長を有する前記光のパワーが、前記波長変換素子の光軸と略平行に位置する光検出器によって測定されることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記第1の走査軸に沿って測定した前記第1の波長を有する光が前記波長変換素子の出射面から放射された光であり、ビーム・スプリッターによって方向が変えられ、光検出器によって測定されることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項4】
前記第2の走査軸上を前記半導体レーザーの前記出力ビームを走査したとき測定した光が、前記第1の波長、前記第2の波長、あるいはその両方を含み、
前記第2の走査軸に沿って前記半導体レーザーの前記出力ビームを走査したとき測定した前記光が、前記波長変換素子の出射面及び前記導波路部分から放射された前記第1の波長を有する光を含むことを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項5】
前記第2の走査軸上を前記半導体レーザーの前記出力ビームを走査したとき測定した光が、前記第1の波長、前記第2の波長、あるいはその両方を含み、
前記第2の走査軸に沿って前記半導体レーザーの前記出力ビームを走査したとき測定した前記光が、前記波長変換素子の前記導波路部分から放射された前記第2の波長を有する光を含むことを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項6】
前記第2の走査軸に沿って前記半導体レーザーの前記出力ビームを走査するとき、前記第2の走査軸に対し略垂直な方向に前記半導体レーザーの前記出力ビームの位置を変化させるステップを更に有して成ることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項7】
前記第1の走査軸及び前記第2の走査軸に沿って前記半導体レーザーの前記出力ビームを走査するとき、前記半導体レーザーの出力導波路内に反射しないよう前記半導体レーザーの前記出力ビームを前記波長変換素子の前記入射面に位置決めするステップを更に有して成ることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項8】
前記調整可能な光学部品が調整可能ミラーであり、前記半導体レーザー、前記波長変換素子、及び前記適応光学系が、折り返し光路を形成するよう配置されて成るか、又は
前記調整可能な光学部品が調整可能レンズであり、前記半導体レーザー、前記波長変換素子、及び前記適応光学系が、略線形な光路を形成するよう構成されて成ることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項9】
前記半導体レーザー、前記適応光学系、及び前記波長変換素子の相対位置を調整する少なくとも1つの機械的アクチュエータを用いて、前記第1の走査軸及び前記第2の走査軸に沿って、前記半導体レーザーの前記出力ビームを走査することを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項10】
第1の波長を有する出力ビームを放射する半導体レーザー、前記出力ビームを第2の波長に変換する波長変換素子、該波長変換素子の入射面の導波路部分に前記出力ビームを光学的に接続する適応光学系、前記波長変換素子から放射又は散乱された光のパワーを測定する少なくとも1つの光検出器、及びパッケージ・コントローラを有して成る光学パッケージであって、前記パッケージ・コントローラが
前記波長変換素子の前記入射面上を第1の走査軸に沿って前記半導体レーザーの前記出力ビームを走査し、
前記波長変換素子の前記入射面上を前記第1の走査軸に沿って前記半導体レーザーの前記出力ビームを走査したとき、前記波長変換素子のバルク結晶部から放射又は散乱された前記第1の波長を有する光のパワーを測定することにより、前記波長変換素子の端部を特定し、
前記波長変換素子の前記端部に相対し、前記波長変換素子の前記導波路部分の少なくとも一部を横断する第2の走査軸上に位置するよう前記半導体レーザーの前記出力ビームを前記波長変換素子の前記入射面に位置決めし、
前記第2の走査軸に沿って、前記波長変換素子の前記入射面上を前記半導体レーザーの前記出力ビームを走査し、
前記波長変換素子の前記入射面上を前記第2の走査軸に沿って前記半導体レーザーの前記出力ビームを走査したとき、前記波長変換素子から放射された、前記第1の波長、前記第2の波長、又はその両方を含む光のパワーを測定することにより、前記第2の走査軸に沿って前記導波路部分の位置を特定し、
前記波長変換素子の前記入射面上を前記第2の走査軸に沿って前記半導体レーザーの前記出力ビームを走査したとき測定した光のパワーに基づいて、前記半導体レーザーの前記出力ビームを前記波長変換素子の前記導波路部分に位置合わせする、
ようプログラムされていることを特徴とする光学パッケージ。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5A】
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【図5B】
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【図5C】
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【図6】
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【公表番号】特表2012−524916(P2012−524916A)
【公表日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−507349(P2012−507349)
【出願日】平成22年4月21日(2010.4.21)
【国際出願番号】PCT/US2010/031893
【国際公開番号】WO2010/123988
【国際公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【出願人】(397068274)コーニング インコーポレイテッド (1,222)
【Fターム(参考)】