説明

光学フィルム、それを用いた透明ガスバリアフィルム、および光学フィルムの製造方法

【課題】本発明の目的は、比較的安価で高い透明性と優れた寸法安定性を維持しつつ、高いガスバリア性を有する光学フィルム、及びその製造方法を提供することにある。
【解決手段】マトリクスを構成する熱可塑性樹脂中に繊維状フィラーが分散されている光学フィルムにおいて、該光学フィルムの全光線透過率は60%以上であり、該光学フィルム中に存在している繊維状フィラーの平均短軸径が10nm以上150nm未満であり、該繊維状フィラーの短軸径の相対標準偏差が30%以下であることを特徴とする光学フィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、種々の電子デバイスを形成するための透明樹脂基板用途の光学フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ディプレイ基板を従来のガラスからプラスチックフィルムに代える試みが盛んに行われている。プラスチックフィルムの場合、軽い、薄い、割れない、曲面表示ができる等の利点がある為、用途拡大に繋がると期待されている。更には、このようなフレキシブルディスプレイは、ロール・トゥ・ロールで生産することができるため、製造コストを大幅に削減できるとの期待も大きい。このような流れはディスプレイだけではなく、最近では、電子システムの中で入出力の機能を担うセンサーやアクチュエーターなども、印刷技術を応用してプラスチックフィルム上に設け、新たな電子デバイスにしようという試みも盛んに研究されている。
【0003】
このような種々のフレキシブルデバイスを作製する上で、基板となるプラスチックフィルムには、ガラス並みあるいはそれに近い程度の優れた寸法安定性が求められる。例えば、フィルム基板上に印刷技術を利用して配線や電極を形成するような場合において、材料・プロセス両面での工夫により、従来の焼成温度より低温化することが可能になってきてはいるものの、尚150〜200℃程度の熱処理過程は必要とされることが多く、そこでの配線や電極材料と基板材料との熱線膨張バランスを保つことは、断線等の不具合を回避する上で非常に重要となる。
【0004】
また、ディスプレイ用途などでは、基板の透明性も非常に重要な特性となる。一般的に、低価格なフレキシブル基板材料としては、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレートなど、結晶性樹脂を溶融押出法にて製膜し、面方向に延伸して強度を高めたものが知られているが、これらのものは、透明性が必ずしも十分とは言えない。また、特殊なアラミド(芳香族ポリアミド)樹脂やポリイミドなどで、高耐熱性と高透明性の両立を実現しているが、コストが高く、汎用性に乏しい。
【0005】
このような課題を解決するフィルムとして、例えば、特許文献1〜5に開示されているような、樹脂フィルム中に繊維状フィラーを含有させた複合材料フィルムが知られている。フィルムのマトリクスを構成する樹脂よりも熱線膨張係数の小さい繊維状フィラーをフィルム中に含有させることにより、その含有体積に応じて、あるいは繊維状フィラーとマトリクス樹脂との境界面の総面積に応じて、あるいは繊維状フィラー同士の絡まり等3次元構造の形成度合いに応じて、フィルム全体の熱線膨張係数は小さくなる。しかしながら、従来の複合材料フィルムでは、ガスバリア性に限界があるため、水分や酸素に弱い素子をそのフィルム上に形成することはできなかった。
【0006】
従って比較的安価で、高い透明性と優れた寸法安定性を維持しつつ、ガスバリア性の高い光学フィルムは存在しなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2006−282923号公報
【特許文献2】特開2008−127540号公報
【特許文献3】特開2009−52016号公報
【特許文献4】特開2008−208231号公報
【特許文献5】特開2008−209595号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記問題・状況に鑑みてなされたものであり、その目的は比較的安価で高い透明性と優れた寸法安定性を維持しつつ、高いガスバリア性を有する光学フィルム、及びその製造方法を提供することにある。
【0009】
更に該ガスバリア性を有する光学フィルムを用いた透明ガスバリアフィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の上記課題は以下の構成により達成される。
【0011】
1.マトリクスを構成する熱可塑性樹脂中に繊維状フィラーが分散されている光学フィルムにおいて、該光学フィルムの全光線透過率は60%以上であり、該光学フィルム中に存在している繊維状フィラーの平均短軸径が10nm以上150nm未満であり、該繊維状フィラーの短軸径の相対標準偏差が30%以下であることを特徴とする光学フィルム。
【0012】
2.前記繊維状フィラーがセルロース繊維であることを特徴とする前記1に記載の光学フィルム。
【0013】
3.前記熱可塑性樹脂が、少なくともセルロースエステル系樹脂、アクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂のいずれか1種の樹脂であることを特徴とする前記1または2に記載の光学フィルム。
【0014】
4.前記1〜3のいずれか1項に記載の光学フィルムの少なくとも一方の面に防湿層が積層されていることを特徴とする透明ガスバリアフィルム。
【0015】
5.光学フィルムの全光線透過率が60%以上であり、マトリクスを構成する熱可塑性樹脂中に、平均短軸径が10nm以上150nm未満であり、短軸径の相対標準偏差が30%以下である繊維状フィラーが分散されてなる光学フィルムの製造方法であって、該繊維状フィラーを作製する工程は、少なくとも水系での粉砕工程と有機溶剤系での分散工程とをこの順で行う工程を含み、かつ、該粉砕工程と該分散工程の間に乾燥工程を含まないことを特徴とする光学フィルムの製造方法。
【0016】
6.前記繊維状フィラーがセルロース繊維であり、前記熱可塑性樹脂が少なくともセルロースエステル系樹脂、アクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂のいずれか1種の樹脂であることを特徴とする前記5に記載の光学フィルムの製造方法。
【0017】
7.前記粉砕工程および前記分散工程が、いずれもビーズミル分散機により行われ、かつ、該分散工程に対する該粉砕工程のビーズ1個当たりの衝撃エネルギーの比が、30以上であることを特徴とする前記5または6に記載の光学フィルムの製造方法。
【0018】
8.前記粉砕工程および前記分散工程が、いずれもビーズミル分散機により行われ、かつ、該分散工程に対する該粉砕工程のビーズ1個当たりの衝撃エネルギーの比が、1000以上であることを特徴とする前記5〜7のいずれか1項に記載の光学フィルムの製造方法。
【0019】
9.少なくとも前記粉砕工程及び前記分散工程のいずれか1つの工程で、分子量1000以上の分散剤を添加することを特徴とする前記5〜8のいずれか1項に記載の光学フィルムの製造方法。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば比較的安価で高い透明性と優れた寸法安定性を維持しつつ、高いガスバリア性を有する光学フィルム、及びその製造方法を提供することができる。
【0021】
更に該ガスバリア性を有する光学フィルムを用いた透明ガスバリアフィルムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の分散工程に用いられるビーズミル分散機の概略図である。
【図2】図1に示すビーズミル分散機の分散室2の内部を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下本発明を実施するための形態について詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0024】
従来の繊維状フィラーを含有した樹脂フィルムは、何故ガスバリア性が十分でないのか、本発明者らはその原因を調査した結果、フィルムを構成するマトリクスと繊維状フィラーの混練し製膜する過程において微細気泡が多数存在していることがガスバリア性を阻害している主因であることを突き止めた。更に、鋭意研究の結果、繊維状フィラーの短軸径の分布を狭くすることがフィルム内の該微細気泡の抑制に有効であることを見出した。
【0025】
繊維状フィラーの短軸径の分布を狭くすることでフィルム内の微細気泡を抑制できる機構については、詳細は判っておらず推測の域を出ないが、短軸径分布が広い場合、短軸径が比較的大きい繊維状フィラーが存在することになるが、このようなフィラーの表面には、製膜時の空気巻き込みの後で、気泡が安定して吸着できる面積の広いサイトが存在しているのではないかと考えられる。更には、短軸径分布が広い場合、短軸径が比較的小さい繊維状フィラーも存在することになるが、このようなフィラーは、系全体の粘度を高めるため、気泡が抜けにくい状態をつくるものと推測している。以上のようなことより、繊維状フィラーの短軸径分布をシャープにすることがフィルム中の気泡を抑制するのに有効と考えられる。
【0026】
以上のような機構より、繊維状フィラーの短軸径分布をシャープにすることがフィルム中の気泡を抑制するのに有効と考えられる。
【0027】
ここで、先述の特許文献1〜5に記載の技術では、繊維状フィラーの短軸径の分布をシャープにすることは非常に困難であることを説明する。
【0028】
まず、特許文献1では、結晶セルロースを熱可塑性樹脂の補強剤として使用しているが、その結晶セルロースの微粉末を作製する際、原材料のパルプを加水分解した後、一旦乾燥工程を経て、乾式ジェットミルを行っている。このように粉砕工程の間に乾燥工程を設けることにより、本来分離していたセルロース繊維の表面OH基同士が水素結合する形で強く凝集する結果となり、ジェットミル程度の弱い粉砕力では、平均サイズとして光学的に透明なサブミクロン以下の領域まで細かくすることはできないし、また、粉砕のされ方にも不均一性が生じるため繊維径の分布も広い。続く熱可塑性樹脂との混練過程においては、セルロース繊維と樹脂の濡れ性を制御するための表面処理剤や分散剤の使いこなし方法として何ら特別な工夫は施されておらず、混練前の分布を良化することはできない。
【0029】
特許文献2では、セルロース繊維を一旦硬化性樹脂などに分散させ混合物を作り、この混合物と非相溶の関係にある熱可塑性樹脂とを混練押出して製膜化する技術が開示されている。この技術において、混練過程が意味するところは、セルロース繊維を内包する硬化性のバインダー樹脂と熱可塑性樹脂との海島構造形成過程であり、セルロース繊維のサイズやその分布を決める過程は、主として硬化性樹脂との分散時にある。セルロース繊維の水分散から疎水化までの溶媒置換、分散液作製工程において、硬化性樹脂との親和性を高める表面処理などの工夫はセルロース繊維には施されておらず、また、大きなせん断力を与えている記述もないことより、水分散液段階での微小サイズを、硬化性樹脂との混合物形成段階でも維持するのは極めて困難であり、繊維径の分布をシャープにすることもできない。
【0030】
また、特許文献3では、短軸長が3〜100nmの有機物結晶の表面に、界面活性剤や無機イオンを吸着させたり、カップリング処理や修飾基付与を行ったりして、マトリクス樹脂との複合材料を作製している。ここでは、結晶セルロースの結晶粉体を作製する段階で凍結乾燥を利用しているため特許文献1の方法ほどの凝集は起こりにくいものの、昇華過程の不均一性は免れず、凝集の問題を完全に取り除くことは不可能である。また、分散の過程で、粉砕により表面吸着物などが存在しない新たな活性面に対する対応・工夫がなされていないため、この過程でも凝集が起こり、繊維の短軸径分布がブロード化してしまう。
【0031】
特許文献4および5では、分散前に乾燥過程が入っているため、やはり特許文献1同様凝集してしまい、繊維径分布は広くなる。
【0032】
従って、本発明の請求項1の実施態様は、マトリクスを構成する熱可塑性樹脂中に繊維状フィラーが分散されている光学フィルムにおいて、該光学フィルムの全光線透過率は60%以上であり、該光学フィルム中に存在している繊維状フィラーの平均短軸径が10nm以上150nm未満であり、該繊維状フィラーの短軸径の相対標準偏差が30%以下であることを特徴とするものである。
【0033】
更に、該光学フィルムの製造方法である請求項5の実施態様は、光学フィルムの全光線透過率は60%以上であり、マトリクスを構成する熱可塑性樹脂中に、平均短軸径が10nm以上150nm未満であり、短軸径の相対標準偏差が30%以下である繊維状フィラーが分散されてなる光学フィルムの製造方法であって、該繊維状フィラーを作製する工程は、少なくとも水系での粉砕工程と有機溶剤系での分散工程とをこの順で行う工程を含み、かつ、該粉砕工程と該分散工程の間に乾燥工程を含まないことを特徴とするものである。
【0034】
以下、本発明を各要素毎に詳細に説明する。
【0035】
<熱可塑性樹脂>
本発明に用いられる熱可塑性樹脂は、製造が容易であること、光学的に透明であることが好ましい要件として挙げられる。
【0036】
本発明でいう透明とは、可視光の全光線透過率が60%以上であることをさし、好ましくは80%以上であり、特に好ましくは90%以上である。
【0037】
上記の性質を有していれば特に限定はないが、例えば、セルロースジアセテート、セルローストリアセテート、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート等のセルロースエステル系樹脂、ポリメチルメタクリレート等のアクリル系樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂、ポリフェニレンサルファイド、ポリフェニレンオキサイド、ポリカプロラクトン、ポリカーボネート系樹脂、ノルボルネン系樹脂、単環の環状オレフィン系樹脂、環状共役ジエン系樹脂、ビニル脂環式炭化水素系樹脂、及び、これらの水素化物等の環状ポリオレフィン系樹脂、ポリアリレート系樹脂、ポリスルホン(ポリエーテルスルホンも含む)系樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ABS樹脂、ポリ乳酸、セロファン、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコール、エチレンビニルアルコール、シンジオタクティックポリスチレン系樹脂、ノルボルネン系樹脂、ポリメチルペンテン、ポリエーテルケトン、ポリエーテルケトンイミド、ナイロン等のポリアミド系樹脂、フッ素系樹脂、ポリアリレート、熱可塑性エラストマー、シリコーン等を挙げることができる。中でも、セルロースエステル系樹脂、アクリル系樹脂、及びポリカーボネート系樹脂が好ましい。
【0038】
以下、本発明に特に好ましく用いられるセルロースエステル系樹脂について更に詳細に説明する。
【0039】
(セルロースエステル系樹脂)
本発明に用いられるセルロースエステル系樹脂としては、例えばセルロースアセテート、セルロースプロピオネート、セルロースブチレート等や、特開平10−45804号公報、同08−231761号公報、米国特許第2,319,052号明細書等に記載されているようなセルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート等の混合脂肪酸エステルを用いることができる。特に好ましくはセルロースジアセテート、セルローストリアセテート、セルロースアセテートプロピオネートである。これらのセルロースエステルは単独或いは混合して用いることができる。分子量は数平均分子量(Mn)で70000〜200000のものが好ましく、100000〜200000のものが更に好ましい。数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより測定することができる。
【0040】
セルローストリアセテートの場合には、平均酢化度(結合酢酸量)54.0〜62.5%のものが好ましく用いられ、更に好ましいのは、平均酢化度が58.0〜62.5%のセルローストリアセテートである。
【0041】
セルローストリアセテート以外で好ましいセルロースエステルは炭素原子数2〜4のアシル基を置換基として有し、アセチル基の置換度をXとし、プロピオニル基又はブチリル基の置換度をYとした時、下記式(I)及び(II)を同時に満たすセルロースエステルを含むセルロースエステルである。
【0042】
式(I) 2.0≦X+Y≦2.8
式(II) 0.1≦Y≦1.2
更に2.2≦X+Y≦2.8、1.4≦X≦2.3のセルロースアセテートプロピオネート(総アシル基置換度=X+Y)樹脂が好ましい。中でも2.2≦X+Y≦2.8、1.7≦X≦2.3、0.1≦Y≦0.9のセルロースアセテートプロピオネート樹脂、セルロースアセテートブチレート(総アシル基置換度=X+Y)樹脂が好ましい。アシル基で置換されていない部分は通常水酸基として存在している。これらのセルロースエステル系樹脂は公知の方法で合成することができる。アシル基の置換度の測定方法はASTM−D817−96の規定に準じて測定することができる。
【0043】
セルロースエステルは綿花リンター、木材パルプ、ケナフ等を原料として合成されたセルロースエステルを単独或いは混合して用いることができる。特に綿花リンターから合成されたセルロースエステルを単独或いは混合して用いることが好ましい。
【0044】
(アクリル系樹脂)
本発明に用いられるアクリル系樹脂には、メタクリル樹脂も含まれる。樹脂としては特に制限されるものではないが、メチルメタクリレート単位50〜99質量%、およびこれと共重合可能な他の単量体単位1〜50質量%からなるものが好ましい。
【0045】
共重合可能な他の単量体としては、アルキル数の炭素数が2〜18のアルキルメタクリレート、アルキル数の炭素数が1〜18のアルキルアクリレート、アクリル酸、メタクリル酸等のα,β−不飽和酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸等の不飽和基含有二価カルボン酸、スチレン、α−メチルスチレン、核置換スチレン等の芳香族ビニル化合物、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のα,β−不飽和ニトリル、無水マレイン酸、マレイミド、N−置換マレイミド、グルタル酸無水物等が挙げられ、これらは単独で、あるいは2種以上を併用して用いることができる。
【0046】
これらの中でも、共重合体の耐熱分解性や流動性の観点から、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−プロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、s−ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート等が好ましく、メチルアクリレートやn−ブチルアクリレートが特に好ましく用いられる。
【0047】
本発明の光学フィルムに用いられるアクリル系樹脂は、フィルムとしての機械的強度、フィルムを生産する際の流動性の点から、重量平均分子量(Mw)が100000〜1000000であることが好ましく、より好ましくは、150000〜500000の範囲内である。
【0048】
本発明のアクリル系樹脂の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより測定することができる。測定条件は以下の通りである。
【0049】
溶媒: メチレンクロライド
カラム: Shodex K806、K805、K803G(昭和電工(株)製を3本接続して使用した)
カラム温度:25℃
試料濃度: 0.1質量%
検出器: RI Model 504(GLサイエンス社製)
ポンプ: L6000(日立製作所(株)製)
流量: 1.0ml/min
校正曲線: 標準ポリスチレンSTK standard ポリスチレン(東ソー(株)製)Mw=2800000〜500迄の13サンプルによる校正曲線を使用した。13サンプルは、ほぼ等間隔に用いることが好ましい。
【0050】
アクリル系樹脂の製造方法としては、特に制限は無く、懸濁重合、乳化重合、塊状重合、あるいは溶液重合等の公知の方法のいずれを用いても良い。ここで、重合開始剤としては、通常のパーオキサイド系およびアゾ系のものを用いることができ、また、レドックス系とすることもできる。重合温度については、懸濁または乳化重合では30〜100℃、塊状または溶液重合では80〜160℃で実施しうる。さらに、生成共重合体の還元粘度を制御するために、アルキルメルカプタン等を連鎖移動剤として用いて重合を実施することもできる。
【0051】
アクリル系樹脂としては、市販のものも使用することができる。例えば、デルペット60N、80N(旭化成ケミカルズ(株)製)、ダイヤナールBR52、BR80、BR83、BR85、BR88(三菱レイヨン(株)製)、KT75(電気化学工業(株)製)等が挙げられる。
【0052】
アクリル系樹脂は前記セルロースエステル系樹脂と混合して用いることもでき、その場合はアクリル系樹脂:セルロースエステル系樹脂の混合質量比率90:10〜55:45の範囲内であることが好ましい。
【0053】
(ポリカーボネート系樹脂)
本発明に用いられるポリカーボネート系樹脂は、二価フェノールとカーボネート前駆体とを反応させて得られるものである。反応方法の一例として界面重合法、溶融エステル交換法、カーボネートプレポリマーの固相エステル交換法、および環状カーボネート化合物の開環重合法などを挙げることができる。
【0054】
ここで使用される二価フェノールの代表的な例としては、ハイドロキノン、レゾルシノール、4,4′−ビフェノール、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(通称ビスフェノールA)、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ペンタン、4,4′−(p−フェニレンジイソプロピリデン)ジフェノール、4,4′−(m−フェニレンジイソプロピリデン)ジフェノール、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−4−イソプロピルシクロヘキサン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)オキシド、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルフィド、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホキシド、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ケトン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)エステル、2,2−ビス(3,5−ジブロモ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(3,5−ジブロモ−4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)スルフィド、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレンおよび9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)フルオレンなどが挙げられる。好ましい二価フェノールは、ビス(4−ヒドロキシフェニル)アルカンであり、なかでも強度に優れ、適度な耐熱性を有し、かつ入手容易でコスト的にも優れる点からビスフェノールAが特に好ましい。
【0055】
カーボネート前駆体としてはカルボニルハライド、炭酸ジエステルまたはハロホルメートなどが使用され、具体的にはホスゲン、ジフェニルカーボネートまたは二価フェノールのジハロホルメートなどが挙げられる。
【0056】
上記二価フェノールとカーボネート前駆体を界面重合法によってポリカーボネート系樹脂を製造するに当っては、必要に応じて触媒、末端停止剤、二価フェノールが酸化するのを防止するための酸化防止剤などを使用してもよい。またポリカーボネート系樹脂は三官能以上の多官能性芳香族化合物を共重合した分岐ポリカーボネート系樹脂であっても、芳香族または脂肪族の二官能性カルボン酸を共重合したポリエステルカーボネート樹脂であってもよく、また、得られたポリカーボネート系樹脂の2種以上を混合した混合物であってもよい。
【0057】
三官能以上の多官能性芳香族化合物としては、1,1,1−トリス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1,1−トリス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)エタンなどが使用できる。
【0058】
分岐ポリカーボネートを生ずる多官能性化合物を含む場合、かかる割合は、芳香族ポリカーボネート全量中、0.001〜1モル%、好ましくは0.005〜0.5モル%、特に好ましくは0.01〜0.3モル%である。また特に溶融エステル交換法の場合、副反応として分岐構造が生ずる場合があるが、かかる分岐構造量についても、芳香族ポリカーボネート全量中、0.001〜1モル%、好ましくは0.005〜0.5モル%、特に好ましくは0.01〜0.3モル%であるものが好ましい。尚、かかる割合については1H−NMR測定により算出することが可能である。
【0059】
脂肪族の二官能性のカルボン酸は、α,ω−ジカルボン酸が好ましい。脂肪族の二官能性のカルボン酸としては例えば、セバシン酸(デカン二酸)、ドデカン二酸、テトラデカン二酸、オクタデカン二酸、イコサン二酸などの直鎖飽和脂肪族ジカルボン酸が好ましく挙げられる。
【0060】
更にポリオルガノシロキサン単位を共重合した、ポリカーボネート−ポリオルガノシロキサン共重合体の使用も可能である。
【0061】
界面重合法による反応は、通常二価フェノールとホスゲンとの反応であり、酸結合剤および有機溶媒の存在下に反応させる。酸結合剤としては例えば水酸化ナトリウムや水酸化カリウムなどのアルカリ金属水酸化物、ピリジンなどが用いられる。
【0062】
有機溶媒としては例えば塩化メチレン、クロロベンゼンなどのハロゲン化炭化水素が用いられる。
【0063】
また、反応促進のために例えば第三級アミンや第四級アンモニウム塩などの触媒を用いることができ、分子量調節剤として例えばフェノール、p−tert−ブチルフェノール、p−クミルフェノールなどの単官能フェノール類を用いるのが好ましい。更に単官能フェノール類としては、デシルフェノール、ドデシルフェノール、テトラデシルフェノール、ヘキサデシルフェノール、オクタデシルフェノール、エイコシルフェノール、ドコシルフェノールおよびトリアコンチルフェノールなどを挙げることができる。これらの比較的長鎖のアルキル基を有する単官能フェノール類は、流動性や耐加水分解性の向上が求められる場合に有効である。
【0064】
反応温度は通常0〜40℃、反応時間は数分〜5時間、反応中のpHは通常10以上に保つのが好ましい。
【0065】
溶融法による反応は、通常二価フェノールと炭酸ジエステルとのエステル交換反応であり、不活性ガスの存在下に二価フェノールと炭酸ジエステルを混合し、減圧下通常120〜350℃で反応させる。減圧度は段階的に変化させ、最終的には133Pa以下にして生成したフェノール類を系外に除去させる。反応時間は通常1〜4時間程度である。
【0066】
炭酸ジエステルとしては、例えばジフェニルカーボネート、ジナフチルカーボネート、ビス(ジフェニル)カーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネートおよびジブチルカーボネートなどが挙げられ、なかでもジフェニルカーボネートが好ましい。
【0067】
重合速度を速めるために重合触媒を使用することができ、重合触媒としては、例えば水酸化ナトリウムや水酸化カリウムなどのアルカリ金属やアルカリ土類金属の水酸化物、ホウ素やアルミニウムの水酸化物、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、第4級アンモニウム塩、アルカリ金属やアルカリ土類金属のアルコキシド、アルカリ金属やアルカリ土類金属の有機酸塩、亜鉛化合物、ホウ素化合物、ケイ素化合物、ゲルマニウム化合物、有機錫化合物、鉛化合物、アンチモン化合物、マンガン化合物、チタン化合物、ジルコニウム化合物などの通常エステル化反応やエステル交換反応に使用される触媒があげられる。触媒は単独で使用しても良いし、二種類以上を併用して使用しても良い。これらの重合触媒の使用量は、原料の二価フェノール1モルに対し、好ましくは1×10−8〜1×10−3当量、より好ましくは1×10−7〜5×10−4当量の範囲で選ばれる。
【0068】
また、重合反応において、フェノール性の末端基を減少するために、重縮反応の後期あるいは終了後に、例えば2−クロロフェニルフェニルカーボネート、2−メトキシカルボニルフェニルフェニルカーボネートおよび2−エトキシカルボニルフェニルフェニルカーボネートなどの化合物を加えることができる。
【0069】
さらに溶融エステル交換法では触媒の活性を中和する失活剤を用いることが好ましい。かかる失活剤の量としては、残存する触媒1モルに対して0.5〜50モルの割合で用いるのが好ましい。また重合後の芳香族ポリカーボネートに対し、0.01〜500ppmの割合、より好ましくは0.01〜300ppm、特に好ましくは0.01〜100ppmの割合で使用する。失活剤としては、ドデシルベンゼンスルホン酸テトラブチルホスホニウム塩などのホスホニウム塩、テトラエチルアンモニウムドデシルベンジルサルフェートなどのアンモニウム塩などが好ましく挙げられる。
【0070】
上記以外の反応形式の詳細についても、成書及び特許公報などで良く知られている。
【0071】
ポリカーボネート系樹脂の分子量は、13000〜40000が好ましく、15000〜35000がより好ましく、20000〜32000が更に好ましく、22000〜28000が特に好ましい。かかる粘度平均分子量を有するポリカーボネート系樹脂を使用した場合、本発明の基材フィルムはフィルム成形性に優れかつ良好な強度を有する。上記ポリカーボネート系樹脂は、その粘度平均分子量が上記範囲外のものを混合して得られたものであってもよい。
【0072】
ポリカーボネート系樹脂の粘度平均分子量(M)は塩化メチレン100mlにポリカーボネート系樹脂0.7gを溶解した溶液から20℃で求めた比粘度(ηsp)を次式に挿入して求めたものである。
ηsp/c=[η]+0.45×[η]c(但し[η]は極限粘度)
[η]=1.23×10−40.83c=0.7
<繊維状フィラー>
本発明の光学フィルム内に分散している繊維状フィラーとしては、例えばガラス繊維、ガラスセラミック繊維、アルミナ基繊維、アルミナ−シリカ基繊維などの酸化物繊維や、炭素繊維、ポリアミド繊維、セルロース繊維などの有機繊維等、種々の組成のものが挙げられるが、熱可塑性樹脂との複合材料フィルムの形態において全光線透過率60%以上の透明性を確保することが必要である。その為、本発明に係わる熱可塑性樹脂と繊維状フィラーとの屈折率差は、0.3以下であることが好ましく、0.1以下であることが更に好ましく、0.05以下であることが最も好ましい。本発明において繊維状フィラーの概観としては、長軸径と短軸径の比が3以上のフィラーを繊維状フィラーと呼ぶものとする。
【0073】
ガラス繊維としては、公知の各種ガラス材質を用いることができる。例えば、無アルカリのEガラス組成、低誘電率を実現できるDガラス組成、アルカリ耐性を向上できるARガラス組成、耐酸性を向上できるCガラス組成、高弾性率化に特長を有するMガラス組成、高強度・高弾性率を実現化するSガラス組成、更にはTガラス組成、Hガラス組成なども選択できる。
【0074】
ガラス繊維製品の形態について特に限定するものではない。すなわちガラス繊維製品の形態としては、ヤーン、ロービング、DWR(ダイレクトワインディングロービング)、チョップドストランド、ミルドファイバ、クロス(織布)、マット、テープ、あるいは組布等が可能である。
【0075】
またガラス繊維の引き出し速度やガラス繊維に塗布する集束剤等の表面被覆剤についても特に限定されることはない。例えば集束剤の他にも、帯電防止剤、界面活性剤、重合開始剤、重合抑制剤、酸化防止剤、被膜形成剤、カップリング剤あるいは潤滑剤を被覆したものであってもよく、必要に応じて減水剤、流動化剤、増粘剤、防水剤、防錆剤、硬化促進剤、硬化遅延剤、スラグ、フライアッシュ、シリカヒューム、着色剤あるいは急結剤等を混入させてもよい。
【0076】
また、アルミナ基繊維やアルミナ−シリカ基繊維の材料としては、三井鉱山マテリアル(株)製Almaxや、住友化学(株)製Altex、3M製Nextelなどが挙げられる。
【0077】
また、有機繊維としては、カーボンナノチューブやカーボンナノファイバーに代表されるような炭素繊維や、アクリル繊維、ナイロン繊維、ビニロン繊維、アラミド繊維、ポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維、ポリエチレンテレフタレート繊維、ポリブチレンテレフタレート繊維、ポリフェニレンサルファイト繊維、ポリエチレンナフタレート繊維、ポリスチレン繊維等の合成繊維、更にはセルロース繊維や繊維状ファージなどの天然繊維が挙げられる。
【0078】
上記無機・有機各種繊維は、単独種繊維を採用しても構わないし、2種以上をミックスして使用しても構わない。
【0079】
とりわけ耐熱寸法安定性に対する効果、繊維状フィラーの生産性、光学フィルムにしたときの透明性確保の容易性の観点より、有機繊維が好ましく、その中でもセルロース繊維がより好ましい。
【0080】
本発明の光学フィルムを製膜する上において、微細気泡が混入することを防ぐため、繊維状フィラーの短軸径の分布は狭くすることが必要である。本発明において、後述する測定方法によって得られる短軸径の相対標準偏差は、30%以下であり、25%以下であることがより好ましく、20%以下であることが最も好ましい。
【0081】
このような短軸径の揃った繊維状フィラーは、上記繊維状フィラーの原材料を水懸濁液の状態でおおよそ平均短軸径150nm以下のサイズになるよう粉砕し、その後、乾燥工程を介すことなく少なくとも1種の有機溶剤で溶媒置換し、一旦緩やかな凝集体を形成した後、分散することにより、初めて得られる。ここでの重要ポイントは、以下の2点である。即ち、1点目は、水系での粉砕工程とその後の有機溶剤系での分散工程の2工程が必要ということであり、2点目は、前記2工程の間に凍結乾燥を含むいかなる乾燥工程も含まないということである。
【0082】
繊維状フィラーと熱可塑性樹脂の複合フィルム作製において、従来の方法では、水系での粉砕あるいは分散後に、熱圧縮して繊維状フィラーの3次元構造体を作り、そこに硬化性樹脂を含浸させるか、あるいは、水系での粉砕あるいは分散後に、一旦乾燥工程を挟み、その後、有機溶剤系で分散する方法が採用されるものであった。しかしながら、このような方法では、前者の場合、含浸過程で入る気泡を防ぐことはできず、また、後者の場合、乾燥工程で発生してしまうフィラー同士の凝集を次工程の分散あるいは混練で完全に解きほぐすことは極めて困難となり、無理にせん断力、衝撃力を上げると、繊維状フィラー内部の分子配列に影響を与え、本来の補強効果が著しく損なわれる可能性が高くなる。このような傾向は、一般的に凝集を回避する好ましい乾燥方法として知られている凍結乾燥のような工程を挟んだ場合にも、程度はやや緩和されるものの認められ、好ましくない。かかる状況より、ウェットの状態を維持したまま溶媒置換することが肝要である。
【0083】
また、本発明の光学フィルムを製膜する上において、粉砕および分散を行う手段の選択も重要な要素である。具体的な方式としては、高圧ホモジナイザー、媒体ミル、砥石回転型粉砕機、石臼式グラインダーのような強い剪断力が得られる方式などが挙げられるが、粉砕と分散各過程でのフィラーに与えるエネルギーを設計・制御する点において、同一手法を選択し、各過程を調整因子を変えて行うことがより効率的である。具体的には、媒体ミル方式である湿式ビーズミル分散機を選択することが好ましい。
【0084】
〈繊維状フィラーの平均短軸径測定方法〉
本発明において、マトリクス中に存在している繊維状フィラーの短軸径およびその相対標準偏差の測定は以下のような方法で行うものとする。
【0085】
即ち、まずフィルム側面をFIBと呼ばれている集束イオンビームを利用してエッチング加工し、次にその加工によって現れた断面を低加速電圧SEMで観察し、その画像データよりフィラーの短軸径を測定する方法である。
【0086】
より具体的には、上記断面形成、断面観察の各手順を1つの装置で行える、FIB−SEM一体型装置を用いることが、ナノサイズ対象物観察の高解像度化、測定時間の短縮化等で好ましい。このような装置としては、例えば、株式会社日立ハイテクノロジーズ製nanoDUE’T NB5000、あるいは、エスアイアイ・ナノテクノロジー(株)製NVISION40等が挙げられる。
【0087】
FIBでのエッチング処理面積は、その装置の仕様にもよるが、あまり狭いとフィルム全体の中の特異な部分を見ている可能性も否定できないため好ましくないが、逆に広くとると加工時間がかかるため、その間の適切な範囲に設定することが好ましい。通常、厚み100μm程度のフィルムの解析の場合、エッチング処理する断面部の面積としては、10μm〜50μmあたりが妥当と思われる。また、本発明のような樹脂フィルムを解析する場合、FIB処理およびSEM観察での各々の加速電圧は、試料へのダメージ抑制と分解能とのバランスで設定することが重要である。
【0088】
本発明において、繊維状フィラーの平均短軸径とは、上記方法により行うSEM観察でのいくつかの撮影画像から、異なる繊維状フィラー500個程度を無作為に抽出し、個々のフィラーの短軸径計測値の個数平均を意味するものとする。ここで短軸径とは、画像中に映る個々のフィラーの輪郭に無数に引ける2本の平行な接線を考え、その中で最も小さな接線間の距離のことと定義する。
【0089】
また、本発明において、繊維状フィラーの短軸径の相対標準偏差とは、上記測定で得られた500個程度の各フィラーの短軸径の測定値の標準偏差の値を、平均短軸径の値で割り、%表示とした値と定義する。
【0090】
以下に選択する繊維状フィラーの種類として最も好ましいセルロース繊維(以下、繊維状セルロースという)を例に、詳細を述べる。
【0091】
(繊維状セルロース)
本発明の光学フィルム内に分散している繊維状セルロースは、平均短軸径10〜150nm未満であり、好ましくは15〜70nmであり、より好ましくは15〜50nmである。平均短軸径が150nm以上の場合、マトリクスとして用いる樹脂との屈折率差にもよるが、散乱体として機能する可能性が高まり、透明性を確保する上で好ましくない。
【0092】
繊維の長軸径(長さ)については特に限定されないが、平均長軸径で100nm以上が好ましい。繊維の平均長さが100nmより短いと、補強効果が低く、繊維強化複合材料の強度が不十分となるおそれがある。なお、繊維中には繊維長さ100nm未満のものが含まれていても良いが、その割合は30質量%以下であることが好ましい。
【0093】
本発明において、繊維状セルロースとは、植物細胞壁の基本骨格等を構成するセルロースのミクロフィブリル又はこれの構成繊維をいい、通常繊維径4nm程度の単位繊維の集合体である。このセルロース繊維は、結晶構造を40%以上含有するものが、高い強度と低い熱膨張を得る上で好ましい。
【0094】
本発明において、用いるセルロース繊維は、植物から分離されるものであっても、バクテリアセルロースによって産生されるバクテリアセルロースであっても好適に用いることができる。
【0095】
本発明の繊維状セルロースの原料として用いられるパルプは、機械的方法で得られたパルプ(砕木パルプ、リファイナ・グランド・パルプ、サーモメカニカルパルプ、セミケミカルパルプ、ケミグランドパルプなど)、または化学的方法で得られたパルプ(クラフトパルプ、亜硫酸パルプなど)などが使用できる。パルプとしては、通常、木材パルプやリンターパルプ、古紙パルプなどが使用される。また、セルロースを含有する素材が広く使用できるものであり、例えば、竹パルプ、バガスパルプのような脱リグニン処理を施した精製パルプであったり、またはコットン繊維、コットンリンター、麻繊維のようなセルロース系天然繊維であったり、またはそれらに脱リグニン処理を施した精製天然繊維であったり、またはビスコースやレーヨン、テンセル、ポリノジック繊維などの再生セルロース成形物であったり、または穀物又は果実由来の食物繊維(例えば、小麦フスマ、えん麦フスマ、とうもろこし外皮、米ぬか、ビール粕、大豆粕、えんどう豆繊維、おから、リンゴ繊維など)であったり、または木材や稲ワラに代表されるようなリグノセルロース材料であったりする。
【0096】
また、非木材繊維である、ケナフ、シオグサ、エスパルト、楮、三椏、雁皮、ラミーなどを用いても良く、微生物産生セルロース、バロニアセルロース、ホヤセルロースなどでも使用できる。
【0097】
上記の中では木材パルプを主原料とすることが好ましく、必要に応じてポリプロピレンなどの合成パルプを加えてもよい。好ましく用いられるのは無機物担持パルプであり、この製造のため用いられるセルロースパルプは、例えば、広葉樹材及び針葉樹材から得られるサルファイトパルプ(SP)、アルカリパルプ(AP)、クラフトパルプ(KP)等の化学パルプ、セミケミカルパルプ、セミメカニカルパルプ、機械パルプ等が挙げられる。また、パルプは未漂白パルプ、漂白パルプの区別及び叩解、未叩解の区別なく使用可能である。品質とコストから広葉樹晒クラフトパルプ(以下、LBKPともいう)、或いは針葉樹晒クラフトパルプが最も適している。木材パルプとしてはLBKP,LBSP,NBKP,NBSP,LDP,NDP,LUKP,NUKPのいずれも用いることができるが短繊維分の多いLBKP,NBSP,LBSP,NDP,LDPをより多く用いることが好ましい。但し、LBSPおよびまたはLDPの比率は10質量%以上、70質量%以下が好ましい。
【0098】
本発明に使用するパルプの濾水度はCSFの規定で200〜500mlが好ましく、また、叩解後の繊維長がJIS−P−8207に規定される24メッシュ残分質量%と42メッシュ残分質量%との和が30〜70%が繊維状セルロースを作製する上で好ましい。なお、4メッシュ残分質量%は20質量%以下であることが好ましい。
【0099】
また、竹パルプも好ましく用いられるが、特に限定されるものではないが、孟宗竹よりも真竹を用いることの方が繊維直径が小さいため、繊維状セルロースを作製する上で好ましい。
【0100】
また、セルロース系素材にキサンタンガム、カラヤガム、カラギーナン、ペクチン、繊維素グリコール酸ナトリウム等の水溶性のガム類、澱粉加水分解物、デキストリン類等の親水性物質等を適宜配合することができる。これらの水溶性のガム類、親水性物質は磨砕後の微細セルロースに添加配合してもよい。
【0101】
〈繊維状セルロースの作製方法〉
本発明に係る繊維状セルロースは、例えば、特開2005−60680号公報や特開2008−1728号公報に記載の方法で得ることができる。
【0102】
本発明に係る繊維状セルロースは、湿式ビーズミル分散機を用いて上記セルロース繊維を原料に、水懸濁液の状態で所望の大きさに粉砕されることが好ましい。湿式ビーズミル分散機とは、金属製、セラミック製等の媒体を容器に内蔵し、これを強制撹拌することによって湿式磨砕する装置である。
【0103】
本発明に好ましく用いられるビーズミル分散機について述べる。ビーズミル分散機は塗料の製造等に一般的に用いられるものであるが、一例として図1のようなものを挙げることが出来る。ここで、1はモーター、2は分散室、3は流量計、4は循環タンク、5は循環ポンプ、6は配管、7は分散室を固定する台である。図示してはいないが、図1において分散室2、循環タンク4の周りに冷却用のジャケットを設けることは、本発明において非常に有効である。
【0104】
図1中の流量計3は、循環用の配管のいずれの場所に設置されても構わないが、目詰まりを早期に検出するように、循環の出口側近傍に設置されることが望ましい。
【0105】
図2は、図1における分散室2の内部を示したものである。ここで、10はビーズ、11はビーズの流出を防止するためのスリット、12は循環出口側の配管、13は分散室の壁、14はローター、15は循環入り口側の配管、16はモーターに接続されたシャフトである。分散室2の容量とは、図2に示される配管部分の除いた分散室内壁の体積のうち、シャフト16およびローター14で占められた体積を除いた部分である。
【0106】
図2に示されるローター径は大きいほど強い分散エネルギーを生じさせることが出来る。また、回転数で分散エネルギーを変えることも可能である。ローター径が大きすぎる場合には、回転数を小さくして対応する必要があるものの、モーターのトルクには限界があって、必要以上にローター径を大きくすることは回転ムラ等を生じて、分散機の動作そのものが不安定になる。このため、適切なローター径としては100mm以下(好ましくは50mm以下)が適当であり、10mm以上が適当である。また、ローターを構成する材質としては、各種金属(例えばステンレス)や各種セラミックス(例えば、アルミナやシルコニア)が挙げられるが、繰り返し使用の耐摩耗性、および分散液中へのコンタミの混入を考慮すると、ジルコニアあるいは組成の一部をイットリウム等で変性した部分安定化ジルコニアなどが好ましく用いられる。
【0107】
ビーズに関しては、その外径が1.0mm以下であることが望ましく、より好ましくは0.5mm以下である。ビーズを構成する材料としては、ローターと同様な材料を挙げることが出来るが、ビーズにおいても、ジルコニアあるいは組成の一部をイットリウム等で変性した部分安定化ジルコニアなどが好ましく用いられる。
【0108】
ローターの回転数に関しては特に制限があるものではないが、回転数が高いと自ずと分散エネルギー量が大きくなってしまうため、過剰のエネルギーを繊維状フィラーに与えることになる。従って、直径50mmのローターの場合、概ね、5000回転(r.p.m.)以下程度が適当である。分散時間に関しては、繊維状フィラーの分散状態から必然的に選ばれるものである。
【0109】
本発明では、前記粉砕工程および後述する分散工程が、いずれもビーズミル分散機により行われ、かつ、ビーズ1個当たりの衝撃エネルギーは、分散工程時よりも粉砕工程時の方が高いことが好ましく、該分散工程に対する該粉砕工程のビーズ1個当たりの衝撃エネルギーの比が30以上であることが好ましい。更に、その比はより好ましくは60以上、特に1000以上であることが好ましい。このビーズ1個当たりの衝撃エネルギーは、使用するビーズ径および/またはローターの回転速度を変化させることにより容易に制御できる。通常、ビーズ1個当たりの衝撃エネルギーは、同一比重のビーズであれば、ビーズ径の3乗に比例し、ローターの回転速度の2乗に比例する。
【0110】
また、分散工程では、比較的高分子の分散剤存在下で行うことが再凝集防止の観点でより好ましい。
【0111】
具体的なビーズミル分散機としては、例えば市販されている装置としては、アペックスミル(コトブキ技研工業株式会社製)、パールミル(アシザワ株式会社製)、ダイノーミル(株式会社シンマルエンタープライゼス製)等を用いることができる。
【0112】
次いで本発明に係る繊維状セルロースは、乾燥工程を介すことなく少なくとも1種の有機溶剤で溶媒置換し一旦緩やかな凝集体を形成した後分散する、分散工程に供される。
【0113】
本発明に係る繊維状セルロースの分散工程では、熱可塑性樹脂/繊維状フィラー混合液に含有される有機溶剤種とは異なる種類の有機溶剤で少なくとも1回は溶媒置換していることが好ましい。例えば、水に対しSP値(溶解性パラメータ)の差が11以内の溶媒で少なくとも1回溶媒置換することが好ましい。有機溶媒としては、従来公知の有機溶媒を用いることができ、具体的には、メタノール、エタノール、プロパノール、2−プロパノール(IPA)、ブタノール、ジアセトンアルコール、フルフリルアルコール、テトラヒドロフルフリルアルコール、エチレングリコール、ヘキシレングリコール、イソプロピルグリコールなどのアルコール類;酢酸メチルエステル、酢酸エチルエステル、酢酸ブチルなどのエステル類;ジエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルなどのエーテル類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、アセチルアセトン、アセト酢酸エステルなどのケトン類、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、トルエン、シクロヘキサノン、イソホロン、蟻酸、クレゾール、酢酸等およびこれらの混合溶媒が挙げられる。中でも、メタノール、エタノール、フェノール、エチレングリコール、アセトン、蟻酸、クレゾール、酢酸などを用いることが好ましい。また、これらの溶媒は単独或いは2種以上の混合溶媒として用いることもできる。
【0114】
溶媒置換する方法としては有機溶媒によっても異なるが、溶媒置換できれば特に制限はなく、蒸留法、限外濾過膜法、ロータリーエバポレーター等が挙げられる。本発明では限外濾過膜法が推奨される。得られる繊維状フィラー分散液の濃度は、目的及び用途に応じて適宜選択されるが、固形分として1〜50質量%、さらには2〜40質量%の範囲にあることが好ましい。
【0115】
また、本発明に係る繊維状セルロースは、表面を化学修飾または物理修飾したものであることも好ましい。ここで、化学修飾としては、アセチル化、シアノエチル化、アセタール化、エーテル化、イソシアネート化等によって官能基を付加させること、シリケートやチタネート等の無機物を化学反応やゾルゲル法等によって複合化や被覆化させること等が挙げられる。好ましい化学修飾の方法としては、セルロース繊維を無水酢酸中に浸漬して加熱する方法が挙げられ、アセチル化により、光線透過率を低下させることなく、吸水性の低下、耐熱性の向上を図ることができる。また、物理修飾としては、金属やセラミック原料を、真空蒸着、イオンプレーティング、スパッタリング等の物理蒸着法(PVD法)、化学蒸着法(CVD法)、無電解メッキや電解メッキ等のメッキ法等によって表面被覆させることが挙げられる。
【0116】
また、本発明に係る繊維状セルロースは、一般式(1)で表される有機基によって表面修飾されることが好ましい。有機基が結合することで、マトリクスへの分散性が向上し、凝集が抑制されることにより、透明性の向上、弾性率の向上などに効果がある。
【0117】
【化1】

【0118】
一般式(1)において、L1は下記一般式(2)〜(21)のいずれかで表される連結基である。
【0119】
【化2】

【0120】
なかでも、結合の形成させやすさの観点から、一般式(2)、(3)、(4)、(6)、(7)、(8)、(10)、(11)、(15)、(16)、(17)、(18)、(19)のいずれかで表される連結基であることが好ましく、一般式(2)、(3)、(4)、(6)、(7)、(8)、(15)、(16)、(18)のいずれかで表される連結基であることがより好ましく、一般式(2)、(4)、(6)、(7)、(15)のいずれかで表される連結基であることがさらに好ましい。
【0121】
セルロース繊維の場合には、表面のヒドロキシル基との反応により、一般式(1)で表される基を導入することができる。この場合、一般式(1)のL1は(2)、(4)、(6)、(7)、(15)、(21)のいずれかで表される連結基であることが好ましい。
【0122】
一般式(1)において、nは0〜4の整数を表し、0〜2であることが好ましく、1〜2であることがより好ましい。nが2〜4の整数であるとき、n個のL1は互いに同一であっても異なっていてもよい。
【0123】
一般式(1)において、R1は有機基を表す。有機基の分子量は1000以下のものであってもよいし、1000を超えるものであってもよい。
【0124】
分子量1000以下の有機基として、アルキル基(好ましくは炭素数1〜36、より好ましくは炭素数1〜18;例えば、メチル基、エチル基、イソプロピル基、tert−ブチル基など)、アリール基(好ましくは炭素数6〜36、より好ましくは炭素数6〜24;例えば、フェニル基、ビフェニル基、ナフチル基など)、アルコキシ基(好ましくは炭素数1〜36、より好ましくは炭素数1〜18;例えば、メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基など)、アシル基(好ましくは炭素数2〜36、より好ましくは炭素数2〜18;例えば、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基など)、アシルアミノ基(好ましくは炭素数1〜36、より好ましくは炭素数1〜18;例えば、ホルミルアミノ基、アセチルアミノ基など)、アリールオキシ基(好ましくは炭素数6〜36、より好ましくは炭素数6〜24;例えば、フェノキシ基など)、シアノ基、シリル基(例えば、トリメチルシリル基、トリフェニルシリル基、ジメチルブチルシリル基など)などが挙げられる。
【0125】
有機基は、置換基を有していていもよい。置換基としては、ハロゲン原子、アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、イソプロピル基、tert−ブチル基など)、アリール基(好ましくは炭素数6〜30、より好ましくは炭素数6〜15;例えば、フェニル基、ビフェニル基、ナフチル基など)、アルコキシ基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜12;例えば、メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基など)、アシル基(好ましくは炭素数2〜36、より好ましくは炭素数2〜18;例えば、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基など)、アシルアミノ基(好ましくは炭素数1〜36、より好ましくは炭素数1〜18;例えば、ホルミルアミノ基、アセチルアミノ基など)、アリールオキシ基(好ましくは炭素数6〜36、より好ましくは炭素数6〜18;例えば、フェノキシ基など)、アシルオキシ基(好ましくは炭素数2〜36、より好ましくは炭素数2〜18;例えば、アセチルオキシ基、プロピオニルオキシ基、ブチリルオキシ基など)、シアノ基、ヒドロキシル基、ニトロ基などが挙げられる。
【0126】
分子量1000を超える有機基として、ポリマー、オリゴマーを用いることができる。ポリマー、オリゴマーが結合する場合、マトリクス中での立体反発により凝集が抑制される点で好ましい。ポリマー、オリゴマーは前記で示した置換基を有していてもよい。
【0127】
本発明で用いることができる有機基の具体例を以下に例示するが、本発明で採用することができる有機基はこれらに限定されるものではない。
【0128】
【化3】

【0129】
【化4】

【0130】
【化5】

【0131】
【化6】

【0132】
【化7】

【0133】
更に、本発明では、少なくとも前記粉砕工程及び分散工程のいずれか1つの工程で、重量平均分子量1000以上の分散剤を添加することが好ましい。
【0134】
分散剤の重量平均分子量としては、1000以上が好ましく、3000以上がより好ましい。一方、重量平均分子量の上限は100000が好ましく、8000がよりしい。重量平均分子量が1000より小さいと、分散剤が繊維状セルロースの表面に滲出(ブリード)することがある。一方、重量平均分子量が100000より大きいと、分散剤そのものの粘度が高くなり、目的とする繊維状セルロースとの親和性が低下して、十分な均一・微細分散ができなくなることがある。
【0135】
分散剤としては、例えばマトリクスを構成する上記熱可塑性樹脂の種類から特に制限無く選択することができる。好ましくは、マトリクスを構成する熱可塑性樹脂と分散剤に使う熱可塑性樹脂の種類を合わせることが透明性を高める上で好ましい。
【0136】
また、分散に際し、種々の界面活性剤を用いることも有用な方法である。界面活性剤としてはアニオン性、カチオン性、両性、非イオン性など何れを用いることも可能であるが、アニオン性および非イオン性界面活性剤が好ましく、特にアニオン性界面活性剤が好ましい。
【0137】
本発明の繊維状セルロースは、上記湿式ビーズミル分散機を用いる粉砕手段と併せて高圧ホモジナイザーや、砥石回転型粉砕機、石臼式グラインダーのような強い剪断力が得られる方式を適宜用いることもできる。
【0138】
高圧ホモジナイザーとは、加速された高流速によるせん断力、急激な圧力降下(キャビテーション)および高流速の粒子同士が微細オリフィス内で対面衝突することによる衝撃力によって磨砕を行う装置であり、市販されている装置としては、ナノマイザー(ナノマイザー株式会社製)、マイクロフルイダイザー(Microfluidics社製)等を用いることができる。
【0139】
高圧ホモジナイザーによるセルロースのフィブリル化と均質化の程度は、高圧ホモジナイザーへ圧送する圧力と高圧ホモジナイザーに通過させる回数(パス回数)に依存する。圧送圧力は、通常、500〜2000kg/cm程度の範囲で行うことが超微細化処理に適するが、生産性を考慮すると1000〜2000kg/cmがより好ましい。パス回数は、例えば、5〜50回、好ましくは10〜40回、特に20〜30回程度である。
【0140】
砥石回転型粉砕機とは、コロイドミル或いは石臼型粉砕機の一種であり、例えば、粒度が16〜120番の砥粒からなる砥石をすりあわせ、そのすりあわせ部に前述の水分散液を通すことで、粉砕処理される装置のことである。必要に応じて、複数回処理を行ってもよい。砥石を適宜変更するのは好ましい実施態様の一つである。砥石回転型粉砕機は、「短繊維化」と「微細化」の両作用を有するが、その作用は砥粒の粒度に影響を受ける。短繊維化を目的とする場合は46番以下の砥石が有効であり、微細化を目的とする場合は46番以上の砥石が有効である。46番はいずれの作用も有する。具体的な装置としては、ピュアファインミル(グラインダーミル)(株式会社栗田機械製作所)、セレンディピター、スーパーマスコロイダー、スーパーグラインデル(以上、増幸産業株式会社)などがあげられる。
【0141】
本発明において、得られた繊維状セルロースは、直接、または分散液として熱可塑性樹脂に添加されるが、その含有量は0.1から50質量%の範囲であることが好ましい。より好ましくは5〜50質量%であり、特に10〜40質量%が好ましい。
【0142】
熱可塑性樹脂に繊維状セルロースを含有させる方法は特に限定されるものではないが、後述する溶液キャスト法において、ドープ液を調製する際に分散液として含有させることが好ましい。
【0143】
<光学フィルムに含まれる他の添加剤>
(可塑剤)
本発明の光学フィルム中には、可塑剤を含有させることも好ましく行われる。可塑剤としては、例えば、リン酸エステル系可塑剤、フタル酸エステル系可塑剤、トリメリット酸エステル系可塑剤、ピロメリット酸系可塑剤、グリコレート系可塑剤、クエン酸エステル系可塑剤、ポリエステル系可塑剤、多価アルコールエステル系可塑剤等を好ましく用いることができる。
【0144】
これらの可塑剤の使用量は、フィルム性能、加工性等の点で、熱可塑性樹脂に対して1〜20質量%が好ましく、特に好ましくは、3〜13質量%である。
【0145】
(紫外線吸収剤)
本発明の光学フィルム中には、紫外線吸収剤を添加することが耐久性、耐光性を向上させる点で好ましい。
【0146】
紫外線吸収剤としては、波長370nm以下の紫外線の吸収能に優れ、かつ波長400nm以上の可視光の吸収が少ないものが好ましく用いられる。
【0147】
本発明に好ましく用いられる紫外線吸収剤の具体例としては、例えばオキシベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、サリチル酸エステル系化合物、ベンゾフェノン系化合物、シアノアクリレート系化合物、トリアジン系化合物、ニッケル錯塩系化合物等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0148】
本発明で好ましく用いられる上記の紫外線吸収剤としては、透明性に優れたベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤やベンゾフェノン系紫外線吸収剤が好ましく、不要な着色がより少ないベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤が特に好ましく用いられる。
【0149】
(微粒子)
また、本発明の光学フィルムは滑り性を付与するため、微粒子を必要に応じて用いることもできる。
【0150】
微粒子としては、無機化合物の例としては、二酸化珪素、二酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、炭酸カルシウム、炭酸カルシウム、タルク、クレイ、焼成カオリン、焼成ケイ酸カルシウム、水和ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム及びリン酸カルシウムを挙げることができる。微粒子は珪素を含むものが濁度が低くなる点で好ましく、特に二酸化珪素が好ましい。
【0151】
微粒子の一次粒子の平均粒子径は5〜50nmが好ましく、さらに好ましいのは7〜20nmである。これらは主に粒子径0.05〜0.3μmの2次凝集体として含有されることが好ましい。光学フィルム中のこれらの微粒子の含有量は0.05〜1質量%であることが好ましく、特に0.1〜0.5質量%が好ましい。共流延法による多層構成の光学フィルムの場合は、表面にこの添加量の微粒子を含有することが好ましい。
【0152】
二酸化珪素の微粒子は、例えば、アエロジルR972、R972V、R974、R812、200、200V、300、R202、OX50、TT600(以上日本アエロジル(株)製)の商品名で市販されており、使用することができる。
【0153】
本発明に係わる微粒子は、繊維状フィラー含有の組成物に添加して製膜してもよいし、本発明の光学フィルムの片面あるいは両面に、熱可塑性樹脂と本発明に係わる微粒子を含有する組成物を積層する形で製膜あるいは塗布してもよい。後者の場合、生産性を高めるために共流延法あるいは共押出法などが好ましく用いられる。
【0154】
<光学フィルムの特性>
なお、本発明に係る光学フィルムは、透明であることが必要であり、ここで透明とは、可視光の全光線透過率が60%以上であることをさし、好ましくは80%以上であり、特に好ましくは90%以上である。また、フィルムの厚みが100μmとしたときのヘイズの値は、10以下が好ましく、1以下が更に好ましく、0.2以下が最も好ましい。
【0155】
また、本発明に係る光学フィルムは、可撓性を有することが好ましい。ここで、「可撓性」とは、JIS P 8115:2001記載のMIT試験において最低100回の耐屈性があるものとする。
【0156】
また、本発明に係る光学フィルムは、50℃から150℃の範囲における熱線膨張係数が50ppm/℃以下であることが好ましく、30ppm/℃以下であることが更に好ましく、20ppm/℃以下であることが最も好ましい。
【0157】
本発明に係るフィルムは、長尺フィルムであることも好ましく、具体的には、100m〜5000m程度のものを示し、通常、ロール状で提供される形態のものである。また、フィルムの幅は1.3〜4mであることが好ましく、1.4〜2mであることがより好ましい。
【0158】
本発明に係るフィルムの膜厚に特に制限はないが、20〜200μmであることが好ましく、25〜150μmであることがより好ましく、30〜120μmであることが特に好ましい。
【0159】
<光学フィルムの製造方法>
本発明の光学フィルムの製造方法としては、通常のインフレーション法、T−ダイ法、カレンダー法、切削法、流延法、エマルジョン法、ホットプレス法等の製造法が使用できるが、着色抑制、異物欠点の抑制、ダイラインなどの光学欠点の抑制などの観点から流延法による溶液流延法、溶融流延法が好ましい。
【0160】
以下、本発明の製造方法の典型例について詳述する。
【0161】
(1)溶液流延法によるフィルムの製造方法
(有機溶媒)
本発明の熱可塑性樹脂基板を溶液流延法で製造する場合、ドープを形成するのに有用な有機溶媒は、セルロースエステル樹脂等の熱可塑性樹脂を溶解するものであれば制限なく用いることができる。
【0162】
例えば、塩素系有機溶媒としては、塩化メチレン、非塩素系有機溶媒としては、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸アミル、アセトン、テトラヒドロフラン、1,3−ジオキソラン、1,4−ジオキサン、シクロヘキサノン、ギ酸エチル、2,2,2−トリフルオロエタノール、2,2,3,3−ヘキサフルオロ−1−プロパノール、1,3−ジフルオロ−2−プロパノール、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−メチル−2−プロパノール、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロパノール、2,2,3,3,3−ペンタフルオロ−1−プロパノール、ニトロエタン、乳酸エチル、乳酸、ジアセトンアルコール等を挙げることができ、塩化メチレン、酢酸メチル、酢酸エチル、アセトン、乳酸エチル等を好ましく使用し得る。
【0163】
ドープには、上記有機溶媒の他に、1〜40質量%の炭素原子数1〜4の直鎖又は分岐鎖状の脂肪族アルコールを含有させてもよい。ドープ中のアルコールの比率が高くなるとウェブがゲル化し、金属支持体からの剥離が容易になり、また、アルコールの割合が少ない時は非塩素系有機溶媒系での熱可塑性樹脂の溶解を促進する役割もある。
【0164】
特に、メチレンクロライド、および炭素数1〜4の直鎖又は分岐鎖状の脂肪族アルコールを含有する溶媒に、熱可塑性樹脂は、少なくとも計10〜45質量%溶解させたドープ組成物であることが好ましい。
【0165】
炭素原子数1〜4の直鎖又は分岐鎖状の脂肪族アルコールとしては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、iso−プロパノール、n−ブタノール、sec−ブタノール、tert−ブタノールを挙げることができる。これらの内ドープの安定性、沸点も比較的低く、乾燥性もよいこと等からエタノールが好ましい。
【0166】
以下、本発明に係るフィルムの好ましい製膜方法について説明する。
【0167】
a)溶解工程
熱可塑性樹脂に対する良溶媒を主とする有機溶媒に、溶解釜中で熱可塑性樹脂、繊維状フィラー、その他の添加剤を攪拌しながら溶解しドープを形成する工程である。
【0168】
熱可塑性樹脂の溶解には、常圧で行う方法、主溶媒の沸点以下で行う方法、主溶媒の沸点以上で加圧して行う方法、特開平9−95544号公報、特開平9−95557号公報、又は特開平9−95538号公報に記載の如き冷却溶解法で行う方法、特開平11−21379号公報に記載の如き高圧で行う方法等種々の溶解方法を用いることができるが、特に主溶媒の沸点以上で加圧して行う方法が好ましい。
【0169】
繊維状フィラーと熱可塑性樹脂との混合については、先述の方法を用いて予め分散液の状態にしておいた繊維状フィラーを、熱可塑性樹脂溶液に混入させる方法が好ましく用いられる。繊維状フィラー分散液を熱可塑性樹脂溶液に混入させる際には、最終的に添加すべき熱可塑性樹脂の1/10量以上1/3量以下の樹脂を溶解した溶液に繊維状フィラー分散液を徐々に流し込み、しかる後に残りの熱可塑性樹脂を添加し溶解させることが、繊維状フィラーの凝集を防止する上で好ましく用いられる。
【0170】
b)流延工程
ドープを、送液ポンプ(例えば、加圧型定量ギヤポンプ)を通して加圧ダイに送液し、無限に移送する無端の金属ベルト、例えばステンレスベルト、あるいは回転する金属ドラム等の金属支持体上の流延位置に、加圧ダイスリットからドープを流延する工程である。
【0171】
ダイの口金部分のスリット形状を調整でき、膜厚を均一にし易い加圧ダイが好ましい。加圧ダイには、コートハンガーダイやTダイ等があり、いずれも好ましく用いられる。金属支持体の表面は鏡面となっている。製膜速度を上げるために加圧ダイを金属支持体上に2基以上設け、ドープ量を分割して重層してもよい。あるいは複数のドープを同時に流延する共流延法によって積層構造のフィルムを得ることも好ましい。
【0172】
c)溶媒蒸発工程
ウェブ(流延用支持体上にドープを流延し、形成されたドープ膜をウェブと呼ぶ)を流延用支持体上で加熱し、溶媒を蒸発させる工程である。
【0173】
溶媒を蒸発させるには、ウェブ側から風を吹かせる方法および/又は支持体の裏面から液体により伝熱させる方法、輻射熱により表裏から伝熱する方法等があるが、裏面液体伝熱方法の乾燥効率が良く好ましい。又、それらを組み合わせる方法も好ましく用いられる。流延後の支持体上のウェブを40〜100℃の雰囲気下、支持体上で乾燥させることが好ましい。40〜100℃の雰囲気下に維持するには、この温度の温風をウェブ上面に当てるか赤外線等の手段により加熱することが好ましい。
【0174】
面品質、透湿性、剥離性の観点から、30〜120秒以内で該ウェブを支持体から剥離することが好ましい。
【0175】
d)剥離工程
金属支持体上で溶媒が蒸発したウェブを、剥離位置で剥離する工程である。剥離されたウェブは次工程に送られる。
【0176】
金属支持体上の剥離位置における温度は好ましくは10〜40℃であり、さらに好ましくは11〜30℃である。
【0177】
なお、剥離する時点での金属支持体上でのウェブの剥離時残留溶媒量は、乾燥の条件の強弱、金属支持体の長さ等により50〜120質量%の範囲で剥離することが好ましいが、残留溶媒量がより多い時点で剥離する場合、ウェブが柔らか過ぎると剥離時平面性を損ね、剥離張力によるツレや縦スジが発生し易いため、経済速度と品質との兼ね合いで剥離時の残留溶媒量が決められる。
【0178】
ウェブの残留溶媒量は下記式で定義される。
【0179】
残留溶媒量(%)=(ウェブの加熱処理前質量−ウェブの加熱処理後質量)/(ウェブの加熱処理後質量)×100
なお、残留溶媒量を測定する際の加熱処理とは、115℃で1時間の加熱処理を行うことを表す。
【0180】
金属支持体とフィルムを剥離する際の剥離張力は、通常、196〜245N/mであるが、剥離の際に皺が入り易い場合、190N/m以下の張力で剥離することが好ましく、さらには、剥離できる最低張力〜166.6N/m、次いで、最低張力〜137.2N/mで剥離することが好ましいが、特に好ましくは最低張力〜100N/mで剥離することである。
【0181】
本発明においては、当該金属支持体上の剥離位置における温度を−50〜40℃とするのが好ましく、10〜40℃がより好ましく、15〜30℃とするのが最も好ましい。
【0182】
e)乾燥および延伸工程
剥離後、ウェブを乾燥装置内に複数配置したロールに交互に通して搬送する乾燥装置および/又はクリップでウェブの両端をクリップして搬送するテンター延伸装置を用いて、ウェブを乾燥する。
【0183】
乾燥手段はウェブの両面に熱風を吹かせるのが一般的であるが、風の代わりにマイクロウェーブを当てて加熱する手段もある。余り急激な乾燥は出来上がりのフィルムの平面性を損ね易い。高温による乾燥は残留溶媒が8質量%以下くらいから行うのがよい。全体を通し、乾燥は概ね40〜250℃で行われる。特に40〜160℃で乾燥させることが好ましい。
【0184】
テンター延伸装置を用いる場合は、テンターの左右把持手段によってフィルムの把持長(把持開始から把持終了までの距離)を左右で独立に制御できる装置を用いることが好ましい。また、テンター工程において、平面性を改善するため意図的に異なる温度を持つ区画を作ることも好ましい。
【0185】
また、異なる温度区画の間にそれぞれの区画が干渉を起こさないように、ニュートラルゾーンを設けることも好ましい。
【0186】
なお、延伸操作は多段階に分割して実施してもよく、流延方向、幅手方向に二軸延伸を実施することも好ましい。また、二軸延伸を行う場合には同時二軸延伸を行ってもよいし、段階的に実施してもよい。
【0187】
この場合、段階的とは、例えば、延伸方向の異なる延伸を順次行うことも可能であるし、同一方向の延伸を多段階に分割し、かつ異なる方向の延伸をそのいずれかの段階に加えることも可能である。即ち、例えば、次のような延伸ステップも可能である。
【0188】
・流延方向に延伸−幅手方向に延伸−流延方向に延伸−流延方向に延伸
・幅手方向に延伸−幅手方向に延伸−流延方向に延伸−流延方向に延伸
また、同時2軸延伸には、一方向に延伸し、もう一方を、張力を緩和して収縮させる場合も含まれる。同時2軸延伸の好ましい延伸倍率は幅手方向、長手方向ともに×1.01倍〜×1.5倍の範囲でとることができる。
【0189】
テンターを行う場合のウェブの残留溶媒量は、テンター開始時に20〜100質量%であるのが好ましく、かつウェブの残留溶媒量が10質量%以下になる迄テンターを掛けながら乾燥を行うことが好ましく、さらに好ましくは5質量%以下である。
【0190】
テンターを行う場合の乾燥温度は、30〜160℃が好ましく、50〜150℃がさらに好ましく、70〜140℃が最も好ましい。
【0191】
テンター工程において、雰囲気の幅手方向の温度分布が少ないことが、フィルムの均一性を高める観点から好ましく、テンター工程での幅手方向の温度分布は、±5℃以内が好ましく、±2℃以内がより好ましく、±1℃以内が最も好ましい。
【0192】
また、フィルムの寸法安定性を高めるため、テンター工程にてフィルム幅手方向を把持しつつ、40〜250℃の加熱処理をしながら徐々にフィルムを収縮させる方法も好ましく用いられる。その際、フィルム長手方向に対する下記巻き取り張力も、フィルム搬送に悪影響が出ない範囲で極力小さくすることにより、フィルム製品としての温度環境変動に対する寸法安定性を更に高めることができる。また、長手方向に収縮することも好ましく行うことができ、それには、例えば、幅延伸を一時クリップアウトさせて長手方向に弛緩させる、又は横延伸機の隣り合うクリップの間隔を徐々に狭くすることによりフィルムを収縮させるという方法がある。
【0193】
f)巻き取り工程
ウェブ中の残留溶媒量が2質量%以下となってからフィルムとして巻き取り機により巻き取る工程であり、残留溶媒量を0.4質量%以下にすることにより寸法安定性の良好なフィルムを得ることができる。特に0.00〜0.10質量%で巻き取ることが好ましい。
【0194】
巻き取り方法は、一般に使用されているものを用いればよく、定トルク法、定テンション法、テーパーテンション法、内部応力一定のプログラムテンションコントロール法等があり、それらを使いわければよい。
【0195】
(2)溶融流延製膜法によるフィルムの製造方法
本発明の光学フィルムを、溶融流延製膜法により製造する場合の方法について説明する。
【0196】
a)溶融ペレット製造工程
溶融押出に用いる熱可塑性樹脂、繊維状フィラー、その他の添加剤からなるフィルムを構成する組成物は、通常あらかじめ混錬してペレット化しておくことが好ましい。
【0197】
ペレット化は、公知の方法でよく、例えば、乾燥した熱可塑性樹脂と、先述の方法で分散した繊維状フィラー分散液から十分に溶媒を除去した繊維状フィラー/分散剤混合物と可塑剤および/または紫外線吸収剤および/または酸化防止剤等からなる添加剤をフィーダーで押出機に供給し、1軸や2軸の押出機を用いて混錬し、ダイからストランド状に押出し、水冷又は空冷し、カッティングすることでできる。
【0198】
原材料は、押出する前に乾燥しておくことが原材料の分解を防止する上で重要である。特にセルロースエステル系樹脂は吸湿しやすいので、除湿熱風乾燥機や真空乾燥機で70〜140℃で3時間以上乾燥し、水分率を200ppm以下、さらに100ppm以下にしておくことが好ましい。
【0199】
添加剤は、押出機に供給押出機合しておいてもよいし、それぞれ個別のフィーダーで供給してもよい。酸化防止剤等少量の添加剤は、均一に混合するため、こと前に混合しておくことが好ましい。
【0200】
酸化防止剤の混合は、固体同士で混合してもよいし、必要により、酸化防止剤を溶剤に溶解しておき、熱可塑性樹脂に含浸させて混合してもよく、あるいは噴霧して混合してもよい。
【0201】
真空ナウターミキサーなどが乾燥と混合を同時にできるので好ましい。また、フィーダー部やダイからの出口など空気と触れる場合は、除湿空気や除湿したN2ガスなどの雰囲気下にすることが好ましい。
【0202】
押出機は、せん断力を抑え、樹脂が劣化(分子量低下、着色、ゲル生成等)しないようにペレット化可能でなるべく低温で加工することが好ましい。例えば、2軸押出機の場合、深溝タイプのスクリューを用いて、同方向に回転させることが好ましい。混錬の均一性から、噛み合いタイプが好ましい。
【0203】
以上のようにして得られたペレットを用いてフィルム製膜を行う。ペレット化せず、原材料の粉末をそのままフィーダーで押出機に供給し、そのままフィルム製膜することも可能である。
【0204】
b)溶融混合物をダイから冷却ロールへ押し出す工程
まず、作製したペレットを1軸や2軸タイプの押出機を用いて、押し出す際の溶融温度Tmを200〜280℃程度とし、リーフディスクタイプのフィルターなどでろ過し異物を除去した後、Tダイからフィルム状に共押出し、冷却ロール上で固化し、弾性タッチロールと押圧しながら流延する。
【0205】
供給ホッパーから押出機へ導入する際は真空下又は減圧下や不活性ガス雰囲気下にして酸化分解等を防止することが好ましい。なお、Tmは、押出機のダイ出口部分の温度である。
【0206】
ダイに傷や可塑剤の凝結物等の異物が付着するとスジ状の欠陥が発生する場合がある。このような欠陥のことをダイラインとも呼ぶが、ダイライン等の表面の欠陥を小さくするためには、押出機からダイまでの配管には樹脂の滞留部が極力少なくなるような構造にすることが好ましい。ダイの内部やリップにキズ等が極力無いものを用いることが好ましい。
【0207】
押出機やダイなどの溶融樹脂と接触する内面は、表面粗さを小さくしたり、表面エネルギーの低い材質を用いるなどして、溶融樹脂が付着し難い表面加工が施されていることが好ましい。具体的には、ハードクロムメッキやセラミック溶射したものを表面粗さ0.2S以下となるように研磨したものが挙げられる。
【0208】
本発明において冷却ロールには特に制限はないが、高剛性の金属ロールで内部に温度制御可能な熱媒体又は冷媒体が流れるような構造を備えるロールであり、大きさは限定されないが、溶融押し出されたフィルムを冷却するのに十分な大きさであればよく、通常冷却ロールの直径は100mmから1m程度である。
【0209】
冷却ロールの表面材質は、炭素鋼、ステンレス、アルミニウム、チタンなどが挙げられる。さらに表面の硬度を上げたり、樹脂との剥離性を改良するため、ハードクロムメッキや、ニッケルメッキ、非晶質クロムメッキなどや、セラミック溶射等の表面処理を施すことが好ましい。
【0210】
冷却ロール表面の表面粗さは、Raで0.1μm以下とすることが好ましく、さらに0.05μm以下とすることが好ましい。ロール表面が平滑であるほど、得られるフィルムの表面も平滑にできるのである。もちろん表面加工した表面はさらに研磨し上述した表面粗さとすることが好ましい。
【0211】
本発明において、弾性タッチロールとしては、特開平03−124425号、特開平08−224772号、特開平07−100960号、特開平10−272676号、WO97−028950、特開平11−235747号、特開2002−36332号、特開2005−172940号や特開2005−280217号公報に記載されているような表面が薄膜金属スリーブ被覆シリコンゴムロールを使用することができる。
【0212】
冷却ロールからフィルムを剥離する際は、張力を制御してフィルムの変形を防止することが好ましい。
【0213】
c)延伸工程
本発明では、上記のようにして得られたフィルムは冷却ロールに接する工程を通過後、さらに少なくとも1方向に1.01〜3.0倍延伸することもできる。
【0214】
好ましくは縦(フィルム搬送方向)、横(巾方向)両方向にそれぞれ1.1〜2.0倍延伸することが好ましい。
【0215】
延伸する方法は、公知のロール延伸機やテンターなどを好ましく用いることができる。
【0216】
通常、延伸倍率は1.1〜3.0倍、好ましくは1.2〜1.5倍であり、延伸温度は、通常、フィルムを構成する樹脂のTg〜Tg+50℃、好ましくはTg〜Tg+50℃の温度範囲で行われる。
【0217】
延伸は、長手方向もしくは幅手方向で制御された均一な温度分布下で行うことが好ましい。好ましくは±2℃以内、さらに好ましくは±1℃以内、特に好ましくは±0.5℃以内である。
【0218】
上記の方法で作製したフィルムを光学フィルムとして用いる場合、当該光学フィルムのレターデーション調整や寸法変化率を小さくする目的で、フィルムを長手方向や幅手方向に収縮させてもよい。
【0219】
長手方向に収縮するには、例えば、幅延伸を一時クリップアウトさせて長手方向に弛緩させる、又は横延伸機の隣り合うクリップの間隔を徐々に狭くすることによりフィルムを収縮させるという方法がある。
【0220】
遅相軸方向の均一性も重要であり、フィルム幅方向に対して、角度が−5〜+5°であることが好ましく、さらに−1〜+1°の範囲にあることが好ましく、特に−0.5〜+0.5°の範囲にあることが好ましく、特に−0.1〜+0.1°の範囲にあることが好ましい。これらのばらつきは延伸条件を最適化することで達成できる。
【0221】
<防湿層>
本発明の光学フィルムは、それ単独でもガスバリア性に優れるものであるが、更に優れたガスバリア性を実現するために、少なくとも該光学フィルムの片面に防湿層を有する態様も好ましく用いられる。
【0222】
本発明に係る防湿層は、湿度の変動、特に高湿度による光学フィルム等の劣化を防止するためのものであるが、後述するような特別の機能・用途を持たせたものであっても良く、従来公知の種々の態様の防湿層を設けることができる。
【0223】
本発明の光学フィルムは、その両面に、防湿層として、少なくとも1層のガスバリア層を有することが好ましい。
【0224】
ガスバリア層を有すると、樹脂フィルムのガス透過性が大幅に低下するので、外気に含まれる水蒸気、酸素の透過を抑制することができる。例えば有機EL基板用途として本発明の光学フィルムを用いる場合においては、ガスバリア層によりガス透過を抑制することで、有機EL素子へのダメージを低減することができ、発光寿命を延ばすことができる。また、発光中に時間とともに増加する非点灯領域の拡大を抑制することができる。
【0225】
液晶基板に用いる場合においても、ガスバリア層が無いと素子内への水蒸気や酸素などのガス混入により、表示品質を劣化させ寿命を短くする原因となる。
【0226】
本発明の一実施形態において、光学フィルムの両面にそれぞれガスバリア層が少なくとも1層設けられる。ガスバリア層を両面に有することで、ガス透過を抑制するだけでなく、プロセス中、洗浄などの液体に接触する工程においても、寸法変化を抑えることができる。
【0227】
本発明の光学フィルムは、ガスバリア性能として、水蒸気透過率が、0.1g/m・24hr以下、好ましくは0.01g/m・24hr以下、更に好ましくは0.001g/m・24hr以下であるように防湿層(ガスバリア層)により調整することができることができる。
【0228】
また、酸素透過率が、0.1ml/m・24h・atm以下、好ましくは0.001ml/m・24h・atm、更に好ましくは0.001ml/m・24h・atm以下であるように防湿層(ガスバリア層)により調整することができる。
【0229】
これらの特性を有することで、有機ELデバイス等のディスプレイにおいて、これを基板等として用いたときに、当該有機ELデバイスに優れたガスバリア性能を付与することができる。
【0230】
水蒸気透過率(g/m/day)は、JIS K 7129Bに記載された方法により測定する。なお、測定には、MOCON社製 水蒸気透過率測定装置 PERMATRAN−W 3/33 MGモジュールを使用することができる。
【0231】
また、酸素透過率(ml/m/day/atm)についても同じく、JIS K 7126Bに従って、MOCON社製 酸素透過率測定装置 OX−TRAN 2/21 MLモジュールを使用して測定することができる。
【0232】
ガスバリア層としては、透明性を有する無機膜を設けることが好ましい。特にこれに限定されるわけではないが、透明性、ガスバリア性の観点から酸化珪素、酸化アルミニウム、酸化タンタル、酸化窒化珪素、酸化窒化アルミニウム、SiAlONなどが使用できる。さらに耐酸性、耐アルカリ性の観点から、ケイ素の酸化物、窒化物又は酸化窒素化物を主成分とすることが好ましい。
【0233】
ガスバリア層は、蒸着、イオンプレーティング、スパッタリングなどの物理蒸着法(PVD)法、プラズマCVD(chemical vapor deposition)などの化学蒸着法、又はゾルゲル法などで作製することができる。中でもスパッタリング法で作製すると、密着力が高く、緻密でガスバリア性の高い膜が得られ易く好ましい。ガスバリア層の成膜工程は、枚葉方式あるいはロール・トゥ・ロール方式のいずれも適用できるが、樹脂フィルム上に成膜を行なうため、ロール・トゥ・ロール方式で行なうと生産性が向上する。ケイ素の酸化物、窒化物又は酸化窒素化物のスパッタリング成膜は、DC(直流)スパッタリング法、RF(高周波)スパッタリング法、これにマグネトロンスパッタリングを組み合わせた方法、さらに中間的な周波数領域を用いたデュアルマグネトロン(DMS)スパッタリング法などの従来技術を、単独で又は組み合わせて用いることができる。スパッタリング雰囲気中には、He、Ne、Ar、Kr、Xe等の不活性ガス、酸素、窒素のうち少なくとも1種のプロセスガスを用いることができる。DCスパッタリングやDMSスパッタリングでケイ素の酸化物、窒化物又は酸化窒素化物のスパッタリングを行なう際には、そのターゲットにSiを用いることができる。プロセスガス中に酸素や窒素を導入することで、ケイ素の酸化物、窒化物又は酸化窒素化物の薄膜を作ることができる。RF(高周波)スパッタリング法でこれらを成膜する場合は、SiOやSiなどのセラミックターゲットを用いることもできる。生産性の観点から、Siターゲットを用い、DCスパッタリングやDMSスパッタリング等で、酸素や窒素を導入しながら成膜することが好ましい。
【0234】
また、上記の樹脂基板上に常温硬化型SOG(Spin on glass、塗布ガラスとも称する。)を材料としてガスバリア層を形成することも好ましい。常温硬化型SOGは、常温(特別に加熱したり冷やしたりしない温度)から200℃以下の温度範囲で硬化されてシリコン酸化物を主成分とするガラス層(膜)が形成されるSOGとしている。この常温硬化型SOGとしては、例えばシラグシタール(商品名、株式会社ミクロ技術研究所)がある。
【0235】
ガスバリア層は二層以上設けても良く、その場合、ガスバリア層の間に有機コート層が設けられていることが好ましい。この有機コート層を中間層に設けることは、バリア層を連続して2層設けた場合に比較して、ガス透過率が低下することから好ましい。これは、有機コート層が、先に設けられたガスバリア層の欠点を覆い隠して平滑化することで、次に設けるガスバリア層が前のガスバリア層の欠点をきっかけとした、ピンホールなどの欠点を作りにくくするためと考えられている。また、この有機コート層は樹脂フィルムとガスバリア層の間にも設けられて良い。各有機コート層は、それぞれが同じ材料でも異なる材料でもよい。
【0236】
有機コート層は、通常、透明性、密着性および耐熱性を有する化合物が良く、熱可塑性樹脂、エポキシ樹脂などの熱硬化性樹脂、アクリル系架橋樹脂などの紫外線・電子線架橋樹脂などが挙げられるがこれらに限定されるものではない。有機コート層は原料化合物を溶液、ラテックスあるいは無溶媒のまま、ワイヤーバー、イクストルージョン、マイクログラビア、リバースロールなどの方法で形成することができる。かかる有機コート層の厚さは、0.5μmから5μmの範囲が、欠点の被覆性と密着性や透明性のバランスから好適である。
【0237】
また、樹脂基板とバリア層の間に平滑化層を設けても良い。平滑化層は一般的なUV硬化樹脂等を用いることで作製できる。
【0238】
本発明においては、特に金属原子含有膜からなる防湿層であることも好ましい。
【0239】
金属原子含有膜としては、特開2008−258211号公報に開示されている形成方法に準拠した方法により形成された金属原子含有膜を用いることが好ましい。
【実施例】
【0240】
以下、本発明について実施例を挙げて説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0241】
実施例1
<光学フィルムF−1の作製>
a)原材料パルプのTEMPO処理工程
乾燥質量で5g相当分の亜硫酸漂白針葉樹パルプ、0.0625gのTEMPO(2,2,6,6−テトラメチルピペリジニル−N−オキシル)および0.625gの臭化ナトリウムを水375mlに分散させた後、13質量%次亜塩素酸ナトリウム水溶液を、1gのパルプに対して次亜塩素酸ナトリウムの量が2.5mmolとなるように次亜塩素酸を加えて反応を開始した。反応中は0.5Mの水酸化ナトリウム水溶液を滴下してpHを10.5に保った。pHに変化が見られなくなった時点で反応終了と見なし、反応物をろ過後、充分な水による水洗を経た後、水分を含んだ反応物繊維を500mlの水懸濁液とした。
【0242】
b)粉砕工程
この水懸濁液を寿工業(株)製ウルトラアペックスミル分散機UAM015にて粉砕処理を施した。粉砕時の条件は、ジルコニア製の直径0.4mmビーズを80%の充填率で使い、ミル運転周波数60Hz、スラリー供給量0.15l/minで90分間行った。得られた水分散液をエタノールで2回溶媒置換した後、アセトンで更に3回溶媒置換した。
【0243】
c)繊維状フィラーの表面修飾工程
この溶媒置換したものをろ過して得られた繊維状フィラーを、25mlのトルエン中に移し、そこに無水酢酸6g、続いて酢酸5gを添加して、約10分間攪拌した。その後60%過塩素酸0.2g分をゆっくり添加しながら60分間攪拌し、これをろ過した。
【0244】
d)分散工程
残った反応物繊維をメチレンクロライドで2回洗浄してから、メチレンクロライドの質量とエタノールの質量の比が94:6の混合溶液500ml中に添加した。これを再びUAM015分散機にて、ジルコニア製の直径0.03mmビーズを80%の充填率で使い、ミル運転周波数60Hz、スラリー供給量0.15l/minで60分間分散した。この際、分散液に対する質量比2%に相当するセルローストリアセテート(アセチル酢化度:60.3%)を分散剤として添加した上で分散した。
【0245】
e)ドープ調製工程
上記分散液500mlにセルローストリアセテート(平均酢化度:60.3%)を60g攪拌しながら徐々に添加し、ドープを調製した。
【0246】
尚、平均酢化度とは、セルロース単位質量当たりの結合酢酸量を意味し、ASTM−D817−91におけるアセチル化度の測定及び計算に従った。
【0247】
f)製膜工程
一晩静置して脱泡操作を施した上記ドープを30℃に調整し、同じく30℃のステンレスベルト支持体上に均一に流涎した。その後、剥離可能な範囲まで乾燥した後、ステンレス支持体上からウェブを剥離した。その後、剥離したフィルムを80℃で10分、90℃で更に10分、120℃で10分乾燥し、光学フィルムF−1を作製した。膜厚は100μmであった。巻き取り時の残留溶媒量は0.1質量%未満であった。
【0248】
実施例2
<光学フィルムF−2の作製>
原材料パルプのTEMPO処理工程から分散工程まで、全て光学フィルムF−1と同様の方法で作製し、得られた分散液を十分に乾燥させて、繊維状フィラーと分散剤との粉体分散物14gを得た。
【0249】
この粉体分散物に下記添加剤を、下記の混合比で混合し、東洋精機製作所製2軸押出機ラボプラストミルμにフィーダーで供給して230℃で混練し、ダイからストランド状に押出し、水冷、カッティングすることでペレット化した。
粉体分散物 100質量部
可塑剤P1(トリメチロールプロパントリベンゾエート) 8質量部
酸化防止剤AO1(IRGANOX−1010(チバ・ジャパン(株)製))
1質量部
酸化防止剤AO2(スミライザーGP(住友化学(株)製)) 0.5質量部
更に、このペレットとセルローストリアセテート(平均酢化度:60.3%、分子量約30万)の粉体を質量比70:30となるように混合し、同じくラボプラストミルμにフィーダーで供給して240℃で混練し、Tダイからフィルム状に押出し、冷却ロール上で固化させ、弾性タッチロールで押圧しながら流延して、光学フィルムF−2を作製した。膜厚は100μmであった。
【0250】
実施例3
<光学フィルムF−3の作製>
光学フィルムF−1の作製方法において、分散工程およびドープ調製工程のところで使われるセルローストリアセテート(平均酢化度:60.3%、分子量約30万)の代わりに、以下の熱可塑性樹脂の組み合わせにすること以外は、全て光学フィルムF−1と同様の方法により、光学フィルムF−3(膜厚100μm)を得た。
【0251】
〈熱可塑性樹脂組み合わせ〉
ダイヤナールBR85(三菱レイヨン(株)製) 70質量部
セルロースアセテートプロピオネート(アシル基総置換度2.75、アセチル基置換度2.2、プロピオニル基置換度0.55、Mw=200000) 30質量部
実施例4
<光学フィルムF−4の作製>
光学フィルムF−1の作製方法において、分散工程およびドープ調製工程のところで使われるセルローストリアセテート(平均酢化度:60.3%、分子量約30万)の代わりに、帝人化成社製パンライトK−1300(重量平均分子量65000)にすること以外は、全てF−1と同様の方法により、光学フィルムF−4(膜厚100μm)を得た。
【0252】
実施例5
<光学フィルムF−5の作製>
住友化学製アルミナ繊維Altexを繊維長2mm以下となるようカッティングし、4g相当の量を水500mlに添加し、高圧ホモジナイザーにて水懸濁液を得た。
【0253】
この水懸濁液を寿工業(株)製ウルトラアペックスミル分散機UAM015にて粉砕処理を施した。粉砕時の条件は、ジルコニア製の直径0.4mmビーズを80%の充填率で使い、ミル運転周波数60Hz、スラリー供給量0.15l/minで90分間行った。得られた水分散液をエタノールで2回溶媒置換した後、アセトンで更に3回溶媒置換した。更にメチレンクロライドで2回洗浄してから、メチレンクロライドの質量とエタノールの質量の比が94:6の混合溶液500ml中に添加した。これを再びUAM015分散機にて、ジルコニア製の直径0.03mmビーズを80%の充填率で使い、ミル運転周波数60Hz、スラリー供給量0.15l/minで60分間分散した。この際、分散液に対する質量比2%に相当するセルローストリアセテート(平均酢化度:60.3%、分子量約30万)を分散剤として添加した上で分散した。以下、光学フィルムF−1でのe)工程およびf)工程を同様に行い、光学フィルムF−5を得た。
【0254】
実施例6
<光学フィルムF−6の作製>
帝人テクノプロダクツ製アラミド繊維テクノーラ(チョップドファイバー)4gと水500mlを高圧ホモジナイザーを用いて混ぜ、水懸濁液を得た。この水懸濁液を寿工業(株)製ウルトラアペックスミル分散機UAM015にて粉砕処理を施した。粉砕時の条件は、ジルコニア製の直径0.3mmビーズを80%の充填率で使い、ミル運転周波数60Hz、スラリー供給量0.15l/minで90分間行った。得られた水分散液をエタノールで2回溶媒置換した後、アセトンで更に3回溶媒置換した。更にメチレンクロライドで2回洗浄してから、メチレンクロライドの質量とエタノールの質量の比が94:6の混合溶液500ml中に添加した。これを再びUAM015分散機にて、ジルコニア製の直径0.03mmビーズを80%の充填率で使い、ミル運転周波数60Hz、スラリー供給量0.15l/minで60分間分散した。この際、分散液に対する質量比2%に相当するセルローストリアセテート(平均酢化度:60.3%、分子量約30万)を分散剤として添加した上で分散した。以下、光学フィルムF−1でのe)工程およびf)工程を同様に行い、光学フィルムF−6を得た。
【0255】
実施例7
<光学フィルムF−7の作製>
実施例6において、帝人テクノプロダクツ製アラミド繊維テクノーラ(チョップドファイバー)の代わりに、旭化成ケミカルズ(株)製セオラスST100を用い、かつ、d)分散工程で用いるビーズ径を0.05mmにする以外は、全て実施例6と同様の方法にて、光学フィルムF−7を作製した。
【0256】
実施例8
<光学フィルムF−8の作製>
実施例1において、d)の分散工程で用いるジルコニアビーズの直径を、0.1mmとする以外は、全て実施例1と同様の方法により、光学フィルムF−8を得た。
【0257】
比較例1
<光学フィルムF−9の作製>
実施例1において、最初のウルトラアペックスミル分散機UAM015を用いた粉砕処理で得られた水分散液をろ過した後、100℃のオーブンに3時間投入して十分に乾燥し、これをまた水に添加して水分散液に戻すという操作を行った以外は、全て実施例1と同様の方法により、光学フィルムF−9を得た。
【0258】
比較例2
<光学フィルムF−10の作製>
実施例1において、最初のウルトラアペックスミル分散機UAM015を用いた粉砕処理で得られた水分散液を凍結乾燥し、これをまた水に添加して水分散液に戻すという操作を行った以外は、全て実施例1と同様の方法により、光学フィルムF−10を得た。
【0259】
比較例3
<光学フィルムF−11の作製>
実施例1において、b)の粉砕工程で用いるジルコニアビーズの直径を、0.03mmとし、かつd)の分散工程で用いるジルコニアビーズの直径を、0.4mmとする以外は、全て実施例1と同様の方法により、光学フィルムF−11を得た。
【0260】
比較例4
<光学フィルムF−12の作製>
実施例1において、b)の粉砕工程で用いるジルコニアビーズの直径を、0.3mmとし、かつd)の分散工程で用いるジルコニアビーズの直径を、0.1mmする以外は、全て実施例1と同様の方法により、光学フィルムF−12を得た。
【0261】
比較例5
<光学フィルムF−13の作製>
実施例1のa)〜c)まで同様の方法で行い、表面修飾処理をした繊維をメチレンクロライドで2回洗浄してから、メチレンクロライドの質量とエタノールの質量の比が94:6の混合溶液500ml中に添加した。これを分散することなく、直接セルローストリアセテート(アセチル置換度:60.3%、分子量約30万)を60g攪拌しながら徐々に添加し、ドープを調製して実施例1と同様の方法で製膜し、光学フィルムF−12を得た。
【0262】
比較例6
<光学フィルムF−14の作製>
実施例1のa)の工程の後、粉砕は行わず、エタノールで2回溶媒置換した後、アセトンで更に3回溶媒置換した。その後は、実施例1のc)〜f)の手順に従い、光学フィルムF−13を得た。但し、d)の分散工程で用いるビーズは0.4mmとした。
【0263】
比較例7
<光学フィルムF−15の作製>
特開2006−282923号公報の実施例1に則り、セルロース繊維とポリプロピレンとの複合材料である光学フィルムF−15を得た。厚みは、100μmとなるよう二軸押出機のダイのギャップを調整した。
【0264】
比較例8
<光学フィルムF−16の作製>
特開2008−127540号公報の実施例1に則り、セルロース繊維とアクリル−スチレン系の重合体並びにポリカーボネートとの複合材料である光学フィルムF−16を得た。但し、一軸押出機の代わりに二軸押出機を用い、フィルムの厚みは100μmとなるようダイのギャップを調整した。
【0265】
比較例9
<光学フィルムF−17の作製>
特開2009−52016号公報の実施例5に則り、セルロース繊維とセルロースジアセテートとの複合材料である光学フィルムF−17を得た。但し、アプリケーターのクリアランスを940μmに調整し、乾燥後のフィルム膜厚を100μmとした。
【0266】
《光学フィルムの評価》
光学フィルムF−1〜F−17の光学フィルムを下記の方法により評価した。
【0267】
<フィルム中の繊維状フィラーの短軸径測定>
日立ハイテクノロジーズ製nanoDUE’T NB5000を用い、各フィルムの断面をFIBにより作製し、続いてSEMの加速電圧を500Vに設定してその断面を観察した。観察画像より、以下の定義に則り、フィラーの平均短軸径およびその相対標準偏差を求めた。
【0268】
平均短軸径:個々の繊維状フィラー断面の輪郭に互いに並行な接線を引くことを想定したとき、2本接線間の距離が最も短いものを、その繊維状フィラーの短軸径と定め、これを500個測定し、その個数平均の値を平均短軸径とした。
【0269】
短軸径の相対標準偏差:上記500個の標準偏差を、平均短軸径で割って%表示にした値。
【0270】
<フィルムの全光線透過率およびヘイズ測定>
日本電色製ヘイズメータNDH2000で測定した。
【0271】
<フィルムの熱線膨張係数測定>
寸法安定性評価の為に、フィルムサンプル(19mm×5mm)を作製し、TMA(セイコーインスツルメンツ製、EXSTAR6000)を用いてフィルムの熱線膨張係数を測定した。測定速度は、3℃/minとした。測定は3サンプルについて行い、その平均値を用いた。測定は50℃から250℃の温度範囲で行い、線熱膨張係数は昇温時の100℃から150℃の範囲で計算した。
【0272】
<フィルムのガスバリア性能評価>
ガスバリア性能として、水蒸気バリア性をJISZ0208法に基づき、40℃90RH%の条件でカップ法により、フィルムを透過する水分を塩化カルシウムの質量変化から測定した。
【0273】
以上の評価結果を表1に示す。
【0274】
【表1】

【0275】
表1より本発明の実施例である光学フィルムF−1〜F−9は比較例に対して、透明性、寸法安定性、ガスバリア性に総合的に優れることが分かる。
【0276】
実施例9
<透明ガスバリアフィルムBF−1の作製>
実施例1で作製した光学フィルムF−1の片面に、下記組成の有機層形成用の塗布液を調製し、バーコート法により硬化膜厚2μmになるように塗布、乾燥させ、メタルハライドランプにより1000mJの紫外線を照射し有機層を形成した。
【0277】
<有機層形成用塗布液>
トリメチロールプロパンエトキシアクリレート TMPEOTA(ダイセルサイテック) 300質量部
有機変性シロキサン EFKA3288(チバ・ジャパン(株)製)
0.3質量部
メチルエチルケトン (和光純薬工業) 700質量部
イルガキュア184 (チバ・ジャパン(株)製) 15質量部
引き続き、前記有機層の外側(表面側)に、下記組成のガスバリア層形成用の塗布液を調製し、スピンコート法により乾燥後の膜厚が0.5μmとなるように塗布し、120℃のオーブンに30分投入して乾燥させて、ガスバリア層を形成した。
【0278】
<ガスバリア層形成用塗布液>
水溶性ポリマー:ポリビニルアルコール 8質量部
金属アルコキシド:テトラエトキシシラン 12質量部
希釈溶媒:水/メタノール=50/50 78質量部
加水分解触媒:0.1mol/l HCl溶液 2質量部
以上の工程を経ることにより、総膜厚102.5μmの透明ガスバリアフィルムBF−1を得た。
【0279】
比較例10
<透明ガスバリアフィルムBF−2の作製>
実施例9において、使用する光学フィルムをF−1の代わりに光学フィルムF−9とする以外は、全て実施例9と同様の方法により、透明ガスバリアフィルムBF−2を得た。
【0280】
比較例11
<透明ガスバリアフィルムBF−3の作製>
実施例9において、使用する光学フィルムを光学フィルムF−1の代わりに光学フィルムF−10とする以外は、全て実施例9と同様の方法により、透明ガスバリアフィルムBF−3を得た。
【0281】
比較例12
<透明ガスバリアフィルムBF−4の作製>
実施例9において、使用する光学フィルムを光学フィルムF−1の代わりに光学フィルムF−17とする以外は、全て実施例9と同様の方法により、透明ガスバリアフィルムBF−4を得た。
【0282】
《透明ガスバリアフィルムの評価》
透明ガスバリアフィルムBF−1〜BF−4を下記の方法により評価した。
【0283】
<フィルムの全光線透過率およびヘイズ測定>
日本電色製ヘイズメータNDH2000で測定した。
【0284】
<フィルムのガスバリア性能評価>
ガスバリア性能として、水蒸気バリア性をJIS K 7129Bに準拠して、モダンコントロール社製MOCON PERMATRAN−W 3/33 を用いて、40℃90RH%の雰囲気下で測定した。
【0285】
結果を表2に示す。
【0286】
【表2】

【0287】
表2より本発明の実施例であるガスバリアフィルムであるBF−1は比較例に対して、透明性、ガスバリア性に優れていることが明かである。
【符号の説明】
【0288】
1 モーター
2 分散室
3 流量計
4 循環タンク
5 循環ポンプ
6 配管
7 分散室固定台
10 ビーズ
11 スリット
12 循環出口側配管
13 分散室の壁
14 ローター
15 循環入り口側配管
16 モーター

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マトリクスを構成する熱可塑性樹脂中に繊維状フィラーが分散されている光学フィルムにおいて、該光学フィルムの全光線透過率は60%以上であり、該光学フィルム中に存在している繊維状フィラーの平均短軸径が10nm以上150nm未満であり、該繊維状フィラーの短軸径の相対標準偏差が30%以下であることを特徴とする光学フィルム。
【請求項2】
前記繊維状フィラーがセルロース繊維であることを特徴とする請求項1に記載の光学フィルム。
【請求項3】
前記熱可塑性樹脂が、少なくともセルロースエステル系樹脂、アクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂のいずれか1種の樹脂であることを特徴とする請求項1または2に記載の光学フィルム。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の光学フィルムの少なくとも一方の面に防湿層が積層されていることを特徴とする透明ガスバリアフィルム。
【請求項5】
光学フィルムの全光線透過率が60%以上であり、マトリクスを構成する熱可塑性樹脂中に、平均短軸径が10nm以上150nm未満であり、短軸径の相対標準偏差が30%以下である繊維状フィラーが分散されてなる光学フィルムの製造方法であって、該繊維状フィラーを作製する工程は、少なくとも水系での粉砕工程と有機溶剤系での分散工程とをこの順で行う工程を含み、かつ、該粉砕工程と該分散工程の間に乾燥工程を含まないことを特徴とする光学フィルムの製造方法。
【請求項6】
前記繊維状フィラーがセルロース繊維であり、前記熱可塑性樹脂が少なくともセルロースエステル系樹脂、アクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂のいずれか1種の樹脂であることを特徴とする請求項5に記載の光学フィルムの製造方法。
【請求項7】
前記粉砕工程および前記分散工程が、いずれもビーズミル分散機により行われ、かつ、該分散工程に対する該粉砕工程のビーズ1個当たりの衝撃エネルギーの比が、30以上であることを特徴とする請求項5または6に記載の光学フィルムの製造方法。
【請求項8】
前記粉砕工程および前記分散工程が、いずれもビーズミル分散機により行われ、かつ、該分散工程に対する該粉砕工程のビーズ1個当たりの衝撃エネルギーの比が、1000以上であることを特徴とする請求項5〜7のいずれか1項に記載の光学フィルムの製造方法。
【請求項9】
少なくとも前記粉砕工程及び前記分散工程のいずれか1つの工程で、分子量1000以上の分散剤を添加することを特徴とする請求項5〜8のいずれか1項に記載の光学フィルムの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−68709(P2011−68709A)
【公開日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−218610(P2009−218610)
【出願日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【出願人】(303000408)コニカミノルタオプト株式会社 (3,255)
【Fターム(参考)】