説明

光学反射素子

【課題】本発明は二軸駆動の光学反射素子において、小型で振動の周波数比を大きくすることができる光学反射素子を提供することを目的とする。
【解決手段】この目的を達成するため本発明は、ミラー部1と、第一の支持部2で連結された一対の音叉型振動子3と、第二の支持部5で連結された枠体6と、この枠体6と一端7が連結されたミアンダ型振動子8と、ミアンダ型振動子8の他端9が連結された支持体10とを備え、音叉型振動子3は、第一のアーム12と第二のアーム13とを有し、音叉型振動子3の回転軸28Bと、ミアンダ型振動子8の回転軸28Aとは直交した構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学スキャナ、プロジェクターなどに用いられる光学反射素子に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の圧電駆動式光学反射素子の一例を図6に示す。この光学反射素子は、ミラー部101と、このミラー部101の両端に接続された第一のトーション梁102を介し、ミラー部101を支持する枠体103と、この枠体103の両端に接続されると共に第一のトーション梁102と軸方向が直交する、第二のトーション梁104を介し、枠体103を支持する支持体105とを備えている。
【0003】
また第一のトーション梁102の両側には、その一端をミラー部101に連結され、他端を枠体103と連結された圧電振動体106A、106Bを備え、第二のトーション梁104の両側には、その一端を枠体103と連結され、他端を支持体105と連結された圧電振動板107A、107Bを備えている。
【0004】
そして圧電振動板106Aと106B、および圧電振動板107Aと107Bにそれぞれ正負逆の電圧を印加すると、第一、第二のトーション梁102、104が、これらの回転軸を中心に回動し、この振動エネルギーがミラー部101、枠体103へと伝搬し、ミラー部101が直交する二軸を中心に反復回転振動する(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
このような光学反射素子は、レーザー光源等からの光をミラー部で反射し、光をスクリーンの垂直、水平方向に走査することによって、スクリーン上に二次元の描画を投影することができる。
【特許文献1】特開2005−148459号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来の構成の光学反射素子では、投影する描画の分解能が低くなることがあった。それは、それぞれの二軸を中心とする反復回動振動の、周波数比が小さいからである。また、周波数比を大きくすると形状が大きくなるという課題を有していた。
【0007】
本発明は前記従来の課題を解決するもので、二軸駆動の光学反射素子において、小型で二軸の振動の周波数比を大きくすることができる光学反射素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記従来の課題を解決するために、本発明は、ミラー部と、このミラー部を介して対向するとともに、このミラー部とそれぞれ第一の支持部で連結された一対の音叉型振動子と、これらの音叉型振動子の振動中心とそれぞれ第二の支持部で連結された枠体と、この枠体と一端が連結されたミアンダ型振動子と、このミアンダ型振動子の他端が連結された支持体とを備え、前記音叉型振動子は、それぞれ前記第一の支持部の両側に第一のアームと第二のアームとを有し、前記音叉型振動子の振動の回転軸と、前記ミアンダ型振動子の振動の回転軸とは直交する構成とするものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明の光学反射素子は、二軸駆動の光学反射素子において、小型形状で、二軸の振動の周波数比を大きくすることができる。
【0010】
その理由は、一方の軸を中心とする反復回転振動は、音叉型振動子によって、高い周波数で駆動できるとともに、他方の軸を中心とする反復回転振動は、梁長の長いミアンダ梁で駆動することによって低い周波数で駆動できるからであり、二軸駆動の光学反射素子において、小型形状の振動子とし、二軸の振動の周波数比を大きくすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
(実施の形態1)
以下、本発明の実施の形態1における光学反射素子の構成について図面を参照しながら説明する。
【0012】
図1は本実施の形態1における光学反射素子の平面図であり、図2は図1のAA部における断面図であり、図3は音叉振動子の動作状態を示す模式図である。
【0013】
図1において、本実施の形態1における光学反射素子は、ミラー部1と、このミラー部1を介して対向するとともに、このミラー部1とそれぞれの第一の支持部2で連結された一対の音叉型振動子3と、これらの音叉型振動子3の振動中心4とそれぞれ第二の支持部5で連結された枠体6を有し、この枠体6と端部7が連結されたミアンダ型振動子8と、このミアンダ型振動子8の端部9が連結された枠形状の支持体10とを備えた構成としている。
【0014】
そして、前記ミアンダ型振動子8は、端部7を枠体6の角と接続され、それぞれ第一の支持部2と平行な振動板11を複数有し、繰り返し蛇行した梁形状としている。
【0015】
また、音叉型振動子3は、それぞれ第一の支持部2の両側に連結部22を介して、第一の支持部とほぼ平行な第一のアーム12と第二のアーム13とを有している。
【0016】
また、本実施の形態1では、第一の支持部2と第二の支持部5とは図1のY軸に平行な一直線上である回転軸28B上に設けており、さらに、より安定して駆動させるため、ミアンダ型振動子8の端部9は、このミアンダ型振動子8の回転軸28A上に設けた構成としている。
【0017】
また、音叉型振動子3はY軸に平行な回転軸28Bを有し、ミアンダ型振動子8はX軸に平行な回転軸28Aを有し、音叉型振動子3の振動の回転軸28Bとミアンダ型振動子8の振動の回転軸28Aとは、ミラー部1のほぼ中心で直交するように形成されている。
【0018】
次に、図2に示すように光学反射素子の基材14は、金属、ガラスまたはセラミック基板などの弾性、機械的強度および高いヤング率を有する材料で構成することが生産性の観点から好ましく、例えば、金属、水晶、ガラスまたは石英などの材料を用いることが機械的特性と入手性の観点から好ましい。さらに、シリコン、チタン、ステンレス、エリンバー、黄銅合金などの金属を用いれば、振動特性、加工性に優れた光学反射素子を実現できる。
【0019】
そして、本実施の形態1では、図1および図2に示すように、シリコンなどの基材(図2の14)で構成された第一のアーム12、第二のアーム13と、ミアンダ型振動子8の振動板11のそれぞれには、少なくとも一面に、たわみ振動を起こすための圧電アクチュエータ15、16、17を形成しており、この圧電アクチュエータ15、16、17を、下部電極層18、圧電体層19および上部電極層20A、20B、21の積層体からなる積層圧電薄膜型構造としている。
【0020】
これによって、音叉型振動子3、ミアンダ型振動子8をより薄型にすることができる。なお、本実施の形態1では、下部電極層18および圧電体層19は音叉型振動子3とミアンダ型振動子8とで共通に形成し、上部電極層20A、20B、21はそれぞれ電気的に独立するように形成した。
【0021】
また、音叉型振動子3の厚みを小さくすることによって、振幅が大きくなり、小型の光学反射素子を実現することができる。同様に、ミアンダ型振動子8の厚みをその幅寸法よりも小さくすることによって、振幅が大きくなる。
【0022】
また、これらの下部電極層18、圧電体層19および上部電極層20A、20B、21は音叉型振動子3、ミアンダ型振動子8を形成する基材14の上に順次スパッタリング技術などの薄膜プロセスにより形成することができる。従って、圧電アクチュエータ15、16、17を音叉型振動子3およびミアンダ型振動子8の表面に形成することが生産性の観点から好ましい。
【0023】
そして、圧電体層19に用いる圧電体材料としては、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)などの高い圧電定数を有する圧電体材料が好ましい。
【0024】
また、音叉型振動子3の共振周波数と、ミラー部1と第一の支持部の2で構成された捩れ振動子の共振周波数とが略同一周波数となるように振動設計することによって、音叉型振動子3を共振駆動させると、捩れ振動子も共振させることができ、効率良くミラー部1を反復回転振動させる光学反射素子を実現することができる。
【0025】
また、ミアンダ型振動子8にもその共振周波数の信号を印加し、共振駆動させることによって、効率よく枠体6を反復回転振動させることができる。また振動子8をミアンダ型とすることによって共振器長を大きくすることができ、低い周波数で駆動できる振動子とすることができる。
【0026】
また、音叉型振動子3をコの字状とすることによっても不要な振動モードを抑制できる。
【0027】
また本実施の形態では図1に示す、音叉型振動子3の第一のアーム12、第二のアーム13、ミアンダ型振動子8の振動板11に形成した圧電アクチュエータ15、16、17のそれぞれ上部電極層(図2の20A、20B、21)と、これらに共通の下部電極層(図2の18)の引き出し電極は個別に引き出し線(図示せず)を形成しながら接続端子23A〜23C、24へ接続している。これによって第一のアーム12と第二のアーム13に正負反対の電気信号を、ミアンダ型振動子8にその共振周波数の電極信号を、それぞれの圧電アクチュエータ15、16、17に印加することができる。
【0028】
なお、音叉型振動子3の第一のアーム12、第二のアーム13、ミアンダ型振動子8の振動板11にそれぞれモニター電極(図示せず)を配置し、これらも上部電極と同様に素子上に引き回しながら接続端子25A〜25Cへ接続した。これにより、音叉型振動子3の第一、第二のアーム12、13、ミアンダ型振動子8の振動板11のそれぞれの振幅を検出しながら入力信号を調整することができ、安定した自励駆動を実現できる。
【0029】
なお、上述の圧電アクチュエータ15、16、17の引き出し線や、モニター電極とその引き出し線は、図2においても記載を省略した。
【0030】
次に、このような構成からなる光学反射素子の動作原理について説明する。
【0031】
図2に示す下部電極層18と上部電極層20A、20Bとの間に交流の駆動電圧を印加すると、圧電体層19が面方向に伸び・縮みし、第一のアーム12と第二のアーム13が基材14に対して垂直方向に撓み振動する。
【0032】
このとき、第一のアーム12と第二のアーム13に形成したそれぞれの圧電アクチュエータ15、16に、正負反対の駆動信号を印加すれば、図3に示すように、第一のアーム12と第二のアーム13とを、位相が180度異なる方向(矢印26、27方向)に、つまり逆方向に撓み振動させることができる。ここで本実施の形態1では、第一、第二のアーム12、13は、その先端を自由端とする片持ち構造のため、大きく撓み振動させることができる。
【0033】
そして、この第一のアーム12と第二のアーム13の振動エネルギーは、音叉型振動子3の連結部22へと伝搬される。これによって、音叉型振動子3は、その振動中心4を通る直線を回転軸28Bとして、この回転軸28Bを中心に、所定の周波数にて反復回転振動(捩れ振動)をする。
【0034】
次に、この反復回転振動の振動エネルギーが、連結部22に接合された第一の支持部2に伝達され、第一の支持部2とミラー部1とで構成される捩れ振動子が、その回転軸28Bを中心に、矢印29方向に捩れ振動を起こすようになる。これによって、ミラー部1にその回転軸28Bを軸中心として反復回転振動を起こす。このとき、音叉型振動子3の反復回転振動の方向と、第一の支持部2およびミラー部1で構成される捩れ振動子の反復回転振動の方向は位相が180度異なる反対方向に振動することとなる。
【0035】
また、図1に示すミアンダ型振動子8は、図2の下部電極層18と上部電極層21間に電圧を印加すると、複数の振動板11がそれぞれ振動し、ミアンダ型振動子8全体としては、その回転軸(ミアンダ形状の中央部)を中心に反復回転振動を起こす。すなわち、隣どうしの振動板11は位相が180°異なる方向に撓み振動することによってより大きな振幅を有する反復回転振動を枠体6に加えることができる。
【0036】
なお、隣接する振動板11に、それぞれ共通の上部電極層21を設け、同位相の信号を印加したが、独立した上部電極層を設け、その隣接する振動板11に位相が180度異なる信号を印加すれば、その回転軸を中心にして変位が蓄積し、より大きな振幅を得ることができる。
【0037】
そしてこの振動エネルギーで枠体6の端部を垂直方向に振動させ、枠体6をミアンダ型振動子8の回転軸を中心に反復回転振動させることができる。
【0038】
そしてこのように枠体6が振動すると、この枠体6に支持されているミラー部1も、ミアンダ型振動子8の回転軸を中心に反復回転振動させることができる。
【0039】
そしてミラー部1に例えばレーザー光源またはLED光源などから発生させた光線を入力し、振動するミラー部1で反射させることによって、スクリーン上に光線を走査することができる。また、音叉型振動子3とミアンダ型振動子8の回転軸は直交するため、ミラー部1から出射させた光をスクリーン上の垂直、水平方向に走査することができる。
【0040】
次に、本実施の形態1における光学反射素子の製造方法について図2を用いて説明する。
【0041】
まず始めに、基材14となる、厚みが約0.3mmのシリコン基板を準備し、その上にスパッタリング法または蒸着法などの薄膜プロセスを用いて白金電極からなる下部電極層18を形成する。このとき、シリコン基板の厚みは変えても良い。厚みを変えることにより、固有周波数を調整できる。
【0042】
その後、この下部電極層18の上にチタン酸ジルコン酸鉛(PZT)などの圧電材料を用いてスパッタリング法などによって圧電体層19を形成する。このとき、圧電体層19と下部電極層18との間には、配向制御層としてPbとTiを含む酸化物誘電体を用いることが好ましく、PLMTからなる配向制御層を形成することがより好ましい。これによって、圧電体層19の結晶配向性がより高まり、圧電特性に優れた圧電アクチュエータ15、16、17を実現することができる。
【0043】
次に、この圧電体層19の上に上部金属層20A、20B、21となるチタン/金膜を形成している。
【0044】
このとき、金の膜の下層のチタン膜はPZT薄膜などの圧電体層19との密着力を高めるために形成しており、チタンの他にクロムなどの金属を用いることができる。これによって、圧電体層19との密着性に優れ、かつ、金電極とは強固な拡散層を形成していることから、密着強度の高い圧電アクチュエータ15、16、17を形成することができる。
【0045】
なお、本実施の形態では、白金の下部電極層18の厚みは0.2μm、PZTからなる圧電体層19は3.5μm、および上部電極層20A、20B、21のチタン部分は0.01μmとし、金電極部分は0.3μmで形成している。
【0046】
次に、下部電極層18、圧電体層19、上部電極層20A、20B、21とを、フォトリソ技術を用いてエッチングし、圧電アクチュエータ15、16、17をパターン形成する。
【0047】
このとき、上部電極層20A、20B、21のエッチング液としてはヨウ素/ヨウ化カリウム混合溶液と水酸化アンモニウム、過酸化水素混合溶液からなるエッチング液を用いて所定の電極パターンを形成した。
【0048】
また、下部電極層18、圧電体層19に用いるエッチング方法としては、ドライエッチング法とウエットエッチング法のいずれかの方法、あるいはこれらを組み合わせた方法などを用いることができる。
【0049】
一例として、ドライエッチング法であればフルオロカーボン系のエッチングガス、あるいはSF6ガスなどを用いることができる。
【0050】
その他、圧電体層19を、弗酸、硝酸、酢酸および過酸化水素の混合溶液を用いてウエットエッチングし、パターニングし、その後、さらに、ドライエッチングによって下部電極層18をエッチングしてパターニングする方法がある。
【0051】
次に、XeF2ガスを用いてシリコン基板を等方的にドライエッチングすることによって不必要なシリコン部分を除去してパターニングし、図2に示すような基材14を形成すれば、図1に示したような形状の光学反射素子を形成することができる。
【0052】
なお、シリコン基板をより高精度にエッチングする場合は、シリコンの異方性を利用したドライエッチングが好ましい。この場合は、エッチングを促進するSF6ガスとエッチングを抑制するC48ガスの混合ガスを用いるか、あるいはこれらのガスを交互に切り替えることにより、より直線的にエッチングできる。
【0053】
以上のような製造方法によって、小型で、高精度な光学反射素子を一括して効率よく作製することができる。
【0054】
本実施の形態1では、ミラー部1、第一の支持部2、音叉型振動子3、第二の支持部5、枠体6、ミアンダ型振動子8、支持体10の基材14を、同一基材14から一体形成とすることによって、安定した振動特性と、生産性に優れた光学反射素子を実現することができる。
【0055】
また本実施の形態1における光学反射素子は、シリコンウエハーなどの基材14の上に薄膜プロセス、フォトリソ技術などの半導体プロセスを応用することによって高精度に、一括して作製することができ、光学反射素子の小型化、高精度化および生産効率に優れた光学反射素子を実現することができる。
【0056】
なお、ミラー部1は基材14の表面を鏡面研磨することによっても形成できるが、光の反射特性に優れた金やアルミニウムの金属薄膜をミラー膜として形成することもできる。本実施の形態では、上部電極層20A、20B、21として金を用いていることから、この金薄膜をそのままミラー膜として用いることができ、生産効率も高まる。
【0057】
以上説明してきたように、本実施の形態1における二軸駆動の光学反射素子では、一方の軸を中心とする反復回転振動は、音叉型振動子3によって、高い周波数で駆動できるとともに、他方の軸を中心とする反復回転振動は、梁長の大きいミアンダ型振動子8のミアンダ梁で駆動し、低い周波数で駆動できることから、二軸の振動の周波数比を大きくすることができるとともに、小型化を実現することができる。ミアンダ振動子と音叉型振動子を組み合わせることによって、小型の光学反射素子を実現することができる。
【0058】
特に画像を投影する場合、画像の分解能を高めるには、スクリーンの水平方向への走査速度を、垂直方向への走査速度より大きくすることが望ましく、垂直方向へ光を走査させるための振動子をミアンダ型振動子8としたことにより、小型の素子内でも容易に梁長を長く設計することができ、二軸駆動の光学反射素子の周波数比を大きくすることができる。
【0059】
また、本実施の形態1では、ミアンダ型振動子8より内側に配置され、よりサイズも小さくなる振動子は、反復回転振動をする音叉型としたことにより、簡易なパターンとなって生産効率が高まるとともに、小型であってもミラー部1の振れ角度を効率よく大きくできる光学反射素子とすることができる。
【0060】
なお、一般に駆動周波数の高周波化に伴って、十分な振幅を得ることは困難となるが、本実施の形態1の音叉型振動子では高効率な駆動により、十分な振幅を得ることが可能となり、高精度な光学反射素子を実現することができる。
【0061】
また、振動源を、高Q値を有する音叉型とすることにより、小さなエネルギーで大きな振動エネルギーを得ることができ、素子の小型化にも寄与する。
【0062】
また、これらの音叉型振動子3、ミアンダ型振動子8の振動設計をすることによって、出力光の反射角度を大きく変化させることができ、レーザー光線などの入力光を所定の設計値となるように掃引することができる光学反射素子を実現することができる。
【0063】
さらに、ミラー部1をその両側から一対の音叉型振動子3で囲い、これらの音叉型振動子3の外周を枠体6で囲い、この枠体6をミアンダ型振動子8で支持し、このミアンダ型振動子8の外周を支持体10で囲う構成のため、素子の面積を有効に活用することができ、素子を小型化できる。
【0064】
また、ミラー部1の両側に、対称的に音叉型振動子3を配置しているため、ミラー部1を安定して左右対称に励振させることができ、ミラー部1の中心が不動点となって光を安定して走査することができる。
【0065】
また、ミラー部1は、その両端が第一の支持部2で支持されている両持ち構造のため、ミラー部1の不要な振動を抑制し、外乱振動による影響も低減できる。
【0066】
また、枠体6は、その一端がミアンダ型振動子8で支持されている片持ち構造のため、小型の素子構造を実現することができる。
【0067】
なお、図1では第一のアーム12と第二のアーム13の双方に圧電アクチュエータ15、16を形成したが、少なくともいずれか一方のみにアクチュエータ素子を形成してもよい。これは音叉型振動子3の特性を利用したものであり、どちらか一方のアームが振動すると、連結部22を介して他方のアームに運動エネルギーが伝播し、この他方のアームも励振させることができるからである。
【0068】
また、音叉型振動子3とミアンダ型振動子8の同一面に圧電アクチュエータ15、16、17を形成することによって生産性に優れた光学反射素子とすることができる。
【0069】
また、音叉型振動子3、ミアンダ型振動子8のいずれも、圧電アクチュエータ15、16、17は、アームおよびミアンダの片面にのみ形成したが、両面に形成してもよい。
【0070】
なお、音叉型振動子3は、ミアンダ型振動子8よりも面積が小さく、駆動力が弱いため、音叉型振動子3のみ、基材14の両面に圧電アクチュエータ15、16を形成してもよい。
【0071】
また、第一の支持部2、第二の支持部5のそれぞれの断面形状を円状とすれば、捩れ振動の振動モードが安定し、不要共振も抑制することができ、外乱振動に影響されにくい光学反射素子を実現することができる。
【0072】
以上のような構成を有する光学反射素子の応用としては、画像投影装置やレーザー露光機が挙げられる。画像投影装置は、例えばミラー部1を二軸方向に回動させながら、このミラー部1に光を照射し、ミラー部1で光を反射させ、スクリーン上に二次元の画像を投影することができるものである。
【0073】
(実施の形態2)
以下、本発明の実施の形態2における光学反射素子の構成について図面を参照しながら説明する。
【0074】
図4は本実施の形態2における光学反射素子の平面図である。
【0075】
図4において、本実施の形態2における光学反射素子と、実施の形態1における光学反射素子との主な違いは、枠体6と支持体10との間を第三の支持部30にて支持した構成としていることである。この第三の支持部30は枠体6が回転軸28Aを中心として反復回転振動を高精度に振動させるときに効果的である。すなわち回転軸28Aを中心とする所定の振動以外の不要な振動を抑制することができるものであり、回転軸28Aの軸上に配置することが好ましい。この第三の支持部30は回転反復振動に対して抵抗の小さな構造が好ましい。そのため、細い梁形状が好ましい。さらに、ジンバル機構を有する構成とすることがより好ましい。
【0076】
また、圧電アクチュエータ15、16の形状および配置場所が実施の形態1と異なっており、すなわち音叉型振動子3において、圧電アクチュエータ15、16を、第一のアーム12と第二のアーム13との連結部22まで延長し、L字形に構成している。なお、第一のアーム12と第二のアーム13には、それぞれ逆位相の信号を印加するため、これらに形成した圧電アクチュエータ15、16の駆動電極が互いに電気的に短絡しないよう、音叉型振動子3の振動中心4で断続させている。
【0077】
その他、実施の形態1と同様の構成及び効果については説明を省略する。
【0078】
(実施の形態3)
以下、本発明の実施の形態3における光学反射素子の構成について図面を参照しながら説明する。
【0079】
図5は本実施の形態3における光学反射素子の平面図である。本実施の形態3における光学反射素子と実施の形態1における光学反射素子との主な違いは、一対の音叉型振動子3は、対向する第一のアーム12間と、対向する第二のアーム13間がそれぞれ弾性体31で接続されている点である。この弾性体31は、光学反射素子の基材14よりも軟らかいものであり、本実施の形態3では伸縮性のある樹脂フィルムで形成され、第一のアーム12または第二のアーム13に貼り付けられている。
【0080】
この樹脂フィルムとしては、第一のアーム12、第二のアーム13の延伸方向と平行な方向に対してより伸縮性の高い素材が好ましい。
【0081】
なお、弾性体31としては樹脂を用いたが、その他例えばゴム材、弾性が大きく厚みの薄い金属などを用いても良い。
【0082】
このように、第一のアーム12間と第二のアーム13間を弾性体31で接続しておくことによって、対向する音叉型振動子3の共振周波数の僅かなずれを矯正することができる。また撓み振動の対称性が高まり、それぞれのアームの自由端の不要振動を抑制することができ、駆動力が高まる。その他、実施の形態1と同様の構成及び効果については説明を省略する。
【産業上の利用可能性】
【0083】
以上のように、本発明にかかる光学反射素子は、小型化できるという効果を有し、特に小型のプロジェクター、光学スキャナ、電子写真方式の複写機、レーザープリンタ等の用途に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0084】
【図1】本発明の実施の形態1における光学反射素子の平面図
【図2】同光学反射素子の断面図(図1のAA断面)
【図3】同音叉振動子の動作状態を示す模式図
【図4】本発明の実施の形態2における光学反射素子の平面図
【図5】本発明の実施の形態3における光学反射素子の平面図
【図6】従来の光学反射素子の平面図
【符号の説明】
【0085】
1 ミラー部
2 第一の支持部
3 音叉型振動子
4 振動中心
5 第二の支持部
6 枠体
7 端部
8 ミアンダ型振動子
9 端部
10 支持体
11 振動板
12 第一のアーム
13 第二のアーム
14 基材
15、16、17 圧電アクチュエータ
18 下部電極層
19 圧電体層
20A、20B 上部電極層
21 上部電極層
22 連結部
23A〜23C 接続端子
24 接続端子
25A〜25C 接続端子
26、27 矢印
28A、28B 回転軸
29 矢印
30 第三の支持部
31 弾性体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ミラー部と、
このミラー部を介して対向するとともに、このミラー部とそれぞれ第一の支持部で連結された一対の音叉型振動子と、
これらの音叉型振動子の振動中心とそれぞれ第二の支持部で連結された枠体と、
この枠体と一端が連結されたミアンダ型振動子と、
このミアンダ型振動子の他端が連結された支持体とを備え、
前記音叉型振動子は、それぞれ前記第一の支持部の両側に第一のアームと第二のアームとを有し、
前記音叉型振動子の振動の回転軸と、前記ミアンダ型振動子の振動の回転軸とは直交する関係にある光学反射素子。
【請求項2】
音叉型振動子は、
第一のアームと第二のアームを、位相が180度異なる方向に撓み振動させ、その回転軸を中心に捩り振動するように駆動させる請求項1に記載の光学反射素子。
【請求項3】
音叉型振動子の共振周波数と、ミラー部と第一の支持部とで構成された捩れ振動子の共振周波数とを同一周波数とした請求項1に記載の光学反射素子。
【請求項4】
二つの音叉振動子の形状を略同一形状とした請求項1に記載の光学反射素子。
【請求項5】
第一のアームと第二のアームの少なくともいずれか一方には、圧電アクチュエータを設けた請求項1に記載の光学反射素子。
【請求項6】
圧電アクチュエータは、第一のアームと第二のアームとの連結部分まで延長した請求項5に記載の光学反射素子。
【請求項7】
圧電アクチュエータを第一の電極層、圧電体層および第二の電極層からなる積層圧電薄膜とした請求項5に記載の光学反射素子。
【請求項8】
二つの音叉型振動子とミアンダ型振動子の同一面に圧電アクチュエータを設けた請求項5に記載の光学反射素子。
【請求項9】
第一の支持部、音叉型振動子、第二の支持部、ミアンダ振動子およびミラー部の基材を同一材料とした請求項1に記載の光学反射素子。
【請求項10】
基材を弾性部材とした請求項9に記載の光学反射素子。
【請求項11】
弾性部材を金属、ガラス、水晶または石英とした請求項10に記載の光学反射素子。
【請求項12】
金属をシリコン、チタン、ステンレス、エリンバーまたは黄銅合金とした請求項11に記載の光学反射素子。
【請求項13】
ミアンダ型振動子の回転軸と同一線上に枠体と支持体とを支持する第三の支持部を設けた請求項1に記載の光学反射素子。
【請求項14】
対向する第一のアーム間と、対向する第二のアーム間がそれぞれ弾性体で接続した請求項1に記載の光学反射素子。
【請求項15】
弾性体を金属、ゴム、またはエラストマーとした請求項14に記載の光学反射素子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−217093(P2009−217093A)
【公開日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−62163(P2008−62163)
【出願日】平成20年3月12日(2008.3.12)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】