説明

光学多層膜フィルタ及び光学多層膜フィルタの製造方法

【課題】 誘電体多層膜の内部応力による基板の反りの発生を防ぐと共に、誘電体多層膜の剥がれ、クラック等の発生、あるいは光学的歪を防止した高性能の光学特性を有する光学多層膜フィルタ及び光学多層膜フィルタの製造方法を提供する。
【解決手段】 光学多層膜フィルタ1は、ガラス基板2の一方の面の表面に、低弾性率硬化樹脂層3Aと高弾性率硬化樹脂層3Bとの二層からなる樹脂層3を塗布し、樹脂層3の形成面が凹になる形状にガラス基板2を保持した状態で、樹脂層3を熱硬化する。熱硬化した樹脂層3上に高屈折率材料層Hと低屈折率材料層Lとを交互に多層で成膜して誘電体多層膜4を形成し、ガラス基板2の上下面に平坦な透明な2枚のガラス板13,14を両側から挟んで加圧、保持しガラス基板を平坦にした状態で、樹脂層3に活性エネルギー線ERを照射して樹脂層3を本硬化する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学部品に用いられる反射防止膜やハーフミラー等の光学多層膜フィルタの製造方法及び光学多層膜フィルタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、ガラス基板上に高屈折率材料層と、低屈折率材料層を交互に多数層形成して所定のフィルタ特性を有する光学多層膜フィルタが知られている。こうした光学多層膜フィルタは、ガラス基板上に形成される多層膜の内部応力により、ガラス基板が反ることにより、フィルタ特性の歪み、あるいはガラス基板上に形成された膜の剥がれ等が発生する。
通常、光学多層膜フィルタは、スパッタ法や真空蒸着法等により成膜されるが、形成される薄膜層の内部応力は、膜が縮まろうとする方向の引張応力と、膜が広がろうとする圧縮応力とが発生する。多層膜が形成されたガラス基板は、膜応力(内部応力)が引張応力の場合には、成膜された面が凹形状となり、圧縮応力の場合には凸形状となる。
【0003】
こうした課題に対応するために、基板と光学多層膜の間に、光学多層膜の内部応力を緩和する材料と膜厚を選択して形成されたバッファ層を介在させる光学多層膜フィルタ(例えば、特許文献1参照。)、あるいは、基板上に屈折率が異なる少なくとも二種類の膜が交互に積層され、隣接する膜の内部応力が互いに相殺する方向に生じる膜材料を用いて形成された光学薄膜が提案されている(例えば、特許文献2参照。)。
【0004】
【特許文献1】特開平8−262224号公報
【特許文献2】特開2003−277911号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載されるバッファ層は、多層膜の内部応力を緩和する効果を得るためには、相当数の膜厚を形成する必要があり、光路長が増大して、伝搬光の散乱が発生し易い。また、特許文献2に記載の光学薄膜は、圧縮応力を内部応力とする薄膜と、引張応力を内部応力とする薄膜を交互に積層された多層膜により、多層膜全体の内部応力が緩和され、基板を歪ませることは少ないが、基板とこれに接する第1層の薄膜との間で膜剥がれが発生し易い懸念がある。
そこで本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、誘電体多層膜の内部応力による基板の反りの発生を防ぐと共に、誘電体多層膜の剥がれ、クラック等の発生、あるいは光学的歪の発生を防止した、高性能の光学特性を有する光学多層膜フィルタ及び光学多層膜フィルタの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明の光学多層膜フィルタは、基板上に屈折率が異なる少なくとも二種類の膜が交互に積層された誘電体多層膜を有する光学多層膜フィルタにおいて、前記基板と前記誘電体多層膜の間に、互いに異る弾性率を有する二層の樹脂層が形成されたことを特徴とする。
【0007】
これによれば、基板と、屈折率が異なる少なくとも二種類の膜が交互に積層された誘電体多層膜の間に、互いに異る弾性率を有する二層の樹脂層が形成されることにより、樹脂層上に形成される誘電体多層膜により発生する内部応力を、互いに異る弾性率を有する二層の樹脂層が徐々に吸収して緩和し、基板の反りの発生を防ぐことができる。反りの発生を防ぐことで、誘電体多層膜の剥がれ、クラック等の発生、あるいは光学的歪の発生を防止した高性能の光学特性を有する光学多層膜フィルタが得られる。
【0008】
本発明の光学多層膜フィルタは、前記樹脂層は、前記基板側に形成された低弾性率硬化樹脂からなる樹脂層と、前記誘電体多層膜側に形成された高弾性率硬化樹脂からなる樹脂層であることを特徴とする。
これによれば、基板と誘電体多層膜の間に形成された樹脂層が、基板側に形成された低弾性率硬化樹脂からなる樹脂層と、誘電体多層膜側に形成された高弾性率硬化樹脂からなる樹脂層であることにより、高弾性率硬化樹脂層上に形成される誘電体多層膜により発生する内部応力が、誘電体多層膜側に形成された高弾性率硬化樹脂からなる高弾性率の樹脂層により大部分が吸収され、さらに、基板側に形成された低弾性率硬化樹脂からなる樹脂層によって吸収されて、緩和され、基板の反りの発生を防ぐことができる。反りの発生を防ぐことで、誘電体多層膜の剥がれ、クラック等の発生、あるいは光学的歪の発生を防止した高性能の光学特性を有する光学多層膜フィルタが得られる。
【0009】
本発明の光学多層膜フィルタは、前記低弾性率硬化樹脂が光硬化性樹脂であり、前記高弾性率硬化樹脂が熱硬化性樹脂であることを特徴とする。
これによれば、樹脂層を構成する互いに異る弾性率を有する二層の樹脂層が、活性エネルギー線の照射により硬化する光硬化性樹脂と、加熱することにより硬化する熱硬化性樹脂とで形成されることにより、樹脂層上に形成される誘電体多層膜により発生する膜応力(内部応力)が、二層からなる樹脂層を、加熱することによる硬化と、活性エネルギー線の照射による硬化の2段階の硬化により、段階的に吸収されて、基板の反りの発生を防ぐことができる。これにより、誘電体多層膜の剥がれ、クラック等の発生、あるいは光学的歪の発生を防止した高性能の光学特性を有する光学多層膜フィルタが得られる。
【0010】
本発明の光学多層膜フィルタの製造方法は、基板上に屈折率が異なる少なくとも二種類の膜が交互に積層された誘電体多層膜を有する光学多層膜フィルタの製造方法であって、前記基板の一方の面の表面に、互いに異なった弾性率を有する二層の樹脂層を塗布する塗布工程と、前記樹脂層を熱硬化する熱硬化工程と、前記樹脂層上に前記誘電体多層膜を形成する多層膜形成工程と、前記樹脂層に活性エネルギー線を照射して硬化する光硬化工程と、を順に備えたことを特徴とする。
【0011】
この製造方法によれば、基板の一方の面の表面に形成された樹脂層が、熱硬化する熱硬化工程において、互いに異なった弾性率を有する二層のうちの一層の樹脂層が熱硬化され、熱硬化された樹脂層上に屈折率が異なる少なくとも二種類の膜が交互に積層された誘電体多層膜が形成されることにより、形成された誘電体多層膜に発生する内部応力を、熱硬化された樹脂層(仮硬化された樹脂層)が吸収すると共に、さらに二層のうちのもう一層の未硬化の樹脂層が吸収して、基板の反りの発生を防ぐことができる。そして樹脂層を光硬化する光硬化工程を経ることで、未硬化の樹脂層が硬化(樹脂層が本硬化)されると共に、誘電体多層膜が形成された基板が略平坦化した状態に固持される。反りの発生を防ぐことで、誘電体多層膜の剥がれ、クラック等の発生、あるいは光学的歪の発生を防止した高性能の光学特性を有する光学多層膜フィルタが得られる。
また、樹脂層を塗布する塗布工程および樹脂層を熱硬化する熱硬化工程を、基板の製作工程に付加する等により、長い成膜時間を必要とする多層膜形成工程を分離することが可能であり、成膜不良等の発生による製造コストが嵩むことなく、効率的な製造を行うことができる。
【0012】
また、本発明の光学多層膜フィルタの製造方法は、前記光硬化工程の前に、前記基板の上下面から加圧、保持し前記基板を平坦にする平坦化工程を、さらに備えたことを特徴とする。
この製造方法によれば、塗布工程および熱硬化工程により形成された、互いに異なった弾性率を有する二層の樹脂層が、基板の上下面から加圧、保持し基板を平坦にする平坦化工程を備え、光硬化工程を経ることで、熱硬化工程において仮硬化された樹脂層が本硬化され、基板が平坦化した状態に固持することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の光学多層膜フィルタの実施形態を説明する。
本実施形態の光学多層膜フィルタは、例えば、可視波長域の光を透過し、所定波長以下の紫外波長域と、所定波長以上の赤外波長域での光の吸収が少ない反射特性を有する、いわゆる、UV−IRカットフィルタ(Ultraviolet-Infrared cut filter)に適用した場合の一例である。
【0014】
図1は、本発明の光学多層膜フィルタに形成される膜構成を説明するための断面模式図である。
図1において、光学多層膜フィルタ1は、光を透過する基板としてのガラス基板2と、ガラス基板2の一方の面の表面に、ガラス基板2から順に、低弾性率硬化樹脂層3Aと高弾性率硬化樹脂層3Bの二層からなる樹脂層3、屈折率が異なる高屈折率材料と低屈折率材料の二種類の膜が交互に積層された誘電体多層膜4が形成されている。
【0015】
ガラス基板2は、白板ガラス(透過率、n=1.52)からなり、例えば平面が、略50mm程度の矩形形状で、略0.5mm程度の板厚である。
樹脂層3は、樹脂層3の上層に形成される誘電体多層膜4の内部応力(膜応力)を緩和することにより、ガラス基板2に反り等の発生するのを防ぐための層であり、互いに異なる弾性率(ヤング率)を有する低弾性率硬化樹脂層3Aと高弾性率硬化樹脂層3Bとの二層の樹脂層で構成される。
【0016】
低弾性率硬化樹脂層3Aに用いる低弾性率硬化樹脂としては、20MPa以下の弾性率を有し、紫外線光等の活性エネルギー線の照射により、高分子間の架橋反応が生ずる光重合官能基を有する有機樹脂、すなわち活性エネルギー線の照射により硬化する光硬化性樹脂であれば限定されない。
光硬化性樹脂としては、エポキシアクリレート、ウレタンアクリレート、ポリエステルアクリレート、アクリル樹脂アクリレート、ポリエーテルアクリレート等が挙げられる。
【0017】
また、これらの樹脂骨格鎖にシリカ系成分と反応するアルコキシシラン基を有する化合物を用いてハイブリッド化することができる。さらに、シリカ系成分となるアルコキシシランの骨格に、ビニル基を有する置換基を持つものを使用すれば、アルコキシシラン基を有しない有機骨格鎖とも光重合させることができる。
【0018】
また、低弾性率硬化樹脂には、紫外線吸収剤、および可視光領域に吸収特性を有する光重合開始剤を含むことができる。
紫外線吸収剤としては、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、サリチル酸フェニル系、トリアジン系、ニッケル塩系等が挙げられ、可視光領域に吸収特性を有する光重合開始剤としては、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチル−ペンチルフォスフィンオキサイド(BAPO1)、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド(BAPO2)等を例示することができる。
【0019】
一方、高弾性率硬化樹脂層3Bに用いる高弾性率硬化樹脂としては、500MPa以上の弾性率を有し、耐熱性に優れた熱硬化性樹脂であれば限定はされない。例えば、エポキシ樹脂、アクリル系樹脂、セルロース系樹脂等を用いることができる。このうち、特に、エポキシ樹脂を好ましく用いることができる。
エポキシ樹脂は、耐熱性に優れ、しかも高温環境における弾性率の変化が少ないので、形成される樹脂層にクラックが入りにくい。また、ガラス基板2との接着性に優れるため、ガラス基板2あるいは、低弾性率硬化樹脂層3Aとの界面において、膜膨れ、膜剥離、あるいはクラック等の発生が極めて少ない。
【0020】
代表的なエポキシ樹脂としては、ビスフェノール型エポキシ樹脂、ビスフェノールAまたはF型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、グリシジルアミン系エポキシ樹脂、脂環型エポキシ樹脂等が挙げられる。
エポキシ樹脂を用いる場合の触媒系硬化剤としては、カルボン酸無水物、第一級〜第三級のアミン化合物、第四級アンモニユウム塩、ジシアンジアミド、酸フッ化ホウ素−アミンコンプレックス、有機ヒドラジド、イミダゾール系化合物、フェノールやクレゾールあるいはキシリノールを基本骨格とする化合物や誘導体等が挙げられる。
【0021】
また、この他の高弾性率硬化樹脂として、高周波電磁波により内部発熱して硬化する高周波過熱型樹脂を用いることができる。高周波過熱型樹脂を用いる場合は、高周波過熱型樹脂の接着力が、他のエポキシ系樹脂剤やアクリル系樹脂剤等の構造用樹脂剤と比べて接着力が弱いため、ガラス基板2に対して、後述する樹脂層3の接着力を補強する接着助剤的な表面処理が必要不可欠である。
【0022】
次に、光学多層膜フィルタ1の製造方法を図2に基づいて説明する。
図2は、光学多層膜フィルタの製造工程の態様を示すガラス基板の模式断面図であり、(a)は塗布工程後のガラス基板を示し、(b)は熱硬化工程におけるガラス基板を示し、(c)は多層膜形成工程後のガラス基板を示し、(d)は光硬化工程におけるガラス基板を示す。なお、図2に示す模式断面図は、説明の便宜のために、各構成要素の寸法や比率は実際のものとは異なる。
【0023】
光学多層膜フィルタ1は、誘電体多層膜4の形成の前に、予め、ガラス基板2の一方の面の表面に、樹脂層3が形成される。樹脂層3は、低弾性率硬化樹脂からなる低弾性率硬化樹脂層3A、および高弾性率硬化樹脂からなる高弾性率硬化樹脂層3Bの二層の樹脂層が、塗布工程と熱硬化工程を経て形成される。形成された樹脂層3(高弾性率硬化樹脂層3B)上に、多層膜形成工程により誘電体多層膜4が形成され、光硬化工程を経て光学多層膜フィルタ1が完成する。
【0024】
樹脂層3の形成に際して、低弾性率硬化樹脂として、光重合官能基を有する、例えばエポキシアクリレート樹脂を水に分散した樹脂液を準備する。また、高弾性率硬化樹脂として、熱硬化性樹脂の例えば、エポキシ樹脂を水に分散した樹脂液を準備する。
低弾性率硬化樹脂を分散する場合の分散媒としては、低弾性率硬化樹脂が不溶であれば、どんな分散媒であっても良い。また、高弾性率硬化樹脂には、高弾性率硬化樹脂(熱硬化樹脂)と低弾性率硬化樹脂(光硬化樹脂)とが相溶解しない溶媒、または分散媒を用いることができる。
【0025】
塗布工程は、図2(a)に示すように、ガラス基板2の一方の面の表面に低弾性率硬化樹脂層3Aと高弾性率硬化樹脂層3Bとの二層の樹脂層からなる樹脂層が塗布して形成される。
塗布工程は、先ず、ガラス基板2の一方の面の表面に、準備した低弾性率硬化樹脂の樹脂液が、例えばインクジェット装置の多数のインクジェットヘッドから吐出液が選択的に吐出されるインクジェット印刷法を用いて塗布される。低弾性率硬化樹脂の樹脂液は、ガラス基板2の表面の周縁部に沿った領域を除いた領域、すなわち、少なくとも光学多層膜フィルタとして用いる所定の光学有効領域に、0.3μm程度の厚みに塗布される。低弾性率硬化樹脂が塗布されたガラス基板2は、略常温に設定された真空装置の装置内に、15分程度投入されて、分散媒としての水が蒸発されて、低弾性率硬化樹脂層3Aが形成される。
【0026】
そして、低弾性率硬化樹脂層3A上、および低弾性率硬化樹脂層3Aが未形成のガラス基板2の表面の周縁部に沿った領域に、準備した高弾性率硬化樹脂が、インクジェット印刷法を用いて、塗布表面が平坦状態に塗布される。塗布される高弾性率硬化樹脂の厚みは、低弾性率硬化樹脂層3A上において0.5〜2μm程度の厚みである。
高弾性率硬化樹脂が塗布されて、低弾性率硬化樹脂層3Aと高弾性率硬化樹脂層3Bの二層からなる樹脂層3が形成される。
【0027】
なお、低弾性率硬化樹脂および高弾性率硬化樹脂の塗布方法は、インクジェット印刷法の他に、スピンコート法、ロールコート法を用いることができるが、塗布される塗布層の厚みや塗布範囲等を容易に制御し、高精度で高精細な塗布を行うためには、インクジェット印刷法を用いるのが好ましい。
そして、樹脂層3が塗布されたガラス基板2は、熱硬化工程に移行する。
【0028】
熱硬化工程は、ガラス基板2上に塗布された樹脂層3を仮硬化する熱硬化が行われる。
樹脂層3の熱硬化に際して、樹脂層3が形成されたガラス基板2を、後に樹脂層3上に形成される誘電体多層膜4の膜応力(内部応力)により、ガラス基板2が反る方向と逆方向に、予め反らした状態に保持して熱硬化が行われる。
【0029】
後述する誘電体多層膜4は、高屈折率材料層Hと、低屈折率材料層Lとが、交互に成膜されて多層膜が形成されるが、低屈折率材料のSiO2膜の強い圧縮応力と、高屈折率材料のTiO2膜の弱い引張応力により、ガラス基板2に多層膜が成膜された面が凸になる形状の反りが発生する。したがって、図2(b)に示すように、ガラス基板2上に形成された樹脂層3の塗布面が凹になる形状に保持した状態で熱硬化が行われる。
【0030】
樹脂層3が形成されたガラス基板2の固定は、例えば、ガラス基板2の下面(塗布面に対する他方の面)の両端部を案内治具10で案内した状態で、ガラス基板2の中心部を耐熱性ゴム等からなる吸盤11で吸着し、吸引装置(図示せず)等を用いて、吸盤11をガラス基板2の鉛直方向に吸引し、ガラス基板2の樹脂層3の塗布面が凹になる形状に反らせる。ガラス基板2の反り量αは、ガラス基板2の材質や厚さ、後に樹脂層3上に形成される誘電体多層膜4の構成によって異なり、10〜100μm程度の値に適宜設定される。本実施形態の場合の反り量αは、30μm程度の値に設定される。
【0031】
そして、ガラス基板2上の樹脂層3の塗布面が凹になる形状に反らした状態を維持して、例えば、80℃程度の炉内温度に設定したオーブン12(二点鎖線で示す)内に投入して、60分間程度の加熱が行われる。そして、加熱されたガラス基板2は、オーブン12内から取り出されて、常温環境下で自然冷却される。樹脂層3が仮硬化されたガラス基板2は、平坦化する方向のわずかな戻りが発生するが、樹脂層3が形成された面が凹の形状に反った状態で維持される。
【0032】
なお、熱硬化工程において樹脂層3は、未硬化の低弾性率硬化樹脂層3Aが、熱硬化された高弾性率硬化樹脂層3Bと、ガラス基板2の表面とに取り囲まれるようにして把持される。
そして、樹脂層3の仮硬化(高弾性率硬化樹脂層3Bの熱硬化)されたガラス基板2は、多層膜形成工程に移行する。
【0033】
多層膜形成工程は、図2(c)に示すように、ガラス基板2上に形成された樹脂層3の表面に誘電体多層膜4が形成される。
誘電体多層膜4の形成は、樹脂層3が形成されたガラス基板2を成膜用のサセプタに取り付けて、真空蒸着チャンバー内に投入し、真空蒸着法を用いてTiO2の高屈折率材料層HとSiO2の低屈折率材料層Lとが交互に多層で成膜される。
【0034】
誘電体多層膜4は、高屈折率材料層Hが、TiO2(屈折率:2.40)、低屈折率材料層LがSiO2(屈折率:1.46)の成膜材料で成膜される。
誘電体多層膜4は、樹脂層3上に、第1層として高屈折率材料のTiO2膜H1が成膜され、成膜された高屈折率材料のTiO2膜H1の上面に、低屈折率材料のSiO2膜L1が積層される。以下、低屈折率材料のSiO2膜L1の上面に高屈折率材料のTiO2膜と低屈折率材料のSiO2膜が、順次、交互に積層され、最上膜層は、低屈折率材料のSiO2膜L30が積層されて、高屈折率材料層と低屈折率材料層が各30層、計60層の誘電体の層が形成される。
【0035】
この誘電体多層膜4の膜構成の詳細を説明する。
以下に説明する膜厚構成の表記は、高屈折率材料層Hの膜厚を光学膜厚nd=1/4λの値を1Hとして表記し、低屈折率材料層Lを同様に1Lと表記する。また、(xH、yL)Sで表すSの表記は、スタック数と呼ばれる繰り返しの回数で、括弧内の構成を周期的に繰り返すことを表している。なお、設計波長λは550nmである。
【0036】
誘電体多層膜4の膜厚構成は、樹脂層3の上面に、第1層の高屈折率材料のTiO2膜(高屈折率材料層)H1が0.60H、第2層の低屈折率材料のSiO2膜(低屈折率材料層)L1が0.20L、以下、順次1.05H、0.37L、(0.68H、0.53L)4、0.69H、0.42L、0.59H、1.92L、(1.38H、1.38L)6、1.48H、1.52L、1.65H、1.71L、1.54H、1.59L、1.42H、1.58L、1.51H、1.72L、1.84H、1.80L、1.67H、1.77L、(1.87H、1.87L)7、1.89H、1.90L、1.90Hと、最上層に0.96Lの低屈折率材料のSiO2膜L30が形成され、計60層が形成される。
【0037】
誘電体多層膜4が形成されたガラス基板2は、真空蒸着チャンバー内から取り出されて自然冷却される。
本来、高屈折率材料層Hと低屈折率材料層Lとが、交互に成膜されて多層が形成されると、低屈折率材料のSiO2膜の強い圧縮応力と、高屈折率材料のTiO2膜の弱い引張応力により、成膜された多層面が凸になる形状に反りが発生するが、自然冷却されたガラス基板2は、反りがほとんど見地できない程度に平坦化した状態のガラス基板が得られる。
【0038】
これは、熱硬化された樹脂層3の高弾性率硬化樹脂層3B上に誘電体多層膜4が形成されることにより、ガラス基板2の表面に形成された低弾性率硬化樹脂層3Aが未硬化状態であることにより、低弾性率硬化樹脂層3Aが誘電体多層膜4の膜応力(内部応力)を吸収すると共に、誘電体多層膜4の形成前に、ガラス基板2の樹脂層3が形成された面が凹の形状に反った状態に維持されていることにより、誘電体多層膜4の形成により、本来、凸になる形状に発生する反りが相殺され、略平坦化した状態のガラス基板を得ることができる。
そして、誘電体多層膜4が形成されたガラス基板2は、光硬化工程に移行する。
【0039】
光硬化工程は、図2(d)に示すように、先ず、光硬化工程の前に、平坦な透明な2枚のガラス板13,14を、誘電体多層膜4が形成されたガラス基板2の上下面に挟んで配置し、樹脂層3の厚みが均一になる程度に、ガラス基板2の上下面から加圧、保持する(平坦化工程)。
【0040】
そして、誘電体多層膜4が形成されたガラス基板2を加圧、保持した状態で、ガラス板13の下面方向とガラス基板2の上面方向、もしくはどちらか一方の面方向から樹脂層3の低弾性率硬化樹脂層3Aに向けて、活性エネルギー線照射装置(図示せず)から、活性エネルギー線ERが照射される。活性エネルギー線ER源としては、波長範囲が400〜700nmの可視光線を含む活性エネルギー線ERを出射する、メタルハライドランプ、水銀ランプ等の高輝度放電ランプ(HIDランプ)等を用いることができる。
【0041】
活性エネルギー線ERの照射は、高輝度放電ランプの光源から出射される光を、20mW/cm2程度の照射強度に調節して、5秒間程度の照射を行う。そして、活性エネルギー線ERが照射されたガラス基板2の位置ズレ、角度ズレ、気泡状態等の不具合がないことを確認した後、さらに5mW/cm2程度の照射強度に調整した活性エネルギー線ERを、10分間程度照射して、樹脂層3の本硬化(低弾性率硬化樹脂層3Aの硬化)が行われる。
【0042】
活性エネルギー線ERの照射により、熱硬化工程において仮硬化された樹脂層3が、光硬化樹脂からなる低弾性率硬化樹脂層3Aが硬化され、樹脂層3の本硬化が行われると共に、誘電体多層膜4が形成されたガラス基板2が平坦化した状態に固持され、光学多層膜フィルタ1が完成する。
【0043】
以上に説明した光学多層膜フィルタ1の製造方法において、樹脂層3の形成前に、ガラス基板2に対して樹脂層3の接着力を補強する接着助剤的な表面処理を行うのが好ましい。
表面処理は、シラン系カップリング剤あるいはチタン系カップリング剤を、希釈剤としてヘキサン等の有機溶剤に溶解したプライマーと呼ばれる表面処理剤を、ガラス基板2の表面に塗布した後、乾燥させる。これにより、ガラス基板2に対して、優れた接着性を有する樹脂層3を形成することができる。
【0044】
シラン系カップリング剤としては、トリメトキシシラン、トリエトキシシラン、トリプロポキシシラン、トリイソプロポキシシラン、トリブトキシシラン、トリオクチロキシシラン、メチルジメトキシシラン、エチルジメトキシシラン、メチルジエトキシシラン、エチルジエトキシシラン、メチルジオクチロキシシラン、ジメチルメトキシシラン、ジメチルオクチロキシシラン等が挙げられる。
【0045】
チタン系カップリング剤としては、テトラメトキシチタネート、テトラエトキシチタネート、テトラプロポキシチタネート、テトラブトキシチタネート、テトラ(2,2−ジアリルオキシメチル−1−ブチル)ビス(ジトリデシル)ホスファイトチタネート、テトラオクチルビス(ジトリデシルホスファイト)チタネート、イソプロピルトリイソステアロイルチタネート、イソプロピルトリデシルベンゼンスルホニルチタネート、イソプロピルトリオクタイノルチタネート、ジクミルフェニルオキシアセテートチタネート等が挙げられる。
【0046】
これらのカップリング剤を希釈する溶媒として、ヘキサンの他に、メチルアルコール、エチルアルコール、プロパノール、ブタノール、イソプロピルアルコール(IPA)、アセトン、トルエン、キシレン、メチルエチルケトン(MEK)、デカリン、テトラリン等が挙げられる。
【0047】
完成した光学多層膜フィルタ1は、ガラス基板2と誘電体多層膜4の間、すなわち、ガラス基板2の表面に形成された、低弾性率硬化樹脂層3Aと高弾性率硬化樹脂層3Bとの二層からなる樹脂層3が、熱硬化する熱硬化工程において熱硬化性樹脂からなる高弾性率硬化樹脂層3Bが硬化(樹脂層3の仮硬化)され、熱硬化された高弾性率硬化樹脂層3B上に、高屈折率材料層Hと低屈折率材料層Lとが交互に多層が成膜されて誘電体多層膜4が形成されると、誘電体多層膜4の形成により発生する膜応力(内部応力)を、未硬化の低弾性率硬化樹脂層3Aが吸収して、ガラス基板2の反りの発生を防ぐことができる。そして、光硬化する光硬化工程を経ることで、樹脂層3の未硬化の低弾性率硬化樹脂層3Aが硬化(樹脂層3の本硬化)されると共に、誘電体多層膜4が形成されたガラス基板2が平坦化した状態に固持される。
【0048】
ガラス基板2の反りの発生を防ぐことで、誘電体多層膜4の剥がれ、クラック等の発生、あるいは光学的歪の発生を防止した高性能の光学特性を有する光学多層膜フィルタ1が得られる。
また、反りの発生を防ぐことにより、少なくても1枚の光学多層膜フィルタ1を含む2枚以上のガラス基板を張り合わせて使用する光学物品の場合等において、張り合わせ精度が向上し、高性能の光学特性を得ることができる。特に、ガラス基板2の間に樹脂等の変形し易い基板を挟んで使用する光学物品の場合に、反りの発生による変形等をより抑えることが可能となる。
【0049】
また、光学多層膜フィルタ1は、例えば、ガラス基板2が透明な水晶で構成されることにより、UV−IRカットフィルタ機能の光学多層膜フィルタを一体的に構成した光学ローパスフィルタを容易に得ることができる。
【0050】
図3は、光学ローパスフィルタの構造及び光学軸と光線の進行方向について説明する模式図である。なお、図3は、光学ローパスフィルタを構成する各層を分解して斜視図により示している。
光学ローパスフィルタ100は、複屈折性を有する2つの水晶板20,30と、水晶からなる1/4波長板40を備え、2つの水晶板20,30の間に、1/4波長板40を挿入した3層構造の45度分離タイプの一例である。これら3層構造を構成する水晶板20と、1/4波長板40と、水晶板30は、それぞれが光学接着剤等によって気泡が発生しないように一体に貼り合わされている。
【0051】
水晶板20は、複屈折性を有する透明な水晶からなり、前述の説明のように、水晶板20の光入射側の表面に、表面から順に、低弾性率硬化樹脂層3Aと高弾性率硬化樹脂層3Bとの二層からなる樹脂層3、誘電体多層膜4が形成された、UV−IRカットフィルタ機能を一体的に構成した光学多層膜フィルタ機能を有し、多層膜フィルタ面が光入射側に配置される(図示せず、図1および図2(c)参照。)。
【0052】
また、水晶板20は、光入射面と直交し、かつ紙面と平行な面(x−z平面)において、z軸と約45度の方位角をなす方向(矢印A1により示す方向)に光学軸(光学的主軸)を有している。この水晶板20に入射した光線L10は、水晶板20の有する複屈折性によって、互いに直交する2つの光線L11,L12に分離される。これらの光線L11,L12は、それぞれ偏光状態が直線偏光に変換されて1/4波長板40に出射する。
【0053】
1/4波長板40は、光入射面(x−y平面)において、x軸と略45度の方位角をなす方向(矢印A2により示す方向)に光学軸を有している。これにより、1/4波長板40に入射した光線L11,L12は、それぞれ直線偏光光から円偏光光に偏光状態が変換されて、2つの光線L13,L14となって水晶板30に出射する。
【0054】
光出射側に配置される水晶板30は、光入射面と直交し、かつ紙面と直交する面(y−z平面)において、y軸と略45度の方位角をなす方向(矢印A3により示す方向)に光学軸を有している。この水晶板30に入射した円偏光光線L13は、水晶板30の有する複屈折性によって、入射面に対して水平方向と垂直方向の互いに直交する2つの光線L15,L16に分離されて出射する。同様に、水晶板30に入射した光線L14は、入射面に対して水平方向と垂直方向の互いに直交する2つの光線L17,L18に分離されて出射する。これらの光線L15,L16,L17,L18は、それぞれ偏光状態が直線偏光に変換されて出射される。
【0055】
このように構成された、光学ローパスフィルタ100は、UV−IRカットフィルタ機能の光学多層膜フィルタを一体的に構成した光学ローパスフィルタを得ることができる。特に、構成するそれぞれの水晶板が貼り合わされて一体構造になっている構成において、反りの少ない、光学的歪を防止した光学ローパスフィルタ100を得ることができる。
【0056】
このようにUV−IRカットフィルタ機能の光学多層膜フィルタを一体的に構成した光学ローパスフィルタ100は、例えば、デジタルスチルカメラ等に用いることができる。また、光学ローパスフィルタ100を防塵ガラス機能として配置することも可能であり、貼り合せ制度が良い、良好な光学特性のデジタルスチルカメラ等が得られる。
光学ローパスフィルタ100は、デジタルスチルカメラ以外の電子機器装置として、例えば、カメラ付き携帯電話、カメラ付携帯パソコン(パーソナルコンピュータ)等の撮像部に用いることができる。
【0057】
以上のように、本実施形態の光学多層膜フィルタ1は、ガラス基板2と誘電体多層膜4の間に形成された、低弾性率硬化樹脂層3Aと高弾性率硬化樹脂層3Bとの二層からなる樹脂層3が、熱硬化する熱硬化工程において熱硬化性樹脂からなる高弾性率硬化樹脂層3Bが硬化(仮硬化)され、熱硬化された高弾性率硬化樹脂層3B上に、高屈折率材料層Hと低屈折率材料層Lとが交互に多層が成膜されて誘電体多層膜4が形成されると、誘電体多層膜4の形成により発生する膜応力(内部応力)を、未硬化の低弾性率硬化樹脂層3Aが吸収して、ガラス基板2の反りの発生を防ぐことができる。そして、光硬化する光硬化工程を経ることで、樹脂層3の未硬化の低弾性率硬化樹脂層3Aが硬化(本硬化)されると共に、誘電体多層膜4が形成されたガラス基板2が略平坦化した状態に固持される。
【0058】
樹脂層3がガラス基板2の反りの発生を防ぐことで、誘電体多層膜4の剥がれ、クラック等の発生、あるいは光学的歪の発生を防止した高性能の光学特性を有する光学多層膜フィルタ1が得られる。
また、樹脂層3の形成工程(塗布工程および熱硬化工程)は、ガラス基板2の製作工程に付加する等により、長い成膜時間を必要とする多層膜形成工程と分離することが可能であり、成膜不良等により製造コストが嵩むことなく、効率的な製造を行うことができる。
【0059】
以上の実施形態において、光学多層膜フィルタ1は、UV−IRカットフィルタに適用した場合で説明したが、高反射膜、IRカットフィルタ(Infrared cut filter)、反射防止膜、ハーフミラー等の光学多層膜フィルタに適用することができる。
また、光学多層膜フィルタ1は、光を透過する基板としてのガラス基板2に、白板ガラスを用いた場合で説明したが、これに限定されず、水晶、BK7、サファイアガラス、ホウケイ酸ガラス、青板ガラス、SF3、SF7、あるいは、一般に市販されている光学ガラス等の透明基板を用いることができる。
【0060】
また、高屈折率材料層Hの成膜材料としてTiO2を用いた場合で説明したが、Ta25、Nb25を適用することができる。一方、低屈折率材料層Lの成膜材料としてSiO2を用いた場合で説明したが、MgF2を用いることができる。
また、誘電体多層膜4の成膜は、真空蒸着法を用いた場合で説明したが、イオンアシスト蒸着法、イオンプレーティング法、スパッタリング法等を用いることができる。
また、熱硬化性樹脂に代えて、反応性硬化樹脂、嫌気性硬化樹脂等を用いることができる。
【0061】
また、光学多層膜フィルタ1は、平面が略50mm程度の矩形形状のガラス基板2を用いて、ガラス基板2上に一つの光学多層膜フィルタ1を製造する場合で説明したが、より大きな平面サイズのガラス基板を用いて、多数の光学多層膜フィルタを一度に製造することができる。この場合の熱硬化工程は、ガラス基板の中心部が、ガラス基板の自重により成膜面が凹になる形状になることから、ガラス基板を樹脂層3の形成面が凹になる形状に保持することなく、熱硬化することも可能である。
そして、樹脂層3及び誘電体多層膜4が形成され、冷却されたガラス基板は、レーザカッタ、あるいはダイシングカッタ等を用いて切断することにより、多数の光学多層膜フィルタ1を一度に完成することができる。
【0062】
また、光硬化工程における活性エネルギー線ERとして、活性エネルギー線照射装置の高輝度放電ランプ(HIDランプ)から生成された活性エネルギー線(紫外線を含む可視光線)ERを用いた場合で説明したが、この他に、X線、γ線、電子線等の活性エネルギー線を用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】本発明の光学多層膜フィルタの構成を説明するための断面模式図。
【図2】光学多層膜フィルタの製造工程の態様を示すガラス基板の模式断面図であり、(a)は塗布工程後のガラス基板、(b)は熱硬化工程におけるガラス基板、(c)は多層膜形成工程後のガラス基板、(d)は光硬化工程におけるガラス基板を示す。
【図3】本発明の光学多層膜フィルタを用いた光学ローパスフィルタの構造及び光学軸と光線の進行方向について説明する模式図。
【符号の説明】
【0064】
1…光学多層膜フィルタ、2…基板としてのガラス基板、3…樹脂層、3A…低弾性率硬化樹脂層、3B…高弾性率硬化樹脂層、4…誘電体多層膜、10…案内治具、11…吸盤、12…オーブン、13,14…ガラス板、20,30…水晶板、40…1/4波長板、100…光学ローパスフィルタ、H…高屈折率材料層、L…低屈折率材料層、ER…活性エネルギー線、α…反り量。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に屈折率が異なる少なくとも二種類の膜が交互に積層された誘電体多層膜を有する光学多層膜フィルタにおいて、
前記基板と前記誘電体多層膜の間に、互いに異る弾性率を有する二層の樹脂層が形成されたことを特徴とする光学多層膜フィルタ。
【請求項2】
請求項1に記載の光学多層膜フィルタにおいて、
前記樹脂層は、
前記基板側に形成された低弾性率硬化樹脂からなる樹脂層と、前記誘電体多層膜側に形成された高弾性率硬化樹脂からなる樹脂層であることを特徴とする光学多層膜フィルタ。
【請求項3】
請求項2に記載の光学多層膜フィルタにおいて、
前記低弾性率硬化樹脂は光硬化性樹脂であり、
前記高弾性率硬化樹脂は熱硬化性樹脂であることを特徴とする光学多層膜フィルタ。
【請求項4】
基板上に屈折率が異なる少なくとも二種類の膜が交互に積層された誘電体多層膜を有する光学多層膜フィルタの製造方法であって、
前記基板の一方の面の表面に、
互いに異なった弾性率を有する二層の樹脂層を塗布する塗布工程と、
前記樹脂層を熱硬化する熱硬化工程と、
前記樹脂層上に前記誘電体多層膜を形成する多層膜形成工程と、
前記樹脂層に活性エネルギー線を照射して硬化する光硬化工程と、
を順に備えたことを特徴とする光学多層膜フィルタの製造方法。
【請求項5】
請求項4に記載の光学多層膜フィルタの製造方法において、
前記光硬化工程の前に、前記基板の上下面から加圧、保持し前記基板を平坦にする平坦化工程を、
さらに備えたことを特徴とする光学多層膜フィルタの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−47531(P2007−47531A)
【公開日】平成19年2月22日(2007.2.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−232868(P2005−232868)
【出願日】平成17年8月11日(2005.8.11)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】