説明

光学干渉機能を有する光輝材原料および光輝材

【課題】 後処理により優れた光干渉発色機能を有する微細または細い光輝材が得られ、さらなる審美性が要求される商品分野への展開を可能とする新規な光輝材原料、および光輝材を提供する。
【解決手段】 高屈折率側ポリマーの溶解度パラメーター値(SP1)と低屈折率側ポリマーの溶解度パラメーター値(SP2)の比率(SP比)が0.8≦SP1/SP2≦1.1の範囲にある、互いに屈折率の異なるアルカリ難溶性ポリマー層が扁平断面の長軸方向に平行に交互に積層してなる、厚さが10μm以下の交互積層体部を、厚さが2.0μm以上のアルカリ易溶性ポリマーで被覆した複合繊維を切断してなる光学干渉機能を有する光輝材原料とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光干渉発色機能を有する光輝材に関するものである。さらに詳しくは、アルカリ水溶液等で処理することにより、高品質の光干渉発色機能を有する細繊度の光輝材が容易に得られる、新規な光干渉発色機能を有する光輝材原料に関するものである。
【背景技術】
【0002】
屈折率の異なる互いに独立したポリマー層の交互積層体からなる光干渉発色機能を有する複合繊維は、自然光の反射・干渉作用によって可視光線領域の波長を干渉発色する。その発色は金属光沢のような明るさがあり、特性波長の純粋で鮮明な色(単色)を呈し、染料や顔料の光吸収による発色(有彩色)とは全く異なった審美性を発現する。そのような光干渉発色機能を有する複合繊維の典型的な例は、特許文献1に開示されている。
【0003】
しかしながら、該パンフレットに開示されている光干渉発色機能を有する繊維は、その繊度を小さくしようとすると交互積層体が剥離したり、たとえ剥離が生じなくとも、紡糸時のポリマー劣化による紡糸調子悪化や、延伸時に斑が発生して光干渉効果が低下したりするため、これをカットし光輝材として用いて、特に微細さが要求される塗装や化粧品などといった、さらなる審美性の向上が要求される応用商品への展開する上で限界がある。
【特許文献1】国際公開第98/46815号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記を背景になされたもので、その目的は、後処理により優れた光干渉発色機能を有する微細または細い光輝材が得られ、さらなる審美性が要求される商品分野への展開を可能とする新規な光輝材原料、および光輝材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らの研究によれば、交互積層体部の厚さが薄くなっても、その周囲をポリマーで被覆してなる複合繊維構造にすれば、交互積層体部の剥離が起こり難くなり、延伸時の均一性も向上すること、そして該複合繊維を切断して光輝材原料とし、該光輝材原料から被覆ポリマーを除去すれば、光干渉発色機能に優れた微細または細い光輝材が安定して得られることを見出し本発明に到達した。
【0006】
かくして、本発明によれば、高屈折率側ポリマーの溶解度パラメーター値(SP1)と低屈折率側ポリマーの溶解度パラメーター値(SP2)の比率(SP比)が0.8≦SP1/SP2≦1.1の範囲にある、互いに屈折率の異なるアルカリ難溶性ポリマー層が扁平断面の長軸方向に平行に交互に積層してなる、厚さが10μm以下の交互積層体部を、厚さが2.0μm以上のアルカリ易溶性ポリマーで被覆した複合繊維を切断してなる光学干渉機能を有する光輝材原料が提供される。
【発明の効果】
【0007】
本発明の光輝材原料は、被覆層を有しているので製造時の工程安定性は良好であり、交互積層体部の厚さが薄くても光干渉性に優れた高品質のものが得られる。また、該被覆層はアルカリ易溶性ポリマーで構成されているので、例えばアルカリ水溶液で処理することにより、容易に光干渉発色機能を有する微細または細い光輝材を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明の光輝材原料は特定の複合繊維を切断してなる光輝材原料であり、該複合繊維の繊維軸直角断面構造について、図1を用いて説明する。図1の(1)〜(3)はそれぞれ、上記複合繊維をその長さ方向に直角に切断した場合の断面形状を模式的に示したものであり、2種のアルカリ難溶性ポリマー層からなる交互積層体部は扁平状断面形状を有しており、2種のポリマー層は、扁平断面の長軸方向(図面では水平方向)と平行に多数交互に積層されている。そして、その外周部をアルカリ易溶性ポリマーからなる被覆層が取り囲んでおり、(2)では、中間に別のアルカリ難溶性保護層を設けた態様、(3)では複数の交互積層体部をアルカリ易溶性ポリマーで同時に被覆した態様を示している。
【0009】
このような交互積層体部におけるそれぞれのポリマー層の厚みは、0.02〜0.5μmの範囲であることが好ましい。厚みが0.02μm未満の場合や0.5μmを超える場合には、期待する光学干渉効果を有益な波長領域で得ることが困難となる。さらに厚みは、0.05〜0.15μmの範囲であることが好ましい。また、2種の成分における光学距離、すなわち、層の厚みと屈折率の積が等しいとき、さらに高い光学干渉効果を得ることができる。特に、一次の反射に等しい2種の光学距離の和の2倍が、欲する色の波長の距離と等しいとき、最大の干渉色となるので好ましい。
【0010】
上記複合繊維の繊維軸方向に垂直な交互積層体部断面形状は、図1に示すように扁平状であり、長軸(図面上は水平方向)および短軸(図面上は垂直方向)を有している。その断面の扁平率(長軸/短軸)が大きいものは、光の干渉に有効な面積を左右する、すなわち交互積層体部の長軸を大きくとることができるために好ましい繊維断面形態である。繊維の断面の扁平率は3.5以上、好ましくは4.5以上、特に好ましくは7以上の場合、使用時に各繊維の扁平長軸面が互いに平行方向に配列しやすくなり、光干渉発色機能が向上するので好ましい。しかし、扁平率が大きくなりすぎると、製糸性が大きく低下するので、15以下、特に12以下とするのが好ましい。なお該扁平率は、扁平断面の外周部に後述するアルカリ難溶性ポリマーからなる保護層が形成されている場合には、該保護層部も含めて算出したものである。
【0011】
上記の複合繊維の断面において、異なるポリマー層の交互積層体部における互いに独立したポリマー層の積層数は、10〜120層であることが好ましい。積層数が10層より少なくなると、干渉効果が小さい。一方、積層数が120層を超えると、得られる光の反射量の増大がもはや期待できないばかりか、口金構造が複雑になり製糸が困難になるとともに、後述する交互積層体部の厚さについての要件を満足させることが困難になり、本発明の目的を達成しがたい。
【0012】
また、上記複合繊維の交互積層体部の断面形状は、上記のとおり、屈折率の異なるポリマー層が多数交互に積層した偏平状の形をしているものであるが、その光干渉発色機能は、交互積層の平行性、すなわち各層の光学的距離が偏平断面の長軸方向にも短軸方向にも均一であることが、反射強度および単色性(鮮明発色)に極めて重要である。かかる界面面積の多い扁平上の積層体構造を形成するには、複雑な口金流路内での積層形成プロセス、吐出後のベーラス、界面張力等を制御して均一な積層厚みを実現することが重要で、そのためには、屈折率の異なるポリマー層間の溶解度パラメーター(SP値)の比を特定することが大切である。すなわち、高屈折率側ポリマーの溶解度パラメーター(SP1)と低屈折率側ポリマーの溶解度パラメーター(SP2)の比率(SP比)を0.8≦SP1/SP2≦1.1の範囲、特に0.85≦SP1/SP2≦1.05の範囲にすることが必要である。このようなポリマーの組合せにすると、2種ポリマーの交互積層流を紡糸口金から吐出したとき、界面に作用する界面張力が小さくなるので均一な交互積層体構造を容易に得ることができる。これに対して、SP比が上記範囲外の場合には、吐出ポリマー流は表面張力で丸くなろうとし、また、両ポリマー積層界面の接触面積を最小にするように収縮力が働き、しかも積層構造体が多層であるのでその収縮力は大きくなるため、積層面が湾曲しながら丸くなって良好な扁平形状が得られなくなるので好ましくない。さらには、ポリマー流は口金出口で解放されると膨らもうとするベーラス効果も大きくなる。
【0013】
上記の要件を満足する好ましい組合せとしては、例えば、スルホン酸金属塩基を有する二塩基酸成分をポリエステルを形成している全二塩基酸成分当たり0.3〜10モル%共重合しているポリエチレンテレフタレートと酸価が3以上を有するポリメチルメタクリレートとの組合せ、スルホン酸金属塩を有する二塩基酸成分をポリエステルを形成している全二塩基酸成分あたり0.3〜5モル%共重合しているポリエチレンナフタレートと脂肪族ポリアミドとの組合せ、側鎖にアルキル基を有する二塩基酸成またはグリコール成分を全繰り返し単位当たり5〜30モル%共重合している共重合芳香族ポリエステルとポリメチルメタクリレートとの組合せ、9,9−ビス(パラヒドロキシエトキシフェニル)フルオレンを全繰り返し単位当たり20〜80モル%共重合しているポリエチレンテレフタレートまたはポリエチレンナフタレートとポリメチルメタクリレートとの組合せ、9,9−ビス(パラヒドロキシエトキシフェニル)フルオレンを全繰り返し単位当たり20〜80モル%とスルホン酸金属塩を有する二塩基酸成分をポリエステルを形成している全二塩基酸成分当たり、0.3〜10モル%共重合しているポリエチレンテレフタレートまたはポリエチレンナフタレートと脂肪族ポリアミドとの組合せ、2,2-ビス(パラヒドロキシフェニル)プロパンを二価フェノール成分とするポリカーボネートとポリメチルメタクリレートとの組合せ、9,9−ビス(パラヒドロキシエトキシフェニル)フルオレンと2,2-ビス(パラヒドロキシフェニル)プロパン(モル比が20/80〜80/20)とを二価フェノール成分とするポリカーボネートとポリメチルメタクリレートの組合せなどを例示することができる。
【0014】
本発明においては、上記の交互積層体部の厚さは10μm以下、好ましくは2〜7μmであることが大切である。この厚さが10μmを超える場合には、アルカリ処理しても微細または細い光干渉発色機能を有する光輝材を得ることができず、本発明の目的を達成することができない。
【0015】
なお、必要に応じて上記交互積層体部に、厚さが0.1〜3μm、好ましくは0.3〜1.0μmのアルカリ難溶性ポリマーからなる保護層を設けてもよい。この厚さが0.1μmより薄い場合には、該保護層を設ける効果が小さくなり、一方、3μmを越える場合には、アルカリ水溶液で処理しても微細または細い光輝材を得ることが困難になる。
【0016】
保護層を形成するポリマーは、アルカリ難溶性であれば特に限定されないが、前記交互積層体部の長軸方向の両サイドを構成するポリマー(高屈折率側ポリマーまたは低屈折率側ポリマー)の溶解度パラメーター値と同程度の溶解度パラメーター値(SP3)であることが好ましく、具体的には0.8≦SP1/SP3≦1.2および/または0.8≦SP2/SP3≦1.2であることが好ましい。なかでも、交互積層されたポリマーのうちの高融点側ポリマーとすると、溶融紡糸時に冷却固化速度の速い高融点側ポリマーで保護層部が先ず形成されるので、界面エネルギーやベーラス効果による偏平断面形状の変形を抑えることができ、積層構造の平行性が維持されて審美性が向上する。
【0017】
次に上記の複合繊維は、横断面形状が扁平状であり、その扁平断面の長軸方向に平行に交互に、屈折率の異なる互いに独立したポリマー層が多数積層されている交互積層体部(必要に応じて保護層を有する)を、厚さが2.0μm以上、好ましくは2.0〜10μm、特に好ましくは3.0〜5.0μmのアルカリ易溶性ポリマーで被覆されている必要がある。このように、交互積層体部の周囲にアルカリ易溶性ポリマーからなる被覆層を設けることにより、溶融紡糸時に最終吐出孔内部で受ける壁面近傍と内部とのポリマー流分布を緩和することができ、交互積層体部の厚さが10μm以下であっても積層部の受ける剪断応力分布が低減して内外層に亘る各層の厚みがより均一な交互積層体が得られ、得られた複合繊維をアルカリ処理して該被覆層を除去すれば、優れた光干渉発色機能を有する微細または細い光輝材が容易に得られる。
【0018】
ここで被覆層の厚さが薄すぎて2.0μm未満の場合には、繊維単糸繊度が小さくなり、かつ扁平断面であるために、紡糸工程調子の低下や後加工工程での取り扱い性などに問題がある。なお、交互積層体部の周囲に直接アルカリ易溶性ポリマーからなる被覆層を設ける場合にも、上述のアルカリ難溶性ポリマーからなる保護層を形成する場合と同じく、前記交互積層体部の長軸方向の両サイドを構成するポリマー(高屈折率側ポリマーまたは低屈折率側ポリマー)の溶解度パラメーター値と同程度の溶解度パラメーター値(SP4)であることが好ましい。具体的には0.8≦SP1/SP4≦1.2および/または0.8≦SP2/SP4≦1.2であることが好ましい。
【0019】
なお、本発明でいうアルカリ難溶性、易溶性ポリマーとは、両者のアルカリ減量速度に10倍以上の差があることをいう。具体的には、アルカリ水溶液で処理した際に、被覆層のアルカリ易溶性ポリマーは交互積層体部を構成するアルカリ難溶性ポリマーよりも10倍以上の速さで溶解されることをいう。溶解速度差が10倍未満の場合には、被覆層を除去するためにアルカリ水溶液処理をする際、交互積層体部も浸食作用を受けて積層部の乱れや膨潤などによる積層厚み斑が発生して光干渉発色機能が低下することとなる。
【0020】
好ましく用いられるアルカリ易溶性ポリマーとしては、ポリ乳酸、ポリエチレングリコールを共重合したポリエチレンテレフタレートもしくはポリブチレンテレフタレート、または、ポリエチレングリコールおよび/またはアルキルスルホン酸アルカリ金属塩を配合したポリエチレンテレフタレート、または、ポリエチレングリコールおよび/またはスルホン酸金属塩基を有する二塩基酸成分を共重合したポリエチレンテレフタレートもしくはポリブチレンテレフタレートが例示される。
【0021】
ここでポリ乳酸は、L−乳酸を主たる成分とするものが一般的であるが、40重量%を超えない範囲内でD−乳酸を初めとする他の共重合成分を含有していてもよい。また、ポリエチレングリコールを共重合したポリエチレンテレフタレートまたはポリブチレンテレフタレートは、ポリエチレングリコールの共重合割合が30重量%以上となるようにすることが好ましく、かくすることによりアルカリ溶解速度が著しく向上する。さらに、アルキルスルホン酸アルカリ金属塩および/またはポリエチレングリコールを配合したポリエチレンテレフタレートまたはポリブチレンテレフタレートは、前者は0.5〜3.0重量%の範囲、後者は1.0〜4.0重量%の範囲が好ましく、後者のポリエチレングリコールの平均分子量は600〜4000の範囲が適当である。また、ポリエチレングリコールおよび/またはスルホン酸金属塩基を有する二塩基酸成分を共重合したポリエチレンテレフタレートもしくはポリブチレンテレフタレートは、前者が0.5〜10.0重量%の範囲、後者はポリエステルを形成している全二塩基酸成分当たり1.5〜10モル%の範囲が適当である。
【0022】
また、上記の複合繊維は、その伸度が10〜60%の範囲、特に20〜40%の範囲にあることが好ましい。この伸度が大きすぎる場合には、該複合繊維を切断する工程において、該複合繊維に負荷される張力によって繊維が変形しやすくなるため、工程通過性が低下する傾向にある。一方、伸度が小さすぎる場合には、該複合繊維に負荷される張力を吸収しがたくなるため、毛羽や断糸が増加する傾向にある。また、伸度がこの範囲であっても、用いるポリマーの種類によっては、紡出され一旦冷却固化された複合繊維を延伸することにより複屈折率(△n)がより高められ、2種のポリマー間の屈折率差を「ポリマーの屈折率差プラス繊維の複屈折率差」として、結果的に全体として屈折率差を拡大させるができるので、光干渉発色機能が高められる。
【0023】
さらに、上記の複合繊維は、その130℃〜150℃における熱収縮率が3%以下であることが好ましい。熱収縮率がこの範囲を超える場合には、該複合繊維を切断して光輝材原料とする時、繊維の収縮など変形が起こって光干渉発色機能が低下しやすい。例えば、塗料に利用する場合、塗装工程や捺染工程で同様の温度での乾燥・熱固定が施されるため、品質の面から同様の耐熱性を有していることが好ましい。
【0024】
以上に説明した本発明の光輝材原料に使用する複合繊維は、例えば以下の方法により製造することができる。すなわち、国際公開98/46815号に記載の方法により、先ず互いに屈折率の異なるアルカリ難溶性ポリマーを、高屈折率側ポリマーの溶解度パラメーター(SP1)と低屈折率側ポリマーの溶解度パラメーター(SP2)の比率(SP比)が0.8≦SP1/SP2≦1.1の範囲となる組合せで交互積層体構造に溶融吐出する際、高屈折率側ポリマーと低屈折率側ポリマーのいずれよりもアルカリ溶解速度が速いアルカリ易溶性ポリマーで該交互積層体構造を被覆するようにして、交互積層体部が保護層により被覆された構造の未延伸繊維を得る。未延伸繊維の単繊維繊度は、延伸倍率によって異るが、アルカリ水溶液処理後に得られる光輝材の繊度が4.0dtex以下、好ましくは0.2〜3.0dtexとなる範囲であれば任意である。被覆層の厚さは、延伸後の被覆層厚さが2.0μm以上となる範囲であれば任意である。
【0025】
必要に応じて延伸してもよいが、その条件は特に限定する必要はなく、従来公知の未延伸繊維の延伸条件を採用すればよい。例えば、最もガラス転移温度が高いポリマーのガラス転移温度近傍(Tg±15℃)の温度で、ポリマー分子鎖の配向が進む温度であれば任意の温度で延伸することができる。なお、ここでいう温度は、熱板や加熱ローラー等の加熱媒体の温度である。延伸倍率は、最終的に得られる延伸繊維にどの程度の強伸度特性や熱収縮特性を付与するかに応じて適宜設定すればよいが、通常最大延伸倍率の0.70〜0.95倍にて延伸すればよい。なお、熱収縮特性等の耐熱性を向上させるため、延伸に引き続いて熱処理を施してもかまわない。
【0026】
必要に応じて延伸・熱処理が施された複合繊維は、これを切断して本発明の光輝材原料とすることができる。この際、その用途に応じた長さに切断すればよいが、紙、塗料、インキ、化粧品の用途分野に用いる場合には、使用時の取扱い性や得られる最終製品の審美性の点から繊維軸方向の繊維長が、アルカリ易溶性ポリマー部を除いた繊維断面の短軸長さより長くなるように切断することが好ましい。長さの上限は通常50mm程度であるが、特に化粧品や塗装等の細かく分散させたい用途の場合には、1mm以下にするのが好ましい。好ましくは、積層部の長軸長さ以上であれば、短い方が好ましく、数十〜数百μm長が好ましい。
【0027】
本発明においては、上記の光輝材原料を、例えば使用前にアルカリ水溶液で処理してアルカリ易溶性ポリマーを除去し、微細または細い光干渉機能を有する光輝材とすることができる。
【0028】
本発明の光輝材は、溶液や樹脂中に適量配合し、また他の着色顔料と併用して、塗料、樹脂組成物、インキ組成物、人造大理石成型品、塗被紙、化粧料組成物など製品またはその組成物として各種用途に利用することができる。
【0029】
たとえば、塗料中に配合する場合は、母材樹脂に熱硬化性樹脂としてアクリル樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、尿素樹脂、フッ素樹脂、ポリエステル−ウレタン硬化系樹脂、エポキシ−ポリエステル硬化系樹脂、アクリル−ポリエステル系樹脂、アクリル−ウレタン硬化系樹脂、アクリル−メラミン硬化系樹脂もしくはポリエステル−メラミン硬化系樹脂などを、熱可塑性樹脂としてポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、石油樹脂、熱可塑性ポリエステル樹脂もしくは熱可塑性フッ素樹脂などを使用し、また硬化剤にポリイソシアネート、アミン、ポリアミド、多塩基酸、酸無水物、ポリスルフィド、三フッ化ホウ素酸、酸ジヒドラジドもしくはイミダゾールなどを使用することが好ましい。塗料中における光輝材の含有率は、乾燥硬化後の塗膜において0.1〜30重量%となるように調整することが好ましい。より好ましい含有率は、1〜20重量%である。光輝材の含有率が0.1重量%よりも少ない場合は、塗膜に十分な光輝性がなく、一方30重量%よりも多いと、含有率の割には光輝性の向上が小さくなり、却って素地の色調を損なってしまうおそれが生じる。この光輝材は、素地の色調を損なうことがないので、あらゆる色の塗料に利用することができる。たとえば、赤、青、緑、黒などの原色に加え、色調の調整が困難なパステルカラーなどにも使用できる。
【0030】
樹脂組成物中に配合する場合は、母材樹脂に上記の各種熱硬化性樹脂または熱可塑性樹脂を利用することができる。また、本発明の光輝材を構成するポリマーの融点よりも低融点あるいは低軟化点の熱可塑性樹脂を使用すれば、射出成形が可能となるため、複雑な形状の成型品を得ることができる。
【0031】
インキ組成物に配合する場合は、繊維長が500μm以下のものを使用することが好ましい。繊維長があまり長いと、筆跡の外観上、光輝材が飛び出したようになり、滑らかさが損なわれる傾向にある。
【0032】
インキ組成物には、各種ボールペン、サインペンなどの筆記具用インキならびにグラビアインキ、オフセットインキなどの印刷インキがあるが、いずれのインキ組成物にも使用することができる。筆記具用インキのビヒクルの例としては、アクリル樹脂、スチレン−アクリル共重合体、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸塩、アクリル酢酸ビニル共重合体、ザンサンガムなどの微生物産性多糖類またはグアーガムなどの水溶性植物性多糖類などと、溶剤としての水、アルコール、炭化水素、エステルなどからなるものとが挙げられる。
【0033】
グラビアインキ用ビヒクルの例としては、ガムロジン、ウッドロジン、トール油ロジン、ライムロジン、ロジンエスエル、マレイン酸樹脂、ポリアミド樹脂、ビニル樹脂、ニトロセルロース、酢酸セルロース、エチルセルロース、塩化ゴム、環化ゴム、エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、ギルソナイト、ダンマルもしくはセラックなどの樹脂混合物、上記樹脂の混合物、上記樹脂を水溶化した水溶性樹脂または水性エマルション樹脂と、炭化水素、アルコール、エーテル、エステルまたは水などの溶剤とからなるものが挙げられる。
【0034】
オフセットインキ用ビヒクルの例としては、ロジン変性フェノール樹脂、石油樹脂、アルキド樹脂またはこれらの乾性変性樹脂などの樹脂と、アマニ油、桐油または大豆油などの植物油と、n−パラフィン、イソパラフィン、アロマテック、ナフテン、α−オレフィンまたは水などの溶剤とからなるものが挙げられる。
なお、上記の各種ビヒクル成分には、染料、顔料、各種界面活性剤、潤滑剤、消泡剤、レベリング剤などの慣用の添加剤を適宜選択して配合してもよい。
【0035】
人造大理石成型品に光輝材を使用する場合は、最表層に透明ゲルコート層、その内部に光輝材を含む中間層、その中間層の下に着色された骨材を含む人造大理石層の3層構造にすることが好ましい。この構成であれば、最表層が透明ゲルコート層であるため、中間層の発する強い反射光と人造大理石層の模様とが相まって、キラキラとした高い光輝感を有する大理石調の外観が形成される。
【0036】
透明ゲルコート層の厚さは、奥行き感と可視光透過率の低減とを勘案して、0.3〜0.7mmとすることが好ましい。透明ゲルコート層の成分は、とくに限定されないが、取り扱い易さや加工成形性の高さから熱硬化性樹脂が好ましい。具体的には、不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、フェノール樹脂またはこれらの混合物もしくは変性物(たとえば、不飽和ポリエステル樹脂の末端基をアクリル系に変えた変性物など)などが挙げられる。とくに、不飽和ポリエステル樹脂は、透明性が高く、安価で入手し易いので好ましい。
【0037】
中間層は、大理石調の外観に高い光輝感を与えるためのものであり、人造大理石層の模様を覆い隠すものであってはならない。そのため、少なくとも可視光透過性を備える必要がある。ただし、その主成分に最表層の透明ゲルコートと同一のものを使用する必要はない。なお、外観が損なわれない限り、透明ゲルコート層と人造大理石層との間に、上記中間層以外の層をさらに設けてもよい。具体的には、可視光透過性の高い色付きフイルムを配置することにより、人造大理石成型品の色調を簡便に調整することができる。
【0038】
中間層は、厚さが0.05〜1mmの範囲が好ましく、その構成成分として可視光透過性の高い熱硬化性樹脂が好適である。また、光輝材の他に、硬化剤や促進剤を含有してもよく、必要に応じて増粘剤、揺変剤、消泡剤または特性向上剤が配合されてもよい。さらに、着色顔料、その他の金属顔料(アルミニウム顔料や酸化鉄顔料など)、干渉色顔料(金属酸化物で被覆したマイカなど)から選ばれた1種または2種以上が素地の色調を著しく損なわない範囲で配合されてもよい。
【0039】
人造大理石層は、厚さ3〜25mmが好ましく、その主成分は熱硬化性樹脂であり、その他の成分として骨材、促進剤、硬化剤および着色剤を含有する。この熱硬化性樹脂には、上記透明ゲルコート層の熱硬化性樹脂を利用できる。たとえば、不飽和ポリエステル樹脂である。骨材としては、ガラスフリット、寒水石、水酸化アルミニウム、炭酸カルシウムまたはシリカ粉体などの無機材料、あるいは熱可塑性ポリエステル樹脂などの有機材料が使用できる。さらに、必要に応じて強化材としてガラス繊維を含有してもよい。
【0040】
中間層における光輝材の配合率が過度に低い場合は、光輝性と奥行き感が得られ難くなり、一方過度に高いとコスト面および物性面などで問題が生じる。そこで、中間層における光輝材の配合率は、熱硬化性樹脂100重量部に対し0.01〜10重量部が好ましい。
【0041】
人造大理石成型品に強度が求められる場合は、人造大理石層の背面にFRP層を設けてもよい。この場合、FRP層は人造大理石層の背面に配置されるため、人造大理石成型品の光輝性は損なわれない。FRP層は、たとえばチョップドストランドグラスマットに不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂またはエポキシ樹脂のような熱硬化性樹脂を含浸させ、加熱硬化することによって得られる。また、FRP層に着色剤を添加すれば、人造大理石成型品に彩りを与えたり、背面からの光線を遮蔽することができる。
【0042】
人造大理石成型品の製造方法は、とくに限定されるものではなく、従来の方法をそのまま利用できる。たとえば、浴槽のように複雑な形状のものを製造する場合は、注型法やプレス成形法などの方法を利用できる。また、FRP層を備えた浴槽を製造する場合は、人造大理石層を形成させた後、チョップドストランドグラスを含有する熱硬化性樹脂を人造大理石層の表面にスプレーガンで吹き付ける方法(スプレーアップ法)や、熱硬化性樹脂を含浸させたチョップドストランドグラスマットを人造大理石層の表面にハンドレイアップ法により取り付けた後に50℃で1時間キュアリングする方法などによることができる。あるいは、人造大理石層を成形する前に、上記のスプレーアップ法またはハンドレイアップ法により、浴槽の裏型材の表面に予めFRP層を形成させてもよい。
【0043】
人造大理石成型品に使用する光輝材の長さは、0.01〜2mmが好ましい。長さが2mmを越える場合は、中間層の成形加工過程において割れが生じ易くなり、一方0.01mm未満になると、光輝感の低下が著しくなる傾向にある。
【0044】
塗被紙に光輝材を配合する場合は、ステアリン酸、ラウリル酸のアルカリ塩、共重合ラテックスもしくは澱粉などからなる接着剤、界面活性剤および水などの溶媒に、必要に応じて酸化防止剤、紫外線吸収剤、耐水化剤、防腐防黴剤、殺菌剤、消泡剤、香料および/または染料を配合して得られる溶液を、ブレードコーター、エアナイフコーター、ロールコーター、カーテンコーター、バーコーター、グラビアコーターまたはサイズプレスコーターなどの塗被装置で原紙上に片面または両面に単層または二層以上塗被することで、光輝性の高い塗被紙が得られる。
【0045】
また、本発明の光輝材は、化粧品、特に、顔およびヒトの体の皮膚、唇ならびに爪、まつ毛または髪などの表層成長部のための化粧品(以下、化粧品組成物と称することがある)に含有させて用いることができる。
【0046】
光輝材は、化粧品組成物中に、該組成物の全量に対して0.01〜50重量%、好ましくは0.1〜30重量%、さらに好ましくは、0.3〜20重量%の範囲で含有させることができる。
【0047】
さらに具体的には、肌用の製品(ファンデーション)、頬またはアイシャドーのためのメイクアップ製品、リップ製品、コンシーラー、頬紅、マスカラ、アイライナー、まゆ毛のためのメイクアップ製品、リップまたはアイ・ペンシル、爪用製品、体用のメイクアップ製品、髪のためのメイクアップ製品(ヘア・マスカラまたはヘア・スプレー)などをあげることができる。これらの化粧品組成物は、ケラチン物質に付与するためのように使用することができるか、ケラチン物質の上に既に堆積しているメイクアップの上に、例えば、メイクアップを改質するために使用することができる(組成物を、通常トップ・コートと称されるトップ製品として付与する)。
【0048】
化粧品組成物は、付け爪、付けまつ毛、人工頭髪、かつら、皮膚または唇に付着しているパステルまたはパッチ(つけボクロタイプのもの)などのメイクアップ・アクセサリ(支持体)の上に付与することもできる。
この際、本発明の光輝材は、親水性媒体または親油性媒体に含有させ、化粧品組成物とすることができる。
【0049】
上記化粧品組成物、あるいはそのベース(下地用)組成物および/またはトップ組成物には、水または、水とアルコールなどの親水性有機溶剤、特にエタノール、イソプロパノールまたはn−プロパノールなどの2〜5個の炭素原子を有する直鎖または分枝鎖低級モノアルコール、グリセリン、ジグリセリン、プロピレングリコール、ソルビトール、ペンチレングリコール、ポリエチレングリコールなどのポリオールとの混合物を含んでよい。また、親水性相は、親水性であるCエーテルおよびC〜Cアルデヒドを含有してもよい。水または、水と親水性有機溶剤との混合物は、本発明による組成物あるいはベースおよび/またはトップ組成物のうち少なくとも一方中に、組成物の全重量に対して、0〜90重量%(特に、0.1〜90重量%)、好ましくは0〜60重量%(特に、0.1〜60重量%)の範囲の量で含有してよい。
【0050】
化粧品組成物あるいはベースおよび/またはトップ組成物のいずれかには、特に、室温(通常は25℃)で液体である脂肪物質および/またはろうなどの室温で固体である脂肪物質、ペースト状脂肪物質、ゴムおよびこれらの混合物からなる脂肪相を含んでいてもよい。さらに、この脂肪相は、親油性有機溶剤を含有してよい。
【0051】
上記祖化粧品で使用することができる、一般にオイルと称される室温で液体である脂肪物質として、ペルヒドロスクアレンなどの動物由来の炭化水素油、ヘプタン酸またはオクタン酸のトリグリセリドなどの4〜10個の炭素原子を有する脂肪酸の液体トリグリセリドまたはヒマワリ油、トウモロコシ油、ダイズ油、ブドウ種子油、ゴマ油、アプリコット油、マカダミア油、ヒマシ油およびアボカド油、カプリル酸/カプリン酸のトリグリセリド、ホホバ油、シアバターなどの植物性炭化水素油、パラフィン油およびその誘導体、石油ゼリー、ポリデセン、パーリーム(parleam)などの水素化ポリイソブテンなどの鉱物または合成由来の直鎖または分枝鎖炭化水素、例えば、パーセリン油(Purcellin oil)、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸2−エチルヘキシル、ステアリン酸2−オクチルドデシル、エルカ酸2−オクチルドデシル、イソステアリン酸イソステアリルなどの、特には脂肪酸の合成エステルおよびエーテル、乳酸イソステアリル、ヒドロキシステアリン酸オクチル、ヒドロキシステアリン酸オクチルドデシル、リンゴ酸ジイソステアリル、クエン酸トリイソセチル、脂肪族アルコールのヘプタン酸エステル、オクタン酸エステル、デカン酸エステル、ジオクタン酸プロピレングリコール、ジヘプタン酸ネオペンチルグリコール、ジイソノナン酸ジエチレングリコールなどのポリオールエステル、およびペンタエリトリトールエステル、オクチルドデカノール、2−ブチルオクタノール、2−ヘキシルデカノール、2−ウンデシルペンタデカノール、オレイルアルコールなどの12〜26個の炭素原子を有する脂肪族アルコール、部分的に炭化水素−および/またはシリコーンベースのフッ素化オイル、フェニルトリメチコン、フェニルトリメチルシロキシジフェニルシロキサン、ジフェニルメチルジメチルトリシロキサン、ジフェニルジメチコン、フェニルジメチコン、ポリメチルフェニルシロキサンなどの場合によってフェニル基を有するシクロメチコン(cyclomethicone)、ジメチコンなどの揮発性か、あるいは、直鎖または環式で、室温で液体またはペースト状であるポリメチルシロキサン(PDMS)などのシリコーンオイル、および、これらの混合物を挙げることができる。
【0052】
これらのオイルは、組成物の全重量に対して、0.01〜90重量%、好ましくは0.1〜85重量%の範囲で含有してもよい。
化粧品組成物、あるいはベースおよび/またはトップ組成物のいずれかは、1種または複数の化粧品的に許容される有機溶剤を含有してもよい(許容しうる許容性、毒性および感触)。これらの溶剤は、組成物の全重量に対して、0〜90重量%、好ましくは0〜60重量%、さらに好ましくは0.1〜30重量%の範囲で含有してよい。
【0053】
本発明の組成物中で使用することができる溶剤として、酢酸メチル、エチル、ブチル、アミル、2−メトキシエチルまたはイソプロピルなどの酢酸エステル、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン;トルエン、キシレン、ヘキサン、ヘプタンなどの炭化水素、5〜10個の炭素原子を有するアルデヒド、少なくとも3個の炭素原子を有するエーテル、およびこれらの混合物を挙げることができる。
【0054】
さらに、本発明の組成物あるいはベースおよび/またはトップ組成物のいずれかには、ゴムまたはろうなどの、室温で固体またはペースト状の脂肪物質を含んでよい。ろうは、炭化水素ベース、フッ素化物ベースおよび/またはシリコーンベースであってよく、植物、鉱物、動物または合成由来であってよい。特に、ろうは、25℃より高い、さらに好ましくは、45℃より高い融点を有するものが好ましい。
【0055】
本発明で使用できる「ろう」としては、蜜蝋、カルナウバろうまたはカンデリラろう、パラフィン、微結晶ろう、セレシンろうまたはオゾケライト、ポリエチレンまたはフィッシャー−トロプシュろう、16から45個の炭素原子を有するアルキルまたはアルコキシジメチコーンなどのシリコーンろうなどの合成ろうを挙げることができる。
【0056】
ゴムは通常、高分子量のポリジメチルシロキサン(PDMS)またはセルロースゴムまたは多糖類であり、ペースト状の物質は通常、ラノリンおよびその誘導体またはPDMSなどの炭化水素化合物である。
【0057】
固体物質の性質および品質は、所望の機械的特性および手触りに左右される。これらは化粧品組成物の全重量に対して、0〜50重量%、好ましくは1〜30重量%のろうを含有すればよい。
【0058】
さらに、化粧品組成物、あるいはベースおよび/またはトップ組成物のいずれかは、被膜形成ポリマーを含有してもよい。本発明において、「被膜形成ポリマー」とは、単独で、または被膜形成助剤の存在下で、連続的かつ付着性の被膜を支持体、特に、ケラチン物質上に被膜をつくるポリマーをいう。
【0059】
被膜形成ポリマーは、ビニルポリマー、重縮合物またはポリマーまたは天然由来から選択することができる。被膜形成ポリマーとして特に、アクリルポリマー、ポリウレタン、ポリエステル、ポリアミド、ポリウレア、セルロースポリマーを挙げることができる。被膜形成ポリマーは、溶解するか、組成物の生理学的に許容される媒体中に固体粒子の形で分散させることができる。
【0060】
被膜形成ポリマーは、本発明による組成物あるいはベースおよび/またはトップ組成物のいずれかに、組成物の全重量に対して、0.01〜60重量%、好ましくは0.5〜40重量%、さらに好ましくは1〜30重量%の範囲で含有させてもよい。
【0061】
被膜形成ポリマーを、被膜形成助剤と組み合わせることができる。このような被膜形成剤は、公知の化合物から選択することができ、特に、可塑剤および融合助剤から選択することができる。
【0062】
化粧品組成物、あるいはベースおよび/またはトップ組成物の一方は、特に、懸濁液、分散液、溶液、ゲル、特に水中油型(O/W)または油中水型(W/O)のエマルション、または多重(W/O/Wまたはポリオール/O/WまたはO/W/O)エマルションの形、クリーム、ペースト、フォーム、特にイオン性または非イオン性脂質中のベシクルの分散液、2相または多相ローション、スプレー、パウダー、ペースト、特に軟性ペースト(特に、円錐/平面幾何での測定の10分後に、200s−1のせん断速度で、0.1から40Pa.s程度の25℃での動的粘度を有するペースト)の形状であってもよい。組成物は、有機、特に無水の連続相を含んでいてもよい。
【0063】
上記の化粧品組成物、あるいはベースおよび/またはトップ組成物の一方はさらに、ビタミン、増粘剤(特に、場合によって改質されている粘土)、微量元素、皮膚軟化剤、金属イオン封鎖剤、香料、アルカリ化剤または酸性化剤、防腐剤、紫外線遮断剤またはこれらの混合物などの化粧品で一般的に使用される成分を含有していてもよい。
化粧品組成物、特にベースおよびトップ組成物は、化粧品または皮膚科学分野で通常使用される調製方法により、得ることができる。
【0064】
上記化粧品組成物中には、あるいはベースおよび/またはトップ組成物中に着色剤を含有していてもよい。付加的な着色剤は、顔料、真珠箔剤、着色剤およびこれらの混合物から選択することができる。ここで、顔料とは、白色か、着色されていて、無機または有機で、生理食塩水中に不溶性で、組成物の着色を目的とする何らかの形の粒子をいう。また、真珠箔剤とは、特に、一定の軟体動物によりその殻で生産されるか、合成される何らかの形の虹色粒子をいう。
【0065】
顔料は、化粧品組成物中に、特にベースおよび/またはトップ組成物中に、組成物の重量に対して、0から15重量%(特に、0.01重量%から15重量%)、好ましくは0.01〜10重量%、さらに好ましくは0.02〜5重量%の範囲で含有させることが好ましい。
【0066】
顔料は、白色であるか、着色されており、無機および/または有機であってよい。無機顔料のうち、場合によって表面処理されている二酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化セリウム、酸化亜鉛、酸化鉄(黒色、黄色または赤色)、酸化クロム、マンガンバイオレット、ウルトラマリンブルー、クロム水和物、鉄ブルー、アルミニウム粉末および銅粉末などの金属粉末を挙げることができる。
【0067】
有機顔料のうち、カーボンブラック、D&Cタイプの顔料およびカルミン、バリウム、ストロンチウム、カルシウム、アルミニウムをベースとするラッカーを挙げることができる。
【0068】
真珠箔剤は、組成物中に、特にベースおよび/またはトップ組成物中に、組成物の全重量に対して、0〜25重量%(特に、0.01〜25重量%)、好ましくは0.01〜15重量%、さらに好ましくは0.02〜5重量%の範囲で含有されていてもよい。
【0069】
真珠箔顔料は、チタンまたはオキシ塩化ビスマスでコーティングされた雲母などの真珠箔顔料、酸化鉄でコーティングされた雲母-チタン、特に鉄ブルーまたは酸化クロムでコーティングされた雲母-チタン、前記のタイプの有機顔料でコーティングされた雲母-チタンなどの着色真珠箔顔料およびオキシ塩化ビスマスをベースとする真珠箔顔料から選択することができる。
【0070】
着色剤は、水溶性または脂溶性着色剤または着色ポリマーから選択される着色物質であってもよい。着色物質は、組成物中に、特にベースおよび/またはトップ組成物中に、組成物の全重量に対して、0〜6重量%(特に、0.01〜6重量%)、好ましくは0.01〜3重量%の範囲で含有させてもよい。
【0071】
脂溶性着色剤は例えば、ダイズ油、スダンブラウン、DC Yellow 11、DC orange 5、キノリンイエロー、スダンレッドIII(CTFA名称、D & C red 17)、ルテイン、キニザリングリーン(CTFA名称、DC green 6)、Alizurolpurple SS(CTFA名称、DC violet No.2)、リコピン、ベータカロチン、ビキシン、カプサンチン(capsantein)などのカロテノイド誘導体および/またはこれらの混合物が挙げられる。
【0072】
水溶性着色剤のうち、例えば、Aleurites Moluccana Willd、Alkanna Tinctoria Tausch、Areca Catechu L.、Arrabidaea Chica E.およびB.、Bixa Orellana L(annatto)、Butea Monosperma Lam、Caesalpina Echinata Lam、Caesalpina Sappan L.、Calophyllum Inophyllum L.、Carthamus Tinctorius L.、Cassia Alata L.、Chrozophora Tinctoria L.、Crocus Sativus L.、Curcuma Longa L.、Diospyros Gilletii de Wild、Eclipta Prostrata L.、Gardenia Erubescens Stapf.およびHutch.、Gardenia Terniflora Schum.およびThonn.、Genipa Americana L.、Genipa Brasiliensis L.、Guibourtia Demeusei(Harms)J.Leon、Haematoxylon Campechianum L.、Helianthus annuus、Humiria Balsamifera(Aubl.)St-Hi1.、Isatis Tinctoria L.、Mercurialis perenis、Monascus purpureus、Monascus ruber、Monascus pilosus、Morus Nigra L.、Picramnia Spruceana、Pterocarpus Erinaceus Poir.、Pterocarpus Soyauxii Taub.、Rocella Tinctoria L.、Rothmannia Whitfieldii(Lindl.)Dand.、Schlegelia Violacea(Aubl.)Griseb.、Simira Tinctoria Aublet、Stereospermum Kunthianum Cham.、Symphonia Globulifera L.、Terminalia Catappa L.、Sorgho、Aronia melanocarpaなどの着色剤植物の抽出物、Impatiens Balsaminaとも称されるLawsonia Inermis L.に由来するローソン(lawsone)を含むナフトキノン、赤色木材の抽出物、ビート液、フクシンの二ナトリウム塩、赤色果実の抽出物などのアントシアニン、ジヒドロキシアセトン、イサチンなどのモノ-またはポリカルボニル誘導体、アロキサン、ニンヒドリン、グリセルアルデヒド、メソ酒石酸アルデヒド、4,5-ピラゾリンジオン誘導体およびこれらの混合物を挙げることができ、これらの皮膚用着色剤を、直接着色剤またはインドール誘導体および/またはこれらの混合物と組み合わせてもよい。
【0073】
着色剤は、着色ポリマー、即ち少なくとも1種の有機着色基を含むポリマーであってもよい。着色ポリマーは通常、ポリマーの全重量に対して、10重量%未満の着色物質を含有する。
【0074】
着色ポリマーは、どのような化学的性質を有してもよく、特に、ポリエステル、ポリアミド、ポリウレタン、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリカーボネート、セルロースまたはキトサンポリマーなどの天然由来のポリマーまたはこれらの混合物であり、好ましくは、ポリエステルまたはポリウレタンポリマーである。
【0075】
着色ポリマーは、着色基を有してよく、特に、共有結合により、ポリマー鎖上でグラフトされていてもよい。
特に、着色ポリマーは、そのうちの少なくとも1種が有機着色モノマーである少なくとも2種の異なるモノマーをベースとするコポリマーであってよい。
【0076】
着色ポリマーのモノマーは、アントラキノン、メチン、ビスメチン、アザメチン、アリリデン(arylidene)、3H−ジベンゾ[7,i-j]イソキノリン、2,5-ジアリールアミノテレフタル酸およびそのエステル、フタロイルフェノチアジン、フタロイルフェノキサジン、フタロイルアクリドン、アントラピリミジン、アントラピラゾール、フタロシアニン、キノフタロン、インドフェノール、ペリノン、ニトロアリールアミン、ベンゾジフラン、2H-1-ベンゾピラン-2-オン、キノフタロン、ペリレン、キナクリドン、トリフェノジオキサジン、フルオリジン(fluoridine)、4-アミノ-1,8-ナフタルイミド、チオキサントロン(thioxanthrone)、ベンゾアントロン、インダントロン、インジゴ、チオインジゴ、キサンテン、アクリジン、アジン、オキサジンから選択することができる。
【0077】
着色ポリマーは、本発明による組成物中に、特に、ベースおよび/またはトップ組成物中に、組成物の全重量に対して、0〜50重量%(特に、0.01〜50重量%)、好ましくは0.5〜25重量%、さらに好ましくは0.2〜20重量%の範囲で含有させてもよい。
【0078】
有利には、干渉性粒子および付加的な着色剤は、化粧品組成物中に、またはトップ組成物中に、2以上(特に、2〜500の範囲)、さらに好ましくは5以上(特に、5〜500の範囲)の、干渉性粒子/付加的な着色剤の活性物質の重量比で存在する。
【0079】
付加的な着色剤に加えて、本発明による組成物は、さらに充填剤を含有してもよい。充填剤との表現は、無色または白色で、無機または合成で、組成物が製造される温度に無関係に組成物の媒体中に不溶性である、何らかの形の粒子を意味すると理解すべきである。これらの充填剤は、組成物のレオロジーまたは手触りを改質するためにも役立つ。
【0080】
充填剤は、無機または有機であり、結晶形に関わらず、血小板形、球形または長円形の何らかの形であってよい(例えば、シート形、立方形、六方晶形、斜方晶形など)。タルク、雲母、シリカ、カオリン、ポリアミドの粉末、ポリ-β-アラニンの粉末およびポリエチレンの粉末、テトラフルオロエチレンポリマーの粉末、ラウロイルリシン、デンプン、窒化ホウ素、塩化ポリビニリデン/アクリロニトリル系ポリマー中空マイクロスフェア、アクリル酸コポリマーおよびシリコーン樹脂のマイクロビーズ、エラストマーポリオルガノシロキサンの粒子、沈降炭酸カルシウム、炭酸マグネシウムおよびヒドロカーボネート、ヒドロキシアパタイト、シリカの中空マイクロスフェア、ガラスまたはセラミックマイクロカプセル、8〜22個の炭素原子、好ましくは12〜18個の炭素原子を有する有機カルボン酸に由来する金属石鹸、例えば、ステアリン酸亜鉛、マグネシウムまたはリチウム、ラウリン酸亜鉛、ミリスチン酸マグネシウムを挙げることができる。
【0081】
充填剤は、組成物、特にベースおよび/またはトップ組成物の全重量に対して、0〜90重量%、好ましくは0.01〜50重量%、さらに好ましくは0.02〜30重量%の範囲で含有させてもよい。
【0082】
上記化粧用組成物あるいはベースおよび/またはトップ組成物は、前記のような顔料および/または真珠箔剤および/または充填剤を含む粒子相を含んでよく、これらは、組成物の全重量に対して、0〜98重量%(特に、0.01〜98重量%)、好ましくは0.01〜30重量%から、さらに好ましくは0.02〜20重量%の範囲で含有させてもよい。
【実施例】
【0083】
以下、実施例をあげて本発明をさらに具体的に説明する。なお、実施例中におけるポリマーの溶解度パラメーター値(SP値)、繊維断面内各寸法は下記の方法で測定した。
(1)SP値およびSP比
SP値は、凝集エネルギー密度(Ec)の平方根で表される値である。ポリマーのEcは、種々の溶剤に該ポリマーを浸漬させ、膨潤の圧が極大となる溶剤のEcを該ポリマーのEcとすることにより求められる。このようにして求められた各ポリマーのSP値は、「PROPERTIES OF POLYMERS」第3版(ELSEVIER)792頁に記載されている。また、Ecが不明なポリマーの場合には、ポリマーの化学構造から計算できる。すなわち、該ポリマーを構成する置換基それぞれのEcの和として求めることができる。各置換基のEcについては、上述した文献第192頁に記載されている。そして、例えば交互積層体部のSP比は次式から算出する。
SP比=高屈折率ポリマーのSP値(SP1)/低屈折率ポリマーのSP値(SP2)
【0084】
(2)繊維断面測定
平板シリコンプレートとビームカプセルにサンプル繊維を固定し、エポキシ樹脂で5日間包埋する。次いで、ミクロトームULTRACUT−Sを用い、繊維軸に垂直方向に切断し、厚さが50〜100nmの超薄切りサンプルを作成してグリッドに載台する。2%四酸化オスミウムで温度60℃下2時間蒸気処理を施した後、透過型電子顕微鏡LEM−2000を用いて加速電圧100kVで写真撮影(倍率20000倍)する。得られた写真より積層構造体部分の各層の平均厚さおよび被覆層の厚さを測定した。
【0085】
(3)光干渉発色波長および強度
黒色板にサンプル繊維(マルチフィラメントヤーン)を40本/1cmの巻密度で、0.265cN/dtex(0.3g/de)の巻張力で巻きつけ、マクベス社製分光光度計カラーアイ3100(CE−3100)にてD65光源で測色する。測定窓は大窓25mmφ、表面光沢を含む、光源に紫外線を含む条件にて、ピーク波長と反射強度を測定した。反射強度は、ベースラインとピーク波長での反射強度の差を正味の反射強度とした。
【0086】
[実施例1〜8および比較例1〜2]
表1に記載の高屈折率ポリマー(ポリマー1)と低屈折率ポリマー(ポリマー2)とを、交互積層体部の層数が21層で周りをアルカリ易溶性ポリマー3が被覆している構造となるように溶融紡糸し、表1記載の速度で巻き取った。得られた未延伸繊維を、表1記載の倍率で延伸して図1の(1)に示されるような断面形状の光干渉発色機能を有する複合繊維を得た。評価結果を表2に示す。
【0087】
【表1】

【0088】
表中、ポリマーの略称は以下のとおりである。
PET:ポリエチレンテレフタレート
共重合PET1:5−ナトリウムスルホイソフタル酸成分0.8モル%共重合ポリエチレンテレフタレート
共重合PET2:9,9−ビス(パラヒドロキシエトキシフェニル)フルオレン(BPEF)70モル%共重合ポリエチレンテレフタレート
共重合PET3:9,9−ビス(パラヒドロキシエトキシフェニル)フルオレン(BPEF)70モル%および5−ナトリウムスルホイソフタル酸成分0.8モル%共重合ポリエチレンテレフタレート
PEN:ポリエチレン−2,6−ナフタレート
共重合PEN1:5−ナトリウムスルホイソフタル酸成分1.5モル%共重合ポリエチレン−2,6−ナフタレート
共重合PEN2:BPEF70モル%共重合ポリエチレン−2,6−ナフタレート
PC:ポリカーボネート
共重合PC:9,9−ビス(4−ヒドロキシエトキシ−3−メチルフェニル)フルオレン(BCF)70モル%共重合ポリカーボネート
PMMA:ポリメチルメタクリレート
PS:ポリスチレン
NY6:ナイロン-6
PEGPBT:平均分子量4000のポリエチレングリコール50重量%(5.2モル%)共重合ポリブチレンテレフタレート
PEGPET:平均分子量4000のポリエチレングリコール10重量%共重合ポリエチレンテレフタレート
共重合PET:平均分子量4000のポリエチレングリコール3重量%および5−ナトリウムスルホイソフタル酸成分6モル%共重合ポリエチレンテレフタレート
【0089】
【表2】

【0090】
実施例1は、5−ナトリウムスルホイソフタル酸成分を1.5モル%共重合したポリエチレン−2,6−ナフタレートとナイロン−6、および平均分子量4000のポリエチレングリコールを2.5モル%共重合したポリブチレンテレフタレートを各々290℃,270℃,230℃にて溶融し、計量後紡糸パック内に導入して1200m/分で紡糸した。得られた未延伸糸を予熱温度60℃にて2倍に延伸し、150℃で熱セットして巻き取った。得られた複合繊維をアルカリ処理しても交互積層体部のダメージはなく、得られた複合繊維の干渉反射光は鮮明な緑色を呈した。
【0091】
実施例2、3は、9,9−ビス(パラヒドロキシエトキシフェニル)フルオレン(BPEF)を70モル%共重合したポリエチレンテレフタレート(PET)または同ポリエチレン−2,6−ナフタレート(PEN)とポリメチルメタクリレート(PMMA)およびポリ乳酸を各々300℃,255℃,230℃にて溶融計量後紡糸パック内に導入し2000m/分で巻き取った。
【0092】
実施例4は、9,9−ビス(4−ヒドロキシエトキシ−3−メチルフェニル)フルオレン(BCF)を70モル%共重合したポリカーボネートを用い、その溶融温度を300℃とする以外は実施例2と同様に紡糸した。得られた複合繊維は、鮮明色と強い反射強度を有するものであった。またアルカリ水溶液処理工程における交互積層体部のダメージもなかった。
【0093】
実施例5は、5−ナトリウムスルホイソフタル酸を0.8モル%共重合したPETとナイロン−6、およびアルカリ易溶性を付与するためにPEGおよび5−ナトリウムスルホイソフタル酸成分を共重合したPETを用い、各々290℃,270℃,290℃の溶融温度にて紡糸し、2000m/分の速度で巻き取った。得られた未延伸糸を80℃で予熱し、1.5倍に延伸し、180℃で熱セットした。反射強度は、他の組合せに較べると屈折率差が小さいことに起因して、やや小さいが、耐熱性と強度に優れる複合繊維を得ることができた。
【0094】
実施例6は、9,9−ビス(パラヒドロキシエトキシフェニル)フルオレン(BPEF)を70モル%および5−ナトリウムスルホイソフタル酸成分を0.8モル%共重合したPETとナイロン−6、およびアルカリ易溶性を付与するためにPEGおよび5−ナトリウムスルホイソフタル酸成分を共重合したPETを用い、各々290℃,270℃,290℃の溶融温度にて紡糸し、2000m/分の速度で巻き取った。得られた未延伸糸を80℃で予熱し、2.0倍に延伸し、180℃で熱セットした。反射強度と耐熱性、耐溶剤性に優れる複合繊維を得ることができた。
【0095】
実施例7は、ポリカーボネート(PC)およびPMMAを290℃および255℃、さらにポリ乳酸を230℃で溶融し、計量して紡糸パックに導入し、3000m/分で紡糸した。得られた複合繊維は扁平率が大きく、強い鮮明色を示した。
【0096】
実施例8では、PMMAとPCの積層部の周囲にPCの中間保護層を設けた断面(図1の(2))を形成した。耐熱性の点で優れた。
【0097】
一方、比較例1では、SP値が近く、均一な積層形成能に優れると予想されるPENとPETに、PEGを10重量%共重合したPETを各々310℃,300℃,290℃にて溶融し、紡糸パックに導入し、1000m/分で巻き取った。その紡出糸を80℃予熱にて3倍延伸し、180℃で熱セットした。被覆層のアルカリ水溶液での溶解速度が交互積層体部を構成するポリマー対比、小さいほうで3倍(10倍以下)であるため、処理後の交互積層体部にアルカリ浸食が観察され、反射強度が著しく低下した。
【0098】
比較例2では、ナイロン−6とポリスチレン、およびポリ乳酸を270℃,270℃,230℃にて溶融し、紡糸パックに導入して2000m/分で巻き取った。交互積層体部のポリマーSP比が本発明の範囲から外れているため、交互積層体部の層厚さが大きくなり、光干渉発色機能が不十分となり、反射強度は小さくて本発明の目的とする鮮明色は得られなかった。
【0099】
以上の実施例および比較例で得られた複合繊維を束にし、表面に付着した油剤を除去し、糸長方向に垂直に150μmの長さとなるよう切断し、光輝材にした。実施例1〜8の複合繊維からなる光輝材はいずれも切断前の複合繊維と同様の優れた光干渉発色機能を有していたが、比較例1〜2の複合繊維からなる光輝材は光干渉発色機能が不十分であった。
【0100】
[実施例9]
以下の組成のルース・フェース・パウダーを調製した。
ナイロン−12粉末 30g、
実施例1で得られた光輝材 10g、
酸化鉄 3.5g、
シリコーン結合剤 3g、
タルク 全体を100gとする量
このパウダーを、顔につけたところ、審美性に優れ、光の干渉によってモルフォ蝶のように輝いて見えるメイクアップ効果があった。また、光輝材が微細であるため、上記パウダーをつけた顔の肌表面は非常に滑らかであった。
【0101】
[実施例10]
次の組成を有するファンデーションを調製した。
セチルジメチコンコポリオール/4−イソステアリン酸ポリグリセリル/ラウリン酸ヘキシル混合物(Goldschmidt社製Abil WE 09) 0.5g、
実施例2で得られた光輝材 10g、
酸化鉄 0.5g、
揮発性シリコーン(Dow Corning社製DC245 Fluid) 15g、
水 全体を100gとする量
このファンデーションを、顔につけたところ、審美性に優れ、光の干渉による新規なメイクアップ効果があった。また、光輝材が微細であるため、ファンデーションをつけた顔の肌表面は非常に滑らかであった。
【0102】
[実施例11]
次の組成を有するマスカラを調製した。
カルボキシメチルセルロース 15g、
ラポナイト(Laponite) 0.2g、
実施例3で得られた光輝材 10g、
フクシンの二ナトリウム塩 0.05g、
水 全体を100gとする量
このマスカラをまつげにつけたところ、審美性を有する、従来にない優れた色彩効果が得られた。また、光輝材が微細であるため、上記マスカラをつけたまつげ表面(側面)は非常に滑らかであった。
【0103】
[実施例12]
次の組成を有するマニキュア液を調製した。
ニトロセルロース 17.1g、
N−エチル−o,p−トルエンスルホンアミド 5.4g、
クエン酸トリブチルアセチル 5.4g、
実施例4で得られた光輝材 10g、
DC Red 34 0.025g、
ヘクトライト 1.0g、
イソプロピルアルコール 7.2g、
酢酸エチル、酢酸ブチル 全体を100gとする量
このマニキュア液は、爪に直接つけたが、審美性に優れた、光の干渉による新規な色彩効果が得られた。また、光輝材が微細であるため、上記マニキュア液をつけた爪の表面は非常に滑らかであった。
【0104】
[比較例3]
実施例1の光輝材に代えて比較例1の光輝材を用いた以外は、実施例8と同様にしてマニキュア液を調整し爪につけたが、光の干渉効果による色彩効果が十分でなかった。
【0105】
[実施例13]
実施例1の光輝材を塗料全体に対して10重量%となるよう2液アクリルウレタンベース塗料(日本ビーケミカル社製、製品名「R−241ベース」)に配合した塗料を得た。そして、このように配合した塗料をさらにアクリルウレタンシンナー(日本ビーケミカル社製、製品名「T−801ベース」)で、フォードカップ#4で11〜12秒程度の粘度に希釈した後、表面をイソプロピルアルコールによって洗浄したカラーベースとして黒色のABSからなる平板の上に膜厚が15〜20μmとなるように塗装し、80℃で20分間焼付けを行うことによって塗膜層を形成した。
塗装面は従来にない、審美性の高い干渉による優れた色彩効果を呈していた。また、光輝材が微細であるため、塗装面は非常に平滑であった。
【0106】
[実施例14]
着色された骨材を含む厚さ15mmの不飽和ポリエステルからなる人造大理石層に、実施例1の光輝材を10重量%含む透明の不飽和ポリエステルゲルを塗布して厚さが0.5mmの中間層を形成し、さらに最表層として中間層と同じ透明の不飽和ポリエステルゲルコート層を形成して、人造大理石成型品を作成した。
得られた人造大理石は、審美性の高い光の干渉による優れた色彩効果を呈していた。また、光輝材が微細であるため、中間層を塗布した際に均一に光輝材を分散させることができ、しかも平滑な塗布面が得られ、作業性は良好であった。
【0107】
[実施例15]
ビヒクルとしてライムロジンを用いた水性エマルジョン樹脂に実施例1の光輝材を10重量%含有させたグラビアインキを作成し紙に印刷した。印刷面は、審美性の高い光の干渉による優れた色彩効果を呈していた。また、光輝材が微細であるため、印刷面は非常に平滑であった。
【産業上の利用可能性】
【0108】
本発明の光干渉発色機能を有する光輝材は、製糸時の工程安定性は良好であるので、交互積層構造体部の厚さが小さくても優れた光干渉発色機能を有しており、しかも、被覆層を除去すれば細繊度の光干渉機能を有するものが容易に得られる。特に、塗料、インキ、人造大理石、塗被紙、化粧品、コーティング等に利用する場合の分散性が良好となるだけでなく、得られる製品の表面平滑性が向上して光干渉発色機能も良好で審美性も良好なものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0109】
【図1】(1)〜(3)は、それぞれ本発明の光輝材の繊維軸方向に直角な平面における横断面概略図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高屈折率側ポリマーの溶解度パラメーター値(SP1)と低屈折率側ポリマーの溶解度パラメーター値(SP2)の比率(SP比)が0.8≦SP1/SP2≦1.1の範囲にある、互いに屈折率の異なるアルカリ難溶性ポリマー層が扁平断面の長軸方向に平行に交互に積層してなる、厚さが10μm以下の交互積層体部を、厚さが2.0μm以上のアルカリ易溶性ポリマーで被覆した複合繊維を切断してなる光学干渉機能を有する光輝材原料。
【請求項2】
高屈折率側ポリマーの溶解度パラメーター値(SP1)と低屈折率側ポリマーの溶解度パラメーター値(SP2)の比率(SP比)が0.8≦SP1/SP2≦1.1の範囲にある、互いに屈折率の異なるアルカリ難溶性ポリマー層が扁平断面の長軸方向に平行に交互に積層してなる、厚さが10μm以下の交互積層体部を、厚さが0.1〜3.0μmのアルカリ難溶性ポリマーからなる保護層で被覆し、さらに厚さが2.0μm以上のアルカリ易溶性ポリマーで被覆した複合繊維を切断してなる光学干渉機能を有する光輝材原料。
【請求項3】
交互積層体部の積層数が10以上で、扁平断面の扁平率が3.5以上である請求項1または2記載の光学干渉機能を有する光輝材原料。
【請求項4】
アルカリ易溶性ポリマーが、ポリ乳酸、ポリエチレングリコールを共重合したポリエチレンテレフタレートもしくはポリブチレンテレフタレート、ポリエチレングリコールおよび/またはアルキルスルホン酸アルカリ金属塩を配合したポリエチレンテレフタレート、または、ポリエチレングリコールおよびスルホン酸金属塩基を有する二塩基酸成分を共重合したポリエチレンテレフタレートもしくはポリブチレンテレフタレートである請求項1〜3のいずれかに記載の光学干渉機能を有する光輝材原料。
【請求項5】
繊維軸方向の繊維長が、アルカリ易溶性ポリマー部を除いた繊維断面の短軸長さより長い請求項1〜4のいずれかに記載の光学干渉機能を有する光輝材原料。
【請求項6】
請求項5に記載の光輝材原料を、アルカリ水溶液で処理してなる光干渉発色機能を有する光輝材。
【請求項7】
請求項6に記載の光干渉発色機能を有する光輝材を含有する製品またはその組成物。
【請求項8】
請求項6に記載の光干渉発色機能を有する光輝材を含有する塗料。
【請求項9】
請求項6に記載の光学干渉機能を有する光輝材を含有する樹脂組成物。
【請求項10】
請求項6に記載の光学干渉機能を有する光輝材を含有するインキ組成物。
【請求項11】
請求項6に記載の光学干渉機能を有する光輝材を含有する人造大理石成型体。
【請求項12】
請求項6に記載の光学干渉機能を有する光輝材を含有する塗被紙。
【請求項13】
請求項6に記載の光学干渉機能を有する光輝材を含有する化粧品組成物。

【図1】
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【公開番号】特開2006−233357(P2006−233357A)
【公開日】平成18年9月7日(2006.9.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−49066(P2005−49066)
【出願日】平成17年2月24日(2005.2.24)
【出願人】(302011711)帝人ファイバー株式会社 (1,101)
【Fターム(参考)】