説明

光学式エンコーダおよびそれを備えた電子機器

【課題】透過型エンコーダおよび反射型エンコーダとして機能することができる。
【解決手段】 発光素子チップ43および受光素子チップ44を、発光素子形成面および受光素子形成面を基板42に対向させてフリップチップ実装する。基板42は、全体を不透明に構成すると共に、出射光用の第1光透過部42aと入射光用の第2光透過部42bとを有する。基板42のチップ43,44が実装されていない裏面側に、反射型移動体47を配置する。また、基板42のチップ43,44が実装されている表面側に、透過型移動体49を配置する。こうして、発光素子チップ43からの斜め成分光の反射型移動体47による反射光を、受光素子チップ44で受光する一方、発光素子チップ43からの横成分光の透過型移動体49の透過光を、受光素子チップ44で受光することによって、透過型エンコーダおよび反射型エンコーダとして機能させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、発光部からの光を移動体に照射し、上記移動体を透過した光あるいは上記移動体で反射された光を受光部によって検知して上記移動体の位置,移動速度および移動方向等を検出する光学式エンコーダ、および、それを備えた電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
発光部からの光を移動体に照射し、上記移動体を透過した光あるいは上記移動体で反射された光を受光部によって検知する光学式エンコーダとして、US 6,998,601 B2(特許文献1)に開示された「光学式エンコーダ」がある。図12は、上記特許文献1に開示された透過型光学式エンコーダであり、U字型のハウジング1に、空間2を介して互いに対向する発光部3と光検出部4とを設け、発光部3からレンズ5を介して出射された平行光6を、空間2を通過するコードホイール/コードストリップ7に照射し、コードホイール/コードストリップ7を通過した平行光6を光検出部4で検出し、電気信号に変換する。
【0003】
また、図13は、上記特許文献1に開示された反射型光学式エンコーダであり、リードフレーム11上に間隔をあけて発光部12と光検出部13とを設け、発光部12から光学要素14の第1ドーム状表面15を介して出射された平行光16を、リードフレーム11の一側を通過するコードホイール/コードストリップ17に照射し、コードホイール/コードストリップ17で反射した平行光を光学要素14の第2ドーム状表面18を介して光検出部13に集光し、光検出部13で検出して電気信号に変換する。
【0004】
また、上記光学式エンコーダとして、特開2000‐321096号公報(特許文献2)に開示された「光電式エンコーダ」がある。図14は、上記特許文献2に開示された反射型の光電式エンコーダの断面図である。図14に示す従来の反射型の光電式エンコーダにおいて、光源21からの光は光源側インデックス格子22によって変調されて反射型スケール23に入射され、反射型スケール23のスケール格子24で反射された光は受光側インデックス格子25によって変調されて受光素子チップ27に入射され、受光素子チップ27の受光素子で正弦波状変位信号に変換される。その場合、光源側インデックス格子22および受光側インデックス格子25は一枚の透明基板26上に形成されており、受光素子チップ27は上述の透明基板26上にフリップチップ方式によって搭載されている。
【0005】
また、上記光学式エンコーダとして、特開平11‐223532号公報(特許文献3)に開示された「エンコーダ」がある。図15は、上記特許文献3に開示された透過型のエンコーダの断面図である。図15に示す従来の透過型のエンコーダにおいて、光源31からの光は透過型のスケール32に入射され、スケール32の光学格子33を通過した光は受光集積化デバイス34に搭載された受光ICチップ35によって変調して受光される。その場合、受光ICチップ35はインデックススケールとなるフォトダイオードアレイ36を有しており、ガラス基板37上にフリップチップ実装方式によって搭載されている。
【0006】
しかしながら、上記従来の光学式エンコーダには、以下のような問題がある。
【0007】
上記特許文献1から特許文献3までに開示されているように、従来より光学式エンコーダとしては、透過型および反射型の2種類の光学式エンコーダが使用されている。透過型の光学式エンコーダは、外乱光の影響を防ぐことができ、優れたSN特性を有する。その反面、発光部と受光部とを、上記移動体に対して反対側に設ける必要があり、構成体積を必要とするため、設置が困難な場合がある。一方、反射型の光学式エンコーダは、外乱光の影響が無視できない反面、発光部と受光部とを上記移動体に対して同じ側に併置できるため、小型化が可能となる。
【0008】
上記光学式エンコーダは、複写機やインクジェットプリンタに複数使われている。そして、用途や場所に合わせて上記特性に応じて透過型や反射型を使い分ける必要があり、透過型と反射型とを併用できるエンコーダが望まれている。
【0009】
透過型と反射型とを併用できるエンコーダは、上記特許文献1から特許文献3までに開示されているような透過型および反射型の2種類の光学式エンコーダを組み合わせれば構成することが可能である。しかしながら、単に、従来の透過型の光学式エンコーダと反射型の光学式エンコーダとを組み合わせただけでは、上記移動体の一側方に発光部と反射光受光部とを配置する一方、上記移動体の他側方に透過光受光部を配置することになり、構成体積がさらに大きくなり、設置可能な箇所がさらに限られてしまうという問題がある。
【0010】
さらに、外乱光の構成成分や使い方等によって、可視光と非可視光とを使い分け可能なエンコーダであることが望ましい。しかしながら、上記特許文献1から特許文献3までに開示された光学式エンコーダでは、可視光と非可視光とを使い分けることができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】US 6,998,601 B2
【特許文献2】特開2000‐321096号公報
【特許文献3】特開平11‐223532号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
そこで、この発明の第1の課題は、透過型エンコーダおよび反射型エンコーダとして機能することができる簡素で且つ高精度な光学式エンコーダを提供することにある。
【0013】
また、第2の課題は、可視光と非可視光とを使い分けることができる光学式エンコーダを提供することにある。
【0014】
また、第3の課題は、上記光学式エンコーダを備えた電子機器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記課題を解決するため、この発明の光学式エンコーダは、
基板と、
発光素子が形成されると共に、上記発光素子の形成面を上記基板に対向させてフリップチップ実装された発光素子チップと、
受光素子が形成されると共に、上記受光素子の形成面を上記基板に対向させてフリップチップ実装された受光素子チップと、
光反射格子が一定の間隔で複数配列されると共に、上記光反射格子の配列方向に移動する反射型移動体と、
光透過格子が一定の間隔で複数配列されると共に、上記光透過格子の配列方向に移動する透過型移動体と
を備え、
上記反射型移動体は、上記基板における上記発光素子チップおよび上記受光素子チップが実装されていない裏面側に、移動方向が上記基板の上記裏面と略平行になるように配置されており、
上記透過型移動体は、上記基板における上記発光素子チップおよび上記受光素子チップが実装されている表面側に、移動方向が上記発光素子チップから出射されて上記基板の上記表面に沿って上記受光素子チップに向かう光と交差するように配置されており、
上記受光素子チップには、上記反射型移動体の上記光反射格子からの反射光を受光する反射光受光部と上記透過型移動体の上記光透過格子からの透過光を受光する透過光受光部とが設けられており、上記反射光受光部および上記透過光受光部は夫々複数の上記受光素子で構成されている
ことを特徴としている。
【0016】
上記構成によれば、基板にフリップチップ実装された発光素子チップから上記基板を介して反射型移動体に向けて斜めに出射された斜め成分光は、上記反射型移動体の光反射格子で反射されて基板にフリップチップ実装された受光素子チップに入射され、反射光受光部で受光される。さらに、発光素子チップから上記基板を介さずに透過型移動体に向けて横に出射された横成分光は、上記透過型移動体の光透過格子を透過して受光素子チップに入射され、透過光受光部で受光される。
【0017】
したがって、この発明の光学式エンコーダは、透過型エンコーダと反射型エンコーダとして機能することができる。すなわち、この発明の光学式エンコーダは、用途に応じて、上記透過型エンコーダおよび上記反射型エンコーダとして同時に機能させたり、何れか一方として機能させたり、使い分けが可能になる。そのため、用途に応じて上記透過型エンコーダと上記反射型エンコーダとを取り換える必要が無くなる。
【0018】
その場合、本光学式エンコーダの本体は、上記発光素子チップの発光素子の形成面(発光素子形成面)を上記基板に対向させてフリップチップ実装させる一方、上記受光素子チップの受光素子の形成面(受光素子形成面)を上記基板に対向させてフリップチップ実装させた、非常に簡素な構成を有している。したがって、構成体積の増加とそれに伴う設置箇所の限定とを抑制することができる。
【0019】
また、1実施の形態の光学式エンコーダでは、
上記基板は、遮光部と光透過部とを有しており、
上記光透過部は、上記発光素子チップから出射されて上記反射型移動体の上記光反射格子で反射された後に上記受光素子チップに入射する光の光路が通過する位置のみに設けられている。
【0020】
この実施の形態によれば、上記基板は、遮光部中に、出射光用の光透過部と入射光用の光透過部とが設けられている。さらに、上記発光素子チップの発光素子形成面と上記基板との間および上記受光素子チップの受光素子形成面と上記基板との間の隙間が小さくなっている。そのため、上記基板を通して出射される出射光の出射角、および、上記基板を通して入射される入射光の入射角は、上記基板の存在によって限定される。したがって、上記発光素子チップから出射されて上記反射型移動体の上記光反射格子で反射された後に上記受光素子チップに入射する光路が限定され、不要な反射光成分や外乱光が上記発光素子チップの各受光部に入射されるのを防止して、優れたSN特性を得ることができる。
【0021】
また、1実施の形態の光学式エンコーダでは、
上記受光素子チップの上記反射光受光部および上記透過光受光部には上記複数の受光素子が互いに隣接して配列されており、上記受光素子の形成面における各受光素子の境界部には、上記基板側に突出して側方からの上記受光素子への光の入射を遮断する光分離部が形成されている。
【0022】
この実施の形態によれば、上記受光素子チップの上記受光素子形成面における各受光素子の境界部には光分離部が形成されている。したがって、上記光分離部を上記基板に形成する場合よりも、側方から上記受光素子への入射光を効果的に遮光することができ、SN特性の低下を防止できる。
【0023】
また、1実施の形態の光学式エンコーダでは、
上記基板における上記発光素子チップと上記受光素子チップとの間には、上記透過型移動体の周縁部が挿通される空間が設けられている。
【0024】
この実施の形態によれば、上記透過型移動体の周縁部を上記基板における上記発光素子チップと上記受光素子チップとの間に設けられた空間に挿通させることによって、上記透過型移動体を、上記発光素子チップから出射された上記横成分光が上記光透過格子を通過できる最適な位置に設置することができる。したがって、上記透過型移動体の周縁が上記基板の面に接触して上記透過型移動体の動作が妨げられるのを防止できる。さらに、上記発光素子チップから上記受光素子チップへ向かう光が上記透過型移動体の光透過格子を充分に通過できず、受光素子からの受光信号のSN特性が低下するのを防止できる。
【0025】
また、1実施の形態の光学式エンコーダでは、
上記受光素子チップの上記反射光受光部および上記透過光受光部には上記複数の受光素子が互いに隣接して配列されており、
上記反射光受光部および上記透過光受光部の夫々には、上記複数の受光素子の配列方向に延在すると共に、上記反射型移動体における上記光反射格子の配列ピッチの長さ、あるいは、上記透過型移動体における上記光透過格子の配列ピッチの長さを有して、略一定光量の定常光をモニタリングするモニタ用受光素子が設けられており、
上記反射光受光部および上記透過光受光部の夫々に関して、上記各受光素子からの出力信号の値から上記モニタ用受光素子からの出力信号の値を減ずる減算器を備えている。
【0026】
この実施の形態によれば、上記受光素子チップの上記反射光受光部および上記透過光受光部の夫々に定常光用のモニタ用受光素子を設け、減算器によって、上記反射光受光部および上記透過光受光部における上記各受光素子からの出力信号の値から上記モニタ用受光素子からの出力信号の値を減ずるようにしている。
【0027】
したがって、上記減算器から出力される出力信号には、上記反射型移動体および上記透過型移動体を介さない上記定常光による直流成分は含まれていない。そのために、不要な直流の光電流によって受光回路が飽和することを防止でき、上記受光回路によって上記反射型移動体および上記透過型移動体の位置情報を正確に得ることができる。
【0028】
また、1実施の形態の光学式エンコーダでは、
上記発光素子チップは可視光発光素子および非可視光発光素子を有している。
【0029】
この実施の形態によれば、上記発光素子チップに可視光発光素子と非可視光発光素子とを設けているので、上記反射型移動体の上記光反射格子からの反射光と上記透過型移動体の上記光透過格子からの透過光とを効果的に分離することができ、上記反射型移動体および上記透過型移動体の移動情報の検出精度をより高めることができる。その場合に、上記反射型移動体および上記透過型移動体に対する光照射を、可視光と非可視光とを併用したり、可視光と非可視光とに切り換えたりして、行うことも可能になる。
【0030】
また、1実施の形態の光学式エンコーダでは、
上記受光素子チップは、上記可視光発光素子から出射された可視光を受光する可視光受光部と、上記非可視光発光素子から出射された非可視光を受光する非可視光受光部とを有している。
【0031】
この実施の形態によれば、上記受光素子チップに可視光受光部と非可視光受光部とを設けたので、上記反射型移動体の上記光反射格子からの反射光と上記透過型移動体の上記光透過格子からの透過光とをさらに効果的に分離して受光することができる。したがって、上記受光素子チップからの出力電流のSN特性を向上させることができる。
【0032】
また、1実施の形態の光学式エンコーダでは、
上記非可視光受光部の受光素子は深いPN接合で構成される一方、上記可視光受光部の受光素子は浅いPN接合で構成されており、
上記非可視光発光素子から上記反射型移動体に向けて出射された非可視光の上記反射型移動体による反射光を、上記受光素子チップの上記非可視光受光部で受光する一方、上記可視光発光素子から上記透過光受光部に向けて出射された可視光の上記透過光受光部からの透過光を、上記受光素子チップの上記可視光受光部で受光する。
【0033】
この実施の形態によれば、上記非可視光受光部を深いPN接合でなる受光素子で構成する一方、上記可視光受光部を浅いPN接合でなる受光素子で構成している。したがって、上記受光素子チップの深い位置まで到達する上記反射型移動体による反射光を、深いPN接合でなる上記非可視光受光部で効果的に検出する一方、上記受光素子チップの浅い位置にしか到達できない上記透過型移動体の透過光を、浅いPN接合でなる上記可視光受光部で効果的に検出することができ、上記反射型移動体による反射光と上記透過型移動体の透過光とをより分離して受光することができる。
【0034】
その結果、上記反射光受光部としての非可視光受光部に上記透過型移動体からの透過光が入射してノイズ成分となる一方、上記透過光受光部としての可視光受光部に上記反射型移動体からの反射光が入射してノイズ成分となることを防止でき、上記非可視光受光部および上記可視光受光部からの出力電流のSN特性を向上させることができる。
【0035】
また、この発明の電子機器は、
一方向に移動する第1移動部と、
上記一方向とは異なる他方向に移動する第2移動部と、
この発明の光学式エンコーダと
を備え、
上記光学式エンコーダの上記反射型移動体を、上記第1移動部に取り付ける一方、上記光学式エンコーダの上記透過型移動体を、上記第2移動部に取り付けた
ことを特徴としている。
【0036】
上記構成によれば、上記光学式エンコーダの上記反射型移動体を、上記第1移動部に取り付ける一方、上記光学式エンコーダの上記透過型移動体を、上記一方向とは異なる他方向に移動する上記第2移動部に取り付けているので、上記第1移動部の移動情報と上記第2移動部の移動情報とを一つの光学式エンコーダで検出することができる。
【0037】
さらに、上記第1移動部の移動特性と上記第2移動部の移動特性に応じて、上記反射型移動体と上記透過型移動体とを選択的に取り付けることができ、上記光学式エンコーダの取り付け性が向上する。
【0038】
その際に、上記光学式エンコーダの本体は、上記発光素子チップの発光素子形成面を上記基板に対向させてフリップチップ実装させる一方、上記受光素子チップの受光素子形成面を上記基板に対向させてフリップチップ実装させた、非常に簡素な構成を有している。したがって、構成堆積を小さくして、上記光学式エンコーダの取り付け性をさらに向上できる。
【発明の効果】
【0039】
以上より明らかなように、この発明の光学式エンコーダは、基板にフリップチップ実装された発光素子チップから上記基板を介して反射型移動体に向けて斜めに出射された斜め成分光を、上記反射型移動体の光反射格子で反射させて基板にフリップチップ実装された受光素子チップに入射させ、反射光受光部で受光するようにしている。さらに、発光素子チップから上記基板を介さずに透過型移動体に向けて横に出射された横成分光を、上記透過型移動体の光透過格子を透過して受光素子チップに入射させ、透過光受光部で受光するようにしている。
【0040】
したがって、この発明の光学式エンコーダによれば、透過型エンコーダと反射型エンコーダとして機能することができ、用途に応じて、上記透過型エンコーダおよび上記反射型エンコーダとして同時に機能させたり、何れか一方として機能させたり、使い分けが可能になる。そのため、用途に応じて上記透過型エンコーダと上記反射型エンコーダとを取り換える必要が無くなる。
【0041】
その場合、本光学式エンコーダの本体は、上記発光素子チップの発光素子形成面を上記基板に対向させてフリップチップ実装させる一方、上記受光素子チップの受光素子形成面を上記基板に対向させてフリップチップ実装させた、非常に簡素な構成を有している。したがって、構成体積の増加とそれに伴う設置箇所の限定とを抑制することができる。
【0042】
また、この発明の電子機器は、上記光学式エンコーダの上記反射型移動体を第1移動部に取り付ける一方、上記光学式エンコーダの上記透過型移動体を、上記第1移動部とは異なる方向に移動する第2移動部に取り付けているので、上記第1移動部の移動情報と上記第2移動部の移動情報とを一つの光学式エンコーダで検出することができる。さらに、上記第1移動部の移動特性と上記第2移動部の移動特性に応じて、上記反射型移動体と上記透過型移動体とを選択的に取り付けることができ、上記光学式エンコーダの取り付け性が向上する。
【0043】
その際に、上記光学式エンコーダの本体は、上記発光素子チップの発光素子形成面を上記基板に対向させてフリップチップ実装させる一方、上記受光素子チップの受光素子形成面を上記基板に対向させてフリップチップ実装させた、非常に簡素な構成を有している。したがって、構成堆積を小さくして、上記光学式エンコーダの取り付け性をさらに向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】この発明の光学式エンコーダの概念図である。
【図2】光分離部の説明図である。
【図3】反射型エンコーダおよび透過型エンコーダの一方として機能する場合における直流成分の説明図である。
【図4】受光回路の回路図である。
【図5】図4における各受光素子からの出力電流とアンプからの出力信号との波形を示す図である。
【図6】従来の反射型エンコーダの概略構成図である。
【図7】図1とは異なる光学式エンコーダの概念図である。
【図8】図1および図7とは異なる光学式エンコーダの概念図である。
【図9】図8における受光素子チップの構造を模式的に示す図である。
【図10】図1に示す光学式エンコーダをインクジェットプリンタに用いた場合の構成図である。
【図11】従来のインクジェットプリンタにおけるエンコーダの説明図である。
【図12】従来の透過型光学式エンコーダの構成図である。
【図13】従来の反射型光学式エンコーダの構成図である。
【図14】図13とは異なる従来の反射型の光電式エンコーダの断面図である。
【図15】図12とは異なる従来の透過型のエンコーダの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0045】
以下、この発明を図示の実施の形態により詳細に説明する。
【0046】
・第1実施の形態
図1は、本実施の形態の光学式エンコーダの概念図である。但し、図1(a)は部分断面図であり、図1(b)は平面図である。
【0047】
本実施の形態における光学式エンコーダ41は、基板42上に、発光部43および受光部44を搭載した本体と、この本体によって移動情報が検出される移動体47,49とで構成されている。
【0048】
上記発光部43は、発光ダイオードチップで構成されており、n型半導体基板に拡散等によってp型不純物を導入してPN接合で成る発光素子を形成した後、チップ状にダイシングして形成されている。以下、発光部43を発光素子チップ43と言う。そして、発光素子チップ43におけるp型不純物層側(つまり、上記発光素子の形成側)の四隅には、基板42上に形成されたパッド電極(図示せず)に電気的に接続するためのバンプ電極45が設けられている。
【0049】
上記受光部44は、フォトダイオードチップで構成されており、p型半導体基板に拡散等によってn型不純物を導入してNP接合で成る受光素子を形成した後、チップ状にダイシングして形成されている。以下、受光部44を受光素子チップ44と言う。そして、受光素子チップ44におけるn型不純物層側(つまり、上記受光素子の形成側)の四隅には、基板42上に形成されたパッド電極(図示せず)に電気的に接続するためのバンプ電極46が設けられている。尚、56は反射光受光部であり、57は透過光受光部である。
【0050】
上記構成を有する発光素子チップ43および受光素子チップ44は、所謂フリップチップ実装方式によって基板42上に搭載されている。すなわち、発光素子チップ43のバンプ電極45が基板42上の対応する上記パッド電極に圧着接続されることによって基板42上にフリップチップ実装されている。同様に、受光素子チップ44は、バンプ電極46が基板42上の対応する上記パッド電極に圧着接続されることによって基板42上にフリップチップ実装されている。
【0051】
上述したように、本実施の形態においては、上記発光素子チップ43を、その発光素子形成面を基板42に対向させてフリップチップ実装している。また、受光素子チップ44を、その受光素子形成面を基板42に対向させてフリップチップ実装している。したがって、発光素子チップ43の発光素子形成面と基板42との隙間、および、受光素子チップ44の受光素子形成面と基板42との隙間が小さくなる。
【0052】
さらに、上記発光素子チップ43の発光点から横方向に出射されて基板42における発光素子チップ43の実装面に沿って進む光を、基板42を通さずに受光素子チップ44に入射させることができ、発光素子チップ43の出射光の横方向成分を取り込むことが可能である。
【0053】
そのため、本実施の形態においては、上記構成を有する光学式エンコーダ41の本体に対して、上記移動体47,49を以下のように配置する。
【0054】
すなわち、上記基板42における発光素子チップ43および受光素子チップ44が実装されていない裏面側に、ストライプ状の光反射格子48が所定の間隔で複数形成されると共に、光反射格子48の配列方向に移動する帯状の反射型移動体47を、その移動方向が基板42と略平行になるように配置する。さらに、基板42における発光素子チップ43および受光素子チップ44が実装されている表面側であって、発光素子チップ43と受光素子チップ44との間には、円板状に形成され、その周囲に光透過格子50が放射状に所定の間隔で複数形成されると共に、光透過格子50の配列方向に回転移動する透過型移動体49を、その移動方向が発光素子チップ43から出射されて基板42の上記実装面に沿って受光素子チップ44へ直接向かう光の光路に略直交するように、且つ上記光路が光透過格子50を通過するように配置している。
【0055】
但し、図1(a)においては、理解しやすくするため、透過型移動体49を、発光素子チップ43から受光素子チップ44への光路に対して斜めに記載している。以下、図3(b),図7(a)および図8においても同様である。
【0056】
そして、上記基板42には、発光素子チップ43から出射され、反射型移動体47の光反射格子48で反射され(以下、単に「反射型移動体47で反射され」と言う)て、受光素子チップ44に入射する光の透過位置に、発光素子チップ43側の第1光透過部42aと受光素子チップ44側の第2光透過部42bとの2つの光透過部を設けている。そして、基板42における第1光透過部42aおよび第2光透過部42b以外の領域は不透明に構成されている。このような基板42は、金属板等の不透明な基板に2つの光透過部用の穴を形成する方法や、ガラス等の透明基板上に2つの光透過部を残して不透明膜を形成する方法等によって、作成することができる。
【0057】
尚、図1(b)においては、煩雑になるのを避けるため、基板42に対して不透明であることを表すために描くべきハッチングを省略している。また、反射型移動体47も省略している。そして、理解しやすくするため、基板42を透過して発光素子チップ43,受光素子チップ44および透過型移動体49が見えるように描いている。以下、図7(b)においても同様である。
【0058】
上記光学式エンコーダ41を上述のように構成することによって、発光素子チップ43から斜め方向に出射されて基板42の第1光透過部42aを通過した光(以下、「斜め成分光」とも言う)の反射型移動体47による反射光を、受光素子チップ44によって基板42の第2光透過部42bを通して受光することができる。それと同時に、発光素子チップ43から出射されて基板42の上記表面に沿って進む光(以下、「横成分光」とも言う)の透過型移動体49の光透過格子50を透過した(以下、単に「透過型移動体49を透過した」と言う)透過光を、受光素子チップ44によって基板42を介さずに受光することができる。
【0059】
したがって、本実施の形態の光学式エンコーダ41は、透過型エンコーダおよび反射型エンコーダとして機能することができるのである。
【0060】
その場合、上述したように、上記基板42は、全体が不透明に構成され、発光素子チップ43から出射されて反射型移動体47に向かう光の透過位置に第1光透過部42aが設けられ、反射型移動体47で反射されて受光素子チップ44に向かう光の透過位置に第2光透過部42bが設けられている。さらに、発光素子チップ43の発光素子形成面と基板42との間の隙間および受光素子チップ44の受光素子形成面と基板42との間の隙間が小さくなっている。そのために、基板42を介して出射される発光素子チップ43からの出射光の出射角、および、基板42を介して入射される受光素子チップ44への入射光の入射角は、基板42の存在によって限定される。その結果、図1(a)に示す反射型移動体47に対する反射光路とは異なる光路による反射光成分や外乱光が発光素子チップ43の各受光部56,57に入射されることを防止して、優れたSN特性を有する反射型エンコーダとして機能することができる。
【0061】
図6は、従来の反射型エンコーダの概略構成図である。図6に示すように、従来は、表面に拡散等でPN接合を形成してなる発光チップ51および受光チップ52を、PN接合が形成されていない裏面をダイボンド等によって基板53上に設置し、パッド電極(図示せず)をワイヤ54によって基板53上の配線(図示せず)に接着している。そのために、従来の反射型エンコーダにおいては、発光チップ51の発光素子形成面と反射型の移動体55との間および受光チップ52の受光素子形成面と反射型の移動体55との間には何もなく、図6において点線の矢印で示すように、種々の異なる光路での反射光成分や外乱光が受光チップ52の受光素子形成面に入射されることになり、SN特性の低下を招いている。
【0062】
これに対し、本実施の形態においては、上記発光素子チップ43を、その発光素子形成側の面を基板42に対向させてフリップチップ実装している。さらに、受光素子チップ44を、その受光素子形成側の面を基板42に対向させてフリップチップ実装している。そして、基板42には、発光素子チップ43からの出射光用の第1光透過部42aと受光素子チップ44への入射光用の第2光透過部42bとが設けられている。したがって、基板42を介して放出される発光素子チップ43からの出射光の出射角、および、基板42を介して入射される受光素子チップ44への入射光の入射角は、基板42の存在によって限定されることになり、基板42により外乱成分を遮断でき、優れたSN特性を呈することができるのである。
【0063】
また、インクジェットプリンタにおいては、主に、印字を行うインクヘッドの動作部用と印字される紙の動作部用との2つの光学式エンコーダが用いられている。本実施の形態によれば、光学式エンコーダ41は、透過型エンコーダおよび反射型エンコーダとして機能することができる。したがって、インクジェットプリンタにおいて本実施の形態の光学式エンコーダ41を用いれば、1つの光学式エンコーダ41でインクヘッドの動作部と紙の動作部とを制御可能となり、大いに有益である。
【0064】
ところで、光学式エンコーダにおいては、図1(b)に示すように、上記受光素子チップ44の反射光受光部56および透過光受光部57には、互いに電気的に分離されたn型不純物層を複数列形成し、個々のNP接合で成る受光素子を複数設けている。そして、検出処理部(図示せず)によって、複数の受光素子における受光量の大小を検出して対応する移動体47,49の移動方向や移動速度を検知するようにしている。そのために、各受光素子間の光学的な分離が、上記検出処理部による移動方向や移動速度の検知性能を大きく左右することになる。
【0065】
そこで、例えば、上記特許文献2に開示された反射型の光電式エンコーダでは、透明基板26上における受光素子チップ27の位置に受光側インデックス格子25を形成し、この受光側インデックス格子25によって受光素子チップ27上に形成された複数の受光素子の光学的な分離を行っている。ところが、この方法では、受光側インデックス格子25の受光素子チップ27への密着が難しく、設置ずれ等によって受光素子の分解能の低下が生じやすいという問題がある。
【0066】
このような問題に対処するため、本実施の形態においては、上記基板42に凹凸や分離部を設けるのではなく、図2に示すように、受光素子チップ44における例えば反射光受光部56においては、n型不純物層の形成面に例えばメタルをバンプ電極46と同等の高さに塗布し、エッチング等によって各受光素子56a〜56dの境界部にバンプ電極46と同程度の厚みの光分離部58を形成している。こうすることによって、上記光分離部を基板42に形成する場合よりも、側方からの入射光を効果的に遮光することができ、側方からの入射光によるSN特性の低下を防止することができるのである。
【0067】
上述したように、本実施の形態の光学式エンコーダ41は、透過型エンコーダおよび反射型エンコーダとして機能することができる。ところが、常時透過型エンコーダおよび反射型エンコーダとして機能するとは限らず、図3(a)に示すように、反射型移動体47に対して基板42の第1光透過部42aを通過する上記斜め成分光を照射するだけの場合、または、図3(b)に示すように、透過型移動体49に対して基板42を通過しない上記横成分光を照射するだけの場合がある。
【0068】
このように、上記反射型エンコーダおよび透過型エンコーダの何れか一方のみとして機能させる場合には、対応する受光部56,57からの出力電流の直流成分が増えることになる。例えば反射型エンコーダのみとして機能させる場合には、図3(a)に示すように、透過型移動体49を通過しない上記横成分光を含む反射型移動体47を介しない光は、反射光受光部56からの出力電流の直流成分となる。また、透過型エンコーダのみとして機能させる場合には、図3(b)に示すように、透過型移動体49を介しない光は、透過光受光部57からの出力電流の直流成分となる。このように、各受光部56,57からの出力電流の直流成分が増えた場合は、上記検出処理部の前段を構成する受光回路が飽和してしまい、移動体47,49の移動方向や移動速度を正確に検出できなくなる可能性がある。
【0069】
そこで、本実施の形態においては、上記受光素子チップ44に移動体47,49を介しない略一定光量の定常光をモニタリングするモニタ用受光素子を設け、上記受光回路において受光素子56の出力電流値から上記モニタ用受光素子の出力電流値を差し引くことによって、直流成分をキャンセルするようにしている。
【0070】
図4は、上記受光回路の回路図である。ここで、本受光回路として反射型エンコーダ用の受光回路を一例に挙げて説明するが、透過型エンコーダ用の受光回路の場合も同様である。本受光回路は、受光素子チップ44と、反射光受光部56と、反射光受光部56の各受光素子56a〜56dからの光電流を比較増幅するアンプ59,60と、モニタ用受光素子61と、減算器62〜65とで、概略構成されている。また、図5は、図4における受光素子56a〜56dからの出力電流とアンプ59,60からの出力信号との理想的な波形を示す。
【0071】
上述したように、上記受光素子56a〜56dは、受光素子チップ44上に、互いに電気的に分離された状態で隣接して配列されている。ここで、受光素子56a〜56dの配列ピッチ(各受光素子56a〜56dの幅)は、反射型移動体47における光反射格子48の配列ピッチの1/4となっている。そして、反射型移動体47が光反射格子48の配列方向に移動すると、図5(a)に示すように、受光素子56a〜56dから光電流が出力される。そのうち、180度の位相差を有している光電流A+(受光素子56a)と光電流A−(受光素子56c)とが対となってアンプ59に入力され、アンプ59で各入力信号のレベルが比較されて増幅される。また、光電流B+(受光素子56b)と光電流B−(受光素子56d)とが対となってアンプ60に入力され、アンプ60で各入力信号のレベルが比較されて増幅される。その結果、図5(b)にAチャネルとBチャネルとで示すように、90度の位相差を有する2つのディジタル矩形波が得られる。
【0072】
こうして、上記アンプ59あるいはアンプ60から出力されるディジタル矩形波の数を上記検出処理部の後段を構成する検出回路でカウントすることによって、反射型移動体47の移動量および移動速度が検出される。さらに、アンプ59およびアンプ60から出力される2種類の信号を用いて、上記検出回路によって、反射型移動体47の移動方向が検出される。
【0073】
その場合、上述したように、上記反射型移動体47を介しない光が各受光素子56a〜56dに入力されて、各受光素子56a〜56dからの出力電流に直流成分が含まれてアンプ59,60が飽和した場合には、アンプ59,60からは図5(b)に示すような90度の位相差を有する2つのディジタル矩形波が正確に得られなくなってしまう。
【0074】
そこで、本実施の形態においては、図4に示すように、上記反射光受光部56に、上記受光素子56a〜56dと同じ導電型の不純物層で成ると共に、受光素子56a〜56dの配列方向に延在するモニタ用受光素子61を設ける。ここで、モニタ用受光素子61の受光素子56a〜56dの配列方向への長さは、反射型移動体47の移動に基づく交流成分を排除して純粋に直流成分のみを検出できるように、反射型移動体47における光反射格子48の配列ピッチ(例えば、受光素子56aからの光電流の1周期)の長さに設定する必要がある。
【0075】
さらに、上記受光素子56aからアンプ59への配線に減算器62を介設し、受光素子56cからアンプ59への配線に減算器63を介設し、受光素子56bからアンプ60への配線に減算器64を介設し、受光素子56dからアンプ60への配線に減算器65を介設している。そして、反射光受光部56への入射光に基づいてモニタ用受光素子61によって検出された直流の光電流が各減算器62〜65に供給され、各減算器62〜65によって対応する受光素子56a〜56dからの光電流からモニタ用受光素子61からの直流成分が減算され、この直流成分が減じられた正弦波の光電流が対応するアンプ59,60に供給される。したがって、透過型移動体49を通過しない上記横成分光を含む反射型エンコーダ用受光素子56への入射光に基づく不要な直流の光電流によってアンプ59,60が飽和することを防止でき、アンプ59,60からは90度の位相差を有する2つのディジタル矩形波を正確に得ることができるのである。
【0076】
尚、図4においては、上記反射型エンコーダ用の受光回路の場合について説明しているが、透過型エンコーダ用の受光回路の場合には、図4における反射光受光部56を透過型エンコーダ用受光素子57(図1参照)に、反射型移動体47を透過型移動体49に置き換えればよい。
【0077】
その結果、本光学式エンコーダ41を上記反射型エンコーダおよび透過型エンコーダの何れか一方のみとして機能させる場合に、反射型移動体47あるいは透過型移動体49を介しない受光素子チップ44への入射光に基づく不要な直流電流を除去することができ、アンプ59,60からの出力信号のSN特性を向上させることができ、より広範囲の光学条件での使用が可能となるのである。
【0078】
以上のごとく、本実施の形態においては、上記発光素子チップ43を、発光素子形成面を基板42に対向させてフリップチップ実装する一方、受光素子チップ44を、受光素子形成面を基板42に対向させてフリップチップ実装している。また、基板42は、全体を不透明に構成すると共に、発光素子チップ43からの出射光用の第1光透過部42aと受光素子チップ44への入射光用の第2光透過部42bとを設けている。そして、基板42における発光素子チップ43および受光素子チップ44が実装されていない裏面側に、反射型移動体47を、その移動方向が基板42と略平行になるように配置している。
【0079】
また、上記発光素子チップ43の発光点から横方向に出射されて基板42における発光素子チップ43の実装面に沿って進む上記横成分光を、基板42を通さずに受光素子チップ44に直接入射させることができる。そして、基板42における発光素子チップ43および受光素子チップ44が実装されている表面側であって、発光素子チップ43と受光素子チップ44との間に、透過型移動体49を、その移動方向が上記横成分光と交差する方向であって、上記横成分光が光透過格子50を通過可能なように配置している。
【0080】
したがって、発光素子チップ43から出射されて基板42の第1光透過部42aを通過した斜め成分光の反射型移動体47による反射光を、基板42の第2光透過部42bを通して受光素子チップ44で受光することができる。さらに、発光素子チップ43から出射されて基板42の上記表面に沿って進む横成分光の透過型移動体49の透過光を、受光素子チップ44で基板42を介さずに受光することができる。すなわち、本実施の形態の光学式エンコーダ41は、透過型エンコーダおよび反射型エンコーダとして機能することができる。
【0081】
その際に、上記発光素子チップ43の発光素子形成面と基板42との間および受光素子チップ44の受光素子形成面と基板42との間の隙間が小さくなっている。さらに、基板42は、全体が不透明に構成され、出射光用の第1光透過部42aと入射光用の第2光透過部42bとが設けられている。そのために、基板42を介して出射される出射光の出射角、および、基板42を介して入射される入射光の入射角は、基板42の存在によって限定される。したがって、不要な反射光成分や外乱光が発光素子チップ43の各受光部56,57に入射されるのを防止して、優れたSN特性を得ることができる。
【0082】
また、上記受光素子チップ44の両受光部56,57において、n型不純物層の形成面における各受光素子の境界部に、バンプ電極46と同程度の厚みの光分離部58を金属等で形成している。したがって、上記光分離部を基板42に形成する場合よりも、各受光素子に対する側方からの入射光を効果的に遮光することができ、側方からの入射光によるSN特性の低下を防止できる。
【0083】
また、上記受光素子チップ44の両受光部56,57に、受光部56,57を構成する複数の受光素子の配列方向に延在して、移動体47,49における光格子48,50の配列ピッチの長さを有するモニタ用受光素子61を設け、上記各受光素子からの光電流よりモニタ用受光素子61からの定常光量を表す光電流を減じて、対応するアンプ59,60に供給するようにしている。したがって、移動体47,49を通過しない定常光に基づく不要な直流の光電流によってアンプ59,60が飽和することを防止でき、アンプ59,60からディジタル矩形波を正確に得ることができる。
【0084】
尚、実施の形態においては、上記透過型移動体49として、回転駆動される円板状の移動体を用いているが、反射型移動体47のように直線駆動される帯状の移動体を用いても差し支えない。同様に、反射型移動体47として、透過型移動体49のように回転駆動される円板状の移動体を用いても差し支えない。このことは、以下の実施の形態でも同様である。
【0085】
・第2実施の形態
図7は、本実施の形態の光学式エンコーダの概念図である。但し、図7(a)は部分断面図であり、図7(b)は平面図である。尚、図7においては、図1に示す第1実施の形態と同じ部材には第1実施の形態と同じ番号を付して、詳細な説明は省略する。
【0086】
上記第1実施の形態においては、光学式エンコーダ41を透過型エンコーダとして機能させるために、発光素子チップ43から出射されて基板42の下面に沿って進む上記横成分光を受光素子チップ44に取り込むようにしている。
【0087】
その場合、上記発光素子チップ43の発光点と基板42との隙間は、バンプ電極45の高さに上記p型不純物層の深さを加えた分の高さに略等しく、非常に狭い。そのため、発光素子チップ43と受光素子チップ44との間に配置される透過型移動体49は、発光素子チップ43から受光素子チップ44に向かって基板42の下面に沿って進む光が、移動体49の光透過格子50を通過可能なように、円盤状の透過型移動体49を、その周縁が基板42の下面の極近傍に位置するように配置させる必要がある。
【0088】
しかしながら、上述のような透過型移動体49の配置では、移動体49の周縁が基板42の下面に接触して透過型移動体49の動作を妨げたり、移動体49の周縁が基板42の下面から離間し過ぎて発光素子チップ43から受光素子チップ44への光が移動体49の光透過格子50を充分に通過できず、受光素子からの受光信号のSN特性が低下したりする可能性がある。
【0089】
そこで、本実施の形態における光学式エンコーダ71では、基板72における発光素子チップ43と受光素子チップ44との間に、透過型移動体49の周縁が挿通される貫通穴73を設けるのである。こうすることによって、移動体49の周縁が基板72の下面に接触して透過型移動体49の動作が妨げられることを防止できる。
【0090】
さらに、上記基板72に設けられた貫通穴73内に透過型移動体49の周縁を挿通させることによって、透過型移動体49の位置を第1実施の形態の場合よりも図7(a)の上側に移動させることができる。その結果、発光素子チップ43から受光素子チップ44への光が、透過型移動体49の光透過格子50を充分に通過できる位置に透過型移動体49を設置でき、発光素子56による受光信号のSN特性が低下するのを防止できるのである。
【0091】
尚、上記貫通穴73を設ける変わりに、基板72を切り離して、発光素子チップ43と受光素子チップ44とを異なる基板上に搭載し、透過型移動体49を上記異なる基板の間に配置しても構わない。要は、基板72における発光素子チップ43と受光素子チップ44との間に、透過型移動体49の周縁が挿通される空間を設ければよいのである。
【0092】
以上のごとく、本実施の形態によれば、光学式エンコーダ71をより確実に透過型エンコーダとして機能させることができ、より効果的に透過型エンコーダおよび反射型エンコーダとして機能を発揮させることができるのである。
【0093】
・第3実施の形態
上記第1実施の形態の光学式エンコーダ41および上記第2実施の形態の光学式エンコーダ71は、透過型エンコーダおよび反射型エンコーダとして機能することができる。その場合、反射型移動体47で反射される光と透過型移動体49を透過する光とは、同一の発光素子チップ43から出射されて同一の受光素子チップ44で受光される。そのため、受光素子チップ44の反射光受光部56に透過型移動体49からの透過光が入射して、ノイズ成分となる。同様に、受光素子チップ44の透過光受光部57に反射型移動体47からの反射光が入射して、ノイズ成分となる。したがって、上記ノイズ成分の大きさによっては、受光素子チップ44からの出力電流のSN特性が悪くなる恐れがある。
【0094】
図8は、本実施の形態の光学式エンコーダの概念図である。図8に示す光学式エンコーダ75は、上述のような恐れに対処するための光学式エンコーダである。尚、図8においては、図1に示す第1実施の形態と同じ部材には第1実施の形態と同じ番号を付して、詳細な説明は省略する。
【0095】
本実施の形態における光学式エンコーダ75の本体は、基板76上に、2つの発光部77,78と受光部79とを、上記第1実施の形態の場合と同様にフリップチップ実装して構成されている。
【0096】
上記発光部77は、発光ダイオードチップで構成されており、n型半導体基板に拡散等によってp型不純物を導入して、PN接合で成ると共に波長の長い非可視光を発光する発光素子を形成した後、チップ状にダイシングして形成されている。以下、発光部77を、非可視光発光素子チップ77と言う。
【0097】
上記発光部78は、発光ダイオードチップで構成されており、n型半導体基板に拡散等によってp型不純物を導入して、PN接合で成ると共に波長の短い可視光を発光する発光素子を形成した後、チップ状にダイシングして形成されている。以下、発光部78を、可視光発光素子チップ78と言う。
【0098】
上記受光部79は、フォトダイオードチップで構成されており、非可視光発光素子チップ77からの非可視光と可視光発光素子チップ78からの可視光とを分離して受光するために、深いPN接合と浅いPN接合とを有している。以下、受光部79を、受光素子チップ79と言う。
【0099】
図9は、上記受光素子チップ79の構造を模式的に示している。ここで、図9(a)は平面図である。また、図9(b)は、図9(a)のA‐A'矢視断面図である。また、図9(c)は、図9(a)のB‐B'矢視断面図である。図9において、受光素子チップ79は、p型半導体基板に拡散等によってn型不純物を導入して深いPN接合を複数形成し、可視光検出用の受光素子となるべき箇所のn型不純物層に拡散等によってp型不純物を導入して浅いPN接合を形成した後、チップ状にダイシングして形成されている。
【0100】
図9に示すように、一つの受光素子チップ79であっても深いPN接合と浅いPN接合とでなる2種類の受光素子を形成することによって、深いPN接合でなる受光部80で波長の長い非可視光を検出することができ、浅いPN接合でなる受光部81で波長の短い可視光を検出することができる。以下、受光部80を非可視光受光部80と言う。また、受光部81を可視光受光部81と言う。
【0101】
一方において、上記発光素子チップ77,78から出射されて基板76を通過した上記斜め成分光における反射型移動体47による反射光は、受光素子チップ79に対して斜めに入射して深い位置まで到達する。また、発光素子チップ77,78から出射されて基板76の下面に沿って進む上記横成分光における透過型移動体49の透過光は、受光素子チップ79に対して横方向に入射して浅い位置にしか到達できない。
【0102】
そこで、本実施の形態においては、図8に示すように、上記非可視光発光素子チップ77を、出射された上記斜め成分光が反射型移動体47で照射し、反射型移動体47からの反射光が受光素子チップ79の非可視光受光部80に入射するように配置する。また、可視光発光素子チップ78は、出射された上記横成分光が透過型移動体49を照射し、透過型移動体49からの透過光が受光素子チップ79の可視光受光部81に入射されるように配置する。つまり、非可視光受光部80を上記反射光受光部として機能させる一方、可視光受光部81を上記透過光受光部として機能させるのである。
【0103】
そして、上記基板76には、上記第1実施の形態の場合と同様に、上記非可視光発光素子チップ77から出射され、反射型移動体47で反射されて非可視光受光部80に入射する光の透過位置に、非可視光発光素子チップ77側の第1光透過部76aと非可視光受光部80側の第2光透過部76bとの2つの光透過部を設けている。尚、このような基板76は、金属板等の不透明な基板に2つの光透過部用の穴を形成する方法や、ガラス等の透明基板上に2つの光透過部を残して不透明膜を形成する方法等によって、作成することができる。
【0104】
尚、図9においては、上記受光素子チップ79の構造を分かり易くするために模式的に示している。実際の受光素子チップ79においては、深いPN接合でなる非可視光受光部80のn型不純物層は、図4の場合と同様に、その幅が反射型移動体47における光反射格子48の配列ピッチの1/4であって、反射型移動体47の移動方向に隣接して配列された4個の受光素子に分割されている。同様に、浅いPN接合でなる可視光受光部81のp型不純物層は、その幅が透過型移動体49における光透過格子50の配列ピッチの1/4であって、透過型移動体49の移動方向に隣接して配列された4個の受光素子に分割されている。さらに、非可視光受光部80と可視光受光部81との配列方向は、図8の配列方向とは異なる。
【0105】
こうすることによって、上記非可視光発光素子チップ77から出射されて基板76の第1光透過部76aを通過した波長の長い非可視光の反射型移動体47による反射光は、受光素子チップ79の深いPN接合でなる非可視光受光部80まで到達し、非可視光受光部80によって効率良く検出される。これに対し、可視光発光素子チップ78から出射された波長の短い可視光の透過型移動体49の透過光は、受光素子チップ79の浅いPN接合でなる可視光受光部81にしか到達できず、可視光受光部81によって効率良く且つ非可視光受光部80による検出電流とは分離されて検出される。
【0106】
その場合、上記非可視光発光素子チップ77から出射された上記横成分光が、透過型移動体49を透過して受光素子チップ79の可視光受光部81に入射すると、上記横成分光が外乱光となる。同様に、可視光発光素子チップ78から出射された上記斜め成分光が、反射型移動体47で反射されて受光素子チップ79の非可視光受光部80に入射すると、上記斜め成分光が外乱光となる。そこで、上記各外乱光が発生しないように、非可視光発光素子チップ77,可視光発光素子チップ78,反射型移動体47および透過型移動体49の配置を設定する必要がある。
【0107】
また、上記各外乱光が発生しないように、非可視光発光素子チップ77,可視光発光素子チップ78,反射型移動体47および透過型移動体49の配置を設定しても、非可視光発光素子チップ77から出射された上記斜め成分光が、反射型移動体47で反射されて受光素子チップ79の可視光受光部81に入射する場合がある。その場合、可視光受光部81を成す浅いPN接合におけるn型不純物層の周囲にはp型半導体基板が存在し、このn型不純物層とp型半導体基板とで深いPN接合を構成している。そのために、可視光受光部81に入射した非可視光発光素子チップ77からの上記斜め成分光が、可視光受光部81の周囲の深いPN接合によって光電変換されて、可視光受光部81から出力される光電流のSN特性を低下させる。
【0108】
そこで、上記受光回路を、可視光受光部81の周囲の深いPN接合による光電流を検出し、この検出値を可視光受光部81による光電流の値から減ずるように構成することによって、可視光受光部81から出力される光電流のSN特性を向上させることができる。
【0109】
以上のごとく、本実施の形態の光学式エンコーダ75においては、基板76上に、非可視光を発光する非可視光発光素子チップ77と、可視光を発光する可視光発光素子チップ78と、深いPN接合でなる非可視光受光部80および浅いPN接合でなる可視光受光部81を有する受光素子チップ79とを、フリップチップ実装して構成している。そして、受光素子チップ79の非可視光受光部80によって、非可視光発光素子チップ77から出射された上記斜め成分光の反射型移動体47での反射光を受光して光電流を出力する。また、受光素子チップ79の可視光受光部81によって、可視光発光素子チップ78から出射された上記横成分光の透過型移動体49での透過光を受光して光電流を出力するようにしている。
【0110】
このように、上記受光素子チップ79に、深いPN接合でなる非可視光受光部80と浅いPN接合でなる可視光受光部81とを設けることにより、受光素子チップ79の深い位置まで到達する反射型移動体47の反射光を、深いPN接合でなる非可視光受光部80で効果的に検出する一方、受光素子チップ79の浅い位置にしか到達できない透過型移動体49の透過光を、浅いPN接合でなる可視光受光部81で効果的に検出することができ、反射型移動体47の反射光と透過型移動体49の透過光とを分離して受光することができる。
【0111】
したがって、上記受光素子チップ79における上記反射光受光部としての非可視光受光部80に、透過型移動体49からの透過光が入射してノイズ成分となることを防止することができ、非可視光受光部80からの出力電流のSN特性をよくすることができる。同様に、受光素子チップ79における上記透過光受光部としての可視光受光部81に、反射型移動体47からの反射光が入射してノイズ成分となることを防止することができ、可視光受光部81からの出力電流のSN特性を向上させることができる。
【0112】
さらに、上記反射型移動体47に上記斜め成分光を照射する発光素子チップを、波長の長い非可視光を発光する非可視光発光素子チップ77とする一方、透過型移動体49に上記横成分光を照射する発光素子チップを、波長の短い可視光を発光する可視光発光素子チップ78としている。したがって、受光素子チップ79によって、反射型移動体47の反射光と透過型移動体49の透過光とをさらに効果的に分離して受光することができ、受光素子チップ79からの出力電流のSN特性をさらに向上させることができる。
【0113】
尚、本実施の形態においては、上記非可視光発光素子チップ77と可視光発光素子チップ78との夫々を個別の発光素子チップで構成している。しかしながら、この発明はそれに限定されるものではなく、非可視光発光素子と可視光発光素子とを一つの発光素子チップに作り込んでも何ら差し支えない。
【0114】
また、本実施の形態においては、上記非可視光発光素子チップ77と可視光発光素子チップ78とを、反射型移動体47の反射光と透過型移動体49の透過光との分離に用いているが必ずしもその必要はなく、可視光の外乱光が予測される場合に、非可視光発光素子チップ77のみを駆動して、受光素子チップ79からの出力電流のSN特性の向上を図ることもできる。
【0115】
・第4実施の形態
図10は、上記第1実施の形態における光学式エンコーダ41を、上記電子機器の一例としてのインクジェットプリンタに用いた場合の構成図である。
【0116】
従来のインクジェットプリンタは、図11に示すように、印字ヘッド88の位置・動作検出を行うための反射型あるいは透過型のキャリッジ制御用エンコーダ89と、紙送り動作の検出を行うための透過型の紙送り制御用エンコーダ90との2つエンコーダを用いている。そのために、従来のインクジェットプリンタにおいては、紙送り用の回転軸91の端部と紙の印字面との2箇所に、エンコーダ設置用の領域を確保する必要がある。特に、キャリッジ制御用エンコーダ89は印字ヘッド88と共に移動するため、円筒状の紙の印字面には紙の全幅に亘って空間を確保する必要がある。
【0117】
これに対して、本実施の形態におけるインクジェットプリンタでは、図10に示すように、円筒状に巻き上げられた紙85を回転させて送り出す上記特許請求の範囲における上記第2移動部である回転軸86の一端部に、上記第1実施の形態における光学式エンコーダ41の円板状を成す透過型移動体49を取り付けている。また、円筒状の紙85の印字面に沿って回転軸86の延在方向に移動する上記特許請求の範囲における上記第1移動部である印字ヘッド87に、光学式エンコーダ41の帯状を成す反射型移動体47を取り付けている。そして、反射型移動体47を紙85の印字面に沿って回転軸86と同方向に延在させて、透過型移動体49の周縁の近傍を通過するように配設している。
【0118】
この状態で、上記透過型移動体49の周縁における反射型移動体47の通過位置に、基板42上に発光素子チップ43と受光素子チップ44とがフリップチップ実装されて成る光学式エンコーダ41の本体を設置している。その場合、反射型移動体47は、基板42における発光素子チップ43および受光素子チップ44が実装されていない方の裏面側に配置される。また、透過型移動体49は、基板42における発光素子チップ43および受光素子チップ44が実装されている方の表面側であって、発光素子チップ43と受光素子チップ44との間に、発光素子チップ43から受光素子チップ44へ直接向かう光路が光透過格子50を通過するように配置される。
【0119】
尚、図10においては、回転軸86に光学式エンコーダ41の透過型移動体49を取り付ける一方、印字ヘッド87に光学式エンコーダ41の反射型移動体47を取り付けて、光学式エンコーダ41の本体を透過型移動体49と反射型移動体47との交差位置の近傍に配置している。しかしながら、この発明はこれに限定されるものではなく、印字ヘッド87自体に光学式エンコーダ41の上記本体を取り付けることも可能である。すなわち、インクジェットプリンタは、印字の際には紙送りを行う必要はなく、紙送りの際には印字を行う必要はない。そこで、印字ヘッド87自体に光学式エンコーダ41の上記本体を取り付けると共に、反射型移動体47を回転軸86の延在方向に配置して取り付け固定している。そして、印字の際には、上記本体は透過型移動体49の位置から離れて印字ヘッド87と共に回転軸86の延在方向に移動して、印字ヘッド87の位置を検出する。これに対して、紙送りの際には、上記本体は透過型移動体49の位置で停止して、回転軸86の回転量を検出するのである。
【0120】
以上のごとく、インクジェットプリンタを構成することによって、受光素子チップ44による反射型移動体47の移動量や移動方向の検出結果に基づいて、印字ヘッド87の位置や動作を制御することができる。さらに、受光素子チップ44による透過型移動体49の移動量や移動方向の検出結果に基づいて、紙の送り出し量や印字動作を制御することができる。
【0121】
その場合、上記キャリッジ制御用エンコーダと上記紙送り制御用エンコーダとを、一つの光学式エンコーダ41で構成することができ、確保すべきエンコーダ設置用の領域を小さくすることができる。
【0122】
尚、本実施の形態においては、上記第1実施の形態における光学式エンコーダ41を、上記電子機器の一例としてのインクジェットプリンタに適用した場合について説明している。しかしながら、この発明は、インクジェットプリンタに限定されるものではなく、複写機等の他の電子機器に適用しても差し支えない。要は、2つの移動部の位置や動作を同期して制御する必要がある電子機器や、用途や場所に応じて透過型エンコーダと反射型エンコーダとを使い分ける必要がある電子機器であれば、適用することが可能である。
【0123】
さらに、上記第1実施の形態における光学式エンコーダ41のみならず、上記第2,第3実施の形態における光学式エンコーダ71,75を適用できることは言うまでもない。
【0124】
上記各実施の形態においては、上記発光素子チップ43,77,78を、n型半導体基板にp型不純物を導入して発光素子を形成している。また、受光素子チップ44,79を、p型半導体基板にn型不純物を導入して受光素子を形成している。しかしながら、発光素子チップ43,77,78および受光素子チップ44,79における半導体基板や導入不純物の導電性は、上記導電性に限定されるものではない。
【0125】
また、上記各実施の形態においては、上記受光素子チップ44における反射光受光部56および透過光受光部57を構成する受光素子の数を4個にしているが、必ずしも4個である必要はない。要は、反射光受光部56および透過光受光部57を構成する各受光素子から、移動体47の移動に伴って出力される光電流の波形が、正弦波になればよいのである。
【符号の説明】
【0126】
41,71,75…光学式エンコーダ
42,72,76…基板
43…発光素子チップ(発光部)
44,79…受光素子チップ(受光部)
45,46…バンプ電極
47…反射型移動体
48…光反射格子
49…透過型移動体
50…光透過格子
56…反射光受光部
56a〜56d…受光素子
57…透過光受光部
58…光分離部
59,60…アンプ
61…モニタ用受光素子
62〜65…減算器
73…貫通穴
77…非可視光発光素子チップ
78…可視光発光素子チップ
80…非可視光受光部
81…可視光受光部
85…紙
86…回転軸
87…印字ヘッド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
発光素子が形成されると共に、上記発光素子の形成面を上記基板に対向させてフリップチップ実装された発光素子チップと、
受光素子が形成されると共に、上記受光素子の形成面を上記基板に対向させてフリップチップ実装された受光素子チップと、
光反射格子が一定の間隔で複数配列されると共に、上記光反射格子の配列方向に移動する反射型移動体と、
光透過格子が一定の間隔で複数配列されると共に、上記光透過格子の配列方向に移動する透過型移動体と
を備え、
上記反射型移動体は、上記基板における上記発光素子チップおよび上記受光素子チップが実装されていない裏面側に、移動方向が上記基板の上記裏面と略平行になるように配置されており、
上記透過型移動体は、上記基板における上記発光素子チップおよび上記受光素子チップが実装されている表面側に、移動方向が上記発光素子チップから出射されて上記基板の上記表面に沿って上記受光素子チップに向かう光と交差するように配置されており、
上記受光素子チップには、上記反射型移動体の上記光反射格子からの反射光を受光する反射光受光部と上記透過型移動体の上記光透過格子からの透過光を受光する透過光受光部とが設けられており、上記反射光受光部および上記透過光受光部は夫々複数の上記受光素子で構成されている
ことを特徴とする光学式エンコーダ。
【請求項2】
請求項1に記載の光学式エンコーダにおいて、
上記基板は、遮光部と光透過部とを有しており、
上記光透過部は、上記発光素子チップから出射されて上記反射型移動体の上記光反射格子で反射された後に上記受光素子チップに入射する光の光路が通過する位置のみに設けられている
ことを特徴とする光学式エンコーダ。
【請求項3】
請求項1あるいは請求項2に記載の光学式エンコーダにおいて、
上記受光素子チップの上記反射光受光部および上記透過光受光部には上記複数の受光素子が互いに隣接して配列されており、上記受光素子の形成面における各受光素子の境界部には、上記基板側に突出して側方からの上記受光素子への光の入射を遮断する光分離部が形成されている
ことを特徴とする光学式エンコーダ。
【請求項4】
請求項1から請求項3までの何れか一つに記載の光学式エンコーダにおいて、
上記基板における上記発光素子チップと上記受光素子チップとの間には、上記透過型移動体の周縁部が挿通される空間が設けられている
ことを特徴とする光学式エンコーダ。
【請求項5】
請求項1から請求項4までの何れか一つに記載の光学式エンコーダにおいて、
上記受光素子チップの上記反射光受光部および上記透過光受光部には上記複数の受光素子が互いに隣接して配列されており、
上記反射光受光部および上記透過光受光部の夫々には、上記複数の受光素子の配列方向に延在すると共に、上記反射型移動体における上記光反射格子の配列ピッチの長さ、あるいは、上記透過型移動体における上記光透過格子の配列ピッチの長さを有して、略一定光量の定常光をモニタリングするモニタ用受光素子が設けられており、
上記反射光受光部および上記透過光受光部の夫々に関して、上記各受光素子からの出力信号の値から上記モニタ用受光素子からの出力信号の値を減ずる減算器を備えている
ことを特徴とする光学式エンコーダ。
【請求項6】
請求項1から請求項5までの何れか一つに記載の光学式エンコーダにおいて、
上記発光素子チップは可視光発光素子および非可視光発光素子を有している
ことを特徴とする光学式エンコーダ。
【請求項7】
請求項6に記載の光学式エンコーダにおいて、
上記受光素子チップは、上記可視光発光素子から出射された可視光を受光する可視光受光部と、上記非可視光発光素子から出射された非可視光を受光する非可視光受光部とを有している
ことを特徴とする光学式エンコーダ。
【請求項8】
請求項7に記載の光学式エンコーダにおいて、
上記非可視光受光部の受光素子は深いPN接合で構成される一方、上記可視光受光部の受光素子は浅いPN接合で構成されており、
上記非可視光発光素子から上記反射型移動体に向けて出射された非可視光の上記反射型移動体による反射光を、上記受光素子チップの上記非可視光受光部で受光する一方、上記可視光発光素子から上記透過光受光部に向けて出射された可視光の上記透過光受光部からの透過光を、上記受光素子チップの上記可視光受光部で受光する
ことを特徴とする光学式エンコーダ。
【請求項9】
一方向に移動する第1移動部と、
上記一方向とは異なる他方向に移動する第2移動部と、
請求項1から請求項8の何れか一つに記載の光学式エンコーダと
を備え、
上記光学式エンコーダの上記反射型移動体を、上記第1移動部に取り付ける一方、上記光学式エンコーダの上記透過型移動体を、上記第2移動部に取り付けた
ことを特徴とする電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2013−3099(P2013−3099A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−137495(P2011−137495)
【出願日】平成23年6月21日(2011.6.21)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】