説明

光学式プローブ

【課題】光学系に可動機構を備えることなく、測定対象物の形状を逐次測定することが可能な光学式プローブを提供する。
【解決手段】レーザ光を出射するレーザ光源と、レーザ光源により出射されたレーザ光を平行光とするコリメータレンズと、コリメータレンズにより平行光とされたレーザ光をライン形状の光に変形する光形状変形手段と、光形状変形手段により変形されたライン形状の光を測定対象物に対して選択的に照射させる光照射手段と、光照射手段により選択的に照射されて測定対象物の表面にて反射されたレーザ光に基づいて測定対象物の画像を撮像する撮像手段と、光照射手段によるライン形状の光の照射を制御する制御手段と、を備え、制御手段は、光照射手段において、ライン形状の光の一端部から他端部まで所定の範囲ずつ順次光を照射させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学式プローブに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、測定対象物(以下、ワーク)にレーザ光を照射し、ワークの表面から反射した光を検出することにより、ワークの各部の位置座標等を取得する非接触型の光学式プローブが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
非接触型の光学式プローブとして、例えば、図10に示すように、レーザ光をライン形状の光(ラインレーザ)に変形するビームエクスパンダ103を用いたライン式の光学式プローブ100が知られている。ライン式の光学式プローブ100においては、レーザ光源101から出射されたレーザ光が、コリメータレンズ102によって平行光とされ、平行光とされた光がビームエクスパンダ103においてライン形状の光L1とされ、ワークWに照射される。ワークWに照射されたライン形状の光L1は、ワークWの表面で反射され、図示しない撮像素子に入射される。これにより、ライン式の光学式プローブ100は、ワークWの形状を「一度に」測定することができるようになっている。
【0004】
また、他の一例として、例えば、図11に示すように、回転式のガルバノミラー203を用いたフライングスポット式の光学式プローブ200が知られている。フライングスポット式の光学式プローブ200においては、レーザ光源201から出射されたレーザ光が、ミラー202を介してガルバノミラー203に入射され、ガルバノミラー203により反射された点状の光(ポイントレーザ)L2がワークWに照射される。このとき、ガルバノミラー203は入射光に対して回転駆動されており、このガルバノミラー203の回転駆動に応じて、点状の光L2がライン形状を描くようにワークW上を走査するようになっている。ワークW上を走査した点状の光L2は、ワークWの表面で反射され、図示しない撮像素子に入射される。これにより、フライングスポット式の光学式プローブ200は、ワークWの形状を「逐次」測定することができるようになっている。
【0005】
さらに、他の一例として、例えば、図12に示すように、回転式のポリゴンミラー303を用いた回転ミラー式の光学式プローブ300が知られている。回転ミラー式の光学式プローブ300においては、レーザ光源301から出射されたレーザ光が、ミラー302を介してポリゴンミラー303に入射され、ポリゴンミラー303により反射された点状の光(ポイントレーザ)L3がワークWに照射される。このとき、ポリゴンミラー303は入射光に対して回転駆動されており、このポリゴンミラー303の回転駆動に応じて、点状の光L3がライン形状を描くようにワークW上を走査するようになっている。ワークW上を走査した点状の光L3は、ワークWの表面で反射され、図示しない撮像素子に入射される。これにより、回転ミラー式の光学式プローブ300は、フライングスポット式の光学式プローブ200と同様、ワークWの形状を「逐次」測定することができるようになっている。
【0006】
一般に、非接触型の光学式プローブでは、測定原理として光切断法が用いられる。例えば、図13、14に示すように、ライン式の光学式プローブ100により光切断法を用いてワークWの形状測定を行う場合、レーザ光源101から図示しない光学系(コリメータレンズ及びビームエクスパンダ)を介してワークWの表面にライン状のレーザ光L1が照射されるため、レーザ光が照射されているエリアを撮像素子104により撮像させるだけで、ワークWの形状を測定することができる。このように、ライン式の光学式プローブ100の場合、光学系に機械的な可動機構を備えていないため、フライングスポット式の光学式プローブ200や回転ミラー式の光学式プローブ300と比べて、メンテナンスが容易であるというメリットがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特表2009−534969号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従来の光学式プローブにおいて、特に、鏡面ワークやコーナー形状のワークにレーザ光が照射された場合、多重反射による偽形状(虚像)が生じることがある。
ライン式の光学式プローブ100の場合、図15、16に示すように、レーザ光が常時ライン状に照射され、ワークWの形状が一度に取得されることから、多重反射による虚像が生じた場合に、実像Rと虚像Vとを区別することができず、不都合が生じていた。
この点、フライングスポット式の光学式プローブ200や回転ミラー式の光学式プローブ300においては、点状の光がライン形状を描くように照射され、ワークWの形状が逐次取得されることから、多重反射による虚像が発生した場合でも、虚像を認識することは比較的容易である。
【0009】
しかしながら、上述した通り、フライングスポット式の光学式プローブ200や回転ミラー式の光学式プローブ300の場合、光学系に機械的な可動機構を備える必要があるため、ライン式の光学式プローブ100と比べて構造が複雑なものとなり、メンテナンスが困難であるという問題がある。
【0010】
また、フライングスポット式の光学式プローブ200の場合、ガルバノミラー203の動作角をモータ等で制御する必要があるが、ガルバノミラー203の動作角の制御を精密に行わない限り、測定形状にムラが生じてしまう。さらに、ガルバノミラー203は可動機構であるため、長期間使用するとガタつきが生じることとなり、メンテナンスが必須であった。
また、回転ミラー式の光学式プローブ300の場合、ポリゴンミラー303の形状精度に測定精度が依存するため、高精度の測定を行うためには、ポリゴンミラー303の形状精度(特に、平面度)を可能な限り向上させる必要がある。ポリゴンミラー303は多面体のミラーであるため、各面の面精度が均一となるように加工しない限り、測定精度にムラが生じてしまう。
【0011】
本発明は、光学系に可動機構を備えることなく、測定対象物の形状を逐次測定することが可能な光学式プローブを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
請求項1に記載の発明は、上記目的を達成するためになされたものであり、
光学式プローブにおいて、
レーザ光を出射するレーザ光源と、
前記レーザ光源により出射されたレーザ光を平行光とするコリメータレンズと、
前記コリメータレンズにより平行光とされたレーザ光をライン形状の光に変形する光形状変形手段と、
前記光形状変形手段により変形されたライン形状の光を測定対象物に対して選択的に照射させる光照射手段と、
前記光照射手段により選択的に照射されて前記測定対象物の表面にて反射されたレーザ光に基づいて前記測定対象物の画像を撮像する撮像手段と、
前記光照射手段による前記ライン形状の光の照射を制御する制御手段と、
を備え、
前記制御手段は、前記光照射手段において、前記ライン形状の光の一端部から他端部まで所定の範囲ずつ順次光を照射させることを特徴とする。
【0013】
請求項2に記載の発明は、
請求項1に記載の光学式プローブにおいて、
前記光照射手段は、前記ライン形状の光を選択的に反射させる光反射手段であることを特徴とする。
【0014】
請求項3に記載の発明は、
請求項2に記載の光学式プローブにおいて、
前記光反射手段は、格子状に配列された複数のマイクロミラーを備えるDMD(Digital Mirror Device)であり、
前記制御手段は、前記ライン形状の光が照射された箇所に配置された複数のマイクロミラーの一端部から他端部まで順次オン状態とするとともに、残りのマイクロミラーをオフ状態とすることを特徴とする。
【0015】
請求項4に記載の発明は、
請求項1に記載の光学式プローブにおいて、
前記光照射手段は、前記ライン形状の光を選択的に透過させる光透過手段であることを特徴とする。
【0016】
請求項5に記載の発明は、
請求項4に記載の光学式プローブにおいて、
前記光透過手段は、一列に配列されたシャッターを有するシャッターアレイであり、
前記制御手段は、シャッターの一端部から他端部まで1セル毎にシャッターを順次開状態とするとともに、残りのシャッターを閉状態とすることを特徴とする。
【0017】
請求項6に記載の発明は、
請求項5に記載の光学式プローブにおいて、
前記シャッターアレイは、液晶シャッターアレイ、MEMSシャッターアレイ、又はPLZTシャッターアレイであることを特徴とする。
【0018】
請求項7に記載の発明は、
請求項1から6のいずれか一項に記載の光学式プローブにおいて、
前記制御手段は、前記撮像手段により撮像された前記測定対象物の画像に基づいて虚像の有無を判定し、虚像があると判定した場合には、前記ライン形状の光のうち、前記虚像を発生させる箇所の光の照射を遮断させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、光学系に可動機構(例えば、ガルバノミラーやポリゴンミラー)を備えることなく、測定対象物の形状を逐次測定することができることとなって、可動機構のメンテナンスや精度調整が不要となるとともに、多重反射等により虚像が発生した場合でも容易に虚像を認識することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】第1実施形態の光学式プローブの構成を示す模式図である。
【図2】第1実施形態の光学式プローブにおける光学系について示す模式図である。
【図3】測定対象物に対して点状の光がライン形状を描くように照射される様子の一例について示した模式図である。
【図4】虚像が発生した箇所に相当する部分のみをオフ状態として光の測定対象物方向への反射を遮断した様子の一例について示した模式図である。
【図5】図4の光学式プローブにより撮像された測定対象物の形状の一例について示した図である。
【図6】第2実施形態の光学式プローブの構成を示す模式図である。
【図7】第2実施形態の光学式プローブにおける光学系について示す模式図である。
【図8】測定対象物に対して点状の光がライン形状を描くように照射される様子の一例について示した模式図である。
【図9】虚像が発生した箇所に相当する部分のみを閉状態として光の透過を遮断した様子の一例について示した模式図である。
【図10】従来のライン式の光学式プローブにおける光学系について示す模式図である。
【図11】従来のフライングスポット式の光学式プローブにおける光学系について示す模式図である。
【図12】従来の回転ミラー式の光学式プローブにおける光学系について示す模式図である。
【図13】従来のライン式の光学式プローブにおける測定対象物の形状測定の一例について示した正面図及び側面図である。
【図14】図13の光学式プローブにより撮像された測定対象物の形状の一例について示した図である。
【図15】従来のライン式の光学式プローブにおける測定対象物の形状測定時に多重反射が生じた様子の一例について示した側面図である。
【図16】図15の光学式プローブにより撮像された測定対象物の形状及び虚像の一例について示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0022】
(第1実施形態)
第1実施形態に係る光学式プローブ1Aは、ワークWの表面を走査し、ワークWの各部の位置座標を測定する非接触式の光学式プローブであり、図1に示すように、光学部10Aと、撮像部20Aと、制御部30Aと、を備えて構成される。
【0023】
光学部10Aは、図1、2に示すように、レーザ光源11と、コリメータレンズ12と、ビームエクスパンダ13と、DMD(Digital Mirror Device)15と、を備えて構成される。
レーザ光源11は、例えば、LD(Laser Diode)等で構成され、レーザ光を発生させて出射する。レーザ光源11から出射されたレーザ光は、水平方向右側に配置されたコリメータレンズ12に照射される。
【0024】
コリメータレンズ12は、レーザ光源11から入射した光を平行光として、水平方向右側に配置されたビームエクスパンダ13に照射する。
【0025】
ビームエクスパンダ13は、例えば、ロッドレンズ又はシリンドリカルレンズであり、光形状変形手段として、コリメータレンズ12からの平行光をライン形状に変形させる。このビームエクスパンダ13に水平方向左側から平行光が照射されると、平行光はライン形状ビームに変形されて、水平方向右側に配置されたDMD15に照射される。
【0026】
DMD15は、例えば、数十万〜数百万個のマイクロミラーが格子状に敷き詰められたIC(Integrated Circuit)を備えた略矩形状の光学デバイスであり、ビームエクスパンダ13からのライン形状ビームを反射する。なお、各マイクロミラーは表示素子の1画素に相当する。後述する制御部30Aは、複数のマイクロミラーの傾斜を制御することにより、「オン」と「オフ」の二つの状態を制御することができる。ここで、マイクロミラーが「オン」のときは、ビームエクスパンダ13により変形されたライン形状の光を下方に向けて反射し、下方に載置されたワークWに照射する。一方、マイクロミラーが「オフ」のときは、光を内部の吸収体等に反射するため、ワークWに照射されることはない。従って、各マイクロミラーを個別に駆動することにより、マイクロミラー単位、即ち、表示画素単位で光の反射を制御することができる。即ち、DMD15は、ビームエクスパンダ13により変形されたライン形状の光を選択的に反射させる光反射手段として機能する。
なお、レーザ光源11、コリメータレンズ12、ビームエクスパンダ13、及びDMD15は、同一の光軸上に配置されている。
【0027】
撮像部20Aは、受光レンズ21と、イメージセンサ22と、を備えて構成される。
受光レンズ21は、ワークWの表面にて反射されたレーザ光を透過する。受光レンズ21を透過したレーザ光は、受光レンズ21と同一の光軸上に配置されたイメージセンサ22に入射される。
【0028】
イメージセンサ22は、ワークWの表面にて反射されたレーザ光に基づいてワークWの画像を撮像し、ワークWの各部の座標値を測定する撮像素子であり、取得した測定座標値を、制御部30Aに出力する。即ち、イメージセンサ22は、DMD15により反射されてワークWの表面にて反射されたレーザ光に基づいてワークWの画像を撮像する撮像手段として機能する。
【0029】
制御部30Aは、例えば、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)等を備えて構成され、光学部10A、撮像部20A等と接続されている。
CPUは、ROMに記憶されている各種処理プログラム等を読み出してRAMに展開し、この展開されたプログラムとの協働で各種処理を実行することにより、光学式プローブ1A全体の制御を行う。
RAMは、CPUにより実行された処理プログラム等を、RAM内のプログラム格納領域に展開するとともに、入力データや上記処理プログラムが実行される際に生じる処理結果等をデータ格納領域に格納する。
ROMは、例えば、不揮発性の半導体メモリで構成され、CPUによって実行可能なシステムプログラムや、そのシステムプログラムで実行可能な各種処理プログラム、これら各種処理プログラムを実行する際に使用されるデータ、CPUによって演算処理された各種処理結果のデータなどを記憶する。なお、プログラムは、コンピュータが読み取り可能なプログラムコードの形でROMに記憶されている。
【0030】
また、制御部30Aは、DMD15が備える複数のマイクロミラーの傾斜をマイクロミラー毎に制御することにより、ライン形状の光の反射を制御する。具体的には、ライン形状の光が照射された箇所に配置された複数のマイクロミラーの一端部から他端部までマイクロミラー毎に順次「オン」状態とするとともに、残りのマイクロミラーを「オフ」状態とすることで、ライン形状の光の一端部から他端部まで所定の範囲ずつ順次光を下方、即ち、ワークWの方向へと反射させる。
【0031】
また、制御部30Aは、イメージセンサ22により撮像されたワークWの画像に基づいて虚像の有無を判定し、虚像があると判定した場合には、ビームエクスパンダ13にて変形されたライン形状の光のうち、虚像を発生させる箇所の光のワークW方向への反射を遮断させる。
ここで、光学式プローブ1Aでは、イメージセンサ22によりワークWの形状が逐次連続的に撮像されることから、虚像の有無の判定は、例えば、直前の撮像位置から所定の閾値以上の距離離間した位置に撮像位置が変化したような場合に、虚像があると判定するものとする。
【0032】
次に、本実施形態に係る光学式プローブ1Aの作用について、図3〜5を用いて説明する。
まず、光学式プローブ1Aのレーザ光源11からレーザ光が出射される。レーザ光源11から出射されたレーザ光は、コリメータレンズ12を介してビームエクスパンダ13に照射され、ビームエクスパンダ13にてライン形状の光に変形される。
次に、ビームエクスパンダ13にて変形されたライン形状の光は、DMD15に照射され、DMD15にてライン形状の光の反射がマイクロミラー単位で制御される。
具体的には、DMD15が備える複数のマイクロミラーのうち、ライン形状の光が照射された箇所に配置された複数のマイクロミラーの一端部から他端部までマイクロミラー毎に順次「オン」状態とするとともに、残りのマイクロミラーを「オフ」状態とする。即ち、マイクロミラーは、常に1つのマイクロミラーのみが「オン」状態となっており、ライン形状の光は、この「オン」状態のマイクロミラーのみにおいてワークWの方向に反射される。従って、ワークWに対して、常に点状の光が照射されることとなる。
そして、ライン形状の光が照射された箇所に配置された複数のマイクロミラーは、一端部から他端部までマイクロミラー毎に順次「オン」状態とされるので、ワークWに対して点状の光がライン形状を描くように照射されることとなる(図3参照)。
これにより、光学系に、例えば、ガルバノミラーやポリゴンミラーのような可動機構を備えることなく、ワークWの形状を逐次測定することができることとなって、可動機構のメンテナンスや精度調整が不要となるとともに、多重反射等により虚像が発生した場合でも容易に虚像を認識することができる。
【0033】
また、上記の方法でワークWに対して照射された光がワークWの表面にて反射され、受光レンズ21を介してイメージセンサ22に入射され、ワークWの画像が撮像される。そして、制御部30Aは、イメージセンサ22により撮像されたワークWの画像に基づいて虚像の有無を判定する。光学式プローブ1Aでは、ワークWに対して点状の光がライン形状を描くように照射されるため、多重反射等により虚像が発生した場合でも容易に虚像を認識することができるうえ、ライン形状の光のうち虚像を発生させる箇所の光を特定することができる。
従って、制御部30Aは、虚像があると判定した場合には、例えば、図4に示すように、ビームエクスパンダ13にて変形されたライン形状の光のうち、虚像を発生させる箇所の光のワークW方向への反射を遮断させる。即ち、DMD15のライン形状の光が照射された箇所に配置された複数のマイクロミラーのうち、虚像が発生した箇所に相当する部分のマイクロミラーのみを「オフ」状態とすることで、虚像を発生させる箇所の光のワークW方向への反射が遮断されることとなって、虚像の発生を防止することができる(図5参照)。
【0034】
以上のように、第1実施形態に係る光学式プローブ1Aによれば、レーザ光を出射するレーザ光源11と、レーザ光源11により出射されたレーザ光を平行光とするコリメータレンズ12と、コリメータレンズ12により平行光とされたレーザ光をライン形状の光に変形するビームエクスパンダ13と、ビームエクスパンダ13により変形されたライン形状の光をワークWに対して選択的に照射させる光照射手段と、光照射手段により選択的に照射されてワークWの表面にて反射されたレーザ光に基づいてワークWの画像を撮像するイメージセンサ22と、光照射手段によるライン形状の光の照射を制御する制御部30Aと、を備え、制御部30Aは、光照射手段において、ライン形状の光の一端部から他端部まで所定の範囲ずつ順次光を照射させる。
このため、光学系に可動機構(例えば、ガルバノミラーやポリゴンミラー)を備えることなく、ワークWの形状を逐次測定することができることとなって、可動機構のメンテナンスや精度調整が不要となるとともに、多重反射等により虚像が発生した場合でも容易に虚像を認識することができる。
【0035】
特に、第1実施形態に係る光学式プローブ1Aによれば、光照射手段は、格子状に配列された複数のマイクロミラーを備え、ライン形状の光を選択的に反射させるDMD15であり、制御部30Aは、ライン形状の光が照射された箇所に配置された複数のマイクロミラーの一端部から他端部まで順次オン状態とするとともに、残りのマイクロミラーをオフ状態とするので、オンオフの応答性が速く、且つ光の利用効率がいいDMD15の長所を利用した照射制御を行うことができることとなって、利便性を向上させることができる。
【0036】
また、第1実施形態に係る光学式プローブ1Aによれば、制御部30Aは、イメージセンサ22により撮像されたワークWの画像に基づいて虚像の有無を判定し、虚像があると判定した場合には、ライン形状の光のうち、虚像を発生させる箇所の光のワークW方向への反射(照射)を遮断させる。
このため、虚像を発生させる箇所の光のワークW方向への反射が遮断され、虚像の発生を防止することができることとなって、効率的な測定を行うことが可能となる。
【0037】
(第2実施形態)
第2実施形態に係る光学式プローブ1は、ワークWの表面を走査し、ワークWの各部の位置座標を測定する非接触式の光学式プローブであり、図6に示すように、光学部10と、撮像部20と、制御部30と、を備えて構成される。なお、第1実施形態と同様の構成については、同一の符号を付するものとする。
【0038】
光学部10は、レーザ光源11と、コリメータレンズ12と、ビームエクスパンダ13と、液晶シャッターアレイ14と、を備えて構成される。
レーザ光源11は、例えば、LD(Laser Diode)等で構成され、レーザ光を発生させて出射する。レーザ光源11から出射されたレーザ光は、下方に配置されたコリメータレンズ12に照射される。
【0039】
コリメータレンズ12は、レーザ光源11から入射した光を平行光として、下方に配置されたビームエクスパンダ13に照射する。
【0040】
ビームエクスパンダ13は、例えば、ロッドレンズ又はシリンドリカルレンズであり、光形状変形手段として、コリメータレンズ12からの平行光をライン形状に変形させる。このビームエクスパンダ13に上方から平行光が照射されると、平行光はライン形状ビームに変形されて、下方に配置された液晶シャッターアレイ14に照射される。
【0041】
液晶シャッターアレイ14は、液晶分子への電界の印加或いは除去により液晶分子の配列変化を起こさせることにより、光の透過や遮断を行う素子である液晶シャッターをアレイ状に配列したものである。この液晶シャッターアレイ14は、上方からライン形状ビームが照射されると、後述する制御部30の働きにより、一列に配列された液晶シャッターの各セルを開閉させることで、ライン形状ビームの透過をセル単位で制御する(図7参照)。即ち、液晶シャッターアレイ14は、ビームエクスパンダ13により変形されたライン形状の光を選択的に透過させる光透過手段として機能する。
液晶シャッターアレイ14を透過したレーザ光は、下方に載置されたワークWに照射される。
なお、レーザ光源11、コリメータレンズ12、ビームエクスパンダ13、及び液晶シャッターアレイ14は、光軸が同一となるように配置されている。
【0042】
撮像部20は、受光レンズ21と、イメージセンサ22と、を備えて構成される。
受光レンズ21は、ワークWの表面にて反射されたレーザ光を透過する。受光レンズ21を透過したレーザ光は、受光レンズ21と同一の光軸上に配置されたイメージセンサ22に入射される。
【0043】
イメージセンサ22は、ワークWの表面にて反射されたレーザ光に基づいてワークWの画像を撮像し、ワークWの各部の座標値を測定する撮像素子であり、取得した測定座標値を、制御部30に出力する。即ち、イメージセンサ22は、液晶シャッターアレイ14を透過してワークWの表面にて反射されたレーザ光に基づいてワークWの画像を撮像する撮像手段として機能する。
【0044】
制御部30は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)等を備えて構成され、光学部10、撮像部20等と接続されている。
CPUは、ROMに記憶されている各種処理プログラム等を読み出してRAMに展開し、この展開されたプログラムとの協働で各種処理を実行することにより、光学式プローブ1全体の制御を行う。
RAMは、CPUにより実行された処理プログラム等を、RAM内のプログラム格納領域に展開するとともに、入力データや上記処理プログラムが実行される際に生じる処理結果等をデータ格納領域に格納する。
ROMは、例えば、不揮発性の半導体メモリで構成され、CPUによって実行可能なシステムプログラムや、そのシステムプログラムで実行可能な各種処理プログラム、これら各種処理プログラムを実行する際に使用されるデータ、CPUによって演算処理された各種処理結果のデータなどを記憶する。なお、プログラムは、コンピュータが読み取り可能なプログラムコードの形でROMに記憶されている。
【0045】
また、制御部30は、液晶シャッターアレイ14に含まれる一列に配列された液晶シャッターの各セルを開閉させることで、ライン形状ビームの透過をセル単位で制御する。具体的には、液晶シャッターの一端部から他端部まで1セル毎に液晶シャッターを順次開状態とするとともに、残りの液晶シャッターを閉状態とすることで、ライン形状の光の一端部から他端部まで所定の範囲ずつ順次光を透過させる。
【0046】
また、制御部30は、イメージセンサ22により撮像されたワークWの画像に基づいて虚像の有無を判定し、虚像があると判定した場合には、ビームエクスパンダ13にて変形されたライン形状の光のうち、虚像を発生させる箇所の光の透過を遮断させる。
ここで、光学式プローブ1では、イメージセンサ22によりワークWの形状が逐次連続的に撮像されることから、虚像の有無の判定は、例えば、直前の撮像位置から所定の閾値以上の距離離間した位置に撮像位置が変化したような場合に、虚像があると判定するものとする。
【0047】
次に、第2実施形態に係る光学式プローブ1の作用について、図8、9を用いて説明する。
まず、光学式プローブ1のレーザ光源11からレーザ光が出射される。レーザ光源11から出射されたレーザ光は、コリメータレンズ12を介してビームエクスパンダ13に照射され、ビームエクスパンダ13にてライン形状の光に変形される。
次に、ビームエクスパンダ13にて変形されたライン形状の光は、液晶シャッターアレイ14に照射され、液晶シャッターアレイ14にてライン形状の光の透過がセル単位で制御される。
具体的には、液晶シャッターアレイ14に含まれる一列に配列された液晶シャッターの一端部から他端部まで1セル毎に液晶シャッターを順次開状態とするとともに、残りの液晶シャッターを閉状態とする。即ち、液晶シャッターは、常に1セルのみが開状態となっており、ライン形状の光は、この開状態のセルのみにおいて透過される。従って、ワークWに対して、常に点状の光が照射されることとなる。
そして、液晶シャッターは、一端部から他端部まで1セル毎に順次開状態とされるので、ワークWに対して点状の光がライン形状を描くように照射されることとなる(図8参照)。
これにより、光学系に、例えば、ガルバノミラーやポリゴンミラーのような可動機構を備えることなく、ワークWの形状を逐次測定することができることとなって、可動機構のメンテナンスや精度調整が不要となるとともに、多重反射等により虚像が発生した場合でも容易に虚像を認識することができる。
【0048】
また、上記の方法でワークWに対して照射された光がワークWの表面にて反射され、受光レンズ21を介してイメージセンサ22に入射され、ワークWの画像が撮像される。そして、制御部30は、イメージセンサ22により撮像されたワークWの画像に基づいて虚像の有無を判定する。光学式プローブ1では、ワークWに対して点状の光がライン形状を描くように照射されるため、多重反射等により虚像が発生した場合でも容易に虚像を認識することができるうえ、ライン形状の光のうち虚像を発生させる箇所の光を特定することができる。
従って、制御部30は、虚像があると判定した場合には、例えば、図9に示すように、ビームエクスパンダ13にて変形されたライン形状の光のうち、虚像を発生させる箇所の光の透過を遮断させる。即ち、液晶シャッターアレイ14に含まれる液晶シャッターのうち虚像が発生した箇所に相当する部分のセルのみを閉状態とすることで、虚像を発生させる箇所の光の透過が遮断されることとなって、虚像の発生を防止することができる(図5参照)。
【0049】
以上のように、第2実施形態に係る光学式プローブ1によれば、第1実施形態に係る光学式プローブ1Aと同様、制御部30は、光照射手段において、ライン形状の光の一端部から他端部まで所定の範囲ずつ順次光を照射させるので、光学系に可動機構(例えば、ガルバノミラーやポリゴンミラー)を備えることなく、ワークWの形状を逐次測定することができることとなって、可動機構のメンテナンスや精度調整が不要となるとともに、多重反射等により虚像が発生した場合でも容易に虚像を認識することができる。
【0050】
特に、第2実施形態に係る光学式プローブ1によれば、光照射手段は、一列に配列されたシャッターを有し、ライン形状の光を選択的に透過させる液晶シャッターアレイ14であり、制御部30は、シャッターの一端部から他端部まで1セル毎にシャッターを順次開状態とするとともに、残りのシャッターを閉状態とするので、液晶シャッターアレイ14の長所である高精度の照射制御を行うことができることとなって、より信頼性の高い測定結果を得ることができる。
【0051】
また、第2実施形態に係る光学式プローブ1によれば、第1実施形態に係る光学式プローブ1Aと同様、制御部30は、イメージセンサ22により撮像されたワークWの画像に基づいて虚像の有無を判定し、虚像があると判定した場合には、ライン形状の光のうち、虚像を発生させる箇所の光の透過(照射)を遮断させるので、虚像を発生させる箇所の光の透過が遮断され、虚像の発生を防止することができることとなって、効率的な測定を行うことが可能となる。
【0052】
以上、本発明に係る実施形態に基づいて具体的に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で変更可能である。
【0053】
例えば、上記第1実施形態では、ライン形状の光が照射された箇所に配置された複数のマイクロミラーの一端部から他端部までマイクロミラー毎に順次オン状態とすることとしているが、これに限定されるものではない。例えば、液晶シャッターの一端部から他端部まで複数のマイクロミラー(例えば、2つのマイクロミラー)毎に順次オン状態とすることとしてもよい。
【0054】
また、上記第1実施形態では、光反射手段としてDMD15を例示して説明しているが、これに限定されるものではなく、ライン形状の光を選択的に反射させる機能を有するものであれば、いかなるものであってもよい。
【0055】
また、上記第2実施形態では、液晶シャッターアレイ14に含まれる液晶シャッターの一端部から他端部まで1セル毎に液晶シャッターを順次開状態とすることとしているが、これに限定されるものではない。例えば、液晶シャッターの一端部から他端部まで複数セル(例えば、2セル)毎に液晶シャッターを順次開状態とすることとしてもよい。
【0056】
また、上記第2実施形態では、光透過手段として液晶シャッターアレイ14を例示して説明しているが、これに限定されるものではなく、光を遮断可能なシャッター機能を有する微小素子がアレイ状に配列されたもの(即ち、シャッターアレイ)であればいかなるものであってもよい。例えば、液晶シャッターアレイ14の代わりに、MEMSシャッターアレイを使用してもよいし、PLZTシャッターアレイを使用してもよい。
【0057】
また、上記第1、第2実施形態では、虚像の有無の判定方法として、直前の撮像位置から所定の閾値以上の距離離間した位置に撮像位置が変化したような場合に、虚像があると判定するようにしているが、これに限定されるものではなく、虚像であると判定可能な方法であればいかなる方法を用いるようにしてもよい。
【0058】
その他、光学式プローブ1A,1を構成する各装置の細部構成及び細部動作に関しても、本発明の趣旨を逸脱することのない範囲で適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0059】
1A,1 光学式プローブ
10A,10 光学部
11 レーザ光源
12 コリメータレンズ
13 ビームエクスパンダ(光形状変形手段)
14 液晶シャッターアレイ(光透過手段)
15 DMD(光反射手段)
20A,20 撮像部
21 受光レンズ
22 イメージセンサ(撮像手段)
30A,30 制御部(制御手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザ光を出射するレーザ光源と、
前記レーザ光源により出射されたレーザ光を平行光とするコリメータレンズと、
前記コリメータレンズにより平行光とされたレーザ光をライン形状の光に変形する光形状変形手段と、
前記光形状変形手段により変形されたライン形状の光を測定対象物に対して選択的に照射させる光照射手段と、
前記光照射手段により選択的に照射されて前記測定対象物の表面にて反射されたレーザ光に基づいて前記測定対象物の画像を撮像する撮像手段と、
前記光照射手段による前記ライン形状の光の照射を制御する制御手段と、
を備え、
前記制御手段は、前記光照射手段において、前記ライン形状の光の一端部から他端部まで所定の範囲ずつ順次光を照射させることを特徴とする光学式プローブ。
【請求項2】
前記光照射手段は、前記ライン形状の光を選択的に反射させる光反射手段であることを特徴とする請求項1に記載の光学式プローブ。
【請求項3】
前記光反射手段は、格子状に配列された複数のマイクロミラーを備えるDMD(Digital Mirror Device)であり、
前記制御手段は、前記ライン形状の光が照射された箇所に配置された複数のマイクロミラーの一端部から他端部まで順次オン状態とするとともに、残りのマイクロミラーをオフ状態とすることを特徴とする請求項2に記載の光学式プローブ。
【請求項4】
前記光照射手段は、前記ライン形状の光を選択的に透過させる光透過手段であることを特徴とする請求項1に記載の光学式プローブ。
【請求項5】
前記光透過手段は、一列に配列されたシャッターを有するシャッターアレイであり、
前記制御手段は、シャッターの一端部から他端部まで1セル毎にシャッターを順次開状態とするとともに、残りのシャッターを閉状態とすることを特徴とする請求項4に記載の光学式プローブ。
【請求項6】
前記シャッターアレイは、液晶シャッターアレイ、MEMSシャッターアレイ、又はPLZTシャッターアレイであることを特徴とする請求項5に記載の光学式プローブ。
【請求項7】
前記制御手段は、前記撮像手段により撮像された前記測定対象物の画像に基づいて虚像の有無を判定し、虚像があると判定した場合には、前記ライン形状の光のうち、前記虚像を発生させる箇所の光の照射を遮断させることを特徴とする請求項1から6のいずれか一項に記載の光学式プローブ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2012−230097(P2012−230097A)
【公開日】平成24年11月22日(2012.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−216055(P2011−216055)
【出願日】平成23年9月30日(2011.9.30)
【出願人】(000137694)株式会社ミツトヨ (979)
【Fターム(参考)】