光学式ヘッドの位置決め装置
【課題】感光ドラムの表面に対するLEDヘッドの位置決めの精度を向上させることにより、感光ドラムの上に正確に結像させることを目的とする。
【解決手段】長手方向に延伸する円筒形状の感光ドラム6と、感光ドラム6の長手方向に延伸して領域Wで感光ドラム6に当接する帯電ローラ21と、感光ドラム6と平行に延伸する光学式ヘッドとを有する電子写真プリンタにおいて、感光ドラム6の表面に当接するとともに感光ドラム6の長手方向の一方の端部の領域W外に配設され、光学式ヘッドと感光ドラム6の表面との間の距離を規制する第1のスペーサ51aと、感光ドラム6の表面に当接するとともに感光ドラム6の長手方向の他方の端部の領域W外に配設され、光学式ヘッドと感光ドラム6の表面との間の距離を規制する第2のスペーサ51bとを設ける。
【解決手段】長手方向に延伸する円筒形状の感光ドラム6と、感光ドラム6の長手方向に延伸して領域Wで感光ドラム6に当接する帯電ローラ21と、感光ドラム6と平行に延伸する光学式ヘッドとを有する電子写真プリンタにおいて、感光ドラム6の表面に当接するとともに感光ドラム6の長手方向の一方の端部の領域W外に配設され、光学式ヘッドと感光ドラム6の表面との間の距離を規制する第1のスペーサ51aと、感光ドラム6の表面に当接するとともに感光ドラム6の長手方向の他方の端部の領域W外に配設され、光学式ヘッドと感光ドラム6の表面との間の距離を規制する第2のスペーサ51bとを設ける。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真プリンタにおける光学式ヘッドの位置決め装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
LEDヘッドを用いる電子写真プリンタでは、ドラム表面を一様に帯電された感光ドラムを、収束性ロッドレンズアレイ(SLA)の結像位置に配設する。この電子写真プリンタの露光プロセスでは、LEDアレイチップが発生した光を、収束性ロッドレンズアレイを介して、前記ドラム表面に照射し、静電潜像を形成する。
【0003】
図35は、従来技術のLEDヘッドの断面図である。LEDアレイチップ1は、基板3に搭載されている。SLAホルダ4はSLA2を保持する。ベース5は、基板3と、SLAホルダ4とSLA2とを保持するとともに、感光ドラム6の表面に対して正確に位置決めしている。感光ドラム6上に、正確に焦点のあった光像を形成するためには、LEDアレイチップ1からSLA2の入射端面までの距離Loと、SLA2の出射端面から光が結像する焦点位置までの距離Liとが等しくなるように、LEDヘッドを感光ドラム6に対して位置決めしなければならない。SLA2は、LEDアレイチップ1から距離Loの位置に配置され、SLAホルダ4に接着により固定される。つまり、SLA2をSLAホルダ4に搭載した後は、Loを調整することは出来ない。したがって、LoとLiが等しくなるように、感光ドラム6に対するLEDヘッドの位置を調整して、SLA2と感光ドラム6との間の距離を精度よく確保しなければならない。
【0004】
図36は、従来のLEDヘッドを示す正面図である。従来の感光ドラム6とLEDヘッドの配置を、図36を用いて説明する。感光ドラム6の一方の端部には、ギヤ7が設けられている。ギヤ7は、図示しない駆動源により駆動されて、感光ドラム6を回転させる。ギヤ7の中心には、穴9が設けられていて、この穴は感光ドラム6と同心である。感光ドラムの他方の端部には、フランジ11が設けられている。フランジ11の中心には、穴10が設けられていて、この穴は感光ドラム6と同心である。穴9と10には、感光ドラムの軸8が貫通していて、ギヤ7とフランジ11がこの軸8上で回転する。
【0005】
感光ドラム6は、図示しないIDユニット内部に配置され、感光ドラム6は、SLA2の出射端面部に対向する表面を除いては、アッパフレーム16により遮光される。軸8の両端部は、IDユニットのサイドフレーム12aと12bに回転可能に支持される。アジャスト機構13aと13bは、SLA2の出射端面と感光ドラムの表面との間の距離Liを調節するためのものであり、SLAホルダ4の両端の下部に配置される。
【0006】
アジャスト機構13aと13bとを調整することにより、距離LoとLiとを等しくした後、固着される。LEDヘッドは、LEDヘッドの両端の上方に配設されたバネ14aと14bにより、感光ドラム6の軸8に向かって付勢される。サイドフレーム12aと12bに形成された当接面15a15bにアジャスト機構13aと13bが当接する。SLA2の出射端面と感光ドラム6表面との間の距離Liを所定値に保ち、感光ドラム6表面に光を結像させる。
【0007】
また別の従来技術としては、感光ドラムと光学式ヘッドとの間にスペーサを配し、スプリングで弾性体のスペーサを感光ドラムに押し付けることにより、感光ドラムと光学式ヘッドの間隔を規定しているものがあった(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開昭53―104242号公報(第4頁、図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記の構成をする装置では、以下に述べる問題点がある。SLA2の出射端面と感光ドラム6の表面との間の距離Liは、LEDヘッドを冶具に取り付けて、調整する。調整の済んだLEDヘッドをプリンタに実装すると、LEDヘッドの両端に設けたアジャスト機構13aと13bとが、IDユニット内のサイドフレーム12aと12bに設けられた当接面15aと15bとに当接する。このとき、Liが少し変化し、光の結像位置がずれるので、良好な画像が得られない。
【0010】
これは、SLA2に対する感光ドラム6の表面の位置が、設計値Liから外れるためであり、±100μm(±α)の製造ばらつきが生じる。この製造ばらつきを生じる要因としては、軸8の公差、軸穴9と10の公差、サイドフレーム12aと12bに面15aと15b高さの公差、感光ドラム6の振れ公差などがある。このため、LEDヘッドをプリンタに実装する際に、個別のIDユニットに合わせて、アジャスト機構13aと13bとを再度調整して適正なLiを得ている。しかし、IDユニットは、消耗品であるので、IDユニットに寿命が来て新品に交換されると、SLA2の出射端面と感光ドラム6の表面との間の距離Liが変化して良好な印刷結果が得られないという上述の問題が発生するかも知れない。
【0011】
図37は、ΔLiとMTF(Modulation Transfer Function)の関係を表す図である。MTFは、100%に近いほど原像に忠実な像が形成される。図37より、Liが50μmずれた場合、MTFは10%以上低下することが分かる。1200DPI(≒24ラインペア/mm)の解像度を有するプリンタの場合には、MTFが10%以上低下すると、解像度が損なわれる。
【0012】
本発明は、上記問題点を解決し、感光ドラムの表面に対するLEDヘッドの位置決めの精度を向上させることにより、感光ドラムの上に正確に結像させることを目的とする。
【0013】
また従来技術には、前記したように、感光ドラムと光学式ヘッドとの間にスペーサを配したものもあるが、スペーサが光学式ヘッドと別体で構成されている場合、スペーサが感光ドラムの周面に沿って移動して僅かでも傾くと、正確に感光ドラムと光学式ヘッドの間隔を規定できないという問題があった。本発明は、この問題も解決し、スペーサが光学式ヘッドと別体で構成されていても、感光ドラムと光学式ヘッドの間隔を常に正確に規定できるようにすることも目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
参考例としての光学式ヘッドの位置決め装置は、
感光体を有し、長手方向に延伸する円筒形状の感光ドラムと、前記感光ドラムと対向して設けられ、前記感光ドラムの長手方向に延伸する光学式ヘッドと、前記感光体に当接する第1の接触面と、該第1の接触面と対向して前記光学式ヘッドに当接する第2の接触面が設けられ、前記光学式ヘッドと前記感光ドラムの表面との間の距離を規制する少なくとも1つのスペーサとを有し、
前記第1の接触面が当接する前記感光ドラム上の面の曲率半径と前記第2の接触面の曲率半径は、ほぼ同心となることを特徴とする。
【0015】
本発明による光学式ヘッドの位置決め装置は、
感光体を有し、長手方向に延伸する円筒形状の感光ドラムと、前記感光ドラムと対向して設けられ、前記感光ドラムの長手方向に延伸して前記感光体に当接する帯電ローラと、前記感光ドラムと対向して設けられ、前記感光ドラムの長手方向に延伸する光学式ヘッドと、一端が前記感光体に当接し、他端が前記光学式ヘッドに当接するように配設され、前記光学式ヘッドと前記感光ドラムの表面との間の距離を規制する少なくとも1つのスペーサとを有し、
前記スペーサは、前記帯電ローラが前記感光体に当接する領域の外側に位置するように配設されることを特徴とする。
【0016】
参考例としてのLEDヘッドの位置決め装置は、
感光体を有し、長手方向に延伸する円筒形状の感光ドラムと、前記感光ドラムと対向して設けられ、前記感光ドラムの長手方向に延伸するLEDヘッドと、前記感光体に当接する第1の接触面と、該第1の接触面と対向して前記LEDヘッドに当接する第2の接触面が設けられ、前記LEDヘッドと前記感光ドラムの表面との間の距離を規制する少なくとも1つのスペーサとを有し、
前記第1の接触面が当接する前記感光ドラム上の面の曲率半径と前記第2の接触面の曲率半径は、ほぼ同心となることを特徴とする。
【0017】
参考例としての印刷装置は、
感光体を有し、長手方向に延伸する円筒形状の感光ドラムと、前記感光ドラムと対向して設けられ、前記感光ドラムの長手方向に延伸するLEDヘッドと、前記感光体に当接する第1の接触面と、該第1の接触面と対向して前記LEDヘッドに当接する第2の接触面が設けられ、前記LEDヘッドと前記感光ドラムの表面との間の距離を規制する少なくとも1つのスペーサとを有し、
前記第1の接触面が当接する前記感光ドラム上の面の曲率半径と前記第2の接触面の曲率半径は、ほぼ同心となるLEDヘッドの位置決め装置を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、アジャスト機構と感光ドラムと間に配設するスペーサを感光ドラムの表面に直接接触させて配置することにより、SLAの出射端面と感光ドラムの表面との間の距離Liを規制するようにしたので、IDユニットの各部品の寸法のばらつきによる公差が累積して、Lo=Liを維持できないという従来技術の問題を解決できる。更に、スペーサが感光ドラムに押圧される方向が、感光ドラムの中心を通る垂直線に対して傾いても、アジャスト機構の感光ドラムに対する高さが変化することはない。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本実施例を示す正面図である。
【図2】図1の線A−Aに沿ってみた側面図である。
【図3】スペーサの当接面の曲率半径と、感光ドラムの表面の曲率半径との関係を示す。
【図4】アジャスト機構の詳細を示す。
【図5】実施の形態2に係わるスペーサの側面図である。
【図6】実施の形態2に係わるスペーサの要部の詳細図である。
【図7】スペーサの当接面と感光ドラムの表面の曲率半径を比較する図である。
【図8】スペーサの当接面と感光ドラムの表面の曲率半径を比較する図である。
【図9】異なる材質のスペーサについて、スペーサの高さの変化量(磨耗量)を示す。
【図10】実施の形態3の要部を示す側面図である。
【図11】実施の形態3のIDユニット全体を示す。
【図12】実施の形態3において、印刷した用紙の累積枚数と、スペーサの高さの変化量との関係を示すグラフである。
【図13】実施の形態4を示す正面図である。
【図14】実施の形態4におけるIDユニット内における各ローラの配置を示す。
【図15】実施の形態5の正面図である。
【図16】実施の形態6が解決しようとする問題を説明する側面図である。
【図17】曲率半径を有する面を示す側面図である。
【図18】実施の形態6による光学式ヘッドの位置決め装置を示す正面図である。
【図19】図18の線C−Cに沿ってみたときの断面図である。
【図20】図18の線B−B沿ってみたときの断面図である。
【図21】LEDヘッドを保持するSLAホルダの長手方向の両端付近に2つずつ設けたアジャスト機構が、スペーサに当接した状態を上からみた図である。
【図22】実施の形態7における要部の正面図である。
【図23】偏心カム機構60を下から見上げた斜視図である。
【図24】偏心カム機構60のカム部60aを示す。
【図25】偏心カム機構61を下から見上げた斜視図である。
【図26】偏心カム機構61のカム部61aを示す。
【図27】図22の線D−Dに沿って見た側部断面図である。
【図28】図22の線E−Eに沿って見た側部断面図である。
【図29】要部の上面図である。
【図30】スペーサの上面が水平面内に無い場合を示す。
【図31】スペーサの成形時に生じたヒケを示す。
【図32】実施の形態8に係わるスペーサの斜視図である。
【図33】図32に示すスペーサの断面図である。
【図34】図32示すスペーサの側面図である。
【図35】従来技術のLEDヘッドの断面図である。
【図36】従来のLEDヘッドを示す正面図である。
【図37】ΔLiとMTFとの関係を表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
実施の形態1.
図1は、本実施例を示す正面図である。感光ドラム6は、全体として、円筒形状をなす。スペーサ51aと51bは、凹んだ当接面52、好ましくは円弧を描くような曲率面を有し、この当接面52が感光ドラム6感光体の表面に当接する。凹んだ当接面52は、曲率面に限らず、例えは、V字状でもよい。この凹んだ当接面の反対側には、アジャスト機構13aと13bが設けられている。SLAホルダ4の両端部の上方に配設されたばね14aと14bは、スペーサ51aと51bを介して、SLAホルダ4を感光ドラム6側へ付勢する。アジャスト機構13aと13bはSLAホルダ4側に取り付けられている。スペーサ51aと51bはアジャスト機構13aと13bに固着されていてもよいし、単に当接させてもよい。当接させる場合は、スペーサを別体としても製作し、SLAホルダ4の図示しない筐体などに設けた孔に遊嵌するようにしてもよい。スペーサは、例えば、感光ドラムの長手方向の略中央付近に、1つだけ設けてもよい。
【0021】
図2は図1の線A−Aに沿ってみた側面図である。感光ドラム6が矢印A方向に回転して、感光ドラム6上の異物やトナー(転写時の残留トナー、現像時に流失したトナーなど)が、スペーサ51aと51bの位置に到着すると、スペーサ51aと51bのエッジ部53がこのトナーを掻き落とし、スペーサ51aと51bと感光ドラム6の間にトナーが侵入するのを抑制している。また、この当接面52が感光ドラム6と当接して擦れ合うことにより、スペーサ51aと51bと感光ドラム6との間に存在するトナーを掻き出すので、スペーサ51aと51bと感光ドラム6との間にはトナーが滞留しない。したがって、スペーサ51aと51bと感光ドラム6との間にトナーが蓄積して、スペーサ51aと51bを押し上げることがないので、Lo=Liを保つことが可能となる。
【0022】
図3は、スペーサの当接面52の曲率半径rsと、感光ドラムの表面の曲率半径rdとの関係を示す。図3に示すとおり、スペーサ51aと51bの当接面52の曲率半径rsは、感光ドラムの曲率半径rdより少し小さいか、好ましくは同一である。
【0023】
図4は、アジャスト機構13aと13bの詳細を示す。アジャスト機構13aと13bは楔形状の部材であり、鉤部17aを有する弾性部材17が設けられている。SLAホルダ4には、表面に複数の溝4bを形成したラック4aを有する。アジャスト機構13aと13bは、鉤部17aが溝4bに係合するようにして、SLAホルダ4に組み立てられている。アジャスト機構13aと13bは、ラック4aの斜面に係合して滑動する斜面を有する。アジャスト機構13aと13bを矢印Cの方向に1ステップずつ移動して距離Liを増加させることができる。アジャスト機構13aと13bを矢印Bの方向に1ステップずつ移動して距離Liを減少させることができる。すなわち、アジャスト機構13aと13bを調節することにより、LEDアレイチップ1からSLA2の入射端面までの距離Loに、SLA2の出射端面から光が結像する焦点位置までの距離Liを合わせて、Lo=Liとする。
【0024】
実施の形態2.
実施の形態1では、感光ドラム6に当接するスペーサの当接面52が、好ましくは、感光ドラムと同一の曲率半径を有するように選択される。しかし、製造誤差があるので、両者の曲率半径はわずかに異なる。このために、スペーサを感光ドラムに当接させたとき、スペーサの当接面52の一部しか感光ドラム6の表面に接触しないことがある。実施の形態2は、スペーサの当接面52の全体が、感光ドラム6の表面に確実に密着するような、スペーサの形状を選択したことを特徴とする。
【0025】
図5は、スペーサの当接面と感光ドラムの表面の曲率半径を比較する図である。例えば、図5に示すように、スペーサ51aと51bの曲率半径rs=r3が感光ドラム6の曲率半径rd=r2に対して小さければ、スペーサ51aと51bのエッジ53が感光ドラム6の感光体の表面に当接するので、感光ドラム6に接触している部分は線接触に近くなる。したがって、接触部分での単位面積当たりの圧力P(N/cm2)は、スペーサ51aと51bの当接面52全体で当接する場合よりも大きくなり、スペーサ51aと51bと感光ドラム6の表面の摩耗が激しくなることがわかる。したがって、スペーサ51aと51bの磨耗により、距離Liが減少し、Lo=Liを維持できなくなるから焦点がずれてしまう。
【0026】
図6は、スペーサの当接面と感光ドラムの表面の曲率半径を比較する図である。上述と反対に、図6に示すように、当接面52の曲率半径rs=r4が感光ドラム6の曲率半径rd=r2に対して大きくなれば、感光ドラム6上に付着したトナー55が、感光ドラム6の回転にともなって、スペーサ51aと51bの近くにきても、スペーサ51aと51bのエッジ53でこのトナー55を掻き落とすことができない。したがって、スペーサ51aと51bと感光ドラム6との接触面同士の間にトナーが侵入する。また、この構造は、感光ドラムの面とスペーサの当接面52が擦れ合うことにより、両者の間に侵入したトナーを掻き出すような滑り摩擦を有するが、トナー55を掻き出す能力以上のトナー55が侵入した場合には、掻き出すことができず、トナー55が感光ドラムの面とスペーサの当接面52との間に滞留する。したがって、スペーサ51aと51bの高さが変化するから、距離Liが変化し、Lo=Liを維持できなくなって焦点がずれてしまう。
【0027】
図7は、実施の形態2に係わるスペーサの側面図である。図8は、実施の形態2に係わるスペーサの要部の詳細図である。実施の形態2では、スペーサの当接面52の曲率半径rsを感光ドラム6の曲率半径rdよりも小さく設定し、この当接面52が円弧を描く方向の中央付近56を、両端付近よりも肉薄とし、スペーサ51aと51bに弾性を持たせた。具体的には、スペーサ51aと51bの当接面52の曲率半径rs=r1とし、感光ドラムの曲率半径rd=r2とし、r1をr2に対して約1%小さくする。中央付近の肉厚tは、例えば1mmである。また、弾性を有する材料を使用して、図5に示す形状のスペーサを構成してもよい。この実施の形態では肉薄な構造としたが、十分な弾性が得られれば、肉薄な構造でなくてもかまわない。
【0028】
スペーサ51aと51bが、ばね14aと14bの付勢力Fに付勢されて、当接面52が感光ドラム6の表面に密着するように弾性部56が変形して、感光ドラム6の表面の曲率半径rd=r2と略同一の曲率半径になる。したがって接触のしかたが面接触となるので、単位面積当たりの圧力P(N/cm2)を小さく設定することが可能となり、スペーサ51aと51bと感光ドラム6の摩耗を少なくすることができる。感光ドラムが回転して、スペーサ51aと51bに達すると、エッジ53がトナー55を掻き落とす。
【0029】
図9は、異なる材質のスペーサについて、所定の期間にわたって、プリンタを稼動させたときのスペーサの高さの変化量(磨耗量)を調べた実験結果を示す。実験に使用したスペーサ51aと51bの材質は、汎用エンジニアリングプラスチックであるポリアセタール樹脂と、特殊エンジニアリングプラスチックであるPTFE樹脂の2種とし、感光ドラム6の表面材料としてはポリカーボネート樹脂層からなるものを用いた。図9に示すとおり、弾性係数26.4×103kg/cm2のポリアセタール樹脂からなるスペーサ51aと51bは、40K枚を印刷すると、約10μmの高さ変化量(摩耗)を示した。一方、弾性係数が3.5×103kg/cm2であるPTFE樹脂からなるスペーサ51aと51bの高さの変化量は、ばらつきが大きく10から120μmの変化を示し、さらには、感光ドラム6への傷も激しかった。SLA2の出射端面と感光ドラム6の表面との間の距離Liは、Lo±50μmにあれば許容範囲内である。PTFE樹脂からなるスペーサ51aと51bは、許容範囲を超える。ポリアセタール樹脂からなるスペーサ51aと51bは高さの変化量が10μm以下であり、スペーサ51aと51bの製造ばらつき、環境による伸縮などを考慮しても、充分実用に耐えうる結果を示した。以上のとおり、本実験では、ポリアセタール樹脂からなるスペーサ51aと51bが良好な結果を示したが、材質及び形状(当接面の曲率半径、中央付近の肉厚等)は、本実験による設定値であり、LEDヘッドを付勢するバネの付勢力、当接面の幅、当接される相手材質等により種々変わるものであり、特に本値に限定されるものではない。
【0030】
実施の形態2において、スペーサの中央付近に弾性を持たせるようにしたので、感光ドラムの表面にスペーサの当接面が密着する。したがって、スペーサと感光ドラムの摩耗が少なく、さらには、スペーサ当接面にトナーが侵入しにくい構成となるから、LEDヘッドをプリンタ実装時にSLA出射面と感光ドラム表面の距離Liの変化が少ない装置を提供することが可能となる。
【0031】
実施の形態3.
実施の形態3は、SLAの出射面と感光ドラムの表面との間の距離Liを規制するスペーサをLEDヘッド側に設けず、感光ドラムが実装されるIDユニット側に設けたことを特徴とする。
【0032】
図10は、実施の形態3の要部を示す側面図である。図11は、実施の形態3のIDユニット全体を示す。スペーサ51aと51bは、円筒形状の感光ドラム6の表面と略同じ曲率半径を有する当接面52を有し、この当接面52が、感光ドラム6の感光体の表面に当接する。この当接面52の反対側の面54は、アジャスト機構13aと13bが当接して設けられている。このアジャスト機構13aと13bを調節することにより、SLA2の出射端面と感光ドラム6の表面との間の距離Liが、Lo=Liとなるように調整する。SLAホルダ4の両端部の上方に配設されたばね14aと14bは、SLAホルダ4を、感光ドラム6側へ付勢する。スペーサ51aと51bは、爪56を有する。この爪56がアッパフレーム16に係合することで、スペーサ51aと51bの感光ドラム6に対する位置が制限されるので、感光ドラム6の上方で揺動したり、輸送中の振動などで容易に外れたりするのを防止できる。
【0033】
図12は、印刷した用紙の累積枚数と、スペーサ51aと51bの高さの変化量との関係を示すグラフである。感光ドラム6の表面に当接するスペーサ51aと51bの当接面52は、感光ドラム6の表面の曲率半径と略同一の曲率半径を有する。印刷動作中は、常に、当接面同士は、面接触であり、互いの当接面は滑り摩擦を有する。一般的には、接触する面に加わる圧力P(N/cm2)と速度(mm/s)が一定に維持されれば、摩耗の進行は滑り距離(mm)に比例すると考えられる。図12に示すとおり、累積枚数が10K→20K→40Kと増すにつれて、スペーサの高さの変化量が、累積枚数と比例関係で増加していることが分かる。実験に使用した装置の寿命は、1000K枚であり、通常は、LEDヘッドの寿命も装置と同等に設計される。したがって、LEDヘッド側に設けるスペーサ51aと51bは、装置の寿命である1000K枚まで耐えねばならない。しかし、図12のグラフからも分かるように、1000K枚まで稼動すれば、スペーサの高さは、数百μmの変化を生じる。距離Liの許容範囲は、Lo=±50μmであり、装置の寿命まで稼動すれば、距離Liを許容範囲内に維持することができないことが容易に分かる。一般的には、感光ドラムが装着されているIDユニットは消耗品であるため、予め定めた交換周期で、新品と交換される。本実験で使用したIDユニットは、累積枚数が40K枚に達したら交換するように設計されている。図12から、40K枚におけるスペーサの摩耗量は10μm以下なので、IDユニットの交換期間内においては、充分実用に耐えうる変化量である。
【0034】
実施の形態3において、スペーサをIDユニット側に設けたので、IDの交換に伴って、スペーサは新品に交換される。したがつて、装置の寿命がくるまで、SLAの出射端面と感光ドラム表面の距離Liの変化が少なく、印刷品質が安定な装置を提供できる。
【0035】
実施の形態4.
実施の形態4は、感光ドラム6の長手方向の端部に設けるスペーサを、帯電ローラが感光ドラムに当接する領域Wの外側に位置するように配設したことを特徴とする。スペーサは、実施の形態1と2のように、LEDヘッド側に設けてもよいし、実施の形態3のように感光ドラムが実装されるIDユニット側に設けてもよい。LEDヘッド側に設けた場合は、実施例1と同様に固着されていてもよいし、単に当接させてもよい。図13は実施の形態4を示す正面図である。スペーサ51aと51bは、円筒形状の感光ドラム6の表面と略同じ曲率半径を有する当接面52を有し、この当接面52が、感光ドラム6の感光体の表面に当接する。この当接面52の反対側の面は、アジャスト機構13aと13bが固着若しくは当接して設けられている。このアジャスト機構13aと13bを調節することにより、Lo=Liとなるように調整する。SLAホルダ4の両端部の上方に配設されたばね14aと14bは、SLAホルダ4を、感光ドラム6側へ付勢する。
【0036】
図14は、IDユニット内における各ローラの配置を示す。次に、電子写真プリンタのプロセスの概要を説明する。電子写真プリンタの工程には、帯電、露光、現像、転写があり、これらの工程を順次実行して、用紙に印刷を行う。まず、帯電工程では、帯電ローラ21に高圧を印加して、感光ドラム6の表面に一様に負の電荷を与える。露光工程では、LEDヘッド23が、印刷データに合わせて、感光ドラム6の表面を選択的に光エネルギを照射することによって、感光ドラム6の表面上の電位を下げる。露光されなかった表面部分はそのまま負の高電位を保つので、感光ドラム6の表面には表面電位の差が生じて、全体として、感光ドラム6の表面上に静電潜像を形成する。この静電潜像が、ドラムの回転とともに、現像ローラへ移動する。現像工程では、静電潜像にトナーを付着させて、静電潜像をトナー像に現像する。トナーは、現像ローラ24及び図示しない現像ブレードとの摩擦によって帯電する。トナーは、現像ローラの電位と感光ドラム6の表面電位との電位差により生じた電界中を、クーロン力によって、感光ドラム6の表面へ移動し、トナー像となる。転写工程では、用紙の裏面に転写ローラ25から正電荷を与え、感光ドラム上の負に帯電しているトナー55はクーロン力により用紙に転写される。
【0037】
ここで、何らかの外的要因により固い異物が侵入し感光ドラム6の表面に深い傷を与え、傷が素管まで達した場合は、高圧が印加されている帯電ローラ21と感光ドラム6との間でリークを起こすことが懸念される。またリークを発生させなくても、感光ドラム6の表面に深い傷があると、傷の部位の表面に電荷を付与することができず、現像ローラ24上で帯電したトナーが感光ドラム6の表面上に移動する。ドラム6の表面上に移動したトナー55は、帯電ローラ21と感光ドラム6に間に挟まって擦られて、帯電ローラ21の表面にも付着する。帯電ローラ21の表面に付着するトナー55の量が多くなると、付着したトナー55の層の厚さ分だけ、帯電ローラ21の表面と感光ドラム6の表面が離間する。したがって、帯電ローラ21は、感光ドラム6の表面に一様に充分な電荷を付与することができなくなる。したがって、感光ドラム6の表面の広い範囲にわたってトナーが付着するので、感光ドラム6の表面に移動したトナー55で用紙を汚してしまう。
【0038】
しかし、本発明では、SLA2の出射端面と感光ドラム6の表面との間の距離Liを規制するスペーサ51aと51bを帯電ローラ21の幅よりも外側に配設したことにより、スペーサ51aと51bが感光ドラム6の表面に深い傷をつけても、その傷は、帯電ローラが当接する領域Wの外側であるため、帯電ローラ21にトナー55が付着するチャンスが少なく、印刷品質には影響を与えない。
【0039】
実施の形態4において、感光ドラムの長手方向の端部に設けるスペーサを、帯電ローラが感光ドラムに当接する領域の外側に位置するようにしたので、外的要因によりスペーサと感光ドラムの当接面の間に硬い異物が侵入し感光ドラム表面に深い傷が発生しても、印刷用紙に接触する感光ドラム表面の領域には影響を与えず、印刷品質の安定した装置を提供できる。
【0040】
実施の形態5
実施の形態4では、帯電ローラ21が感光ドラムに当接する領域Wの外側にスペーサを設けたので、装置の寸法が大きくなりやすい。したがって、実施の形態5では、装置の全体寸法を大きくすることなく、実施の形態4と同様の効果が得られる構造を特徴とする。図15は実施の形態5の正面図である。
【0041】
感光ドラム6は、全体として、円筒形状をなす。スペーサ51aと51bは、凹んだ当接面52を有し、スペーサ51aの当接面52が、感光ドラム6の一方の端部に設けられたギヤ7と摺接し、スペーサ51bの当接面52が感光ドラムの他方の端部に設けられたフランジ11と摺接する。スペーサは、実施の形態1と2のように、LEDヘッド側に設けてもよいし、実施の形態3のように感光ドラムが実装されるIDユニット側に設けてもよい。LEDヘッド側に設けた場合は、実施例1と同様に固着されていてもよいし、単に当接させてもよい。ギヤ7はハスバ歯車であり、図示しない駆動源により回転されて、感光ドラムを回転させる。ギヤ7とフランジ11の中心には、孔が形成され、この孔を感光ドラムの回転シャフト8が貫通する。フランジ11は、感光ドラム6と同心の円形をしている。スペーサ51aと51bの当接面52に対して反対側の面には、アジャスト機構13aと13bが固着もしくは当接して設けられている。このアジャスト機構13aと13bを調節することにより、Lo=Liとなるように調整する。SLAホルダ4の両端部の上方に配設されたばね14aと14bは、SLAホルダ4を、感光ドラム6側へ付勢する。上記の構成とすることにより、スペーサ51aと51bが感光ドラム6の表面に傷をつけることがなくなるので、実施の形態4と同様に、用紙を汚すことがなくなる。
【0042】
実施の形態5において、SLAの出射端面と感光ドラムの表面との間の距離Liを規制するスペーサを感光ドラムの両端に設けられるギヤとフランジ上に配設したので、少なくとも印刷用紙に接触する感光ドラムの表面に、スペーサが傷をつける可能性がなくなる。したがって、印刷品質の安定な装置を提供できる。
【0043】
実施の形態6
図16は、実施の形態6が解決しようとする問題を説明する図である。アジャスト機構13aと13bに当接するスペーサの面54が平面である場合、アッパフレーム16には、スペーサ51aと51bの上部が進入する孔が設けられている。この孔は、スペーサ51aと51bの上部の外形よりもやや大きくて、スペーサ51aの51bとの間に隙間61を形成する。この隙間61があるので、ばね14aと14bが、スペーサ51aと51bを付勢する際に、スペーサ51aと51bがアッパフレーム16に対して、円滑に変位できる。しかし、この隙間61が存在すると、スペーサが感光ドラムに対して付勢される方向が、感光ドラムの中心Oを通る垂直線(鉛直線)に対して、角度±βだけ傾いた方向に付勢される懸念がある。この傾きがあると、スペーサの面54も水平面に対して傾きを生じ、したがってアジャスト機構13aと13bの感光ドラムの表面からの高さが変化して、距離Liが変化してしまう。また、左右のアジャスト機構13aと13bの先端の感光ドラム6に対する高さが変化するので、SLA2の出射端面と感光ドラム6の表面との間の距離LiがLoに一致しなくなる。また、LEDヘッドの傾き等の不具合も生じ易い。
【0044】
図17は、実施の形態6を示す側面図である。実施の形態6では、スペーサは、LEDヘッド側に取り付けられておらず、IDユニット側に設けられている。実施の形態6は、アジャスト機構13aと13bに当接するスペーサの面54を、曲率半径r5を有する曲面としたことを特徴とする。すなわち、この曲面は感光ドラムと同心となる。なお、実施の形態1から実施の形態5と同様の構成部分には、同一の符号を付与しており、構成の異なる個所について説明する。スペーサ51aと51bは、爪56を有する。この爪56がアッパフレーム16に係合することで、スペーサ51aと51bの感光ドラムに対する位置が固定されるので、感光ドラム6の上方で揺動したり輸送中の振動などで、感光ドラムから外れたりするのを防止できる。スペーサ51aと51bが感光ドラムに押圧される方向が、感光ドラムの中心Oを通る垂直線に対して角度±βだけ傾いても、アジャスト機構13aと13bに当接するスペーサの面54のどの部分を考えても、感光ドラムの表面に対する高さ57が変化しないので、SLA2の出射端面と感光ドラム6の表面との間の距離Liが安定する。
【0045】
実施の形態6において、アジャスト機構に当接するスペーサの表面を、感光ドラムと同心となるような曲率半径を有するように構成したので、スペーサが感光ドラムに押圧される方向が、感光ドラムの中心を通る垂直線に対して傾いても、アジャスト機構の感光ドラムに対する高さが変化することはない。したがって、Lo=Liを確保できて、印刷品質の安定な装置を提供できる。
【0046】
実施の形態7
図18は、実施の形態6による光学式ヘッドの位置決め装置を示す正面図である。スペーサ51aと51bは、感光ドラム6の長手方向の両端部付近において、感光ドラム6の表面に当接して配置されている。スペーサ51aと51bの上部には、アジャスト機構13aと13bとが配設され、アジャスト機構13aと13bの上部には、SLAホルダ4が配置される。ばね14aと14bが、SLAホルダ4を感光ドラム6に向かって付勢し、アジャスト機構13aと13bの合計4つの底部がスペーサ51aと51bの上面54に当接する。これにより、LEDヘッドが感光ドラム6に対して、位置決めされる。アジャスト機構13aと13bを調整することにより、LEDヘッドと感光ドラム6との距離Liは、正確にLo=Liとなる。
【0047】
図19は、図18の線C−Cに沿ってみたときの断面図である。図20は、図18の線B−B沿ってみたときの断面図である。上述のように、合計4つの個所で支持される構造では、下記のような不具合がある。例えば、アジャスト機構13aと13bの4つの底部は、同じ高さとなるように設計されるが、製造ばらつきがあるから、厳密には、製造誤さのため、4つの底部が同一の高さにはなり難い。したがって、図19や図20に示すように、4つの底部は、現実には、高さが僅かに異なる。
【0048】
図21は、SLAホルダ4の長手方向の両端付近に2つずつ設けたアジャスト機構13aと13bが、スペーサ51aと51bにそれぞれ当接した状態を上からみた図である。
【0049】
図19、図20及び図21に示すとおり、アジャスト機構13aと13bは、長さが比較的揃った3つの底部(例えばC点、D点、E点)で、スペーサ51aと51bに当接する。残りの1つの底部は、スペーサ51aと51bに当接していない。また、実際には、SLAホルダ4の長手方向の両端付近に配設されたばね14aと14bの付勢方向がばらつくので、いつも同じ3つの底部がスペーサ51aと51bに当接するとは限らない。したがって、SLAの出射端面と感光ドラム6の表面との距離LiがLi=Loとなるように、LEDヘッドを感光ドラム6上に安定に保持することは困難である。
【0050】
実施の形態7は、上記の問題を解決して、Li=Loとなるように、LEDヘッドを感光ドラム6に対して安定に保持することを目的とする。実施の形態7では、アジャスト機構13aと13bの代わりに、偏心カム機構60と61を有する。
【0051】
図22は、実施の形態7における要部の正面図である。図23は偏心カム機構60を下から見上げた斜視図である。図24は、偏心カム機構60のカム部60bを示す。図25は、偏心カム機構61を下から見上げた斜視図である。図26は、偏心カム機構61のカム部61bを示す。偏心カム機構60と61は、SLAホルダ4の長さ方向の端部付近に設けられる。カム部60bは、保持部材60aの2つの指部60eにより、SLAホルダ4に、回転可能に、強く保持されている。カム部60bには、ドライバ用の十字形状の溝60cが形成されている。溝60cをドライバで駆動すると、偏心部60dが、軸線Hを中心に回転する。カム部61bは、保持部材61aの指部61eにより、SLAホルダ4に、回転可能に、強く保持されている。カム部61bには、ドライバ用の十字形状の溝61cが形成されている。溝61cをドライバで駆動すると、偏心部61dは、軸線Iを中心に回転する。このように、溝60cと61cをドライバで駆動することにより、スペーサに対するSLAホルダ4の高さが調整できる。
【0052】
図27は図22の線D−Dに沿って見た側部断面図である。図28は図22の線E−Eに沿って見た側部断面図である。図29は、要部の上面図である。図30は、スペーサの上面が水平面内に無い場合を示す。
【0053】
スペーサ51aと51bは、感光ドラム6の長手方向の両端部付近で、感光ドラムの表面に当接して配設される。SLAホルダ4は、スペーサ51aと51bの上面54に当接する。ばね14aと14bはSLAホルダ4の上部に配設され、SLAホルダ4を感光ドラム6に向けて付勢する。スペーサ51aと51bの上面54と、SLAホルダ4との間には、偏心カム機構60と61が、それぞれ、介在し、この偏心カム機構60と61を調整することにより、SLAの出射端面と感光ドラム6の表面の距離LiをLo=Liとする。
【0054】
一方の偏心カム機構60に当接するスペーサ51aの上面54は平坦面であり、この平坦面上の2箇所(J点とK点)で、偏心カム機構60が、スペーサ51aに当接する。他方の偏心カム機構61が当接するスペーサ51bの上面54aは、感光ドラム6と同心となる曲率半径を有し、この曲率面上の1箇所(L点)で、偏心カム機構61が、スペーサ51bに当接する。したがって、スペーサ51bが感光ドラム6に付勢される方向は、感光ドラム6の中心を通る略直線の方向となるから、スペーサが、感光ドラムの中心を通る垂直線に対して少しくらい傾いた方向に付勢されても、偏心カム機構61の感光ドラム6に対する高さが変化することはない。
【0055】
したがって、LEDヘッドは、合計3個所で、支持される。図30に示すように、スペーサ51bの位置が感光ドラム6上で少しずれていると、スペーサ51aの上面54が水平な面に対して傾く。しかし、この状態になっても、スペーサ51aの当接面52と感光ドラム6の表面との間の摩擦は、非常に小さい。したがって、SLAホルダ4が矢印Dの方向に付勢されて感光ドラム6に近づくと、偏心カム機構60の部位が、スペーサ51aの上面54の高い側に先に当たり、スペーサ51aは感光ドラム6の表面上を感光ドラム6の軸を中心にして矢印Eの方向に移動する。したがって、図28に示すように、SLAホルダ4は、必ず、偏心カム機構60の2個所がスペーサ51aに当接した位置で支持される。
【0056】
実施の形態7では、Liを調整する機構として偏心カム機構60と61を採用したが、感光ドラム6に対するSLAホルダ4の高さを調整できる機構であれば、本機構に限定されるものではない。
【0057】
実施の形態8
実施の形態8は、感光ドラム6の表面に当接するスペーサの面52の中央付近に、円周方向に延びる溝を形成したことを特徴とする。図31は、スペーサの成形時に生じたヒケ58を示す。図32は、実施の形態8に係わるスペーサの斜視図である。図33は図32に示すスペーサの断面図である。図34は図32に示すスペーサの側面図である。
【0058】
図31に示すように、スペーサ51aと51bの感光ドラムに当接する面52には、溝63が形成される。スペーサ51aと51bの材質は、実施の形態2で述べたとおり、汎用エンジニアリングプラスチックであり、低コスト化を図るために成形品とすることが一般的である。一般に、成形品の場合は、製品の各部における肉厚の差が原因となって成形時の収縮の差を生じやすい。この収縮の差により、製品の表面にヒケ58(えくぼ状のへこみ)を発生する。本実施の形態に係わるスペーサ51aと51bの場合にも、実際に、感光ドラム6との当接面52にヒケ58が発生した。図31に示すように、当接面52にヒケ58が発生すると、感光ドラム6に当接するスペーサの接触面積が減少するので、面圧(N/mm2)が大きくなり、感光ドラム6の表面の磨耗や、スペーサ51aと51bの初期磨耗が著しく進行することが容易に予想できる。図32から図34に示すように、スペーサ51aと51bの当接面52に溝63を形成することにより、スペーサ各部の肉厚の差が少なくなり、当接面52のヒケ58を極力少なくすることができた。したがって、感光ドラム6の表面の磨耗や、スペーサ51aと51bの初期磨耗を抑制することが可能となった。これにより、SLAの出射端面と感光ドラム6の距離LiがLi=Loとなるように、LEDヘッドを感光ドラム6上に安定に保持することができた。
【符号の説明】
【0059】
2 SLA、 4 SLAホルダ、 6 感光ドラム、 7 ギヤ、 8 軸、 13a、13b アジャスト機構、 16 アッパフレーム、 51a、51b スペーサ、 60、61 偏心カム機構、 63 溝。
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真プリンタにおける光学式ヘッドの位置決め装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
LEDヘッドを用いる電子写真プリンタでは、ドラム表面を一様に帯電された感光ドラムを、収束性ロッドレンズアレイ(SLA)の結像位置に配設する。この電子写真プリンタの露光プロセスでは、LEDアレイチップが発生した光を、収束性ロッドレンズアレイを介して、前記ドラム表面に照射し、静電潜像を形成する。
【0003】
図35は、従来技術のLEDヘッドの断面図である。LEDアレイチップ1は、基板3に搭載されている。SLAホルダ4はSLA2を保持する。ベース5は、基板3と、SLAホルダ4とSLA2とを保持するとともに、感光ドラム6の表面に対して正確に位置決めしている。感光ドラム6上に、正確に焦点のあった光像を形成するためには、LEDアレイチップ1からSLA2の入射端面までの距離Loと、SLA2の出射端面から光が結像する焦点位置までの距離Liとが等しくなるように、LEDヘッドを感光ドラム6に対して位置決めしなければならない。SLA2は、LEDアレイチップ1から距離Loの位置に配置され、SLAホルダ4に接着により固定される。つまり、SLA2をSLAホルダ4に搭載した後は、Loを調整することは出来ない。したがって、LoとLiが等しくなるように、感光ドラム6に対するLEDヘッドの位置を調整して、SLA2と感光ドラム6との間の距離を精度よく確保しなければならない。
【0004】
図36は、従来のLEDヘッドを示す正面図である。従来の感光ドラム6とLEDヘッドの配置を、図36を用いて説明する。感光ドラム6の一方の端部には、ギヤ7が設けられている。ギヤ7は、図示しない駆動源により駆動されて、感光ドラム6を回転させる。ギヤ7の中心には、穴9が設けられていて、この穴は感光ドラム6と同心である。感光ドラムの他方の端部には、フランジ11が設けられている。フランジ11の中心には、穴10が設けられていて、この穴は感光ドラム6と同心である。穴9と10には、感光ドラムの軸8が貫通していて、ギヤ7とフランジ11がこの軸8上で回転する。
【0005】
感光ドラム6は、図示しないIDユニット内部に配置され、感光ドラム6は、SLA2の出射端面部に対向する表面を除いては、アッパフレーム16により遮光される。軸8の両端部は、IDユニットのサイドフレーム12aと12bに回転可能に支持される。アジャスト機構13aと13bは、SLA2の出射端面と感光ドラムの表面との間の距離Liを調節するためのものであり、SLAホルダ4の両端の下部に配置される。
【0006】
アジャスト機構13aと13bとを調整することにより、距離LoとLiとを等しくした後、固着される。LEDヘッドは、LEDヘッドの両端の上方に配設されたバネ14aと14bにより、感光ドラム6の軸8に向かって付勢される。サイドフレーム12aと12bに形成された当接面15a15bにアジャスト機構13aと13bが当接する。SLA2の出射端面と感光ドラム6表面との間の距離Liを所定値に保ち、感光ドラム6表面に光を結像させる。
【0007】
また別の従来技術としては、感光ドラムと光学式ヘッドとの間にスペーサを配し、スプリングで弾性体のスペーサを感光ドラムに押し付けることにより、感光ドラムと光学式ヘッドの間隔を規定しているものがあった(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開昭53―104242号公報(第4頁、図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記の構成をする装置では、以下に述べる問題点がある。SLA2の出射端面と感光ドラム6の表面との間の距離Liは、LEDヘッドを冶具に取り付けて、調整する。調整の済んだLEDヘッドをプリンタに実装すると、LEDヘッドの両端に設けたアジャスト機構13aと13bとが、IDユニット内のサイドフレーム12aと12bに設けられた当接面15aと15bとに当接する。このとき、Liが少し変化し、光の結像位置がずれるので、良好な画像が得られない。
【0010】
これは、SLA2に対する感光ドラム6の表面の位置が、設計値Liから外れるためであり、±100μm(±α)の製造ばらつきが生じる。この製造ばらつきを生じる要因としては、軸8の公差、軸穴9と10の公差、サイドフレーム12aと12bに面15aと15b高さの公差、感光ドラム6の振れ公差などがある。このため、LEDヘッドをプリンタに実装する際に、個別のIDユニットに合わせて、アジャスト機構13aと13bとを再度調整して適正なLiを得ている。しかし、IDユニットは、消耗品であるので、IDユニットに寿命が来て新品に交換されると、SLA2の出射端面と感光ドラム6の表面との間の距離Liが変化して良好な印刷結果が得られないという上述の問題が発生するかも知れない。
【0011】
図37は、ΔLiとMTF(Modulation Transfer Function)の関係を表す図である。MTFは、100%に近いほど原像に忠実な像が形成される。図37より、Liが50μmずれた場合、MTFは10%以上低下することが分かる。1200DPI(≒24ラインペア/mm)の解像度を有するプリンタの場合には、MTFが10%以上低下すると、解像度が損なわれる。
【0012】
本発明は、上記問題点を解決し、感光ドラムの表面に対するLEDヘッドの位置決めの精度を向上させることにより、感光ドラムの上に正確に結像させることを目的とする。
【0013】
また従来技術には、前記したように、感光ドラムと光学式ヘッドとの間にスペーサを配したものもあるが、スペーサが光学式ヘッドと別体で構成されている場合、スペーサが感光ドラムの周面に沿って移動して僅かでも傾くと、正確に感光ドラムと光学式ヘッドの間隔を規定できないという問題があった。本発明は、この問題も解決し、スペーサが光学式ヘッドと別体で構成されていても、感光ドラムと光学式ヘッドの間隔を常に正確に規定できるようにすることも目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
参考例としての光学式ヘッドの位置決め装置は、
感光体を有し、長手方向に延伸する円筒形状の感光ドラムと、前記感光ドラムと対向して設けられ、前記感光ドラムの長手方向に延伸する光学式ヘッドと、前記感光体に当接する第1の接触面と、該第1の接触面と対向して前記光学式ヘッドに当接する第2の接触面が設けられ、前記光学式ヘッドと前記感光ドラムの表面との間の距離を規制する少なくとも1つのスペーサとを有し、
前記第1の接触面が当接する前記感光ドラム上の面の曲率半径と前記第2の接触面の曲率半径は、ほぼ同心となることを特徴とする。
【0015】
本発明による光学式ヘッドの位置決め装置は、
感光体を有し、長手方向に延伸する円筒形状の感光ドラムと、前記感光ドラムと対向して設けられ、前記感光ドラムの長手方向に延伸して前記感光体に当接する帯電ローラと、前記感光ドラムと対向して設けられ、前記感光ドラムの長手方向に延伸する光学式ヘッドと、一端が前記感光体に当接し、他端が前記光学式ヘッドに当接するように配設され、前記光学式ヘッドと前記感光ドラムの表面との間の距離を規制する少なくとも1つのスペーサとを有し、
前記スペーサは、前記帯電ローラが前記感光体に当接する領域の外側に位置するように配設されることを特徴とする。
【0016】
参考例としてのLEDヘッドの位置決め装置は、
感光体を有し、長手方向に延伸する円筒形状の感光ドラムと、前記感光ドラムと対向して設けられ、前記感光ドラムの長手方向に延伸するLEDヘッドと、前記感光体に当接する第1の接触面と、該第1の接触面と対向して前記LEDヘッドに当接する第2の接触面が設けられ、前記LEDヘッドと前記感光ドラムの表面との間の距離を規制する少なくとも1つのスペーサとを有し、
前記第1の接触面が当接する前記感光ドラム上の面の曲率半径と前記第2の接触面の曲率半径は、ほぼ同心となることを特徴とする。
【0017】
参考例としての印刷装置は、
感光体を有し、長手方向に延伸する円筒形状の感光ドラムと、前記感光ドラムと対向して設けられ、前記感光ドラムの長手方向に延伸するLEDヘッドと、前記感光体に当接する第1の接触面と、該第1の接触面と対向して前記LEDヘッドに当接する第2の接触面が設けられ、前記LEDヘッドと前記感光ドラムの表面との間の距離を規制する少なくとも1つのスペーサとを有し、
前記第1の接触面が当接する前記感光ドラム上の面の曲率半径と前記第2の接触面の曲率半径は、ほぼ同心となるLEDヘッドの位置決め装置を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、アジャスト機構と感光ドラムと間に配設するスペーサを感光ドラムの表面に直接接触させて配置することにより、SLAの出射端面と感光ドラムの表面との間の距離Liを規制するようにしたので、IDユニットの各部品の寸法のばらつきによる公差が累積して、Lo=Liを維持できないという従来技術の問題を解決できる。更に、スペーサが感光ドラムに押圧される方向が、感光ドラムの中心を通る垂直線に対して傾いても、アジャスト機構の感光ドラムに対する高さが変化することはない。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本実施例を示す正面図である。
【図2】図1の線A−Aに沿ってみた側面図である。
【図3】スペーサの当接面の曲率半径と、感光ドラムの表面の曲率半径との関係を示す。
【図4】アジャスト機構の詳細を示す。
【図5】実施の形態2に係わるスペーサの側面図である。
【図6】実施の形態2に係わるスペーサの要部の詳細図である。
【図7】スペーサの当接面と感光ドラムの表面の曲率半径を比較する図である。
【図8】スペーサの当接面と感光ドラムの表面の曲率半径を比較する図である。
【図9】異なる材質のスペーサについて、スペーサの高さの変化量(磨耗量)を示す。
【図10】実施の形態3の要部を示す側面図である。
【図11】実施の形態3のIDユニット全体を示す。
【図12】実施の形態3において、印刷した用紙の累積枚数と、スペーサの高さの変化量との関係を示すグラフである。
【図13】実施の形態4を示す正面図である。
【図14】実施の形態4におけるIDユニット内における各ローラの配置を示す。
【図15】実施の形態5の正面図である。
【図16】実施の形態6が解決しようとする問題を説明する側面図である。
【図17】曲率半径を有する面を示す側面図である。
【図18】実施の形態6による光学式ヘッドの位置決め装置を示す正面図である。
【図19】図18の線C−Cに沿ってみたときの断面図である。
【図20】図18の線B−B沿ってみたときの断面図である。
【図21】LEDヘッドを保持するSLAホルダの長手方向の両端付近に2つずつ設けたアジャスト機構が、スペーサに当接した状態を上からみた図である。
【図22】実施の形態7における要部の正面図である。
【図23】偏心カム機構60を下から見上げた斜視図である。
【図24】偏心カム機構60のカム部60aを示す。
【図25】偏心カム機構61を下から見上げた斜視図である。
【図26】偏心カム機構61のカム部61aを示す。
【図27】図22の線D−Dに沿って見た側部断面図である。
【図28】図22の線E−Eに沿って見た側部断面図である。
【図29】要部の上面図である。
【図30】スペーサの上面が水平面内に無い場合を示す。
【図31】スペーサの成形時に生じたヒケを示す。
【図32】実施の形態8に係わるスペーサの斜視図である。
【図33】図32に示すスペーサの断面図である。
【図34】図32示すスペーサの側面図である。
【図35】従来技術のLEDヘッドの断面図である。
【図36】従来のLEDヘッドを示す正面図である。
【図37】ΔLiとMTFとの関係を表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
実施の形態1.
図1は、本実施例を示す正面図である。感光ドラム6は、全体として、円筒形状をなす。スペーサ51aと51bは、凹んだ当接面52、好ましくは円弧を描くような曲率面を有し、この当接面52が感光ドラム6感光体の表面に当接する。凹んだ当接面52は、曲率面に限らず、例えは、V字状でもよい。この凹んだ当接面の反対側には、アジャスト機構13aと13bが設けられている。SLAホルダ4の両端部の上方に配設されたばね14aと14bは、スペーサ51aと51bを介して、SLAホルダ4を感光ドラム6側へ付勢する。アジャスト機構13aと13bはSLAホルダ4側に取り付けられている。スペーサ51aと51bはアジャスト機構13aと13bに固着されていてもよいし、単に当接させてもよい。当接させる場合は、スペーサを別体としても製作し、SLAホルダ4の図示しない筐体などに設けた孔に遊嵌するようにしてもよい。スペーサは、例えば、感光ドラムの長手方向の略中央付近に、1つだけ設けてもよい。
【0021】
図2は図1の線A−Aに沿ってみた側面図である。感光ドラム6が矢印A方向に回転して、感光ドラム6上の異物やトナー(転写時の残留トナー、現像時に流失したトナーなど)が、スペーサ51aと51bの位置に到着すると、スペーサ51aと51bのエッジ部53がこのトナーを掻き落とし、スペーサ51aと51bと感光ドラム6の間にトナーが侵入するのを抑制している。また、この当接面52が感光ドラム6と当接して擦れ合うことにより、スペーサ51aと51bと感光ドラム6との間に存在するトナーを掻き出すので、スペーサ51aと51bと感光ドラム6との間にはトナーが滞留しない。したがって、スペーサ51aと51bと感光ドラム6との間にトナーが蓄積して、スペーサ51aと51bを押し上げることがないので、Lo=Liを保つことが可能となる。
【0022】
図3は、スペーサの当接面52の曲率半径rsと、感光ドラムの表面の曲率半径rdとの関係を示す。図3に示すとおり、スペーサ51aと51bの当接面52の曲率半径rsは、感光ドラムの曲率半径rdより少し小さいか、好ましくは同一である。
【0023】
図4は、アジャスト機構13aと13bの詳細を示す。アジャスト機構13aと13bは楔形状の部材であり、鉤部17aを有する弾性部材17が設けられている。SLAホルダ4には、表面に複数の溝4bを形成したラック4aを有する。アジャスト機構13aと13bは、鉤部17aが溝4bに係合するようにして、SLAホルダ4に組み立てられている。アジャスト機構13aと13bは、ラック4aの斜面に係合して滑動する斜面を有する。アジャスト機構13aと13bを矢印Cの方向に1ステップずつ移動して距離Liを増加させることができる。アジャスト機構13aと13bを矢印Bの方向に1ステップずつ移動して距離Liを減少させることができる。すなわち、アジャスト機構13aと13bを調節することにより、LEDアレイチップ1からSLA2の入射端面までの距離Loに、SLA2の出射端面から光が結像する焦点位置までの距離Liを合わせて、Lo=Liとする。
【0024】
実施の形態2.
実施の形態1では、感光ドラム6に当接するスペーサの当接面52が、好ましくは、感光ドラムと同一の曲率半径を有するように選択される。しかし、製造誤差があるので、両者の曲率半径はわずかに異なる。このために、スペーサを感光ドラムに当接させたとき、スペーサの当接面52の一部しか感光ドラム6の表面に接触しないことがある。実施の形態2は、スペーサの当接面52の全体が、感光ドラム6の表面に確実に密着するような、スペーサの形状を選択したことを特徴とする。
【0025】
図5は、スペーサの当接面と感光ドラムの表面の曲率半径を比較する図である。例えば、図5に示すように、スペーサ51aと51bの曲率半径rs=r3が感光ドラム6の曲率半径rd=r2に対して小さければ、スペーサ51aと51bのエッジ53が感光ドラム6の感光体の表面に当接するので、感光ドラム6に接触している部分は線接触に近くなる。したがって、接触部分での単位面積当たりの圧力P(N/cm2)は、スペーサ51aと51bの当接面52全体で当接する場合よりも大きくなり、スペーサ51aと51bと感光ドラム6の表面の摩耗が激しくなることがわかる。したがって、スペーサ51aと51bの磨耗により、距離Liが減少し、Lo=Liを維持できなくなるから焦点がずれてしまう。
【0026】
図6は、スペーサの当接面と感光ドラムの表面の曲率半径を比較する図である。上述と反対に、図6に示すように、当接面52の曲率半径rs=r4が感光ドラム6の曲率半径rd=r2に対して大きくなれば、感光ドラム6上に付着したトナー55が、感光ドラム6の回転にともなって、スペーサ51aと51bの近くにきても、スペーサ51aと51bのエッジ53でこのトナー55を掻き落とすことができない。したがって、スペーサ51aと51bと感光ドラム6との接触面同士の間にトナーが侵入する。また、この構造は、感光ドラムの面とスペーサの当接面52が擦れ合うことにより、両者の間に侵入したトナーを掻き出すような滑り摩擦を有するが、トナー55を掻き出す能力以上のトナー55が侵入した場合には、掻き出すことができず、トナー55が感光ドラムの面とスペーサの当接面52との間に滞留する。したがって、スペーサ51aと51bの高さが変化するから、距離Liが変化し、Lo=Liを維持できなくなって焦点がずれてしまう。
【0027】
図7は、実施の形態2に係わるスペーサの側面図である。図8は、実施の形態2に係わるスペーサの要部の詳細図である。実施の形態2では、スペーサの当接面52の曲率半径rsを感光ドラム6の曲率半径rdよりも小さく設定し、この当接面52が円弧を描く方向の中央付近56を、両端付近よりも肉薄とし、スペーサ51aと51bに弾性を持たせた。具体的には、スペーサ51aと51bの当接面52の曲率半径rs=r1とし、感光ドラムの曲率半径rd=r2とし、r1をr2に対して約1%小さくする。中央付近の肉厚tは、例えば1mmである。また、弾性を有する材料を使用して、図5に示す形状のスペーサを構成してもよい。この実施の形態では肉薄な構造としたが、十分な弾性が得られれば、肉薄な構造でなくてもかまわない。
【0028】
スペーサ51aと51bが、ばね14aと14bの付勢力Fに付勢されて、当接面52が感光ドラム6の表面に密着するように弾性部56が変形して、感光ドラム6の表面の曲率半径rd=r2と略同一の曲率半径になる。したがって接触のしかたが面接触となるので、単位面積当たりの圧力P(N/cm2)を小さく設定することが可能となり、スペーサ51aと51bと感光ドラム6の摩耗を少なくすることができる。感光ドラムが回転して、スペーサ51aと51bに達すると、エッジ53がトナー55を掻き落とす。
【0029】
図9は、異なる材質のスペーサについて、所定の期間にわたって、プリンタを稼動させたときのスペーサの高さの変化量(磨耗量)を調べた実験結果を示す。実験に使用したスペーサ51aと51bの材質は、汎用エンジニアリングプラスチックであるポリアセタール樹脂と、特殊エンジニアリングプラスチックであるPTFE樹脂の2種とし、感光ドラム6の表面材料としてはポリカーボネート樹脂層からなるものを用いた。図9に示すとおり、弾性係数26.4×103kg/cm2のポリアセタール樹脂からなるスペーサ51aと51bは、40K枚を印刷すると、約10μmの高さ変化量(摩耗)を示した。一方、弾性係数が3.5×103kg/cm2であるPTFE樹脂からなるスペーサ51aと51bの高さの変化量は、ばらつきが大きく10から120μmの変化を示し、さらには、感光ドラム6への傷も激しかった。SLA2の出射端面と感光ドラム6の表面との間の距離Liは、Lo±50μmにあれば許容範囲内である。PTFE樹脂からなるスペーサ51aと51bは、許容範囲を超える。ポリアセタール樹脂からなるスペーサ51aと51bは高さの変化量が10μm以下であり、スペーサ51aと51bの製造ばらつき、環境による伸縮などを考慮しても、充分実用に耐えうる結果を示した。以上のとおり、本実験では、ポリアセタール樹脂からなるスペーサ51aと51bが良好な結果を示したが、材質及び形状(当接面の曲率半径、中央付近の肉厚等)は、本実験による設定値であり、LEDヘッドを付勢するバネの付勢力、当接面の幅、当接される相手材質等により種々変わるものであり、特に本値に限定されるものではない。
【0030】
実施の形態2において、スペーサの中央付近に弾性を持たせるようにしたので、感光ドラムの表面にスペーサの当接面が密着する。したがって、スペーサと感光ドラムの摩耗が少なく、さらには、スペーサ当接面にトナーが侵入しにくい構成となるから、LEDヘッドをプリンタ実装時にSLA出射面と感光ドラム表面の距離Liの変化が少ない装置を提供することが可能となる。
【0031】
実施の形態3.
実施の形態3は、SLAの出射面と感光ドラムの表面との間の距離Liを規制するスペーサをLEDヘッド側に設けず、感光ドラムが実装されるIDユニット側に設けたことを特徴とする。
【0032】
図10は、実施の形態3の要部を示す側面図である。図11は、実施の形態3のIDユニット全体を示す。スペーサ51aと51bは、円筒形状の感光ドラム6の表面と略同じ曲率半径を有する当接面52を有し、この当接面52が、感光ドラム6の感光体の表面に当接する。この当接面52の反対側の面54は、アジャスト機構13aと13bが当接して設けられている。このアジャスト機構13aと13bを調節することにより、SLA2の出射端面と感光ドラム6の表面との間の距離Liが、Lo=Liとなるように調整する。SLAホルダ4の両端部の上方に配設されたばね14aと14bは、SLAホルダ4を、感光ドラム6側へ付勢する。スペーサ51aと51bは、爪56を有する。この爪56がアッパフレーム16に係合することで、スペーサ51aと51bの感光ドラム6に対する位置が制限されるので、感光ドラム6の上方で揺動したり、輸送中の振動などで容易に外れたりするのを防止できる。
【0033】
図12は、印刷した用紙の累積枚数と、スペーサ51aと51bの高さの変化量との関係を示すグラフである。感光ドラム6の表面に当接するスペーサ51aと51bの当接面52は、感光ドラム6の表面の曲率半径と略同一の曲率半径を有する。印刷動作中は、常に、当接面同士は、面接触であり、互いの当接面は滑り摩擦を有する。一般的には、接触する面に加わる圧力P(N/cm2)と速度(mm/s)が一定に維持されれば、摩耗の進行は滑り距離(mm)に比例すると考えられる。図12に示すとおり、累積枚数が10K→20K→40Kと増すにつれて、スペーサの高さの変化量が、累積枚数と比例関係で増加していることが分かる。実験に使用した装置の寿命は、1000K枚であり、通常は、LEDヘッドの寿命も装置と同等に設計される。したがって、LEDヘッド側に設けるスペーサ51aと51bは、装置の寿命である1000K枚まで耐えねばならない。しかし、図12のグラフからも分かるように、1000K枚まで稼動すれば、スペーサの高さは、数百μmの変化を生じる。距離Liの許容範囲は、Lo=±50μmであり、装置の寿命まで稼動すれば、距離Liを許容範囲内に維持することができないことが容易に分かる。一般的には、感光ドラムが装着されているIDユニットは消耗品であるため、予め定めた交換周期で、新品と交換される。本実験で使用したIDユニットは、累積枚数が40K枚に達したら交換するように設計されている。図12から、40K枚におけるスペーサの摩耗量は10μm以下なので、IDユニットの交換期間内においては、充分実用に耐えうる変化量である。
【0034】
実施の形態3において、スペーサをIDユニット側に設けたので、IDの交換に伴って、スペーサは新品に交換される。したがつて、装置の寿命がくるまで、SLAの出射端面と感光ドラム表面の距離Liの変化が少なく、印刷品質が安定な装置を提供できる。
【0035】
実施の形態4.
実施の形態4は、感光ドラム6の長手方向の端部に設けるスペーサを、帯電ローラが感光ドラムに当接する領域Wの外側に位置するように配設したことを特徴とする。スペーサは、実施の形態1と2のように、LEDヘッド側に設けてもよいし、実施の形態3のように感光ドラムが実装されるIDユニット側に設けてもよい。LEDヘッド側に設けた場合は、実施例1と同様に固着されていてもよいし、単に当接させてもよい。図13は実施の形態4を示す正面図である。スペーサ51aと51bは、円筒形状の感光ドラム6の表面と略同じ曲率半径を有する当接面52を有し、この当接面52が、感光ドラム6の感光体の表面に当接する。この当接面52の反対側の面は、アジャスト機構13aと13bが固着若しくは当接して設けられている。このアジャスト機構13aと13bを調節することにより、Lo=Liとなるように調整する。SLAホルダ4の両端部の上方に配設されたばね14aと14bは、SLAホルダ4を、感光ドラム6側へ付勢する。
【0036】
図14は、IDユニット内における各ローラの配置を示す。次に、電子写真プリンタのプロセスの概要を説明する。電子写真プリンタの工程には、帯電、露光、現像、転写があり、これらの工程を順次実行して、用紙に印刷を行う。まず、帯電工程では、帯電ローラ21に高圧を印加して、感光ドラム6の表面に一様に負の電荷を与える。露光工程では、LEDヘッド23が、印刷データに合わせて、感光ドラム6の表面を選択的に光エネルギを照射することによって、感光ドラム6の表面上の電位を下げる。露光されなかった表面部分はそのまま負の高電位を保つので、感光ドラム6の表面には表面電位の差が生じて、全体として、感光ドラム6の表面上に静電潜像を形成する。この静電潜像が、ドラムの回転とともに、現像ローラへ移動する。現像工程では、静電潜像にトナーを付着させて、静電潜像をトナー像に現像する。トナーは、現像ローラ24及び図示しない現像ブレードとの摩擦によって帯電する。トナーは、現像ローラの電位と感光ドラム6の表面電位との電位差により生じた電界中を、クーロン力によって、感光ドラム6の表面へ移動し、トナー像となる。転写工程では、用紙の裏面に転写ローラ25から正電荷を与え、感光ドラム上の負に帯電しているトナー55はクーロン力により用紙に転写される。
【0037】
ここで、何らかの外的要因により固い異物が侵入し感光ドラム6の表面に深い傷を与え、傷が素管まで達した場合は、高圧が印加されている帯電ローラ21と感光ドラム6との間でリークを起こすことが懸念される。またリークを発生させなくても、感光ドラム6の表面に深い傷があると、傷の部位の表面に電荷を付与することができず、現像ローラ24上で帯電したトナーが感光ドラム6の表面上に移動する。ドラム6の表面上に移動したトナー55は、帯電ローラ21と感光ドラム6に間に挟まって擦られて、帯電ローラ21の表面にも付着する。帯電ローラ21の表面に付着するトナー55の量が多くなると、付着したトナー55の層の厚さ分だけ、帯電ローラ21の表面と感光ドラム6の表面が離間する。したがって、帯電ローラ21は、感光ドラム6の表面に一様に充分な電荷を付与することができなくなる。したがって、感光ドラム6の表面の広い範囲にわたってトナーが付着するので、感光ドラム6の表面に移動したトナー55で用紙を汚してしまう。
【0038】
しかし、本発明では、SLA2の出射端面と感光ドラム6の表面との間の距離Liを規制するスペーサ51aと51bを帯電ローラ21の幅よりも外側に配設したことにより、スペーサ51aと51bが感光ドラム6の表面に深い傷をつけても、その傷は、帯電ローラが当接する領域Wの外側であるため、帯電ローラ21にトナー55が付着するチャンスが少なく、印刷品質には影響を与えない。
【0039】
実施の形態4において、感光ドラムの長手方向の端部に設けるスペーサを、帯電ローラが感光ドラムに当接する領域の外側に位置するようにしたので、外的要因によりスペーサと感光ドラムの当接面の間に硬い異物が侵入し感光ドラム表面に深い傷が発生しても、印刷用紙に接触する感光ドラム表面の領域には影響を与えず、印刷品質の安定した装置を提供できる。
【0040】
実施の形態5
実施の形態4では、帯電ローラ21が感光ドラムに当接する領域Wの外側にスペーサを設けたので、装置の寸法が大きくなりやすい。したがって、実施の形態5では、装置の全体寸法を大きくすることなく、実施の形態4と同様の効果が得られる構造を特徴とする。図15は実施の形態5の正面図である。
【0041】
感光ドラム6は、全体として、円筒形状をなす。スペーサ51aと51bは、凹んだ当接面52を有し、スペーサ51aの当接面52が、感光ドラム6の一方の端部に設けられたギヤ7と摺接し、スペーサ51bの当接面52が感光ドラムの他方の端部に設けられたフランジ11と摺接する。スペーサは、実施の形態1と2のように、LEDヘッド側に設けてもよいし、実施の形態3のように感光ドラムが実装されるIDユニット側に設けてもよい。LEDヘッド側に設けた場合は、実施例1と同様に固着されていてもよいし、単に当接させてもよい。ギヤ7はハスバ歯車であり、図示しない駆動源により回転されて、感光ドラムを回転させる。ギヤ7とフランジ11の中心には、孔が形成され、この孔を感光ドラムの回転シャフト8が貫通する。フランジ11は、感光ドラム6と同心の円形をしている。スペーサ51aと51bの当接面52に対して反対側の面には、アジャスト機構13aと13bが固着もしくは当接して設けられている。このアジャスト機構13aと13bを調節することにより、Lo=Liとなるように調整する。SLAホルダ4の両端部の上方に配設されたばね14aと14bは、SLAホルダ4を、感光ドラム6側へ付勢する。上記の構成とすることにより、スペーサ51aと51bが感光ドラム6の表面に傷をつけることがなくなるので、実施の形態4と同様に、用紙を汚すことがなくなる。
【0042】
実施の形態5において、SLAの出射端面と感光ドラムの表面との間の距離Liを規制するスペーサを感光ドラムの両端に設けられるギヤとフランジ上に配設したので、少なくとも印刷用紙に接触する感光ドラムの表面に、スペーサが傷をつける可能性がなくなる。したがって、印刷品質の安定な装置を提供できる。
【0043】
実施の形態6
図16は、実施の形態6が解決しようとする問題を説明する図である。アジャスト機構13aと13bに当接するスペーサの面54が平面である場合、アッパフレーム16には、スペーサ51aと51bの上部が進入する孔が設けられている。この孔は、スペーサ51aと51bの上部の外形よりもやや大きくて、スペーサ51aの51bとの間に隙間61を形成する。この隙間61があるので、ばね14aと14bが、スペーサ51aと51bを付勢する際に、スペーサ51aと51bがアッパフレーム16に対して、円滑に変位できる。しかし、この隙間61が存在すると、スペーサが感光ドラムに対して付勢される方向が、感光ドラムの中心Oを通る垂直線(鉛直線)に対して、角度±βだけ傾いた方向に付勢される懸念がある。この傾きがあると、スペーサの面54も水平面に対して傾きを生じ、したがってアジャスト機構13aと13bの感光ドラムの表面からの高さが変化して、距離Liが変化してしまう。また、左右のアジャスト機構13aと13bの先端の感光ドラム6に対する高さが変化するので、SLA2の出射端面と感光ドラム6の表面との間の距離LiがLoに一致しなくなる。また、LEDヘッドの傾き等の不具合も生じ易い。
【0044】
図17は、実施の形態6を示す側面図である。実施の形態6では、スペーサは、LEDヘッド側に取り付けられておらず、IDユニット側に設けられている。実施の形態6は、アジャスト機構13aと13bに当接するスペーサの面54を、曲率半径r5を有する曲面としたことを特徴とする。すなわち、この曲面は感光ドラムと同心となる。なお、実施の形態1から実施の形態5と同様の構成部分には、同一の符号を付与しており、構成の異なる個所について説明する。スペーサ51aと51bは、爪56を有する。この爪56がアッパフレーム16に係合することで、スペーサ51aと51bの感光ドラムに対する位置が固定されるので、感光ドラム6の上方で揺動したり輸送中の振動などで、感光ドラムから外れたりするのを防止できる。スペーサ51aと51bが感光ドラムに押圧される方向が、感光ドラムの中心Oを通る垂直線に対して角度±βだけ傾いても、アジャスト機構13aと13bに当接するスペーサの面54のどの部分を考えても、感光ドラムの表面に対する高さ57が変化しないので、SLA2の出射端面と感光ドラム6の表面との間の距離Liが安定する。
【0045】
実施の形態6において、アジャスト機構に当接するスペーサの表面を、感光ドラムと同心となるような曲率半径を有するように構成したので、スペーサが感光ドラムに押圧される方向が、感光ドラムの中心を通る垂直線に対して傾いても、アジャスト機構の感光ドラムに対する高さが変化することはない。したがって、Lo=Liを確保できて、印刷品質の安定な装置を提供できる。
【0046】
実施の形態7
図18は、実施の形態6による光学式ヘッドの位置決め装置を示す正面図である。スペーサ51aと51bは、感光ドラム6の長手方向の両端部付近において、感光ドラム6の表面に当接して配置されている。スペーサ51aと51bの上部には、アジャスト機構13aと13bとが配設され、アジャスト機構13aと13bの上部には、SLAホルダ4が配置される。ばね14aと14bが、SLAホルダ4を感光ドラム6に向かって付勢し、アジャスト機構13aと13bの合計4つの底部がスペーサ51aと51bの上面54に当接する。これにより、LEDヘッドが感光ドラム6に対して、位置決めされる。アジャスト機構13aと13bを調整することにより、LEDヘッドと感光ドラム6との距離Liは、正確にLo=Liとなる。
【0047】
図19は、図18の線C−Cに沿ってみたときの断面図である。図20は、図18の線B−B沿ってみたときの断面図である。上述のように、合計4つの個所で支持される構造では、下記のような不具合がある。例えば、アジャスト機構13aと13bの4つの底部は、同じ高さとなるように設計されるが、製造ばらつきがあるから、厳密には、製造誤さのため、4つの底部が同一の高さにはなり難い。したがって、図19や図20に示すように、4つの底部は、現実には、高さが僅かに異なる。
【0048】
図21は、SLAホルダ4の長手方向の両端付近に2つずつ設けたアジャスト機構13aと13bが、スペーサ51aと51bにそれぞれ当接した状態を上からみた図である。
【0049】
図19、図20及び図21に示すとおり、アジャスト機構13aと13bは、長さが比較的揃った3つの底部(例えばC点、D点、E点)で、スペーサ51aと51bに当接する。残りの1つの底部は、スペーサ51aと51bに当接していない。また、実際には、SLAホルダ4の長手方向の両端付近に配設されたばね14aと14bの付勢方向がばらつくので、いつも同じ3つの底部がスペーサ51aと51bに当接するとは限らない。したがって、SLAの出射端面と感光ドラム6の表面との距離LiがLi=Loとなるように、LEDヘッドを感光ドラム6上に安定に保持することは困難である。
【0050】
実施の形態7は、上記の問題を解決して、Li=Loとなるように、LEDヘッドを感光ドラム6に対して安定に保持することを目的とする。実施の形態7では、アジャスト機構13aと13bの代わりに、偏心カム機構60と61を有する。
【0051】
図22は、実施の形態7における要部の正面図である。図23は偏心カム機構60を下から見上げた斜視図である。図24は、偏心カム機構60のカム部60bを示す。図25は、偏心カム機構61を下から見上げた斜視図である。図26は、偏心カム機構61のカム部61bを示す。偏心カム機構60と61は、SLAホルダ4の長さ方向の端部付近に設けられる。カム部60bは、保持部材60aの2つの指部60eにより、SLAホルダ4に、回転可能に、強く保持されている。カム部60bには、ドライバ用の十字形状の溝60cが形成されている。溝60cをドライバで駆動すると、偏心部60dが、軸線Hを中心に回転する。カム部61bは、保持部材61aの指部61eにより、SLAホルダ4に、回転可能に、強く保持されている。カム部61bには、ドライバ用の十字形状の溝61cが形成されている。溝61cをドライバで駆動すると、偏心部61dは、軸線Iを中心に回転する。このように、溝60cと61cをドライバで駆動することにより、スペーサに対するSLAホルダ4の高さが調整できる。
【0052】
図27は図22の線D−Dに沿って見た側部断面図である。図28は図22の線E−Eに沿って見た側部断面図である。図29は、要部の上面図である。図30は、スペーサの上面が水平面内に無い場合を示す。
【0053】
スペーサ51aと51bは、感光ドラム6の長手方向の両端部付近で、感光ドラムの表面に当接して配設される。SLAホルダ4は、スペーサ51aと51bの上面54に当接する。ばね14aと14bはSLAホルダ4の上部に配設され、SLAホルダ4を感光ドラム6に向けて付勢する。スペーサ51aと51bの上面54と、SLAホルダ4との間には、偏心カム機構60と61が、それぞれ、介在し、この偏心カム機構60と61を調整することにより、SLAの出射端面と感光ドラム6の表面の距離LiをLo=Liとする。
【0054】
一方の偏心カム機構60に当接するスペーサ51aの上面54は平坦面であり、この平坦面上の2箇所(J点とK点)で、偏心カム機構60が、スペーサ51aに当接する。他方の偏心カム機構61が当接するスペーサ51bの上面54aは、感光ドラム6と同心となる曲率半径を有し、この曲率面上の1箇所(L点)で、偏心カム機構61が、スペーサ51bに当接する。したがって、スペーサ51bが感光ドラム6に付勢される方向は、感光ドラム6の中心を通る略直線の方向となるから、スペーサが、感光ドラムの中心を通る垂直線に対して少しくらい傾いた方向に付勢されても、偏心カム機構61の感光ドラム6に対する高さが変化することはない。
【0055】
したがって、LEDヘッドは、合計3個所で、支持される。図30に示すように、スペーサ51bの位置が感光ドラム6上で少しずれていると、スペーサ51aの上面54が水平な面に対して傾く。しかし、この状態になっても、スペーサ51aの当接面52と感光ドラム6の表面との間の摩擦は、非常に小さい。したがって、SLAホルダ4が矢印Dの方向に付勢されて感光ドラム6に近づくと、偏心カム機構60の部位が、スペーサ51aの上面54の高い側に先に当たり、スペーサ51aは感光ドラム6の表面上を感光ドラム6の軸を中心にして矢印Eの方向に移動する。したがって、図28に示すように、SLAホルダ4は、必ず、偏心カム機構60の2個所がスペーサ51aに当接した位置で支持される。
【0056】
実施の形態7では、Liを調整する機構として偏心カム機構60と61を採用したが、感光ドラム6に対するSLAホルダ4の高さを調整できる機構であれば、本機構に限定されるものではない。
【0057】
実施の形態8
実施の形態8は、感光ドラム6の表面に当接するスペーサの面52の中央付近に、円周方向に延びる溝を形成したことを特徴とする。図31は、スペーサの成形時に生じたヒケ58を示す。図32は、実施の形態8に係わるスペーサの斜視図である。図33は図32に示すスペーサの断面図である。図34は図32に示すスペーサの側面図である。
【0058】
図31に示すように、スペーサ51aと51bの感光ドラムに当接する面52には、溝63が形成される。スペーサ51aと51bの材質は、実施の形態2で述べたとおり、汎用エンジニアリングプラスチックであり、低コスト化を図るために成形品とすることが一般的である。一般に、成形品の場合は、製品の各部における肉厚の差が原因となって成形時の収縮の差を生じやすい。この収縮の差により、製品の表面にヒケ58(えくぼ状のへこみ)を発生する。本実施の形態に係わるスペーサ51aと51bの場合にも、実際に、感光ドラム6との当接面52にヒケ58が発生した。図31に示すように、当接面52にヒケ58が発生すると、感光ドラム6に当接するスペーサの接触面積が減少するので、面圧(N/mm2)が大きくなり、感光ドラム6の表面の磨耗や、スペーサ51aと51bの初期磨耗が著しく進行することが容易に予想できる。図32から図34に示すように、スペーサ51aと51bの当接面52に溝63を形成することにより、スペーサ各部の肉厚の差が少なくなり、当接面52のヒケ58を極力少なくすることができた。したがって、感光ドラム6の表面の磨耗や、スペーサ51aと51bの初期磨耗を抑制することが可能となった。これにより、SLAの出射端面と感光ドラム6の距離LiがLi=Loとなるように、LEDヘッドを感光ドラム6上に安定に保持することができた。
【符号の説明】
【0059】
2 SLA、 4 SLAホルダ、 6 感光ドラム、 7 ギヤ、 8 軸、 13a、13b アジャスト機構、 16 アッパフレーム、 51a、51b スペーサ、 60、61 偏心カム機構、 63 溝。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
感光体を有し、長手方向に延伸する円筒形状の感光ドラムと、
前記感光ドラムと対向して設けられ、前記感光ドラムの長手方向に延伸して前記感光体に当接する帯電ローラと、
前記感光ドラムと対向して設けられ、前記感光ドラムの長手方向に延伸する光学式ヘッドと、
一端が前記感光体に当接し、他端が前記光学式ヘッドに当接するように配設され、前記光学式ヘッドと前記感光ドラムの表面との間の距離を規制する少なくとも1つのスペーサと
を有し、
前記スペーサは、前記帯電ローラが前記感光体に当接する領域の外側に位置するように配設されることを特徴とする光学式ヘッドの位置決め装置。
【請求項2】
前記感光ドラム上の面の曲率半径は、該感光ドラムに当接する前記スペーサの前記一端の接触面の曲率半径よりも大きいことを特徴とする請求項1記載の光学式ヘッドの位置決め装置。
【請求項3】
前記一端の接触面が前記感光ドラム上の面に対して押圧されると、前記スペーサが弾性的に変形することにより、前記一端の接触面の曲率半径が、前記感光ドラム上の面の曲率半径に実質的に等しくなることを特徴とする請求項2に記載の光学式ヘッドの位置決め装置。
【請求項4】
前記感光ドラムは、前記感光体を帯電する帯電ローラ、前記感光体ドラムに形成された静電潜像を現像する現像ローラと共にIDユニットを構成し、該IDユニットに前記スペーサを設けたことを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載の光学式ヘッドの位置決め装置。
【請求項5】
前記スペーサは、前記IDユニットの外筐に係合して前記感光ドラムに対する位置を規制する爪部を有することを特徴とする請求項4記載の光学式ヘッドの位置決め装置。
【請求項6】
前記スペーサは、前記感光体ドラムの両端部に一対配設され、前記光学式ヘッドは、一方の前記スペーサに2点で接し、他方の前記スペーサに1点で接することを特徴とする請求項1乃至5の何れかに記載の光学式ヘッドの位置決め装置。
【請求項1】
感光体を有し、長手方向に延伸する円筒形状の感光ドラムと、
前記感光ドラムと対向して設けられ、前記感光ドラムの長手方向に延伸して前記感光体に当接する帯電ローラと、
前記感光ドラムと対向して設けられ、前記感光ドラムの長手方向に延伸する光学式ヘッドと、
一端が前記感光体に当接し、他端が前記光学式ヘッドに当接するように配設され、前記光学式ヘッドと前記感光ドラムの表面との間の距離を規制する少なくとも1つのスペーサと
を有し、
前記スペーサは、前記帯電ローラが前記感光体に当接する領域の外側に位置するように配設されることを特徴とする光学式ヘッドの位置決め装置。
【請求項2】
前記感光ドラム上の面の曲率半径は、該感光ドラムに当接する前記スペーサの前記一端の接触面の曲率半径よりも大きいことを特徴とする請求項1記載の光学式ヘッドの位置決め装置。
【請求項3】
前記一端の接触面が前記感光ドラム上の面に対して押圧されると、前記スペーサが弾性的に変形することにより、前記一端の接触面の曲率半径が、前記感光ドラム上の面の曲率半径に実質的に等しくなることを特徴とする請求項2に記載の光学式ヘッドの位置決め装置。
【請求項4】
前記感光ドラムは、前記感光体を帯電する帯電ローラ、前記感光体ドラムに形成された静電潜像を現像する現像ローラと共にIDユニットを構成し、該IDユニットに前記スペーサを設けたことを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載の光学式ヘッドの位置決め装置。
【請求項5】
前記スペーサは、前記IDユニットの外筐に係合して前記感光ドラムに対する位置を規制する爪部を有することを特徴とする請求項4記載の光学式ヘッドの位置決め装置。
【請求項6】
前記スペーサは、前記感光体ドラムの両端部に一対配設され、前記光学式ヘッドは、一方の前記スペーサに2点で接し、他方の前記スペーサに1点で接することを特徴とする請求項1乃至5の何れかに記載の光学式ヘッドの位置決め装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【図36】
【図37】
【図2】
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【図4】
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【図7】
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【図11】
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【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【図36】
【図37】
【公開番号】特開2011−145684(P2011−145684A)
【公開日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−23563(P2011−23563)
【出願日】平成23年2月7日(2011.2.7)
【分割の表示】特願2007−320353(P2007−320353)の分割
【原出願日】平成14年4月1日(2002.4.1)
【出願人】(591044164)株式会社沖データ (2,444)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年2月7日(2011.2.7)
【分割の表示】特願2007−320353(P2007−320353)の分割
【原出願日】平成14年4月1日(2002.4.1)
【出願人】(591044164)株式会社沖データ (2,444)
【Fターム(参考)】
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