説明

光学機器及び信号処理装置

【課題】最大デフォーカス量の向上を図りつつ、ピント近傍での焦点検出精度の確保が可能な光学機器を提供する。
【解決手段】カメラ200は、撮像光学系からの光束により形成された被写体像を光電変換する複数の撮像画素、及び、撮像光学系からの光束のうち2分割された光束により形成された2像を光電変換する複数の焦点検出画素を有する撮像素子107と、複数の焦点検出画素から互いに光学基線長の異なる第1及び第2の一対の像信号を取得する焦点検出手段と、第1及び第2の一対の像信号のうち少なくとも一つの相関量に基づいて、第1及び第2の一対の像信号のいずれか一つを選択する選択手段と、選択された一対の像信号に基づいてデフォーカス量を算出する演算手段とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撮影レンズの焦点検出が可能なデジタルスチルカメラ等の光学機器に関する。
【背景技術】
【0002】
撮影レンズの焦点検出方式の一つとして、特許文献1には、センサの各画素にマイクロレンズが形成された2次元センサを用いて、瞳分割方式により焦点検出を行う装置が開示されている。特許文献1の装置では、センサを構成する各画素の光電変換部が複数に分割されている。分割された光電変換部は、マイクロレンズを介して撮影レンズの瞳の異なる領域を受光するように構成されている。
【0003】
特許文献2には、撮像素子の一部の受光素子(画素)において、オンチップマイクロレンズの光軸に対して受光部の感度重心を偏心させることで瞳分割させる撮像装置が開示されている。これらの画素は、焦点検出画素として、撮像画素群の間に所定の間隔で配置されることにより、位相差式焦点検出が行われる。また、焦点検出画素が配置された箇所は撮像画素の欠損部に相当するため、周辺の撮像画素情報から補間することにより画像情報が創生される。
【0004】
特許文献3には、撮像素子の一部の画素の受光部を2分割することで瞳分割させる焦点検出装置が開示されている。この焦点検出装置は、2分割された受光部の出力を個別に処理することで位相差式焦点検出を行うとともに、2分割受光部の出力を合算してこれを撮像信号として用いる。
【0005】
特許文献4には、撮影レンズの異なる瞳領域を透過した光束から生成される像の相関演算を行って、焦点検出を行う方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開昭58−24105号公報(第2頁、図1)
【特許文献2】特開2000−156823号公報(段落0075〜0079、図3〜4等)
【特許文献3】特開2001−305415号公報(段落0052〜0056、図7〜8等)
【特許文献4】特開平5−127074号公報(第15頁、図34)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前述の位相差式焦点検出手段では、受光部の感度重心の偏心量の差を大きくするほどピントボケの敏感度が上がり、ピント検出精度が上がることが知られている。しかしながら、感度重心の偏心量を大きくすると、レンズの射出瞳でのケラレの影響が大きくなる。
【0008】
図15は、特許文献2で示されたような焦点検出を行う画素の受光感度を示す図である。ここでは、撮像素子面に平行で撮像素子から所定の距離(例えば100mm)離れた瞳面上の水平位置を横軸にとっており、縦軸が受光感度となる。従って、撮像素子の受光感度を100mm瞳面上に投影したイメージとなり、中央像高画素での開口が異なる二つの光電変換素子それぞれの受光感度(図ではそれぞれA像感度、B像感度と称している)を表している。
【0009】
この例では、A像、B像はそれぞれ感度ピークが約5mm偏心されており、A、B像の感度重心の偏心量(光学基線長とよぶことにする)としては、100mm離れた位置で約10mmに設定されている。
【0010】
図15は、このような感度を持った焦点検出を行う画素により線像がどのようにボケるかを示している。ピントが合っている時は、A像、B像ともにインパルス状に近い同じ形状の像が得られる。
【0011】
図16は、ピント1、2,3のように、ピントが徐々に偏位した場合におけるA像、B像の様子である。図16(a)は後ピン側、図16(b)は前ピン側にピントがずれた様子を示す。
【0012】
図16に示されるように、ピントが大きくずれた場合は、像のボケだけでなく像の位置が大きく偏位する。このため、確実に焦点検出を行うには、非常に大きな焦点検出視野が必要となる。すなわち、大きなボケが発生した場合は、像のズレ量が非常に大きくなり相関演算を行う領域、いわゆる視野長が大きくなり、演算長が限られている場合には焦点検出可能な最大デフォーカス量を大きくすることができないという問題がある。
【0013】
これらの問題を解決するために、一律に受光部の感度重心の偏心量の差を小さくする(光学基線長を短くする)方法も考えられるが、ピント位置近傍では光学基線長が短いために精度良くピント位置を検出できなくなる。すなわち、ピント近傍での焦点検出精度の向上と最大デフォーカス量の向上とは、トレードオフの関係になっている。
【0014】
本発明は、最大デフォーカス量の向上を図りつつ、ピント近傍での焦点検出精度の確保が可能な光学機器を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の一側面としての光学機器は、撮像光学系からの光束により形成された被写体像を光電変換する複数の撮像画素、及び、該撮像光学系からの光束のうち2分割された光束により形成された2像を光電変換する複数の焦点検出画素を有する撮像素子と、前記複数の焦点検出画素から互いに光学基線長の異なる第1及び第2の一対の像信号を取得する焦点検出手段と、前記第1及び第2の一対の像信号のうち少なくとも一つの相関量に基づいて、該第1及び第2の一対の像信号のいずれか一つを選択する選択手段と、選択された一対の像信号に基づいてデフォーカス量を算出する演算手段とを有する。
【0016】
本発明の他の側面としての信号処理装置は、撮像光学系からの光束により形成された被写体像を光電変換する複数の撮像画素、及び、該撮像光学系からの光束のうち2分割された光束により形成された2像を光電変換する複数の焦点検出画素を有する撮像素子を備えた光学機器に用いられる信号処理装置であって、前記複数の焦点検出画素から互いに光学基線長の異なる第1及び第2の一対の像信号を取得する焦点検出手段と、前記第1及び第2の一対の像信号のうち少なくとも一つの相関量に基づいて、該第1及び第2の一対の像信号のいずれか一つを選択する選択手段と、選択された一対の像信号に基づいてデフォーカス量を算出する演算手段とを有する。
【0017】
本発明の他の目的及び特徴は、以下の実施例において説明される。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、最大デフォーカス量の向上を図りつつ、ピント近傍での焦点検出精度の確保が可能な光学機器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本実施例におけるカメラの構成図である。
【図2】本実施例における撮像素子の回路構成図である。
【図3】本実施例における撮像素子の画素配線部の断面図である。
【図4】本実施例における撮像素子の動作のタイミングチャートである。
【図5】本実施例における撮像素子の一部を示す平面図である。
【図6】本実施例における撮像素子の画素の断面図である。
【図7】本実施例における焦点検出画素から所定の距離だけ離れた瞳面上での受光感度特性である。
【図8】本実施例において、光学基線長が長い対の焦点検出画素の受光感度特性である。
【図9】本実施例において、光学基線長が短い対の焦点検出画素の受光感度特性である。
【図10】本実施例において、一対の焦点検出画素による線像のボケの説明図である。
【図11】本実施例において、一対の焦点検出画素によるバーチャートのボケの説明図である。
【図12】実施例1におけるデフォーカス量の検出手順を示すフローチャートである。
【図13】実施例2におけるデフォーカス量の検出手順を示すフローチャートである。
【図14】実施例3におけるデフォーカス量の検出手順を示すフローチャートである。
【図15】従来の焦点検出画素の受光感度特性である。
【図16】従来の一対の焦点検出画素による線像のボケの説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施例について、図面を参照しながら詳細に説明する。各図において、同一の部材については同一の参照番号を付し、重複する説明は省略する。
【実施例1】
【0021】
まず、本発明の実施例1について説明する。
【0022】
図1は、本実施例におけるカメラ200(光学機器)の構成図である。カメラ200は、撮像手段である撮像素子を有するカメラ本体と撮影レンズとが一体となった電子カメラである。ただし、本実施例はこれに限定されるものではなく、撮影レンズがカメラ本体とは着脱可能に構成される光学機器についても適用可能である。
【0023】
図1において、100は撮影レンズである。撮影レンズ100は、被写体像を形成する結像光学系を構成する。101は撮影レンズ100の先端部に配置された第1レンズ群である。第1レンズ群は、光軸方向に進退可能に保持される。102は絞り兼用シャッタである。絞り兼用シャッタ102は、その開口径を調節することにより撮影時の光量調節を行うほか、静止画撮影時における露光秒時調節用シャッタとしての機能も有する。103は第2レンズ群である。絞り兼用シャッタ102及び第2レンズ群103は一体となって光軸方向に進退し、第1レンズ群101の進退動作との連動により、変倍作用(ズーム機能)をなす。
【0024】
105は第3レンズ群である。第3レンズ群105は、光軸方向の進退により、焦点調節を行う焦点調節光学系である。106は光学的ローパスフィルタである。光学的ローパスフィルタ106は、撮影画像の偽色やモアレを軽減するための光学素子である。107はC−MOSセンサ及びその周辺回路で構成された撮像素子である。撮像素子107は、横方向m画素、縦方向n画素の受光ピクセル上に、1つの光電変換素子が配置されている。撮像素子107は、撮像光学系からの光束により形成された被写体像を光電変換する複数の撮像画素を有する。また、撮像素子107は、撮像光学系からの光束のうち2分割(瞳分割)された光束により形成された2像を光電変換する複数の焦点検出画素(第1、第2、及び、第3の焦点検出画素)を有する。
【0025】
111はズームアクチュエータである。ズームアクチュエータ111は、不図示のカム筒を回動することで、第1レンズ群101及び第2レンズ群103を光軸方向に進退駆動し、変倍操作を行う。112は絞りシャッタアクチュエータである。絞りシャッタアクチュエータ112は、絞り兼用シャッタ102の開口径を制御して撮影光量を調節すると共に、静止画撮影時の露光時間制御を行う。114はフォーカスアクチュエータである。フォーカスアクチュエータ114は、第3レンズ群105を光軸方向に進退駆動して焦点調節を行う。
【0026】
115は撮影時における照明手段(被写体照明用電子フラッシュ)である。照明手段115としては、キセノン管を用いた閃光照明装置が適して用いられるが、この代わりに、連続発光するLEDを備えた照明手段を用いてもよい。
【0027】
121はCPU(信号処理装置)である。CPU121は、カメラ本体の種々の制御を司るカメラ内CPUであり、演算部、ROM、RAM、A/Dコンバータ、D/Aコンバータ、通信インターフェイス回路等を有する。CPU121は、ROMに記憶された所定のプログラムに基づいて、カメラ200が有する各種回路を駆動し、AF、撮影、画像処理、及び、記録等の一連の動作を実行する。
【0028】
また、CPU121は、焦点検出手段、選択手段、及び、演算手段を有する。焦点検出手段は、撮影レンズ100の焦点検出を行うように構成されており、撮像素子107から互いに光学基線長の異なる第1及び第2の一対の像信号を取得する。選択手段は、焦点検出手段で取得された第1及び第2の一対の像信号のうち少なくとも一つの相関量に基づいて、第1及び第2の一対の像信号のいずれか一つを選択する。演算手段は、選択手段で選択された一対の像信号に基づいてデフォーカス量を算出する。これらの手段の詳細については後述する。なお、これらの各機能は、1チップ化された信号処理装置としてのCPU121に含まれる。ただし、複数の信号処理装置を組み合わせてこれらの機能を備えるように構成してもよい。
【0029】
122は電子フラッシュ制御回路である。電子フラッシュ制御回路122は、撮影動作に同期して照明手段115を点灯制御する。124は撮像素子駆動回路である。撮像素子駆動回路124は、撮像素子107の撮像動作を制御するとともに、取得した画像信号をA/D変換してCPU121に送信する。125は画像処理回路である。画像処理回路125は、撮像素子107が取得した画像のγ変換、カラー補間、及び、JPEG圧縮等の各処理を行う。
【0030】
126はフォーカス駆動回路である。フォーカス駆動回路126は、焦点検出結果に基づいてフォーカスアクチュエータ114を駆動制御し、第3レンズ群105を光軸方向に進退駆動して焦点調節を行う。128は絞りシャッタ駆動回路である。絞りシャッタ駆動回路128は、絞りシャッタアクチュエータ112を駆動制御して、絞り兼用シャッタ102の開口を制御する。129はズーム駆動回路である。ズーム駆動回路129は、撮影者のズーム操作に応じてズームアクチュエータ111を駆動する。
【0031】
131はLCD等の表示器である。表示器131は、カメラ200の撮影モードに関する情報、撮影前のプレビュー画像と撮影後の確認用画像、及び、焦点検出時の合焦状態表示画像等を表示する。132は操作スイッチである。操作スイッチ132は、電源スイッチ、レリーズ(撮影トリガ)スイッチ、ズーム操作スイッチ、及び、撮影モード選択スイッチ等の操作スイッチ群で構成される。133は着脱可能なフラッシュメモリである。フラッシュメモリ133は、撮影済み画像を記録する。
【0032】
図2は、本実施例における撮像素子107の概略的な回路構成図である。撮像素子107としては、例えば、本出願人による特開平09−046596号報等に開示された構成が適して用いられる。図2に示される回路構成は、2次元C−MOSエリアセンサ(撮像素子107)の2列×4行の光電変換部の範囲を示したものであり、8画素分の回路構成である。
【0033】
図2において、1はMOSトランジスタゲートとゲート下の空乏層からなる光電変換素子の光電変換部である。2はフォトゲート、3は転送スイッチMOSトランジスタ、4はリセット用MOSトランジスタ、5はソースフォロワアンプMOSトランジスタ、6は水平選択スイッチMOSトランジスタである。7はソースフォロワの負荷MOSトランジスタ、8は暗出力転送MOSトランジスタ、9は明出力転送MOSトランジスタ、10は暗出力蓄積容量CTN、11は明出力蓄積容量CTSである。12は水平転送MOSトランジスタ、13は水平出力線リセットMOSトランジスタ、14は差動出力アンプ、15は水平走査回路、16は垂直走査回路である。
【0034】
図3は、撮像素子107における画素配線部の断面図である。
【0035】
図3において、17はP型ウェル、18はゲート酸化膜、19は一層目ポリSi、20は二層目ポリSi、21はFD部(n+フローティングディフュージョン部)である。FD部21は、別の転送MOSトランジスタを介して別の光電変換部と接続される。図2では、2つの転送MOSトランジスタ3のドレインとFD部21とを共通化して、微細化とFD部21の容量低減による感度向上を図っている。ただしこれに代えて、Al配線でFD部21を接続してもよい。
【0036】
次に、撮像素子107の動作について、図4のタイミングチャートを参照しながら説明する。図4に示されるタイミングチャートは、全画素独立出力の場合のものである。
【0037】
まず、垂直走査回路16からのタイミング出力によって、図2中の制御パルスφLをハイとして垂直出力線をリセットする。また、制御パルスφR0、φPG00、φPGe0をハイとし、リセット用MOSトランジスタ4をオンとし、フォトゲート2の一層目ポリSi19をハイにする。
【0038】
時刻T0において、制御パルスφS0をハイとし、選択スイッチMOSトランジスタ6をオンさせ、第1、第2ラインの画素部を選択する。次に、制御パルスφR0をローとし、FD部21のリセットを止め、FD部21をフローティング状態とする。ソースフォロワアンプMOSトランジスタ5のゲート−ソース間をスルーとした後、時刻T1において制御パルスφTNをハイとし、FD部21の暗電圧をソースフォロワ動作で蓄積容量CTN10に出力させる。
【0039】
次に、第1ラインの画素の光電変換出力を行うため、第1ラインの制御パルスφTX00をハイとして転送MOSトランジスタ3を導通させる。続いて、時刻T2において制御パルスφPG00をローとして下げる。このとき、フォトゲート2の下に拡がっているポテンシャル井戸を上げて、光発生キャリアをFD部21に完全転送させるような電圧関係に設定することが好ましい。従って、完全転送が可能であれば、制御パルスφTXはパルスではなく所定の固定電位でもかまわない。
【0040】
時刻T2において、フォトダイオードの光電変換部1からの電荷がFD部21に転送されることにより、FD部21の電位が光に応じて変化する。このとき、ソースフォロワアンプMOSトランジスタ5がフローティング状態であるため、FD部21の電位を、時刻T3において制御パルスφTsをハイとして蓄積容量CTS11に出力する。この時点で、第1ラインの画素の暗出力と光出力はそれぞれ蓄積容量CTN10と蓄積容量CTS11に蓄積されている。時刻T4の制御パルスφHCを一時ハイとして水平出力線リセットMOSトランジスタ13を導通して水平出力線をリセットする。そして、水平転送期間において、水平走査回路15の走査タイミング信号により水平出力線に画素の暗出力と光出力を出力する。
【0041】
このとき、蓄積容量CTN10と蓄積容量CTS11の差動増幅器14によって、差動出力VOUTを取れば、画素のランダムノイズ、固定パターンノイズを除去したS/Nの良好な信号が得られる。また、画素30−12、30−22の光電荷は、画素30−11、30−21と同時に、それぞれの蓄積容量CTN10と蓄積容量CTS11に蓄積される。これらの光電荷は、水平走査回路15からのタイミングパルスを1画素分遅らして水平出力線に読み出し、差動増幅器14から出力される。
【0042】
本実施例では、差動出力VOUTをチップ内で行う構成が示されている。ただし、差動出力VOUTをチップ内に含めずに外部部品として構成し、従来のCDS(Correlated Double Sampling:相関二重サンプリング)回路を用いても同様の効果を得ることができる。
【0043】
蓄積容量CTS11に明出力を出力した後、制御パルスφR0をハイとしてリセット用MOSトランジスタ4を導通し、FD部21を電源VDDにリセットする。第1ラインの水平転送が終了した後、第2ラインの読み出しを行う。第2ラインの読み出しは、制御パルスφTXe0、制御パルスφPGe0を同様に駆動させ、制御パルスφTN、φTSにそれぞれハイパルスを供給する。そして、蓄積容量CTN10と蓄積容量CTS11にそれぞれ光電荷を蓄積し、暗出力及び明出力を取り出す。
【0044】
前述の駆動により、第1、第2ラインの読み出しをそれぞれ独立して行うことができる。この後、垂直走査回路を走査させ、同様に、第2n+1、第2n+2(n=1,2,…)の読み出しを行うことにより、全画素の独立出力が可能となる。すなわち、n=1の場合、まず制御パルスφS1をハイとし、次にφR1をローとし、続いて制御パルスφTN、φTX01をハイとする。そして、制御パルスφPG01をロー、制御パルスφTSをハイ、制御パルスφHCを一時ハイとして画素30−31,30−32の画素信号を読み出す。続いて、制御パルスφTXe1、φPGe1及び上記と同様に制御パルスを印加して、画素30−41、30−42の画素信号を読み出す。
【0045】
図5は、撮像素子107としての一例であるC−MOSセンサの一部を示す平面図である。
【0046】
図5において、51、52は電極である。電極51、52で区切られた領域が1画素を示している。1画素中に書かれた「R」「G」「B」の文字は、各画素のカラーフィルタの色相を表している。「R」の文字の書かれた画素は、赤の成分の光を透過する。「G」の文字の書かれた画素は、緑の成分の光を透過する。「B」の文字の書かれた画素は、青の成分の光を透過する。また、「R」「G」「B」の文字が書かれた各画素は、撮影レンズ100の全瞳領域を受光するように構成されている。
【0047】
カラーフィルタの配列がベイヤ配列の場合、1絵素は「R」「B」の画素と2つの「G」の画素から構成される。本実施例の光学機器における撮像素子107には、「R」又は「B」であるべき画素の一部に、撮影レンズ100の一部の瞳領域を受光する焦点検出画素が割り当てられている。図5中、α1、β1、α2、β2、α3、β3は、撮影レンズ100の焦点検出を行うための焦点検出画素である。これらの画素は、電極51により、水平方向の開口が制限されている。
【0048】
本実施例の撮像素子107の一部に配設される焦点検出画素において、電極51にて制限される開口の水平方向の開口中心位置(受光感度の重心)は、画素中心に対してそれぞれ異なる。本実施例では5種類の開口中心位置を有する焦点検出画素が配設されている。
【0049】
例えば、電極51−1―α1と電極51−2―α1とで決まる開口が画素中心に対して水平左方向に偏位した焦点検出画素α1に対して、水平方向に4画素隣接した位置に、同様の電極開口を有する焦点検出画素が配設されている。
【0050】
また、焦点検出画素α1に対して斜めに隣接する位置において、電極51−3―β1と電極51−4―β1とで決定される開口が画素中心と略一致するように、焦点検出画素β1が配設されている。さらに、焦点検出画素β1に対して、水平方向に4画素隣接した位置に、同様の電極開口を有する焦点検出画素が配設されている。
【0051】
図6は、図5の撮像素子107の焦点検出画素α2、β2とその隣接画素の断面図である。図6(a)は図5中のC―C断面図であり、図6(b)は図5中のD―D断面図である。
【0052】
図6(a)の左側の画素は、焦点検出画素α2を示し、右側の画素は撮影レンズ100の全瞳領域を受光可能な画素を示している。
【0053】
撮像素子107は、シリコン基板60の内部に光電変換部61が形成されている。光電変換部61で発生した信号電荷は、不図示のフローティングディフュージョン部、第1の電極51及び第2の電極52を介して外部に出力される。実際には、光電変換部61の中央における断面図上には電極52は存在しないが、奥行き方向に存在するため、ここでは点線にて高さ方向の位置を示している。
【0054】
光電変換部61と電極51との間には層間絶縁膜62が形成され、電極51と電極52との間には層間絶縁膜63が形成されている。また、電極52の光入射側には層間絶縁膜64が形成され、さらにパッシべーション膜65、平坦化層66が形成されている。
【0055】
断面箇所を平坦化層66の光入射側には、カラーフィルタ層67、平坦化層68及びマイクロレンズ69が形成されている。マイクロレンズ69のパワーは、撮影レンズ100の瞳と光電変換部61が略共役になるように設定されている。また、マイクロレンズ69は、撮像素子107の中央に位置する画素では画素の中心に配設され、周辺に位置する画素では撮影レンズ100の光軸側に偏位して配設される。
【0056】
撮影レンズ100を透過した被写体光は、撮像素子107の近傍に集光する。さらに、撮像素子107の各画素に到達した光は、マイクロレンズ69で屈折され光電変換部61に集光する。通常の撮像に用いられる図6(a)中の右側の画素では、入射する光を遮光しないように第1の電極51及び第2の電極52が配設されている。
【0057】
一方、図6(a)中の左側の撮影レンズ100の焦点検出を行う画素では、電極51の一部が光電変換部61を覆うように構成されている。その結果、図6(a)中の左側の焦点検出画素は、撮影レンズ100の瞳の一部を透過する光束を受光可能に構成されている。また、電極51が入射光束の一部を遮光していることにより光電変換部61の出力が小さくなることを防ぐため、焦点検出画素のカラーフィルタ層67Wは、光を吸収しにくい透過率の高い樹脂で形成されている。
【0058】
同様に、図6(b)の右側の画素は、焦点検出画素β2を示し、左側の画素は撮影レンズ100の全瞳領域を受光可能な画素を示している。図6に示されるように、焦点検出画素α2、β2は、互いに略左右対称形状となっている。これらの画素は、マイクロレンズ69の位置と電極51の開口中心の相対位置を相違させることによって、撮影レンズ100の受光分布が相違するように構成されている。
【0059】
本実施例の焦点検出手段は、焦点検出画素α1(同じ電極開口を有する焦点検出画素群)及び焦点検出画素β1(同じ電極開口を有する焦点検出画素群)から第1の一対の像信号を取得する。焦点検出手段は、焦点検出画素α2、β2、及び、焦点検出画素α3、β3の組み合わせについても同様に、それぞれの一対の像信号を取得する。焦点検出手段は、これらの画素から得られた一対の像信号を用いて、撮影レンズ100の焦点状態を平均化する。
【0060】
また、焦点検出手段は、焦点検出画素α1(同じ電極開口を有する焦点検出画素群)及び焦点検出画素α2(同じ電極開口を有する焦点検出画素群)から第2の一対の像信号を取得する。この点については、焦点検出画素α2、α3、焦点検出画素β1、β2、及び、焦点検出画素β2、β3の組み合わせについても同様である。焦点検出手段は、これらの画素から得られた一対の像信号を用いて、撮影レンズ100の焦点状態を平均化する。
【0061】
このとき、第2の一対の像信号の光学基線長は、第1の一対の像信号の光学基線長より短い。
【0062】
図5に示されるように、本実施例の撮像素子107において、3つの一対の焦点検出画素(焦点検出画素群α1−β1、α2−β2、α3−β3)は全て、互いに画素ピッチの対角分(距離L1)だけ離れるように配置されている。すなわち、焦点検出画素α1、β1をそれぞれ、第1の焦点検出画素、第2の焦点検出画素とすると、第1の焦点検出画素及び第2の焦点検出画素の間の距離はL1となる。
【0063】
一方、4つの一対の焦点検出画素(焦点検出画素群α1−α2、α2−α3、β1−β2、β2−β3)は全て、互いに4画素ピッチ分(距離L2)だけ離れるように配置されている。すなわち、焦点検出画素α1、α2をそれぞれ、第1の焦点検出画素、第3の焦点検出画素とすると、第1の焦点検出画素及び第3の焦点検出画素の間の距離はL2となる。
【0064】
このように、第1の焦点検出画素及び第3の焦点検出画素の間の距離L2は、第1の焦点検出画素及び第2の焦点検出画素の間の距離L1より大きい。
【0065】
また、図5に示されるように、第1、第2、及び、第3の焦点検出画素は、互いに受光感度の重心が偏位している。第2及び第3の焦点検出画素は、第1の焦点検出画素に対して、受光感度の重心の偏位方向とは異なる方向に配置されている。
【0066】
通常の画像の撮像時には、画素の電極開口が制限されている焦点検出画素は欠陥画素として取り扱われる。このため、画像信号は焦点検出画素の周辺に位置する画素から補間処理を行って生成される。
【0067】
図7は、撮像素子107の一部に配設された焦点検出画素から所定の距離(100mm)だけ離れた瞳面上での受光感度特性である。
【0068】
図7(a)は、撮像素子107の焦点検出画素α1から所定の距離(100mm)だけ離れた瞳面上での受光感度特性を示している。焦点検出画素α1の電極51−1と電極51−2とで決定される開口の中心は、画素の中心に対して水平左(−)方向に大きく偏位している。すなわち、受光感度の重心が偏位している。このため、焦点検出画素α1の光電変換部の受光可能な領域の中心は、瞳面上で光軸に対して距離約+10mm偏位している。
【0069】
図7(b)は、焦点検出画素β1から所定の距離(100mm)だけ離れた瞳面上での受光感度特性を示している。焦点検出画素β1の電極51−3と電極51−4とで決定される開口の中心は、画素の中心と略一致している。このため、焦点検出画素β1の光電変換部の受光可能な領域の中心は、瞳面上で光軸と略一致している。
【0070】
図7(c)は、焦点検出画素α2から所定の距離(100mm)だけ離れた瞳面上での受光分布を示している。焦点検出画素α2の電極51−1と電極51−2とで決定される開口の中心は、画素の中心に対して水平左(−)方向に偏位している。このため、焦点検出画素α2の光電変換部の受光可能な領域の中心は、瞳面上で光軸に対して距離約+5mm偏位している。
【0071】
図7(d)は、焦点検出画素β2から所定の距離(100mm)だけ離れた瞳面上での受光分布を示している。焦点検出画素β2の電極51−3と電極51−4とで決定される開口の中心は画素の中心に対して水平右(+)方向に偏位している。このため、焦点検出画素β2の光電変換部の受光可能な領域の中心は、瞳面上で光軸に対して距離約−5mm偏位している。
【0072】
図7(e)は、焦点検出画素α3から所定の距離(100mm)だけ離れた瞳面上での受光分布を示している。焦点検出画素Pα3の電極51−1と電極51−2とで決定される開口の中心は画素の中心と略一致している。このため、焦点検出画素α3の光電変換部の受光可能な領域の中心は、瞳面上で光軸と略一致している。なお、焦点検出画素α3の瞳面上での受光分布は、焦点検出画素β1の瞳面上での受光分布と略一致している。
【0073】
図7(f)は、焦点検出画素β3から所定の距離(100mm)だけ離れた瞳面上での受光分布を示している。焦点検出画素β3の電極51−3と電極51−4とで決定される開口の中心は画素の中心に対して水平右(+)方向に大きく偏位している。このため、焦点検出画素β3の光電変換部の受光可能な領域の中心は、瞳面上で光軸に対して距離約−10mm偏位している。
【0074】
以上のように、本実施例の撮像素子107の焦点検出画素は、受光分布の中心が水平方向に異なる位置に存在する5種類の画素群から構成されている。
【0075】
図8は、光学基線長が長い対の焦点検出画素の受光感度特性である。
【0076】
図8(a)は、撮像素子107から所定の距離(100mm)だけ離れた瞳面上での焦点検出画素α1、β1で代表される焦点検出画素群による受光感度特性である。2つの受光感度ピークの位置の偏位量が光学基線長に相当し、この場合の光学基線長は約10mmである。
【0077】
同様に、図8(b)、(c)は、それぞれ、焦点検出画素α2、β2、及び、焦点検出画素α3、β3で代表される焦点検出画素群による受光感度特性である。いずれの場合も、光学基線長は約10mmである。
【0078】
図9は、光学基線長が短い対の焦点検出画素の受光感度特性である。
【0079】
図9(a)は、撮像素子107から所定の距離(100mm)だけ離れた瞳面上での焦点検出画素α1、α2で代表される焦点検出画素群による受光感度特性である。2つの受光感度ピークの位置の偏位量が光学基線長に相当し、この場合、光学基線長は約5mmである。
【0080】
同様に、図9(b)〜図9(d)は、それぞれ、焦点検出画素α2、α3、焦点検出画素β1、β2、及び、焦点検出画素β2、β3で代表される焦点検出画素群による受光感度特性である。いずれの場合も、光学基線長は約5mmである。
【0081】
このように、図9の焦点検出画素群(4画素ピッチ分(L2)だけ離れている焦点検出画素の組)の光学基線長は、図8の焦点検出画素群(画素ピッチの対角分(L1)だけ離れている焦点検出画素の組)の光学基線長よりも短い。
【0082】
次に、図10を参照して、光学基線長が異なる焦点検出画素により線像がどのようにボケるかについて説明する。図10は、対の焦点検出画素群における線像のボケの説明図である。
【0083】
図10(a)は、光学基線長の長い焦点検出画素群の代表として、焦点検出画素α2、β2の組での線像のボケの状態を後ピン側に対して示している(A像)。図10(b)は、光学基線長の短い焦点検出画素群の代表として、焦点検出画素α2、α3の組での線像のボケの状態を後ピン側に対して示している(B像)。
【0084】
ピントが合っている場合、A像、B像ともにインパルス状に近い同じ形状の像が得られる。図10においてピント1、2、3は、ピントが徐々にずれていった場合のA像、B像の様子である。
【0085】
図10(a)に示されるように、基線長が長い場合、ピント3の状態においては、最大長さB3aの範囲で焦点検出画素が必要となる。一方、図10(a)に示されるように、基線長が短い場合、ピント3の状態においては、最大長さB3b(B3a>B3b)の焦点検出画素となる。このように、基線長が短い場合、基線長が長い場合と比較して、必要な焦点検出画素は少なくなる。
【0086】
次に、図11を参照して、被写体像を2本の巾の異なるバーチャートが具体的にどのようにボケるかについて説明する。図11(a)では、光学基線長が長い組の代表として、焦点検出画素α2、β2の組でのバーチャートのボケの状態を後ピン側に対して示している。図11(b)では、光学基線長が短い組の代表として、焦点検出画素α2、α3の組でのバーチャートのボケの状態を後ピン側に対して示している。
【0087】
図11に示されるように、同一のピントのズレに対し、撮像面上での対の焦点検出画素群の像のズレ巾が異なる。すなわち、光学基線長が短いほど像のズレ量は小さくなる。従って、光学基線長が長い組ほど位相差のズレは大きいために焦点検出感度が高く、焦点検出視野長を固定にした場合、光学基線長が短い組ほどデフォーカスの大きいピント状態に対しても焦点検出が可能となる。
【0088】
ピント近傍での焦点検出精度を高めるには、ピントのズレに対して感度を高く、すなわち光学基線長を長くする必要がある。その際、ピント近傍では像が先鋭になっているため、位相差像を検出する対の画像サンプリング位置のズレは、できるだけ小さくする必要がある。これは、像が先鋭であることにより、僅かな位置ズレでも像の強度が大きく変化するためである。従って、対となる焦点検出画素群の距離はできるだけ短いことが望ましい。
【0089】
一方、像が大ボケになると像の先鋭度が減り、焦点検出画素群の距離が長くても焦点検出性能に影響しにくくなる。
【0090】
本実施例では、光学基線長が長い対の焦点検出画素群α1−β1、α2−β2、α3−β3の距離を対角隣接画素のL1に設定し、光学基線長が短い対の焦点検出画素群α1−α2、α2−α3、β1−β2、β2−β3の距離を4画素分のL2に設定している。従って、ピント近傍での焦点検出精度の確保と最大デフォーカス量の向上とを同時に両立させることができる。
【0091】
本実施例において、光学基線長の短い焦点検出画素群は、光学基線長の長い焦点検出画素群の組合せを換えることにより選択される。このため、別の焦点検出画素を配置する必要がなく、画像を取得するための標準画素の数を確保することができる。
【0092】
また、本実施例では、光学基線長の異なる焦点検出画素の組合せは、単一の焦点検出画素を重複して用いるため、光学基線長の短い焦点検出画素の位置は、位相差方向とは異なる方向に配置される。
【0093】
次に、図12を参照して、オートフォーカスの一部である焦点ずれ量(デフォーカス量)の検出手順について説明する。
【0094】
図12は、本実施例における焦点ずれ量(デフォーカス量)の検出手順を示すフローチャートである。図12に示される各手順は、CPU121の指示に基づいて実行される。なお、図12はオートフォーカスのサブルーチンを示している。オートフォーカスのメインフローは、一般的なカメラにおける手順と同一であるため省略する。
【0095】
まず、操作スイッチ132によりオートフォーカス機能が選択された場合、焦点検出を行うため、ステップS1において撮像素子107の撮像画素及び焦点検出画素の読み出しが行われる。ステップS2では、前述の6種類の焦点検出画素群(α1、α2、α3、β1、β2、β3)を用いて、位相差方向に形成される6種類のパターン像を創生する。前述の図11は、2本の巾の異なるバーチャートでのパターン像の例である。
【0096】
次に、ステップS3において、光学基線長が長い3種の対の焦点検出画素群α1−β1、α2−β2、α3−β3の像(第1の一対の像信号)を相関演算する。ステップS4においては、光学基線長が短い4種の対の焦点検出画素群α1−α2、α2−α3、β1−β2、β2−β3の像(第2の一対の像信号)を相関演算する。
【0097】
次に、ステップS5、S6で、CPU121の選択手段は、ステップS3、S4のそれぞれの相関演算結果の信頼性を判定する。ここで信頼性とは、一対の像の一致度(相関量)や像のコントラストなどであり、一対の像の一致度が良好である場合は一般的に焦点検出結果の信頼性が高く、また、コントラストが高い場合は焦点検出対象としての信頼性が高いと判定される。
【0098】
ステップS5において、判定手段は、光学基線長が長い3種の対の像(第1の一対の像信号)に対し、閾値1で信頼性評価を行う。ステップS6において、判定手段は、光学基線長が短い4種の一対の像(第2の一対の像信号)に対し、閾値1よりも厳しい閾値2で信頼性評価を行う。このように、判定手段は、互いに異なる基準で第1及び第2の一対の像信号の信頼性を判定する。
【0099】
従って、ピント近傍では、光学基線長の長い対の焦点検出画素群が選択されやすく、焦点検出精度を確保することが可能となる。一方、大ボケ状態では、固定の焦点検出視野から対象となる被写体像の情報を多く取り込める光学基線長の短い対の焦点検出画素群が選択されやすい。このため、最大デフォーカス量を向上させることが可能となる。
【0100】
次に、ステップS7において、ステップS5、S6の判定に従い、CPU121における選択手段は、光学基線長の長い焦点検出画素群及び光学基線長の短い焦点検出画素群のいずれか一つを選択する。ステップS8では、選択手段により選択された焦点検出画素群について、再度、その相関信頼性を詳細に確認する。ステップS8において信頼性が無いと判定された場合、焦点検出信号自身の信頼性が無いと判定され、ステップS1に戻って画像の読み出しからやり直す。一方、ステップS8で信頼性があることが確認された場合、ステップS9において、CPU121の演算手段は、像(一対の像信号)の相関値をデフォーカス量(焦点ずれ量)に換算することにより、デフォーカス量を算出する。
【0101】
ステップS10では、ステップS9で演算手段により算出されたデフォーカス量が許容値以下か否かが判定される。デフォーカス量が許容値以上である場合、非合焦と判定される。そして、ステップS11において、ステップS9で算出したデフォーカス量を補正するようにフォーカスレンズを駆動した後、ステップS1乃至ステップS10を繰り返し実行する。一方、ステップS10で合焦状態に達したと判定されると、ステップS12にて合焦表示が行われ、オートフォーカスサブルーチンから抜ける。
【0102】
以上のように、本実施例によれば、光学基線長の長い焦点検出画素群及び光学基線長の短い焦点検出画素群のうち適切な一方から取得された一対の像信号に基づいてデフォーカス量が算出される。より具体的には、デフォーカス量の大きい被写体に対しては光学基線長が短い一対の像信号が選択され、ピント近傍では光学基線長の長い対の像信号が選択される。従って、本実施例の光学機器によれば、最大デフォーカス量の向上を図りつつ、ピント近傍での焦点検出精度の確保が可能となる。
【実施例2】
【0103】
次に、本発明の実施例2について説明する。本実施例では、基線長の異なる対の像の選択方法が実施例1とは異なる。光学機器のその他の構成は実施例1と同一であるため、その説明は省略する。
【0104】
図13は、本実施例において、オートフォーカスの一部である焦点ずれ量(デフォーカス量)の検出手順を示すフローチャートである。図13に示される各手順は、実施例1と同様に、CPU121の指示により実行される。なお、図13はオートフォーカスのサブルーチンを示しており、そのメインフローは一般的なカメラの場合と同一であるため省略する。
【0105】
まず、操作スイッチ132によりオートフォーカス機能が選択された場合、焦点検出を行うため、ステップS1において撮像素子107の撮像画素及び焦点検出画素の読み出しが行われる。ステップS2では、前述の6種類の焦点検出画素群(α1、α2、α3、β1、β2、β3)を用いて、位相差方向に形成される6種類のパターン像を創生する。これらのステップS1、S2は実施例1と同様である。
【0106】
次に、ステップS13において、光学基線長が短い4種の対の焦点検出画素群α1−α2、α2−α3、β1−β2、β2−β3の像(第2の一対の像信号)をそれぞれ相関演算する。また、ステップS14において、光学基線長が長い3種の対の焦点検出画素群α1−β1、α2−β2、α3−β3の像(第1の一対の像信号)をそれぞれ相関演算する。
【0107】
次に、ステップS15で、光学基線長が短い焦点検出画素群による像の相関量を確認する。この相関量が所定の閾値以上である場合、光学基線長が長い焦点検出画素群の像よりも光学基線長が短い焦点検出画素群の像からの相関量の方が、一般的に信頼性が高い。一方、相関量が所定の閾値より小さい場合、焦点検出感度が高く光学基線長の長い焦点検出画素群の像からの相関量の方が、信頼性が高い。
【0108】
このように、像の相関量を所定の閾値として、光学基線長の長い焦点検出画素群及び光学基線長の短い焦点検出画素群のいずれか一方が選択される。このため、相関量が所定の閾値以上である場合、すなわちデフォーカス量の大きい被写体に対して、選択手段は光学基線長が短い焦点検出画素群の像(第2の一対の像信号)を選択する(ステップS16)。一方、相関量が所定の閾値より小さい場合、すなわちピント近傍では、選択手段は光学基線長が長い焦点検出画素群の像(第1の一対の像信号)を選択する(ステップS17)。
【0109】
ステップS18では、相関値の信頼性が確認される。ここで信頼性が無いと判定された場合、焦点検出信号自身の信頼性が無いと判断される。この場合、ステップS1に戻って画像の読み出しからやり直す。
【0110】
ステップS18で信頼性が確認された場合、演算手段は、ステップS3又はステップS4で取得した像の相関値をデフォーカス量に換算して、デフォーカス量を算出する(ステップS9)。
【0111】
ステップS10では、ステップS9で算出されたデフォーカス量が許容値以下であるか否かが判定される。デフォーカス量が許容値以上である場合、非合焦であると判定される。この場合、ステップS11において、ステップS9で算出されたデフォーカス量を補正するようにフォーカスレンズを駆動した後、ステップS1乃至ステップS10を繰り返し実行する。一方、ステップS10にて合焦状態に達したと判定されると、ステップS12にて合焦表示を行い、オートフォーカスサブルーチンから抜ける。なお、ステップS9乃至ステップS12は実施例1と同様である。
【0112】
以上のように、本実施例によれば、光学基線長の長い焦点検出画素群及び光学基線長の短い焦点検出画素群のうち適切な一方から取得された一対の像信号に基づいてデフォーカス量が算出される。より具体的には、デフォーカス量の大きい被写体に対しては光学基線長が短い一対の像信号が選択され、ピント近傍では光学基線長の長い一対の像信号が選択される。従って、本実施例の光学機器によれば、最大デフォーカス量の向上を図りつつ、ピント近傍での焦点検出精度の確保が可能となる。
【実施例3】
【0113】
実施例3では、光学機器の構成は実施例1と同じであり、基線長の異なる対の像の選択方法が異なっている。光学機器のその他の構成は実施例1と同一であるため、その説明は省略する。
【0114】
図14は、本実施例において、オートフォーカスの一部である焦点ずれ量(デフォーカス量)の検出手順を示すフローチャートである。図14に示される各手順は、実施例1と同様に、CPU121の指示により実行される。なお、図14はオートフォーカスのサブルーチンを示しており、そのメインフローは一般的なカメラの場合と同一であるため省略する。
【0115】
まず、操作スイッチ132によりオートフォーカス機能が選択された場合、ステップS1において撮像素子107の撮像画素及び焦点検出画素の読み出しが行われる。ステップS2では、前述の6種類の焦点検出画素群(α1、α2、α3、β1、β2、β3)を用いて、位相差方向に形成される6種類のパターン像を創生する。
【0116】
次に、ステップS3において、焦点検出手段は、光学基線長が長い3種の対の焦点検出画素群α1−β1、α2−β2、α3−β3の像(第1の一対の像信号)を相関演算により取得する。また、ステップS4において、焦点検出手段は、光学基線長が短い4種の対の焦点検出画素群α1−α2、α2−α3、β1−β2、β2−β3の像(第2の一対の像信号)を相関演算により取得する。次に、ステップS5、S6で、ステップS3、S4の相関演算結果の信頼性(相関量)を判定する。ステップS5では、光学基線長が長い3種の対の像に対し、閾値1で信頼性評価を行う。
【0117】
以上のステップS1乃至ステップS5は、実施例1と同様である。
【0118】
ステップS26では、光学基線長が短い4種の一対の像に対し、ステップS5における閾値と同一の閾値1で信頼性評価を行う。光学基線長が短い一対の像ほど像の相関性は保たれる。このため、通常は、光学基線長が短い4種の一対の像が選択される。
【0119】
次にステップS7では、ステップS5、S6における閾値の判定結果に基づいて一方の焦点検出画素群を選択する。ステップS28では、選択された焦点検出画素群の相関量を確認する。この相関量が所定の閾値以上である場合、光学基線長が長い焦点検出画素群よりも光学基線長が短い焦点検出画素群の相関量の方が、一般的に信頼性が高い。一方、この相関量が所定の閾値より小さい場合、焦点検出感度が高く光学基線長が長い焦点検出画素群からの相関量の方が、信頼性が高い。
【0120】
従って、選択手段は、所定の相関量を閾値として、いずれか一方の焦点検出画素群を選択する。より具体的には、選択手段は、デフォーカス量の大きい被写体に対して、光学基線長が短い焦点検出画素群の像を選択する(ステップS29)。一方、選択手段は、ピント近傍では光学基線長の長い焦点検出画素群の像を選択する(ステップS30)。
【0121】
その後のステップS8乃至ステップS12は、実施例1と同様であるため、それらの説明は省略する。
【0122】
以上のように、本実施例によれば、光学基線長の長い焦点検出画素群及び光学基線長の短い焦点検出画素群のうち適切な一方から取得された像信号に基づいてデフォーカス量が算出される。より具体的には、デフォーカス量の大きい被写体に対しては光学基線長が短い一対の像信号が選択され、ピント近傍では光学基線長の長い一対の像信号が選択される。従って、本実施例の光学機器によれば、最大デフォーカス量の向上を図りつつ、ピント近傍での焦点検出精度の確保が可能となる。
【0123】
上述の各実施例では、撮像素子のオンチップマイクロレンズの光軸に対して受光部の感度重心を偏心させることで瞳分割しているが、これに限定されるものではない。例えば、特許文献3で示される撮像素子の一部の画素の受光部を2分割することで瞳分割しても、同様の効果を得ることが可能である。
【0124】
以上、本発明の実施例について具体的に説明した。ただし、本発明は上記実施例として記載された事項に限定されるものではなく、本発明の技術思想を逸脱しない範囲内で適宜変更が可能である。
【符号の説明】
【0125】
100 撮影レンズ
101 第1レンズ群
102 絞り兼用シャッタ
103 第2レンズ群
105 第3レンズ群
106 光学的ローパスフィルタ
107 撮像素子
115 照明手段
121 CPU
131 表示器
132 操作スイッチ
133 フラッシュメモリ
200 カメラ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮像光学系からの光束により形成された被写体像を光電変換する複数の撮像画素、及び、該撮像光学系からの光束のうち2分割された光束により形成された2像を光電変換する複数の焦点検出画素を有する撮像素子と、
前記複数の焦点検出画素から互いに光学基線長の異なる第1及び第2の一対の像信号を取得する焦点検出手段と、
前記第1及び第2の一対の像信号のうち少なくとも一つの相関量に基づいて、該第1及び第2の一対の像信号のいずれか一つを選択する選択手段と、
選択された一対の像信号に基づいてデフォーカス量を算出する演算手段と、を有することを特徴とする光学機器。
【請求項2】
前記複数の焦点検出画素は、第1、第2、及び、第3の焦点検出画素を有し、
前記焦点検出手段は、前記第1及び第2の焦点検出画素から前記第1の一対の像信号を取得し、前記第1及び第3の焦点検出画素から前記第2の一対の像信号を取得し、
前記第2の一対の像信号の光学基線長は、前記第1の一対の像信号の光学基線長より短く、
前記第1及び第3の焦点検出画素の間の距離は、前記第1及び第2の焦点検出画素の間の距離より大きいことを特徴とする請求項1記載の光学機器。
【請求項3】
前記第1、第2、及び、第3の焦点検出画素は、互いに受光感度の重心が偏位していることを特徴とする請求項1又は2記載の光学機器。
【請求項4】
前記第2及び第3の焦点検出画素は、前記第1の焦点検出画素に対して、前記受光感度の重心の偏位方向とは異なる方向に配置されていることを特徴とする請求項3記載の光学機器。
【請求項5】
前記選択手段は、互いに異なる基準で前記第1及び前記第2の一対の像信号の前記相関量の信頼性を判定することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一に記載の光学機器。
【請求項6】
前記選択手段は、前記第2の一対の像信号の相関量が所定の閾値以上である場合に前記第2の一対の像信号を選択し、前記第2の一対の像信号の前記相関量が前記所定の閾値より小さい場合に前記第1の一対の像信号を選択することを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一に記載の光学機器。
【請求項7】
撮像光学系からの光束により形成された被写体像を光電変換する複数の撮像画素、及び、該撮像光学系からの光束のうち2分割された光束により形成された2像を光電変換する複数の焦点検出画素を有する撮像素子を備えた光学機器に用いられる信号処理装置であって、
前記複数の焦点検出画素から互いに光学基線長の異なる第1及び第2の一対の像信号を取得する焦点検出手段と、
前記第1及び第2の一対の像信号のうち少なくとも一つの相関量に基づいて、該第1及び第2の一対の像信号のいずれか一つを選択する選択手段と、
選択された一対の像信号に基づいてデフォーカス量を算出する演算手段と、を有することを特徴とする信号処理装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2010−204263(P2010−204263A)
【公開日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−47940(P2009−47940)
【出願日】平成21年3月2日(2009.3.2)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】