説明

光学測定装置、光学測定システムおよびファイバ結合器

【課題】量子効率の測定時における再励起(二次励起)に起因する誤差を低減できる量子効率測定方法、量子効率測定装置、およびそれに向けられた積分器を提供する。
【解決手段】本実施の形態に従う光学測定装置は、分光測定器50と、測定対象の光を伝搬するための入射側ファイバ20と、内壁に光拡散反射層1aを有する半球部1と、半球部1の開口部を塞ぐように配置された、半球部1の内壁側に鏡面反射層2aを有する平面部2とを含む。平面部2は、入射側ファイバ20を通じて射出される光を半球部1と平面部2とにより形成される積分空間内へ導くための入射窓5と、出射窓6を通じて積分空間内の光を分光測定器50へ伝搬するための出射側ファイバ30を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ファイバから射出される光の配光分布の変動による測定誤差を低減できる光学測定装置および光学測定システム、ならびにそれに向けられたファイバ結合器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、分光光学系を用いて、測定対象物の光学的特性を測定する技術が知られている。より具体的には、測定対象物が発光体(光源)である場合には、当該測定対象物が発する光のスペクトル、光源色、輝度、照度、および、量子効率などが測定される。また、測定対象物が非発光体である場合には、当該測定対象物に光を照射することで得られる反射光または透過光に基づいて、反射率または透過率や、吸光度などが測定される。さらに、このように測定された光学的特性から、測定対象物の膜厚などの物理量が算出される場合もある。
【0003】
このような分光測定における測定誤差を低減する方法が提案されている。たとえば、特公平08−027212号公報(特許文献1)には、波長に依存した偏光特性に起因する測定誤差を低減することが可能な構成が開示されている。
【0004】
一方、上述のような分光測定の用途ではなく光源装置として、積分球を用いて光源からの光を均一化または混合するような構成が知られている(たとえば、特開昭60−202411号公報(特許文献2)、特開昭63−285441号公報(特許文献3)、特開平07−212537号公報(特許文献4)、特表2003−527619号公報(特許文献5)、特開2005−055571号公報(特許文献6)、米国特許出願公開第2005/0156103号明細書(特許文献7)など)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特公平08−027212号公報
【特許文献2】特開昭60−202411号公報
【特許文献3】特開昭63−285441号公報
【特許文献4】特開平07−212537号公報
【特許文献5】特表2003−527619号公報
【特許文献6】特開2005−055571号公報
【特許文献7】米国特許出願公開第2005/0156103号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
分光測定においては、上述したような偏光特性に起因する測定誤差に加えて、配光分布の変動に起因する測定誤差が生じ得る。典型的には、測定対象の光が光ファイバ内を伝搬する際の透過率の変動によって、光ファイバから射出される光の配光分布が変動し得る。このような配光分布が変動すると、分光測定器の受光面において輝度ムラが生じる。
【0007】
また、複数の測定対象の光を複数の光ファイバ内をそれぞれ伝搬させて共通の分光測定器にて測定する場合には、複数の光ファイバを1つの光ファイバと光学的に結合する必要がある。このような場合において、上述のような配光分布の変動があると、光学的な結合量が変化し、その結果、分光測定器に導かれる光量などもばらつくという課題もある。
【0008】
本発明は、このような課題を解決するためになされたものであって、その目的は、光ファイバから射出される光の配光分布の変動による測定誤差を低減できる光学測定装置および光学測定システム、ならびにそれに向けられたファイバ結合器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のある局面に従う光学測定装置は、分光測定器と、測定対象の光を伝搬するための第1の光ファイバと、内壁に光拡散反射層を有する半球部と、半球部の開口部を塞ぐように配置された、半球部の内壁側に鏡面反射層を有する平面部とを含む。平面部は、第1の光ファイバを通じて射出される光を半球部と平面部とにより形成される積分空間内へ導くための第1の窓を含む。さらに、光学測定装置は、積分空間内の光を平面部の第2の窓を通じて分光測定器へ伝搬するための第2の光ファイバとを含む。
【0010】
本発明の別の局面に従う光学測定装置は、分光測定器と、測定対象の光を伝搬するための第1の光ファイバと、内壁に光拡散反射層を有する1/4球部と、1/4球部の開口部を塞ぐように配置された、1/4球部の内壁側に鏡面反射層を有する第1および第2の平面部とを含む。第1および第2の平面部の一方は、第1の光ファイバを通じて射出される光を1/4球部と第1および第2の平面部とにより形成される積分空間内へ導くための第1の窓を含む。さらに、光学測定装置は、積分空間内の光を第1の光ファイバが接続される平面部と同じ平面部の第2の窓を通じて分光測定器へ伝搬するための第2の光ファイバを含む。
【0011】
好ましくは、第1の光ファイバは、各々が測定対象の光を伝搬する複数の光ファイバ素線を含む。
【0012】
好ましくは、平面部において、第1の窓と第2の窓とは予め定められた距離だけ離れて配置される。
【0013】
好ましくは、第1の光ファイバと第2の光ファイバとが一体化して平面部を貫通するように構成される。
【0014】
本発明のさらに別の局面に従う光学測定システムは、光源と、分光測定器と、光源からの光を複数に分配するための光分配器と、光分配器からの複数の光を測定対象物にそれぞれ照射することで得られる、測定対象物の特性を示す複数の光を伝搬するための第1の光ファイバと、内壁に光拡散反射層を有する半球部と、半球部の開口部を塞ぐように配置された、半球部の内壁側に鏡面反射層を有する平面部とを含む。平面部は、第1の光ファイバを通じて射出される光を半球部と平面部とにより形成される積分空間内へ導くための第1の窓を含む。さらに、光学測定システムは、積分空間内の光を平面部の第2の窓を通じて分光測定器へ伝搬するための第2の光ファイバを含む。
【0015】
本発明のさらに別の局面に従えば、分光測定器の入力側に接続されるファイバ結合器を提供する。ファイバ結合器は、内壁に光拡散反射層を有する半球部と、半球部の開口部を塞ぐように配置された、半球部の内壁側に鏡面反射層を有する平面部とを含む。平面部は、測定対象の光を伝搬するための第1の光ファイバと接続されるとともに、当該第1の光ファイバを通じて射出される光を半球部と平面部とにより形成される積分空間内へ導くための第1の窓と、積分空間内の光を分光測定器へ伝搬するための第2の光ファイバと接続される第2の窓とを含む。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、光ファイバから射出される光の配光分布の変動による測定誤差を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明に関連するファイバ結合器を用いた光学測定装置の一例を示す模式図である。
【図2】図1に示すファイバ結合器における配光分布の変動について説明するための図である。
【図3】図1に示すファイバ結合器における配光分布の変動についての実験結果を示す図である。
【図4】本発明の実施の形態に係る光学測定装置の一例を示す模式図である。
【図5】図4に示すファイバ結合器における配光分布の変動についての実験結果を示す図である。
【図6】本発明の実施の形態の第1変形例に係るファイバ結合器を示す模式図である。
【図7】本発明の実施の形態の第2変形例に係るファイバ結合器を示す模式図である。
【図8】本実施の形態に従う光学測定装置を用いた反射光測定システムの模式図である。
【図9】本実施の形態に従う光学測定装置を用いた透過光測定システムの模式図である。
【図10】本実施の形態に従う光学測定装置を用いた光源評価システムの模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中の同一または相当部分については、同一符号を付してその説明は繰返さない。
【0019】
<A.概要>
本実施の形態に従う光学測定装置は、半球型の積分器、または、1/4球型の積分器からなるファイバ結合器を分光測定器の入力側に設けることにより、光ファイバから射出される光の配光分布の変動による測定誤差を低減する。
【0020】
<B.従来構成>
先に、本発明に関連する構成について説明する。
【0021】
(b1.対向配置型)
図1は、本発明に関連するファイバ結合器を用いた光学測定装置の一例を示す模式図である。図2は、図1に示すファイバ結合器における配光分布の変動について説明するための図である。図3は、図1に示すファイバ結合器における配光分布の変動についての実験結果を示す図である。
【0022】
図1には、測定対象の複数の光を共通の分光測定器により測定する光学系の一例を示す。図1に示す光学系は、測定対象の光源装置40−1,40−2,40−3,40−4(以下、「光源装置40」とも総称する。)からの光を分光測定するものであり、ファイバ結合器90と、入射側ファイバ20と、出射側ファイバ30と、分光測定器50とを含む。
【0023】
各光源装置40は、内蔵のランプなどで発生した光を射出する。それぞれの光源装置40で生成された光は、入射側ファイバ20を通じてファイバ結合器90へ導かれる。すなわち、入射側ファイバ20は、測定対象の光をファイバ結合器90へ伝搬する。
【0024】
ファイバ結合器90は、光源装置40がそれぞれ生成した測定対象の光を結合した上で、出射側ファイバ30を通じて分光測定器50へ導く。すなわち、ファイバ結合器90は、複数の光ファイバ(ファイバ素線)と1本の光ファイバ(ファイバ素線)とを光学的に結合するための光学デバイスである。
【0025】
分光測定器50は、出射側ファイバ30を通じて導入された測定対象の光について、スペクトルを検出する。典型的に、分光測定器50は、回折格子および当該回折格子の回折方向に関連付けられたラインセンサ等を含んで構成され、入力された光の波長毎の強度を出力する。さらに、分光測定器50は、スペクトルの検出結果に基づいて、色度・照度・輝度・演色性といった光源としての性能評価、表面特性・反射特性・透過特性といった測定対象の光学的性能の測定、ならびに、膜厚といった測定対象の物理的測定の測定などを行なうこともできる。
【0026】
ファイバ結合器90では、入射側ファイバ20を構成する複数のファイバ素線22−1,22−2,22−3,22−4(以下、「ファイバ素線22」とも総称する。)の各々と、出射側ファイバ30の1本のファイバ素線との間で光軸を一致させることで、光学的な結合が実現される。すなわち、ファイバ素線22−1,22−2,22−3,22−4のそれぞれのファイバ端24−1,24−2,24−3,24−4(以下、「ファイバ端24」とも総称する。)と、出射側ファイバ30のファイバ端34とを所定距離だけ離して対向配置する。
【0027】
しかしながら、入射側ファイバ20を構成する複数のファイバ素線22(ファイバ端24)と出射側ファイバ30のファイバ素線とを直接対向させると、入射側ファイバ20のファイバ素線22から射出される光が出射側ファイバ30のファイバ素線を照明する状態について、互いに一致させることが難しい。その結果、各ファイバ素線22を通じて分光測定器50へ至るまでの光学経路の伝達率を同一にできず、測定に使用されるファイバ素線の種類によって、測定値にばらつきが生じることになる。
【0028】
すなわち、上述のようにファイバ素線を対向配置した構成では、入射側ファイバ20から射出される光の配光分布の変動により、出射側ファイバ30へ伝達される光量が変動する。
【0029】
そこで、このような変動による影響を受けないように構成する必要がある。通常のファイバ結合器90においては、透過拡散板を配置した上で、その両端に、入射側ファイバ20を構成する複数のファイバ素線と、出射側ファイバ30の1本のファイバ素線とを対向させて配置する。
【0030】
一例として、図2(a)および図2(b)には、ファイバ素線22のファイバ端24から射出される光の配光パターンの変動例を示す。図2(a)および図2(b)に示すように、入射側ファイバ20の配光パターンが変動することにより、出射側ファイバ30へ到達する光の割合が変化することになる。
【0031】
図2に示す実験結果では、入射側ファイバ20と出射側ファイバ30とを15mmだけ離して対向配置したファイバ結合器を用いて、入射側ファイバ20を人為的に屈曲させつつ、光源装置40からの光を複数回に亘って分光測定器50で測定した結果(分光測定結果)を示す。なお、光源装置40としては、ハロゲンランプを用いるとともに、入射側ファイバ20と出射側ファイバ30との間には透過拡散板を配置していない。また、入射側ファイバ20と出射側ファイバ30とは、光学ベンチを用いて位置決めを行なった。
【0032】
図3に示す実験結果によれば、入射側ファイバ20を屈曲させることにより、測定されるスペクトルの強度が大きく変動していることがわかる。これは、入射側ファイバ20を屈曲させることにより、入射側ファイバ20から射出される光の配光分布が変動するためであると考えられる。なお、配光分布の変動は、入射側ファイバ20の種類(マルチモードファイバおよびシングルモードファイバ)にかかわらず、いずれの場合であっても生じ得る。
【0033】
このような光の配光分布の変動による影響を低減して、各ファイバ素線22を通じて分光測定器50へ至るまでの光学経路の伝達率を均一化するためには、入射側ファイバ20と出射側ファイバ30との間の距離を十分に大きくするか、あるいは、透過拡散板の拡散率を相対的に高くする必要がある。
【0034】
しかしながら、いずれの方法を採用したとしても、光の伝達損失が大きくなり、測定感度が低下するという課題があった。
【0035】
(b2.積分球型)
上述のファイバ結合器に代えて、積分球を用いて、入射側ファイバ20と出射側ファイバ30とを光学的に結合することも考えられる。この積分球は、その内面に光拡散反射層を有する球状の部材からなり、入射側ファイバ20および出射側ファイバ30は、当該球状の部材の所定位置を貫通して、積分球内部の積分空間と接続される。
【0036】
この積分球を用いた場合に、入射側ファイバ20から射出される光束が積分球の内面の全体を照らすことで生じる壁面照度に応じた光が出射側ファイバ30へ伝達される。そのため、入射側ファイバ20から積分空間に射出される光束をφとすると、出射側ファイバ30を通じて測定される照度Eは、以下に示す(1)式のように表わすことができる。
【0037】
照度E=(φ/4πr){ρ/(1−ρ)} …(1)
但し、rは積分球の半径、ρは積分球内面の拡散反射率を示す。
【0038】
この(1)式に示すように、積分球の半径rが小さいほど出射側ファイバ30を通じて測定される光の強度は大きくなる。すなわち、入射側ファイバ20から出射側ファイバ30への伝達効率が高くなる。
【0039】
しかしながら、入射側ファイバ20から射出される光が出射側ファイバ30に直接的に入射すると、各ファイバ素線22についての照明条件を同一に維持することが難しく、かつ、入射側ファイバ20から射出される光の配光分布が変動した場合には、入射側ファイバ20から出射側ファイバ30への伝達効率が変動する。
【0040】
このような影響を低減するため、積分球の内部に、入射側ファイバ20から射出される光が出射側ファイバ30に直接的に入射しないように、バッフル(遮光板)を設ける必要がある。しかしながら、入射側ファイバ20から出射側ファイバ30への伝達効率が高める目的で積分球の半径を小さくしている場合には、積分空間におけるこのバッフルの占める空間の比率が大きく、その結果、バッフル自身での光吸収による光量低下が顕在化する。そのため、かえって光の伝達損失が大きくなり、測定感度が低下するという課題があった。
【0041】
<C.基本構成>
本実施の形態に従う光学測定装置においては、上述したファイバ結合器および積分球における課題を解消することを目的とする。
【0042】
図4は、本発明の実施の形態に係る光学測定装置の一例を示す模式図である。図5は、図4に示すファイバ結合器における配光分布の変動についての実験結果を示す図である。
【0043】
図4に示す光学測定装置は、図1に示す光学測定装置と比較して、対向配置型のファイバ結合器90に代えて、半球型の積分器を用いたファイバ結合器10を利用している点が異なっている。
【0044】
ファイバ結合器10は、内壁に拡散反射層1aを有する半球部1と、半球部の開口部を塞ぐように配置され、半球部1の内壁側(内面側)に鏡面反射層2aを有する円板状の平面部2とで構成される。この平面部2は、半球部1の実質的な曲率中心Oを通るように配置される。拡散反射層1aは、代表的に、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE:polytetrafluoroethylene)焼結体や硫酸バリウム等の拡散材料を塗布または吹付けることによって形成される。
【0045】
平面部2の鏡面反射層2aが半球部1の内壁側に対向配置されることで、半球部1についての虚像が生成される。上述したように、平面部2は半球部1の曲率中心Oを通るように配置されるので、平面部2により生成される虚像は、一定の曲率半径をもつ半球状になる。半球部1の内面で定義される空間(実像)と、平面部2により形成される虚像とを組合せると、全球型の積分器を用いた場合と実質的に同じ照度分布を得ることができる。
【0046】
このように、ファイバ結合器10においては、半球部1の内面で定義される空間(実像)と、平面部2により形成される虚像とを組合せた空間が実質的な積分空間となる。
【0047】
平面部2には、入射側ファイバ20を通じて射出される光を半球部1と平面部2とにより形成される積分空間内へ導くための入射窓5を含む。入射窓5には、入射側ファイバ20の先端に形成される接続カプラ3が装着される。
【0048】
入射側ファイバ20を通じて積分空間内に導かれた光は、半球部1と平面部2による半球部1の虚像とからなる積分球内部で拡散反射を繰返し、その結果、半球部1の内壁における照度は均一化される。
【0049】
平面部2には、出射側ファイバ30を装着するための出射窓6がさらに形成されている。この出射窓6には、出射側ファイバ30の先端に形成される接続カプラ4が装着される。これにより、積分空間内の光は、出射側ファイバ30を通じて分光測定器50へ導かれる。
【0050】
平面部2における入射窓5および出射窓6の位置関係は、特に制限されることはないが、図4に示す例においては、入射窓5と出射窓6との間は、半球部1の実質的な曲率中心Oを基準として、予め定められた距離だけ離れて配置される。
【0051】
ファイバ結合器10を用いる場合には、入射側ファイバ20を構成する、各々が測定対象の光を伝搬するためのファイバ素線22の数は特に制限されることはない。すなわち、半球部1と平面部2とにより形成される積分空間内へ導かれた、1または複数の測定対象の光がそれぞれ積分空間内で繰返し反射するので、出射側ファイバ30を通じて分光測定器50へ導かれる光(照度E)は、積分空間内へ導かれた測定対象の光の総和を示す値となる。
【0052】
上述したように、入射窓5および出射窓6は、いずれも平面部に形成される。すなわち、これらの窓は、共通の平面上に存在するため、光が直接的に入射することがない。すなわち、入射窓5と出射窓6とは、相互に照明する位置にないので、全球型の積分器を用いた場合とは異なり、両者の間にバッフル(遮光板)を設ける必要がない。
【0053】
そのため、バッフル自身での光吸収による光量低下という問題が生じることはなく、かつ、内部にバッフルを設ける必要がないので、積分空間をより小さくできる。すなわち、半球部1の曲率半径をより小さくできるので、(1)式に示すように、出射側ファイバ30を通じて測定される光の強度を大きくできる。すなわち、入射側ファイバ20から出射側ファイバ30への伝達効率の高いファイバ結合器10を実現できる。
【0054】
その他の構成については、図1に示す光学測定装置と同様であるので、詳細な説明は繰返さない。
【0055】
図5に示す実験結果では、図4に示す光学測定装置において、入射側ファイバ20を人為的に屈曲させつつ、光源装置40からの光を複数回に亘って分光測定器50で測定した結果(分光測定結果)を示す。なお、光源装置40としては、上述の図3に示す実験結果と同様に、ハロゲンランプを用いた。
【0056】
図5に示す実験結果によれば、入射側ファイバ20を屈曲させたとしても、測定されるスペクトルには実質的な影響を与えないことがわかる。より具体的には、入射側ファイバ20の屈曲によって生じたスペクトルでの変動率は、0.1%以下となった。これにより、入射側ファイバ20から射出される光の配光分布の変動による影響は実質的に無視できるとみなすことができる。
【0057】
<D.変形例>
(d1.ファイバ一体型)
図4に示す光学測定装置においては、入射側ファイバ20および出射側ファイバ30をそれぞれ装着するための入射窓5および出射窓6をそれぞれ平面部2に形成した構成を示したが、入射側ファイバ20および出射側ファイバ30を一体化して、平面部2を貫通するように構成してもよい。
【0058】
図6は、本発明の実施の形態の第1変形例に係るファイバ結合器10Aを示す模式図である。図6に示すファイバ結合器10Aでは、入射窓5および出射窓6が隣接して形成される。なお、入射窓5および出射窓6を一体的に形成してもよい。この場合には、共通の1つの窓が入射窓5および出射窓6として機能することになる。
【0059】
入射側ファイバ20および出射側ファイバ30が一体化した状態で、平面部2を貫通する。図6においては、入射窓5に、入射側ファイバ20の先端に形成される接続カプラ3が装着され、出射窓6に、出射側ファイバ30の先端に形成される接続カプラ4が装着される構成を模式的に示すが、接続カプラ自体を共通化してもよい。
【0060】
なお、複数のファイバ素線からなる入射側ファイバ20を用いてもよい。この場合には、入射側ファイバ20を構成する複数のファイバ素線と、出射側ファイバ30を構成する1本のファイバ素線とを一体化することもできる。
【0061】
本実施の形態の第1変形例に従う光学測定装置は、ファイバ結合器10Aを用いる点を除いて、上述の図4と同様であるので、詳細な説明は繰返さない。
【0062】
このように、入射側ファイバ20および出射側ファイバ30が一体化することで、ファイバ結合器10Aへのファイバの接続処理を簡素化できる。
【0063】
(d2.1/4球型の積分器)
図7に示す光学測定装置においては、半球型の積分器を用いたファイバ結合器10を用いる構成を示したが、1/4球型の積分器を用いてもよい。
【0064】
図7は、本発明の実施の形態の第2変形例に係るファイバ結合器10Bを示す模式図である。図7に示すファイバ結合器10Bは、内壁に拡散反射層1aを有する1/4球部1#と、半球部の開口部を塞ぐように配置され、1/4球部1#の内壁側(内面側)に鏡面反射層2aを有する円板状の平面部2−1,2−2とで構成される。平面部2−1と平面部2−2との交点は、1/4球部1#の実質的な曲率中心Oを通るように配置される。
【0065】
平面部2−1の鏡面反射層2aが半球部1の内壁側に対向配置されることで、1/4球部1#についての虚像(紙面下側)が生成される。同様に、平面部2−2の鏡面反射層2aが半球部1の内壁側に対向配置されることで、1/4球部1#についての虚像(紙面右側)が生成される。上述したように、平面部2−1と平面部2−2との交点は1/4球部1#の曲率中心Oを通るように配置されるので、半球部1の内面で定義される空間(実像)と、平面部2−1および2−2によりそれぞれ生成される虚像とを組合せると、全球型の積分器を用いた場合と実質的に同じ照度分布を得ることができる。
【0066】
このように、ファイバ結合器10Bにおいては、1/4球部1#の内面で定義される空間(実像)と、平面部2−1および2−2によりそれぞれ形成される虚像とを組合せた空間が実質的な積分空間となる。
【0067】
平面部2−1および2−2の一方(図7に示す例では、平面部2−1)には、入射側ファイバ20を通じて射出される光を半球部1と平面部2とにより形成される積分空間内へ導くための入射窓5と、出射側ファイバ30を装着するための出射窓6とが形成される。なお、入射窓5および出射窓6は共通の平面上に形成されていれば、平面部2−1および2−2のいずれに配置されてもよい。
【0068】
本実施の形態の第2変形例に従う光学測定装置は、ファイバ結合器10Aを用いる点を除いて、上述の図4と同様であるので、詳細な説明は繰返さない。すなわち、入射側ファイバ20を構成する、各々が測定対象の光を伝搬するためのファイバ素線22の数は特に制限されることはない。また、本実施の形態の第2変形例に従うファイバ結合器10Bにおいて、図6に示すように、入射側ファイバ20および出射側ファイバ30を一体化して、平面部2−1または2−2を貫通するように構成してもよい。
【0069】
このように、1/4球型の積分器を用いることで、装置をより小型化できる。
<E.アプリケーション>
次に、上述の光学測定装置を用いたアプリケーションの一例について説明する。
【0070】
(e1.反射光測定システム)
図8は、本実施の形態に従う光学測定装置を用いた反射光測定システム100の模式図である。図8に示す反射光測定システム100は、測定対象SMPの表面で生じる反射光を測定することで、測定対象SMPの反射特性や表面特性を評価する。
【0071】
反射光測定システム100は、光学測定装置に加えて、光源装置40と、光分配器62と、ファイバ切替ユニット64とを含む。
【0072】
光源装置40は、測定対象SMPで生じる反射光に適した波長帯域の基準光を発生する。この光源装置40から発生された基準光は、接続ファイバ66を通じて光分配器62へ導かれる。光分配器62は、光源装置40からの基準光を複数に分配する。図8に示す例では、光分配器62は、光源装置40からの基準光を5分割する。
【0073】
光分配器62の他方端には、5つのY字分岐ファイバが接続されており、それぞれ分割された基準光は、対応するY字分岐ファイバの入力ファイバ68−1,68−2,68−3,68−4,68−5へそれぞれ出力される。入力ファイバ68−1,68−2,68−3,68−4,68−5の先端には、出射/入射部70−1,70−2,70−3,70−4,70−5がそれぞれ接続されている。そして、光分配器62により分割された各基準光は、出射/入射部70−1,70−2,70−3,70−4,70−5の各々から測定対象SMPへ向けて照射される。
【0074】
測定対象SMPに照射された基準光のうち、測定対象SMPの表面状態に応じた成分が反射光として生じる。そして、生じた反射光は、出射/入射部70−1,70−2,70−3,70−4,70−5へそれぞれ再入射する。
【0075】
出射/入射部70−1,70−2,70−3,70−4,70−5の各々へ入射した反射光は、対応する出力ファイバ72−1,72−2,72−3,72−4,72−5を通じて、ファイバ切替ユニット64へ導かれる。
【0076】
ファイバ切替ユニット64は、一方端に出力ファイバ72−1,72−2,72−3,72−4,72−5が接続され、他方端に入射側ファイバ20を構成するファイバ素線22−1,22−2,22−3,22−4,22−5が接続される。ファイバ切替ユニット64は、図示しない切替指令に応答して、指定された出力ファイバ72と対応するファイバ素線22との間を光学的に接続する。たとえば、ファイバ切替ユニット64に対して1番目の経路を有効化する旨の切替指令が与えられると、ファイバ切替ユニット64は、出力ファイバ72−1を通じて伝搬する反射光を対応するファイバ素線22−1へ導く。以下同様にして、ファイバ切替ユニット64は、指定された出力ファイバ72を伝搬する反射光をファイバ結合器10へ導く。
【0077】
ファイバ結合器10における動作については、上述したので、詳細な説明は繰返さない。
【0078】
図8に示す反射光測定システム100においては、長手方向に製造されるフィルムなどの表面状態を、短手方向の複数点において評価するような状況に向けられる。
【0079】
(e2.透過光測定システム)
図9は、本実施の形態に従う光学測定装置を用いた透過光測定システムの模式図である。図9に示す透過光測定システム200は、測定対象SMPで生じる透過光を測定することで、測定対象SMPの透過特性や膜厚などを評価する。透過光測定システム200は、基本的には、図8に示す反射光測定システム100において、光源装置40から基準光の照射方向を測定対象SMPの一方面から照射し、測定対象SMPの他方面から透過光を受光するようにしたものである。
【0080】
光分配器62には、測定対象SMPの一方側に整列配置された出射部82−1,82−2,82−3,82−4,82−5へそれぞれ基準光を導くための入力ファイバ80−1,80−2,80−3,80−4,80−5がそれぞれ接続される。また、ファイバ切替ユニット64には、測定対象SMPの他方側に整列配置された入射部84−1,84−2,84−3,84−4,84−5でそれぞれ受光された透過光を導くための出力ファイバ86−1,86−2,86−3,86−4,86−5がそれぞれ接続される。
【0081】
ファイバ結合器10における動作については、上述したので、詳細な説明は繰返さない。
【0082】
図9に示す透過光測定システム200においては、長手方向に製造されるフィルムなどの膜厚を短手方向の複数点において評価するような状況に向けられる。
【0083】
(e3.光源評価システム)
図10は、本実施の形態に従う光学測定装置を用いた光源評価システムの模式図である。図10に示す光源評価システム300は、測定対象SMPとして、LED(Light Emitting Diode)などの光源(発光体)を評価する。光源評価システム300は、基本的には、図9に示す透過光測定システム200において、測定対象SMPおよび測定対象SMPに基準光を照射するための構成に代えて、測定対象SMPである複数のLEDに対応付けて、入射部84−1,84−2,84−3,84−4,84−5を配置した構成に相当する。
【0084】
この光源評価システム300では、測定対象SMPである複数のLEDの各々についての、色度・照度・輝度・演色性および発光主波長などの性能評価を行なう。
【0085】
<F.作用効果>
本実施の形態に従う光学測定装置は、半球型の積分器、または、1/4球型の積分器からなるファイバ結合器を分光測定器の入力側に設けることにより、光ファイバから射出される光の配光分布の変動による測定誤差を低減できる。
【0086】
また、本実施の形態に従う光学測定装置は、ファイバ結合器として、半球型の積分器、または、1/4球型の積分器を用いるので、装置構成をより小型化できる。同時に、積分器内のバッフル(遮光板)が不要であるので、バッフルによる自己吸収が生じない。そのため、測定対象の光の伝達効率(測定効率)を高めて、測定感度を向上させることができる。
【0087】
また、本実施の形態に従う光学測定装置は、配光分布の変動の影響に加えて、偏光特性に起因する測定誤差についても低減できる。
【0088】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した説明ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0089】
1 半球部、1# 1/4球部、1a 拡散反射層、2 平面部、2a 鏡面反射層、3,4 接続カプラ、5 入射窓、6 出射窓、10,10A,10B,90 ファイバ結合器、20 入射側ファイバ、22 ファイバ素線、24,34 ファイバ端、30 出射側ファイバ、40 光源装置、50 分光測定器、62 光分配器、64 ファイバ切替ユニット、66 接続ファイバ、68,80 入力ファイバ、70,84 入射部、72,86 出力ファイバ、82 出射部、100 反射光測定システム、200 透過光測定システム、300 光源評価システム、SMP 測定対象。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
分光測定器と、
測定対象の光を伝搬するための第1の光ファイバと、
内壁に光拡散反射層を有する半球部と、
前記半球部の開口部を塞ぐように配置された、前記半球部の内壁側に鏡面反射層を有する平面部とを備え、前記平面部は、前記第1の光ファイバを通じて射出される光を前記半球部と前記平面部とにより形成される積分空間内へ導くための第1の窓を含み、
前記積分空間内の光を前記平面部の第2の窓を通じて前記分光測定器へ伝搬するための第2の光ファイバを備える、光学測定装置。
【請求項2】
分光測定器と、
測定対象の光を伝搬するための第1の光ファイバと、
内壁に光拡散反射層を有する1/4球部と、
前記1/4球部の開口部を塞ぐように配置された、前記1/4球部の内壁側に鏡面反射層を有する第1および第2の平面部とを備え、前記第1および第2の平面部の一方は、前記第1の光ファイバを通じて射出される光を前記1/4球部と前記第1および第2の平面部とにより形成される積分空間内へ導くための第1の窓を含み、
前記積分空間内の光を前記第1の光ファイバが接続される平面部と同じ平面部の第2の窓を通じて前記分光測定器へ伝搬するための第2の光ファイバを備える、光学測定装置。
【請求項3】
前記第1の光ファイバは、各々が測定対象の光を伝搬する複数の光ファイバ素線を含む、請求項1または2に記載の光学測定装置。
【請求項4】
前記平面部において、前記第1の窓と前記第2の窓とは予め定められた距離だけ離れて配置される、請求項1〜3のいずれか1項に記載の光学測定装置。
【請求項5】
前記第1の光ファイバと前記第2の光ファイバとが一体化して前記平面部を貫通するように構成される、請求項1〜3のいずれか1項に記載の光学測定装置。
【請求項6】
光源と、
分光測定器と、
前記光源からの光を複数に分配するための光分配器と、
前記光分配器からの複数の光を測定対象物にそれぞれ照射することで得られる、前記測定対象物の特性を示す複数の光を伝搬するための第1の光ファイバと、
内壁に光拡散反射層を有する半球部と、
前記半球部の開口部を塞ぐように配置された、前記半球部の内壁側に鏡面反射層を有する平面部とを備え、前記平面部は、前記第1の光ファイバを通じて射出される光を前記半球部と前記平面部とにより形成される積分空間内へ導くための第1の窓を含み、
前記積分空間内の光を前記平面部の第2の窓を通じて前記分光測定器へ伝搬するための第2の光ファイバを備える、光学測定システム。
【請求項7】
分光測定器の入力側に接続されるファイバ結合器であって、
内壁に光拡散反射層を有する半球部と、
前記半球部の開口部を塞ぐように配置された、前記半球部の内壁側に鏡面反射層を有する平面部とを備え、
前記平面部は、
測定対象の光を伝搬するための第1の光ファイバと接続されるとともに、当該第1の光ファイバを通じて射出される光を前記半球部と前記平面部とにより形成される積分空間内へ導くための第1の窓と、
前記積分空間内の光を前記分光測定器へ伝搬するための第2の光ファイバと接続される第2の窓とを含む、ファイバ結合器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−203077(P2011−203077A)
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−69964(P2010−69964)
【出願日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【出願人】(000206967)大塚電子株式会社 (50)
【Fターム(参考)】