説明

光学積層体の製造方法

【課題】押し出し成形されたシートを基材層として用いた場合においても、筋状のシワ等の変形の発生を大幅に低減でき、基材層と電離放射線硬化型樹脂層との密着性を向上でき、良好な光学積層体の製造方法を提供する。
【解決手段】熱可塑性樹脂製の基材層である光拡散層13と、光拡散層13の一方の面に形成され、その表面に光学形状を有する紫外線硬化型樹脂製の光学形状層12とを備える透過型スクリーン10の製造方法は、光拡散層13を加熱する熱処理工程と、光学形状を賦形する成形ロール55に紫外線硬化型樹脂12Rが充填された状態で光拡散層13を成形型に押圧して紫外線を照射し、紫外線硬化型樹脂12Rを硬化させ、光学形状層12を形成する光学形状層形成工程と、光学形状層形成工程の後に、光学形状層12が片面に形成された光拡散層13を成形ロール55から離型する離型工程とを備えるものとした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学形状を有する電離放射線硬化型樹脂製の層を有する光学積層体の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、樹脂製のシート(又はフィルム)を基材層とし、その片面に紫外線硬化型樹脂等の電離放射線硬化型樹脂製であってレンズ形状やプリズム形状が賦形された光学形状層が形成された光学シート(又は、光学フィルム)が知られている。紫外線等の電離放射線を照射して電離放射線硬化型樹脂を硬化させ、レンズ形状等を賦形する成形方法では、一般的な押し出し成形等に比べて、レンズ形状等の精度を向上できるという利点がある。そのため、このような光学シートは、各種スクリーンや面光源装置の光学シート等の製造に広く利用されている(例えば、特許文献1参照)。
また、基材シートの片面に紫外線硬化型樹脂の塗膜を形成し、これを乾燥・硬化させて形成されるハードコート膜や反射防止膜を備える光学シート等も広く知られている(例えば、特許文献2,3参照)。
【0003】
このような紫外線硬化型樹脂層を基材シートの片面に一体に成形する光学シートでは、紫外線照射による硬化工程時に発生する硬化熱等により発生するシワやカール等が問題であり、これらを改善する方法も多くの方法が提案されている(例えば、特許文献2,3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−256307号公報
【特許文献2】特開2009−34620号公報
【特許文献3】特開2006−152134号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
基材層として押し出し成形された熱可塑性樹脂製のシートを用いて、上述のような光学シートを作成する場合、紫外線硬化型樹脂等の電離放射線硬化型樹脂の塗布開始点において塗布ムラが生じている状態で紫外線等の電離放射線を照射すると、基材層に流れ方向に伸びる筋状のシワやヨレ等の変形が生じ、その外観や光学性能が低下する場合がある。また、このような筋状のシワ等により、光学形状層(紫外線硬化型樹脂層等)と基材層との密着性が低下し、光学形状層の浮き等の不良が生じる。
紫外線硬化型樹脂等の塗布開始点における塗布ムラを防止するために、塗布装置を取り替える方法等も考えられるが、大幅な設備改造となり、生産コスト等の観点から好ましくない。
また、特許文献2,3に開示される方法は、一般的に、TAC(トリアセチルセルロース)やPET(ポリエチレンテレフタレート)等のような成形時の内部歪みが少ない樹脂製のシートやガラス転移点が比較的高い樹脂製のシート等を用いた場合に生じる、紫外線硬化型樹脂等の硬化収縮等による光学シートのカール等の変形であり、熱可塑性樹脂を押し出し成形により作成した基材シートにおける硬化時の変形に関しては、なにも開示されていない。
【0006】
本発明の課題は、押し出し成形されたシートを基材層として用いた場合においても、筋状のシワ等の変形の発生を大幅に低減でき、基材層と電離放射線硬化型樹脂層との密着性を向上でき、外観及び光学性能が良好な光学積層体の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、以下のような解決手段により、前記課題を解決する。なお、理解を容易にするために、本発明の実施形態に対応する符号を付して説明するが、これに限定されるものではない。
請求項1の発明は、熱可塑性樹脂を押し出し成形することにより形成された基材層(13)と、前記基材層の一方の面に形成され、その表面に光学形状を有する電離放射線硬化型樹脂製の光学形状層(12)と、を備える光学積層体の製造方法であって、前記基材層を加熱する熱処理工程と、前記光学形状を賦形する成形型に電離放射線硬化型樹脂(12R)が充填された状態で前記基材層を押圧し、前記基材層を通して電離放射線を照射して前記紫外線硬化型樹脂を硬化させ、前記光学形状層を形成する光学形状層形成工程と、前記光学形状層形成工程の後に、前記光学形状層が片面に形成された前記基材層を前記成形型から離型する離型工程と、を備えること、を特徴とする光学積層体の製造方法である。
【0008】
請求項2の発明は、請求項1に記載の光学積層体の製造方法において、前記熱処理工程の後に、前記基材層(13)の他方の面に、剥離可能な支持基材層(18)を貼合する支持基材層貼合工程を有すること、を特徴とする光学積層体の製造方法である。
請求項3の発明は、請求項2に記載の光学積層体の製造方法において、前記支持基材層貼合工程では、前記支持基材層(18)は、片面に粘着材層(14)が形成されており、前記粘着材層を介して前記基材層(13)と貼合されること、を特徴とする光学積層体の製造方法である。
請求項4の発明は、請求項3に記載の光学積層体の製造方法において、前記離型工程の後に、前記支持基材層(18)を剥離し、前記粘着材層(14)により前記基材層(13)と他の層(15)とを接合する接合工程を備えること、を特徴とする光学積層体の製造方法である。
請求項5の発明は、請求項2に記載の光学積層体の製造方法において、前記支持基材層貼合工程では、前記支持基材層(18)は、片面に擬似接着材層が形成されており、前記擬似接着材層を介して前記基材層に一時的に貼合され、前記離型工程の後に、前記支持基材層及び前記擬似接着材層は、前記基材層から剥離されること、を特徴とする光学積層体の製造方法である。
【0009】
請求項6の発明は、請求項1から請求項5までのいずれか1項に記載の光学積層体の製造方法において、前記基材層(13)が前記熱処理工程において加熱される加熱温度と加熱時間は、前記基材層を形成する前記熱可塑性樹脂のガラス転移温度Tg(℃)とするとき、加熱温度T(℃)が、Tg−10≦T≦Tg+10であり、加熱時間が、4〜10分間であること、を特徴とする光学積層体の製造方法である。
請求項7の発明は、請求項1から請求項6までのいずれか1項に記載の光学積層体の製造方法において、前記基材層(13)は、光を拡散させる拡散材を含有していること、を特徴とする光学積層体の製造方法である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、以下の効果を奏することができる。
(1)本発明による光学積層体の製造方法は、光学形状層形成工程の前に、基材層を加熱する熱処理工程を有しているので、光学形状層形成工程において、電離放射線硬化型樹脂の塗布開始点に塗布ムラが生じている状態で電離放射線を照射した場合に、電離放射線照射による熱や電離放射線硬化型樹脂の硬化熱等によって、押し出し成形された基材層の内部歪みが開放され、基材層の押し出し成形時の流れ方向は収縮し、幅方向(流れ方向に直交する方向)は延伸する。特に、電離放射線硬化型樹脂が塗布され硬化熱を受ける部分の基材層については、このような延伸や収縮が顕著に生じる。そして、この収縮や延伸によって電離放射線硬化型樹脂が塗布されていない部分の基材層が幅方向においてたわむことにより生じる基材層の筋状のシワ等の変形を大幅に低減できる。また、これにより、基材層と光学形状層との密着性の低下による光学形状層の浮きを大幅に低減できる。従って、外観も光学性能も良好な光学積層体を容易に製造することができる。
【0011】
(2)熱処理工程の後に、基材層の他方の面に、剥離可能な支持基材層を貼合する支持基材層貼合工程を有するので、基材層の剛性が向上し、電離放射線の照射時の熱や電離放射線硬化型樹脂の硬化熱等によって生じる筋状のシワ等の変形の発生をさらに低減することができる。また、支持基材層は、剥離可能であるので、基材層に光学形状層を形成後に、剥離することができ、光学積層体の光学性能に影響を与えない。
【0012】
(3)支持基材層貼合工程において、支持基材層は、片面に粘着材層が形成されており、粘着材層を介して基材層と貼合されるので、支持基材層と粘着材層とがずれないようにしっかり貼合することができる。
【0013】
(4)離型工程の後に、支持基材層を剥離し、粘着材層により基材層と他の層とを接合する接合工程を備えるので、粘着材層を他の層との接合層として使用でき、改めて粘着材を塗布する必要がなく、製造作業の効率を高めることができる。
【0014】
(5)支持基材層貼合工程において、支持基材層は、片面に擬似接着材層が形成されており、擬似接着材層を介して基材層に一時的に貼合され、離型工程の後に、支持基材層及び擬似接着材層は、基材層から剥離されるので、基材層の片面に光学形状層が形成された光学シート(光学積層体)を容易に作成可能である。
【0015】
(6)基材層が熱処理工程において加熱される加熱温度と加熱時間は、基材層を形成する熱可塑性樹脂のガラス転移温度Tg(℃)とするとき、加熱温度T(℃)が、Tg−10≦T≦Tg+10であり、加熱時間が、4〜10分間である。従って、基材層の内部歪みを十分に開放することができるので、基材層の筋状のシワ等の変形を大幅に低減できる。また、これにより、光学形状層の浮きを大幅に低減できる。従って、外観及び光学性能が良好な光学積層体を容易に製造することができる。
【0016】
(7)基材層は、光を拡散させる拡散材を含有しているので、光学積層体の光学性能を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】光学積層体の実施形態である透過型スクリーン10を示す図である。
【図2】実施形態の透過型スクリーン10を備えるインタラクティブボード30及びインタラクティブボードシステムを示す図である。
【図3】プリズム層11の製造方法を説明する図である。
【図4】プリズム層11の製造装置の一部を説明する図である。
【図5】筋状のシワの発生を説明する図である。
【図6】熱処理工程の有無による光拡散層13の流れ方向における収縮率の差を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面等を参照して、本発明の実施形態について説明する。
なお、図1を含め、以下に示す各図は、模式的に示した図であり、各部の大きさ、形状は、理解を容易にするために、適宜誇張している。
また、板、シート、フィルム等の言葉を使用しているが、これらは、一般的な使い方として、厚さの厚い順に、板、シート、フィルムの順で使用されており、本明細書中でもそれに倣って使用している。しかし、このような使い分けには、技術的な意味は無いので、シート、板、フィルムの文言は、適宜置き換えることができるものとする。例えば、光学シートは、光学フィルムとしてもよいし、光学板としてもよい。
さらに、本明細書中に記載する各部材の寸法等の数値及び材料名等は、実施形態としての一例であり、これに限定されるものではなく、適宜選択して使用してよい。
【0019】
(実施形態)
図1は、光学積層体の実施形態である透過型スクリーン10を示す図である。図1では、透過型スクリーン10の厚み方向に平行であって使用状態における画面上下方向に平行な断面の一部を拡大して示している。
図2は、実施形態の透過型スクリーン10を備えるインタラクティブボード30及びインタラクティブボードシステムを示す図である。
透過型スクリーン10は、背面側から投射された映像光Lを結像し、観察面側から観察可能となるように表示するスクリーンである。このような透過型スクリーン10は、リアプロジェクションテレビや、背面投射型のインタラクティブボードシステム等に用いられる。本実施形態では、透過型スクリーン10は、インタラクティブボードシステムに用いられる例を挙げて説明する。
本実施形態の透過型スクリーン10は、その画面サイズが対角80インチサイズ(1220mm×1620mm)である。
【0020】
本実施形態のインタラクティブボードシステムは、図2に示すように、インタラクティブボード30、光源部40、パーソナルコンピュータ41、タッチペンやマーカー等の入力部42、位置センサ等の不図示の情報検出部等を備えている。インタラクティブボード30は、透過型スクリーン10と、この透過型スクリーン10の周縁部を支持し、かつ、所定の高さに支持する支持部材31を備えている。
なお、光源部40とパーソナルコンピュータ41、パーソナルコンピュータ41と情報検出部とは、有線又は無線で接続されており、通信可能となっている。
【0021】
このインタラクティブボードシステムは、パーソナルコンピュータ41が映像情報を光源部40に出力し、光源部40がインタラクティブボード30の背面へ映像光を投射し、インタラクティブボード30の観察面(透過型スクリーン10の観察者側の面)に映像を表示する。また、情報検出部は、入力部42を用いて使用者Sによって接触された観察面の座標位置を検出してパーソナルコンピュータ41に伝え、パーソナルコンピュータ41が座標位置を判定できる。
これにより、使用者Sが入力部42を用いて透過型スクリーン10の観察面上に描画した図形や文字等を、投影画像と組み合わせ、図形や文字等が投影画像上に描かれたように表示することができる。また、例えば、パーソナルコンピュータ41の表示画面をインタラクティブボード30に表示し、使用者Sは、マウスで操作するように入力部42を操作してパーソナルコンピュータ41を操作することもできる。
さらに、透過型スクリーン10は、一般的なホワイトボード等のように、マーカー等の所定の筆記具を用いてその表面(観察面)に手書きで文字や図形等の情報を描画したり、描画した文字等を消去したりできる形態とすることもできる。
【0022】
図1に戻って、透過型スクリーン10は、背面側(光源側)から順に、プリズム層11、ガラス基板層15、表面機能層17等を備えている。そして、プリズム層11とガラス基板層15、ガラス基板層15と表面機能層17とは、接合層14,16によってそれぞれ一体に接合されている。
【0023】
プリズム層11は、透過型スクリーン10の最も入射側(背面側)に設けられており、映像光の入射側から順に、光学形状層12と、光拡散層13とが一体に積層されている。
光学形状層12は、その入射側の面に、単位プリズム121が複数配列されている。
単位プリズム121は、入射側へ凸となる形状であり、光が入射する入射面A1と、入射面A1から入射した光の少なくとも一部を全反射する全反射面A2とを備えている。この単位プリズム121は、図1に示すように、光学形状層12(プリズム層11)の入射側(背面側)の面に、スクリーン面に沿って一方向(画面上下方向)に複数配列されている。
この光学形状層12は、光透過性を有するウレタンアクリレートやエポキシアクリレート等の紫外線硬化型樹脂により形成される。光学形状層12は、紫外線硬化型樹脂に限らず、電子線硬化型樹脂等の他の電離放射線硬化型樹脂により形成してもよい。
本実施形態の単位プリズム121は、入射面A1と全反射面A2とによって形成される頂角αが38°であり、その配列ピッチPが50μmである。また、本実施形態の光学形状層12は、屈折率は、1.55のウレタンアクリレート系樹脂製である。
【0024】
透過型スクリーン10の背面側下方に位置する光源部40から照射された映像光Lは、光学形状層12の単位プリズム121の入射面A1に入射し、入射面A1で屈折して全反射面A2側へ進み、全反射面A2で全反射し、画面上下方向においてスクリーン面の法線方向に略平行光となって観察者側へ進む。
ここで、スクリーン面とは、透過型スクリーン10全体として見たときにおける、透過型スクリーン10の平面方向となる面を示すものであり、本明細書においても同一の定義として用いている。
【0025】
光拡散層13は、光を拡散する作用を有する層であり、光学形状層12の出射側(観察面側)に一体に形成されている。この光拡散層13は、光学形状層12が片面に形成される基材層である。
光拡散層13は、光透過性を有する熱可塑性樹脂に、拡散材が略均一に分散するように配合され、押し出し成形により形成されたシート状の部材を用いることができる。
本実施形態の光拡散層13は、その厚さが200μmであり、屈折率が1.55であるMBS(メチルメタクリレート・ブタジエン・スチレン)樹脂に、拡散材としてシリコン系ビーズ(屈折率1.41、粒径約2μm)とアクリル系ビーズ(屈折率1.53、粒径約8μm)とが略均一に混錬されている。本実施形態の光拡散層13は、その基材に拡散材が配合される割合が約7.6重量%である。
なお、光拡散層13は、その厚みを適宜選択でき、また、拡散材を含有する基材となる樹脂についてもMS(メチルメタクリレート・スチレン)樹脂、AS(アクリロニトリル・スチレン)樹脂等の他のアクリル系樹脂や、PC(ポリカーボネート)樹脂等、他の熱可塑性樹脂を押し出し成形して形成されたシート状の部材等を適宜選択できる。
【0026】
本実施形態の光拡散層13は、屈折率及び粒径が異なる2種類の拡散材(シリコン系ビーズ、アクリル系ビーズ)を含有している。シリコン系ビーズは、アクリル系ビーズに比べてその屈折率が小さく、光拡散層13を形成する基材となるMBS樹脂との屈折率差も大きいため、少量で、光に対して高い拡散性を発揮することができる。一方、アクリル系ビーズは、拡散材を含有する基材となるMBS樹脂との屈折率差が小さく、その粒径もシリコン系ビーズに比べて大きい。このような、基材となる樹脂との屈折率差や粒径が異なる拡散材と組み合わせて用いることにより、シリコン系ビーズのように拡散作用が大きく粒径が小さい拡散材のみを用いた場合に生じる輝線を低減できる。しかも、アクリル系ビーズは、その拡散作用が小さいので、所望する光拡散層13の拡散性に大きな影響を与えることなく、輝線を大幅に低減することができる。
光拡散層13に用いられる拡散材は、ガラスビーズや、プラスチックビーズ等の無機又は有機の化合物の略透明な粒子を適宜選択できる。拡散材の粒径は、光の拡散が波長に依存しないように、1μm以上であることが好ましい。
【0027】
ガラス基板層15は、この透過型スクリーン10の平面性を維持する基板となる層である。ガラス基板層15は、透過型スクリーン10を構成する他の層に比べて厚さが最も厚く、これにより、透過型スクリーン10の平面性を維持するために充分な剛性を有している。従って、このガラス基板層15を備えることにより、透過型スクリーン10をインタラクティブボード30のボード(スクリーン)として用い、その観察面に筆記等される場合にも透過型スクリーン10が撓んだり、変形したり、破損したりすることを防止できる。
ガラス基板層15は、青板ガラスやアルカリガラス、無アルカリガラス、耐熱ガラス、強化ガラス、半強化ガラス等、各種ガラス製の平板状の部材を用いることができる。
【0028】
本実施形態のガラス基板層15は、屈折率1.52であり、厚さ6mmであり、光透過性を有する略平板状のガラス板を用いている。なお、ガラス基板層15の厚さは、スクリーンの平面性維持の観点から、4〜8mmの範囲内とすることが特に好ましいが、画面サイズ等に応じて自由に選択してよい。
また、ガラス基板層15の変わりに、PC樹脂やMBS樹脂、MS樹脂等の樹脂製のシート状の部材を用いてもよい。この場合、平面性維持等の観点から、樹脂製のシート状の部材の場合で8〜10mmの範囲内が特に好ましい。
【0029】
表面機能層17は、透過型スクリーン10の最も観察面側に設けられ、この透過型スクリーン10の観察面を傷等から保護する耐擦傷性や、室内の照明光等の反射や映り込み等を低減し、画面の見易さを向上させる防眩機能を備える機能層である。さらに、表面機能層17は、この透過型スクリーン10がインタラクティブボードのボードとして使用されるので、これらの機能に加えて、表面に筆記しやすい平滑性も有している。
本実施形態の表面機能層17は、厚さ100μmのPET樹脂製のシート状の部材を機能基材層171とし、その観察面側となる表面に、スチレン粒子(平均粒径7.5〜8.0μm、屈折率1.59)を含有する電離放射線硬化型樹脂(例えば、多官能アクリルモノマーとビニルモノマーとを混合させたものにシリコン系レベリング剤を添加したもの)を膜厚7μm程度で塗布して硬化させ、防眩層172が形成されている。
また、本実施形態の表面機能層17は、その表面粗さである算術平均粗さRa(JIS B0601−2001)が136nm、最大高さRz(JIS B0601−2001)が453nmであり、防眩機能を発揮するに十分な表面粗さを有しつつ、筆記性を妨げることはない。
なお、表面機能層17は、例えば、防眩機能やハードコート機能に加えて、反射防止機能、帯電防止層機能、紫外線吸収機能、着色・減光機能、防汚機能等の各種機能を備える層としてもよい。
【0030】
接合層14,16は、プリズム層11とガラス基板層15、ガラス基板層15と表面機能層17とをそれぞれ接合するものである。
本実施形態の接合層14は、アクリル系樹脂製の粘着材により形成された層であり、その厚みが約25μmである。
また、本実施形態の接合層16は、紫外線硬化型樹脂により形成された層であり、その厚みが約60μmである。接合層16は、紫外線硬化型樹脂に限らず、電子線放射型樹脂等の他の電離放射線硬化型樹脂を用いることも可能である。
なお、接合層14,16は、その厚みを20〜100μmの範囲内で適宜選択できる。
【0031】
(プリズム層の製造方法について)
ここで、プリズム層11の製造方法について説明する。
このプリズム層11は、押し出し成形された熱可塑樹脂製のシート状の部材である光拡散層13の片面に、紫外線硬化型樹脂製の光学形状層12を紫外線成形することにより形成されている。
図3は、プリズム層11の製造方法を説明する図である。
図4は、プリズム層11の製造装置の一部を説明する図である。
プリズム層11の製造装置50は、熱処理部501と、貼合部502と、光学形状層形成部503とを有している。熱処理部501は、加熱部51を備える。貼合部502は、ニップロール52A,52Bを備えている。光学形状層形成部503は、塗布部53、押圧ロール54、成型ロール55、紫外線照射部56、離型ロール57等を備えている。
【0032】
まず、光拡散層13を押し出し成形により形成する。
光拡散層13は、所定量の拡散材(本実施形態では、アクリル系ビーズとシリコン系ビーズ)が添加された熱可塑性樹脂(本実施形態では、MBS樹脂)を不図示の押し出し形成機により押し出し成形することにより、図3(a)に示すようなシート状に形成される。
この光拡散層13は、押し出し成形の後、ロール状に巻き取る等して一定期間所定の条件下で保管し、次工程に進むことが好ましい。これにより、光拡散層13の押し出し成形時に生じた内部歪みの一部を開放できる。なお、この例に限らず、そのまま連続して次の工程に進んでもよい。本実施形態の光拡散層13は、押し出し成形後、ロール状に巻き取られ、常温常湿の環境下で2ヶ月間保管した後、次の熱処理工程へ進む。
なお、光拡散層13は、汎用の押し出し成形されたシート状の部材を用いてもよい。
【0033】
(熱処理工程)
次に、図3(b)及び図4に示すように、光拡散層13を所定の温度で一定時間加熱する熱処理工程を行う。
本実施形態では、光拡散層13が巻き取られた原反ロール13Aから、ロール58によって光拡散層13が巻き出され、熱処理部501の加熱部51へ搬送される。
加熱部51は、汎用の乾燥炉やヒーター(加熱器)を用いることができる。本実施形態では、光拡散層13を所定の速度で乾燥炉である加熱部51に通し、80℃〜90℃で4分間加熱する。これにより、光拡散層13は、加熱により成形時の内部歪みが開放され、以後の工程における加熱等による収縮や延伸等の変形が低減される。なお、熱処理工程を行った後、光拡散層13は、貼合部502へ搬送される。
光学形状形成工程の前に熱処理工程を行うことの効果については、後述する記載する。
【0034】
(剥離シート貼合工程)
次に、図3(c)及び図4に示すように、熱処理工程の後、光拡散層13は、貼合部502に搬送される。貼合部502は、片面に粘着材層14が形成された剥離シート18をロール状に巻き取ったロール18Aと、ニップロール52A,52Bを有する。
剥離シート貼合工程では、ロール18Aからニップロール52A,52Bへ、片面に粘着材層14が形成された剥離シート18が供給され、光拡散層13の片面13bに粘着材層14及び剥離シート18が積層されてニップロール52A,52B間を通ることにより、光拡散層13に粘着材層14を介して剥離シート18が貼合される。
この粘着材層14は、プリズム層11をガラス基板層15と接合する接合層14となる層である。また、剥離シート18は、その表面に剥離性を有しており、粘着材層14に対して剥離可能な支持基材層である。
本実施形態では、粘着材層14は、厚さ25μmのアクリル系樹脂であり、剥離シート18は、透明又は半透明状のPET樹脂製のシート状の部材であり、その厚さが38μmである。なお、剥離シート18としては、PP(ポリプロピレン)製等のシート状の部材を用いてもよい。
【0035】
(光学形状層形成工程)
図4に示すように、剥離シート貼合工程を経た光拡散層13は、光学形状層形成部503へ搬送される。ここでは、光拡散層13の粘着材層14及び剥離シート18を貼合した面とは反対側の面13a(図3(d)参照)に、光学形状層12を形成する。
図4に示す光学形状層形成部503は、塗布部53、押圧ロール54、成型ロール55、紫外線照射部56、離型ロール57等を備えている。
塗布部53は、紫外線硬化型樹脂を供給するディスペンサーである。
押圧ロール54,成型ロール55,離型ロール57は、いずれも略円柱状の部材であり、その中心軸を回転軸として回転駆動可能な部材である。押圧ロール54は、光拡散層13を成型ロール55側へ押し当てる部材である。成型ロール55は、単位プリズム121の形状を賦形する成形型であり、その外周面に、単位プリズム121を賦形する不図示の凹状の型が成型ロールの軸方向に沿って複数配列されて形成されている。なお、凹状の型が配列される方向は、成型ロール55の周方向に配列されるものとしてもよい。離型ロール57は、成型ロール55から光拡散層13を離型する部材である。紫外線照射部56は、紫外線を照射する光源装置である。
【0036】
光学形状層形成部503において、光拡散層13は、粘着材層14及び剥離シート18が積層された面とは反対側の面(一方の面(図3(d)に示す面13a))側を成型ロール55側として、押圧ロール54と成型ロール55との間に供給される。このとき、光拡散層13の成型ロール55側の面13aには、塗布部53から紫外線硬化型樹脂12Rが供給されており、光拡散層13は、供給された紫外線硬化型樹脂12Rを成型ロール55と光拡散層13とで挟んだ状態で押圧ロール54と成型ロール55との間を通過する。このとき、光拡散層13は、押圧ロール54によって成型ロール55側に押圧される。なお、紫外線硬化型樹脂12Rは、成型ロール55の外周面上(凹状の型上)に供給してもよい。
【0037】
次に、図3(e)及び図4に示すように、光拡散層13が成型ロール55に巻きついている状態で、紫外線照射部56から紫外線を照射し、光拡散層13と成型ロール55との間の紫外線硬化型樹脂12Rを硬化させ、紫外線硬化型樹脂12Rの層(光学形状層)に単位プリズム121の形状を賦形する。
次に、図3(f)及び図4に示すように、光拡散層13は、押圧ロール54とは成型ロール55を挟んで反対側に位置する離型ロール57に進み、離型ロール57によって成型ロール55から光学形状層12が形成された光拡散層13が離型される(離型工程)。
これにより、光拡散層13の片面には、図3(f)に示すような単位プリズム121を有する光学形状層12が形成され、プリズム層11が作製される。
【0038】
次に、図3(g)に示すように、光拡散層13側に粘着材層14及び剥離シート18が積層されたプリズム層11は、不図示の切断装置のカッターC等によって所定の大きさに切断される。
そして、図3(h)に示すように、プリズム層11から剥離シート18を剥離して、ガラス基板層15の一方の面に、粘着材層14(接合層14)を介して、プリズム層11を接合する(接合工程)。また、ガラス基板層15の他方の面に、接合層16を介して、表面機能層17を接合する。
以上の工程を経て、透過型スクリーン10が完成する。
【0039】
ここで、熱処理工程及び剥離シート貼合工程を行うことによる効果を説明する。
図5は、筋状のシワ等の発生を説明する図である。図5(a)は、光拡散層13上に塗布された紫外線硬化型樹脂12Rの塗布開始点の様子を示す図であり、図5(b)は、光拡散層の幅方向の断面における紫外線硬化樹脂が硬化する過程における筋状のシワの発生の様子を示し、図5(c)は、光学形状層形成部503における筋状のシワの様子を示している。
紫外線硬化型樹脂12Rを光拡散層13上(又は成型ロール55の型上)に塗布する際に、塗布開始点では、図5(a)に示すように、光拡散層13の幅方向において、紫外線硬化型樹脂12Rが塗布されている部分と塗布されていない部分とが生じ、僅かに塗布ムラが発生している場合がある。
塗布部53からの紫外線硬化型樹脂の塗布量の調整等により、上述のような塗布ムラの解消を図ってはいるが、未だ完全には解消されてはいない。
また、光拡散層13は、熱可塑性樹脂製であり、押し出し成形時に、主として、流れ方向へ押し出し、引っ張られてシート状に形成されている。従って、光拡散層13は、流れ方向(製造装置50における流れ方向)においては延伸する方向へ、幅方向(流れ方向に直交する方向)においては収縮する方向への力がかかった状態で成形され、内部歪みを有している。
【0040】
前述のような塗布開始点での塗布ムラが生じた状態で、かつ、光拡散層13が内部歪みを有した状態のまま、紫外線照射部56により光拡散層13を通して紫外線を照射すると、光拡散層13は、紫外線の照射による熱に加えて、紫外線硬化型樹脂12Rの硬化熱等によってさらに局所的に加熱され、光拡散層13の内部歪みが開放される。硬化熱等によって内部歪みが開放されると、光拡散層13の流れ方向は収縮し、幅方向は延伸する。特に、紫外線硬化型樹脂12Rが塗布され硬化熱を受ける部分の光拡散層13については、このような延伸や収縮が顕著に生じる。
そして、紫外線硬化型樹脂12Rが塗布されている部分の光拡散層13の延伸及び収縮により、紫外線硬化型樹脂12Rが塗布されていない部分の光拡散層13は、幅方向において、図5(b)のように部分的にたわみ、流れ方向に伸びる筋状のシワやヨレ等の変形が発生する。
また、このような流れ方向の筋状のシワ等の変形が光拡散層13に生じると、そのシワ等は流れ方向に沿って押圧ロール54側まで伸び、未硬化の紫外線硬化型樹脂12Rがムラなく塗布されている部分においても光拡散層13が筋状のシワが生じ、光拡散層13にシワが生じたまま紫外線硬化型樹脂が硬化し、外観不良や光学性能の低下を招き、さらに、光拡散層13及び光学形状層12の密着性の低下による光学形状層12の浮きを生じさせる。
【0041】
そこで、本実施形態では、光学形状部形成工程の前に、熱処理工程及び剥離シート貼合工程を行うことにより、このような光拡散層13の筋状のシワ等の変形の大幅な低減を実現した。
具体的には、熱処理工程により、予め光拡散層13の内部歪みを開放し、紫外線照射時の熱や紫外線硬化型樹脂の硬化熱等による延伸や収縮等による筋状のシワ等の変形の低減を図っている。
また、剥離シート貼合工程により、光拡散層13に粘着材層14を介して剥離シート18を貼合することにより、紫外線照射による熱や紫外線硬化型樹脂12Rの硬化熱等によって光拡散層13の内部歪みが開放されて収縮及び延伸しようとしたときに、剥離シート18の剛性によってその収縮や延伸を抑え、筋状のシワ等の変形の低減を図っている。
【0042】
ここで、熱処理工程の有無による光拡散層13の流れ方向における収縮率の差を調べた。
図6は、熱処理工程の有無による光拡散層13の流れ方向における収縮率を示す図である。図6において、縦軸は、収縮率(収縮量の割合)である。
熱処理工程を行った光拡散層及び熱処理工程を行わなかった光拡散層等とを用意し、光学形状層形成工程において紫外線を照射した状態に近い再現環境下に置き(温度70℃、10分間)、その再現環境下に置いた後の幅方向両端部での流れ方向における収縮率を求めた。
このとき、光拡散層13の厚さは、約200μmであり、光拡散層13の幅方向両端部において、流れ方向を長手方向とする短冊状(1000mm×50mm)のサンプルを切り出し、再現環境下で加熱する前と後において流れ方向の寸法を測長し、流れ方向の収縮率を求めた。なお、流れ方向の収縮率を求めたのは、再現環境下に置いた後の幅方向の延伸率に比べて、流れ方向の収縮率の方が光拡散層の変化が大きいためである。
光拡散層13の収縮率Cp(%)は、再現環境下での加熱前の幅方向の長さをL0、再現環境下での加熱後の幅方向の長さをL1とし、以下の式で求めた。
Cp=((L0−L1)/L0)×100
【0043】
光学形状層形成工程において筋状のシワ等が大幅に低減された良好な光学積層体とするためには、再現環境下における光拡散層13の流れ方向における収縮率Cpは、0.08%以下とすることが好ましい。収縮率Cpがこれ以上の大きさとなると、筋状のシワが発生しやすくなる。なお、収縮率Cpは、0.05%以下とすることがさらに好ましい。
図6に示すように、押し出し成形直後の光拡散層は、収縮率が大きかった。
また、押し出し成形後2ヶ月間常温常湿で保管された光拡散層は、押し出し成形直後の光拡散層に比べて収縮率は小さくなったが、その平均が0.1%以上であった。
一方、押し出し成形後2ヶ月間常温常湿で保管された後、80℃で4分間熱処理を行った光拡散層や90℃で4分間熱処理を行った光拡散層は、さらに収縮率が低下しており、80℃で4分間熱処理を行った光拡散層の収縮率Cpの平均が約0.07%、90℃で4分間熱処理を行った光拡散層の収縮率Cpの平均が約0.03%となり、好ましい範囲を満たしている。
なお、収縮率に関して、光拡散層13の幅方向における両端部(端部1,端部2)を測定した理由は、幅方向における両端部は成形時の延伸による影響が大きいためである。
【0044】
本実施形態では、熱処理工程において、MBS樹脂(ガラス転移温度Tg:85℃)を基材とする光拡散層13を80℃〜90℃で4分間加熱する処理を行った。この熱処理工程における温度や加熱時間は、光拡散層13の厚さや、母材となる熱可塑性樹脂のTg(ガラス転移温度)等に合わせて最適なものを選択することが好ましい。特に、加熱温度T(℃)は、光拡散層13の基材となる熱可塑性樹脂のガラス転移温度をTg(℃)とするとき、Tg−10≦T≦Tg+10とすることが、内部歪みを開放する観点から好ましい。加熱温度Tが、T<Tg−10である場合、温度が低く、光拡散層の内部歪みが十分開放されない。また、加熱温度Tが、T>Tg+10である場合、温度が高すぎ、光拡散層自体が加熱によってヨレ等の変形を生じ、光学形状層12の形成が困難となる。さらに、加熱時間は、4〜10分間とすることが、内部歪みを開放する観点から好ましい。
本実施形態の光拡散層13の基材はMBS樹脂であり、そのガラス転移温度Tgが85℃である。従って、本実施形態の熱処理工程における加熱温度及び加熱時間は、好ましい範囲を満たしている。
【0045】
ここで、実際に、熱処理工程及び剥離シート貼合工程を行った本実施形態の実施例である例1の光拡散層13と、熱処理工程のみを行った例2の光拡散層と、剥離シート貼合工程のみを行った例3の光拡散層と、熱処理工程及び剥離シート貼合工程を行わなかった例4の光拡散層とを用いて、実際に光学形状層形成工程を行い、シワ等のや変形の発生の有無や、光拡散層と紫外線硬化型樹脂(光学形状層)の密着性等を調べた。
熱処理工程及び剥離シート貼合工程を行わなかった例4の光拡散層を用いて作成されたプリズム層では、筋状のシワが発生した。またこれにより、光拡散層と光学形状層との密着性の低下(光学形状層の浮き)等も生じ、その品質は使用に適さないものであった。
しかし、熱処理工程又は剥離シート貼合工程を行った例2や例3の光拡散層を用いたプリズム層は、シワの発生や、光拡散層と光学形状層との密着性の低下は低減され、光学製品として使用に適したものとなった。
さらに、熱処理工程及び剥離シート貼合工程を行った本実施形態の例1の光拡散層13を用いたプリズム層11は、シワ等の発生や光拡散層13と光学形状層12との密着性の低下は大幅に改善され、最も光学製品として使用に適したものが得られた。
【0046】
以上のことから、本実施形態によれば、紫外線照射による熱や紫外線硬化型樹脂の硬化熱等による光拡散層13のシワ等の変形を大幅に低減できる。また、これにより、光拡散層13と光学形状層12との密着性が向上し、光学形状層12の浮きを大幅に低減できる。従って、外観及び光学性能の良好なプリズム層11を製造できる。
また、本実施形態によれば、上記効果に加えて、剥離シート貼合工程によって光拡散層13の片面に形成される粘着材層を、ガラス基板層15とプリズム層11とを接合する接合層14とすることができる。これにより、製造工程の増大を防止でき、効率よく生産することができる。
【0047】
さらに、本実施形態によれば、光拡散層13として押し出し成形されたシート状の部材を使用できるので、汎用のシート状の部材を使用することも可能であり、生産コストを低減できる。
加えて、このプリズム層11の製造方法は、単位プリズム121以外の単位レンズ等の光学形状を紫外線硬化型樹脂により基材となる熱可塑性樹脂製のシート状の部材の片面に形成する場合にも適用でき、様々な光学部材(光学積層体)への適用が可能である。
そのうえ、光拡散層13は、拡散材を含有しているので、光拡散作用を有し、光学積層体(透過型スクリーン10)の光学性能を向上することができる。
【0048】
(変形形態)
以上説明した実施形態に限定されることなく、種々の変形や変更が可能であって、それらも本発明の範囲内である。
(1)本実施形態では、光学形状層形成工程の前に、熱処理工程及び剥離シート貼合工程を行う例を示したが、これに限らず、その光拡散層の基材の樹脂のガラス転移温度Tgや光拡散層の厚み等に応じて、熱処理工程のみを行う形態としてもよいし、剥離シート貼合工程のみを行う形態としてもよい。
熱処理工程のみを行う場合は、作業工程を短縮でき、剥離シート等を用いないので、生産コストを低減できる。また、剥離シート貼合工程のみを行う場合は、作業工程を短縮できる。
【0049】
(2)本実施形態では、粘着材層14及び剥離シートを用いる例を示したが、これに限らず、例えば、剥離可能な擬似粘着材層(又は擬似接着剤層)及び支持シートとし、剥離工程において、支持シート及び擬似粘着材層を光拡散層から剥離する形態としてもよい。このような形態とすることにより、光拡散層13の他方の面に何も積層しない形態の光学シート、すなわち、光拡散層13の片面に光学形状層12が形成された光学シートとすることができる。
【0050】
(3)本実施形態において、拡散材を含有する光拡散層13の一方の面に光学形状層12が一体に形成される例を示したが、これに限らず、光拡散層13として、拡散材を含有しない熱可塑樹脂製のシート状の部材を用いてもよい。
【0051】
(4)本実施形態において、光学形状層12は、単位プリズム121が複数配列される例を示したが、これに限らず、例えば、レンチキュラーレンズが複数配列されていてもよいし、フレネルレンズ形状のレンズ形状が賦形されていてもよいし、微細凹凸形状が賦形されていてもよく、その形状を限定しない。
【0052】
(5)本実施形態において、光拡散層13は、ウェブ状であり連続して供給される形態を示したが、これに限らず、例えば、枚葉状の光拡散層13を用いて作成してもよい。
また、本実施形態では、製造装置50において、熱処理部501、貼合部502、光学形状層形成部503が1つのライン上に連続して配置される例を示したが、これに限定されない。
【0053】
(6)本実施形態において、透過型スクリーン10は、プリズム層11(光学形状層12及び光拡散層13)、接合層(粘着材層)14、ガラス基板層15、接合層16、表面機能層17を備える例を示したが、透過型スクリーン10の層構成及び各層の位置等は、これに限らず、所望する光学条件に合わせて適宜設計可能である。
例えば、ガラス基板層15の出射側にレンチキュラーレンズ層等を備えてもよいし、着色層等を備えてもよい。また、1枚ものの透過型スクリーンではなく2枚ものの透過型スクリーンとし、それぞれがガラス基板層15を備え、その出射側や入射側の面に接合層を介して樹脂製の光学作用を有する層(フレネルレンズ層やレンチキュラーレンズ層等)を備える形態としてよい。
【0054】
(7)本実施形態において、光学積層体である透過型スクリーン10は、インタラクティブボードシステムのスクリーン(ボード)として用いられる例を示したが、これに限らず、例えば、リアプロジェクションテレビの透過型スクリーンとして用いることも可能である。
また、本実施形態において、光学積層体として、透過型スクリーン10を例に挙げて説明したが、これに限らず、例えば、光学積層体は、反射型スクリーン等の各種スクリーンとしてもよいし、面光源装置等を構成する光学部材(光学シート)としてもよい。
さらに、本実施形態において、ガラス基板層15の両面に樹脂製のシート状の部材(表面機能層17やプリズム層11)が接合層14,16によって接合される透過型スクリーン10を例に挙げて説明したが、これに限らず、例えば、ガラス基板層15の一方の面だけに樹脂製のシートが貼付される形態の光学部材(例えば、ガラス基板層の片面にレンチキュラーレンズシートが貼合されたガラス基板付きレンチキュラーレンズシート等)としてもよい。
【0055】
なお、本実施形態及び変形形態は、適宜組み合わせて用いることもできるが、詳細な説明は省略する。また、本発明は以上説明した実施形態によって限定されることはない。
【符号の説明】
【0056】
10 透過型スクリーン
11 プリズム層
12 光学形状層
13 光拡散層
14 接合層(粘着材層)
15 ガラス基板層
16 接合層
17 表面処理層
18 剥離シート
50 製造装置
501 熱処理部
502 貼合部
503 光学形状層形成部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性樹脂を押し出し成形することにより形成された基材層と、
前記基材層の一方の面に形成され、その表面に光学形状を有する電離放射線硬化型樹脂製の光学形状層と、
を備える光学積層体の製造方法であって、
前記基材層を加熱する熱処理工程と、
前記光学形状を賦形する成形型に電離放射線硬化型樹脂が充填された状態で前記基材層を押圧し、前記基材層を通して電離放射線を照射して前記電離放射線硬化型樹脂製を硬化させ、前記光学形状層を形成する光学形状層形成工程と、
前記光学形状層形成工程の後に、前記光学形状層が片面に形成された前記基材層を前記成形型から離型する離型工程と、
を備えること、
を特徴とする光学積層体の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の光学積層体の製造方法において、
前記熱処理工程の後に、前記基材層の他方の面に、剥離可能な支持基材層を貼合する支持基材層貼合工程を有すること、
を特徴とする光学積層体の製造方法。
【請求項3】
請求項2に記載の光学積層体の製造方法において、
前記支持基材層貼合工程では、前記支持基材層は、片面に粘着材層が形成されており、前記粘着材層を介して前記基材層と貼合されること、
を特徴とする光学積層体の製造方法。
【請求項4】
請求項3に記載の光学積層体の製造方法において、
前記離型工程の後に、前記支持基材層を剥離し、前記粘着材層により前記基材層と他の層とを接合する接合工程を備えること、
を特徴とする光学積層体の製造方法。
【請求項5】
請求項2に記載の光学積層体の製造方法において、
前記支持基材層貼合工程では、前記支持基材層は、片面に擬似接着材層が形成されており、前記擬似接着材層を介して前記基材層に一時的に貼合され、
前記離型工程の後に、前記支持基材層及び前記擬似接着材層は、前記基材層から剥離されること、
を特徴とする光学積層体の製造方法。
【請求項6】
請求項1から請求項5までのいずれか1項に記載の光学積層体の製造方法において、
前記基材層が前記熱処理工程において加熱される加熱温度と加熱時間は、
前記基材層を形成する前記熱可塑性樹脂のガラス転移温度Tg(℃)とするとき、加熱温度T(℃)が、Tg−10≦T≦Tg+10であり、
加熱時間が、4〜10分間であること、
を特徴とする光学積層体の製造方法。
【請求項7】
請求項1から請求項6までのいずれか1項に記載の光学積層体の製造方法において、
前記基材層は、光を拡散させる拡散材を含有していること、
を特徴とする光学積層体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−206460(P2012−206460A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−75338(P2011−75338)
【出願日】平成23年3月30日(2011.3.30)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】