説明

光学系及び露光装置

【課題】簡単な構造を用いて温度変化による光学部材の位置の変化を抑制できる光学系を提供する。
【解決手段】鏡筒によってミラーM1〜M6を支持する投影光学系POにおいて、その鏡筒は、温度変化による熱変形によって、ミラーM1〜M6のうちのミラーM1をZ方向に変位させる支持部材22と、温度変化による熱変形によって、ミラーM1のZ方向への変位が相殺されるようにミラーM1を変位させ、支持部材22とは線膨張係数の異なる部分鏡筒12Aとを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鏡筒によって複数の光学部材を支持する光学系、この光学系を備えた露光装置、及びこの露光装置を用いるデバイス製造技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、半導体素子、液晶表示素子等を製造するためのリソグラフィ工程では、マスクとしてのレチクルに形成されたパターンを、投影光学系を介してレジスト等が塗布されたウエハ又はガラスプレート等の基板上に転写する露光装置が用いられている。この種の露光装置としては、近年では、遠紫外域から真空紫外域の露光光を用いるステッパ等の一括露光方式及びスキャニングステッパ等の走査露光型の投影露光装置が主に用いられている。
【0003】
最近では、露光光として波長が100nm程度以下の軟X線領域の光、すなわち極端紫外光(以下、EUV(Extreme Ultraviolet)光と呼ぶ。)を使用するEUV露光装置の開発も行われている。このEUV露光装置では、照明光学系及び投影光学系は全て反射光学部材(ミラー)によって構成され、レチクルもまた反射型レチクルが使用される。
投影光学系として、屈折系、反射屈折系、及び反射系のいずれを用いる場合であっても、温度変化によって光学部材の光軸方向の位置や光軸に対して半径方向の位置がずれると結像性能(諸収差)が劣化する恐れがある。そのため、投影光学系の鏡筒は、インバー等の低線膨張係数の金属等を用いて製造されていた。さらに、投影光学系の結像特性を調整することも必要であり、そのための手段として、投影光学系を構成する少なくとも一部の光学部材の位置・姿勢を調整する調整機構が一般的に採用されている。この位置・姿勢の調整機構としては、例えば調整ストローク及び精度の異なる複数の機構を組み合わせた機構が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2007−201342号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
半導体素子の微細化等に対応して露光装置において高い結像特性をより安定に維持するためには、温度変化に対する安定性をさらに高める必要がある。しかしながら、投影光学系の鏡筒全体をさらに線膨張係数の小さいガラスセラミックス(例えばゼロデュア(商品名))のような材料から製造した場合には、鏡筒の剛性が劣る恐れがある。さらに、投影光学系を高精度に温度制御する方法、又は光学部材の位置・姿勢を調整する機構によって温度変化による変位をも補正する方法は、制御システムが複雑化する恐れがある。
【0005】
本発明は斯かる点に鑑み、簡単な構造を用いて温度変化による光学部材の位置の変化を抑制できる光学系、この光学系を備えた露光装置、及びこの露光装置を用いたデバイス製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明による光学系は、鏡筒によって複数の光学部材を支持する光学系において、その鏡筒は、温度変化による熱変形によって、その複数の光学部材のうちの第1光学部材を少なくとも第1方向に変位させる第1部材と、温度変化による熱変形によって、その第1光学部材のその第1方向への変位が相殺されるようにその第1光学部材を変位させ、その第1部材とは線膨張係数の異なる第2部材と、を含むものである。
【0007】
また、本発明による露光装置は、照明光学系からの露光光でパターンを照明し、その露光光でそのパターン及び投影光学系を介して基板を露光する露光装置において、その照明光学系又は投影光学系として本発明の光学系を用いるものである。
また、本発明によるデバイス製造方法は、本発明の露光装置を用いて感光性基板を露光することと、その露光された感光性基板を処理することと、を含むものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、線膨張係数の異なる2つの部材を組み合わせるという簡単な構造を用いて、温度変化による光学部材(第1光学部材)の位置の変化を抑制できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の第1の実施形態につき図1〜図4を参照して説明する。本例は、露光光として極端紫外光、即ちEUV(Extreme Ultraviolet)光を使用するEUV露光装置に本発明を適用したものである。
図1には、本例の露光装置10の全体構成が概略的に示されている。この露光装置10では、後述するように、投影光学系POが使用されているので、以下では、投影光学系POの光軸に平行にZ軸を取り、Z軸に垂直な平面内で図1における紙面内左右方向にY軸を取り、紙面に直交する方向にX軸を取って説明する。露光装置10は、マスクとしてのレチクルRに形成された回路パターンの一部の像を投影光学系POを介して物体としてのウエハW上に投影しつつ、レチクルRとウエハWとを投影光学系POに対して1次元方向(ここではY方向)に相対走査することによって、レチクルRの回路パターンの全体をウエハW上の複数のショット領域の各々にステップ・アンド・スキャン方式で転写するものである。
【0010】
露光装置10は、軟X線領域の光、即ち波長100nm程度以下の極端紫外光(EUV光)を露光用の照明光ELとして射出する光源装置1、この光源装置1からの照明光ELを反射して所定の入射角、例えば約50mradでレチクルRのパターン面(下面)に入射させる光路折り曲げ用のミラーMを含む照明光学系、レチクルRを保持するレチクルステージRST、レチクルRのパターン面で反射された照明光ELをウエハWの被露光面(上面)に対して垂直に投射する光学ユニットとしての投影光学系PO、及びウエハWを保持するウエハステージWST等を備えている。なお、ミラーMは、投影光学系POの鏡筒2の内部に配置されているが、実際には照明光学系の一部である。光源装置1としては、一例として、レーザ励起プラズマ光源が用いられている。また、照明光ELとしては、一例として、主に波長5〜20nm、例えば波長11nmのEUV光が用いられる。照明光ELの気体による吸収を防止するため、露光装置10は不図示の真空チャンバ内に収容されている。
【0011】
その照明光学系は、複数の照明用ミラー、波長選択窓等(いずれも図示省略)、及びミラーM等を含んで構成されている。また、光源装置1内の集光ミラーとしての放物面鏡も照明光学系の一部を構成する。光源装置1から射出され、照明光学系の端部のミラーMで反射された照明光ELは、レチクルRのパターン面の円弧スリット状の領域を照明する。
前記レチクルステージRSTは、XY平面に沿って配置されたレチクルベース3上に配置され、駆動系4を構成する例えば磁気浮上型2次元リニアアクチュエータが発生する磁気浮上力によってレチクルベース3上に浮上支持されている。レチクルステージRSTは、駆動系4が発生する駆動力によってY方向に所定ストロークで駆動されるとともに、X方向及びθz方向(Z軸回りの回転方向)にも微小量駆動される。また、レチクルステージRSTは、駆動系4が複数箇所で発生する磁気浮上力の調整によってZ方向、X軸回りの回転方向(θx方向)、及びY軸回りの回転方向(θy方向)にも微小量だけ駆動可能である。
【0012】
レチクルステージRSTの下面に不図示の静電チャックを介してレチクルRが保持されている。このレチクルRとしては、照明光ELがEUV光であることから反射型レチクルが用いられている。レチクルRのパターン面には、EUV光を反射する多層膜が形成されている。なお、ミラーM、その他の照明光学系及び投影光学系PO内の各ミラーの反射面にも同様の構成の多層膜が形成されている。レチクルRのパターン面に形成された多層膜上には、吸収層(例えばニッケルNi又はアルミニウムAl等)が形成され、この吸収層をパターニングすることによって所定の回路パターンが形成されている。レチクルRのパターン面で反射された照明光ELが投影光学系POに向かう。
【0013】
レチクルステージRST(レチクルR)のXY面内の位置(X,Y,θz)は、レチクルステージRSTに設けられた(又は形成された)反射面にレーザビームを投射するレーザ干渉計(以下、「レチクル干渉計」という)5Rによって、例えば0.5〜0.1nm程度の分解能で常時検出される。また、レチクルRのZ方向の位置及びXY面に対する傾斜角(θx,θy)は、そのパターン面に対し斜め方向から検出ビームを照射する送光系6Raと、そのパターン面で反射された検出ビームを受光する受光系6Rbとから構成されるフォーカスセンサによって計測されている。このフォーカスセンサとしては、例えば特開平6−283403号公報(対応米国特許第5,448,332号)等に開示される多点焦点位置検出系が用いられている。レチクル干渉計5R及びフォーカスセンサ(6Ra,6Rb)の計測値は、主制御装置(不図示)に供給され、この主制御装置がその計測値に基づいて駆動部4を介してレチクルステージRST(レチクルR)を6自由度で駆動する。
【0014】
投影光学系POは、開口数NAが例えば0.1で、反射光学部材(ミラー)のみから成る反射光学系が使用されており、本例の投影倍率は1/4倍である。投影光学系POの鏡筒本体2には、ミラーMに入射する照明光EL及びレチクルRに入射して反射される照明光ELをそれぞれ通過させるための開口2a及び2bが形成され、投影光学系POからウエハWに入射する照明光ELを通過させるための開口(不図示)も形成されている。レチクルRによって反射された照明光ELは、投影光学系POを介してウエハW上に投射され、これによりレチクルR上のパターンは1/4に縮小されてウエハWに転写される。
【0015】
前記ウエハステージWSTは、XY平面に沿って配置されたウエハベース7上に配置され、例えば磁気浮上型2次元リニアアクチュエータから成る駆動系8によってウエハベース7上に浮上支持されている。このウエハステージWSTは、駆動系8によってX方向及びY方向に例えば300〜400mmの所定ストロ−クで駆動され、θz方向にも微小量駆動される。また、ウエハステージWSTは、駆動系8によってZ方向及びXY面に対する傾斜方向にも微小量だけ駆動可能である。
【0016】
ウエハステージWSTの上面には、静電チャック(不図示)によってウエハWが吸着保持されている。ウエハステージWSTのX方向、Y方向の位置、及びX軸、Y軸、Z軸の周りの回転角θx,θy,θzは、外部に配置されたレーザ干渉計(以下、「ウエハ干渉計」という)5Wにより、例えば0.5〜0.1nm程度の分解能で常時検出されている。また、投影光学系POの鏡筒本体2を基準とするウエハWのZ方向の位置及びXY面に対する傾斜角(θx,θy)は、その被露光面に対し斜め方向から検出ビームを照射する送光系6Waと、その被露光面で反射された検出ビームを受光する受光系6Wbとから構成されるフォーカスセンサによって計測されている。このフォーカスセンサは、レチクルR用のフォーカスセンサ(6Ra,6Rb)と同様の多点焦点位置検出系である。ウエハ干渉計5W及びフォーカスセンサ(6Wa,6Wb)の計測値は、不図示の主制御装置に供給され、主制御装置はその計測値及びレチクルステージRSTの位置の計測値に基づいて、駆動系8を介してウエハステージWST(ウエハW)を6自由度で駆動する。
【0017】
さらに、本実施形態では、投影光学系POの鏡筒本体2に、ウエハW上のアライメントマークの位置を計測するためのアライメント系ALGが固定されている。ウエハステージWST上面の一端部には、レチクルRに形成されたパターンの投影像の位置とアライメント系ALGとの相対位置関係の計測(いわゆるベースライン計測)等を行うための空間像計測部FMが設けられている。
【0018】
ウエハW上の1つのショット領域(ダイ)を露光するときには、照明光が照明光学系によりレチクルRの照明領域に照射され、レチクルRとウエハWとは投影光学系POに対して投影光学系POの縮小倍率に従った所定の速度比でY方向に同期して移動する(同期走査)。このようにして、レチクルパターンはウエハW上の一つのショット領域に露光される。その後、ウエハステージWSTを駆動してウエハWをステップ移動した後、ウエハW上の次のショット領域に対してレチクルRのパターンが走査露光される。このようにステップ・アンド・スキャン方式でウエハW上の複数のショット領域に対して順次レチクルRのパターンの像が露光される。
【0019】
次に、投影光学系POについて詳細に説明する。図2は、投影光学系POを構成する複数の光学部材としての6枚のミラーM1〜M6の配置を示す。図2において、レチクルRからウエハWに向かって、反射面を下方(−Z方向)に向けたミラーM2、反射面を下方に向けたミラーM4、反射面を上方(+Z方向)に向けたミラーM3、反射面を上方に向けたミラーM1、反射面を下方に向けたミラーM6、及び反射面を上方に向けたミラーM5が配置され、照明光学系の一部であるミラーMは、ミラーM3及びM4の反射面を延長した2つの面Ca及びCbの間に配置されている。ミラーM1〜M6の反射面は、それぞれ球面又は非球面などの回転対称な面であり、その回転対称軸が投影光学系POの光軸AXにほぼ一致するように位置調整されている。また、ミラーM1,M2,M4,M6は凹面鏡であり、他のミラーM3,M5は凸面鏡である。ミラーM1〜M6それぞれの反射面は、設計値に対して露光波長の約50分の1から60分の1以下の凹凸となる加工精度で加工される。
【0020】
図2の構成において、レチクルRで反射された照明光ELは、ミラーM1で上方に反射され、ミラーM2で下方に反射された後、ミラーM3で上方に反射され、ミラーM4で下方に反射される。そして、ミラーM5で上方に反射された照明光ELは、ミラーM6で下方に反射されて、ウエハW上にレチクルRのパターンの像を形成する。
図3(A)は、その6枚のミラーM1〜M6を斜め上方から見た斜視図を示し、図3(B)は、その6枚のミラーM1〜M6を斜め下方から見た斜視図を示している。なお、図3(A)、(B)では、各ミラーの反射面に、ハッチングが付されている。これらの図から分かるように、ミラーM1〜M6は、それぞれ照明光ELを遮光しないような形状に加工されている。
【0021】
図4は、投影光学系POの鏡筒本体及びこの鏡筒本体内のミラーM1〜M6の保持機構(保持調整機構)を示す。図4において、ミラーM1,M2,M3,M4,M5,M6はそれぞれほぼ円筒状の分割鏡筒12A,12B,12C,12D,12E,12F内に保持調整機構13A,13B,13C,13D,13E,13Fによって、不図示のコラムに対して基本的にX方向、Y方向、Z方向の位置、及びX軸、Y軸、Z軸の周りの回転角の6自由度で移動(駆動)可能に保持されている。なお、分割鏡筒12Dのみは、ミラーM4を配置するために+Y方向の側面が切り欠かれており、その−Y方向の内部に照明光学系のミラーMが配置されている。また、保持調整機構13B,13EのミラーM2,M5に対する調整の自由度は例えばZ方向、X軸の周りの回転方向、及びY軸の周りの回転方向の3自由度である。
【0022】
また、分割鏡筒12A,12B,12C,12F内にそれぞれリング状の支持板25A,25B,25C,25Fが固定され、保持調整機構13A,13Fは、それぞれ支持板25A,25F上に固定され、保持調整機構13C,13Dはそれぞれ支持板25C,25Bの底面に固定されている。さらに、分割鏡筒12B上に照明光を通す開口が形成された分割鏡筒12Gが固定され、分割鏡筒12Eの底面に照明光を通す開口が形成された分割鏡筒12Hが固定されている。保持調整機構13B及び13Eは、それぞれ分割鏡筒12Gの底面及び分割鏡筒12Hの上面に固定されている。
【0023】
また、不図示のコラムに大型のリング状のフランジ11が固定され、フランジ11の底面にスペーサ14Aを介してボルト15によって分割鏡筒12Aが固定され、分割鏡筒12Aの底面にスペーサ14Fを介してボルト16及びナット17によって分割鏡筒12Fが固定され、分割鏡筒12Fの底面にスペーサ14Eを介してボルト(不図示)によって分割鏡筒12Eが固定され、分割鏡筒12Eの底面にボルト及びナット(不図示)によって、分割鏡筒12Hが固定されている。本実施形態では、フランジ11の底面がミラーM1〜M6の光軸方向(Z方向)の位置の基準となる基準面SPである。
【0024】
また、フランジ11の上面にスペーサ14Cを介してボルト(不図示)によって分割鏡筒12Cが固定され、分割鏡筒12Cの上面にボルト(不図示)によって分割鏡筒12Dが固定され、分割鏡筒12Dの上面にスペーサ14Bを介してボルト及びナット(不図示)によって分割鏡筒12Bが固定され、分割鏡筒12B上にボルト及びナット(不図示)によって分割鏡筒12Gが固定されている。本実施形態では、フランジ11、分割鏡筒12A〜12H、スペーサ14A〜14F、及びこれらを固定するためのボルトやナット等から図1の投影光学系POの鏡筒本体2が構成されている。フランジ11及びスペーサ14A〜14Fは分割鏡筒の一種とみなすことも可能である。フランジ11、分割鏡筒12A〜12H、及びスペーサ14A〜14Fは、例えばインバー等の線膨張係数の小さい金属から形成されている。なお、さらに線膨張係数の小さいスーパーインバーも使用可能であるが、製造コストを低く抑える観点から、全ての部材をスーパーインバーから形成するのは実用的ではない場合がある。なお、インバー及びスーパーインバーの100℃〜200℃における線膨張係数はそれぞれ約1.2×10-6/K及び0.1〜1×10-6/Kである。
【0025】
上記の保持調整機構13A〜13Fのうち、保持調整機構13A,13Cの構成は、大きさは異なるが基本的に同一であるため、そのうちの保持調整機構13Aの構成につき説明する。即ち、分割鏡筒12A内の支持板25A上に、保持調整機構13Aを介してミラーM1が保持されている。保持調整機構13Aは、ミラーM1を例えば3箇所のミラーホルダMHを介して保持するインナーリング21と、これに対してZ方向に離れて配置されたアウターリング23と、アウターリング23に対してインナーリング21のX方向、Y方向、Z方向の位置、及びX軸、Y軸、Z軸の周りの角度からなる6自由度の相対位置を微調整するパラレルリンク機構22と、支持板25Aに対してアウターリング23のX方向、Y方向、Z方向の位置、及びX軸、Y軸、Z軸の周りの角度からなる6自由度の相対位置を調整する半固定式のレバー方式調整機構24とを備えている。パラレルリンク機構22は、独立に伸縮量が制御可能な6個のロッド状のリンク47A,47B,47C,47D,47E,47Fを備え、レバー方式調整機構24は、それぞれ2自由度の変位を制御できる3個のレバー方式駆動部41A,41B,41Cを備えている。なお、以下では各ミラーのミラーホルダMHに関する説明は省略する。
【0026】
なお、これらのパラレルリンク機構22及びレバー方式調整機構24は、例えば特開2007−201342号公報に開示されているため、その詳細な説明を省略する。この場合、インナーリング21(ミラーM1)の駆動ストロークについては、パラレルリンク機構22及びレバー方式調整機構24の順に広くなり、その駆動時の分解能(最小設定単位)については、パラレルリンク機構22及びレバー方式調整機構24の順に大きく(粗く)なっている。このようにストローク及び駆動精度の異なる複数の調整機構を組み合わせて用いることによって、インナーリング21(ミラーM1)の位置及び姿勢を広いストロークで、かつ極めて小さい分解能で高精度に調整できる。これは、保持調整機構13Cも同様である。
【0027】
これに対して、保持調整機構13Fは、ミラーM6を保持する円筒状の保持部材21Fと、支持板25Fに対して保持部材21Fを駆動するレバー方式調整機構24とから構成されている。なお、ミラーM6等についても、保持調整機構13Aと同様に複数の調整機構を設けてもよいことは言うまでもない。また、ミラーM4を保持する保持調整機構13Dは、支持板25Bの底面に吊り下げるように固定された第1リンク部材22Dと、第1リンク部材22Dの下端に+Y方向に延びるように固定された第2リンク部材23Dと、第2リンク部材23Dの先端に+Y方向に延びるように固定された第3リンク部材21Dとを有し、第3リンク部材21Dの底面にミラーM4が保持されている。
【0028】
さらに、上方の保持調整機構13Bは、分割鏡筒12Gの底面に吊り下げるように固定された3本のロッドよりなる連結機構22Bと、連結機構22Bの先端でミラーM2を保持するインナーリング21Bとを有する。同様に、下方の保持調整機構13Eは、分割鏡筒12Hの上面に植設された3本のロッドよりなる連結機構22Eと、連結機構22Bの先端でミラーM5を保持するインナーリング21Eとを有する。
【0029】
次に、本実施形態において、照明光によるミラーM1〜M6に対する照射熱等によって投影光学系POの鏡筒本体及び保持調整機構13A〜13Eの温度がほぼ同じ傾向で変化するものとした場合に、ミラーM1等の基準面SPに対する変位を抑制する機構につき説明する。即ち、保持調整機構13A〜13Eの各構成部材(パラレルリンク機構22等)には、鏡筒本体部2とは線膨張係数の異なる材料(例えばベリリウム(Be)若しくはクロム−モリブデン鋼等の高耐熱性の金属、又はステンレス等の金属等)から形成されている部材が含まれている。ベリリウム、クロム−モリブデン鋼、及びステンレスの0℃〜100℃における線膨張係数はそれぞれ約11×10-6/K、約5×10-6/K、及び約15×10-6/Kである。なお、保持調整機構13A〜13Eにおいて部分的に鏡筒本体と同じ材料(インバー等)を使用してもよい。
【0030】
先ず、図4において、基準面SPから支持板25Aまでの−Z方向への距離(スペーサ14A及び分割鏡筒12Aの対応する部分の長さ)をLZ1、支持板25AからミラーM1の裏面までの+Z方向への距離(保持調整機構13Aの長さ)をLZ2、ミラーM1の厚さ(一定とみなす)をMt1とすると、基準面SPからミラーM1の反射面までの+Z方向への距離ZM1は次のようになる。なお、図4では、ミラーM1は基準面SPよりも高いが、ここでは便宜上LZ2<LZ1であるとする。
【0031】
ZM1=Mt1+LZ2−LZ1 …(1)
この場合、スペーサ14A及び分割鏡筒12Aの平均的な線膨張係数をαp1、保持調整機構13Aの平均的な線膨張係数をαp2(>αp1)とすると、これらの正の線膨張係数αp1,αp2は、次のように設定されている。
LZ1・αp1=LZ2・αp2 …(2)
このとき、投影光学系POの温度がΔTだけ変動しても、基準面SPからミラーM1の裏面までの+Z方向への距離の変動量ΔZM1は、式(2)を用いて以下のように0になる。
【0032】
ΔZM1=(LZ2・αp2−LZ1・αp1)ΔT=0 …(3)
即ち、スペーサ14A及び分割鏡筒12Aは、基準面SPを固定端として−Z方向に膨張し、また、保持調整機構13Aは、支持板25Aを固定端として+Z方向に膨張することになる。したがって、基準面SPに対するスペーサ14A及び分割鏡筒12Aの熱変形によるミラーM1の−Z方向への変位が、保持調整機構13Aの熱変形によるミラーM1の+Z方向への変位によって相殺されるため、ミラーM1の基準面SPに対する相対位置が変化しない。なお、式(2)の関係には或る程度(結像性能が許容範囲を超えて変動しない程度)の許容範囲がある。特に温度変化ΔTが小さい場合には、その許容範囲は広くなる。
【0033】
同様に、ミラーM6についても、基準面SPから支持板25Fまでの分割鏡筒12A,12F等の熱変形によるミラーM6の+Z方向の変位が、保持調整機構13Fの熱変形による−Z方向への変位によって相殺されるように、両者の長さ及び線膨張係数が設定されている。従って、温度変化が生じても、基準面SPからミラーM6までの距離ZM6は変化しない。この場合、分割鏡筒12A、12Fは、基準面SPを固定端として−Z方向に膨張し、また、保持調整機構13Fは、支持板25Fを固定端として+Z方向に膨張することになる。
また、光軸AXから離れて配置されたミラーM4に関しても、基準面SPから支持板25Bまでの+Z方向への距離をLZ3、支持板25BからミラーM4の裏面までの−Z方向への距離(リンク部材22Dの長さ)をLZ4(<LZ3)、ミラーM4の厚さ(一定とみなす)をMt4とすると、基準面SPからミラーM4の反射面までの+Z方向への距離ZM4は次のようになる。
【0034】
ZM4=LZ3−LZ4−Mt4 …(4)
この場合、スペーサ14B,14C及び分割鏡筒12C,12Dの平均的な線膨張係数をαp1、リンク部材22Dの線膨張係数をαp4(>αp1)とすると、これらの正の線膨張係数αp1,αp4は、次のように設定されている。
LZ3・αp1=LZ4・αp4 …(5)
このとき、投影光学系POの温度がΔTだけ変動しても、式(3)と同様の関係が成立するため、距離ZM4は変化しない。
【0035】
さらに、光軸AXからリンク部材23Dの+Y方向の先端までの距離をLR1、リンク部材23Dの先端からミラーM4の中心までの−Y方向への距離をLR2(<LR1)とすると、光軸AXからミラーM4の中心までの距離RM4は次のようになる。
RM4=LR1−LR2 …(6)
この場合、支持板25B及びリンク部材23Dの平均的な線膨張係数をαr1、リンク部材21Dの線膨張係数をαr2(>αr1)とすると、これらの正の線膨張係数αr1,αr2は、次のように設定されている。
【0036】
LR1・αr1=LR2・αr2 …(7)
このとき、投影光学系POの温度がΔTだけ変動しても、式(3)と同様の関係が成立するため、光軸AXからミラーM4までの半径方向の距離RM4は変化しない。
すなわち、リンク部材23Dは、光軸AXを中心に外側に膨張し、支持板25B及びリンク部材23Dは、光軸AXに向かって膨張することになる。
同様に、他のミラーM2,M3,M5に関しても、保持調整機構13B,13C,13Eの線膨張係数及び長さと、分割鏡筒12A〜12F等の線膨張係数及び長さとが式(1)及び式(2)と同様の関係を満たすように設定されている。従って、温度変化があっても、基準面SPからミラーM2,M3,M5までのZ方向の距離が変化しない。
【0037】
このように本実施形態によれば、照明光の照射熱等によって投影光学系POの温度が変動しても、基準面SPに対するミラーM1〜M6のZ方向の位置、及び光軸AXに対するミラーM4の半径方向の位置が変化しないため、常に高い結像特性でレチクルRのパターンの像を投影光学系POを介してウエハW上に露光できる。
次に、本発明の第2の実施形態につき図5を参照して説明する。図5において図4に対応する部分には同一符号を付してその詳細な説明を省略する。本実施形態の投影光学系は、正の線膨張係数の部材と負の線膨張係数の部材とを組み合わせて用いる点で第1の実施形態の投影光学系とは異なっている。
【0038】
図5は、本実施形態の投影光学系POの鏡筒本体及びこの鏡筒本体内のミラーM1〜M6の保持機構を示す。図5において、ミラーM1は、スペーサ14A内に支持板13A1、スペーサ51、インナーリング21、及び3箇所のミラーホルダMHを介して支持されている。なお、以下では各ミラーのミラーホルダMHに関する説明は省略する。また、説明の便宜上、図5の例では、ミラーM1の位置は基準面SPより高いものとする。
【0039】
また、スペーサ14Aの底面に分割鏡筒12A1,12A2及びスペーサ14Fを介して分割鏡筒12Fが連結され、スペーサ14Cの上面に分割鏡筒12C1,12C2を介して分割鏡筒12Dが連結されている。この他の鏡筒本体の構成は図4の例と同じである。
そして、分割鏡筒12A2内の支持板25A2の底面にミラーM6が保持され、分割鏡筒12Hの上面にミラーM5が保持され、コラム14C内の支持板25C1上にミラーM3が保持されている。また、分割鏡筒12Dの+Y方向の開口の端部に、Y方向に延びる連結部材52を介してインナーリング21D1が固定され、インナーリング21D1の底面にミラーM4が保持され、分割鏡筒12Gの底面にミラーM2が保持されている。なお、ミラーM1〜M6にはそれぞれ位置調整機構(不図示)が設けられている。
【0040】
本実施形態においては、温度変化によるミラーM1〜M6の変位を抑制するために、図5の斜線を施した部材である分割鏡筒12A1,12E,12C1,12B、スペーサ14C、スペーサ51、及び連結部材52の材料として、負の線膨張係数を持つ材料を使用する。これ以外の投影光学系POの鏡筒の材料は、インバー等の正の線膨張係数を持つ材料である。負の線膨張係数を持つ材料としては、a)β−石英固溶体(例えばLi20−Al20-3−nSiO2:n≧2)の多結晶体(0℃〜100℃の線膨張係数が−1×10-6/K程度)、b)逆ペロブスカイト型マンガン窒化物Mn3XN(0℃〜100℃の線膨張係数が−3〜−25×10-6/K程度)、c)タングステン酸ジルコニウム(0℃〜100℃の線膨張係数が−9×10-6/K程度)、d)鉄白金合金(例えば45Fe−55Pt、Fe3Pt等)、又はe)カーボン繊維等が使用可能である。
【0041】
図5において、基準面SPからのスペーサ51の厚さをLZm1、インナーリング21の厚さをLZp1とすると、基準面SPからミラーM1(厚さMt1)の反射面までの+Z方向への距離ZM1は次のようになる。
ZM1=LZm1+LZp1+Mt1 …(11)
この場合、スペーサ51の負の線膨張係数を−αm1(αm1>0)、インナーリング21の正の線膨張係数をαp1(>0)とすると、線膨張係数αm1,αp1は、次のように設定されている。
【0042】
LZm1・αm1=LZp1・αp1 …(12)
このとき、投影光学系POの温度がΔTだけ変動しても、基準面SPからミラーM1の裏面までの+Z方向への距離の変動量ΔZM1は、式(12)を用いて以下のように0になる。
ΔZM1=(−LZm1・αm1+LZp1・αp1)ΔT=0 …(13)
即ち、スペーサ51の熱変形によるミラーM1のZ方向への変位が、インナーリング21の熱変形によるミラーM1のZ方向への変位によって相殺されるため、ミラーM1の基準面SPに対する相対位置が変化しない。なお、式(12)の関係にも或る程度の許容範囲がある。
【0043】
同様に、ミラーM6についても、基準面SPからミラーM6までの部材のうちで、負の線膨張係数を持つ分割鏡筒12A1の熱変形によるミラーM6のZ方向の変位が、正の線膨張係数を持つスペーサ14A及び支持板25A2の熱変形による変位によって相殺されるように、両者の長さ及び線膨張係数が設定されている。従って、温度変化が生じても、基準面SPからミラーM6までの距離ZM6は変化しない。
【0044】
また、光軸AXから離れて配置されたミラーM4に関しても、基準面SPからミラーM4(厚さMt4)の裏面までの部材のうちで、スペーサ14C及び分割鏡筒12C1のZ方向の長さをLZm2、分割鏡筒12C2,12Dの対応する部分の長さLZp2とすると、基準面SPからミラーM4の反射面までの+Z方向への距離ZM4は次のようになる。
【0045】
ZM4=LZm2+LZp2−Mt4 …(14)
この場合、スペーサ14C、分割鏡筒12C1の平均的な負の線膨張係数を−αm2(αm2>0)、分割鏡筒12C2,12Dの平均的な正の線膨張係数をαp2(>0)とすると、線膨張係数αm2,αp2は、次のように設定されている。
LZm2・αm2=LZp2・αp2 …(15)
このとき、投影光学系POの温度がΔTだけ変動しても、式(13)と同様の関係が成立するため、距離ZM4は変化しない。
【0046】
さらに、光軸AXから連結部材52までのY方向の距離と、連結部材52からインナーリング21D1の中心までのY方向の距離との和をLRp1、連結部材52のY方向の長さをLRm1とすると、光軸AXからミラーM4の中心までの距離RM4は次のようになる。
RM4=LRp1+LRm1 …(16)
この場合、分割鏡筒12C及びインナーリング21D1の平均的な正の線膨張係数をαrp1、連結部材52の負の線膨張係数を−αrm1(αrm1>0)とすると、これらの線膨張係数αrp1,αrm1は、次のように設定されている。
【0047】
LRp1・αrp1=LRm1・αrm1 …(17)
このとき、投影光学系POの温度がΔTだけ変動しても、式(13)と同様の関係が成立するため、光軸AXからミラーM4の中心までの半径方向の距離RM4は変化しない。
同様に、他のミラーM2,M3,M5に関しても、分割鏡筒12A1〜12Hの線膨張係数及び長さと、スペーサ14A〜14Fの線膨張係数及び長さとが式(11)及び式(12)と同様の関係を満たすように設定されている。従って、温度変化があっても、基準面SPからミラーM2,M3,M5までのZ方向の距離が変化しない。
【0048】
このように本実施形態においても、照明光の照射熱等によって投影光学系POの温度が変動しても、基準面SPに対するミラーM1〜M6のZ方向の位置、及び光軸AXに対するミラーM4の半径方向の位置が変化しないため、常に高い結像特性でレチクルRのパターンの像を投影光学系POを介してウエハW上に露光できる。
また、上記の実施形態の露光装置を用いて半導体デバイス等の電子デバイス(又はマイクロデバイス)を製造する場合、電子デバイスは、図6に示すように、電子デバイスの機能・性能設計を行うステップ221、この設計ステップに基づいたマスク(レチクル)を製作するステップ222、デバイスの基材である基板(ウエハ)を製造してレジストを塗布するステップ223、前述した実施形態の露光装置(EUV露光装置)によりマスクのパターンを基板(感応基板)に露光する工程、露光した基板を現像する工程、現像した基板の加熱(キュア)及びエッチング工程などを含む基板処理ステップ224、デバイス組み立てステップ(ダイシング工程、ボンディング工程、パッケージ工程などの加工プロセスを含む)225、並びに検査ステップ226等を経て製造される。
【0049】
言い換えると、このデバイスの製造方法は、上記の実施形態の露光装置を用いてその投影面上に設置される基板(ウエハ)を露光することと、露光された基板を処理すること(ステップ224)とを含んでいる。この際に、上記の実施形態の露光装置によれば、簡単な構成で露光装置の結像特性を高精度に維持できるため、装置コストを抑制して高精度にデバイスを製造できる。
【0050】
また、上記実施形態では、露光光としてEUV光を用い、6枚のミラーのみから成るオール反射の投影光学系を用いる場合について説明したが、これは一例であって、本発明がこれに限定されないことは勿論である。すなわち、例えば、特開平11−345761号公報に開示されるような4枚のミラーのみから成る投影光学系を備えた露光装置は勿論、光源に波長100〜200nmのVUV光源、例えばAr2 レーザ(波長126nm)を用い、4〜8枚のミラーを有する投影光学系などにも好適に適用することができる。また、レンズのみから成る屈折系の投影光学系、レンズを一部に含む反射屈折系の投影光学系のいずれにも、本発明は好適に適用することができる。
【0051】
なお、上記実施形態では、本発明の光学系を、露光装置を構成する投影光学系として採用した場合について説明したが、本発明の光学系を露光装置の照明光学系として採用することとしても良い。
また、上記実施形態では、露光光源としてレーザ励起プラズマ光源を用いるものとしたが、これに限らず、SOR(Synchrotron Orbital Radiation)リング、ベータトロン光源、ディスチャージド光源、X線レーザなどのいずれを用いても良い。
【0052】
このように、本発明は上述の実施の形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の構成を取り得る。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明の第1の実施形態の露光装置の概略構成を示す一部を切り欠いた図である。
【図2】図1の投影光学系PO内の照明光の光路を示す断面図である。
【図3】(A)は投影光学系POを構成する複数のミラーを斜め上方から見た斜視図、(B)はその複数のミラーを斜め下方から見た斜視図である。
【図4】第1の実施形態の投影光学系の鏡筒本体及びミラーの保持機構を示す断面図である。
【図5】第2の実施形態の投影光学系の鏡筒本体及びミラーの保持機構を示す断面図である。
【図6】デバイスの製造工程の一例を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0054】
R…レチクル、PO…投影光学系、W…ウエハ、M1〜M6…ミラー、2…鏡筒本体、10…露光装置、11…フランジ、12A〜12H…分割鏡筒、13A〜13F…保持調整機構、14A〜14F…スペーサ、21…インナーリング、22…パラレルリンク機構、22B,22E…連結機構

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鏡筒によって複数の光学部材を支持する光学系において、
前記鏡筒は、
温度変化による熱変形によって、前記複数の光学部材のうちの第1光学部材を少なくとも第1方向に変位させる第1部材と、
温度変化による熱変形によって、前記第1光学部材の前記第1方向への変位が相殺されるように前記第1光学部材を変位させ、前記第1部材とは線膨張係数の異なる第2部材と、
を含むことを特徴とする光学系。
【請求項2】
前記鏡筒は、鏡筒本体部と、該鏡筒本体部に対して前記複数の光学部材を支持する支持機構とを含むことを特徴とする請求項1に記載の光学系。
【請求項3】
前記鏡筒は、前記第1部材としての正の線膨張係数の第1部分鏡筒と、前記第2部材としての負の線膨張係数の第2部分鏡筒とを含み、
前記第1方向は前記光学系の光軸に平行な方向であることを特徴とする請求項1又は2に記載の光学系。
【請求項4】
前記第1及び第2部分鏡筒の線膨張係数をそれぞれαp及び−αn、前記第1及び第2部分鏡筒の前記第1光学部材の変位に寄与する部分の光軸方向の長さをそれぞれLp及びLnとしたとき、実質的に
αp・Lp=αn・Ln
の関係を満たすことを特徴とする請求項3に記載の光学系。
【請求項5】
前記鏡筒は、前記第1部材としての部分鏡筒を含み、
前記支持機構は、前記部分鏡筒と並列に配置されて前記第1光学部材を支持する前記第2部材としての支持部材を含むことを特徴とする請求項2に記載の光学系。
【請求項6】
前記部分鏡筒及び支持部材の線膨張係数をそれぞれαp1及びαp2、前記部分鏡筒及び前記支持部材の前記第1光学部材の変位に寄与する部分の光軸方向の長さをそれぞれLp1及びLp2としたとき、実質的に
αp1・Lp1=αp2・Lp2
の関係を満たすことを特徴とする請求項5に記載の光学系。
【請求項7】
前記支持部材は前記第1光学部材の周囲の3箇所に配置されることを特徴とする請求項5又は6に記載の光学系。
【請求項8】
前記支持機構は、前記光学系の光軸に交差する第2方向に延びる第1交差部材と、前記第2方向に延びて前記第1の交差部材と前記複数の光学部材のうちの第2光学部材との間に配置される前記第1交差部材とは線膨張係数の異なる第2交差部材とを含み、
前記第1交差部材の熱変形による前記第2光学部材の前記第2方向の変位を相殺するように、前記第2交差部材の熱変形によって前記第2光学部材が前記第2方向に変位することを特徴とする請求項2及び請求項5から7のいずれか一項に記載の光学系。
【請求項9】
前記光学系は、波長100nm以下のEUV光によって照明され、
前記複数の光学部材はそれぞれ反射部材であることを特徴とする請求項1から8のいずれか一項に記載の光学系。
【請求項10】
前記光学系は、第1面のパターンの像を第2面上に形成する投影光学系であることを特徴とする請求項1から9のいずれか一項に記載の光学系。
【請求項11】
前記光学系は、照明光でパターンを照明する照明光学系であることを特徴とする請求項1から9のいずれか一項に記載の光学系。
【請求項12】
露光光でパターンを照明し、前記露光光で前記パターン及び投影光学系を介して基板を露光する露光装置において、
前記投影光学系として請求項10に記載の光学系を用いることを特徴とする露光装置。
【請求項13】
露光光でパターンを照明し、前記露光光で前記パターン及び投影光学系を介して基板を露光する露光装置において、
請求項11に記載の光学系を用いて前記パターンを照明することを特徴とする露光装置。
【請求項14】
請求項12又は13に記載の露光装置を用いて感光性基板を露光することと、
前記露光された感光性基板を処理することと、を含むデバイス製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−56383(P2010−56383A)
【公開日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−221319(P2008−221319)
【出願日】平成20年8月29日(2008.8.29)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】