光学部品の製造方法、撮像装置および撮像装置の製造方法
【課題】光学フィルタがホルダに固定された撮像装置をさらに小型化すること。
【解決手段】光学ウェハ40と、中空3aを有するホルダ3と、撮像素子2とを準備する工程と、光学ウェハ40を、円形のカッター20により分割し、円形を有する光学フィルタ4を形成する工程と、光学フィルタ4をホルダ3に固定する工程と、光学フィルタ4を有するホルダ3を、撮像素子2上に配置する工程と、を有する。
【解決手段】光学ウェハ40と、中空3aを有するホルダ3と、撮像素子2とを準備する工程と、光学ウェハ40を、円形のカッター20により分割し、円形を有する光学フィルタ4を形成する工程と、光学フィルタ4をホルダ3に固定する工程と、光学フィルタ4を有するホルダ3を、撮像素子2上に配置する工程と、を有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学部品を有する撮像装置、およびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の撮像装置100は、図10に示すように撮像素子102が上面に配置された絶縁基板109と、絶縁基板109上に配置された鏡筒108と、レンズ105を有し、鏡筒108に固定された円筒形のホルダ103とを備えている。このような従来の撮像装置において、光学フィルタ104は平面視で四角形状を有しており、円筒形のホルダ103の端部103Aに接合されている(図10の矢印下側、破線内の斜視図参照)。
【0003】
このような従来の撮像装置100は、図11(a)〜(e)に示す工程により製造される。すなわち、接着剤により、四角形状の光学フィルタ104を鏡筒108に接合した後、レンズ105が既に組み込まれた円筒形のホルダ103を、鏡筒108の貫通孔108A内に配置することで製造される。
【特許文献1】特開2003−21668号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の撮像装置100においては、光学フィルタが平面視で四角形状を有するため、小型化が進むほど、一般的に円筒形状を有するホルダに対して十分な接合強度を得ることが困難となるという問題があった。
【0005】
そこで、本発明は、上記問題点に鑑み案出されたものであり、光学的精度に優れた小型の撮像装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
撮像装置に用いられる光学部品の製造方法であり、光学ウエハおよび枠状のホルダを準備する工程と、円形の刃を回転させた状態で前記光学ウエハに押し当てて、前記光学ウエハを円形の光学フィルタに分割する工程と、前記光学フィルタを前記ホルダに固定する工程と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明の撮像装置の製造方法は、光学ウェハを、円形の刃を回転させた状態で分割し、円形の光学フィルタを形成する工程と、円形の光学フィルタを枠状のホルダに固定する工程とを有することにより、精度の高い円形状の光学フィルタを有する小型の撮像装置を製造することができる。
【0008】
すなわち、本発明の撮像装置の製造方法は、回転する刃先により、光学ウェハの表面に深い切込みを形成し、円形の光学フィルタを形成することが可能であるため、光学ウェハを複数個に分割する際の交点クラックなどの不具合が低減される。よって、歩留まりが向上された円形の光学ウェハをホルダに固定することができる。一般的にホルダは円筒形を有するため、このような円形の光学ウェハを用いることで、小型の撮像装置の提供が可能となる。
【0009】
また、本発明の撮像装置は、外周部が粗面化された面を有し、接着剤によりホルダの中空内に保持された円形の光学フィルタを有することにより、ホルダに十分な接着強度で円形の光学フィルタが接着固定される。従って、結像性能が向上され、小型化された撮像装置とすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の撮像装置について図面を参照して詳述する。
【0011】
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1の実施の形態における撮像装置1の構成を示す断面図であり、図2は、図1に示した撮像装置1の一部の分解斜視図を示している。
【0012】
本実施形態の撮像装置1は、図1および図2に示すように、撮像素子2と、中空3aを有するホルダ3と、ホルダ3の中空3a内に固定された光学フィルタ4とを有する。
【0013】
光学フィルタ4は、光が入射される第1の面14と、撮像素子2に対向しており凹凸状態の周囲領域24aを含む第2の面24とを有し、接着剤によりホルダ3の中空3a内に保持されている。また、光学フィルタ4は、平面視で円形の形状を有する。
【0014】
撮像素子2は、CCDやCMOS等の固体撮像素子であり、図1においてベース9の上面中央部に載置されている。ベース9の下面には、撮像素子2と電気的に接続された複数の端子が配置されており、このような複数の端子が、撮像装置1外部の回路と電気的に接続される。
【0015】
ホルダ3は、図1に示すように、ベース9に取り付けられた鏡筒8に挿入され固定されている。図2に斜視図で示すように、ホルダ3は円筒形を有しており、レンズ5の内径R2および光学フィルタ4の内径R3よりも大きい内径R1の中空3aを備えている。
【0016】
また、ホルダ3の中空3aの内面3bには、レンズ5の側面に環状に配置されたスペーサ6と、光学フィルタ4とが、固定されている。ホルダ3の中空3a内において、レンズ5および光学フィルタ4は、図2に示すように光軸方向Aに並んで配置されている。また、撮像素子2も、光軸方向Aに並んで配置されている。
【0017】
レンズ5は、撮像素子2上に被写体を結像させる機能を有する。図1において、レンズ5はプラスチックレンズであり、側面には、スペーサ6が一体的に形成されている。このようなスペーサ6は、ホルダ3の中空3aの内面に接して固定されており、スペーサ6によりレンズ5は位置決めされる。図1において、スペーサ6は、ホルダ3および光学フィルタ4と、接着剤7を介して接着されている。
【0018】
本実施形態において、光学フィルタ4は、光が入射される第1の面14と、撮像素子に対向しており凹凸状態の周囲領域24aを含む第2の面24とを有しており、接着剤によりホルダ3の中空3a内に保持されている。本実施形態の撮像装置は、このような光学フィルタ4を有することにより、光学フィルタ4を強固に保持することができる小型の撮像装置1とすることができる。
【0019】
すなわち、図3に示すように、円形の光学フィルタ4の第2の面24において、表面が粗面化され凹凸状態の周囲領域24aを有することにより、接着剤による光学フィルタ4の固定を強固とすることができる。このため、一般的に円筒形状を有するホルダ3に対して光学フィルタ4を強固に接着し、被写体の像を安定に結像させることが可能な小型の撮像装置1とすることができる。
【0020】
また、図1および図2において、光学フィルタ4の外周部24aが粗面化された第2の面24は、撮像素子2側に配置される。このような配置により、光の乱反射を低減することができ、被写体の像を適切に撮像素子上に結像させることができる。
【0021】
さらに、光学フィルタ4は、図3に示すように円柱形状を有しており、側面34が鏡面とされている。すなわち、側面34は、光学フィルタ4の第2の面24における外周部24aよりも粗度が低い。このように光学フィルタ4の側面34を鏡面とすることにより、光学フィルタ4をホルダ3の中空3a内に組み込む際に、側面34とホルダ3の内周面との擦れにより発生する塵などを低減し、画像欠陥が発生しにくい撮像装置とすることができる。
【0022】
光学フィルタ4が、ガラスやプラスチックなどからなる支持層4aと、フィルタ効果を有する層4bとの多層構造から成る場合、図4に示すように、支持層4a側の第2の面24の外周部24aに粗面化処理が施される。この場合、フィルタ層4bの脆性に起因して生じる生産性等の不具合を低減できる。光学フィルタ4が、ガラス板4aとIRカット層4bとが積層されてなる構造のIRカットフィルタである場合、ガラス板4a側の外周領域を粗面化する。これにより、脆性が高いIRカット層4bに不要なクラックなどが生じず、赤外線領域をカットして、可視域の波長を良好に透過させるIRカットフィルタ4とすることができる。
【0023】
次に本実施の形態における撮像装置1の製造方法を、図5を用いて説明する。
【0024】
(a)中空3aを有するホルダ3を準備する。(図5a)
(b)接着剤7を介して、ホルダ3の中空3a内にスペーサ6を配置し、スペーサ6によりレンズ5を固定する。(図5b)
(c)円形の光学フィルタ4をホルダ3の中空3a内に固定する。(図5c)
(d)光学フィルタ4を有するホルダ3を鏡筒9に固定し、撮像素子2上に配置する。(図5d、e)
以上(a)〜(d)の工程により形成された撮像装置1は、一般的に略円筒形状を有するホルダ3の内部に光学フィルタ4が収容された構造を有するため、小型化された撮像装置1を製造することができる。
【0025】
なお、上記工程(c)における光学フィルタ4のホルダ3への固定は、まず、自重により光学フィルタ4をホルダ3の中空3a内に落とし込んで光学フィルタ4を位置決めし、その後、接着剤により光学フィルタ4とホルダ3とを接着することで固定する。
【0026】
また、工程(d)におけるホルダ3の鏡筒9への固定は、ホルダ3と鏡筒9との互いの中心軸が一致された状態で固定される。
【0027】
ここで、工程(c)においてホルダ3の中空3a内に固定される円形の光学フィルタ4の形成方法について図6を用いて説明する。
【0028】
(ア)テーブル41上に、粘着シート42上に固定された光学シート40を載置する。(図6a)
(イ)光学ウェハ40の表面に、円形の刃を有するカッター20を回転させた状態で押し当てて、連続的に穴を開けて、平面形状が円形の深い溝(スクライブライン)Lを作る。(図6a)
(ウ)スクライブラインLに沿って、光学ウェハ40を複数個切り出す。(図6b)
以上(ア)〜(ウ)の工程により形成された複数の光学フィルタ4は、カッター20を挿入した側の第2の面24の外周部24aが凹凸形状を有しており、粗面化がなされている。このような光学フィルタ4は、ホルダ3に組み込まれた際に、粗面化された領域においてホルダ3と強固に接着される。
【0029】
上述の工程(イ)において形成されるスクライブラインLは、図6に示すように、カッター20の刃先が光学ウェハ40の表面を転がり、光学ウェハ40の表面に圧力が加えられることで形成される。
【0030】
また、工程(イ)において形成されるスクライブラインLは、図6に示すように、複数の円形が互いに接する形状に形成される。このように、複数の円形が互いに一点で当接するように配置されることで、光学ウェハ40の利用されない領域を低減できる。また、光学ウェハ40を円形に切断し複数の光学フィルタ4とするため、光学ウェハ40を矩形状に切断する場合と比べて、スクライブラインL同士の交点において生じるクラックが低減される。このため、光学フィルタ4の歩留まりを向上することができる。
【0031】
また、工程(イ)において用いられる光学ウェハ40をスクライブするカッター20の側面図を図7(a)に示す。図7(b)は、図7(a)に示すカッター20の平面図である。図7(b)に示すように、カッター20は、複数の突起部21と切欠き部22とからなる複数の段差を備えた形状を有している。このようなカッター20が光学ウェハ40の一方の面に挿入され加圧されることで、クラックが少ない円形のスクライブラインLを形成できる。
【0032】
工程(イ)において用いられるカッター20の他の例を図8に示す。図8(a)は、カッター20の側面図であり、図8(b)は、図8(a)に示すカッター20の平面図である。図8に示すカッター20は、側面視において多角形の形状を有しており、複数の直線部23と、複数の直線部23の交点に位置する複数の尖端部34とを有する。図8においては、複数の尖端部34が、カッター20の刃先の複数の突起となる。このようなカッター20が、光学ウェハ40の一方の面に挿入され圧が加えられることで、光学ウェハ40の表面に尖端部34による圧力が加わり、光学フィルタを高精度に形成することができる。
【0033】
光学ウェハ40が、ガラス板やプラスチック板などの支持板40aに、フィルター効果を有する成分からなる層40aが塗布された構造である場合、工程(イ)においてカッター20が進入する側は、光学ウェハ40の支持板40a側とするのが良い。その際、光学フィルタ4の支持層4a側における第2の面24の外周部24aに、粗面化がなされ、凹凸が形成される。例えば、光学ウェハ40がガラス板40aとIRカット層40bとから成る場合、図9(a)に示すように、IRカット層40bを粘着シート42に固定し、光学ウェハ40のガラス板40a側からカッター20を進行してスクライブラインLを形成する。このように、ガラス層40a側からカッター20の刃を進行させることで、IRコート層40bの割れが低減され、光学性能の劣化が低減された複数のIRカットフィルタ4とすることができる。
【0034】
また、図9(b)において、ガラス層40aとIRカット層40bとから成る光学ウェハ40は、カッター20により完全に分断されるのではなく、ガラス層40a側から、光学ウェハ40の厚み方向の途中までスクライブライン(溝)Lが形成される。その後、スクライブラインLに沿って光学ウェハ40を複数に分割することで、複数のIRカットフィルタ4となる。光学ウェハ40を完全に分断するのではなく、粘着シート42に保持した状態で保管できるため、必要に応じてIRカットフィルタ4を切り出すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の撮像装置を模式的に示す断面図である。
【図2】図1に示す撮像装置の一部の分解斜視図である。
【図3】本発明の撮像装置に用いられる光学フィルタの一例を示す斜視図である。
【図4】本発明の撮像装置に用いられ2層から成る光学フィルタの一例を示す斜視図である。
【図5】(a)〜(e)本発明の撮像装置の製造工程を示す工程図である。
【図6】(a)、(b)本発明の撮像装置に用いられる光学フィルタの製造方法を示す工程図である。
【図7】(a)は、光学フィルタの製造工程において用いられるカッターの一例を示す側面図、(b)は、(a)の平面図である。
【図8】(a)は、光学フィルタの製造工程において用いられるカッターの別の例を示す側面図、(b)は、(a)の平面図である。
【図9】(a)(b)2層から成る光学フィルタのスクライブ工程を示す工程図である。
【図10】従来の撮像装置を示す断面図である。
【図11】(a)〜(e)従来の撮像装置の製造工程を示す工程図である。
【符号の説明】
【0036】
1:撮像装置
2:撮像素子
3:ホルダ
4:光学フィルタ
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学部品を有する撮像装置、およびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の撮像装置100は、図10に示すように撮像素子102が上面に配置された絶縁基板109と、絶縁基板109上に配置された鏡筒108と、レンズ105を有し、鏡筒108に固定された円筒形のホルダ103とを備えている。このような従来の撮像装置において、光学フィルタ104は平面視で四角形状を有しており、円筒形のホルダ103の端部103Aに接合されている(図10の矢印下側、破線内の斜視図参照)。
【0003】
このような従来の撮像装置100は、図11(a)〜(e)に示す工程により製造される。すなわち、接着剤により、四角形状の光学フィルタ104を鏡筒108に接合した後、レンズ105が既に組み込まれた円筒形のホルダ103を、鏡筒108の貫通孔108A内に配置することで製造される。
【特許文献1】特開2003−21668号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の撮像装置100においては、光学フィルタが平面視で四角形状を有するため、小型化が進むほど、一般的に円筒形状を有するホルダに対して十分な接合強度を得ることが困難となるという問題があった。
【0005】
そこで、本発明は、上記問題点に鑑み案出されたものであり、光学的精度に優れた小型の撮像装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
撮像装置に用いられる光学部品の製造方法であり、光学ウエハおよび枠状のホルダを準備する工程と、円形の刃を回転させた状態で前記光学ウエハに押し当てて、前記光学ウエハを円形の光学フィルタに分割する工程と、前記光学フィルタを前記ホルダに固定する工程と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明の撮像装置の製造方法は、光学ウェハを、円形の刃を回転させた状態で分割し、円形の光学フィルタを形成する工程と、円形の光学フィルタを枠状のホルダに固定する工程とを有することにより、精度の高い円形状の光学フィルタを有する小型の撮像装置を製造することができる。
【0008】
すなわち、本発明の撮像装置の製造方法は、回転する刃先により、光学ウェハの表面に深い切込みを形成し、円形の光学フィルタを形成することが可能であるため、光学ウェハを複数個に分割する際の交点クラックなどの不具合が低減される。よって、歩留まりが向上された円形の光学ウェハをホルダに固定することができる。一般的にホルダは円筒形を有するため、このような円形の光学ウェハを用いることで、小型の撮像装置の提供が可能となる。
【0009】
また、本発明の撮像装置は、外周部が粗面化された面を有し、接着剤によりホルダの中空内に保持された円形の光学フィルタを有することにより、ホルダに十分な接着強度で円形の光学フィルタが接着固定される。従って、結像性能が向上され、小型化された撮像装置とすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の撮像装置について図面を参照して詳述する。
【0011】
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1の実施の形態における撮像装置1の構成を示す断面図であり、図2は、図1に示した撮像装置1の一部の分解斜視図を示している。
【0012】
本実施形態の撮像装置1は、図1および図2に示すように、撮像素子2と、中空3aを有するホルダ3と、ホルダ3の中空3a内に固定された光学フィルタ4とを有する。
【0013】
光学フィルタ4は、光が入射される第1の面14と、撮像素子2に対向しており凹凸状態の周囲領域24aを含む第2の面24とを有し、接着剤によりホルダ3の中空3a内に保持されている。また、光学フィルタ4は、平面視で円形の形状を有する。
【0014】
撮像素子2は、CCDやCMOS等の固体撮像素子であり、図1においてベース9の上面中央部に載置されている。ベース9の下面には、撮像素子2と電気的に接続された複数の端子が配置されており、このような複数の端子が、撮像装置1外部の回路と電気的に接続される。
【0015】
ホルダ3は、図1に示すように、ベース9に取り付けられた鏡筒8に挿入され固定されている。図2に斜視図で示すように、ホルダ3は円筒形を有しており、レンズ5の内径R2および光学フィルタ4の内径R3よりも大きい内径R1の中空3aを備えている。
【0016】
また、ホルダ3の中空3aの内面3bには、レンズ5の側面に環状に配置されたスペーサ6と、光学フィルタ4とが、固定されている。ホルダ3の中空3a内において、レンズ5および光学フィルタ4は、図2に示すように光軸方向Aに並んで配置されている。また、撮像素子2も、光軸方向Aに並んで配置されている。
【0017】
レンズ5は、撮像素子2上に被写体を結像させる機能を有する。図1において、レンズ5はプラスチックレンズであり、側面には、スペーサ6が一体的に形成されている。このようなスペーサ6は、ホルダ3の中空3aの内面に接して固定されており、スペーサ6によりレンズ5は位置決めされる。図1において、スペーサ6は、ホルダ3および光学フィルタ4と、接着剤7を介して接着されている。
【0018】
本実施形態において、光学フィルタ4は、光が入射される第1の面14と、撮像素子に対向しており凹凸状態の周囲領域24aを含む第2の面24とを有しており、接着剤によりホルダ3の中空3a内に保持されている。本実施形態の撮像装置は、このような光学フィルタ4を有することにより、光学フィルタ4を強固に保持することができる小型の撮像装置1とすることができる。
【0019】
すなわち、図3に示すように、円形の光学フィルタ4の第2の面24において、表面が粗面化され凹凸状態の周囲領域24aを有することにより、接着剤による光学フィルタ4の固定を強固とすることができる。このため、一般的に円筒形状を有するホルダ3に対して光学フィルタ4を強固に接着し、被写体の像を安定に結像させることが可能な小型の撮像装置1とすることができる。
【0020】
また、図1および図2において、光学フィルタ4の外周部24aが粗面化された第2の面24は、撮像素子2側に配置される。このような配置により、光の乱反射を低減することができ、被写体の像を適切に撮像素子上に結像させることができる。
【0021】
さらに、光学フィルタ4は、図3に示すように円柱形状を有しており、側面34が鏡面とされている。すなわち、側面34は、光学フィルタ4の第2の面24における外周部24aよりも粗度が低い。このように光学フィルタ4の側面34を鏡面とすることにより、光学フィルタ4をホルダ3の中空3a内に組み込む際に、側面34とホルダ3の内周面との擦れにより発生する塵などを低減し、画像欠陥が発生しにくい撮像装置とすることができる。
【0022】
光学フィルタ4が、ガラスやプラスチックなどからなる支持層4aと、フィルタ効果を有する層4bとの多層構造から成る場合、図4に示すように、支持層4a側の第2の面24の外周部24aに粗面化処理が施される。この場合、フィルタ層4bの脆性に起因して生じる生産性等の不具合を低減できる。光学フィルタ4が、ガラス板4aとIRカット層4bとが積層されてなる構造のIRカットフィルタである場合、ガラス板4a側の外周領域を粗面化する。これにより、脆性が高いIRカット層4bに不要なクラックなどが生じず、赤外線領域をカットして、可視域の波長を良好に透過させるIRカットフィルタ4とすることができる。
【0023】
次に本実施の形態における撮像装置1の製造方法を、図5を用いて説明する。
【0024】
(a)中空3aを有するホルダ3を準備する。(図5a)
(b)接着剤7を介して、ホルダ3の中空3a内にスペーサ6を配置し、スペーサ6によりレンズ5を固定する。(図5b)
(c)円形の光学フィルタ4をホルダ3の中空3a内に固定する。(図5c)
(d)光学フィルタ4を有するホルダ3を鏡筒9に固定し、撮像素子2上に配置する。(図5d、e)
以上(a)〜(d)の工程により形成された撮像装置1は、一般的に略円筒形状を有するホルダ3の内部に光学フィルタ4が収容された構造を有するため、小型化された撮像装置1を製造することができる。
【0025】
なお、上記工程(c)における光学フィルタ4のホルダ3への固定は、まず、自重により光学フィルタ4をホルダ3の中空3a内に落とし込んで光学フィルタ4を位置決めし、その後、接着剤により光学フィルタ4とホルダ3とを接着することで固定する。
【0026】
また、工程(d)におけるホルダ3の鏡筒9への固定は、ホルダ3と鏡筒9との互いの中心軸が一致された状態で固定される。
【0027】
ここで、工程(c)においてホルダ3の中空3a内に固定される円形の光学フィルタ4の形成方法について図6を用いて説明する。
【0028】
(ア)テーブル41上に、粘着シート42上に固定された光学シート40を載置する。(図6a)
(イ)光学ウェハ40の表面に、円形の刃を有するカッター20を回転させた状態で押し当てて、連続的に穴を開けて、平面形状が円形の深い溝(スクライブライン)Lを作る。(図6a)
(ウ)スクライブラインLに沿って、光学ウェハ40を複数個切り出す。(図6b)
以上(ア)〜(ウ)の工程により形成された複数の光学フィルタ4は、カッター20を挿入した側の第2の面24の外周部24aが凹凸形状を有しており、粗面化がなされている。このような光学フィルタ4は、ホルダ3に組み込まれた際に、粗面化された領域においてホルダ3と強固に接着される。
【0029】
上述の工程(イ)において形成されるスクライブラインLは、図6に示すように、カッター20の刃先が光学ウェハ40の表面を転がり、光学ウェハ40の表面に圧力が加えられることで形成される。
【0030】
また、工程(イ)において形成されるスクライブラインLは、図6に示すように、複数の円形が互いに接する形状に形成される。このように、複数の円形が互いに一点で当接するように配置されることで、光学ウェハ40の利用されない領域を低減できる。また、光学ウェハ40を円形に切断し複数の光学フィルタ4とするため、光学ウェハ40を矩形状に切断する場合と比べて、スクライブラインL同士の交点において生じるクラックが低減される。このため、光学フィルタ4の歩留まりを向上することができる。
【0031】
また、工程(イ)において用いられる光学ウェハ40をスクライブするカッター20の側面図を図7(a)に示す。図7(b)は、図7(a)に示すカッター20の平面図である。図7(b)に示すように、カッター20は、複数の突起部21と切欠き部22とからなる複数の段差を備えた形状を有している。このようなカッター20が光学ウェハ40の一方の面に挿入され加圧されることで、クラックが少ない円形のスクライブラインLを形成できる。
【0032】
工程(イ)において用いられるカッター20の他の例を図8に示す。図8(a)は、カッター20の側面図であり、図8(b)は、図8(a)に示すカッター20の平面図である。図8に示すカッター20は、側面視において多角形の形状を有しており、複数の直線部23と、複数の直線部23の交点に位置する複数の尖端部34とを有する。図8においては、複数の尖端部34が、カッター20の刃先の複数の突起となる。このようなカッター20が、光学ウェハ40の一方の面に挿入され圧が加えられることで、光学ウェハ40の表面に尖端部34による圧力が加わり、光学フィルタを高精度に形成することができる。
【0033】
光学ウェハ40が、ガラス板やプラスチック板などの支持板40aに、フィルター効果を有する成分からなる層40aが塗布された構造である場合、工程(イ)においてカッター20が進入する側は、光学ウェハ40の支持板40a側とするのが良い。その際、光学フィルタ4の支持層4a側における第2の面24の外周部24aに、粗面化がなされ、凹凸が形成される。例えば、光学ウェハ40がガラス板40aとIRカット層40bとから成る場合、図9(a)に示すように、IRカット層40bを粘着シート42に固定し、光学ウェハ40のガラス板40a側からカッター20を進行してスクライブラインLを形成する。このように、ガラス層40a側からカッター20の刃を進行させることで、IRコート層40bの割れが低減され、光学性能の劣化が低減された複数のIRカットフィルタ4とすることができる。
【0034】
また、図9(b)において、ガラス層40aとIRカット層40bとから成る光学ウェハ40は、カッター20により完全に分断されるのではなく、ガラス層40a側から、光学ウェハ40の厚み方向の途中までスクライブライン(溝)Lが形成される。その後、スクライブラインLに沿って光学ウェハ40を複数に分割することで、複数のIRカットフィルタ4となる。光学ウェハ40を完全に分断するのではなく、粘着シート42に保持した状態で保管できるため、必要に応じてIRカットフィルタ4を切り出すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の撮像装置を模式的に示す断面図である。
【図2】図1に示す撮像装置の一部の分解斜視図である。
【図3】本発明の撮像装置に用いられる光学フィルタの一例を示す斜視図である。
【図4】本発明の撮像装置に用いられ2層から成る光学フィルタの一例を示す斜視図である。
【図5】(a)〜(e)本発明の撮像装置の製造工程を示す工程図である。
【図6】(a)、(b)本発明の撮像装置に用いられる光学フィルタの製造方法を示す工程図である。
【図7】(a)は、光学フィルタの製造工程において用いられるカッターの一例を示す側面図、(b)は、(a)の平面図である。
【図8】(a)は、光学フィルタの製造工程において用いられるカッターの別の例を示す側面図、(b)は、(a)の平面図である。
【図9】(a)(b)2層から成る光学フィルタのスクライブ工程を示す工程図である。
【図10】従来の撮像装置を示す断面図である。
【図11】(a)〜(e)従来の撮像装置の製造工程を示す工程図である。
【符号の説明】
【0036】
1:撮像装置
2:撮像素子
3:ホルダ
4:光学フィルタ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮像装置に用いられる光学部品の製造方法であり、
光学ウエハおよび枠状のホルダを準備する工程と、
円形の刃を回転させた状態で前記光学ウエハに押し当てて、前記光学ウエハを円形の光学フィルタに切り出す工程と、
前記光学フィルタを前記ホルダに固定する工程と、
を有する光学部品の製造方法。
【請求項2】
前記光学フィルタを前記ホルダの内面に固定することを特徴とする請求項1記載の光学部品の製造方法。
【請求項3】
ガラス層およびフィルタ層からなる前記光学ウエハを分割する工程において、前記光学ウエハの前記ガラス層側から前記刃を押し当てることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の光学部品の製造方法。
【請求項4】
前記光学ウエハを粘着シートに固定して前記光学ウエハを分割することを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の光学部品の製造方法。
【請求項5】
複数の突起を有する前記刃によって前記光学ウエハを分割することを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか記載の光学部品の製造方法。
【請求項6】
請求項1乃至請求項5のいずれかに記載された方法によって製造された前記光学部品を撮像素子の光軸上に配置する工程を有する撮像装置の製造方法。
【請求項7】
撮像素子と、
前記撮像素子上に配置された枠状のホルダと、
光が入射される第1の面と、前記撮像素子に対向しており凹凸状態の周囲領域を含む第2の面とを有しており、前記ホルダに固定された光学フィルタと、
を備えた撮像装置。
【請求項8】
前記光学フィルタは、前記第1の面側に位置するガラス層と、前記第2の面側に位置するフィルタ層とからなることを特徴とする請求項7記載の撮像装置。
【請求項9】
前記光学フィルタは、前記ホルダの内面に固定されていることを特徴とする請求項7または請求項8に記載の撮像装置。
【請求項1】
撮像装置に用いられる光学部品の製造方法であり、
光学ウエハおよび枠状のホルダを準備する工程と、
円形の刃を回転させた状態で前記光学ウエハに押し当てて、前記光学ウエハを円形の光学フィルタに切り出す工程と、
前記光学フィルタを前記ホルダに固定する工程と、
を有する光学部品の製造方法。
【請求項2】
前記光学フィルタを前記ホルダの内面に固定することを特徴とする請求項1記載の光学部品の製造方法。
【請求項3】
ガラス層およびフィルタ層からなる前記光学ウエハを分割する工程において、前記光学ウエハの前記ガラス層側から前記刃を押し当てることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の光学部品の製造方法。
【請求項4】
前記光学ウエハを粘着シートに固定して前記光学ウエハを分割することを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の光学部品の製造方法。
【請求項5】
複数の突起を有する前記刃によって前記光学ウエハを分割することを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか記載の光学部品の製造方法。
【請求項6】
請求項1乃至請求項5のいずれかに記載された方法によって製造された前記光学部品を撮像素子の光軸上に配置する工程を有する撮像装置の製造方法。
【請求項7】
撮像素子と、
前記撮像素子上に配置された枠状のホルダと、
光が入射される第1の面と、前記撮像素子に対向しており凹凸状態の周囲領域を含む第2の面とを有しており、前記ホルダに固定された光学フィルタと、
を備えた撮像装置。
【請求項8】
前記光学フィルタは、前記第1の面側に位置するガラス層と、前記第2の面側に位置するフィルタ層とからなることを特徴とする請求項7記載の撮像装置。
【請求項9】
前記光学フィルタは、前記ホルダの内面に固定されていることを特徴とする請求項7または請求項8に記載の撮像装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2008−185744(P2008−185744A)
【公開日】平成20年8月14日(2008.8.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−18691(P2007−18691)
【出願日】平成19年1月30日(2007.1.30)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年8月14日(2008.8.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年1月30日(2007.1.30)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】
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