説明

光導波路モジュールおよび電子機器

【課題】光素子と光導波路との光結合損失が小さく、高品質の光通信が可能な光導波路モジュール、かかる光導波路モジュールを備え、高品質の光通信が可能な電子機器を提供すること。
【解決手段】光導波路モジュールは、ミラー16が形成された光導波路1と、その上方に設けられ、横断面積が下方に向かって徐々に拡張する貫通孔24を備えた回路基板2と、回路基板2上に搭載された発光素子3と、を有している。光導波路1は、下方から支持フィルム18、クラッド層11、コア層13、クラッド層12およびカバーフィルム19がこの順で積層されたものであるが、カバーフィルム19の上面には、ミラー16と発光素子3とを繋ぐ光路上の部位に、略球形をなすボールレンズ100が載置されている。このボールレンズ100の一部は、貫通孔24内に挿入されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光導波路モジュールおよび電子機器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、情報化の波とともに、大容量の情報を高速で通信可能な広帯域回線(ブロードバンド)の普及が進んでいる。また、これらの広帯域回線に情報を伝送する装置として、ルーター装置、WDM(Wavelength Division Multiplexing)装置等の伝送装置が用いられている。これらの伝送装置内には、LSIのような演算素子、メモリーのような記憶素子等が組み合わされた信号処理基板が多数設置されており、各回線の相互接続を担っている。
【0003】
各信号処理基板には、演算素子や記憶素子等が電気配線で接続された回路が構築されているが、近年、処理する情報量の増大に伴って、各基板では、極めて高いスループットで情報を伝送することが要求されている。しかしながら、情報伝送の高速化に伴い、クロストークや高周波ノイズの発生、電気信号の劣化等の問題が顕在化しつつある。このため、電気配線がボトルネックとなって、信号処理基板のスループットの向上が困難になっている。また、同様の課題は、スーパーコンピューターや大規模サーバー等でも顕在化しつつある。
【0004】
一方、光搬送波を使用してデータを移送する光通信技術が開発され、近年、この光搬送波を、一地点から他地点に導くための手段として、光導波路が普及しつつある。この光導波路は、線状のコア部と、その周囲を覆うように設けられたクラッド部とを有している。コア部は、光搬送波の光に対して実質的に透明な材料によって構成され、クラッド部は、コア部より屈折率が低い材料によって構成されている。
【0005】
光導波路では、コア部の一端から導入された光が、クラッド部との境界で反射しながら他端に搬送される。光導波路の入射側には、半導体レーザー等の発光素子が配置され、出射側には、フォトダイオード等の受光素子が配置される。発光素子から入射された光は光導波路を伝搬し、受光素子により受光され、受光した光の明滅パターンもしくはその強弱パターンに基づいて通信を行う。
【0006】
このような光導波路により信号処理基板内の電気配線を置き換えられると、前述したような電気配線の問題が解消され、信号処理基板のさらなる高スループット化が可能になると期待されている。
【0007】
ところで、電気配線を光導波路に置き換える際には、電気信号と光信号との相互変換を行うべく、発光素子と受光素子とを備え、これらの間を光導波路で光学的に接続してなる光導波路モジュールが用いられる。
【0008】
例えば、特許文献1には、プリント基板と、プリント基板上に搭載された発光素子と、プリント基板の下面側に設けられた光導波路と、を有する光インターフェースが開示されている。そして、光導波路と発光素子との間は、プリント基板に形成された、光信号を伝送するための貫通孔であるスルーホールを介して光学的に接続されている。
【0009】
しかしながら、上述したような光インターフェースでは、発光素子と光導波路との光結合において、光結合損失が大きいことが課題となっている。具体的には、発光素子の発光部から出射した信号光がスルーホールを通過して光導波路に入射する際、信号光が放射状に発散してしまうため、全ての信号光が光導波路に入射しない。このため、信号光の一部は光通信に寄与せず、光結合損失の増加を招いている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2005−294407号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的は、光素子と光導波路との光結合損失が小さく、高品質の光通信が可能な光導波路モジュール、および、かかる光導波路モジュールを備え、高品質の光通信が可能な電子機器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
このような目的は、下記(1)〜(9)の本発明により達成される。
(1) コア部と、前記コア部の側面を覆うように設けられたクラッド部と、前記コア部の途中または延長線上に設けられ、前記コア部の光路を前記クラッド部の外部へと変換する光路変換部と、を備える光導波路と、
前記クラッド部の外部に設けられた光素子と、
前記光導波路と前記光素子との間に設けられ、前記光路変換部と前記光素子とを繋ぐ光路に沿って形成された貫通孔を備える基板と、を有し、
前記貫通孔は、前記光路に沿って横断面積が徐々に拡張または縮小するよう構成されており、
前記貫通孔内に少なくとも一部が挿入された略球形のボールレンズを有することを特徴とする光導波路モジュール。
【0013】
(2) 前記ボールレンズは、その直径の半分以上が前記貫通孔内に挿入されている上記(1)に記載の光導波路モジュール。
【0014】
(3) 前記貫通孔の2つの開口のうち、面積が小さい側の開口は、前記ボールレンズを通過させることができないよう構成されている上記(1)または(2)に記載の光導波路モジュール。
【0015】
(4) 前記貫通孔は、前記光導波路側に向かって横断面積が連続的に拡張するよう構成されている上記(1)ないし(3)のいずれかに記載の光導波路モジュール。
【0016】
(5) 前記ボールレンズは、接着剤を介して前記光導波路に固定されるとともに、前記貫通孔の内面と接触している上記(4)に記載の光導波路モジュール。
【0017】
(6) 前記貫通孔は、前記光導波路側に向かって横断面積が連続的に縮小するよう構成されている上記(1)ないし(3)のいずれかに記載の光導波路モジュール。
【0018】
(7) 前記光路変換部近傍および前記光素子の受発光部近傍の少なくとも一方に前記ボールレンズの焦点が位置するよう構成されている上記(1)ないし(6)のいずれかに記載の光導波路モジュール。
【0019】
(8) 前記ボールレンズは、樹脂材料、ガラス材料、および結晶材料のいずれかで構成されている上記(1)ないし(7)のいずれかに記載の光導波路モジュール。
【0020】
(9) 上記(1)ないし(8)のいずれかに記載の光導波路モジュールを備えることを特徴とする電子機器。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、ボールレンズを備えることにより、光素子と光導波路との光結合損失を小さくすることができるため、光搬送波のS/N比が高く、高品質の光通信が可能な光導波路モジュールが得られる。
【0022】
また、本発明によれば、このような光導波路モジュールを備えることにより、高品質の光通信が可能な信頼性の高い電子機器が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の光導波路モジュールの第1実施形態を示す斜視図である。
【図2】図1のA−A線断面図である。
【図3】図2の部分拡大図である。
【図4】図2に示す光導波路モジュールの他の構成例を示す縦断面図である。
【図5】貫通孔の他の構成例を示す縦断面図である。
【図6】本発明の光導波路モジュールの第2実施形態を示す縦断面図である。
【図7】図2に示す光導波路モジュールを製造する方法を説明するための図(縦断面図)である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の光導波路モジュールおよび電子機器について添付図面に示す好適実施形態に基づいて詳細に説明する。
【0025】
<光導波路モジュール>
≪第1実施形態≫
まず、本発明の光導波路モジュールの第1実施形態について説明する。
【0026】
図1は、本発明の光導波路モジュールの第1実施形態を示す斜視図、図2は、図1のA−A線断面図、図3は、図2の部分拡大図である。なお、以下の説明では、図2、3の上側を「上」、下側を「下」という。また、各図では、厚さ方向を強調して描いている。
【0027】
図1に示す光導波路モジュール10は、光導波路1と、その上方に設けられた回路基板2(基板)と、回路基板2上に搭載された発光素子3(光素子)と、を有している。
【0028】
光導波路1は、長尺の帯状をなしており、回路基板2および発光素子3は、光導波路1の一方の端部(図2の左側の端部)に設けられている。
【0029】
発光素子3は、電気信号を光信号に変換し、発光部31から光信号を出射して光導波路1に入射させる素子である。図2に示す発光素子3は、その下面に設けられた発光部31と、発光部31に通電する電極32とを有している。発光部31は、図2の下方に向けて光信号を出射する。なお、図2に示す矢印は、発光素子3から出射した信号光の光路の例である。
【0030】
一方、光導波路1のうち、発光素子3の位置に対応してミラー(光路変換部)16が設けられている。このミラー16は、図2の左右方向に延伸する光導波路1の光路を、光導波路1の外部へと変換するものであり、図2では、発光素子3の発光部31と光学的に接続されるよう、光路を90°変換する。このようなミラー16を介することにより、発光素子3から出射した信号光を光導波路1のコア部14に入射させることができる。また、図示しないものの、光導波路1の他方の端部には、受光素子が設けられる。この受光素子も光導波路1と光学的に接続されており、光導波路1に入射された信号光は受光素子に到達する。その結果、光導波路モジュール10において光通信が可能になる。
【0031】
また、回路基板2には、ミラー16と発光部31とを繋ぐ光路が通過する部位に、厚さ方向に貫通する貫通孔24が形成されている。この貫通孔24は、光路に沿ってその横断面積が徐々に拡張または縮小するよう構成されている。そして、貫通孔24内には、一部が挿入されるよう略球形のボールレンズ100が載置されている。
【0032】
このボールレンズ100は、発光部31から光導波路1に入射する信号光を収束光または平行光に変換することにより、信号光の発散を抑制し、ミラー16の有効領域に対してより多くの信号光を到達させる。したがって、このようなボールレンズ100を設けることにより、発光素子3と光導波路1との光結合効率が向上する。
【0033】
以下、光導波路モジュール10の各部について詳述する。
(光導波路)
図1に示す光導波路1は、下方からクラッド層(第1クラッド層)11、コア層13、およびクラッド層(第2クラッド層)12をこの順で積層してなる帯状の積層体を有している。このうちコア層13には、図1に示すように、平面視で直線状をなす1本のコア部14と、このコア部14の側面に隣接する側面クラッド部15とが形成されている。コア部14は、帯状の積層体の長手方向に沿って延伸しており、かつ、積層体の幅のほぼ中央に位置している。なお、図1において、コア部14にはドットを付している。
【0034】
図2に示す光導波路1では、ミラー16を介して入射された光を、コア部14とクラッド部(各クラッド層11、12および各側面クラッド部15)との界面で全反射させ、他方の端部に伝搬させることができる。これにより、出射端で受光した光の明滅パターンおよび光の強弱パターンの少なくとも一方に基づいて光通信を行うことができる。
【0035】
コア部14とクラッド部との界面で全反射を生じさせるためには、界面に屈折率差が存在する必要がある。コア部14の屈折率は、クラッド部の屈折率より大きければよく、その差は特に限定されないものの、クラッド部の屈折率の0.5%以上であるのが好ましく、0.8%以上であるのがより好ましい。一方、上限値は、特に設定されなくてもよいが、好ましくは5.5%程度とされる。屈折率の差が前記下限値未満であると光を伝達する効果が低下する場合があり、前記上限値を超えても、光の伝送効率のそれ以上の増大は期待できない。
【0036】
なお、前記屈折率差とは、コア部14の屈折率をA、クラッド部の屈折率をBとしたとき、次式で表わされる。
屈折率差(%)=|A/B−1|×100
【0037】
また、図1に示す構成では、コア部14は平面視で直線状に形成されているが、途中で湾曲、分岐等していてもよく、その形状は任意である。
【0038】
また、コア部14の横断面形状は、正方形または矩形(長方形)のような四角形であるのが一般的であるが、特に限定されず、真円、楕円のような円形、菱形、三角形、五角形のような多角形であってもよい。
【0039】
コア部14の幅および高さは、特に限定されないが、それぞれ、1〜200μm程度であるのが好ましく、5〜100μm程度であるのがより好ましく、20〜70μm程度であるのがさらに好ましい。
【0040】
コア層13の構成材料は、上記の屈折率差が生じる材料であれば特に限定されないが、具体的には、アクリル系樹脂、メタクリル系樹脂、ポリカーボネート、ポリスチレン、エポキシ系樹脂やオキセタン系樹脂のような環状エーテル系樹脂、ポリアミド、ポリイミド、ポリベンゾオキサゾール、ポリシラン、ポリシラザン、また、ベンゾシクロブテン系樹脂やノルボルネン系樹脂等の環状オレフィン系樹脂のような各種樹脂材料の他、石英ガラス、ホウケイ酸ガラスのようなガラス材料等である。
【0041】
また、これらの中でも特にノルボルネン系樹脂が好ましい。これらのノルボルネン系ポリマーは、例えば、開環メタセシス重合(ROMP)、ROMPと水素化反応との組み合わせ、ラジカルまたはカチオンによる重合、カチオン性パラジウム重合開始剤を用いた重合、これ以外の重合開始剤(例えば、ニッケルや他の遷移金属の重合開始剤)を用いた重合等、公知のすべての重合方法で得ることができる。
【0042】
一方、各クラッド層11、12は、それぞれ、コア層13の下部および上部に位置している。このような各クラッド層11、12は、各側面クラッド部15とともに、コア部14の外周を囲むクラッド部を構成し、これにより光導波路1は信号光を漏出させることなく伝搬させることができる導光路として機能する。
【0043】
クラッド層11、12の平均厚さは、コア層13の平均厚さ(各コア部14の平均高さ)の0.1〜1.5倍程度であるのが好ましく、0.2〜1.25倍程度であるのがより好ましく、具体的には、クラッド層11、12の平均厚さは、特に限定されないが、それぞれ、通常、1〜200μm程度であるのが好ましく、5〜100μm程度であるのがより好ましく、10〜60μm程度であるのがさらに好ましい。これにより、光導波路1が必要以上に大型化(厚膜化)するのを防止しつつ、クラッド層としての機能が好適に発揮される。
【0044】
また、各クラッド層11、12の構成材料としては、例えば、前述したコア層13の構成材料と同様の材料を用いることができるが、特にノルボルネン系ポリマーが好ましい。
【0045】
また、コア層13の構成材料およびクラッド層11、12の構成材料を選択する場合、両者の間の屈折率差を考慮して材料を選択すればよい。具体的には、コア層13とクラッド層11、12との境界において光を確実に全反射させるため、コア層13の構成材料の屈折率がクラッド層11、12の屈折率に比べ十分に大きくなるように材料を選択すればよい。これにより、光導波路1の厚さ方向において十分な屈折率差が得られ、コア部14からクラッド層11、12に光が漏れ出るのを抑制することができる。
【0046】
なお、光の減衰を抑制する観点からは、コア層13の構成材料とクラッド層11、12の構成材料との密着性(親和性)が高いことも重要である。
【0047】
また、図2に示す光導波路1は、さらに、クラッド層11の下面に設けられた支持フィルム18およびクラッド層12の上面に設けられたカバーフィルム19を有している。これらの支持フィルム18およびカバーフィルム19は、必要に応じて設ければよく、省略されてもよい。
【0048】
このような支持フィルム18およびカバーフィルム19の構成材料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレン、ポリプロピレンのようなポリオレフィン、ポリイミド、ポリアミド等の各種樹脂材料等が挙げられる。
【0049】
また、支持フィルム18およびカバーフィルム19の各平均厚さは、特に限定されないが、5〜200μm程度であるのが好ましく、10〜100μm程度であるのがより好ましい。これにより、支持フィルム18およびカバーフィルム19は、適度な剛性を有するものとなるため、光導波路1の柔軟性を阻害し難くなる。また、カバーフィルム19は、光透過を阻害し難くなる。
【0050】
なお、支持フィルム18とクラッド層11との間、および、カバーフィルム19とクラッド層12との間は、接着または接合されているが、その方法としては、熱圧着、接着剤または粘着剤による接着等が挙げられる。
【0051】
このうち、接着層としては、例えば、アクリル系接着剤、ウレタン系接着剤、シリコーン系接着剤の他、各種ホットメルト接着剤(ポリエステル系、変性オレフィン系)等が挙げられる。また、特に耐熱性の高いものとして、ポリイミド、ポリイミドアミド、ポリイミドアミドエーテル、ポリエステルイミド、ポリイミドエーテル等の熱可塑性ポリイミド接着剤が好ましく用いられる。このような材料で構成された接着層は、比較的柔軟性に富んでいるため、光導波路1の形状が変化したとしても、その変化に自在に追従することができる。その結果、形状変化に伴う剥離を確実に防止し得るものとなる。
【0052】
このような接着層の平均厚さは、特に限定されないが、1〜100μm程度であるのが好ましく、5〜60μm程度であるのがより好ましい。
【0053】
また、前述したように、光導波路1の途中には、ミラー16が設けられている(図2参照)。このミラー16は、光導波路1の途中に掘り込み加工を施し、これにより得られた空間(空洞)の内壁面で構成される。この内壁面の一部は、コア部14を斜め45°に横切る平面であり、この平面がミラー16となる。ミラー16を介して、光導波路1と発光部31とが光学的に接続されている。
【0054】
なお、ミラー16には、必要に応じて反射膜を成膜するようにしてもよい。この反射膜としては、Au、Ag、Al等の金属膜が好ましく用いられる。
【0055】
また、ミラー16は、例えばコア部14の光軸を90°曲げる屈曲導波路等の光路変換手段で代替することもできる。
【0056】
また、クラッド層12の上面には、ボールレンズ100が載置されている。なお、このボールレンズ100については後に詳述する。
【0057】
(発光素子)
発光素子3は、前述したように、下面に発光部31と電極32とを有するものであるが、具体的には、面発光レーザー(VCSEL)のような半導体レーザーや、発光ダイオード(LED)等の発光素子である。
【0058】
一方、図1、2に示す光導波路モジュール10の回路基板2上には、発光素子3に隣り合うように半導体素子4が搭載されている。半導体素子4は、発光素子3の動作を制御する素子であり、下面には電極42を有している。かかる半導体素子4としては、例えば、ドライバーICや、トランスインピーダンスアンプ(TIA)、リミッティングアンプ(LA)等を含むコンビネーションICの他、各種LSI、RAM等が挙げられる。
【0059】
なお、発光素子3と半導体素子4は、後述する回路基板2により電気的に接続されており、半導体素子4により発光素子3の発光パターンおよび発光の強弱パターンを制御し得るよう構成されている。
【0060】
(回路基板)
光導波路1の上方には、回路基板2が設けられており、回路基板2の下面と光導波路1の上面とは接着層5を介して接着されている。
【0061】
回路基板2は、図2に示すように、絶縁性基板21と、その下面に設けられた導体層22と、上面に設けられた導体層23と、を有している。回路基板2上に搭載された発光素子3と半導体素子4とは、導体層23を介して電気的に接続されている。
【0062】
ここで、絶縁性基板21には、発光素子3の発光部31と光導波路1のミラー16とを繋ぐ光路に沿って形成された貫通孔24が形成されている。貫通孔24は、前記光路に沿って絶縁性基板21を厚さ方向に貫通するよう構成されている。
【0063】
また、図3に示す絶縁性基板21おいて貫通孔24は、その両開口部の形状が平面視で円形をなしており、かつ、下方に向かうにつれて横断面積が徐々に(連続的に)拡張するテーパー状をなしている。換言すれば、貫通孔24は、円錐台形状をなしている。
【0064】
なお、貫通孔24の両開口部の形状は特に限定されず、真円、楕円、長円等の円形のほか、三角形、四角形、六角形等の多角形等であってもよい。
【0065】
また、貫通孔24の形状は、その横断面積が連続的に変化するテーパー状であってもよいが、横断面積が段階的に(不連続的に)変化する形状であってもよい。すなわち、横断面積が徐々に拡張する形状とは、拡張の仕方が連続的である形状および不連続的である形状の双方を指す。
このような貫通孔24には、後述する略球状のボールレンズが挿入される。
【0066】
また、絶縁性基板21は可撓性を有しているのが好ましい。可撓性を有する絶縁性基板21は、回路基板2と光導波路1との密着性向上に寄与するとともに、形状変化に対する優れた追従性を有するものとなる。その結果、光導波路1が可撓性を有している場合には、光導波路モジュール10全体も可撓性を有するものとなり、実装性に優れたものとなる。また、光導波路モジュール10を湾曲させた際には、絶縁性基板21と導体層22、23との剥離や、回路基板2と光導波路1との剥離を確実に防止することができ、剥離に伴う絶縁性の低下や伝送効率の低下を防止する。
【0067】
絶縁性基板21のヤング率(引張弾性率)は、一般的な室温環境下(20〜25℃前後)で1〜20GPa程度であるのが好ましく、2〜12GPa程度であるのがより好ましい。ヤング率の範囲がこの程度であれば、絶縁性基板21は、上述したような効果を得る上で十分な可撓性を有するものとなる。
【0068】
このような絶縁性基板21を構成する材料としては、例えば、ポリイミド系樹脂、ポリアミド系樹脂、エポキシ系樹脂、各種ビニル系樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂等のポリエステル系樹脂等の各種樹脂材料が挙げられるが、中でもポリイミド系樹脂を主材料とするものが好ましく用いられる。ポリイミド系樹脂は、耐熱性が高く、優れた透光性および可撓性を有していることから、絶縁性基板21の構成材料として特に好適である。
【0069】
なお、絶縁性基板21の具体例としては、ポリエステル銅張フィルム基板、ポリイミド銅張フィルム基板、アラミド銅張フィルム基板等に使用されるフィルム基板が挙げられる。
【0070】
また、絶縁性基板21の平均厚さは、5〜50μm程度であるのが好ましく、10〜40μm程度であるのがより好ましい。このような厚さの絶縁性基板21であれば、その構成材料によらず、十分な可撓性を有するものとなる。また、絶縁性基板21の厚さが前記範囲内であれば、光導波路モジュール10の薄型化が図られる。
【0071】
さらには、絶縁性基板21の厚さが前記範囲内であれば、信号光の発散によって伝送効率が低下するのを防止することができる。例えば、発光素子3の発光部31から出射した信号光は、一定の出射角で発散しつつ回路基板2を通過してミラー16に入射するが、発光部31とミラー16との離間距離が大き過ぎる場合、信号光が発散し過ぎてしまい、ミラー16に到達する光量が減少するおそれがある。これに対し、絶縁性基板21の平均厚さを前記範囲内とすることにより、発光部31とミラー16との離間距離を確実に小さくすることができるため、信号光は広く発散してしまう前にミラー16に到達する。その結果、ミラー16に到達する光量の減少を防止し、発光素子3と光導波路1との光結合に伴う損失(光結合損失)を十分に低下させることができる。
【0072】
なお、絶縁性基板21は、1枚の基板であってもよいが、複数層の基板を積層してなる多層基板(ビルドアップ基板)であってもよい。この場合、多層基板の層間には、パターニングされた導体層を含み、この導体層には任意の電気回路が形成されていてもよい。これにより、絶縁性基板21中に高密度の電気回路を構築することができる。
【0073】
また、絶縁性基板21には、厚さ方向に貫通する1つまたは複数の貫通孔が設けられていてもよく、これらの貫通孔には導電性材料が充填されているか、または、貫通孔の内壁面に沿って導電性材料の被膜が成膜されていてもよい。この導電性材料は、絶縁性基板21の両面の間を電気的に接続する貫通ビアとなる。
【0074】
また、絶縁性基板21に設けられた導体層22および導体層23は、それぞれ導電性材料で構成されている。各導体層22、23には、所定のパターンが形成されており、このパターンは配線として機能する。絶縁性基板21に貫通ビアが形成されている場合、貫通ビアと各導体層22、23とが接続され、これにより、導体層22と導体層23とが一部で導通する。
【0075】
各導体層22、23に用いられる導電性材料としては、例えば、アルミニウム(Al)、銅(Cu)、金(Au)、銀(Ag)、白金(Pt)、ニッケル(Ni)、タングステン(W)、モリブデン(Mo)等の各種金属材料が挙げられる。
【0076】
また、各導体層22、23の平均厚さは、配線に要求される導電率等に応じて適宜設定されるものの、例えば1〜30μm程度とされる。
【0077】
また、各導体層22、23に形成される配線パターンの幅も、配線に要求される導電率や各導体層22、23の厚さ等に応じて適宜設定されるものの、例えば2〜1000μm程度であるのが好ましく、5〜500μm程度であるのがより好ましい。
【0078】
なお、このような配線パターンは、例えば、一旦全面に形成された導体層をパターニングする(例えば、銅張基板の銅箔を部分的にエッチングする)方法、別途用意した基板上にあらかじめパターニングされた導体層を転写する方法等により形成される。
【0079】
また、図3に示す各導体層22、23は、発光素子3の発光部31とミラー16との間の光路に干渉しないよう設けられた開口部221、231を有している。その結果、開口部221には導体層22の厚さに相当する高さの空隙222が、開口部231には導体層23の厚さに相当する高さの空隙232がそれぞれ生じている。
【0080】
また、発光素子3や半導体素子4と導体層23との間は、各種ハンダ、各種ろう材等により電気的かつ機械的に接続される。
【0081】
ハンダおよびろう材としては、例えば、Sn−Pb系の鉛ハンダの他、Sn−Ag−Cu系、Sn−Zn−Bi系、Sn−Cu系、Sn−Ag−In−Bi系、Sn−Zn−Al系の各種鉛フリーハンダ、JISに規定された各種低温ろう材等が挙げられる。
【0082】
なお、発光素子3や半導体素子4としては、例えばBGA(Ball Grid Array)タイプやLGA(Land Grid Array)タイプ等のパッケージ仕様の素子が用いられる。
【0083】
また、導体層23とハンダ(またはろう材)とが接触することにより、導体層23を構成する金属成分の一部がハンダ側に溶解する現象が生じるおそれがある。この現象は、特に銅製の導体層23に対して生じる場合が多いことから「銅食われ」と呼ばれている。銅食われが発生すると、導体層23が薄くなったり、欠損したりする等の不具合を招き、導体層23の機能を損なうおそれがある。
【0084】
そこで、ハンダと接する導体層23の表面には、あらかじめ、ハンダの下地として銅食われ防止膜(下地層)を形成しておくのが好ましい。この銅食われ防止膜の形成により、銅食われが防止され、導体層23の機能を長期にわたって維持することができる。
【0085】
銅食われ防止膜の構成材料としては、例えば、ニッケル(Ni)、金(Au)、白金(Pt)、スズ(Sn)、パラジウム(Pd)等が挙げられ、銅食われ防止膜は、これらの金属組成1種からなる単層であってもよく、2種以上を含む複合層(例えば、Ni−Au複合層、Ni−Sn複合層等)であってもよい。
【0086】
銅食われ防止膜の平均厚さは、特に限定されないが、0.05〜5μm程度であるのが好ましく、0.1〜3μm程度であるのがより好ましい。これにより、銅食われ防止膜そのものの電気抵抗を抑制しつつ、十分な銅食われ防止作用を発現させることができる。
【0087】
なお、発光素子3や半導体素子4と導体層23との電気的接続は、上述したような接続方法の他、ワイヤーボンディング、異方性導電フィルム(ACF)、異方性導電ペースト(ACP)等を用いた製造方法で行われてもよい。
【0088】
このうち、ワイヤーボンディングによれば、発光素子3や半導体素子4と回路基板2との間で熱膨張差が生じたとしても、柔軟性の高いボンディングワイヤーによって熱膨張差を吸収することができるので、接続部に対する応力集中が防止される。
【0089】
また、回路基板2と光導波路1との間は接着層5により接着されているが、接着層5を構成する接着剤としては、例えば、エポキシ系接着剤、アクリル系接着剤、ウレタン系接着剤、シリコーン系接着剤の他、各種ホットメルト接着剤(ポリエステル系、変性オレフィン系)等が挙げられる。また、特に耐熱性の高いものとして、ポリイミド、ポリイミドアミド、ポリイミドアミドエーテル、ポリエステルイミド、ポリイミドエーテル等の熱可塑性ポリイミド接着剤が挙げられる。
【0090】
以上のような光導波路モジュール10では、発光素子3の発光部31から出射した信号光が、空隙232、貫通孔24に一部が挿入されたボールレンズ100、空隙222、および接着層5を通過し、光導波路1に入射される。
【0091】
なお、光導波路モジュール10は、光導波路1の他方の端部にも、回路基板2を有していてもよく、他の光学部品との接続を担うコネクター等を有していてもよい。
【0092】
図4は、図2に示す光導波路モジュールの他の構成例を示す縦断面図である。
図4(a)に示す光導波路モジュール10では、光導波路1の他方の端部(図2、4の右側の端部)の上面にも回路基板2が設けられている。また、この回路基板2上には、受光素子7と半導体素子4とが搭載されている。また、光導波路1には、受光素子7の受光部71の位置に対応してミラー16が形成されている。
【0093】
このような光導波路モジュール10では、光導波路1からミラー16を介して出射した信号光が、受光素子7の受光部71に到達すると、光信号から電気信号への変換がなされる。このようにして光導波路1の両端部間における光通信が行われる。
【0094】
一方、図4(b)に示す光導波路モジュール10では、光導波路1の他方の端部に、他の光学部品との接続を担うコネクター20が設けられている。コネクター20としては、光ファイバーとの接続に用いられるPMTコネクター等が挙げられる。コネクター20を介して光導波路モジュール10を光ファイバーに接続することで、より長距離の光通信が可能になる。
【0095】
なお、図4では、光導波路1の一方の端部と他方の端部とで1対1の光通信を行う場合について説明したが、光導波路1の他方の端部には、光路を複数に分岐することができる光スプリッターを接続するようにしてもよい。
【0096】
(ボールレンズ)
ここで、光導波路1の表面(クラッド層12の上面)上のうち、ミラー16と発光部31とを繋ぐ光路が通過する部位には、前述したように、ボールレンズ100が、貫通孔24内にその一部が挿入された状態で載置されている。
【0097】
このようなボールレンズ100がない場合、発光部31から出射した信号光が光導波路1に入射するまでの間で、信号光が発散し、ミラー16の有効領域からはみ出てしまう信号光が発生する。このとき、はみ出た信号光は損失となり、ミラー16で反射される信号光の光量が少なくなるため、光信号のS/N比が低下してしまう。
【0098】
これに対し、ボールレンズ100を設けることにより、光導波路1の表面に信号光の収束(収斂)機能が付与される。その結果、より多くの信号光をミラー16に入射させることにより信号光の損失の発生が抑制され、光通信のS/N比を高めることができる。そして、信頼性が高く高品質な光通信を提供し得る光導波路モジュール10が得られる。
【0099】
ボールレンズ100は、透明な材料で構成された略球形をなすレンズである。ボールレンズ100の形状は、真球の他、真球に類似した球形や楕円球等であってもよい。
【0100】
また、ボールレンズ100の表面には、必要に応じて、ボールレンズ100に入射する信号光の反射を防止する反射防止処理が施されていてもよい。かかる反射防止処理としては、例えば、ボールレンズ100の表面に微小な凹凸を形成する処理、ボールレンズ100の表面に反射防止膜を成膜する処理等が挙げられる。
【0101】
このうち、ボールレンズ100の表面に微小な凹凸を形成する場合、この凹凸のピッチや深さ(高さ)は、ボールレンズ100に入射する信号光の波長以下であるのが好ましい。凹凸のピッチや深さ(高さ)を信号光の波長以下にすれば、この領域の屈折率を、空気の屈折率とボールレンズ100の屈折率との中間の値としてみなすことができる。その結果、ボールレンズ100に入射する信号光の反射が抑制され、信号光の入射効率が向上する。
【0102】
なお、発光素子3から出射される信号光の波長は、一般的に150〜1600nm程度であるので、それに応じて凹凸のピッチや深さ(高さ)の上限が設定される。
【0103】
一方、凹凸のピッチや深さ(高さ)の下限は、特に限定されないが、凹凸の形成容易性や長期信頼性等の観点から20nm程度とされる。
【0104】
また、反射防止膜は、例えば、ボールレンズ100に入射する信号光の波長をλとしたとき、λ/4の奇数倍の光学的膜厚を有する薄膜で構成される。反射防止膜は、1層に限らず、2層以上のマルチコーティングであってもよい。
【0105】
透明な材料としては、例えば、アクリル系樹脂、メタクリル系樹脂、ポリカーボネート、ポリスチレン、エポキシ系樹脂やオキセタン系樹脂のような環状エーテル系樹脂、ポリアミド、ポリイミド、ポリベンゾオキサゾール、ポリシラン、ポリシラザン、ベンゾシクロブテン系樹脂やノルボルネン系樹脂等の環状オレフィン系樹脂のような各種樹脂材料の他、石英ガラス、ホウケイ酸ガラスのような各種ガラス材料、サファイア、水晶のような各種結晶材料等が挙げられる。
【0106】
ところで、ボールレンズ100は、貫通孔24の下方から、その直径の半分以上が貫通孔24内に挿入されている。これにより、ボールレンズ100は、貫通孔24内に確実に固定されることとなり、光導波路モジュール10の信頼性が向上する。
【0107】
具体的には、ボールレンズ100の直径の50〜95%が挿入されているのが好ましく、60〜90%が挿入されているのがより好ましい。これにより、ボールレンズ100は、貫通孔24内に確実に固定されるとともに、一部が突出することによってボールレンズ100と光導波路1との機械的および光学的な接続が確実になされる。その結果、発光素子3と光導波路1との光結合効率が向上する。
【0108】
また、図3に示す貫通孔24は、前述したようにテーパー状をなしている。このため、貫通孔24の下方からボールレンズ100を挿入すると、ボールレンズ100の直径と貫通孔24の内径とが一致する箇所において、ボールレンズ100と貫通孔24の内面とが接触し、この箇所においてボールレンズ100が固定されることとなる。したがって、ボールレンズ100との接触位置を踏まえて貫通孔24の形状を適宜設定することにより、ボールレンズ100の固定位置を厳密に制御することができる。
【0109】
なお、貫通孔24が円錐台形状、角錐台形状のようなテーパー状である場合、絶縁性基板21の厚さ方向および面方向の双方において、ボールレンズ100の固定位置を一義的に決定することができる。したがって、貫通孔24の形状および形成位置を正確に設定しさえすれば、ボールレンズ100の固定位置の再現性を確実に高めることができる。
【0110】
また、この場合、貫通孔24の内面は、必然的に、ボールレンズ100の中心方向に向かって押圧する力を付与することとなる。このため、ボールレンズ100が変形し難く、かつ位置ズレを伴わない確実な固定が可能になる。
【0111】
また、貫通孔24の平面視形状が円形である場合、ボールレンズ100と貫通孔24の内面との接触部は、環状をなす領域となる。これにより、ボールレンズ100に対して貫通孔24の内面が偏りなく接触することになるので、ボールレンズ100がより確実に固定される。
【0112】
なお、図3に示す貫通孔24の場合、ボールレンズ100の上方において、上記環状をなす領域と貫通孔24の内面とが接触し、ボールレンズ100の下方においては、接着層5と接触しているため、この2点で支持されることによりボールレンズ100が固定されている。このような固定方法であれば、ボールレンズ100を上下から挟み込むようにしてボールレンズ100を確実に固定することができる。さらには、ボールレンズ100と光導波路1との間が接着層5によって機械的および光学的に接続されるため、ボールレンズ100により収束された信号光の光導波路1に対する入射効率が特に向上する。
【0113】
ボールレンズ100に対する支持点の数は、特に限定されず、3点以上であってもよい。
【0114】
また、貫通孔24の全体がテーパー状をなしていなくても、一部がテーパー状であればよい。
【0115】
また、テーパー状をなす貫通孔24の内面が、発光素子3の発光部31と光導波路1のミラー16とを繋ぐ光路に対してなす角度は、5〜85°程度であるのが好ましく、10〜80°程度であるのがより好ましい。これにより、ボールレンズ100を絶縁性基板21の厚さ方向および面方向の双方においてより確実に固定することができる。
【0116】
ここで、貫通孔24のうち、上方の開口242は、下方の開口241より面積が小さく、かつ、ボールレンズ100を通過させることができないよう構成されている。これにより貫通孔24では、挿入されたボールレンズ100が貫通孔24の途中で内面と確実に接触するため、ボールレンズ100の位置を一義的に決定することができ、かつ、ボールレンズ100を確実に固定することができる。また、光導波路モジュール10の厚さは、挿入された分だけ薄くなる。したがって、ボールレンズ100を固定しつつ、光導波路モジュール10の薄型化を図ることができる。
【0117】
図3に示す貫通孔24の場合、貫通孔24は円錐台形状をなしているため、開口241および開口242はそれぞれ円形をなしている。したがって、下方の開口241の内径をL1とし、上方の開口242の内径をL2とし、ボールレンズ100の直径(最大直径)をDとし、貫通孔24の中心軸(発光素子3の発光部31とミラー16とを繋ぐ光路)に対して貫通孔24の内面がなす角度をθとしたとき、貫通孔24では、L2<Dcosθの関係と、D/cosθ<L1の関係の双方が成立している。貫通孔24がこのような関係式を満たすことにより、ボールレンズ100は貫通孔24に対して直径Dの半分以上が挿入された状態で、かつ、貫通孔24の内面に接した状態をとることができる。その結果、ボールレンズ100の確実な固定と光導波路モジュール10の薄型化とを高度に両立することができる。
【0118】
また、ボールレンズ100の直径Dは、ミラー16の有効領域の大きさや発光素子3の開口数(NA:numerical aperture)等に応じて適宜設定されるものの、好ましくは10μm〜1mm程度とされ、より好ましくは30μm〜500μm程度とされる。
【0119】
さらに、ボールレンズ100の直径Dは、発光素子3の発光部31の直径(受光素子7の受光部71の直径)の1.5〜6倍程度であるのが好ましく、2〜5倍程度であるのがより好ましい。
【0120】
また、ボールレンズ100は、その焦点が、ミラー16近傍に位置するよう構成されているのが好ましい。このような構成のボールレンズ100は、発光素子3の発光部31から放射状に出射した信号光を、平行光または収束光に変換し、それ以上発散しないように光路変換することができる。その結果、信号光の発散に伴う損失を確実に抑制することができる。
【0121】
また、ボールレンズ100は、その焦点が、発光素子3の発光部31近傍に位置するよう構成されているのが好ましい。このような構成のボールレンズ100は、ミラー16からはみ出る信号光を減らし、信号光の光結合損失を確実に抑えることができる。
【0122】
以上、貫通孔24内にボールレンズ100の一部が挿入されることで、光導波路モジュール10の厚さが著しく厚くなるのを避けつつ(比較的嵩高いボールレンズ100の高さを相殺しつつ)、ボールレンズ100の位置を一義的に決定し、その位置で確実に固定することができる。これにより、ボールレンズ100と発光素子3およびミラー16との位置関係を設計通りに再現することができ、光結合効率を確実に高めることができる。換言すれば、発光素子3とミラー16との間で開口数のマッチングを図ることができる。その結果、光通信のS/N比を高めることができ、信頼性が高く高品質な光通信を提供し得る光導波路モジュール10が得られる。
【0123】
また、ボールレンズ100は、その他の球面を利用したレンズの中でも最も焦点距離が短い。このため、貫通孔24内にボールレンズ100を挿入することによってボールレンズ100と発光素子3およびミラー16との離間距離が短くなったとしても、ボールレンズ100の焦点を目的とする位置に合わせ易くなり、信号光を確実に収束することができる。
【0124】
加えて、ボールレンズ100は、製造が容易であり、かつ安価であるとともに、その形状に基づく流動性の高さゆえ、実装作業も比較的容易である。このため、製造バラツキに伴う歩留まりの低下が抑えられ、個体差の少ない光導波路モジュール10の製造が可能になる。
【0125】
なお、必要に応じて、発光素子3と回路基板2との隙間、空隙232、貫通孔24のボールレンズ100より上方の領域、貫通孔24のボールレンズ100より下方の領域、および空隙222の少なくとも1つには、封止材を充填するようにしてもよい。また、半導体素子4と回路基板2との隙間にも封止材を充填するようにしてもよい。
【0126】
これらの充填材は、発光素子3や半導体素子4の耐候性(耐熱性、耐湿性、気圧変化等)を高めるとともに、振動、外力、異物付着等から発光素子3および半導体素子4を確実に保護することができる。
【0127】
封止材としては、例えば、エポキシ系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、シリコーン系樹脂等が挙げられる。
【0128】
また、上述したようなボールレンズ100は、受光素子側に設けるようにしてもよい。図4(a)には、受光素子7側にボールレンズ100を設けた場合を示している。図4(a)の受光素子7側に設けられたボールレンズ100は、回路基板2に形成された貫通孔24内にその一部が挿入された状態で載置されている。
【0129】
このような光導波路モジュール10において、光導波路1を伝搬し、ミラー16で反射された信号光が受光素子7の受光部71に入射する際、信号光が発散してしまい、受光部71からはみ出る信号光を減らすことができる。その結果、光導波路モジュール10の受光素子側における光結合損失を確実に抑えることができる。
また、貫通孔24は、図5に示すような縦断面形状をなすものであってもよい。
【0130】
図5は、貫通孔の他の構成例を示す縦断面図である。
このうち、図5(a)、(b)に示す貫通孔24は、一部のみがテーパー状になっているもの、図5(c)、(d)に示す貫通孔24は、内面の傾斜角度が一部で異なっているもの、図5(e)、(f)に示す貫通孔24は、内面が湾曲しているものである。
【0131】
≪第2実施形態≫
次に、本発明の光導波路モジュールの第2実施形態について説明する。
図6は、本発明の光導波路モジュールの第2実施形態を示す縦断面図である。
【0132】
以下、第2実施形態について説明するが、第1実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。なお、図6において、第1実施形態と同様の構成部分については、先に説明したのと同様の符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0133】
図6に示す光導波路モジュール10は、貫通孔24の形状が図3に示すものと上下反対であって、貫通孔24の上方の開口から、貫通孔24内に一部が挿入されるようにボールレンズ100が載置されている以外は、第1実施形態と同様である。
【0134】
すなわち、図6に示す光導波路モジュール10では、貫通孔24の形状が光導波路1側に向かって横断面積が連続的に縮小するよう構成されている。そして、図3の場合と同様、貫通孔24内にボールレンズ100の一部が挿入されることで、光導波路モジュール10の厚さが著しく厚くなるのを避けつつ、ボールレンズ100の位置を一義的に決定し、その位置で確実に固定することができる。
【0135】
また、図6の場合、ボールレンズ100は、その上部が突出することによって発光素子3とボールレンズ100との光学的な接続が確実になされる。特に、発光素子3の発光部31近傍にボールレンズ100を配置することにより、発光部31から出射した信号光は、それが広く発散してしまう前にボールレンズ100に入射し、収束されることになるため、例えば高開口数の発光素子3を用いる場合に本実施形態は好適である。
【0136】
<光導波路モジュールの製造方法>
次に、上述したような光導波路モジュールを製造する方法の一例について説明する。
【0137】
図1に示す光導波路モジュール10は、光導波路1、回路基板2、ボールレンズ100、発光素子3および半導体素子4を用意し、これらを実装することで製造される。
【0138】
このうち、回路基板2は、絶縁性基板21の両面を覆うように導体層を形成した後、不要部分を除去(パターニング)し、配線パターンを含む導体層22、23を残存させることで形成される。
【0139】
導体層の製造方法としては、例えば、プラズマCVD、熱CVD、レーザーCVDのような化学蒸着法、真空蒸着、スパッタリング、イオンプレーティング等の物理蒸着法、電解めっき、無電解めっき等のめっき法、溶射法、ゾル・ゲル法、MOD法等が挙げられる。
【0140】
また、導体層のパターニング方法としては、例えばフォトリソグラフィー法とエッチング法とを組み合わせた方法が挙げられる。
【0141】
次に、光導波路の製造方法の一例について説明する。
光導波路1は、下方から支持フィルム18、クラッド層11、コア層13、クラッド層12およびカバーフィルム19をこの順で積層してなる積層体(母材)と、この積層体の一部を除去することで形成されたミラー16と、を有している。
【0142】
以下、光導波路の製造方法を、[1]積層体を形成する工程、[2]ミラー16を形成する工程、に分けて説明する。
【0143】
[1]積層体(母材)のうち、クラッド層11、コア層13およびクラッド層12の3層は、クラッド層11、コア層13およびクラッド層12を順次成膜して形成する方法、あるいは、クラッド層11、コア層13およびクラッド層12をあらかじめ基材上に成膜した後、それぞれを基板から剥離して貼り合わせる方法等により製造される。
【0144】
一方、支持フィルム18およびカバーフィルム19は、上述したようにして製造された3層に対して貼り合わせる方法により製造される。
【0145】
クラッド層11、コア層13およびクラッド層12の各層は、それぞれ形成用の組成物を基材上に塗布して液状被膜を形成した後、液状被膜を均一化するとともに揮発成分を除去することにより形成される。
【0146】
塗布方法としては、例えば、ドクターブレード法、スピンコート法、ディッピング法、テーブルコート法、スプレー法、アプリケーター法、カーテンコート法、ダイコート法等の方法が挙げられる。
【0147】
また、液状被膜中の揮発成分を除去するには、液状被膜を加熱したり、減圧下に置いたり、あるいは乾燥ガスを吹き付けたりする方法が用いられる。
【0148】
なお、各層の形成用組成物としては、例えば、クラッド層11、コア層13またはクラッド層12の構成材料を各種溶媒に溶解または分散してなる溶液(分散液)が挙げられる。
【0149】
ここで、コア層13中にコア部14と側面クラッド部15とを形成する方法としては、例えば、フォトブリーチング法、フォトリソグラフィー法、直接露光法、ナノインプリンティング法、モノマーディフュージョン法等が挙げられる。これらの方法はいずれも、コア層13の一部領域の屈折率を変化させる、あるいは、一部領域の組成を異ならせることにより、相対的に屈折率の高いコア部14と相対的に屈折率の低い側面クラッド部15とを作り込むことができる。
【0150】
[2]次いで、積層体に対して支持フィルム18の下面側から一部を除去する掘り込み加工を施す。これにより得られた空間(空洞)の内壁面がミラー16となる。
【0151】
積層体に対する掘り込み加工は、例えば、レーザー加工法、ダイシングソーによるダイシング加工法等により行うことができる。
以上のようにして、光導波路1が得られる。
【0152】
図7は、図2に示す光導波路モジュールを製造する方法を説明するための図(縦断面図)である。
【0153】
以下、光導波路モジュールの製造方法を、[1]光導波路1と回路基板2との間にボールレンズ100を載置する工程、[2]発光素子3および半導体素子4を実装する工程、に分けて説明する。
【0154】
[1]まず、回路基板2を用意し、開口241内にボールレンズ100を配置する(図7(a)参照)。
【0155】
この配置方法は、特に限定されないが、例えば、開口241が鉛直上方に向くよう回路基板2を配置し、その上に多数のボールレンズ100を供給し、開口241に落下させる方法や、回路基板2の開口242側を減圧し、開口241側との圧力差に応じてボールレンズ100を貫通孔24内に吸引する方法等が用いられる。
【0156】
このうち、前者の方法では、回路基板2上にボールレンズ100を供給すると、ボールレンズ100は、回路基板2上を転がりながら移動する。その後、必要に応じて回路基板2を揺動させ、ボールレンズ100を転動させる。その結果、一定時間経過後には、開口241に1つのボールレンズ100が落下する。
【0157】
一方、後者の方法では、圧力差に伴う吸引力によってボールレンズ100を配置するため、回路基板2の配置の向きが限定されないという利点がある。また、吸引力によりボールレンズ100が貫通孔24の内面に圧着されるため、貫通孔24内におけるボールレンズ100の位置を正確に誘導することができる。
【0158】
その後、必要に応じてボールレンズ100を貫通孔24内に固定する。固定方法としては、接着剤または粘着剤による接着、熱圧着、融着等の方法が挙げられる。
【0159】
[2]次に、接着剤を用いて光導波路1上に回路基板2を積層する(図7(b)参照)。そして、回路基板2上に発光素子3および半導体素子4を実装する(図7(c)参照)。以上のようにして光導波路モジュール10が効率よく製造される。
【0160】
<電子機器>
本発明の光導波路モジュールを備える電子機器(本発明の電子機器)は、光信号と電気信号の双方の信号処理を行ういかなる電子機器にも適用可能であるが、例えば、ルーター装置、WDM装置、携帯電話、ゲーム機、パソコン、テレビ、ホーム・サーバー等の電子機器類への適用が好適である。これらの電子機器では、いずれも、例えばLSI等の演算装置とRAM等の記憶装置との間で、大容量のデータを高速に伝送する必要がある。したがって、このような電子機器が本発明の光導波路モジュールを備えることにより、電気配線に特有なノイズ、信号劣化等の不具合が解消されるため、その性能の飛躍的な向上が期待できる。
【0161】
さらに、光導波路部分では、電気配線に比べて発熱量が大幅に削減される。このため、基板内の集積度を高めて小型化が図られるとともに、冷却に要する電力を削減することができ、電子機器全体の消費電力を削減することができる。
【0162】
以上、本発明の光導波路モジュールおよび電子機器の実施形態について説明したが、本発明は、これに限定されるものではなく、例えば光導波路モジュールを構成する各部は、同様の機能を発揮し得る任意の構成のものと置換することができる。また、任意の構成物が付加されていてもよく、複数の実施形態同士を組み合わせるようにしてもよい。
【0163】
また、前記各実施形態では、光導波路1が有するチャンネル(コア部)数は、1つであるが、本発明の光導波路モジュールでは、チャンネル数が2つ以上であってもよい。この場合、チャンネル数に応じてミラー、ボールレンズ、発光素子、受光素子等の数を設定すればよい。また、発光素子および受光素子については、1つの素子に複数の発光部または複数の受光部を備えたものを用いるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0164】
1 光導波路
10 光導波路モジュール
11 クラッド層(第1クラッド層)
12 クラッド層(第2クラッド層)
13 コア層
14 コア部
15 側面クラッド部
16 ミラー
18 支持フィルム
19 カバーフィルム
2 回路基板
20 コネクター
21 絶縁性基板
22、23 導体層
221、231 開口部
222、232 空隙
24 貫通孔
241、242 開口
3 発光素子
31 発光部
32 電極
4 半導体素子
42 電極
5 接着層
7 受光素子
71 受光部
100 ボールレンズ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コア部と、前記コア部の側面を覆うように設けられたクラッド部と、前記コア部の途中または延長線上に設けられ、前記コア部の光路を前記クラッド部の外部へと変換する光路変換部と、を備える光導波路と、
前記クラッド部の外部に設けられた光素子と、
前記光導波路と前記光素子との間に設けられ、前記光路変換部と前記光素子とを繋ぐ光路に沿って形成された貫通孔を備える基板と、を有し、
前記貫通孔は、前記光路に沿って横断面積が徐々に拡張または縮小するよう構成されており、
前記貫通孔内に少なくとも一部が挿入された略球形のボールレンズを有することを特徴とする光導波路モジュール。
【請求項2】
前記ボールレンズは、その直径の半分以上が前記貫通孔内に挿入されている請求項1に記載の光導波路モジュール。
【請求項3】
前記貫通孔の2つの開口のうち、面積が小さい側の開口は、前記ボールレンズを通過させることができないよう構成されている請求項1または2に記載の光導波路モジュール。
【請求項4】
前記貫通孔は、前記光導波路側に向かって横断面積が連続的に拡張するよう構成されている請求項1ないし3のいずれかに記載の光導波路モジュール。
【請求項5】
前記ボールレンズは、接着剤を介して前記光導波路に固定されるとともに、前記貫通孔の内面と接触している請求項4に記載の光導波路モジュール。
【請求項6】
前記貫通孔は、前記光導波路側に向かって横断面積が連続的に縮小するよう構成されている請求項1ないし3のいずれかに記載の光導波路モジュール。
【請求項7】
前記光路変換部近傍および前記光素子の受発光部近傍の少なくとも一方に前記ボールレンズの焦点が位置するよう構成されている請求項1ないし6のいずれかに記載の光導波路モジュール。
【請求項8】
前記ボールレンズは、樹脂材料、ガラス材料、および結晶材料のいずれかで構成されている請求項1ないし7のいずれかに記載の光導波路モジュール。
【請求項9】
請求項1ないし8のいずれかに記載の光導波路モジュールを備えることを特徴とする電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−78527(P2012−78527A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−222990(P2010−222990)
【出願日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【出願人】(000002141)住友ベークライト株式会社 (2,927)
【Fターム(参考)】