説明

光情報記録媒体、記録用粒子、光情報再生方法、光情報再生装置、光情報記録方法及び光情報記録装置

【課題】本発明は、戻り光の光量を増大することができる。
【解決手段】本発明の光情報記録媒体100は、記録層101において直径が100[nm]以下でなるナノ微粒子2が、光としての記録光ビームLWに基づく近接場光LWnの照射に応じて複素誘電率を変化させる媒質3に包囲された状態で配置されている。また光情報記録媒体100は、記録層101において、媒質3の複素誘電率εの変化に応じてナノ微粒子2が生じる局所プラズモン共鳴の度合いを変化させるようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は光情報記録媒体、記録用粒子、光情報再生方法、光情報再生装置、光情報記録方法及び光情報記録装置に関し、例えば記憶容量の大きい光情報記録媒体に適用して好適なものである。
【背景技術】
【0002】
従来、光情報記録再生装置としては、光情報記録媒体としての光ディスクに対して光ビームを照射することにより、当該光ディスクに情報を記録し、また当該光ディスクから情報を再生するようになされたものが広く普及している。この光ディスクとしては、一般にCD(Compact Disc)、DVD(Digital Versatile Disc)及びBlu−ray Disc(登録商標、以下BDと呼ぶ)等が用いられている。
【0003】
ところで光ディスク装置では、音楽コンテンツや映像コンテンツ等の各種コンテンツ、或いはコンピュータ用の各種データ等のような種々の情報を光ディスクに記録するようになされている。特に近年では、映像の高精細化や音楽の高音質化等により情報量が増大し、また1枚の光ディスクに記録するコンテンツ数の増加が要求されているため、当該光ディスクのさらなる大容量化が求められている。
【0004】
この光ディスク装置では、使用する光ビームの波長を短くすると共に、対物レンズの開口数NA(Numerical Aperture)を大きくすることにより光ビームのスポットサイズを小さくし、これに伴って記録マークのサイズを小さくすることにより光ディスクの大容量化を達成してきた。
【0005】
一般的に、光の回折限界のため、スポットサイズを光ビームの波長サイズ未満に小径化することはできないとされている。そこで屈折率の高い材料を用いると共に光情報記録媒体までの距離を波長λの1/4以内に近接させるソリッドイマージョンレンズ等の近接光レンズが提案されている(例えば特許文献1参照)。
【0006】
しかしながらこのソリッドイマージョンレンズを用いた場合であっても、スポットサイズを100[nm]にまで小径化することが限界と考えられている。そこで、局所的にプラズモン共鳴現象を生じさせるプラズモン・アンテナによって、小さなスポットサイズでなるスポットを形成する方法が提案されている(例えば非特許文献1参照)。
【0007】
これにより光情報記録媒体における記録マークのサイズを微少化することができ、光情報記録媒体をさらに大容量化できることが期待されている。
【特許文献1】特開2005−182895公報
【非特許文献1】T. Matshumoto, T. Shimano, H. Saga, and H. Sukeda J. Appl.Phys., Vol. 95, No.8, 15 April 2004
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところでかかる構成の光ディスク装置では、記録マークが微少化されるに従い、当該記録マークからの戻り光が減少するという問題があった。
【0009】
本発明は以上の点を考慮してなされたもので、戻り光の光量を増大させ得る光情報記録媒体、当該光情報記録媒体に用いられる情報記録用粒子、並びに当該光情報記録媒体を用いた光情報再生方法、光情報再生装置、光情報記録方法及び光情報記録装置を提案しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
かかる課題を解決するため本発明の光情報記録媒体においては、直径が100[nm]以下でなるナノ微粒子が、光の照射に応じて複素誘電率を変化させる媒質に包囲された状態で配置され、媒質の複素誘電率の変化に応じてナノ微粒子が生じる局所プラズモン共鳴の度合いを変化させる記録層を設けるようにした。
【0011】
これにより光情報記録媒体では、局所プラズモン共鳴によって生じる強度の大きい散乱光を戻り光として受光させることができる。
【0012】
また本発明の光情報記録媒体においては、直径が100[nm]以下でなる金属微粒子が、光の照射に応じて結晶状態又は非晶状態に遷移する相変化材料によって包囲されてなる記録層を設けるようにした。
【0013】
これにより光情報記録媒体では、局所プラズモン共鳴によって生じる強度の大きい散乱光を戻り光として受光させることができる。
【0014】
さらに本発明の光情報記録媒体においては、直径が100[nm]以下でなるナノ微粒子と媒質とによって構成され、記録光の照射に応じて媒質の複素誘電率を変化させることにより情報を記録し、読出光の照射に応じたナノ微粒子による局所プラズモン共鳴の度合いの変化により情報を再生させる記録層を設けるようにした。
【0015】
これにより光情報記録媒体では、局所プラズモン共鳴によって生じる強度の大きい散乱光を戻り光として受光させることができる。
【0016】
また本発明の記録用粒子においては、直径が100[nm]以下でなるナノ微粒子が、所定強度以上でなる光の照射に応じて複素誘電率を変化させる媒質に包囲されてなるようにした。
【0017】
これにより記録用粒子では、局所プラズモン共鳴によって生じる強度の大きい散乱光を戻り光として受光させることができる。
【0018】
さらに本発明の記録用粒子においては、 直径が100[nm]以下でなるナノ微粒子と当該ナノ粒子を包む媒質とによって構成され、ナノ微粒子と媒質のいずれか一方が、所定強度以上でなる光の照射に応じて複素誘電率を変化させるようにした。
【0019】
これにより記録用粒子では、局所プラズモン共鳴によって生じる強度の大きい散乱光を戻り光として受光させることができる。
【0020】
また本発明の光情報再生方法及び光情報再生装置においては、光を集光して光情報記録媒体に照射し、光情報記録媒体において生じる局所プラズモン共鳴の度合いを検出するようにした。
【0021】
これにより光情報再生方法及び光情報再生装置では、局所プラズモン共鳴によって生じる強度の大きい散乱光を戻り光として受光することができる。
【0022】
さらに本発明の光情報記録方法においては、光情報記録媒体に対して光を照射したときに当該光情報記録媒体において生じる局所プラズモン共鳴の度合いを変化させることにより情報を記録するようにした。
【0023】
これにより光情報記録方法においては、再生光の照射に応じて局所プラズモン共鳴によって生じる強度の大きい散乱光を戻り光として受光させることができる。
【0024】
さらに本発明の光情報記録装置においては、 光源から出射された光を集光して光情報記録媒体に照射する光照射部と、光情報記録媒体において生じる局所プラズモン共鳴の度合いを変化させるよう光の強度を変化させる光強度制御部とを設けるようにした。
【0025】
これにより光情報記録再生装置においては、再生光の照射に応じて局所プラズモン共鳴によって生じる強度の大きい散乱光を戻り光として受光させることができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、局所プラズモン共鳴によって生じる強度の大きい散乱光を戻り光として受光させることができ、かくして戻り光の光量を増大させ得る光情報記録媒体、当該光情報記録媒体に用いられる情報記録用粒子、並びに当該光情報記録媒体を用いた光情報再生方法、光情報再生装置、光情報記録方法及び光情報記録装置を実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、図面について、本発明の一実施の形態を詳述する。
【0028】
(1)本発明の原理
一般的にAu、Ag、Al、Pt、Cu等の金属では、ナノサイズ(100[nm]以下)の微粒子の状態(以下、これをナノ微粒子と呼ぶ)において、特定の条件を満たす時光に反応して局所プラズモン共鳴を生じさせることが知られている。
【0029】
局所プラズモン共鳴とは、ナノ微粒子において、電磁場振動及び電荷振動が結合し、共鳴を起こした状態をいい、このときナノ微粒子近傍に強い電磁界の局在が生じる。この強い電磁場を近接光場という。
【0030】
ナノ微粒子の直径をaとし、当該ナノ微粒子に対して入射される入射光の波長をλとすると、波長λよりも直径aが十分に小さいとき(a<<λ)、ナノ微粒子には一様な電磁界が印加されると考えられる。これは長波長近似と呼ばれ、このときナノ微粒子の分極率αは以下の式で表される。
【0031】
【数1】

【0032】
(1)式から、右辺の誘電率項の分母が「0」に近づくと、分極率は著しく増加することがわかる。このときナノ微粒子では、入射光が有する電磁場に応じて共鳴的な電磁場及び電荷の振動、すなわち局所プラズモン共鳴を生じる。
【0033】
空気中において、媒質の誘電率ε=1であるため、微粒子の複素誘電率ε(ω)が次式を満たすとき、局所プラズモン共鳴が生じることになる。
【0034】
【数2】

【0035】
【数3】

【0036】
(2)式及び(3)式から、Re、すなわち複素誘電率ε(ω)の実数部分が−2、Im、すなわち複素誘電率ε(ω)の虚数部分がほぼ「0」となるとき、ナノ微粒子がプラズモン共鳴を生じることがわかる。
【0037】
入射光が可視光領域の場合、Au、Agなどのいわゆる貴金属が(1)式、(2)式及び(3)式に示す条件を満たすため、当該可視光領域でなる入射光に応じて局所プラズモン共鳴を生じることになる。
【0038】
ナノ微粒子は、この局所プラズモン共鳴により近接光場を形成し、非常に強い近接場光及び散乱光を発生させる。この近接場光は、殆ど伝播することがなく、ナノ微粒子近傍に局在する特性を有している。一方散乱光は遠くまで伝播する特性を有している。
【0039】
またBD(Blu-ray Disc、登録商標)−RE(Rewritable)やDVD(Digital Versatile Disc)±RW(Rewritable)、DVD−RAM(Random Access Memory)では、相変化方式が採用されている。この相変化方式では、相変化材料でなる相変化膜上に光ビームを照射し、結晶状態及び非結晶状態(以下、これらをまとめて相状態と呼ぶ)を変化させることにより当該相変化膜上に記録マークを形成するようになされている。
【0040】
この相変化材料では、相状態の変化に応じて複素誘電率が変化する。これらのことから、仮に相変化材料において局所プラズモン共鳴を生じさせることができれば、一の波長でなる光ビームを照射したときに相変化に応じて局所プラズモン共鳴の度合いを変化させることができ、散乱光の強度(以下、これを散乱光強度と呼ぶ)を大きく変化させることができると考えられる。
【0041】
ここで複素誘電率ε(ω)と複素屈折率(n、k)との関係を次式に示す。
【0042】
【数4】

【0043】
【数5】

【0044】
すなわち空気中において上述した(1)式、(2)式及び(3)式の関係を満たすためには、n=1.414、k=0をほぼ満たせば良いことになる。
【0045】
図1に、一般的な4種類の相変化材料及びAgについて、結晶状態(Cry:Crystal)と、非晶状態(Amo:Amorphous)における分極αの状態を、入射光の波長λ及び複素屈折率N(実数部=n、虚数部=k)との関係として示している。なお図1では色彩の濃淡により分極αを表しており、濃い部分ほど分極が大きいことを示している。また相変化材料としては、GeSb33Te59、Ge22Sb22Te56、AgGeSbTe、Ag8I14Sb55Te23について示している。
【0046】
図より、相変化材料の分極αはいずれの波長λにおいても非常に小さく、局所プラズモン共鳴を生じないことがわかる。これに対してAgの分極αは、波長λ=350[nm]付近で非常に大きくなっており、入射光が波長λ=350[nm]付近のときに局所プラズモン共鳴を生じることがわかる。
【0047】
また相変化材料では、結晶状態と非晶状態において複素屈折率N(n及びk)の値が大きく変化していることがわかる。すなわち相変化材料は、結晶状態と非結晶状態において、複素誘電率の値を大きく変化させることがわかる。
【0048】
ここで(1)式に示したように、局所プラズモン共鳴を生じさせる条件は、媒質、すなわちナノ微粒子の周囲に存在する材質の複素誘電率εによって変化する。
【0049】
そこで本発明では、例えば図2(A)に示すように、ナノ微粒子NPの周囲に相変化材料など、入射光の照射に応じて状態を第1の状態から第2の状態へと変化させると共に当該状態変化に応じて複素誘電率が変化する材料を媒質SHとしてナノ微粒子の周囲に配置し、これを記録用材料MTとする。このとき本発明では、第1の状態においては局所プラズモン共鳴の生じる度合いが大きく、第2の状態においては局所プラズモン共鳴の生じる度合いが小さくなるように、媒質SHを選定する。
【0050】
図2(B)に示すように、この記録用材料MTでは、第1の状態でなる媒質SH(以下、これを媒質SH1と呼ぶ)に対して例えば情報記録用の記録用光ビームLWが照射されると、ナノ微粒子NPと媒質SH1との界面で局所プラズモン共鳴を生じる。
【0051】
このとき記録用材料MTは、ナノ微粒子NPの外側近傍において、非常に強い近接場光LNを発生させる。これにより図2(C)に示すように、記録用材料MTは、非常に短時間で媒質SHを例えば第1の状態とは誘電率εの異なる第2の状態(以下、これを媒質SH2と呼ぶ)へ変化させることができる。
【0052】
すなわち記録用材料MTでは、媒質SHの状態を変化させることにより、記録用光ビームLWに応じて情報を記録することが可能となる。また局所プラズモン共鳴を利用することにより、比較的小さな光エネルギーで情報を記録することができる。
【0053】
また図3(A)に示すように、媒質SHが第1状態でなる記録用材料MTは、情報読出用の読出光ビームLRが照射されると、複素誘電率εとの関係によりナノ微粒子NPと媒質SH1との界面で局所プラズモン共鳴を大きく生じさせる。このとき記録用材料MTは、ナノ微粒子NPの外側近傍において非常に強い近接場光LNを発生させると共に、強度の大きな散乱光LSをも発生させる。
【0054】
この散乱光LSは遠くまで伝播するため、散乱光LSの一部を戻り光として受光することが可能である。すなわち記録用材料MTは、媒質SHが第1の状態にあるときには、度合いの大きな局所プラズモン共鳴による比較的強度の大きな散乱光LSを戻り光として受光させることができる。
【0055】
一方図3(B)に示すように、媒質SHが第2状態でなる記録用材料MTでは、読出光ビームLRが照射されると、複素誘電率εとの関係によりナノ微粒子NPと媒質SH2との界面で局所プラズモン共鳴を小さく生じさせ、強度の小さな散乱光LSのみを発生することになる。このため記録用材料MTでは、媒質SHが第2の状態にあるときには、度合いの小さな局所プラズモン共鳴による強度の小さな散乱光LSを戻り光として受光させることができる。
【0056】
すなわち記録用材料MTでは、散乱光ビームLSaの受光量から記録用材料MTにおける媒質SHの状態(すなわち第1の状態であるか第2の状態であるか)を検出することが可能となる。
【0057】
このように記録用材料MTでは、ナノ微粒子NPを媒質SHで包むと共に、媒質SHの状態を変化させて局所プラズモン共鳴の度合いを変化させることにより、記録用材料MTに情報を記録及び再生することが可能となる。
【0058】
(2)記録用材料の構成
図4に示すように、記録用材料1は、ナノ微粒子2が媒質3によって囲まれた構成でなる。この記録用材料1は、例えば図4(A)に示すように、媒質3の中にナノ微粒子2が埋め込まれるようにしても良い。
【0059】
また記録用材料1は、図4(B)に示すように、ナノ微粒子2を中心核、媒質3を外殻とする粒子状に形成されるようにしても良い。以下、この粒子状に形成された記録用材料1を記録用粒子1Sと呼ぶ。
【0060】
ナノ微粒子2の材質としては特に限定されないが、大きな分極を生じ易い材質であることが好ましく、特に金属であることが好ましい。さらにナノ微粒子2としては、可視光領域の光に応じて局所プラズモン共鳴を生じることが知られているPt、Ag、Au、Al又はCuであることが好ましく、局所プラズモン共鳴の度合いが大きいとされるAg又はAuが特に好ましい。
【0061】
またナノ微粒子2は、その直径Dが1[nm]以上でなることが好ましい。ナノ微粒子2の直径Dが1[nm]未満になると、粒子としての安定性が得られないためである。またナノ微粒子2は、その直径Dが50[nm]以下でなることが好ましい。直径Dが50[nm]を超えると、局所プラズモン共鳴の度合いが低下するからである。さらにナノ微粒子2は、記憶密度の観点からその直径Dが20[nm]以下、さらには15[nm]以下でなることが好ましい。
【0062】
また媒質3は、所定の強度以上でなる光に応じてその状態を変化させ、複素誘電率εを変化させる材料でなる。この状態の変化としては、例えば結晶状態と非晶状態とを変化させる相変化や、光に応じて酸化を引き起こす酸化などが挙げられる。すなわち媒質3の材質としては、酸化材料や相変化材料であることが好ましく、特に相変化材料であることが好ましい。既にBD−RE等で採用されているからである。
【0063】
また媒質3として可逆的な状態変化を引き起こす相変化材料を用いることにより、情報を何度も書き換え可能にすることができる。この場合、記録用材料1における媒質3を第1の温度まで上昇させるよう加熱することにより当該媒質3を結晶状態にし、当該第1の温度よりも低い第2の温度まで加熱することにより当該媒質3を非晶状態にすることができる。
【0064】
さらに非晶状態において局所プラズモン共鳴の度合いが小さくなるように媒質3を選定することが好ましい。相変化材料では、非晶状態においてその自由エネルギーが結晶状態よりも高く、結晶状態と比較して不安定な状態となるが、情報の再生の際に非晶状態でなる記録用材料1において温度が上昇することを抑制することができ、再生回数を向上させ得るからである。
【0065】
媒質3の材質としては特に限定されないが、分極を生じる誘電体材料、半導体材料、半金属材料及び金属材料などの無機材料であることが好ましく、さらに少なくともその一部に半導体材料を含有することが好ましい。また媒質3は、複数種類の無機材料が組み合わされることが特に好ましい。組成を変更することにより複素誘電率εの変化量などを調製し易いからである。この無機材料としては、例えばGe、Sb及びTeなどの半導体材料及び半金属材料や、Agなどの金属材料が適宜組み合わされることが好ましい。
【0066】
媒質3の表面までの厚さTは、1[nm]以上でなることが好ましい。1[nm]未満となると、ナノ微粒子2に対し媒質3としての特性を十分に発揮できないからである。また媒質3の厚さTは、50[nm]未満でなることが好ましい。厚さTが50[nm]以上になると、近接場光が媒質3の表面まで十分に到達しなくなるからである。さらに媒質3の厚さTは、20[nm]以下、さらに好ましくは10[nm]以下でなることが好ましい。散乱光ビームLSaを極力吸収しないようにするためである。
【0067】
またナノ微粒子2と一の状態でなる媒質3とにおける(2)式の左辺の値と、ナノ微粒子2と他の状態でなる媒質3とにおける(2)式の左辺の値とが相違することが必要となる。局所プラズモン共鳴の度合いを変化させるためである。さらにはナノ微粒子2と一の状態でなる媒質3とにおいて(2)式を満たすことが好ましい。図5に、直径が60[nm]でなるAg粒子における局所プラズモン共鳴に対する媒質3の誘電率(実数部及び虚数部)の影響を示すグラフを示している。実数部のグラフである図5(A)に示すように、左辺の値における実数部が1以下であれば、電界強度が20[V/m]以上となり、0.5以下であれば、電界強度が400[V/m]以上となることから、(2)式における左辺の値の実数部が1以下、より好ましくは0.5以下であることが好ましい。また虚数部のグラフである図5(B)に示すように、左辺の値における虚数部が0.6以下、より好ましくは0.4以下、さらに好ましくは0.05以下であることが好ましい。一方、ナノ微粒子2と他の状態でなる媒質3とにおいて(2)式を満たさない(すなわち(2)式の左辺の値における実数部が1より大きく、(2)式の左辺の値における値虚数部が0.4より大きい)ことが好ましい。なお、ナノ微粒子2によってのみ決定される(3)式の左辺の値は、0.5以下、より好ましくは0.3以下であることが好ましい。局所プラズモン共鳴の度合いに影響するからである。
【0068】
これにより記録用材料1が一の状態では局所プラズモン共鳴を大きく生じる一方、他の状態では局所プラズモン共鳴を殆ど生じないことになり、記録用材料1における媒質3の状態に応じて戻り散乱光ビームLSaの光量を大きく変化させることが可能となる。
【0069】
また記録用材料を図4(B)に示したような記録用粒子1Sとして構成する場合、当該記録用粒子1Sの直径Dは3[nm]以上であることが好ましい。記録用粒子1Sとしての特性を維持するためである。また記録用粒子1Sの直径Dは、記憶密度の観点から52[nm]以下、さらには20[nm]以下であることが好ましい。
【0070】
具体的に、この記録用粒子1Sは、例えば以下のように作製される。例えばナノ微粒子2としてAgを用いた場合、硝酸銀(AgNO)をエタノール溶液又は水溶液とし、アルカンチオール誘導体、還元剤としてのNaBHを加え攪拌することにより、銀粒子を所定のサイズまで凝集させる。
【0071】
媒質3として例えばGeSbTeを使用する場合、銀粒子を含有するエタノール溶液又は水溶液に対して、Ge、Sb及びTeを含むエタノール溶液又は水溶液を混合し、例えば0[℃]において所定時間に亘って攪拌する。また、硝酸銀溶液に対してGe、Sb、Teを含む化合物を直接添加したり、Ge、Sb及びTeを含むエタノール溶液又は水溶液に対して凝集させた銀粒子を添加することも可能である。この後、水又はエタノールを蒸発させることにより、記録用粒子1Sを得ることができる。
【0072】
なおGe、Sb及びTeの濃度を変更することによりGe、Sb及びTeの比率を適宜変更することができる。また攪拌時間を変更することにより、ナノ微粒子2としての銀粒子の直径及び媒質3としてのGeSbTeの厚さを適宜変更することが可能である。また記録用粒子1Sは、これ以外にも種々の方法により作製することが可能である。
【0073】
(3)実施例
次に、実施例について説明する。本実施例においては、図6に示すような記録用粒子1Sの散乱光強度について、シミュレーションを行った。なお記録用粒子1Sにおいて、ナノ微粒子2としてAgを用い、媒質3として相変化材料でなるGeSbTe(組成比2:2:5)を用いた。本実施例において、この記録用粒子1SをサンプルSS1とし、当該サンプル1におけるナノ微粒子2をAg中心核2S、媒質3をGeSbTe殻3Sと呼ぶ。
【0074】
図7に波長と散乱光強度との関係を示している。この図7では、有限差分時間領域法(Finite Differential Time Domain Method)を用いて計算した結果を示している。なお図7の計算に用いたサンプルSS1は、Ag中心核2Sの直径Dが15[nm]であり、GeSbTe殻3Sの厚さTが2.5[nm]、サンプルSS1としての直径Dが20[nm]である。
【0075】
曲線C1は、直径が20[nm]でなるナノ微粒子単体としてのAgの散乱光強度を示したものであり、波長λが350[nm]付近で局所プラズモン共鳴が生じ、強度の大きい散乱光が生じていることがわかる。
【0076】
曲線C2は、直径が20[nm]でなるナノ微粒子単体としてのGeSbTeの結晶状態における散乱光強度を示している。280[nm]近傍での散乱光強度が最も大きいものの、その強度はさほど大きくないといえる。
【0077】
曲線C3は、直径が20[nm]でなるナノ微粒子単体としてのGeSbTeの非晶状態における散乱光強度を示している。280[nm]近傍での散乱光強度が最も大きいものの、その強度は非常に小さい。
【0078】
曲線C2及びC3から、GeSbTe単体のナノ微粒子では、結晶状態における散乱光強度が最大となる場合であっても、その強度は小さく、十分な戻り光が得られないことが示唆された。また結晶状態と非晶状態との差も小さく、散乱光LSからこれらの差を検出することは困難といえる。
【0079】
曲線C4は、サンプルSS1においてGeSbTe殻3Sが結晶状態であるとき(以下、これを結晶状態サンプルSS1aと呼ぶ)の散乱光強度を示している。結晶状態サンプルSS1aでは、240[nm]付近で非常に大きな散乱光強度を示しており、当該240[nm]付近で大きな局所プラズモン共鳴を生じていることがわかる。また結晶状態サンプルSS1aでは、波長λが220[nm]付近から360[nm]付近までの間、比較的高い散乱光強度を示している。
【0080】
曲線C5は、サンプルSS1においてGeSbTe殻3Sが非晶状態であるとき(以下、これを非晶状態サンプルSS1bと呼ぶ)の散乱光強度を示している。非晶状態サンプルSS1bでは、結晶状態サンプルSS1aと同様、240[nm]付近にピークを有しているものの、その散乱光強度は非常に小さい。このことから非晶状態サンプルSS1bでは、240[nm]付近で局所プラズモン共鳴を生じているものの、その度合いが非常に小さいものであるということがわかる。
【0081】
これらの結果から、サンプルSS1に対して例えば240[nm]でなる入射光(すなわち記録用光ビームLW又は読出光ビームLR)を照射することにより、GeSbTe殻3Sの結晶状態に応じて局所プラズモン共鳴の度合いを変化させることができることがわかる。すなわち、サンプルSS1を用いて、GeSbTe殻3Sの結晶状態を変化させて局所プラズモン共鳴の度合いを変化させることにより情報を記録及び再生し得ることが確認された。
【0082】
なお波長λが240[nm]のときの結晶状態サンプルSS1aにおけるGeSbTe殻3Sの複素誘電率εは、1.315−0.5174iであり、局所プラズモン共鳴の条件である(2)式を満たしている。一方非晶状態サンプルSS1bにおけるGeSbTe殻3Sの複素誘電率εは、5.064−1.157iであり、(2)式を満たしていない。このことは、図8において結晶状態サンプルSS1aの散乱光強度に大きなピークがみられたのに対し、非晶状態サンプルSS1bにおいて大きなピークがみられなかったことと整合する。
【0083】
次に、GeSbTe殻3Sの厚さTを2.5[nm]に固定し、Ag中心核の直径Dを変化させたサンプルSS1に対し、波長λが360[nm]でなる入射光を照射したときの電界増強度を算出し、図8に示した。なお電界増強度とは、入射光の強度(すなわち電界)に対して、微粒子表面(すなわちサンプルSS1の表面)の電界がどの程度増強されるかを示すものである。図8では縦軸の横軸との交点の値はゼロであり、単純に電界の増大の度合い、すなわち局所プラズモン共鳴の生じた度合いを示している。
【0084】
Ag中心核2Sは、その直径Dが0[nm]から大きくなるにつれて電界増強度も大きくなり、50[nm]のときに電界増強度がほぼ最大値をとる。またAg中心核2Sは、直径Dが小さい方が記録密度を向上させ得るため、直径Dが50[nm]以下であることが好ましい。記録密度の観点からは、さらに直径Dが小さい方が好ましく、例えば1[Tbit/inch]以上の記録密度を達成するためには、直径Dを18[nm]以下、さらには15[nm]以下にすることが好ましい。
【0085】
次に、Ag中心核2Sの直径Dを15[nm]に固定し、GeSbTe殻3Sの厚さTを変化させたサンプルSS1に対し、波長λが360[nm]でなる入射光を照射したときの電界増強度を算出し、図9に示した。
【0086】
曲線C11は、Ag中心核2SとGeSbTe殻3Sとの界面における電界増強度、すなわち局所プラズモン共鳴の度合いを表している。GeSbTe殻3Sの厚さTが大きくなるに従って、電界増強度が増大している。これは、GeSbTe殻3Sの厚さTが厚くなるに従って当該GeSbTe殻3Sが媒質としての特性を発揮するためであると考えられる。
【0087】
曲線C12は、サンプルSS1の表面、すなわちGeSbTe殻3Sの空気との界面における電界増強度を示している。GeSbTe殻3Sの厚さTが大きくなるに従って、徐々に電界増強度が低下している。これはGeSbTe殻3Sの厚さTが大きくなるに従って、局所プラズモン共鳴の生じるAg中心核2SとGeSbTe殻3Sとの界面からの距離が遠くなるためである。
【0088】
すなわちGeSbTe殻3Sの厚さTが大きくなれば局所プラズモン共鳴の度合いが大きくなるものの、サンプルSS1の表面における電場は逆に小さくなり、GeSbTe殻3Sの結晶状態を十分に変化させ得なくなる可能性が生じることがわかる。一般的に非常に強い近接場光の範囲は、ナノ微粒子2の半径程度とされていることから、GeSbTe殻3Sの厚さTはその2倍、すなわちナノ微粒子2の直径D程度に抑制することが好ましい。実際上図9では、Ag中心核2Sが15[nm]でなることから、GeSbTe殻3Sの厚さTが15[nm]以上になると、電界増強度が急激に低下している。
【0089】
なお図8及び図9では、結晶状態サンプルSS1aと非晶状態サンプルSS1bとで、電界増強度の値は異なるもののほぼ相似形の曲線を得ることができた。すなわち上述した結果は、結晶状態サンプルSS1aと非晶状態サンプルSS1bの双方に当て嵌まるものである。
【0090】
図10に、入射光の波長λが400[nm]の場合の分極αを示している。なお図10の計算に用いたサンプルSS1は、Ag中心核2Sの直径Dが15[nm]であり、GeSbTe殻3Sの厚さTが2.5[nm]、サンプルSS1としての直径Dが20[nm]である。またAg中心核2Sの複素屈折率はn=0.173、k=1.95として計算した。
【0091】
図10からわかるように、波長λが400[nm]でなる入射光に対して局所プラズモン共鳴を生じるためには、媒質3の複素屈折率がn=1.5、k=0となる。GeSbTe殻3Sは、結晶状態でその複素屈折率がn=2.0、k=3.0であり、非晶状態でその複素屈折率がn=3.0、k=2.0であり、上記条件とはかなり離隔している。
【0092】
言い換えると、結晶状態又は非晶状態のいずれか一方で複素屈折率がn=1.5、k=0の近傍の値をとるような相変化材料を選定することにより、波長λが400[nm]の入射光を記録光ビームLW及び読出光ビームLRとして使用することが可能となることがわかる。
【0093】
なお図10においてGeSbTe殻3Sは、結晶状態のとき、非晶状態と比して分極αが高い領域の近傍に位置しており、この差が図7の散乱光強度における差異につながったものと考えられる。
【0094】
このように、ナノ微粒子2としてAg中心核2Sを、媒質3としてGeSbTe殻3Sを用いることにより、特に240[nm]近傍で局所プラズモン共鳴の度合いを大きく変化させ得ることが確認された。また、媒質3の複素屈折率を結晶状態又は非晶状態のいずれか一方においてその複素屈折率がn=1.5、k=0の近傍となるような材料を選定することにより、入射光の波長λを400[nm]に設定することが可能となることが確認された。
【0095】
(4)光情報記録媒体の構成
光情報記録媒体100は、全体として従来のCD、DVD及びBDと同様に直径約120[mm]の円盤状に構成されており、中央部分に孔部100Hが形成されている。なお光情報記録媒体100の形状に制限はなく、矩形状や多角形状であっても良い。また必ずしも孔部100Hを有する必要はない。
【0096】
また光情報記録媒体100は、図11(A)に断面図を示すように、基板102上に情報を記録するための記録層101が形成されることにより構成されている。因みに基板102の厚さは、0.05[mm]〜1.20[mm]の範囲内で適宜選定される。
【0097】
基板102は、光情報記録媒体100としての物理的強度を維持するため、1種類又は2種類以上でなる硬質の材料が用いられる。基板102は、例えばポリカーボネイトやポリメチルメタクリレートのようなや樹脂材料や、ガラスやセラミック等の無機材料により構成されている。基板102は、透過率が低い材料を用いることも可能であるが、透過率の高い材料を用いることが好ましい。散乱光ビームLSa以外の余分な光が反射されて戻り光と共に受光されるのを防止するためである。
【0098】
なお光情報記録媒体100がDVDやBDなどと同様に交換可能なメディアとして使用される場合には、大量生産の容易な樹脂材料が好適に用いられる。一方光情報記録媒体100がハードディスクなどと同様にドライブに固定されたメディアとして使用される場合には、精度が高く周囲環境の影響を受けにくい無機材料が好適に用いられる。
【0099】
この基板102と記録層101の界面には、入射光として使用される光ビームの波長に対して無反射となるような多層無機層(例えば、Nb/SiO/Nb/SiOの4層)のAR(AntiReflection coating)処理を施しても良い。散乱光ビームLSa以外の光が戻り光と共に受光されるのを防止するためである。
【0100】
また図11(B)に示すように、記録層101上に当該記録層101を保護するための保護層103を設けても良い。この保護層103としては、例えば傷の付きにくいハードコート層などがスパッタリングや蒸着、スピンコートなどによって設けられる。
【0101】
保護層103は、その厚みが10[nm]以下、より好ましくは5[nm]以下でなることが好ましい。プラズモンアンテナ(詳しくは後述する)から入射される近接場光を記録層101に到達させるためである。因みに保護層103の代り又は保護層103上に、摺動性を向上させるための潤滑層を設けても良い。この潤滑層としては、シリコン化合物又はフッ素化合物などが使用される。
【0102】
記録層101は、基板102上に記録用材料1が配置されることにより形成されている。すなわちナノ微粒子2が媒質3によって包囲されていれば良く、媒質3の内部にナノ微粒子2が埋め込まれていても良く、また記録用粒子1Sとして配置されていても良い。記録層101には、例えば同心円又は螺旋状にトラックTRが形成され、当該トラックTRに沿って情報が記録される。このトラックTRは、例えばDVD及びBDのように凹凸でなるランド及びグルーブが形成されても良く、またハードディスクのようにその表面が平坦でも良い。
【0103】
また記録層101において、ナノ微粒子2は、図12(A)に示すように、トラックTRにのみ配置されていても良く、また記録層101の全面に(すなわちトラックTR以外の箇所にも)敷き詰めるように配置されていても良い。
【0104】
図12(B)に示すように、記録用粒子1Sを記録層101の全面に敷き詰めることによりナノ微粒子2を記録層101の全面に敷き詰めることができる。例えばLB(Langmuir Blodgett)トラフを用いるLB法により行うことができる。すなわちLBトラフの水面上にクロロホルム溶媒の記録用粒子1Sを滴下し、クロロホルムが蒸発した後、水面上に残った記録用粒子1Sを一定速度で動くバリアで圧縮し、水素終端した基板102を引き上げることで転写する。これにより図13(A)に示したように基板102上に記録用粒子1Sが敷き詰められる。
【0105】
この場合記録層101においては、例えば1つの記録用粒子1Sに対して1ビットの情報を記録しても良く、また複数の記録用粒子1Sに対して1ビットの情報を記録しても良い。この記録層101では、例えば製造時における初期化によりアドレス情報などが記載されることにより初めて情報が記録されるべきトラックTRが形成されることになる。
【0106】
また図13(B)に示すように、媒質3の内部にナノ微粒子2が埋め込まれるようにして形成されても良い。
【0107】
次に記録用粒子1SをトラックTR上にのみ配列させることによりナノ微粒子2をトラックTR上に配置する場合について説明する。基板102上に電子線露光及びリソグラフィーを用いたナノインプリンティング法などによって予め凹みを形成しておき、記録用粒子1Sを分散した水溶液中に含浸させ、当該基板102をゆっくりと引き上げる。これにより図13(C)に示すように、凹み上に記録用粒子1Sが配列される。なおこの手法は、特許文献2に記載されている。因みにこの方法を用いて記録用粒子1Sを記録層101の全面に敷き詰めることももちろん可能である。
【特許文献2】特開2005−138011公報
【0108】
この場合、図14(A)に示すように、1つのトラックTRに対して1列の記録用粒子1Sが配列されるようにしても良い。このとき1つの記録用粒子1Sに対して1ビットの情報を記録しても良く、また複数の記録用粒子1Sに対して1ビットの情報を記録しても良い。また図14(B)に示すように、1つのトラックTRに対して複数列の記録用粒子1Sが配列されるようにしても良い。
【0109】
また図15に示すように、記録用粒子1S間が互いに離隔して配列されるようにしても良い。このとき各記録用粒子1Sが光情報記録媒体100の半径方向であるラジアル方向と直交するタンジェンシャル方向(すなわちトラックの走査方向)に所定間隔SPずつ離隔して配置されることが好ましい。これにより記録用粒子1S間によるクロストークを抑制することが可能となる。
【0110】
なおこのときのトラックピッチTPは、特に制限はないが、クロストークを効果的に防止し得、かつ記録密度を大きく低減させないように例えば記録用粒子1Sの1.2倍以上3.0倍以下に設定されることが好ましい。またタンジェンシャル方向の間隔SPについても同様である。
【0111】
またトラックTR上にナノ微粒子2を配置させる方法について説明する。例えばナノインプリンティング法を用いたエッチングなどにより基板102上に凹みを形成した後、スパッタリングにより媒質3の層を形成する。この結果基板102の表面は凹みを有したまま媒質3によって覆われる。次いで同様の引き上げ法により凹み上にナノ微粒子2を配置し、再度スパッタリングにより媒質3の層を形成する。この結果、図13(D)に示すように、ナノ微粒子2が媒質3によって包囲された状態で当該ナノ微粒子2をトラックTR上にのみ配列させることが可能となる。因みにこの方法では、凹みのパターンを変更することにより、ナノ微粒子2を記録層101の全面に敷き詰めることも可能である。
【0112】
なお記録層101の製造方法については、これらに限定されるものではなく、その他種々の方法を用いて記録層101を作製することが可能である。
【0113】
このように光情報記録媒体100は、ナノ微粒子2が媒質3によって包囲された状態でなる記録層101を基板102上に形成することができる。このとき光情報記録媒体100は、予めナノ微粒子2を媒質3によって包囲してなる記録用粒子1Sを基板102上に配列させることにより、その製造工程を比較的簡易にし得るようになされている。
【0114】
(5)情報の記録及び再生
(5−1)光情報記録再生装置の構成
図3において、20は全体として光情報記録装置を示している。この光ディスクドライブ20は、図示しないCPU(Central Processing Unit )、ROM(Read Only Memory)及びRAM(Random Access Memory)から構成される制御部21によって統括制御されている。
【0115】
なお説明の便宜上、記録用粒子1Sが基板102上に配列されることにより記録層101を構成する光情報記録媒体100に対して情報を記録及び再生する場合について説明する。
【0116】
制御部21は、ROMに格納されている基本プログラムや情報記録再生プログラム等をRAMに展開することによって、これらのプログラムに基づいて光情報記録媒体100に対する再生処理及び記録処理を実行するようになされている。
【0117】
制御部21は、再生処理の際、光情報記録媒体100から読み出すデータを特定するためのアドレス情報と共に、データ読出命令を駆動制御部22へ送出する。
【0118】
駆動制御部22は、制御部21からのデータ読出命令に応じて、スピンドルモータ24を制御することにより光情報記録媒体100を所定の回転速度で回転させると共に、データ読出命令及びアドレス情報を基にスレッドモータ25を制御することにより、光ピックアップ30を当該光情報記録媒体100の径方向に移動させる。
【0119】
そして制御部21は、光情報記録媒体100の情報記録層におけるアドレス情報に応じたトラックに対し、光ピックアップ30の記録再生光源31から所定の波長λでなる読出用光ビームLRを発射させ、スポット形成部40によって読出光ビームLRを集光して光情報記録媒体100に照射する。
【0120】
すなわち図17に示すように、光ピックアップ30の記録再生光源31は、再生処理に応じた光量で読出光ビームLRを出射し、コリメータレンズ32へ入射する。コリメータレンズ32は、発散光として入射された光ビームを平行光に変換し、ビームスプリッタ33へ入射する。
【0121】
ビームスプリッタ33は、入射された光ビームの大部分をそのまま透過させ、スポット形成部40に入射する。そしてスポット形成部40は、読出光ビームLRを集光し光情報記録媒体100に照射する。
【0122】
またスポット形成部40は、読出光ビームLRに応じて光情報記録媒体100から戻る戻り散乱光ビームLSaを受光し、ビームスプリッタ33に入射させる。
【0123】
ビームスプリッタ33は入射された戻り散乱光ビームLSaを反射し、その方向を90[°]変化させ、集光レンズ35を介して受光素子36に入射する。そして、受光素子36は戻り散乱光ビームLSaビームを光電変換して受光信号を生成し、当該検出信号を信号処理部23(図16)へ供給する。
【0124】
信号処理部23は、受光信号を基に、当該受光信号を基に戻り散乱光ビームLSaの和光量を表す再生RF信号を生成し、外部機器(図示せず)へ送出する。
【0125】
このとき駆動制御部23は、対物レンズ37を光ディスクの径方向であるトラッキング方向及び当該光ディスクに近接する又は離隔するフォーカス方向の2方向へ駆動させることにより、読出光ビームLRの焦点を光情報記録媒体100の所望のトラックに合致させる。
【0126】
また制御部21は、記録処理の際、光ディスク100の情報記録層にデータを記録する箇所を指定するためのアドレス情報と共に、データ書込命令を駆動制御部22へ送出する。駆動制御部22は、供給されたアドレス情報に基づき光ピックアップ30の位置を制御する。
【0127】
さらに制御部21は、外部機器(図示せず)等から入力された書込データに基づいて光ピックアップ30を制御し、光ディスク100の記録層101におけるアドレス情報に応じたトラックに記録光ビームLWの焦点を合わせ、データの記録に適した強度に調整された記録光ビームLWを照射することにより、書込データを当該光情報記録媒体100に記録していく。
【0128】
このように光ディスクドライブ20では、光情報記録媒体100に対する情報の再生及び記録処理を行うようになされている。
【0129】
(5−2)スポット形成部
次に、スポット形成部40について説明する。
【0130】
図18(A)に示すように、光ピックアップ30は、光情報記録媒体100の入射面に対して平行に配置されたガイド軸25A及び25Bに沿って移動する。光ピックアップ30は、スポット形成部40を光情報記録媒体100の入射面に対向させるようレンズ保持部45を配置させており、当該スポット形成部40と光情報記録媒体100とのギャップが例えば20[nm]未満になるように設定されている。
【0131】
図18(B)に示すように、レンズ保持部45は、トラッキング方向に対して直交する方向に平行な4本の支持ワイヤ34Aによって光ピックアップ30に取り付けられている。レンズ保持41は、その外側にボイスコイルモータ43Bが取り付られており、当該ボイスコイルモータ43Bをマグネット34Cと対向させている。そしてレンズ保持部45は、ボイスコイルモータ34Bに流れる電流に応じてマグネット34との間で発生する推力によってトラッキング方向及びフォーカス方向に駆動されるようになされている。
【0132】
図19に示すように、スポット形成部40は、集光レンズ41と、ソリッドイマージョンレンズ(Solid Immersion Lens)42と、プラズモンアンテナ43とから構成されている。
【0133】
集光レンズ41は、例えばガラスやプラスチックなどの光学材料をモールド成型した非球面レンズでなる。集光レンズ41は、入射光(読出光ビームLR及び記録光ビームLW)を集光し、ソリッドイマージョンレンズ42に入射する。
【0134】
ソリッドイマージョンレンズ42は、高屈折率(例えばn=1.92)の球体の一部を平坦化した半球状又は超半球状のレンズでなる。ソリッドイマージョンレンズ42は、屈折率に応じて入射光を集光レンズ41よりも大きい開口数(NA:Numerical Aperture)で集光する。
【0135】
集光された入射光は、ソリッドイマージョンレンズ42の先端で集光点を結ぶ。この集光点にはプラズモンアンテナ43が配置されている。図19(B)に示すようにプラズモンアンテナ43は、例えば三角形状のAuでなる2つの金属板43aによって構成されており、その先端43atで局所プラズモン共鳴を励起するようになされている。
【0136】
ここで入射光のスポットサイズは、金属板43aのギャップGPに比例する。従ってギャップGPは、記録マークのサイズ応じて決定されることになる。例えば直径Dが約20[nm]でなる記録用粒子1Sを用い、1粒子を1ビットとして情報の記録を行う場合、このギャップGPは当該直径Dとほぼ同じ約20[nm]に設定される。
【0137】
このプラズモンアンテナ43は、金属板43aの先端43atにおける電場を増強し、近接場光LWnを発生させる。
【0138】
例えば図20に示すように光情報記録媒体100に対して情報を記録する際、プラズモンアンテナ43は、入射光である記録光ビームLWに応じて近接場光LWnを発生する。なお図では、近接場光LWnを電場として表している。
【0139】
記録用粒子1Sは、ナノ微粒子2が当該近接場光LWnと結合し、局所プラズモン共鳴を生じる。この結果記録用粒子1Sは、近接場光LWnの電場をさらに増強してなる増強近接場光LNsを発生させる。これにより記録用粒子1Sは、効果的に媒質3の温度を上昇させることができ、迅速に媒質3の状態を変化させることができる。
【0140】
なお媒質3が相変化材料であった場合には、例えば記録用粒子1Sが結晶か温度に達するのに十分な初期化光ビームを照射し徐冷することにより、全ての記録用粒子1Sの媒質3を結晶化(すなわち初期化)させておく。その上で記録時には、非晶化させたい記録用粒子1Sに対して記録光ビームLWを照射する。このとき記録光ビームLWの光強度を初期化光ビームよりも小さくしておくことにより、記録用粒子1Sの媒質3を非安定状態に留め、非晶化することができる。これら一連の操作により、記録用粒子1Sの結晶/非晶状態を変化させることができ、情報を記録することができる。
【0141】
また図21(A)に示すように光情報記録媒体100に記録された情報を再生する際、プラズモンアンテナ43は、記録用粒子1Sに対し、入射光である再生光ビームLRに応じて近接場光LRnを発生する。
【0142】
このとき記録用粒子1Sは、媒質3が局所プラズモン共鳴の度合いが大きい第1の状態である場合には、ナノ微粒子2が近接場光LRnと結合して局所プラズモン共鳴を生じることにより当該の電場をさらに増強して増強近接場光LNsを発生させる。このとき記録用粒子1Sは、図7を用いて説明したように強度の大きな散乱光LSを発生する。この散乱光LSは、強度の大きい近接場光LRnに応じて発生されることから、その光強度が非常に大きくなる。
【0143】
ここでスポット形成部40は、1以上でなる大きな開口数で入射光を集光している。このためスポット形成部40に向かって発生される散乱光LSのうち、開口数に応じた広い角度でなる部分を戻り散乱光ビームLSaとして受光することができる。
【0144】
この結果光ピックアップ30(図17)では、強度の大きい戻り散乱光ビームLSaを受光素子36によって受光することが可能となる。
【0145】
一方図21(B)に示すように、記録用粒子1Sは、媒質3が局所プラズモン共鳴の度合いが小さい第2の状態である場合には、ナノ微粒子2が近接場光LRnと結合するものの局所プラズモン共鳴の度合いが小さいため、比較的小さな強度でなる散乱光LSを発生する。
【0146】
この結果光ピックアップ30は、受光素子36によって強度の小さな戻り散乱光ビームLSaを受光することになる。このとき光ピックアップ30は、第1の状態のときと比較すると小さいものの、記録用粒子1Sの表面によって反射された反射光よりも強度の大きい戻り散乱光ビームLSaを受光することができる。
【0147】
光情報記録再生装置20は、受光素子36における戻り散乱光ビームLSaに基づいて再生信号を生成することにより、強度の大きい戻り散乱光ビームLSaに基づいて情報の再生を行うことができる。
【0148】
このとき光情報記録再生装置20は、記録された情報に応じて強度差の大きな戻り散乱光ビームLSaに基づいて再生信号を生成できるため、記録された情報を高い精度で再生し得るようになされている。
【0149】
(6)動作及び効果
以上の構成において、光情報記録媒体100における記録層101は、直径が100[nm]以下でなるナノ微粒子2が、光としての記録光ビームLWに基づく近接場光LWnの照射に応じて複素誘電率εを変化させる媒質3に包囲された状態で配置されている。また光情報記録媒体100は、媒質3の複素誘電率εの変化に応じてナノ微粒子2が生じる局所プラズモン共鳴の度合いを変化させるようにした。
【0150】
これにより記録層101は、複素誘電率εの差異によって情報を記録できると共に、当該複素誘電率εの差異に基づいて変化する局所プラズモン共鳴の度合いによって情報を再生することができる。この結果記録層101は、局所プラズモン共鳴によって発生される強度の大きい戻り散乱光ビームLSaに基づいて情報を再生させることができる。
【0151】
また記録層101は、ナノ微粒子2を媒質3によって包んだ記録用粒子1Sが配列されることにより構成されている。これにより記録層101は、ナノ微粒子2に対する媒質3の厚さを均一にすることができ、同条件において生じる局所プラズモン共鳴の度合いをナノ微粒子2ごとに均一にすることができる。
【0152】
ここで図8を用いて上述したように、ナノ微粒子2の直径Dが50[nm]のときに電界増強度、すなわち局所プラズモン共鳴の度合いが最大となり、直径Dが小さくなるにつれて徐々に低下する。ここで例えば記録密度[1Tb/inch]を達成するためには、1ビット当たりに使用できる面積を25[nm]×25[nm]程度にする必要があると考えられる。
【0153】
さらに記録層101は、記録用粒子1Sの1粒子が1ビットの情報を表すようにしたため、複数の記録用粒子1Sによって1ビットの情報を表す場合と比較して、ナノ微粒子2の直径Dを極力大きく設定することができ、効率良く局所プラズモン共鳴を生じさせることができる。
【0154】
また記録層101は、記録用粒子1Sが、情報が記録されるべきトラックTRにのみ配列されているようにした。これにより記録層101は、記録用粒子1Sの使用数を最小限に抑制することができる。
【0155】
さらに記録層101は、記録用粒子1Sを、記録用粒子1Sをラジアル方向ではトラックピッチTPごとに、タンジェンシャル方向では間隔SPごとにずらして配列することにより、隣接する記録用粒子1Sを互いに所定間隔だけ離隔して配列している。
【0156】
これにより記録用粒子1Sは、隣接する記録用粒子1Sからの増強近接場光LWn及びLRnの影響を殆ど排除することができ、クロストークを抑制することができる。
【0157】
また記録層101は、記録用粒子1Sが当該記録層101の全面に敷き詰められて配列されている。これにより記録層101は、予め基板102上にトラックTRのパターンを形成することなく、製造工程を簡易にすることができる。
【0158】
さらに記録層101は、媒質3が近接場光LWnの照射に応じて結晶状態又は非晶状態に遷移する相変化材料でなる。これにより記録層101は、近接場光LWnに応じて結晶状態又は非晶状態に何度も遷移させることができ、光情報記録媒体100を書き換え可能なメディアとして使用させることができる。
【0159】
また記録層101は、ナノ微粒子2としてAu、Ag、Pt、Al又はCuを用いるようにした。これらの貴金属は、一般的に可視光において局所プラズモン共鳴を生じることが知られている。これにより記録層101は、BD、DVD及びCDに使用された実績のある可視光領域の波長λでなる光に基づいて近接場光LWn及びLRnを発生することができる。
【0160】
さらに記録層101では、ナノ微粒子2の直径Dが1[nm]以上、50[nm]以下でなることにより、図8に示したようにナノ微粒子2として安定した状態で効率良く局所プラズモン共鳴を生じさせることができる。
【0161】
また記録層101では、媒質3の厚さTが1[nm]以上、25[nm]以下でなる
ことにより、図9に示したように効率良く局所プラズモン共鳴を生じさせることができる。
【0162】
さらに記録用粒子1Sは、直径が2[nm]以上、52[nm]以下でなることにより、記録用粒子1Sとして安定した状態で光情報記録媒体100としての記録密度を向上させることができる。
【0163】
ここで一般的に、プラズモンアンテナ43を用いる場合、金属板43aの周囲から記録光ビームLWが漏れて記録層101に照射されることになる。光情報記録媒体100は、記録層101に隣接して配置され、光としての記録光ビームLWを高透過率で透過する基板102を有する。これによりこれにより光情報記録媒体100は、漏れた記録光ビームLWを透過させ、受光素子36に受光させずに済むため、戻り散乱光ビームLSaにノイズの原因となる余計な光を混入させず、再生信号におけるS/N(Singal to Noise)比を向上させることができる。
【0164】
光情報記録媒体100では、基板102と記録層101との界面に反射防止膜が設けられていることにより、漏れた記録光ビームLWを反射させることを防止し、再生信号におけるS/N比を一段と向上させることができる。
【0165】
また光情報記録再生装置20は、光源としての記録再生光源31から出射された読出光ビームLRを集光して光情報記録媒体100に照射し、光情報記録媒体100において生じる局所プラズモン共鳴の度合いを検出するようにした。
【0166】
これにより光情報記録再生装置20は、局所プラズモン共鳴によって発生される強度の大きい散乱光ビームLSaを受光することができると共に、散乱光ビームLSaにおける大きい光量差から局所プラズモン共鳴の度合いを検出することができ、高い精度で情報を再生することができる。
【0167】
また光情報記録再生装置20は、プラズモンアンテナ43によって発生する近接場LRn光を光情報記録媒体100に照射することにより、小さいスポット径で大きなエネルギーを有する近接場光LRnを照射することができる。
【0168】
さらに光情報記録再生装置20は、光照射部であるスポット形成部40総体としての開口数NA(Numerical Aperture)が1.0以上でなることにより、ナノ微粒子2から発生された散乱光LSを大きい角度で受光することができ、戻り散乱光ビームLSaの光量を増大させることができる。またスポット形成部40は、ナノ微粒子2から発生された散乱光LSを直接的に受光するため、散乱光LSを減衰させることなく、大きい光量を維持した散乱光LSに基づく光量の大きい戻り散乱光ビームLSaを得ることができる。
【0169】
また光情報記録再生装置20は、記録再生用光源31から出射された記録光ビームLWを集光して近接場光LWnとして光情報記録媒体100に照射し、光情報記録媒体100において生じる局所プラズモン共鳴の度合いを変化させるよう制御部2の制御に基づき当該記録光ビームLRの強度を変化させるようにした。
【0170】
これにより光情報記録再生装置20は、大きな戻り散乱光ビームLSaが得られる状態で光情報記録媒体100に情報を記録し得る。
【0171】
以上の構成によれば、光情報記録媒体100の記録層101は、直径が100[nm]以下でなるナノ微粒子2と媒質3とによって構成され、記録光ビームLWの照射に応じて媒質3の複素誘電率εを変化させることにより情報を記録し、読出光ビームLRの照射に応じたナノ微粒子2による局所プラズモン共鳴の度合いの変化により情報を再生させるようにした。
【0172】
これにより光情報記録媒体100は、情報の再生時における戻り光として光量の大きな戻り散乱光ビームLSaを生成することができ、かくして戻り光の光量を増大させ得る光情報記録媒体、当該光情報記録媒体に用いられる情報記録用粒子、並びに当該光情報記録媒体を用いた光情報再生方法、光情報再生装置、光情報記録方法及び光情報記録装置を実現できる。
【0173】
(7)他の実施の形態
なお上述した実施の形態においては、光ピックアップ30がガイド軸25A及び25Bに沿って移動するようにした場合について述べたが、本発明はこれに限られない。例えば図22に示すように、根本部分が回転することにより移動するサスペンション150を用いるようにしても良い。このサスペンション150では、その先端にスポット形成部140を設けると共に、当該スポット形成部140の上部に光ピックアップ130を設け、当該光ピックアップ130を同様のサスペンション(図示しない)によって移動させるようにする。
【0174】
この場合、スポット形成部140は、図23に示すように、光ピックアップ130から入射される入射光Lを受光して集光する。このときスポット形成部140は、空気の圧力によって光情報記録媒体100から所定の浮上すきまGFを維持した状態で移動するスライダ144内に形成される。なお、スライダ144内に光ピックアップ130及びスポット形成部140の双方を設けることももちろん可能である。
【0175】
また上述した実施の形態においては、ナノ微粒子2として金属粒子を用い、媒質3として相変化材料を用いるようにした場合について述べたが、本発明はこれに限られない。例えば図24に示すように、ナノ微粒子2として相変化材料を用い、媒質3として金属粒子を用いるようにしても良い。この場合であっても、媒質3の分極に基づいてナノ微粒子2と媒質3との界面で局所プラズモン共鳴を発生させることができ、上述した実施の形態と同様の効果を得ることができる。
【0176】
さらに上述した実施の形態においては、集光レンズ41、ソリッドイマージョンレンズ42及びプラズモンアンテナ43によって入射光Lを集光して光情報記録媒体100に照射する場合について述べたが、本発明はこれに限られない。本発明は、様々な構成でなる光学部品によって入射光Lを集光して光情報記録媒体100に照射することができる。
【0177】
さらに上述した実施の形態においては、プラズモンアンテナ43によって発生した近接場光LRn及びLWnを光情報記録媒体100に照射するようにした場合について述べたが、本発明はこれに限られない。例えば単純な集光レンズによって集光した光ビームを光情報記録媒体100に対して照射しても良い。
【0178】
さらに上述した実施の形態においては、再生光ビームLRと反対方向に進行する散乱光LSを戻り散乱光ビームLSaとして受光するようにした場合について述べたが、本発明はこれに限られない。例えば光情報記録媒体100における入射面とは反対側に受光素子を設置し、当該光情報記録媒体を透過した散乱光LSを受光するようにしても良い。この場合であっても、上述した実施の形態と同様の効果を得ることができる。
【0179】
さらに上述した実施の形態においては、局所プラズモン共鳴の度合いが最大となる光の波長を記録用光ビームLW及び読出用光ビームLRの波長とするようにした場合について述べたが、本発明はこれに限られない。本発明では、記録用光ビームLW及び読出用光ビームLRの波長は適宜選択でき、例えば実施例1のサンプルSS1に対して405[nm]でなる記録用光ビームLW及び読出用光ビームLRを用いるようにしても良い。
【0180】
さらに上述した実施の形態においては、記録層としての記録層101によって光情報記録媒体としての光情報記録媒体100を構成するようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、この他種々の構成でなる記録層101によって光情報記録媒体を構成するようにしても良い。
【0181】
さらに上述した実施の形態においては、ナノ微粒子としてのナノ微粒子2と、媒質としての媒質3とによって記録用粒子としての記録用粒子1Sを構成するようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、その他種々の構成によるナノ微粒子と、媒質とによって記録用粒子を構成するようにしても良い。
【0182】
さらに上述した実施の形態においては、光照射部としてのスポット形成部40と、検出部としての受光素子36とによって光情報再生装置としての光情報記録再生装置20を構成するようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、その他種々の構成による光照射部と、検出部とによって本発明の光情報再生装置を構成するようにしても良い。
【0183】
さらに上述した実施の形態においては光照射部としてのスポット形成部40と、光強度制御部としての制御部21とによって光情報記録装置としての光情報記録再生装置20を構成するようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、その他種々の構成による光照射部と、光強度制御部とによって本発明の光情報記録装置を構成するようにしても良い。
【産業上の利用可能性】
【0184】
本発明は、例えば大容量でなる光情報記録再生装置に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0185】
【図1】各材料の屈折率と分極の関係を示す略線図である。
【図2】本発明の記録原理の説明に供する略線図である。
【図3】本発明の再生原理の説明に供する略線図である。
【図4】記録用材料の構成を示す略線図である。
【図5】近接場光強度の誘電率依存性を示す略線図である。
【図6】サンプルの構成を示す略線図である。
【図7】結晶状態と非晶状態における散乱光強度を示す略線図である。
【図8】Ag中心核の直径を変化させたときの電界増強度を示す略線図である。
【図9】GeSbTe殻の厚さを変化させた時の電界増強度を示す略線図である。
【図10】400nmにおける銀粒子の共鳴条件を示す略線図である。
【図11】光情報記録媒体の構成を示す略線図である。
【図12】記録層の構成(1)を示す略線図である。
【図13】記録層の構成(2)を示す略線図である。
【図14】記録層の構成(3)を示す略線図である。
【図15】記録層の構成(4)を示す略線図である。
【図16】光情報記録再生装置の構成を示す略線図である。
【図17】光ピックアップの構成を示す略線図である。
【図18】スポット形成部の配置を示す略線図である。
【図19】スポット形成部の構成を示す略線図である。
【図20】情報の記録の説明に供する略線図である。
【図21】情報の再生の説明に供する略線図である。
【図22】他の実施の形態によるスポット形成部の配置を示す略線図である。
【図23】他の実施の形態によるスポット形成部の構成を示す略線図である。
【図24】他の実施の形態による記録用材料の構成を示す略線図である。
【符号の説明】
【0186】
1……記録用材料、1S……記録用粒子、2……ナノ微粒子、2S……Ag中心核…、3……媒質、3S……GeSbTe殻、21……制御部、23……信号処理部、30……光ピックアップ、31……記録再生光源、36……受光素子、40……スポット形成部、41……集光レンズ、42……ソリッドイマージョンレンズ、43……プラズモンアンテナ、100……光情報記録媒体、101……記録層、102……基板。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
直径が100[nm]以下でなるナノ微粒子が、光の照射に応じて複素誘電率を変化させる媒質に包囲された状態で配置され、上記媒質の上記複素誘電率の変化に応じて上記ナノ微粒子が生じる局所プラズモン共鳴の度合いを変化させる記録層
を有する光情報記録媒体。
【請求項2】
上記記録層は、
上記ナノ微粒子を上記媒質によって包んだ記録用粒子が配列されることにより構成されている
請求項1に記載の光情報記録媒体。
【請求項3】
上記記録用粒子は、
1粒子が1ビットの情報を表す
請求項2に記載の光情報記録媒体。
【請求項4】
上記記録用粒子は、
情報が記録されるべきトラックにのみ配列されている
請求項2に記載の光情報記録媒体。
【請求項5】
上記記録用粒子は、
隣接する記録用粒子と互いに所定間隔だけ離隔して配列されている
請求項2に記載の光情報記録媒体。
【請求項6】
上記記録用粒子は、
上記記録層の全面に敷き詰められて配列されている
請求項2に記載の光情報記録媒体。
【請求項7】
上記媒質は、
上記光の照射に応じて結晶状態又は非晶状態に遷移する相変化材料でなる
請求項1に記載の光情報記録媒体。
【請求項8】
上記ナノ微粒子は、
Au、Ag、Pt、Al又はCuでなる
請求項1に記載の光情報記録媒体。
【請求項9】
上記記録用粒子は、
直径が3[nm]以上、52[nm]以下でなる
請求項2に記載の光情報記録媒体。
【請求項10】
上記ナノ微粒子は、
直径が1[nm]以上、50[nm]以下でなる
請求項2に記載の光情報記録媒体。
【請求項11】
上記媒質は、
厚さが1[nm]以上、25[nm]以下でなる
請求項2に記載の光情報記録媒体。
【請求項12】
上記記録層に隣接して配置され、上記光を高透過率で透過する基板
を有する請求項1に記載の光情報記録媒体。
【請求項13】
上記基板は、
上記記録層との界面に反射防止膜が設けられている
請求項12に記載の光情報記録媒体。
【請求項14】
直径が100[nm]以下でなる金属微粒子が、光の照射に応じて結晶状態又は非晶状態に遷移する相変化材料によって包囲されてなる記録層
を有する光情報記録媒体。
【請求項15】
直径が100[nm]以下でなるナノ微粒子と媒質とによって構成され、記録光の照射に応じて媒質の複素誘電率を変化させることにより情報を記録し、読出光の照射に応じた上記ナノ微粒子による局所プラズモン共鳴の度合いの変化により上記情報を再生させる記録層
を有する光情報記録媒体。
【請求項16】
直径が100[nm]以下でなるナノ微粒子が、所定強度以上でなる光の照射に応じて複素誘電率を変化させる媒質に包囲されてなる
記録用粒子。
【請求項17】
直径が100[nm]以下でなるナノ微粒子と当該ナノ粒子を包む媒質とによって構成され、上記ナノ微粒子と上記媒質のいずれか一方が、所定強度以上でなる光の照射に応じて複素誘電率を変化させる
記録用粒子。
【請求項18】
光を集光して光情報記録媒体に照射する光照射ステップと、
上記光情報記録媒体において生じる局所プラズモン共鳴の度合いを検出する検出ステップと
を有する光情報再生方法。
【請求項19】
光源から出射された光を集光して光情報記録媒体に照射する光照射部と、
上記光情報記録媒体において生じる局所プラズモン共鳴の度合いを検出する検出部と
を有する光情報再生装置。
【請求項20】
上記光照射部は、
プラズモンアンテナによって発生する近接場光を上記光情報記録媒体に照射する
請求項19に記載の光情報再生装置。
【請求項21】
上記光照射部は、
当該光照射部総体としての開口数NA(Numerical Aperture)が1.0以上でなる
請求項19に記載の光情報再生装置。
【請求項22】
光情報記録媒体に対して光を照射したときに当該光情報記録媒体において生じる局所プラズモン共鳴の度合いを変化させることにより情報を記録する
光情報記録方法。
【請求項23】
光源から出射された光を集光して光情報記録媒体に照射する光照射部と、
上記光情報記録媒体において生じる局所プラズモン共鳴の度合いを変化させるよう上記光の強度を変化させる光強度制御部と
を有する光情報記録装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【公開番号】特開2010−20849(P2010−20849A)
【公開日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−181604(P2008−181604)
【出願日】平成20年7月11日(2008.7.11)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】