説明

光源装置

【課題】 半導体レーザからのレーザ光を効率よく合成集光させて高出力のレーザ光を出射可能な光源装置を提供することを目的とする。
【解決手段】 本発明の光源装置は、レーザ光の出射部を複数有する光源部と、光源部からの光が入射される入射部と、入射された光が導波され合成される光導波部と、合成された光が外部に出射される出射部とを有する光学素子と、光学素子の出射部から出射される光を集光させる集光部材と、を有する光源装置であって、光導波部は、光軸方向に屈折率が異なる第1領域及び第2領域を有し、第1領域は、屈折率が一定であり、且つ、光導波部の光軸と垂直な面または断面形状が円形、楕円形、円または楕円に近い多角形のいずれかであり、第2領域は、光軸に垂直な断面の少なくとも1つの方向において、光軸の屈折率が最も大きく、側面の屈折率が最も小さいことを特徴とする。これにより、小型化で単峰型の合成光が得られる光源装置とすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の光源から出射されるレーザ光を合成して集光し、高出力のレーザ光を出射させる光源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
レーザ光源を用いた加工用、マーク用の光源装置は、高出力なスポットが得られるレーザ光が必要なため、YAG、ルビーなどの固体レーザや、CO、He−Ne、エキシマレーザなどの気体レーザが主として光源として用いられている。しかし、これらは光源自体の大きさが大きいため、それらを搭載した装置も大きくなり、運搬や設置などの取り扱いに大きな工数が必要となる。また、光源が高価なため、装置が高コストとなり、導入が難しいことが課題となっている。そのため、小型軽量で取り扱いが容易で安価な半導体レーザを光源として用いることが望まれている。
【0003】
半導体レーザは、半導体積層構造中にクラッド層に挟まれた厚さ数ミクロン程度の活性層を有し、この活性層からレーザ光を出射させるものである。このような構造の半導体レーザは、高出力になると、レーザ光出射部である半導体層端面のエネルギー密度が極めて高くなり、端面破壊を生じる。そのため、端面破壊が生じない程度の出力で出射された半導体レーザからのレーザ光を合成する方法が提案されている。
【0004】
例えば、特許文献1には、偏光プリズムやダイクロイックプリズムなどを使用することで偏光、或いは分光された光を合成することが開示されている。また、特許文献2には、ロッドインテグレータを使用して、複数のレーザ光源からのレーザ光を合成することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特表2008−530596号公報
【特許文献2】WO2007/108504号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に開示されているような光学プリズムを用いた場合、例えば、偏光プリズムを使用して偏光合成を行う場合、用いる半導体レーザの数に応じて多数の偏光プリズムが必要となる。また、ダイクロイックプリズムを使用して波長合成を行う場合は、3つの波長のレーザ光を合成することはできるが、それより多くのレーザ光を合成するには、やはり、多数のダイクロイックプリズムが必要となり装置の小型化に限界がある。
【0007】
また、特許文献2に開示されているような、側面が光軸に平行なロッドインテグレータを用いた場合、その内部に入射されたレーザ光を合成することは可能であるが、出射される合成光の広がり角度(放射角度)が大きいため、それを集光させるためのレンズ径が大きくなり、装置の小型化が困難である。更に、入射面(断面)が長方形のロッドインテグレータを用いると、その出射面において強度分布が均一化された合成光となるため、レンズを用いて集光させたとしても単峰型の強度分布の合成光を得るのが困難である。
【0008】
更に、レーザ光源を加工用、マーク用に用いる場合、対象部品の大きさ等により最適な集光スポット径の機器を選択しなければならず、対象部品が変更となった場合、機器を変更しなければならない。また、機器自体の変更ではなく、別の手段としてアパーチャー等により光源からの光のうち、外周の光を遮断することによりスポット径を最適な直径に変更する手段が知られている(例えば特開2006−239743号公報)。しかしながら、この場合、外周の光を遮断してしまうため、無駄になる光量が存在し、光の利用効率が低下し、高出力のレーザ光が必要な場合に問題となる。
【課題を解決するための手段及び発明の効果】
【0009】
以上の課題を解決するため、本発明の光源装置は、レーザ光の出射部を複数有する光源部と、光源部からの光が入射される入射部と、入射された光が導波され合成される光導波部と、合成された光が外部に出射される出射部とを有する光学素子と、光学素子の出射部から出射される光を集光させる集光部材と、を有する光源装置であって、光導波部は、光軸方向に屈折率が異なる第1領域及び第2領域を有し、第1領域は、屈折率が一定であり、且つ、光導波部の光軸と垂直な面または断面形状が円形、楕円形、円または楕円に近い多角形のいずれかであり、第2領域は、光軸に垂直な断面の少なくとも1つの方向において、光軸の屈折率が最も大きく、側面の屈折率が最も小さいことを特徴とする。
【0010】
このような構成により、光学素子からの出射光を1つまたは2つのピークを有する強度分布の合成光とし、かつ、その合成光の放射角度の広がりを抑制することができる。そのため、集光部材の径を大きくすることなく合成光を効率よく集光させ、単峰型の強度分布を有する合成光を得ることができ、その集光した合成光のスポット径を使用に最適な大きさにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1A】図1Aは、本発明の一実施形態に係る光源装置の構成を示す図である。
【図1B】図1Bは、図1Aの光学素子のA−A面における断面図である。
【図2】図2は、本発明の一実施形態に係る光源装置によって合成されたレーザ光の強度分布を示すグラフである。
【図3A】図3Aは、本発明の一実施形態に係る光学素子の光導波部の第1領域の光軸に垂直な断面図である。
【図3B】図3Bは、本発明の一実施形態に係る光学素子の光導波部の第1領域の光軸に垂直な断面図である。
【図4】図4は、本発明の一実施形態に係る光学素子の光軸を含む断面図である。
【図5A】図5Aは、本発明の一実施形態に係る光学素子の光導波部の第2領域の光軸に垂直な断面図である。
【図5B】図5Bは、本発明の一実施形態に係る光学素子の光導波部の第2領域の屈折率分布である。
【図6】図6は、本発明の一実施形態に係る光学素子の光導波部の光軸を含む断面図と、第1領域及び第2領域の光軸に垂直な断面図である。
【図7】図7は、本発明の一実施形態に係る光学素子の光導波部の第2領域の光軸に垂直な断面図である。
【図8】図8は、本発明の一実施形態に係る光学素子の光導波部の光軸を含む断面図である。
【図9】図9は、本発明の一実施形態に係る光学素子の光導波部の第2領域の斜視図である。
【図10】図10は、本発明の一実施形態に係る光学素子の光導波部の光軸を含む断面図である。
【図11】図11は、本発明の一実施形態に係る光学素子の光軸を含む断面図である。
【図12】図12は、本発明の一実施形態に係る光学素子の光軸を含む断面図である。
【図13】図13は、本発明の一実施形態に係る光学装置の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明を実施するための最良の形態を、以下に図面を参照しながら説明する。ただし、以下に示す形態は、本発明の技術思想を具体化するための光源装置を例示するものであって、以下に限定するものではない。
また、本明細書は、特許請求の範囲に示される部材を、実施の形態の部材に特定するものでは決してない。特に、実施の形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、特定的な記載がない限りは、本発明の範囲をそれのみに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。尚、各図面が示す部材の大きさや位置関係等は、説明を明確にするため誇張していることがある。更に以下の説明において、同一の名称、符号については同一もしくは同質の部材を示しており、詳細説明を適宜省略する。
【0013】
<実施の形態1>
本実施の形態の光源装置の構成を図1Aに示す。また、図1Bは、図1Aの光学素子2の、光軸Zを含むA−A面における断面図を示しており、第1領域及び第2領域の屈折率について説明するための図である。本実施の形態において、光源装置は、光源部1と、光学素子2と、集光部材であるレンズ3と、を備える。光源部11は、半導体レーザチップを金属や樹脂あるいはセラミックなどのパッケージに搭載したレーザ光源11を複数有しており、各レーザ光源11から、光学素子2の入射部21に向けてそれぞれレーザ光を出射する。透光性の光学部材からなる棒状の光学素子2は、一方の端部(端面)を入射部21、他方の端部(端面)を出射部23としており、これらは光導波部22を介して光学的に連続して設けられており、この光導波部22の中心に光軸Zを有する。
【0014】
光源部1からそれぞれ出射され、光学素子2の入射部21からその内部に導入された複数のレーザ光は、光導波部22の側面(内面)22aで反射を繰り返しながら出射部23に向かって進行して合成される。光学素子2の出射部23から出射された合成光は、レンズ3によって集光される。
【0015】
そして、本実施の形態において、光学素子2の光導波部22が、光学特性が異なる第1領域221(221a、221b)と第2領域とを有していることを特徴とする。詳細には、第1領域221a、221bは、その内部の屈折率が一定であり、且つ、光導波部の光軸Zと垂直な面または断面形状が円形、楕円形、円または楕円に近い多角形のいずれかであり、第2領域222は、光軸Zに垂直な断面の少なくとも1つの方向において、光軸の屈折率が最も大きく、光導波部の側面の屈折率が最も小さい屈折率分布を有することを特徴とする。尚、本明細書において、「光軸の屈折率」とは、光導波部の光軸近傍における屈折率を指す。同様に、「側面の屈折率」とは、側面近傍の光導波部の屈折率を指す。
【0016】
このような構成により、光学素子2の出射部23から出射される合成光の放射角度を小さく(狭く)することができる。そのため、効率よく集光部材で集光することができ、図2に示すような単峰型の強度分布を有するレーザ光の合成光を得ることができる。尚、図2に示すグラフは、縦軸が光強度、横軸がスポット径を示しており、本発明によってこのグラフに示すような単峰型でスポット径の小さい合成光を得ることができる。また、本明細書において「ピーク」とは、FFP(ファーフィールドパターン)の強度分布のうち、実質的に最大強度の部分を指し、その近傍領域に最大強度と近似値を示す数個の強度の部分をも含めるものとする。そして、「単峰型の合成光」とは、このようなピークを1つ有する強度分布を有する合成光を指す。
【0017】
光導波部22内において、光軸Zに垂直な断面内に光軸と側面とで屈折率が異なる第2領域を有することで合成光の放射角度を制御することができることについて、図1Bを用いて説明する。図1Bは、光学素子2の光導波部22の光軸Zを含む断面図であり、入射部21側から順に第1領域221aと第2領域222と第1領域221bとが設けられた光導波部22を示す。尚、ここでは、説明を簡略化するために、複数のレーザ光源のうち、1つのレーザ光源からのレーザ光の屈折で説明し、更に、光導波部22の側面22aが光軸と平行である光学部材を用いて説明する。
【0018】
光源部と光学素子2の間、及び集光部材(図示せず)と光学素子2の間(すなわち、光学素子2の周囲)の屈折率をn、第1領域221a、221bの屈折率をそれぞれn、nとする。第2領域222は、光軸Zと垂直な面の1つの方向(ここでは、図面の上下方向とする)において、中心となる光軸Zの屈折率をnとし、光導波部の側面(図面では上端と下端)に向かって屈折率が小さくなるように制御されており、側面ではnよりもα分だけ小さい屈折率n−αとなっている。尚、ここでは、各屈折率が、n<n=n<n−α<nの関係となっているものとする。
【0019】
レーザ光の入射部21への入射角度をθとし、光学素子2の第1領域221に入射されたレーザ光の屈折角度をθとする。この場合スネルの法則により、
・sinθ=n・sinθ…(式1)
が成り立つ。
【0020】
光導波部22の側面が光軸Zと平行であるため、第1領域221aから第2領域222へのレーザ光の入射角度は、第1領域221a内に入射されたレーザ光の屈折角度θと同じθとなる。そして、第2領域222内に入射されたレーザ光の光軸での屈折角度をθとすると、
・sinθ=n・sinθ…(式2)
が成り立つ。
【0021】
第2領域222は、光軸Zの屈折率nが、光導波部の側面22aの屈折率よりも高いため、レーザ光は屈折角度θのまま直進するのではなく、光軸Zに近づくように屈曲しながら伝搬する。そのため、屈折率n−αである側面での屈折角度θ’は、θよりも小さくなり、
θ>θ’…(式3)
となる。
【0022】
第2領域222の側面で反射され第1領域221bに伝搬するレーザ光の屈折角度θとすると、
(n−α)・sinθ’=n・sinθ…(式4)
となる。
【0023】
そして、上記(式1)〜(式4)により、
・sinθ=n・sinθ>n・sinθ’>(n−α)・sinθ’=n・sinθ…(式5)
すなわち、
・sinθ>n・sinθ…(式6)
の関係が成り立ち、n=nであることから、
θ>θ…(式7)
となる。
【0024】
第1領域221bの出射部23から屈折率nの外部に出射されるレーザ光の放射角度θ’とすると、
・sinθ=n・sinθ’…(式8)
が成り立つ。
【0025】
そして、(式1)、(式7)、(式8)より、
θ>θ’…(式9)
となる。つまり、光学素子22に入射した角度θよりも、外部に出射される際の角度θ’の方が小さくなる。
【0026】
このように、レーザ光の出射光の屈折角度を小さくすることができる光学素子を用いると、屈折率が異なる領域を具備しない(屈折率が一定である)光学素子のみを用いて同程度のスポット径に集光させる場合と比較すると、集光部材(レンズ等)の径を小さく、或いは、光学素子の出射部と集光部材との距離を短くすることができる。
【0027】
一例を挙げると、入射部から出射部までの間の光導波部の屈折率が一定である光学素子を用いて、図1Aに示すような光源部と集光部材とを具備する光源装置とする場合、その出射部から出射される合成光の放射角度が約20°であるとする。そして、このような光学素子を用いて出射光のスポット径を100μmにするためには、径が約8mmのレンズが必要であるとする。これに対し、光軸方向の長さが同じであり、屈折率が異なる領域(第1領域、第2領域)を有する本実施の形態のような光学素子を用いると、第2領域の屈折率の分布状態を制御することにより、例えば、出射される合成光の放射角度を約10°以下と、約半分程度にまで狭くすることができる。そのため、同じ100μmのスポット径を得るためのレンズの径を、約6mm程度と、約25%近く小さくすることができる。更に、その小型化した径6mmのレンズが、前述の径8mmのレンズと開口数(NA)が同じであれば、光学素子の出射部からの距離を短くすることができ、更に、集光スポットまでの距離も短くすることができる。このようにして、同じ数の部材を用いても、より小型化(集積化)して配置させることができる。
【0028】
以下、各構成部材について、詳説する。
【0029】
(光学素子)
光学素子は、光源部から出射される複数のレーザ光を入射させる入射部と、その光が導波され合成される光導波部と、その合成光を外部に出射させる出射部とを有している棒状または筒状の光学部材であり、ここでは光ファイバのような可撓性の高いものではなく、光軸が固定された直線状となる剛性の高い部材を用いてなる光学部材を光学素子とする。
【0030】
本実施の形態においては、この光学素子の光導波部が、光軸方向に光学特性(屈折率)が異なる少なくとも2以上の領域、すなわち、第1領域と第2領域を有している。第1領域は、その内部の屈折率が一定であり、且つ、光導波部の光軸と垂直な断面形状が円形、楕円形、円または楕円に近い多角形のいずれかである。また、第2領域は、光軸に垂直な断面の少なくとも1つの方向において、光軸の屈折率が最も大きく、光導波部の側面の屈折率が最も小さくなっている。
【0031】
第1領域は、光軸と垂直な断面を特定の形状、具体的には、円形、楕円形、円または楕円に近い形状とすることで、合成光を単峰型に制御することができる。すなわち、合成光の強度分布を制御できる。そして、第2領域は、光軸と垂直な断面の少なくとも1つの方向において屈折率の異なる領域を設ける、具体的には、径方向において屈折率分布を設けることで、レーザ光の屈折角度を制御することができる。すなわち、合成光の放射角度を制御することができる。このように、光導波部内にそれぞれ光学的な作用が異なる領域を設けることで、高出力の合成光を出射可能な光学装置を、少ない部品数の小型化された光学装置とすることができる。以下、光導波部の第1領域と第2領域について更に詳説する。
【0032】
(光導波部の第1領域)
光導波部の第1領域は、主として合成光の強度分布を制御する領域である。特に、光軸に垂直な断面形状がその強度分布の波形を大きく左右するものであり、まず、第1領域の光軸に垂直な断面形状について説明する。図3A、図3Bは、光学素子2の光導波部の第1領域221aの任意の位置における光軸Zに垂直な断面形状を示す。第1領域は、その断面形状によって、出射部における合成光の強度分布の状態を制御できるものであり、本実施の形態においては、第1領域の光軸に垂直な断面形状が円形、楕円形、円または楕円に近い多角形のいずれかが好ましい。特に、光学素子からの出射光を、中央に強度分布のピークを有する単峰型の合成光とする場合は、図3Aに示すように断面形状を円形とするのが好ましい。
【0033】
また、図3Bに示すように、第1領域の断面形状を楕円形とすることでも、上記と同様の単峰型の合成光を得ることができる。尚、楕円形の場合は、長軸及び短軸の長さ比を調整することによって、2つの強度分布のピークを有する合成光とすることもでき、更に、それらの比を調整することで、強度ピーク点間の距離を調整することができる。
【0034】
図3A、図3Bに示すような、第1領域の断面が円形や楕円形の場合は、光導波部の側面(内面)22aが連続する1つの面(曲面)からなっているため、光学素子の出射部における合成光を1つまたは2つのピークを有する強度分布の合成光とするのには好ましい。しかしながら、円や楕円に近い多角形でも、同様の効果を得ることができる。例えば、断面形状が64角形のような場合、第1領域の側面は64面の平面からなっており、正64角形の場合は、その1つの内角が約174°となるため、断面が円形(曲面)の場合と比較的良く似た光の反射をさせることができる。多角形とする場合、側面が平面の集合体であるため、その角数が多いほど円や楕円に近付くために好ましく、具体的には64角形以上、更に好ましくは128角形以上の多角形が好ましい。また、正多角形であることが好ましい。
【0035】
また、第1領域は、その側面に、レーザ光が実質的に照射(反射)されない領域、すなわちレーザ光の合成に寄与しない(影響を与えない)領域を有していてもよく、その場合は、光軸に垂直な断面形状は、円形や楕円形(それらに近い多角形含む)以外の形状であっても構わない。このような構成として、例えば、光軸に垂直な断面が上記円形や楕円形(それらに近い多角形含む)であり、かつ、側面が傾斜面である光導波部を有する場合、少なくとも出射部の径よりも大きい径を有する領域(以下、「大径領域」とも称する)を、第1領域のいずれかの領域において、1つまたは2以上の領域に設けられていてもよい。
【0036】
次に、第1領域の光軸に平行な断面形状について説明する。第1領域の側面は、図1A、図1Bに示すように光軸に対して平行でもよく、また、図4に示すように傾斜してもよい。光導波部の側面が傾斜していることで、その出射部から出射される合成光の放射角度を制御することが可能であり、特に入射部から出射部にかけて徐々に広がるような傾斜面とすることで、合成光の放射角度を小さくすることができる。そのため、第2領域で制御される合成光の放射角度を更に小さくすることが可能となる。傾斜させる場合は、光軸Zと第1領域の傾斜した側面とのなす角度βは、2°以上10°以下の傾斜角とするのが好ましく、更に4°以上6°以下の範囲が好ましい。第2領域の側面も、同様に傾斜していても構わない。
【0037】
合成光の強度分布を単峰型にするためには、第1領域の光軸方向の長さ(合成に有効な側面を有する領域の長さ)は、その側面での反射を繰り返すことが可能なように、ある程度は長いことが必要である。本実施の形態では、少なくとも光学素子の光導波部の長さは、出射部の径よりも長ければよく、更に、出射部の径に対して、長さを5倍以上100倍以下とするのが好ましく、取り扱いや、装置の大きさを考慮して10倍以上20倍以下とするのがより好ましい。
【0038】
具体的には、第1領域の径が約2mm〜20mmであり、光軸に垂直な断面形状が円形の光学素子の場合、第1領域の光軸方向の長さは約100mm〜200mm程度のものが好ましい。尚、第1領域の長さ、及び、径2は、上述の大径領域のように、レーザ光の合成に寄与しない領域を除いた領域、すなわち、実質的にレーザ光の合成に寄与する第1領域の側面を有する領域における長さ及び径とする。また、第1領域が複数に分離されている場合は、それらの合計の長さとする。
【0039】
第1領域は、屈折率が一定の部材であり、光学ガラスまたは中空からなる。用いる材料としては、光源部からのレーザ光を吸収しにくい材料であるのが好ましく、更に、第1領域の周囲の気体よりも屈折率の大きい材料であるのが好ましい。例えば、光学素子の周囲が空気(屈折率1.0)で囲まれている場合、光学素子の第1領域として石英ガラス(屈折率1.5)を用いることで、効率よく光を導波させることができる。光学ガラスの具体的な材料としては、無機物としては、ソーダ石灰ガラス、硼珪酸ガラス、アルミノ珪酸ガラス、石英ガラスなど各種ガラスを挙げることができ、中でも、BK7ガラス、B270ガラス、SF11ガラス、PBK40ガラス、石英ガラスなどが好ましい。特に、光源部として波長が450nm以下の紫外〜青色の半導体レーザを用いる場合、第1領域を無機化合物である石英ガラスとする光学素子を用いることで、経時変化(劣化)を抑制することができ、光の合成力の効率を低下しにくくすることができる。また、有機物としては、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂等の光学特性がガラスに近い樹脂を用いることもできる。
【0040】
更に、光導波部の周囲(側面)を上述のような気体(空気)ではなく、第1領域を構成する部材よりも小さい屈折率を有する固体からなる被覆部材を有していてもよい。特に、光学素子よりも機械的強度の高い被覆部材や、展性の高い部材等からなる被覆部材を用いることで、外部からの衝撃を受けやすい環境下での使用時や、工程内や輸送時の落下時等に破損するのを防止することができる。また、接着やネジなどの締結部品を用いて光学素子を光源装置に組み込む場合など、光学素子に機械的負荷を掛ける場合に作業性が向上し、かつ、容易に安定して固定することができる。
【0041】
また、周囲の温度が比較的高くなり易い環境下で使用する場合、第1領域よりも熱伝導率の高い部材からなる被覆部材を設けることで、第1領域の劣化を低減し、屈折率差の変化を低減して安定した合成光を得ることができる。第1領域と被覆部材とは、それらの屈折率差が大きい程、光導波部の側面で反射し易い(外部に漏れ出しにくい)ため好ましく、特に0.5以上の差があることが好ましい。
【0042】
被覆部材の好ましい材料としては、金属、無機化合物、有機化合物等を用いることができ、例えば、金属としてはアルミニウム、ステンレス、銀、真鍮等の金属または合金をあげることができる。また、無機化合物としては、セラミック、石英ガラス等があげられる。有機化合物としては、POM等の熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂等を用いることができ、これらに光を反射し易いアクリル系樹脂等を混合させてもよい。これらは、単独で用いてもよいし、混合して用いてもよい。或いは、積層させるようにしてもよい。尚、被覆部材は、第2領域にも設けられてもよい。その場合、第1領域と第2領域とを同一部材で一体的に被覆するのが好ましく、また、別部材で被覆しても構わない。また、第2領域のみを被覆してもよい。
【0043】
第1領域として、上記光学ガラスの他、中空、すなわち、その内部が空洞である筒状の光学素子を用いてもよい。この場合、筒の側面に光源部からの光を効率よく反射可能な反射部材(ミラー)を設けるのが好ましい。第1領域の光導波部が固体ではなく気体若しくは液体などの流体で充填された空洞とすることで、光の吸収を低減させて光利用効率を向上することができる。そのため、第1領域がガラスなどの固体からなる第1領域に比して、その側面での反射回数を多くすることができるため、より効率よく合成光を得ることができる。換言すれば、第1領域がガラスなどの固体からなる光学素子よりも短い長さの光学素子で同様の合成を行うことができるため、光源装置をより小型化することができる。また、第1領域の内外を任意に移動可能である流体を光導波部として用いることで、光の合成に伴う発熱により温度が上昇した光導波部内の流体そのものをその外部に移動させることができ、温度変化による屈折率の変化の影響を受けにくくし、安定して合成光を得ることができる。
【0044】
第1領域が中空である場合、その空洞に充填される気体としては、化学的に安定で、光源部からのレーザ光を吸収しにくいものが好ましく、更に、温度変化による絶対屈折率の変化が少ないものが好ましい。具体的には空気(N、O)が好ましい。
【0045】
第1領域の空洞内の気体の圧力は、常圧(大気圧)〜真空とするのが好ましく、光源部の波長や気体の組成、更にはコストや取り扱い易さ等を考慮し、目的や用途に応じて調整することができる。例えば、紫外線など比較的短波長の半導体レーザを光源部として用いる場合などは、密度の小さい気体を用いることで(例えば、真空)、第1領域内での光の吸収を低減することができ、効率よく合成光を得ることができる。また、可視光など常圧の気体中での光の吸収が極めて少ない波長の半導体レーザを光源として用いる場合などは、常圧としても光の合成には大きな影響を与えることはなく、また、減圧のための装置等も不要とし、取り扱いが容易となる。
【0046】
中空の第1領域は、単一または複数の部材が光軸を中心とする同心円方向に積層されたもの、更には、光軸方向に異なる部材が接合されたもの等を用いることができ、例えば、金属製の筒体や、樹脂などからなる筒体の側面にレーザ光を反射可能な反射部材を設けたものなどを用いることができる。具体的には、アルミニウム、ステンレス、銀、真鍮等をあげることができ、これらを単独または合金で、或いは、積層させて用いることができる。例えば、アルミニウム製の筒体の側面に銀や誘電体多層膜など、レーザ光の反射率が高いものをコーティングしたものなどを用いることができる。また、アクリル系樹脂製の筒体の側面に、銀や誘電体多層膜などをコーティングしたものなどを用いることができる。
【0047】
(光導波部の第2領域)
光導波部の第2領域は、主としてその内部で導波されるレーザ光の屈折角度(進行方向)を制御するものであり、合成光の放射角度を制御するものである。特に、光軸に垂直な断面において、少なくとも1つの方向に屈折率の異なる領域を設けることで、レーザ光の屈折角度、更には合成光の放射角度を制御するものである。
【0048】
図5Aは、光学素子2の光導波部の第2領域222の、光軸Zに垂直な断面を示す図であり、この断面の少なくとも1つの方向(ここでは上下方向)において屈折率の異なる領域を有していることを、白から黒への濃淡で示している。光軸Zを含む白い領域が最も屈折率が大きく、上下方向において側面22a(図面では上端と下端)の黒い領域が最も屈折率が小さくなっている。図5Bは、その屈折率分布をグラフで示したものであり、縦軸は光軸Zに垂直な断面の上下方向の位置を示し、横軸は屈折率を示す。本実施の形態においては、図5B(a)に示すように光軸Zでの屈折率nが最も大きく、光導波部の側面22aの屈折率n−αが最も小さくなっている。このように光軸Zに垂直な断面内において屈折率が異なる領域を有することで、レーザ光を直進ではなく屈曲するようにして導波させることができる。
【0049】
また、光軸Zと光導波部の側面22aの屈折率の差を、図5B(b)に示すように、図5B(a)よりも大きくなるようにすると、前述の(式1)〜(式8)から導かれるθ>θ’におけるθ’を、更に小さいθ’>θ’’とすることができる。合成光の放射角度を、更に小さくすることができる。尚、ここでは、光導波部の光軸から側面にかけて、徐々に屈折率が小さくなるような屈折率分布としており、これによって、レーザ光の合成を効率的に行うことができる。しかしながら、このようなガウス分布的な屈折率分布に限らず、光軸の屈折率が最も大きく、側面の屈折率が最も小さくなっていれば、放射角度を小さくするには有効であるため、例えば、任意の位置において、上記屈折率の範囲内において、屈折率の大小差が逆転する領域、更には、屈折率が一定の領域を有していても構わない。
【0050】
このような、光軸に垂直な断面の1方向において屈折率が異なる第2領域を有する光学素子を用いると、その合波光も、それに応じて1方向の成分のみが合成される。このような合成光は、集光することにより楕円形のスポットとすることができるため、例えば、スクライバとして用いる場合、そのスポットの長軸方向を切断方向とすることで、効率的に切断することができる。
【0051】
図5Cは、このような1方向の合波が可能な第2領域222a、222bを、2つ設けた光学素子2を示す断面図と、その第1領域221a、221b、221c及び第2領域222a、222bの光軸Zに垂直な断面図である。第2領域222aは、上下方向に屈折率の異なる領域を設けるようにしているのに対し、第2領域222bは、左右方向に屈折率の異なる領域を設けるようにしている。つまり、屈折率差を設ける方向を90°異なるよう(直交するよう)な第2領域を2つ設けている。これにより、最終的に合成されるレーザ光を上下方向と左右方向の2方向で放射角度を制御することができる。更に、それぞれの屈折率分布が同じ第2領域ものを用いると、上下方向と左右方向の屈折角度の制御を同じにすることができる。
【0052】
尚、ここでは、2つの第2領域を、その屈折率の異なる方向を90°変えて配置するようにしているが、これに限らず、任意の角度及び数で配置してもよく、例えば、30°異なるように4つの第2領域を設けるようにしてもよい。また、図6では、光軸Zに垂直な断面形状が、第1領域では円形、第2領域では四角形となっているがこのような場合、第2領域の面積を第1領域の面積よりも大きくするのが好ましく、第1領域と重なっていない第2領域は、図7に示すように、レーザ光を遮光する部材からなるカバーPで覆うことが好ましい。
【0053】
第2の領域は、光軸Zに垂直な断面において、光軸と側面との屈折率が異なっているものであるが、このような屈折率の分布を、外部からの制御によって行えるよう制御部を設けるのが好ましい。制御部を有することで、例えば光学装置を加工用として用いる場合、その加工用の合成光を被加工物に対して出射している際の屈折率が変動しないように、例えば、液晶に設けられた導電部材に一定値の電圧を連続して加えるなどによって制御することができ、また、加工前に、その合成光が所望の放射角度(スポット径)となるような屈折率となるように、電圧を変化させて制御(調整)することができる。すなわち、制御部を設けることで、第2領域を屈折率可変領域として機能させることができる。このような制御部を有する第2領域の部材としては、光学変調素子を用いることができる。具体的には、制御部として導電部材を有する液晶や、制御部として圧電素子など超音波を発生する素子を結晶などに接着した音響光学素子、制御部として導電部材を有する非線形光学材料などが挙げられる。
【0054】
光導波部の第2領域の屈折率を外部からの制御によって変化させることができるため、部品(光学素子)自体を交換することなく容易に屈折率を制御することができ、これにより出射部から出射される合成光の放射角度を制御することができる。そのため、集光部材を変えることなく、被照射物に対して最適な合成光のスポット径を得ることができ、レーザ光を用いた加工機の部品の交換作業が必要なく、効率よく作業を行うことができる。
【0055】
第2領域が液晶を有する場合について、図5A及び図8を用いて説明する。図8に示すように、光学素子2の第2領域222は、板状の透明部材K1に液晶分子Qが挟まれており、光導波部の側面22a(図では上端と下端)には、屈折率を制御するための制御部として、液晶分子の配向状態を制御するための導電部材M1が設けられ、その外側が絶縁部材L1で被覆された構成となっている。一方の導電部材M1上には光導電層が設けられており(図示せず)、その上に液晶分子Qを挟む一対の配向膜(図示せず)を有している。導電部材M1に電圧を印加すると、長軸と短軸で誘電率の異なる液晶分子は、電圧値に応じて傾斜する。そして、導電部材Mからの距離に応じてその傾斜角度が異なる。つまり、図8に示すように、導電部材M1に近い側の液晶分子Qと、導電部材M1から離れた光軸Zの液晶分子Qとでは、その傾斜角度が異なる。そのため、その傾斜角度に応じて異なる屈折率となる。電圧値が高い程、光軸と側面(制御部が設けられる側面)との屈折率差は大きくなるため、このような現象を利用して、すなわち、電圧を制御することによって第2領域の屈折率分布を制御することができる。
【0056】
図8に示すように、透明部材K1が光路内に配される場合、透明部材K1の材料としては、その屈折率が第1領域221a、221bと略等しい部材が好ましいため、第1領域と同様の部材を用いるのが好ましい。
【0057】
また、導電部材M1は、レーザ光源からのレーザ光の透過率が大きく、且つ、低抵抗なものが好ましく、具体的には酸化インジウム−酸化スズ(ITO)、酸化スズ−酸化アンチモン(ATO)、フッ素ドープ酸化スズ(FTO)、酸化インジウム−酸化亜鉛(IZO)、酸化ガリウム−酸化亜鉛(GaZnO)、二酸化スズ(SnO)、又は酸化亜鉛(ZnO)等、及びこれらの組み合わせが挙げられる。特に、ITOは、透過率が高く電気抵抗が低いため好ましい。
【0058】
被覆部材L1は、導電部材M1を支持すると共に、一対の透明部材K1の間に液晶を介して保持するように、外周を被覆しているものである。被覆部材Lも、レーザ光を吸収しにくい部材が好ましく、透明部材K1と同じ材料を用いることができる。
【0059】
液晶材料としては、ネマチック液晶、スメクチック液晶、カイラルネマチック液晶、コレステリック液晶(リオトロピック液晶、サーモトロピック液晶)、強誘電性液晶(Ferroelectric Liquid Crystal)、又は反強誘電性液晶(Anti−ferroelectric Liquid Crystal)等が挙げられる。
【0060】
図9は、同じく液晶を有する光学素子2の第2領域222を示す斜視図であり、図10は図9に示す第2領域222を第1領域221a、221bと接するように設けた光学素子2の断面図である。導電部材M2は、光軸Zに垂直な断面において、光軸Zを中心とする同心円状に、異なる電圧が印加されるように、板状の透明部材K2に設けられる絶縁部材(図示せず)を介して複数(図9では、5つ)設けられている。このような構造の液晶を用いることで、各導電部材M2に印加する電圧の値を制御することで液晶分子Qの傾斜角度を制御し、光軸から側面に向けて、すなわち、光軸に垂直な断面の全径方向において、光軸の屈折率が最も大きく、側面の屈折率が最も小さい第2領域とすることができる。図9では、光軸から側面に向けて5つの導電部材M2によって5つの屈折率の異なる領域を設けることができる。屈折率の異なる領域を、更に細かく分断することで、屈折率分布を、滑らかなものとすることができる。光軸の電圧を最も高くし、側面の電圧を最も低くすることで、光軸の屈折率は最も大きく、側面の屈折率は最も小さい屈折率分布とすることができ、その間の領域では、屈折率が一部逆転するようなものでも構わない。好ましくは、光軸から側面にかけて徐々に屈折率が小さくなるようにする。
【0061】
このような液晶も、上述の上下端に導電部材を有する液晶と、同様の材料を用いることができる。特に、導電部材M2が光路の全面に渡って設けられているため、透光性の高いものが好ましく、ITOが好ましい。
【0062】
光導電体は、液晶に配向分布を転写するためのものであり、透過率の高いものが用いられる。具体的には、水素化アモルファスシリコン(α−Si:H)、非晶質水素化シリコーンカーバイド(α−SiC:H)、硫化カドミウム(CdS)、有機感光体(OPC、例えば、ポリ−N−ビニルカルバゾール、ポリ−N−ビニルカルバゾール誘導体、ポリ−9−ビニルアントラセン、又はポリ−9−(P−ビニルフェニルアントラセン)等)、結晶Si、結晶GaAs、Bi12SiO20単結晶、の薄膜等が挙げられる。膜厚としては3μm以下が好ましく、特に1μm以下が好ましい。
【0063】
配向膜は、液晶を配向させるためのものであり、具体的にはポリビニルアルコール(Polyvinyl alcohol)、ポリイミド(Polyimide)、ポリビニルシンナメート(Polyvinyl cinnamate)等が挙げられる。膜厚は、数nm〜数十nm程度が好ましく、約50nm程度が好ましい。特にポリイミド膜が好ましい。
【0064】
第2領域を構成する光学変調素子としては、上記の液晶の他、音響光学素子や、非線形光学素子を挙げることができる。音響光学素子は、超音波で振動させることで、その周波数に応じた応力分布を生じさせ、光弾性により屈折率を変化させるものである。このような音響光学素子の制御部としては、超音波を発生させるための圧電素子等が挙げられる。
【0065】
非線形光学結晶としては、例えば、KTaNb1−x(KTN)、LiB(LBO)、LiNbO、LiTaO、KNbO、KTiOPO(KTP)、BaNaNb15(BNN)、KLiNb15(KLN)、BaLiNb15(BLN)、ZnO、LiIO、SrBa1−xNb(SBN)、BaTiO、PbTiO、KHPO(KDP)、KDPO(KDP)、NHPO(ADP)、InPS、β−BaB(BBO)等が挙げられる。これらは電気光学効果を有しており、加えた電圧による電界の二乗に比例した屈折率変化が起こるものである。したがって、液晶と同様に、制御部として正負一対の導電部材を用いる。
【0066】
(光導波部の第1領域と第2領域)
上記のような第1領域及び第2領域は、光導波部に各々1つずつ、または2以上の複数設けることができる。また、配置については、それぞれ交互に配置してもよく、あるいは、屈折率等の異なる第1領域を隣接させてもよく、屈折率分布の異なる第2領域を隣接させてもよい。それぞれ、複数用いる場合は、その各々を同じ部材としてもよく、又は異なる部材としてもよい。
【0067】
第1領域と第2領域との屈折率の関係については、第2領域の光軸の屈折率が最も大きければよく、その他の領域については、光源装置の大きさ等に応じて適切な屈折率の関係になるよう各部材を選択することができる。例えば、図1Bに示すように、入射部側から第1領域221a(屈折率n)、第2領域222(屈折率n〜n−α)、第1領域221b(屈折率n)の3つの領域を有する光学部材2が、屈折率nの大気中に載置される場合、上述のn<n=n<n−α<nの他、n<n≦n<n−α<n、n<n−α<n=n<n、n<n−α<n≦n<n等の関係となるようにしてもよい。
【0068】
特に、第2領域の全領域の屈折率(n〜n−α)が、第1領域の屈折率n、nよりも大きいことが好ましく、n<n=n<n−α<nの他、n<n≦n<n−α<n、とするのが好ましい。これにより、光の損失を抑制しつつ、合成光の放射角度を小さくすることができる。また、合成光の屈折角度をより小さくしたい場合、第2領域の光軸と側面との屈折率差を大きくすることが有効であるが、用いる材料によっては、第2領域の光軸の屈折率nと、第1領域の屈折率n、nとの差が大きく出ない場合がある。そのような場合は、第1領域の屈折率nよりも小さい屈折率のn−αとしてもよい。この場合、一部、第2領域に入射されない光があるものの、nとn−αとの屈折率差を大きくすることで、合成光の放射角度を更に小さくすることができる。
【0069】
第1領域を複数設ける場合、入射部に近い側に配置される第1領域の屈折率よりも、出射部に近い側の屈折率を同等又は小さくするのが好ましい。すなわち、図1Bで示すように第1領域を2つ設ける場合、n≧nが成り立つようにするのが好ましい。これにより、前述の(式1)〜(式8)から導かれるθ>θ’におけるθ’を、更に小さいθ’>θ’’とすることができる。
【0070】
第1領域と第2領域は、それぞれ任意の長さで設けることができるが、好ましくは、第1領域を第2領域の1000倍以上100000倍以下とするのが好ましく、更に1000倍以上10000倍以下とするのが好ましい。例えば、上述で例示したような、第1領域の径が約2mm〜20mmで、第1領域の光軸方向の長さが約100mm〜200mm程度とする場合、第2領域の光軸方向の長さは、10μm〜200μmとするのが好ましい。第2領域として液晶を用いる場合、その光軸方向の長さ(厚み)が1μm〜10μm程度のものが取り扱い易く、入手も容易であるため好ましいが、レーザ光の合成に必要なだけの光軸長さにすることが好ましい。そのため第2領域を加えても、光導波部の全長が極端に長くなることはない。このように、第2領域は、第1領域に比して光軸方向の長さが短くするのが好ましいため、その側面形状がレーザ光の合成にほとんど影響を与えない。そのため、第2領域については、光軸に垂直な断面の形状は特定な形状でなくてもよく、制御部が設けるのが容易な形状、すなわち、四角形や長方形などが好ましい。特に液晶を用いる場合は、制御部である導電部からの距離によって屈折率が制御されるため、導電部材間の距離が異なるものを用いると、制御が複雑になるため、一対の制御部(導電部材)がそれぞれ平行に設けられる形状が好ましい。
【0071】
また、第1領域と第2領域の界面は、図1Aなどに示すように、光軸に垂直な界面となるようにするのが好ましいが、これに限らず、図11に示すように、板状の第2領域222を、光学素子2の光路内の面を光軸Zに対して傾斜させるような配置、すなわち、第1領域221と第2領域222の界面が、光軸Zに対して傾斜するような配置としてもよい。また、第1領域221が中空の場合、図12に示すように、その光学素子2の筒体の中空内に第2領域222を配置させることができる。
【0072】
また、第1領域及び第2領域は、それぞれ光導波部内において接するように設けるのが好ましい。これにより、間に空気層等が介在しないようにすることができ、レーザ光の合成を効率よく行うことができる。
【0073】
尚、図示しないが、光源部からの光の入射を阻害しない位置であれば、入射面の一部を被覆してもよい。また、光導波部内で合成された光の出射を阻害しない位置であれば、出射面の一部を被覆してもよい。また、膜厚や屈折率を調整することで、レーザ光の反射を低減させた誘電体保護膜(無反射コート/ARコート)を、光学素子の光導波部の入射部(入射面)や出射部(出射面)に設けてもよい。このようなARコートとしては、例えば、主波長が約405nmの半導体レーザを用いた光源部の場合、AlN、Nb、Al、SiO等を約数nm〜数μmの厚さで設けることで、ARコートとすることができる。
【0074】
(光源部)
光源部は、レーザ光の出射部を複数有するものであり、各レーザ光を、光学素子の入射部に向けて出射する。この場合、レーザ光の出射部が1つである半導体レーザチップを、金属や樹脂あるいはセラミックなどのパッケージに搭載したレーザ光源を複数有する光源部や、2以上の出射部を有する半導体レーザチップを1または2以上用いるレーザ光源を用いることができる。
【0075】
各レーザ光源は、その光軸が光学素子の光軸と交差するように角度を調整して配置させるのが好ましい。レーザ光源の光軸を、光学素子の光導波部の光軸に対して傾斜させる場合、その光導波部の入射部の径、レーザ光源と光学素子との距離、更には、レーザ光源からのレーザ光の放射角度によって任意に調整することができる。少なくとも、そのレーザ光の全光束の80%以上が光導波部の入射部に入射されるようにするのが好ましく、更に好ましくは、FFPの全体が入射されるようにするのが好ましい。また、各レーザ光源の出射部と、光学素子の入射部との距離は、任意に選択することができ、例えば、それらの距離がそれぞれ等しくなるように配置してもよく、或いは、異なる距離になるように配置してもよい。
【0076】
また、光源部からのレーザ光は、直接、光学素子の入射部に入射されるようにしてもよく、或いは、各種レンズ等を介して、間接的に入射させても構わない。ここで用いるレンズは、レーザ光1つに対して1または2以上のレンズを用いることができる。
【0077】
半導体レーザは、任意の波長のものを選択することができ、可視光、紫外光、や赤外光などを用いることができる。例えば、紫外光や、青色、緑色の可視光が発振可能な半導体レーザとしては、II−VI族化合物半導体(ZnSeなど)や窒化物半導体(InAlGa1−X−YN、0≦X、0≦Y、X+Y≦1)、GaPを用いたものを適用させることができる。また、赤色の半導体レーザとしては、GaAlAs、AlInGaPなどを用いることができる。更に、これ以外の材料からなる半導体レーザを用いることもでき、目的や用途に応じて、波長や個数等を適宜選択することができる。光源装置をレーザスクライブの光源として用いる場合、主波長が400nm〜500nmの縦モードがシングルまたはマルチの紫外〜青色の半導体レーザを用いるのが好ましく、例えば、800mWの出力が可能な窒化物半導体レーザチップを金属のパッケージに搭載した半導体レーザを12個用いることで、約10Wの合成されたレーザ光を出射可能な光源装置とすることができる。
【0078】
(集光部材)
集光部材は、光学素子の出射部から出射される合成光を集光させるものであり、各種レンズや、ミラーを用いることができる。光学素子から出射される合成光は、光軸に垂直な断面形状が円形または円に近い多角形の光学素子を用いる場合、強度分布が単峰型の発散光からなる合成光であり、この合成光を集光部材によって集光することで、スポット径の小さい単峰型強度分布を有するレーザ合成光を得ることができる。また、光学素子として光軸に垂直な断面形状が楕円形または楕円に近い多角形の光学素子を用いる場合、強度分布が1つまたは2つのピークを有する合成光とすることができる。
【0079】
集光部材は、光学素子から出射される合成光の放射角度に合わせて、その径を選択することができ、少なくとも合成光の全光束の80%以上、好ましくは、合成光の全光束が入射されるような有効径を有するものが好ましい。更に、その合成光の光束径と同程度以上から10%程度大きくなるような有効径を有するものが好ましい。
【0080】
レンズとしては、光軸に垂直な断面形状が円形のレンズが好ましく、例えば、凸レンズ、凹レンズ、フレネルレンズ等、集光レンズとして知られているものを用いることができる。また、GRINレンズ、アキシコンプリズムでもよい。そしてそれらは、集光能力や開口数、曲率半径、有効半径、光軸方向の厚み等について、光学素子からの合成光の特性や、目的等に応じて種々選択することができる。レンズの具体的な材料としては、無機化合物としては、ソーダ石灰ガラス、硼珪酸ガラス、アルミノ珪酸ガラス、石英ガラス等を挙げることができ、中でも、BK7ガラス、B270ガラス、SF11ガラス、PBK40ガラス、石英ガラスなど各種ガラスが好ましく、更に、これらに反射防止膜などの表面処理を施しても構わない。また、有機化合物も用いることができ、例えば、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂等の光学特性がガラスに近い樹脂を用いることができる。
【0081】
集光部材として用いるレンズやミラーは1枚でもよく、または、複数枚用いてもよい。その場合は、複数枚で集光機能を有するように構成されていればよい。更に、レンズとミラーとの両方を用いて集光部材としても構わない。
【0082】
<実施の形態2>
本実施の形態の光源装置の構成を図13に示す。図13は、実施の形態1において説明した光源装置を複数セット用いて光源部10とする光源装置である。実施の形態2では、合成されたレーザ光を光源とし、それを更に合成することで半導体レーザを多く用いる場合であっても、光学素子との結合効率(光利用効率)を低下しにくくすることができる。用いる半導体レーザの数が多くなると、1つの光学素子の入射部に入射させる場合に傾斜させる角度が大きくなり易く、効率よく入射できる載置場所が制限されるので、実施の形態2のように、2段階、或いは3段階以上で合成をさせることで、高い結合効率で合成光を得ることができる。
【0083】
光源部10で用いられている光学素子2と、合成光が入射される光学素子20とは、第1領域と第2領域の大きさ、断面形状、傾斜面の角度等については、両者とも同じものを用いてもよく、或いは、異なるものを用いてもよい。ここでは、光源部10の光学素子2の第2領域222は、第1領域221に挟まれ、光学素子20の光学素子20も、第2領域2222は、第1領域2221に挟まれたものを用いている。レンズ30は、合成されたレーザ光を集光させるために実施の形態1で説明した集光レンズを用いることができ、光源部10で用いられるレンズと同じもの、または異なるものを用いることができる。光源部10からの合成光は、その光軸が、光学素子20の光導波部の光軸と交差するように、入射するのが好ましい。この場合、光源部10からの合成光の焦点を、光学素子20の光導波部の入射部に一致させてもよく、また、図13に示すように入射部よりも内側の光軸上が焦点となるように入射させるのが好ましい。また、光学素子20の入射部の面積と略等しい程度のスポット径となるように、することで、光学素子20の入射面にかかる負荷を低減し、耐光性の劣化を抑制することができる。例えば、第2領域222と、第2領域2222とを同じ液晶を有するものとし、第2領域222に与える電圧を、第2領域2222に与える電圧よりも低くするなどにより屈折率を制御することで合成された出射光の放射角度を制御することができる。
【産業上の利用可能性】
【0084】
本発明に係る光源装置は、複数のレーザ光を合成することで得られる合成光を、1つまたは2つのピークを有する強度分布となるように制御し、かつ、レーザ光を合成させる光学素子の光導波部は光軸に垂直な方向に屈折率が異なる領域を設けて、その屈折率を制御することで放射角度を制御することができる。そのため、集光のためのレンズ径を大きくすることなく、単峰型の強度分布を有するレーザ光の合成光を出射可能な光源装置とするものであり、レーザスクライブなどの加工用として、または、マーク用として利用することができる。
【符号の説明】
【0085】
1、10…光源部
11…レーザ光源
2、20…光学素子
21…入射部
22…光導波部
221a、221b、221c、2221…第1領域
222、222a、222b、2222…第2領域
K1、K2…透明部材
L1、L2…被覆部材
M1、M2…制御部(導電部材)
P…カバー
Q…液晶分子
22a…側面(内面)
223…筒体
23…出射部
3、30…集光部材(レンズ)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザ光の出射部を複数有する光源部と、
前記光源部からの光が入射される入射部と、入射された光が導波され合成される光導波部と、合成された光が外部に出射される出射部とを有する光学素子と、
該光学素子の出射部から出射される光を集光させる集光部材と、
を有する光源装置であって、
前記光導波部は、光軸方向に屈折率が異なる第1領域及び第2領域を有し、
前記第1領域は、屈折率が一定であり、且つ、前記光導波部の光軸と垂直な面または断面形状が円形、楕円形、円または楕円に近い多角形のいずれかであり、
前記第2領域は、前記光軸に垂直な断面の少なくとも1つの方向において、光軸の屈折率が最も大きく、側面の屈折率が最も小さいことを特徴とする光源装置。
【請求項2】
前記第2領域は、前記光軸に垂直な断面の全径方向において、光軸近傍の屈折率が最も大きく、側面近傍の屈折率が最も小さい請求項1記載の光源装置。
【請求項3】
前記第2領域は、前記光軸近傍から前記側面にかけて、徐々に屈折率が小さくなる屈折率分布を有する請求項1または請求項2記載の光源装置。
【請求項4】
前記第2領域は、外部からの制御によりその屈折率を変化させることができる制御部を有する請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の光源装置。
【請求項5】
前記第2領域は、光学変調素子である請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の光学装置。
【請求項6】
前記光学変調素子は、液晶を有する請求項5記載の光源装置。
【請求項7】
前記光学変調素子は、音響光学素子を有する請求項5または請求項6記載の光学装置。
【請求項8】
前記光学変調素子は、非線形光学結晶を有する請求項5乃至請求項7のいずれか1項に記載の光学装置。
【請求項9】
前記第2領域は、その全領域の屈折率が、前記第1領域よりも屈折率が大きい請求項1乃至請求項8のいずれか1項に記載の光学装置。
【請求項10】
前記第1領域は、光学ガラスまたは中空からなる請求項1乃至請求項9のいずれか1項に記載の光源装置。
【請求項11】
前記光導波部は、複数の第1領域を有し、前記出射部に近い側の第1領域の屈折率は、前記入射部側の第1領域の屈折率よりも同等または小さい請求項1乃至請求項10のいずれか1項に記載の光源装置。
【請求項12】
前記第1領域は、前記光導波部の側面が前記光軸に対して傾斜している請求項1乃至請求項11のいずれか1項に記載の光学装置。
【請求項13】
前記第1領域及び第2領域は、接して配置される請求項1乃至請求項12のいずれか1項に記載の光源装置。

【図1A】
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【図1B】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4】
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【図5B】
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【図8】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図5A】
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【図6】
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【図7】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−138554(P2012−138554A)
【公開日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−291766(P2010−291766)
【出願日】平成22年12月28日(2010.12.28)
【出願人】(000226057)日亜化学工業株式会社 (993)
【Fターム(参考)】