説明

光熱作用を利用した基板の表面構造の製造方法

【課題】光熱作用を利用して基板の表面の大きな区域にミクロ・ナノ構造を簡単、低価格に直接製造できる基板の製造方法。
【解決手段】基板表面に複数のナノ粒子を配布し、特定波長のレーザー光を照射すると、レーザー光の光エネルギーにより基板の表面のナノ粒子を励起し、光エネルギーが熱エネルギーに変換される。その結果、基板上の表面構造は励起されたナノ粒子の熱エネルギーにより形成される。これにより、既定のパターンの層を持つ基板が形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は基板の製造方法に関するものであり、特に光熱作用を利用した表面構造を持った基板の製造方法である。
【背景技術】
【0002】
近年、ミクロ・ナノ構造を基板の表面に形成するナノ・インプリント・リソグラフィ(NIL)、半導体製造工程、或いは微小電気機械行程(MEM) 等の多くの技術が開発された。これ等の技術はミクロ・ナノ構造の加工に使えるが、加工工程は複雑で高価である。例を挙げれば、ミクロ・ナノ構造の加工に半導体製造工程或いはMEMS行程が使われた場合、試料はスピン・コート、露光/現像、エッチング、インプリント行程を含む数回の工程を施される。故にこれ等の技術を利用してミクロ・ナノ構造を加工する事は困難かつ高価である。NIL技術も、ミクロ・ナノ構造をその表面に持つテンプレートの加工に多くの工程を必要とし、その上で基板にインプリントを施す。この技術は広面積おけるミクロ・ナノ構造の製造が困難である事を示す。
【0003】
プリント基板(PCB)の作成中には、ゴールドフィンガー(或いはエッジコネクタ)を形成する工程がある。エッジコネクタは外部素子に差し込む事により、PCBと外部素子を接続するインターフェースとして使われる。金が導電性及び耐酸化性に優れるのでゴールドフィンガーは金で作られる。しかしながら、金の価格は高いので、ゴールドフィンガーはメッキあるいはボンディング・パッド等の化学結合により部分的に金で作られている。メッキにおいては、他の金属による汚染や劣悪な接合を避けるために、パラメータの適切な管理が必要となる。
【0004】
更に、導電構造を作る方法には減法行程と加法行程がある。減法行程では、エッチングの製剤とエッチングの角度のエラーにより銅の残留が起きる。故に減法行程は微細な回路製造には適さない。加法行程は回路の輪郭をはっきりさせるためにマスクを必要とし、その上でプラズマ・スパッタ、電気メッキ或いは無電解メッキの様な銅のクラッディング行程により回路を製造する。一般的には、加法行程の流れはやや複雑であり、費用も比較的高い。故に、導線をインクジェット技術により製造する方法を提案するものである。
【0005】
目下インクジェット技術により導線を製造する方法は、既にフレキシブル回路基板に応用されている。従来インクジェット技術は、溶融点の低い導電性インクの有機基板へのスプレーに利用されており、これにより導線を持つフレキシブル回路基板が高速及び低価格で製造出来る。しかしながら、導線を形成し、又その導電性を高めるためには、導電性インクを膜に高温で焼結させなければならない。その様な焼結工程においては200℃の焼結温度が必要であり、焼結期間はおおよそ30分間である。従って、基板と形成された導線間には残留熱ストレスが生じ易い。熱処理以外には、焼結に紫外線レーザー(UV)を用いる方法があるが、この方法では基板が破損され易い。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、新たな簡単な方法で、ナノ粒子の光熱作用により基板の表面の大きな区域に、ミクロ・ナノ構造を直接製造出来る、光熱効果を利用した表面構造を持った基板の製造方法を提供する。上記の(従来の)技術と比べて、本発明に従って、光熱作用を利用した表面構造を持った基板の製造方法は、かなり簡単であり、比較的低価格であり、基板の表面の大きな区域にパターンを形成出来る。
【課題を解決するための手段】
【0007】
ひとつの実施例において、光熱作用を利用した表面構造を持った基板の製造方法は、基板の提供、提供された基板への複数のナノ粒子の配布、ナノ粒子が照射エネルギー(すなわち光エネルギー)を熱エネルギーに変換する様に、提供された基板上のナノ粒子への特定の波長での照射、及びナノ粒子が発生させた熱エネルギーにより、既定のパターンの層を提供された基板の表面に形成する手順が関与する。
【発明の効果】
【0008】
ある事例では、提供された基板上のナノ粒子は、ナノ粒子が発生させた熱エネルギーにより溶融されて、既定のパターンの層の溶融ナノ粒子の薄層を形成し、既定のパターンの層を持つ基板をもたらす。既定のパターンは少なくとも一本の導線及び/或いは少なくとも一つの導電区域を持つ。少なくとも一本の導線を持つパターンの場合は、導線を持つ基板が得られる。少なくとも一つの導電区域を持つパターンの場合は、導電区域を持つ基板が得られる。
【0009】
ここでは、ナノ粒子を既定のパターンに従って提供された基板に直接配布する事が出来る。
【0010】
或いは、ナノ粒子はまず提供された基板に完全な層として配布され、その後、ナノ粒子を励起するために、基板上のナノ粒子は既定のパターンに沿っての、特定の波長の光線の移動により照射される。この場合、提供された基板上の励起されたナノ粒子及び励起されたナノ粒子の周辺のナノ粒子は、励起されたナノ粒子が発生させた熱エネルギーで溶融され、溶融されたナノ粒子は励起されたナノ粒子が発生させた熱エネルギーで提供された基板に固定される。最終的に溶融されないナノ粒子は提供された基板から除去されて、提供された表面に既定のパターンの溶融ナノ粒子薄層が得られる。
【0011】
上記を考慮して、本発明に従った光熱効果を利用した表面構造を持った基板の製造方法は基板の表面上/内にミクロ・ナノ構造を形成する。本発明の方法を使用しての基板の表面上/内のミクロ・ナノ構造の加工は、加工工程がより簡単かつ低価格であるなどのいくつかの利点を示し、試料は大きな面積で製造出来る。更に、既定のパターン層を持つ基板を製造する際に、残留ストレスと熱出力が減少し、既定のパターンと基板間の接着力も増加する。又、エネルギーの損失も減少される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
本発明は説明のみを目的とする以下の詳細な説明により、更に完全に理解されるものである。
【図1】本発明の第一の実施例の光熱作用を利用した表面構造を持つ基板の製造方法のフローチャートである。
【図2】計算されたAu、Ag、CdTe、及びCdSeナノ粒子の光エネルギー消失の割合を表す。
【図3】プラズモン共鳴の光力機能により、単一のAuナノ粒子の表面における計算された温度の上昇を表す。
【図4】粒子のサイズとAuナノ粒子の溶融点との関係曲線を表す。
【図5A】本発明の第二の実施例の光熱作用を利用した表面構造を持つ基板の製造方法に従ったジェネラル・フローチャートである。
【図5B】本発明の第二の実施例の光熱作用を利用した表面構造を持つ基板の製造方法に従ったジェネラル・フローチャートである。
【図5C】本発明の第二の実施例の光熱作用を利用した表面構造を持つ基板の製造方法に従ったジェネラル・フローチャートである。
【図5D】本発明の第二の実施例の光熱作用を利用した表面構造を持つ基板の製造方法に従ったジェネラル・フローチャートである。
【図5E】本発明の第二の実施例の光熱作用を利用した表面構造を持つ基板の製造方法に従ったジェネラル・フローチャートである。
【図6A】本発明の第三の実施例に従った光熱作用を利用した表面構造を持つ基板の製造方法におけるジェネラル・フローチャートである。
【図6B】本発明の第三の実施例に従った光熱作用を利用した表面構造を持つ基板の製造方法におけるジェネラル・フローチャートである。
【図6C】本発明の第三の実施例に従った光熱作用を利用した表面構造を持つ基板の製造方法におけるジェネラル・フローチャートである。
【図6D】本発明の第三の実施例に従った光熱作用を利用した表面構造を持つ基板の製造方法におけるジェネラル・フローチャートである。
【図7A】本発明に従った光熱作用を利用した表面構造を持つ基板の製造方法におけるジェネラル・フローチャートである。
【図7B】本発明に従った光熱作用を利用した表面構造を持つ基板の製造方法におけるジェネラル・フローチャートである。
【図8】光熱作用を利用した表面構造を持つ基板の製造方法における、ナノ粒子の分布の実施例の略断面図である。
【図9A】本発明の光熱作用を利用した表面構造を持った基板の製造方法の第一の実施例で、レーザーで照明される前に、原子間力顕微鏡(AFM)によって観察された基板の表面構造の顕微鏡図である。
【図9B】本発明の光熱作用を利用した表面構造を持った基板の製造方法の第一の実施例で、レーザーで照明された後に、AFMによって観察された基板の表面の顕微鏡図である。
【図10A】本発明の光熱作用を利用した表面構造を持った基板の製造方法の第一の実施例で、ナノ粒子が基板1に配布される前に、AFMによって観察された基板の表面の顕微鏡図である。
【図10B】本発明の光熱作用を利用した表面構造を持った基板の製造方法の第一の実施例で、ナノ粒子が基板2に配布される前に、AFMによって観察された基板の表面の顕微鏡図である。
【図10C】本発明の光熱作用を利用した表面構造を持った基板の製造方法の第一の実施例で、ナノ粒子が基板3に配布される前に、AFMによって観察された基板の表面の顕微鏡図である。
【図11A】本発明の光熱作用を利用した表面構造を持った基板の製造方法の第二の実施例で、レーザーで照明される前に、AFMによって観察された基板の表面の顕微鏡図である。
【図11B】本発明の光熱作用を利用した表面構造を持った基板の製造方法の第二の実施例で、レーザーで照明された後に、AFMによって観察された基板の表面の顕微鏡図である。
【図12A】本発明の光熱作用を利用した表面構造を持った基板の製造方法の第三の実施例で、レーザーで照明される前に、AFMによって観察された基板の表面の顕微鏡図である。
【図12B】本発明の光熱作用を利用した表面構造を持った基板の製造方法の第三の実施例で、レーザーで照明された後に、AFMによって観察された基板の表面の顕微鏡図である。
【図13A】本発明の光熱作用を利用した表面構造を持った基板の製造方法の第四の実施例で、レーザーで照明される前に、AFMによって観察された基板の表面の顕微鏡図である。
【図13B】本発明の光熱作用を利用した表面構造を持った基板の製造方法の第四の実施例で、レーザーで照明された後に、AFMによって観察された基板の表面の顕微鏡図である。
【図14A】本発明の光熱作用を利用した表面構造を持った基板の製造方法の第五の実施例で、レーザーで照明される前に、AFMによって観察された基板の表面の顕微鏡図である。
【図14B】本発明の光熱作用を利用した表面構造を持った基板の製造方法の第五の実施例で、レーザーで照明された後に、AFMによって観察された基板の表面の顕微鏡図である。
【図15A】本発明の光熱作用を利用した表面構造を持った基板の製造方法の第六の実施例で、レーザーで照明される前に、AFMによって観察された基板の表面の顕微鏡図である。
【図15B】本発明の光熱作用を利用した表面構造を持った基板の製造方法の第六の実施例で、レーザーで照明された後に、AFMによって観察された基板の表面の顕微鏡図である。
【図16A】本発明の第四の実施例の光熱作用を利用した表面構造を持つ基板の製造方法に従ったジェネラル・フローチャートである。
【図16B】本発明の第四の実施例の光熱作用を利用した表面構造を持つ基板の製造方法に従ったジェネラル・フローチャートである。
【図16C】本発明の第四の実施例の光熱作用を利用した表面構造を持つ基板の製造方法に従ったジェネラル・フローチャートである。
【図16D】本発明の第四の実施例の光熱作用を利用した表面構造を持つ基板の製造方法に従ったジェネラル・フローチャートである。
【図17】図16Dに対応した略上部図である。
【図18A】本発明の光熱作用を利用した表面構造を持った基板の製造方法の第七の実施例で、レーザーで照明される前に、AFMによって観察された基板の表面の顕微鏡図である。
【図18B】本発明の光熱作用を利用した表面構造を持った基板の製造方法の第七の実施例で、レーザーで照明された後に、AFMによって観察された基板の表面の顕微鏡図である。
【図19A】本発明の第五の実施例に従った光熱作用を利用した表面構造を持つ基板の製造方法におけるジェネラル・フローチャートである
【図19B】本発明の第五の実施例に従った光熱作用を利用した表面構造を持つ基板の製造方法におけるジェネラル・フローチャートである
【図19C】本発明の第五の実施例に従った光熱作用を利用した表面構造を持つ基板の製造方法におけるジェネラル・フローチャートである
【図19D】本発明の第五の実施例に従った光熱作用を利用した表面構造を持つ基板の製造方法におけるジェネラル・フローチャートである
【図20】図19Bに対応するジェネラル断面図である。
【図21】図19Cに対応するジェネラル断面図である。
【図22A】本発明の光熱作用を利用した表面構造を持った基板の製造方法の第八、第九、及び第十の実施例で、レーザーで照明される前に、AFMによって観察された基板の表面の顕微鏡図である。
【図22B】本発明の光熱作用を利用した表面構造を持った基板の製造方法の第八の実施例で、1.8Wのレーザーで照明された後に、AFMによって観察された基板の表面の顕微鏡図である。
【図22C】本発明の光熱作用を利用した表面構造を持った基板の製造方法の第九の実施例で、1.5Wのレーザーで照明された後に、AFMによって観察された基板の表面の顕微鏡図である。
【図22D】本発明の光熱作用を利用した表面構造を持った基板の製造方法の第十の実施例で、1.2Wのレーザーで照明された後に、AFMによって観察された基板の表面の顕微鏡図である。
【図23A】本発明の光熱作用を利用した表面構造を持った基板の製造方法の第十一の実施例で、焼鈍される前に、AFMによって観察された基板の表面の顕微鏡図である。
【図23B】本発明の光熱作用を利用した表面構造を持った基板の製造方法の第十一の実施例で、焼鈍された後に、AFMによって観察された基板の表面の顕微鏡図である。
【図24A】本発明の光熱作用を利用した表面構造を持った基板の製造方法の第十二の実施例で、焼鈍される前に、AFMによって観察された基板の表面の顕微鏡図である。
【図24B】本発明の光熱作用を利用した表面構造を持った基板の製造方法の第十二の実施例で、焼鈍された後に、AFMによって観察された基板の表面の顕微鏡図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明では、表面プラズマ共鳴(SPR)の原理に基づいた表面構造を持った基板が製造される。ナノ粒子が特定の波長の光線で照射された時、励起されたナノ粒子は光線の光エネルギーを熱エネルギーに変換する事が出来るので、その熱エネルギーにより基板に表面構造を形成して特定の表面構造(例えば複数の気孔と既定のパターン層であるが、これに限定はしない)を持つ基板を得る。SPRの原理は、もし貴金属の直径が照射光線の波長よりかなり小さければ、照射光線に励起されて、金属粒子の表面の電子が集団双極子振動を起動し、従って表面電子の分極の利用により、金属粒子の表面で自由電子の共鳴現象が生ずると説明出来る。故に、SPRにより貴金属粒子に吸収された光エネルギーは急速に熱エネルギーに変換される。
【0014】
この「光熱作用」はナノ粒子が特定の波長の光線で照射された後に、ナノ粒子に吸収された光エネルギーがSPRにより熱エネルギーに変換されると定義される。ここで単数として扱われたものは、単数の実態としての限定を意図するものでは無い。(直訳−ここで「a」、「an」及び「the」は単数の実体としての限定を意図するものではない。)
【0015】
図1は本発明の第一の実施例に従った表面構造を持つ基板を光熱作用で製造する方法を表す。
【0016】
まず、基板が提供される(手順10)。提供された基板は有機素材、無機素材(例えば、ガラス、金属或いはセラミック)、ハイブリッド素材或いはこの中のいかなる組み合わせで作られても良いが、これに限定するものでは無い。
【0017】
次に、ナノ粒子が提供された基板に配布される(手順30)。ナノ粒子はプラズマ共鳴と光熱作用を生じる事が可能な素材で作られている。ナノ粒子は、例えばAu、Cu、Ag、Cd、Te、CdSe、(しかしこれ等に限定するものでは無い)或いはその中のいかなる組み合わせから形成される金属ナノ粒子でも良い。ナノ粒子は、異なる素材もしくは同素材の複数の小さな金属粒子の統合、或いは異なるサイズもしくは同サイズの複数の小さな金属粒子の統合、或いは一つ以上の金属粒子をより大きな粒子に表面を改良する事で接合して形成した大きなサイズの粒子構造の、大きな粒子の形で提示され得る。大きなサイズの粒子構造は、例えば、ナノサイズもしくはミクロサイズの金属粒子の表面を、一つ以上のナノ粒子と接合したもの、ナノサイズもしくはミクロサイズのSiO2の表面を一つ以上のナノ粒子と接合したもの、或いはカーボン・チューブの表面に一つ以上のナノ粒子を接合したもの等で良い。ここで、励起のために使用されるナノ粒子の粒子サイズは、光の波長よりも、かなり小さいものが良い。又、ナノ粒子の直径、すなわち粒子サイズは500nmより小さいものが良い。ナノ粒子は形を制限されず、球状、楕円状、三角状、短冊状、棒状、星状、或いはその他の不規則な三次元の幾何学形態で良いがこれに制限されるものでは無い。
【0018】
提供された基板に配布されるナノ粒子は、同じ粒子サイズ或いは二つ以上の粒子サイズを持つもので良い。これ等の基板に配布されるナノ粒子は、同一の素材或いは二つ以上の素材よりなるもので良い。これ等の基板に配布されるナノ粒子は、同じ形か二つ以上の形であり得る。
【0019】
その後、ナノ粒子を励起して光エネルギーを熱エネルギーへ変換する様に、提供された基板上のナノ粒子に照射する特定の波長の光が利用される(手順 50)。ここで、ナノ粒子を照射する既定の時間は、次の工程パラメータにより決定される。その工程パラメータは、基板の表面素材(例えば、ナノ粒子と接する表面素材)、ナノ粒子の素材、ナノ粒子の粒子サイズ、ナノ粒子の密度、照射光の種類(例えば、光の種類及び波長であるが、これに限らない)及び照射光の強度(例えば、出力であるが、これに限らない)。
【0020】
その後、提供された基板には、プラズマ共鳴により励起されたナノ粒子が発生させた熱エネルギーによる表面構造が形成される(手順 70)。
【0021】
この様にして、特定の表面構造を持った基板、例えばナノもしくはミクロ気孔、或いは既定のパターンの層が得られる。
【0022】
図2は計算されたAu,Ag,CdTe、及びCdSeナノ粒子における光エネルギーの消失率を表す。図2では、60nmの粒子サイズを持ち、水中にあるAgナノ粒子、Auナノ粒子、CdSeナノ粒子及びCdTeナノ粒子は、それぞれ5*104W/cm2(I0=5*104W/cm2)の光束の光線で照射される。垂直軸は熱発生に対する総吸収率(qtot)を示し、単位はuWである。総吸収率はナノ粒子が吸収した光エネルギー量を示す。熱発生はナノ粒子が発生させた熱エネルギー量を示す。水平軸は光線の波長を示し、単位はnmである。ナノ粒子周辺の媒体の誘電率(εo)は水のそれ(εwater)に等しく、誘電率は1.8である。
【0023】
図2を参照すると、SPRを励起する吸収バンドである特定の波長の光線で照射された場合に、CdSeナノ粒子とCdTeナノ粒子に比較して、Agナノ粒子とAuナノ粒子はより大きな熱エネルギーを発生させる。
【0024】
光熱作用はSPRの吸収に関連し、SPRはサイズ、形態、粒子間の結合の度合いに左右される。
【0025】
図3は計算された水中の単一のAuナノ粒子の表面の温度の上昇がプラズモン共鳴の照明出力の機能である事を示す。図3では水中における10nm、20nm、30nm、40nm、50nm、100nmといった粒子サイズのAuナノ粒子が、520nmの波長(λexcitation=520nm)の光線で個別に照射される。垂直軸は単一のAuナノ粒子が発生させる熱エネルギーに起因する温度の上昇(ΔTmax)を示し、単位はKである。水平軸は照射光線の光束を示し、単位はW/cm2である。
【0026】
図3を参照すると、水中のAuNPから発生する熱は、同じ光束で照明された場合に粒子のサイズに従って増加する。
【0027】
又、ナノペレット、ナノライン、ナノチューブ等の異なる種類のナノ素材には、低下する溶融点の現象が観察される。同素材の物質については、巨視的には、全てが多量の同素材の場合より低い温度で溶けるナノワイヤ、ナノチューブ、ナノ粒子における溶融点の低下が明白である。溶融点の変化は、ナノスケールの素材では多量の素材よりもかなり大きくなる表面と容積の比率により、その熱力学的、熱的な特色が大幅に変わる。この違いは、ナノ構造の物質がより大きな特定の表面積持つので生じ、ナノ構造の物質と多量の物質の熱力学的、熱的な特色は大きく異なる。
【0028】
図4はAuナノ粒子における粒子のサイズと溶融点との関係曲線を表す。図4では、垂直軸がAuナノ粒子の溶融点(Tm)を示し、単位はKである。水平軸はAuナノ粒子の直径であるAuナノ粒子の粒子サイズ(2r)を示し、単位はnmである。
【0029】
図4を参照すると、Auナノ粒子の粒子サイズが5nmより小さい場合に、Auナノ粒子の溶融点は劇的に低下する。
【0030】
従って、気孔を持つ基板が光熱作用を利用して製造される場合、ナノ粒子の粒子サイズは提供された基板の溶融点及び熱分解温度により決定される。
【0031】
粒子サイズの小さいナノ粒子が発生する熱エネルギー量は大きなものより少ないので、既定のパターンの層を持つ基板が光熱作用を利用して製造される場合には、大小の粒子サイズを持つナノ粒子を同時に使う。よって、既定のパターン層は、小さい粒子サイズナノ粒子を溶かして、大きい粒子サイズのナノ粒子を接合させて形成出来る。
【0032】
図5A〜5Eは光熱作用を利用して表面構造を持つ基板を製造する方法を表す。
【0033】
図5Aに表される様に、先ず基板112が提供される。基板は有機素材、無機素材(例えばガラス、金属及びセラミック)、ハイブリッド素材或いはこれ等の組み合わせで作られたもので良いが、これに限るものでは無い。
【0034】
次に、図5Bに表される様にナノ粒子130が基板112に配布される。提供された基板に配布されるナノ粒子130は同じ粒子サイズであるか、二つ以上の粒子サイズでもよい。これ等の、提供された基板に配布されるナノ粒子130は同じ素材であるか、二つ以上の素材でもよい。これ等の基板に配布されるナノ粒子130は同じ形状であるか、二つ以上の形状である。
【0035】
その後、図5Cに表される様に、特定の波長の光線150が基板112上のナノ粒子130の照射に使われ、励起されたナノ粒子130は光エネルギーを熱エネルギーに変換出来機構線が約5秒以上ナノ粒子を照射するが、この時間に限るものではない。
【0036】
その後、図5Dに表される様に、ナノ粒子130が光線で照射された際に発生した熱エネルギーにより、ナノ粒子130に対応する複数の気孔116が基板112の表面に形成される。
【0037】
最終的に、ナノ粒子130は基板112から外されて、気孔116を持つ基板110が得られる。
【0038】
更に、図6Aに表される様に、ナノ粒子130は別の透明な基板102の表面に接合出来る。透明な基板102は、ナノ粒子を担持しうるいかなる透明な素材で作られていても良く、例としてはガラスやクォーツがある。提供された基板に配布されるこれ等のナノ粒子130は、同じ粒子サイズあるいは二つ以上の粒子サイズである。これ等の基板に配布されるナノ粒子130は同じ素材であるか、二つ以上の素材でも良い。これ等の基板に配布されるナノ粒子130は同じ形状であるか、二つ以上の形状でも良い。ここでは、ナノ粒子130の透明な基板102への固定にスプレー印字、スピン・コート、コーティング或いは共有結合、その他の手段が利用される。この手段は透明な基板の特色、すなわち金属素材、無機素材、有機素材、ハイブリッド素材或いはそれ等の組み合わせ等である、透明な基板102の素材に基づくものである。透明な基板102にナノ粒子130を固定する手段は、物理的手段と化学的手段より選択出来る。物理的な手段としては、例えば静電気の吸着力、イオンの吸着力或いはファン・デル・ワールス力を利用してナノ粒子130を透明な基板102の表面に固定出来る。科学的な手段としては、例えば透明な基板102の表面への自己集合単分子層の形成や、ナノ粒子130や透明な基板102に表面改良を加えての、ナノ粒子130の透明な基板102の表面への固定がある。表面改良では、ナノ粒子130や透明な基板102の表面が改良され、ナノ粒子130が改良された表面を通して透明な基板102にイオン結合、共有結合等の方法で化学結合される。ナノ粒子の表面もしくは透明な基板102の表面を改良後、その表面はそこで官能基を形成する。官能基はN−ヒドロキシ・スクシンイミド(NHS)基、アミノ基、アルデヒド基、エポキシ基、カルボキシル基、ヒドロオキシル基、アシル基、アセチル基、ヒドラゾノス基、疎水性基、チオール基、光反応基、システイン基、ジスルフィド基、ハロゲン化アルキル基、ハロゲン化アシル基、アジド基、リン酸塩基、或いはそれ等の組み合わせ等であるが、それに限定するものでは無い。
【0039】
ナノ粒子130を固定された透明な基板102の片面は、そこに気孔を形成したい基板112の表面に対向し、その上に置かれ、ナノ粒子130は基板112に配布され、基板112の表面に密着する。すなわち、図6Bに表される様に、ナノ粒子130は透明な基板102と基板112とに挟まれる。
【0040】
その後、図6Cに表される様に、特定の波長の光線150は透明な基板102上のナノ粒子130の照射に利用され、励起されたナノ粒子130は光線150の光エネルギーを熱エネルギーに変換する。この時、特定の波長の光線はナノ粒子を既定の時間照射する。例えば、特定の波長の光線はナノ粒子を約5秒間照射するが、これに限定するものでは無い。
【0041】
その後、図6Dに表される様に、ナノ粒子130に対応する気孔116の位置が、光線で照射される事でナノ粒子130が発生させた熱エネルギーにより、基板112に形成される。
【0042】
最終的に、図5Eに表される様に、透明な基板102は基板112から外され、これにより気孔116を持つ基板110が得られる。ナノ粒子130は透明な基板102に固定されているので、透明な基板102が外された時に透明な基板102と共にナノ粒子130も外される。又、一旦透明な基板102が外されると、基板112の表面は溶液で洗浄されるか(例えば、水或いは洗浄液であるが、これに限るものでは無い)、或いは空気でを吹き付ける事で清掃し、表面に付着した残留するナノ粒子130及び/或いは埃の様な不純物を排除し、続く利用或いは処理を簡単にする。
【0043】
基板112は次の手順により形成される。先ず図7Aに表される様にサブ基板113が提供される。次に図7Bに表される様に、熱エネルギーによりナノ粒子130が発生させた温度より低いか同じ溶融点を持つ素材を利用してサブ基板113上に低い溶融点を持つ表面層114を形成する。この時図8に表される様に、ナノ粒子130は低い溶融点を持つ表面層114の表面に配布されている。サブ基板113は有機素材、無機素材(例えば、ガラス、金属及びセラミック)、ハイブリッド素材、或いはそれ等の組み合わせで出来ている。低い溶融点を持つ表面層114は、ナノ粒子130が発生させる熱エネルギーの温度より低いかそれに等しい溶融点、すなわち熱エネルギーが発生した時に上昇したナノ粒子の温度より低いかそれに等しい溶融点を持つ素材で出来ている。低い溶融点を持つ表面層114は有機素材、無機素材、ハイブリッド素材、或いはそれ等の組み合わせで出来ている。有機素材にはポリエチレン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニール、ポリアセタール、エポキシ樹脂、ポリアミド、ポリエステル、フェノールホルムアルデヒド、アミノ樹脂があるが、これに限られるものでは無く、ポリウレタン(PU)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)或いはポリジメチルシロキサン(PDMS)に限るものでも無い。
【0044】
すなわち、少なくともナノ粒子130と接触する基板112の表面の素材はナノ粒子130が発生させる熱エネルギーに起因するナノ粒子130の温度より低いか同じである溶融点を持つ。つまり基板の表面の溶融点がナノ粒子の温度より低いか同じである。
実施例 1
【0045】
約20nmの粒子サイズのAuナノ粒子(すなわちAuで出来たナノ粒子)が透明の基板の表面に固定されて、その後、ポリマー素材の基板の表面に置かれた。Auナノ粒子は基板の表面に密着した。その後、波長が532nmの緑色レーザーを用いてAuナノ粒子を持つ透明な基板を約15秒照射した。Auナノ粒子は基板上で励起した。この時、緑色レーザーで15秒以内照射される事によりAuナノ粒子は200℃までの温度を発生させた。15秒の照射時間後、すなわち照射された時間、透明な基板とAuナノ粒子は基板から外されて、気孔を持つ基板が得られる。図9Aに表される様に、緑色レーザーの照射前に、Auナノ粒子を持つ基板の表面が原子間力顕微鏡(AFM)で観察された。図9Bに表される様に緑色レーザーの照射後に、取得された気孔を持った基板もAFMで観察された。更に、図9A及び9Bに見られる様に、本発明の光熱作用を利用して得られた表面構造を持つ基板の製造方法により、多くの気孔が基板の表面に形成された。
【0046】
更に、三種類の基板が提供された。説明の便宜上、以降それ等を基板1、基板2、基板3とする。基板1はガラス製のサブ基板及びPUで出来た低い溶融点を持つ表面層で形成された。基板2はガラス製のサブ基板及びPMMA/エタノールで出来た低い溶融点を持つ表面層で形成された。基板3はガラス製のサブ基板及びPDMSで出来た低い溶融点を持つ表面層で形成された。先ず、それぞれ図10A、10B及び10Cに表される様に、基板1、2及び3のサブ基板に対向する低い溶融点を持つ表面層の表面をAFMで観察した。
【0047】
ここで、粒子サイズが約20nmのAuナノ粒子は透明な基板に固定され、その後透明な基板は基板上に置かれた。ここで、Auナノ粒子は低い溶融点を持つ表面層の表面に密着した。その後、気孔を持つ3種類の基板は次のパラメータに従って製造され(説明の便宜上、それぞれを基板1´、基板2´及び基板3´とする)、これ等の基板はそれぞれAFMで観察された。
実施例 2
【0048】
波長が532nmで出力が100mWの緑色レーザーを使って、基板1に置かれたAuナノ粒子を透明な基板を通して約10分間照射した。一旦照射が完了したら、透明な基板とAuナノ粒子は外され、基板1´が得られた。図11Aに表される様に、緑色レーザーで照射される前に、Auナノ粒子を持った基板はAFMで観察された。図11Bに表される様に、緑色レーザーで照射された後に、得られた基板1´はAFMで観察された。
実施例 3
【0049】
波長が514.5nmで出力が1Wの緑色レーザーで、基板2に置いたAuナノ粒子を透明な基板を通して約20分間照射した。一旦照射が完了したら、透明な基板とAuナノ粒子は外され、基板2´が得られた。図12Aに表される様に、緑色レーザーで照射される前に、Auナノ粒子を持った基板はAFMで観察された。図12Bに表される様に、緑色レーザーで照射された後に、得られた基板2´はAFMで観察された。
実施例 4
【0050】
波長が514.5nmで出力が2Wの緑色レーザーで、基板3に置いたAuナノ粒子を透明な基板を通して約40分間照射した。一旦照射が完了したら、透明な基板とAuナノ粒子は外され、基板3´が得られた。図13Aに表される様に、緑色レーザーで照射される前に、Auナノ粒子を持った基板はAFMで観察された。図13Bに表される様に、緑色レーザーで照射された後に、得られた基板3´はAFMで観察された。
【0051】
更に、粒子サイズが60nmのAu粒子は透明な基板に固定され、その後、透明な基板はAuナノ粒子が基板に密着する事を可能にするために、低い溶融点を持つ表層の表面に置かれた。その後、気孔を持つ二種類の基板は次のパラメータに従って製造され(説明の利便性のために、以降それぞれを基板4´及び基板5´と呼ぶ)、その後、製造された基板はAFMで観察された。
実施例 5
【0052】
波長が514.5nmで出力が2Wの緑色レーザーで基板1に置いたAuナノ粒子を透明な基板を通して約40分間照射した。一旦照射が完了したら、透明な基板とAuナノ粒子は外され、基板4´が得られた。図14Aに表される様に、緑色レーザーで照射される前に、Auナノ粒子を持った基板はAFMで観察された。図14Bに表される様に、緑色レーザーで照射された後に、得られた基板4´はAFMで観察された。
実施例 6
【0053】
波長が514.5nmで出力が2Wの緑色レーザーで基板3に置いたAuナノ粒子を透明な基板を通して約40分間照射した。一旦照射が完了したら、透明な基板とAuナノ粒子は外され、基板5´が得られた。図15Aに表される様に、緑色レーザーで照射される前に、Auナノ粒子を持った基板はAFMで観察された。図15Bに表される様に、緑色レーザーで照射された後に、得られた基板5´はAFMで観察された。
【0054】
図16A〜図16Dを参照すると、これ等は本発明の実施例に従って光熱作用を利用して表面構造を持った基板を製造する方法を表している。
【0055】
先ず、図16Aに表される様に、基板112が提供された。
【0056】
次に、図16Bに表される様に、少なくとも一つの既定パターン170に従って、複数のナノ基板130が基板112に配布された。提供された基板に配布されるこれ等のナノ粒子130は同じ粒子サイズであるか、二つ以上の粒子サイズである。提供された基板に配布されるこれ等のナノ粒子130は同じ素材であるか、二つ以上の素材である。提供された基板に配布されるこれ等のナノ粒子130は同じ形状であるか、二つ以上の形状である。
【0057】
又、ナノ粒子130の基板120への固定にスプレー印字、スピン・コート、コーティング或いは共有結合、その他の手段が利用される。ナノ粒子130を基板120へ固定する手段は、基板112の素材の性質に従って、物理的手段と化学的手段より選択出来る。物理的な手段としては、例えばプラズマ処理がある。プラズマ処理では、基板の表面を粗くする目的で、電子が基板の表面に電子銃で撃ちつけられ、ナノ粒子は基板の粗い表面に固定される。化学的な手段としては、例えば基板の表面への自己集合単分子層の形成、或いは表面の改良がある。基板の表面への自己集合単分子層の形成方法では、ナノ粒子が既定のパターン170の自己集合単分子層に固定される様に、既定のパターン170の自己集合単分子層が基板の表面に形成される。表面改良では、ナノ粒子130の表面、或いは既定のパターン170が形成される表面の一部分が改良され、ナノ粒子130が改良された表面を通して基板の表面にイオン結合、共有結合等の方法で化学結合される。表面はそこに官能基を形成する様に、表面改良を施される。官能基はN−ヒドロキシ・スクシンイミド(NHS)基、アミノ基、アルデヒド基、エポキシ基、カルボキシル基、ヒドロオキシル基、アシル基、アセチル基、ヒドラゾノス基、疎水性基、チオール基、光反応基、システイン基、ジスルフィド基、ハロゲン化アルキル基、ハロゲン化アシル基、アジド基、リン酸塩基、或いはそれ等の組み合わせ等であるが、それに限定するものでは無い。
【0058】
次に、図16Cに表される様に、特定の波長の光線150が、ナノ粒子130を励起して光エネルギーを熱エネルギーに変換する為に、基板112のナノ粒子130を照射する。この時、光線は既定の時間ナノ粒子を連続的に照射する。例えば、特定の波長の光線はナノ粒子を約5秒間連続的に照射するが、この時間に限るものでは無い。
【0059】
基板112条のナノ粒子はナノ粒子130が発生された熱エネルギーで溶けて、既定のパターン170の溶融ナノ粒子の薄層を作り、これにより、図16D及び17に表される様に、既定のパターン層を持つ基板110が得られる。
【0060】
ナノ粒子130は金属素材から形成され(例えば、金属のナノ粒子)てもよい。この時、既定のパターンの溶融ナノ粒子の薄層である溶融したナノ粒子132は、一本以上の導線及び/或いは一つの以上の電導区域になる。すなわち、溶融ナノ粒子の薄層は、一本以上の導線及び/或いは一つ以上の導電区域の導電層のパターンである。
【0061】
又、もし基板の素材が適切に選ばれていたなら、得られた一本以上の導線及び/或いは一つ以上の電導区域を持つ基板は回路板として使用出来る。換言すれば、ナノ粒子の素材は、ナノ素材が発生した熱エネルギーの温度である、発生した熱エネルギーより低いか同じ溶融温度を持つ。導電区域は、例えばアースになり得る。
【0062】
又、得られた基板は基板表面にある固定されていないナノ粒子、固定されていないが溶融したナノ粒子、及び/或いは不純物を取り除くために、続く使用、或いは処理前に、先ず洗浄しなければならない。特に、得られた基板は溶液で洗浄するか(例えば、水或いは、洗浄溶液)、空気を吹き付けて清掃する。
実施例 7
【0063】
約20nmの粒子サイズのAuナノ粒子は、既定のパターンに従って、これに限定するものでは無いが、有機素材の基板に配布された。この後、波長532nmの緑色レーザーが約15秒間Au基板上のナノ粒子に照射された。この時、Auナノ粒子は緑色レーザーの照射の15秒以内に200℃までの温度を持つ光エネルギーを発生させられるので、Auナノ粒子の表面は互いに溶け合い、基板に固定された。一旦緑色レーザーの照射が完了すると、既定のパターンを持つ基板が得られた。図18Aに表される様に、緑色レーザーで照射される前に、Auナノ粒子を持った基板の表面はAFMによって観察された。図18Bに表される様に、緑色レーザーで照射された後で、得られた基板はAFMによって観察された。図18A及び18Bを参照すると、得られた基板の表面のナノ粒子は既に溶け合っている。
【0064】
他の実施例では、図19Aに表される様に、例えば完全にナノ粒子の層であるナノ粒子130の層が、表面構造を形成する基板112の表面に配布されている。提供された基板に配布するナノ粒子130は、同じ粒子サイズか、二つ以上のナノ粒子サイズでもよい。提供された基板に配布するナノ粒子130は、同じ素材か、二つ以上の素材でもよい。提供された基板に配布するナノ粒子は、同じ形状か、二つ以上の形状でもよい。更に、ナノ粒子130は、これに限るものでは無いがスプレー印字、スピン・コート、コーティング等の手段により、基板112に配布されてもよい。又、ナノ粒子130は溶剤の形態で基板112の表面に配布されてもよい。
【0065】
その後、図19B及び図20に表される様に、特定の波長の光線150が基板112上のナノ粒子130を照射し、その間、光線150を出力する光源は形成される既定のパターンに従って移動され、光線150はナノ粒子130上を移動し、既定のパターンが形成された位置でナノ粒子130を励起する。光線はナノ粒子を既定の時間連続的に照射する。例えば、特定の波長の光線はナノ粒子を、これに限定するものでは無いが、約5秒間照射出来る。
【0066】
励起されたナノ粒子130は光線150の光エネルギーを熱エネルギーに変換出来る。その後、図19C及び21に表される様に、励起されたナノ粒子130が発生させた熱エネルギーにより、励起されたナノ粒子130は基板112周辺のナノ粒子130と共に溶ける。換言すれば、励起されたナノ粒子130及びナノ粒子130の周辺は表面で溶けあい、これは基板112が、溶融されないナノ粒子130のみでなく、溶融されたナノ粒子132も持つという事である。
【0067】
最終的に、図19Dに表される様に、周辺のナノ粒子130と溶融しなかったナノ粒子130は表面から外され、既定のパターン170を持つナノ粒子が溶融した薄層を形成し、これは既定のパターンを持つ基板110を得る事である。言い換えると、一旦溶融しないナノ粒子130を外すと、基板112上には溶融したナノ粒子132のみが残り、既定のパターンを呈する。この時、溶融しないナノ粒子130は溶液で洗浄されるか(例えば、水或いは洗浄液によるが、これに限るものでは無い)空気で吹き飛ばされて、基板112より外される。
【0068】
ナノ粒子130は金属素材で出来ていてもよい。この時点で、基板112の表面に残った溶融されたナノ粒子132は、一つ以上の導線及び/或いは一つ以上の導電区域として利用され得る。これは、ナノ粒子の溶融した薄層が一つ以上の導線及び/或いは一つ以上の導電区域の導電層のパターンである事を意味する。故に、ナノ粒子の溶融した薄層は導線及び/或いは導電区域を持つ基板が得られる。
【0069】
例えば、形成される表面構造(これは既定のパターンである)が導線のパターンを持つ導電層である場合は、光線は導線が形成される位置に対応して動かされ、導線が形成される基板の位置のナノ粒子を励起し、ナノ粒子が互いに溶け合い基板に固定される。一旦基板から溶融しなかったナノ粒子が外されると、導線の形態で溶融したナノ粒子(これは、既定のパターンのナノ粒子の薄層である)が基板に残され、これにより既定のパターンの層を持つ基板が得られ、これには基板と溶融したナノ粒子が含まれる。
【0070】
同様に、形成される表面構造(これは既定のパターン層)が少なくとも一つの導電区域があるパターン線を持った導電層であると、光線は導電区域が形成される位置に対応して動き、導電区域が形成される基板の位置のナノ粒子を励起し、ナノ粒子は互いに溶け合い基板に固定される。溶融しなかったナノ粒子が基板から外された後で、導電区域の形態に溶融したナノ粒子(これは既定のパターンのナノ粒子の溶融した薄層)が基板に残り、これにより既定のパターンの導電層を持つ基板が得られ、これは基板と溶融したナノ粒子により形成される。
【0071】
又、もし基板の素材が適切に選ばれていたなら、得られた一本以上の導線及び/或いは一つの以上の電導区域を持つ基板は回路板として使用出来る。この場合、ナノ粒子の素材は、発生した熱エネルギーによりナノ粒子がもたらした温度である、発生した熱エネルギーより低いか同じ溶融温度を持つ。
実施例 8、9、10
【0072】
8nmから9nmの粒子サイズを持つ溶液の形態のAuナノ粒子が、ガラス製の基板に塗布された。この後、1.25mm/秒の照射率で、異なる出力で(514nmの波長の)緑色レーザーがAuナノ粒子を励起される為に、基板上のAuナノ粒子に照射され、Auナノ粒子は周辺のナノ粒子と共に溶融した。導電性のテストの関しては、1.8Wのレーザーでの照射後、基板の表面上の溶融したAuナノ粒子の導電性は1.55Ω/sqであり、1.5Wのレーザーでの照射後、基板の表面上の溶融したAuナノ粒子の導電性は5.21Ω/sqであり、1.2Wのレーザーでの照射後、基板の表面上の溶融したAuナノ粒子の導電性は9.02Ω/sqであった。図22Aに表される様に、レーザーによる照射前に、基板のAuナノ粒子をその表面に持つ二次電子像(SEI)が電子顕微鏡により、220,000の倍率で、作動距離が9.7mmにて観察された。図22Bに表される様に、1.8Wのレーザーでの照射後、その表面に溶融したAuナノ粒子132を持つ基板のSEIは電子顕微鏡により、200,000の倍率で、作動距離が9.7mmにて観察された。 図22Cに表わされる様に、1.5Wのレーザーでの照射後、その表面に溶融したAuナノ粒子132を持つ基板のSEIは電子顕微鏡により、65,000の倍率で、作動距離が9.7mmにて観察された。図22Dに表される様に、1.2Wのレーザーでの照射後、その表面に溶融したAuナノ粒子132を持つ基板のSEIは電子顕微鏡により、140,000の倍率で、作動距離が9.7mmにて観察された。故に、図22A〜22Dを参照すると、本発明の光熱作用を利用した表面構造を持つ基板を製造する方法に従って得られた基板については、提供された基板の得られた基板の表面のナノ粒子は共に溶融し、溶融したナノ粒子は望ましい導電性を持った。
実施例 11
【0073】
粒子サイズが25nmのAgナノ粒子が基板上の薄い膜に形成された。Agナノ粒子の薄膜はエネルギー密度が159.2W/mm2、出力が50mW,光線サイズが20μm、波長が408nmのレーザーでアニールの目的で照射された。アニール前に、図23Aに表された様に、Agナノ粒子130の薄層を表面に形成された基板のSEIが、電子顕微鏡により、80,000の倍率で、作動距離が10mmにて観察された。アニール後に図23Bに表された様に、溶融したAgナノ粒子132の薄層がその表面に形成された基板のSEIが、電子顕微鏡により、80,000の倍率で、作動距離が10mmにて観察された。アニール後は、Agナノ粒子130は明らかにより大きな粒子に融合していた。更に、Agナノ粒子130の薄膜の抵抗率については、アニール前は大きすぎて計測出来なかったが、アニール後は、抵抗は1.48*10-6Ωmに減少した。
実施例 12
【0074】
粒子サイズが約40nm及び120nmのAgナノ粒子は基板上の薄膜に形成された。Agナノ粒子の薄膜はエネルギー密度が0.52W/mm2、出力が50mW、光線のサイズが350μm、波長が408nmのレーザーでアニールの目的で照射された。アニールされる前に、図24Aに表される様に、表面にAgナノ粒子130の薄膜を形成された基板のSEIが、電子顕微鏡により、100,000の倍率で、作動距離が10.1mmにて観察された。アニール後に、図24Bに表される様に、表面に溶融されたAgナノ粒子132持つ基板のSEIが、電子顕微鏡により、100,000の倍率で、作動距離が10mmにて観察された。アニール後には、粒子サイズが約40nmのAgナノ粒子130と、粒子サイズが約120nmのAgナノ粒子130とは明らかに融合していた。更に、Agナノ粒子130の薄膜のて抵抗率については、9.21*105Ωm(アニール前)より3.04*10-7Ωm(アニール後)に減少していた。
【0075】
上記を考慮して、本発明の光熱効果を利用した表面構造を持った基板の製造方法では、特定の表面構造を持った基板はマスクを使用せず製造出来、特定の表面構造を持った基板の製造に関する全ての流れは至って単純であり、特定の表面構造を持った基板の製造費用は比較的低く、特定の表面構造と広い領域を持った基板は簡単に大量生産する事が出来る。又、特定の表面構造と広い領域を持った基板が大量生産されると、特定の手順と対応する技術とに必要であった装置及び機械が使用されなくなるかも知れず、これにより製造コストが下がる。既定のパターンの層を持つ基板の製造では、残留するストレスと熱出力が減少出来、既定のパターンと基板間の接合が強化出来る。又、エネルギーの損失も減少される。
【0076】
この様に本発明が説明されると、多くの方面での本発明の変更の可能性は明らかである。その様な変化形は本発明の精神と範囲から逸脱するものとは見なさず、この技術に精通した者であれば、全てのその様な改良は、次の請求範囲に含まれる様に意図されたものである事は明らかである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光熱作用を利用した表面構造を持つ基板の製造方法であって、
a.基板の提供、
b.提供された基板への複数のナノ粒子の配布、
c.ナノ粒子が励起して、照射エネルギーを熱エネルギーに変換する様に特定の波長での提供された基板のナノ粒子の照射、及び
d.ナノ粒子が形成した熱エネルギーにより、提供された基板の表面への既定のパターンの層の形成により構成される、光熱作用を利用した表面構造を持つ基板の製造方法。
【請求項2】
その手順bは、提供された基板に、既定のパターンに従ってナノ粒子を配布する事により構成され、又、その手順dは、ナノ粒子中の励起したナノ粒子と、ナノ粒子中の励起したナノ粒子の周辺のナノ粒子とを、励起したナノ粒子が発生させた熱エネルギーによって、既定のナノ粒子が溶融した薄層にし、これにより既定のパターンの層を持った基板を取得する事で構成されること、を特徴とする請求項1の方法。
【請求項3】
その既定のパターンが少なくとも一つ導電線のパターンと、少なくとも一つの導電区域のパターンであること、を特徴とする請求項2の方法。
【請求項4】
その手順bは、ナノ粒子の層の形成の為に、提供された基板の表面にナノ粒子の配布により構成され、その手順cは、提供された基板のナノ粒子の層を特定の波長の光線で照射、及び既定のパターンに対応するナノ粒子を励起する為に、光線の既定のパターンに沿って移動させる事で構成され、又、その手順dは、ナノ粒子中の励起されたナノ粒子と、ナノ粒子中の励起されたナノ粒子の周辺のナノ粒子を励起されたナノ粒子が発生させた熱エネルギーにより溶融させる事、及び、提供された基板よりナノ粒子中の溶融されなかったナノ粒子を外して、提供された基板上に既定のパターンのナノ粒子の溶融した薄層の形成より構成されること、を特徴とする請求項1の方法。
【請求項5】
請求項4の方法における既定のパターンとは、少なくとも一本の導線を持つパターンか、少なくとも一つの導電区域を持つパターンの内の、少なくとも一つのパターンであること、を特徴とする請求項4の方法。
【請求項6】
請求項1の方法における基板とは、有機素材、無機素材、或いはハイブリッド素材の内の少なくとも一つの素材を持つ提供された基板であること、を特徴とする請求項1の方法。
【請求項7】
請求項1の方法におけるナノ粒子の素材は、少なくとも一つの金属素材よりなること、を特徴とする請求項1の方法。
【請求項8】
請求項7の方法における金属素材はAu,Cu,Ag,Cd,Te,CdSe,及びそれ等の組み合わせより選択されること、を特徴とする請求項7の方法。
【請求項9】
請求項1の方法における既定のパターンは、少なくとも一本の導線のパターンと、少なくとも一つの導電区域のパターンと内の、少なくとも一つであること、を特徴とする請求項1の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図5C】
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【図5D】
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【図5E】
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【図6A】
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【図6B】
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【図6C】
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【図6D】
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【図7A】
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【図7B】
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【図8】
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【図16A】
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【図16B】
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【図16C】
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【図16D】
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【図17】
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【図19A】
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【図19B】
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【図19C】
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【図19D】
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【図20】
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【図21】
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【図9A】
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【図9B】
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【図10A】
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【図10B】
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【図10C】
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【図11A】
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【図11B】
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【図12A】
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【図12B】
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【図13A】
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【図13B】
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【図14A】
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【図14B】
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【図15A】
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【図15B】
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【図18A】
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【図18B】
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【図22A】
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【図22B】
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【図22C】
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【図22D】
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【図23A】
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【図23B】
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【図24A】
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【図24B】
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【公開番号】特開2009−200485(P2009−200485A)
【公開日】平成21年9月3日(2009.9.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−18192(P2009−18192)
【出願日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【出願人】(390023582)財団法人工業技術研究院 (524)
【氏名又は名称原語表記】INDUSTRIAL TECHNOLOGY RESEARCH INSTITUTE
【住所又は居所原語表記】195 Chung Hsing Rd.,Sec.4,Chutung,Hsin−Chu,Taiwan R.O.C
【Fターム(参考)】