説明

光硬化型樹脂組成物及びそれからなるプラスチック用樹脂組成物

【解決手段】
(A)カチオン重合性化合物、(B)アクリル樹脂、(C)光カチオン重合開始剤とを含有し、(B)アクリル樹脂がカチオン重合性官能基を有し、(A)と(B)との合計100質量部中、(A)が30〜95質量部、(B)が5〜70質量部であることを特徴とする光硬化型樹脂組成物。(B)アクリル樹脂の官能基は、環状エーテル基、ビニロキシ基、ビニロキシ基の酸付加体、活性水素基のいずれか1種類以上を含有することが好ましく、活性水素基が、水酸基であることが更に好ましい。
【効果】
十分な光硬化性を有し、難接着であるポリカーボネート、PETを代表とする硬質プラスチックに対し十分な接着性を有する光硬化型樹脂組成物を得ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光照射により硬化する塗料、接着剤、インキ等に用いられる光硬化型樹脂組成物に関する。特に、ポリカーボネート、PET、ABS樹脂等の難接着である硬質プラスチックに用いられる。
【背景技術】
【0002】
近年、プラスチック素材が電子情報材料分野で多く用いられている。例えば、携帯電話や光ディスクは、硬質プラスチックであるポリカーボネートがよく用いられている。同様に光学用フィルムにはPET樹脂が、また家電情報機器のハウジングには、ABS樹脂が用いられている。それらの製品化過程で、これらの硬質プラスチックを光硬化により接着、塗装、印刷する工程があるが、これらの材料はいずれも難接着である。それらに用いられる塗料、接着剤、インキ等に用いられる材料には、基体樹脂に高い密着性を付与することが望まれている。
高い密着性を付与する方法のひとつとしては、基体樹脂を硬化させる際、低い硬化収縮により、接着界面に発生する残量応力を低減させる方法が有効であることが知られている。この低い硬化収縮を実現する方法として、従来のアクリルモノマー等を用いた光ラジカル重合による付加重合を用いた硬化システムから、硬化収縮が小さいエポキシ樹脂やオキセタン樹脂等の環状エーテルの光カチオン開環重合による硬化システムが提唱されている。しかし、この光カチオン開環重合を用いた硬化システムは、被着体である硬質プラスチックと相互作用しうる官能基を導入することが困難で、密着性を十分に付与することができなかった。
そこで、エポキシ化合物、オキセタン化合物、光カチオン重合開始剤、着色剤としての顔料及び顔料分散剤からなる光カチオン開環重合系に、顔料分散剤としてアンカーが塩基で、室温で液体の櫛型ポリマーを有効成分として添加することにより、被着体との密着性発現を試み、十分な密着性を発現している(例えば、特許文献1)。しかしながら、このシステムは、光カチオン開環重合の重合反応におけるリターダー(反応阻害)になりうる塩基性物質を含んでいる為、生産性に必要な十分な硬化速度を発現することができない欠点を有している。
【特許文献1】特開2003−212965号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
十分な光硬化性を有し、難接着であるポリカーボネート、PETを代表とする硬質プラスチックに対し十分な接着性を有する光硬化型樹脂組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明者らは、鋭意検討した結果、エポキシ化合物、オキセタン化合物等のカチオン重合性化合物と光カチオン重合開始剤からなる光カチオン重合系に、硬化時にカチオン重合性官能基を付与した特定のアクリル樹脂を添加したところ、十分な硬化性と密着性を発現することを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は(A)カチオン重合性化合物、(B)アクリル樹脂、(C)光カチオン重合開始剤とを含有し、(B)アクリル樹脂がカチオン重合性官能基を有し、(A)と(B)との合計100質量部中、(A)が30〜95質量部、(B)が5〜70質量部であることを特徴とする光硬化型樹脂組成物である。
【0005】
また、(B)アクリル樹脂の官能基は、環状エーテル基、ビニロキシ基、ビニロキシ基の酸付加体、活性水素基のいずれか1種類以上を含有することが好ましく、活性水素基が、水酸基であることが更に好ましい。また、(B)アクリル樹脂の重量平均分子量(ポリスチレン換算)が1,000〜100,000の範囲であることが好ましい。
(A)カチオン重合性化合物は、環状エーテル基を含有していることが好ましく、エポキシ基および/またはオキセタニル基を含有しているのが更に好ましい。
また、前記記載の光硬化型樹脂組成物を含有してなるプラスチック用コーティング組成物、接着剤組成物、インキ組成物である。
【発明の効果】
【0006】
本発明の光硬化型樹脂組成物は、十分な硬化性を有し、且つ、難接着である硬質プラスチックであるポリカーボネート、PET等に密着し、加速試験後も同じ密着性を維持することができる。また、本発明の光硬化型樹脂組成物を用いれば、ポリカーボネート、PET等の硬質プラスチックを用いている部材のコーティング材、接着剤、インキ、各種シーリング材等に使用可能で有る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明を、以下に詳しく説明する。
【0008】
[(A)カチオン重合性化合物]
本発明で用いられる(A)カチオン重合性化合物成分は、一分子鎖中に少なくとも1個のカチオン重合性官能基を有する。具体的には、分子内にオキシラン環、オキセタン環、テトラヒドロフラン環等環状エーテルを有する化合物類、環状ホルマール、環状カーボネート、環状エステル、ビニロキシ類、環状チオエーテル(チイラン)、環状オレフィン、スチレン類を言い、カチオン重合性を有すれば、特に制限は無い。これらの中で、エポキシ基を有する化合物や、オキセタニル基を有する化合物が好ましい。このときエポキシ基とオキセタニル基を同時に含有していても構わない。
【0009】
<エポキシ化合物>
具体的にエポキシ基を含有する化合物を例示すると、エポキシ基を1個有する化合物の具体例としては、フェニルグリシジルエーテル、ブチルグリシジルエーテル等があり、エポキシ基を2個以上有する化合物としては、ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、テトラエチレングリコールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ビスフェノールFジグリシジルエーテル、ノボラックグリシジルエーテル、ヘキサヒドロフタル酸グリシジルエステル、ダイマー酸グリシジルエステル、テトラグリシジルアミノジフェニルメタン、3,4-エポキシ-6-メチルシクロヘキシルメチルカルボキシレート、トリグリシジルイソシアヌレート、3,4-エポキシシクロヘキシルメチルカルボキシレート、ポリプロピレンジグリシジルエーテル、ポリブタジエン又はポリスルフィドの両末端ジグリシジルエーテル修飾物等のグリシジルエーテル等が挙げられる。また、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、ビス−(3,4−エポキシシクロヘキシル)アジペート等の脂環式エポキシも挙げられる。
また、エポキシ基と同じ三員環の環状エーテルで、[化1]に示すような官能基を有する化合物も本発明の成分(A)に供する。
【0010】
【化1】

【0011】
[化1]中、R1及びR2は炭素原子で、且つ、その炭素原子が飽和もしくは、不飽和である。Rは水素原子、もしくは、炭素原子で、且つ、その炭素原子が飽和もしくは、不飽和である。)である。
【0012】
一分子鎖中に少なくとも1個の[化1]で示すオキシラン環基を有する化合物は、オキシラン環を成す炭素原子の内、1個の炭素原子は、少なくとも1個の水素原子で置換されており、他の1個の炭素原子は2個の炭素原子で置換されており、その置換している炭素原子は飽和結合、もしくは、不飽和結合であることを特徴とする一分子鎖中に少なくとも1個の[化1]で示すオキシラン環基を有する化合物である。なお、この炭素原子の飽和結合もしくは不飽和結合は、任意の原子団で置換されていても構わない。
具体的には、R1及びRは、アルカン、アルケン、アルキンのいずれかからなる炭化水素を示し、置換基を有していても良い。その置換基としては、アルキル基、シクロアルカン、芳香族環、ハロゲン、水酸基、エーテル、アルデヒド、ケトン、エステル基、アルキル置換のアミド基、アルキル置換のアミノ基等が挙げられるが特に制限は無い。また、Rは、水素原子に加えて、アルカン、アルケン、アルキンのいずれかからなる炭化水素を示し、置換基を有していても良い。その置換基としては、アルキル基、シクロアル環、芳香族環、ハロゲン、水酸基、エーテル、アルデヒド、ケトン、エステル基等が挙げられるが特に制限は無い。
【0013】
更に具体的に一分子鎖中に少なくとも1個の[化1]で示すオキシラン環基を有する化合物を例示すると、Terpinolene Dioxide、Isobutylene oxide、Isoprene oxide、β-Pinene oxide、2-Methyl glycidol、Limonene dioxide、Methyl 2-methylglycidate、7-Oxa-bicyclo[4.1.0]heptane oxiranyl、2-Acetyl-2-methyloxirane、2-(Benzyloxymethyl)-2-methyloxirane、5,6-Epoxy-4,7-methano-1-oxaspiro-(2,5)-octane、2-methyl-1-(2-methyl-oxiranyl)-non-3-en-1-ol、Myrcene Dioxide等が挙げられる。特に、Terpinolene Dioxide、Limonene dioxideや7-Oxa-bicyclo[4.1.0]heptane oxiranyl、5,6-Epoxy-4,7-methano-1-oxaspiro-(2,5)-octaneや Myrcene Dioxideの様に、[化1]で示される特有なオキシラン環構造を分子内に最低1個以上有すれば良いので、他のオキシラン環等のカチオン重合性を有する骨格を同一分子内に有しても構わない。
【0014】
<オキセタン化合物>
具体的にオキセタニル基を有する化合物を例示すると、オキセタニル基を1個有する化合物の具体例としては、3−エチル−3−ヒドロキシメチルオキセタン、3−エチル−3−フェノキシメチルオキセタン、3−エチル−3−(2−エチルヘキシロキシメチル)オキセタン、3−エチル(トリエトキシシリルプロポキシメチル)オキセタン、3−シクロヘキシルオキシメチル−3−エチル−オキセタン等が挙げられる。
オキセタン環を2個有する化合物の具体例としては、ビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、1,4−ビス{〔(3−エチル−3−オキセタニル)メトキシ〕メチル}ベンゼン等が挙げられる。オキセタン環を3以上有する化合物の具体例としては、トリメチロールプロパントリス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ペンタエリスリトールトリス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ペンタエリスリトールテトラキス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ジペンタエリスリトールペンタキス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル等が挙げられる。これらのカチオン重合性化合物は、単独で使用しても2種類以上組み合わせて使用しても構わないが、好ましくは、エポキシ基を含有する化合物とオキセタニル基を含有する化合物を併用することが好ましい。
【0015】
[(B)アクリル樹脂]
本発明に用いられる(B)アクリル樹脂は、カチオン重合性官能基を含有することを特徴とする。すなわち、光カチオン開環重合による硬化時に、成分(B)アクリル樹脂が、(A)カチオン重合性化合物にカチオン重合における開始、生長、停止、連鎖移動等の素反応のいずれかに関与しうる素反応で、共有結合により架橋体に取り込まれることを特徴とする。
【0016】
各素反応に関して、カチオン開環重合の開始反応において開始末端になりうる官能基としては、環状エーテル基を用いることができる。環状エーテル基は、光カチオン重合開始剤から生成するプロトンが付加することにより開始末端になりうるオキソニウムイオンを生成する。また、カチオン付加重合の開始末端も環状エーテル類の開環重合に有用であり、カルボカチオンを生成しうる官能基であるビニロキシ基及びビニロキシ基に酸が付加した構造も本発明に供する。次に、連鎖移動や停止末端として取り込まれうる官能基としては、活性水素基が挙げられ、その活性水素基としては、水酸基、チオール基、アミノが挙げられ、水酸基がもっとも好ましい。次にカチオン開環重合の生長反応として組み込まれる官能基としては、先に挙げた環状エーテル基が挙げられる。
【0017】
以下に各素反応における官能基を例示するが、上記の開始、生長、停止、連鎖移動等のいずれかの反応が可能であればよく、以下に示す官能基だけが限りではない。原料が一般的に市販されていて工業的に有意義な官能基としては、環状エーテル基、ビニロキシ基、ビニロキシ基の酸付加体、活性水素基のいずれか1種類以上を含有することが好ましい 活性水素基の場合、好ましくは、カルボン酸、水酸基、チオール基、アミノ基であり、更に好ましくは水酸基である。この水酸基には、アルコール性水酸基であってもフェノール性水酸基であってもかまわないが、好ましくは、アルコール性水酸基が好ましい。以下に、これらの官能基の導入方法について述べる。
【0018】
一般的にアクリル樹脂に官能基を導入する方法としては、官能基を有するラジカル重合性モノマーと他のラジカル重合性モノマーとをラジカル共重合することによりポリマー側鎖に官能基を導入する方法や、2,2‘−アゾビス(2−ヒドロキシメチルプロピオニトリル)等の開始剤切片に官能基を有するラジカル重合開始剤やチオジグリコール等の官能基を有する連鎖移動剤をラジカル重合時に用いることによりポリマーの分子末端に導入することができる。以下に、先に挙げた官能基を有するラジカル重合性モノマーについて具体的に例示する。
【0019】
環状エーテル基を側鎖に有するラジカル重合性モノマーとしては、側鎖に環状エーテル基を有する(メタ)アクリレートモノマー類が挙げられ、さらに具体的には、グリシジル基を有するグリシジル(メタ)アクリレート、オキセタニル基を有する3−エチル−3−オキセタニルエチル(メタ)アクリレート、脂環式エポキシ基を有する3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、グリシジル基に置換メチル基が付いたメチルグリシジルメタクリレート、テトラヒドロフラン環を有するテトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0020】
ビニロキシ基を側鎖に有するラジカル重合性モノマーとしては、アクリロイル基とビニロキシ基を一分子内に有する2−(ビニロキシエトキシ)エチル(メタ)アクリレートが挙げられる。また、更に、そのビニロキシ基に酢酸、トリフルロオロ酢酸、塩酸等の酸が付加した構造も本発明に供する。水酸基を側鎖に有するラジカル重合性モノマーとしては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートのε−カプロラクトンの開環付加物、(メタ)アクリル酸エステルのエチレンオキサイド、及び/又は、プロピレンオキサイドの混合、及び/又は単独の付加物等側鎖に水酸基が有れば良く、特に制限はない。また、(2−メチル−2−エチル−1,3ジオキソラン−4−イル)メチル(メタ)アクリレート等の(ヘミ)アセタール構造、ベンジル基、ターシャルブチル基の様に酸触媒等により潜在的に水酸基を発生する官能基も本発明に供する。
【0021】
(B)アクリル樹脂は、通常、先に挙げた官能基を側鎖に有するラジカル重合性モノマーと他のラジカル重合性モノマーとの共重合体を言う。他のラジカル重合性モノマーとしては、(メタ)アクリレート類が挙げられる。この(メタ)アクリレート類のエステル基としては、メチル基、エチル基、イソプロピル基、ノルマルブチル基、イソブチル基、ターシャルブチル基、2−エチルヘキシル基、シクロヘキシル基、ベンジル基、イソボロニル基、ラウリル基、ミリスチル基等の直鎖状、分岐構造を問わず、非官能性アルキルエステルを有する物が好ましい。また、スチレン、α−メチルスチレン、酢酸ビニル等、(メタ)アクリレート類と共重合可能な物は、本発明の(B)を構成する単量体として用いることができる。
【0022】
以上に挙げた官能基を側鎖に有するラジカル重合性モノマーと他のラジカル重合性モノマーは有機過酸化物やアゾ化合物をラジカル重合開始剤として用いることにより、有機溶剤中でラジカル重合することにより共重合体として得られ、そのまま用いてもかまわないが、この共重合体を含む溶剤を含む樹脂液から溶剤分を脱溶剤することによりアクリル樹脂として得られ、(B)として用いる。
(B)アクリル樹脂は、カチオン重合性官能基を含有することを特徴とするが、その含有量は、硬化性の点で(B)中、通常1〜50重量%、好ましくは1〜30重量%である。
また、本発明に用いる(B)アクリル樹脂のGPCによる重量平均分子量(ポリスチレン換算)は、耐久性や密着性の点で通常1,000〜100,000、好ましくは1,000〜50,000である。
【0023】
[(C)光カチオン重合開始剤]
本発明に用いられる(C)光カチオン重合開始剤とは、光によりカチオン種又はルイス酸を発生する化合物である。
活性エネルギー線によりカチオン種又はルイス酸を発生するオニウム塩化合物としては、ジフェニルヨードニウム、4−メトキシジフェニルヨードニウム、ビス(4−メチルフェニル)ヨードニウム、ビス(4−tert−ブチルフェニル)ヨードニウム、ビス(ドデシルフェニル)ヨードニウム、トリフェニルスルホニウム、ジフェニル−4−チオフェノキシフェニルスルホニウム、ビス〔4−(ジフェニルスルフォニオ)−フェニル〕スルフィド、ビス〔4−(ジ(4−(2−ヒドロキシエチル)フェニル)スルホニオ)−フェニル〕スルフィド、η5−2,4−(シクロペンタジェニル)〔1,2,3,4,5,6−η−(メチルエチル)ベンゼン〕−鉄(1+)等のオニウムイオンと、テトラフルオロボレート、ヘキサフルオロホスフェート、ヘキサフルオロアンチモネート、ヘキサフルオロアルセネート、ヘキサクロロアンチモネート等の陰イオンとの組み合わせからなる化合物が挙げられる。また、市販の活性エネルギー線によりカチオン種又はルイス酸を発生するオニウム塩としては、Uvacure1590、1591(以上、ダイセルUCB社製、商品名)、サンエイドSI−110、SI−180、SI−100L、SI−80L、SI−60L(以上、三新化学工業社製、商品名)、アデカオプトマーSP−100、SP−172、SP−170、SP−152(以上、旭電化社製、商品名)、2074(ローディア社製、商品名)等が挙げられる。
以上の光カチオン重合開始剤は、単独で使用しても2種類以上組み合わせて使用しても構わない。チオキサントンや2−エチルアントラキノン等の増感剤等を添加して用いることもできる。更に、活性エネルギー線と熱を併用して重合することも可能で有る。
【0024】
以上の(A)、(B)、(C)は特定の配合比で更に良好な硬化性と密着性を発現する。すなわち、(A)と(B)との合計100質量部中、(A)30〜95質量部、(B)5〜70質量部であり、好ましくは(A)50〜95質量部(B)5〜50質量部である。(A)、(B)の配合量がこの範囲にあると、密着性、硬化性の点で好ましい。また、(C)の配合量は(A)と(B)との合計100質量部に対し、0.5〜10.0質量部である。(C)の配合量がこの範囲にあると、硬化性、耐水性、樹脂の着色問題等の点で好ましい。
【0025】
本発明の組成物には必要に応じてその他の樹脂を使用することができる。他の樹脂成分としては、例えばポリブタジエン、ポリクロロプレン、ポリエーテル、ポリエステル、スチレン−ブタジェン−スチレンブロック共重合体、石油樹脂、キシレン樹脂、ケトン樹脂、セルロース樹脂、フッ素系オリゴマー、シリコン系オリゴマー、ポリスルフィド系オリゴマー等が挙げられる。これらは、単独でも複数種を組み合わせて使用してもよい。
改質剤としては、例えば、重合開始助剤(光増感剤)、老化防止剤、レベリング剤、濡れ性改良剤、密着付与剤、界面活性剤、可塑剤、光吸収剤等が挙げられる。これらは、1種単独でも複数種を組み合わせて使用してもよい。希釈剤は、塗布性付与又はその向上のために用いることができる。希釈剤としては通常の有機溶剤や先に挙げた単官能性の環状エーテルが用いられる。
【0026】
本発明は十分な光硬化性を有し、難接着であるポリカーボネート、PETを代表とする硬質プラスチックに対し十分な接着性を有する光硬化型樹脂組成物であるので、これらプラスチックのコーティング用組成物に用いる事ができる。また、接着剤、インキ用のバインダー等に用いる事ができる。また、昨今、高精度な接着性、塗工性が必要とされている光ディスク用材料、特に、保護コート剤や光ディスク用接着剤に用いる事ができる。
【実施例】
【0027】
以下、実施例と比較例により本発明を具体的に説明する。なお、硬化性と密着性については以下の方法で実施例及び比較例に関して評価を行った。
(硬化性)
光硬化型樹脂組成物をポリカーボネート板及びポリエチレンテレフタレート(PET)板(4.5cm×2.0cm×0.2cm)上にアプリケーターを用い100μmに塗布し、メタルハライドランプにて1J/cm2照射し、照射直後のポリカーボネート板表面の塗膜の硬化度合いを目視評価した。硬化度合いは、硬化し、ベトつき(タック)の無いものを○、表面のみ硬化したもの、又は表面にベトつき(タック)のあるものを△、全く硬化しなかったものを×とした。
(密着性)
光硬化型樹脂組成物をポリカーボネート板またはポリエチレンテレフタレート(PET)板(4.5cm×2.0cm×0.2cm)上にアプリケーターを用い100μmに塗布し、メタルハライドランプにて1J/cm2照射した。この塗膜をJIS K5400 8.5.2に準じて2mmマス、25ヶ碁盤目で密着性試験を行った。また、この試験片を85℃×80%の恒温恒湿試験器に100時間保存し、再び密着性試験を行った。
【0028】
[製造例1]
窒素下において、撹拌機、温度計、還流冷却機、滴下槽などを備えた内容量2Lのアクリル樹脂組成物製造装置に、キシレン340.0gを仕込んだ後、重合温度の135℃まで昇温した。ここに、ラジカル重合性モノマーとしてメチルメタクリレート400g、スチレン50g、2−ヒドロキシエチルメタクリレート50g、ラジカル開始剤としてターシャルブチル2−エチルヘキサノエーテト20gを混合した物を4時間かけて滴下した。滴下終了後1時間135℃で攪拌を続けた。続いて、この製造装置を真空にすることにより、キシレンと残存モノマーを留去し、(B)アクリル樹脂を得た。
【0029】
[製造例2〜6、8]
表1に示すラジカル重合性モノマーとラジカル開始剤量を変更した以外は製造例1と同様に行った。
【0030】
[製造例7]
表1に示すラジカル重合性モノマーとラジカル開始剤量及び重合温度を100℃に変更した以外は製造例1と同様に行った。
【0031】
[実施例1]
遮光性の褐色ビンに(B)として、製造例1で得たアクリル樹脂を10質量部、(A)として水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂(旭電化社製、アデカレジンEP−4080S)60質量部とジ〔1−エチル(3−オキセタニル)〕メチルエーテル(東亞合成社製、アロンオキセタンOXT−221)30質量部入れ、加熱撹拌し、(A)と(B)が完全に均一になったことを確認した。ついでこの混合樹脂液が60℃以下になったところで、(C)カチオン重合開始剤として(tolylcumyl)iodonium tetrakis(pentafluorophenyl)borate(Rhodia社製、RHODORSIL PHOTOINITIATOR 2074)3質量部混合溶解し、光硬化型樹脂組成物を得た。
このカチオン重合性樹脂組成物を前記評価方法に従い、評価した結果を表3に示した。
【0032】
[実施例2〜11]
表2に示す成分(A)、成分(B)および成分(C)の種類及び量を変化させた以外は、実施例1と同様に配合し、評価を行い、結果を表3に示した。
また、実施例4についてはポリエチレンテレフタレート板との密着性試験を行い、その結果を表4に示した。
【0033】
[比較例1]
遮光性の褐色ビンに(A)として水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂(旭電化社製、アデカレジンEP−4080S)70質量部とジ〔1−エチル(3−オキセタニル)〕メチルエーテル(東亞合成社製、アロンオキセタンOXT−221)30質量部、(C)カチオン重合開始剤として(tolylcumyl)iodonium tetrakis(pentafluorophenyl)borate(Rhodia社製、RHODORSIL PHOTOINITIATOR 2074)3質量部混合溶解し、光硬化型樹脂組成物を得た。この光硬化型樹脂組成物を前記評価方法に従い評価を行い、その結果を表3に示した。
また、ポリエチレンテレフタレート板との密着性試験を行い、その結果を表4に示した。
【0034】
[比較例2]
遮光性の褐色ビンに(A)として水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂(旭電化社製、アデカレジンEP−4080S)68質量部とジ〔1−エチル(3−オキセタニル)〕メチルエーテル(東亞合成社製、アロンオキセタンOXT−221)30質量部、(C)カチオン重合開始剤として(tolylcumyl)iodonium tetrakis(pentafluorophenyl)borate(Rhodia社製、RHODORSIL PHOTOINITIATOR 2074)3質量部を混合溶解した。ここに、特開2003−212965に開示されているアンカーが塩基で、室温で液体の櫛型ポリマーであるポリ(エチレンイミン)−ポリ(1,2−ヒドロキシステアリン酸)グラフトポリマー(アビシア社製、Solsperse28000)2質量部を配合し光硬化型樹脂組成物を得た。
この光硬化型樹脂組成物を前記評価方法に従い、評価した結果を表3に示した。
【0035】
[比較例3]遮光性の褐色ビンに成分(B)として、製造例6で得たアクリル樹脂を10質量部、成分(A)として水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂(旭電化社製、アデカレジンEP−4080S)60質量部とジ〔1−エチル(3−オキセタニル)〕メチルエーテル(東亞合成社製、アロンオキセタンOXT−221)30質量部を入れ、加熱撹拌し、(A)と(B)が完全に均一になったことを確認した。ついでこの混合樹脂液が60℃以下になったところで、(C)カチオン重合開始剤として(tolylcumyl)iodonium tetrakis(pentafluorophenyl)borate(Rhodia社製、RHODORSIL PHOTOINITIATOR 2074)3質量部混合溶解し、光硬化型樹脂組成物を得た。
このカチオン重合性樹脂組成物を前記評価方法に従い、評価した結果を表3に示した。
【0036】
【表1】

【0037】
【表2】

【0038】
【表3】

【0039】
【表4】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)カチオン重合性化合物、(B)アクリル樹脂、(C)光カチオン重合開始剤とを含有し、(B)アクリル樹脂がカチオン重合性官能基を有し、(A)と(B)との合計100質量部中、(A)が30〜95質量部、(B)が5〜70質量部であることを特徴とする光硬化型樹脂組成物。
【請求項2】
(B)アクリル樹脂のカチオン重合性官能基が、環状エーテル基、ビニロキシ基、ビニロキシ基の酸付加体、活性水素基のいずれか1種類以上を含有することを特徴とする請求項1に記載の光硬化型樹脂組成物。
【請求項3】
(B)アクリル樹脂のカチオン重合性官能基の活性水素基が、水酸基であることを特徴とする請求項2に記載の光硬化型樹脂組成物。
【請求項4】
(B)アクリル樹脂の重量平均分子量(ポリスチレン換算)が1,000〜100,000の範囲であることを特徴とする請求項1に記載の光硬化型樹脂組成物。
【請求項5】
(A)カチオン重合性化合物が環状エーテル基を含有することを特徴とする請求項1に記載の光硬化型樹脂組成物。
【請求項6】
(A)カチオン重合性化合物がエポキシ基および/またはオキセタニル基を含有する請求項5に記載の光硬化型樹脂組成物。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載の光硬化型樹脂組成物を含有してなるプラスチック用コーティング組成物。
【請求項8】
請求項1〜6のいずれかに記載の光硬化型樹脂組成物を含有してなるプラスチック用接着剤組成物。
【請求項9】
請求項1〜6のいずれかに記載の光硬化型樹脂組成物を含有してなるプラスチック用インキ組成物。

【公開番号】特開2006−57078(P2006−57078A)
【公開日】平成18年3月2日(2006.3.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−205455(P2005−205455)
【出願日】平成17年7月14日(2005.7.14)
【出願人】(000005887)三井化学株式会社 (2,318)
【Fターム(参考)】