説明

光結合素子及びその製造方法

【課題】光半導体素子と光導波路との間に発生する気泡をフェルールサイズ等の増大無しに抑制でき、光半導体素子と光導波路との間の光結合特性の信頼性向上をはかる。
【解決手段】光結合素子であって、光導波路30と、光導波路30を保持する保持穴11が設けられたフェルール10と、フェルール10の素子搭載面に設けられた電気配線12と、フェルール10の素子搭載面に搭載され、電気配線12に接続された光半導体素子20と、フェルール10の保持穴11に保持された光導波路30と光半導体素子20との間に充填された透明接着剤14とを具備している。光半導体素子20の周囲の少なくとも一辺の一部が、フェルール10の保持穴11を光半導体素子20側に延長させて得られる領域の内側に位置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、高速LSIパッケージや光ファイバケーブルなどに適用可能な光結合素子に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、フェルールに実装された光半導体素子とフェルールに位置決め保持された光ファイバを、レンズ等の光学部品を用いずに直接光結合する光結合素子が提案されている。この光結合素子では、光ファイバと光半導体素子との間に、屈折率整合及び光ファイバのフェルールへの固定の役目を担う透明接着剤が充填されている。
【0003】
しかし、光ファイバと光半導体素子との間の透明接着剤に気泡が存在すると、光ファイバと光半導体素子との間の光結合特性が気泡の無い場合と比較して変化する。このため、作製素子毎に伝送特性が異なったり、複数のチャネルをアレイ状に配置した素子についてはチャネル毎に伝送特性が異なったりして、光伝送特性の信頼性が劣化する。
【0004】
また、光ファイバの位置決めを行うコネクタに樹脂溜めを設ける方法では、光半導体素子を光ファイバに直接光結合できないこと、更にはコネクタサイズの増大を招く問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許 US 2006/0039658
【特許文献2】特開2005−172990号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の一実施形態は、光半導体素子と光導波路との間に発生する気泡をフェルールサイズ等の増大なしに抑制することができ、光半導体素子と光導波路との間の光結合特性の信頼性向上をはかり得る光結合素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施形態によれば、光結合素子であって、光導波路と、前記光導波路を保持する保持穴が設けられたフェルールと、前記保持穴の一方の開口が位置する前記フェルールの素子搭載面に設けられた電気配線と、前記フェルールの素子搭載面に搭載され、前記電気配線に接続された光半導体素子と、前記フェルールの保持穴に保持された前記光導波路と前記光半導体素子との間に充填された透明接着剤とを具備し、前記光半導体素子の周囲の少なくとも一辺の一部が、前記フェルールの前記保持穴を前記光半導体素子側に延長して得られる領域の内側に位置することを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】第1の実施形態に係わる光結合素子の概略構成を示す断面図。
【図2】第1の実施形態に係わる光結合素子の概略構成を示す側面図。
【図3】光半導体素子としてVCSELを用いた場合の表面概略構造を示す図。
【図4】実施形態により気泡が抜ける様子を比較例と比較して示す断面図。
【図5】光半導体素子としてVCSELを用いた場合の寸法規定を説明するための図。
【図6】光半導体素子としてPDを用いた場合の寸法規定を説明するための図。
【図7】第2の実施形態に係わる光結合素子の概略構成を示す側面図。
【図8】第3の実施形態に係わる光結合素子の概略構成を示す断面図。
【図9】第4の実施形態に係わる光結合素子の製造工程を示す断面図。
【図10】変形例を説明するための側面図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、実施の形態について、図面を参照して説明する。
【0010】
以下の図面の記載において、同一若しくは類似の部分には、同一又は類似の符号が付してある。但し、図面は模式的なものであり、厚みと平面寸法との関係、更には各層の厚みの比率等は現実のものとは異なることに留意すべきである。従って、具体的な厚みや寸法は以下の説明を参酌して判断すべきものである。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることは勿論である。
【0011】
(第1の実施形態)
図1及び図2は、第1の実施形態に係わる光結合素子の概略構成を説明するためのもので、図1は断面図、図2は側面図である。
【0012】
本実施形態の光結合素子は、光を導波するための光導波路30、光導波路30を保持して位置決めするフェルール10、フェルール10にパターン形成された電気配線12、バンプ13にて電気配線12に電気的に接続された光半導体素子20、更には光半導体素子20のアンダーフィル材及び光導波路30の固定材としての透明接着剤14等から構成されている。
【0013】
フェルール10は、例えば30μm程度のガラスフィラーを80%程度混入したエポキシ樹脂からなり、金型による樹脂成型で形成されている。フェルール10に形成された保持穴11は、光導波路30の外形と略同じ形状の円形であり、光導波路30を保持し、位置決めする。なお、保持穴11はフェルール10の光導波路30を挿入する方向に渡って同一形状である必要はなく、光導波路30を位置決めするために必要な場所のみ光導波路30の外形と略同形状にしても良い。また、図1,図2では、保持穴11と光導波路30とは隙間なく挿入されているように図示してあるが、挿入のための隙間があっても良い。
【0014】
フェルール10の一つの面、即ち保持穴11の一方の開口が位置する素子搭載面には、メタルマスクとスパッタ等によるパターンメタライズを行って電気配線12が形成されている。これにより、1μm以下の非常に高い精度を持ちながら、非常に低コストで電気配線付きのフェルール10を量産することが可能となっている。なお、図1では、電気配線12は、フェルール10の素子搭載面のみに形成されているが、フェルール10の他の基板等への搭載を考慮して、フェルール10の他の面(例えば、図1において上面,下面)に跨って形成しても良い。
【0015】
フェルール10の材料としては、上記エポキシ樹脂の他にPPS(ポリフェニレンサルファイド)、LCP(液晶ポリマー)、ポリアミド樹脂、シリコーン樹脂、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂にガラスフィラーを混合した樹脂を用いることもできる。
【0016】
光素子搭載用バンプ13は、半田バンプ(加熱溶融)、Auバンプ(熱圧着)、Sn/Cuバンプ(固相接合)など、種々の材料及び接続方法を用いることができる。
【0017】
光半導体素子20は、発光素子又は受光素子であり、例えばVCSEL(Vertical Cavity Surface Emitting Laser)やPD(Photo Diode)等を用いることができる。
【0018】
光導波路30は、コア31をクラッド32で被覆した光ファイバであり、例えば石英系のマルチモードGI(Graded Index)ファイバ(コア径50μm、クラッド径125μm、NA=0.21)を用いることができる。このような光導波路30は、直流から100GHz以上の周波数で損失の周波数依存性が殆ど無く、電磁障害や接地電位変動雑音も無いため、数十Gbpsの配線が容易に実現することが可能である。また、光導波路30としては、多成分ガラス系の光ファイバやプラスチック光ファイバを用いることも可能である。
【0019】
光導波路30の端面は、光導波路30の光導波方向に対して垂直な面でも非垂直な面でも良く、ファイバクリーバ,研磨等により所望の端面形状となるように整形される。この他にナイフ,レーザ等による切断、弗酸等の薬剤によるエッチング、熱板整形等によって端面整形を行っても良い。
【0020】
また、図1において、フェルール10の光半導体素子20が搭載される面(光半導体素子20の搭載面)は、光導波路30の光導波方向に対して垂直となっているが、必ずしもこれに限るものではない。光導波路端面の反射光がVCSELの光共振モードに結合して発生する戻り光雑音を抑制するために、フェルール10の光半導体素子20が搭載される面を光導波路30の光導波方向に対して傾けても良い。
【0021】
図2は、図1に示した光結合素子を光半導体素子20側から見たものである。光半導体素子20は5つのバンプ13にて電気配線12に接続されている。そして、光半導体素子20の一辺の一部がフェルール10の保持穴11を光半導体素子20側に延長させて得られる領域(以下、保持穴11の延長領域と記す)の内側に位置している。これにより、保持穴11の一部は光半導体素子20と対向しない部分を有する、即ち光半導体素子20側から見て保持穴11は光半導体素子20で覆われていない部分を有することになる。
【0022】
保持穴11と光導波路30との間、つまり保持穴11とクラッド32との間に隙間がある場合にも、光半導体素子20の一辺の一部がフェルール10の保持穴11の延長領域の内側に位置するように、光半導体素子20を配置すれば良い。
【0023】
図3は、光半導体素子20としてVCSELを用いた場合の光半導体素子20の表面概略構造を示したものである。光半導体素子20は、基板21上にアノード電極22、カソード電極23,24、及び図示しないレーザ発振領域を形成したものである。レーザ光はレーザ出射口25より出射される。また、レーザ出射口25は光導波路30のコア31の略中心に位置するように配置される。即ち、レーザ出射口25は、光導波路30の略中心及び保持穴11の略中心に位置される。ここでは、VCSELの場合を示したが、PDでも同様である。また、光半導体素子20のアノード電極22、カソード電極23,24の形状は任意である。
【0024】
本実施形態の光結合素子の作製手順としては、まず光半導体素子20のアノード電極22及びカソード電極23,24に金バンプ13を形成する。そして、金バンプ13をフェルール10の電気配線12に熱圧着することにより、光半導体素子20をフェルール10の素子搭載面に搭載する。次に、フェルール10の保持穴11に十分に脱泡処理を施した透明接着剤14を充填した後、光導波路30を保持穴11内に所定の位置まで挿入する。最後に、透明接着剤14を熱硬化によって硬化させ、光導波路20をフェルール10に位置決めして固定する。
【0025】
ここで、透明接着剤14の充填には、光導波路30の挿入口から保持穴11に充填する方法(図1においてフェルール10の右側から挿入する方法)と、光半導体素子20の搭載面から保持穴11に充填する方法(図1においてフェルール10の左側から挿入する方法)する場合の2種類がある。
【0026】
光導波路30の挿入口から充填する場合は、透明接着剤14は毛細管現象により、保持穴11のもう一端、即ち光半導体素子20の搭載面にまで達する。なお、この時点で光半導体素子20に透明接着剤14が付着することは無い。透明接着剤14は、光導波路30を挿入することにより保持穴11から押し出されることによって、光半導体素子20に付着する。
【0027】
一方、光半導体素子20の搭載面から保持穴11に透明接着剤14を充填する場合は、光半導体素子20とフェルール10の素子搭載面との間を毛細管現象により拡がり、即ちアンダーフィルされる。その後に、保持穴11を毛細管現象により伝わり、光導波路30の挿入口にまで達する。
【0028】
前者の充填方法の場合、光導波路30の挿入により透明接着剤14が保持穴11から溢れ出て、透明接着剤14が光半導体素子20に付着する際に、気泡50が発生することがある。図4(a)に示すように、光半導体素子20が保持穴11を完全に覆い隠す比較例に係る構造では、光導波路30を保持穴11内に更に挿入しても、気泡50が光導波路30と光半導体素子20との間に残ることがある。
【0029】
光導波路30のコア31と光半導体素子20との間に気泡50が存在すると、光結合特性の低下を招くため、コア31と光半導体素子20との間の気泡50を無くすことが必要である。このためには、光導波路30と光半導体素子20との間の気泡50をできるだけ無くすことが好ましい。
【0030】
一方、後者の充填方法の場合、透明接着剤14の拡がり方に分布があると外気を巻き込み気泡50が発生することになる。この場合も、図4(a)に示すように、光半導体素子20が保持穴11を完全に覆い隠す比較例にかかる構造では、光導波路30を保持穴11内に挿入しても、気泡50が光導波路30と光半導体素子20との間に残ることがある。
【0031】
このような気泡の発生及び残留を抑制するために図4(b)に示すような本実施形態では、光半導体素子20の基板21の一辺21aの一部を、保持穴11の延長領域の内側に位置するようにしている。このような配置を採ることにより、前者の充填方法については、光導波路30を挿入する際の保持穴11の周囲から溢れ出る透明接着剤14は、光半導体素子20に対向する保持穴11の部分のみに付着し、光半導体素子20に対向しない保持穴11の部分には付着しない。このため、仮に気泡50が発生しても、図4(b)に示されるように、光導波路30の挿入に従い、保持穴11が光半導体素子20に対向しない部分から気泡50が外部に排出される。
【0032】
気泡50は、光半導体素子20の一辺の一部がフェルール10の保持穴11の延長領域の内側に位置している一辺(図3では、辺21a)に向かって排出される。光導波路30と光半導体素子20との間に気泡50が溜まりにくくなり、光半導体素子20の受光領域又は発光領域と光導波路30のコア31との間に気泡50が溜まりにくくなる。その結果として、光半導体素子20と光導波路30との間の気泡50の残留を効果的に抑制することが可能となる。
【0033】
後者の充填方法についても同様に、充填中に発生した気泡50は、光導波路30の挿入に従い光半導体素子20に対向しない保持穴11の部分より外部に排出されるため、結果として、光半導体素子20と光導波路30との間での気泡50の残留を抑制することが可能となる。
【0034】
光半導体素子20に対向しない保持穴11の部分の具体的な大きさは、以下の通り規定される。
【0035】
図5(a)(b)は光半導体素子20としてVCSELを用いた場合の概略表面構造であり、(a)は全体構成、(b)は要部構成を拡大して示している。ここで、レーザ光出射口25のサイズは直径10μmであり、光導波路30のコア径は50μmとする。さらに、光出射口25を囲むアノード電極22のサイズは幅10μmとする。このとき、光出射口25の中心から光出射口25を囲むアノード電極22までの長さは15μmとなる。従って、光半導体素子20の基板21の一辺21aは、光出射口25の中心から15μmまで近付けることが可能となる。そしてこの場合、光半導体素子20の一辺21aの一部が保持穴11の延長領域の内側に位置することになり、保持穴11の一部が光半導体素子20に対向しないことになる。
【0036】
但し、実際の光出射口25の中心から光出射口25を囲むアノード電極22までの長さは、ダイシング等の光半導体素子20をチップ化する際のマージンを見込んで設定することが望ましい。さらに、基板21の一辺21aから光出射口25の中心までの距離も、アノード電極22の端部が一辺21aに接しない程度のマージンを見越して設定することが望ましい。
【0037】
図6(a)(b)は光半導体素子20としてPDを用いた場合の概略表面構造であり、(a)は全体構成を示し、(b)は要部構成を拡大して示している。ここで、26は受光面である。受光面26の直径は光導波路30のコア31の光を効果的に受光できるように、コア31より大きな60μmである。さらに、受光面26を取り囲むアノード電極22の幅は10μmであるとする。VCSELの場合と同様に、受光面26の中心が保持穴11の略中心に配置するようにした場合、光半導体素子20の基板21の一辺21aは受光面26の中心から40μmの位置が最も光半導体素子20と保持穴11の対向しない部分を広くとることが可能となる。
【0038】
このように、光半導体素子20と光導波路30との間の気泡50の残留を抑制する他に、光半導体素子20の基板21の一辺21aをレーザ出射口25或いは受光面26に近付けることにより、光半導体素子20の基板21のサイズが小さくなるため、光半導体素子20の作製コストを低下させることも可能となる。
【0039】
なお、フェルール10としては、VCSEL用及びPD用の2種類について用意しても良いが、VCSEL,PDの電極パターンを同一にしておけば、フェルール10を兼用することが可能となる。このため、光結合素子の作製コストを低減する観点からは、VCSEL,PDの電極パターンを同一にしておくのが望ましい。
【0040】
このように本実施形態によれば、光半導体素子20の周囲の一辺21aの一部が、フェルール10の保持穴11の延長領域の内側に位置するようにしているので、光半導体素子20と光導波路30との間に発生する気泡50をフェルール10の保持穴11と光半導体素子30の対向しない領域から容易に排出することができる。従って、光半導体素子20と光導波路30との間の光結合特性の信頼性向上をはかることができる。しかも、フェルール10に気泡を排出させる経路を設けたり、樹脂溜めを設ける方法とは異なり、フェルール10の寸法増大を招くこともない。これは、製造コストの低減に極めて有効である。
【0041】
(第2の実施形態)
図7は、第2の実施形態に係わる光結合素子の概略構成を説明するためのもので、光半導体素子側から見た側面図である。
【0042】
本実施形態は、アレイ状に配置された光導波路30に対応させたものであり、第1の実施形態と同様に光半導体素子200の基板21の一辺21aの一部を、保持穴11の延長領域の内側に位置するようにしている。
【0043】
具体的には、フェルール100には、一方向に沿って複数本の保持穴11が設けられており、これらの保持穴11にはアレイ配置された光導波路30がそれぞれ挿入されるようになっている。光半導体素子200は、VCSELを一方向にアレイ状に配置したものであり、各々のVCSEL間は保持穴11間と同じ距離となっている。そして、光半導体素子200は複数の保持穴11に跨って搭載され、光半導体素子200の長手方向の一辺21aの一部が各保持穴11の延長領域の内側に位置するようになっている。
【0044】
なお、アレイ配置された光導波路30の本数が1つのフェルール100の保持穴11の数よりも多い場合は、複数のフェルールを用いればよい。また、光半導体素子200はVCSELに限らずPDであっても良い。
【0045】
本実施形態のように、複数の保持穴11が近接している場合、各々の保持穴11に対して必ずしも光導波路30が全く同じタイミングで挿入されるわけではなく、挿入タイミングが僅かにずれる場合がある。例えば、ある保持穴Aに対しその両側の保持穴Bの方が先に光導波路30が挿入された場合、保持穴Aに対応する部分では周りから透明接着剤14が回り込み、結果として気泡50が発生する恐れがある。例えば、保持穴11の光導波路挿入側から透明接着剤14を充填した場合、光導波路30を挿入する際に、透明接着剤14は保持穴Aの周囲の保持穴Bから溢れ出ると、透明接着剤14は保持穴Aの周囲付近が保持穴Aの中心付近と比較して早く光半導体素子200へ付着することになる。そして、光導波路30の更なる挿入により透明接着剤14が更に溢れ出ると、保持穴Aに対応する部分の両側の接着剤同士が接触することになり、このときに気泡50が発生する。
【0046】
一旦発生した気泡50は、前記図4の構成のように光半導体素子20が保持穴11を覆い隠すような構成では、保持穴Aに光導波路30を挿入しても、光導波路30と光半導体素子200との間に止まる可能性が高い。気泡50が光導波路30と光半導体素子200との間に残留すると伝送特性の変化を招く。特に、本実施形態のように複数のチャネルをアレイ状に配置した素子については、チャネル毎に伝送特性が異なったりして、光伝送特性の信頼性が大きく劣化する。
【0047】
これに対して本実施形態では、光半導体素子200の一辺が保持穴11の延長領域の内側に位置するようにしているので、光導波路30の挿入に従い、対向しない部分より気泡50を外部に逃がすことができる。このため、光導波路30と光半導体素子200との間に気泡50が残留するのを未然に防止することができ、チャネル毎の伝送特性を揃えることが可能となる。
【0048】
このように本実施形態によれば、光半導体素子200の長手方向の一辺21aの一部が各保持穴11の延長領域上の内側に位置するようにしているので、第1の実施形態と同様に光半導体素子200と光導波路30との間の気泡を抑制することが可能となる。従って、第1の実施形態と同様の効果が得られる。
【0049】
(第3の実施形態)
図8は、第3の実施形態に係わる光結合素子の概略構成を示す断面図である。
【0050】
本実施形態の光結合素子は、第1の実施形態の光結合素子の、フェルール10の保持穴11と光結合素子20が対向しない位置にある透明接着剤14を、不透明樹脂40で覆ったものである。
【0051】
不透明樹脂40を塗布しない場合、光導波路30と光半導体素子20が対向しない領域より、外光が進入し、この光が光半導体素20のノイズの原因となる。そのため、少なくともフェルール10の保持穴11と光結合素子20が対向しない位置にある透明接着剤14を不透明樹脂40で覆うことにより、外光進入の大半を防ぐことが可能となる。
【0052】
このように本実施形態によれば、第1の実施形態と同様の効果が得られるのは勿論のこと、外光の侵入を抑制できる利点がある。また、更なる外光進入を抑制するために、透明接着剤14の全体を覆うように不透明接着剤40を塗布しても良い。
【0053】
(第4の実施形態)
図9(a)〜(c)は、第4の実施形態に係わる光結合素子の製造工程を示す断面図である。本実施形態は、前記図1の光結合素子の製造方法である。
【0054】
第1の実施形態で説明したように、光半導体素子20のアノード電極22、及びカソード電極23,24に金バンプ13を形成した後、バンプ13をフェルール10の電気配線12に熱圧着することにより、光半導体素子20をフェルール10の素子搭載面に搭載する。続いて、図9(a)に示すように、フェルール10の保持穴11に十分に脱泡処理を施した透明接着剤14を充填する。透明接着剤14の充填方法は、光導波路30の挿入口から保持穴11に充填する方法とした。
【0055】
次いで、図9(b)に示すように、フェルール10の保持穴11に光導波路30を挿入する。光導波路30の挿入により、透明接着剤14が保持穴11から溢れ出し、光半導体素子20に接触することになる。
【0056】
次いで、図9(c)に示すように、確実に気泡を排出するように、光導波路30を一旦光半導体素子20に接触させる。その後、光導波路30を所定の位置まで後退させることにより、前記図1に示す構造が完成することになる。
【0057】
以上の製造方法により、仮に光導波路30と光半導体素子20との間に気泡が発生したとしても、光導波路30の挿入を光半導体素子20に接触するまで行うことにより、気泡は光半導体素子20とフェルール10の保持穴11が対向しない領域へ確実に排出される。このため、光導波路30と光半導体素子20との間の気泡の残留を抑制することが可能となる。
【0058】
なお、光導波路30が光半導体素子20に接触した状態から所定の位置に移動させる際、光半導体素子20とフェルール10の保持穴11が対向しない領域より、光導波路30と光半導体素子20との間に外気が引き込まれる可能性はある。即ち、光導波路30と光半導体素子20との間に気泡が発生する恐れがある。これを防止するために、図9(c)に示すように光導波路30が光半導体素子20に接触した状態で、透明接着剤14を覆うように更に透明接着剤を塗布する。これにより、光半導体素子20とフェルール10の保持穴11が対向しない領域と外気との距離を増やすことができるため、外気の引き込みを確実に抑制することが可能となる。
【0059】
(変形例)
なお、本発明は上述した各実施形態に限定されるものではない。
【0060】
1つの光導波路に対応する保持穴は必ずしも1つの穴で形成されている必要はなく、図10(a)に示すように、光導波路を保持固定するための保持穴11aと、この保持穴11aに連接された補助穴11bで形成しても良い。この場合、補助穴11bの一部が光半導体素子20よりも外側に位置すれば、気泡の除去効果は得られる。
【0061】
また、保持穴は必ずしも円形である必要はなく、図10(b)に示すように、一辺の長さが光導波路の直径とほぼ同じ正方形の穴61であっても良い。正方形の保持穴61の角部が光半導体素子20よりも外側に位置するようにすれば、気泡の除去効果が得られると共に、フェルールをより小さくすることも可能となる。
【0062】
また、第4の実施形態では、光導波路30を光半導体素子20に一旦接触させるようにしたが、必ずしも接触させる必要はなく、光導波路30を保持穴11内から突出させ光半導体素子20に近接させた後に、光導波路30を所定の位置まで後退させるようにしても良い。この場合も、気泡の除去効果は十分に得られる。
【0063】
本発明の幾つかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0064】
10,100…フェルール、11,11a,11b,61…保持穴、12…電気配線、13…バンプ、14…透明接着剤、20,200…光半導体素子、21…基板、21a…一辺、22…アノード電極、23,24…カソード電極、25…レーザ出射口、26…受光面、30…光導波路、31…コア、32…クラッド、40…不透明樹脂、50…気泡。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光導波路と、
前記光導波路を保持する保持穴が設けられたフェルールと、
前記保持穴の一方の開口が位置する前記フェルールの素子搭載面に設けられた電気配線と、
前記フェルールの素子搭載面に搭載され、前記電気配線に接続された光半導体素子と、
前記前記光導波路の一端と前記光半導体素子との間に充填された透明接着剤と、
を具備し、
前記光半導体素子の周囲の少なくとも一辺の一部が、前記フェルールの前記保持穴を前記半導体素子側に延長させて得られる領域の内側に位置することを特徴とする光結合素子。
【請求項2】
前記保持穴は一方向に沿って複数本並列配列され、前記光半導体素子は前記複数の保持穴に跨って搭載され、前記光半導体素子の長手方向の一辺の一部が前記各保持穴を前記半導体素子側に延長させて得られる領域の内側に位置することを特徴とする請求項1に記載の光結合素子。
【請求項3】
前記フェルールの保持穴と前記光半導体素子が対向しない位置にある前記透明接着剤を覆うように、不透明樹脂が形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の光結合素子。
【請求項4】
請求項1〜3の何れかに記載の光結合素子の製造方法であって、
前記フェルールの素子搭載面に、前記光半導体素子の周囲の少なくとも一辺の一部が、前記フェルールの前記保持穴を前記半導体素子側に延長させて得られる領域の内側に位置するように該光半導体素子を搭載する工程と、
前記フェルールの保持穴に前記透明接着剤を充填する工程と、
前記透明接着剤が充填された状態で、前記光半導体素子の搭載面と反対側から前記フェルールの保持穴に光導波路を挿入し、該光導波路の先端を前記フェルールの光半導体素子搭載面より外側に突出させる工程と、
前記フェルールの光半導体素子搭載面より外側に突出させた前記光導波路を所定の位置まで後退させる工程と、
を含むことを特徴とする光結合素子の製造方法。
【請求項5】
前記光導波路を前記フェルールの保持穴に挿入する際に、前記光導波路の先端を前記光半導体素子に一旦接触させることを特徴とする請求項4に記載の光結合素子の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−203115(P2012−203115A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−66184(P2011−66184)
【出願日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】