光走査装置、画像形成装置、及び位相変調方法
【課題】液晶素子を透過した光ビームの波面収差の発生量を抑制し、感光体の被走査面に集光される光ビームのビームスポット径の劣化を防止する。
【解決手段】液晶素子20aに駆動電圧を印加して液晶層の内部に屈折力を生じさせる際に、例えば液晶素子の温度などによって印加する駆動電圧を制御して、液晶層の位相変調に伴い光ビームに発生する波面収差を最小になるように制御する。これにより、半導体レーザ11aから射出する光ビームを液晶素子20aにより偏向する際に、光ビームのスポット径の劣化を防止することが可能となる。
【解決手段】液晶素子20aに駆動電圧を印加して液晶層の内部に屈折力を生じさせる際に、例えば液晶素子の温度などによって印加する駆動電圧を制御して、液晶層の位相変調に伴い光ビームに発生する波面収差を最小になるように制御する。これにより、半導体レーザ11aから射出する光ビームを液晶素子20aにより偏向する際に、光ビームのスポット径の劣化を防止することが可能となる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光走査装置、画像形成装置、及び位相変調方法に係り、さらに詳しくは、光ビームにより感光体を走査する光走査装置、該光走査装置を用いた画像形成装置、及び感光体を走査する光ビームの光路を偏向する液晶素子の位相を変調する位相変調方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から画像形成装置には、光源から射出された光ビームを例えばポリゴンミラーなどの偏向手段を用いて走査し、感光体上に潜像を形成する光走査装置が用いられている。この光走査装置では、処理速度を向上させる手段として偏向手段であるポリゴンミラーの回転速度を上げる方法が用いられている。
【0003】
一方、この種の画像形成装置はオンデマンドプリンティングシステムとして簡易印刷によく用いられるようになり、生産性の向上及び画質の高品質化への要求が一層高まっている。そこで、近年ではポリゴンミラーの回転速度を上げるとともに、1パッケージ内に複数の発光点(発光チャンネル)をもち、各発光点から複数の光ビームを射出することが可能なマルチビーム光源を備えた光走査装置、又はシングルビームを射出する半導体レーザを複数備える光走査装置が提案されている。
【0004】
しかしながら、マルチビーム光源は製造プロセス上チャンネル数を増加することが困難であるとともに、熱的又は電気的なクロストークの影響を除去することが難しく、短波長化が困難であるといった理由から現在では高価な光源手段である。このため、マルチビーム光源を使用すると装置の高コスト化を招来するという問題がある。
【0005】
一方、複数のシングルビーム半導体レーザを光源とする光走査装置は、周囲環境の変動又は装置の経年変化等の影響により、被走査面におけるビームスポット配列(ビームピッチ、走査線間隔)が変動するという問題がある。そこで、電気信号により駆動される液晶素子を光ビームの光路上に配置して、ビームスポットの変動に応じて液晶素子を駆動することにより、例えば感光体の被走査面上のビームスポットの配列を補正する方法が提案されている(例えば、特許文献1、及び特許文献2参照)。
【0006】
特許文献1及び特許文献2に記載の方法は、光ビームの偏向手段として用いられる液晶素子の液晶層に適当な電圧を印加して、液晶層の内部に一定勾配の電位分布を生じさせることにより、液晶層の光ビームに対する屈折率を制御している。
【0007】
しかしながら、液晶層に勾配が一定の電位分布を生じさせたとしても、液晶層に生じる屈折率分布の勾配は必ずしも一定にならず、例えば高次多項式で近似可能な曲線状になってしまう。このような曲線状の屈折率分布を呈する液晶層に光ビームを入射させると、液晶層は光ビームに対しレンズとして機能してしまい、光ビームの光路を偏向させるだけではなく波面収差を生じさせてしまうという不都合があった。また、液晶素子の温度が変化した場合には、屈折率分布自体が変化してしまい液晶層の特性を変動させてしまうことも予想される。
【0008】
【特許文献1】特開2003−302595号公報
【特許文献2】特開2003−337293号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明はかかる事情の下になされたもので、その第1の目的は、液晶素子を透過した光ビームの波面収差の発生量を抑制し、感光体の被走査面上に集光される光ビームのビームスポット径の劣化を防止することが可能な光走査装置を提供することにある。
【0010】
また、本発明の第2の目的は、出力画像の品質劣化を防止することが可能な画像形成装置を提供することにある。
【0011】
また、本発明の第3の目的は、感光体の被走査面に集光する光ビームのビームスポット径の劣化を回避しつつ、液晶素子を透過する光ビームを偏向することが可能な液晶素子の位相変調方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
請求項1に記載の発明は、光源から射出される光ビームにより感光体を走査する光走査装置であって、第1及び第2の駆動電圧に基づいて前記光ビームの光路を偏向する液晶素子と;前記第1及び第2の駆動電圧を制御して、前記液晶素子で発生する波面収差を制御する波面収差制御手段と;を備える光走査装置である。
【0013】
これによれば、液晶素子の液晶層に電圧を印加して液晶層の内部に屈折力を生じさせる際には、波面収差制御手段により液晶層の位相変調に伴い発生する波面収差の発生量が制御される。その結果、液晶素子により偏向された光ビームのスポット径の劣化を防止することが可能となる。
【0014】
この場合において、請求項2に記載の光走査装置に如く、前記波面収差制御手段は、前記第1及び第2の駆動電圧の中間電圧となる基準電圧を制御して前記波面収差の発生量を制御することとすることができる。
【0015】
この場合において、請求項3に記載の光走査装置の如く、前記波面収差制御手段は、前記光ビームの偏向角に応じて前記基準電圧を制御することとすることができる。
【0016】
請求項1及び2に記載の各光走査装置において、請求項4に記載の光走査装置の如く、前記光ビームのビームウェスト位置を検出するビームウェスト位置検出手段を更に備え、前記波面収差制御手段は、前記ビームウェスト位置検出手段の検出結果に基づいて前記波面収差の発生量を制御することとすることができる。
【0017】
請求項1及び2に記載の各光走査装置において、請求項5に記載の光走査装置の如く、前記液晶素子近傍の温度を検出する温度検出手段を更に備え、前記波面収差制御手段は、前記温度検出手段の検出結果に基づいて前記波面収差の発生量を制御することとすることができる。
【0018】
請求項2〜5に記載の各光走査装置において、請求項6に記載の光走査装置の如く、前記液晶素子の温度が所定の温度より低い場合には、前記光ビームのビームウェストの位置を前記光源から遠ざける方向に移動させ、所定の温度より高い場合には、前記光ビームのビームウェスト位置を前記光源に近づける方向に移動させるパワー成分を発生する光学系を更に備えることとすることができる。
【0019】
この場合において、請求項7に記載の光走査装置の如く、前記光学系のパワー成分は、前記液晶素子の使用温度の中央値付近で最小になるように設定されていることとすることができる。
【0020】
請求項6及び7に記載の各光走査装置において、請求項8に記載の光走査装置の如く、前記基準電圧は、前記ビームウェストの位置変動が前記液晶素子の使用温度の中央値付近で最小となるように設定されていることとすることができる。
【0021】
請求項9に記載の発明は、感光体上に形成された潜像に基づいて画像を形成する画像形成装置であって、前記感光体上に潜像を形成する請求項1〜8のいずれか一項に記載の光走査装置と;前記光走査装置により前記感光体上に形成された潜像に基づいて、画像を形成する処理装置と;を備える画像形成装置である。
【0022】
これによれば、請求項1〜8のいずれか一項に記載の光走査装置により感光体上に潜像が形成され、処理装置によりこの潜像に基づいて画像が形成される。したがって、感光体上にはビームスポット径の劣化がない光ビームにより潜像が形成され、結果的に出力画像の品質劣化を防止することが可能となる。
【0023】
請求項10に記載の発明は、感光体を走査する光ビームを偏向する液晶素子の位相変調方法であって、前記液晶素子で光ビームを偏向する際に生じる波面収差の発生量を予測する工程と;前記予測された波面収差の発生量に基づいて、前記液晶素子に印加する第1及び第2の駆動電圧を決定することで、前記波面収差の発生量を制御する工程と;を含む液晶素子変調方法である。
【0024】
これによれば、液晶素子で生じる波面収差の発生量が予測され、この予測結果に基づいて光ビームを偏向する際に生じる波面収差の発生量が最小となるように前記液晶素子に印加する駆動電圧が決定される。したがって、液晶素子により光ビームを偏向する際に発生する波面収差を低減することが可能となり、結果的に、光ビームのスポット径の劣化を防止することが可能となる。
【0025】
この場合において、請求項11に記載の位相変調方法の如く、前記発生量を予測する工程では、前記液晶素子の位相差特性曲線の温度特性と前記液晶素子の温度測定結果とから、前記波面収差の発生量が予測されることとすることができる。
【0026】
請求項10に記載の位相変調方法において、請求項12に記載の位相変調方法の如く、前記発生量を予測する工程では、前記感光体での光ビームのビームウェスト位置から、前記波面収差の発生量が予測されることとすることができる。
【0027】
請求項10〜12に記載の各液晶素子変調方法において、請求項13に記載の液晶素子変調方法の如く、前記制御する工程では、前記第1及び第2の駆動電圧の中間電圧となる基準電圧を制御することとすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
《第1の実施形態》
以下、本発明の第1の実施形態を図1〜図8(B)に基づいて説明する。図1は、本実施形態にかかる光走査装置10の概略構成を示す図である。
【0029】
この光走査装置10は、一例として、2本の光ビームを同時に走査する2ビーム方式(マルチビーム方式)の光走査装置であり、図1に示されるように、1組の半導体レーザ11a,11b、1組のカップリングレンズ12a,12b、1組の液晶素子20a,20b、シリンドリカルレンズ13、ポリゴンミラー14、fθレンズ15、トロイダルレンズ16、感光ドラム17、反射ミラー18、ビームピッチ検出センサ19、液晶素子制御装置36、及び上記各部を統括的に制御する不図示の主制御装置を備えている。
【0030】
前記一組の半導体レーザ11a,11bは、シングルモードの半導体レーザである。これら1組の半導体レーザ11a,11bはY軸方向に隣接して配置され、主制御装置(不図示)により所定の画像情報に基づいて変調されることにより、+X方向に光ビームLBa,LBbを射出する。
【0031】
前記一組のカップリングレンズ12a,12bは、半導体レーザ11a,11bの+X側にY軸方向に隣接して配置され、半導体レーザ11a,11bから射出された光ビームLBa,LBbを略平行光に整形する。
【0032】
前記液晶素子20a,20bは、カップリングレンズ12a,12bの+X側にY軸方向に隣接して配置されている。液晶素子20aと液晶素子20bは同一の用途及び機能を有している。したがって、ここでは液晶素子20aを代表的にとりあげて説明する。
【0033】
図2(A)は液晶素子20aを−X側から見た図であり、図2(B)は液晶素子20aを−Z側(下方)から見た図である。液晶素子20aは図2(A)及び図2(B)を総合するとわかるように、X軸方向に所定の間隔を隔てて相互に対向するように配置されたガラス基板21,22、ガラス基板21,22の間に形成された長手方向をY軸方向とする液晶層30、ガラス基板21,22の間に液晶層30を包囲するように形成された樹脂層24、及び液晶層30に電圧信号を供給するためのハーネス23などを含んで構成されている。
【0034】
図3は液晶層30近傍を−Y側から見た図である。液晶層30は幅H(=2.0mm)、厚さ数〜数十μm程度で、図3に示されるように複数の液晶分子30bを含み、X軸方向両端面には配向膜30aがそれぞれ形成されている。そして、液晶層30は、その+X側に配置された透明電極32A及び−X側に配置されたストライプ状の透明電極32Bを介して、一組のガラス基板21,22に挟持されている。
【0035】
図4は透明電極32Bを−X側から見た図である。透明電極34Bは、図4に示されるようにZ軸方向に沿って等間隔に配列された長手方向をY軸方向とする複数の透明電極素子35からなるストライプ状の電極パターンを有している。一方、透明電極32Aは前面長方形板状の電極からなる全面一様の電極パターンとなっている。複数の透明電極素子35のうち最も+Z側にある透明電極素子35には液晶素子制御装置36からの駆動電圧が入力される端子T1が具備され、最も−Z側にある透明電極素子35には端子T2が具備されている。そして、各透明電極素子35の一端及び他端は抵抗34Rにより電気的にそれぞれ接続されている。
【0036】
図1に戻り、前記シリンドリカルレンズ13は、液晶素子20a,20bの+X側にその母線がY軸に平行となるように配置され、液晶素子20a,20bを透過した光ビームLBa,LBbそれぞれをポリゴンミラー14の反射面に集光する。
【0037】
前記ポリゴンミラー14は、シリンドリカルレンズ13の+X側に配置されている。このポリゴンミラー14は高さの低い正六角柱状部材からなり、側面には6面の偏向面が形成されている。そして、Z軸に平行な鉛直軸を中心に不図示の回転機構により、図1に示される矢印の方向に一定の角速度で回転されている。したがって、半導体レーザ11a,11bから射出し、シリンドリカルレンズ13によってポリゴンミラー14の偏向面に集光された光ビームLBa,LBbは、ポリゴンミラー14の回転により一定の角速度でX軸に沿って偏向される。
【0038】
前記fθレンズ15は、ポリゴンミラー14の+Y側に配置されている。このfθレンズ15は光ビームLBa,LBbの入射角に比例した像高をもち、ポリゴンミラー14により一定の角速度で偏向される光ビームLBa,LBbの像面を、X軸(主走査方向)に対して等速移動させる。
【0039】
前記トロイダルレンズ16は、fθレンズ15の+Y側に長手方向をX軸方向として配置されている、このトロイダルレンズ16は、fθレンズ15を透過した光ビームLBa,LBbを感光ドラム17の表面上に結像する。
【0040】
前記感光ドラム17は、トロイダルレンズ16の+Y側に長手方向をX軸方向として配置されている。この感光ドラム17は、一例としてその表面に光ビームLBa,LBbが照射されると、その部分が導電性となる性質をもつ感光層が形成された円柱状の部材であり、不図示の回転機構によりX軸に平行な軸回りに回転されるようになっている。
【0041】
前記反射ミラー18は、感光ドラム17の−X側端部近傍に配置され、トロイダルレンズを透過した光ビームLBa,LBbを反射してビームピッチ検出センサ19に入射させる。
【0042】
前記ビームピッチ検出センサ19は、前記反射ミラー18で反射する光ビームLBa,LBbの光路上で、半導体レーザ11a,11bからの光学的距離が、半導体レーザ11a,11bと感光ドラム17の表面との光学的距離と等しくなるような位置に配置されている。このビームピッチ検出センサ19は、反射ミラー18に反射された光ビームLBa,LBbを受光して、例えば光ビームLBa,LBbそれぞれのビームスポットの副走査方向に関する位置に応じた電気信号と、ビームウェスト位置ずれに応じた電気信号との2種類の電気信号を液晶素子制御装置36に出力する。
【0043】
前記液晶素子制御装置36は、後述する液晶素子20a,20bの位相差特性曲線に関するデータなどが記録されたメモリと、ビームピッチ検出センサ19からの信号とメモリに記録されたデータとに基づいて液晶素子20a,20bに駆動電圧を印加する処理回路と、液晶素子20a,20bの温度を検出する温度センサなど含んで構成されている。
【0044】
次に、上述したように構成された光走査装置10の動作について説明する。図1に示されるように、半導体レーザ11aから射出された光ビームLBaと、半導体レーザ11bから射出された光ビームLBbそれぞれは、カップリングレンズ12a,12bにより略平行光に整形された後、液晶素子20a,20bを透過し、シリンドリカルレンズ13によりポリゴンミラー14の偏向面に集光される。そして、ポリゴンミラー14の偏向面に集光された光ビームLBa,LBbはポリゴンミラーの回転により、感光ドラムに対し+X方向(以下、主走査方向ともいう)に所定の角速度で偏向された状態でfθレンズ15に入射する。
【0045】
fθレンズ15に入射した光ビームLBa,LBbはトロイダルレンズ16へ入射し、トロイダルレンズ16により感光ドラム17の表面に結像されることにより、感光ドラム17の表面には、光ビームLBaにより走査されたラインと、このラインから下方に所定距離隔てた位置で光ビームLBbにより走査されたラインとによる潜像が形成される。
【0046】
液晶素子制御装置36は、上述したように感光ドラム17の走査に先立って、ビームピッチ検出センサ19からの信号に基づいて、感光ドラム17に走査された光ビームLBa,LBbのビームスポット位置の偏差(ラインピッチ)を検出するとともに、不図示の温度センサを介して液晶素子20a,20bの温度を検出し、ラインピッチ及び温度の検出結果に基づいて液晶素子20a,20bを制御する。以下、液晶素子20aを代表的にとりあげて,光ビームLBaの偏向方法について説明する。
【0047】
液晶素子制御装置36では、光ビームLBaのビームスポットの副走査方向の位置と、例えば設計値などの基準値との偏差ΔZを算出し、光ビームLBaを偏向する目標角となる偏向角βを算出する。ここで、シリンドリカルレンズ13の焦点距離をfcyl、ポリゴンミラー14以降のfθレンズ15及びトロイダルレンズ16を含む光学系の副走査倍率をmzとすると、偏差Δzと偏向角βの関係は次式(1)で表される。そして、上記式(1)を変形すると次式(2)が求められる。
【0048】
Δz=mz×fcyl×tanβ・・・(1)
β=tan−1(ΔZ/(mz・fcyl))・・・(2)
【0049】
液晶素子制御装置36は、ビームピッチ検出センサ19の信号から光ビームLBaの偏差Δzを算出すると、上記式(2)から光ビームLBaを偏向する際の目標となる偏向角βを算出する。そして、偏向角βに対応する駆動電圧E1,E2を、液晶素子20aの端子T1,T2にそれぞれ印加する。以下、駆動電圧E1,E2の制御方法について詳述する。
【0050】
図5(A)は液晶素子20aの端子T0をグランドとして、端子T1と端子T2に、周波数が数百Hz〜数キロHzで矩形波状の駆動電圧E1,E2(E1<E2)をそれぞれ印加したときに透明電極34Bに生じる電位分布を示す図である。
【0051】
端子T1,T2に駆動電圧E1,E2が印加されると、図5(A)に示されるように透明電極32Bには抵抗34r(図5(A)には不図示)を比例定数とする線形(一様の勾配)で右上がりの電位分布が生じ、液晶層30には電位分布に応じた大きさの電場が形成され、例えば図5(A)に示されるように、液晶層30内部の液晶分子30bそれぞれは電場の大きさに応じた配向角まで回動される。
【0052】
図6(A)は、液晶層30の温度が25℃(基準温度)である場合の位相差特性曲線L25を示す図である。図6(A)の位相差特性曲線L25は、駆動電圧が大きくなるほど位相差が小さくなることを示しており、これは駆動電圧が大きくなるほど液晶層30のX軸方向における光学的距離が小さくなることを示している。したがって、液晶層30に図5(A)に示されるような電位分布が生じた場合には、端子T1から端子T2へ向かうにしたがってX軸方向の光学的距離が短くなり、液晶層30に入射した光ビームLBaは端子T1側に偏向された状態で射出されるようになる。
【0053】
なお、E1がE2より大きい場合(E1>E1)には、透明電極34Bに生じる電位分布は図5(B)に示されように右下がりとなり、複数の液晶分子30bそれぞれは図5(A)に示された向きと反対方向に回動される。そして、液晶層30に入射した光ビームLBa,LBbは端子T2側に偏向された状態で射出されるようになる。また、E1とE2が等しい場合(E1=E2)には、透明電極34Bに電位分布が生じないため結果的に液晶層30に電場が生じることはない。したがって、光ビームLBaは偏向されることなく液晶素子20aを透過する。
【0054】
ここで、駆動電圧E1における位相差をφ1、駆動電圧E2における位相差をφ2とすると、上記式(2)から求めた偏向角βは次式(3)で表すことができ、式(3)から式(4)を導出することができる。
【0055】
β=tan−1((φ1−φ2)/H)
=tan−1(Δφ12/H)・・・(3)
Δφ12=H・tanβ・・・(4)
【0056】
したがって、液晶素子制御装置36では目標となる偏向角βを算出したら、上記式(4)から、駆動電圧E1に対する位相差φ1と駆動電圧E2に対する位相差φ2との差Δφ12を算出し、このΔφ12の値に基づいて駆動電圧E1,E2を決定することで、光ビームLBaを偏向角βで偏向させることが可能となる。以下、駆動電圧E1,E2の決定方法について図6(A)を参照しつつ説明する。
【0057】
光ビームLBaを偏向角βで偏向させることだけを考えた場合にはβとΔφ12とが上記式(4)の関係を満たしていればよい。しかしながら、位相差特性曲線L25は直線成分以外の例えば2次成分などの高次成分が含まれている。このため位相差特性曲線L25のうち線形性が良好な部分に基づいて駆動電圧E1,E2を決定することが望ましい。
【0058】
そこで、位相差特性曲線L25をみると、駆動電圧1.4V〜2.6Vの範囲では電圧2.0Vに対応した点P2に対し略点対称となっており、1.4Vに対応する点P1と2.6Vに対応するP3を結んだ直線M25の成分を除去した曲線S25は図6(B)に示されるようになる。この曲線S25は駆動電圧1.4Vから2.6Vまでの位相差特性曲線L25の2次成分を表しており、液晶素子20aで発生するパワー成分に相当し、液晶素子20aを透過した光ビームLBaの発散度を劣化させる原因となるものである。しかしながら、曲線S25は2.0Vに対応する点P2対して略点対称となっているため、点P2に対応する駆動電圧を中間電圧として駆動電圧E1,E2を決定すれば、駆動電圧E1,E2に対応する点で規定される曲線S25で示される2次成分の平均値をほぼ零に維持することができる。
【0059】
したがって、液晶素子制御装置36では、基準電圧E0を点P2に対応させて2.0Vと定義する。そして、この基準電圧E0を中心に、例えば駆動電圧E1をE0−ΔEと定義し、駆動電圧E2をE0+ΔE定義してΔEの値を増減させることにより駆動電圧E1,E2をそれぞれ制御する。これにより、駆動電圧E1,E2で規定される位相差特性曲線L25の2次成分の平均値をほぼ零に維持することができ、光ビームLBaを偏向する際に作用するパワー成分の影響を非常に小さいものにすることができる。
【0060】
ところで、位相差特性曲線は液晶素子20aの温度が変動することで形状が変化することはないが、駆動電圧に対する特性が変化する。この場合に、駆動電圧E1,E2を決定する際に基準温度(25℃)における基準電圧E025に基づいて決定してしまうと、光ビームLBaを偏向する際の波面収差が大きくなってしまう場合がある。そのため、液晶素子20aの温度が変化する場合には、基準電圧E0を液晶素子20aの温度に応じて適切に制御することが必要となる。以下、基準電圧E0を制御することによる液晶素子20aの変調方法について説明する。
【0061】
図7(A)には、液晶素子20aの温度が25℃のときの位相差特性曲線L25の他に、液晶素子20aの温度が5℃と45℃のときの位相差特性曲線L5、L45が示されている。図7(A)に示されるように、位相差特性曲線L5は位相差特性曲線L25を右方向へ平行にシフトした特性となり、位相差特性曲線L45は位相差特性曲線L25を左方向へ平行にシフトした特性となっている。このため、図7(A)に示されるように1.4V及び2.6Vに対応する点を両端とする直線M5、M25、M45は勾配はほぼ同一となるが上下方向へズレた状態となっている。
【0062】
この場合には、勾配がほぼ同一であるため、光ビームLBaの偏向角βに関しては実仕様上無視できるレベルにある。しかしながら、温度5℃及び45℃における位相差特性曲線L5、L45の2次成分を表す曲線S5、S45については、図7(B)に示されるように、曲線S5は全体として上に凸な形状となり、曲線S45は全体として下に凸な形状となる。これは、液晶素子20aが5℃である場合には、駆動時に正のパワーを生じることを意味し、液晶素子20aが45℃である場合には、駆動時に負のパワーを生じることを意味している。したがって、液晶素子20aが5℃又は45℃であるときに、液晶素子20aが25℃であるときの基準電圧E0(=2.0V)を基準に光ビームLBaの偏向を行うと、波面収差が大きくなってしまうのがわかる。
【0063】
そこで、液晶素子制御装置36では、光ビームLBaの偏向時に生じるパワー成分を抑制するために、各温度において得られる位相差特性曲線の略点対称となる基準点(以下、対称点ともいう)に対応した電圧に基準電圧E0をシフトする制御を行ない、この基準電圧E0を中心に、端子T1に印加する駆動電圧E1をE0−ΔE、端子T2に印加する駆動電圧E2をE0+ΔEと決定する。
【0064】
たとえば、図8(A)に示されるように、液晶層30の温度が45℃の場合には、位相差特性曲線L45の対称点に対応する電圧1.9Vを基準電圧E0とし、液晶層30の温度が5℃の場合には、位相差特性曲線L5の対象点に対応する電圧2.1Vを基準電圧E0とする。これにより位相差特性曲線L45の駆動電圧1.3Vから2.5Vまでの2次成分を示す曲線S45及び、位相差特性曲線L5の電圧1.5Vから2.7Vまでの2次成分を示す曲線S5は、図8(B)に示されるように、各温度における基準電圧E0に対応する点に対し略点対称となり、液晶素子20aでのパワー成分の発生を回避することができることがわかる。
【0065】
以上説明したように、本実施形態にかかる光走査装置10によると、液晶素子制御装置36は、まず光ビームLBa,LBbの補正目標となる偏向角βを算出すると、液晶素子20a,20bの温度を検出し、この検出温度に基づく位相差特性曲線の駆動電圧E1及び駆動電圧E2に対応する点で規定される範囲の2次成分が基準電圧E0を中心に略点対称となるように、液晶素子20a,20bの温度が基準温度より低い場合には基準電圧E0を高くし、液晶素子20a,20bの温度が基準温度よりも高い場合には基準電圧E0が低くなるように制御する。
【0066】
これにより、光ビームLBa,LBbを偏向させる際に、液晶素子20a,20bに生じるパワー成分を全体としてほぼ零にすることが可能となり、結果的に光ビームLBa,LBbを偏向させる際に生じるスポット径の劣化を防止することが可能となる。
【0067】
また、液晶素子20a,20bの温度変化にともない基準電圧を制御するためには、電圧入力のアルゴリズムを僅かに変更するだけで対応することが可能であり、特段部品を追加する必要がない。したがって、装置の大型化や高コスト化を招くこともない。
【0068】
なお、液晶素子の位相差特性曲線は、液晶素子固有のものであるため相互に個体差がある。そこで、予め液晶素子ごとに位相差特性曲線の温度依存性を計測しておき、例えば液晶素子の温度と基準電圧とを対応付けた情報を液晶素子制御装置36に格納しておいてもよい。そして、液晶素子20a,20bを駆動する際には、検出した液晶素子20a,20bの温度から、前記情報に基づいて基準電圧E0を決定し、該基準電圧E0に基づいて駆動電圧E1,E2を制御することで、効果的かつ迅速に液晶素子20a,20bに生じるパワー成分をほぼ零にすることが可能となる。
【0069】
また、液晶素子20a,20bが同一温度である場合であっても、目標とする偏向角βが大きくなると波面収差の発生量が大きくなる場合がある。図9(A)に示されるように、一例として基準電圧E0が2.0V、ΔEが+1.0Vであるとすると、駆動電圧E1は1.0V、駆動電圧E2は3.0Vとなり、駆動電圧E1における位相差φ1は1612nm、駆動電圧E2における位相差φ2は529nmとなる。そして、この場合の液晶素子20a,20bでの偏向角βは、上記式(3)より、β=tan−1(Δφ12/H)=tan−1(1083[nm]/2.0[mm])=1.9[分]となる。
【0070】
このとき、位相差特性曲線L25の駆動電圧がE1からE2の範囲の2次成分を示す曲線S25は、図9(B)に示されるように、全体的に上に凸な形状となり、光ビームLBa,LBbを偏向する際に負のパワーを作用させることがわかる。このように、同じ温度条件下においても基準電圧E0を固定したまま偏向角βを異ならしめると、その偏向角βの大きさによっては液晶素子20a,20bのパワー成分が増加し、その結果光ビームLBa,LBbの波面収差の発生量が著しく増加してしまう場合がある。
【0071】
このような波面収差の発生を抑制するためには、偏向角βに基づいて基準電圧E0を可変すればよい。例えば図10(A)に示すように、基準電圧E0を2.07V、ΔEを+1.0Vとすると、駆動電圧E1,E2はそれぞれ1.07V、3.07Vとなる。その結果駆動電圧がE1からE2の範囲の2次成分を示す曲線は、図10(B)に示されるように、基準電圧E0に対応する点に対し略点対称形状となり、パワー成分の発生が効果的に抑制される。この場合、駆動電圧E1における位相差φ1は1600nm、駆動電圧E2における位相差φ2は508nmであるから、両者の位相差Δφ12は1092(=1600−508)nmとなる。この値は駆動電圧E0を制御する前の値(1083nm)の0.8%程度であるため、実使用上問題ないレベルである。したがって、上述したように液晶素子20a,20bが同一温度である場合においても、目標とする偏向角βに応じて基準電圧E0を可変することにより、波面収差の発生量を抑制することが可能となり、光ビームLBa,LBbのスポット径の劣化を防止することが可能となる。
【0072】
また、液晶素子20a,20bは、図7(B)に示されるように、低温側では正のパワーを生じ高温側では負のパワーを生じる。そのため、例えば図1におけるカップリングレンズ12a,12b、シリンドリカルレンズ13、トロイダルレンズ16、及び(非駆動時の)液晶素子を含む光学系の温度特性は、低温側ではビームウェスト位置を光源から遠ざかる方向に移動させ、高温側ではビームウェスト位置を光源に近づける方向に移動させるような特性であることが望ましい。図11は液晶素子20aの温度を25℃に維持した環境下での、基準電圧E0と液晶素子20aの偏向により発生するビームウェスト位置ずれ量の関係を示すグラフである。図11に示されるように、ビームウェスト位置ずれ量は、基準電圧E0をE025(=2.0V)からE05(=2.1V)へ移行させると+側へ移行し、E045(=1.9V)へ移行させると−側へ移行する。したがって、例えば液晶素子の温度が25℃から5℃に低下した場合には、基準温度E0の大きさをE05に制御するのではなくて、ビームウェスト位置を+側にΔy1だけ移動する特性を有し、また、液晶素子の温度が25℃から45℃に低下した場合には、基準温度E0の大きさをE045に制御するのではなくて、ビームウェスト位置を−側にΔy2だけ移動する特性を有する光学系を用いれば、基準電圧E0を固定した場合にも波面収差の発生量を抑制することが可能となり、光ビームのスポット径の劣化を防止することが可能となる。なお、光学系は、上記のように必ずしもΔy1,Δy2だけビームウェストを移動して、ビームウェスト位置ずれ量を完全に零にする必要はなく、過剰補正とならない程度に、液晶素子20a,20bで発生する屈折力を打ち消す方向の屈折力を発生するような特性を有していればよい。
【0073】
また、本実施形態では、1つのポリゴンミラー14で感光ドラム17を走査する場合について説明したが、これに限らず、一例として図12に示されるように、ポリゴンミラー14を主走査方向に並列して配備し、感光ドラム17を分割して走査する構成を採用することとしてもよい。このように感光ドラム17を分割して走査することにより、有効書込幅を大きくすることができる。また、同じ有効書込幅であれば、偏向素子20a,20bや光学素子などを小型化することで、メカ公差や温度変動によるビームウェスト位置変動が小さくなることにより波面収差が低減され、結果として高品位な出力画像を得ることが可能となる。
【0074】
なお、上記実施形態では、液晶素子20a,20bを用いて光ビームLBa,LBbを副走査方向へ偏向させる場合について説明したが、これに限らず、液晶素子20a,20bの向きを変えることにより、光ビームLBa,LBbを主走査方向に偏向させてビームスポット位置の補正を行ってもよい。
【0075】
《第2の実施形態》
次に、本発明の第2の実施形態を、図13及び図14に基づいて説明する。ここで前述した第1の実施形態と同一若しくは同等の構成部分には、同等の符号を用いるとともに、その説明を省略し又は簡略するものとする。
【0076】
図13には、第2の実施形態に係る画像形成装置100の概略構成が示されている。
【0077】
画像形成装置100は、カールソンプロセスを用いて、例えば、黒、イエロー、マゼンダ、シアンのトナー像を普通紙(用紙)上に重ね合わせて転写することにより、多色画像を印刷するタンデム方式のカラープリンタである。この画像形成装置100は、図13に示されるように、光走査装置10、4本の感光ドラム17A、17B、17C、17D、転写ベルト40、位置ずれ検出装置45、給紙トレイ60、給紙コロ54、第1レジストローラ対56、第2レジストローラ対52、定着ローラ50、排紙ローラ58、及び上記構成部品を収容するほぼ直方体状のハウジング112などを備えている。
【0078】
ハウジング112には、上面に印刷が終了した用紙が排出される排紙トレイ112aが形成され、その排紙トレイ112aの下方に光走査装置10が配置されている。
【0079】
光走査装置10は、感光ドラム17Aに対しては、上位装置(パソコン等)から供給された画像情報に基づいて変調された黒色画像成分の光ビームを走査し、感光ドラム17Bに対してはシアン画像成分の光ビームを走査し、感光ドラム17Cに対してはマゼンダ画像成分の光ビームを走査し、感光ドラム17Dに対してはイエロー画像成分の光ビームを走査する。
【0080】
4本の感光ドラム17A、17B、17C、17Dは、その表面に、光ビームが照射されると、その部分が導電性となる性質をもつ感光層が形成された円柱状の部材であり、光走査装置10の下方にX軸方向に沿って等間隔に配置されている。
【0081】
感光ドラム17Aは、ハウジング112内部の−X側端部にY軸方向を長手方向として配置され、不図示の回転機構により図13における時計回り(図13の矢印に示される方向)に回転されるようになっている。そして、その周囲には、図13における12時(上側)の位置に帯電チャージャ132Aが配置され、2時の位置にトナーカートリッジ133Aが配置され、10時の位置にクリーニングケース131Aが配置されている。
【0082】
帯電チャージャ132Aは、長手方向をY軸方向として、感光ドラム17Aの表面に対し所定のクリアランスを介して配置され、感光ドラム17Aの表面を所定の電圧で帯電させる。
【0083】
トナーカートリッジ133Aは、黒色画像成分のトナーが充填されたカートリッジ本体と、感光ドラム17Aとは逆極性の電圧によって帯電された現像ローラなどを備え、カートリッジ本体に充填されたトナーを現像ローラを介して感光ドラム17Aの表面に供給する。
【0084】
クリーニングケース131Aは、Y軸方向を長手方向とする長方形状のクリーニングブレードを備え、該クリーニングブレードの一端が感光ドラム17Aの表面に接するように配置されている。感光ドラム17Aの表面に吸着されたトナーは、感光ドラム17Aの回転に伴いクリーニングブレードにより剥離され、クリーニングケース131Aの内部に回収される。
【0085】
感光ドラム17Bは、感光ドラム17Aの+X側に所定間隔隔てて配置され、不図示の回転機構により、図13における時計回り(矢印に示される方向)に回転されるようになっている。そして、その周囲には、前述の感光ドラム17Aと同様の位置関係で、帯電チャージャ132B、トナーカートリッジ133B及びクリーニングケース131Bがそれぞれ配置されている。
【0086】
帯電チャージャ132Bは、前述した帯電チャージャ132Aと同様に構成され、感光ドラム17Bの表面を所定の電圧で帯電させる。
【0087】
トナーカートリッジ133Bは、シアン画像成分のトナーが充填されたカートリッジ本体と、感光ドラム17Bとは逆極性の電圧によって帯電された現像ローラなどを備え、カートリッジ本体に充填されたトナーを現像ローラを介して感光ドラム17Bの表面に供給する。
【0088】
クリーニングケース131Bは、クリーニングケース131Aと同様に構成され、同様に機能する。
【0089】
感光ドラム17Cは、感光ドラム17Bの+X側に所定間隔隔てて配置され、不図示の回転機構を介して、図13における時計回り(矢印に示される方向)に回転されるようになっている。そして、その周囲には、前述の感光ドラム17Aと同様の位置関係で、帯電チャージャ132C、トナーカートリッジ133C及びクリーニングケース131Cがそれぞれ配置されている。
【0090】
帯電チャージャ132Cは、前述した帯電チャージャ132Aと同様に構成され、感光ドラム17Cの表面を所定の電圧で帯電させる。
【0091】
トナーカートリッジ133Cは、マゼンダ画像成分のトナーが充填されたカートリッジ本体と、感光ドラム17Cとは逆極性の電圧によって帯電された現像ローラなどを備え、カートリッジ本体に充填されたトナーを現像ローラを介して感光ドラム17Cの表面に供給する。
【0092】
クリーニングケース131Cは、クリーニングケース131Aと同様に構成され、同様に機能する。
【0093】
感光ドラム17Dは、感光ドラム17Cの+X側に所定間隔隔てて配置され、不図示の回転機構により、図13における時計回り(矢印に示される方向)に回転されるようになっている。そして、その周囲には、前述の感光ドラム17Aと同様の位置関係で、帯電チャージャ132D、トナーカートリッジ133D及びクリーニングケース131Dがそれぞれ配置されている。
【0094】
帯電チャージャ132Dは、前述した帯電チャージャ132Aと同様に構成され、感光ドラム17Dの表面を所定の電圧で帯電させる。
【0095】
トナーカートリッジ133Dは、イエロー画像成分のトナーが充填されたカートリッジ本体と、感光ドラム17Dとは逆極性の電圧によって帯電された現像ローラなどを備え、カートリッジ本体に充填されたトナーを現像ローラを介して感光ドラム17Dの表面に供給する。
【0096】
クリーニングケース131Dは、クリーニングケース131Aと同様に構成され、同様に機能する。
【0097】
以下、感光ドラム17A、帯電チャージャ132A、トナーカートリッジ133A及びクリーニングケース131Aを合わせて第1ステーションと呼び、感光ドラム17B、帯電チャージャ132B、トナーカートリッジ133B及びクリーニングケース131Bを合わせて第2ステーションと呼び、感光ドラム17C、帯電チャージャ132C、トナーカートリッジ133C及びクリーニングケース131Cを合わせて第3ステーションと呼び、感光ドラム17D、帯電チャージャ132D、トナーカートリッジ133D及びクリーニングケース131Dを合わせて第4ステーションと呼ぶものとする。
【0098】
転写ベルト40は、無端環状の部材で、感光ドラム17Aの下方に配置された従動ローラ40aと、感光ドラム17Dの下方に配置された従動ローラ40cと、これらの従動ローラ40a、40cより少し低い位置に配置された駆動ローラ40bに、上端面が感光ドラム17A、17B、17C、17Dそれぞれの下端面に接するように巻回されている。そして、駆動ローラ40bが図13における反時計回りに回転することにより、反時計回り(図13の矢印に示される方向)に回転される。また、転写ベルト40の+X側端部近傍には、上述した帯電チャージャ132A、132B、132C、132Dとは逆極性の電圧が印加された転写チャージャ48が配置されている。
【0099】
位置ずれ検出装置45は、転写ベルト40の−X側に配置され、図13及びハウジング112の内部機器を示す斜視図である図14を総合するとわかるように、転写ベルト40の−Y側端部を照明するLED42aとその反射光を受光するフォトセンサ41a、転写ベルト40の中央部を照明するLED42bとその反射光を受光するフォトセンサ41b、転写ベルト40の−Y側端部を照明するLED42cとその反射光を受光するフォトセンサ41cを備えている。
【0100】
そして、図14に示されるように、転写ベルト40上に、Y軸方向に沿って形成されたトナー像の検出パターン43A、43B、43Cを、LED42a、42b、42cによりそれぞれ照明し、反射光をフォトセンサ41a、41b、41cでそれぞれ受光することにより得られる検出信号の時間差などに基づいて、Y軸方向のレジスト及び倍率、X軸方向におけるレジスト及び傾きを、第1ステーションで形成されたトナー像のパターンを基準とする相対的な位置ずれとして検出する。
【0101】
給紙トレイ60は、転写ベルト40の下方に配置されている。この給紙トレイ60は略直方体状のトレイであり、内部に印刷対象としての複数枚の用紙61が積み重ねられて収納されている。そして、給紙トレイ60の上面の+X側端部近傍には矩形状の給紙口か形成されている。
【0102】
給紙コロ54は、給紙トレイ60から用紙61を一枚ずつ取り出し、一対の回転ローラから構成されるレジストローラ56を介して、転写ベルト40と転写チャージャ41によって形成される隙間に導出する。
【0103】
定着ローラ50は、一対の回転ローラから構成され、用紙61を過熱するとともに加圧し、レジストローラ52を介して、排紙ローラ58へ導出する。
【0104】
排紙ローラ58は一対の回転ローラから構成され、導出された用紙61を排紙トレイ12aに順次スタックする。
【0105】
光走査装置10は、図14に示されるように、感光ドラム17Aのほぼ上方(+Z側)に配置された6つの偏向面を有するポリゴンミラー14、このポリゴンミラー14の+X方向に順次配置されたfθレンズ15、及び反射ミラー106A、106B、106C、106D、fθレンズ15の下方に配置されたトロイダルレンズ16A、このトロイダルレンズ16Aの+X方向に順次配置された、トロイダルレンズ16B、16C、16D、感光ドラム17A、17B、17Cのほぼ上方にそれぞれ配置された反射ミラー108A、108B、108C、ポリゴンミラー14を基点としてX軸と所定の角度をなす直線上に配置された、4つのシリンドリカルレンズ13a,13b,13c,13d、液晶素子20、4つのカップリングレンズ12a,12b,12c,12d、4つの半導体レーザ11a,11b,11c,11dなどを備えている。
【0106】
前記液晶素子20は、4つの半導体レーザ11a〜11dからそれぞれ射出された光ビームを個別に副走査方向(Z軸方向)に偏向することが可能となっている。そして、液晶素子20により各感光ドラム17A〜17Dに集光される光ビームのビームスポット位置を可変することで、転写ベルト40の移動とポリゴンミラー14の回転の位相の非同期に起因する第1〜第4ステーション間の書込開始位置偏差(すなわち感光ドラム17A〜17D間の相対的なビームスポット位置)を補正することが可能となる。
【0107】
例えば、転写ベルト40に形成された、各ステーション間の色ずれを検知するトナー像を、色ずれ検知装置45にて検出し、その検出結果(ステーション間の色ずれの程度)に従い液晶素子20を駆動することにより、副走査方向の書込開始タイミング(すなわち書込開始位置)を補正することができる。
【0108】
以上説明したように、本実施形態にかかる画像形成装置100によると、必要に応じて各感光ドラム17A〜17Dに集光される光ビームのビームスポット位置を可変することができるため、高品位な出力画像を得ることが可能となる。また複数ビームを同時に走査することが可能であるため、プリント速度の高速化及び高密度化を図ることが可能となる。
【0109】
上述した画像形成装置100をプリンタやデジタル複写機等の実機として使用した場合、製品の工場出荷後の搬送時の振動またはユーザ先への設置場所の制限等により、出荷前の調整工程にて調整したビームスポット間隔(主として副走査方向の間隔、すなわち走査線間隔)が変動する恐れがある。またユーザ先での使用時の経時変化や、設置場所の温度環境や連続プリントを行うことによる機内温度の変化により、走査線間隔が変化する恐れがある。このような場合には、画像形成装置100に走査線間隔を検出し、その結果に基づき液晶素子20を駆動して走査線間隔を補正することが可能となる。
【0110】
さらに、画像形成装置100をプリンタと複写機(コピー機)の機能を併有する複合機に適用した場合、プリンタモード(複合機をプリンタとして使用する状態)とコピーモード(複合機を複写機として利用する状態)で、画素密度を切り替える場合がある。例えばプリンタモードでは画素密度を600dpiとし、コピーモードでは解像度を400dpiとする場合のように画素密度を切り替えることにより、各モードに適した画素密度を実現することができる。
【0111】
また、画像形成装置100に備えられた操作パネル等からオペレータが画素密度切替の指令を出すことにより、使用目的(求める機能)に応じて、画素密度を切り替えたい場合もある。このような場合には、本画像形成装置に具備された液晶素子20を制御することで、容易に画素密度を切り替えることが可能となる。
【0112】
また、上記実施形態では、各半導体レーザ11a〜11dから射出される光ビームの光路を液晶素子20によりそれぞれ偏向させることとしたが、これに限らず、液晶素子20は、ある基準色(例えばブラック)に対して位置合わせするために、他の色(シアン、マゼンタ、イエロー)の光路のみを偏向することとしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0113】
【図1】本発明の第1の実施形態にかかる光走査装置10の概略的な構成を示す図である。
【図2】図2(A)は液晶素子20aを−X側から見た図であり、図2(B)は液晶素子20aを+Z側から見た図である。
【図3】液晶層30の近傍を示す図である。
【図4】透明電極32Bを示す図である。
【図5】図5(A)及び図5(B)は液晶素子20aの動作を説明するための図である。
【図6】図6(A)は液晶素子20aの位相差特性曲線を示す図であり、図6(B)は位相差特性曲線の2次成分を示す図である。
【図7】図7(A)は位相差特性曲線の温度依存性を説明するための図であり、図7(B)は各温度における2次成分の特性を説明するための図である。
【図8】図8(A)及び図8(B)は基準電圧の制御方法を説明するための図(その1,その2)である。
【図9】図9(A)及び図9(B)は基準電圧の制御方法を示す図(その3、その4)である。
【図10】図10(A)及び図10(B)は基準電圧の制御結果を示す図(その5,その6)である。
【図11】光学系の温度とパワーとの関係を説明するための図である。
【図12】光走査装置10の変形例を示す図である。
【図13】本発明の一実施形態にかかる画像形成装置100を示す図である。
【図14】図13における画像形成装置100の光走査装置10を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0114】
10…光走査装置、11a,11b…半導体レーザ、12a,12b…カップリングレンズ、13…シリンドリカルレンズ、14…ポリゴンミラー、15…fθレンズ、16…トロイダルレンズ、17…感光ドラム、18…反射ミラー、19…ビームピッチ検出センサ、20a,20b…液晶素子、21,22…ガラス基板、23…ハーネス、24…樹脂層、30…液晶層、30a…配向膜、30b…液晶分子、32A,32B…透明電極、T0,T1,T2…端子、34r…抵抗、35…電極素子、36…液晶素子制御回路、100…画像形成装置。
【技術分野】
【0001】
本発明は、光走査装置、画像形成装置、及び位相変調方法に係り、さらに詳しくは、光ビームにより感光体を走査する光走査装置、該光走査装置を用いた画像形成装置、及び感光体を走査する光ビームの光路を偏向する液晶素子の位相を変調する位相変調方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から画像形成装置には、光源から射出された光ビームを例えばポリゴンミラーなどの偏向手段を用いて走査し、感光体上に潜像を形成する光走査装置が用いられている。この光走査装置では、処理速度を向上させる手段として偏向手段であるポリゴンミラーの回転速度を上げる方法が用いられている。
【0003】
一方、この種の画像形成装置はオンデマンドプリンティングシステムとして簡易印刷によく用いられるようになり、生産性の向上及び画質の高品質化への要求が一層高まっている。そこで、近年ではポリゴンミラーの回転速度を上げるとともに、1パッケージ内に複数の発光点(発光チャンネル)をもち、各発光点から複数の光ビームを射出することが可能なマルチビーム光源を備えた光走査装置、又はシングルビームを射出する半導体レーザを複数備える光走査装置が提案されている。
【0004】
しかしながら、マルチビーム光源は製造プロセス上チャンネル数を増加することが困難であるとともに、熱的又は電気的なクロストークの影響を除去することが難しく、短波長化が困難であるといった理由から現在では高価な光源手段である。このため、マルチビーム光源を使用すると装置の高コスト化を招来するという問題がある。
【0005】
一方、複数のシングルビーム半導体レーザを光源とする光走査装置は、周囲環境の変動又は装置の経年変化等の影響により、被走査面におけるビームスポット配列(ビームピッチ、走査線間隔)が変動するという問題がある。そこで、電気信号により駆動される液晶素子を光ビームの光路上に配置して、ビームスポットの変動に応じて液晶素子を駆動することにより、例えば感光体の被走査面上のビームスポットの配列を補正する方法が提案されている(例えば、特許文献1、及び特許文献2参照)。
【0006】
特許文献1及び特許文献2に記載の方法は、光ビームの偏向手段として用いられる液晶素子の液晶層に適当な電圧を印加して、液晶層の内部に一定勾配の電位分布を生じさせることにより、液晶層の光ビームに対する屈折率を制御している。
【0007】
しかしながら、液晶層に勾配が一定の電位分布を生じさせたとしても、液晶層に生じる屈折率分布の勾配は必ずしも一定にならず、例えば高次多項式で近似可能な曲線状になってしまう。このような曲線状の屈折率分布を呈する液晶層に光ビームを入射させると、液晶層は光ビームに対しレンズとして機能してしまい、光ビームの光路を偏向させるだけではなく波面収差を生じさせてしまうという不都合があった。また、液晶素子の温度が変化した場合には、屈折率分布自体が変化してしまい液晶層の特性を変動させてしまうことも予想される。
【0008】
【特許文献1】特開2003−302595号公報
【特許文献2】特開2003−337293号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明はかかる事情の下になされたもので、その第1の目的は、液晶素子を透過した光ビームの波面収差の発生量を抑制し、感光体の被走査面上に集光される光ビームのビームスポット径の劣化を防止することが可能な光走査装置を提供することにある。
【0010】
また、本発明の第2の目的は、出力画像の品質劣化を防止することが可能な画像形成装置を提供することにある。
【0011】
また、本発明の第3の目的は、感光体の被走査面に集光する光ビームのビームスポット径の劣化を回避しつつ、液晶素子を透過する光ビームを偏向することが可能な液晶素子の位相変調方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
請求項1に記載の発明は、光源から射出される光ビームにより感光体を走査する光走査装置であって、第1及び第2の駆動電圧に基づいて前記光ビームの光路を偏向する液晶素子と;前記第1及び第2の駆動電圧を制御して、前記液晶素子で発生する波面収差を制御する波面収差制御手段と;を備える光走査装置である。
【0013】
これによれば、液晶素子の液晶層に電圧を印加して液晶層の内部に屈折力を生じさせる際には、波面収差制御手段により液晶層の位相変調に伴い発生する波面収差の発生量が制御される。その結果、液晶素子により偏向された光ビームのスポット径の劣化を防止することが可能となる。
【0014】
この場合において、請求項2に記載の光走査装置に如く、前記波面収差制御手段は、前記第1及び第2の駆動電圧の中間電圧となる基準電圧を制御して前記波面収差の発生量を制御することとすることができる。
【0015】
この場合において、請求項3に記載の光走査装置の如く、前記波面収差制御手段は、前記光ビームの偏向角に応じて前記基準電圧を制御することとすることができる。
【0016】
請求項1及び2に記載の各光走査装置において、請求項4に記載の光走査装置の如く、前記光ビームのビームウェスト位置を検出するビームウェスト位置検出手段を更に備え、前記波面収差制御手段は、前記ビームウェスト位置検出手段の検出結果に基づいて前記波面収差の発生量を制御することとすることができる。
【0017】
請求項1及び2に記載の各光走査装置において、請求項5に記載の光走査装置の如く、前記液晶素子近傍の温度を検出する温度検出手段を更に備え、前記波面収差制御手段は、前記温度検出手段の検出結果に基づいて前記波面収差の発生量を制御することとすることができる。
【0018】
請求項2〜5に記載の各光走査装置において、請求項6に記載の光走査装置の如く、前記液晶素子の温度が所定の温度より低い場合には、前記光ビームのビームウェストの位置を前記光源から遠ざける方向に移動させ、所定の温度より高い場合には、前記光ビームのビームウェスト位置を前記光源に近づける方向に移動させるパワー成分を発生する光学系を更に備えることとすることができる。
【0019】
この場合において、請求項7に記載の光走査装置の如く、前記光学系のパワー成分は、前記液晶素子の使用温度の中央値付近で最小になるように設定されていることとすることができる。
【0020】
請求項6及び7に記載の各光走査装置において、請求項8に記載の光走査装置の如く、前記基準電圧は、前記ビームウェストの位置変動が前記液晶素子の使用温度の中央値付近で最小となるように設定されていることとすることができる。
【0021】
請求項9に記載の発明は、感光体上に形成された潜像に基づいて画像を形成する画像形成装置であって、前記感光体上に潜像を形成する請求項1〜8のいずれか一項に記載の光走査装置と;前記光走査装置により前記感光体上に形成された潜像に基づいて、画像を形成する処理装置と;を備える画像形成装置である。
【0022】
これによれば、請求項1〜8のいずれか一項に記載の光走査装置により感光体上に潜像が形成され、処理装置によりこの潜像に基づいて画像が形成される。したがって、感光体上にはビームスポット径の劣化がない光ビームにより潜像が形成され、結果的に出力画像の品質劣化を防止することが可能となる。
【0023】
請求項10に記載の発明は、感光体を走査する光ビームを偏向する液晶素子の位相変調方法であって、前記液晶素子で光ビームを偏向する際に生じる波面収差の発生量を予測する工程と;前記予測された波面収差の発生量に基づいて、前記液晶素子に印加する第1及び第2の駆動電圧を決定することで、前記波面収差の発生量を制御する工程と;を含む液晶素子変調方法である。
【0024】
これによれば、液晶素子で生じる波面収差の発生量が予測され、この予測結果に基づいて光ビームを偏向する際に生じる波面収差の発生量が最小となるように前記液晶素子に印加する駆動電圧が決定される。したがって、液晶素子により光ビームを偏向する際に発生する波面収差を低減することが可能となり、結果的に、光ビームのスポット径の劣化を防止することが可能となる。
【0025】
この場合において、請求項11に記載の位相変調方法の如く、前記発生量を予測する工程では、前記液晶素子の位相差特性曲線の温度特性と前記液晶素子の温度測定結果とから、前記波面収差の発生量が予測されることとすることができる。
【0026】
請求項10に記載の位相変調方法において、請求項12に記載の位相変調方法の如く、前記発生量を予測する工程では、前記感光体での光ビームのビームウェスト位置から、前記波面収差の発生量が予測されることとすることができる。
【0027】
請求項10〜12に記載の各液晶素子変調方法において、請求項13に記載の液晶素子変調方法の如く、前記制御する工程では、前記第1及び第2の駆動電圧の中間電圧となる基準電圧を制御することとすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
《第1の実施形態》
以下、本発明の第1の実施形態を図1〜図8(B)に基づいて説明する。図1は、本実施形態にかかる光走査装置10の概略構成を示す図である。
【0029】
この光走査装置10は、一例として、2本の光ビームを同時に走査する2ビーム方式(マルチビーム方式)の光走査装置であり、図1に示されるように、1組の半導体レーザ11a,11b、1組のカップリングレンズ12a,12b、1組の液晶素子20a,20b、シリンドリカルレンズ13、ポリゴンミラー14、fθレンズ15、トロイダルレンズ16、感光ドラム17、反射ミラー18、ビームピッチ検出センサ19、液晶素子制御装置36、及び上記各部を統括的に制御する不図示の主制御装置を備えている。
【0030】
前記一組の半導体レーザ11a,11bは、シングルモードの半導体レーザである。これら1組の半導体レーザ11a,11bはY軸方向に隣接して配置され、主制御装置(不図示)により所定の画像情報に基づいて変調されることにより、+X方向に光ビームLBa,LBbを射出する。
【0031】
前記一組のカップリングレンズ12a,12bは、半導体レーザ11a,11bの+X側にY軸方向に隣接して配置され、半導体レーザ11a,11bから射出された光ビームLBa,LBbを略平行光に整形する。
【0032】
前記液晶素子20a,20bは、カップリングレンズ12a,12bの+X側にY軸方向に隣接して配置されている。液晶素子20aと液晶素子20bは同一の用途及び機能を有している。したがって、ここでは液晶素子20aを代表的にとりあげて説明する。
【0033】
図2(A)は液晶素子20aを−X側から見た図であり、図2(B)は液晶素子20aを−Z側(下方)から見た図である。液晶素子20aは図2(A)及び図2(B)を総合するとわかるように、X軸方向に所定の間隔を隔てて相互に対向するように配置されたガラス基板21,22、ガラス基板21,22の間に形成された長手方向をY軸方向とする液晶層30、ガラス基板21,22の間に液晶層30を包囲するように形成された樹脂層24、及び液晶層30に電圧信号を供給するためのハーネス23などを含んで構成されている。
【0034】
図3は液晶層30近傍を−Y側から見た図である。液晶層30は幅H(=2.0mm)、厚さ数〜数十μm程度で、図3に示されるように複数の液晶分子30bを含み、X軸方向両端面には配向膜30aがそれぞれ形成されている。そして、液晶層30は、その+X側に配置された透明電極32A及び−X側に配置されたストライプ状の透明電極32Bを介して、一組のガラス基板21,22に挟持されている。
【0035】
図4は透明電極32Bを−X側から見た図である。透明電極34Bは、図4に示されるようにZ軸方向に沿って等間隔に配列された長手方向をY軸方向とする複数の透明電極素子35からなるストライプ状の電極パターンを有している。一方、透明電極32Aは前面長方形板状の電極からなる全面一様の電極パターンとなっている。複数の透明電極素子35のうち最も+Z側にある透明電極素子35には液晶素子制御装置36からの駆動電圧が入力される端子T1が具備され、最も−Z側にある透明電極素子35には端子T2が具備されている。そして、各透明電極素子35の一端及び他端は抵抗34Rにより電気的にそれぞれ接続されている。
【0036】
図1に戻り、前記シリンドリカルレンズ13は、液晶素子20a,20bの+X側にその母線がY軸に平行となるように配置され、液晶素子20a,20bを透過した光ビームLBa,LBbそれぞれをポリゴンミラー14の反射面に集光する。
【0037】
前記ポリゴンミラー14は、シリンドリカルレンズ13の+X側に配置されている。このポリゴンミラー14は高さの低い正六角柱状部材からなり、側面には6面の偏向面が形成されている。そして、Z軸に平行な鉛直軸を中心に不図示の回転機構により、図1に示される矢印の方向に一定の角速度で回転されている。したがって、半導体レーザ11a,11bから射出し、シリンドリカルレンズ13によってポリゴンミラー14の偏向面に集光された光ビームLBa,LBbは、ポリゴンミラー14の回転により一定の角速度でX軸に沿って偏向される。
【0038】
前記fθレンズ15は、ポリゴンミラー14の+Y側に配置されている。このfθレンズ15は光ビームLBa,LBbの入射角に比例した像高をもち、ポリゴンミラー14により一定の角速度で偏向される光ビームLBa,LBbの像面を、X軸(主走査方向)に対して等速移動させる。
【0039】
前記トロイダルレンズ16は、fθレンズ15の+Y側に長手方向をX軸方向として配置されている、このトロイダルレンズ16は、fθレンズ15を透過した光ビームLBa,LBbを感光ドラム17の表面上に結像する。
【0040】
前記感光ドラム17は、トロイダルレンズ16の+Y側に長手方向をX軸方向として配置されている。この感光ドラム17は、一例としてその表面に光ビームLBa,LBbが照射されると、その部分が導電性となる性質をもつ感光層が形成された円柱状の部材であり、不図示の回転機構によりX軸に平行な軸回りに回転されるようになっている。
【0041】
前記反射ミラー18は、感光ドラム17の−X側端部近傍に配置され、トロイダルレンズを透過した光ビームLBa,LBbを反射してビームピッチ検出センサ19に入射させる。
【0042】
前記ビームピッチ検出センサ19は、前記反射ミラー18で反射する光ビームLBa,LBbの光路上で、半導体レーザ11a,11bからの光学的距離が、半導体レーザ11a,11bと感光ドラム17の表面との光学的距離と等しくなるような位置に配置されている。このビームピッチ検出センサ19は、反射ミラー18に反射された光ビームLBa,LBbを受光して、例えば光ビームLBa,LBbそれぞれのビームスポットの副走査方向に関する位置に応じた電気信号と、ビームウェスト位置ずれに応じた電気信号との2種類の電気信号を液晶素子制御装置36に出力する。
【0043】
前記液晶素子制御装置36は、後述する液晶素子20a,20bの位相差特性曲線に関するデータなどが記録されたメモリと、ビームピッチ検出センサ19からの信号とメモリに記録されたデータとに基づいて液晶素子20a,20bに駆動電圧を印加する処理回路と、液晶素子20a,20bの温度を検出する温度センサなど含んで構成されている。
【0044】
次に、上述したように構成された光走査装置10の動作について説明する。図1に示されるように、半導体レーザ11aから射出された光ビームLBaと、半導体レーザ11bから射出された光ビームLBbそれぞれは、カップリングレンズ12a,12bにより略平行光に整形された後、液晶素子20a,20bを透過し、シリンドリカルレンズ13によりポリゴンミラー14の偏向面に集光される。そして、ポリゴンミラー14の偏向面に集光された光ビームLBa,LBbはポリゴンミラーの回転により、感光ドラムに対し+X方向(以下、主走査方向ともいう)に所定の角速度で偏向された状態でfθレンズ15に入射する。
【0045】
fθレンズ15に入射した光ビームLBa,LBbはトロイダルレンズ16へ入射し、トロイダルレンズ16により感光ドラム17の表面に結像されることにより、感光ドラム17の表面には、光ビームLBaにより走査されたラインと、このラインから下方に所定距離隔てた位置で光ビームLBbにより走査されたラインとによる潜像が形成される。
【0046】
液晶素子制御装置36は、上述したように感光ドラム17の走査に先立って、ビームピッチ検出センサ19からの信号に基づいて、感光ドラム17に走査された光ビームLBa,LBbのビームスポット位置の偏差(ラインピッチ)を検出するとともに、不図示の温度センサを介して液晶素子20a,20bの温度を検出し、ラインピッチ及び温度の検出結果に基づいて液晶素子20a,20bを制御する。以下、液晶素子20aを代表的にとりあげて,光ビームLBaの偏向方法について説明する。
【0047】
液晶素子制御装置36では、光ビームLBaのビームスポットの副走査方向の位置と、例えば設計値などの基準値との偏差ΔZを算出し、光ビームLBaを偏向する目標角となる偏向角βを算出する。ここで、シリンドリカルレンズ13の焦点距離をfcyl、ポリゴンミラー14以降のfθレンズ15及びトロイダルレンズ16を含む光学系の副走査倍率をmzとすると、偏差Δzと偏向角βの関係は次式(1)で表される。そして、上記式(1)を変形すると次式(2)が求められる。
【0048】
Δz=mz×fcyl×tanβ・・・(1)
β=tan−1(ΔZ/(mz・fcyl))・・・(2)
【0049】
液晶素子制御装置36は、ビームピッチ検出センサ19の信号から光ビームLBaの偏差Δzを算出すると、上記式(2)から光ビームLBaを偏向する際の目標となる偏向角βを算出する。そして、偏向角βに対応する駆動電圧E1,E2を、液晶素子20aの端子T1,T2にそれぞれ印加する。以下、駆動電圧E1,E2の制御方法について詳述する。
【0050】
図5(A)は液晶素子20aの端子T0をグランドとして、端子T1と端子T2に、周波数が数百Hz〜数キロHzで矩形波状の駆動電圧E1,E2(E1<E2)をそれぞれ印加したときに透明電極34Bに生じる電位分布を示す図である。
【0051】
端子T1,T2に駆動電圧E1,E2が印加されると、図5(A)に示されるように透明電極32Bには抵抗34r(図5(A)には不図示)を比例定数とする線形(一様の勾配)で右上がりの電位分布が生じ、液晶層30には電位分布に応じた大きさの電場が形成され、例えば図5(A)に示されるように、液晶層30内部の液晶分子30bそれぞれは電場の大きさに応じた配向角まで回動される。
【0052】
図6(A)は、液晶層30の温度が25℃(基準温度)である場合の位相差特性曲線L25を示す図である。図6(A)の位相差特性曲線L25は、駆動電圧が大きくなるほど位相差が小さくなることを示しており、これは駆動電圧が大きくなるほど液晶層30のX軸方向における光学的距離が小さくなることを示している。したがって、液晶層30に図5(A)に示されるような電位分布が生じた場合には、端子T1から端子T2へ向かうにしたがってX軸方向の光学的距離が短くなり、液晶層30に入射した光ビームLBaは端子T1側に偏向された状態で射出されるようになる。
【0053】
なお、E1がE2より大きい場合(E1>E1)には、透明電極34Bに生じる電位分布は図5(B)に示されように右下がりとなり、複数の液晶分子30bそれぞれは図5(A)に示された向きと反対方向に回動される。そして、液晶層30に入射した光ビームLBa,LBbは端子T2側に偏向された状態で射出されるようになる。また、E1とE2が等しい場合(E1=E2)には、透明電極34Bに電位分布が生じないため結果的に液晶層30に電場が生じることはない。したがって、光ビームLBaは偏向されることなく液晶素子20aを透過する。
【0054】
ここで、駆動電圧E1における位相差をφ1、駆動電圧E2における位相差をφ2とすると、上記式(2)から求めた偏向角βは次式(3)で表すことができ、式(3)から式(4)を導出することができる。
【0055】
β=tan−1((φ1−φ2)/H)
=tan−1(Δφ12/H)・・・(3)
Δφ12=H・tanβ・・・(4)
【0056】
したがって、液晶素子制御装置36では目標となる偏向角βを算出したら、上記式(4)から、駆動電圧E1に対する位相差φ1と駆動電圧E2に対する位相差φ2との差Δφ12を算出し、このΔφ12の値に基づいて駆動電圧E1,E2を決定することで、光ビームLBaを偏向角βで偏向させることが可能となる。以下、駆動電圧E1,E2の決定方法について図6(A)を参照しつつ説明する。
【0057】
光ビームLBaを偏向角βで偏向させることだけを考えた場合にはβとΔφ12とが上記式(4)の関係を満たしていればよい。しかしながら、位相差特性曲線L25は直線成分以外の例えば2次成分などの高次成分が含まれている。このため位相差特性曲線L25のうち線形性が良好な部分に基づいて駆動電圧E1,E2を決定することが望ましい。
【0058】
そこで、位相差特性曲線L25をみると、駆動電圧1.4V〜2.6Vの範囲では電圧2.0Vに対応した点P2に対し略点対称となっており、1.4Vに対応する点P1と2.6Vに対応するP3を結んだ直線M25の成分を除去した曲線S25は図6(B)に示されるようになる。この曲線S25は駆動電圧1.4Vから2.6Vまでの位相差特性曲線L25の2次成分を表しており、液晶素子20aで発生するパワー成分に相当し、液晶素子20aを透過した光ビームLBaの発散度を劣化させる原因となるものである。しかしながら、曲線S25は2.0Vに対応する点P2対して略点対称となっているため、点P2に対応する駆動電圧を中間電圧として駆動電圧E1,E2を決定すれば、駆動電圧E1,E2に対応する点で規定される曲線S25で示される2次成分の平均値をほぼ零に維持することができる。
【0059】
したがって、液晶素子制御装置36では、基準電圧E0を点P2に対応させて2.0Vと定義する。そして、この基準電圧E0を中心に、例えば駆動電圧E1をE0−ΔEと定義し、駆動電圧E2をE0+ΔE定義してΔEの値を増減させることにより駆動電圧E1,E2をそれぞれ制御する。これにより、駆動電圧E1,E2で規定される位相差特性曲線L25の2次成分の平均値をほぼ零に維持することができ、光ビームLBaを偏向する際に作用するパワー成分の影響を非常に小さいものにすることができる。
【0060】
ところで、位相差特性曲線は液晶素子20aの温度が変動することで形状が変化することはないが、駆動電圧に対する特性が変化する。この場合に、駆動電圧E1,E2を決定する際に基準温度(25℃)における基準電圧E025に基づいて決定してしまうと、光ビームLBaを偏向する際の波面収差が大きくなってしまう場合がある。そのため、液晶素子20aの温度が変化する場合には、基準電圧E0を液晶素子20aの温度に応じて適切に制御することが必要となる。以下、基準電圧E0を制御することによる液晶素子20aの変調方法について説明する。
【0061】
図7(A)には、液晶素子20aの温度が25℃のときの位相差特性曲線L25の他に、液晶素子20aの温度が5℃と45℃のときの位相差特性曲線L5、L45が示されている。図7(A)に示されるように、位相差特性曲線L5は位相差特性曲線L25を右方向へ平行にシフトした特性となり、位相差特性曲線L45は位相差特性曲線L25を左方向へ平行にシフトした特性となっている。このため、図7(A)に示されるように1.4V及び2.6Vに対応する点を両端とする直線M5、M25、M45は勾配はほぼ同一となるが上下方向へズレた状態となっている。
【0062】
この場合には、勾配がほぼ同一であるため、光ビームLBaの偏向角βに関しては実仕様上無視できるレベルにある。しかしながら、温度5℃及び45℃における位相差特性曲線L5、L45の2次成分を表す曲線S5、S45については、図7(B)に示されるように、曲線S5は全体として上に凸な形状となり、曲線S45は全体として下に凸な形状となる。これは、液晶素子20aが5℃である場合には、駆動時に正のパワーを生じることを意味し、液晶素子20aが45℃である場合には、駆動時に負のパワーを生じることを意味している。したがって、液晶素子20aが5℃又は45℃であるときに、液晶素子20aが25℃であるときの基準電圧E0(=2.0V)を基準に光ビームLBaの偏向を行うと、波面収差が大きくなってしまうのがわかる。
【0063】
そこで、液晶素子制御装置36では、光ビームLBaの偏向時に生じるパワー成分を抑制するために、各温度において得られる位相差特性曲線の略点対称となる基準点(以下、対称点ともいう)に対応した電圧に基準電圧E0をシフトする制御を行ない、この基準電圧E0を中心に、端子T1に印加する駆動電圧E1をE0−ΔE、端子T2に印加する駆動電圧E2をE0+ΔEと決定する。
【0064】
たとえば、図8(A)に示されるように、液晶層30の温度が45℃の場合には、位相差特性曲線L45の対称点に対応する電圧1.9Vを基準電圧E0とし、液晶層30の温度が5℃の場合には、位相差特性曲線L5の対象点に対応する電圧2.1Vを基準電圧E0とする。これにより位相差特性曲線L45の駆動電圧1.3Vから2.5Vまでの2次成分を示す曲線S45及び、位相差特性曲線L5の電圧1.5Vから2.7Vまでの2次成分を示す曲線S5は、図8(B)に示されるように、各温度における基準電圧E0に対応する点に対し略点対称となり、液晶素子20aでのパワー成分の発生を回避することができることがわかる。
【0065】
以上説明したように、本実施形態にかかる光走査装置10によると、液晶素子制御装置36は、まず光ビームLBa,LBbの補正目標となる偏向角βを算出すると、液晶素子20a,20bの温度を検出し、この検出温度に基づく位相差特性曲線の駆動電圧E1及び駆動電圧E2に対応する点で規定される範囲の2次成分が基準電圧E0を中心に略点対称となるように、液晶素子20a,20bの温度が基準温度より低い場合には基準電圧E0を高くし、液晶素子20a,20bの温度が基準温度よりも高い場合には基準電圧E0が低くなるように制御する。
【0066】
これにより、光ビームLBa,LBbを偏向させる際に、液晶素子20a,20bに生じるパワー成分を全体としてほぼ零にすることが可能となり、結果的に光ビームLBa,LBbを偏向させる際に生じるスポット径の劣化を防止することが可能となる。
【0067】
また、液晶素子20a,20bの温度変化にともない基準電圧を制御するためには、電圧入力のアルゴリズムを僅かに変更するだけで対応することが可能であり、特段部品を追加する必要がない。したがって、装置の大型化や高コスト化を招くこともない。
【0068】
なお、液晶素子の位相差特性曲線は、液晶素子固有のものであるため相互に個体差がある。そこで、予め液晶素子ごとに位相差特性曲線の温度依存性を計測しておき、例えば液晶素子の温度と基準電圧とを対応付けた情報を液晶素子制御装置36に格納しておいてもよい。そして、液晶素子20a,20bを駆動する際には、検出した液晶素子20a,20bの温度から、前記情報に基づいて基準電圧E0を決定し、該基準電圧E0に基づいて駆動電圧E1,E2を制御することで、効果的かつ迅速に液晶素子20a,20bに生じるパワー成分をほぼ零にすることが可能となる。
【0069】
また、液晶素子20a,20bが同一温度である場合であっても、目標とする偏向角βが大きくなると波面収差の発生量が大きくなる場合がある。図9(A)に示されるように、一例として基準電圧E0が2.0V、ΔEが+1.0Vであるとすると、駆動電圧E1は1.0V、駆動電圧E2は3.0Vとなり、駆動電圧E1における位相差φ1は1612nm、駆動電圧E2における位相差φ2は529nmとなる。そして、この場合の液晶素子20a,20bでの偏向角βは、上記式(3)より、β=tan−1(Δφ12/H)=tan−1(1083[nm]/2.0[mm])=1.9[分]となる。
【0070】
このとき、位相差特性曲線L25の駆動電圧がE1からE2の範囲の2次成分を示す曲線S25は、図9(B)に示されるように、全体的に上に凸な形状となり、光ビームLBa,LBbを偏向する際に負のパワーを作用させることがわかる。このように、同じ温度条件下においても基準電圧E0を固定したまま偏向角βを異ならしめると、その偏向角βの大きさによっては液晶素子20a,20bのパワー成分が増加し、その結果光ビームLBa,LBbの波面収差の発生量が著しく増加してしまう場合がある。
【0071】
このような波面収差の発生を抑制するためには、偏向角βに基づいて基準電圧E0を可変すればよい。例えば図10(A)に示すように、基準電圧E0を2.07V、ΔEを+1.0Vとすると、駆動電圧E1,E2はそれぞれ1.07V、3.07Vとなる。その結果駆動電圧がE1からE2の範囲の2次成分を示す曲線は、図10(B)に示されるように、基準電圧E0に対応する点に対し略点対称形状となり、パワー成分の発生が効果的に抑制される。この場合、駆動電圧E1における位相差φ1は1600nm、駆動電圧E2における位相差φ2は508nmであるから、両者の位相差Δφ12は1092(=1600−508)nmとなる。この値は駆動電圧E0を制御する前の値(1083nm)の0.8%程度であるため、実使用上問題ないレベルである。したがって、上述したように液晶素子20a,20bが同一温度である場合においても、目標とする偏向角βに応じて基準電圧E0を可変することにより、波面収差の発生量を抑制することが可能となり、光ビームLBa,LBbのスポット径の劣化を防止することが可能となる。
【0072】
また、液晶素子20a,20bは、図7(B)に示されるように、低温側では正のパワーを生じ高温側では負のパワーを生じる。そのため、例えば図1におけるカップリングレンズ12a,12b、シリンドリカルレンズ13、トロイダルレンズ16、及び(非駆動時の)液晶素子を含む光学系の温度特性は、低温側ではビームウェスト位置を光源から遠ざかる方向に移動させ、高温側ではビームウェスト位置を光源に近づける方向に移動させるような特性であることが望ましい。図11は液晶素子20aの温度を25℃に維持した環境下での、基準電圧E0と液晶素子20aの偏向により発生するビームウェスト位置ずれ量の関係を示すグラフである。図11に示されるように、ビームウェスト位置ずれ量は、基準電圧E0をE025(=2.0V)からE05(=2.1V)へ移行させると+側へ移行し、E045(=1.9V)へ移行させると−側へ移行する。したがって、例えば液晶素子の温度が25℃から5℃に低下した場合には、基準温度E0の大きさをE05に制御するのではなくて、ビームウェスト位置を+側にΔy1だけ移動する特性を有し、また、液晶素子の温度が25℃から45℃に低下した場合には、基準温度E0の大きさをE045に制御するのではなくて、ビームウェスト位置を−側にΔy2だけ移動する特性を有する光学系を用いれば、基準電圧E0を固定した場合にも波面収差の発生量を抑制することが可能となり、光ビームのスポット径の劣化を防止することが可能となる。なお、光学系は、上記のように必ずしもΔy1,Δy2だけビームウェストを移動して、ビームウェスト位置ずれ量を完全に零にする必要はなく、過剰補正とならない程度に、液晶素子20a,20bで発生する屈折力を打ち消す方向の屈折力を発生するような特性を有していればよい。
【0073】
また、本実施形態では、1つのポリゴンミラー14で感光ドラム17を走査する場合について説明したが、これに限らず、一例として図12に示されるように、ポリゴンミラー14を主走査方向に並列して配備し、感光ドラム17を分割して走査する構成を採用することとしてもよい。このように感光ドラム17を分割して走査することにより、有効書込幅を大きくすることができる。また、同じ有効書込幅であれば、偏向素子20a,20bや光学素子などを小型化することで、メカ公差や温度変動によるビームウェスト位置変動が小さくなることにより波面収差が低減され、結果として高品位な出力画像を得ることが可能となる。
【0074】
なお、上記実施形態では、液晶素子20a,20bを用いて光ビームLBa,LBbを副走査方向へ偏向させる場合について説明したが、これに限らず、液晶素子20a,20bの向きを変えることにより、光ビームLBa,LBbを主走査方向に偏向させてビームスポット位置の補正を行ってもよい。
【0075】
《第2の実施形態》
次に、本発明の第2の実施形態を、図13及び図14に基づいて説明する。ここで前述した第1の実施形態と同一若しくは同等の構成部分には、同等の符号を用いるとともに、その説明を省略し又は簡略するものとする。
【0076】
図13には、第2の実施形態に係る画像形成装置100の概略構成が示されている。
【0077】
画像形成装置100は、カールソンプロセスを用いて、例えば、黒、イエロー、マゼンダ、シアンのトナー像を普通紙(用紙)上に重ね合わせて転写することにより、多色画像を印刷するタンデム方式のカラープリンタである。この画像形成装置100は、図13に示されるように、光走査装置10、4本の感光ドラム17A、17B、17C、17D、転写ベルト40、位置ずれ検出装置45、給紙トレイ60、給紙コロ54、第1レジストローラ対56、第2レジストローラ対52、定着ローラ50、排紙ローラ58、及び上記構成部品を収容するほぼ直方体状のハウジング112などを備えている。
【0078】
ハウジング112には、上面に印刷が終了した用紙が排出される排紙トレイ112aが形成され、その排紙トレイ112aの下方に光走査装置10が配置されている。
【0079】
光走査装置10は、感光ドラム17Aに対しては、上位装置(パソコン等)から供給された画像情報に基づいて変調された黒色画像成分の光ビームを走査し、感光ドラム17Bに対してはシアン画像成分の光ビームを走査し、感光ドラム17Cに対してはマゼンダ画像成分の光ビームを走査し、感光ドラム17Dに対してはイエロー画像成分の光ビームを走査する。
【0080】
4本の感光ドラム17A、17B、17C、17Dは、その表面に、光ビームが照射されると、その部分が導電性となる性質をもつ感光層が形成された円柱状の部材であり、光走査装置10の下方にX軸方向に沿って等間隔に配置されている。
【0081】
感光ドラム17Aは、ハウジング112内部の−X側端部にY軸方向を長手方向として配置され、不図示の回転機構により図13における時計回り(図13の矢印に示される方向)に回転されるようになっている。そして、その周囲には、図13における12時(上側)の位置に帯電チャージャ132Aが配置され、2時の位置にトナーカートリッジ133Aが配置され、10時の位置にクリーニングケース131Aが配置されている。
【0082】
帯電チャージャ132Aは、長手方向をY軸方向として、感光ドラム17Aの表面に対し所定のクリアランスを介して配置され、感光ドラム17Aの表面を所定の電圧で帯電させる。
【0083】
トナーカートリッジ133Aは、黒色画像成分のトナーが充填されたカートリッジ本体と、感光ドラム17Aとは逆極性の電圧によって帯電された現像ローラなどを備え、カートリッジ本体に充填されたトナーを現像ローラを介して感光ドラム17Aの表面に供給する。
【0084】
クリーニングケース131Aは、Y軸方向を長手方向とする長方形状のクリーニングブレードを備え、該クリーニングブレードの一端が感光ドラム17Aの表面に接するように配置されている。感光ドラム17Aの表面に吸着されたトナーは、感光ドラム17Aの回転に伴いクリーニングブレードにより剥離され、クリーニングケース131Aの内部に回収される。
【0085】
感光ドラム17Bは、感光ドラム17Aの+X側に所定間隔隔てて配置され、不図示の回転機構により、図13における時計回り(矢印に示される方向)に回転されるようになっている。そして、その周囲には、前述の感光ドラム17Aと同様の位置関係で、帯電チャージャ132B、トナーカートリッジ133B及びクリーニングケース131Bがそれぞれ配置されている。
【0086】
帯電チャージャ132Bは、前述した帯電チャージャ132Aと同様に構成され、感光ドラム17Bの表面を所定の電圧で帯電させる。
【0087】
トナーカートリッジ133Bは、シアン画像成分のトナーが充填されたカートリッジ本体と、感光ドラム17Bとは逆極性の電圧によって帯電された現像ローラなどを備え、カートリッジ本体に充填されたトナーを現像ローラを介して感光ドラム17Bの表面に供給する。
【0088】
クリーニングケース131Bは、クリーニングケース131Aと同様に構成され、同様に機能する。
【0089】
感光ドラム17Cは、感光ドラム17Bの+X側に所定間隔隔てて配置され、不図示の回転機構を介して、図13における時計回り(矢印に示される方向)に回転されるようになっている。そして、その周囲には、前述の感光ドラム17Aと同様の位置関係で、帯電チャージャ132C、トナーカートリッジ133C及びクリーニングケース131Cがそれぞれ配置されている。
【0090】
帯電チャージャ132Cは、前述した帯電チャージャ132Aと同様に構成され、感光ドラム17Cの表面を所定の電圧で帯電させる。
【0091】
トナーカートリッジ133Cは、マゼンダ画像成分のトナーが充填されたカートリッジ本体と、感光ドラム17Cとは逆極性の電圧によって帯電された現像ローラなどを備え、カートリッジ本体に充填されたトナーを現像ローラを介して感光ドラム17Cの表面に供給する。
【0092】
クリーニングケース131Cは、クリーニングケース131Aと同様に構成され、同様に機能する。
【0093】
感光ドラム17Dは、感光ドラム17Cの+X側に所定間隔隔てて配置され、不図示の回転機構により、図13における時計回り(矢印に示される方向)に回転されるようになっている。そして、その周囲には、前述の感光ドラム17Aと同様の位置関係で、帯電チャージャ132D、トナーカートリッジ133D及びクリーニングケース131Dがそれぞれ配置されている。
【0094】
帯電チャージャ132Dは、前述した帯電チャージャ132Aと同様に構成され、感光ドラム17Dの表面を所定の電圧で帯電させる。
【0095】
トナーカートリッジ133Dは、イエロー画像成分のトナーが充填されたカートリッジ本体と、感光ドラム17Dとは逆極性の電圧によって帯電された現像ローラなどを備え、カートリッジ本体に充填されたトナーを現像ローラを介して感光ドラム17Dの表面に供給する。
【0096】
クリーニングケース131Dは、クリーニングケース131Aと同様に構成され、同様に機能する。
【0097】
以下、感光ドラム17A、帯電チャージャ132A、トナーカートリッジ133A及びクリーニングケース131Aを合わせて第1ステーションと呼び、感光ドラム17B、帯電チャージャ132B、トナーカートリッジ133B及びクリーニングケース131Bを合わせて第2ステーションと呼び、感光ドラム17C、帯電チャージャ132C、トナーカートリッジ133C及びクリーニングケース131Cを合わせて第3ステーションと呼び、感光ドラム17D、帯電チャージャ132D、トナーカートリッジ133D及びクリーニングケース131Dを合わせて第4ステーションと呼ぶものとする。
【0098】
転写ベルト40は、無端環状の部材で、感光ドラム17Aの下方に配置された従動ローラ40aと、感光ドラム17Dの下方に配置された従動ローラ40cと、これらの従動ローラ40a、40cより少し低い位置に配置された駆動ローラ40bに、上端面が感光ドラム17A、17B、17C、17Dそれぞれの下端面に接するように巻回されている。そして、駆動ローラ40bが図13における反時計回りに回転することにより、反時計回り(図13の矢印に示される方向)に回転される。また、転写ベルト40の+X側端部近傍には、上述した帯電チャージャ132A、132B、132C、132Dとは逆極性の電圧が印加された転写チャージャ48が配置されている。
【0099】
位置ずれ検出装置45は、転写ベルト40の−X側に配置され、図13及びハウジング112の内部機器を示す斜視図である図14を総合するとわかるように、転写ベルト40の−Y側端部を照明するLED42aとその反射光を受光するフォトセンサ41a、転写ベルト40の中央部を照明するLED42bとその反射光を受光するフォトセンサ41b、転写ベルト40の−Y側端部を照明するLED42cとその反射光を受光するフォトセンサ41cを備えている。
【0100】
そして、図14に示されるように、転写ベルト40上に、Y軸方向に沿って形成されたトナー像の検出パターン43A、43B、43Cを、LED42a、42b、42cによりそれぞれ照明し、反射光をフォトセンサ41a、41b、41cでそれぞれ受光することにより得られる検出信号の時間差などに基づいて、Y軸方向のレジスト及び倍率、X軸方向におけるレジスト及び傾きを、第1ステーションで形成されたトナー像のパターンを基準とする相対的な位置ずれとして検出する。
【0101】
給紙トレイ60は、転写ベルト40の下方に配置されている。この給紙トレイ60は略直方体状のトレイであり、内部に印刷対象としての複数枚の用紙61が積み重ねられて収納されている。そして、給紙トレイ60の上面の+X側端部近傍には矩形状の給紙口か形成されている。
【0102】
給紙コロ54は、給紙トレイ60から用紙61を一枚ずつ取り出し、一対の回転ローラから構成されるレジストローラ56を介して、転写ベルト40と転写チャージャ41によって形成される隙間に導出する。
【0103】
定着ローラ50は、一対の回転ローラから構成され、用紙61を過熱するとともに加圧し、レジストローラ52を介して、排紙ローラ58へ導出する。
【0104】
排紙ローラ58は一対の回転ローラから構成され、導出された用紙61を排紙トレイ12aに順次スタックする。
【0105】
光走査装置10は、図14に示されるように、感光ドラム17Aのほぼ上方(+Z側)に配置された6つの偏向面を有するポリゴンミラー14、このポリゴンミラー14の+X方向に順次配置されたfθレンズ15、及び反射ミラー106A、106B、106C、106D、fθレンズ15の下方に配置されたトロイダルレンズ16A、このトロイダルレンズ16Aの+X方向に順次配置された、トロイダルレンズ16B、16C、16D、感光ドラム17A、17B、17Cのほぼ上方にそれぞれ配置された反射ミラー108A、108B、108C、ポリゴンミラー14を基点としてX軸と所定の角度をなす直線上に配置された、4つのシリンドリカルレンズ13a,13b,13c,13d、液晶素子20、4つのカップリングレンズ12a,12b,12c,12d、4つの半導体レーザ11a,11b,11c,11dなどを備えている。
【0106】
前記液晶素子20は、4つの半導体レーザ11a〜11dからそれぞれ射出された光ビームを個別に副走査方向(Z軸方向)に偏向することが可能となっている。そして、液晶素子20により各感光ドラム17A〜17Dに集光される光ビームのビームスポット位置を可変することで、転写ベルト40の移動とポリゴンミラー14の回転の位相の非同期に起因する第1〜第4ステーション間の書込開始位置偏差(すなわち感光ドラム17A〜17D間の相対的なビームスポット位置)を補正することが可能となる。
【0107】
例えば、転写ベルト40に形成された、各ステーション間の色ずれを検知するトナー像を、色ずれ検知装置45にて検出し、その検出結果(ステーション間の色ずれの程度)に従い液晶素子20を駆動することにより、副走査方向の書込開始タイミング(すなわち書込開始位置)を補正することができる。
【0108】
以上説明したように、本実施形態にかかる画像形成装置100によると、必要に応じて各感光ドラム17A〜17Dに集光される光ビームのビームスポット位置を可変することができるため、高品位な出力画像を得ることが可能となる。また複数ビームを同時に走査することが可能であるため、プリント速度の高速化及び高密度化を図ることが可能となる。
【0109】
上述した画像形成装置100をプリンタやデジタル複写機等の実機として使用した場合、製品の工場出荷後の搬送時の振動またはユーザ先への設置場所の制限等により、出荷前の調整工程にて調整したビームスポット間隔(主として副走査方向の間隔、すなわち走査線間隔)が変動する恐れがある。またユーザ先での使用時の経時変化や、設置場所の温度環境や連続プリントを行うことによる機内温度の変化により、走査線間隔が変化する恐れがある。このような場合には、画像形成装置100に走査線間隔を検出し、その結果に基づき液晶素子20を駆動して走査線間隔を補正することが可能となる。
【0110】
さらに、画像形成装置100をプリンタと複写機(コピー機)の機能を併有する複合機に適用した場合、プリンタモード(複合機をプリンタとして使用する状態)とコピーモード(複合機を複写機として利用する状態)で、画素密度を切り替える場合がある。例えばプリンタモードでは画素密度を600dpiとし、コピーモードでは解像度を400dpiとする場合のように画素密度を切り替えることにより、各モードに適した画素密度を実現することができる。
【0111】
また、画像形成装置100に備えられた操作パネル等からオペレータが画素密度切替の指令を出すことにより、使用目的(求める機能)に応じて、画素密度を切り替えたい場合もある。このような場合には、本画像形成装置に具備された液晶素子20を制御することで、容易に画素密度を切り替えることが可能となる。
【0112】
また、上記実施形態では、各半導体レーザ11a〜11dから射出される光ビームの光路を液晶素子20によりそれぞれ偏向させることとしたが、これに限らず、液晶素子20は、ある基準色(例えばブラック)に対して位置合わせするために、他の色(シアン、マゼンタ、イエロー)の光路のみを偏向することとしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0113】
【図1】本発明の第1の実施形態にかかる光走査装置10の概略的な構成を示す図である。
【図2】図2(A)は液晶素子20aを−X側から見た図であり、図2(B)は液晶素子20aを+Z側から見た図である。
【図3】液晶層30の近傍を示す図である。
【図4】透明電極32Bを示す図である。
【図5】図5(A)及び図5(B)は液晶素子20aの動作を説明するための図である。
【図6】図6(A)は液晶素子20aの位相差特性曲線を示す図であり、図6(B)は位相差特性曲線の2次成分を示す図である。
【図7】図7(A)は位相差特性曲線の温度依存性を説明するための図であり、図7(B)は各温度における2次成分の特性を説明するための図である。
【図8】図8(A)及び図8(B)は基準電圧の制御方法を説明するための図(その1,その2)である。
【図9】図9(A)及び図9(B)は基準電圧の制御方法を示す図(その3、その4)である。
【図10】図10(A)及び図10(B)は基準電圧の制御結果を示す図(その5,その6)である。
【図11】光学系の温度とパワーとの関係を説明するための図である。
【図12】光走査装置10の変形例を示す図である。
【図13】本発明の一実施形態にかかる画像形成装置100を示す図である。
【図14】図13における画像形成装置100の光走査装置10を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0114】
10…光走査装置、11a,11b…半導体レーザ、12a,12b…カップリングレンズ、13…シリンドリカルレンズ、14…ポリゴンミラー、15…fθレンズ、16…トロイダルレンズ、17…感光ドラム、18…反射ミラー、19…ビームピッチ検出センサ、20a,20b…液晶素子、21,22…ガラス基板、23…ハーネス、24…樹脂層、30…液晶層、30a…配向膜、30b…液晶分子、32A,32B…透明電極、T0,T1,T2…端子、34r…抵抗、35…電極素子、36…液晶素子制御回路、100…画像形成装置。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源から射出される光ビームにより感光体を走査する光走査装置であって、
第1及び第2の駆動電圧に基づいて前記光ビームの光路を偏向する液晶素子と;
前記第1及び第2の駆動電圧を制御して、前記液晶素子で発生する波面収差を制御する波面収差制御手段と;を備える光走査装置。
【請求項2】
前記波面収差制御手段は、前記第1及び第2の駆動電圧の中間電圧となる基準電圧を制御することを特徴とする請求項1に記載の光走査装置。
【請求項3】
前記波面収差制御手段は、前記光ビームの偏向角に応じて前記基準電圧を制御することを特徴とする請求項2に記載の光走査装置。
【請求項4】
前記光ビームのビームウェスト位置を検出するビームウェスト位置検出手段を更に備え、
前記波面収差制御手段は、前記ビームウェスト位置検出手段の検出結果に基づいて前記波面収差の発生量を制御することを特徴とする請求項1又は2に記載の光走査装置。
【請求項5】
前記液晶素子の温度を検出する温度検出手段を更に備え、
前記波面収差制御手段は、前記温度検出手段の検出結果に基づいて前記波面収差の発生量を制御することを特徴とする請求項1又は2に記載の光走査装置。
【請求項6】
前記液晶素子の温度が所定の温度より低い場合には、前記光ビームのビームウェスト位置を前記光源から遠ざける方向に移動させ、所定の温度より高い場合には、前記光ビームのビームウェスト位置を前記光源に近づける方向に移動させるパワー成分を発生する光学系を更に備えることを特徴とする請求項2〜5のいずれか一項に記載の光走査装置。
【請求項7】
前記光学系のパワー成分は、前記液晶素子の使用温度の中央値付近で最小になるように設定されていることを特徴とする請求項6に記載の光走査装置。
【請求項8】
前記基準電圧は、前記ビームウェストの位置変動が前記液晶素子の使用温度の中央値付近で最小となるように設定されていることを特長とする請求項6又は7に記載の光走査装置。
【請求項9】
感光体上に形成された潜像に基づいて画像を形成する画像形成装置であって、
前記感光体上に潜像を形成する請求項1〜8のいずれか一項に記載の光走査装置と;
前記光走査装置により前記感光体上に形成された潜像に基づいて、画像を形成する処理装置と;を備える画像形成装置。
【請求項10】
感光体を走査する光ビームを偏向する液晶素子の位相変調方法であって、
前記液晶素子で光ビームを偏向する際に生じる波面収差の発生量を予測する工程と;
前記予測された波面収差の発生量に基づいて、前記液晶素子に印加する第1及び第2の駆動電圧を制御する工程と;を含む液晶素子の位相変調方法。
【請求項11】
前記発生量を予測する工程では、前記液晶素子の位相差特性曲線の温度特性と前記液晶素子の温度測定結果とから、前記波面収差の発生量が予測されることを特徴とする請求項10に記載の液晶素子の位相変調方法。
【請求項12】
前記発生量を予測する工程では、前記感光体での光ビームのビームウェスト位置から、前記波面収差の発生量が予測されることを特徴とする請求項10に記載の液晶素子の位相変調方法。
【請求項13】
前記制御する工程では、前記第1及び第2の駆動電圧の中間電圧となる基準電圧を制御することを特徴とする請求項10〜12のいずれか一項に記載の液晶素子の位相変調方法。
【請求項1】
光源から射出される光ビームにより感光体を走査する光走査装置であって、
第1及び第2の駆動電圧に基づいて前記光ビームの光路を偏向する液晶素子と;
前記第1及び第2の駆動電圧を制御して、前記液晶素子で発生する波面収差を制御する波面収差制御手段と;を備える光走査装置。
【請求項2】
前記波面収差制御手段は、前記第1及び第2の駆動電圧の中間電圧となる基準電圧を制御することを特徴とする請求項1に記載の光走査装置。
【請求項3】
前記波面収差制御手段は、前記光ビームの偏向角に応じて前記基準電圧を制御することを特徴とする請求項2に記載の光走査装置。
【請求項4】
前記光ビームのビームウェスト位置を検出するビームウェスト位置検出手段を更に備え、
前記波面収差制御手段は、前記ビームウェスト位置検出手段の検出結果に基づいて前記波面収差の発生量を制御することを特徴とする請求項1又は2に記載の光走査装置。
【請求項5】
前記液晶素子の温度を検出する温度検出手段を更に備え、
前記波面収差制御手段は、前記温度検出手段の検出結果に基づいて前記波面収差の発生量を制御することを特徴とする請求項1又は2に記載の光走査装置。
【請求項6】
前記液晶素子の温度が所定の温度より低い場合には、前記光ビームのビームウェスト位置を前記光源から遠ざける方向に移動させ、所定の温度より高い場合には、前記光ビームのビームウェスト位置を前記光源に近づける方向に移動させるパワー成分を発生する光学系を更に備えることを特徴とする請求項2〜5のいずれか一項に記載の光走査装置。
【請求項7】
前記光学系のパワー成分は、前記液晶素子の使用温度の中央値付近で最小になるように設定されていることを特徴とする請求項6に記載の光走査装置。
【請求項8】
前記基準電圧は、前記ビームウェストの位置変動が前記液晶素子の使用温度の中央値付近で最小となるように設定されていることを特長とする請求項6又は7に記載の光走査装置。
【請求項9】
感光体上に形成された潜像に基づいて画像を形成する画像形成装置であって、
前記感光体上に潜像を形成する請求項1〜8のいずれか一項に記載の光走査装置と;
前記光走査装置により前記感光体上に形成された潜像に基づいて、画像を形成する処理装置と;を備える画像形成装置。
【請求項10】
感光体を走査する光ビームを偏向する液晶素子の位相変調方法であって、
前記液晶素子で光ビームを偏向する際に生じる波面収差の発生量を予測する工程と;
前記予測された波面収差の発生量に基づいて、前記液晶素子に印加する第1及び第2の駆動電圧を制御する工程と;を含む液晶素子の位相変調方法。
【請求項11】
前記発生量を予測する工程では、前記液晶素子の位相差特性曲線の温度特性と前記液晶素子の温度測定結果とから、前記波面収差の発生量が予測されることを特徴とする請求項10に記載の液晶素子の位相変調方法。
【請求項12】
前記発生量を予測する工程では、前記感光体での光ビームのビームウェスト位置から、前記波面収差の発生量が予測されることを特徴とする請求項10に記載の液晶素子の位相変調方法。
【請求項13】
前記制御する工程では、前記第1及び第2の駆動電圧の中間電圧となる基準電圧を制御することを特徴とする請求項10〜12のいずれか一項に記載の液晶素子の位相変調方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2007−226130(P2007−226130A)
【公開日】平成19年9月6日(2007.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−50172(P2006−50172)
【出願日】平成18年2月27日(2006.2.27)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年9月6日(2007.9.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年2月27日(2006.2.27)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】
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