光走査装置
【課題】 本発明は、可動板の重量を増やすことなく、反射面の歪みを抑制できる。
【解決手段】 本発明の光走査装置は、入射光を反射させる反射面を有する可動板と、該可動板を回動可能に軸支するトーション梁と、該トーション梁にねじり方向の駆動力を作用させる駆動部とを具備し、少なくとも、可動板とトーション梁の接続部分付近にリブを形成する。
【解決手段】 本発明の光走査装置は、入射光を反射させる反射面を有する可動板と、該可動板を回動可能に軸支するトーション梁と、該トーション梁にねじり方向の駆動力を作用させる駆動部とを具備し、少なくとも、可動板とトーション梁の接続部分付近にリブを形成する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は光走査装置に関し、詳細には小型ガルバノミラーを用いた光走査装置における可動板の歪み防止及び軽量化に関する。
【背景技術】
【0002】
マイクロマシン技術を用いた光走査装置は、ポリゴンミラーや従来型のガルバノミラーに較べて省電力化、小型化や高速化の可能性があり、駆動部分の形成もシリコンウェハを素材として、半導体微細加工技術を用いて大量で安価に形成できる可能性があるため実用化が期待されている。
【0003】
図18は従来の光走査装置の構成を示す図である。図18の(a)は平面図であり、図18の(b)は斜視図である。同図に示す従来の光走査装置における可動板部100は、光ビームを二次元走査するものであり、固定枠101に外側トーション梁102で揺動可能に軸支された枠状の外側可動板103と、外側トーション梁102の軸線と直交する内側トーション梁104で外側可動板103に揺動に軸支されて反射ミラーが形成されている内側可動板105とを、主に含んで構成されている。また、外側可動板103及び内側可動板105の表裏面の周縁部には、外側トーション梁102及び内側トーション梁104に回転振動を付与するため、例えば電磁力によるもの、静電力によるもの、あるいは電歪素子によるものなど多様な形態の駆動部106、107が設けられている。
【0004】
このような構成を有する従来の光走査装置100によれば、内側可動板105は、図19の(a)のように、反射面が蒸着され、回動可能に内側トーション梁104と一体に形成されている。そして、回転振動の力が与えられ、図19の(b)、(c)のように回転させられて光走査を行うものである。回転振動を与える手段としては、例えば電磁力によるもの、静電力によるもの、電歪素子によるものなど多様である。なお、図18の外側可動板103も同様に回転振動による光走査を行い、よって2方向それぞれに制御され、2次元的に光を走査する。
【0005】
このような、マイクロマシン技術を用いた光走査装置では、小型化、高速化に伴い、駆動時のミラー面の歪み、ビームスポットの形状が劣化することが課題の一つとなっている。このような課題を解決するために、従来よりいくつかの提案がなされている。
【0006】
その一つとしての特許文献1には、フレーム、梁及びミラー部が一体成形され、このミラー部の裏面には複数の凹部が形成され、この凹部は帯状、マトリクス状、ハニカム状など様々な形状でエッチング処理されている。また、特許文献2によれば、可動板の周縁部に沿って通電により磁界を発生する薄膜コイルを敷設し、トーションバーの軸方向に平行な可動板の対辺部の薄膜コイル部分に対して静磁界を作用させる静磁界発生手段を備えて、で可動板の表裏面に発生する応力をバランスさせ、可動板の反りを抑制する。更に、特許文献3には、ミラー基板の裏側に、階段状の複数の領域を配置し、曲げモーメントが最大になる点を含む領域の曲げ剛性が最大になるように、曲げ剛性を配置する。また、ミラー基板の各領域での動的な撓み量が概略等しくなるように、各領域の断面2次モーメントを設定する。
【0007】
しかしながら、上記特許文献1によれば、裏面全体に凹部を設けて反射面の歪みを抑制しようとするものであるが、後述するように歪みが生じていない領域まで凹部を設けているため可動板部が重くなり、慣性モーメントも増大するとことで、駆動に大きなエネルギーが必要になるという問題も生じる。また、上記特許文献2によれば、能動的に可動板の歪みを補正しようとするものであるが、製造過程が複雑になり、装置も大型化する可能性が高く、また制御が複雑になるなどの問題もある。更に、上記特許文献3によれば、回動軸から離れるにしたがって、ミラー基板が薄くなるので、慣性モーメントを大きくせずに、歪みを補正する効果があるが、部分的に厚みが細かく変化するので、製造しにくいという問題がある。
【0008】
そこで、駆動時に発生する歪みを抑制するためには、可動板を弾性係数の大きな材料で作るか、可動板を厚くするなどしてその剛性を上げることが考えられる。
【特許文献1】特開2001−249300号公報
【特許文献2】特開2004−264684号公報
【特許文献3】特開2005−300927号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上述のように可動板を弾性係数の大きな材料で作っても、半導体微細加工技術で加工できる材料でなければならず、材料が限定される。また、トーション梁と一体に形成するので、弾性係数が大きい材料を使うと、トーション梁を捩じるのに大きな力、エネルギーが必要になってしまう。また、可動板を厚くするなどしてその剛性を上げる方法は、可動板部が重くなることと、回動軸から離れた位置でも厚みがあることで、可動板部の慣性モーメントが増大するので、可動板を回転振動させるのに、大きな力、エネルギーが必要になる。更に、図20及び図21に示すような、可動板201の反射面の裏側にリブ202を設けて補強することも上述したように上記特許文献1に提案されているが、設計条件、使用条件によっては、可動板201の重量、慣性モーメントを増大させるだけで、平面性の改善が見られない場合もある。
【0010】
本発明はこれらの問題点を解決するためのものであり、可動板の重量を増やすことなく、反射面の歪みを抑制できる、光走査装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記問題点を解決するために、本発明の光走査装置は、入射光を反射させる反射面を有する可動板と、該可動板を回動可能に軸支するトーション梁と、該トーション梁にねじり方向の駆動力を作用させる駆動部とを具備している。そして、本発明の光走査装置は、少なくとも、可動板とトーション梁の接続部分付近にリブを形成することに特徴がある。よって、可動板の面を大型化せずに、反射面の動的歪みを抑制することができる。
【0012】
また、リブは、可動板の外形形状に沿って閉じた形状で形成することにより、可動板の慣性モーメントの増加を招かずに、反射面の歪みを抑制することができる。
【0013】
更に、リブは、可動板とトーション梁の接続部分付近で可動板の外形形状に沿って、かつ回動中心から離れた位置では外形形状に沿わずに、閉じた形状で形成する。よって、リブ部の軽量化が図れ、リブの適正配置によって可動板部の慣性モーメントの増加を招かずに、反射面の歪みを抑制することができる。
【0014】
また、可動板とトーション梁の接続部分付近におけるリブの厚みは厚く、可動板とトーション梁の接続部分付近から回動中心から離れた位置に向かってリブの厚みは連続的に徐々に薄くなるように形成する。よって、可動板部の慣性モーメントの増加を招かずに、反射面の歪みを抑制することができる。
【0015】
更に、可動板上の反射面とトーション梁の外面部を異なる面上に配置することにより、トーション梁の捩れの力が直接反射面に伝わらないので、歪みを低減することができる。
【0016】
また、可動板の外形形状の少なくとも一部に沿って形成されたリブを介して、可動板とトーション梁が接続することにより、必要な剛性を保ちつつ、可動板部を軽量化することができる。
【0017】
更に、リブを可動板の裏面に設け、リブの高さとトーション梁の厚みを等しくすることにより、従来のSiとSiO2からなるウェハから作り出す製造法で反射面とトーション梁が同一面上にない構成を作製できるので、コストアップを招かない。
【0018】
また、リブを可動板の反射面側に設けることにより、より効果的に歪みを抑制することができる。
【0019】
更に、可動板の外形形状の少なくとも一部に沿って形成されたリブを介して、可動板とトーション梁が接続され、リブによる可動板とトーション梁の接続部分に溝部を形成する。よって、トーション梁の表面に発生する歪みが直接的に可動板の反射面に伝わらないので、駆動時の歪みを軽減することができる。
【0020】
また、別の発明としての光走査装置によれば、回動軸方向での可動板の長さと入射光の幅の差は、回動軸と垂直な方向での可動板の長さと入射光の幅の差よりも大きいこと特徴がある。よって、実反射面の動的歪みを抑制することができる。
【0021】
更に、可動板は、トーション梁との接続部分付近で一部が回動軸方向に突き出る形状であることにより、可動板部の慣性モーメントの増加を抑制しつつ、実際の反射範囲の動的歪みを抑制することができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明の光走査装置によれば、捩れ力による可動板における歪みが非常に大きい位置である可動板とトーション梁の接続部分付近にリブを形成することに特徴がある。よって、可動板の面を大型化せずに、反射面の動的歪みを抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
はじめに、円形の可動板を特別な補強をせず、トーション梁と可動板の厚みが同じで、可動板にリブなどの補強をしない駆動させる条件で、光走査装置における可動板における歪み量分布について説明する。
【0024】
図1は光走査装置における可動板の歪み量の分布を示す図である。同図からわかるように、歪みが大きい位置は、可動板とトーション梁の接続部分付近と、それから回動軸から離れて回動軸に垂直な方向の両端である。また、歪みの大きさは、出っ張り、凹みに関わらず絶対値で示している。可動板とトーション梁の接続部分では可動板を回動させる際に可動板とトーション梁の間で捩り応力が発生するので、可動板とトーション梁の接続部分付近では引っ張り応力や圧縮応力が発生して他の部分に比べ大きな歪みが生じると考えられる。回動軸から離れた部分でも駆動時に歪みが生じているが、可動板とトーション梁の接続部分では、より大きな歪みが生じており、反射面の平面度を低下させている。なお、使用条件や設計によって変わることもある。
【0025】
そこで、本発明の光走査装置における可動板部では、重量増加を少なくし、歪み補正の効果を上げるために、少なくとも、可動板とトーション梁の接続部分付近をリブで補強する。以下、図面を用いて詳細に説明する。
【0026】
図2は本発明の第1の実施の形態に係る光走査装置における可動板部の構成を示す図である。同図の(a)は平面図であり、同図の(b)は斜視図である。同図に示すように、本実施の形態の光走査装置における可動板部10は、反射面裏側の可動板11とトーション梁12の各接続部分付近に可動補強のためのリブ13をそれぞれ設けている。このような構成を有する本実施の形態の光走査装置によれば、体積増加が僅かであり、歪みの大きい回動中心に近いところが補強されることで、可動板部分の、重量と慣性モーメントの増加を抑えることができる。しかし、リブによる補強で可動板とトーション梁の接続部分に歪みを低減させたとしても、回動軸から離れた遠い部分の歪みが残る場合には、可動板部の重量増加を避ける可動板補強が必要になる。
【0027】
そこで、本発明の第2の実施の形態に係る光走査装置における可動板部の構成図である図3に示すように、本実施の形態に係る光走査装置における可動板部20によれば、可動板11の外形形状に沿ってリブ21を形成して補強している。なお、同図において、図2と同じ参照符号は同じ構成要素を示す。平面図である図3の(a)に示すように可動板11の裏面外周全体に閉じた状態でリブ21が設けられている。また、回動軸と垂直な方向に長いような可動板形状ではなく、略円形の可動板であれば、可動板の外形形状に沿ったリブを形成すれば、その内側に回動軸と垂直な方向のリブを設けても、設けなくても、駆動時に同じ平面性が得られる。ただし、極端に速い駆動周期や、幅が狭く低いリブの場合は、当てはまらないこともある。このような構成を有する本実施の形態の光走査装置によれば、少ない重量、慣性モーメントの増加で、効果的に可動板全体の、駆動時の歪みを抑制することができる。
【0028】
次に、可動板部の重量と慣性モーメントを更に減らすために、本発明の第3の実施の形態に係る光走査装置における可動板部の構成図である図4に示すように、本実施の形態に係る光走査装置における可動板部30によれば、可動板11とトーション梁12の接続部分付近には可動板11の外形に沿った位置に、かつ回動中心から離れた位置であって垂直方向には外形より内側に閉じた状態でリブ31を形成する。なお、同図において、図2と同じ参照符号は同じ構成要素を示す。平面図である図4の(a)に示すように、囲まれたリブ31の外側の部分は、腕の短い片持ち梁と同じように考えれば、図2に示すような全周をリブ21で囲った第2の実施の形態と比べても、平面度低下の影響は少ない。実際には、トーション梁と垂直な方向のどの位置にリブを設けるかは、シミュレーションや、試作評価などで決定すればよい。設計条件にもよるが、第2の実施の形態の構成に比べ、反射面の歪みをほとんど悪化させずに、リブの外周を短くするので、可動板の重量を減らすことができる。また、リブ部が回動軸から近い位置に設けられるので、慣性モーメントをより小さくできる可能性が高い。
【0029】
また、図1に示すように光走査装置における可動板の歪み量に応じてリブの厚みを可変する。具体的には、トーション梁の接続部分は厚みの大きいリブで補強し、トーション梁の接続部分から遠い位置にあるリブは厚みを小さく形成する。このように、回動中心から離れた位置におけるリブの厚みを小さくすることにより、可動板部の軽量化し、可動板部の慣性モーメントを増大させずに済むので、駆動時のエネルギー、駆動力が小さくて済む光走査装置を構成することが可能である。
【0030】
図5は本発明の第4の実施の形態に係る光走査装置における可動板部の構成を示す図である。同図の(a)は斜視図、同図の(b)は側面図、同図の(c)は回動軸方向の可動板部の中央断面図である。なお、同図において、図2と同じ参照符号は同じ構成要素を示す。同図に示すように、本実施の形態の光走査装置における可動板部40は、トーション梁12と可動板11の反射面41が同一面上に配されないようにする。例えば同図の(b)、(c)からわかるように、トーション梁12の平面と可動板11の反射面41が同一面にならないように段差を付けて、可動板11とトーション梁12を構成する。このような構成を有する本実施の形態の光走査装置によれば、トーション梁の接続部分の回動による応力は、可動板の側面部表面を変形させる応力を発生させるが、その応力を、直接、反射面に伝えないので、反射面の歪みを抑えることができる。また、同図の(c)に示すように、可動板11の裏面は周囲を残すように肉抜き構造にして軽量化している。よって、第2の実施の形態と同様に、可動板が小型で、回動軸と垂直な方向に長い構造でなければ、可動板部の全周を補強する構造であっても、肉抜き構造にすれば、歪みの抑制に有効であると共に、可動板部を軽量化でき、慣性モーメントを下げられる。そのため、駆動時のエネルギー、駆動力が小さい光走査装置を構成することが可能である。
【0031】
図6に示すように、SiO2層51をSi層52、53で挟んだSiOウェハを両面から、SiO2層までエッチング処理により不要部分を除去することで、(リブの形成などで)部分的に厚み異なる小型構造を形成できる。可動板やトーション梁などの可動板部の形状は、図7のように、SiO2層51を挟んで、図中上側のSi層53から可動板の平面部を残して除去加工を行い、下側のSi層52からリブ部、トーション梁の形状を残すようにエッチングによる除去加工を行い、形成する。リブの厚みとトーション梁の厚みを同じにしなくてはならないが、図8のように、トーション梁12の幅を狭めるなどの調整により、可動板部の共振周波数を調整することができる。また、トーション梁と反射面を同一面上に配置しない構成であっても、SiO2層をSi層で挟んだSiOウェハの標準的な加工方法で、可動板部を形成できるので、製造コストを抑えることが可能である。
【0032】
更に、図9のように、トーション梁12の1つの側面と、可動板上反射面が略同一面上にある場合に、可動板11における反射面41を有する面と、トーション梁12の間に溝部61を設けている。よって、トーション梁の捩れによって生じる応力が、直接反射面に伝わらないので、駆動時の面の歪みを抑制することができる。また、図6のようなSiOウェハから可動板部を形成する場合、図10のように、上側のSi層53は、溝部61を作るために、可動板平面部、トーション梁の上側を残すようにエッチングし、下側のSi層52は、可動板裏側を肉抜きするようにエッチングして、可動板部を形成する。
【0033】
また、SiO2層をSi層で挟んだSiOウェハを両面から、SiO2層までエッチング処理により不要部分を除去することで図11のように可動板11とトーション梁12の厚みを違えることができる構成を選択することができる。可動板11やトーション梁21などの可動板部の形状を形成する場合、図12のように、SiO2層まで、図中上側のSi層53は可動板11の平面部とトーション梁12を残して除去加工を行い、下側のSi層52はリブ部の形状だけを残すように除去加工を行う。よって、トーション梁のアスペクト比を小さくすることができるので、捩りに対する強度を上げることができる。トーション梁のアスペクト比を小さくする梁形状にしたい場合であっても、SiO2層をSi層で挟んだSiOウェハの標準的加工に、可動板部を形成できるので、製造コストを抑え、トーション梁構造の選択自由度を挙げることが可能である。
【0034】
ここで、上述したが、図1からわかるように可動板を回動可能に支持するトーション梁との接続部分で大きな歪みが発生する。また、実際に光束(の必要な部分)が反射する範囲で必要な平面性が得られれば、可動板の他の部分が大きく歪んでいたとしても、使用上の問題はない。そこで、トーション梁方向に、可動板を光束の大きさよりも広げる。図13に示すように、トーション梁12の接続部分と回動軸方向の光束の反射面領域71における端部との離間長A1、A2、回動軸と垂直な方向の光束と反射面領域71における端部との離間長B1、B2とすると、A1+A2>B1+B2となる。
【0035】
このような可動板形状で、光束が反射しない部分での歪みは大きいものの、トーション梁から離れた位置では、歪みが小さくなるので、その範囲で光束を反射させれば、光学的な性能劣化を防ぐことができる。また、回転軸とは垂直方向に可動板を広げないので、慣性モーメントの増大を最小限に抑えることができる。可動板とトーション梁の厚みを同じに、可動板部の厚みは一定となるので、加工が容易になる。また、図14に示すように、光束が回動軸とは垂直な方向に長い場合は、可動板を楕円や小判型にしなくとも、A1+A2>B1+B2の条件を満たし、歪みの大きい範囲で反射させずに済む。
【0036】
また、回動軸方向に可動板を長くするだけでは、歪み抑制が不十分であれば、上述した補強方法と組み合わせることで、歪み補正の効果を上げることができる。例えば、図2の第1の実施の形態と同様に可動板11を軸方向長くしてトーション梁12の接続部分付近をリブ13で補強したり、図3の第2の実施の形態と同様に外形形状に沿ってリブ21を形成する。また、図4の第3の実施の形態と同様に回動中心から遠い部分では外周に沿わない形状で閉じた形状でリブ31を形成するなどのリブによる補強との組み合わせで、より平面度を改善することも可能である。ただし、可動板がトーション梁の長手方向と垂直に長い形状の場合は、先端の撓みが問題になるので、根元部分の補強では、必要な平面度を得られない可能性が高い。
【0037】
更に、回動軸の軸方向に可動板の寸法が大きく、表側にリブを設けてもリブが光束を遮らなければ、本発明の第5の実施の形態に係る光走査装置における可動板部80においては、図15に示すように可動板11の反射面側にリブ81を設けるようにすることも可能である。このようにすれば、トーション梁からの伝わる力は、リブ側面を歪ませるように作用するので、トーション梁の捩りによって生じる反射面歪みに関しては、より一層の歪み抑制効果がある。同じ形状のリブならば、表面に付けても、裏面に付けても、可動板部の重量、慣性モーメントに違いはないが、反射面側にリブを設ける方が、反射面の歪みを抑制する効果が高い。
【0038】
また、回転軸方向に回転軸から近い部分も遠い部分同じように可動板を伸ばしていたが、図16におけるハッチング部分で示すように、伸ばした部分でも、歪みを吸収する作用していない部分は、無くしたとしても、実際の反射面の歪み抑制に影響がない。この場合は、図17のように、表面を歪ませる力作用する軸から近い範囲のみを伸ばす。この場合、可動板11とトーション梁12の接続部分と回動軸方向の光束の反射面領域の端部との離間長A1、A2、回動軸と垂直な方向の光束と反射面領域の端部との離間長B1、B2とすると、A1+A2>B1+B2となる条件を満たす。よって、本発明の第6の実施の形態に係る光走査装置における可動板部90においては、可動板における一部分のみの領域91を回動軸方向に伸ばして突き出る形状とすることで、反射面の平面度を落とことなく、図16におけるハッチング部分の肉厚を削った分で、可動板部を軽量化することができる。また、回動軸から離れた部分の肉厚を落とせるので、可動板部の慣性モーメントを下げられるので、小さなエネルギーでの駆動が可能になる。
【0039】
なお、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲内の記載であれば多種の変形や置換可能であることは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】光走査装置における可動板の歪み量の分布を示す図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態に係る光走査装置における可動板部の構成を示す図である。
【図3】本発明の第2の実施の形態に係る光走査装置における可動板部の構成を示す図である。
【図4】本発明の第3の実施の形態に係る光走査装置における可動板部の構成を示す図である。
【図5】本発明の第4の実施の形態に係る光走査装置における可動板部の構成を示す図である。
【図6】本発明の光走査装置における可動板部の別の構成を示す図である。
【図7】本発明の光走査装置における可動板部の別の構成を示す図である。
【図8】本発明の光走査装置における可動板部の別の構成を示す図である。
【図9】本発明の光走査装置における可動板部の別の構成を示す図である。
【図10】本発明の光走査装置における可動板部の別の構成を示す図である。
【図11】本発明の光走査装置における可動板部の別の構成を示す図である。
【図12】本発明の光走査装置における可動板部の別の構成を示す図である。
【図13】本発明の光走査装置における可動板部の別の構成を示す平面図である。
【図14】本発明の光走査装置における可動板部の別の構成を示す平面図である。
【図15】本発明の第5の実施の形態に係る光走査装置における可動板部の構成を示す斜視図である。
【図16】本発明の光走査装置における可動板部の構成を示す平面図である。
【図17】本発明の第6の実施の形態に係る光走査装置における可動板部の構成を示す平面図である。
【図18】従来の光走査装置における可動板部の構成を示す図である。
【図19】従来の光走査装置における稼動部の回動の様子を示す図である。
【図20】従来の光走査装置における可動板部の構成を示す図である。
【図21】従来の光走査装置における可動板部の別の構成を示す図である。
【符号の説明】
【0041】
10,20,30,40,60,70,80,90;可動板部、
11;可動板、12;トーション梁、13,21,31,81;リブ、
41;反射面、51;SiO2層、52,53;Si層、61;溝部、
71;反射面領域、91;領域。
【技術分野】
【0001】
本発明は光走査装置に関し、詳細には小型ガルバノミラーを用いた光走査装置における可動板の歪み防止及び軽量化に関する。
【背景技術】
【0002】
マイクロマシン技術を用いた光走査装置は、ポリゴンミラーや従来型のガルバノミラーに較べて省電力化、小型化や高速化の可能性があり、駆動部分の形成もシリコンウェハを素材として、半導体微細加工技術を用いて大量で安価に形成できる可能性があるため実用化が期待されている。
【0003】
図18は従来の光走査装置の構成を示す図である。図18の(a)は平面図であり、図18の(b)は斜視図である。同図に示す従来の光走査装置における可動板部100は、光ビームを二次元走査するものであり、固定枠101に外側トーション梁102で揺動可能に軸支された枠状の外側可動板103と、外側トーション梁102の軸線と直交する内側トーション梁104で外側可動板103に揺動に軸支されて反射ミラーが形成されている内側可動板105とを、主に含んで構成されている。また、外側可動板103及び内側可動板105の表裏面の周縁部には、外側トーション梁102及び内側トーション梁104に回転振動を付与するため、例えば電磁力によるもの、静電力によるもの、あるいは電歪素子によるものなど多様な形態の駆動部106、107が設けられている。
【0004】
このような構成を有する従来の光走査装置100によれば、内側可動板105は、図19の(a)のように、反射面が蒸着され、回動可能に内側トーション梁104と一体に形成されている。そして、回転振動の力が与えられ、図19の(b)、(c)のように回転させられて光走査を行うものである。回転振動を与える手段としては、例えば電磁力によるもの、静電力によるもの、電歪素子によるものなど多様である。なお、図18の外側可動板103も同様に回転振動による光走査を行い、よって2方向それぞれに制御され、2次元的に光を走査する。
【0005】
このような、マイクロマシン技術を用いた光走査装置では、小型化、高速化に伴い、駆動時のミラー面の歪み、ビームスポットの形状が劣化することが課題の一つとなっている。このような課題を解決するために、従来よりいくつかの提案がなされている。
【0006】
その一つとしての特許文献1には、フレーム、梁及びミラー部が一体成形され、このミラー部の裏面には複数の凹部が形成され、この凹部は帯状、マトリクス状、ハニカム状など様々な形状でエッチング処理されている。また、特許文献2によれば、可動板の周縁部に沿って通電により磁界を発生する薄膜コイルを敷設し、トーションバーの軸方向に平行な可動板の対辺部の薄膜コイル部分に対して静磁界を作用させる静磁界発生手段を備えて、で可動板の表裏面に発生する応力をバランスさせ、可動板の反りを抑制する。更に、特許文献3には、ミラー基板の裏側に、階段状の複数の領域を配置し、曲げモーメントが最大になる点を含む領域の曲げ剛性が最大になるように、曲げ剛性を配置する。また、ミラー基板の各領域での動的な撓み量が概略等しくなるように、各領域の断面2次モーメントを設定する。
【0007】
しかしながら、上記特許文献1によれば、裏面全体に凹部を設けて反射面の歪みを抑制しようとするものであるが、後述するように歪みが生じていない領域まで凹部を設けているため可動板部が重くなり、慣性モーメントも増大するとことで、駆動に大きなエネルギーが必要になるという問題も生じる。また、上記特許文献2によれば、能動的に可動板の歪みを補正しようとするものであるが、製造過程が複雑になり、装置も大型化する可能性が高く、また制御が複雑になるなどの問題もある。更に、上記特許文献3によれば、回動軸から離れるにしたがって、ミラー基板が薄くなるので、慣性モーメントを大きくせずに、歪みを補正する効果があるが、部分的に厚みが細かく変化するので、製造しにくいという問題がある。
【0008】
そこで、駆動時に発生する歪みを抑制するためには、可動板を弾性係数の大きな材料で作るか、可動板を厚くするなどしてその剛性を上げることが考えられる。
【特許文献1】特開2001−249300号公報
【特許文献2】特開2004−264684号公報
【特許文献3】特開2005−300927号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上述のように可動板を弾性係数の大きな材料で作っても、半導体微細加工技術で加工できる材料でなければならず、材料が限定される。また、トーション梁と一体に形成するので、弾性係数が大きい材料を使うと、トーション梁を捩じるのに大きな力、エネルギーが必要になってしまう。また、可動板を厚くするなどしてその剛性を上げる方法は、可動板部が重くなることと、回動軸から離れた位置でも厚みがあることで、可動板部の慣性モーメントが増大するので、可動板を回転振動させるのに、大きな力、エネルギーが必要になる。更に、図20及び図21に示すような、可動板201の反射面の裏側にリブ202を設けて補強することも上述したように上記特許文献1に提案されているが、設計条件、使用条件によっては、可動板201の重量、慣性モーメントを増大させるだけで、平面性の改善が見られない場合もある。
【0010】
本発明はこれらの問題点を解決するためのものであり、可動板の重量を増やすことなく、反射面の歪みを抑制できる、光走査装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記問題点を解決するために、本発明の光走査装置は、入射光を反射させる反射面を有する可動板と、該可動板を回動可能に軸支するトーション梁と、該トーション梁にねじり方向の駆動力を作用させる駆動部とを具備している。そして、本発明の光走査装置は、少なくとも、可動板とトーション梁の接続部分付近にリブを形成することに特徴がある。よって、可動板の面を大型化せずに、反射面の動的歪みを抑制することができる。
【0012】
また、リブは、可動板の外形形状に沿って閉じた形状で形成することにより、可動板の慣性モーメントの増加を招かずに、反射面の歪みを抑制することができる。
【0013】
更に、リブは、可動板とトーション梁の接続部分付近で可動板の外形形状に沿って、かつ回動中心から離れた位置では外形形状に沿わずに、閉じた形状で形成する。よって、リブ部の軽量化が図れ、リブの適正配置によって可動板部の慣性モーメントの増加を招かずに、反射面の歪みを抑制することができる。
【0014】
また、可動板とトーション梁の接続部分付近におけるリブの厚みは厚く、可動板とトーション梁の接続部分付近から回動中心から離れた位置に向かってリブの厚みは連続的に徐々に薄くなるように形成する。よって、可動板部の慣性モーメントの増加を招かずに、反射面の歪みを抑制することができる。
【0015】
更に、可動板上の反射面とトーション梁の外面部を異なる面上に配置することにより、トーション梁の捩れの力が直接反射面に伝わらないので、歪みを低減することができる。
【0016】
また、可動板の外形形状の少なくとも一部に沿って形成されたリブを介して、可動板とトーション梁が接続することにより、必要な剛性を保ちつつ、可動板部を軽量化することができる。
【0017】
更に、リブを可動板の裏面に設け、リブの高さとトーション梁の厚みを等しくすることにより、従来のSiとSiO2からなるウェハから作り出す製造法で反射面とトーション梁が同一面上にない構成を作製できるので、コストアップを招かない。
【0018】
また、リブを可動板の反射面側に設けることにより、より効果的に歪みを抑制することができる。
【0019】
更に、可動板の外形形状の少なくとも一部に沿って形成されたリブを介して、可動板とトーション梁が接続され、リブによる可動板とトーション梁の接続部分に溝部を形成する。よって、トーション梁の表面に発生する歪みが直接的に可動板の反射面に伝わらないので、駆動時の歪みを軽減することができる。
【0020】
また、別の発明としての光走査装置によれば、回動軸方向での可動板の長さと入射光の幅の差は、回動軸と垂直な方向での可動板の長さと入射光の幅の差よりも大きいこと特徴がある。よって、実反射面の動的歪みを抑制することができる。
【0021】
更に、可動板は、トーション梁との接続部分付近で一部が回動軸方向に突き出る形状であることにより、可動板部の慣性モーメントの増加を抑制しつつ、実際の反射範囲の動的歪みを抑制することができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明の光走査装置によれば、捩れ力による可動板における歪みが非常に大きい位置である可動板とトーション梁の接続部分付近にリブを形成することに特徴がある。よって、可動板の面を大型化せずに、反射面の動的歪みを抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
はじめに、円形の可動板を特別な補強をせず、トーション梁と可動板の厚みが同じで、可動板にリブなどの補強をしない駆動させる条件で、光走査装置における可動板における歪み量分布について説明する。
【0024】
図1は光走査装置における可動板の歪み量の分布を示す図である。同図からわかるように、歪みが大きい位置は、可動板とトーション梁の接続部分付近と、それから回動軸から離れて回動軸に垂直な方向の両端である。また、歪みの大きさは、出っ張り、凹みに関わらず絶対値で示している。可動板とトーション梁の接続部分では可動板を回動させる際に可動板とトーション梁の間で捩り応力が発生するので、可動板とトーション梁の接続部分付近では引っ張り応力や圧縮応力が発生して他の部分に比べ大きな歪みが生じると考えられる。回動軸から離れた部分でも駆動時に歪みが生じているが、可動板とトーション梁の接続部分では、より大きな歪みが生じており、反射面の平面度を低下させている。なお、使用条件や設計によって変わることもある。
【0025】
そこで、本発明の光走査装置における可動板部では、重量増加を少なくし、歪み補正の効果を上げるために、少なくとも、可動板とトーション梁の接続部分付近をリブで補強する。以下、図面を用いて詳細に説明する。
【0026】
図2は本発明の第1の実施の形態に係る光走査装置における可動板部の構成を示す図である。同図の(a)は平面図であり、同図の(b)は斜視図である。同図に示すように、本実施の形態の光走査装置における可動板部10は、反射面裏側の可動板11とトーション梁12の各接続部分付近に可動補強のためのリブ13をそれぞれ設けている。このような構成を有する本実施の形態の光走査装置によれば、体積増加が僅かであり、歪みの大きい回動中心に近いところが補強されることで、可動板部分の、重量と慣性モーメントの増加を抑えることができる。しかし、リブによる補強で可動板とトーション梁の接続部分に歪みを低減させたとしても、回動軸から離れた遠い部分の歪みが残る場合には、可動板部の重量増加を避ける可動板補強が必要になる。
【0027】
そこで、本発明の第2の実施の形態に係る光走査装置における可動板部の構成図である図3に示すように、本実施の形態に係る光走査装置における可動板部20によれば、可動板11の外形形状に沿ってリブ21を形成して補強している。なお、同図において、図2と同じ参照符号は同じ構成要素を示す。平面図である図3の(a)に示すように可動板11の裏面外周全体に閉じた状態でリブ21が設けられている。また、回動軸と垂直な方向に長いような可動板形状ではなく、略円形の可動板であれば、可動板の外形形状に沿ったリブを形成すれば、その内側に回動軸と垂直な方向のリブを設けても、設けなくても、駆動時に同じ平面性が得られる。ただし、極端に速い駆動周期や、幅が狭く低いリブの場合は、当てはまらないこともある。このような構成を有する本実施の形態の光走査装置によれば、少ない重量、慣性モーメントの増加で、効果的に可動板全体の、駆動時の歪みを抑制することができる。
【0028】
次に、可動板部の重量と慣性モーメントを更に減らすために、本発明の第3の実施の形態に係る光走査装置における可動板部の構成図である図4に示すように、本実施の形態に係る光走査装置における可動板部30によれば、可動板11とトーション梁12の接続部分付近には可動板11の外形に沿った位置に、かつ回動中心から離れた位置であって垂直方向には外形より内側に閉じた状態でリブ31を形成する。なお、同図において、図2と同じ参照符号は同じ構成要素を示す。平面図である図4の(a)に示すように、囲まれたリブ31の外側の部分は、腕の短い片持ち梁と同じように考えれば、図2に示すような全周をリブ21で囲った第2の実施の形態と比べても、平面度低下の影響は少ない。実際には、トーション梁と垂直な方向のどの位置にリブを設けるかは、シミュレーションや、試作評価などで決定すればよい。設計条件にもよるが、第2の実施の形態の構成に比べ、反射面の歪みをほとんど悪化させずに、リブの外周を短くするので、可動板の重量を減らすことができる。また、リブ部が回動軸から近い位置に設けられるので、慣性モーメントをより小さくできる可能性が高い。
【0029】
また、図1に示すように光走査装置における可動板の歪み量に応じてリブの厚みを可変する。具体的には、トーション梁の接続部分は厚みの大きいリブで補強し、トーション梁の接続部分から遠い位置にあるリブは厚みを小さく形成する。このように、回動中心から離れた位置におけるリブの厚みを小さくすることにより、可動板部の軽量化し、可動板部の慣性モーメントを増大させずに済むので、駆動時のエネルギー、駆動力が小さくて済む光走査装置を構成することが可能である。
【0030】
図5は本発明の第4の実施の形態に係る光走査装置における可動板部の構成を示す図である。同図の(a)は斜視図、同図の(b)は側面図、同図の(c)は回動軸方向の可動板部の中央断面図である。なお、同図において、図2と同じ参照符号は同じ構成要素を示す。同図に示すように、本実施の形態の光走査装置における可動板部40は、トーション梁12と可動板11の反射面41が同一面上に配されないようにする。例えば同図の(b)、(c)からわかるように、トーション梁12の平面と可動板11の反射面41が同一面にならないように段差を付けて、可動板11とトーション梁12を構成する。このような構成を有する本実施の形態の光走査装置によれば、トーション梁の接続部分の回動による応力は、可動板の側面部表面を変形させる応力を発生させるが、その応力を、直接、反射面に伝えないので、反射面の歪みを抑えることができる。また、同図の(c)に示すように、可動板11の裏面は周囲を残すように肉抜き構造にして軽量化している。よって、第2の実施の形態と同様に、可動板が小型で、回動軸と垂直な方向に長い構造でなければ、可動板部の全周を補強する構造であっても、肉抜き構造にすれば、歪みの抑制に有効であると共に、可動板部を軽量化でき、慣性モーメントを下げられる。そのため、駆動時のエネルギー、駆動力が小さい光走査装置を構成することが可能である。
【0031】
図6に示すように、SiO2層51をSi層52、53で挟んだSiOウェハを両面から、SiO2層までエッチング処理により不要部分を除去することで、(リブの形成などで)部分的に厚み異なる小型構造を形成できる。可動板やトーション梁などの可動板部の形状は、図7のように、SiO2層51を挟んで、図中上側のSi層53から可動板の平面部を残して除去加工を行い、下側のSi層52からリブ部、トーション梁の形状を残すようにエッチングによる除去加工を行い、形成する。リブの厚みとトーション梁の厚みを同じにしなくてはならないが、図8のように、トーション梁12の幅を狭めるなどの調整により、可動板部の共振周波数を調整することができる。また、トーション梁と反射面を同一面上に配置しない構成であっても、SiO2層をSi層で挟んだSiOウェハの標準的な加工方法で、可動板部を形成できるので、製造コストを抑えることが可能である。
【0032】
更に、図9のように、トーション梁12の1つの側面と、可動板上反射面が略同一面上にある場合に、可動板11における反射面41を有する面と、トーション梁12の間に溝部61を設けている。よって、トーション梁の捩れによって生じる応力が、直接反射面に伝わらないので、駆動時の面の歪みを抑制することができる。また、図6のようなSiOウェハから可動板部を形成する場合、図10のように、上側のSi層53は、溝部61を作るために、可動板平面部、トーション梁の上側を残すようにエッチングし、下側のSi層52は、可動板裏側を肉抜きするようにエッチングして、可動板部を形成する。
【0033】
また、SiO2層をSi層で挟んだSiOウェハを両面から、SiO2層までエッチング処理により不要部分を除去することで図11のように可動板11とトーション梁12の厚みを違えることができる構成を選択することができる。可動板11やトーション梁21などの可動板部の形状を形成する場合、図12のように、SiO2層まで、図中上側のSi層53は可動板11の平面部とトーション梁12を残して除去加工を行い、下側のSi層52はリブ部の形状だけを残すように除去加工を行う。よって、トーション梁のアスペクト比を小さくすることができるので、捩りに対する強度を上げることができる。トーション梁のアスペクト比を小さくする梁形状にしたい場合であっても、SiO2層をSi層で挟んだSiOウェハの標準的加工に、可動板部を形成できるので、製造コストを抑え、トーション梁構造の選択自由度を挙げることが可能である。
【0034】
ここで、上述したが、図1からわかるように可動板を回動可能に支持するトーション梁との接続部分で大きな歪みが発生する。また、実際に光束(の必要な部分)が反射する範囲で必要な平面性が得られれば、可動板の他の部分が大きく歪んでいたとしても、使用上の問題はない。そこで、トーション梁方向に、可動板を光束の大きさよりも広げる。図13に示すように、トーション梁12の接続部分と回動軸方向の光束の反射面領域71における端部との離間長A1、A2、回動軸と垂直な方向の光束と反射面領域71における端部との離間長B1、B2とすると、A1+A2>B1+B2となる。
【0035】
このような可動板形状で、光束が反射しない部分での歪みは大きいものの、トーション梁から離れた位置では、歪みが小さくなるので、その範囲で光束を反射させれば、光学的な性能劣化を防ぐことができる。また、回転軸とは垂直方向に可動板を広げないので、慣性モーメントの増大を最小限に抑えることができる。可動板とトーション梁の厚みを同じに、可動板部の厚みは一定となるので、加工が容易になる。また、図14に示すように、光束が回動軸とは垂直な方向に長い場合は、可動板を楕円や小判型にしなくとも、A1+A2>B1+B2の条件を満たし、歪みの大きい範囲で反射させずに済む。
【0036】
また、回動軸方向に可動板を長くするだけでは、歪み抑制が不十分であれば、上述した補強方法と組み合わせることで、歪み補正の効果を上げることができる。例えば、図2の第1の実施の形態と同様に可動板11を軸方向長くしてトーション梁12の接続部分付近をリブ13で補強したり、図3の第2の実施の形態と同様に外形形状に沿ってリブ21を形成する。また、図4の第3の実施の形態と同様に回動中心から遠い部分では外周に沿わない形状で閉じた形状でリブ31を形成するなどのリブによる補強との組み合わせで、より平面度を改善することも可能である。ただし、可動板がトーション梁の長手方向と垂直に長い形状の場合は、先端の撓みが問題になるので、根元部分の補強では、必要な平面度を得られない可能性が高い。
【0037】
更に、回動軸の軸方向に可動板の寸法が大きく、表側にリブを設けてもリブが光束を遮らなければ、本発明の第5の実施の形態に係る光走査装置における可動板部80においては、図15に示すように可動板11の反射面側にリブ81を設けるようにすることも可能である。このようにすれば、トーション梁からの伝わる力は、リブ側面を歪ませるように作用するので、トーション梁の捩りによって生じる反射面歪みに関しては、より一層の歪み抑制効果がある。同じ形状のリブならば、表面に付けても、裏面に付けても、可動板部の重量、慣性モーメントに違いはないが、反射面側にリブを設ける方が、反射面の歪みを抑制する効果が高い。
【0038】
また、回転軸方向に回転軸から近い部分も遠い部分同じように可動板を伸ばしていたが、図16におけるハッチング部分で示すように、伸ばした部分でも、歪みを吸収する作用していない部分は、無くしたとしても、実際の反射面の歪み抑制に影響がない。この場合は、図17のように、表面を歪ませる力作用する軸から近い範囲のみを伸ばす。この場合、可動板11とトーション梁12の接続部分と回動軸方向の光束の反射面領域の端部との離間長A1、A2、回動軸と垂直な方向の光束と反射面領域の端部との離間長B1、B2とすると、A1+A2>B1+B2となる条件を満たす。よって、本発明の第6の実施の形態に係る光走査装置における可動板部90においては、可動板における一部分のみの領域91を回動軸方向に伸ばして突き出る形状とすることで、反射面の平面度を落とことなく、図16におけるハッチング部分の肉厚を削った分で、可動板部を軽量化することができる。また、回動軸から離れた部分の肉厚を落とせるので、可動板部の慣性モーメントを下げられるので、小さなエネルギーでの駆動が可能になる。
【0039】
なお、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲内の記載であれば多種の変形や置換可能であることは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】光走査装置における可動板の歪み量の分布を示す図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態に係る光走査装置における可動板部の構成を示す図である。
【図3】本発明の第2の実施の形態に係る光走査装置における可動板部の構成を示す図である。
【図4】本発明の第3の実施の形態に係る光走査装置における可動板部の構成を示す図である。
【図5】本発明の第4の実施の形態に係る光走査装置における可動板部の構成を示す図である。
【図6】本発明の光走査装置における可動板部の別の構成を示す図である。
【図7】本発明の光走査装置における可動板部の別の構成を示す図である。
【図8】本発明の光走査装置における可動板部の別の構成を示す図である。
【図9】本発明の光走査装置における可動板部の別の構成を示す図である。
【図10】本発明の光走査装置における可動板部の別の構成を示す図である。
【図11】本発明の光走査装置における可動板部の別の構成を示す図である。
【図12】本発明の光走査装置における可動板部の別の構成を示す図である。
【図13】本発明の光走査装置における可動板部の別の構成を示す平面図である。
【図14】本発明の光走査装置における可動板部の別の構成を示す平面図である。
【図15】本発明の第5の実施の形態に係る光走査装置における可動板部の構成を示す斜視図である。
【図16】本発明の光走査装置における可動板部の構成を示す平面図である。
【図17】本発明の第6の実施の形態に係る光走査装置における可動板部の構成を示す平面図である。
【図18】従来の光走査装置における可動板部の構成を示す図である。
【図19】従来の光走査装置における稼動部の回動の様子を示す図である。
【図20】従来の光走査装置における可動板部の構成を示す図である。
【図21】従来の光走査装置における可動板部の別の構成を示す図である。
【符号の説明】
【0041】
10,20,30,40,60,70,80,90;可動板部、
11;可動板、12;トーション梁、13,21,31,81;リブ、
41;反射面、51;SiO2層、52,53;Si層、61;溝部、
71;反射面領域、91;領域。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
入射光を反射させる反射面を有する可動板と、該可動板を回動可能に軸支するトーション梁と、該トーション梁にねじり方向の駆動力を作用させる駆動部とを具備する光走査装置において、
少なくとも、前記可動板と前記トーション梁の接続部分付近にリブを形成することを特徴とする光走査装置。
【請求項2】
前記リブは、前記可動板の外形形状に沿って閉じた形状で形成することを特徴とする請求項1記載の光走査装置。
【請求項3】
前記リブは、前記可動板と前記トーション梁の接続部分付近で前記可動板の外形形状に沿って、かつ回動中心から離れた位置では外形形状に沿わずに、閉じた形状で形成することを特徴とする請求項1記載の光走査装置。
【請求項4】
前記可動板と前記トーション梁の接続部分付近における前記リブの厚みは厚く、前記可動板と前記トーション梁の接続部分付近から回動中心から離れた位置に向かって前記リブの厚みは連続的に徐々に薄くなるように形成することを特徴とする請求項2又は3に記載の光走査装置。
【請求項5】
前記可動板上の反射面と前記トーション梁の外面部を異なる面上に配置することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の光走査装置。
【請求項6】
前記可動板の外形形状の少なくとも一部に沿って形成されたリブを介して、前記可動板と前記トーション梁が接続することを特徴とする請求項5記載の光走査装置。
【請求項7】
前記リブを前記可動板の裏面に設け、前記リブの高さと前記トーション梁の厚みを等しくすることを特徴とする請求項5記載の光走査装置。
【請求項8】
前記リブを前記可動板の反射面側に設けることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の光走査装置。
【請求項9】
前記可動板の外形形状の少なくとも一部に沿って形成された前記リブを介して、前記可動板と前記トーション梁が接続され、前記リブによる前記可動板と前記トーション梁の接続部分に前記溝部を形成することを特徴とする請求項8記載の光走査装置。
【請求項10】
入射光を反射させる反射面を有する可動板と、該可動板を回動可能に軸支するトーション梁と、該トーション梁にねじり方向の駆動力を作用させる駆動部とを具備する光走査装置において、
回動軸方向での前記可動板の長さと入射光の幅の差は、回動軸と垂直な方向での前記可動板の長さと入射光の幅の差よりも大きいことを特徴とする光走査装置。
【請求項11】
前記可動板は、前記トーション梁との接続部分付近で一部が回動軸方向に突き出る形状であることを特徴とする請求項10記載の光走査装置。
【請求項1】
入射光を反射させる反射面を有する可動板と、該可動板を回動可能に軸支するトーション梁と、該トーション梁にねじり方向の駆動力を作用させる駆動部とを具備する光走査装置において、
少なくとも、前記可動板と前記トーション梁の接続部分付近にリブを形成することを特徴とする光走査装置。
【請求項2】
前記リブは、前記可動板の外形形状に沿って閉じた形状で形成することを特徴とする請求項1記載の光走査装置。
【請求項3】
前記リブは、前記可動板と前記トーション梁の接続部分付近で前記可動板の外形形状に沿って、かつ回動中心から離れた位置では外形形状に沿わずに、閉じた形状で形成することを特徴とする請求項1記載の光走査装置。
【請求項4】
前記可動板と前記トーション梁の接続部分付近における前記リブの厚みは厚く、前記可動板と前記トーション梁の接続部分付近から回動中心から離れた位置に向かって前記リブの厚みは連続的に徐々に薄くなるように形成することを特徴とする請求項2又は3に記載の光走査装置。
【請求項5】
前記可動板上の反射面と前記トーション梁の外面部を異なる面上に配置することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の光走査装置。
【請求項6】
前記可動板の外形形状の少なくとも一部に沿って形成されたリブを介して、前記可動板と前記トーション梁が接続することを特徴とする請求項5記載の光走査装置。
【請求項7】
前記リブを前記可動板の裏面に設け、前記リブの高さと前記トーション梁の厚みを等しくすることを特徴とする請求項5記載の光走査装置。
【請求項8】
前記リブを前記可動板の反射面側に設けることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の光走査装置。
【請求項9】
前記可動板の外形形状の少なくとも一部に沿って形成された前記リブを介して、前記可動板と前記トーション梁が接続され、前記リブによる前記可動板と前記トーション梁の接続部分に前記溝部を形成することを特徴とする請求項8記載の光走査装置。
【請求項10】
入射光を反射させる反射面を有する可動板と、該可動板を回動可能に軸支するトーション梁と、該トーション梁にねじり方向の駆動力を作用させる駆動部とを具備する光走査装置において、
回動軸方向での前記可動板の長さと入射光の幅の差は、回動軸と垂直な方向での前記可動板の長さと入射光の幅の差よりも大きいことを特徴とする光走査装置。
【請求項11】
前記可動板は、前記トーション梁との接続部分付近で一部が回動軸方向に突き出る形状であることを特徴とする請求項10記載の光走査装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【公開番号】特開2010−128116(P2010−128116A)
【公開日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−301826(P2008−301826)
【出願日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】
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