説明

光起電力装置及びその製造方法

【課題】劣化率を低下させ、安定化効率を高めた光起電力装置を提供する。
【解決手段】基板100の上部に配置された第1電極210と、第1電極210の上部に受光層233を含む少なくとも一つ以上の光電変換層230と、光電変換層230の上部に配置された第2電極250とを含み、受光層233は、水素化されたマイクロ結晶質シリコンゲルマニウムと前記水素化されたマイクロ結晶質シリコンゲルマニウム間に形成された非晶質シリコンゲルマニウムネットワークとを含む第1副層233aと、水素化されたマイクロ結晶質シリコンと前記水素化されたマイクロ結晶質シリコン間に形成された非晶質シリコンネットワークとを含む第2副層233bとを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光起電力装置及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
最近、石油や石炭のような既存のエネルギー資源の枯渇が予測され、これらを代替する代替エネルギー源に関する関心が高まっている。その中でも太陽光エネルギーは、エネルギー資源が豊富であり、環境汚染に対する問題点がないため、特に注目されている。
【0003】
太陽光エネルギーを電気エネルギーに直接変換させる装置が、光起電力装置、即ち、太陽電池である。光起電力装置は、主に半導体接合の光起電力現象を用いる。即ち、p型とn型の不純物で各々ドーピングされた半導体pin接合に光が入射され吸収されると、光のエネルギーが半導体内部で電子とホールとを発生させ、内部電界によって、これらが分離されることでpin接合両端に光起電力が発生される。このとき、接合両端に電極を形成し導線を接続すると、電極及び導線を通して外部に電流が流れるようになる。
【0004】
石油のような既存のエネルギー源を太陽光エネルギー源に代替していくためには、時間が経つに従って現れる光起電力装置の劣化率は低く、安定化効率は高くなければならない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の光起電力装置の製造方法は、光起電力装置の劣化率を低下させ、安定化効率を高めるためのものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一実施形態による光起電力装置は、基板と、前記基板の上部に配置された第1電極と、前記第1電極の上部に受光層を含む少なくとも一つ以上の光電変換層と、前記光電変換層の上部に配置された第2電極と、を含み、前記受光層は、水素化されたマイクロ結晶質シリコンゲルマニウム(hydrogenated micro-crystalline silicon)(μc-SiGe:H)と前記水素化されたマイクロ結晶質シリコンゲルマニウム間に形成された非晶質シリコンゲルマニウムネットワーク(a-SiGe:H)とを含む第1副層と、水素化されたマイクロ結晶質シリコン(hydrogenated micro-crystalline silicon)(μc-Si:H)と前記水素化されたマイクロ結晶質シリコン間に形成された非晶質シリコンネットワーク(a-Si:H)とを含む第2副層と、を含む。
【0007】
本発明の一実施形態による光起電力装置の製造方法は、基板上に第1電極を形成するステップと、チャンバ内で前記第1電極上に、受光層を含む一つ以上の光電変換層を形成するステップと、前記光電変換層上に第2電極を形成するステップとを含み、前記受光層が形成される間、前記チャンバに供給されるシランの流量は一定であり、非シリコン系元素を含む原料ガスの流量は、蒸着時間によって第1流量値と第2流量値との間の変化を繰り返し、前記チャンバに流入される第1時点での水素の流量は、前記第1時点以後の第2時点での水素の流量より大きくする。
【発明の効果】
【0008】
本発明の光起電力装置の製造方法は、光起電力装置の劣化率を低下させ、安定化効率を高め、受光層の特性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の第1実施形態による光起電力装置を示した図である。
【図2】本発明の第2実施形態による他の光起電力装置を示した図である。
【図3a】本発明の実施形態による光起電力装置の製造方法を示す。
【図3b】本発明の実施形態による光起電力装置の製造方法を示す。
【図3c】本発明の実施形態による光起電力装置の製造方法を示す。
【図3d】本発明の実施形態による光起電力装置の製造方法を示す。
【図3e】本発明の実施形態による光起電力装置の製造方法を示す。
【図3f】本発明の実施形態による光起電力装置の製造方法を示す。
【図3g】本発明の実施形態による光起電力装置の製造方法を示す。
【図3h】本発明の実施形態による光起電力装置の製造方法を示す。
【図4】本発明の実施形態によって受光層を形成するためのプラズマ化学気相蒸着装置を示す。
【図5a】本発明の実施形態によって受光層を形成するための原料ガスの流量変化を示す。
【図5b】本発明の実施形態によって受光層を形成するための原料ガスの流量変化を示す。
【図5c】本発明の実施形態によって受光層を形成するための原料ガスの流量変化を示す。
【図5d】本発明の実施形態によって受光層を形成するための原料ガスの流量変化を示す。
【図5e】本発明の実施形態によって受光層を形成するための原料ガスの流量変化を示す。
【図5f】本発明の実施形態によって受光層を形成するための原料ガスの流量変化を示す。
【図6】本発明の実施形態に含まれた複数の副層を含む受光層を示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1は、本発明の第1実施形態による光起電力装置を示した図である。
【0011】
図示されるように、光起電力装置は、基板100と、第1及び第2電極210、250と、光電変換層230と、保護層300とを含む。
【0012】
具体的に、基板100上に第1電極210が配置される。第1電極210は、隣接した第1電極間に電気的に短絡されないように、一定間隔で離隔される。光電変換層230は、第1電極間の一定間隔で離隔された領域を覆うように、第1電極210の上部に配置される。第2電極250は、光電変換層230の上部に配置され、第2電極250は、隣接した第2電極間に電気的に短絡されないように、一定間隔で離隔される。このとき、第2電極250は、第1電極210と直列接続されるように、光電変換層230を貫通して電気的に接続される。保護層300は、第2電極間に離隔された領域と光電変換層間に離隔された領域とを覆うように、第2電極の上部に配置される。
【0013】
光電変換層230は、pタイプ半導体層231と、受光層233と、nタイプ半導体層235とを含む。受光層233は、第1副層233aと、第1副層233a上に積層された第2副層233bとを含む。第1副層233aは、水素化されたマイクロ結晶質シリコンゲルマニウム(hydrogenated micro-crystalline silicon)(μc-SiGe:H)と、前記水素化されたマイクロ結晶質シリコンゲルマニウム間に形成された非晶質シリコンゲルマニウムネットワーク(a-SiGe:H)とを含み、第2副層233bは、水素化されたマイクロ結晶質シリコン(hydrogenated micro-crystalline silicon)(μc-Si:H)と、前記水素化されたマイクロ結晶質シリコン間に形成された非晶質シリコンネットワーク(a-Si:H)と、を含む。第1副層に含まれた非晶質シリコンゲルマニウムネットワークと第2副層に含まれた非晶質シリコンネットワークとは、各々、結晶シリコン粒子を含む。
【0014】
図2は、本発明の第2実施形態による他の光起電力装置を示した図である。
【0015】
図2の光起電力装置に対し、図1に示した光起電力装置とほぼ類似しているため、同一の構造に対しては省略することにする。図2で、光電変換層230は、第1光電変換層230−1と、第1光電変換層の上部に配置された第2光電変換層230−2とを含み、第1光電変換層と第2光電変換層とは、pタイプ半導体層231−1、231−2と、受光層233−1、233−2と、nタイプ半導体層235−1、235−2とを含む。
【0016】
受光層233−1、233−2は、第1副層233−1a、233−2aと、第1副層の上部に積層された第2副層233−1b、233−2bとからなる。このとき、第1光電変換層230−1に含まれた受光層233−1は、水素化された非晶質シリコン系を含む第1副層233−1aと、前記水素化された非晶質シリコン系及び前記水素化された非晶質シリコン系で取り囲まれた結晶質シリコン粒子を含む第2副層233−1bとを含む。第2光電変換層230−2に含まれた受光層233−2は、水素化されたマイクロ結晶質シリコンゲルマニウム(hydrogenated micro-crystalline silicon)(μc-SiGe:H)と、前記水素化されたマイクロ結晶質シリコンゲルマニウム間に形成された非晶質シリコンゲルマニウムネットワーク(a-SiGe:H)とを含む第1副層233−2aと、水素化されたマイクロ結晶質シリコン(hydrogenated micro-crystalline silicon)(μc-Si:H)と、前記水素化されたマイクロ結晶質シリコン間に形成された非晶質シリコンネットワーク(a-Si:H)とを含む第2副層(233−2b)と、を含む。このとき、第1副層に含まれた非晶質シリコンゲルマニウムネットワークと第2副層に含まれた非晶質シリコンネットワークとは、各々、結晶シリコン粒子を含む。
【0017】
本実施形態では、光電変換層を2つに限定したが、3つ以上を含むことができ、3つの光電変換層のうち、光が入射される側面から遠く離れた2番目、あるいは3番目の光電変換層は、前述した第2光電変換層と同様である。
【0018】
このような第1及び第2実施形態による光起電力装置については、以下の説明する光起電力装置の製造方法でさらに詳しく説明することにする。
【0019】
図3a〜図3hは、本発明の実施形態による光起電力装置の製造方法を示す。
【0020】
図3aに示されるように、先ず基板100が用意される。基板100は、絶縁性透明基板100であることができる。
【0021】
図3bに示されるように、基板100上に第1電極210が形成される。本発明の実施形態で、第1電極210は、CVD(Chemical Vapor Deposition)法で形成されることができ、酸化錫(SnO)や酸化亜鉛(ZnO)のような透明伝導性酸化物(TCO:Transparent Conductive Oxide)からなることができる。
【0022】
図3cに示されるように、レーザーが第1電極210側や基板100側に照射され第1電極210がスクライブ(scribe)される。これによって、第1電極210に第1分離溝220が形成される。即ち、第1分離溝220は、第1電極210を貫通するため、隣接した第1電極210間の短絡が防止される。
【0023】
図3dに示されるように、第1電極210と第1分離溝220とを覆うように、受光層を含む一つ以上の光電変換層230がCVD法で積層される。このとき、各光電変換層230は、pタイプ半導体層と、受光層と、nタイプ半導体層とを含む。pタイプ半導体層の形成のために、モノシラン(SiH)のようにシリコンを含む原料ガスと、Bのように3族元素を含む原料ガスとが反応室に混入されると、CVD法によってpタイプ半導体層が積層される。その後、シリコンを含む原料ガスが反応室に流入されると、CVD法によって受光層がpタイプ半導体層上に形成される。受光層の形成方法については、以後に詳しく説明される。最後にPHのように5族元素を含む反応ガスと、シリコンを含む原料ガスとが混入されると、 CVD法によってnタイプ半導体層が真性半導体層上に積層される。これによって、第1電極210上にpタイプ半導体層と、受光層と、nタイプ半導体層とが順次に積層される。
【0024】
本発明の実施形態による受光層は、一つの光電変換層230を含む単一接合の光起電力装置に含まれるか、または複数の光電変換層を含む多重接合の光起電力装置に含まれることができる。
【0025】
図3eに示されるように、大気中でレーザーが基板100側や光電変換層230側に照射され光電変換層230がスクライブされる。これによって、光電変換層230に第2分離溝240が形成される。
【0026】
図3fに示されるように、CVDやスパッタリング方法で光電変換層230及び第2分離溝240を覆う第2電極250が形成される。第2電極250は、AlやAgのような金属電極であることができる。
【0027】
図3gに示されるように、大気中でレーザーが照射され光電変換層230及び第2電極250がスクライブされる。これによって、光電変換層230及び第2電極250に対して第3分離溝270が形成される。
【0028】
図3hに示されるように、光電変換層230と、第1電極210と、第2電極250とを含む光起電力セル200を保護するために、保護層300がラミネーション工法によって光起電力セル200の一部、または全部を覆う。保護層300は、EVA(Ethylene Vinyl Acetate)を含むことができる。
【0029】
このような工程を通して保護層300が形成された光起電力セル200が用意され、保護層上にはバックシート(図示しない)が形成されることができる。
【0030】
次に、図面を参照して受光層の製造方法が詳しく説明される。
【0031】
図4は、本発明の実施形態によって、受光層を形成するためのプラズマ化学気相蒸着装置を示す。図4に示されるように、第1電極210とpタイプ半導体層231またはnタイプ半導体層235とが形成された基板100が、電極の役割をするプレート300上に位置する。また、受光層の形成工程の以前にチャンバ310の内部の不純物を除去するために、真空ポンプ320が動作し、これによって、アングルバルブ330を通してチャンバ310の内部の不純物が除去され、チャンバ310の内部は実質的に真空状態になる。
【0032】
チャンバ310の内部が実質的に真空状態になると、水素(H)及びシランのような原料ガスと、ゲルマニウムのような非シリコン系元素を含む原料ガスとが、流量調節機MFC1、MFC2、MFC3、及びノズルが形成された電極340を通してチャンバ310内に流入される。
【0033】
即ち、第1流量調節機MFC1を通して水素が流入され、第2流量調節機MFC2を通してシランが流入されることができる。また、第3流量調節機MFC3を通してゲルマニウムのような非シリコン系元素を含む原料ガスが流入されることができる。
【0034】
このとき、アングルバルブ330は、チャンバ310の圧力が一定に維持されるように制御される。チャンバ310の圧力が一定に維持される場合、チャンバ310内の渦流発生によるシリコンパウダーの生成が防止され、蒸着条件が一定に維持される。水素は、シランの希釈のために流入され、ステーブラーロンスキー効果(Staebler-Wronski effect)を減少させる。
【0035】
原料ガスが流入され電源Eが電圧を供給すると、電極340とプレート300との間に電位差が発生するため、原料ガスはプラズマ状態になって受光層がpタイプ半導体層231またはnタイプ半導体層235上に蒸着される。
【0036】
図5a〜図5fは、本発明の実施形態によって受光層を形成するための原料ガスの流量変化を示す。
【0037】
図5a〜図5cに示されるように、ゲルマニウムのような非シリコン系元素を含む原料ガスの流量は、蒸着時間Tによって第1流量値αと第2流量値βとの間の変化を繰り返す。このとき、第1流量値αと第2流量値βとは一定であり、第1流量値αは第2流量値βより大きく、第2流量値βは0である。
【0038】
このとき、第1時点での水素の流量は、第1時点以後の第2時点での水素の流量より大きい。このような水素流量Aの減少パターンは、多様になることができる。例えば、図5aに示されるように、受光層の蒸着が開始される時点から第1流量値αと第2流量値βとの変化の一つ以上の周期Pの間に供給される水素の流量A1は、一つ以上の周期Pの以後に供給される水素の流量A2より大きい。図5bに示されるように、受光層の蒸着が開始される時点から第1流量値αと第2流量値βとの変化の周期Pごとに水素の流量A1、A2、A3、…が減少することができる。また図5cに示されるように、水素の流量は、蒸着時間Tによって漸進的に減少することができる。
【0039】
このような水素流量の変化については、以後に詳しく説明される。
【0040】
図5a〜図5cでは、水素流量が変化し、非シリコン系元素を含む原料ガスの第1流量値α及び第2流量値βは一定である。一方に、図5d〜図5fに示されるように、水素流量は、図5a〜図5cのように減少するが、非シリコン系元素を含む原料ガスの第1流量値αが増加するか、または第1流量値αが維持される時間t1が増加することができる。
【0041】
即ち、図5d〜図5fに図示される非シリコン系元素を含む原料ガスの供給パターンは、図5a〜図5cに図示される水素流量変化のパターンのうちの一つに適用されることができる。例えば、図5aに示されるように、水素流量が変化し、図5d〜図5fに図示される非シリコン系元素を含む原料ガスの供給パターンのうちの一つによって非シリコン系元素を含む原料ガスが供給されることができる。
【0042】
図5dに示されるように、非シリコン系元素を含む原料ガスの流量は、蒸着時間Tによって第1流量値αと第2流量値(β=0)との間の変化を繰り返し、第1流量値αは、蒸着時間Tの変化に従って増加する。
【0043】
このとき、第1流量値αと第2流量値βとの変化の一周期Pの間に第1流量値αが維持される時間t1と第2流量値βが維持される時間t2は、蒸着時間Tの変化に従って一定である。
【0044】
図5eに示されるように、非シリコン系元素を含む原料ガスの流量は、蒸着時間Tによって第1流量値αと第2流量値(β=0)との間の変化を繰り返し、第1流量値αと第2流量値βとの変化の一周期Pの間に第1流量値αが維持される時間t1は、蒸着時間Tの変化に従って増加する。
【0045】
このとき、第1流量値αと第2流量値βとは、蒸着時間Tの変化に従って一定であり、第1流量値αと第2流量値βとの変化の一周期Pの間に第1流量値αが維持される時間t1と第2流量値βが維持される時間t2との比は、蒸着時間Tの変化に従って一定である。
【0046】
図5fに示されるように、非シリコン系元素を含む原料ガスの流量は、蒸着時間Tによって第1流量値αと第2流量値βとの間の変化を繰り返す。このとき、第1流量値αと第2流量値βとの変化の一周期Pの間に第1流量値αが維持される時間t1は、蒸着時間Tの変化に従って増加し、第1流量値αは、蒸着時間Tの変化に従って増加する。
【0047】
第1流量値αと第2流量値βとの変化の一周期Pの間に第1流量値αが維持される時間t1と第2流量値βが維持される時間t2との比は、蒸着時間Tの変化に従って一定である。
【0048】
ゲルマニウムのような非シリコン系元素を含む原料ガスの流量が、第1流量値αと第2流量値(β=0)とを繰り返す場合、図6のように、複数の副層(sub-layers)233a、233bを含む受光層233が、pタイプ半導体層231またはnタイプ半導体層235上に形成される。即ち、非シリコン系元素を含む原料ガスの流量が増加するほど、結晶性及び蒸着速度が減少する一方、非シリコン系元素を含む原料ガスの流量が減少するほど、結晶性及び蒸着速度は増加する。
【0049】
従って、第2流量値で供給される期間の間に非シリコン系元素を含む原料ガスが供給されないため、第2副層233bは、水素化されたマイクロ結晶質シリコン(hydrogenated micro-crystalline silicon)(μc-Si:H)からなる。このとき、第2副層233bのマイクロ結晶質シリコンの間には、結晶シリコン粒子(crystalline silicon grain)が入り込んでいる非晶質シリコンネットワーク(a-Si:H)が形成される。
【0050】
また、第1副層233aは、非シリコン系元素を含む原料ガスが供給されるため、水素化されたマイクロ結晶質シリコンゲルマニウム(hydrogenated micro-crystalline silicon)(μc-SiGe:H)からなることができる。第1副層233aのマイクロ結晶質シリコンゲルマニウムの間には、結晶シリコン粒子(crystalline silicon grain)が入り込んでいる非晶質シリコンゲルマニウムネットワーク(a-SiGe:H)が形成される。
【0051】
ここで、水素希釈比が基準値以上になると、水素化された非晶質シリコン相ではない、マイクロ結晶質シリコンゲルマニウムやマイクロ結晶質シリコンのようなマイクロ結晶質シリコン相が形成されることができる。このような第1副層233a及び第2副層233bは、光学的バンドギャップが小さいため、長波長領域の光を容易に吸収することができる。
【0052】
これによって、水素化されたマイクロ結晶質シリコンからなる第2副層233bと、水素化されたマイクロ結晶質シリコンゲルマニウムからなる第1副層233aとは、二重または三重接合の光起電力装置のボトムセルの受光層に含まれることができる。
【0053】
このように、複数の副層233a、233bを含む受光層233が形成される場合、初期効率及び安定化効率の差である劣化率が減少するため、本発明の実施形態による光起電力装置は、高い安定化効率を有することができる。
【0054】
即ち、水素化されたマイクロ結晶質シリコンゲルマニウム(μc-SiGe:H)のみからなる受光層よりは、本発明の実施形態のように第1副層233a及び第2副層233bが交互に形成され、第1副層233a及び第2副層233bに各々非晶質シリコンゲルマニウムネットワーク(a-SiGe:H)及び非晶質シリコンネットワーク(a-Si:H)が水素希釈によってSRO(Short-Range-Order)及びMRO(Medium-Range-Order)が向上するため、受光層233の初期劣化が早くなり、安定化効率に到達するための時間が短くなる。従って、安定化効率が高くなる。即ち、受光層233がマイクロ結晶シリコンゲルマニウムの単一膜からなる場合に比べ、第2副層233bの水素化されたマイクロ結晶質シリコンが第1副層233aの水素化されたマイクロ結晶質シリコンゲルマニウム間を満たしているため、蒸着速度が早く、ゲルマニウムによる受光層233の欠陥密度の増加を抑制することができる。
【0055】
前述したように、第2副層233bは、水素化されたマイクロ結晶質シリコンからなり、第1副層233aは、水素化されたマイクロ結晶質シリコンゲルマニウムからなる。このとき、本発明の実施形態のように、水素流量が図5a〜図5cのように蒸着時間によって変化することは、水素化されたマイクロ結晶質シリコンの以前に形成されるインキュベーション膜(incubation layer)を最大限に薄くするためである。
【0056】
即ち、水素化されたマイクロ結晶質シリコンが形成される過程から非晶質シリコンからなるインキュベーション膜が形成される。非晶質シリコンは、キャリアの再結合が増加して効率を減少させるため、インキュベーション膜は、可能な限り薄くなければならない。水素の流量が増加すると結晶性が増加するため、本発明の実施形態では第1時点での水素の流量が第1時点以後の第2時点での水素の流量より大きい。これによって、インキュベーション膜の厚さが減少するため、光起電力装置の効率が増加することができる。
【0057】
また、図5e〜図5fに示されるように、蒸着時間Tによってゲルマニウムのような非シリコン系元素を含む原料ガスの第1流量値αや、第1流量値αが維持される時間t1が増加する。このような第1流量値α及び第2流量値βによって形成される受光層233の第1副層233a及び第2副層233bは、光が入射される側から遠くなるように形成される。これによって、光が入射される側から遠くなるほど、第1副層233a及び第2副層233bの光学的バンドギャップが次第に減少する。
【0058】
エネルギー密度の高い特定波長領域の光は、透過深さ(penetration depth)が小さく、エネルギー密度の高い特定波長領域の光を吸収するためには、光学的バンドギャップが大きくなければならない。
【0059】
従って、ゲルマニウムのような非シリコン系元素を含む原料ガスの流量が小さいほど、光学的バンドギャップが大きくなるため、図5d〜図5fのように、供給される原料ガスによって光が入射される側に近い副層233a、233bが、相対的に大きい光学的バンドギャップを有するようになる。これによって、光が入射される側に近い副層233a、233bが特定波長領域の光を最大限に多く吸収する。
【0060】
また、ゲルマニウムのような非シリコン系元素を含む原料ガスの流量が大きいほど、光が入射される側から遠い副層233a、233bが相対的に小さい光学的バンドギャップを有するようになる。これによって、光が入射される側から遠い副層233a、233bが前記特定波長以外の領域の光を最大限に多く吸収する。
【0061】
本発明の実施形態で使用されるプラズマ化学気相蒸着方法で、電源Eが供給する電圧の周波数は13.56MHzとすることができる。電源Eが供給する電圧の周波数が27.12MHz以上である場合、蒸着率が向上する。これによって、非晶質シリコンからなるインキュベーション膜の厚さがさらに薄くなることができる。
【0062】
長波長領域の光を吸収するために、水素化されたマイクロ結晶質シリコンゲルマニウムと水素化されたマイクロ結晶質シリコンとからなる受光層233の光学的バンドギャップは、0.9eV以上1.3eV以下であることができ、ゲルマニウムの平均含量は、0atomic%より大きく、15atomic%以下とすることができる。
【0063】
水素化されたマイクロ結晶質シリコンゲルマニウムと水素化されたマイクロ結晶質シリコンとからなる受光層233の厚さは、0.5μm以上1.0μm以下とすることができる。受光層233の厚さが0.5μmより小さいと受光層233の機能を果たせず、1.0μmより大きいと受光層233の厚さが非常に厚くなるため、効率が低下する。
【0064】
即ち、本発明の実施形態による受光層233の光学的バンドギャップが0.9eV以上1.3eV以下で小さいため、受光層233は、0.5μm以上1.0μm以下の薄い厚さを有していても長波長領域の光を容易に吸収することができる。
【0065】
また、0.9eV以上1.3eV以下の光学的バンドギャップが形成されるためには、ゲルマニウムのような非シリコン系元素の含量が増加しなければならない。ゲルマニウムの場合、含量が増加すると蒸着率が低下し、タクトタイム(tact time)が顕著に増加する。本発明の実施形態の場合、ゲルマニウムが供給されない状態で第2副層233bが繰り返して形成されるため、ゲルマニウムの平均含量が0atomic%より大きく15atomic%以下で小さいとしても、0.9eV以上1.3eV以下の光学的バンドギャップが形成されることができる。
【0066】
水素化されたマイクロ結晶質シリコンからなる第2副層233bの厚さは、20nmであることができる。第2副層233bの厚さが20nmより小さいと、水素化されたマイクロ結晶質シリコンの形成が困難になり、第1副層233a及び第2副層233bを含む受光層233の効果を得ることができない。
【0067】
前述したように、受光層233の厚さは、0.5μm以上1.0μm以下であることができる。また、第1副層233a及び第2副層233bを含む受光層233が、その役割を果たすためには、5周期P以上10周期以下であることができる。従って、一周期Pの間にゲルマニウムが第1流量値αと第2流量値(β=0)とで供給されるとき、第1副層233a及び第2副層233bの厚さの和が50nm以上100nm以下であることができる。
【0068】
水素化されたマイクロ結晶質シリコンゲルマニウムと水素化されたマイクロ結晶質シリコンとからなる受光層233の平均結晶体積分率は、30%以上60%以下であることができる。平均結晶体積分率が30%より小さい場合、非晶質シリコンが多く生成されてキャリアの再結合増加による効率低下が発生することがある。また、平均結晶体積分率が60%より大きい場合、結晶質物質の結晶粒界の体積が大きくなり結晶欠陥(defect)が多くなるため、再結合が増加することがある。
【0069】
水素化されたマイクロ結晶質シリコンゲルマニウムと水素化されたマイクロ結晶質シリコンとからなる受光層233の平均酸素含量は、1.0×1020atoms/cm以下とすることができる。受光層233の平均酸素含量が1.0×1020atoms/cmより大きいと、光電変換効率が低下する。
【0070】
本発明の実施形態では、第1副層233aが先に形成されたが、第2副層233bが第1副層233aより先に形成されることもできる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板(100)と、
前記基板(100)の上部に配置された第1電極(210)と、
前記第1電極(210)の上部に受光層(233)を含む少なくとも一つ以上の光電変換層(230)と、
前記光電変換層(230)の上部に配置された第2電極(250)と、を含み、
前記受光層(233)は、水素化されたマイクロ結晶質シリコンゲルマニウム(hydrogenated micro-crystalline silicon)(μc-SiGe:H)と前記水素化されたマイクロ結晶質シリコンゲルマニウム間に形成された非晶質シリコンゲルマニウムネットワーク(a-SiGe:H)とを含む第1副層(233a)と、水素化されたマイクロ結晶質シリコン(hydrogenated micro-crystalline silicon)(μc-Si:H)と前記水素化されたマイクロ結晶質シリコン間に形成された非晶質シリコンネットワーク(a-Si:H)とを含む第2副層233bと、
を含む、光起電力装置。
【請求項2】
前記受光層の平均ゲルマニウム含量は、0atomic%より大きく15atomic%以下であることを特徴とする、請求項1に記載の光起電力装置。
【請求項3】
前記受光層の厚さは、0.5μm以上1.0μm以下であることを特徴とする、請求項1に記載の光起電力装置。
【請求項4】
前記受光層の平均結晶体積分率は、30%以上60%以下であることを特徴とする、請求項1に記載の光起電力装置。
【請求項5】
前記受光層の平均酸素含量は、1.0×1020atoms/cm以下であることを特徴とする、請求項1に記載の光起電力装置。
【請求項6】
前記光電変換層(230)は、第1光電変換層(230−1)と、前記第1光電変換層の上部に配置された第2光電変換層(230−2)とを含み、
前記第2光電変換層に含まれた受光層は、水素化されたマイクロ結晶質シリコンゲルマニウム(hydrogenated micro-crystalline silicon)(μc-SiGe:H)と前記水素化されたマイクロ結晶質シリコンゲルマニウム間に形成された非晶質シリコンゲルマニウムネットワーク(a-SiGe:H)とを含む第1副層(233−2a)と、水素化されたマイクロ結晶質シリコン(hydrogenated micro-crystalline silicon)(μc-Si:H)と前記水素化されたマイクロ結晶質シリコン間に形成された非晶質シリコンネットワーク(a-Si:H)とを含む第2副層(233−2b)と、
を含む、請求項1に記載の光起電力装置。
【請求項7】
前記第2光電変換層は、光が入射される側から前記第1光電変換層よりさらに遠く離れていることを特徴とする、請求項6に記載の光起電力装置。
【請求項8】
前記非晶質シリコンゲルマニウムネットワークと前記非晶質シリコンネットワークとは、各々結晶シリコン粒子を含むことを特徴とする、請求項1又は6に記載の光起電力装置。
【請求項9】
基板(100)上に第1電極(210)を形成するステップと、
チャンバ(310)内で前記第1電極(210)上に、受光層(233)を含む一つ以上の光電変換層(230)を形成するステップと、
前記光電変換層(230)上に第2電極(250)を形成するステップと、を含み、
前記受光層(233)が形成される間に、前記チャンバ(310)に供給されるシランの流量は一定であり、
非シリコン系元素を含む原料ガスの流量は、蒸着時間によって第1流量値と第2流量値との間の変化を繰り返し、
前記チャンバ(310)に流入される第1時点での水素の流量は、前記第1時点以後の第2時点での水素の流量より大きいことを特徴とする、光起電力装置の製造方法。
【請求項10】
前記第1流量値は、蒸着時間によって増加し、
前記第1流量値及び前記第2流量値によって形成される前記受光層の第1副層及び第2副層は、光が入射される側から遠くなるように形成されることを特徴とする、請求項9に記載の光起電力装置の製造方法。
【請求項11】
前記第1流量値の維持される時間は、蒸着時間によって増加し、
前記第1流量値及び前記第2流量値によって形成される前記受光層の第1副層及び第2副層は、光が入射される側から遠くなるように形成されることを特徴とする、請求項9に記載の光起電力装置の製造方法。
【請求項12】
前記第2流量値は、0であることを特徴とする、請求項9から11のいずれか1項に記載の光起電力装置の製造方法。
【請求項13】
前記非シリコン系元素は、ゲルマニウムであることを特徴とする、請求項9に記載の光起電力装置の製造方法。
【請求項14】
前記第1流量値と前記第2流量値との変化の一つ以上の周期の間に供給される前記水素の流量は、前記一つ以上の周期の以後に供給される前記水素の流量より大きいことを特徴とする、請求項9から11のいずれか1項に記載の光起電力装置の製造方法。
【請求項15】
前記第1流量値と前記第2流量値との変化の周期ごとに、前記水素の流量が減少することを特徴とする、請求項9から11のいずれか1項に記載の光起電力装置の製造方法。
【請求項16】
前記水素の流量は、蒸着時間によって漸進的に減少することを特徴とする、請求項9から11のいずれか1項に記載の光起電力装置の製造方法。
【請求項17】
前記受光層は、複数の第1副層及び第2副層を含み、
前記複数の第1副層及び第2副層は、光が入射される側に近いほど大きい光学的バンドギャップを有することを特徴とする、請求項9から11のいずれか1項に記載の光起電力装置の製造方法。
【請求項18】
前記非シリコン系元素を含む原料ガスがゲルマニウムを含む場合、前記受光層の平均ゲルマニウム含量は、0atomic%より大きく15atomic%以下であることを特徴とする、請求項9に記載の光起電力装置の製造方法。
【請求項19】
前記受光層の光学的バンドギャップが、0.9eV以上1.3eV以下であることを特徴とする、請求項9から11のいずれか1項に記載の光起電力装置の製造方法。
【請求項20】
前記受光層の形成時に、前記チャンバに供給される電圧の周波数は、27.12MHz以上であることを特徴とする、請求項9から11のいずれか1項に記載の光起電力装置の製造方法。
【請求項21】
前記非シリコン系元素を含む原料ガスがゲルマニウムを含み、
前記受光層は、前記第1流量値で前記原料ガスが供給される間に形成される第1副層と、前記第2流量値で前記原料ガスが供給される間に形成される第2副層とを含み、
前記第2副層は、水素化されたマイクロ結晶質シリコンからなり、
前記第1副層は、水素化されたマイクロ結晶質シリコンゲルマニウムからなることを特徴とする、請求項9に記載の光起電力装置の製造方法。
【請求項22】
前記受光層の厚さは、0.5μm以上1.0μm以下であることを特徴とする、請求項9から11のいずれか1項に記載の光起電力装置の製造方法。
【請求項23】
前記受光層は、前記第1流量値で前記原料ガスが供給される間に形成される第1副層と、前記第2流量値で前記原料ガスが供給される間に形成される第2副層とを含み、
前記第2副層の厚さは、20nm以上であることを特徴とする、請求項9から11のいずれか1項に記載の光起電力装置の製造方法。
【請求項24】
前記受光層は、前記第1流量値で前記原料ガスが供給される間に形成される第1副層と、前記第2流量値で前記原料ガスが供給される間に形成される第2副層とを含み、
一周期の間に形成される前記第1副層及び前記第2副層の厚さの和は、50nm以上100nm以下であることを特徴とする、請求項9から11のいずれか1項に記載の光起電力装置の製造方法。
【請求項25】
前記非シリコン系元素を含む原料ガスがゲルマニウムを含み、
前記第1流量値は前記第2流量値より大きく、前記第2流量値は0であり、
前記受光層の平均結晶体積分率は、30%以上60%以下であることを特徴とする、請求項9に記載の光起電力装置の製造方法。
【請求項26】
前記受光層の平均酸素含量は、1.0×1020atoms/cm以下であることを特徴とする、請求項9から11のいずれか1項に記載の光起電力装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3a】
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【図3b】
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【図3c】
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【図3d】
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【図3e】
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【図3f】
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【図3g】
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【図3h】
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【図4】
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【図5a】
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【図5b】
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【図5c】
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【図5d】
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【図5e】
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【図5f】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−18884(P2011−18884A)
【公開日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−99650(P2010−99650)
【出願日】平成22年4月23日(2010.4.23)
【出願人】(510114789)韓国鉄鋼株式会社 (6)
【Fターム(参考)】