説明

光送信モジュール、光送受信モジュール及び双方向通信用光モジュール

【課題】光送信部から発生する迷光を低減すること。
【解決手段】送信用光導波路12が接続された光送信部14を基板の第1主面に備えた光送信モジュールにおいて、光送信部が、第1主面に対して平行な送信光を発光する発光素子16と、発光素子を内部に包含していて送信光の迷光を遮蔽する筐体22、及び、筐体の内部に設けられ送信光を第1主面に向かう方向へと変換する反射部を有する迷光遮蔽ケース18と、送信光を送信用光導波路に結合する入力用ポート20とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、光を送信する光送信モジュール、この光送信モジュールを用いた光送受信モジュール、及びこの光送受信モジュールを用いた双方向通信用光モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
光通信分野において、1本の光ファイバで双方向通信を行うモジュール(以下、「双方向通信用光モジュール」と称する。)が一般的に用いられる。
【0003】
双方向通信用光モジュールの典型例は、例えば以下の通りである(特許文献1参照。)すなわち、特許文献1に記載された双方向通信用光モジュールは、レーザダイオード(以下、単に「LD」と称する。)を備えた送信用モジュールと、フォトダイオード(以下、単に「PD」と称する。)を備えた受信用モジュールとをそれぞれ別のパッケージに収納している。そして、これらのパッケージを、光軸を合わせて配置している。
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示された双方向通信用光モジュールでは、送信用モジュール及び受信用モジュールごとに別のパッケージを用意しなければならないために、小型化が難しい。
【0005】
特許文献1に開示された技術の問題点を解決するために、LD、PD及びバンドパスフィルタを一つの基板に実装してパッケージ化する技術が開示されている(例えば、特許文献2参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平10−206678号公報
【特許文献2】特開平11−68705号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献2に開示された技術では、LDとPDとが共通の基板に実装されており、なおかつ共通のパッケージ内部に収められている。その結果、LDから発生した送信光の一部は、パッケージの内壁面で回折や乱反射等を生じ、複雑な伝播径路を辿ってPDにより検出されてしまう。つまり、LD由来の迷光が発生し、その結果、PDの光学雑音が大きくなってしまう。
【0008】
この発明は、このような問題点に鑑みなされたものである。従って、この発明の第1の目的は、光送信部を備えた光送信モジュールであって、光送信部から発生する迷光を低減することが可能な光送信モジュールを提供することにある。
【0009】
また、この発明の第2の目的は、この光送信モジュールと光受信部とを備えた光送受信モジュールであって、光受信部で検出される光送信部由来の光学雑音を低減することが可能な光送受信モジュールを提供することにある。
【0010】
さらに、この発明の第3の目的は、この光送受信モジュールを用いた双方向通信用光モジュールを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この発明は、上述した目的の達成を図るために、以下のように構成した。すなわち、この発明の光送信モジュールは、送信用光導波路が接続された光送信部を基板の第1主面に備えている。この光送信モジュールにおいて、光送信部が、第1主面に対して平行な送信光を発光する発光素子と、発光素子を内部に包含していて送信光の迷光を遮蔽する筐体、及び、筐体の内部に設けられ送信光を第1主面に向かう方向へと変換する反射部を有する迷光遮蔽ケースと、送信光を送信用光導波路に結合する入力用ポートとを備える。
【0012】
上述した光送信モジュールの好ましい一実施態様として、入力用ポートが、第1主面に形成された回折格子を有する平面導波路として形成されているのがよい。
【0013】
上述した光送信モジュールの別の好ましい一実施態様として、入力用ポートが、送信用光導波路に向かうにつれて、光伝播方向に直交しかつ第1主面に平行な方向の幅が、送信用光導波路の幅まで徐々に狭くなっていくテーパ状に形成されているのがよい。
【0014】
上述した光送信モジュールのさらに別の好ましい一実施態様として、筐体が、上蓋と、上蓋の周縁に接続された側壁とを備えていて、上蓋の内側面に発光素子が取り付けられているのがよい。
【0015】
この発明の光送受信モジュールは、上述の光送信モジュールと、受信用光導波路が接続された光受信部とを共通の基板の第1主面に備えていて、光送信部及び光受信部が共通のパッケージ内に収められている。この光送受信モジュールは、受信用光導波路を伝播する受信光を、第1主面に垂直に出射する方向に変換する出力用ポートを備えている。
【0016】
上述した光送受信モジュールの好ましい一実施形態として、出力用ポートが、第1主面に形成された回折格子を有する平面導波路として形成されているのがよい。
【0017】
上述した光送受信モジュールの別の好ましい一実施形態として、送信用光導波路と、入力用ポートと、受信用光導波路と、出力用ポートとがいずれもSiを材料として形成されているのがよい。
【0018】
この発明の双方向通信用光モジュールは、上述の光送受信モジュールを備えている。そして、この双方向通信用光モジュールにおいては、光送信部が出力する送信光と、光受信部が受信する受信光との波長が異なっている。さらに、この双方向通信用光モジュールは、送信光と受信光とを合分波する光合分波素子を備える。
【0019】
上述の双方向通信用光モジュールの好ましい一実施態様は、光合分波素子として方向性結合器を用いることが好ましい。
【発明の効果】
【0020】
この発明は、上述のように構成しているので、光送信部から発生する迷光を低減することが可能な光送信モジュール、光送受信モジュール、及び双方向通信用光モジュールを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】光送信モジュールの構造を概略的に示す斜視図である。
【図2】光送信モジュールの構造を概略的に示す一部切欠平面図である。
【図3】図2のA−A線に沿って取った切断端面図である。
【図4】光送受信モジュールの構成を概略的に示す一部切欠斜視図である。
【図5】光送受信モジュールの構成を概略的に示す一部切欠平面図である。
【図6】光受信部の構成を概略的に示す平面図である。
【図7】双方向通信用光モジュールの概略的な構成を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照して、この発明の実施の形態について説明する。なお、各図は、各構成要素の形状、大きさ及び配置関係について、この発明が理解できる程度に概略的に示してある。また、以下、この発明の好適な構成例について説明するが、各構成要素の材質及び数値的条件などは、単なる好適例にすぎない。従って、この発明は、以下の実施の形態に何ら限定されない。また、各図において、共通する構成要素には同符号を付し、その説明を省略することもある。
【0023】
(実施の形態1)
図1は、この実施の形態の光送信モジュールの構造を概略的に示す斜視図である。図2は、光送信モジュールの構造を概略的に示す一部切欠平面図である。図3は、図2のA−A線に沿って取った切断端面図である。
【0024】
図1〜図3を参照すると、光送信モジュール10は、送信用光導波路12と光送信部14とを備えている。そして、光送信部14は、発光素子16と、迷光遮蔽ケース18と、入力用ポート20とを備えている。
【0025】
光送信モジュール10は、基板26の第1主面26aに形成されている。基板26は、第1層26cと第2層26bとがこの順番で積層された平行平板である。第1層26cは、この実施の形態に示す例では、好ましくは、例えば、厚みが約500μmのSiを材料としている。第2層26bは、この実施の形態に示す例では、好ましくは、例えば、厚みが約1μmのSiOを材料としている。
【0026】
以下、光送信モジュール10を構成する個々の構成要素について説明する。
【0027】
送信用光導波路12は、基板26の第1主面26aに形成されているチャネル型の光導波路である。送信用光導波路12は、光送信部14から出力される送信光を伝播する機能を有する。送信用光導波路12の端部は、後述する入力用ポート20のテーパ状の先端部に光接続されている。送信用光導波路12の寸法は、この実施の形態に示す例では、好ましくは、例えば厚み(第1主面26aに対して垂直に測った長さ)を約0.3μmとし、及び、幅(第1主面26aに平行で、光伝播方向に垂直な方向の長さ)を約0.3μmとする。
【0028】
光送信部14を構成する発光素子16は、端面発光型のLDである。発光素子16の光出射端面16aから、レーザ光が送信光として第1主面26aに対して平行に出射される。発光素子16は、後述する迷光遮蔽ケース18の上蓋22Uの内側面22Uaに、ハンダを用いて取り付けられている。また、発光素子16に変調信号を供給するために、発光素子16と、第1主面26aに設けられた電極29とは、ハンダバンプ30により電気的に接続されている。この実施の形態に示す例では、送信光の波長λ1は、一般的な光通信に用いられる1.31μmとする。
【0029】
光送信部14を構成する迷光遮蔽ケース18は、筐体22と反射部24とを備えている。迷光遮蔽ケース18は、第1主面26a上に配置されていて、基板26とは別体の部品である。迷光遮蔽ケース18は、第1主面26a上に、実質的に隙間なく配置されている。
【0030】
迷光遮蔽ケース18は、(1)内部に発光素子16を包含することにより、発光素子16から発生する迷光を遮蔽する機能、及び(2)発光素子16から出射された送信光の伝播方向を第1主面26aに向かう方向に変換する機能の、2つの機能を有する。
【0031】
迷光遮蔽ケース18を構成する筐体22は、内部に発光素子16を収納できる空間が形成された無底の収納容器である。筐体22は、この実施の形態に示す例では、底面を有さない略直方体状の箱体として形成されている。
【0032】
より詳細には、筐体22は、上蓋22Uと、上蓋22Uの周縁部から、第1主面12aに向かう方向(下方向)に垂直に延在する4面の側壁22S,22S,22F及び22Bとを備えている。その結果、筐体22には、上蓋22U及び側壁22S,22S,22F及び22Bで囲まれた収納空間22aが形成されている。
【0033】
筐体22は、発光素子16に由来する迷光を遮蔽するために、出射光の波長帯域の光を非透過な材料を用いて形成されている。具体的には、筐体22を構成する材料としては、好ましくは,例えばAl,Cu等の金属や、セラミックスなどを用いることができる。これらの材料の中では、熱伝導性が高く、発光素子16から発生する熱を逃がしやすい金属を特に好適に用いることができる。この実施の形態に示す例では、筐体22は、Cu製とする。
【0034】
ここで、「迷光」とは、発光素子16から出射された送信光の中で、後述する入力用ポート20に結合されない一部の光のことを示す。迷光は、回折や反射により、発光素子16の周囲の空間に放射される。
【0035】
収納空間22a内には、発光素子16が収納されている。より詳細には、上蓋22Uの内側面22Ua、すなわち上蓋22Uの第1主面26aに臨む面22Uaには、発光素子16が位置決めされて取り付けられている。ここで、「位置決め」とは、発光素子16がが、筐体22の入力用ポート20側の側壁22Fに光出射端面16aが臨むように配置されており、発光素子16から出射される送信光を入力用ポート20の内部に、はみ出すことなく照射させることを意味する。
【0036】
筐体22は、側壁22S及び22Sの底面で、第1主面26a上に形成されている電極28及び28に接続されている。具体的には、側壁22S及び22Sの底面は、電極28及び28に対して、ハンダにより固定されている。なお、電極28,28は接地されている。これにより、筐体22は、電気的なノイズを遮蔽するシールドとしても機能する。
【0037】
側壁22Fの内側面22Faは、第1主面26aに対して傾斜した平面状に形成されている。以降この「平面」を「傾斜面22Fa」とも称する。傾斜面22Faは、反射部24を構成する一要素となっている。
【0038】
迷光遮蔽ケース18を構成する反射部24は、傾斜面22Faと、傾斜面22Fa上に形成された反射膜Reとを備えている。反射部24は、発光素子16の光出射端面16aに臨む傾斜した反射鏡であり、出射光を反射して、出射光の伝播方向を第1主面26aに向かう方向に変換する機能を有する。
【0039】
傾斜面22Faは、この実施の形態に示す例では、第1主面26aに対して、好ましくは、例えば約45°の角度で傾いて延在している。つまり、傾斜面22Faの法線と、該法線の第1主面26aへの正射影で与えられる直線のなす角度は、約45°である。なお、以降、傾斜面22Faと第1主面26aとのなす角度(45°)を単に「傾斜角」とも称する。傾斜面22Faの傾斜角を45°とすることにより、発光素子16から第1主面26aに対して平行に出射される送信光の伝播方向を、第1主面26aに対して垂直に入射する方向へと変換することができる。
【0040】
反射膜Reは、発光素子16から出射される送信光を反射する機能を有する。この実施の形態に示す例では、反射膜Reは、好ましくは、例えばAuの蒸着膜とする。
【0041】
光送信部14を構成する入力用ポート20は、回折格子K1が形成された平面型光導波路である。入力用ポート20は、発光素子16と送信用光導波路12との間に介在している。入力用ポート20は、基板26の第1主面26aに、上述した送信用光導波路12と一体に形成されている。入力用ポート20は、第1主面26aに入射する送信光を、ポート内部を伝播する光へと変換し、さらに、この光を送信用光導波路12へと結合する機能を有する。
【0042】
入力用ポート20は、迷光遮蔽ケース18側から送信用光導波路12に向かう方向(以下、「送信光伝播方向」とも称する。図2中矢印Ar1参照。)に沿って、幅が狭くなる略2等辺三角形状(テーパ状)に形成されている。より正確には、入力用ポート20は、送信用光導波路12に向かうにつれて、送信光伝播方向に直交しかつ第1主面26aに平行な方向の幅が、送信用光導波路12の幅まで徐々に狭くなっていく。
【0043】
また、入力用ポート20の厚みDは、送信用光導波路12の厚みと等しく形成されており、この実施の形態に示す例では、約0.3μmとする。
【0044】
入力用ポート20に形成された回折格子K1は、第1主面26a内で、送信光伝播方向に直交する方向に延在する凹凸(以降、「格子溝」とも称する。)が、送信光伝播方向に沿って周期Λ1で規則的に配置されることで形成されている。
【0045】
格子溝の周期Λ1は、波長λ1の送信光を、入力用ポート20内部を伝播する光へと変換できるような大きさとする。周期Λ1の具体的な値は、送信光の波長λ1と、送信光の回折格子K1への入射角等で変化するために、一義的に決定することはできない。しかし、この実施の形態の場合のように、送信光の波長λ1が1.31μmであり、及び送信光が入力用ポート20に垂直入射するとした場合には、周期Λ1は、約400nmとする。
【0046】
また、格子溝の深さHは、入力用ポート20への送信光の結合効率を勘案して決定することが好ましい。深さHを大きくするほど、送信光の入力用ポート20への結合効率が高くなる。この実施の形態に示す例では、最大の結合効率を得るために、格子溝の深さHを、入力用ポート20の厚みDと等しい0.3μmとする。つまり、この実施の形態に示す例では、格子溝の凹部は、基板26の第1主面26aが露出する深さに形成されている。
【0047】
入力用ポート20のテーパの拡がり角θ及び全長L(送信光伝播方向に沿った入力用ポート20の長さ)は、入力用ポート20に到達した送信光のスポットサイズを勘案して決定する。すなわち、送信光の損失を最小限に抑えるためには、送信光の光スポットが、入力用ポート20に収まっている必要がある。このことから、入力用ポート20の平面的な広がりは、送信光のスポットサイズよりも大きな寸法を有していることが好ましい。
【0048】
この実施の形態に示す例では、送信光の入力用ポート20の位置におけるスポットサイズは約100μmとなることが発明者の評価で分かっている。従って、入力用ポート20の寸法は、直径100μmの円よりも大きな平面的広がりを有している必要がある。このことから、この実施の形態に示す例では、入力用ポート20のテーパ拡がり角θを60°とし、及び全長Lを150μmとする。
【0049】
次に、光送信モジュール10の動作について説明する。
【0050】
電極29から入力される変調信号に従って、発光素子16は発光し、光出射端面16aから送信光を出力する。送信光は、第1主面26aに平行に伝播し、やがて、反射部24の反射膜Reで反射されて、伝播方向が第1主面26aに垂直入射する方向に変換される。
【0051】
伝播方向が変換された送信光は、第1主面26aに設けられた入力用ポート20に入射し、回折格子K1の作用により、入力用ポート20の内部に結合される。入力用ポート20内部に結合された光は、送信光伝播方向に伝播して、送信用光導波路12に結合され、光送信モジュール10の外部へと出力される。
【0052】
発光素子16が発光する過程で、送信光の一部は迷光となって、入力用ポート20に結合されず、回折や乱反射により、発光素子16の周囲の空間、つまり筐体22の収納空間22aへと放射される。ところで、迷光遮蔽ケース18の筐体22は、出射光の波長帯域の光を透過しない材料を用いて形成されている。その結果、迷光は、迷光遮蔽ケース18により遮蔽されるので、光送信部14の外側の空間に放射されることがない。
【0053】
続いて、この実施の形態の光送信モジュール10の効果について説明する。
【0054】
(1)光送信モジュール10は、出射光の波長帯域の光を非透過な材料からなる迷光遮蔽ケース18で発光素子16を隙間なく包含している。その結果、迷光遮蔽ケース18外部への迷光の放射を抑制することができる。
【0055】
(2)光送信モジュール10は、熱伝導率に優れた金属製の筐体22に発光素子16を実装している。その結果、発光素子16を基板26に実装した場合に比較して、発光素子16の動作に伴い発生する熱を効率的に逃がすことが可能となる。
【0056】
(3)光送信モジュール10においては、筺体22の側壁22Fの内側面22Faを反射部24としている。その結果、発光素子16として、端面発光型のLDを用いているにもかかわらず、送信光を基板26の第1主面26aに対して垂直に入射させることができる。
【0057】
(4)光送信モジュール10において、入力用ポート20を送信光伝播方向に沿って、幅が狭くなる略2等辺三角形状(テーパ状)に形成している。その結果、特別なスポットサイズ変換器を設けることなく、LDからの送信光を送信用光導波路12に結合することができる。
【0058】
(5)光送信モジュール10において、入力用ポート20の平面的な広がりを、送信光のスポットサイズよりも大きな寸法としている。換言すれば、スポットサイズ位置が多少ずれた場合でも、送信光の光スポットを入力用ポート20の内部に収めることができる。つまり、入力用ポート20の平面的な広がりを、送信光のスポットサイズよりも大きな寸法とすることにより、発光素子16の位置決め精度の許容度を大きくすることができる。
【0059】
なお、この実施の形態に示す例では、迷光遮蔽ケース18が1重の場合について説明した。しかし、迷光遮蔽ケースは、例えば多重に光送信部14を覆うように構成してもよい。このように構成することにより、光送信部14からの迷光の放射量をより一層低減することができる。
【0060】
また、この実施の形態に示す例では、反射部24の傾斜面22Faが平面である場合について説明した。しかし、反射部24の傾斜面22Faは、湾曲面、特に凹面であってもよい。このように構成することにより、入力用ポート20における送信光のスポットサイズを小さくすることができる。結果として、発光素子16の位置決め精度の許容度を、より一層大きくすることができる。
【0061】
(実施の形態2)
図4〜6を参照して、実施の形態2の光送受信モジュールについて説明する。
【0062】
図4は、光送受信モジュールの構成を概略的に示す一部切欠斜視図である。図5は、光送受信モジュールの構成を概略的に示す一部切欠平面図である。図6は、光受信部の構成を概略的に示す平面図である。
【0063】
図4〜図6を参照すると、光送受信モジュール40は、上述した光送信モジュール10と、光受信モジュール42とを共通の基板26の第1主面26aに備えている。そして、光送信モジュール10及び光受信モジュール42は共通のパッケージ46内に収められている。なお、光送受信モジュール40を構成する光送信モジュール10は、実施の形態1と同様であるので、その説明を省略する。
【0064】
光送受信モジュール40を構成する光受信モジュール42は、光受信部44と、受信用光導波路48とを備えている。
【0065】
受信用光導波路48は、基板26の第1主面26aに形成されているチャネル型の光導波路である。受信用光導波路48は、光受信部44に向けて受信光を伝播する機能を有する。受信用光導波路48の端部は、後述する出力用ポート52のテーパ状の先端部に光接続されている。受信用光導波路48の寸法は、この実施の形態に示す例では、好ましくは、例えば厚みを約0.3μmとし、及び幅を約0.3μmとする。この実施の形態に示す例では、受信用光導波路48を構成する材料は、好ましくは、例えばSiとする。
【0066】
光受信部44は、受光素子50と、出力用ポート52とを備えている。
【0067】
受光素子50は受信光を受光するPDである。受光素子50は、出力用ポート52から基板26の第1主面26aに対して垂直に出射される受信光を受光し、電気信号に変換して、光送受信モジュール40の外部機器に出力する機能を有する。受光素子50は、その受光部が出力用ポート52を跨ぐように、第1主面26aに形成された電極54,54にハンダを用いて電気的及び機械的に固定されている。なお、受信光の波長λ2は、送信光の波長λ1と異なっている。この実施の形態に示す例では、受信光の波長λ2は一般的な光通信に用いられる1.49μmとする。
【0068】
出力用ポート52は、受信用光導波路48から受光素子50に向かう方向(以下、「受信光伝播方向」とも称する。図6中矢印Ar2参照。)に沿って、幅が広くなる略2等辺三角形状(テーパ状)に形成されている。より正確には、出力用ポート52は、受光素子50に向かうにつれて、受信光伝播方向に直交しかつ第1主面26aに平行な方向の幅が、受信用光導波路48の幅から、徐々に広くなっていく。
【0069】
また、出力用ポート52の厚みは、受信用光導波路48の厚みと等しく形成されており、この実施の形態に示す例では、約0.3μmとする。この実施の形態に示す例では、出力用ポート52を構成する材料は、好ましくは、例えばSiとする。
【0070】
出力用ポート52に形成された回折格子K2は、第1主面26a内で、受信光伝播方向に直交する方向に延在する凹凸(以降、「格子溝」とも称する。)が、受信光伝播方向に沿って周期Λ2で規則的に配置されることで形成されている。
【0071】
格子溝の周期Λ2は、出力用ポート52内部を伝播する波長λ2の受信光を、第1主面26aから、受光素子50に向けて垂直出射する光へと変換できるような大きさとする。周期Λ2の具体的な値は、受信光の波長λ2で変化するために、一義的に決定することはできない。しかし、この実施の形態の場合のように、受信光の波長λ2が1.49μmであるとした場合には、周期Λ2は、約800nmとする。なお、回折格子K2の格子溝の深さは、実施の形態1の場合と同様に、約0.3μmとする。
【0072】
パッケージ46は、光送信モジュール10及び光受信モジュール42、より正確には、光送信部14と光受信部44とを内部に包含している。パッケージ46は、光送信部14と光受信部44に対する電気的及び光学的なノイズを低減するとともに、外部汚染を防ぐ機能を有する。パッケージ46は、基板26の第1主面26aに隙間なく取り付けられている。パッケージ46は、好ましくは、例えば放熱性、導電性に優れた金属を材料とする。
【0073】
次に、光送受信モジュール40の動作について説明する。まず始めに、光受信モジュール42単独の動作について説明し、続いて、光送受信モジュール40の全体動作について説明する。なお、光送信モジュール10の動作については、実施の形態1と同様であるので、その説明を省略する。
【0074】
光受信モジュール42においては、受信光が、受信用光導波路48を出力用ポート52へと向けて伝播する。やがて、出力用ポート52に至った受信光は、出力用ポート52に設けられた回折格子K2の作用により、第1主面26aに対して垂直出射する光へと変換される。そして、この垂直出射された光は、光受信部44の受光素子50により受光され、電気信号へと変換されて、光送受信モジュール40の外部の機器へと出力される。
【0075】
続いて、光送受信モジュール40の全体動作について説明する。光送受信モジュール40においては、光送信モジュール10及び光受信モジュール42が、一つの共通したパッケージ46内部に収められている。そして、光送信モジュール10では、光送信部14から送信光が出力され、光受信モジュール42では、光受信部44で受信光が受光される。
【0076】
従来の技術で既に説明したように、光送信部14と光受信部44の両者を共通のパッケージ46内部に収めた場合には、光送信部14から出力される送信光の一部は、回折や、パッケージ46の内壁面での乱反射により、パッケージ46内部で迷光となる。この迷光は、光受信部44により検出され、結果として、受信光のS/N比を悪化させていた。
【0077】
この実施の形態の光送受信モジュール40においては、光送信部14が、既に説明した迷光遮蔽ケース18で覆われている。その結果、光送信部14から発生する迷光は、迷光遮蔽ケース18により遮蔽され、パッケージ46の内部に放射されることがない。よって、光受信部44における受信光の光学雑音を低減することができる。
【0078】
発明者の評価によれば、実施の形態1の光送信モジュール10を用いた場合には、迷光遮蔽ケース18を有さない従来の技術に比較して、光受信部44により検出される光学雑音を1/2にまで低減できることが明らかとなった。
【0079】
このように、この実施の形態の光送受信モジュール40は、迷光遮蔽ケース18を備えた光送信モジュール10を有している。その結果、光送信部14で発生する迷光を、迷光遮蔽ケース18の内部だけに止めることができる。つまり、パッケージ46への迷光の漏れ出しを低減することができる。結果として、光受信部44で検出される迷光由来の光学雑音を低減することができる。
【0080】
なお、この実施の形態では、光受信部44が露出した場合について説明した。しかし、光送信部12における迷光遮蔽ケース18と同様に、光受信部44を送信光の波長帯域の光を遮蔽できるケースで覆ってもよい。このようにすることにより、光受信部44により検出される迷光に由来する光学雑音を、より一層低減することができる。
【0081】
(実施の形態3)
図7を参照して、実施の形態3の双方向通信用光モジュールについて説明する。図7は、双方向通信用光モジュールの概略的な構成を示す平面図である。
【0082】
双方向通信用光モジュール60は、実施の形態2の光送受信モジュール40と、光合分波素子62とを備えている。
【0083】
光合分波素子62は、従来周知の方向性結合器であり、本体部63と、4つの入出力用ポート62a,62b,62c及び62dを備えている。光合分波素子62は、基板26の第1主面26a上に形成されている。この実施の形態に示す例では、光合分波素子62を構成する材料は、好ましくは、例えばSiとする。
【0084】
本体部63は、光結合可能な間隔を空けて平行に配置された2本のチャネル型光導波路631と632とから構成されている。これらのチャネル型光導波路631及び632の全長(結合長)は、波長λ1の送信光をクロス状態で伝播し、かつ、波長λ2の受信光をバー状態で伝播するような結合長に調整されている。
【0085】
光合分波素子62において、入出力用ポート62aは、一端が光送信モジュール10の送信用光導波路12に接続されており、他端がチャネル型光導波路631に接続されている。入出力用ポート62bは、一端が光受信モジュール42の受信用光導波路48に接続されており、他端がチャネル型光導波路632に接続されている。入出力用ポート62dは、一端が、双方向通信用光モジュール60の外部に設けられた光ファイバ64に光結合可能に対向して設けられており、他端がチャネル型光導波路632に接続されている。入出力用ポート62cは、一端がチャネル型光導波路631に接続されており、他端はダミーポートとして開放されている。
【0086】
次に、双方向通信用光モジュール60の動作について説明する。
【0087】
光送信モジュール10からは、波長λ1の送信光が、送信用光導波路12を介して入出力用ポート62aに入力される。入出力用ポート62aに入力された送信光は、方向性結合器の本体部63のチャネル型光導波路631に至る。チャネル型光導波路631を伝播する光は、方向性結合器の作用により、クロス状態で伝播する。つまり、チャネル型光導波路632へとパワーが移行する。そして、入出力用ポート62dを伝播して、光ファイバ64から、双方向通信用光モジュール60の外部に出力される。
【0088】
一方、光ファイバ64から、双方向通信用光モジュール60へと伝播してくる波長λ2の受信光は、入出力用ポート62dに結合され、チャネル型光導波路632を本体部63に向けて伝播する。本体部63に至った受信光は、双方向性結合器の作用により、バー状態で伝播する。つまり、チャネル型光導波路632をそのまま伝播する。そして、入出力用ポート62bから、光受信モジュール42へと出力される。光受信モジュール42へと出力された受信光は、実施の形態2で述べたように、受信光として受信される。
【0089】
この実施の形態の双方向通信用光モジュール60は、実施の形態2で説明した光送受信モジュール40と同様の効果を奏する。
【符号の説明】
【0090】
10 光送信モジュール
12 送信用光導波路
14 光送信部
16 発光素子
16a 光出射端面
18 迷光遮蔽ケース
20 入力用ポート
22 筐体
22U 上蓋
22Ua 内側面
22S,22F,22B 側壁
22Fa 傾斜面
22a 収納空間
24 反射部
26 基板
26a 第1主面
26b 第2層
26c 第1層
28,29,54 電極
30 ハンダバンプ
40 光送受信モジュール
42 光受信モジュール
44 光受信部
46 パッケージ
48 受信用光導波路
50 受光素子
52 出力用ポート
60 双方向通信用光モジュール
62 光合分波素子
62a,62b,62c,62d 入出力用ポート
63 本体部
631,632 チャネル型光導波路
64 光ファイバ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
送信用光導波路が接続された光送信部を基板の第1主面に備えた光送信モジュールにおいて、
前記光送信部が、前記第1主面に対して平行な送信光を発光する発光素子と、
当該発光素子を内部に包含していて前記送信光の迷光を遮蔽する筐体、及び、該筐体の内部に設けられ前記送信光を前記第1主面に向かう方向へと変換する反射部を有する迷光遮蔽ケースと、
前記送信光を前記送信用光導波路に結合する入力用ポートとを備えることを特徴とする光送信モジュール。
【請求項2】
前記入力用ポートが、前記第1主面に形成された回折格子を有する平面導波路として形成されていることを特徴とする請求項1に記載の光送信モジュール。
【請求項3】
前記入力用ポートが、前記送信用光導波路に向かうにつれて、光伝播方向に直交しかつ前記第1主面に平行な方向の幅が、前記送信用光導波路の幅まで徐々に狭くなっていくテーパ状に形成されていることを特徴とする請求項2に記載の光送信モジュール。
【請求項4】
前記筐体が、上蓋と、該上蓋の周縁に接続された側壁とを備えていて、前記上蓋の内側面に前記発光素子が取り付けられていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の光送信モジュール。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の光送信モジュールと、受信用光導波路が接続された光受信部とを共通の前記基板の前記第1主面に備えていて、前記光送信部及び前記光受信部が共通のパッケージ内に収められた光送受信モジュールであって、
前記受信用光導波路を伝播する受信光を、前記第1主面に垂直に出射する方向に変換する出力用ポートを備えていることを特徴とする光送受信モジュール。
【請求項6】
前記出力用ポートが、前記第1主面に形成された回折格子を有する平面導波路として形成されていることを特徴とする請求項5に記載の光送受信モジュール。
【請求項7】
前記送信用光導波路と、前記入力用ポートと、前記受信用光導波路と、前記出力用ポートとがいずれもSiを材料として形成されていることを特徴とする請求項5又は6に記載の光送受信モジュール。
【請求項8】
請求項5〜7のいずれか一項に記載の光送受信モジュールを備えた、双方向通信用光モジュールであって、
前記光送信部が出力する前記送信光と、前記光受信部が受信する受信光との波長が異なっていて、
前記送信光と前記受信光とを合分波する光合分波素子を備えることを特徴とする双方向通信用光モジュール。
【請求項9】
前記光合分波素子として方向性結合器を用いることを特徴とする請求項8に記載の双方向通信用光モジュール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−164886(P2010−164886A)
【公開日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−8819(P2009−8819)
【出願日】平成21年1月19日(2009.1.19)
【出願人】(000000295)沖電気工業株式会社 (6,645)
【Fターム(参考)】