説明

光部品実装構造及び光モジュール

【課題】高信頼性な光部品実装構造を提供する。
【解決手段】光信号を反射又は透過する光部品10と、光部品10が実装されると共に光信号を伝搬するための光路が形成されたパッケージ11とを備え、パッケージ11内に形成された光部品取り付け部fは、光路のベース面bから起立すると共に光路を挟んで形成される光部品実装構造1において、光部品10を所定の面に保持する光部品保持部材2は、光路に臨んでベース面bに着座すると共に光部品取り付け部2に取り付けられ、さらにベース面bと光部品取り付け部2の交わる角部12に対応する位置に切り欠き部4を形成したものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばギガビットクラスのイーサネット(登録商標)信号を伝送する光トランシーバなどに用いられる光部品実装構造及び光モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
スイッチングハブやメディアコンバータなどのネットワーク機器には、電気信号を光信号に、または光信号を電気信号に変換するべく、LD(半導体レーザ)やPD(フォトダイオード)を収納した光モジュールが設けられている。
【0003】
このような光モジュールの一例として、図8に示すような光トランシーバ80は、パッケージ82にCAN(光素子を汎用のCANパッケージに収納したもの)−LD83、CAN−PD84、エッジフィルタなどの光フィルタ85を収納すると共に、SMF(シングルモードファイバ)などの光ファイバ86を接続したものである。
【0004】
光トランシーバ80のパッケージ82内には水平方向と垂直方向に光路L8が形成され、その光路L8に光フィルタ85を実装するべく、光路L8のベース面(底面)b8から光路L8を挟んで起立した光部品取り付け面(フィルタ接触部)f8が形成され、その光フィルタ取り付け面f8には、光路L8を横断するように光フィルタ85が取り付けられる。
【0005】
光フィルタ85は、誘電体多層膜からなるフィルタ膜87と、そのフィルタ膜87を保持するガラスブロック88とからなり、光フィルタ取り付け面f8に接着剤で押し付け固定される。
【0006】
従来の光部品実装構造81は、これら光フィルタ85、光路L8、ベース面b8、光部品取り付け面f8で構成される。
【0007】
光フィルタ85は、波長λ1のCAN−LD83の光信号を透過し、光ファイバ86に入射して外部に伝送される。また、光ファイバ86を伝搬して入力する波長λ2(λ1≠λ2)の光信号を反射してCAN−PD84に入射させる。
【0008】
なお、この出願の発明に関連する先行技術文献情報としては、次のものがある。
【0009】
【特許文献1】特開平7−63966号公報
【特許文献2】特開2005−222050号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、従来の光部品実装構造81は、
1)図9に示すように、ベース面b8と光部品取り付け面f8が交わる角部91に、一般にR(Rカット、弧状部分)、C(Cカット、角のある面取り部分)、段が形成される。
【0011】
角部91にこのようなR、C、段があると、図10(a)に示すように、光フィルタ取り付け面f8と光フィルタ85間に隙間gができ、光フィルタ85に傾きが発生する(光フィルタ85が傾いて貼り付けられる)。光フィルタ85が傾くと、光フィルタ85で反射される光信号の光軸にずれが生じる。さらに、隙間gに接着剤が入ることで、周囲温度変化によって光フィルタ85が変動する原因となる。
【0012】
特に、光フィルタ85で反射される光信号をSMFへ光結合する結合系の場合(つまり、図8のCAN−PD84の位置にCAN−LD83を設けてCAN−LD83からSMFへ光信号を伝搬させる場合)、SMFのコア径が5〜15μmと小さいため、接着後の光フィルタ95の傾き変動は1μmも許されない。
【0013】
従って、角部91にR、C、段などが発生しないようにパッケージ82を加工する必要があるが、通常パッケージ82は金属で形成され、鋳型加工や切削加工で作製されるため、角部81にR、C、段が形成されるのを回避するのは非常に難しい。
【0014】
切削加工の場合には、長時間かけて加工すれば角部81にR、C、段が形成されるのを回避できる場合もあるが、作業性が悪くてコストアップになり、最近のパッケージ82は切削加工の限界近くまで小型化されていることもあり、パッケージ82の作り込み単価(パッケージ部品単価)が上がってしまう。
【0015】
2)光フィルタ85は、パッケージ82に取り付けられる際、光フィルタ取り付け面f8に密着させる必要がある。このため、従来の光部品実装構造81では、光フィルタ取り付け面f8に、光路L8を横断するように光フィルタ85を接着剤で押し付け固定しなければならず、光フィルタ85を傷つけることがある。
【0016】
3)パッケージ82に光フィルタ85を接着する面積は、大きくなるほど接着の安定性があるが、接着する面積に比例して光フィルタ85のサイズが大きくなり、フィルタ単価が上がってしまう。
【0017】
4)また、光フィルタ85が傾かないように接着するために、図10(b)に示すように、ベース面b8から光フィルタ85を上に押し上げて実装することも考えられる。しかし、光フィルタを押し上げて実装する構造では、光フィルタのアセンブリが難しく、作業性が悪くなってしまう問題がある。
【0018】
そこで、本発明の目的は、高信頼性な光部品実装構造、高信頼性な光モジュールを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明は上記目的を達成するために創案されたものであり、請求項1の発明は、光信号を反射又は透過する光部品と、上記光部品が実装されると共に上記光信号を伝搬するための光路が形成されたパッケージとを備え、上記パッケージ内に形成された光部品取り付け部は、上記光路のベース面から起立すると共に上記光路を挟んで形成される光部品実装構造において、
上記光部品を所定の面に保持する光部品保持部材は、上記光路に臨んで上記ベース面に着座すると共に上記光部品取り付け部に取り付けられ、さらに上記ベース面と上記光部品取り付け部の交わる角部に対応する位置に切り欠き部を形成した光部品実装構造である。
【0020】
請求項2の発明は、上記光部品は上記光路の幅よりも狭く形成され、上記光部品保持部材は上記光路の幅よりも広く形成される請求項1記載の光部品実装構造である。
【0021】
請求項3の発明は、上記光部品保持部材はブロック状の透明部材で形成される請求項1または2記載の光部品実装構造である。
【0022】
請求項4の発明は、上記光部品保持部材は金属で形成され、さらに上記光信号を伝搬するための保持部材用光路が形成される請求項1または2記載の光部品実装構造である。
【0023】
請求項5の発明は、上記光部品保持部材は、上記光部品を支持する正面支持部と背面支持部とを備えると共に、上記光部品保持部材内に上記光部品を保持する保持部を備える請求項4記載の光部品実装構造である。
【0024】
請求項6の発明は、光信号を反射又は透過する光部品と、上記光部品が実装されると共に上記光信号を伝搬するための光路が形成されたパッケージとを備え、上記パッケージ内に形成された光部品取り付け部は、上記光路のベース面から起立すると共に上記光路を挟んで形成される光部品実装構造において、
上記光部品は、上記光路に臨んで上記ベース面に着座すると共に上記光部品取り付け部に取り付けられ、さらに上記ベース面と上記光部品取り付け部の交わる角部に対応する位置に切り欠き部を形成した光部品実装構造である。
【0025】
請求項7の発明は、光信号を反射又は透過する光部品と、上記光部品が実装されると共に上記光信号を伝搬するための光路が形成されたパッケージとを備え、上記パッケージ内に形成された光部品取り付け部は、上記光路のベース面から起立すると共に上記光路を挟んで形成される光部品実装構造において、
上記光部品は、上記光部品の一方の面と他方の面とを挟んで保持する光部品保持部材により保持され、上記光部品取り付け部に上記光部品保持部材と共に圧入固定される光部品実装構造である。
【0026】
請求項8の発明は、電気信号を光信号に、または光信号を電気信号に変換するべく、光素子を収納した光モジュールにおいて、請求項1〜7いずれかに記載の光部品実装構造を備えた光モジュールである。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、高信頼性な光部品実装構造を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下、本発明の好適な実施形態を添付図面にしたがって説明する。
【0029】
図1(a)は本発明の好適な第1の実施形態を示す光部品実装構造の斜視図、図1(b)はその1B−1B線断面図、図1(c)はその拡大平面図である。
【0030】
本実施形態に係る光部品実装構造は、例えば、図8の光部品実装構造81とパッケージ82の部分を除き、光モジュール80と基本的には同じ構成の光モジュールに使用される。本実施形態では、主に図8のCAN−PD84の位置にCAN−LD(LD83)を設けた光モジュールを用いて説明する。
【0031】
図1(a)に示すように、パッケージ11は、LD83を配置すると共に、配置したLD83に対して、光部品としての光フィルタ10を所定の角度で高精度に位置決めして収納するためのものである。このパッケージ11に、LD83と光フィルタ10が実装される。
【0032】
パッケージの片側(図1(a)では、右斜め上側)には、パッケージ11の片側面11sに沿ってLD83を収納するためのCan収納部(LD収納部)12が形成される。Can収納部12には、出射面が片側面11sの反対側(図1(a)では、左斜め下側)になるようにLD83が収納されて接合される。
【0033】
レセプタクル部(図8参照)の光軸方向をパッケージ11の長手方向とすると、パッケージ11内の中央部には、パッケージ11の長手方向に沿って、LD83からの出射光をレセプタクル部に導く上方が開放された水平光路HLが、パッケージ11の上面11uよりも1段低く形成される。この水平光路HLの底面がベース面bである。水平光路HLとCan収納部12間には、LD83からの出射光を光フィルタ10に導き、水平光路HLに対して垂直な中空の垂直光路VLが形成される。
【0034】
水平光路HLには、ベース面bから水平光路HLを挟む両側に起立し、水平光路HLに対してレセプタクル部側に45°傾いた光部品取り付け部としての光部品取り付け面(本実施形態では、光部品として光フィルタ10を用いるため、フィルタ取り付け面ともいう)fが形成される。これらベース面bと光部品取り付け面fとで、水平光路HL途上に平面視で略長孔状の凹部であるフィルタ実装部21が区画形成される。
【0035】
以上の構成であるパッケージ11は、SUSなどのYAGレーザ溶接性が良好で、かつ線膨張係数が小さい金属を用いて、切削加工で製造される。
【0036】
図1(a)〜図1(c)に示すように、第1の実施形態に係る光部品実装構造(光フィルタ実装構造)1は、水平光路HLに臨んでベース面bに着座すると共に、光部品取り付け面fと接触する光部品保持部材(フィルタ保持部材)2と、その光部品保持部材2の垂直光路VL側に取り付けられる光フィルタ10とからなる。
【0037】
光部品保持部材2には、ベース面bと光部品取り付け面fの交わる角部12に対応する位置、すなわち角部(光部品保持部材2の水平光路HL側の下部)3に、角部12を避ける切り欠き部(凹部、あるいは段差)4が形成される。この切り欠き部4は、角部12のR、C、段よりも大きく形成される。図1(b)では、切り欠き部4の一例として、横断面が略L字状の溝を示した。切り欠き部4の形状は、これに限定されるものではなく、角部3に傾斜面を有する形状でもよい。
【0038】
光部品保持部材2は、その幅Wkが水平光路HLの幅Whよりも広く形成される。これは、光部品保持部材2が水平光路HLを横断し、かつ光部品保持部材2の光部品取り付け面fに対する接着面積を広くするためである。
【0039】
ここで、水平光路HLの幅Whとは、光部品取り付け面fの開口幅のことをいう。これは、後述する垂直光路VLの幅Wvについても同様である。幅Wvとは、垂直光路VLが光フィルタ10上に形成する射影面の幅のことをいう。
【0040】
光部品保持部材2は、水分に弱いB(ホウ素)系ガラスではなく、純粋石英などのパッケージ11の材料と線膨張係数が近く、かつ通信波長帯域の光に対して透明な材料(透明部材)で形成するとよい。この場合、光部品保持部材2の表面に保護膜の役目も兼ねるAR(反射防止)コートが不要になるという利点がある。
【0041】
光フィルタ10は、後述するように、ガラスブロック13の片面の全面に、フィルタ膜14を設けたものである。ガラスブロック13は、光部品保持部材2と同様に、純粋石英などの通信波長帯域の光に対して透明な材料で形成する。接着剤にも、通信波長帯域の光に対して透明なUV(紫外線)硬化型の接着剤を用いるとよい。
【0042】
フィルタ膜14は、所定の波長帯域の光信号を透過し、それ以外の波長帯域の光信号を反射するものである。フィルタ膜14は、強度やガラスブロック13との密着性を考慮して、スパッタやCVD(化学蒸着)法により、ガラスブロック13上に誘電体を積層して形成される。
【0043】
上述した光部品保持部材2と光フィルタ10とでフィルタアセンブリを構成する。
【0044】
図1(a)〜図1(c)に示すように、光フィルタ10は、その幅Wfが水平光路HLの幅Whよりも狭く形成される。また、光フィルタ10は、その幅Wfが垂直光路VLの幅Wvよりも若干大きく形成される。これは、LDの出射光の全スポット径をカバーして入反射できる範囲で、光フィルタ10のフィルタ面積を極力小さくするためである。
【0045】
光部品実装構造1の組み立ては、図2(a)に示すように、まず、ガラスブロック13の片面の全面に、スパッタやCVD法によりフィルタ膜14を設けて光フィルタ10を形成する。他方、切り欠き部4を形成した光部品保持部材2を用意し、図2(b)に示すように、切り欠き部4側の片面の中央部に光フィルタ10を接着剤で接着固定し、光部品保持部材2で光フィルタ10を保持する。
【0046】
図2(c)および図1(a)に示すように、切り欠き部4を光部品取り付け面f側にし、かつ光部品取り付け面fから光フィルタ10が垂直光路VL側に突出するように、垂直光路VLに臨んでベース面bに光部品保持部材2を着座させると共に、水平光路HLを挟む両側の光部品取り付け面fに光部品保持部材2を接着剤で押し付け固定する。
【0047】
このとき、LD83(図1参照)からの出射光が光フィルタ10で反射され、光フィルタ10からの反射光が図示しないレセプタクル部に光結合するように、光フィルタ10及び光部品保持部材2は固定される。これにより、光部品実装構造1が組み立てられる。
【0048】
第1の実施形態の作用を、光モジュールの動作と共に説明する。
【0049】
光モジュールが実装される回路基板から送信された送信用電気信号は、LD83で光信号に変換され、その光信号が垂直光路VLを伝送し、光フィルタ10に45°の入射角で入射され、光フィルタ10で反射されて光ファイバに入射され、外部となる伝送路に送信される。
【0050】
光部品実装構造1は、水平光路HLのベース面bと光部品取り付け面fの交わる角部12に位置する光部品保持部材2の角部3に、角部12を避ける切り欠き部4を形成し、その光部品保持部材2で光フィルタ10を保持し、これをベース面bに着座させると共に、光部品取り付け面fに接触させている。
【0051】
このため、光部品実装構造1は、パッケージ11の角部12にR、C、段が形成されていても、これらに対向する光部品保持部材2の切り欠き部4で避けることができ、光部品取り付け面fと光部品保持部材2との間に隙間を形成することなく、光部品取り付け面fに光部品保持部材2を密着固定できる。
【0052】
しかも、光部品実装構造1は、光部品保持部材2により、光フィルタ10をベース面bと光部品取り付け面fの2面に対して固定しているため、角度ずれや光軸ずれを抑え、パッケージ11に対して光フィルタ10を安定して固定でき、周囲温度変化によっても光フィルタ10が変動しにくく温度安定性が高い。
【0053】
また、従来は、図8の光フィルタ85自体をフィルタ取り付け面f8に接着していたため、光フィルタ85の幅を水平光路HLの幅Whよりも広くする必要があった。
【0054】
これに対し、本実施形態に係る光部品実装構造1では、光フィルタ10は、その幅Wfが水平光路HLの幅Whよりも狭いため、従来の光フィルタ85と比べ、フィルタ面積を小さくでき、フィルタ単価を低減できる。
【0055】
さらに、光部品実装構造1では、光部品保持部材2は、その幅Wkを水平光路HLの幅Whよりも広く形成し、光部品取り付け面fとの接着面積を増やすことができる。これにより、光部品取り付け面fと光部品保持部材2との接着安定性が高くなり、光フィルタ10を安定してアセンブリでき、光モジュールの信頼性がアップする。
【0056】
しかも、パッケージ11に光フィルタ10を実装する際、光部品取り付け面fに光部品保持部材2を所望の力でしっかりと押し付け固定できる。このとき、光フィルタ10に応力がほとんど加わらないので、光フィルタ10の損傷も防止できる。
【0057】
光部品実装構造1では、光フィルタ10のサイズを大きくすることなく、フィルタ実装部21の範囲内で光部品保持部材2のサイズを大きくできるため、光フィルタ10や光部品保持部材2自身の接着時のハンドリングが簡単になり、作業性がアップする。
【0058】
したがって、光部品実装構造1は高信頼性かつ低コストであり、これを用いることで、高信頼性、低コストな光モジュールを実現できる。
【0059】
本実施形態では、光部品として光フィルタ10を用いた例で説明したが、LDまたはPDを1つ用いた光モジュールにおいて、光フィルタの代わりにミラーを用いた構造においても、光部品実装構造1を応用できる。
【0060】
第2の実施形態を説明する。
【0061】
図3(a)および図3(b)に示すように、光部品実装構造31は、金属製でブロック状の光部品保持部材32を用い、その光部品保持部材32に水平光路HLと連通する保持部材用光路(保持部材用光路穴)L3を形成したものである。光部品保持部材31のその他の構成は、図1の光部品実装構造1と同じである。
【0062】
光フィルタ10は、光部品保持部材32に保持部材用光路L3を横断するように設けられ、接着剤で接着固定される。光部品保持部材32は、水平光路HLのベース面bと光部品取り付け面fに、抵抗溶接やYAG溶接などの溶接、ネジ、圧入などにより固定される。圧入する場合は、予めパッケージ11に圧入部を形成しておく。
【0063】
この光部品実装構造31では、パッケージ11に光部品保持部材32を接着剤を使用せずに固定できるので、図1の光部品実装構造1と比べれば、温度安定性と長期信頼性がより高まる。
【0064】
第3の実施形態を説明する。
【0065】
図4(a)および図4(b)に示すように、光部品実装構造41は、金属製の光部品保持部材42を用い、その光部品保持部材42内に光フィルタ10を保持するための後述する保持部43を設けたものである。
【0066】
光部品保持部材42は、上下2分割の上保持部材42uと下保持部材42dからなり、下保持部材42dに上述した切り欠き部4が形成される。各上下保持部材42u,42dの光部品取り付け面f側となる片側(正面側、図4(a)では左側)には、光フィルタ10を接触させ保持すると共に、保持部材用光路L4の正面側を区画形成する正面側支持部44,44が形成され、光部品取り付け面fとは反対側(背面側、図4(a)では右側)には、光フィルタ10を接触させ保持すると共に、保持部材用光路L4の背面側を区画形成する側面視で三角形状の背面側支持部45,45が形成される。
【0067】
図5(a)および図5(b)に示すように、これら正面側支持部44,44と背面側支持部45,45により形成される光部品保持部材42内の空間が保持部43である。光部品保持部材42は、光フィルタ10を保持部43に保持すると、光フィルタ10と各上下保持部材42u,42dとの間に後述する融着部46となる空間が生じるように形成される。
【0068】
また、上下の正面側支持部44,44間、保持部43の中央部、上下の背面側支持部45,45間で区画形成される空間が保持部材用光路L4である。
【0069】
光部品実装構造41の組み立ては、まず、上保持部材42uと下保持部材42dとからなる光部品保持部材42内の保持部43に光フィルタ10を保持する。光フィルタ10は、正面側支持部44と背面側支持部45との間に挟まれて保持され、融着部46において低融点ガラスを用いて、光フィルタ10を光部品保持部材42に融着固定する。
【0070】
本実施形態では、背面側支持部45を三角形状に形成して、光フィルタ10を各上下保持部材42u,42dにより左右(図5(b)では上下)方向から挟んで保持することで、背面側支持部45の内面に接触した光フィルタ10を正面側支持部44の内面に押し付けて保持できる構造とした。背面側支持部の形状は、光フィルタ10を正面側支持部に押し付けられる形状であれば、三角形状に限定されるものではない。
【0071】
その後、図4(a)に示すように、水平光路HLのベース面bと光部品取り付け面fに、光部品保持部材42を抵抗溶接やYAG溶接などの溶接、ネジ、圧入などにより固定すると、光部品実装構造41が得られる。圧入する場合は、予めパッケージ11に圧入部を形成しておく。
【0072】
この光部品実装構造41では、接着剤を使用せずに、光部品保持部材42に光フィルタ10を、さらにパッケージ11に光部品保持部材42を固定しており、水平光路HL途上に接着剤がないので、図1の光部品実装構造1や図3の光部品実装構造31と比べれば、温度安定性と長期信頼性がさらに高まる。
【0073】
上記実施形態では、光部品保持部材に切り欠き部4を形成した例で説明したが、ブロック状の光フィルタを上述した光部品保持部材とほぼ同じ大きさに形成した上で、そのブロック状の光フィルタに切り欠き部4と同様の切り欠き部を直接形成すると共に、光部品取り付け面に直接接着してもよい。
【0074】
この場合、上記実施形態と比べれば、フィルタ面積が大きくなるが、光フィルタ接着時の作業性が向上する利点があり、その他は図1の光部品実装構造1と同じ作用効果が得られる。
【0075】
次に、切り欠き部がないタイプの第4の実施形態を説明する。
【0076】
図6(a)および図6(b)、図7(a)および図7(b)に示すように、光部品実装構造61は、後述する2枚の金属製の板バネからなる光部品保持部材62を用いて、光フィルタ10を前後(図6(a)では左右)両側から挟んで保持し、光フィルタ10を保持した光部品保持部材62をパッケージ11に形成された光部品取り付け部としての圧入部63に圧入固定したものである。パッケージ11の水平光路HLを挟んで左右(図7(b)では上下)両側面(圧入部63の対向する平行面)が光部品取り付け面fとなる。
【0077】
各板バネ62f,62bは、把持部64を有する略コ字状に形成されると共に、把持部64が左右(図7(b)では上下)両側から内側方向に傾きを設けて形成される。これら板バネ62f,62bにより、把持部64で把持される光フィルタ10を左右両側から内側に付勢して保持する。
【0078】
各板バネ62f,62bの中央部には、正面あるいは背面視で円形あるいは楕円形状の保持部材用光路L6が形成される。圧入部63は、切削加工でパッケージ11を製造する際に形成しておく。
【0079】
その後、図7(b)に示すパッケージ11に形成した圧入部63に、光フィルタ10を保持した光部品保持部材62を圧入して固定すると、光部品実装構造61が得られる。
【0080】
この光部品実装構造61では、接着剤を使用せず、溶接、融着もしない完全接着剤フリーでパッケージ11に光フィルタ10を固定できる。さらに、光部品実装構造61では、板バネ62f,62bが上述した接着剤の働きをするだけでなく、周囲温度変化による光フィルタ10やパッケージ11の変動、応力を緩和・吸収するので、図5の光部品実装構造51と比べれば、温度安定性と長期信頼性がより高まる。
【0081】
上記実施形態では、各光部品実装構造を図8の光モジュール80に用いる例で説明したが、LDを1個備えた光送信アセンブリや、PDを1個備えた光受信アセンブリに限らず、複数個のLD及び/又は複数個のPDを用いた各種の光モジュールに、各光部品実装構造を用いてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0082】
【図1】図1(a)は本発明の好適な第1の実施形態を示す光部品実装構造の斜視図、図1(b)はその1B−1B線断面図、図1(c)はその拡大平面図である。
【図2】図2(a)〜図2(c)は、図1に示した光部品実装構造の製造工程を示す図である。
【図3】図3(a)は第2の実施形態を示す光部品実装構造の縦断面図、図3(b)はその拡大平面図である。
【図4】図4(a)は第3の実施形態を示す光部品実装構造の縦断面図、図4(b)はその拡大平面図である。
【図5】図5(a)および図5(b)は、図4に示した光部品実装構造の製造工程を示す図である。
【図6】図6(a)は第4の実施形態を示す光部品実装構造の拡大平面図、図6(b)はその6B線矢視図である。
【図7】図7(a)および図7(b)は、図6に示した光部品実装構造の製造工程を示す図である。
【図8】従来の光部品実装構造を用いた光モジュールの縦断面図である。
【図9】図8に示した光部品実装構造の拡大縦断面図である。
【図10】図10(a)は図8の10A−10A線断面図、図10(b)は別の一例を示す拡大断面図である。
【符号の説明】
【0083】
1 光部品実装構造
2 光部品保持部材
3 光部品保持部材の角部
4 切り欠き部
10 光フィルタ(光部品)
12 ベース面と光部品取り付け面が交わる角部
b ベース面
f 光部品取り付け面(光部品取り付け部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光信号を反射又は透過する光部品と、上記光部品が実装されると共に上記光信号を伝搬するための光路が形成されたパッケージとを備え、上記パッケージ内に形成された光部品取り付け部は、上記光路のベース面から起立すると共に上記光路を挟んで形成される光部品実装構造において、
上記光部品を所定の面に保持する光部品保持部材は、上記光路に臨んで上記ベース面に着座すると共に上記光部品取り付け部に取り付けられ、さらに上記ベース面と上記光部品取り付け部の交わる角部に対応する位置に切り欠き部を形成したことを特徴とする光部品実装構造。
【請求項2】
上記光部品は上記光路の幅よりも狭く形成され、上記光部品保持部材は上記光路の幅よりも広く形成される請求項1記載の光部品実装構造。
【請求項3】
上記光部品保持部材はブロック状の透明部材で形成される請求項1または2記載の光部品実装構造。
【請求項4】
上記光部品保持部材は金属で形成され、さらに上記光信号を伝搬するための保持部材用光路が形成される請求項1または2記載の光部品実装構造。
【請求項5】
上記光部品保持部材は、上記光部品を支持する正面支持部と背面支持部とを備えると共に、上記光部品保持部材内に上記光部品を保持する保持部を備える請求項4記載の光部品実装構造。
【請求項6】
光信号を反射又は透過する光部品と、上記光部品が実装されると共に上記光信号を伝搬するための光路が形成されたパッケージとを備え、上記パッケージ内に形成された光部品取り付け部は、上記光路のベース面から起立すると共に上記光路を挟んで形成される光部品実装構造において、
上記光部品は、上記光路に臨んで上記ベース面に着座すると共に上記光部品取り付け部に取り付けられ、さらに上記ベース面と上記光部品取り付け部の交わる角部に対応する位置に切り欠き部を形成したことを特徴とする光部品実装構造。
【請求項7】
光信号を反射又は透過する光部品と、上記光部品が実装されると共に上記光信号を伝搬するための光路が形成されたパッケージとを備え、上記パッケージ内に形成された光部品取り付け部は、上記光路のベース面から起立すると共に上記光路を挟んで形成される光部品実装構造において、
上記光部品は、上記光部品の一方の面と他方の面とを挟んで保持する光部品保持部材により保持され、上記光部品取り付け部に上記光部品保持部材と共に圧入固定されることを特徴とする光部品実装構造。
【請求項8】
電気信号を光信号に、または光信号を電気信号に変換するべく、光素子を収納した光モジュールにおいて、請求項1〜7いずれかに記載の光部品実装構造を備えたことを特徴とする光モジュール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2008−286875(P2008−286875A)
【公開日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−129550(P2007−129550)
【出願日】平成19年5月15日(2007.5.15)
【出願人】(000005120)日立電線株式会社 (3,358)
【Fターム(参考)】