説明

光量調整装置

【目的】 シャッタ装置や絞り装置等の光量調節装置のアクチエータが地板上において多くの範囲を占めないコンパクトなものを提供する。
【構成】 光量調節装置は、少なくとも外周面が周方向に分割して異なる極に交互に着磁され回転中心を中心として回転可能なマグネットを備え、該マグネットの軸方向にコイルを配置し、コイルにより励磁される外側磁極部と内側磁極部がマグネットの外周面及び内周面に対向したステータとマグネットと一体的に構成された羽根駆動ピンとからなる駆動装置と、開口部を備えた地板と、駆動装置の羽根駆動ピンにより駆動され地板の開口部の開口量を調節する光量調節羽根とを備える。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、カメラのシャッタ特にレンズシャッターカメラのシャッタ装置やビデオカメラの絞り装置等の光量調節装置に関する。
【0002】
【従来の技術】従来のレンズシャッターカメラのシャッタ装置としては図5に示すものがある。101は永久磁石、102は駆動レバー、102aは駆動レバーに設けられた駆動ピンである。駆動レバー102は永久磁石101に固着され永久磁石101と一体的に回転する。103はコイル、104、105は軟磁性材料からなりコイルにより励磁されるステータである。ステータ104とステータ105とは104aと105aにおいて接合されており磁気回路上一体となっている。コイル103への通電によりステータ104及びステータ105が励磁され永久磁石101は所定の角度内を回転駆動する。106、107はシャッタ羽根であり、108は地板である。シャッタ羽根106、107は地板108のピン108a、108bに106a,107aにおいて回転可能に取り付けられ、長穴106b、107bが前記駆動ピン102aに摺動可能に嵌合し、永久磁石101とともに駆動レバー102が回転する事でシャッタ羽根106、107は回転中心106a,107aを中心に回転駆動され不図示の開口を開閉する。
【0003】この他の形態としてはコストアップを防ぐ為に永久磁石をプラスチックマグネットで形成し駆動ピンを一体的に成形したものもある。109はシャッタ羽根106、107を地板108との間で移動可能に保持する前地板であり、110はステータ104、105を保持し永久磁石101を回転可能に保持する後地板である。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】上記シャッタ装置はコイルやステータにより地板の多くの範囲を占めてしまい他のアクチエータやレンズのガイド棒等を配置する事が困難になってしまう。
【0005】また、上記シャッタ装置の永久磁石101は光軸を中心とする円周方向の両隣をステータ104で占められる為に駆動ピン102aを光軸を中心とする円の半径方向に移動するように構成する為には駆動ピン102aは永久磁石101の軸方向に関してステータ104と重複しない位置になるよう構成しなければならない。駆動ピン102aを永久磁石と一体的に成形したものの場合駆動ピンも着磁されてしまう事が多いのでその場合ステータに近いと出力特性に悪影響を及ぼしてしまう。
【0006】永久磁石101と駆動ピン102aとを別の材質で製造しこれを駆動レバー等を介して接着や圧入で一体化する方法はコストアップを招いたり着磁の位相と駆動ピンの位置との間で組み立て誤差が生じて出力特性が不安定なものとなる傾向がある。
【0007】したがって、本発明の目的はシャッタ装置や絞り装置等の光量調節装置のアクチエータが地板上において多くの範囲を占めないコンパクトなものを提供する事にある。
【0008】また、本発明の目的は出力特性が安定し、しかも低コストの光量調節装置とする事にある。
【0009】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決するために、本発明は、第1に、少なくとも外周面が周方向に分割して異なる極に交互に着磁され回転中心を中心として回転可能なマグネットを備え、該マグネットの軸方向にコイルを配置し、前記コイルにより励磁される外側磁極部と内側磁極部が前記マグネットの外周面及び内周面に対向したステータと前記マグネットと一体的に構成された羽根駆動ピンとからなる駆動装置と、開口部を備えた地板と、前記駆動装置の羽根駆動ピンにより駆動され前記地板の開口部の開口量を調節する光量調節羽根とを備えた事を特徴とするものである。
【0010】上記構成において前記コイルはマグネットと軸方向に配置されるので地板上において多くの範囲を占めないコンパクトなアクチエータとなりマグネットの外周面と内周面に対向する外側磁極部と内側磁極部とでマグネットを挟む磁路となるので磁気抵抗が少なくまたコイルにより発生する磁力線が効果的にマグネットに作用する為出力の高いアクチエータとなり結果的にコンパクトで安定した動作特性を備えたシャッタ装置とする事ができる。
【0011】また、上記課題を解決するために、本発明は、第2に、第1の発明に加え更に前記ステータの外側磁極部は前記マグネットの外周部に所定の角度範囲のみに対向する歯により構成され、前記マグネットに一体的に構成された前記羽根駆動ピンは前記外側磁極が対向していないマグネットの範囲に形成されている事を特徴とするものである。
【0012】駆動ピンは外側磁極とは離れたところに位置する為駆動ピンを永久磁石の材料で構成しても駆動ピン部における発生する電磁力は非常に小さくマグネット全体の出力特性に影響を及ぼさずシャッタ装置の安定したアクチエータとする事ができる。
【0013】また駆動ピンはマグネットと一体的に成形されるので別部品で構成される場合に比べ低コストで少ない組み立て誤差となる。またマグネットの回転軸に関して外側磁極とは重複する位置に駆動ピンを配置できるので概略円筒形状の本アクチエータの軸方向の長さを低く抑える事もできる。
【0014】
【実施例】(実施例1)図1〜図4は本発明の実施例を示す図であり、そのうち、図1は絞り羽根駆動機構の分解斜視図であり、図2は断面図、図3は非通電時の図2のA−A断面図、図4はコイルへ最大通電時の図2のA−A断面図である。
【0015】1はプラスチックマグネット材料からなり概略円筒形状のマグネットであり少なくても外周面を円周方向に2分割してS極、N極に着磁されている。着磁部1aは外周面がN極、着磁部1bは外周面がS極に着磁されている。
【0016】2は円筒形状のコイルであり、コイル2は前記マグネット1と同心でかつ、マグネット1を軸方向隣り合う位置に配置され、コイル2はその外径が前記マグネット1の外径とほぼ同じ寸法である。
【0017】3は軟磁性材料からなるステータで、ステータ3は外筒および円柱柱形状の内筒3bからなっている。ステータ3の外筒はその先端部が歯形状の外側磁極3aを形成している。外側磁極3aはマグネット1の外周面に所定の隙間を持って所定の角度のみに対向するように構成されている。本実施例では前記所定の角度は180度以下である。
【0018】4は補助ステータで内径部4aがステータ3の内筒3bに嵌合して固着されかつ外径部には前記ステータの外側磁極3aに対向した位相に対向部4b部が形成されている。
【0019】ステータ3の円柱形状の内筒3bと補助ステータ4とで内側磁極を構成している。マグネット1には外側磁極3aと対向していない位置に腕1cが一体的に形成されており腕1cの先端には羽根駆動ピン1dが形成されている。また概略円筒状であるマグネット1の軸方向の位置に関して外側磁極3aとは重複する位置に腕1cを配置している。また羽根駆動ピン1dは後述の地板5の開口部5aの中心に向かう或いは離れる方向すなわち半径方向に概略移動するように配置されている。
【0020】5は本光量調節装置の地板である。地板は開口部5aを備えている。前記マグネット1は軸部1eが地板5の5d部に回転可能に嵌合し軸部1fがステータ3の穴3c部に回転可能に嵌合し取り付けられている。ステータ3は外側磁極3a部において地板5に固定されている。
【0021】6はトーションスプリングで内径部6cが地板5のダボ5eに嵌まり腕6bは地板5のダボ5fに固定され腕6aがマグネット1の腕1c上のピン1gに当接し図3においてマグネット1を時計回り方向に付勢する。マグネット1の腕はこの状態では地板5の突起部5eに腕1cが当接し係止される。図3に示すこの状態はコイル2への通電がなされていない状態である。
【0022】7、8は光量調節羽根であり穴7a、8aがそれぞれ地板5のピン5b、5cに回転可能に嵌合している。また長穴7b、8bはマグネット1の駆動ピン1dに摺動可能に嵌合しておりマグネット1の回転に応じて地板5の開口部5aの開口量を変化させる。
【0023】図3のマグネット1の回転位置は光量調節羽根8、9により開口5aを閉じた状態であり図4のマグネット1の回転位置は光量調節羽根8、9はり開口5aより待避した位置であり開口部5aを開放状態にしている状態である。
【0024】9は前地板で地板5との間に所定の空間を保ち該空間に前記光量調節羽根8、9が移動可能に保持するものである。
【0025】図3の状態からコイル2に通電を行ないステータ3の外側磁極3aをS極、内側磁極である補助ステータ4をN極に励磁するとコイル2に流す電流量に応じてトーションスプリング6の付勢力に抗してマグネット1は反時計回りに回転し所望の回転位置になり光量調節羽根7、8を回転させ開口量を調節する。コイル2への電流を最大値にすると図4に示すマグネット1の位置になり開口5aは前記光量調節羽根8、9により遮られない最大開口となる。コイル2への電流を切れば図3に示す状態になり光量調節羽根7、8は地板5の開口5aを遮蔽する。
【0026】カメラのシャッタ装置として用いるのならばコイルへの通電時間を変化させる事で露光量を調節する事ができ、ビデオカメラの絞り調節機構として用いるのであればコイル2への通電電流値を変更する事により露光量を調節する事ができる光量調節装置となる。
【0027】駆動ピン1dは外側磁極とは離れたところに位置する為駆動ピンを永久磁石の材料で構成し駆動ピンが着磁されても駆動ピン部における発生する電磁力は非常に小さくマグネット全体の出力特性に影響を及ぼさずシャッタ装置の安定したアクチエータとする事ができる。また駆動ピンはマグネットと一体的に成形されるので別部品で構成される場合に比べ低コストで少ない組み立て誤差となる。またマグネットの回転軸に関して外側磁極とは重複する位置に駆動ピンを配置できるので概略円筒形状の本アクチエータの軸方向の長さL(図2参照)を低く抑える事もできる。
【0028】上記構成において前記コイルはマグネットと軸方向に配置されるので図3においてHで示す寸法に関して地板上において多くの範囲を占めないコンパクトなアクチエータとなりまた、マグネットの外周面と内周面に対向する外側磁極部と内側磁極部とでマグネットを挟む磁路となるので磁気抵抗が少なくまたコイルにより発生する磁力線が効果的にマグネットに作用する為出力の高いアクチエータとなり結果的にコンパクトで安定した動作特性を備えた光量調節装置とする事ができる。
【0029】ステータ3の外側磁極をマグネット1の軸方向と平行方向に延出する歯により構成しているのでステータ3の直径はマグネット直径に磁気ギャップと自らの肉厚を加えた最小限の寸法に抑える事ができ非常に小径のアクチエータとする事ができる。
【0030】
【発明の効果】以上詳記したように、本発明によれば、少なくとも外周面が周方向に分割して異なる極に交互に着磁され回転中心を中心として回転可能なマグネットを備え、該マグネットの軸方向にコイルを配置し、前記コイルにより励磁される外側磁極部 と内側磁極部が前記マグネットの外周面及び内周面に対向したステータと前記マグネットと一体的に構成された羽根駆動ピンとからなる駆動装置と、開口部を備えた地板と、前記駆動装置の羽根駆動ピンにより駆動され前記地板の開口部の開口量を調節する光量調節羽根とから光量調節装置を構成した事により、マグネットの外周面と内周面に対向する外側磁極部と内側磁極部とでマグネットを挟む磁路となるので磁気抵抗が少なくまたコイルにより発生する磁力線が効果的にマグネットに作用する為出力の高いアクチエータとなり結果的にコンパクトで安定した動作特性を備えたシャッタ装置となる。
【0031】また駆動ピンはマグネットと一体的に成形されるので別部品で構成される場合に比べ低コストで少ない組み立て誤差となる。ステータ3の外側磁極をマグネット1の軸方向と平行方向に延出する歯により構成しているのでステータ3の直径はマグネット直径に磁気ギャップと自らの肉厚を加えた最小限の寸法に抑える事ができ非常に小径のアクチエータとする事ができる。
【0032】また上記に記載のモータを備え光量調整装置において、前記ステータの外側磁極部は前記マグネットの外周部に所定の角度範囲のみに対向する歯により構成され、前記マグネットに一体的に構成された前記羽根駆動ピンは前記外側磁極が対向していないマグネットの範囲に形成されている事により、駆動ピン1dは外側磁極とは離れたところに位置する為駆動ピンを永久磁石の材料で構成し駆動ピンが着磁されても駆動ピン部における発生する電磁力は非常に小さくマグネット全体の出力特性に影響を及ぼさずシャッタ装置の安定したアクチエータとする事ができる。
【0033】また、マグネットの回転軸に関して外側磁極とは重複する位置に駆動ピンを配置できるので概略円筒形状の本アクチエータの軸方向の長さLを低く抑える事もできる。
【0034】上記構成において前記コイルはマグネットと軸方向に配置されるので図3においてHで示す寸法に関して地板上において多くの範囲を占めないコンパクトなアクチエータとなる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は本発明の実施例の光量調節装置の分解斜視図である。
【図2】図2は光量調節装置の断面図である。
【図3】図3は非通電時の図2のA−A断面図である。
【図4】図4はコイルへ最大通電時の図2のA−A断面図である。
【図5】図5は従来のシャッタ羽根駆動装置である。
【符号の説明】
1 マグネット
2 コイル
3 ステータ
4 補助ステータ
5 地板
6 トーションスプリング
7,8 羽根
9 前地板

【特許請求の範囲】
【請求項1】少なくとも外周面が周方向に分割して異なる極に交互に着磁され回転中心を中心として回転可能なマグネットを備え、該マグネットの軸方向にコイルを配置し、前記コイルにより励磁される外側磁極部 と内側磁極部が前記マグネットの外周面及び内周面に対向したステータと前記マグネットと一体的に構成された羽根駆動ピンとからなる駆動装置と、開口部を備えた地板と、前記駆動装置の羽根駆動ピンにより駆動され前記地板の開口部の開口量を調節する光量調節羽根とを備えた光量調節装置。
【請求項2】請求項1記載の光量調節装置において、前記ステータの外側磁極部は前記マグネットの外周部に所定の角度範囲のみに対向する歯により構成され、前記マグネットに一体的に構成された前記羽根駆動ピンは前記外側磁極が対向していないマグネットの範囲に形成されている事を特徴とする光量調節装置。

【図2】
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【図1】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2002−49076(P2002−49076A)
【公開日】平成14年2月15日(2002.2.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2000−233847(P2000−233847)
【出願日】平成12年8月2日(2000.8.2)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】