説明

光開始剤基を有する反応性オリゴマーからの親水性材料

本発明は、親水性ゲルの調製に有用な架橋性組成物を提供し、ペンダントの親水性ポリ(アルキレンオキシド)基、ペンダントの光開始剤基、および任意に重合性官能基を有するオリゴマーから調製され、多官能性ポリ(アルキレンオキシド)で架橋される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な親水性架橋性オリゴマー組成物およびそれから作製される物品に関する。本組成物は、ゲル材料およびこのような材料を組み込む医療用物品、特に、創傷ドレッシングとして有用な医療用物品の作製に有用な可能性がある。
【背景技術】
【0002】
従来、創傷からの滲出物は、吸収性材料を含有するドレッシングを使用してそれを吸収することによって処置されてきた。このようなドレッシングは、接着テープバッキングに取り付けられたパッド付き吸収性材料を含有した。パッド付き吸収性材料は、創傷滲出物を吸収するために創傷に適用される。このタイプのドレッシングの問題点は、創傷が治癒する時、典型的には、かさぶたが形成し、パッドの一部になることである。このため、ドレッシングを除去するとき、かさぶたが除去される。この問題は、吸収性材料と創傷の間に多孔質フィルムを提供し、形成されるかさぶたが吸収性材料に固着する可能性を低減することによって対処されてきた。
【0003】
現在の創傷ケア製品には、ハイドロコロイド吸収剤を使用しているものがある。このような材料は、典型的には透明度が低く、外側から処置状態を観察できない。また、このような材料は、創傷流体を吸収した後、その一体性を部分的に喪失する可能性がある。ハイドロコロイドドレッシングの可撓性は低い可能性があり、そのため、ドレッシングを身体の屈曲部分(関節など)に適用することが困難である。創傷と接触する吸収剤の部分は、ゲル状の材料に転換され、ドレッシングを除去するとき、この吸収性材料の一部が創傷の中に残る可能性があり、検査を可能にするために、および/または、別のドレッシングを適用する前に除去されなければならない。
【0004】
更に最近では、褥瘡および潰瘍用のいわゆる「閉鎖性」ドレッシングの使用が受け入れられてきている。これらの製品のほとんどは、少なくとも1つの内側皮膚接触層と1つの外側バッキング層を含む、数層から形成される。ドレッシングは、褥瘡または潰瘍用の被覆材として、創傷領域の周囲に縁を提供するサイズで適用され、皮膚に接着密閉する。内層は、創傷からの流体が層の中に吸収されるように吸水性材料を含有し、少なくとも数日間、ドレッシングを所定の場所に保持できるようにする。このような閉鎖性ドレッシングは、かさぶたを形成することなく創傷を湿潤状態に維持し、細菌性感染に対するバリアの役割をすることによって治癒を促進する傾向がある。「湿潤創傷治癒」用のこのようなドレッシングは、皮膚熱傷、外傷性皮膚欠損症、および切創などに特に有用である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
創傷ドレッシングなどの医療用途に有用な既知の親水性ゲル材料があるが、多くのものは、吸収性と凝集強度の適切なバランスを有していない。このため、追加のこのような材料が必要である。更に、創傷ドレッシングまたは創傷填塞(wound packing)材料などの医療用物品に使用するため、透明および/または可撓性でもある閉鎖性材料を提供することが望ましい可能性がある。更に、溶融加工可能で低い残留分を含有する組成物を提供することが望ましい可能性がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、ウェブ上に流延され、連鎖成長機構によって硬化されて均一なコーティング、特にゲルコーティングを得ることができる反応性で溶融加工可能な材料を提供する。ある一定の範囲の用途のための特定の特性を提供するため、オリゴマー、架橋剤および反応進行度、または架橋密度は様々であり得る。これらの材料の分子量は、それらを容易に加工することができ、経済的利点および/または環境上の利点が得られるようなものである。後で、材料を紫外線などの化学線エネルギーの適用により硬化させ、改善された最終的な機械的特性を得ることができる。このように、これらの材料は現在の技術の著しい進歩を示す。
【0007】
簡潔には、本発明は、ペンダントの親水性ポリ(アルキレンオキシド)基、ペンダントの光開始剤基、および任意にペンダントの重合性官能基を含有する第1のオリゴマー;および、重合性官能基および親水性ポリ(アルキレンオキシド)セグメントを有する共反応性の第2の成分の架橋剤から調製される新規な親水性オリゴマー組成物を提供する。
【0008】
一態様では、本発明は、
a)ペンダントの親水性ポリ(アルキレンオキシド)基およびペンダントの光開始剤基を有する複数の重合したモノマー単位を含む第1の成分のオリゴマー、および
b)重合性エチレン性不飽和末端基を有する親水性ポリ(アルキレンオキシド)架橋剤、
を含む、親水性架橋性オリゴマー組成物を提供する。
【0009】
本発明は、幾つかの利点の1つ以上を有し得る。本発明は、副生成物の生成がないかまたは最小限であり、且つ連鎖成長付加により架橋密度を達成する、紫外線架橋性組成物を提供する。組成物は、粘度が低く、容易に溶融加工可能且つ塗工可能であり、溶媒、モノマー、可塑剤、縮合反応若しくは置換反応の副生成物、および/または粘度調整剤などの残留分が最小限である。組成物は、特殊な装置を必要とすることなく、且つ、有毒または刺激性の可能性がある未反応の低分子量モノマー種に関する懸念を生じさせることなく、迅速且つ確実に調製することができる。更に、ペンダントの光開始剤基は、オリゴマーと架橋剤の反応を確実にする。
【0010】
別の態様では、本発明は、
a)本発明の架橋性オリゴマー組成物を基材に塗工する工程、
b)前記塗工された架橋性組成物に、前記組成物を架橋させるのに十分な化学線エネルギーを当てる工程、
を含む、少なくとも1つの面に、架橋された組成物(親水性ゲルなど)のコーティングを有する基材を製造するプロセスを提供する。
【0011】
性能、環境性および経済性を考慮して、光開始される重合は、基材に直接、ゲル層などのコーティングを作製するのに特に望ましい方法である。この重合技術では、(100℃以下で測定するとき)10,000センチポアズ以下の塗工可能な粘度を有する組成物を作り出し、組成物を基材に塗工した後、成分を架橋させて強度を増大することが有利である。
【0012】
本明細書で使用するとき、「溶融加工可能」または単に「加工可能」の用語は、溶媒、モノマー、可塑剤、および/または、粘度調整剤などの残留物の添加を必要とすることなく、且つ、特別な圧力を必要とすることなく、従来の押出し装置を使用し、オリゴマーおよび架橋剤の分解温度より低く、且つ尚早なゲル化が起こる温度より低い温度で塗工または押出しをするのに好適な低粘度を有するまたは達成するオリゴマー組成物を指すのに使用される。好ましくは、組成物は、100℃以下の温度で溶融加工可能である。
【0013】
一実施形態では、本発明は、吸収性医療用物品およびそれに使用する親水性ポリマーゲル材料を提供し、それらは好ましくは透明である。「ゲル」(または「ポリマーゲル」または「ポリマーゲル材料」または「親水性ゲル」)は、水をベースにする流体(血液、プラスマ、および細胞間流体を含む体液、または生理食塩水などの体液に類似の流体など)と接触して膨潤することができるが、水に溶解しないゲル材料を意味する。ゲルは、実質的に連続的であり、即ち、気胞状構造または空隙構造がなく(しかし、捕捉された気泡または破損などの小欠陥は存在してもよい)、従って、概ね固体または半固体の形態である。「ゲル」の用語は、水和の状態に関わらず使用される。好ましくは、ゲルは、それが水を吸収する表面(例えば、創傷)と接触するまで、水を含まない。重要なことには、水(または他の可塑剤)なしでも、本発明のゲル材料の好ましい実施形態は可撓性である。
【0014】
「吸収性」は、材料が流体、特には体液、好ましくは中程度から多量の体液を吸収すると同時に、その構造的一体性を保持できる(即ち、それが、例えば、創傷ドレッシングの役割をする機能を果たすことができるように十分そのままの状態を維持できる)ことを意味する。
【0015】
親水性の用語は、本明細書では、暴露される水をかなりの量吸収できる、典型的には、約50重量%より多く、好ましくは100重量%、更に好ましくは200重量%より多く吸収できるオリゴマー組成物を説明するのに使用される。
【0016】
好ましくは、ゲル材料は透明であり、流体の吸収後、その透明度を保持する。「透明」は、好ましい材料を患者(例えば、創傷部位)に適用したとき、ヘルスケアワーカーが創傷を観察できるように、ドレッシングの下にある領域が十分見えることを意味する。
【0017】
親水性ポリマーゲルの医療行為への応用は、例えば、創傷ドレッシング、創傷填塞材、接着剤(特に、感圧接着剤)、コンタクトレンズ、眼内レンズ、生物学的組織用接着剤、接着防止材料、血液精製用吸着剤、薬剤放出用ベース材料などに見出される。歯科成形または印象用材料は、可能性のある別の医療用物品用途である。従って、本明細書で使用するとき、「医療」用途は、歯科接着剤、修復材、コーティング、コンポジット、シーラントなどを含む歯科用途を包含する。水膨潤性ポリマーゲルは、生物学的組織のものに類似の組成および機械的特性を有するため、このようなゲルは将来、様々な分野に応用され得る。
【0018】
架橋密度を変えることができると、前述の様々な用途に好適な特性を変更することが可能になる。本発明の新規な組成物は、硬化して、例えば、剪断力、ピール性、リリース性、強度、硬さ、弾性、吸収性、および靭性などの、特定の構成要素の選択により、および架橋密度の制御により調整可能な特性を有する架橋された組成物を形成する。例えば、医療用ゲルおよび可撓性コーティングの要件は異なる場合があり、架橋された組成物を形成する方法は同じままで、材料の構造および架橋密度を変えることができる。最大架橋密度は、架橋性組成物に組み込まれる重合性官能基とペンダントの光開始剤基のパーセンテージによって予め決定される。また、改善された加工のため、系を部分的に転換または硬化させ、次の硬化段階を使用して最終的な特性を得ることが望ましい場合がある。
【0019】
本明細書で使用するとき、「架橋」の用語は、無限の分子量のポリマーの網目の形成を意味し、2より大きい官能価を有するオリゴマー反応物質との重合中に起こる。他の情報は、G.オーディアン、重合の原理、第3版、1991年、ジョンウィリー・アンド・サンズ、ニューヨーク、108頁(G.Odian, Principles of Polymerization, 3rd edition, 1991, John Wiley & Sons: New York, p.108)に見出される。連鎖成長プロセスによって、ペンダントの光開始剤基から発生するラジカルと架橋剤の重合性官能基との間に架橋が形成される。
【0020】
有利には、本発明は容易に加工され、溶媒、モノマー、可塑剤、および/または粘度調整剤などの残留分があまりなく、縮合または置換反応による副生成物を含有しない架橋性組成物を提供する。残留分を含有する硬化性の系は、未硬化から硬化した状態に変化するとき、密度の著しい増大が起こり、容積の正味の収縮を引き起こす可能性がある。周知のように、収縮は、多くの場合、接着力の全体的な損失、並びに、かなりの移動および予測不可能な位置合わせを引き起こす可能性がある。収縮は、コーティング中に残留応力を作り出す可能性があり、それは、後で機械的破壊に繋がる可能性がある。
【0021】
本発明の組成物は、溶媒蒸発および/またはモノマー重合による収縮を最小限にする。本発明の低収縮組成物は、歯科成形用途に、または正確な成形および/または位置合わせが必要とされるどの用途にも特に有用である。本発明は、100%固体として配合され、溶融加工され、化学線手段により硬化され得る、且つ、溶媒を媒体とするポリマーまたはシロップポリマー(即ち、ポリマーが未反応のモノマー中に溶解しているポリマー組成物)の特性を満たすかまたはそれを超える特性を示す、新規な種類の反応性オリゴマーを提供する。本発明は、2%未満の収縮、好ましくは1%未満の収縮を示す組成物を提供する。
【0022】
更に、高性能材料を製造するために、材料の純度および清浄な加工環境も重要である。コーティングおよびゲルに使用されるポリマーは、汚染がないようにするため、揮発性材料(モノマー種または他の残留物など)があまりない状態で送給されるのが望ましいことが多い。しかし、残留揮発性材料の問題は、とりわけ、移動可能な揮発性不純物の許容可能な限界が百万分の数部程度であるとき、ずっと手に負えない難題となる。医療および食品包装などの産業では、高純度、および、より低コストの材料が必要である。本発明の組成物は、残留物汚染による問題を回避し、2重量%未満、好ましくは1重量%未満の残留分を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
本発明は、親水性ゲルの調製に有用な架橋性組成物を提供する。本組成物は、ペンダントの親水性ポリ(アルキレンオキシド)基、ペンダントの光開始剤基、および任意にペンダントの重合性不飽和官能基を有するオリゴマーから調製され、エチレン性不飽和モノマーから形成される。本組成物は、
a)ペンダントの親水性ポリ(アルキレンオキシド)基、およびペンダントの光開始剤基、および任意にペンダントのフリーラジカル重合性官能基を有する複数の重合したモノマー単位を含む第1の成分のオリゴマー、並びに
b)重合性エチレン性不飽和末端基を有する親水性ポリ(アルキレンオキシド)架橋剤、
を含む。
【0024】
組成物は、第1の成分のオリゴマー100重量部当たり、硬化または架橋されたとき第1の成分のオリゴマー鎖1本当たり2より多くの架橋を提供するのに十分な量の前記架橋剤を含む。前記第1の成分のオリゴマーと前記架橋剤の相対的な量は、様々であってよい、即ち、第1の成分のオリゴマー50〜99.9重量部(好ましくは80〜99.9重量部)、架橋剤0.1〜50重量部(好ましくは0.1〜20重量部)であってよい。概ね、前記架橋剤の量は、10重量部以下である。しかし、相対的な量は、架橋された組成物が親水性となるように、即ち、少なくとも50重量%の水を吸収するように選択される。
【0025】
一実施形態では、架橋剤は次式を有し:
Z−Q−CH(R1)−CH2−O−(CH(R1)−CH2−O)m−CH(R1)−CH2−Q−Z、
式中、Zは重合性エチレン性不飽和部分であり、R1はHまたはC1〜C4アルキル基であり、mは20〜500、好ましくは100〜400であり、Qは−O−、−NR1−、−CO2−および−CONR1−から選択される2価の連結基である。
【0026】
一実施形態では、第1のオリゴマー成分(a)は、
a)ペンダントの親水性ポリ(アルキレンオキシド)基を有する重合したモノマー単位20〜99重量部、好ましくは50〜90重量部、および
b)ペンダントの光開始剤基を有するエチレン性不飽和モノマーから誘導された重合したモノマー単位0.1〜25重量部、好ましくは0.1〜10重量部、
c)ペンダントの重合性基を有するエチレン性不飽和モノマーから誘導された重合したモノマー単位0〜25重量部、好ましくは0.1〜10重量部、および
d)(メタ)アクリル酸エステル、好ましくは炭素数1〜14の非第三級アルキルアルコールの(メタ)アクリル酸エステルから誘導された重合したモノマー単位0〜30重量部、好ましくは15重量部未満、および
e)少なくとも1種類の他のモノマー(後述)0〜40重量部、好ましくは25重量部未満、
を含む。
【0027】
前記説明に関して、第1の成分のオリゴマーは、ペンダントの重合性基を有する重合したモノマー単位と、ペンダントの光開始剤基を有するモノマー単位を含んでよいことが分かる。オリゴマーが、ペンダントの重合性基を有する重合したモノマー単位と、ペンダントの光開始剤基を有するモノマー単位の両方を含む場合、その合計は、0.1〜25重量部、好ましくは0.1〜10重量部を構成してもよい。
【0028】
第1の成分のオリゴマーは、次式のペンダントのポリ(アルキレンオキシド)基を有するエチレン性不飽和モノマーから誘導された重合したモノマー単位を含み:
Z−Q−(CH(R1)−CH2−Q)n−R2
式中、Zは、重合性エチレン性不飽和部分であり、R1はHまたはC1〜C4アルキル基であり、R2はHまたはC1〜C4アルキル基、アリール基、またはこれらの組み合わせであり、nは2〜100、好ましくは5〜20であり、Qは−O−、−NR1−、−CO2−および−CONR1−から選択される2価の連結基である。オリゴマーは、このようなモノマー単位を20〜99重量部、好ましくは50〜90重量部含む。
【0029】
一実施形態では、ポリ(アルキレンオキシド)基(−(CH(R1)−CH2−Q)n−と示される)は、ポリ(エチレンオキシド)(コ)ポリマーである。別の実施形態では、ペンダントのポリ(アルキレンオキシド)基は、ポリ(エチレンオキシド−コ−プロピレンオキシド)コポリマーである。このようなコポリマーは、ブロックコポリマー、ランダムコポリマー、またはグラディエントコポリマー(gradient copolymers)であってよい。
【0030】
モノマーの有用なエチレン性不飽和部分、Zには、以下のものを挙げてもよく、
【化1】

式中、R3はHまたはMeであり、r=1〜10である。
【0031】
ポリ(アルキレンオキシド)基を有するモノマーは、例えば、一官能性または二官能性アルキレンオキシド(コ)ポリマー(典型的には市販されている)を反応性エチレン性不飽和化合物(例えば、アクリレート)と反応させることにより調製することができる。ポリ(アルキレンオキシド)を終端させる官能基には、ヒドロキシ基、アミン基、およびカルボキシ基を挙げることができる。以下に限定されないが、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリロイルクロリド、無水(メタ)アクリル酸、および2−イソシアナトエチル(メタ)アクリレートを含む、アクリレート誘導体などの様々な反応性エチレン性不飽和化合物を使用することができる。好ましくは、モノマーは、一官能性または二官能性アルキレンオキシド(コ)ポリマーを無水(メタ)アクリル酸と反応させることにより調製される。典型的には、化学量論的な量のエチレン性不飽和反応物質を一官能性アルキレンオキシド(コ)ポリマー(モノヒドロキシ末端アルキレンオキシド(コ)ポリマーなど)と合わせると、一置換された生成物に100%転換される。
【0032】
好適な一官能性ポリ(アルキレンオキシド)モノマーの例には、ポリ(エチレンオキシド)(メタ)アクリレート、ポリ(プロピレンオキシド)(メタ)アクリレート、ポリ(エチレンオキシド−プロピレンオキシド)(メタ)アクリレート、およびこれらの組み合わせが挙げられる。このようなモノマーは、好ましくは、(C1〜C4)アルコキシ、アリールオキシ(例えば、フェノキシ)、および(C1〜C4)アルキルアリールオキシなどの1つの非反応性末端基を含む。これらの基は、直鎖または分岐とすることができる。これらのモノマーは、広範囲の分子量を有するものとすることができ、ペンシルバニア州エクストンのサートマー社(Sartomer Company, Exton, PA);日本、東京の新中村化学工業株式会社(Shinnakamura Chemical Co., Ltd., Tokyo, Japan);ウィスコンシン州ミルウォーキーのアルドリッチ(Aldrich, Milwaukee, WI);および、日本、大阪の大阪有機化学工業株式会社(Osaka Organic Chemical Ind., Ltd., Osaka, Japan)などの供給元から市販されている。
【0033】
第1の成分のオリゴマーは、光開始剤基を有するエチレン性不飽和モノマーから誘導されたモノマー単位を含む。オリゴマーは、このようなモノマー単位を0.1〜25重量部、好ましくは0.1〜10重量部含んでもよい。
【0034】
光開始剤基、好ましくは、α−開裂光開始剤基を含み、且つ前述のフリーラジカル重合性エチレン性不飽和モノマー(以下、「光開始剤モノマー」)と共重合可能なエチレン性不飽和モノマーは、架橋性組成物の約0.01〜約20pbw、好ましくは0.01〜8pbwを構成する。好ましい光開始剤モノマーには、次の構造式によって表される官能基を有するフリーラジカル重合性エチレン性不飽和化合物が挙げられ:
【化2】

式中、R2は、以下のものであり、
【化3】

式中、R1はHまたはC1〜C4アルキル基であり、
7、R8およびR9は、独立して、ヒドロキシル基、フェニル基、C1〜C6アルキル基、またはC1〜C6アルコキシ基である。
【0035】
様々な光開始剤モノマーは、第1の反応性官能基を含むエチレン性不飽和モノマーを、放射線感応性の基および第2の反応性官能基を含む化合物と反応させることにより製造することができ、2つの官能基は、互いに共反応性である。好ましい共反応性化合物は、炭素数が36までであり、任意に1個以上の酸素原子および/または窒素原子、および、少なくとも1つの反応性官能基を有するエチレン性不飽和脂肪族、脂環式、および芳香族化合物である。第1および第2の官能基が反応するとき、それらは共有結合を形成し、共反応性化合物を連結させる。
【0036】
有用な反応性官能基の例には、ヒドロキシル基、アミノ基、オキサゾリニル基、オキサゾロニル基、アセチル基、アセトニル基、カルボキシル基、イソシアナト基、エポキシ基、アジリジニル基、ハロゲン化アシル基、および環状酸無水物基が挙げられる。ペンダントの反応性官能基がイソシアナト基である場合、共反応性官能基は、好ましくはアミノ基、カルボキシル基、またはヒドロキシル基を含む。ペンダントの反応性官能基がヒドロキシル基を含む場合、共反応性官能基は、好ましくは、カルボキシル基、イソシアナト基、エポキシ基、酸無水物基、ハロゲン化アシル基、またはオキサゾリニル基を含む。ペンダントの反応性官能基がカルボキシル基を含む場合、共反応性官能基は、好ましくは、ヒドロキシル基、アミノ基、エポキシ基、ビニルオキシ基、またはオキサゾリニル基を含む。
【0037】
反応性官能基を有するエチレン性不飽和化合物の代表例には、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートおよび2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチル(メタ)アクリレートなどのヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート;3−アミノプロピル(メタ)アクリレートなどのアミノアルキル(メタ)アクリレートおよび4−アミノスチレン;2−エテニル−1,3−オキサゾリン−5−オンおよび2−プロペニル−4,4−ジメチル−1,3−オキサゾリン−5−オンなどのオキサゾリニル化合物;(メタ)アクリル酸および4−カルボキシベンジル(メタ)アクリレートなどのカルボキシ置換化合物;イソシアナトエチル(メタ)アクリレートおよび4−イソシアナトシクロヘキシル(メタ)アクリレートなどのイソシアナト置換化合物;グリシジル(メタ)アクリレートなどのエポキシ置換化合物;N−アクリロイルアジリジンおよび1−(2−プロペニル)−アジリジンなどのアジリジニル置換化合物;および、(メタ)アクリロイルクロリドなどのハロゲン化アクリロイルが挙げられる。
【0038】
共反応性化合物の代表例には、1−(4−ヒドロキシフェニル)−2,2−ジメトキシエタノン、1−[4−(2−ヒドロキシエチル)フェニル]−2,2−ジメトキシエタノン、(4−イソシアナトフェニル)−2,2−ジメトキシ−2−フェニルエタノン、1−{4−[2−(2,3−エポキシプロポキシ)フェニル]}−2,2−ジメチル−2−ヒドロキシエタノン、1−[4−(2−アミノエトキシ)フェニル]−2,2−ジメトキシエタノン、および1−[4−(カルボメトキシ)フェニル]−2,2−ジメトキシエタノンなどの官能基置換化合物が挙げられる。このような光開始剤モノマー(および、それから誘導されたポリマー光開始剤)は、例えば、米国特許第5,902,836号明細書(バブ(Babu)ら)および同第5,506,279号明細書(バブ(Babu)ら)に記載されており、それらの開示は参照により本明細書に援用される。
【0039】
前記説明に関して、光開始剤基は、少なくとも2つの方法で、即ち、光開始剤基を有するモノマー単位を他の成分のモノマーと共に重合し、第1の成分のオリゴマーを生成する「直接法」、または、オリゴマーに反応性官能基を提供し、それを後で、共反応性官能基を有する光開始剤化合物で官能化して第1の成分のオリゴマーを生成する「間接法」で、第1の成分のオリゴマーに組み込まれ得ることが分かる。
【0040】
組成物は、更に非ポリマーまたは非重合性光開始剤を含んでもよい。有用な光開始剤には、ベンゾインメチルエーテルおよびベンゾインイソプロピルエーテルなどのベンゾインエーテル;イルガキュア(Irgacure)(登録商標)651光開始剤(ニューヨーク州アーズリーのチバガイギー社(Ciba−Geigy Corp.;Ardsley, NY))として入手可能な2,2−ジエトキシアセトフェノン、イーサキュア(Esacure)(登録商標)KB−1光開始剤(ペンシルバニア州ウエストチェスターのサートマー社(Sartomer Co.; West Chester, PA))として入手可能な2,2−ジメトキシ−2−フェニル−1−フェニルエタノン、および、ジメトキシヒドロキシアセトフェノンなどの置換アセトフェノン;2−メチル−2−ヒドロキシプロピオフェノンなどの置換α−ケトール;2−ナフタレン−スルホニルクロリドなど;1−フェニル−1,2−プロパンジオン−2−(O−エトキシ−カルボニル)オキシムなど;が挙げられる。これらの中で特に好ましいのは、置換アセトフェノンである。
【0041】
好ましい光開始剤は、ノーリッシュ(Norrish)I開裂を経て、フリーラジカルを発生させる光活性化合物であり、それはアクリル二重結合への付加によって開始できる。ノーリッシュI光架橋剤、とりわけ、α−開裂タイプの光開始剤が好ましい。
【0042】
組成物の第1の成分のオリゴマーは、(メタ)アクリロイル、(メタ)アクリロキシ、プロパルギル、ビニル、アリル、アセチレニルおよび(メタ)アクリルアミドを含むフリーラジカル重合性不飽和を含む、1つ以上のペンダント基を含んでもよい。このようなペンダント基は、少なくとも2つの方法でオリゴマーに組み込むことができる。最も直接的な方法は、モノマー単位の中に、2つ以上のフリーラジカル重合性基、好ましくは反応性の異なる2つ以上のフリーラジカル重合性基を有するモノマーを含むことである。オリゴマーは、オリゴマーの総重量を基準にして、このようなモノマー単位を0〜25重量部、好ましくは0.1〜10重量部含んでもよい。オリゴマーが、ペンダントの重合性基を有する重合したモノマー単位と、ペンダントの光開始剤基を有するモノマー単位の両方を含む場合、その合計は、0.1〜25重量部、好ましくは0.1〜10重量部を構成してもよい。
【0043】
ペンダントのフリーラジカル重合性官能基を組み込む「直接法」を使用する場合、有用な官能性モノマーには、ビニル基、ビニルオキシ基、(メタ)アクリル基、(メタ)アクリルアミド基を含む炭素−炭素二重結合を含有する基、およびアセチレン基などの、フリーラジカル付加できる官能基を含む、炭素数が約36までの不飽和脂肪族、脂環式、および芳香族化合物が挙げられる。
【0044】
使用できるポリエチレン性不飽和モノマーの例には、以下に限定されないが、エチレングリコールジアクリレート、プロピレングリコールジメタクリレート、ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ペンタエリトリトールジ−、トリ−、およびテトラアクリレート、並びに1,12−ドデカンジオールジアクリレートなどのポリアクリル官能性モノマー;アリル(メタ)アクリレート、2−アリルオキシカルボニルアミドエチルメタクリレート、および2−アリルアミノエチルアクリレートなどのオレフィン−(メタ)アクリル官能性モノマー;アリル2−アクリルアミド−2,2−ジメチルアセテート;ジビニルベンゼン;2−(エテニルオキシ)エチル(メタ)アクリレート、3−(エチニルオキシ)−1−プロペン、4−(エチニルオキシ)−1−ブテン、および4−(エテニルオキシ)ブチル−2−アクリルアミド−2,2−ジメチルアセテートなどのビニルオキシ基置換官能性モノマーが挙げられる。ペンダントの不飽和を有するポリマーを調製するのに使用され得る、有用なポリ不飽和モノマー、および、有用な反応性/共反応性化合物は、参照によりその内容全体が本明細書に援用される米国特許第5,741,543号明細書(ウィンスロー(Winslow)ら)に更に詳細に記載されている。
【0045】
好ましいポリ不飽和モノマーは、不飽和基が異なる反応性を有するものである。当業者は、不飽和基に結合している特定の部分が、これらの不飽和基の相対的な反応性に影響を与えることを認識している。例えば、反応性の等しい不飽和基を有するポリ不飽和モノマー(例えば、HDDA)を使用する場合、組成物の尚早なゲル化が起こらないように、例えば、ラジカルスカベンジャーの役割をする酸素の存在により保護されなければならない。逆に、反応性の異なる不飽和基を有するポリ不飽和モノマーを使用する場合、より反応性の低い不飽和基(ビニル基、アリル基、ビニルオキシ基またはアセチレン基など)が反応して組成物を架橋する前に、より反応性の高い基((メタ)アクリレート基または(メタ)アクリルアミド基など)が優先的にオリゴマー主鎖に組み込まれる。直接法は、分岐の制御の難しさと尚早なゲル化のため、一般に好ましくない。
【0046】
重合性不飽和を含むペンダント基をオリゴマーに組み込む間接的であるが好ましい方法は、オリゴマーのモノマー単位の中に、反応性官能基を含むものを幾つか含むことである。有用な反応性官能基には、以下に限定されないが、ヒドロキシル基、アミノ基、オキサゾロニル基、オキサゾリニル基、アセトアセチル基、アズラクトニル基、カルボキシル基、イソシアナト基、エポキシ基、アジリジニル基、ハロゲン化アシル基、および環状酸無水物基が挙げられる。これらの中で好ましいのは、カルボキシル基、ヒドロキシル基、アミノ基、アズラクトニル基、およびアジリジニル基である。これらのペンダントの反応性官能基は、反応性ペンダント官能基と共反応性である官能基を含む不飽和化合物と反応する。2つの官能基が反応すると、その結果、ペンダントの不飽和を有するオリゴマーが生じる。幾つかの用途では、オリゴマーのペンダントの官能基の幾つかが未反応のままであるように、共反応性の官能基を含む不飽和化合物を化学量論的当量より少なく使用することが望ましい場合がある。
【0047】
ペンダントのフリーラジカル重合性官能基を組み込む「間接法」を使用する場合、有用な反応性官能基には、ヒドロキシル基、アミノ基、オキサゾリニル基、オキサゾロニル基、アセチル基、アセトニル基、カルボキシル基、イソシアナト基、エポキシ基、アジリジニル基、ハロゲン化アシル基、ビニルオキシ基、および環状酸無水物基が挙げられる。ペンダントの反応性官能基がイソシアナト基である場合、共反応性官能基は、好ましくはアミノ基またはヒドロキシル基を含む。ペンダントの反応性官能基がヒドロキシル基を含む場合、共反応性官能基は、好ましくは、カルボキシル基、エステル基、ハロゲン化アシル基、イソシアナト基、エポキシ基、酸無水物基、またはオキサゾロニル基を含む。ペンダントの反応性官能基がカルボキシル基を含む場合、共反応性官能基は、好ましくは、ヒドロキシル基、アミノ基、エポキシ基、イソシアネート基、またはオキサゾロニル基を含む。最も一般的には、反応は求核性官能基と求電子性官能基との間で起こる。
【0048】
反応性官能基を有する有用なモノマーの代表例には、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2,3−ジヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、および2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチル(メタ)アクリレートなどのヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート;3−アミノプロピル(メタ)アクリレートなどのアミノアルキル(メタ)アクリレートおよび4−アミノスチレン;2−エテニル−1,3−オキサゾリン−5−オン、2−ビニル−4,4−ジメチル−1,3−オキサゾリン−5−オン、2−イソプロペニル−4,4−ジメチル−1,3−オキサゾリン−5−オン、および2−プロペニル−4,4−ジメチル−1,3−オキサゾリン−5−オンなどのオキサゾロニル化合物;(メタ)アクリル酸および4−カルボキシベンジル(メタ)アクリレートなどのカルボキシ置換化合物;イソシアナトエチル(メタ)アクリレートおよび4−イソシアナトシクロヘキシル(メタ)アクリレートなどのイソシアナト置換化合物;グリシジル(メタ)アクリレートなどのエポキシ置換化合物;N−アクリロイルアジリジンおよび1−(2−プロペニル)−アジリジンなどのアジリジニル置換化合物;および、(メタ)アクリロイルクロリドなどのハロゲン化アクリロイルが挙げられる。
【0049】
好ましい官能性モノマーは、次の一般式を有し:
【化4】

式中、R5は水素、C1〜C4アルキル基、またはフェニル基であり、好ましくは水素またはメチル基であり、R4は、単結合、または、エチレン性不飽和基を反応性官能基「A」に結合させ、好ましくは炭素数が34まで、好ましくは18まで、更に好ましくは10までであり、任意に酸素原子および窒素原子を含有する2価の連結基であり、R4が単結合でないとき、好ましくは次から選択され、
【化5】

(式中、R6は、炭素数1〜6のアルキレン基、炭素数5〜10の5員または6員のシクロアルキレン基、または、各アルキレンの炭素数が1〜6のアルキレン−オキシアルキレンであるかまたは炭素数6〜16の2価の芳香族基である)、Aは、フリーラジカル重合性官能基を組み込むため共反応性官能基と反応できる官能基である。
【0050】
第1の成分のオリゴマーは、アルキル(メタ)アクリレートエステルを更に含んでもよい。本発明に有用なアルキルアクリレートエステルモノマーには、C1〜C30アルキル基を含有するアルキルエステルの直鎖、環状、および分岐鎖異性体が挙げられる。Tgおよび側鎖の結晶性を考慮して、好ましいアルキル(メタ)アクリレートエステルは、C5〜C12アルキル基を有するものであるが、組み合わせがC5〜C12の分子平均炭素数を提供する場合、C1〜C4およびC13〜C14アルキル基の使用も有用である。しかし、多くの用途では、より高級の、即ち、C12〜C30のアルキル基が好ましい場合がある。アルキル(メタ)アクリレートエステルの有用な具体例には、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−プロピルアクリレート、2−ブチルアクリレート、イソアミルアクリレート、n−ヘキシルアクリレート、n−ヘプチルアクリレート、イソボルニルアクリレート、n−オクチルアクリレート、イソオクチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、イソノニルアクリレート、デシルアクリレート、ウンデシルアクリレート、ドデシルアクリレート、トリデシルアクリレート、およびテトラデシルアクリレートが挙げられる。オリゴマーは、このようなモノマー単位を0〜30重量部含んでもよい。存在する場合、オリゴマーは、概ね、このようなモノマー単位を15重量部未満、例えば、1〜15重量部含む。
【0051】
第1の成分のオリゴマーは、「極性モノマー」を含む「他のモノマー」を更に含んでもよい。本明細書で使用するとき、「極性モノマー」は、曇点に達することなく少なくとも1重量%、好ましくは少なくとも5重量%の水混和性(モノマー中の水)を有する重合性モノマーであり、ポリ(アルキレンオキシド)モノマーを除く。オリゴマーは、このようなモノマー単位を0〜40重量部含んでもよい。存在する場合、オリゴマーは、概ねこのようなモノマー単位を25重量部未満(例えば、1〜25重量部)含む。
【0052】
ゲル材料を形成するのに使用される架橋されたポリマーの吸収性を増大させるため、および/または、機械的特性(例えば、引張強さ)を改善するため、極性モノマーを使用することができる。好ましい極性モノマーは、得られるポリマーにコンプライアンスを付与することもできる。好適な極性モノマーの例には、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート(HEMA)、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2,3−ジヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、N−ビニルカプロラクタム、N−ビニルアセトアミド、N−ビニルピロリドン、アクリロニトリル、テトラヒドロフルフリルアクリレート、アクリルアミド、モノ−またはジ−N−アルキル置換アクリルアミド、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、β−カルボキシエチルアクリレート、グリセロールメタクリレート、[2−(メタ)(アクリロイルオキシ)エチル]トリメチルアンモニウムクロリド、[2−(メタ)(アクリロイルオキシ)エチル]トリメチルアンモニウムメチルサルフェート、およびこれらの組み合わせが挙げられる。好ましい極性モノマーには、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、N−ビニルピロリドン、N−ビニルアセトアミド、およびこれらの混合物などが挙げられる。
【0053】
第1の成分のオリゴマーは、前述されていない他のモノマーを更に含んでもよい。オリゴマーの調製に有用な「他のモノマー」の選択は、最終的な架橋された材料がその用途に好適な特性を有するようにする。例えば、引張強さまたは他の機械的特性を向上させるため、またはポリマーのTgを制御するために「他のモノマー」を使用してもよい。「他のモノマー」の代表例には、前述のモノマーと共重合可能な少なくとも1つのエチレン性不飽和重合性基を有するフリーラジカル重合性モノマーが挙げられ、酢酸ビニル、スチレン、アリルエーテル、無水マレイン酸、およびアルキルビニルエーテルなどのビニルモノマーが挙げられる。
【0054】
従来の重合方法で前述のモノマーを重合すること、親水性を形成するのに使用されるオリゴマーは、本発明の架橋性組成物を製造することができる。使用できる典型的な重合方法は、熱重合および/または光化学重合、並びに、バルク重合および溶液重合が挙げられる。
【0055】
典型的な溶液重合方法では、溶媒および重合開始剤の存在下でモノマー混合物を攪拌しながら加熱する。溶媒の例には、メタノール、エタノール、イソプロパノール、アセトン、メチルエチルケトン、酢酸メチル、酢酸エチル、トルエン、キシレン、テトラヒドロフラン、および、エチレングリコールアルキルエーテルがある。これらの溶媒は、単独で、またはこれらの混合物として使用することができる。重合開始剤の例には、過酸化ベンゾイル、クメンヒドロペルオキシド、ジイソプロピルペルオキシジカーボネート、および、2,2’−アゾビスイソブチロニトリルがある。これらの重合開始剤は、単独で、またはこれらの混合物として使用することができる。
【0056】
典型的な光重合方法では、光重合開始剤(即ち、光開始剤)の存在下で、モノマー混合物に紫外(UV)線を照射する。好ましい光開始剤は、ニューヨーク州タリータウンのチバ・スペシャリティ・ケミカル社(Ciba Speciality Chemical Corp., Tarrytown, NY)からイルガキュア(IRGACURE)およびダロキュア(DAROCUR)の商品名で入手可能なものであり、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(イルガキュア(IRGACURE)184)、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン(イルガキュア(IRGACURE)651)、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキシド(イルガキュア(IRGACURE)819)、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン(イルガキュア(IRGACURE)2959)、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)ブタノン(イルガキュア(IRGACURE)369)、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノプロパン−1−オン(イルガキュア(IRGACURE)907)、および2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン(ダロキュア(DAROCUR)1173)が挙げられる。特に好ましい光開始剤は、イルガキュア(IRGACURE)819、184、および2959である。
【0057】
これらの光開始剤および熱開始剤は、モノマー組成物100pbw当たり、約0.0001〜約3.0pbw、好ましくは約0.001〜約1.0pbw、更に好ましくは約0.005〜約0.5pbwの範囲の濃度で使用することができる。
【0058】
第1のオリゴマーを(例えば、溶液重合に続いて分離することにより)調製した後、別々に調製された第2の成分の架橋剤と合わせてもよい。残留モノマーおよび/または調製に使用した溶媒は、架橋する前に、残留分が2重量%未満に低減するように、一般に、蒸留、オリゴマーの沈殿、真空蒸発などの従来の技術で除去される。使用する塗工プロセスの種類に応じて、成分の相対的な量は様々となり得る。第1および第2の成分の官能基と非反応性の酢酸エチル、トルエン、およびテトラヒドロフランなどの好適な溶媒の存在下で重合を行ってもよい。
【0059】
前述のように、直接法または間接法のどちらかで、ペンダントの光開始剤基(および、任意選択的なペンダントの不飽和基)をオリゴマーに導入してもよい。
【0060】
メルカプタン、ジスルフィド、トリエチルシラン、四臭化炭素、四塩化炭素、α−メチルスチレン、および当該技術分野で既知の他のものを含む、連鎖移動剤および連鎖抑制剤を使用して、分子量を制御してもよい。有用な連鎖移動剤には、また、米国特許第4,680,352号明細書および同第4,694,054号明細書に記載のコバルトキレート、および、米国特許第5,362,826号明細書および同第5,773,534号明細書に記載されるような、次式で例示されるオリゴマー連鎖移動剤が挙げられ、
【化6】

式中、各Rは、低級のアルキル基または官能基であり、nは典型的には、10未満の数である。
【0061】
液体オリゴマーは、オリゴマー成分のガラス転移温度が周囲温度より低く、オリゴマー成分の分子量がからみ合い分子量より小さい(即ち、約300未満の重合度)場合に得られ得る。低溶融固体は、Tgが周囲温度以下のときに、得られる場合がある。粉末は、Tgが周囲温度より高いときに得られる場合がある。オリゴマー中のポリ(アルキレンオキシド)の量のため、オリゴマーは、一般に低溶融固体または液体である。
【0062】
第1の成分のオリゴマーは、比較的小さい分子量を有し、オリゴマーおよび架橋剤の連鎖成長プロセスにより、光開始剤基および重合性官能基で分子量を増大させる。分子量が比較的小さいため、オリゴマーは、架橋前に溶融粘度が低いので、溶媒、可塑剤、または粘度調整剤などの残留物を必要とせず、塗工、スプレー、押出し、および成形などの操作で容易に加工可能である。本発明のオリゴマーでは、粘度対分子量(Mn)の両対数プロットの傾きは約1であり、分子量がより大きいポリマーでは傾きは3.4である。本発明のオリゴマーは加工性を提供し、オリゴマーの架橋は、靭性、硬さ、引張強さ、および硬化した状態で発現する他の特性などの、必要な物理的特性を提供する。別途指示されない限り、分子量は数平均分子量を指す。
【0063】
オリゴマーは、概ね約300未満の平均重合度(DP)を有する。(重合度が300より大きいポリマーに対して)期待されるより大きい粘度は、ポリマー鎖のからみ合いに因る。300未満の繰り返し単位を有するポリマーまたはオリゴマーは、からみ合わないことが実験的に示されている。本発明以前に、からみ合っていないポリマーは加工可能であることが分かっているが、強度は低い。好ましくは第1の成分のオリゴマーは、約300未満の重合度を有する。
【0064】
必要に応じて、100℃より低温で混合物の粘度が500〜10,000cPsとなるように、分子量のより大きいポリマーを、分子量のより小さいオリゴマーとブレンドしてもよい。
【0065】
親水性架橋性組成物は、次式の架橋剤を更に含み:
Z−Q−CH(R1)−CH2−O−(CH(R1)−CH2−O)m−CH(R1)−CH2−Q−Z、
式中、Zは重合性エチレン性不飽和部分であり、R1はHまたはC1〜C4アルキル基であり、mは20〜500、好ましくは150〜400であり、Qは−O−、−NR1−、−CO2−および−CONR1−から選択される2価の連結基である。
【0066】
一実施形態では、ポリ(アルキレンオキシド)基は、ポリ(エチレンオキシド)(コ)ポリマーである。別の実施形態では、ポリ(アルキレンオキシド)基は、ポリ(エチレンオキシド−コ−プロピレンオキシド)コポリマーである。このようなコポリマーは、ブロックコポリマー、ランダムコポリマー、またはグラディエントコポリマー(gradient copolymers)であってよい。
【0067】
架橋剤の有用なエチレン性不飽和部分、Zには、以下のものを挙げてもよく、
【化7】

式中、R3はHまたはMeであり、r=1〜10である。
【0068】
ポリ(アルキレンオキシド)基を有する架橋剤は、例えば、二官能性アルキレンオキシド(コ)ポリマー(典型的には市販されている)を反応性エチレン性不飽和化合物(例えば、(メタ)アクリレート)と反応させることにより調製することができる。ポリ(アルキレンオキシド)を終端させる官能基には、ヒドロキシ基、アミン基、およびカルボキシ基を挙げてもよい。以下に限定されないが、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリロイルクロリド、無水(メタ)アクリル酸、および2−イソシアナトエチル(メタ)アクリレートを含む、(メタ)アクリレート誘導体などの様々な反応性エチレン性不飽和化合物を使用することができる。好ましくは、架橋剤は、二官能性アルキレンオキシド(コ)ポリマーを無水(メタ)アクリル酸と反応させることにより調製される。典型的には、化学量論的な量のエチレン性不飽和反応物質を二官能性アルキレンオキシド(コ)ポリマー(ヒドロキシ末端アルキレンオキシド(コ)ポリマーなど)と合わせると、二置換された生成物に100%転換される。
【0069】
好適な二官能性ポリ(アルキレンオキシド)モノマーの例には、ポリ(エチレンオキシド)ジ(メタ)アクリレート、ポリ(プロピレンオキシド)ジ(メタ)アクリレート、ポリ(エチレンオキシド−プロピレンオキシド)ジ(メタ)アクリレート、およびこれらの組み合わせが挙げられる。これらのモノマーは、広範囲の分子量を有するものとすることができ、ペンシルバニア州エクストンのサートマー社(Sartomer Company, Exton, PA);日本、東京の新中村化学工業株式会社(Shinnakamura Chemical Co., Ltd., Tokyo, Japan);ウィスコンシン州ミルウォーキーのアルドリッチ(Aldrich, Milwaukee, WI);および、日本、大阪の大阪有機化学工業株式会社(Osaka Organic Chemical Ind., Ltd., Osaka, Japan)などの供給元から市販されている。
【0070】
前述のように、本発明の組成物は、複数のペンダントの親水性ポリ(アルキレンオキシド)基、ペンダントの光開始剤基、および任意にペンダントの重合性官能基を有する第1のオリゴマー成分;並びに、複数の末端共反応性重合性官能基および親水性ポリ(アルキレンオキシド)基を有する第2の架橋成分を含む。所望の親水性、溶融加工性、および機械的特性を有する組成物が得られるように、各モノマー成分の量、並びに、第1および第2の成分の相対的な量を調整してもよい。
【0071】
第1のオリゴマー成分、架橋剤、および、任意に光開始剤(オリゴマーのペンダントの光開始剤基の他に)を合わせることにより、塗工可能なオリゴマー組成物を調製してもよい。22℃で約500〜10,000cPs、更に好ましくは約750〜7500cPsの塗工可能な粘度を示す増粘された溶液を達成するため、2つの成分を部分的に転換することが望ましい場合がある。
【0072】
所望の構成に形成した後、第1のオリゴマー、架橋剤、および、任意選択的な光開始剤を含む組成物に活性化紫外線を照射して、組成物を架橋してもよい。紫外線源は、1)280〜400ナノメートルの波長範囲で概ね10mW/cm2以下(米国国立標準技術研究所(United States National Institute of Standards and Technology)により認可された手順に従い、例えば、バージニア州スターリング(Sterling, VA)のエレクトロニック・インストルメンテーション・アンド・テクノロジー社(Electronic Instrumentation & Technology, Inc.)により製造されたユビマップ(UVIMAP)(登録商標)UM 365 L−Sラジオメーターを用いて測定するとき)を提供するブラックライトなどの比較的低い光強度供給源;および、2)概ね10mW/cm2より大きい、好ましくは15〜450mW/cm2の強度を提供する中圧水銀ランプなどの比較的高い光強度供給源の2種類とすることができる。化学線を使用して、オリゴマー組成物を完全にまたは部分的に架橋させる場合、高強度および短い露光時間が好ましい。例えば、600mW/cm2の強度および約1秒の露光時間が成功裏に使用され得る。強度は、約0.1〜約150mW/cm2、好ましくは約0.5〜約100mW/cm2、更に好ましくは約0.5〜約50mW/cm2の範囲にわたることができる。
【0073】
従って、光開始剤の吸光係数が低いとき、比較的厚いコーティング(例えば、少なくとも約0.025mm)を達成することができる。厚さ0.5mm以上のコーティングが可能であり、本発明の範囲に入る。
【0074】
光重合方法の他の利点は、1)組成物の加熱が不要であること;および、2)活性化光源を止めると、光開始が完全に停止することである。
【0075】
そのように所望する場合、とりわけバルク中での組成物材料の屈折率の測定を使用して、重合進行度を監視することができる。屈折率は、転換に対して直線的に変化する。この監視方法は、通常、重合反応速度論の研究に使用されている。例えば、G.P.グラディシェフ(G.P.Gladyshev)およびK.M.ギボフ(K.M.Gibov)、高転換度の重合、ケタープレス、エルサレム(1970年)(Polymerization at Advanced Degrees of Conversion, Keter Press, Jerusalem)の方法についての説明を参照されたい。
【0076】
本発明の架橋された組成物を調製するとき、開始された重合反応は、事実上完了するまで、即ち、ペンダントの重合性官能基および/またはペンダントの光開始剤基が消耗するまで、約70℃より低温で(好ましくは50℃以下で)、24時間未満、好ましくは12時間未満、更に好ましくは6時間未満の反応時間、進行することが好都合な場合がある。これらの温度範囲および反応速度では、望ましくない尚早な重合およびゲル化が起こらないように安定化させるためアクリル系に添加されることが多いフリーラジカル重合抑制剤の必要がない。更に、抑制剤を添加すると、系と一緒に残存して本発明のオリゴマーの所望の重合および架橋された組成物の形成を抑制する残留物が添加される。フリーラジカル重合抑制剤は、約6時間を超える反応時間、70℃以上の加工温度を必要とすることが多い。
【0077】
架橋された組成物は、少なくとも1つの親水性ポリ(アルキレンオキシド)部分で架橋されたオリゴマー鎖を有するポリマーと特徴付けることができる。このため、紫外線エネルギーに暴露される間、光開始剤から生じるフリーラジカルは、(架橋剤または任意選択的なペンダントの重合性基の)ペンダントのエチレン性不飽和部分に付加し、別の重合性基とのカップリングまたは成長反応でオリゴマー鎖と架橋剤の間に架橋を形成する。一般に、本発明の架橋された組成物は、架橋間の有効分子量(Mc)が1,000以上、好ましくは3,000より大きい。架橋間の有効分子量(Mc)は、動的機械分析で測定されてもよい。
【0078】
オリゴマーのペンダントである光開始剤基の数および濃度、任意選択的なペンダントの不飽和基の数および濃度、並びに、架橋剤の量で架橋度を容易に制御し得る。光開始剤基、対、ペンダントのフリーラジカル重合性不飽和基の比は、所望の架橋度に応じて約1:10,000〜1:1まで様々であり得る。一般に、Mcが小さいほど弾性が低く、従って架橋された組成物は硬くなる。
【0079】
本発明の組成物を使用して医療用途の親水性ゲル材料を調製するとき、ゲルは、薬理学的活性剤などの1種類以上の活性剤を含むことができる。例には、以下に限定されないが、成長因子(例えば、TGF、FGF、PDGF、EGFなど)、抗菌剤(例えば、ペニシリン、硫酸ネオマイシン、スルホンアミド、スルファジアジン、スルファジアジン銀、トリメトプリム、および他の抗生物質、並びに、ポビドンヨード、ヨウ素、銀、塩化銀、およびクロルヘキシジン)、抗真菌剤(例えば、グリセオフルビン、塩酸クロルミダゾール、クロトリマゾール、ケトコナゾール、ミコナゾール、硝酸ミコナゾール、ナイスタチン、およびトルナフテート)、消毒剤および防腐剤(例えば、塩化ベンザルコニウム、塩化セタルコニウム、グルコン酸クロルヘキシジン、エタノール、ヨウ素、メチルベンゼトニウム、ポビドンヨード、イソプロパノール、銀、酸化銀、乳酸銀および塩化銀などの銀塩、トリクロサン)、局所麻酔剤(例えば、テトラカイン、ベンゾカイン、プリロカイン、プロカイン)、デブリードメント剤(debriding agents)、抗炎症剤(例えば、インドメタシン、ケトプロフェン、ジクロフェナク、イブプロフェンなど)、収れん剤、酵素、栄養素(例えば、ビタミン、ミネラル、酸素など)、ハップ剤用薬物(例えば、メントール、カンファー、ペパーミント、トウガラシ抽出物、カプサイシンなど)および臭気吸収剤(例えば、ゼオライト、シリケート、キトサン、シクロデキストリンなど)が挙げられる。好ましい活性剤は、ポビドンヨード、ヨウ素、銀、塩化銀、およびクロルヘキシジンなどの抗菌剤である。活性剤は単独で、またはそれらの混合物として使用することができる。それらは、ポリマーの重合に干渉しない限り、本発明の反応生成物が硬化する前、または硬化した後に添加することができる。好ましくは、それらは、完成したゲル材料の性能または清澄度に干渉しない量または方法で添加される。
【0080】
任意に、本発明のゲル材料は、ハイドロコロイドを、典型的には、粒子の形態で含むことができるが、それらはゲル材料の透明度を減少させる可能性があるため、必ずしも好ましくはない。ハイドロコロイドの例には、以下に限定されないが、植物抽出物(アラビアゴム、ガティ、カラヤ、およびトラガカント);植物種子ガム(グアー、ローカストビーンおよびアカシア)、海草抽出物(寒天、アルギン、アルギン酸塩、およびカラゲニン)、穀物ガム(デンプンおよび加工デンプン)、発酵または微生物ガム(デキストランおよびキサンガム)、変性セルロース(ヒドロキシメチルセルロース、微結晶性セルロース、およびカルボキシメチルセルロース)、ペクチン、ゼラチン、カゼインなどの天然ガム、および合成ガム(ポリビニルピロリドン、低メトキシルペクチン、アルギン酸プロピレングリコール、カルボキシメチルローカストビーンガムおよびカルボキシメチルグアーガム)など、および水膨潤性または水和性ハイドロコロイドが挙げられる。ハイドロコロイドの用語は、水和の状態に関わらず使用される。本発明のゲル材料は、好ましくは、材料が透明になる(好ましくは、全光透過率は、ASTM D1003−00によれば84%より大きくなる)ような量のハイドロコロイドを含む。典型的には、ハイドロコロイドを使用する場合、ハイドロコロイドの量は、ゲル材料の総重量を基準にして約5重量%未満である。
【0081】
本発明のゲル材料に組み込むことができる他の添加剤には、粘度調整剤(例えば、ニュージャージー州ウェイン、インターナショナル・スペシャルティ・プロダクツ(International Specialty Products, Wayne, NJ)からガントレス(GANTREZ)樹脂の商品名で市販されているものなどのポリマー増粘剤);連鎖移動剤または連鎖抑制剤(例えば、ドデシルメルカプタンなどのアルキルメルカプタン、イソオクチルチオグリコレート、およびα−メチルスチレンなど、後者は前述のように疎水性モノマーとすることもできる);着色剤;指示薬;粘着付与剤;可塑剤(例えば、水、グリセリン、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、および、これらの混合物、BASF社(BASF Co.)からプルロニクス(PLURONICS)の商品名で市販されているもの、並びに、ポリマーを可塑化できる様々な低分子化合物など);酸化防止剤などが挙げられる。このような添加剤は、当業者に既知の技術を使用して重合前または重合後のどちらかに添加することができる。好ましくは、それらを使用する場合、それらは、ゲル材料の性能または清澄度に干渉しない量および方法で添加することができる。
【0082】
好ましくは、本発明のゲル材料は、水を含む残留物を実質的に含まない。これは、少なくとも、特別な包装を必要としないため、有利である。更に、残留物はドレッシングの他の部分に移動する可能性があるか(例えば、それはドレッシングの一体性に有害な可能性がある)、または、ドレッシングが配置される患者の体の中に入る可能性がある。
【0083】
任意に、ゲル材料は、その少なくとも1つの主面にパターン形成面を有してもよい。パターン形成面は、創傷表面の方に向けられるとき、創傷滲出物を吸収するための表面積をより大きくすることができると同時に、創傷と直接または間接的に接触する吸収剤の表面積を低減する。更に重要なことには、パターン形成面は、吸収層が膨潤し、創傷を押圧する傾向を低減し、マッシュルーム状になること(即ち、多孔質フィルムを通したゲル層の膨張)を回避し、更に、接着剤層が皮膚から尚早に分離することを回避する。
【0084】
ゲル材料層の表面に付与される任意選択的なパターンは、予め選択された任意の好適な三次元パターンであってよい。好ましくは、パターンは、吸収に使用可能な表面積を増大させ、膨潤して創傷の中に入ることを低減し、マッシュルーム状になることを抑制し、および/または水和時の材料の一体性を向上させるものである。パターンには、以下に限定されないが、隆起、チャネル、マウンド、ピーク、半球、角錐、円筒、円錐、ブロック、および、これらの切頭された変形および組み合わせを含むパターン要素の配列を挙げることができる。パターンは、更に、吸収層の厚みを通って延びる予め決定された形状とサイズを有する孔を含んでもよい。
【0085】
創傷、または、存在する場合、それに対向するフィルムと接触する表面積が最小限になるように、特定のパターン要素が有利に選択される。最小限の表面積は、ゲル材料が膨潤して創傷の中に入る、マッシュルーム状になる、または創傷部位に接着する傾向を更に抑制する。とりわけ有用な要素には、角錐、円錐、およびこれらの切頭された変形、および断面が三角形の隆起が挙げられる。要素は、x方向、y方向、または両方でランダムであっても、または非ランダムであってもよい。製造を容易にするため、パターンは、ゲル表面に配置された非ランダムな要素の配列を含むことが好ましい。
【0086】
必要に応じて、ゲル層の外面(即ち、創傷表面を向いていないゲル層の主面)にもパターンを付与してもよい。このようなパターンを付与すると、ゲル層の表面積が増大し、ゲル材料から流体がより多く蒸発することが促進され得る。パターンは、パターン要素のサイズと同様に、ゲル材料の対向面のパターンと同じであっても、または異なってもよい。更に、ゲル材料のどちらの表面の個々の要素も、表面から延びる突起であってもよく、または、表面の窪みであってもよい。
【0087】
任意選択的なパターン形成面は、従来の成形技術でゲル材料に付与されてもよい。或いは、エンボス加工技術を使用して所望のパターンを付与してもよい。このような技術の例は、参照により本明細書に援用される米国特許第6,566,575号明細書(スティッケルズ(Stickels)ら)に記載されている。
【0088】
必要に応じて、ゲル材料は、創傷および/または皮膚表面と直接接触してもよい。しかし、直接接触は、同様に、他の好適なハイドロコロイドおよびハイドロゲル吸収性材料によって提供されてもよい。
【0089】
好ましい医療用物品では、ゲル材料は、概ね、全厚が約250マイクロメートル(即ち、ミクロン)〜約5000マイクロメートルの層を形成する。
【0090】
任意に、本発明の創傷ドレッシングは、第1の吸収層と第2の吸収層の、少なくとも2つの吸収層を備えてもよい。第1の吸収層は、典型的には、第2の吸収層より吸収性が高く、第2の吸収層より多量の体液を保持することができる。第2の吸収層が第1の吸収層と創傷の間に配置されるように、第2の吸収層を位置決めする。この第2の吸収層は、創傷ドレッシングに一体性を提供し、第1の吸収層が創傷の中に移動することを回避する。
【0091】
第1の吸収層は、典型的には、オリゴマー組成物から調製される前述の組成物を含有する。第2の吸収層は、典型的には、第1の吸収層と接触するように位置決めされ、典型的には、第1の吸収層より体液の吸収性が低い。第2の吸収層は、炭素数4〜14の非第三級アルコールの(メタ)アクリル酸エステル;親水性エチレン性不飽和モノマー;および、極性エチレン性不飽和モノマーの反応生成物を含有することができるが、第2の吸収層に他の組成物を使用することもできる。
【0092】
一般に、第2の吸収層は、第1の吸収層(滲出物が不均一に迅速に吸収されるとき、または、それが約500%より多く吸収するとき、部分的に「分解」する場合がある)と創傷の間の「バリア」として機能する。好ましくは、第2の吸収層は、接着性を有し、(または、感圧接着剤であり)、創傷ドレッシングの全体的な一体性を向上させる機能をする。この点で、第2の吸収層は、第1の吸収層を創傷に対向する層に(または、創傷自体に)固定する。接着性を有することによって、この第2の吸収層は、滲出物の吸収の制御を助けるだけでなく、ドレッシングの他の構成要素に物理的に接合する。
【0093】
前述のように、第1の吸収層は、典型的には、第2の吸収層よりも吸収性が著しく高く、好ましくは、第2の吸収層の吸収性より少なくとも100%高い吸収性を有する。第1の吸収層は、好ましくは、等張食塩水中に室温で24時間浸漬した後、重量の少なくとも200%吸収する。
【0094】
本発明の典型的な創傷ドレッシングは、好ましくは、創傷部位とゲル層の間に流体透過性バリアを提供するため、多孔質または非多孔質の対向層を備える。対向層は、創傷からゲル層への水分(即ち、流体および蒸気)の輸送を可能にし、ドレッシングの他の構成要素から創傷を隔離し得る。対向層は、好ましくは、柔軟で、可撓性があり、追従性があり、刺激がなく、感作性がない。ポリウレタン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミド、または、ポリエステル材料を含む、様々なポリマーのうちいずれかを使用してもよい。更に、対向層は、透湿性フィルム、有孔フィルム、織布、不織布若しくはニットウェブまたはスクリムの形態であってもよい。好ましい対向層は、ポリウレタンフィルムを備える。
【0095】
有用な実施形態の1つでは、対向層は、動物(ヒトを含む)の解剖学的表面への追従性があり、(米国特許第5,733,570号明細書(チェン(Chen)ら)の方法により)40℃で相対湿度差80%で一平方メートル当たり24時間当たり少なくとも300グラムの透湿度(MVTR)を有し、実質的に無孔領域全体で液体の水に対する透過性がなく、対向面を通して創傷滲出物を通過させる穿孔手段を具有する。これは、対向層は、通常の創傷処置状態では、滲出物がリザーバに入るように明確に穿孔されている対向層の場所以外で液体の水を通過させないことを意味する。
【0096】
対向層の好ましい透湿度は、40℃で相対湿度差80%で一平方メートル当たり24時間当たり少なくとも600グラムである。対向層は、感圧接着剤層を更に備えてもよい。接着剤が塗工されている対向層は、好ましくは、前述のMVTRを有する。従って、対向層が穿孔手段以外は液体の水に対する透過性がない場合、接着剤は液体の水に対する透過性があるものとすることができ、また、その逆の場合も同様である。有孔ポリアミド、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエーテル−アミド、ポリウレタン、塩素化ポリエチレン、スチレン/ブタジエンブロックコポリマー(クラトン(KRATON)ブランドの熱可塑性ゴム、テキサス州ヒューストンのシェルケミカル社(Shell Chemical Company, Houston, TX))、およびポリ(塩化ビニル)、および、液体の水に対する透過性がない感圧接着剤で被覆されている米国特許第3,121,021号明細書(コープランド(Copeland))に記載されているものなどの多孔質または非多孔質の対向層を対向層に使用することができる。任意に、これらのフィルムを穿孔することができる。追加の多孔質材料には、織布および不織布基材が挙げられる。
【0097】
(1)創傷ドレッシングの下の皮膚の浸軟が起こらないように;(2)対向層の下の水分蓄積によって、対向層、および、従って創傷ドレッシングが皮膚から持ち上がらないように;並びに、(3)創傷縁部の近接(proximation)が向上するように、対向層が前述の透湿性または液体透過性を有することが好ましい。好ましい対向層は、任意に感圧接着剤が塗工されている薄いポリマーフィルムであり、それらは組み合わせると前記特性を有する。
【0098】
対向層の穿孔手段は、穴またはスリット、または、液体の水若しくは創傷からの滲出物を創傷ドレッシングの吸収層の中へ通過させる他の穿孔である。対向フィルムの前面(創傷の方に対向する表面)が感圧接着剤層で塗工されている場合、穿孔は、接着剤層を通って更に延びてもよい。
【0099】
バッキング層は、本発明の実施形態の全てに存在してもよい。好ましくは、バッキング層は、動物の解剖学的表面への追従性があり、液体の水に対する透過性がなく、40℃で相対湿度差80%で一平方メートル当たり24時間当たり少なくとも600グラムの透湿度を有する。バッキング層は対向層と組み合わせて、ゲル層を取り囲むリザーバ(例えば、パウチまたはエンベロープ)を形成するように構成されてもよく、その中に創傷からの滲出物が入る。液体の水または滲出物は、このリザーバから出ることができない。代わりに、ゲル層は滲出物を吸収し、滲出物中の水分は、バッキング層を蒸気の形態で通過して大気中に入る。リザーバドレッシングは、創傷滲出物が創傷部位から迅速に除去されることを可能にし、ドレッシングの外側から液体または細菌が創傷部位を汚染することを防止する。
【0100】
水蒸気を除去するため、バッキング層の透湿度は、少なくとも前述の通りであり、好ましくは40℃で相対湿度差80%で一平方メートル当たり24時間当たり少なくとも1200グラムである。
【0101】
対向層およびバッキング層の好ましい実施形態は、薄く追従性のあるポリマーフィルムである。一般に、フィルムの厚さは、約12ミクロン〜約50ミクロン、好ましくは約12ミクロン〜約25ミクロンである。追従性は、幾分、厚みに依存し、従って、フィルムが薄いほど、フィルムの追従性は大きい。本明細書では、動物の解剖学的表面への追従性がある本発明の医療用物品(例えば、創傷ドレッシング)に利用されるフィルムを参照してきた。これは、本発明のフィルムが動物の解剖学的表面に適用されるとき、表面が動いても、フィルムはその表面に追従することを意味する。好ましいフィルムには、動物の解剖学的関節への追従性がある。関節を曲げた後、曲がっていない位置に戻すとき、フィルムは伸張して関節の曲げに適応するが、関節をその曲がっていない状態に戻すとき、関節に追従し続けるほど十分に弾性がある。
【0102】
対向層またはバッキング層として出願人の本発明に有用なフィルムの例には、オハイオ州クリーブランドのB.F.グッドリッチ(B.F. Goodrich, Cleveland, OH)からエステイン(ESTANE)の商品名で入手可能なものなどのポリウレタン、デラウェア州ウィルミントンのイー・アイ・デュポン・ドゥ・ヌムール・アンド・カンパニー(E.I.duPont deNemours & Co., Wilmington, DE)からハイトレル(HYTREL)の商品名で入手可能なものなどのエラストマーポリエステル、ポリウレタンとポリエステルのブレンド、ポリ塩化ビニル、および、エルフアトケム(Elf−Atochem)からペバックス(PEBAX)の商品名で入手可能なものなどのポリエーテル−アミドブロックコポリマーが挙げられる。本発明に使用するのに特に好ましいフィルムは、ポリウレタンフィルムおよびエラストマーポリエステルフィルムである。ポリウレタンフィルムおよびエラストマーポリエステルフィルムは、フィルムが良好な追従性を有することを可能にする弾性特性を示す。
【0103】
特に有用なフィルムには、示差(differential)透湿度(MVTR)を有する「スピロソーベント(spyrosorbent)」フィルムが挙げられる。スピロソーベントフィルムを組み込むドレッシングは、吸収により創傷滲出物を処理するだけではなく、滲出物の量に応じて透湿性を調整する能力を有する。このようなスピロソーベントフィルムは、親水性透湿性であり、比較的高いMVTR(湿潤)を有し、1より大きい、好ましくは3:1より大きい示差MVTR比(湿潤対乾燥)を有する。乾燥MVTRは、約2600g/m2/24時間より大きく、好ましくは約3000〜4000g/m2/24時間である。バッキング層として有用な、特に好ましいスピロソーベントフィルムは、ポリテトラメチレングリコールおよびポリエチレングリコールポリオールをベースにするセグメント化ポリエーテルポリウレタン尿素などのセグメント化ポリウレタンである。このようなスピロソーベントフィルムは、米国特許第5,653,699号明細書および米国特許第4,849,458号明細書(リード(Reed)ら)に記載されている。
【0104】
別の好適なバッキング層は、液体の方向制御を可能にするチャネルのある、微細構造を有する少なくとも1つの表面を有する流体制御フィルムである。このフィルムを使用して、流体を離れた部位に輸送し、それによって流体(例えば、創傷滲出物)の吸い取りを促進することができる。このようなフィルムは、米国特許第6,420,622号明細書(ジョンストン(Johnston)ら)に開示されている。
【0105】
創傷ドレッシングの多くの異なる構成が、対向層、ゲル層、およびバッキング層に関して可能である。一実施形態では、対向層およびバッキング層の面積はゲル層の面積より大きく、対向層はバッキング層に結合され、それによってパウチを形成し、その2つの間にゲル層が配置されている。別の実施形態では、対向層またはバッキング層の1つは、ゲル層と実質的に同じ面積であり、もう一方の面積はそれより大きくてもよい。対向層またはバッキング層のより大きい面積が周縁部を形成し、それに接着剤層および剥離ライナーが取り付けられてもよい。更に、対向層および/またはバッキング層をゲル層の隣接面に取り付けて、または結合させて、連続層構成を形成してもよく、そこで、バッキング層および対向層は、ゲル層と面積が同じであっても、またはゲル層より面積が大きくてもよいことが分かる。或いは、バッキング層および対向層は、互いに結合されていてもよく、ゲル層に結合されていてもまたは結合されていなくてもよい。これらの最後の構成では、ゲル層は、対向層およびバッキング層を互いに取り付けることによって作り出されるパウチの中に閉じ込められる。層は、接着剤、ヒートシール、または他の結合手段などの任意の従来の手段で互いに結合されてもよい。
【0106】
本発明の医療用物品の対向層およびバッキング層は、それらが適用される創傷部位を医療用物品を通して見ることができるように、少なくとも半透明、更に好ましくは十分に透明であることが好ましい。創傷部位の不要な処置および創傷を環境に暴露することを回避するため、創傷ドレッシングを除去することなく、創傷およびその治癒を見て評価することは有利であり、それによって汚染の可能性が低減し、ドレッシングが除去された場合のように創傷を清浄にする必要性が回避される。ドレッシングは、創傷の色、滲出物、および創傷周囲の皮膚も評価し得るように、透明且つ無色であることが好ましい。創傷部位の目視検査を可能にする対向層およびバッキング層として使用するのに好ましい透明フィルムには、オハイオ州クリーブランドのB.F.グッドリッチ(B.F. Goodrich, Cleveland, OH)からエステイン(ESTANE)の商品名で入手可能なものなどのポリウレタンフィルム;デラウェア州ウィルミントンのイー・アイ・デュポン・ドゥ・ヌムール・アンド・カンパニー(E.I.duPont deNemours & Co., Wilmington, DE)からハイトレル(HYTREL)の商品名で入手可能なものなどのエラストマーポリエステル;および、ペンシルバニア州フィラデルフィアのエルフ・アトケム・ノース・アメリカ(Elf−Altochem North America, Philadelphia, PA)からペバックス(PEBAX)の商品名で入手可能なものなどのポリエーテルブロックアミドが挙げられる。他の有用なフィルムは、米国特許第4,499,896号明細書(ハイネケ(Heinecke));同第4,598,004号明細書(ハイネケ(Heinecke));および、同第5,849,325号明細書(ハイネケ(Heinecke)ら)に記載されているものである。
【0107】
対向層をその表面の感圧接着剤以外の手段で創傷に取り付けることができるが、このような接着剤を使用することが好ましい。対向層の接着剤の存在によって、通常、対向層の透湿性は低下する。従って、層に複数の穿孔を加える前に、対向層を接着剤塗工することが好ましい。従って、創傷滲出物は、接着剤塗工され穿孔された対向層を容易に通過することができる。バッキング層を対向層に結合させること(パウチを形成すること)と、対向フィルムを創傷部位に結合させることの両方を容易にするため、好ましくは、対向層とバッキング層の両方に接着剤層を予め塗工する。
【0108】
対向層は、通常、連続的であってもまたはパターン塗工されてもよい接着剤で創傷部位に取り付けられる。本発明の創傷ドレッシングに使用できる好ましい接着剤は、米国再発行特許第Re.24,906号明細書(ウルリッチ(Ulrich))に記載されるものなどの、皮膚に適用される通常の接着剤、特に、イソオクチルアクリレート単位96%とアクリルアミド単位4%のコポリマー、および、イソオクチルアクリレート単位94%とアクリル酸単位6%のコポリマーである。他の有用な接着剤は、−−A−−B−−A−−−の一般配置(ここで、各Aは、平均分子量約5000〜125,000の、室温より高い(即ち、約20℃より高い)ガラス転移温度を有する熱可塑性ポリマーブロックであり、Bは、平均分子量約15,000〜250,000の、共役ジエンのポリマーブロックである)を有する、3つ以上のポリマーブロック構造を有するブロックコポリマーを含む米国特許第3,389,827号明細書に記載されているものである。有用な接着剤の追加の例には、イソオクチルアクリレート/N−ビニルピロリドンコポリマー接着剤、および、例えば、米国特許第4,112,213号明細書(ウォールドマン(Waldman))に記載されているものなどの架橋されたアクリレート接着剤などのアクリル系接着剤がある。接着剤中に薬剤を含有することは創傷治癒を向上させるのに有用であり、ヨウ素などの抗微生物剤を含有することは感染を防止するのに有用である。
【0109】
接着剤は、任意に、米国特許第5,614,310号明細書(デルガド(Delgado)ら)に記載の低外傷性を有する微小球接着剤;米国特許第6,171,985B1号明細書(ジョゼフ(Joseph)ら)に記載の低外傷性を有する繊維状接着剤;または、米国特許第6,198,016B1号明細書(ルーカスト(Lucast)ら)および国際公開第99/13866号パンフレットおよび同第99/13865号パンフレットに記載の接着剤などの、湿潤皮膚にとりわけ良好な接着性を有する;米国特許出願公開第2001/0051178A1号明細書(ブラッチフォード(Blatchford)ら)に開示されている多層接着剤であってもよい。特に好ましい接着剤は、アクリル酸15重量%、メトキシポリエチレンオキシド400アクリレート15重量%、イソオクチルアクリレート70重量%を含み、米国特許第5,849,325号明細書(ハイネケ(Heinecke)ら)の実施例1に従って調製される。
【0110】
接着剤は、水または創傷滲出物に対する透過性があるように選択されてもよく、または、接着剤は滲出物のゲル層への流れを妨げないように、創傷ドレッシングの前面(即ち、対向層の前面であってもまたはバッキング層の前面であっても、創傷部位と接触する表面)にパターン塗工されてもよい、即ち、接着剤は、創傷ドレッシングの周縁部に塗工されてもよい。或いは、接着剤層は、滲出物のための流路を提供するため、対向フィルムについて記載したように穿孔されてもよい。
【0111】
取り扱いを容易にするため、剥離ライナーを接着剤層に取り付けてもよい。剥離ライナーの例には、ポリエチレン、ポリプロピレンおよびフルオロカーボンで製造されたまたは塗工されたライナー、および、シリコーン塗工された剥離紙またはポリエステルフィルムがある。シリコーン塗工された剥離紙の例には、ポリスリク(POLYSLIK)S−8004、イリノイ州シカゴのH.P.スミス社(H.P.Smith Co., Chicago, IL)によって供給される83ポンド(135.4g/m2)の漂白シリコーン剥離紙、および、イリノイ州ディクソンのダウバート・ケミカル社(Daubert Chemical Co., Dixon, IL)によって供給される80ポンド(130.5g/m2)の漂白二面シリコーン塗工紙(2−80−BKG−157)がある。
【0112】
本発明の創傷ドレッシングは、また、ドレッシングを創傷に更に容易に適用できるようにするフレームを備えてもよい。フレームは、取り扱い中および創傷部位への適用中、ドレッシングの形状を維持する比較的剛性の材料で製造される。フレームは、一般に、バッキングフィルムの背面に取り外し可能に接着され、創傷ドレッシングの適用後に除去される。好適なフレームは、米国特許第5,531,855号明細書(ハイネケ(Heinecke)ら)および同第5,738,642号明細書(ハイネケ(Heinecke)ら)に記載されている。
【実施例】
【0113】
これらの実施例は、単に例証を目的としているだけであり、添付の特許請求の範囲を限定しようとするものではない。実施例および本明細書の残りの部分における全ての部、パーセンテージ、比などは、別途記載しない限り、重量によるものである。使用した溶媒および他の試薬は、別途記載しない限り、ウィスコンシン州ミルウォーキーのアルドリッチ・ケミカル社(Aldrich Chemical Company;Milwaukee, Wisconsin)から入手した。
【0114】
試験方法
膨潤(吸収)試験
この試験では、食塩水中に置かれたときのポリマーの膨潤する能力を測定する。広口瓶に0.9%の食塩水約200ミリリットルを充填した。目的のポリマーフィルムの、直径3センチメートル、厚み約1.1ミリメートルのディスクの重量を測定し、その値を「乾燥重量」として記録した。サンプルを0.9%食塩水中に完全に沈め、24時間沈めたままにした。サンプルを取り出し、1分間浸漬させた後、重量を測定し、その値を「湿潤重量」として記録した。次式を使用して吸収率を計算した:
100×(湿潤重量−乾燥重量)/乾燥重量=吸収%
【0115】
【表1】

【0116】
実施例1A〜1F
パートI:光開始剤官能性オリゴマーの調製
褐色ガラス瓶中で、MPEG65.04グラム(130mmol)、HEMA34.95グラム(269mmol)、PIA1.001グラム(3.60mmol)、AMS4.001グラム(33.9mmol)、AIBN0.400グラム(2.44mmol)、および、酢酸エチル100ミリリットルを合わせ、15分間窒素を通気させ、栓をした。密閉したガラス瓶を振盪恒温槽(thermostated temperature bath shaker)中で、65℃で24時間振盪させた。得られたオリゴマーは、SECで決定するとき、Mn=15,700グラム/モル、および1.95の多分散性を有した。
【0117】
パートII:メタクリレート官能性オリゴマーの調製
表1に示すように、様々な量のMAA−PEGを、前記パートIで調製したオリゴマー/酢酸エチル溶液の部分に添加して溶液A〜Gを作製し、室温で48時間攪拌した。
【0118】
【表2】

【0119】
パートIII:フィルムの作製および試験
前記パートIIで調製した各オリゴマー溶液A〜Gの一部を剥離ライナー上に注ぎ、40℃のオーブンで16時間乾燥させ、別の剥離ライナーで被覆した。その構成に、マサチューセッツ州ダンバーズ、シルバニア(Sylvania Danvers, MA)製のF15T8/350BLランプ(約1500mJ/cm2)を用いて15分間、紫外線を露光することにより、これらの積層体を硬化させてフィルムにした。前述の膨潤試験方法を使用して各フィルムの吸収を決定した。これらの結果を表2に示す。
【0120】
【表3】

【0121】
実施例2A〜2D
パートI:光開始剤官能性オリゴマーの調製
褐色ガラス瓶中で、MPEG65.03グラム(130mmol)、HEMA35.10グラム(270mmol)、PIA0.501グラム(1.80mmol)、AMS4.07グラム(33.9mmol)、AIBN0.401グラム(2.44mmol)、および、酢酸エチル100ミリリットルを合わせ、15分間窒素を通気させ、栓をした。密閉したガラス瓶を振盪恒温槽(thermostated temperature bath shaker)中で、65℃で24時間振盪させた。
【0122】
パートII:メタクリレート官能性オリゴマーの調製
表3に示すように、様々な量のMAA−PEGを、前記パートIで調製したオリゴマー/酢酸エチル溶液の部分に添加して溶液T〜Wを作製し、室温で48時間攪拌した。
【0123】
【表4】

【0124】
パートIII:フィルムの調製および試験
前記パートIIで調製した各オリゴマー溶液H〜Kの一部を剥離ライナー上に注ぎ、40℃のオーブンで16時間乾燥させ、別の剥離ライナーで被覆した。その構成に、マサチューセッツ州ダンバーズ、シルバニア(Sylvania Danvers, MA)製のF15T8/350BLランプ(約1500mJ/cm2)を用いて15分間、紫外線を露光することにより、これらの積層体を硬化させてフィルムにした。前述の膨潤試験方法を使用して各フィルムの吸収を決定した。これらの結果を表4に示す。
【0125】
【表5】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)ペンダントの親水性ポリ(アルキレンオキシド)基およびペンダントの光開始剤基を有する複数の重合したモノマー単位を含む第1の成分のオリゴマー、並びに
b)重合性エチレン性不飽和末端基を有する親水性ポリ(アルキレンオキシド)架橋剤、
を含む、親水性架橋性オリゴマー組成物。
【請求項2】
前記架橋剤が、次式
Z−Q−CH(R1)−CH2−O−(CH(R1)−CH2−O)m−CH(R1)−CH2−Q−Z
[式中、Zが重合性エチレン性不飽和部分であり、R1がHまたはC1〜C4アルキル基であり、mが20〜500であり、Qが−O−、−NR1−、−CO2−および−CONR1−から選択される2価の連結基である]
を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記組成物が、2重量%未満の残留分を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記オリゴマーの平均重合度が300未満である、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記架橋剤が、ポリ(エチレンオキシド)(コ)ポリマーである、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
前記架橋剤が、ポリ(エチレンオキシド−コ−プロピレンオキシド)コポリマーである、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
前記第1の成分のオリゴマーが、
a)ペンダントの親水性ポリ(アルキレンオキシド)基を有する重合したモノマー単位20〜99重量部、および
b)ペンダントの光開始剤基を有するエチレン性不飽和モノマーから誘導された重合したモノマー単位0.1〜25重量部、
c)ペンダントの重合性基を有するエチレン性不飽和モノマーから誘導された重合したモノマー単位0〜25重量部、および
d)アクリル酸エステル、好ましくは炭素数1〜14の非第三級アルキルアルコールのアクリル酸エステルから誘導された重合したモノマー単位0〜30重量部、および
e)少なくとも1種類の他のモノマー0〜40重量部、
を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
前記組成物が、ペンダントの光開始剤基を有するエチレン性不飽和モノマーから誘導された重合したモノマー単位と、ペンダントの重合性基を有するエチレン性不飽和モノマーから誘導された重合したモノマー単位の両方を含み、このようなモノマー単位の合計が、0.1〜25重量部である、請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
前記第1の成分のオリゴマーが、ペンダントの光開始剤基を有する複数の重合したモノマー単位を含み、前記ペンダントの光開始剤基が次式を有し、
【化1】

式中、R2は、以下のものであり、
【化2】

式中、R1はHまたはC1〜C4アルキル基であり、
7、R8およびR9は、独立して、ヒドロキシ基、フェニル基、C1〜C6アルキル基、またはC1〜C6アルコキシ基である、請求項7に記載の組成物。
【請求項10】
ペンダントの光開始剤基を有するオリゴマーが、複数のペンダントの反応性官能基を有するポリマーと、光開始剤基を有する共反応性化合物との反応により調製される、請求項1に記載の組成物。
【請求項11】
第1の成分のオリゴマー鎖1本当たり2より多くの架橋を提供するのに十分な量の前記架橋剤を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項12】
a)前記第1の成分のオリゴマー50〜99.9重量部、および
b)前記架橋剤0.1〜50重量部、
を含む組成物であって、前記組成物は、架橋されたとき、少なくとも50重量%の水を吸収できる、請求項1に記載の組成物。
【請求項13】
架橋間の平均分子量が少なくとも1000である、請求項1〜12のいずれか1項に記載の組成物を含む架橋された組成物。
【請求項14】
前記第1の成分のオリゴマーが、ペンダントのフリーラジカル重合性官能基と、ペンダントの光開始剤基の両方を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項15】
少なくとも一つの面に、架橋されたポリマー組成物のコーティングを有する基材を製造する方法であって、
a)前記基材に、請求項1〜14のいずれか1項に記載のオリゴマー組成物を塗工する工程、および
b)光開始剤の存在下で、前記第1の成分のオリゴマーと架橋剤を光化学的に架橋させる工程、
を含む、方法。
【請求項16】
前記オリゴマー組成物が、工程aの前に、22℃で750〜7,500cPsの塗工可能な粘度に部分的に転換される、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
請求項13に記載の架橋された親水性ゲル吸収層を含む、吸収性ドレッシング。
【請求項18】
透過性対向層、
前記対抗層の周縁部に結合されるバッキング層、および
前記バッキング層と対向層の間に配置される親水性ゲル吸収層、
を含む、請求項17に記載の吸収性ドレッシング。
【請求項19】
前記対向層の前面の少なくとも一部に感圧接着剤の層を有する、請求項17に記載の吸収性ドレッシング。
【請求項20】
前記ゲル層が、薬理学的活性剤を更に含む、請求項17に記載の吸収性ドレッシング。
【請求項21】
前記ゲル層が、ハイドロコロイドを更に含む、請求項17に記載の吸収性ドレッシング。
【請求項22】
前記吸収層が、膨潤時に透明である、請求項17に記載の吸収性ドレッシング。

【公表番号】特表2007−525589(P2007−525589A)
【公表日】平成19年9月6日(2007.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−501780(P2007−501780)
【出願日】平成17年1月28日(2005.1.28)
【国際出願番号】PCT/US2005/002554
【国際公開番号】WO2005/092403
【国際公開日】平成17年10月6日(2005.10.6)
【出願人】(599056437)スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー (1,802)
【Fターム(参考)】