説明

光電変換素子及び光電変換素子用色素、並びに、化合物

【課題】光電変換特性及び耐久性が高められた光電変換素子等を提供する。
【解決手段】色素担持金属酸化物電極を有する作用電極を備えた光電変換素子において、下記一般式(I)で表される構造を有する色素を用いる。


(一般式(I)中、Aは、メタノール溶液中の最大吸収波長λmaxが350〜500nmとなる構造であり、Bは、メタノール溶液中の最大吸収波長λmaxが500〜700nmとなるシアニン骨格であり、Zは、−CONR−、−NRCO−、−SONR−、及び、−NRSO−から選択されるいずれか1種の二価の連結基であり、Z中のRは、水素原子、炭素原子数1〜8のアルキル基、又は、炭素原子数7〜20のアリールアルキル基であり、Y及びYは、各々独立して、炭素原子数1〜8のアルキレン基、又は、単結合であり、rは、1又は2であり、m及びnは、各々独立して、0〜2の整数であり、且つ、(m+n)は1以上である。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光電変換素子及び光電変換素子用色素、並びに、化合物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、多種多様な技術分野において、色素が広く使用されている。一例を挙げると、光電変換素子の分野では、例えば、色素増感型太陽電池の作用電極に、光増感作用を有する色素が用いられている。
【0003】
色素増感型太陽電池は、一般的に、色素の担持体として酸化物半導体を有する電極を有しており、かかる色素が入射した光を吸収して励起され、この励起された色素が電子を担持体に注入することにより、光電変換を行う。そして、この種の色素増感型太陽電池は、理論上、有機系太陽電池の中では高いエネルギー変換効率が期待でき、また、従来のシリコン半導体を用いた太陽電池より低価格で製造できるため、コスト的に非常に有利であると考えられている。
【0004】
一方、光電変換素子に用いられる色素としては、ルテニウム錯体系色素や、シアニン系色素等の有機色素が広く知られている。特に、シアニン系色素は、比較的安定性が高く、また、容易に合成可能であるため、種々の検討がなされている。
【0005】
例えば、特許文献1には、メチン鎖骨格の両端にインドレニン骨格が結合した構造を有し、さらに、酸化物半導体電極に吸着するためのアンカー基としてカルボン酸基を有するシアニン系色素が開示されている。
【0006】
また、特許文献2には、互いに異なる励起順位を有する複数の成分色素が互いに化学結合されてなり、それにより、電子移動用の直鎖又は枝分かれ構造体を形成し、該直鎖又は枝分かれ構造体は一端においてn型半導体に保持され、他端は自由端であり、該該直鎖又は枝分かれ構造体において、該複数の成分色素は、その励起準位が該直鎖又は枝分かれ構造体の上記n型半導体に保持された端部から、上記の自由端に向かって減少する順序で配列されている、複合色素が開示されている。
【0007】
さらに、特許文献3には、400〜700nmに吸収極大を有する色素と700〜1500nmに吸収極大を有する色素とを、2価の連結基で結合した増感色素が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2008−166119号公報
【特許文献2】特開2004−363096号公報
【特許文献3】特開2010−135281号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上記特許文献1に記載のシアニン系色素等に代表される従来の(非複合化)色素は、吸収波長領域が十分に広いとは言えず、これを用いた光電変換素子は十分なエネルギー変換効率を呈するものとは言えなかった。
【0010】
そのため、吸収波長領域の広域化が検討されており、例えば、上記特許文献2に記載の技術のように、複数の色素を複合化する試みがなされていた。ところが、上記特許文献2に記載の複合化色素は、2光子励起により増感するため、これを用いた光電変換素子は、電流が半減して、高いエネルギー変換効率が得られなかった。
【0011】
一方、上記特許文献3に記載の複合化色素は、700〜1500nmに吸収極大を有するため、色素のLUMOが低くなってしまい、金属酸化物の伝導体を越えることが難しい。このため、色素から金属酸化物半導体へ効率よく電子注入させることができない。それゆえ、上記特許文献3に記載の複合化色素を用いた光電変換素子は、高いエネルギー変換効率が得られなかった。
【0012】
本発明は、かかる実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、エネルギー変換効率に優れるとともに耐久性の高い光電変換素子、及び、このような光電変換素子を実現し得る新規な色素、並びに、そのような新規な色素の前駆体(中間体)として利用可能な化合物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは、鋭意研究を重ねた結果、本発明者らが新たに合成した特定構造の色素を用いることにより、上記課題が解決されることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0014】
すなわち、本発明は、以下<1>〜<11>を提供する。
<1>
色素が金属酸化物層に担持された色素担持金属酸化物電極を有する作用電極を備えた光電変換素子において、
前記色素は、下記一般式(I):
【化1】

(一般式(I)中、Aは、メタノール溶液中の最大吸収波長λmaxが350〜500nmとなる構造であり、Bは、メタノール溶液中の最大吸収波長λmaxが500〜700nmとなるシアニン骨格であり、Zは、−CONR−、−NRCO−、−SONR−、及び、−NRSO−から選択されるいずれか1種の二価の連結基であり、Z中のRは、水素原子、炭素原子数1〜8のアルキル基、又は、炭素原子数7〜20のアリールアルキル基であり、Y及びYは、各々独立して、炭素原子数1〜8のアルキレン基、又は、単結合であり、各々が同一であっても異なっていてもよく、rは、1又は2であり、m及びnは、各々独立して、0〜2の整数であり、且つ、(m+n)は1以上である。)
で表される構造を有する、
光電変換素子。
【0015】
<2>
前記色素は、下記一般式(II):
【化2】

(一般式(II)中、X及びXは、各々独立して、酸素原子、硫黄原子、セレン原子、CR、又は、NRであり、各々が同一であっても異なっていてもよく、R〜Rは、各々独立して、水素原子、炭素原子数1〜20のアルキル基、炭素原子数2〜8のアルケニル基、炭素原子数2〜8のアルキニル基であり、各々が同一であっても異なっていてもよく、ここでR〜Rは、各々独立して、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、アミノ基、水酸基、エーテル基、カルボニル基、芳香環、複素環、或いは、メタロセニル基で置換されていてもよく、RとRとが連結して3〜6員環の脂環基を形成していてもよく、一方、R〜Rは、各々独立して、水素原子、炭素原子数1〜8のアルキル基、炭素原子数6〜12のアリール基、ハロゲン原子、又は、シアノ基であり、各々が同一であっても異なっていてもよく、R〜R16は、各々独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1〜20のアルキル基、又は、炭素原子数6〜12のアリール基であり、各々が同一であっても異なっていてもよく、R〜R16において、RとR11が脱離して或いはR13とR15が脱離して、それぞれ不飽和結合を形成していてもよく、又は、R10とR12が連結して或いは又はR14とR16が連結して、それぞれ置換基を有してもよいベンゼン環、置換基を有してもよいナフタレン環、又は、置換基を有してもよいフェナントレン環を形成してもよく、pは、1又は2であり、ここで式中のZは、R〜R16に置き換わって或いはR〜R16中に含まれる水素原子に置き換わって置換されており、また式中の置換基−Y−COOHは、R〜R16に置き換わって或いはR〜R16中に含まれる水素原子に置き換わって置換されており、一方、Anb−は、b価のアニオンであり、aは、1又は2であって色素全体の電荷を中性に保つ係数であり、bは、1又は2であり、m、n、r、Z、A、Y及びYは、上記一般式(I)において説明したものと同じである。)
で表される構造を有する、
上記<1>に記載の光電変換素子。
【0016】
<3>
前記色素は、下記一般式(III):
【化3】

(一般式(III)中、D及びDは、各々独立して、置換基を有してもよいベンゼン環、置換基を有してもよいナフタレン環、又は、置換基を有してもよいフェナントレン環であり、各々が同一であっても異なっていてもよく、ここで式中の2つの置換基−Y−COOHは、R〜Rに置き換わって或いはR〜Rに含まれる水素原子に置き換わって置換されており、又は、D及びDで表されるベンゼン環、ナフタレン環或いはフェナントレン環上に置換されている。)
で表される構造を有する、
上記<2>に記載の光電変換素子。
【0017】
<4>
前記Aが、下記式(IV)〜(VII):
【化4】

(式(IV)中、Sは、置換基を有してもよい芳香環、又は、置換基を有してもよい複素環であり、R17〜R20は、各々独立して、水素原子、炭素原子数1〜8のアルキル基、ハロゲン原子、又は、シアノ基であり、各々が同一であっても異なっていてもよく、qは、0又は1であり、前記置換基−Y−COOHは、S上に置換されている。)
【化5】

(式(V)中、Sは、置換基を有してもよい芳香環、又は、置換基を有してもよい複素環であり、Sは、硫黄原子、又は、下記式(Va)で表される構造であり、R21〜R23は、各々独立して、水素原子、炭素原子数1〜8のアルキル基、ハロゲン原子、又は、シアノ基であり、各々が同一であっても異なっていてもよく、R24は、水素原子、炭素原子数1〜20のアルキル基、炭素原子数6〜30のアリール基、炭素原子数7〜30のアリールアルキル基、又は、アンカー基であり、uは、0又は1であり、前記置換基−Y−COOHは、S及び/又はS上に置換されている。)
【化6】

【化7】

(式(VI)中、R25〜R26は、各々独立して、水素原子、炭素原子数1〜8のアルキル基、ハロゲン原子、又は、シアノ基であり、各々が同一であっても異なっていてもよく、R27は、水素原子、炭素原子数1〜20のアルキル基、炭素原子数6〜30のアリール基、炭素原子数7〜30のアリールアルキル基、又は、アンカー基であり、R28〜R31は、各々独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1〜20のアルキル基、又は、炭素原子数6〜12のアリール基であり、各々が同一であっても異なっていてもよく、ここでR28とR30はそれぞれ脱離して不飽和結合を形成してもよく、或いは、R29とR31は連結して置換基を有してもよいベンゼン環、置換基を有してもよいナフタレン環又は置換基を有してもよいフェナントレン環を形成していてもよく、tは、0又は1であり、前記置換基−Y−COOHは、S上に置換されている。)
【化8】

(式(VII)中、R32〜R33は、各々独立して、水素原子、炭素原子数1〜20のアルキル基、又は、炭素原子数7〜30のアリールアルキル基であり、各々が同一であっても異なっていてもよく、R34〜R41は、各々独立して、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、シアノ基、ニトロ基、炭素原子数1〜20のアルキル基、炭素原子数6〜30のアリール基、又は、炭素原子数7〜30のアリールアルキル基であり、各々が同一であっても異なっていてもよい。)
よりなる群から選択される1種である、
上記<1>〜<3>のいずれか一項に記載の光電変換素子。
【0018】
<5>
下記一般式(I):
【化9】

(一般式(I)中、Aは、メタノール溶液中の最大吸収波長λmaxが350〜500nmとなる構造であり、Bは、メタノール溶液中の最大吸収波長λmaxが500〜700nmとなるシアニン骨格であり、Zは、−CONR−、−NRCO−、−SONR−、及び、−NRSO−から選択されるいずれか1種の二価の連結基であり、Z中のRは、水素原子、炭素原子数1〜8のアルキル基、又は、炭素原子数7〜20のアリールアルキル基であり、Y及びYは、各々独立して、炭素原子数1〜8のアルキレン基、又は、単結合であり、各々が同一であっても異なっていてもよく、rは、1又は2であり、m及びnは、各々独立して、0〜2の整数であり、且つ、(m+n)は1以上である。)
で表される構造を有する、
光電変換素子用色素。
【0019】
<6>
下記一般式(II):
【化10】

(一般式(II)中、X及びXは、各々独立して、酸素原子、硫黄原子、セレン原子、CR、又は、NRであり、各々が同一であっても異なっていてもよく、R〜Rは、各々独立して、水素原子、炭素原子数1〜20のアルキル基、炭素原子数2〜8のアルケニル基、炭素原子数2〜8のアルキニル基であり、各々が同一であっても異なっていてもよく、ここでR〜Rは、各々独立して、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、アミノ基、水酸基、エーテル基、カルボニル基、芳香環、複素環、或いは、メタロセニル基で置換されていてもよく、RとRとが連結して3〜6員環の脂環基を形成していてもよく、一方、R〜Rは、各々独立して、水素原子、炭素原子数1〜8のアルキル基、炭素原子数6〜12のアリール基、ハロゲン原子、又は、シアノ基であり、各々が同一であっても異なっていてもよく、R〜R16は、各々独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1〜20のアルキル基、又は、炭素原子数6〜12のアリール基であり、各々が同一であっても異なっていてもよく、R〜R16において、RとR11が脱離して或いはR13とR15が脱離して、それぞれ不飽和結合を形成していてもよく、又は、R10とR12が連結して或いは又はR14とR16が連結して、それぞれ置換基を有してもよいベンゼン環、置換基を有してもよいナフタレン環、又は、置換基を有してもよいフェナントレン環を形成してもよく、pは、1又は2であり、ここで式中のZは、R〜R16に置き換わって或いはR〜R16中に含まれる水素原子に置き換わって置換されており、また式中の置換基−Y−COOHは、R〜R16に置き換わって或いはR〜R16中に含まれる水素原子に置き換わって置換されており、一方、Anb−は、b価のアニオンであり、aは、1又は2であって色素全体の電荷を中性に保つ係数であり、bは、1又は2であり、m、n、r、Z、A、Y及びYは、上記一般式(I)において説明したものと同じである。)
で表される構造を有する、
上記<5>に記載の光電変換素子用色素。
【0020】
<7>
下記一般式(III):
【化11】

(一般式(III)中、D及びDは、各々独立して、置換基を有してもよいベンゼン環、置換基を有してもよいナフタレン環、又は、置換基を有してもよいフェナントレン環であり、各々が同一であっても異なっていてもよく、ここで式中の2つの置換基−Y−COOHは、R〜Rに置き換わって或いはR〜Rに含まれる水素原子に置き換わって置換されており、又は、D及びDで表されるベンゼン環、ナフタレン環或いはフェナントレン環上に置換されている。)
で表される構造を有する、
上記<6>に記載の光電変換素子用色素。
【0021】
<8>
前記Aが、下記式(IV)〜(VII):
【化12】

(式(IV)中、Sは、置換基を有してもよい芳香環、又は、置換基を有してもよい複素環であり、R17〜R20は、各々独立して、水素原子、炭素原子数1〜8のアルキル基、ハロゲン原子、又は、シアノ基であり、各々が同一であっても異なっていてもよく、qは、0又は1であり、前記置換基−Y−COOHは、S上に置換されている。)
【化13】

(式(V)中、Sは、置換基を有してもよい芳香環、又は、置換基を有してもよい複素環であり、Sは、硫黄原子、又は、下記式(Va)で表される構造であり、R21〜R23は、各々独立して、水素原子、炭素原子数1〜8のアルキル基、ハロゲン原子、又は、シアノ基であり、各々が同一であっても異なっていてもよく、R24は、水素原子、炭素原子数1〜20のアルキル基、炭素原子数6〜30のアリール基、炭素原子数7〜30のアリールアルキル基、又は、アンカー基であり、uは、0又は1であり、前記置換基−Y−COOHは、S及び/又はS上に置換されている。)
【化14】

【化15】

(式(VI)中、R25〜R26は、各々独立して、水素原子、炭素原子数1〜8のアルキル基、ハロゲン原子、又は、シアノ基であり、各々が同一であっても異なっていてもよく、R27は、水素原子、炭素原子数1〜20のアルキル基、炭素原子数6〜30のアリール基、炭素原子数7〜30のアリールアルキル基、又は、アンカー基であり、R28〜R31は、各々独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1〜20のアルキル基、又は、炭素原子数6〜12のアリール基であり、各々が同一であっても異なっていてもよく、ここでR28とR30はそれぞれ脱離して不飽和結合を形成してもよく、或いは、R29とR31は連結して置換基を有してもよいベンゼン環、置換基を有してもよいナフタレン環又は置換基を有してもよいフェナントレン環を形成していてもよく、tは、0又は1であり、前記置換基−Y−COOHは、S上に置換されている。)
【化16】

(式(VII)中、R32〜R33は、各々独立して、水素原子、炭素原子数1〜20のアルキル基、又は、炭素原子数7〜30のアリールアルキル基であり、各々が同一であっても異なっていてもよく、R34〜R41は、各々独立して、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、シアノ基、ニトロ基、炭素原子数1〜20のアルキル基、炭素原子数6〜30のアリール基、又は、炭素原子数7〜30のアリールアルキル基であり、各々が同一であっても異なっていてもよい。)
よりなる群から選択される1種である、
<5>〜<7>のいずれか一項に記載の光電変換素子用色素。
【0022】
<9>
下記式(IX):
【化17】

(式(IX)中、Aは、メタノール溶液中の最大吸収波長λmaxが350〜500nmとなる構造であり、Zは、−CONR−、−NRCO−、−SONR−、及び、−NRSO−から選択されるいずれか1種の二価の連結基であり、Z中のRは、水素原子、炭素原子数1〜8のアルキル基、又は、炭素原子数7〜20のアリールアルキル基であり、Dは、置換基を有してもよいベンゼン環、置換基を有してもよいナフタレン環、又は、置換基を有してもよいフェナントレン環であり、Rは、水素原子、炭素原子数1〜20のアルキル基、炭素原子数2〜8のアルケニル基、炭素原子数2〜8のアルキニル基であり、これらはハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、アミノ基、水酸基、エーテル基、カルボニル基、芳香環、複素環、或いは、メタロセニル基で置換されていてもよく、R42は、各々独立して、水素原子、炭素原子数1〜8のアルキル基、炭素原子数6〜12のアリール基、ハロゲン原子、又は、シアノ基であり、各々が同一であっても異なっていてもよく、Xは、酸素原子、硫黄原子、セレン原子、CR、又は、NRであり、R〜Rは、各々独立して、水素原子、炭素原子数1〜20のアルキル基、炭素原子数2〜8のアルケニル基、炭素原子数2〜8のアルキニル基であり、各々が同一であっても異なっていてもよく、ここでR〜Rは、各々独立して、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、アミノ基、水酸基、エーテル基、カルボニル基、芳香環、複素環、或いは、メタロセニル基で置換されていてもよく、RとRとが連結して3〜6員環の脂環基を形成していてもよく、Yは、炭素原子数1〜8のアルキレン基、又は、単結合であり、mは、0〜2であり、一方、Anb−は、b価のアニオンであり、aは、1又は2であって色素全体の電荷を中性に保つ係数であり、bは、1又は2である。)
で表される構造を有する、
化合物。
なお、上記式(IX)で表される構造を有する化合物は、下記式(IX)’で表される構造を有する化合物と合成上等価である。
【化18】

(式(IX)’中、A、Z、D、R、R42、X、Y及びmは、上記式(IX)において説明したものと同じである。)
【0023】
<10>
下記式(X):
【化19】

(式(X)中、Aは、メタノール溶液中の最大吸収波長λmaxが350〜500nmとなる構造であり、Zは、−CONR−、−NRCO−、−SONR−、及び、−NRSO−から選択されるいずれか1種の二価の連結基であり、Z中のRは、水素原子、炭素原子数1〜8のアルキル基、又は、炭素原子数7〜20のアリールアルキル基であり、Dは、置換基を有してもよいベンゼン環、置換基を有してもよいナフタレン環、又は、置換基を有してもよいフェナントレン環であり、Rは、水素原子、炭素原子数1〜20のアルキル基、炭素原子数2〜8のアルケニル基、炭素原子数2〜8のアルキニル基であり、これらはハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、アミノ基、水酸基、エーテル基、カルボニル基、芳香環、複素環、或いは、メタロセニル基で置換されていてもよく、Xは、酸素原子、硫黄原子、セレン原子、CR、又は、NRであり、R〜Rは、各々独立して、水素原子、炭素原子数1〜20のアルキル基、炭素原子数2〜8のアルケニル基、炭素原子数2〜8のアルキニル基であり、各々が同一であっても異なっていてもよく、ここでR〜Rは、各々独立して、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、アミノ基、水酸基、エーテル基、カルボニル基、芳香環、複素環、或いは、メタロセニル基で置換されていてもよく、RとRとが連結して3〜6員環の脂環基を形成していてもよく、一方、Anb−は、b価のアニオンであり、aは、1又は2であって色素全体の電荷を中性に保つ係数であり、bは、1又は2である。)
で表される構造を有する、
上記<9>に記載の化合物。
【0024】
<11>
前記Aが、下記式(IV)〜(VII):
【化20】

(式(IV)中、Sは、置換基を有してもよい芳香環、又は、置換基を有してもよい複素環であり、R17〜R20は、各々独立して、水素原子、炭素原子数1〜8のアルキル基、ハロゲン原子、又は、シアノ基であり、各々が同一であっても異なっていてもよく、qは、0又は1であり、前記置換基−Y−COOHは、S上に置換されている。)
【化21】

(式(V)中、Sは、置換基を有してもよい芳香環、又は、置換基を有してもよい複素環であり、Sは、硫黄原子、又は、下記式(Va)で表される構造であり、R21〜R23は、各々独立して、水素原子、炭素原子数1〜8のアルキル基、ハロゲン原子、又は、シアノ基であり、各々が同一であっても異なっていてもよく、R24は、水素原子、炭素原子数1〜20のアルキル基、炭素原子数6〜30のアリール基、炭素原子数7〜30のアリールアルキル基、又は、アンカー基であり、uは、0又は1であり、前記置換基−Y−COOHは、S及び/又はS上に置換されている。)
【化22】

【化23】

(式(VI)中、R25〜R26は、各々独立して、水素原子、炭素原子数1〜8のアルキル基、ハロゲン原子、又は、シアノ基であり、各々が同一であっても異なっていてもよく、R27は、水素原子、炭素原子数1〜20のアルキル基、炭素原子数6〜30のアリール基、炭素原子数7〜30のアリールアルキル基、又は、アンカー基であり、R28〜R31は、各々独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1〜20のアルキル基、又は、炭素原子数6〜12のアリール基であり、各々が同一であっても異なっていてもよく、ここでR28とR30はそれぞれ脱離して不飽和結合を形成してもよく、或いは、R29とR31は連結して置換基を有してもよいベンゼン環、置換基を有してもよいナフタレン環又は置換基を有してもよいフェナントレン環を形成していてもよく、tは、0又は1であり、前記置換基−Y−COOHは、S上に置換されている。)
【化24】

(式(VII)中、R32〜R33は、各々独立して、水素原子、炭素原子数1〜20のアルキル基、又は、炭素原子数7〜30のアリールアルキル基であり、各々が同一であっても異なっていてもよく、R34〜R41は、各々独立して、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、シアノ基、ニトロ基、炭素原子数1〜20のアルキル基、炭素原子数6〜30のアリール基、又は、炭素原子数7〜30のアリールアルキル基であり、各々が同一であっても異なっていてもよい。)
よりなる群から選択される1種である、
上記<9>又は<10>に記載の化合物。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、吸収波長領域が広く、且つ、金属酸化物層への吸着性(密着性)に優れるのみならず、エネルギー移動効率にも優れる光電変換素子用色素が実現される。そのため、この光電変換素子用色素を用いることにより、光電変換特性及び耐久性が高められた光電変換素子を簡易且つ確実に実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本実施形態の色素の励起及び増感作用の推定機構を示す説明図である。
【図2】色素増感型太陽電池100の概略構成を示す断面図である。
【図3】色素5の紫外可視吸収スペクトルである。
【図4】色素(C3)の紫外可視吸収スペクトルである。
【図5】色素(C4)の紫外可視吸収スペクトルである。
【図6】色素(C3)と色素(C4)の混合物の紫外可視吸収スペクトルである。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の実施の形態について説明する。なお、同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。また、上下左右等の位置関係は、特に断らない限り、図面に示す位置関係に基づくものとする。さらに、図面の寸法比率は、図示の比率に限定されるものではない。また、以下の実施の形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明はその実施の形態のみに限定されない。
【0028】
本実施形態の色素は、色素増感型太陽電池等の光電変換素子に用いられるものであり、一般式(I)で表される構造を有する化合物である。一般式(1)で表される構造を有する化合物は、例えば、金属酸化物半導体材料を含む金属酸化物層(担持体)に対して吸着性(結合性)を有するとともに、光を吸収して励起され、電子をその担持体に対して注入する。
【0029】
【化25】

(一般式(I)中、Aは、メタノール溶液中の最大吸収波長λmaxが350〜500nmとなる構造であり、Bは、メタノール溶液中の最大吸収波長λmaxが500〜700nmとなるシアニン骨格であり、Zは、−CONR−、−NRCO−、−SONR−、及び、−NRSO−から選択されるいずれか1種の二価の連結基であり、Z中のRは、水素原子、炭素原子数1〜8のアルキル基、又は、炭素原子数7〜20のアリールアルキル基であり、Y及びYは、各々独立して、炭素原子数1〜8のアルキレン基、又は、単結合であり、各々が同一であっても異なっていてもよく、rは、1又は2であり、m及びnは、各々独立して、0〜2の整数であり、且つ、(m+n)は1以上である。)
で表される構造を有する、
光電変換素子。
【0030】
一般式(I)において、Aのメタノール溶液中の最大吸収波長λmaxが350〜500nmとなる構造としては、特に限定されないが、例えば、最大吸収波長λmaxが350〜500nmである黄色色素から、m+1個の水素原子又は1価の置換基を引き抜いた構造体が例示される。かかる黄色色素としては、例えば、フルオレセイン、ローダミン、シアニン、メロシアニン、ヘミシアニン、アゾ、多環キノン、インジゴ、ジフェニルメタン、ベンゾフェノン、ピレン、ペリレン、セミスクワリリウム、無金属ポルフィリン、金属ポルフィリン等が挙げられるが、これらに特に限定されない。
【0031】
一般式(I)において、Bのメタノール溶液中の最大吸収波長λmaxが500〜700nmとなるシアニン骨格であり、特に限定されないが、例えば、メタノール溶液中の最大吸収波長λmaxが500〜700nmとなるシアニン色素から、n+r+1個の水素原子又は1価の置換基を引き抜いた構造体が例示される。
【0032】
一般式(I)において、炭素原子数1〜8のアルキル基は、特に限定されず、直鎖状、分岐状又は環状のいずれであっても構わない。その具体例として、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、s−ブチル、t−ブチル、ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、n−ヘキシル、1−メチルブチル、イソヘキシル、2−エチルヘキシル、2−メチルヘキシル、シクロヘキシル、シクロペンチル、シクロヘキシルメチル、n−ヘプチル、n−オクチル等が例示される。
【0033】
一般式(I)において、炭素原子数7〜20のアリールアルキル基は、特に限定されず、直鎖状、分岐状又は環状のいずれであっても構わない。その具体例として、例えば、ベンジル、フェニルエチル、フェニルプロピル、p−メチルベンジル、ナフチルメチル等が例示される。
【0034】
一般式(I)において、炭素原子数1〜8のアルキレン基は、特に限定されず、直鎖状、分岐状又は環状のいずれであっても構わない。その具体例としては、例えば、メチレン、エチレン、プロピレン、ブチレン、ペンチレン、へキシレン等が例示される。
【0035】
本実施形態の色素が、吸収波長領域が広く、且つ、金属酸化物層への吸着性(密着性)に優れるのみならず、エネルギー移動効率にも優れることについての詳細な作用機構は定かではないが、以下のように推定される。
【0036】
すなわち、本実施形態の色素は、メタノール溶液中の最大吸収波長λmaxが350〜500nmとなる構造(第二吸光部位)とメタノール溶液中の最大吸収波長λmaxが500〜700nmとなるシアニン骨格(第一吸光部位)とが、Zにより連結されることにより、吸収波長領域の広域化されている。しかも、連結基としてアミド結合或いはスルホンアミド結合が採用されているので、第二吸光部位Bから第一吸光部位Aへのエネルギー移動が効率よく行われる。例えば、下記式(イ)の色素と下記式(ロ)の色素とを比較では、黄色を励起させたときのシアニンの蛍光量子収率が、下記式(イ)の色素の方が高いことが、本発明者らの知見により明らかとなっている(下記式(イ)の色素では5.1%であり、下記式(ロ)の色素では0.1%であった。)。
【0037】
【化26】

【化27】

【0038】
しかも、本実施形態の色素は、第二吸光部位Bを励起させても、第一吸光部位Aからの発光が高効率で観測されることを確認できた。このことは、たとえ第二吸光部位Bが金属酸化物への注入が低い材料であったとしても、第一吸光部位Aに金属酸化物への電子注入が高い材料を選定した場合には、第一吸光部位及び第二吸光部位で吸収した光エネルギーをいずれも金属酸化物半導体へ高効率に移動することを示唆している。
【0039】
なお、従来において、吸収波長領域の広域化を行うために、吸収波長領域が異なる2種以上の(非複合化)色素を併用することも検討されている。しかしながら、2種以上の(非複合化)色素を併用しても、各々の色素の金属酸化物表面への吸着性が異なるため、意図する吸着割合で各々の色素を金属酸化物表面へ吸着させること(吸着性の劣る色素を金属酸化物表面へ十分に吸着させること)が困難であり、そのため、吸収波長領域の広域化を行うことが困難であった。また、金属酸化物表面の色素が吸着できるサイトは有限と考えられている。よって、2種以上の(非複合化)色素を混合して金属酸化物表面へ吸着させようとしても、サイトを分け合って吸着しなければならないため、単位面積当たりの吸着色素を増やすことはできない。これに対し、本実施形態の色素の如くアミド結合で連結した(複合化)色素の場合は、単一の色素であるので、上記のように他の色素と吸着サイトを分け合う必要がなく、単位面積当たりの吸着色素を増やすことができる。さらに、アミド結合と第一吸光部位Aの嵩高さにより、アンカー基である−Y−COOH或いは−Y−COOHが守られるため、剥離試験での高い耐性を示すことができる。
【0040】
その上さらに、本実施形態の色素においては、アンカー基として−Y−COOH或いは−Y−COOHが導入されているため、金属酸化物表面への吸着性(密着性)が高められており、これにより、色素から金属酸化物半導体への電子移動が促進されるのみならず、金属酸化物表面への色素吸着量が高められる。これらの作用があいまった結果、本実施形態の色素を用いた光電変換素子では、照射された光量に対して本実施形態の色素から金属酸化物半導体への電子注入量の割合が高くなり、IPCE(Incident Photons to Current conversion Efficiency)が向上し、その結果、変換効率が向上するとともに、耐久性が高められたものと考えられる。但し、作用はこれらに限定されない。なお、IPCEとは、光電変換素子において照射した光の光子数に対する光電流の電子数への変換された割合を表すものであり、IPCE(%)=Isc×1240/λ×1/φ(式中、Iscは短絡電流であり、λは波長であり、φは入射光強度である。)により求められる。
【0041】
前記一般式(I)で表される構造は、下記一般式(II)で表される構造であることが好ましい。
【化28】

(一般式(II)中、X及びXは、各々独立して、酸素原子、硫黄原子、セレン原子、CR、又は、NRであり、各々が同一であっても異なっていてもよく、R〜Rは、各々独立して、水素原子、炭素原子数1〜20のアルキル基、炭素原子数2〜8のアルケニル基、炭素原子数2〜8のアルキニル基であり、各々が同一であっても異なっていてもよく、ここでR〜Rは、各々独立して、ハロゲン原子(F、Cl、Br等)、ニトロ基、シアノ基、アミノ基、水酸基、エーテル基、カルボニル基、芳香環、複素環、或いは、メタロセニル基で置換されていてもよく、RとRとが連結して3〜6員環の脂環基を形成していてもよく、一方、R〜Rは、各々独立して、水素原子、炭素原子数1〜8のアルキル基、炭素原子数6〜12のアリール基、ハロゲン原子(F、Cl、Br等)、又は、シアノ基であり、各々が同一であっても異なっていてもよく、R〜R16は、各々独立して、水素原子、ハロゲン原子(F、Cl、Br等)、炭素原子数1〜20のアルキル基、又は、炭素原子数6〜12のアリール基であり、各々が同一であっても異なっていてもよく、R〜R16において、RとR11が脱離して或いはR13とR15が脱離して、それぞれ不飽和結合を形成していてもよく、又は、R10とR12が連結して或いは又はR14とR16が連結して、それぞれ置換基を有してもよいベンゼン環、置換基を有してもよいナフタレン環、又は、置換基を有してもよいフェナントレン環を形成してもよく、pは、1又は2であり、ここで式中のZは、R〜R16に置き換わって或いはR〜R16中に含まれる水素原子に置き換わって置換されており、また式中の置換基−Y−COOHは、R〜R16に置き換わって或いはR〜R16中に含まれる水素原子に置き換わって置換されており、一方、Anb−は、b価のアニオンであり、aは、1又は2であって色素全体の電荷を中性に保つ係数であり、bは、1又は2であり、m、n、r、Z、A、Y及びYは、上記一般式(I)において説明したものと同じである。)
【0042】
一般式(II)において、炭素原子数1〜20のアルキル基としては、特に限定されず、直鎖状、分岐状又は環状のいずれであっても構わない。その具体例としては、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、s−ブチル、t−ブチル、ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、n−ヘキシル、1−メチルブチル、イソヘキシル、2−エチルヘキシル、2−メチルヘキシル、シクロヘキシル、シクロペンチル、シクロヘキシルメチル、n−ヘプチル、n−オクチル、n−デシル、n−ヘキサデシル、n−ドデシル等が例示される。
【0043】
一般式(II)において、炭素原子数2〜8のアルケニル基は、特に限定されないが、例えば、ビニル基、アリル基、ブテニル基、ヘキセニル基、デセニル基等が例示される。
【0044】
一般式(II)において、炭素原子数2〜8のアルキニル基は、特に限定されないが、例えば、エチニル基やプロピニル基等が例示される。
【0045】
一般式(II)において、芳香環及び複素環は、特に限定されないが、例えば、ベンゼン、ナフタレン、アントラセン、フェナントレン、ピロール、フラン、チオフェン、イミダゾール、オキサゾール、チアゾール、ピラゾール、イソオキサゾール、イソチアゾール、ベンゾフラン、ベンゾチオフェン、ベンゾイミダゾール、ベンゾオキサゾール、ベンゾチアゾール、インドール、インドレニン、フルオレン、カルバゾール、ピリジン、ピリダジン、ピリミジン、ピラジン、ピペリジン、ピペラジン、モルホリン、2H−ピラン、4H−ピランが例示される。芳香環及び複素環の置換基としては、水酸基、カルボキシル基、ニトロ基、シアノ基、ハロゲン原子(F,Cl、Br等)、上述した炭素数1〜8のアルキル基、上述した炭素原子数7〜30のアリールアルキル基、上述したアミノ基、炭素数1〜4以下のハロゲン化アルキル基(例えば、CF,CCl等)、炭素数1〜4のアルコキシ基(例えば、メトキシ,エトキシ、プロピルオキシ、イソプロピルオキシ、ブチルオキシ、第2ブチルオキシ、第3ブチルオキシ等)等が挙げられるが、これらに特に限定されない。
【0046】
一般式(II)において、RとRとが連結して3〜6員環の脂環基を形成する場合の脂環基としては、例えば、シクロプロパン、シクロブタン、シクロペンタン、シクロヘキサンが例示される。
【0047】
一般式(II)において、炭素原子数1〜8のアルキル基は、特に限定されず、直鎖状、分岐状又は環状のいずれであっても構わない。その具体例として、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、s−ブチル、t−ブチル、ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、n−ヘキシル、1−メチルブチル、イソヘキシル、2−エチルヘキシル、2−メチルヘキシル、シクロヘキシル、シクロペンチル、シクロヘキシルメチル、n−ヘプチル、n−オクチル等が例示される。
【0048】
一般式(II)において、炭素原子数6〜12のアリール基は、特に限定されず、その具体例として、例えば、フェニル基、ナフチル基、アズレニル基、フェナントレン基、ビフェニル基等が例示される。
【0049】
一般式(II)において、Anb−のアニオンは、色素全体の電荷を中性に保つためのカウンターアニオンであり、1価あるいは2価のアニオンであれば、任意のものを用いることができる。一般式(II)のAnb−において、b=1の場合のアニオン(1価のアニオン;An)の具体例としては、特に限定されないが、例えば、フッ化物イオン(F)、塩化物イオン(Cl)、臭化物イオン(Br)或いはヨウ化物イオン(I)等のハロゲン化物イオンや、ヘキサフルオロリン酸イオン(PF)、ヘキサフルオロアンチモン酸イオン(SbF)、過塩素酸イオン(ClO)、テトラフルオロホウ酸イオン(BF)、塩素酸イオン或いはチオシアン酸イオン等の無機系陰イオンや、ベンゼンスルホン酸イオン、トルエンスルホン酸イオン、トリフルオロメタンスルホン酸イオン、ジフェニルアミン−4−スルホン酸イオン、2−アミノ−4−メチル−5−クロロベンゼンスルホン酸イオン、2−アミノ−5−ニトロベンゼンスルホン酸イオン、N−アルキルジフェニルアミン−4−スルホン酸イオン或いはN−アリールジフェニルアミン−4−スルホン酸イオン等の有機スルホン酸系陰イオンや、オクチルリン酸イオン、ドデシルリン酸イオン、オクタデシルリン酸イオン、フェニルリン酸イオン、ノニルフェニルリン酸イオン或いは2,2’−メチレンビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)ホスホン酸イオン等の有機リン酸系陰イオンや、その他にビストリフルオロメチルスルホニルイミドイオン、ビスパーフルオロブタンスルホニルイミドイオン、パーフルオロ−4−エチルシクロヘキサンスルホン酸イオン、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ホウ酸イオン或いはトリス(フルオロアルキルスルホニル)カルボアニオン等が例示される。また、一般式(II)のAnb−において、b=2の場合のアニオン(2価のアニオン;An2−)としては、特に限定されないが、例えば、硫酸イオン(SO2−)、ベンゼンジスルホン酸イオン或いはナフタレンジスルホン酸イオン等が例示される。また、本実施形態の色素は、分子内で塩を形成した、所謂、内部塩であってもよい。この場合、本実施形態の色素は、例えば、インドレニン骨格の窒素原子に導入された−CHCHCOOH基等の酸性基がイオン化したものとなる。
【0050】
前記一般式(II)で表される構造は、下記一般式(III)で表される構造であることが好ましい。
【化29】

(一般式(III)中、D及びDは、各々独立して、置換基を有してもよいベンゼン環、置換基を有してもよいナフタレン環、又は、置換基を有してもよいフェナントレン環であり、各々が同一であっても異なっていてもよく、ここで式中の2つの置換基−Y−COOHは、R〜Rに置き換わって或いはR〜Rに含まれる水素原子に置き換わって置換されており、又は、D及びDで表されるベンゼン環、ナフタレン環或いはフェナントレン環上に置換されている。)
【0051】
前記一般式(I)〜(III)で表される構造において、タノール溶液中の最大吸収波長λmaxが350〜500nmとなる構造であるAは、下記式(IV)〜(VII)のいずれか1種であることが好ましい。
【化30】

(式(IV)中、Sは、置換基を有してもよい芳香環、又は、置換基を有してもよい複素環であり、R17〜R20は、各々独立して、水素原子、炭素原子数1〜8のアルキル基、ハロゲン原子(F、Cl、Br等)、又は、シアノ基であり、各々が同一であっても異なっていてもよく、qは、0又は1であり、前記置換基−Y−COOHは、S上に置換されている。)
【0052】
【化31】

(式(V)中、Sは、置換基を有してもよい芳香環、又は、置換基を有してもよい複素環であり、Sは、硫黄原子、又は、下記式(Va)で表される構造であり、R21〜R23は、各々独立して、水素原子、炭素原子数1〜8のアルキル基、ハロゲン原子、又は、シアノ基であり、各々が同一であっても異なっていてもよく、R24は、水素原子、炭素原子数1〜20のアルキル基、炭素原子数6〜30のアリール基、炭素原子数7〜30のアリールアルキル基、又は、アンカー基であり、uは、0又は1であり、前記置換基−Y−COOHは、S及び/又はS上に置換されている。)
【化32】

【0053】
【化33】

(式(VI)中、R25〜R26は、各々独立して、水素原子、炭素原子数1〜8のアルキル基、ハロゲン原子、又は、シアノ基であり、各々が同一であっても異なっていてもよく、R27は、水素原子、炭素原子数1〜20のアルキル基、炭素原子数6〜30のアリール基、炭素原子数7〜30のアリールアルキル基、又は、アンカー基であり、R28〜R31は、各々独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1〜20のアルキル基、又は、炭素原子数6〜12のアリール基であり、各々が同一であっても異なっていてもよく、ここでR28とR30はそれぞれ脱離して不飽和結合を形成してもよく、或いは、R29とR31は連結して置換基を有してもよいベンゼン環、置換基を有してもよいナフタレン環又は置換基を有してもよいフェナントレン環を形成していてもよく、tは、0又は1であり、前記置換基−Y−COOHは、S上に置換されている。)
【0054】
【化34】

(式(VII)中、R32〜R33は、各々独立して、水素原子、炭素原子数1〜20のアルキル基、又は、炭素原子数7〜30のアリールアルキル基であり、各々が同一であっても異なっていてもよく、R34〜R41は、各々独立して、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、シアノ基、ニトロ基、炭素原子数1〜20のアルキル基、炭素原子数6〜30のアリール基、又は、炭素原子数7〜30のアリールアルキル基であり、各々が同一であっても異なっていてもよい。)
【0055】
上記式(IV)〜(VII)において、芳香環及び複素環、芳香環及び複素環の置換基、炭素原子数1〜8のアルキル基、ハロゲン原子、炭素原子数1〜20のアルキル基、炭素原子数6〜30のアリール基、並びに、炭素原子数7〜30のアリールアルキル基の具体例としては、上記一般式(I)及び(II)で述べたものが例示されるが、これらに特に限定されない。また、上記式(IV)〜(VII)において、アンカー基は、金属酸化物を含む金属酸化物層(担持体)に対して、化学的或いは静電的な親和力又は結合能を有する置換基を意味し、具体的には、その具体例としては、例えば、カルボン酸基、スルホン酸基、リン酸基等が挙げられる。
【0056】
上記一般式(I)〜(III)において、Zは、−CONR−、−NRCO−、−SONR−、及び、−NRSO−のいずれか1種であれば、特に限定されないが、エネルギー変換効率をより一層高める観点から、−CONR−又は−NRCO−であることが好ましい。また、上記一般式(I)〜(II)において、エネルギー変換効率及び耐久性をより一層高める観点から、mが0であり、nが2であることが好ましい。このように、シアニン骨格側のみにアンカー基(置換基−Y−COOH)が形成されていると、色素はシアニン骨格側が金属酸化物層表面に配向した状態で吸着する。したがって、第二吸光部位から第一吸光部位へのエネルギー移動が効率よく行われ、その結果、第一吸光部位及び第二吸光部位で吸収した光エネルギーが、いずれも金属酸化物半導体へ高効率に移動する。また、色素の吸着状態が比較的にバルキーな状態となり、さらには、色素自身の立体障害によって金属酸化物層に吸着したアンカー基(置換基−Y−COOH)が比較的に疎水的に保護されるので、色素の水に対する剥離性が高められ、その結果、耐久性がより一層高められる。
【0057】
上記のZの上記A及びBに対する連結部位は、特に限定されない。以下、AとZの好ましい連結構造、及び、BとZの好ましい連結構造の具体例を例示するが、これらに特に限定されない。
【0058】
【化35】

【0059】
【化36】

【0060】
【化37】

【0061】
本実施形態において、さらに好ましい色素は下記一般式(VIII)で表される構造を有するものであり、特に好ましい色素は、下記一般式(IX)で表される構造を有するものである。
【化38】

(一般式(VIII)中、Aは、メタノール溶液中の最大吸収波長λmaxが350〜500nmとなる構造であり、Zは、−CONR−、−NRCO−、−SONR−、及び、−NRSO−から選択されるいずれか1種の二価の連結基であり、Z中のRは、水素原子、炭素原子数1〜8のアルキル基、又は、炭素原子数7〜20のアリールアルキル基であり、X及びXは、各々独立して、酸素原子、硫黄原子、セレン原子、CR、又は、NRであり、各々が同一であっても異なっていてもよく、Dは、置換基を有してもよいベンゼン環、置換基を有してもよいナフタレン環、又は、置換基を有してもよいフェナントレン環であり、R〜Rは、各々独立して、−Y−COOH、水素原子、炭素原子数1〜20のアルキル基、炭素原子数2〜8のアルケニル基、炭素原子数2〜8のアルキニル基であり、ここでR〜Rの少なくとも一方は−Y−COOHであり、Yは、各々独立して、炭素原子数1〜8のアルキレン基、又は、単結合であり、R〜Rは、各々独立して、水素原子、炭素原子数1〜20のアルキル基、炭素原子数2〜8のアルケニル基、炭素原子数2〜8のアルキニル基であり、各々が同一であっても異なっていてもよく、R〜Rは、各々独立して、水素原子、炭素原子数1〜8のアルキル基、炭素原子数6〜12のアリール基、ハロゲン原子、又は、シアノ基であり、各々が同一であっても異なっていてもよく、pは、1又は2であり、一方、Anb−は、b価のアニオンであり、aは、1又は2であって色素全体の電荷を中性に保つ係数であり、bは、1又は2である。)
【化39】

(一般式(IX)中の各記号は、上記一般式(VIII)において説明したものと同様である。)
【0062】
上記一般式(VIII)で表される構造を有する色素は、メタノール溶液中の最大吸収波長λmaxが350〜500nmとなる構造(第二吸光部位)とシアニン骨格(第一吸光部位)とがエネルギー移動が高効率な連結基によって連結されており、上記一般式(IX)で表される構造を有する色素においては特に優れるアミド結合によって連結されており、しかも、シアニン骨格側のみにアンカー基(置換基−Y−COOH)が形成されているので、エネルギー変換効率及び耐久性に特に優れたものとなる。
【0063】
上記の一般式(VIII)において、A、X、X、Y、D、R〜R、p、Anb−、a及びbの具体例は、上記において説明したものと同様である。
【0064】
以下、本実施形態の色素の具体例(1)〜(57)を列挙するが、これらに特に限定されない。
【化40】

【0065】
【化41】

【0066】
【化42】

【0067】
【化43】

【0068】
【化44】

【0069】
【化45】

【0070】
なお、本実施形態の色素は、上記の一般式(I)に示す構造、より好ましくは上記の一般式(II)或いは(III)に示す構造、さらに好ましくは上記の一般式(VIII)に示す構造を有するものであれば、その他の構造については特に限定されない。また、本実施形態の色素は、これらの構造を有するものであれば、その鏡像異性体や、ジアステレオマー又はそれらの混合物であっても同様の効果が得られる。
【0071】
本実施形態の色素の合成方法は、公地或いは周知一般の反応を利用した方法で得ることができ、特に限定されない。代表的な合成方法の一例を挙げると、下記反応式(ア)〜(ウ)に示すルートで、四級アンモニウム塩等の中間体とブリッジ剤等又はヘミシアニン等とを反応させることにより、本実施形態の色素を合成することができる。
【0072】
四級アンモニウム塩は、例えば、含窒素複素環化合物とハロゲン化アルキル等の求電子剤を用いて合成することができる。また、必要に応じてアニオン交換を行ってもよい。
反応式(ア)
【化46】

【0073】
反応式(イ)
対称トリメチン色素及びペンタメチン色素は、四級アンモニウム塩等の中間体と一般的に知られたブリッジ剤とを用いて合成することができる。また、ブリッジ剤以外の化合物も幅広く知られており、それらを併記する。
【化47】

ブリッジ剤以外の化合物例
【化48】

【0074】
非対称トリメチン及びペンタメチン色素は、例えば、四級アンモニウム塩とヘミシアニンを用いて合成することができる。
反応式(ウ)
【化49】

【0075】
上述した四級アンモニウム塩等の中間体は、下記式(IX)で表される構造を有する化合物であることが好ましく、下記式(X)で表される構造を有する化合物であることがより好ましい。また、上記と同様の理由で、下記式(IX)及び下記式(X)で表される構造中のAは、上述した式(IV)〜(VII)のいずれかであることがより好ましい。
【化50】

(式(IX)中、Aは、メタノール溶液中の最大吸収波長λmaxが350〜500nmとなる構造であり、Zは、−CONR−、−NRCO−、−SONR−、及び、−NRSO−から選択されるいずれか1種の二価の連結基であり、Z中のRは、水素原子、炭素原子数1〜8のアルキル基、又は、炭素原子数7〜20のアリールアルキル基であり、Dは、置換基を有してもよいベンゼン環、置換基を有してもよいナフタレン環、又は、置換基を有してもよいフェナントレン環であり、Rは、水素原子、炭素原子数1〜20のアルキル基、炭素原子数2〜8のアルケニル基、炭素原子数2〜8のアルキニル基であり、これらはハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、アミノ基、水酸基、エーテル基、カルボニル基、芳香環、複素環、或いは、メタロセニル基で置換されていてもよく、R42は、各々独立して、水素原子、炭素原子数1〜8のアルキル基、炭素原子数6〜12のアリール基、ハロゲン原子、又は、シアノ基であり、各々が同一であっても異なっていてもよく、Xは、酸素原子、硫黄原子、セレン原子、CR、又は、NRであり、R〜Rは、各々独立して、水素原子、炭素原子数1〜20のアルキル基、炭素原子数2〜8のアルケニル基、炭素原子数2〜8のアルキニル基であり、各々が同一であっても異なっていてもよく、ここでR〜Rは、各々独立して、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、アミノ基、水酸基、エーテル基、カルボニル基、芳香環、複素環、或いは、メタロセニル基で置換されていてもよく、RとRとが連結して3〜6員環の脂環基を形成していてもよく、Yは、炭素原子数1〜8のアルキレン基、又は、単結合であり、mは、0〜2であり、一方、Anb−は、b価のアニオンであり、aは、1又は2であって色素全体の電荷を中性に保つ係数であり、bは、1又は2である。)
【化51】

(式(X)中、Aは、メタノール溶液中の最大吸収波長λmaxが350〜500nmとなる構造であり、Zは、−CONR−、−NRCO−、−SONR−、及び、−NRSO−から選択されるいずれか1種の二価の連結基であり、Z中のRは、水素原子、炭素原子数1〜8のアルキル基、又は、炭素原子数7〜20のアリールアルキル基であり、Dは、置換基を有してもよいベンゼン環、置換基を有してもよいナフタレン環、又は、置換基を有してもよいフェナントレン環であり、Rは、水素原子、炭素原子数1〜20のアルキル基、炭素原子数2〜8のアルケニル基、炭素原子数2〜8のアルキニル基であり、これらはハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、アミノ基、水酸基、エーテル基、カルボニル基、芳香環、複素環、或いは、メタロセニル基で置換されていてもよく、Xは、酸素原子、硫黄原子、セレン原子、CR、又は、NRであり、R〜Rは、各々独立して、水素原子、炭素原子数1〜20のアルキル基、炭素原子数2〜8のアルケニル基、炭素原子数2〜8のアルキニル基であり、各々が同一であっても異なっていてもよく、ここでR〜Rは、各々独立して、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、アミノ基、水酸基、エーテル基、カルボニル基、芳香環、複素環、或いは、メタロセニル基で置換されていてもよく、RとRとが連結して3〜6員環の脂環基を形成していてもよく、一方、Anb−は、b価のアニオンであり、aは、1又は2であって色素全体の電荷を中性に保つ係数であり、bは、1又は2である。)
【0076】
以下、上記式(IX)及び上記式(X)で表される構造を有する化合物に包含される、四級アンモニウム塩等の中間体の具体例(a−1)〜(a−12)を例示する。
【化52】

【0077】
次に、本実施形態に係る光電変換素子用色素の使用例について説明する。
図2は、本実施形態の光電変換素子である色素増感型太陽電池100の概略構成を示す断面図である。
【0078】
本実施形態の色素増感型太陽電池100は、作用電極11と、対向電極21と、これら作用電極11及び対向電極21の間に設けられた電解質31とを備える。作用電極11及び対向電極21のうち少なくとも一方は、光透過性を有する電極となっている。作用電極11と対向電極21とは、スペーサ41を介して対向配置され、これら作用電極11、対向電極21及びスペーサ41並びに図示しない封止部材によって画成される封止空間内に電解質31が封入されている。
【0079】
作用電極11は、外部回路に対して、負極として機能する。作用電極11は、基体12の導電性表面12a上に金属酸化物(金属酸化物半導体材料)を含有する多孔性の金属酸化物層13(金属酸化物半導体層)を備え、その金属酸化物層13に上述した本実施形態の色素が担持(吸着)されることにより、色素担持金属酸化物電極14が形成されたものである。換言すれば、本実施形態の作用電極11は、上述した本実施形態の色素が金属酸化物層13の金属酸化物表面に担持(吸着)された複合構造体が、基体12の導電性表面12a上に積層された構成(色素担持金属酸化物電極14)となっている。
【0080】
基体12は、少なくとも金属酸化物層13を支持可能なものであればその種類や寸法形状は特に制限されない。例えば、板状或いはシート状の物が好適に用いられる。その具体例としては、例えば、ガラス基板、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、テトラアセチルセルロース(TAC)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、シンジオタクチックポリスチレン(SPS)、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリカーボネート(PC)、ポリアリレート(PAR)、ポリスルフォン(PSF)、ポリエステルスルフォン(PES)、ポリエーテルイミド(PEI)、環状ポリオレフィンあるいはブロム化フェノキシ等のプラスチック基板、金属基板或いは合金基板、セラミックス基板又はこれらの積層体等が挙げられる。また、基体12は、透光性を有することが好ましく、可視光領域における透光性に優れるものがより好ましい。さらに、基体12は、可撓性を有することが好ましい。この場合、その可撓性を生かした種々の形態の構造物を提供できる。
【0081】
導電性表面12aは、例えば、導電性PETフィルムのように基体12上に透明導電膜を形成する等して、基体12に付与することができる。また、導電性を有する基体12を用いることで、基体12に導電性表面12aを付与する処理を省略することができる。透明導電膜の具体例としては、例えば、金(Au)、銀(Ag)あるいは白金(Pt)などを含む金属薄膜や、導電性高分子などで形成されたものの他、インジウム−スズ酸化物(ITO)、インジウム−亜鉛酸化物(IZO)、SnO、InOの他、SnOにフッ素をドープしたFTO(F−SnO)等が挙げられるが、これらに特に限定されない。これらは、各々を単独で用いても、複数を組み合わせて用いてもよい。透明導電膜の形成方法は、特に限定されず、例えば、蒸着法、CVD法、スプレー法、スピンコート法、或いは浸漬法等、公知の手法を適用できる。また、透明導電膜の膜厚は、適宜設定可能である。なお、基体12の導電性表面12aは、必要に応じて、適宜の表面改質処理が施されていてもよい。その具体的としては、例えば、界面活性剤、有機溶剤又はアルカリ性水溶液等による脱脂処理、機械的研磨処理、水溶液への浸漬処理、電解液による予備電解処理、水洗処理、乾燥処理等公知の表面処理が挙げられるが、これらに特に限定されない。
【0082】
金属酸化物層13は、色素を担持する担持体である。金属酸化物層13は、一般的には、空隙が多く、表面積の大きな多孔質構造を有しているものが用いられ、緻密で空隙の少ないものであることが好ましく、膜状であることがより好ましい。特に、金属酸化物層13は、多孔質の微粒子が付着している構造であることがより好ましい。
【0083】
本実施形態の金属酸化物層13は、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化スズ、酸化ニオブ、酸化インジウム、酸化ジルコニウム、酸化タンタル、酸化バナジウム、酸化イットリウム、酸化アルミニウム又は酸化マグネシウム等の金属酸化物を主成分とする多孔性の半導体層である。これらの金属酸化物は、1種のみを単独で用いても、2種以上を複合(混合、混晶、固溶体など)して用いてもよい。例えば、酸化亜鉛と酸化スズ、酸化チタンと酸化ニオブ等の組み合わせで使用することもできる。高いエネルギー変換効率を得る観点から、金属酸化物層13は、実質的に酸化チタン又は酸化亜鉛からなる層であることが好ましく、実質的に酸化亜鉛からなる層であることがより好ましい。ここで、「実質的に酸化チタンからなる」とは、酸化チタンを95wt%以上含むことを意味し、「実質的に酸化亜鉛からなる」とは、酸化亜鉛を95wt%以上含むことを意味する。なお、金属酸化物層13は、チタン、スズ、亜鉛、鉄、タングステン、ジルコニウム、ストロンチウム、インジウム、セリウム、バナジウム、ニオブ、タンタル、カドミウム、鉛、アンチモン、ビスマス等の金属、これらの金属酸化物及びこれらの金属カルコゲニドを含んでいてもよい。なお、金属酸化物層13の厚みは、特に限定されないが、0.05〜50μmであることが好ましい。
【0084】
金属酸化物層13の形成方法としては、例えば、金属酸化物の分散液を基体12の導電性表面12a上に付与した後に乾燥する方法、金属酸化物の分散液或いはペースト(金属酸化物スラリー)を基体12の導電性表面12a上に付与した後に高温焼結する方法、金属酸化物の分散液或いはペーストを基体12の導電性表面12a上に付与した後に50〜150℃程度の低温処理を行う方法の他、金属塩を含有する電解液から基体12の導電性表面12a上にカソード電析させる方法等が挙げられるが、これらに特に限定されない。ここで、高温焼結を必要としない方法を採用すると、基体12として耐熱性が低いプラスチック材料を用いることができるため、フレキシブル性の高い作用電極11を作製することが可能となる。
【0085】
金属酸化物層13には、光を吸収して励起されることにより電子を金属酸化物へ注入することが可能な色素(増感色素)として、上述した本実施形態の色素が担持(吸着)されている。
【0086】
なお、色素として、上述した本実施形態の色素の他に、他の色素(増感色素)を含んでいてもよい。光電変換素子に要求される性能に応じて、所望の光吸収帯・吸収スペクトルを有するものが適用可能である。
【0087】
他の色素の具体例としては、例えば、キサンテン、フルオレセイン、ローダミン、ピロガロール、ジクロロフルオレセイン、エリスロシンB(エリスロシンは登録商標)、フルオレシン、マーキュロクロム、シアニン系色素、メロシアニン系色素、トリスアゾ系色素、アントラキノン系色素、多環キノン系色素、インジゴ系色素、ジフェニルメタン系色素、トリメチルメタン系色素、キノリン系色素、ベンゾフェノン系色素、ナフトキノン系色素、ペリレン系色素、フルオレノン系色素、スクワリリウム系色素、アズレニウム系色素、ペリノン系色素、キナクリドン系色素、無金属フタロシアニン系色素または無金属ポルフィリン系色素などの有機色素等が挙げられる。また、これらの他の色素は、金属酸化物と結合又は吸着することができるアンカー基(例えば、カルボキシル基、スルホン酸基或いはリン酸基等)を有することが好ましい。なお、これらの他の色素は、各々を単独で用いても、複数を組み合わせて用いてもよい。
【0088】
また、他の色素として、例えば、有機金属錯体化合物も使用可能である。有機金属錯体化合物の具体例としては、例えば、芳香族複素環内にある窒素アニオンと金属カチオンとで形成されるイオン性の配位結合と、窒素原子またはカルコゲン原子と金属カチオンとの間に形成される非イオン性配位結合の両方を有する有機金属錯体化合物や、酸素アニオンもしくは硫黄アニオンと金属カチオンとで形成されるイオン性の配位結合と、窒素原子またはカルコゲン原子と金属カチオンとの間に形成される非イオン性配位結合の両方を有する有機金属錯体化合物等が挙げられる。より具体的には、銅フタロシアニン、チタニルフタロシアニン等の金属フタロシアニン系色素、金属ナフタロシアニン系色素、金属ポルフィリン系色素、並びに、ビピリジルルテニウム錯体、ターピリジルルテニウム錯体、フェナントロリンルテニウム錯体、ビシンコニン酸ルテニウム錯体、アゾルテニウム錯体或いはキノリノールルテニウム錯体等のルテニウム錯体等が挙げられる。これらは、各々を単独で用いても、複数を組み合わせて用いてもよい。
【0089】
また、色素は、1種又は2種以上の添加剤を含んでいてもよい。この添加剤としては、例えば、色素の会合を抑制する会合抑制剤が挙げられ、具体的には、下記式(XI)で表されるコール酸系化合物等である。これらは単独で用いもよいし、複数種を混合して用いてもよい。
【0090】
【化53】

・・・(XI)
(上記式(XI)中、R91は酸性基を有するアルキル基である。R92は化学式中のステロイド骨格を構成する炭素原子のいずれかに結合する基を表し、水酸基、ハロゲン基、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、複素環基、アシル基、アシルオキシ基、オキシカルボニル基、オキソ基あるいは酸性基またはそれらの誘導体であり、それらは同一であってもよいし異なっていてもよい。tは1以上5以下の整数である。化学式中のステロイド骨格を構成する炭素原子と炭素原子との間の結合は、単結合であってもよいし、二重結合であってもよい。)
【0091】
色素を金属酸化物層13に担持させる方法は、特に限定されない。その具体例としては、例えば、色素を含む溶液に金属酸化物層13を浸漬する方法、色素を含む溶液を金属酸化物層13に塗布する方法等が挙げられる。ここで用いる色素含有溶液の溶媒は、使用する色素の溶解性又は相溶性等に応じて、例えば、水、エタノール系溶媒、ニトリル系溶媒、ケトン系溶媒等の公知の溶媒から適宜選定することができる。
【0092】
ここで、カソード電析法により金属酸化物層13を形成する場合、金属塩及び色素を含む電解液を用いることで、金属酸化物層13の形成と色素担持とを同時に行って、色素が金属酸化物層13の金属酸化物表面に担持(吸着)された色素担持金属酸化物電極14を直ちに形成することもできる。電解条件は、常法にしたがい、使用する材料の特性に応じて適宜設定すればよい。例えば、ZnOと色素からなる色素担持金属酸化物電極14を形成する場合には、還元電解電位は−0.8〜−1.2V(vs.Ag/AgCl)程度、pHは4〜9程度、電解液の浴温は0〜100℃程度が好ましい。また、電解液中の金属イオン濃度は、0.5〜100mM程度、電解液中の色素濃度は50〜500μM程度が好ましい。さらに、光電変換特性をより一層高めるために、色素が担持された金属酸化物層13から、一旦、色素を脱着し、その後に、他の色素を再吸着させてもよい。
【0093】
なお、作用電極11(金属酸化物電極14)は、基体12の導電性表面12aと金属酸化物層13との間に、中間層を有していてもよい。中間層の材料は、特に限定されないが、例えば、上記の透明導電膜12aで説明した金属酸化物等が好ましい。中間層は、例えば、蒸着法、CVD法、スプレー法、スピンコート法、浸漬法或いは電析法等の公知の手法によって、基体12の導電性表面12aに金属酸化物を析出或いは堆積することで形成することができる。なお、中間層は、透光性を有することが好ましく、さらに導電性を有することが好ましい。また、中間層の厚みは、特に限定されるものではないが、0.1〜5μm程度が好ましい。
【0094】
対向電極21は、外部回路に対して正極として機能する。対向電極21は、導電性表面22aを有する基体22からなり、その導電性表面21aが作用電極11の金属酸化物層13と対面するように対向配置されている。基体22及び導電性表面22aは、上述した基体12及び導電性表面12aと同様に、公知のものを適宜採用することができ、例えば、導電性を有する基体12の他、基体12上に透明導電膜12aを有するもの、基体12の透明導電膜12a上にさらに白金、金、銀、銅、アルミニウム、インジウム、モリブデン、チタン、ロジウム、ルテニウム或いはマグネシウム等の金属、カーボン、導電性ポリマー等の膜(板、箔)を形成したもの等を用いることができる。
【0095】
電解質31としては、酸化還元対を有するレドックス電解質やこれをゲル化した擬固体電解質或いはp型半導体固体ホール輸送材料を成膜したもの等、一般に電池や太陽電池等において使用されているものを適宜用いることができる。なお、電解質31は、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0096】
レドックス電解質としては、例えば、I/I系、Br/Br系、又は、キノン/ハイドロキノン系等が挙げられる。具体的には、ヨウ化物塩とヨウ素単体とを組み合わせたもの、又は、臭化物塩と臭素とを組み合わせたもの等、ハロゲン化物塩とハロゲン単体とを組み合わせたもの等である。かかる酸化還元剤の含有量は、特に限定されないが、電解質の総量に対し、1×10−4〜1×10−2mol/gが好ましく、1×10−3〜1×10−2mol/gがより好ましい。
【0097】
上記のハロゲン化物塩としては、例えば、ハロゲン化セシウム、ハロゲン化四級アルキルアンモニウム類、ハロゲン化イミダゾリウム類、ハロゲン化チアゾリウム類、ハロゲン化オキサゾリウム類、ハロゲン化キノリニウム類、又は、ハロゲン化ピリジニウム類等が挙げられる。より具体的には、これらのヨウ化物塩としては、例えば、ヨウ化セシウムや、テトラエチルアンモニウムヨージド、テトラプロピルアンモニウムヨージド、テトラブチルアンモニウムヨージド、テトラペンチルアンモニウムヨージド、テトラヘキシルアンモニウムヨージド、テトラへプチルアンモニウムヨージド或いはトリメチルフェニルアンモニウムヨージド等の4級アルキルアンモニウムヨージド類や、3−メチルイミダゾリウムヨージド或いは1−プロピル−2,3−ジメチルイミダゾリウムヨージド等のイミダゾリウムヨージド類や、3−エチル−2−メチル−2−チアゾリウムヨージド、3−エチル−5−(2−ヒドロキシエチル)−4−メチルチアゾリウムヨージド或いは3−エチル−2−メチルベンゾチアゾリウムヨージド等のチアゾリウムヨージド類や、3−エチル−2−メチル−ベンゾオキサゾリウムヨージド等のオキサゾリウムヨージド類や、1−エチル−2−メチルキノリニウムヨージド等のキノリニウムヨージド類や、ピリジニウムヨージド類等が挙げられる。また、臭化物塩としては、例えば、四級アルキルアンモニウムブロミド等が挙げられる。ハロゲン化物塩とハロゲン単体とを組み合わせたものの中でも、上記したヨウ化物塩のうちの少なくとも1種とヨウ素単体との組み合わせが好ましい。
【0098】
また、レドックス電解質は、例えば、イオン性液体とハロゲン単体とを組み合わせたものでもよい。この場合には、さらに上記したハロゲン化物塩などを含んでいてもよい。イオン性液体は、一般に電池や太陽電池等において使用されているものを適宜用いることができ、特に限定されない。イオン性液体の具体例としては、例えば、「Inorg.Chem.」1996,35,p1168〜1178、「Electrochemistry」2002,2,p130〜136、特表平9−507334号公報、或いは、特開平8−259543号公報等に開示されているものが挙げられる。
【0099】
イオン性液体は、室温(25℃)より低い融点を有する塩、又は、室温よりも高い融点を有していても他の溶融塩等と溶解することにより室温で液状化する塩が好ましい。このようなイオン性液体の具体例としては、以下に示すアニオン及びカチオン等が挙げられる。
【0100】
イオン性液体のカチオンとしては、例えば、アンモニウム、イミダゾリウム、オキサゾリウム、チアゾリウム、オキサジアゾリウム、トリアゾリウム、ピロリジニウム、ピリジニウム、ピペリジニウム、ピラゾリウム、ピリミジニウム、ピラジニウム、トリアジニウム、ホスホニウム、スルホニウム、カルバゾリウム、インドリウム及びそれらの誘導体が挙げられる。これらは、各々を単独で用いても、複数組み合わせて用いてもよい。具体的には、1−メチル−3−プロピルイミダゾリウム、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウム、1,2−ジメチル−3−プロピルイミダゾリウム或いは1−エチル−3−メチルイミダゾリウム等が挙げられる。
【0101】
イオン性液体のアニオンとしては、例えば、AlCl或いはAlCl等の金属塩化物や、PF、BF、CFSO、N(CFSO、F(HF)或いはCFCOO等のフッ素含有物イオンや、NO、CHCOO、C11COO、CHOSO、CHOSO、CHSO、CHSO、(CHO)PO、N(CN)或いはSCN等の非フッ素化合物イオンや、ヨウ化物イオン或いは臭化物イオン等のハロゲン化物イオンが挙げられる。これらは、各々を単独で用いても、複数組み合わせて用いてもよい。これらの中でも、イオン性液体のアニオンとしては、ヨウ化物イオンが好ましい。
【0102】
電解質31は、上記したレドックス電解質を溶媒に対して溶解、分散或いは懸濁させた液状の電解質(電解液)であっても、上記したレドックス電解質を高分子物質中に保持させた固体高分子電解質であってもよい。また、レドックス電解質とカーボンブラック等の粒子状の導電性炭素材料とを含む擬固体状(ペースト状)の電解質であってもよい。ここで、本明細書において、「擬固体」とは、固体の他、流動性はほとんど認められないが応力の印加により変形可能であるゲル状固形物或いは粘土状固形物を包含する概念を意味し、具体的には、静置して一定時間を放置した後に、自重による形状変化がないか又はその形状変化がわずかなものを意味する。なお、導電性炭素材料を含む擬固体状の電解質では、導電性炭素材料が酸化還元反応を触媒する機能を有するため、電解質中にハロゲン単体を含まなくてもよい。
【0103】
電解質31は、上記したハロゲン化物塩やイオン性液体等を溶解、分散、膨潤又は懸濁させる有機溶媒を含んでいてもよい。有機溶媒は、電気化学的に不活性であれば特に制限なく用いることができるが、融点が20℃以下、且つ、沸点が80℃以上のものが好ましい。融点及び沸点がこの範囲にあるものを用いることにより、耐久性が高められる傾向にある。また、有機溶媒は、粘度が高いものが好ましい。粘度が高いことにより沸点が高くなるため、高温環境下に曝されても電解質の漏れが抑制される傾向にある。さらに、有機溶媒は、電気伝導率が高いものが好ましい。電気伝導率が高いことにより高いエネルギー変換効率が得られる傾向にある。
【0104】
有機溶媒の具体例としては、例えば、ヘキサン、ベンゼン、トルエン、キノリン、ジエチルエーテル、クロロホルム、酢酸エチル、テトラヒドロフラン、塩化メチレン、アセトン、アセトニトリル、メトキシアセトニトリル、プロピオニトリル、ブチロニトリル、ベンゾニトリル、3−メトキシプロピオニトリル、バレロニトリル、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、スルホラン、酢酸、ギ酸、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、ペンタノール、メチルエチルケトン、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、エチレングリコールモノアルキルエーテル、プロピレングリコールモノアルキルエーテル、ポリエチレングリコールモノアルキルエーテル、ポリプロピレングリコールモノアルキルエーテル、エチレングリコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、グリセリン、ジオキサン、1,4−ジオキサン、エチレングリコールジアルキルエーテル、プロピレングリコールジアルキルエーテル、ポリエチレングリコールジアルキルエーテル、ポリプロピレングリコールジアルキルエーテル、N−メチルピロリドン、γ‐ブチロラクトン、α‐メチル‐γ‐ブチロラクトン、β‐メチル‐γ‐ブチロラクトン、γ‐バレロラクトン、3‐メチル‐γ‐バレロラクトン等が挙げられる。これらの中でも、有機溶媒は、官能基として、ニトリル基、炭酸エステル構造、環状エステル構造、ラクタム構造、アミド基、アルコール基、スルフィニル基、ピリジン環、環状エーテル構造のうちの少なくとも1種を有するものが好ましい。このような官能基を有する有機溶媒は、これらの官能基をいずれも含まないものと比較して、高い効果が得られるからである。このような官能基を有する有機溶媒としては、例えば、アセトニトリル、プロピルニトリル、ブチロニトリル、メトキシアセトニトリル、メトキシプロピオニトリル、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、N−メチルピロリドン、ペンタノール、キノリン、N,N−ジメチルホルムアミド、γ−ブチロラクトン、ジメチルスルホキシドあるいは1,4−ジオキサンなどが挙げられる。中でも、メトキシプロピオニトリル、プロピレンカーボネート、N−メチルピロリドン、ペンタノール、キノリン、N,N−ジメチルホルムアミド、γ−ブチロラクトン、ジメチルスルホキシド、1,4−ジオキサン、メトキシアセトニトリル及びブチロニトリルが挙げられる。なお、これら有機溶媒は、各々を単独で用いても、複数を組み合わせて用いてもよい。また、有機溶媒の含有量は、電解質31の総量に対し、10〜80wt%であることが好ましい。
【0105】
なお、電解質31は、要求性能に応じて各種添加剤を含んでいてもよい。添加剤は、一般に電池や太陽電池等において使用されているものを適宜用いることができる。その具体例としては、例えば、ポリアニリン、ポリアセチレン、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリフェニレン、ポリフェニレンビニレン及びそれらの誘導体等のp型導電性ポリマー;イミダゾリウムイオン、ピリジニウムイオン、トリアゾリウムイオン及びそれらの誘導体とハロゲンイオンとの組み合わせからなる溶融塩;ゲル化剤;オイルゲル化剤;分散剤;界面活性剤;安定化剤等が挙げられるが、これらに特に限定されない。
【0106】
電解質31を作用電極11と対向電極21との間に配する方法は特に限定されず、各種公知の手法を用いて行うことができる。例えば、作用電極11の色素担持金属酸化物電極14と対向電極21の導電性表面22aとを、必要に応じてスペーサを介し、所定の間隔を置いて対向配置し、予め形成された注入口を除いて封止剤等を用いて周囲を貼り合わせた後、全体を封止する。続いて、作用電極11と対向電極21との間に、電解質を注入口から注入し、その後、注入口を封止することにより、電解質31を形成することができる。
【0107】
なお、電解質31として固体電荷移動材料を採用する場合、電子輸送材料や正孔(ホール)輸送材料等を用いることが好ましい。
【0108】
正孔輸送材料としては、例えば、芳香族アミン類やトリフェニレン誘導体類等が好ましく用いられる。その具体例としては、例えば、オリゴチオフェン化合物、ポリピロール、ポリアセチレン或いはその誘導体、ポリ(p−フェニレン)或いはその誘導体、ポリ(p−フェニレンビニレン)或いはその誘導体、ポリチエニレンビニレン或いはその誘導体、ポリチオフェン或いはその誘導体、ポリアニリン或いはその誘導体、ポリトルイジン或いはその誘導体等の有機導電性高分子等が挙げられるが、これらに特に限定されない。
【0109】
また、正孔輸送材料として、例えば、p型無機化合物半導体を用いることもできる。この場合、バンドギャップが2eV以上のp型無機化合物半導体を用いることが好ましく、2.5eV以上のp型無機化合物半導体であることがより好ましい。また、p型無機化合物半導体のイオン化ポテンシャルは、色素の正孔を還元できる条件から、作用電極11のイオン化ポテンシャルより小さいことが必要である。使用する色素によってp型無機化合物半導体のイオン化ポテンシャルの好ましい範囲は異なってくるが、そのイオン化ポテンシャルは、4.5eV以上5.5eV以下の範囲内であることが好ましく、4.7eV以上5.3eV以下の範囲内であることがより好ましい。
【0110】
p型無機化合物半導体としては、例えば、1価の銅を含む化合物半導体等が好ましく用いられる。1価の銅を含む化合物半導体の具体例としては、例えば、CuI、CuSCN、CuInSe、Cu(In,Ga)Se、CuGaSe、CuO、CuS、CuGaS、CuInS、CuAlSe、GaP、NiO、CoO、FeO、Bi、MoO、Cr等が挙げられるが、これらに特に限定されない。
【0111】
固体電荷移動材料から電解質31を形成する方法は、特に限定されず、各種公知の手法を用いて行うことができる。有機導電性高分子を含む正孔輸送材料を用いる場合、例えば、真空蒸着法、キャスト法、塗布法、スピンコート法、浸漬法、電解重合法、光電解重合法等の手法を採用することができる。また、無機固体化合物を用いる場合、例えば、キャスト法、塗布法、スピンコート法、浸漬法、電解メッキ法等の手法を採用することができる。
【0112】
さて、本実施形態の色素増感型太陽電池100は、作用電極11に対して光(太陽光、又は、太陽光と同等の紫外光、可視光或いは近赤外光)が照射されると、その光を吸収して励起した色素が金属酸化物層13へ電子を注入する。注入された電子は、隣接した導電性表面12aに移動したのち外部回路を経由して、対向電極21に到達する。一方、電解質31は、電子の移動にともなって酸化された色素を基底状態に戻す(還元する)ように、酸化される。この酸化された電解質31が上記の電子を受け取ることによって還元される。このように、作用電極11と対向電極21との間における電子の移動と、これにともなう電解質31の酸化還元反応とが繰り返されることにより、連続的な電子の移動が生じ、定常的に光電変換が行われる。
【0113】
ここで、本実施形態の色素増感型太陽電池100においては、上述した一般式(I)に示す構造を有する色素を用いているので、従来のものに比して、吸収波長領域が広いのみならずエネルギー移動効率にも優れるので、照射された光量に対する色素から金属酸化物層13への電子注入量の割合が高くなり、エネルギー変換効率を向上させることができる。とりわけ、金属酸化物層13が実質的に酸化亜鉛からなる作用電極11を採用した色素増感型太陽電池100において、特にエネルギー変換効率が高められたものとなる。しかも、上述した一般式(I)に示す構造を有する色素は金属酸化物層への吸着性(密着性)に優れるので、色素増感型太陽電池100の耐久性も高められる。
【実施例】
【0114】
以下、合成例、実施例及び比較例を挙げて、本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0115】
まず、以下の手順により、上述した実施形態の色素に相当する色素(1)〜(17)及び中間体(a−1)〜(a−12)を合成した。
【0116】
(合成例1)
中間体a−1(0.13mmol、0.09g)、ヘミシアニンA(0.13mmol、0.05g)、トリエチルアミン(0.26mmol、0.03g)、無水酢酸(0.20mmol、0.02g)及び1,2−ジクロロエタン(0.5g)を仕込み、1時間加熱還流した。溶媒を留去した後、反応生成物に塩酸(0.1g)及び酢酸(1.0g)を加え、100℃で1時間撹拌した。次いで、ヨウ化ナトリウムを用いてアニオン交換した後、油水分液を行った。その後、得られた有機相をPLC(クロロホルム:メタノール=10:1の移動相溶媒)を用いて精製することにより、最終生成物である色素(1)を40mg得た。
【化54】

【0117】
(合成例2)
中間体a−1(0.13mmol、0.09g)、ヘミシアニンB(0.13mmol、0.06g)、トリエチルアミン(0.26mmol、0.03g)、無水酢酸(0.20mmol、0.02g)及び1,2−ジクロロエタン(0.5g)を仕込み、1時間加熱還流した。溶媒を留去した後、反応生成物に塩酸(0.1g)及び酢酸(1.0g)を加え、100℃で1時間撹拌した。次いで、ヨウ化ナトリウムを用いてアニオン交換した後、油水分液を行った。その後、得られた有機相をPLC(クロロホルム:メタノール=10:1の移動相溶媒)を用いて精製することにより、最終生成物である色素(2)を40mg得た。
【化55】

【0118】
(合成例3)
中間体a−1に代えて中間体a−2を用いること以外は、合成例1と同様の操作を行うことにより、最終生成物である色素(3)を得た。
【0119】
(合成例4)
中間体a−1に代えて中間体a−2を用いること以外は、合成例2と同様の操作を行うことにより、最終生成物である色素(4)を得た。
【0120】
(合成例5)
中間体a−1に代えて中間体a−3を用いること以外は、合成例1と同様の操作を行うことにより、最終生成物である色素(5)を得た。
【0121】
(合成例6)
中間体a−1に代えて中間体a−3を用いること以外は、合成例2と同様の操作を行うことにより、最終生成物である色素(6)を得た。
【0122】
(合成例7)
中間体a−4(0.13mmol、0.10g)、ヘミシアニンC(0.13mmol、0.05g)、トリエチルアミン(0.26mmol、0.03g)、無水酢酸(0.20mmol、0.02g)及び1,2−ジクロロエタン(0.5g)を仕込み、1時間加熱還流した。溶媒を留去した後、反応生成物に塩酸(0.1g)及び酢酸(1.0g)を加え、100℃で1時間撹拌した。次いで、ヨウ化ナトリウムを用いてアニオン交換した後、油水分液を行った。その後、得られた有機相をPLC(クロロホルム:メタノール=10:1の移動相溶媒)を用いて精製することにより、最終生成物である色素(7)を3mg得た。
【化56】

【0123】
(合成例8)
中間体a−4に代えて中間体a−5を用いること以外は、合成例7と同様の操作を行うことにより、最終生成物である色素(8)を得た。
【0124】
(合成例9)
中間体a−1に代えて中間体a−6を用いること以外は、合成例1と同様の操作を行うことにより、最終生成物である色素(9)を得た。
【0125】
(合成例10)
中間体a−1に代えて中間体a−7を用いること以外は、合成例1と同様の操作を行うことにより、最終生成物である色素(10)を得た。
【0126】
(合成例11)
中間体a−1に代えて中間体a−8を用いること以外は、合成例1と同様の操作を行うことにより、最終生成物である色素(11)を得た。
【0127】
(合成例12)
中間体a−1に代えて中間体a−9を用いること以外は、合成例2と同様の操作を行うことにより、最終生成物である色素(12)を得た。
【0128】
(合成例13)
中間体a−1に代えて中間体a−10を用いること以外は、合成例2と同様の操作を行うことにより、最終生成物である色素(13)を得た。
【0129】
(合成例14)
中間体a−1に代えて中間体a−11を用いること以外は、合成例2と同様の操作を行うことにより、最終生成物である色素(14)を得た。
【0130】
(合成例15)
中間体a−1に代えて中間体a−4を用いること以外は、合成例2と同様の操作を行うことにより、最終生成物である色素(15)を得た。
【0131】
(合成例16)
中間体a−3(0.18mmol、0.15g)、ヘミシアニンC(0.09mmol、0.026g)、トリエチルアミン(0.19mmol、0.019g)、無水酢酸(0.19mmol、0.019g)及び1,2−ジクロロエタン(0.5g)を仕込み、1時間加熱還流した。溶媒を留去した後、反応生成物に塩酸(0.1g)及び酢酸(1.0g)を加え、100℃で1時間撹拌した。油水分液を行った後、得られた有機相をPLC(クロロホルム:メタノール=10:1の移動相溶媒)を用いて精製することにより、最終生成物である色素(16)を8mg得た。
【化57】

【0132】
(合成例17)
中間体a−1に代えて中間体a−12を用いること以外は、合成例2と同様の操作を行うことにより、最終生成物である色素(17)を得た。
【0133】
(合成例18)
まず、黄色色素A(1.0mmol、0.50g)及びクロロホルム(5ml)を仕込み、続けて塩化オキサリル(1.1mmol、0.14g)及びジメチルホルムアミド(0.1ml)の順で加えて、室温で1時間撹拌した。10℃まで冷却した後、5−アミノインドレニン(1.0mmol、0.17g)及びトリエチルアミン(2.0mmol、0.20g)を加え、室温で2時間撹拌した。水(5ml)を加えて油水分液を行った後、得られた有機相をPLC(クロロホルム:メタノール=10:1の移動相溶媒)で精製することにより、目的物であるインドレニンAを0.53g得た。この様にアミド結合(又はスルホンアミド結合)を有するインドレニン化合物は対応するアミノ化合物とカルボン酸(又はスルホン酸)化合物から得ており、以下インドレニンB〜Lも同手法にて合成を行った。
【化58】

次に、インドレニンA(0.81mmol、0.53g)及びパラトルエンスルホン酸メチル(1.2mmol、0.22g)を仕込み、100℃で2時間撹拌した。室温まで冷却した後、反応液をPLC(クロロホルム:メタノール=10:1の移動相溶媒)で精製することにより、目的物である中間体(a−1)を0.19g得た。
【化59】

【0134】
(合成例19)
インドレニンAに代えてインドレニンBを、パラトルエンスルホン酸メチルに代えてブロモプロピオン酸エチルを、それぞれ用いること以外は、合成例18と同様の操作を行うことにより、目的物である中間体(a−2)を得た。
【化60】

【0135】
(合成例20)
インドレニンAに代えてインドレニンCを、パラトルエンスルホン酸メチルに代えてブロモプロピオン酸エチルを、それぞれ用い、さらに、反応後にヨウ素アニオンに塩交換すること以外は、合成例18と同様の操作を行うことにより、目的物である中間体(a−3)を得た。
【化61】

【0136】
(合成例21)
インドレニンAに代えてインドレニンDを、パラトルエンスルホン酸メチルに代えてヨードブタンを、それぞれ用いること以外は、合成例18と同様の操作を行うことにより、目的物である中間体(a−4)を得た。
【化62】

【0137】
(合成例22)
インドレニンAに代えてインドレニンEを、パラトルエンスルホン酸メチルに代えてブロモプロピオン酸エチルを、それぞれ用いること以外は、合成例18と同様の操作を行うことにより、目的物である中間体(a−5)を得た。
【化63】

【0138】
(合成例23)
インドレニンAに代えてインドレニンFを、パラトルエンスルホン酸メチルに代えてブロモプロピオン酸エチルを、それぞれ用いること以外は、合成例18と同様の操作を行うことにより、目的物である中間体(a−6)を得た。
【化64】

【0139】
(合成例24)
インドレニンAに代えてインドレニンGを、パラトルエンスルホン酸メチルに代えてブロモプロピオン酸エチルを、それぞれ用いること以外は、合成例18と同様の操作を行うことにより、目的物である中間体(a−7)を得た。
【化65】

【0140】
(合成例25)
インドレニンAに代えてインドレニンHを用いること以外は、合成例18と同様の操作を行うことにより、目的物である中間体(a−8)を得た。
【化66】

【0141】
(合成例26)
インドレニンAに代えてインドレニンIを用い、さらに、反応後に臭素アニオンに塩交換すること以外は、合成例18と同様の操作を行うことにより、目的物である中間体(a−9)を得た。
【化67】

【0142】
(合成例27)
インドレニンAに代えてインドレニンJを、パラトルエンスルホン酸メチルに代えてブロモプロピオン酸エチルを、それぞれ用いること以外は、合成例18と同様の操作を行うことにより、目的物である中間体(a−10)を得た。
【化68】

【0143】
(合成例28)
インドレニンAに代えてインドレニンKを、パラトルエンスルホン酸メチルに代えてブロモプロピオン酸エチルを、それぞれ用いること以外は、合成例18と同様の操作を行うことにより、目的物である中間体(a−11)を得た。
【化69】

【0144】
(合成例29)
インドレニンAに代えてインドレニンLを、パラトルエンスルホン酸メチルに代えてブロモプロピオン酸エチルを、それぞれ用いること以外は、合成例18と同様の操作を行うことにより、目的物である中間体(a−12)を得た。
【化70】

【0145】
これらの合成例1〜17の最終生成物である色素(1)〜(17)及び中間体(a−1)〜(a−12)について、核磁気共鳴法(nuclear magnetic resonance;NMR)により構造を同定した。また、合成例1〜17の最終生成物である色素(1)〜(17)については、最大吸収波長(λmax)を測定した。表1〜表4に、測定結果を示す。
【0146】
なお、NMR測定する際には、測定機器としてJOEL社製のLambda−400を用いた。このとき重溶媒1cmに対して最終生成物3〜10mgを溶解させた溶液を測定試料とし、室温にてH−NMRスペクトルを測定した。
【0147】
また、最大吸収波長(λmax)を調べる際には、日立製作所製のUVスペクトルメータ(U−3010)を用いた。この場合には、最終生成物をメタノール(CHOH;溶媒)に対して、吸光度が0.5〜1.0の範囲内になるように調製して測定に用いた。
【0148】
【表1】

【表2】

【表3】

【0149】
【表4】

【0150】
表1〜3及び表4に示すように、合成例1〜29では、それぞれ色素(1)〜(17)、及び、中間体(a−1)〜(a−12)に示す構造を有する化合物が合成されたことが確認された。
【0151】
次に、以下の手順により、上記の実施形態で説明した色素増感型太陽電池100を作製した。
【0152】
(実施例1)
合成例1で得られた色素(1)を用いて、以下の手順により、上記の実施形態で説明したものと同等の色素増感型太陽電池100を作製した。
【0153】
まず、以下の手順で、作用電極11を作製した。
最初に、導電性表面12aを有する基体12として、フッ素ドープしたSnOを透明導電膜とする縦2.0cm×横1.5cm×厚さ1.1mmの導電性ガラス基板(F−SnO)を用意した。続いて、その導電性表面12a上に、縦0.5cm×横0.5cmの四角形を囲むように厚さ70μmのマスキングテープを貼り、この部分に金属酸化物スラリー3cmを一様の厚さとなるように塗布して乾燥させた。金属酸化物スラリーとしては、10重量%となるように酸化亜鉛粉末(平均粒径20nm;堺化学工業社製FINEX−50)を、非イオン性界面活性剤としてTriton X-100(Tritonは登録商標)を1滴添加した水に懸濁して調製したものを用いた。続いて、導電性表面12a上のマスキングテープを剥がし取り、この基体12を電気炉により450℃で焼成し、金属酸化物層13としての厚さ約5μmの酸化亜鉛膜を形成した。続いて、色素(1)とデオキシコール酸とをそれぞれ3×10−4mol/dm及び1×10−2mol/dmの濃度になるように無水エタノールに溶解させて、色素含有溶液を調製した。そして、この色素含有溶液中に金属酸化物層13が形成された基体12を浸漬し、色素(1)を金属酸化物層13に担持させて色素担持金属酸化物電極14を形成することにより、実施例1の作用電極11を得た。
【0154】
次に、以下の手順で、対向電極21を作製した。
まず、導電性表面22aを有する基体22として、フッ素ドープしたSnOを透明導電膜とする縦2.0cm×横1.5cm×厚さ1.1mmの導電性ガラス基板(F−SnO)を用意した。続いて、その導電性表面22a上に、スパッタリングにより厚さ100nmのPt層を形成することにより、対向電極21を得た。なお、この場合、導電性表面22aを有する基体22には、電解液注入用の孔(φ1mm)を、予め、2つ開けておいた。
【0155】
次いで、アセトニトリルに対して、ジメチルヘキシルイミダゾリウムヨージド(0.6mol/dm)、ヨウ化リチウム(0.1mol/dm)、ヨウ素(0.05mol/dm)を、それぞれ所定の濃度になるように混合して、電解液を調製した。
【0156】
その後、上記の作用電極11及び対向電極21並びに電解液を用いて、以下の手順で、色素増感型太陽電池100を作製した。
まず、厚さ50μmのスペーサを金属酸化物層13の周りを囲むように配置し、その後、作用電極11の色素担持金属酸化物電極14と対向電極21のPt層とを対向配置し、スペーサを介して貼り合わせた。その後、対向電極21に開けておいた注入孔から電解液を注入して、電解質31を形成した。最後に、セルの周囲全体及び注入孔を封止することにより、実施例1の色素増感型太陽電池100を得た。
【0157】
(実施例2)
焼成法により金属酸化物層13を形成する際に、酸化亜鉛粉末、Triton X-100及び水を含む金属酸化物スラリーに代えて、下記の酸化チタン(TiO)粉末を含む金属酸化物スラリーを用いて酸化チタン膜を形成すること以外は、実施例1と同様に処理して、実施例2の作用電極11及び色素増感型太陽電池100を得た。
なお、上記の酸化チタン粉末を含む金属酸化物スラリーは、以下のようにして調製した。まず、チタンイソプロポキシド125cmを、0.1mol/dm硝酸水溶液750cmに攪拌しながら添加し、80℃で8時間激しく攪拌した。得られた液体をテフロン(登録商標)製の圧力容器に注ぎ入れ、その圧力容器を230℃、16時間オートクレーブにて処理した。その後、オートクレーブ処理した沈殿物を含む液体(ゾル液)を攪拌することにより再懸濁させた。続いて、この懸濁液を吸引濾過して再懸濁しなかった沈殿物を除き、ゾル状の濾液をエバポレータで酸化チタン濃度が11質量%になるまで濃縮した。その後、濃縮液の基板への塗れ性を高めるためにTriton X-100を1滴添加した。続いて、この濃縮液に、平均粒径30nmの酸化チタン粉末(日本アエロジル社製P−25)を、酸化チタンの含有率が全体として33質量%となるように加え、自転公転を利用した遠心撹拌を1時間行って分散させることにより、酸化チタン粉末を含む金属酸化物スラリーを調製した。
【0158】
(実施例3及び4)
色素(1)に代えて、色素(5)を用いること以外は、それぞれ実施例1及び2と同様に処理して、実施例3及び4の作用電極11及び色素増感型太陽電池100を得た。
【0159】
(実施例5及び6)
色素(1)に代えて、色素(8)を用いること以外は、それぞれ実施例1及び2と同様に処理して、実施例5及び6の作用電極11及び色素増感型太陽電池100を得た。
【0160】
(実施例7及び8)
色素(1)に代えて、色素(3)を用いること以外は、それぞれ実施例1及び2と同様に処理して、実施例7及び8の作用電極11及び色素増感型太陽電池100を得た。
【0161】
(実施例9及び10)
色素(1)に代えて、色素(9)を用いること以外は、それぞれ実施例1及び2と同様に処理して、実施例9及び10の作用電極11及び色素増感型太陽電池100を得た。
【0162】
(実施例11及び12)
色素(1)に代えて、色素(10)を用いること以外は、それぞれ実施例1及び2と同様に処理して、実施例11及び12の作用電極11及び色素増感型太陽電池100を得た。
【0163】
(実施例13及び14)
色素(1)に代えて、色素(2)を用いること以外は、それぞれ実施例1及び2と同様に処理して、実施例13及び14の作用電極11及び色素増感型太陽電池100を得た。
【0164】
(実施例15及び16)
色素(1)に代えて、色素(6)を用いること以外は、それぞれ実施例1及び2と同様に処理して、実施例15及び16の作用電極11及び色素増感型太陽電池100を得た。
【0165】
(実施例17及び18)
色素(1)に代えて、色素(14)を用いること以外は、それぞれ実施例1及び2と同様に処理して、実施例17及び18の作用電極11及び色素増感型太陽電池100を得た。
【0166】
(実施例19及び20)
色素(1)に代えて、色素(16)を用いること以外は、それぞれ実施例1及び2と同様に処理して、実施例19及び20の作用電極11及び色素増感型太陽電池100を得た。
【0167】
(実施例21及び22)
色素(1)に代えて、色素(4)を用いること以外は、それぞれ実施例1及び2と同様に処理して、実施例21及び22の作用電極11及び色素増感型太陽電池100を得た。
【0168】
(実施例23及び24)
色素(1)に代えて、色素(13)を用いること以外は、それぞれ実施例1及び2と同様に処理して、実施例23及び24の作用電極11及び色素増感型太陽電池100を得た。
【0169】
(実施例25及び26)
色素(1)に代えて、色素(17)を用いること以外は、それぞれ実施例1及び2と同様に処理して、実施例25及び26の作用電極11及び色素増感型太陽電池100を得た。
【0170】
(比較例1及び2)
色素(1)に代えて、3.0×10−4mol/dmの色素(C1)及び3.0×10−4mol/dmの色素(C2)を用いること以外は、実施例1及び2と同様に処理して、比較例1及び2の作用電極11及び色素増感型太陽電池100を得た。
【0171】
(比較例3及び4)
色素(5)に代えて、3.0×10−4mol/dmの色素(C3)及び3.0×10−4mol/dmの色素(C4)を用いること以外は、実施例3及び4と同様に処理して、比較例3及び4の作用電極11及び色素増感型太陽電池100を得た。
【0172】
(比較例5及び6)
色素(8)に代えて、3.0×10−4mol/dmの色素(C3)及び3.0×10−4mol/dmの色素(C2)を用いること以外は、実施例5及び6と同様に処理して、比較例5及び6の作用電極11及び色素増感型太陽電池100を得た。
【0173】
(比較例7及び8)
色素(16)に代えて、3.0×10−4mol/dmの色素(C5)を用いること以外は、実施例19及び20と同様に処理して、比較例7及び8の作用電極11及び色素増感型太陽電池100を得た。
【0174】
(比較例9及び10)
色素(3)に代えて、3.0×10−4mol/dmの色素(C6)及び3.0×10−4mol/dmの色素(C4)を用いること以外は、実施例7及び8と同様に処理して、比較例9及び10の作用電極11及び色素増感型太陽電池100を得た。
【0175】
(比較例11及び12)
色素(10)に代えて、3.0×10−4mol/dmの色素(C8)及び3.0×10−4mol/dmの色素(C4)を用いること以外は、実施例11及び12と同様に処理して、比較例11及び12の作用電極11及び色素増感型太陽電池100を得た。
【0176】
(比較例13及び14)
色素(2)に代えて、3.0×10−4mol/dmの色素(C1)及び3.0×10−4mol/dmの色素(C8)を用いること以外は、実施例13及び14と同様に処理して、比較例13及び14の作用電極11及び色素増感型太陽電池100を得た。
【0177】
(比較例15及び16)
色素(6)に代えて、3.0×10−4mol/dmの色素(C9)を用いること以外は、実施例15及び16と同様に処理して、比較例15及び16の作用電極11及び色素増感型太陽電池100を得た。
【0178】
(比較例17及び18)
色素(14)に代えて、3.0×10−4mol/dmの色素(C10)を用いること以外は、実施例17及び18と同様に処理して、比較例17及び18の作用電極11及び色素増感型太陽電池100を得た。
【0179】
(比較例19及び20)
色素(16)に代えて、3.0×10−4mol/dmの色素(C10)及び6.0×10−4mol/dmの色素(C3)を用いること以外は、実施例19及び20と同様に処理して、比較例19及び20の作用電極11及び色素増感型太陽電池100を得た。
【0180】
(比較例21及び22)
色素(4)に代えて、3.0×10−4mol/dmの色素(C10)及び3.0×10−4mol/dmの色素(C6)を用いること以外は、実施例21及び22と同様に処理して、比較例21及び22の作用電極11及び色素増感型太陽電池100を得た。
【0181】
(比較例23及び24)
色素(13)に代えて、3.0×10−4mol/dmの色素(C10)及び3.0×10−4mol/dmの色素(C11)を用いること以外は、実施例23及び24と同様に処理して、比較例23及び24の作用電極11及び色素増感型太陽電池100を得た。
【0182】
(比較例25及び26)
色素(17)に代えて、3.0×10−4mol/dmの色素(C10)及び3.0×10−4mol/dmの色素(C12)を用いること以外は、実施例25及び26と同様に処理して、比較例25及び26の作用電極11及び色素増感型太陽電池100を得た。
【0183】
以下に、比較例で使用した色素(C1)〜(C12)を列挙する。
【化71】

【化72】


【化73】

【0184】
<エネルギー変換効率の測定>
得られた実施例1〜26及び比較例1〜18の色素増感型太陽電池100の電池特性を、AM−1.5(1000W/m)のソーラーシミュレーターを用いて測定した。評価結果を、表5〜16に示す。
なお、エネルギー変換効率(η:%)は、色素増感型太陽電池100の電圧をソースメーターにて掃引して応答電流を測定し、これにより得られた電圧と電流との積である最大出力を1cmあたりの光強度で除した値を算出し、この算出結果に100を乗じてパーセント表示したものである。すなわち、エネルギー変換効率(η:%)は、(最大出力/1cmあたりの光強度)×100で表される。
【0185】
<剥離試験>
色素の吸着性(密着性)を評価するために、剥離試験を行った。評価結果を、表5〜16に示す。
なお、剥離試験は、以下の手順により行った。まず、UVスペクトルメータにより、各々の作用電極11の色素担持金属酸化物層14の表面の吸収スペクトル(測定波長は350nm〜950nmの範囲)を測定し、ピーク波長における初期の吸光度を求めた。次に、作用電極11を10重量%の割合で水を含むアセトニトリル混合液100cmに2時間浸漬した後、同様に吸収スペクトルを測定し、ピーク波長における10重量%水含有アセトニトリル2時間浸漬後の吸光度を求めた。最後に、ピーク波長における初期の吸光度と10重量%水含有アセトニトリル2時間浸漬後の吸光度から、色素残存率(%)=(10重量%水含有アセトニトリル2時間浸漬後の吸光度/初期の吸光度)×100を算出した。なお、この一連の吸収スペクトルの測定には、島津製作所製UV−3101PCを用いて、スリット幅5nmとして行った。
【0186】
【表5】

【0187】
表5から明らかなように、実施例1及び2の色素増感型太陽電池100は、比較例1及び2の色素増感型太陽電池100に比して、エネルギー変換効率が高く、また、色素残存率が高いことが確認された。このことから、単純に2種の色素を混合するだけでは、金属酸化物の(色素が吸着できる)吸着サイトを2種の色素で分け合うために、吸着量が減少してしまうことが示唆される。また、吸着の強さが2種の色素で異なるために、吸着量のバランス制御が非常に難しく、このため、高い変換効率が得られないことが示唆される。また、それぞれの色素がカルボン酸を一つしか持たないため、剥離試験に耐えられないことが示唆される。
【0188】
また、表5から明らかなように、実施例3及び4の色素増感型太陽電池100は、比較例3及び4の色素増感型太陽電池100に比して、エネルギー変換効率が高く、また、色素残存率が高いことが確認された。このことから、一方の色素がカルボン酸を一つしか持たないため、一方の色素がとても剥がれやすくなってしまい、剥離試験に耐えられないことが示唆される。
【0189】
さらに、表5から明らかなように、実施例5及び6の色素増感型太陽電池100は、比較例5及び6の色素増感型太陽電池100に比して、エネルギー変換効率が高く、また、色素残存率が高いことが確認された。
【0190】
また、表5から明らかなように、実施例7及び8の色素増感型太陽電池100は、比較例7及び8の色素増感型太陽電池100に比して、エネルギー変換効率が高く、また、色素残存率が高いことが確認された。このことから、黄色単位Aの代わりにメチル基を導入した色素(C5)を用いた場合は、変換効率、剥離試験ともに高い値が得られないことが理解される。
【0191】
さらに、表5から明らかなように、実施例9及び10の色素増感型太陽電池100は、比較例9及び10の色素増感型太陽電池100に比して、エネルギー変換効率が高く、また、色素残存率が高いことが確認された。
【0192】
また、表5から明らかなように、実施例11及び12の色素増感型太陽電池100は、比較例11及び12の色素増感型太陽電池100に比して、エネルギー変換効率が高く、また、色素残存率が高いことが確認された。
【0193】
【表6】

【0194】
表6から明らかなように、実施例13及び14の色素増感型太陽電池100は、比較例13及び14の色素増感型太陽電池100に比して、エネルギー変換効率が高いことが確認された。とりわけ、比較例13及び14の色素増感型太陽電池100は、光電変換効率が極めて低く、実用性に乏しいものであることが確認された。
【0195】
また、表6から明らかなように、実施例15及び16の色素増感型太陽電池100は、比較例15及び16の色素増感型太陽電池100に比して、エネルギー変換効率が高く、また、色素残存率が高いことが確認された。一方、黄色単位Aの代わりにメチル基を導入した色素(C9)を用いた場合は、変換効率、剥離試験ともに高い値が得られない。とりわけ、比較例15及び16の色素増感型太陽電池100は、光電変換効率が極めて低く、実用性に乏しいものであることが確認された。
【0196】
さらに、表6から明らかなように、実施例17及び18の色素増感型太陽電池100は、比較例17及び18の色素増感型太陽電池100に比して、エネルギー変換効率が高く、また、色素残存率が高いことが確認された。一方、連結基にアミド結合を用いない色素(C10)を用いた場合は、高い変換効率が得られない。とりわけ、比較例17及び18の色素増感型太陽電池100は、光電変換効率が極めて低く、実用性に乏しいものであることが確認された。
【0197】
また、表6から明らかなように、実施例19及び20の色素増感型太陽電池100は、比較例19及び20の色素増感型太陽電池100に比して、エネルギー変換効率が高く、また、色素残存率が高いことが確認された。
【0198】
さらに、表6から明らかなように、実施例21及び22の色素増感型太陽電池100は、比較例21及び22の色素増感型太陽電池100に比して、エネルギー変換効率が高く、また、色素残存率が高いことが確認された。
【0199】
また、表6から明らかなように、実施例23及び24の色素増感型太陽電池100は、比較例23及び24の色素増感型太陽電池100に比して、エネルギー変換効率が高く、また、色素残存率が高いことが確認された。
【0200】
さらに、表6から明らかなように、実施例25及び26の色素増感型太陽電池100は、比較例25及び26の色素増感型太陽電池100に比して、エネルギー変換効率が高く、また、色素残存率が高いことが確認された。
【0201】
また、上記の結果から、メタノール溶液中の最大吸収波長λmaxが350〜500nmとなる構造と、メタノール溶液中の最大吸収波長λmaxが500〜700nmとなるシアニン骨格とを、アミド結合で連結した、実施例1〜26で用いた(複合化)色素は、(複合化されていない)色素を併用したものに比して、色素残存率が高くエネルギー変換効率にも優れることが確認された。これらの事実から、かかる構造の(複合化)色素は、金属酸化物表面への吸着が促進され、及び/又は、色素構造の立体障害に起因して色素が剥離し難い吸着状態となっていることが示唆されるとともに、金属酸化物(半導体材料)に対する電子注入性が高められていることが示唆される。
【0202】
さらに、上記の結果から、かかる構造の(複合化)色素は、実質的に酸化亜鉛からなる金属酸化物層13を有する色素増感型太陽電池100において、実質的に酸化チタンからなる金属酸化物層13を有する色素増感型太陽電池100に比して、色素残存率は同程度である一方、エネルギー変換効率が有意に優れることが確認された。
【0203】
<紫外可視吸収スペクトル測定>
色素(5)、色素(C3)、色素(C4)、及び、色素(C3)と色素(C4)の1:1混合物につき、紫外可視吸収スペクトル測定を行った。測定は、日立製作所製のUVスペクトルメータ(U−3010)を用い、各々の色素をメタノール(CHOH;溶媒)に対して吸光度が0.5〜1.0の範囲内になるように調製して測定に用いた。結果を、図3〜6に示す。
【0204】
なお、上述したとおり、本発明は、上記実施形態及び実施例に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲内において適宜変更を加えることが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0205】
以上説明した通り、本発明は、色素増感型太陽電池等の光電変換素子に関わる電子・電気材料、電子・電気デバイス、及びそれらを備える各種機器、設備、システム等に広く且つ有効に利用可能である。
【符号の説明】
【0206】
11…作用電極、12…基体、12a…導電性表面、13…金属酸化物層、14…色素担持金属酸化物電極、21…対向電極、22a…導電性表面、22…基体、31…電解質、41…スペーサ、100…光電変換素子。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
色素が金属酸化物層に担持された色素担持金属酸化物電極を有する作用電極を備えた光電変換素子において、
前記色素は、下記一般式(I):
【化1】

(一般式(I)中、Aは、メタノール溶液中の最大吸収波長λmaxが350〜500nmとなる構造であり、Bは、メタノール溶液中の最大吸収波長λmaxが500〜700nmとなるシアニン骨格であり、Zは、−CONR−、−NRCO−、−SONR−、及び、−NRSO−から選択されるいずれか1種の二価の連結基であり、Z中のRは、水素原子、炭素原子数1〜8のアルキル基、又は、炭素原子数7〜20のアリールアルキル基であり、Y及びYは、各々独立して、炭素原子数1〜8のアルキレン基、又は、単結合であり、各々が同一であっても異なっていてもよく、rは、1又は2であり、m及びnは、各々独立して、0〜2の整数であり、且つ、(m+n)は1以上である。)
で表される構造を有する、
光電変換素子。
【請求項2】
前記色素は、下記一般式(II):
【化2】

(一般式(II)中、X及びXは、各々独立して、酸素原子、硫黄原子、セレン原子、CR、又は、NRであり、各々が同一であっても異なっていてもよく、R〜Rは、各々独立して、水素原子、炭素原子数1〜20のアルキル基、炭素原子数2〜8のアルケニル基、炭素原子数2〜8のアルキニル基であり、各々が同一であっても異なっていてもよく、ここでR〜Rは、各々独立して、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、アミノ基、水酸基、エーテル基、カルボニル基、芳香環、複素環、或いは、メタロセニル基で置換されていてもよく、RとRとが連結して3〜6員環の脂環基を形成していてもよく、一方、R〜Rは、各々独立して、水素原子、炭素原子数1〜8のアルキル基、炭素原子数6〜12のアリール基、ハロゲン原子、又は、シアノ基であり、各々が同一であっても異なっていてもよく、R〜R16は、各々独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1〜20のアルキル基、又は、炭素原子数6〜12のアリール基であり、各々が同一であっても異なっていてもよく、R〜R16において、RとR11が脱離して或いはR13とR15が脱離して、それぞれ不飽和結合を形成していてもよく、又は、R10とR12が連結して或いは又はR14とR16が連結して、それぞれ置換基を有してもよいベンゼン環、置換基を有してもよいナフタレン環、又は、置換基を有してもよいフェナントレン環を形成してもよく、pは、1又は2であり、ここで式中のZは、R〜R16に置き換わって或いはR〜R16中に含まれる水素原子に置き換わって置換されており、また式中の置換基−Y−COOHは、R〜R16に置き換わって或いはR〜R16中に含まれる水素原子に置き換わって置換されており、一方、Anb−は、b価のアニオンであり、aは、1又は2であって色素全体の電荷を中性に保つ係数であり、bは、1又は2であり、m、n、r、Z、A、Y及びYは、上記一般式(I)において説明したものと同じである。)
で表される構造を有する、
請求項1に記載の光電変換素子。
【請求項3】
前記色素は、下記一般式(III):
【化3】

(一般式(III)中、D及びDは、各々独立して、置換基を有してもよいベンゼン環、置換基を有してもよいナフタレン環、又は、置換基を有してもよいフェナントレン環であり、各々が同一であっても異なっていてもよく、ここで式中の2つの置換基−Y−COOHは、R〜Rに置き換わって或いはR〜Rに含まれる水素原子に置き換わって置換されており、又は、D及びDで表されるベンゼン環、ナフタレン環或いはフェナントレン環上に置換されている。)
で表される構造を有する、
請求項2に記載の光電変換素子。
【請求項4】
前記Aが、下記式(IV)〜(VII):
【化4】

(式(IV)中、Sは、置換基を有してもよい芳香環、又は、置換基を有してもよい複素環であり、R17〜R20は、各々独立して、水素原子、炭素原子数1〜8のアルキル基、ハロゲン原子、又は、シアノ基であり、各々が同一であっても異なっていてもよく、qは、0又は1であり、前記置換基−Y−COOHは、S上に置換されている。)
【化5】

(式(V)中、Sは、置換基を有してもよい芳香環、又は、置換基を有してもよい複素環であり、Sは、硫黄原子、又は、下記式(Va)で表される構造であり、R21〜R23は、各々独立して、水素原子、炭素原子数1〜8のアルキル基、ハロゲン原子、又は、シアノ基であり、各々が同一であっても異なっていてもよく、R24は、水素原子、炭素原子数1〜20のアルキル基、炭素原子数6〜30のアリール基、炭素原子数7〜30のアリールアルキル基、又は、アンカー基であり、uは、0又は1であり、前記置換基−Y−COOHは、S及び/又はS上に置換されている。)
【化6】

【化7】

(式(VI)中、R25〜R26は、各々独立して、水素原子、炭素原子数1〜8のアルキル基、ハロゲン原子、又は、シアノ基であり、各々が同一であっても異なっていてもよく、R27は、水素原子、炭素原子数1〜20のアルキル基、炭素原子数6〜30のアリール基、炭素原子数7〜30のアリールアルキル基、又は、アンカー基であり、R28〜R31は、各々独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1〜20のアルキル基、又は、炭素原子数6〜12のアリール基であり、各々が同一であっても異なっていてもよく、ここでR28とR30はそれぞれ脱離して不飽和結合を形成してもよく、或いは、R29とR31は連結して置換基を有してもよいベンゼン環、置換基を有してもよいナフタレン環又は置換基を有してもよいフェナントレン環を形成していてもよく、tは、0又は1であり、前記置換基−Y−COOHは、S上に置換されている。)
【化8】

(式(VII)中、R32〜R33は、各々独立して、水素原子、炭素原子数1〜20のアルキル基、又は、炭素原子数7〜30のアリールアルキル基であり、各々が同一であっても異なっていてもよく、R34〜R41は、各々独立して、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、シアノ基、ニトロ基、炭素原子数1〜20のアルキル基、炭素原子数6〜30のアリール基、又は、炭素原子数7〜30のアリールアルキル基であり、各々が同一であっても異なっていてもよい。)
よりなる群から選択される1種である、
請求項1〜3のいずれか一項に記載の光電変換素子。
【請求項5】
下記一般式(I):
【化9】

(一般式(I)中、Aは、メタノール溶液中の最大吸収波長λmaxが350〜500nmとなる構造であり、Bは、メタノール溶液中の最大吸収波長λmaxが500〜700nmとなるシアニン骨格であり、Zは、−CONR−、−NRCO−、−SONR−、及び、−NRSO−から選択されるいずれか1種の二価の連結基であり、Z中のRは、水素原子、炭素原子数1〜8のアルキル基、又は、炭素原子数7〜20のアリールアルキル基であり、Y及びYは、各々独立して、炭素原子数1〜8のアルキレン基、又は、単結合であり、各々が同一であっても異なっていてもよく、rは、1又は2であり、m及びnは、各々独立して、0〜2の整数であり、且つ、(m+n)は1以上である。)
で表される構造を有する、
光電変換素子用色素。
【請求項6】
下記一般式(II):
【化10】

(一般式(II)中、X及びXは、各々独立して、酸素原子、硫黄原子、セレン原子、CR、又は、NRであり、各々が同一であっても異なっていてもよく、R〜Rは、各々独立して、水素原子、炭素原子数1〜20のアルキル基、炭素原子数2〜8のアルケニル基、炭素原子数2〜8のアルキニル基であり、各々が同一であっても異なっていてもよく、ここでR〜Rは、各々独立して、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、アミノ基、水酸基、エーテル基、カルボニル基、芳香環、複素環、或いは、メタロセニル基で置換されていてもよく、RとRとが連結して3〜6員環の脂環基を形成していてもよく、一方、R〜Rは、各々独立して、水素原子、炭素原子数1〜8のアルキル基、炭素原子数6〜12のアリール基、ハロゲン原子、又は、シアノ基であり、各々が同一であっても異なっていてもよく、R〜R16は、各々独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1〜20のアルキル基、又は、炭素原子数6〜12のアリール基であり、各々が同一であっても異なっていてもよく、R〜R16において、RとR11が脱離して或いはR13とR15が脱離して、それぞれ不飽和結合を形成していてもよく、又は、R10とR12が連結して或いは又はR14とR16が連結して、それぞれ置換基を有してもよいベンゼン環、置換基を有してもよいナフタレン環、又は、置換基を有してもよいフェナントレン環を形成してもよく、pは、1又は2であり、ここで式中のZは、R〜R16に置き換わって或いはR〜R16中に含まれる水素原子に置き換わって置換されており、また式中の置換基−Y−COOHは、R〜R16に置き換わって或いはR〜R16中に含まれる水素原子に置き換わって置換されており、一方、Anb−は、b価のアニオンであり、aは、1又は2であって色素全体の電荷を中性に保つ係数であり、bは、1又は2であり、m、n、r、Z、A、Y及びYは、上記一般式(I)において説明したものと同じである。)
で表される構造を有する、
請求項5に記載の光電変換素子用色素。
【請求項7】
下記一般式(III):
【化11】

(一般式(III)中、D及びDは、各々独立して、置換基を有してもよいベンゼン環、置換基を有してもよいナフタレン環、又は、置換基を有してもよいフェナントレン環であり、各々が同一であっても異なっていてもよく、ここで式中の2つの置換基−Y−COOHは、R〜Rに置き換わって或いはR〜Rに含まれる水素原子に置き換わって置換されており、又は、D及びDで表されるベンゼン環、ナフタレン環或いはフェナントレン環上に置換されている。)
で表される構造を有する、
請求項6に記載の光電変換素子用色素。
【請求項8】
前記Aが、下記式(IV)〜(VII):
【化12】

(式(IV)中、Sは、置換基を有してもよい芳香環、又は、置換基を有してもよい複素環であり、R17〜R20は、各々独立して、水素原子、炭素原子数1〜8のアルキル基、ハロゲン原子、又は、シアノ基であり、各々が同一であっても異なっていてもよく、qは、0又は1であり、前記置換基−Y−COOHは、S上に置換されている。)
【化13】

(式(V)中、Sは、置換基を有してもよい芳香環、又は、置換基を有してもよい複素環であり、Sは、硫黄原子、又は、下記式(Va)で表される構造であり、R21〜R23は、各々独立して、水素原子、炭素原子数1〜8のアルキル基、ハロゲン原子、又は、シアノ基であり、各々が同一であっても異なっていてもよく、R24は、水素原子、炭素原子数1〜20のアルキル基、炭素原子数6〜30のアリール基、炭素原子数7〜30のアリールアルキル基、又は、アンカー基であり、uは、0又は1であり、前記置換基−Y−COOHは、S及び/又はS上に置換されている。)
【化14】

【化15】

(式(VI)中、R25〜R26は、各々独立して、水素原子、炭素原子数1〜8のアルキル基、ハロゲン原子、又は、シアノ基であり、各々が同一であっても異なっていてもよく、R27は、水素原子、炭素原子数1〜20のアルキル基、炭素原子数6〜30のアリール基、炭素原子数7〜30のアリールアルキル基、又は、アンカー基であり、R28〜R31は、各々独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1〜20のアルキル基、又は、炭素原子数6〜12のアリール基であり、各々が同一であっても異なっていてもよく、ここでR28とR30はそれぞれ脱離して不飽和結合を形成してもよく、或いは、R29とR31は連結して置換基を有してもよいベンゼン環、置換基を有してもよいナフタレン環又は置換基を有してもよいフェナントレン環を形成していてもよく、tは、0又は1であり、前記置換基−Y−COOHは、S上に置換されている。)
【化16】

(式(VII)中、R32〜R33は、各々独立して、水素原子、炭素原子数1〜20のアルキル基、又は、炭素原子数7〜30のアリールアルキル基であり、各々が同一であっても異なっていてもよく、R34〜R41は、各々独立して、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、シアノ基、ニトロ基、炭素原子数1〜20のアルキル基、炭素原子数6〜30のアリール基、又は、炭素原子数7〜30のアリールアルキル基であり、各々が同一であっても異なっていてもよい。)
よりなる群から選択される1種である、
請求項5〜7のいずれか一項に記載の光電変換素子用色素。
【請求項9】
下記式(IX):
【化17】

(式(IX)中、Aは、メタノール溶液中の最大吸収波長λmaxが350〜500nmとなる構造であり、Zは、−CONR−、−NRCO−、−SONR−、及び、−NRSO−から選択されるいずれか1種の二価の連結基であり、Z中のRは、水素原子、炭素原子数1〜8のアルキル基、又は、炭素原子数7〜20のアリールアルキル基であり、Dは、置換基を有してもよいベンゼン環、置換基を有してもよいナフタレン環、又は、置換基を有してもよいフェナントレン環であり、Rは、水素原子、炭素原子数1〜20のアルキル基、炭素原子数2〜8のアルケニル基、炭素原子数2〜8のアルキニル基であり、これらはハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、アミノ基、水酸基、エーテル基、カルボニル基、芳香環、複素環、或いは、メタロセニル基で置換されていてもよく、R42は、各々独立して、水素原子、炭素原子数1〜8のアルキル基、炭素原子数6〜12のアリール基、ハロゲン原子、又は、シアノ基であり、各々が同一であっても異なっていてもよく、Xは、酸素原子、硫黄原子、セレン原子、CR、又は、NRであり、R〜Rは、各々独立して、水素原子、炭素原子数1〜20のアルキル基、炭素原子数2〜8のアルケニル基、炭素原子数2〜8のアルキニル基であり、各々が同一であっても異なっていてもよく、ここでR〜Rは、各々独立して、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、アミノ基、水酸基、エーテル基、カルボニル基、芳香環、複素環、或いは、メタロセニル基で置換されていてもよく、RとRとが連結して3〜6員環の脂環基を形成していてもよく、Yは、炭素原子数1〜8のアルキレン基、又は、単結合であり、mは、0〜2であり、一方、Anb−は、b価のアニオンであり、aは、1又は2であって色素全体の電荷を中性に保つ係数であり、bは、1又は2である。)
で表される構造を有する、
化合物。
【請求項10】
下記式(X):
【化18】

(式(X)中、Aは、メタノール溶液中の最大吸収波長λmaxが350〜500nmとなる構造であり、Zは、−CONR−、−NRCO−、−SONR−、及び、−NRSO−から選択されるいずれか1種の二価の連結基であり、Z中のRは、水素原子、炭素原子数1〜8のアルキル基、又は、炭素原子数7〜20のアリールアルキル基であり、Dは、置換基を有してもよいベンゼン環、置換基を有してもよいナフタレン環、又は、置換基を有してもよいフェナントレン環であり、Rは、水素原子、炭素原子数1〜20のアルキル基、炭素原子数2〜8のアルケニル基、炭素原子数2〜8のアルキニル基であり、これらはハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、アミノ基、水酸基、エーテル基、カルボニル基、芳香環、複素環、或いは、メタロセニル基で置換されていてもよく、Xは、酸素原子、硫黄原子、セレン原子、CR、又は、NRであり、R〜Rは、各々独立して、水素原子、炭素原子数1〜20のアルキル基、炭素原子数2〜8のアルケニル基、炭素原子数2〜8のアルキニル基であり、各々が同一であっても異なっていてもよく、ここでR〜Rは、各々独立して、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、アミノ基、水酸基、エーテル基、カルボニル基、芳香環、複素環、或いは、メタロセニル基で置換されていてもよく、RとRとが連結して3〜6員環の脂環基を形成していてもよく、一方、Anb−は、b価のアニオンであり、aは、1又は2であって色素全体の電荷を中性に保つ係数であり、bは、1又は2である。)
で表される構造を有する、
請求項9に記載の化合物。
【請求項11】
前記Aが、下記式(IV)〜(VII):
【化19】

(式(IV)中、Sは、置換基を有してもよい芳香環、又は、置換基を有してもよい複素環であり、R17〜R20は、各々独立して、水素原子、炭素原子数1〜8のアルキル基、ハロゲン原子、又は、シアノ基であり、各々が同一であっても異なっていてもよく、qは、0又は1であり、前記置換基−Y−COOHは、S上に置換されている。)
【化20】

(式(V)中、Sは、置換基を有してもよい芳香環、又は、置換基を有してもよい複素環であり、Sは、硫黄原子、又は、下記式(Va)で表される構造であり、R21〜R23は、各々独立して、水素原子、炭素原子数1〜8のアルキル基、ハロゲン原子、又は、シアノ基であり、各々が同一であっても異なっていてもよく、R24は、水素原子、炭素原子数1〜20のアルキル基、炭素原子数6〜30のアリール基、炭素原子数7〜30のアリールアルキル基、又は、アンカー基であり、uは、0又は1であり、前記置換基−Y−COOHは、S及び/又はS上に置換されている。)
【化21】

【化22】

(式(VI)中、R25〜R26は、各々独立して、水素原子、炭素原子数1〜8のアルキル基、ハロゲン原子、又は、シアノ基であり、各々が同一であっても異なっていてもよく、R27は、水素原子、炭素原子数1〜20のアルキル基、炭素原子数6〜30のアリール基、炭素原子数7〜30のアリールアルキル基、又は、アンカー基であり、R28〜R31は、各々独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1〜20のアルキル基、又は、炭素原子数6〜12のアリール基であり、各々が同一であっても異なっていてもよく、ここでR28とR30はそれぞれ脱離して不飽和結合を形成してもよく、或いは、R29とR31は連結して置換基を有してもよいベンゼン環、置換基を有してもよいナフタレン環又は置換基を有してもよいフェナントレン環を形成していてもよく、tは、0又は1であり、前記置換基−Y−COOHは、S上に置換されている。)
【化23】

(式(VII)中、R32〜R33は、各々独立して、水素原子、炭素原子数1〜20のアルキル基、又は、炭素原子数7〜30のアリールアルキル基であり、各々が同一であっても異なっていてもよく、R34〜R41は、各々独立して、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、シアノ基、ニトロ基、炭素原子数1〜20のアルキル基、炭素原子数6〜30のアリール基、又は、炭素原子数7〜30のアリールアルキル基であり、各々が同一であっても異なっていてもよい。)
よりなる群から選択される1種である、
請求項9又は10に記載の化合物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−77268(P2012−77268A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−226588(P2010−226588)
【出願日】平成22年10月6日(2010.10.6)
【出願人】(000003067)TDK株式会社 (7,238)
【出願人】(000000387)株式会社ADEKA (987)
【Fターム(参考)】